説明

携帯端末

【課題】 無接点電力伝送の特性を劣化させず、携帯端末の通信性能へ悪影響を及ぼすことなく、高価なノイズ対策をも必要とせずに、非接触通信時のデータ通信の信頼性を確保可能とする。
【解決手段】
携帯電話端末は、無接点電力伝送のための二次側コイル14及び無接点電力伝送回路部40と、非接触通信のための非接触通信回路70及びループアンテナ71を備えている。そして、非接触通信が行われる場合、非接触通信回路70は、無接点電力伝送回路部40の制御回路50に対して、非接触通信が行われることを通知する。その通知を受けた制御回路50は、無接点電力伝送の一次側であるクレードル1に対して電力伝送の中止を要求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導を利用した無接点電力伝送により送電された電力を受電して、例えば内蔵二次電池への充電等を行う機能と、例えばいわゆるRFID(Radio Frequency-Identification:電波方式認識)や非接触型ICカード等のような非接触通信機能とを少なくとも搭載している携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話端末等の携帯機器に内蔵された二次電池を充電するための充電用電力を、電気的な接点を用いずに、コイルによる電磁誘導を利用して送電装置(例えばクレードル)から伝送するようなシステムが知られている。以下、電磁誘導を利用することで電気的な接点を用いずに行われる電力伝送を「無接点電力伝送」と表記する。この無接点電力伝送システムによれば、送電装置であるクレードルは一次側コイルと送電制御を行う制御回路部を備えており、一方、受電側の携帯機器は二次側コイルと受電制御を行う制御回路部を備えている。
【0003】
一方、近年の携帯電話端末は、例えばいわゆるRFID(Radio Frequency-Identification:電波方式認識)や非接触型ICカード等のように、電気的な接点を用いずにデータ通信を行うための機能を搭載したものが一般化しつつある。以下、上記RFIDや非接触型ICカード等のような電気的接点を用いずに行われるデータ通信を「非接触通信」と表記する。当該非接触通信では、送信側機器のループアンテナから送信された電波を、受信側機器のループアンテナにて受信することにより、データ通信が行われる。なお、送信側機器としては、例えば駅の自動改札機に設けられた非接触通信リーダライタや、店舗のレジに設けられた非接触通信リーダライタなどを挙げることができる。その他にも、最近は、携帯端末そのものに非接触通信リーダライタを組み込むことについても行われつつある。
【0004】
なお、特開平11−122146号の公開特許公報(特許文献1)には、電力伝送用アンテナにより電力伝送を行うと共に、情報通信用アンテナにより情報通信を行うリーダライタにおいて、電力伝送用アンテナと情報通信用アンテナとを同一平面内に配置すると共に、これら両アンテナを構成するコイルの軸線を互いに直交させて両アンテナを配置することにより、これら両アンテナの間の電磁結合による干渉を防止し、また、情報通信用アンテナを構成するコイルを複数のセグメントに分割し、外部ノイズの磁束により一部のセグメントで誘起される電圧と他のセグメントで誘起される電圧とが相殺されるように配置することで、情報通信用アンテナが外部ノイズの磁束により総じて受ける影響を低減させるようにして、効率的な電力伝送や高品質な情報通信等を実現可能とすることが開示されている。
【0005】
また、特開平5−114055号の公開特許公報(特許文献2)には、第1の結合器と第2の結合器を備え、エネルギー伝送用の第3の結合器と信号伝送用の第4の結合器とを有する出力装置に挿着されて、第3の結合器から送出された出力を第1の結合器が受けることで作動用エネルギーを得、第4の結合器から送出された信号を第2の結合器が受けることで出力装置からデータを受信する非接触型で受信装置において、出力装置への挿着時に第3,第4の結合器と直接には結合しない位置であって、第3の結合器とのエネルギーを受ける結合強度が、第3の結合器と第2の結合器とのエネルギーを受ける結合強度にほぼ等しい関係で第5の結合器を設け、その第5の結合器が受けたエネルギーに応じた二信号を第2の結合器が第3の結合器から受けたエネルギーに応じた入力信号成分を相殺する極性で、第2の結合器が受けた入力信号に合成することで、エネルギー伝送用結合器から信号伝送用結合器への影響を取り除き、データ伝送が効率よく行える非接触型データ受信装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−122146号公報(図3)
【特許文献2】特開平5−114055号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、携帯電話端末が上述した無接点電力伝送機能と非接触通信機能の両機能を備えている場合において、例えば、携帯電話端末をクレードルに装填して無接点電力伝送による充電を行っている時に、その携帯電話端末が他の携帯端末等との間で非接触通信によるデータ通信を行うようなケースが考えられる。
【0008】
ここで、無接点電力伝送では、容量CとインダクタンスLによる共振を利用して電力を伝送するようになされており、その共振周波数は例えば100kHz(キロヘルツ)から300kHz程度となされている。一方で、非接触通信の場合は、使用周波数帯域が例えば13MHz(メガヘルツ)程度となされているため、上記無接点電力伝送と非接触通信とが同時に行われたとしても、基本的にはそれら両者間で影響し合うことはない。
【0009】
但し、無接点電力伝送の際には、スイッチング動作などにより、コイルや制御回路部から高調波ノイズが発生し、その高調波ノイズが上記非接触通信の使用周波数帯域に影響を及ぼしてしまい、当該非接触通信の信頼性が損なわれてしまうことになる虞がある。
【0010】
このような高調波ノイズの対策としては、例えば、非接触通信の使用周波数帯域に影響を及ぼすノイズ成分の発生を極力少なくするための容量CやインダクタンスLの回路素子等を別途コイルや回路部へ追加したり、また例えば、無接点電力伝送用の回路部をノイズ遮断シードで覆って当該無接点電力伝送用回路部から外部へノイズが放射されるのを抑制したり、或いは、非接触通信用の回路部をノイズ遮断シードで覆って当該非接触通信用回路部へ外部からノイズが入り込まないようにするなどの手法を採ることが考えられる。
【0011】
しかしながら、容量CやインダクタンスLの回路構成を別途追加することは、無接点電力伝送の特性劣化を招く虞がある。また、ノイズ遮断シートを設けることはコストの上昇を招いてしまうばかりか、携帯電話端末の通信性能にも悪影響を及ぼしかねない。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、携帯端末が無接点電力伝送機能と非接触通信機能の両機能を備えている場合において、無接点電力伝送の特性を劣化させたり、携帯端末の通信性能へ悪影響を及ぼすことなく、さらに、高価なノイズ対策をも必要とせずに、特に非接触通信時のデータ通信の信頼性を確保可能とする携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の携帯端末は、少なくとも、無接点電力伝送の一次側機器が備えた一次側コイルとの間で電磁誘導を利用した電力伝送を行うための二次側コイルと、非接触により情報通信を行うための非接触通信アンテナとを備えた携帯端末であり、一次側機器との間で情報通信を行うための第1の情報通信部と、非接触通信アンテナを通じて他端末との間で情報通信を行うための第2の情報通信部とを有し、第2の情報通信部は、非接触通信アンテナを通じて他端末との間で情報通信を開始するのに先立ち、他端末との間で非接触通信が開始されることを第1の情報通信部へ通知し、第1の情報通信部は、第2の情報通信部からの通知に基づいて、一次側機器に対して無接点電力伝送の実行停止を要求する情報を送信することにより、上述した課題を解決する。
【0014】
すなわち本発明によれば、非接触通信が行われる際には、その非接触通信が開始される前に、無接点電力伝送の実行を停止することで、無接点電力伝送の実行のよる高調波ノイズの発生を無くすようにしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、携帯端末が無接点電力伝送機能と非接触通信機能の両機能を備えている場合に、非接触通信が行われる時には、その非接触通信が開始される前に無接点電力伝送の実行を停止することで、無接点電力伝送の特性を劣化させたり、携帯端末の通信性能へ悪影響を及ぼすことなく、さらに、高価なノイズ対策をも必要とせずに、特に非接触通信時のデータ通信の信頼性を確保することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
なお、本実施形態では、本発明の携帯端末の一例として、線状導体若しくは導体パターンが渦巻き状に形成された平面コイルを無接点電力伝送用の二次側コイルとして備え、本発明の一次側機器であるクレードルの一次側コイルから送電された電力を、上記二次側コイルを通じて受電して内蔵バッテリの充電等に使用する無接点電力伝送機能と、RFIDや非接触型ICカード等のような非接触通信機能とを備えた携帯電話端末を挙げているが、勿論、ここで説明する内容はあくまで一例であり、本発明はこの例に限定されないことは言うまでもない。なお、本実施形態の携帯電話端末は、上記非接触通信リーダライタの機能をも備えている。
【0018】
〔携帯電話端末とクレードルの概略構成及び充電時の基本動作〕
図1には、本発明実施形態の携帯電話端末2とクレードル1との間で行われる無接点電力伝送に関連した主要部の概略的構造を示す。
【0019】
本実施形態の携帯電話端末2は、例えば、第1の筐体2Aと第2の筐体2Bがヒンジ2Cを介して折り畳み可能となされたいわゆる折り畳みタイプの携帯電話端末となされている。
【0020】
上記第2の筐体2Bは、少なくとも、当該端末の動作電力を発生する二次電池からなるバッテリ16と、上記バッテリ16の充電を行う際の受電側となる無接点電力伝送コイルである二次側コイル14と、上記二次側コイル14を通じて受電した電力を上記バッテリ16へ供給して充電させるための充電制御回路を含む各種電子回路が実装された回路基板15とを、その筐体内部に備えている。また、本実施形態の携帯電話端末2において、上記二次側コイル14は、第2の筐体2Bを構成する各筐体面のうち、当該携帯電話端末2が折り畳まれた時に、外側となる筐体面側近傍に配されているとする。
【0021】
上記第1の筐体2Aは、少なくとも、非接触通信に用いられるループアンテナ71と、当該非接触通信の信号処理及び制御を行うための非接触通信回路を含む回路基板17とを、その筐体内部に備えている。また、本実施形態の携帯電話端末2において、上記非接触通信用ループアンテナ71は、第1の筐体2Aを構成する各筐体面のうち、当該携帯電話端末2が折り畳まれた時に、外側となる筐体面側近傍に配されているとする。
【0022】
なお、本実施形態において、一般的な携帯電話端末が備えているその他の構成要素の図示及び説明については省略している。
【0023】
上記バッテリ16は着脱可能となされており、したがって、携帯電話端末2には当該バッテリ16を着脱する際に開閉(若しくは着脱)されるバッテリ蓋13が設けられている。
【0024】
上記二次側コイル14は、導電性を有する線状導体若しくは導電パターンが渦巻き状に形成された平面コイルとなされており、当該二次側コイル14の一方の平面部が、上記バッテリ蓋13の内壁面、若しくは上記バッテリ16のバッテリ蓋側の外表面上に例えば貼り付けられている。本実施形態では、上記バッテリ蓋13の内壁面に二次側コイル14が貼り付けられているとする。
【0025】
一方、本実施形態のクレードル1は、少なくとも、携帯電話端末2のバッテリ16の充電を行う際の送電側の無接点電力伝送コイルである一次側コイル10と、上記一次側コイル10への電力供給とその制御を行う制御基板部11と、例えば家庭用電源に接続される電源コード12とを備えている。なお、本実施形態において、一般的なクレードルが備えているその他の構成要素の図示及び説明については省略する。
【0026】
このクレードル1の一次側コイル10は、携帯電話端末2の二次側コイル14と略々同様に、導電性を有する線状導体若しくは導電パターンが渦巻き状に形成された平面コイルとなされており、当該一次側コイル10の一方の平面部が、当該クレードル1に設けられている或る程度の大きさを有した平面状の端末載置台の筐体内壁面側に貼り付けられている。
【0027】
制御基板部11は、当該クレードル1の端末載置台に上記携帯電話端末2が置かれ、その携帯電話端末2の二次側コイル14と当該クレードル1の一次側コイル10とが近接配置することにより、一次側コイル10内の磁界の状態が変化した時に、その磁界の状態変化に応じた電圧変動を検知可能となされている。そして、制御基板部11は、上記二次側コイル14が近接配置された時の一次側コイル10における磁界の状態変化に応じた電圧変動による電圧値が、予め定めた所定の電圧値になったことを検知した時に、当該クレードル1の端末載置台に携帯電話端末2が置かれたと判断する。
【0028】
同様に、本実施形態の携帯電話端末2の充電制御回路は、クレードル1の端末載置台に自端末が置かれて、二次側コイル14とクレードル1の一次側コイル10とが近接配置することで、二次側コイル14内の磁界の状態に変化が生じた時、その磁界状態変化に応じた電圧変動を検知可能となされている。そして、携帯電話端末2の充電制御回路は、上記一次側コイル10が近接配置された時の二次側コイル14における磁界の状態変化に応じた電圧変動による電圧値が、予め定めた所定の電圧値になったことを検知した時に、自端末がクレードル1の端末載置台に置かれたと判断する。
【0029】
また、本実施形態では、携帯電話端末2がクレードル1の端末載置台に近づけられた際に二次側コイル14から発生する電圧値と、予め定めた基準電圧値との比較を行い、その比較結果に基づいて、携帯電話端末2の二次側コイル14の中心位置がクレードル1の一次側コイル10の中心位置に略々一致したか否か、つまり、充電時にクレードル1の端末載置台上の最適位置範囲内に携帯電話端末2が入っているか否かを、ユーザに音の出力や画像の表示等により報知可能となされている。
【0030】
また、本実施形態において、クレードル1と携帯電話端末2は、上記一次側コイル10及び二次側コイル14を介した情報の伝達が可能となされている。例えば、上記携帯電話端末2がクレードル1の端末載置台に置かれ、上述のように磁界の状態変化に基づいて相互に一次側コイル10と二次側コイル14との近接配置を検知した時、それらクレードル1と携帯電話端末2は、上記一次側コイル10及び二次側コイル14を介した情報伝達により、互いに相手方を認証するための識別情報の交換を行う。
【0031】
そして、本実施形態において、上記一次側コイル10と二次側コイル14とが近接配置されたことをクレードル1及び携帯電話端末2が共に検知し、更に、クレードル1と携帯電話端末2とが互いに相手方を認証できた時に、クレードル1から電力伝送が行われ、その伝送された電力により携帯電話端末2のバッテリ16の充電が行われることになる。
【0032】
このように携帯電話端末2のバッテリ16への充電が開始される場合、上記クレードル1の制御基板部11は、上記電源コード12を通じて供給される家庭用交流電圧を所定の直流電圧に変換し、その直流電圧を用いて所定の周波数の交流電圧を生成して、当該生成した交流電圧を上記一次側コイル10へ供給し、当該一次側コイル10を所定の共振周波数で発振させる。
【0033】
一方、携帯電話端末2側では、上記クレードル1の一次側コイル10の発振によって上記二次側コイル14に交流電圧が誘起されると、その誘起された交流電圧を整流して直流電圧に変換し、その直流電圧によりバッテリ16の充電を行う。
【0034】
また、本実施形態において、クレードル1の制御基板部11は、一次側コイル10の磁界の状態変化に基づく電圧値が予め定めた所定の電圧値にならなかった時、若しくは、一次側コイル10の磁界の状態変化に基づく電圧値が予め定めた所定の電圧値になった場合でも上記識別情報による相手方の認証が出来なかった時には、上記一次側コイル10の磁界の状態変化が例えばコイン等の金属物体やその他の導電性物体が端末載置台に載っていることで発生したものであると判断し、上記一次側コイル10への電力供給を行わないように制御する。
【0035】
また、本実施形態において、クレードル1からの電力伝送により携帯電話端末2のバッテリ16の充電が行われている時、それらクレードル1と携帯電話端末2との間では、上記一次側コイル10及び二次側コイル14を介して充電情報の伝達が行われる。すなわち、携帯電話端末2の充電制御回路は、クレードル1からの電力伝送によりバッテリ16の充電が行われている時、そのバッテリ16の充電情報をクレードル1へ伝送する。クレードル1の制御基板部11は、携帯電話端末2から伝達された充電情報により、その端末2のバッテリ16の充電状況を監視しており、バッテリ16の充電が完了していないことを当該充電情報により把握している場合には上記一次側コイル10を通じた電力伝送を続行し、一方、バッテリ16の充電が完了したことを充電情報により把握した場合には電力伝送を停止するような制御を行う。その他にも、制御基板部11は、例えば、携帯電話端末2から何らかの異常を示す情報が供給されたような場合にも電力伝送を停止する制御を行う。
【0036】
なお、携帯電話端末2とクレードル1との間で行われる情報伝達は、単純なビット通信でもあってもよいし、コード化通信であってもよい。
【0037】
さらに、本実施形態の携帯電話端末2は、上記第1の筐体2Aに設けられているループアンテナ71を非接触通信のリーダライタに近づけた場合には、そのリーダライタとの間で非接触通信を行うことができ、また、非接触通信機能を備えた他の携帯端末が上記第1の筐体2Aのループアンテナ71に近づけられた場合には自らがリーダライタとして当該他の携帯端末との間で非接触通信を行うことができる。
【0038】
〔携帯電話端末とクレードルの無接点電力伝送のための内部回路構成〕
図2には、本発明実施形態の携帯電話端末2とクレードル1において、特に無接点電力伝送に関連した主要部の詳細な内部回路構成を示す。
【0039】
図2において、クレードル1側の内部回路20は、前記図1の制御基板部11に含まれており、主要な構成要素として、送電制御部22、送電回路23、一次側コイル10を有して構成されている。
【0040】
ACアダプタ21は、前述の電源コード12を通じて供給される家庭用交流電圧を所定の直流電圧に変換する。このACアダプタ21からの直流電圧は、送電制御部22を介して送電回路23へ供給される。
【0041】
送電回路23は、少なくとも発振回路とドライバ及び共振回路を有して構成されている。
発振回路は、例えば当該クレードル1から携帯電話端末2へ充電電力を伝送する際の基準発振信号を生成し、その基準発振信号をドライバへ出力する。ドライバは、送電制御部22の制御回路25による制御の元で、上記発振回路からの基準発振信号を用いて、上記直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換する。共振回路は、コンデンサの容量CとコイルのインダクタンスLとにより共振回路を構成しており、上記ドライバからの交流電圧に応じて共振する。これにより、一次側コイル10を所定の共振周波数で発振させる。また、送電回路23は、送電制御部22の制御回路25から供給される情報送信用変調信号を上記電力伝送用の交流信号に重畳することにより、携帯電話端末2への情報送信も行う。
【0042】
上記一次側コイル10の両コイル端部間には、分圧抵抗24が接続されている。当該分圧抵抗24は、一次側コイル10の両コイル端部間における電圧を分圧し、その分圧出力を送電制御部22へ送るために設けられている。
【0043】
送電制御部22は、主要な構成要素として、制御回路25、波形検出器26、電圧監視器27、温度検出器28等を備えている。
【0044】
当該送電制御部22の波形検出器26には、上記一次側コイル10の両コイル端部間に表れる電圧を分圧抵抗24により分圧した出力が供給される。当該波形検出器26は、上記分圧出力の信号波形を検出して、その検出波形信号を制御回路25へ出力する。
【0045】
上記制御回路25は、当該クレードル1から携帯電話端末2側へ充電電力を伝送する場合には、上記送電回路23のドライバを制御し、当該ドライバから一次側コイル10へ上記所定の周波数の交流電圧を供給させる。
【0046】
また、制御回路25は、上記分圧抵抗24及び波形検出器26を通じて供給された上記検出波形信号、つまり一次側コイル10の両コイル端部間に表れる電圧波形の検出波形信号に基づいて、当該クレードル1の端末載置台への携帯電話端末2の接近,離脱の判断等を行う。すなわち制御回路25は、端末載置台への携帯電話端末2の接近,離脱により上記一次側コイル10に発生する電圧変動を、上記分圧抵抗24及び波形検出器26を通じた検出波形信号により検知する。そして、制御回路25は、上記端末載置台への携帯電話端末2の接近,離脱の検知に基づき、必要に応じて、ドライバ23から一次側コイル10への交流電圧の供給と停止の制御などを行う。
【0047】
また、制御回路25は変復調回路29を有している。当該変復調回路29は、携帯電話端末2への情報送信を行う際には、その情報に応じて変調した信号を生成し、その変調信号を送電回路23へ送る。これにより、一次コイル10を通じて、携帯電話端末2へ情報送信が行われる。一方、携帯電話端末2からの情報受信を行う場合、制御回路25は、上記分圧抵抗24及び波形検出器26を通じて供給された上記検出波形信号から、上記携帯電話端末2側から送信されてきた変調信号の抽出を行う。そして、変復調回路29では、上記変調信号の復調が行われる。これにより、携帯電話端末2から送信されてきた情報の受信が行われる。
【0048】
電圧監視器27は、例えば上記分圧抵抗24からの電圧値に基づいて、一次側コイル10に規定外の異常電圧が発生するか若しくはその発生が予測されるかどうかを監視する。そして、電圧監視器27は、規定外の異常電圧が発生したことを検知若しくはその発生を予測した場合には、その旨の検知情報を制御回路25へ送る。
【0049】
温度検出器28は、例えば一次側コイル10の近傍若しくはその内部に設けられている温度センサ30からの信号に基づいて、一次側コイル10が規定外の異常温度になるか若しくは異常温度になることが予測されるかどうかを監視する。当該温度検出器28は、規定外の異常温度になったことを検知若しくは異常温度になると予測した場合には、その旨の検知情報を制御回路25へ送る。
【0050】
制御回路25は、当該クレードル1から携帯電話端末2側へ充電電力を伝送する際若しくは伝送中、或いは、それら以外の時に、上記異常電圧の検知情報又は上記異常温度の検知情報の何れか一方でも受け取った場合、上記送電回路23の動作を停止させて一次側コイル10への電力供給を停止若しくは供給開始を行わないような制御を行う。
【0051】
一方、図2において、携帯電話端末2側の内部回路40は、前記図1の回路基板15に含まれており、主要な構成要素として、分圧抵抗41、受電回路42、受電制御部43、携帯電話充電回路44、二次電池であるバッテリ45等を有して構成されている。
【0052】
受電回路42は、受電のための構成として整流回路とレギュレータを有し、また、クレードル1への情報送信のための構成として二次側コイル14の共振回路とドライバ及び発振回路等を備えている。
【0053】
受電回路42の整流回路は、二次側コイル14の両コイル端部間の出力電圧(交流電圧)を、直流電圧に変換してレギュレータへ送る。レギュレータは、整流回路から供給された直流電圧を、当該携帯電話端末の充電回路44で使用される所定電圧に変換して、受電制御部43へ送る。
【0054】
分圧抵抗41は、二次側コイル14と受電回路42との間に設けられており、二次側コイル14の両コイル端部間における電圧を分圧し、その分圧出力を受電制御部43へ送るために設けられている。
【0055】
受電制御部43は、主要な構成要素として、制御回路50、電圧・波形検出器52等を備えている。
【0056】
電圧・波形検出器52には、上記二次側コイル14の両コイル端部間に表れる電圧を分圧抵抗41により分圧した出力が供給される。当該電圧・波形検出器52は、上記分圧出力の信号波形を検出して、その検出波形信号を制御回路50へ出力する。また、電圧・波形検出器52は、分圧出力から受電電圧を検出する。この電圧検出信号は制御回路50へ送られる。
【0057】
上記制御回路50は、携帯電話充電回路44にてバッテリ45への充電が行われる場合には、上記受電回路42が受電した電力を、上記携帯電話充電回路44へ送る。
【0058】
携帯電話充電回路44は、受電制御部43から充電電力が供給された時、バッテリ45の残量に応じて、その充電電力を当該バッテリ45へ送って充電する。
【0059】
また、制御回路50は、上記分圧抵抗41及び電圧・波形検出器52を通じて供給された上記検出波形信号、つまり二次側コイル14の両コイル端部間に表れる電圧波形の検出波形信号に基づいて、クレードル1の端末載置台への自端末2の接近,離脱の判断等を行う。すなわち制御回路50は、端末載置台への自端末2の接近,離脱により上記二次側コイル14に発生する電圧変動を、上記分圧抵抗41及び電圧・波形検出器52を通じた検出波形信号により検知する。そして、制御回路50は、上記端末載置台への自端末2の接近,離脱の検知に基づき、必要に応じて、携帯電話充電回路44への受電電力の供給と停止の制御などを行う。
【0060】
さらに、制御回路50は変復調回路53を有している。当該変復調回路53は、クレードル1へ情報等を送信する際には、その情報に応じて変調した信号を生成し、その変調信号を受電回路42へ送る。 この時、受電回路42の発振回路は、当該携帯電話端末2からクレードル1へ情報伝送を行う際の基準発振信号を生成し、その基準発振信号をドライバへ出力する。ドライバは、受電制御部43の制御回路50による制御の元で、上記発振回路からの基準発振信号を用いて、上記共振回路を共振させることにより、二次側コイル14を所定の共振周波数で発振させる。同時に、ドライバでは、受電回路43の制御回路50から供給される情報送信用の変調信号が上記基準発振信号に重畳される。これにより、クレードル1への情報送信が行われる。
【0061】
一方、クレードル1からの情報受信を行う場合、制御回路50は、上記分圧抵抗41及び電圧・波形検出器52を通じて供給された上記検出波形信号から、上記クレードル1側から送信されてきた変調信号の抽出を行う。そして、変復調回路53では、上記変調信号の復調が行われる。これにより、クレードル1から送信されてきた情報の受信が行われる。
【0062】
〔携帯電話端末のコイル及びループアンテナとクレードルとの関係〕
図3〜図5には、携帯電話端末2に搭載されている無接点電力伝送用のコイルと非接触通信用のループアンテナの一配置例と、当該携帯電話端末2がクレードル1の端末載置台上に置かれた場合の各コイル及びループアンテナの関係を示す。なお、図3の例は、本実施形態の携帯電話端末2として折り畳みタイプの端末を挙げており、図4及び図5の例は、ストレートタイプの携帯電話端末を挙げている。また、図4の例は、クレードル1が例えば三角形状の筐体を有している場合を挙げている。
【0063】
図3に示すように、図1に示した第1の筐体2A及び第2の筐体2Bからなる折り畳みタイプの携帯電話端末2をクレードル1の端末載置台上に置く場合において、第2の筐体2Bの二次側コイル14がクレードル1の端末載置台の一次側コイル10と相対応するように、当該携帯電話端末2をクレードル1の端末載置台上に置けば、それら一次側コイル10と二次側コイル14との間の無接点電力伝送により、当該携帯電話端末2のバッテリ充電が可能となる。また、携帯電話端末2がクレードル1の端末載置台上に置かれている場合において、図3のように例えば当該携帯電話端末2を開いた状態にすると、携帯電話端末2は、第1の筐体2Aの非接触通信用ループアンテナ71を用いて、他の携帯端末との間で非接触通信を行うことができることになる。
【0064】
また、図4に示すように、ストレートタイプの携帯電話端末2を三角形状のクレードル1の端末載置台上に置く場合において、二次側コイル14がクレードル1の端末載置台の一次側コイル10と相対応するように、当該携帯電話端末2をクレードル1の端末載置台上に置けば、それら一次側コイル10と二次側コイル14との間の無接点電力伝送により、当該携帯電話端末2のバッテリ充電が可能となる。また、この図4の例の場合、携帯電話端末2がクレードル1の端末載置台上に置かれている場合であっても、携帯電話端末2の非接触通信用ループアンテナ71がクレードル1の端末載置台で隠れてしまわないため、当該携帯電話端末2は、非接触通信用ループアンテナ71を用いて、他の携帯端末との間で非接触通信を行うことができることになる。
【0065】
一方、図5に示すように、ストレートタイプの携帯電話端末2を図1に示したような四角形状のクレードル1の端末載置台上に置く場合において、二次側コイル14がクレードル1の端末載置台の一次側コイル10と相対応するように、当該携帯電話端末2をクレードル1の端末載置台上に置けば、それら一次側コイル10と二次側コイル14との間の無接点電力伝送により、当該携帯電話端末2のバッテリ充電が可能となる。しかしながら、この図5の例の場合、携帯電話端末2がクレードル1の端末載置台上に置かれている時には、携帯電話端末2の非接触通信用ループアンテナ71がクレードル1の端末載置台で隠れてしまうことになるため、当該携帯電話端末2は、非接触通信用ループアンテナ71を用いて、他の携帯端末との間で非接触通信を行うことができないことになる。
【0066】
ここで、携帯電話端末2とクレードル1が上述した図3や図4のような関係を有している場合には、携帯電話端末2をクレードル1の端末載置台に置いた状態、つまり無接点電力伝送によるバッテリ充電を行っている時に、同時に他の携帯端末等との間で非接触通信が行われる可能性がある。
【0067】
但し、無接点電力伝送の際には、スイッチング動作などにより、コイルや制御回路部から高調波ノイズが発生し、その高調波ノイズが上記非接触通信の使用周波数帯域に影響を及ぼしてしまい、当該非接触通信の信頼性が損なわれてしまうことになる虞がある。
【0068】
以下、図6〜図9を参照して、無接点電力伝送による高周波ノイズが非接触通信に悪影響を与える様子について説明する。
【0069】
図6には、クレードル1と携帯電話端末2との間で無接点電力伝送が行われ、携帯電話端末2と他の携帯端末3との間で非接触通信が行われる場合に、無接点電力伝送による高調波ノイズが非接触通信に影響を与える様子を示す。
【0070】
この図6において、携帯電話端末2と他携帯端末3との間で非接触通信が行われる場合、携帯電話端末2の非接触通信回路70が、ループアンテナ71を通じて他携帯端末3と非接触通信を行う。
【0071】
図7には、図6の携帯電話端末2が非接触通信のリーダライタとして動作し、他携帯端末3との間で非接触通信を行う場合のシーケンス図を示す。
【0072】
図7において、リーダライタ側の携帯電話端末2は、例えば間欠的に近接検知用の信号を送信している。他携帯端末3は、携帯電話端末2に近接して上記近接検知用信号を受けると、その携帯電話端末2へ近接通知信号(S11)を送信する。
【0073】
携帯電話端末2は、他携帯端末3から近接通知信号を受けたことで、当該他携帯端末3の近接を検知(S1)すると、当該他携帯端末3に対して非接触通信用の電力を送信(S2)する。一方、他携帯端末3は、当該非接触通信用の電力を受信(S12)する。
【0074】
次に、携帯電話端末2と他携帯端末3は、互いに相手方の認証を行い(S3,S13)、その相互認証により非接触通信が可能であると互いに判断できた場合、互いにデータ通信(S4,S14)を行う。
【0075】
ここで、クレードル1と携帯電話端末2との間で無接点電力伝送が行われると、クレードル21のACアダプタ21や無接点電力伝送用の回路部(例えば前述の内部回路20)、一次コイル10及び二次コイル14、携帯電話端末2の無接点電力伝送用の回路部(例えば前述の内部回路40)などから、高調波ノイズが発生する。そして、これらの高調波ノイズが、上記非接触通信に悪影響を与えてしまうことになる。
【0076】
図8には、無接点電力伝送時の伝送波形と、当該無接点電力伝送時に携帯電話端末の充電回路から発生する高調波ノイズ(輻射ノイズ)の測定波形の一例を示す。また、図9には、無接点電力伝送時の伝送波形と、当該無接点電力伝送時にクレードル1の一次コイルから発生する高調波ノイズ(輻射ノイズ)の測定波形の一例を示す。なお、図8及び図9において、図中の実線で示す波形は無接点電力伝送時の伝送波形を示しており、図中の点線で示す波形は輻射ノイズの測定波形を示している。これら図8及び図9から判るように、無接点電力伝送時には或る周波数帯域(例えば10MHz〜100MHz)に大きな輻射ノイズが発生することがわかり、これらの輻射ノイズが非接触通信に悪影響を与え、当該非接触通信の信頼性を損ねてしまうことになる。
【0077】
〔無接点電力伝送が非接触通信に与える影響を無くすための対策例〕
上述したようなことから、本発明実施形態では、クレードル1の端末載置台上に携帯電話端末2が置かれ、当該携帯電話端末2に対する無接点充電が可能な状態である場合において、当該携帯電話端末2に他携帯端末3が近接して非接触通信が行われることになる場合には、以下に説明するような対策をとることにより、非接触通信の信頼性を確保できるようにしている。
【0078】
図10には、クレードル1に携帯電話端末2が置かれて無接点充電が可能になっている状態の時に、携帯電話端末2と他携帯端末3との間の非接触通信の信頼性を確保可能とした本実施形態の携帯電話端末2と、それらクレードル1,他携帯端末3の概略構成を示す。また、図11には、図10の携帯電話端末2とクレードル1との間で無接点電力伝送を行う場合、及び、携帯電話端末2が非接触通信のリーダライタとして動作して他携帯端末3との間で非接触通信を行う場合のシーケンス図を示す。
【0079】
これら図10及び図11において、携帯電話端末2がクレードル1の端末載置台上に置かれ且つ当該携帯電話端末2のバッテリへの充電が行われている場合、クレードル1からは充電用電力が送電(S21)され、携帯電話端末2では制御回路50による制御の元で充電用電力の受電(S31)とバッテリへの充電が行われる。
【0080】
ここで、リーダライタ側となる携帯電話端末2は、非接触通信回路70による制御元で、ループアンテナ71から例えば間欠的に近接検知用信号を送信している。他携帯端末3は、携帯電話端末2に近接して上記近接検知用信号を受けると、その携帯電話端末2へ近接通知信号(S51)を送信する。
【0081】
携帯電話端末2の非接触通信回路70は、上記他携帯端末3から近接通知信号を受けたことで、当該他携帯端末3の近接を検知(S41)すると、その携帯端末3に対して非接触通信用の電力を送信(S42)する。一方、携帯端末3は、当該非接触通信用の電力を受信(S52)する。
【0082】
また、携帯電話端末2の非接触通信回路70は、上記他携帯端末3の近接を検知(S41)して非接触通信用の電力送信(S42)を行った時、無接点電力伝送の制御回路50に対して、非接触通信が開始されることを示す通知(S43)を行う。
【0083】
上記非接触通信回路70から上記非接触通信の開始通知(S43)を受けた制御回路50は、クレードル1に対して無接点電力伝送の中止を要求する信号を送信(S32)する。当該中止要求信号を受け取ったクレードル1は、無接点電力伝送を中止(S22)する。
【0084】
また、上記非接触通信回路70は、上記制御回路50に対して通知(S43)を行った後、他携帯端末3との間で、互いに相手方の認証を行い(S44,S53)、その相互認証により非接触通信が可能であると互いに判断できた場合、互いにデータ通信(S45,S44)を行う。
【0085】
その後、他携帯端末3との間の非接触通信によるデータ通信が終了(S46)すると、携帯電話端末2の非接触通信回路70は、無接点電力伝送の制御回路50に対して、非接触通信が終了したことを示す通知(S46)を行う。
【0086】
上記非接触通信回路70から上記非接触通信の終了通知(S46)を受けた制御回路50は、クレードル1に対して無接点電力伝送の再開を要求する信号を送信(S33)する。当該再開要求信号を受け取ったクレードル1は、無接点電力伝送を再開(S13)する。なお、無接点電力伝送の再開条件は、携帯電話端末2の回路部内の充電回路44が管理している諸条件(電池電圧、温度その他)を満足してからとなる。
【0087】
これにより、クレードル1からは充電用電力が送電(S24)され、携帯電話端末2では制御回路50による制御の元で充電用電力の受電(S34)とバッテリへの充電が行われる。
【0088】
なお、無接点電力伝送の再開を要求する信号の送信(S33)は、上記非接触通信によるデータ通信の終了(S46)を受けて直ちに行われてもよいが、当該非接触通信によるデータ通信の終了が、例えば他携帯端末3をユーザが一時的に故意に離したり、非接触通信の通信状態が一時的に悪くなったことにより、ループアンテナ71が信号を受信しなくなったことで起こる場合もあり得るため、上記非接触通信によるデータ通信の終了(S46)を受けた後、一定時間待ってから上記無接点電力伝送の再開を要求する信号の送信(S33)を送信するようにし、それら一時的な通信中断や通信状態の悪化が解消したことで非接触通信が再開された場合に、無接点電力伝送が行われているような状態になることを避けるようにすることも可能である。
【0089】
上述したように、本実施形態によれば、クレードル1に携帯電話端末2が置かれて無接点充電が行われている場合であっても、携帯電話端末2と他携帯端末3との間の非接触通信が開始される際には、無接点電力伝送が一旦中断されるため、当該無接点電力伝送に起因する高調波ノイズの発生がなくなり、これにより非接触通信の信頼性が確保されている。特に、本実施形態では、非接触通信の相互認証やデータ通信などのように、通信情報そのものの信頼性が要求される通信が実際に行われる前に、無接点電力伝送が停止されるために、それら相互認証やデータ通信時の通信情報の信頼性を確実に確保することが可能となっている。
【0090】
図10及び図11の例では、携帯電話端末2において、非接触通信回路70が、無接点電力伝送用の制御回路50に対して直接、非接触通信の開始を示す通知(S43)や非接触通信の終了を示す通知(S46)を行う場合を挙げたが、例えば、図12に示すように、携帯電話端末の各種処理や演算等を行う回路部60のCPU61に対して、非接触通信回路70からの非接触通信の開始や終了を示す通知を送り、そのCPU61が、それら通知を無接点電力伝送用の制御回路50へ知らせるようにしてもよい。
【0091】
ここで、非接触通信回路70からの通知をCPU61を経由して無接点電力伝送用の制御回路50へ行うようにした場合、当該CPU61は、携帯電話端末2の現在の動作状態を認識しているため、その動作状態に最適な制御を行うことができるようになる。すなわち例えば、バッテリの残量が非常に少なく、充電を一時的に停止すると当該携帯電話端末2の電源そのものが落ちてしまうような動作状態になっている場合、CPU61を通じて各部を制御することで、例えばディスプレイ表示により「一旦、非接触通信を終了してください」などのメッセージをユーザへ通知するようなユーザインターフェース制御を行い、非接触通信が行われないようにして無接点充電を優先させるような制御、つまり例えば非接触通信回路70からの通知を制御回路50へ送らないようにすることで、当該制御回路50がクレードル1へ無接点電力伝送の中止要求を送ってしまわないようにする制御などが可能となる。勿論、無接点電力伝送を中断して非接触通信を行うような場合にも、CPU61を通じて各部を制御することにより、例えば充電を停止又は中止することを示すメッセージや、非接触通信を行うことを示すメッセージ、充電が再開されたことを示すメッセージなどをユーザに通知するような制御が可能となる。
【0092】
一方、上記CPU61を経由せずに、前述の図10及び図11の例のように非接触通信回路70が直接、制御回路50への通知を行う構成の場合には、携帯電話端末の動作状態を判断するなどの処理時間が不要となり、即時に無接点電力伝送の中止や再開が可能となり、したがって例えば、CPU61が他の複雑な処理等を行っていて無接点電力伝送の中止や再開の要求をクレードル1へ送るタイミングが遅れてしまうような事態になる虞がなくなる。
【0093】
なお、上述した例では、無接点電力伝送が行われている時に、非接触通信が開始されようとした場合を挙げているが、本発明は、例えば非接触通信が既に行われている時に無接点電力伝送が開始されようとした場合にも適用可能である。つまりこの場合、非接触通信が既に行われている時には、例えば携帯電話端末2がクレードル1に置かれた場合であっても無接点電力伝送を開始しないようにし、非接触通信が終了した後に無接点電力伝送を開始するような制御が行われることになる。
【0094】
また、上述した例では、携帯電話端末2が非接触通信のリーダライタ側となる例を挙げたが、他携帯端末3がリーダライタ側となっている場合にも本発明は適用可能である。つまりこの場合、携帯電話端末2は、クレードル1との間で無接点電力伝送が行われている時に、リーダライタ側の他携帯端末3との間で非接触通信が開始されようとした場合に、クレードル1に対して無接点電力伝送の中止を要求することになる。勿論、この例の場合においても上述同様に、例えば既に非接触通信が既に行われている時には、無接点電力伝送の開始を行わないようにする。
【0095】
〔まとめ〕
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、無接点電力伝送により携帯電話端末2のバッテリの充電等を行っている時に、非接触通信によりデータ送受信が行われる場合には、上記無接点電力伝送に起因する高周波ノイズが非接触通信へ悪影響を及ぼさないように、非接触通信の開始に先立ち、無接点電力伝送を一時的に中断する。これにより、本実施形態によれば、高価なノイズ対策を行うことなく、非接触通信の通信の信頼性を確実に確保することが可能であり、また、無接点電力伝送の伝送特性を劣化させたり、携帯電話端末の通信性能へ悪影響を及ぼすこともない。
【0096】
上述した各実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した各実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0097】
上述の実施形態では、携帯電話端末2と他携帯端末3との間で非接触通信が行われる場合を例に挙げたが、クレードル1が非接触通信を行う機能を備えている場合にも適用可能である。
【0098】
また、本実施形態では、携帯電話端末2とそのクレードル1を例に挙げたが、本発明はそれらに限定されず、例えばPDA(Personal Digital Assistants)等の各種の電子機器やそれらのクレードルにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明実施形態の携帯電話端末とクレードルの主要部の概略的な内部構造を示す図である。
【図2】本発明実施形態の携帯電話端末とクレードルの無接点電力伝送に関連した主要部の詳細な内部回路構成を示すブロック回路図である。
【図3】携帯電話端末内の無接点電力伝送用コイルと非接触通信用ループアンテナの配置例と、特に、折り畳みタイプの携帯電話端末がクレードルの端末載置台上に置かれた場合の各コイル及びループアンテナの関係を示す図である。
【図4】携帯電話端末内の無接点電力伝送用コイルと非接触通信用ループアンテナの配置例と、特に、ストレートタイプの携帯電話端末が三角形状のクレードルの端末載置台上に置かれた場合の各コイル及びループアンテナの関係を示す図である。
【図5】携帯電話端末内の無接点電力伝送用コイルと非接触通信用ループアンテナの配置例と、特に、ストレートタイプの携帯電話端末が四角形状のクレードルの端末載置台上に置かれた場合の各コイル及びループアンテナの関係を示す図である。
【図6】クレードルと携帯電話端末との間で無接点電力伝送が行われ、携帯電話端末と他の携帯端末との間で非接触通信が行われる場合に、無接点電力伝送による高調波ノイズが非接触通信に影響を与える様子を説明するための図である。
【図7】図6の携帯電話端末が非接触通信のリーダライタとして動作し、他携帯端末との間で非接触通信を行う場合のシーケンス図である。
【図8】無接点電力伝送時の伝送波形と、当該無接点電力伝送時に携帯電話端末の充電回路から発生する高調波ノイズ(輻射ノイズ)の測定波形の一例を示す波形図である。
【図9】無接点電力伝送時の伝送波形と、当該無接点電力伝送時にクレードル1の一次コイルから発生する高調波ノイズ(輻射ノイズ)の測定波形の一例を示す波形図である。
【図10】クレードルに携帯電話端末が置かれて無接点充電が可能になっている状態の時に、携帯電話端末と他携帯端末との間の非接触通信の信頼性を確保可能とした本実施形態の携帯電話端末と、それらクレードル,他携帯端末の概略構成を示す図である。
【図11】図10の携帯電話端末とクレードルとの間で無接点電力伝送を行う場合、及び、携帯電話端末が非接触通信のリーダライタとして動作して他携帯端末との間で非接触通信を行う場合のシーケンス図である。
【図12】携帯電話端末と他携帯端末との間の非接触通信の信頼性を確保可能とした本実施形態の携帯電話端末と、それらクレードル,他携帯端末の概略構成を示し、CPUを通じて無接点電力伝送の中止や再開が行われる場合の例を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1 クレードル、2 携帯電話端末、2A 第1の筐体、2B 第2の筐体、2C ヒンジ、10 クレードル側の無接点電力伝送コイル、11 制御基板部、12 電源コード、13 携帯電話端末のバッテリ蓋、14 携帯電話端末側の無接点電力伝送コイル、15 携帯電話端末のバッテリ、16 携帯電話端末の回路基板、17 非接触通信回路を含む回路基板、20 クレードル側の内部回路、21 ACアダプタ、22 送電制御部、23 送電回路、24 クレードル側の分圧抵抗、25 送電制御部の制御回路、26 波形検出器、27 電圧監視器、28 温度検出器、29 クレードル側の変復調回路、30 温度センサ、40 携帯電話端末側の内部回路、41 携帯電話端末側の分圧抵抗、42 受電回路、43 受電制御部、44 携帯電話充電回路、45 バッテリ、50 受電制御部の制御回路、52 電圧・波形検出器、53 携帯電話端末側の変復調回路、60 携帯電話回路部、70 非接触通信回路、71 非接触通信用のループアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、無接点電力伝送の一次側機器が備えた一次側コイルとの間で電磁誘導を利用した電力伝送を行うための二次側コイルと、非接触により情報通信を行うための非接触通信アンテナとを備えた携帯端末において、
上記一次側機器との間で情報通信を行うための第1の情報通信部と、
上記非接触通信アンテナを通じて他端末との間で情報通信を行うための第2の情報通信部とを有し、
上記第2の情報通信部は、上記非接触通信アンテナを通じて他端末との間で情報通信を開始するのに先立ち、上記他端末との間で非接触通信が開始されることを上記第1の情報通信部へ通知し、
上記第1の情報通信部は、上記第2の情報通信部からの上記通知に基づいて、上記一次側機器に対して無接点電力伝送の実行停止を要求する情報を送信する、
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
少なくとも自端末の状態を判断する端末制御部を有し、
上記第2の情報通信部は、上記他端末との間で非接触通信が開始されることを上記第1の情報通信部へ通知することを、上記端末制御部を通じて行い、
上記端末制御部は、自端末の状態に基づいて、上記第1の情報通信部へ上記第2の情報通信部からの通知を伝えるか否か制御することを特徴とする請求項1記載の携帯端末。
【請求項3】
使用者が認識可能なメッセージの通知を行うためのユーザインターフェース部を有し、
端末制御部は、少なくとも上記無接点電力伝送の実行状態を示すメッセージ通知を上記ユーザインターフェース部に実行させる制御を行うことを特徴とする請求項2記載の携帯端末。
【請求項4】
上記無接点電力伝送により上記一次側機器から供給される電力により充電され、当該携帯端末の動作電力を発生する二次電池を有し、
上記端末制御部は、上記二次電池の残容量に基づいて、上記第1の情報通信部へ上記第2の情報通信部からの通知を伝えるか否か制御することを特徴とする請求項2記載の携帯端末。
【請求項5】
使用者が認識可能なメッセージの通知を行うためのユーザインターフェース部を有し、
端末制御部は、上記二次電池の残容量に基づいて、上記非接触通信の実行に関するメッセージ通知を上記ユーザインターフェース部に実行させる制御を行うことを特徴とする請求項4記載の携帯端末。
【請求項6】
上記第1の情報通信部は、上記一次側機器に対して無接点電力伝送の実行停止を要求する情報の送信を、上記第2の情報通信部からの上記通知に基づいて、即時若しくは一定時間待機後に行うことを特徴とする請求項1記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−206297(P2008−206297A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39186(P2007−39186)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】