撮像表示器
【課題】 色覚障害者を含む視覚障害者向けに、その者の視認対象物の内容をリアルタイムでもって、より的確に把握するための映像処理が施された映像を表示できるようにする。
【解決手段】 撮像装置、映像処理装置、および表示装置を有し、利用者の視覚特性に応じ、映像の拡大縮小、コントラスト調節、画質強調、色変換、2値化、細線化太線化、およびマスク追加などの映像処理をリアルタイムで行う。
【解決手段】 撮像装置、映像処理装置、および表示装置を有し、利用者の視覚特性に応じ、映像の拡大縮小、コントラスト調節、画質強調、色変換、2値化、細線化太線化、およびマスク追加などの映像処理をリアルタイムで行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に色覚障害者を含む視覚障害者向けに、その者の視認対象物、例えば、表示物や書面などの内容をより的確に把握することが可能となるように映像処理が施された映像を表示するための撮像表示器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像表示器に関する技術として特許公開公報に記載されたものがあり、例えば、特開2004−336229号公報(特許文献1)、特開平11−175050号公報(特許文献2)、特開平7−234919号公報(特許文献3)、および特開2005−216278号公報(特許文献4)に記載のものがある。
このうち特許文献1においては、拡大表示し、拡大表示する画像内の文字等の輪郭を明確にする処理を行うことによって、画像内の文字等の輪郭が不鮮明になることが防止され、読みやすくなり、さらに、拡大表示する画像内の文字等の色を任意の色に変更する処理を行うこととし、この場合には、使用者の希望する色の文字等を表示することができ、例えば、色覚障害者等に有用であるとしている。
また、特許文献2においては、色覚障害者のために識別しにくい表示色を他の表示色へ代替えすることとしている。
また、特許文献3においては、読みたい文字列を1文字1文字ずつ識別分離して処理し、使用者が最も読みやすい配列に並べて、表示画面に可能な限り多くの文字を拡大表示することとし、特に、不要な文字を削除して必要な文字のみを表示することとしている。
しかしながら、特許文献1では、文字等の輪郭を明確にする処理や任意の色に変更する処理についての具体的な実現手段を表してはいない。
また、特許文献2では、各障害者の視覚特性が様々であり、また、体調等によって変動することへの配慮がなされておらず、代替される他の表示色が変化して常に最適な表示色を設定可能とした構成を示したものとはなっていない。
また、特許文献3では、文字を識別分離処理する構成とし、不要な文字を削除するとしているが、このことにより不要な文字と不要でない文字との相対的な位置関係が表示されなくなってしまうことでは、撮像されている文書等のどこを読んでいるのかを的確に判断することが難しくなってしまう。
また、特許文献4では、携帯型の画像変換装置についての記載がある。
【特許文献1】特開2004−336229号公報
【特許文献2】特開平11−175050号公報
【特許文献3】特開平7−234919号公報
【特許文献4】特開2005−216278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、主に色覚障害者を含む視覚障害者向けに、その者の視認対象物、例えば、表示物や書面などの内容をリアルタイムでもって、より的確に把握するための映像処理が施された映像を表示できるようにすることである。
そのため本発明においては、映像を撮像する撮像装置と、その撮像された映像を映像処理する映像処理装置と、該映像処理された映像を表示する表示装置とを有し、その映像処理によって、各障害者の様々な視覚特性や体調等によるその変動、あるいは周囲環境の変化等に、的確に対応した表示を行うものであり、また、それらに応じた最適な太線化や細線化をリアルタイム処理でもって施した表示を行うものであり、あるいは、必要部分の表示に比べて不要部分の表示の鮮明度を変化させることで、例えば必要な文字と不要な文字との相対的な位置関係が把握される程度に、かつ不要な部分の表示により必要部分の読み取りに悪影響を与えない程度に不要部分の表示をマスクし、必要部分はマスクしない表示を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上述の課題を解決するために、
利用者の利用希望に関わる映像を撮像する撮像装置と、該撮像された映像を映像処理する映像処理装置と、該映像処理された映像を表示する表示装置とを有し、
利用者の視覚特性に応じ、映像の拡大縮小、コントラスト調節、画質強調、色変換、2値化、細線化太線化、およびマスク追加のうち少なくともいずれか一つの映像処理をリアルタイムで行うものである。
本発明のマスク追加の映像処理としては、マスク領域を追加する追加しないを指定し、マスク領域の幅を調節し、マスク領域の位置を調節し、さらにマスク領域の濃度調節を行うものである。
また、本発明の色変換の映像処理としては、色変換を行う対象となる色の範囲を調節し、色変換を行う対象となる3原色のうちの1色を選択し、対象の色を白色で表示するか黒色で表示するか、あるいは白色または黒色および元の色とで交互に点滅表示するかを選択するものである。
また、本発明の細線化太線化の映像処理としては、境界線が連続した線または破線となるようにリアルタイムに行うものである。
また、本発明の画質強調の映像処理としては、コントラストが強調および色の彩度が強調され、そのコントラスト強調は、映像の内容によって、映像信号の黒つぶれと白つぶれとを同時に起こす程度の強調をリアルタイムに行うものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の撮像表示器によれば、主に色覚障害者を含む視覚障害者の視認対象物、例えば、表示物や書面などの内容をリアルタイム処理でもって、より的確に把握することが可能となり、その者の生活の質がより改善される一助となすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明による撮像表示器の実施の形態について説明する。
図1は撮像表示器のシステム構成例を示す図である。この図において撮像表示器は、撮像装置100、映像処理装置110、表示装置120からなっている。
撮像装置100は書面などの内容を撮像し、そうして得られた映像信号は映像処理装置110に入力される。なお、撮像装置100はズームレンズを有し、そのズーム機能によって映像を拡大縮小撮像するとしてもよい。
映像処理装置110は入力された映像信号を必要に応じて映像入力インタフェース装置111でYC分離処理やYC/RGB変換処理等を行って映像信号であるR信号、G信号、B信号を得る。本発明の実施例では、映像表示のコントラストの調整のための映像信号処理を、この装置111のなかのYC分離装置で行っている。
なお、撮像装置100からR信号、G信号、B信号が出力される場合等、システム構成が本例と異なる場合は映像入力インタフェース装置111の処理機能等も上述の例と異なる場合が考えられる。
映像入力インタフェース装置111で得られたR信号、G信号、B信号は、第1の輝度変換装置3に入力される。この輝度変換装置3においてR信号、G信号、B信号は、所定のテーブルに基づいた輝度変換が行われ、あるいは輝度変換が行われないで後段へ出力される。この輝度変換によって表示時の彩度や明度が変換されることになる。図2はこの輝度変換装置3と後述する輝度変換装置6のブロック構成例を示す図である。
輝度変換装置3から出力されたR信号、G信号、B信号は、太さ調整装置4に入力される。この太さ調整装置4においてR信号、G信号、B信号は、2値化処理が行われるのと、細線化あるいは太線化の処理とが行われて後段へ出力され、あるいはそれらの処理が行われないで後段へ出力される。図4はこの太さ調整装置4のブロック構成例を示す図である。
太さ調整装置4から出力されたR信号、G信号、B信号は、色変換装置5に入力される。この色変換装置5においてR信号、G信号、B信号は、色変換の処理が行われ、あるいはその処理が行われないで、後段へ出力される。この色変換によって表示時の彩度と明度とが変換され、より具体的には彩度を無くし明度を最大にして白色に変換される場合と、彩度を無くし明度を最小にして黒色に変換され場合とがある。図6はこの色変換装置5のブロック構成例を示す図である。
色変換装置5から出力されたR信号、G信号、B信号は、第2の輝度変換装置6に入力される。この輝度変換装置6においてR信号、G信号、B信号は、所定のテーブルに基づいた輝度変換が行われ、あるいは輝度変換が行われないで後段へ出力される。
輝度変換装置3から出力されたR信号、G信号、B信号は、映像出力インタフェース装置112でRGB/YC変換処理やYC復調処理等を行って復調映像信号を得て、その復調映像信号を表示装置120へ出力する。なお、表示装置120にR信号、G信号、B信号が入力可能な場合等、システム構成が本例と異なる場合は映像出力インタフェース装置112の処理機能等も上述のものと異なる場合が考えられる。
映像処理装置110における上述の各装置は、制御部113からの制御信号によって制御される。制御部113は操作部114からの操作情報に応じた制御を行う。操作部114は、利用者であって、主に色覚障害者を含む視覚障害者が、視認対象物、例えば、表示物や書面などの内容をより的確に把握することが可能となる映像処理の調節・組み合わせ・所定のモード選択等の操作が行えるようにするためもので、その操作に応じて制御部113への制御情報を出力できるようになっている。
表示装置112は、映像処理装置110からの映像信号に応じた映像表示をリアルタイムに行う。
【0007】
映像処理装置110において、上述の図2に例示するように輝度変換装置3あるいは輝度変換装置6は、R、G、B各映像信号ごとに4種の輝度変換テーブル、すなわち、通常・反転・強調・反転強調の輝度変換テーブル1〜4に応じた輝度変換部16〜27と、R、G、B各映像信号ごとの選択装置28〜30とからなる。
図3は通常・反転・強調・反転強調の輝度変換テーブル1〜4の各変換特性例を模式的にグラフで表した図である。この図において、通常の輝度変換テーブル1はグラフ1に対応し、反転の輝度変換テーブル2はグラフ2に対応し、強調の輝度変換テーブル3はグラフ3に対応し、反転強調の輝度変換テーブル4はグラフ4に対応している。
グラフ1の示す通常の輝度変換の変換特性例では、入力信号レベルに対して出力信号レベルは変化していないが、グラフ2の示す反転の輝度変換の変換特性例では、入力信号レベルが大きいほど出力信号レベルは小さくなり、その傾向は信号レベルの全域で線形となっている。
グラフ3またはグラフ4の示す強調または反転強調の輝度変換の変換特性例では、入力信号レベルの最小付近および最大付近で出力レベルの変化が小さく押さえられているのに対し、入力信号レベルの中間付近でより急激に変化するようになっている。本発明では、利用者がこれら特性のテーブルを選択し、選択されたテーブルに応じた輝度変換をおこなわせることが可能となっている。
操作部114と制御部113とによっては、主に色覚障害者を含む視覚障害者の視認対象物、例えば書面に記載された図形や文字あるいは書面表面に近づけられたボールペンやシャープペン等の筆記具の映像の視認性を、その視覚特性に応じて高めることができる。
例えば、物体を視認する場合は反転して強調を行い、あるいはコントラストの強い書面の文字を確認する場合は反転だけをすることがなされる。
【0008】
さらに、上述の図4に例示するように太さ調整装置4は、太さ調整器31〜33、太さ選択器34とからなっている。 図5は太さ調整器31〜33のブロック構成例を示す図である。この図に示すように太さ調整器31〜33は、遅延装置35〜42と、太さ演算装置43からなる。
さらに、上述の図6に例示するように色変換装置5は、カウンタ44、R信号減色装置45、G信号減色装置46、B信号減色装置47、色比較装置48、色決定装置49、色変換定義テーブル50で構成される。
【0009】
図7は、本発明の操作部114の操作パネルにおける、利用者に操作されるつまみや押し下げボタン等の配置の様子を例示した模式図である。
この図において、60は映像表示に所定のマスク領域の追加する追加しないを指定すると共にマスク領域の幅を調節するための幅調節つまみ、61はマスク領域の濃度を調節するための濃度つまみ、62はマスク領域の表示位置を調節するための位置調節つまみである。
63は、所定の調節の程度でもって処理を行う映像処理の組み合わせや調節状態があらかじめ設定された1つ以上のモードのうちの1つを選択し、その選択されたモードで映像処理装置110が動作するようにするためのモード選択つまみである。
64は映像表示のコントラストを調節するためのコントラスト調節つまみ、65は、映像表示のコントラストと色の彩度とを強調する画質強調のための強調ボタンである。
66は、映像表示における、暗い部分と明るい部分との境界の位置を所定のアルゴリズムでもって変化させて、明部が広がって暗部が狭まり、あるいは暗部が広がって明部が狭まるようにして、たとえば書面に記載された文字の線幅が太線化されたり細線化されたりする程度を調節するための太さ調節つまみである。
67は、色変換を行う対象となる色の範囲を調節する範囲調節つまみである。68は、対象となる3原色のうちの1色を選択する対象選択つまみである。69は、対象の色を白色で表示するようにするための白表示ボタンである。70は、対象の色をその色またはその他の色、例えば白色または/および黒色で交互に表示するようにするための点滅表示ボタンである。なお、対象色を表示しないで、例えば白色と黒色の点滅表示とするものであってもかまわない。71は、対象の色を黒色で表示するようにするための黒表示ボタンである。
72は、映像処理装置110から出力する映像信号を静止画信号とするための静止画ボタンである。
【0010】
次に、本発明の映像信号処理について、図を用いてより詳細に説明する。
図8は、本発明の、マスク領域を追加する追加しないの指定、マスク領域の幅調節、マスク領域の位置調節、さらにマスク領域の濃度調節を行えるようにした機能である、マスク機能について説明するための図である。このマスク機能は、上述の幅調節つまみ60、濃度つまみ61、位置調節つまみ62によって操作される。なお、このマスク機能は、本実施例では映像出力インタフェース装置112のYC復調装置において、制御部113からの制御により実現される。
図8において、(a)はマスク領域が追加されていない、すなわちマスクが無い場合の映像表示の様子を表しており、領域a1は、この例では白色の背景となったところに複数行の文字が表示されている。それに対して、図8(b)、(c)、(d)および(e)は、マスクがある場合の映像表示の様子を表している。
図8(b)の映像表示では、領域b1が上述の領域a1と同じように背景が白色の領域となっている。そして、この例では黒色のマスク領域b2およびb3により領域b1の縦方向の幅が狭められているため、図8(a)において表示されている文字のうち上から2行目の文字が表示されている。視覚障害者である利用者は、白色背景の表示が表示画面において広大なことで眩しく感じてしまい、その画面の表示が見づらいことがあるが、このマスクありの場合の表示にすることで白色背景の表示がより少なくなるので、眩しさを感じることがより少なくなり、例えば、図8(b)の表示の例では、その2行目の文字をより読みやすくすることができる。
さらに、本発明では、図8(c)の表示例のように、マスク領域c2およびc3の濃度を、図8(b)のマスク領域b2およびb3よりも薄くして、例えば灰色のような色で表示することができ、この場合、図8(b)の程度までマスク領域の明度を暗くしたり色の彩度を濃くしたりしなくても眩しさにより読み取れないことがなくて、かつ、上から2行目以外の行の文字について、その文字の意味は読み取れないまでもそれらの文字が存在することがわかる程度に表示することができる。そのような表示が望ましい場合としては、どのあたりの、すなわち何行目の文字を読んでいるのかが知りたい場合などである。さらに、利用者の介添え者が正常視覚者であった場合に、その介添えの作業効率を上げることができる。
さらに、図8(d)の表示例のように、マスク領域d2およびd3の幅を広げて、白色の背景の領域d1の幅を狭くすることができる。図示していないが、マスク領域d2およびd3の幅を狭めて、白色の背景の領域d1の幅を広くすることも同様に行うことができる。マスク領域の幅を可変できることで、例えば読み取りたい文字の大きさに応じた領域幅を設定することができ、より文字内容を把握しやすくすることができる。
さらに、図8(e)の表示例のように、マスク領域e2の幅とマスク領域e3の幅とが異なるようにして、白色の背景の領域e1の画面上の位置を可変することができる。マスク領域の位置を可変できることで、例えば読み取りたい文字を上から一行目の文字の位置に合わせられるようにすることができ、文字読み取りの作業効率を向上させることができる。
【0011】
図9および図10は、本発明の、色変換を行う対象となる色の範囲調節、色変換を行う対象となる3原色のうちの1色の選択、対象の色を白色で表示するか、黒色で表示するか、あるいはその他の色(例えば白色または/および黒色)で交互に表示するようにした機能である、色変換機能を説明するための図である。この色変換機能は、上述の範囲調節つまみ67、対象選択つまみ68、白表示ボタン69、点滅表示ボタン70、黒表示ボタン71によって操作される。この色変換機能は、上述の色変換装置5において、制御部113からの制御によって実現される。
図9において、(a)は緑色の背景r1に、赤色の文字r2が表示されたものの様子を示しており、通常の撮像でもって表示されたものも同様となる。このとき、本発明の色変換機能を用いることによって、緑色の背景r1は図9(b)、(c)では色が変わらずにそのまま表示されるが、文字の部分については、図9(b)では白色の文字r3に、また、図9(c)では黒色の文字r3に、色変換されて表示される様子が示されている。この機能により、どのような明るさの背景に文字等が書かれている場合であっても、背景の色の色相と文字の色の色相とが相当程度異なっており、白色および黒色のいずれか一方の色に変換することで、より文字等の内容を認識しやすくすることができる。
ただし、利用者の視覚特性によっては、それでも認識しがたい場合もあり、その場合はさらに本発明の特徴の一つである、白色と黒色とに交互に色変換をして、点滅しているように表示することで、白色固定または黒色固定に色変換しただけでは認識しがたい利用者であっても、その文字等をリアルタイムに認識させることができる。
なお、図10を用いて上述の色変換機能の実用性の一つについて具体的に、すなわち、3つの文字「いろは」が記載された書面に、赤いマーカーで「バツ印」がそれら文字に重なるように記されている場合について説明する。図10において、正常な視覚者が知覚するパターンを(1)に、赤色を黒色に認識する傾向のある色覚障害者の知覚パターンを(2)に模式的に示す。図10(1)では、格子縞で示す赤色のバツ印に重なった文字、例えば、「ろ」の文字を認識できるが、図10(1)では、バツ印が文字と同様に黒色になってしまい、重なった文字、例えば、「ろ」の文字は認識できない。しかしながら、上述の色変換機能を用いて、赤色を白色に変換した映像を表示装置120に表示すれば、色覚障害者であっても正常な視覚者であっても、共に「いろは」の3文字を認識することが可能となり、さらに、赤色を白色と黒色と元の色とで交互に切り替えるようにして点滅表示すれば、「バツ印」が存在しかつその色が赤であるということが、重度の色覚障害者であっても容易に認識することができて、より高度なバリアフリー化を実現することができる。
【0012】
図11は、本発明の、細線化太線化の映像信号処理の機能を説明するための図である。この図において、図11(a)は太線化処理の前の漢字「全」を表示した様子を示し、図11(b)は太線化処理後の漢字「全」を表示した様子を示したものである。図11(a)では、漢字「全」の冠部分とその下の王の部分とは接していないが、図11(b)では、太線化を行ったことによって、その冠部分とその下の王の部分の一番上の横棒とが接近して表示されている。しかしながら本発明の太線化処理によってそれら接近する部分の様子は、右上の円内の拡大図に示すように、太線化処理時に、違う色の境界部分では、隣接する画素の色が変換後の画素の色と同じ色になる場合はその画素の色を変換しないようにした太線化処理を行うことによって、境界線が連続した線または破線となるようにする。そのようにすることで、視覚障害者による文字の認識率をリアルタイムでもって格段に向上させることができる。
さらに、図11(c)は、細線化処理の前の、矢印を表示した様子を示し、図11(d)は細線化処理後の、矢印を表示した様子を示したものである。図11(a)では、矢印部分の白色の領域が大きな面積を占めており、視覚障害者にとっては眩しくなって矢印であると認識できない場合があるが、図11(b)では、細線化を行ったことによって、眩しくなくなることで、矢印と認識できるようになる。この場合、太線化時に境界線が連続した線または破線となるようにした処理によって、矢印が細くなりすぎて消えてしまうことなく、連続した線または破線で構成される程度に表示可能である。
【0013】
次に、本発明の映像信号処理のうち、コントラスト調整と画質強調処理の詳細について説明する。
このうちコントラスト調整は、コントラスト調節つまみ64に応じて調整され、利用者ごとのさまざまな視覚特性により最適な表示を行うことができる。また、画質強調は、強調ボタン65を操作することによって映像表示のコントラストが強調され、さらに、色の彩度が強調されることで、利用者が識別できなかった事物の形あるいは色を識別可能とする。なお、このコントラスト強調は、映像の内容によって映像信号の黒つぶれと白つぶれとを同時に起こす程度の強調をすることで、より識別可能性を高めた映像表示をリアルタイムに得ることができる。
なお、本発明の実施例では、輝度変換装置は第1の輝度変換装置3と第2の輝度変換装置6との2つを設けており、そうすることで、上述の映像変換処理を所望の組み合わせでもって実現可能なようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 撮像表示器のシステム構成例を示す図である。
【図2】 輝度変換装置3、6のブロック構成例を示す図である。
【図3】 通常・反転・強調・反転強調の輝度変換テーブル1〜4の各変換特性例を模式的にグラフで表した図である。
【図4】 太さ調整装置4のブロック構成例を示す図である。
【図5】 太さ調整器31〜33のブロック構成例を示す図である。
【図6】 色変換装置5のブロック構成例を示す図である。
【図7】 本発明の操作部114の操作パネルにおける、利用者に操作されるつまみや押し下げボタン等の配置の様子を例示した模式図である。
【図8】 本発明のマスク機能について説明するための図である。
【図9】 本発明の色変換機能を説明するための図である。
【図10】 本発明の色変換機能を説明するための図である。
【図11】 本発明の細線化太線化の映像信号処理の機能を説明するための図である。
【符号の説明】
【0015】
3,6:輝度変換装置、 4:太さ調整装置、 5:色変換装置、 100:撮像装置、 110:映像処理装置、 111:映像入力インタフェース装置、 112:映像出力インタフェース装置、 113:制御部、 114:操作部、 120:表示装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に色覚障害者を含む視覚障害者向けに、その者の視認対象物、例えば、表示物や書面などの内容をより的確に把握することが可能となるように映像処理が施された映像を表示するための撮像表示器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像表示器に関する技術として特許公開公報に記載されたものがあり、例えば、特開2004−336229号公報(特許文献1)、特開平11−175050号公報(特許文献2)、特開平7−234919号公報(特許文献3)、および特開2005−216278号公報(特許文献4)に記載のものがある。
このうち特許文献1においては、拡大表示し、拡大表示する画像内の文字等の輪郭を明確にする処理を行うことによって、画像内の文字等の輪郭が不鮮明になることが防止され、読みやすくなり、さらに、拡大表示する画像内の文字等の色を任意の色に変更する処理を行うこととし、この場合には、使用者の希望する色の文字等を表示することができ、例えば、色覚障害者等に有用であるとしている。
また、特許文献2においては、色覚障害者のために識別しにくい表示色を他の表示色へ代替えすることとしている。
また、特許文献3においては、読みたい文字列を1文字1文字ずつ識別分離して処理し、使用者が最も読みやすい配列に並べて、表示画面に可能な限り多くの文字を拡大表示することとし、特に、不要な文字を削除して必要な文字のみを表示することとしている。
しかしながら、特許文献1では、文字等の輪郭を明確にする処理や任意の色に変更する処理についての具体的な実現手段を表してはいない。
また、特許文献2では、各障害者の視覚特性が様々であり、また、体調等によって変動することへの配慮がなされておらず、代替される他の表示色が変化して常に最適な表示色を設定可能とした構成を示したものとはなっていない。
また、特許文献3では、文字を識別分離処理する構成とし、不要な文字を削除するとしているが、このことにより不要な文字と不要でない文字との相対的な位置関係が表示されなくなってしまうことでは、撮像されている文書等のどこを読んでいるのかを的確に判断することが難しくなってしまう。
また、特許文献4では、携帯型の画像変換装置についての記載がある。
【特許文献1】特開2004−336229号公報
【特許文献2】特開平11−175050号公報
【特許文献3】特開平7−234919号公報
【特許文献4】特開2005−216278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、主に色覚障害者を含む視覚障害者向けに、その者の視認対象物、例えば、表示物や書面などの内容をリアルタイムでもって、より的確に把握するための映像処理が施された映像を表示できるようにすることである。
そのため本発明においては、映像を撮像する撮像装置と、その撮像された映像を映像処理する映像処理装置と、該映像処理された映像を表示する表示装置とを有し、その映像処理によって、各障害者の様々な視覚特性や体調等によるその変動、あるいは周囲環境の変化等に、的確に対応した表示を行うものであり、また、それらに応じた最適な太線化や細線化をリアルタイム処理でもって施した表示を行うものであり、あるいは、必要部分の表示に比べて不要部分の表示の鮮明度を変化させることで、例えば必要な文字と不要な文字との相対的な位置関係が把握される程度に、かつ不要な部分の表示により必要部分の読み取りに悪影響を与えない程度に不要部分の表示をマスクし、必要部分はマスクしない表示を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上述の課題を解決するために、
利用者の利用希望に関わる映像を撮像する撮像装置と、該撮像された映像を映像処理する映像処理装置と、該映像処理された映像を表示する表示装置とを有し、
利用者の視覚特性に応じ、映像の拡大縮小、コントラスト調節、画質強調、色変換、2値化、細線化太線化、およびマスク追加のうち少なくともいずれか一つの映像処理をリアルタイムで行うものである。
本発明のマスク追加の映像処理としては、マスク領域を追加する追加しないを指定し、マスク領域の幅を調節し、マスク領域の位置を調節し、さらにマスク領域の濃度調節を行うものである。
また、本発明の色変換の映像処理としては、色変換を行う対象となる色の範囲を調節し、色変換を行う対象となる3原色のうちの1色を選択し、対象の色を白色で表示するか黒色で表示するか、あるいは白色または黒色および元の色とで交互に点滅表示するかを選択するものである。
また、本発明の細線化太線化の映像処理としては、境界線が連続した線または破線となるようにリアルタイムに行うものである。
また、本発明の画質強調の映像処理としては、コントラストが強調および色の彩度が強調され、そのコントラスト強調は、映像の内容によって、映像信号の黒つぶれと白つぶれとを同時に起こす程度の強調をリアルタイムに行うものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の撮像表示器によれば、主に色覚障害者を含む視覚障害者の視認対象物、例えば、表示物や書面などの内容をリアルタイム処理でもって、より的確に把握することが可能となり、その者の生活の質がより改善される一助となすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明による撮像表示器の実施の形態について説明する。
図1は撮像表示器のシステム構成例を示す図である。この図において撮像表示器は、撮像装置100、映像処理装置110、表示装置120からなっている。
撮像装置100は書面などの内容を撮像し、そうして得られた映像信号は映像処理装置110に入力される。なお、撮像装置100はズームレンズを有し、そのズーム機能によって映像を拡大縮小撮像するとしてもよい。
映像処理装置110は入力された映像信号を必要に応じて映像入力インタフェース装置111でYC分離処理やYC/RGB変換処理等を行って映像信号であるR信号、G信号、B信号を得る。本発明の実施例では、映像表示のコントラストの調整のための映像信号処理を、この装置111のなかのYC分離装置で行っている。
なお、撮像装置100からR信号、G信号、B信号が出力される場合等、システム構成が本例と異なる場合は映像入力インタフェース装置111の処理機能等も上述の例と異なる場合が考えられる。
映像入力インタフェース装置111で得られたR信号、G信号、B信号は、第1の輝度変換装置3に入力される。この輝度変換装置3においてR信号、G信号、B信号は、所定のテーブルに基づいた輝度変換が行われ、あるいは輝度変換が行われないで後段へ出力される。この輝度変換によって表示時の彩度や明度が変換されることになる。図2はこの輝度変換装置3と後述する輝度変換装置6のブロック構成例を示す図である。
輝度変換装置3から出力されたR信号、G信号、B信号は、太さ調整装置4に入力される。この太さ調整装置4においてR信号、G信号、B信号は、2値化処理が行われるのと、細線化あるいは太線化の処理とが行われて後段へ出力され、あるいはそれらの処理が行われないで後段へ出力される。図4はこの太さ調整装置4のブロック構成例を示す図である。
太さ調整装置4から出力されたR信号、G信号、B信号は、色変換装置5に入力される。この色変換装置5においてR信号、G信号、B信号は、色変換の処理が行われ、あるいはその処理が行われないで、後段へ出力される。この色変換によって表示時の彩度と明度とが変換され、より具体的には彩度を無くし明度を最大にして白色に変換される場合と、彩度を無くし明度を最小にして黒色に変換され場合とがある。図6はこの色変換装置5のブロック構成例を示す図である。
色変換装置5から出力されたR信号、G信号、B信号は、第2の輝度変換装置6に入力される。この輝度変換装置6においてR信号、G信号、B信号は、所定のテーブルに基づいた輝度変換が行われ、あるいは輝度変換が行われないで後段へ出力される。
輝度変換装置3から出力されたR信号、G信号、B信号は、映像出力インタフェース装置112でRGB/YC変換処理やYC復調処理等を行って復調映像信号を得て、その復調映像信号を表示装置120へ出力する。なお、表示装置120にR信号、G信号、B信号が入力可能な場合等、システム構成が本例と異なる場合は映像出力インタフェース装置112の処理機能等も上述のものと異なる場合が考えられる。
映像処理装置110における上述の各装置は、制御部113からの制御信号によって制御される。制御部113は操作部114からの操作情報に応じた制御を行う。操作部114は、利用者であって、主に色覚障害者を含む視覚障害者が、視認対象物、例えば、表示物や書面などの内容をより的確に把握することが可能となる映像処理の調節・組み合わせ・所定のモード選択等の操作が行えるようにするためもので、その操作に応じて制御部113への制御情報を出力できるようになっている。
表示装置112は、映像処理装置110からの映像信号に応じた映像表示をリアルタイムに行う。
【0007】
映像処理装置110において、上述の図2に例示するように輝度変換装置3あるいは輝度変換装置6は、R、G、B各映像信号ごとに4種の輝度変換テーブル、すなわち、通常・反転・強調・反転強調の輝度変換テーブル1〜4に応じた輝度変換部16〜27と、R、G、B各映像信号ごとの選択装置28〜30とからなる。
図3は通常・反転・強調・反転強調の輝度変換テーブル1〜4の各変換特性例を模式的にグラフで表した図である。この図において、通常の輝度変換テーブル1はグラフ1に対応し、反転の輝度変換テーブル2はグラフ2に対応し、強調の輝度変換テーブル3はグラフ3に対応し、反転強調の輝度変換テーブル4はグラフ4に対応している。
グラフ1の示す通常の輝度変換の変換特性例では、入力信号レベルに対して出力信号レベルは変化していないが、グラフ2の示す反転の輝度変換の変換特性例では、入力信号レベルが大きいほど出力信号レベルは小さくなり、その傾向は信号レベルの全域で線形となっている。
グラフ3またはグラフ4の示す強調または反転強調の輝度変換の変換特性例では、入力信号レベルの最小付近および最大付近で出力レベルの変化が小さく押さえられているのに対し、入力信号レベルの中間付近でより急激に変化するようになっている。本発明では、利用者がこれら特性のテーブルを選択し、選択されたテーブルに応じた輝度変換をおこなわせることが可能となっている。
操作部114と制御部113とによっては、主に色覚障害者を含む視覚障害者の視認対象物、例えば書面に記載された図形や文字あるいは書面表面に近づけられたボールペンやシャープペン等の筆記具の映像の視認性を、その視覚特性に応じて高めることができる。
例えば、物体を視認する場合は反転して強調を行い、あるいはコントラストの強い書面の文字を確認する場合は反転だけをすることがなされる。
【0008】
さらに、上述の図4に例示するように太さ調整装置4は、太さ調整器31〜33、太さ選択器34とからなっている。 図5は太さ調整器31〜33のブロック構成例を示す図である。この図に示すように太さ調整器31〜33は、遅延装置35〜42と、太さ演算装置43からなる。
さらに、上述の図6に例示するように色変換装置5は、カウンタ44、R信号減色装置45、G信号減色装置46、B信号減色装置47、色比較装置48、色決定装置49、色変換定義テーブル50で構成される。
【0009】
図7は、本発明の操作部114の操作パネルにおける、利用者に操作されるつまみや押し下げボタン等の配置の様子を例示した模式図である。
この図において、60は映像表示に所定のマスク領域の追加する追加しないを指定すると共にマスク領域の幅を調節するための幅調節つまみ、61はマスク領域の濃度を調節するための濃度つまみ、62はマスク領域の表示位置を調節するための位置調節つまみである。
63は、所定の調節の程度でもって処理を行う映像処理の組み合わせや調節状態があらかじめ設定された1つ以上のモードのうちの1つを選択し、その選択されたモードで映像処理装置110が動作するようにするためのモード選択つまみである。
64は映像表示のコントラストを調節するためのコントラスト調節つまみ、65は、映像表示のコントラストと色の彩度とを強調する画質強調のための強調ボタンである。
66は、映像表示における、暗い部分と明るい部分との境界の位置を所定のアルゴリズムでもって変化させて、明部が広がって暗部が狭まり、あるいは暗部が広がって明部が狭まるようにして、たとえば書面に記載された文字の線幅が太線化されたり細線化されたりする程度を調節するための太さ調節つまみである。
67は、色変換を行う対象となる色の範囲を調節する範囲調節つまみである。68は、対象となる3原色のうちの1色を選択する対象選択つまみである。69は、対象の色を白色で表示するようにするための白表示ボタンである。70は、対象の色をその色またはその他の色、例えば白色または/および黒色で交互に表示するようにするための点滅表示ボタンである。なお、対象色を表示しないで、例えば白色と黒色の点滅表示とするものであってもかまわない。71は、対象の色を黒色で表示するようにするための黒表示ボタンである。
72は、映像処理装置110から出力する映像信号を静止画信号とするための静止画ボタンである。
【0010】
次に、本発明の映像信号処理について、図を用いてより詳細に説明する。
図8は、本発明の、マスク領域を追加する追加しないの指定、マスク領域の幅調節、マスク領域の位置調節、さらにマスク領域の濃度調節を行えるようにした機能である、マスク機能について説明するための図である。このマスク機能は、上述の幅調節つまみ60、濃度つまみ61、位置調節つまみ62によって操作される。なお、このマスク機能は、本実施例では映像出力インタフェース装置112のYC復調装置において、制御部113からの制御により実現される。
図8において、(a)はマスク領域が追加されていない、すなわちマスクが無い場合の映像表示の様子を表しており、領域a1は、この例では白色の背景となったところに複数行の文字が表示されている。それに対して、図8(b)、(c)、(d)および(e)は、マスクがある場合の映像表示の様子を表している。
図8(b)の映像表示では、領域b1が上述の領域a1と同じように背景が白色の領域となっている。そして、この例では黒色のマスク領域b2およびb3により領域b1の縦方向の幅が狭められているため、図8(a)において表示されている文字のうち上から2行目の文字が表示されている。視覚障害者である利用者は、白色背景の表示が表示画面において広大なことで眩しく感じてしまい、その画面の表示が見づらいことがあるが、このマスクありの場合の表示にすることで白色背景の表示がより少なくなるので、眩しさを感じることがより少なくなり、例えば、図8(b)の表示の例では、その2行目の文字をより読みやすくすることができる。
さらに、本発明では、図8(c)の表示例のように、マスク領域c2およびc3の濃度を、図8(b)のマスク領域b2およびb3よりも薄くして、例えば灰色のような色で表示することができ、この場合、図8(b)の程度までマスク領域の明度を暗くしたり色の彩度を濃くしたりしなくても眩しさにより読み取れないことがなくて、かつ、上から2行目以外の行の文字について、その文字の意味は読み取れないまでもそれらの文字が存在することがわかる程度に表示することができる。そのような表示が望ましい場合としては、どのあたりの、すなわち何行目の文字を読んでいるのかが知りたい場合などである。さらに、利用者の介添え者が正常視覚者であった場合に、その介添えの作業効率を上げることができる。
さらに、図8(d)の表示例のように、マスク領域d2およびd3の幅を広げて、白色の背景の領域d1の幅を狭くすることができる。図示していないが、マスク領域d2およびd3の幅を狭めて、白色の背景の領域d1の幅を広くすることも同様に行うことができる。マスク領域の幅を可変できることで、例えば読み取りたい文字の大きさに応じた領域幅を設定することができ、より文字内容を把握しやすくすることができる。
さらに、図8(e)の表示例のように、マスク領域e2の幅とマスク領域e3の幅とが異なるようにして、白色の背景の領域e1の画面上の位置を可変することができる。マスク領域の位置を可変できることで、例えば読み取りたい文字を上から一行目の文字の位置に合わせられるようにすることができ、文字読み取りの作業効率を向上させることができる。
【0011】
図9および図10は、本発明の、色変換を行う対象となる色の範囲調節、色変換を行う対象となる3原色のうちの1色の選択、対象の色を白色で表示するか、黒色で表示するか、あるいはその他の色(例えば白色または/および黒色)で交互に表示するようにした機能である、色変換機能を説明するための図である。この色変換機能は、上述の範囲調節つまみ67、対象選択つまみ68、白表示ボタン69、点滅表示ボタン70、黒表示ボタン71によって操作される。この色変換機能は、上述の色変換装置5において、制御部113からの制御によって実現される。
図9において、(a)は緑色の背景r1に、赤色の文字r2が表示されたものの様子を示しており、通常の撮像でもって表示されたものも同様となる。このとき、本発明の色変換機能を用いることによって、緑色の背景r1は図9(b)、(c)では色が変わらずにそのまま表示されるが、文字の部分については、図9(b)では白色の文字r3に、また、図9(c)では黒色の文字r3に、色変換されて表示される様子が示されている。この機能により、どのような明るさの背景に文字等が書かれている場合であっても、背景の色の色相と文字の色の色相とが相当程度異なっており、白色および黒色のいずれか一方の色に変換することで、より文字等の内容を認識しやすくすることができる。
ただし、利用者の視覚特性によっては、それでも認識しがたい場合もあり、その場合はさらに本発明の特徴の一つである、白色と黒色とに交互に色変換をして、点滅しているように表示することで、白色固定または黒色固定に色変換しただけでは認識しがたい利用者であっても、その文字等をリアルタイムに認識させることができる。
なお、図10を用いて上述の色変換機能の実用性の一つについて具体的に、すなわち、3つの文字「いろは」が記載された書面に、赤いマーカーで「バツ印」がそれら文字に重なるように記されている場合について説明する。図10において、正常な視覚者が知覚するパターンを(1)に、赤色を黒色に認識する傾向のある色覚障害者の知覚パターンを(2)に模式的に示す。図10(1)では、格子縞で示す赤色のバツ印に重なった文字、例えば、「ろ」の文字を認識できるが、図10(1)では、バツ印が文字と同様に黒色になってしまい、重なった文字、例えば、「ろ」の文字は認識できない。しかしながら、上述の色変換機能を用いて、赤色を白色に変換した映像を表示装置120に表示すれば、色覚障害者であっても正常な視覚者であっても、共に「いろは」の3文字を認識することが可能となり、さらに、赤色を白色と黒色と元の色とで交互に切り替えるようにして点滅表示すれば、「バツ印」が存在しかつその色が赤であるということが、重度の色覚障害者であっても容易に認識することができて、より高度なバリアフリー化を実現することができる。
【0012】
図11は、本発明の、細線化太線化の映像信号処理の機能を説明するための図である。この図において、図11(a)は太線化処理の前の漢字「全」を表示した様子を示し、図11(b)は太線化処理後の漢字「全」を表示した様子を示したものである。図11(a)では、漢字「全」の冠部分とその下の王の部分とは接していないが、図11(b)では、太線化を行ったことによって、その冠部分とその下の王の部分の一番上の横棒とが接近して表示されている。しかしながら本発明の太線化処理によってそれら接近する部分の様子は、右上の円内の拡大図に示すように、太線化処理時に、違う色の境界部分では、隣接する画素の色が変換後の画素の色と同じ色になる場合はその画素の色を変換しないようにした太線化処理を行うことによって、境界線が連続した線または破線となるようにする。そのようにすることで、視覚障害者による文字の認識率をリアルタイムでもって格段に向上させることができる。
さらに、図11(c)は、細線化処理の前の、矢印を表示した様子を示し、図11(d)は細線化処理後の、矢印を表示した様子を示したものである。図11(a)では、矢印部分の白色の領域が大きな面積を占めており、視覚障害者にとっては眩しくなって矢印であると認識できない場合があるが、図11(b)では、細線化を行ったことによって、眩しくなくなることで、矢印と認識できるようになる。この場合、太線化時に境界線が連続した線または破線となるようにした処理によって、矢印が細くなりすぎて消えてしまうことなく、連続した線または破線で構成される程度に表示可能である。
【0013】
次に、本発明の映像信号処理のうち、コントラスト調整と画質強調処理の詳細について説明する。
このうちコントラスト調整は、コントラスト調節つまみ64に応じて調整され、利用者ごとのさまざまな視覚特性により最適な表示を行うことができる。また、画質強調は、強調ボタン65を操作することによって映像表示のコントラストが強調され、さらに、色の彩度が強調されることで、利用者が識別できなかった事物の形あるいは色を識別可能とする。なお、このコントラスト強調は、映像の内容によって映像信号の黒つぶれと白つぶれとを同時に起こす程度の強調をすることで、より識別可能性を高めた映像表示をリアルタイムに得ることができる。
なお、本発明の実施例では、輝度変換装置は第1の輝度変換装置3と第2の輝度変換装置6との2つを設けており、そうすることで、上述の映像変換処理を所望の組み合わせでもって実現可能なようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 撮像表示器のシステム構成例を示す図である。
【図2】 輝度変換装置3、6のブロック構成例を示す図である。
【図3】 通常・反転・強調・反転強調の輝度変換テーブル1〜4の各変換特性例を模式的にグラフで表した図である。
【図4】 太さ調整装置4のブロック構成例を示す図である。
【図5】 太さ調整器31〜33のブロック構成例を示す図である。
【図6】 色変換装置5のブロック構成例を示す図である。
【図7】 本発明の操作部114の操作パネルにおける、利用者に操作されるつまみや押し下げボタン等の配置の様子を例示した模式図である。
【図8】 本発明のマスク機能について説明するための図である。
【図9】 本発明の色変換機能を説明するための図である。
【図10】 本発明の色変換機能を説明するための図である。
【図11】 本発明の細線化太線化の映像信号処理の機能を説明するための図である。
【符号の説明】
【0015】
3,6:輝度変換装置、 4:太さ調整装置、 5:色変換装置、 100:撮像装置、 110:映像処理装置、 111:映像入力インタフェース装置、 112:映像出力インタフェース装置、 113:制御部、 114:操作部、 120:表示装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の利用希望に関わる映像を撮像する撮像装置と、該撮像された映像を映像処理する映像処理装置と、該映像処理された映像を表示する表示装置とを有し、
前記利用者の視覚特性に応じ、映像の拡大縮小、コントラスト調節、画質強調、色変換、2値化、細線化太線化、およびマスク追加のうち少なくともいずれか一つの映像処理をリアルタイムで行うことを特徴とする撮像表示器。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像表示器において、前記マスク追加の映像処理は、マスク領域を追加する追加しないを指定し、前記マスク領域の幅を調節し、前記マスク領域の位置を調節し、さらに前記マスク領域の濃度調節を行うことを特徴とする撮像表示器。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像表示器において、前記色変換の映像処理は、前期色変換を行う対象となる色の範囲を調節し、前期色変換を行う対象となる3原色のうちの1色を選択し、前記対象の色を白色で表示するか黒色で表示するか、あるいはその他の色(例えば白色または/および黒色)とで交互に表示するかを選択して行うことを特徴とする撮像表示器。
【請求項4】
請求項1に記載の撮像表示器において、前記細線化太線化の映像処理は、境界線が連続した線または破線となるようにリアルタイムに行うことを特徴とする撮像表示器。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像表示器において、前記画質強調の映像処理は、コントラストが強調および色の彩度が強調され、該コントラスト強調は映像信号の黒つぶれと白つぶれとを同時に起こす程度の強調をリアルタイムに行うことを特徴とする撮像表示器。
【請求項1】
利用者の利用希望に関わる映像を撮像する撮像装置と、該撮像された映像を映像処理する映像処理装置と、該映像処理された映像を表示する表示装置とを有し、
前記利用者の視覚特性に応じ、映像の拡大縮小、コントラスト調節、画質強調、色変換、2値化、細線化太線化、およびマスク追加のうち少なくともいずれか一つの映像処理をリアルタイムで行うことを特徴とする撮像表示器。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像表示器において、前記マスク追加の映像処理は、マスク領域を追加する追加しないを指定し、前記マスク領域の幅を調節し、前記マスク領域の位置を調節し、さらに前記マスク領域の濃度調節を行うことを特徴とする撮像表示器。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像表示器において、前記色変換の映像処理は、前期色変換を行う対象となる色の範囲を調節し、前期色変換を行う対象となる3原色のうちの1色を選択し、前記対象の色を白色で表示するか黒色で表示するか、あるいはその他の色(例えば白色または/および黒色)とで交互に表示するかを選択して行うことを特徴とする撮像表示器。
【請求項4】
請求項1に記載の撮像表示器において、前記細線化太線化の映像処理は、境界線が連続した線または破線となるようにリアルタイムに行うことを特徴とする撮像表示器。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像表示器において、前記画質強調の映像処理は、コントラストが強調および色の彩度が強調され、該コントラスト強調は映像信号の黒つぶれと白つぶれとを同時に起こす程度の強調をリアルタイムに行うことを特徴とする撮像表示器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−220057(P2007−220057A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73501(P2006−73501)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(504080227)株式会社インフォメーションヒーローズ (2)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(504080227)株式会社インフォメーションヒーローズ (2)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]