説明

攪拌装置と分析装置

【課題】液体の攪拌効率を向上させることができ、構造が簡単で、小型化が可能な攪拌装置と分析装置を提供すること。
【解決手段】攪拌対象の液体を保持する容器と、液体へ音波を照射すると共に、音波によって液体を攪拌する音波発生手段とを備えた攪拌装置と分析装置。攪拌装置20の表面弾性波素子22は、容器7に接触する接触面を有する圧電基板22aと、圧電基板上に形成され、液体を攪拌する音波を発生する発音部22bと、圧電基板上の接触面以外の部分に形成され、外部から供給される発音部の駆動電力を無線で受電する受電部22cとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌装置と分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、いわゆるキャリーオーバーを回避すべく検体と試薬を含む液体試料を音波によって被接触で攪拌するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この分析装置は、恒温水を保持した浴槽内に反応容器を配置すると共に、反応容器外部の浴槽に配置した音源から照射される音波によって反応容器に保持された液体の攪拌,混合を行っている。
【0003】
【特許文献1】特許第3168886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された分析装置は、音源と反応容器とが恒温水を介して離隔配置され、恒温水による音波の吸収に伴う減衰によって液体の攪拌効率が悪いという問題があった。また、特許文献1の分析装置は、浴槽に液密に取り付けられた攪拌装置の音源が、有線接続されたドライバによって駆動されるため、攪拌装置の構造が複雑となり、小型化が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液体の攪拌効率を向上させることができ、構造が簡単で、小型化が可能な攪拌装置と分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る攪拌装置は、攪拌対象の液体を保持する容器と、前記液体へ音波を照射すると共に、当該音波によって液体を攪拌する音波発生手段と、を備えた攪拌装置であって、前記音波発生手段は、前記容器に接触する接触面を有する圧電基板と、前記圧電基板上に形成され、前記液体を攪拌する音波を発生する発音部と、前記圧電基板上の前記接触面以外の部分に形成され、外部から供給される前記発音部の駆動電力を無線で受電する受電部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記発音部は、前記接触面に対向する前記圧電基板上の面に前記受電部と共に形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記受電部は、前記圧電基板の外周に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記発音部は、前記接触面に形成され、前記受電部は、前記接触面に対向する前記圧電基板上の面に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記受電部は、受信アンテナであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記発音部は、櫛歯状電極であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波は、表面弾性波又はバルク波であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、前記容器に固定されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、前記液体を攪拌する際に前記容器の外側に接触することを特徴とする。
【0015】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項10に係る分析装置は、複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、前記攪拌装置を用いて検体と試薬との反応液を光学的に分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる攪拌装置は、圧電基板上に発音部が形成され、圧電基板上の接触面以外の部分に受電部が形成された圧電基板を有する音波発生手段が、接触面によって容器に取り付けられ、音源となる発音部と容器とが接近しており、分析装置は、音源となる発音部と容器とが接近した前記攪拌装置を用いて検体と試薬との反応液を光学的に分析する。このため、本発明の攪拌装置と分析装置は、音波の伝搬経路が短く、音波の減衰が抑制されるので、液体の攪拌効率を向上させることができ、構造が簡単で、小型化が可能になるという効果を奏する。また、本発明の攪拌装置と分析装置は、容器と接する面以外に受電手段が構成されるため、外部からの電力供給を容易にすると共に、高い無線伝送効率を確保することができるという効果をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の攪拌装置と分析装置にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、実施の形態1の自動分析装置で使用する反応容器及び反応ホイールの一部を攪拌装置の概略構成図と共に示す斜視図である。図3は、実施の形態1の攪拌装置の構成を示すブロック図を反応容器の斜視図と共に示す図である。図4は、図3の反応容器の側壁に取り付ける表面弾性波素子の斜視図である。
【0018】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、測光装置10、洗浄装置11、試薬分注機構12及び試薬テーブル13が設けられ、攪拌装置20を備えている。
【0019】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0020】
検体分注機構5は、反応ホイール6に保持された複数の反応容器7に検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応容器7に分注する。
【0021】
反応ホイール6は、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って複数の凹部6aが等間隔で設けられている。反応ホイール6は、各凹部6aの半径方向両側に測定光が通過する開口6b(図2参照)が形成されている。反応ホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に凹部6aの1個分回転する。反応ホイール6の外周近傍には、測光装置10、洗浄装置11及び攪拌装置20が配置されている。
【0022】
反応容器7は、容量が数nL〜数十μLと微量な容器であり、測光装置10の光源10aから出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器7は、図2及び図3に示すように、側壁7a,7bと底壁7c(図5参照)とによって液体を保持する水平断面が正方形の液体保持部7dが形成され、液体保持部7dの上部に開口7eを有する四角筒形状のキュベットである。反応容器7は、側壁7aに取り付けられる表面弾性波素子22と共に攪拌装置20を構成しており、液体保持部7dの内面には検体や試薬等の液体に対する親和性処理が施されている。反応容器7は、側壁7aを反応ホイール6の半径方向に向けると共に、側壁7bを反応ホイール6の周方向に向けて、凹部6aに配置される。
【0023】
測光装置10は、図1に示すように、反応ホイール6の外周近傍に配置され、反応容器7に保持された液体を分析する分析光(340〜800nm)を出射する光源と、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有している。測光装置10は、前記光源と受光器が反応ホイール6の凹部6aを挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。
【0024】
洗浄装置11は、反応容器7から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置11は、測光終了後の反応容器7から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置11は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器7の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0025】
試薬分注機構12は、反応ホイール6に保持された複数の反応容器7に試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0026】
試薬テーブル13は、検体テーブル3及び反応ホイール6とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室13aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室13aは、試薬容器14が着脱自在に収納される。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル(図示せず)が貼付されている。
【0027】
ここで、試薬テーブル13の外周には、図1に示すように、試薬容器14に貼付した前記バーコードラベルに記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部16へ出力する読取装置15が設置されている。
【0028】
制御部16は、検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、測光装置10、洗浄装置11、試薬分注機構12、試薬テーブル13、読取装置15、分析部17、入力部18、表示部19及び攪拌装置20等と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記バーコードラベルの記録から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。
【0029】
分析部17は、制御部16を介して測光装置10に接続され、受光器が受光した光量に基づく反応容器7内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。入力部18は、制御部16へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部19は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0030】
攪拌装置20は、表面弾性波素子22を駆動して発生する音波によって反応容器7に保持された液体を攪拌するもので、反応容器7の他に、図2及び図3に示すように、表面弾性波素子22に電力を送電する送電体21と、表面弾性波素子22とを有している。
【0031】
送電体21は、RF送信アンテナ21a、駆動回路21b及びコントローラ21cを有している。送電体21は、数MHz〜数百MHz程度の高周波交流電源から供給される電力をRF送信アンテナ21aから駆動信号として表面弾性波素子22に発信する。RF送信アンテナ21aは、反応ホイール6の凹部6a側壁に取り付けられている。このため、攪拌装置20は、例えば、コントローラ21cによって制御されるスイッチを切り替えることにより、供給される電力を複数のRF送信アンテナ21aの中から特定のRF送信アンテナ21aに出力するように切り替える。
【0032】
駆動回路21bは、コントローラ21cからの制御信号に基づいて発振周波数を変更可能な発振回路を有しており、数十MHz〜数百MHz程度の高周波の発振信号をRF送信アンテナ21aへ出力する。ここで、RF送信アンテナ21aと駆動回路21bとの間は、反応ホイール6が回転しても電力が電送されるように、接触電極を介して接続されている。コントローラ21cは、駆動回路21bの作動を制御し、例えば、表面弾性波素子22が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、コントローラ21cは、内蔵したタイマに従って駆動回路21bが発振する発振信号の周波数を切り替えることができる。
【0033】
表面弾性波素子22は、RF送信アンテナ21aから発信される駆動信号(電力)を受信して音波を発生する音波発生手段である。表面弾性波素子22は、図3及び図4に示すように、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等からなる圧電基板22aの同一面上に櫛歯状電極(IDT)からなる振動子22bとアンテナ22cが形成されている。このとき、振動子22bとアンテナ22cは、表面弾性波素子22を反応容器7に取り付ける圧電基板22aの接触面F(図6参照)と対向する面に形成されている。振動子22bは、RF送信アンテナ21aから発信される駆動信号(電力)をアンテナ22cで受信することによって音波を発生する発音部である。振動子22bは、反応容器7及び圧電基板22aを介して反応容器7が保持した液体に隣接する反応容器7の外側に配置される。即ち、表面弾性波素子22は、図5及び図6に示すように、振動子22bとアンテナ22cを外側に向け、エポキシ樹脂や紫外線硬化樹脂等の音響整合層23を介して反応容器7の側壁7aに取り付けられる。なお、表面弾性波素子22は、圧電基板22a,振動子22b及びアンテナ22cの厚みの他、音響整合層23の厚みを含め、構成を明示するために実際の厚さを無視して模式的に描いており、他の実施の形態においても同様である。
【0034】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転する反応ホイール6によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器7に試薬分注機構12が試薬容器14から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、反応ホイール6によって周方向に沿って搬送され、検体分注機構5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。そして、検体が分注された反応容器7は、反応ホイール6によって攪拌装置20へ搬送され、分注された試薬と検体が順次攪拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液は、反応ホイール6が再び回転したときに測光装置10を通過し、光源から出射された分析光が透過する。このとき、反応容器7内の試薬と検体の反応液は、受光部で側光され、制御部16によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄装置11によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0035】
このとき、攪拌装置20は、制御部16を介して入力部18から予め入力された制御信号に基づき、反応ホイール6の停止時にコントローラ21cが駆動回路21bに駆動信号を入力する。これにより、表面弾性波素子22は、入力される駆動信号の周波数に応じて振動子22bが駆動され、図6に示すように、バルク波Wbを誘起する。誘起されたバルク波Wbは、圧電基板22a,音響整合層23を伝搬してから反応容器7の側壁7aへ入射し、側壁7a内を矢印で示すように伝搬した後、音響インピーダンスが近い液体Lへ漏れ出してゆく。
【0036】
この結果、漏れ出したバルク波によって反応容器7内の液体L中には、図5に示すように、振動子22bの斜め上方向に向かう流れFccが生じると共に、振動子22bの斜め下方向に向かう流れFcwが生じ、分注された試薬と検体とが攪拌される。
【0037】
このとき、攪拌装置20は、振動子22bを液体Lに隣接する側壁7aに向け、表面弾性波素子22が音響整合層23を介して側壁7aに取り付けられている。このため、攪拌装置20及び自動分析装置1は、振動子22bと反応容器7とが接し、振動子22bが発生した音波が側壁7aを介して隣接する液体Lに入射する。従って、攪拌装置20及び自動分析装置1は、音波の伝搬経路が短く、伝搬経路上での音波の減衰が抑制されるので、液体の攪拌効率を向上させることができる。また、攪拌装置20及び自動分析装置1は、表面弾性波素子22のアンテナ22cが圧電基板22aの外側に配置されているので、電力供給を効率良く行うことができる。
【0038】
一方、表面弾性波素子22は、振動子22bとして櫛歯状電極(IDT)を使用し、無線によって電力が供給されるため、構造が簡単で、小型なことから、送電体21も簡単な構成になって小型化でき、攪拌装置20、従って自動分析装置1を小型化することができる。さらに、表面弾性波素子22は、振動子22bとアンテナ22cを圧電基板22aの同一の面に形成したので、容易に製造することができるという利点を有している。しかも、攪拌装置20は、無線によって表面弾性波素子22に電力を供給するので、部品が電気的に接触することによって電力を供給する有線の場合に比べると故障が少なくなる。
【0039】
ここで、攪拌装置20は、図7に示す表面弾性波素子24のように、アンテナ24cを圧電基板24aの接触面以外の外周に設けてもよい。この場合、表面弾性波素子24は、振動子24bとアンテナ24cとの間をバスバー24dで接続する。表面弾性波素子24は、アンテナ24cを圧電基板24aの外周に設けると、図4に示す表面弾性波素子22と比較して明らかなように、圧電基板24a、従って表面弾性波素子24自体を振動子22bの大きさに合わせて小型にすることができるうえ、配置上の自由度が増すため、攪拌装置20の設計上の自由度が増す。
【0040】
また、攪拌装置20は、図8に示す表面弾性波素子25を用いてもよい。表面弾性波素子25は、反応容器7に接触させて取り付ける圧電基板25aの一方の接触面Fに振動子25bとバスバー25cが形成されると共に、バスバー25cを他方の面まで延設してアンテナ25dが形成されている。表面弾性波素子25は、自動分析装置1に反応容器7をセットしたとき、振動子25bを構成する複数の櫛歯状電極が鉛直方向に配列されるように、表面弾性波素子25を反応容器7の側壁7aに取り付ける。このとき、表面弾性波素子25は、振動子25bを側壁7aに向けると共に、アンテナ25dを外側に向け、エポキシ樹脂や紫外線硬化樹脂等の音響整合層23(図9,図10参照)を介して反応容器7の側壁7aに取り付けられる。
【0041】
従って、攪拌装置20は、表面弾性波素子25を駆動することによって誘起された表面弾性波が、音響整合層23から反応容器7の側壁7a内へと伝搬し、音響インピーダンスが近い液体中へ漏れ出してゆく。この結果、反応容器7内には、液体L中の振動子25bに対応する位置を起点として、図9に矢印で示すように、斜め上方向に向かう流れFccと、斜め下方向に向かう流れFcwが、それぞれ生じる。この2つの流れによって、反応容器7は、保持した液体Lが攪拌される。
【0042】
このとき、反応容器7は、振動子25bを液体Lに隣接する側壁7aに向け、表面弾性波素子25が音響整合層23(図9,図10参照)を介して側壁7aに取り付けられている。このため、攪拌装置20は、振動子25bが発生した表面弾性波が音響整合層23から側壁7aを通って隣接する液体Lに入射する。従って、攪拌装置20は、振動子25bと側壁7aが接し、表面弾性波の伝搬経路が短く、表面弾性波の減衰が抑制されるので、表面弾性波の利用効率と液体Lの攪拌効率を向上させることができる。
【0043】
一方、本発明の攪拌装置20は、振動子22bとして櫛歯状電極(IDT)を使用しているので、表面弾性波素子22の構造が簡単であり、表面弾性波素子22及び送電体21を小型化することができる。また、攪拌装置20は、表面弾性波素子22が反応容器7に固定されているので、表面弾性波素子22を反応容器7と共に簡単に取り扱うことができる。
【0044】
このため、攪拌装置20は、図11に示すように、側壁7aを薄肉にして成形した凹部7fに振動子22bを反応容器7の外側に向け、音響整合層を介して表面弾性波素子22を凹部7fに埋め込んだ反応容器7を使用し、バルク波によって液体を攪拌してもよい。この場合、攪拌装置20は、図12に示すように、反応容器7に取り付ける表面弾性波素子22の振動子22bを2つにしてもよい。このようにすると、攪拌装置20は、反応容器7が保持した液体の量に応じて2つの振動子22bを時分割で駆動し、或いは2つの振動子22bの中心周波数を異ならせて同時に駆動する等、種々に組み合わせて使用することにより攪拌能力を向上させることができ、保持した液体が多い場合であっても液体を短時間で攪拌することができる。
【0045】
また、表面弾性波素子22を小型に構成することができるので、攪拌装置20は、図13に示す反応容器7のように、表面弾性波素子22を側壁7aの一部として用い、振動子22bを反応容器7の外側に向けて表面弾性波素子22を側壁7aの上部に埋め込んでもよい。
【0046】
一方、攪拌装置20は、図14に示す反応容器7のように、表面弾性波素子26を底壁7cの下面に取り付けてもよい。表面弾性波素子26は、図15に示すように、基板26aの表面の中央に櫛型電極(IDT)からなる振動子26bが設けられ、受電手段となるアンテナ26cは振動子26bを囲むようにして一体に設けられている。この場合、表面弾性波素子26は、図16に示すように、振動子26bを反応容器7の外側に向け、音響整合層23を介して底壁7cに取り付けることにより、バルク波を利用して液体を攪拌する。また、攪拌装置20は、送電体21のRF送信アンテナ21aを反応ホイール6の凹部6a底壁に設ける。
【0047】
さらに、攪拌装置20は、図17に示す反応容器7のように、表面弾性波素子25の圧電基板25aを底壁として用いると、反応容器7を小型化することができる。このとき、表面弾性波素子26は、振動子26bを反応容器7の外側に向けて圧電基板26aを側壁7aの下部に取り付ける。このように、攪拌装置20は、反応容器7の底壁7cに表面弾性波素子を取り付ける場合、図7に示す圧電基板24aの外周にアンテナ24cを設けた表面弾性波素子24を用いてもよい。
【0048】
(実施の形態2)
次に、本発明の攪拌装置と分析装置にかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1は、表面弾性波素子に無線によって電力を供給したが、実施の形態2は、有線によって表面弾性波素子に電力を供給している。図18は、攪拌装置を備えた実施の形態2の自動分析装置の概略構成図である。図19は、図18の自動分析装置の構成を示すブロック図である。図20は、図15の自動分析装置で使用される反応容器を、アーム部材を設けた送電体と共に示す斜視図である。ここで、実施の形態2の自動分析装置は、攪拌装置が実施の形態1の攪拌装置20と同じ反応容器及び表面弾性波素子を使用しているので、反応容器及び表面弾性波素子については同じ符号を使用して説明している。
【0049】
自動分析装置30は、図18及び図19に示すように、試薬テーブル321,32、反応ホイール33、検体容器移送機構37、測光系42、洗浄機構43、制御部45及び攪拌装置50を備えている。
【0050】
試薬テーブル31,32は、図18に示すように、それぞれ周方向に配置される複数の試薬容器31a,32aを保持し、図示しない駆動手段に回転されて試薬容器31a,32aを周方向に搬送する。
【0051】
反応ホイール33は、図18に示すように、複数の反応容器7が周方向に沿って配列され、図示しない駆動手段によって正転或いは逆転されて反応容器7を搬送する。反応容器7は、近傍に設けた試薬分注機構35,36によって試薬テーブル321,32の試薬容器31a,32aから試薬が分注される。ここで、試薬分注機構35,36は、それぞれ水平面内を矢印方向に回動するアーム35a,36aに試薬を分注するプローブ35b,36bが設けられ、洗浄水によってプローブ35b,36bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0052】
反応容器7は、図19に示すように、側壁7aに取り付けられる表面弾性波素子25と共に攪拌装置50を構成している。
【0053】
検体容器移送機構37は、図18に示すように、フィーダ38に配列した複数のラック39を矢印方向に沿って1つずつ移送する移送手段であり、ラック39を歩進させながら移送する。ラック39は、検体を収容した複数の検体容器39aを保持している。ここで、検体容器39aは、検体容器移送機構37によって移送されるラック39の歩進が停止するごとに、水平方向に回動する駆動アーム57bとプローブ41bとを有する検体分注機構41によって検体が各反応容器7へ分注される。このため、検体分注機構41は、洗浄水によってプローブ41bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0054】
測光系42は、試薬と検体とが反応した反応容器7内の液体を分析するための分析光(340〜800nm)を出射するもので、図18に示すように、発光部42a,分光部42b及び受光部42cを有している。発光部42aから出射された分析光は、反応容器7内の液体を透過し、分光部42bと対向する位置に設けた受光部42cによって受光される。受光部42cは、制御部45と接続されている。
【0055】
洗浄機構43は、ノズル43aによって反応容器7内の液体を吸引して排出した後、ノズル43aによって洗剤や洗浄水等の洗浄液等を繰り返し注入し、吸引することにより、測光系42による分析が終了した反応容器7を洗浄する。
【0056】
制御部45は、自動分析装置30の各部の作動を制御すると共に、発光部42aの出射光量と受光部42cが受光した光量に基づく反応容器7内の液体の吸光度に基づいて検体の成分濃度等を分析し、例えば、マイクロコンピュータ等が使用される。制御部45は、図18及び図19に示すように、キーボード等の入力部46及びディスプレイパネル等の表示部47と接続されている。
【0057】
攪拌装置50は、表面弾性波素子25を駆動して発生する音波によって反応容器7に保持された液体を攪拌するもので、反応容器7の他に、図18及び図19に示すように、送電体51と表面弾性波素子25とを有している。送電体51は、反応ホイール33外周の互いに対向する位置に反応容器7と水平方向に対向させて配置され、数MHz〜数百MHz程度の高周波交流電源から供給される電力を表面弾性波素子25に送電する。送電体51は、駆動回路とコントローラとを備えており、図20に示すように、アーム部材57が設けられている。アーム部材57は、先端に表面弾性波素子25が取り付けられている。このとき、送電体51は、図18に示すように、配置決定部材52に支持されており、反応ホイール33の回転が停止したときに表面弾性波素子25に電力を送電する。
【0058】
配置決定部材52は、制御部45によって作動が制御され、送電体51から表面弾性波素子25に電力を送電する送電時に、送電体51を移動させて送電体51と反応容器7との反応ホイール33の周方向並びに半径方向における相対配置を調整するもので、例えば、2軸ステージが使用される。具体的には、配置決定部材52は、反応ホイール33が回転し、送電体51から表面弾性波素子25に電力を送電していない非送電時は、作動が停止されて、送電体51と反応容器7とを一定の距離に保持している。そして、配置決定部材52は、反応ホイール33が停止し、送電体51から表面弾性波素子25に電力を送電する送電時には、制御部45の制御の下に作動して送電体51を移動させ、送電体51と反応容器7とが対向するように反応ホイール33の周方向に沿った位置を調整すると共に、反応ホイール33の半径方向に沿った位置送電体51と反応容器7との相対配置を決定する。
【0059】
一方、送電体51と反応容器7との相対配置は、例えば、送電体51側に反射センサを設け、反応容器7或いは表面弾性波素子25の特定個所に設けた反射体からの反射を利用する等によって検出する。このとき、検出した相対配置のデータは制御部45に入力しておく。
【0060】
アーム部材57は、図20に示すように、支持筒27aに駆動アーム27bが出没自在に支持されている。駆動アーム27bは、図21に示すように、内部に設けた支持部材27cにRF送信アンテナ21aが取り付けられている。ここで、表面弾性波素子25は、図21に示すように、アーム部材57の先端に振動子25bを外側に向け、アンテナ25dを内側に向けて取り付けられている。
【0061】
以上のように構成される自動分析装置30は、制御部45の制御の下に作動し、回転する反応ホイール33によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器7に試薬分注機構35,36が試薬容器31a,32aから試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、検体分注機構41によってラック39に保持された複数の検体容器39aから検体が順次分注される。そして、試薬と検体が分注された反応容器7は、反応ホイール33が停止する都度、攪拌装置50によって順次攪拌されて試薬と検体とが反応し、反応ホイール33が再び回転したときに測光系42を通過する。このとき、反応容器7内の液体は、受光部42cで側光され、制御部45によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄機構43によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0062】
このとき、攪拌装置50は、表面弾性波素子25による液体の攪拌に際し、制御部45による制御の下、図21に示すように、音響整合液分注機構が有するノズル59から表面弾性波素子25に音響整合液Lmを吐出する。次に、攪拌装置50は、制御部45の制御の下、駆動アーム57bを繰り出し、図22に示すように、駆動アーム57b先端の表面弾性波素子25を反応容器7の側壁7aに当接させる。
【0063】
これにより、攪拌装置50は、表面弾性波素子25と側壁7aとの間に配置される音響整合液Lmの薄い膜を介して、表面弾性波素子25の振動子25bが発生する音波(表面弾性波)が、反応容器7の側壁7aから液体L中に漏れ出す。この結果、反応容器7は、漏れ出した音波(表面弾性波)によって液体Lの内部に、振動子25bの斜め上方向に向かう流れFccと、振動子25bの斜め下方向に向かう流れFcwが生じ、液体Lが攪拌される。
【0064】
このとき、攪拌装置50は、振動子25を側壁7aに向けて表面弾性波素子25が音響整合液Lmを介して側壁7aに接触し、音波(表面弾性波)が液体Lに照射されるまでの伝搬経路が短いので、音波の減衰を抑えて液体の攪拌効率を向上させることができる等、実施の形態1の攪拌装置20と同様の効果を奏することができる。また、表面弾性波素子25は、振動子25bとして櫛歯状電極(IDT)を使用し、無線によって電力が供給されるため、構造が簡単で、小型なことから、送電体51も簡単な構成になって小型化でき、攪拌装置50、従って自動分析装置30を小型化することができる。そして、液体Lの攪拌が終了すると、攪拌装置50は、制御部45による制御の下、駆動アーム57bを引き戻し、表面弾性波素子25と側壁7aとの当接を解除する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態1の自動分析装置で使用する反応容器及び反応ホイールの一部を攪拌装置の概略構成図と共に示す斜視図である。
【図3】実施の形態1の攪拌装置の構成を示すブロック図を反応容器の斜視図と共に示す図である。
【図4】図3の反応容器の側壁に取り付ける表面弾性波素子の斜視図である。
【図5】保持した液体中に生ずる流れを示す図3に示す反応容器の断面図である。
【図6】図5に示す反応容器のA部拡大図である。
【図7】本発明の攪拌装置で使用する表面弾性波素子の第1の変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明の攪拌装置で使用する表面弾性波素子の第2の変形例を示す斜視図である。
【図9】図8の表面弾性波素子を使用した攪拌装置において、反応容器が保持した液体中に生ずる流れを示す反応容器の断面図である。
【図10】図9に示す反応容器の表面弾性波素子近傍の拡大図である。
【図11】本発明の攪拌装置で使用する反応容器の第1の変形例を示す断面図である。
【図12】本発明の攪拌装置で使用する反応容器の第2の変形例を示す断面図である。
【図13】本発明の攪拌装置で使用する反応容器の第3の変形例を示す断面図である。
【図14】本発明の攪拌装置で使用する反応容器の第4の変形例を示す断面図である。
【図15】図11に示す反応容器で使用する表面弾性波素子の正面図である。
【図16】図11に示す反応容器のB部拡大図である。
【図17】本発明の攪拌装置で使用する反応容器の第5の変形例を示す断面図である。
【図18】攪拌装置を備えた実施の形態2の自動分析装置の概略構成図である。
【図19】図18の自動分析装置の構成を示すブロック図である。
【図20】図15の自動分析装置で使用される反応容器を、アーム部材を設けた送電体と共に示す斜視図である。
【図21】表面弾性波素子に音響整合液を吐出する様子をアーム部材、反応ホイールの一部及び反応容器を断面にして示す図である。
【図22】図21において、駆動アームを繰り出して端面の表面弾性波素子を反応容器の側壁に当接させた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 反応ホイール
7 反応容器
10 測光装置
11 洗浄装置
12 試薬分注機構
13 試薬テーブル
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
20 攪拌装置
21 送電体
22 表面弾性波素子
23 音響整合層
24,25,26 表面弾性波素子
30 自動分析装置
31,32 試薬テーブル
33 反応ホイール
35,36 試薬分注機構
37 検体容器移送機構
38 フィーダ
39 ラック
41 検体分注機構
42 測光系
43 洗浄機構
45 制御部
46 入力部
50 攪拌装置
51 送電体
52 配置決定部材
57 アーム部材
F 接触面
Fcc,Fcw 流れ
L 液体
Wb バルク波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌対象の液体を保持する容器と、
前記液体へ音波を照射すると共に、当該音波によって液体を攪拌する音波発生手段と、
を備えた攪拌装置であって、
前記音波発生手段は、
前記容器に接触する接触面を有する圧電基板と、
前記圧電基板上に形成され、前記液体を攪拌する音波を発生する発音部と、
前記圧電基板上の前記接触面以外の部分に形成され、外部から供給される前記発音部の駆動電力を無線で受電する受電部と、
を有することを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記受電部は、前記接触面に対向する前記圧電基板上の面に前記発音部と共に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記受電部は、前記圧電基板の外周に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記発音部は、前記接触面に形成され、
前記受電部は、前記接触面に対向する前記圧電基板上の面に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項5】
前記受電部は、受信アンテナであることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項6】
前記発音部は、櫛歯状電極であることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項7】
前記音波は、表面弾性波又はバルク波であることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項8】
前記音波発生手段は、前記容器に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項9】
前記音波発生手段は、前記液体を攪拌する際に前記容器の外側に接触することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項10】
複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、請求項1〜7のいずれか一つに記載の攪拌装置を用いて検体と試薬との反応液を光学的に分析することを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−232523(P2007−232523A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53441(P2006−53441)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】