放射線撮影装置
本発明は、放射線撮影装置に関するものである。この装置は、重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって生成された実質的に単一エネルギーの高速中性子を生成するための中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の中性子線源を具備している。装置は、さらに、撮影対象をなす対象物を実質的に透過し得る程度に十分なエネルギーを有したX線源またはガンマ線源と、中性子線源とX線源とガンマ線源とを包囲するコリメート用ブロックであるとともに、実質的に扇型形状でもって放射させるための1つまたは複数のスロットが形成されているような、ブロックと、を具備している。さらに、線源から放射された放射エネルギーを受領しさらにその受領したエネルギーを光パルスへと変換する複数のシンチレータ画素を備えた検出器アレイを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置に関するものである。特に、本発明は、隠された物品や物質や材料を検知用の放射線撮影装置に関係がある。例えば、本発明は、例えば航空機手荷物や航空貨物や運送用コンテナといったような入れ物の中に隠匿されたような、武器や爆発物や密輸品や麻薬や他の物品や物質や材料を検出することに、応用することができる。
【背景技術】
【0002】
X線やガンマ線や中性子線に基づいた技術が、上記課題に取り組むために、提案された( Hussein, E.氏、1992年;Gozani, T.氏、1997年;An, J.氏他、2003年)。最も広く採用された技術は、X線スキャナである。このX線スキャナにおいては、X線源から、入れ物を通して、空間的にセグメント化された検出器へと到達するような、X線の透過を測定することにより、被検査対象物のイメージを形成する。X線は、例えば金属といたような稠密でありかつより高い原子番号の材料によって、最も強く減衰する。したがって、X線スキャナは、例えば銃やナイフや他の武器といったような物品の検知に関し、理想的である。しかしながら、X線は、有機物質と無機物質との間の識別力をほとんど有していない。X線を使用した場合には、例えば爆発物や麻薬といったような不法の有機物質と、通常的に使用されている悪意のない有機物質とを、区別することができない。
【0003】
パレット上で荷造りされた商品の検査のために、元素同定システムが、開発されている。NELIS(Neutron Elemental Analysis System)と称されるシステムにおいては、14MeVの中性子発生源と3つのガンマ線検出器とを使用することによって、積荷から誘起されたガンマ線を測定する(Dokhale, P.A.氏他、2001年;Barzilov, A.P.氏、
Womble, P.C.氏、および、Vourvopoulos, G.氏、2001年)。NELIS は、イメージ形成システムでなく、X線スキャナと一緒に使用されて、全体的な組成物の異常を識別することを補助する。
【0004】
パルス型高速中性子分析(Pulsed Fast Neutron Analysis、PFNA)積荷検査システムが、開発され(Gozani, T.氏、1997年;Sawa氏他、1991年)、Ancore株式会社によって市販されている。PFNAシステムにおいては、ナノ秒パルスの高速中性子からなるコリメートされたビームを使用し、得られるガンマ線スペクトルを測定する。PFNA方法においては、測定対象をなす重要な有機物質間の比率を測定することができる。ナノ秒パルスの高速中性子は、飛行時間分光測定法によってガンマ線信号に寄与している特定領域を位置決めするために、必要とされている。実際には、この技術は、粒子加速器が非常に高価で複雑であることによって、中性子源の強度が制限されていることによって、ガンマ線検出効率が低いことによって、さらに、走査速度が遅いことによって、制限されている。
【0005】
中性子線撮影システムは、透過した中性子線を直接的に測定するという利点を有しており、そのため、例えば中性子線によって誘起されたガンマ線を測定するといったような二次的な放射線を測定する技術と比較して、より効率的である。高速中性子線撮影装置は、対象物の視野方向『有機物イメージ』を決定する可能性を有している(Klann 氏、1996年)。X線とは異なり、中性子線は、有機材料によって、特に高い水素含有量を有した有機材料によって、最も強く減衰する。
【0006】
PFNAを補足するため、Rynes 氏他によって、高速中性子とガンマ線との双方を使用した放射線撮影システムが開発された(1999年)。このシステムにおいては、加速器から放出されたナノ秒パルスの高速中性子とガンマ線とが、対象物を透過し、検出された中性子線信号とガンマ線信号とが、到着時刻によって分離される。得られたシステムは、X線撮影装置の利点とPFNAシステムの利点との双方を組み合わせることを主張している。しかしながら、この手法は、非常に高価で複雑な粒子加速器によって制限されている。
【0007】
Bartle氏(1995年)は、高速中性子およびガンマ線透過技術(Millen氏他、1990年)を使用することにより、荷物などにおける密輸品の存在を検出することを提案した。しかしながら、この技術は、イメージの形成を行うものではなく、密輸品検出に対する実用的な適用は、追求されなかった。
【0008】
Mikerov, V.I. 氏他(2000年)は、14MeV中性子発生源と発光スクリーン/CCDカメラ検出システムとを使用したような高速中性子放射線撮影装置の可能性を追求した。Mikerov 氏は、高速中性子用の2mmという厚い発光スクリーンの検出効率が低いことと、中性子発生源によって生成されたX線に対してスクリーンが過敏であることと、の両方によって適用が制限されていることを見出した。
【0009】
14MeV中性子源と熱中性子検出とを使用する中性子線撮影システムは、市販されている(Le Tourneur, P.氏、Bach, P.氏、および、Dance, W.E.氏、1998年)。しかしながら、放射線撮影を行うに先立って、高速中性子が遅くなるという(熱中性子化される)という事実は、撮影対象をなす対象物のサイズを、数cmへと制限する。高速中性子検出を行っているような高速中性子放射線撮影システムは、市販されていない。
【0010】
中性子線撮影に関して行われた最も多くの研究は、原子炉あるいは粒子加速器からの中性子線を使用して研究室で行われたものであり、これは、飛行機荷物を取り扱うような用途には不向きである(Lefevre, H.W.氏他、1996年;Miller, T.G. 氏、1997年;Chen, G.氏および Lanza, R.C.氏、2000年;Brzosko, J.S. 氏他、1992年)。
【0011】
高速中性子放射線撮影システムの能力を向上させて、様々な有機物質間における識別を可能とするために、複数の中性子線エネルギー源と、様々な中性子線エネルギーを識別し得る手段を備えた検出器と、を使用したシステムが、提案された(Chen, G. 氏および Lanza, R.C.氏、2000年;Buffler氏、2001年)。これらのシステムの重大な欠点は、複雑であるようなエネルギー識別型中性子検出器を使用していること、および/または、複雑であるような高エネルギー加速器に基づいた中性子源を使用していること、である。
【0012】
Perion氏他(Perion 氏、2000年)は、高エネルギー(MeV)のX線制道放射または放射性同位体発生源を使用したスキャナを提案した。小さな原子番号のフィルタを急速に挿入して除去することにより、あるいは、検出されたX線のエネルギーを測定することにより、X線源の平均エネルギーを変調することによって、2つのX線エネルギーに関して走査される対象物の透過を測定することが可能である。1つは、コンプトン散乱が支配的であり、他は、対生成が重要である。この情報を使用することにより、走査イメージの各画素内における材料の密度および平均原子番号を決定することができる。この手法の主な欠点は、たとえ非常に高エネルギーのX線源を使用した場合であっても、異なる元素間でのコントラストが低いことである。また、Perion検出器アレイのコストは、非常に高いものである。これに代えて、Perion氏は、X線と中性子線(制道放射ターゲット内で直接的に生成された、あるいは、中性子線生成フィルタの挿入により生成された)との双方の透過の測定によって、同様の情報がもたらし得ることを提案している。この手法の主要な欠点は、反応によって(ガンマ、n)生成された中性子線のエネルギーが小さいことである。これは、中性子線が厚い積荷に侵入するという能力を制限し、透過した中性子線を適切に検出する際の困難さを増大させる。特に、開示された積層型のシンチレータ検出器では、はるかに強度の大きなX線ビームの存在下であると、中性子線を識別し得ないものと考えられる。2重のエネルギーのX線を使用する手法と、X線/中性子線を使用する手法と、に共通した欠点は、X線と中性子線とが広範囲のエネルギーをカバーすることである。これは、単純な指数関数的関係を使用して透過をモデル化することができないこと、および、材料認識のために使用し得るような定量的横断面情報を容易には抽出氏得ないこと、を意味している。
【特許文献1】Bartle, C.M.氏による“Method and apparatus for detectingconcealed substances”と題する米国特許第5,479,023号明細書(1995年12月26日)
【特許文献2】Perion, D.氏他による“System for differentiating betweenorganic and inorganic materials” と題する国際公開第00/43760号パンフレット
【特許文献3】Sawa, Z.P.氏、Gozani, T.氏、Ryge, P.氏による“Contrabanddetection system using direct imaging pulsed fast neutrons”と題する米国特許第5,076,993号明細書(1991年12月31日)
【特許文献4】Tickner, J.R.氏および Sowerby, B.D.氏による“A DetectionSystem”と題するオーストラリア国特許予備出願第2002/953244号明細書(出願日:2002年12月10日)
【非特許文献1】An, J., Xiang, X., Wu, Z., Zhou, L., Wang, L. and Wu, H.,2003. “Progress on developing 60Co container inspection systems”, AppliedRadiation and Isotopes 58 (2003) 315-320.
【非特許文献2】Barzilov, A.P., Womble, P.C. and Vourvopoulos, G., 2001.“NELIS - a neutron elemental analysis system of commodities of pallets”, 2001 Office of National Drug Control Policy International Symposium.
【非特許文献3】Brzosko, J.S. et al, 1992. “Advantages and limitations of 14-MeV neutron radiography”, Nuclear Instruments and Methods B72 (1992) 119-131.
【非特許文献4】Buffler, A., 2001. “Contraband detection by fast neutronscattering”, 2nd National Nuclear Technology Conference, NAC, South Africa,13-15 May 2001, paper D-03.
【非特許文献5】Chen, G. and Lanza, R.C., 2000. “Fast neutron resonanceradiography for elemental mapping”, Final Research Co-ordination Meeting on“Bulk Hydrogen Analysis using Neutrons”, Cape Town, South Africa, 23-26October 2000, pp. 31-38.
【非特許文献6】Dokhale, P.A., Csikai, J., Womble, P.C. and Vourvopoulos, G., 2001. “NELIS - an illicit drug detection system”, AIP Conference Proceedings, 576 (2001) 1061-1064.
【非特許文献7】Gozani, T., 1997. “Neutron based non-intrusive inspection techniques”, Proc. Internat. Conf. On Neutrons in Research and Industry, Crete,Greece, 9-15 June 1996, SPIE Proceedings Series 2867 (1997) 174-181.
【非特許文献8】Hussein, E., 1992. “Detection of explosive materials using nuclear radiation: a critical review”, SPIE Vol. 1736 (1992) 130-137.
【非特許文献9】Klann, R.T., 1996. “Fast neutron (14.5 MeV) radiography: a comparative study”, 5th World Conference on Neutron Radiography, Berlin, 17-20 June 1996,469-483.
【非特許文献10】Lefevre, H. W, et al, 1997. “Using a fast neutronspectrometer system to candle luggage for hidden explosives”, Proc. Internat. Conf. On Neutrons in Research and Industry, Crete, Greece, 9-15 June 1996, SPIE Proceedings Series 2867 (1997) 206-210.
【非特許文献11】Le Tourneur, P., Bach, P. and Dance, W.E., 1998.“Neutron fan beam source for neutron radiography purpose”, 15th Int. Conf. on Applications of Accelerators in Research and Industry, Denton, Texas, USA, Nov. 4-7, 1998.
【非特許文献12】Mikerov, V.I. et al, 2000. “Investigation of prospects offast neutron radiography on the basis of portable equipment”, IAEA Coordinated Research Programme on “Bulk Hydrogen Analysis using Neutrons”, Cape Town,South Africa, 23-6 October 2000, Report F1-RC-655.3.
【非特許文献13】Millen, M.J., Rafter, P.T., Sowerby, B.D., Rainbow, M.T. and Jelenich, L., 1990. “Plant trial of a fast neutron and gamma-raytransmission gauge for the on-belt determination of moisture in lump coke”,Nuclear Geophysics 4 (1990) 215-226.
【非特許文献14】Rynes, J. et al, 1999. “Gamma-ray and neutron radiographyas part of a pulsed fast neutron analysis inspection system”, NuclearInstruments and Methods A422 (1999) 895-899.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、放射線撮影装置に関するものであって、
重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって生成された実質的に単一エネルギーの高速中性子を生成するための中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の中性子線源と;
撮影対象をなす対象物を実質的に透過し得る程度に十分なエネルギーを有したX線源またはガンマ線源と;
中性子線源とX線源とガンマ線源とを包囲するコリメート用ブロックであるとともに、実質的に扇型形状でもって放射させるための1つまたは複数のスロットが形成されているような、ブロックと;
線源から放射された放射エネルギーを受領しさらにその受領したエネルギーを光パルスへと変換する複数のシンチレータ画素を備えた検出器アレイであるとともに、コリメート用ブロックからコリメートされて放射された扇型形状の放射ビームに対して位置合わせされており、これにより、線源からの検出器アレイへと直接的に透過してきた放射のみを受領し得るものとされた、検出器アレイと;
シンチレータによって生成された光パルスを電気信号へと変換するための変換手段と;
線源と検出器アレイとの間を通して対象物を搬送するための搬送手段と;
電気信号に基づいて中性子線の減衰およびX線またはガンマ線の減衰を決定するとともに、線源と検出器アレイとの間に位置した対象物の質量分布および組成を表す出力信号を生成するための、計算手段と;
対象物の質量分布および組成に基づいたイメージを表示するためのディスプレイ手段と;
を具備している。
【0014】
本発明の利点は、中性子線が実質的に単一エネルギー的であるということである。したがって、単純な指数関数的な関係を使用して、中性子線透過をモデル化することができる。さらに、材料認識に役立つ情報が、より正確に得られる。
【0015】
本発明の少なくとも1つの実施形態による装置は、透過した中性子線の直接測定という追加的な利点を有しており、したがって、例えば中性子線によって誘起されたガンマ線といったような二次的放射線を測定するような従来技術システムと比較した場合、はるかに効率的である。
【0016】
放射線撮影装置は、1つ以上の中性子線エネルギーを利用することができる。2つの中性子線エネルギーを使用するという例においては、放射線撮影装置は、2つのチューブを使用することができる。すなわち、一方のチューブは、重水素−三重水素間のム核融合反応によって実質的に14MeVという中性子線を生成し、他方のチューブは、重水素−重水素間の核融合反応によって実質的に2.45MeVという中性子線を生成する。第2エネルギーの中性子線透過の測定を使用することにより、単一のエネルギー透過を行う技術の能力を増強することができる。
【0017】
X線またはガンマ線源は、撮影対象をなす対象物内を実質的に透過し得るに十分であるようなエネルギーを有した、60Coあるいは 137Csといったような放射性同位体放射源を備えることができる。60Coあるいは 137CsX線源は、約1MeVというエネルギーを有することができる。しかしながら、X線源に応じて、他のエネルギーを使用することもできる。これに代えて、X線管または電子リニア加速器を使用することによって、制道放射を生成するができる。
【0018】
X線またはガンマ線源と中性子線源との双方のコリメートは、有利には、散乱を最小化するよう機能する。さらに、放射線源と検出器との双方を適切にコリメートすることにより、ビーム形状を狭いものとすることができ、これにより、対象物に通しての中性子線とガンマ線との減衰を決定する場合に、高い精度を保証することができる。さらに、大いにコリメートされた扇形のビームは、放射線安全性を増大させる。コリメート用ブロックは、厚いパラフィンや、厚いコンクリートや、鉄塊コンクリートシールドブロックや、スチールや、鉛、等から形成することができる。同様に、各検出器アレイは、検出器シールド内に収容することができ、検出器シールドには、コリメート用のスロットを形成することができる。検出器のコリメート用シールドは、鉄から形成することができ、約100mm以上の厚さとすることができる。スロットの幅は、放射線源からの中性子線またはガンマ線を検出器に向けて直接的に通過させ得るものとされ、検出器アレイを散乱放射線から保護することができる。検出器スロットは、検出器アレイとほぼ同じ幅のものとすることができる。線源のコリメート用スロットは、より狭いものとすることができる。
【0019】
検出器アレイは、複数のシンチレータ画素からなる1つ以上の行を備えることができる。
【0020】
同じ検出器アレイによって、中性子線と、X線またはガンマ線と、の双方を検出することができる。エネルギー的識別を使用することによって、信号を識別することができる。あるいは、検出器を、中性子線と、X線またはガンマ線と、に関して、交互的に動作させることができる。中性子線とX線またはガンマ線との検出に際して同一の検出器アレイを使用することの利点は、検出器アレイに要するコストを低減し得ることである。
【0021】
付加的には、個別の検出器アレイを使用することによって、中性子線と、X線またはガンマ線と、をそれぞれ個別に検出することができる。その際、中性子線用の検出器コリメータと、X線またはガンマ線用の検出器コリメータとは、個別的なものとすることも、また、同一のものとすることも、できる。
【0022】
シンチレータは、それらのスペクトル感度がフォトダイオードに緊密に一致するように、選択することができる。さらに、シンチレータは、各シンチレータの少なくとも一部をカバーするために、マスクによって囲むことができる。各マスクは、シンチレータ内へと戻ってくる逸脱した光パルスを反射させ得るような、第1反射表面を有する。マスクは、フォトダイオードによって検出されるシンチレータ光を通すための開口を有している。マスクは、PTFEテープ、および/または、Tyvek(登録商標)紙からなる層を備えることができる。有利には、中性子線用のマスクを備えたプラスチック製シンチレータの効率は、10%以上とすることができる。シンチレータを囲む材料は、シンチレータへと戻ってきた散乱光を確実に反射させて、検出させないことである。各検出器アレイがオレンジ色の発光性プラスチック製シンチレータとシリコン製フォトダイオードとを備えている例においては、装置は、より大きな効率を有しており、イメージ収集を迅速に行うことができて、有利である。さらに、装置は、比較的より安いコストで製造することができる。
【0023】
シリコーンオイルや、GE−688グリース(登録商標)や、ポリシロキサンや、例えばEljen EJ−500セメント(登録商標)といったような光学的セメント、等を使用することにより、フォトダイオードとそれぞれ対応するシンチレータとを光学的に接続することができる。
【0024】
放射線撮影装置が、中性子線とX線またはガンマ線との双方を検出し得るような単一の検出器アレイを備えている場合には、シンチレータは、プラスチック製シンチレータまたは液体シンチレータとすることができる。
【0025】
放射線撮影装置が2つの中性子線源とX線源またはガンマ線源とを備えているような他の例においては、シンチレータは、プラスチック製シンチレータまたは液体シンチレータとすることができる。この例においては、シンチレータは、光電子増倍管に対して接続することができる。
【0026】
放射線撮影装置が個別の中性子線用検出器アレイとガンマ線用検出器アレイとを備えているような場合には、中性子線シンチレータは、好ましくは、プラスチック製シンチレータあるいは液体シンチレータとすることができ、ガンマ線シンチレータは、プラスチック製シンチレータ、または、液体シンチレータ、または、例えばヨウ化セシウムやヨウ化ナトリウムやあるいはゲルマニウム化ビスマスといったような無機物製シンチレータ、とすることができる。これに代えて、X線検出器あるいはガンマ線検出器は、イオン化チャンバとすることができる。
【0027】
各シンチレータの放射線受領面、すなわち、各シンチレータの『エリア』は、単一の画素に対応している。各シンチレータのエリアは、典型的には、およそ20mm×20mmよりも小さいものとすることができる。エリアが小さいほど、空間的解像度が向上する。
【0028】
各シンチレータの厚さは、50〜100mmという範囲とすることができ、検出効率および光収集効率に応じたものとすることができる。イメージ形成の対象物が、空港環境内において典型的に使用されるものといったようなユニットロードデバイスすなわちULDであるような例においては、シンチレータがなすアレイの放射受領面は、およそ120mm×3300mmという寸法を有することができ、約1000個の画素を備えることができる。中性子をおよそ1010個/秒で放出する14MeVの中性子源エネルギーと組み合わされた時には、単一のULDの内容物は、約1分という時間で、イメージ形成することができる。
【0029】
これに代えて、個別の中性子線シンチレータとガンマ線シンチレータとを使用することができる。その場合、例えば、約1000個の中性子線画素と、約500個のガンマ線画素と、が使用される。実際上、ガンマ線画素は、中性子線画素より小さなものとして、形成することができる。これにより、有利には、より大きな解像度の空間的イメージをもたらす。
【0030】
他の例においては、変換手段は、光電子増倍管と波長シフト光ファイバー(WSF)とを備えることができる。この例においては、シンチレータロッドの列または行からの光は、WSFによって集めることができ、マルチアノード型の光電子増倍管へと伝達することができる。光パルスを生成している行および列を場所指定することによって、放射線を遮断しているシンチレータロッドを決定することができる。
【0031】
変換手段は、出力信号を増幅し得るよう、低ノイズかつ高ゲインのアンプを備えることができる。変換手段は、コンピュータを備えることができ、コンピュータは、イメージ処理を行って、コンピュータスクリーン上にイメージを表示することができる。
【0032】
検出器は、ノイズを低減し得るようまた安定性を改善し得るよう、温度を制御することができる。例えば、フォトダイオードおよびプリアンプは、約−10℃あるいはそれ以下にまで、冷却することができる。
【0033】
一例においては、イメージ形成対象をなす対象物を走査する際に、1つ以上の出力が、例えば、対象物を通しての14MeV中性子線の透過の測定と、対象物を通しての1MeVのX線あるいはガンマ線の透過の測定と、によって、得られる。2つのエネルギーの中性子線で走査する場合には、対象物を通しての2.45MeV中性子線の透過が、さらに測定される。本発明は、これら特定のエネルギー値の使用に限定されるものではない。
【0034】
X線源またはガンマ線源および中性子線源から放射線エネルギーを受け取るために単一の検出器アレイが使用される場合には、対象物は、二度以上にわたって走査することができる。
【0035】
X線源またはガンマ線源および中性子線源から放射線エネルギーを受け取るために互いに個別の検出器アレイが使用される場合には、出力信号は、第1シンチレータアレイからの第1出力と、第2シンチレータアレイからの第2出力と、を有することができる。この場合、第1出力は、検出器の各画素位置の中性子線カウント速度に関連するものであり、第2出力は、検出器の各画素位置のX線またはガンマ線のカウント速度に関連するものである。
【0036】
各入力信号は、別々に処理することができる。各画素に関して、単純なシンチレーションスペクトルを個別的に収集することができ、これにより、各画素に関して、中性子線やX線やガンマ線のカウント速度を決定することができる。その後、情報に基づいて、完全な2次元の中性子線イメージと、完全な2次元のX線またはガンマ線イメージと、を形成することができる。得られたイメージは、鉛直方向の解像度が、画素サイズによって支配され、水平方向の解像度が、画素サイズと、アレイが読み取られる周波数と、によって支配されている。
【0037】
コンピュータは、さらに、自動的な材料認識を行うことができる。例えば、透過出力は、コンピュータスクリーン上への表示のために各画素に関し、質量減衰係数イメージへと変換することができる。その場合、様々な画素値に対して、それぞれ対応するカラーを付与することができる。特に、質量減衰係数イメージは、14MeV中性子線の透過とX線またはガンマ線の透過とによって測定されたカウント速度に基づいて、あるいは、14MeV中性子線の透過と2.45MeV中性子線の透過とX線またはガンマ線の透過とによって測定されたカウント速度に基づいて、得ることができる。
【0038】
質量減衰係数イメージの分析は、様々な無機材料および有機材料の識別を可能とする。そのような分析は、対をなす質量減衰係数イメージどうし間の断面積比イメージを形成することにより、行うことができる。1つの中性子線源が使用されているかあるいは2つの中性子源が使用されているかどうかに応じて、断面積比イメージは、中性子線源およびX線源またはガンマ線源の質量減衰係数イメージに基づいて、あるいは、第1および第2中性子源およびX線源またはガンマ線源の質量減衰係数イメージに基づいて、形成することができる。例えば、14MeV中性子線源およびX線源またはガンマ線源を使用して、あるいは、14MeV中性子線源と2.45MeV中性子線源とX線源またはガンマ線源とを使用して、形成することができる。有利には、そのような比は、対象物の質量に依存しない。
【0039】
断面積比イメージどうしを組み合わせる割合は、イメージ内において検査されるべき特定の対象物に対するコントラストおよび感度を最大化し得るように、操作者によって調整することができる。
【0040】
2つの断面積比イメージの一次結合によって、イメージを形成することができる。
【0041】
イメージ内における2つの領域であるとともに、双方の領域が第1物質を備え、なおかつ、一方の領域だけが第2物質を備えている場合、これら領域を識別することができる。断面積の引き算を行うことによって、第1物質のイメージを、効果的に除去することができる。これにより、第2物質のイメージを残して、識別に利用することができる。第2物質の質量は、X線あるいはガンマ線による透過データから得ることができる。
【0042】
一例においては、中性子線源および検出器が静止状態とされ、搬送手段が、中性子線源およびガンマ線源の前方にわたって、対象物を搬送する。他の例においては、対象物が静止状態とされ、搬送手段が、放射線源および検出器アレイを、対象物の両サイドにわたって同期的に移動させる。さらに他の例においては、複数組をなす検出器が、中央に配置された線源の周囲に配置され、これにより、複数の対象物を同時に走査し得るようになっている。これは、処理能力の改善という利点をもたらす。そのような例においては、搬送手段は、中性子線源とそれぞれ対応する検出器との間を通して対象物を移動させ得るように、構成される。これに代えて、放射線源と検出器とは、被検査対象物の周囲にわたって回転可能とされ、これにより、様々な角度からの測定を行い得るようになっている。
【0043】
対象物が中性子線源の前方を移動し得る速度は、あるいは、対象物が中性子線源とX線源あるいはガンマ線との前方を移動し得る速度は、部分的には、中性子線源の強度とガンマ線源の強度とに依存する。14MeVという単一の中性子線源の強度は、1010個/秒の程度とすることができる、あるいは、実用的に可能な大きな値とすることができる。これにより、カウント操作を改良することができる。
【0044】
対象物が中性子線源とX線源あるいはガンマ線との前方を移動し得る速度は、また、シンチレータアレイの放射線受領面と、シンチレータの数と、に依存する。加えて、アレイの長さは、部分的には、イメージ形成対象をなす対象物の長さに依存する。
【0045】
対象物は、中性子線源とガンマ線源と検出器との間を通して走査することができ、シールドされたトンネルを通り抜けさせることができる。搬送手段は、一対をなすレールを備えることができる。これらレールを使用して、対象物を搬送し得る台車またはプラットホームを配置することができる。これに代えて、搬送手段は、トンネルを通して対象物を搬送したりまたは吊り上げたりするための、コンベヤベルト等を備えることができる。搬送手段は、自動化することができ、これにより、対象物を、制御可能な一定速度でもって、中性子線源の前方にわたって、滑らかに搬送することができる。
【0046】
本発明は、船便貨物や、航空貨物のユニットロードデバイス(ULD)や、より小さなコンテナや、パッケージ、に対して適用することができ、密輸品や、爆発物や、他の物品や物質や材料、を検出することができる。本発明は、大部分が無機材料とされた中に隠された有機物質といったような密輸物質の特定能力を向上させることができ、また、特定のクラスの有機材料を、検出したり識別したりすることができる。本発明は、特に、航空機手荷物や航空貨物コンテナや輸送用コンテナ内に隠された爆発物や麻薬や他の密輸品の検出に適している。
【0047】
本発明の少なくとも1つの実施形態における他の利点は、中性子線を生成するための中性子線源の使用を、オンオフ切り替えし得ることである。
【0048】
また、本発明は、検査過程の自動化を促進し得るものであり、人間の操作者に対する依存性を低減させる。
【0049】
さらに、本発明は、高速操作を行うことができる。これにより、大きな処理速度を達成することができる。本発明は、単純であり、低コストであり、さらに、安全な放射線源を使用する。そのため、本発明は、単純でありかつ低コストであるような放射線検出システムを提供する。本発明は、大きな検出速度でもって、なおかつ、小さな誤認確率でもって、動作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明のいくつかの実施形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
【0051】
図1は、放射線撮影装置10の全体的なレイアウトを図示している。装置10は、互いに個別の2つの放射線源を備えている。第1の放射線源は、MF Physics社による A-325型の中性子線源であって、D−T中性子放出モジュールを備えており、14MeVというエネルギーを有した中性子線エネルギー源12を形成している。この中性子線源は、80〜110kVという電圧で動作する。第2の放射線源は、0.82GBq(あるいは、22mCi)という60Co源14であって、ガンマ線源を構成するものであり、中性子源に対して隣接してかつ右側に位置して、配置されている。中性子線源12および60CoX線源14は、放射線源シールドハウジング16内に配置されいる。
【0052】
1600mm長さかつ20mm幅の検出器アレイ18が、放射線源の近くに配置されており、検出器シールドハウジング20内に収容されている。検出器アレイ18は、図2においてより明瞭に示すように、80個のプラスチック製から構成されている(80個のうちの一部分だけが図示されている)。各シンチレータロッド19は、放射線受領面積が20mm×20mmであり、長さが75mmである。各シンチレータロッド19の放射線受領面積は、イメージフレーム内における単一の画素に対応している。イメージフレームという用語は、所定時間間隔にわたって集積された各画素内でのカウント数からなる二次元配列について記述するために使用されている。シンチレータロッド19は、オレンジ色のプラスチック製のシンチレータから形成されている。これにより、それぞれのプラスチック製シンチレータに対してシリコン製フォトダイオード21のスペクトル応答を適合させることができる。フォトダイオード21は、光学的セメントを介して、それぞれ対応するシンチレータ19に対して光学的に連結されている。反射性マスクが、オレンジ色のシンチレータロッドおよびフォトダイオードとの各組合せに対して塗布されている。これにより、シンチレータロッドから逸脱しようとするすべての光の損失を最小化することができる。
【0053】
第1実施形態においては、入射した中性子線やX線やあるいはガンマ線によってロッド19内に生成されたシンチレーション光は、ロッド19の端部に取り付けられたフォトダイオード21によって検出される。第1の変形例においては、シンチレータロッドの列または行からの光は、波長シフト光ファイバーによって収集され、フォトダイオードに対して伝達される。光パルスを生成する列および行を指標付けすることによって、放射線を遮断しているシンチレータロッドを決定することができる。第2の変形例においては、様々なシンチレータロッドからの光を、波長シフト光ファイバまたは透明な光ファイバーによって収集し、位置認識可能なフォトダイオードに対してあるいは多重陽極光電子増倍管に対して伝達する。これにより、単一の検出器によって、多数のシンチレータロッドからの情報を読み取ることができる。第3の変形例においては、シンチレータロッドのいくつかの列または行からの光を、波長シフト光ファイバーによって収集し、位置認識可能なフォトダイオードあるいは多重陽極光増倍管へと伝達する。光パルスを生成する列および行を指標付けすることによって、放射線を遮断しているシンチレータロッドを決定することができる。
【0054】
それぞれのフォトダイオード21が内部ゲインを有していないので、信号調整用電子回路23は、互いに協働して使用されるプリアンプとゲインの大きなアンプとを備えている。これにより、中性子線とガンマ線との双方に関する出力信号を増幅することができる。
【0055】
装置10は、幅が最大で2.5mでありかつ高さが1.7mであるようなULD28を備えている。イメージの形成対象をなす各ULD28は、プラットホーム30上に設置されている。プラットホーム30は、一対をなすトラック32に対して係合するランナーを有している。実際、空港においては、空港周辺にわたってULDを輸送するために使用されるそれぞれの台車上に搭載された状態で、ULDを走査する。ULDとその台車とは、プラットホーム上を駆動させることができ、プラットホームに対しては、既知の速度で放射線ビームを横断させることができる。これは、空港でのULDの取扱いを最小化する。
【0056】
トンネル34の形態とされたさらなるシールドが、設けられている。トンネル34は、装置が両端にドアを備えていなくても動作し得るよう、十分に長いものとされている。これにより、装置10を通り抜けるULDの数が最大化される。
【0057】
コリメートのためのスリット(図示せず)が、放射線源と検出器シールドとに、形成されている。それらスリットは、放射線源12,14から放射線検出器18に向けて、放射線ビームを扇形でもって案内するよう機能する。検出器のコリメート用スリット38および検出器18は、トンネル34の高さ全体にわたって延在している。シールド34の側面には、スロット(図示せず)が形成されており、コリメート用スリットと協働して、放射線源12,14から放射線検出器18に向けて放射線を通過させる。
【0058】
放射線シールド16,20,34の各々は、ガンマ線と中性子線との双方を減衰させさらに吸収する。シールドとして使用される材料には、コンクリートや、鉄や、ポリエチレン、がある。放射線シールド16,20,34は、装置の操作者やあるいは装置の近辺にいる他の人を、放射線から保護する。
【0059】
動作時には、イメージ形成対象をなす対象物が、プラットフォーム30上に搭載される。その後、プラットホーム30を、トンネル34を通してモータによって駆動する。ここで説明する実寸大の試作品のスキャナにおいては、プラットフォーム30は、典型的には、10mmという増分に約40秒を要するような速度でもって、駆動された。これは、0.25mm/秒という速度に対応している。したがって、ULD全体のイメージを収集するには、約2時間半という時間を必要とする。実際、ULDが装置を通って移動する速度は、中性子源の強度を増大させることによって、また、検出器アレイの放射線受領面積を増大させることによって、100以上にわたって増大させることができる。
【0060】
対象物がトンネル34を通過する際に、シンチレーションスペクトルが、80個の画素アレイの各要素によって個別的に収集される。プラットフォーム30が10mmだけ移動するたびごとに、これらスペクトルが読み取られてリセットされる。そして、そのスペクトルを使用することによって、各画素ごとに、中性子線のカウント速度とガンマ線のカウント速度とが決定される。その後、各鉛直方向ストリップ内の上方を組み合わせることによって、全体の2次元的な中性子線イメージおよびガンマ線イメージが形成される。
【0061】
得られたイメージは、画素サイズによって制限されるような20mmという鉛直方向の解像度と、80個の画素アレイが読み取る周波数によって制限されるような10mmという水平方向の解像度と、を有している。後述するように、最終イメージを得るに際してデコンボリューション(分解)操作を行うことにより、走査時のプラットフォーム30の運動と20っmという画素幅との組合せの結果として発生するかもしれないようなすべてのにじみを、修正することができる。
【0062】
対象物を透過して各イメージ内の特定の画素において検出される中性子線強度およびガンマ線強度を、それぞれInおよびIgと仮定し、さらに、対象物が存在しない状態で、透過して各イメージ内の特定の画素において検出される中性子線強度およびガンマ線強度を、それぞれI0nおよびI0gと仮定する。
【0063】
その場合、密度ρおよび厚さxという対象物を透過しての実質的に単一エネルギー的な高速中性子線の減衰は、次式を使用して計算することができる。すなわち、
In/I0n = exp(−μ14ρx) …(1)
【0064】
同様に、対象物を透過しての実質的に単一エネルギー的なガンマ線の減衰は、次式を使用して計算することができる。すなわち、
Ig/I0g = exp(−μgρx) …(2)
ここで、μ14は、14MeVにおける中性子線の質量減衰係数である。また、μg は、ガンマ線の質量減衰係数である。そして、これら質量減衰係数の比は、直接的に計算することができる。すなわち、
R= μ14/μg = ln(In/I0n)/ln(Ig/I0g) …(3)
【0065】
ここで、Rは、対象物の組成と直接的に関連しており、種々様々な無機材料や有機材料を識別することを可能とする。
【0066】
図3および図4は、Rが、種々様々な無機材料および有機材料を識別し得る可能性を示している。例えば綿や紙や木といったような主として炭水化物ベースの天然材料や、多くの食品や、例えば羊毛や絹や革といったようなタンパク質ベースの天然材料や、主としてポリマーといったような合成有機材料は、広く識別することができる。図示されるように、例えば陶器やセラミックスや金属物品といったような無機材料は、有機物質と容易に識別することができる。
【0067】
ガンマ線の場合には、カウント速度が大きいことのために、および、背景散乱が小さいことのために、ガンマ線イメージは、形状や密度に関する大部分の情報を付帯している。イメージ内の各画素に関し、量ln(Ig/I0g) が計算される。この量は、放射線源から当該画素に向けての材料の単位面積あたりの合計質量に比例する。このイメージに対して『メキシカンハット』型の尖鋭化フィルタを適用することにより、対象物の解像度を改良し得るとともに、移動の影響を低減させることができ、さらに、画素サイズのにじみを低減させてイメージの水平方向の解像度を向上させることができる。
【0068】
中性子線イメージおよびガンマ線イメージの画素ごとの比は、各画素の平均組成に関する情報を付帯している。この情報は、存在している材料の量には依存しない。
【0069】
中性子線イメージ内におけるカウント値が比較的小さいことのために、組成イメージ内には、多くの画素対画素の雑音が存在する。したがって、5×5画素のガウシアンスムージングフィルタが、イメージに対して適用される。これにより、最終イメージ内における組成情報の解像度が低減するけれども、これによって、約50mm以上の寸法を有した対象物の組成のわずかな変化の可視化を著しく増強することができる。
【0070】
6回の走査に関する結果が、図5〜10に示されている。グレイスケールイメージは、ガンマ線走査だけに関する結果を示している。そのため、従来のX線スキャナによって得られる結果を示している。材料がほとんどない領域あるいは材料が存在していない領域は、白色で示されており、密度の大きな材料は、より濃いグレーで示されている。カラーイメージは、ガンマ線に基づく形状情報および密度情報と、中性子線/ガンマ線の比率イメージからの組成情報と、を組み合わせる。カラーの密度は、材料の密度を示している。すなわち、白色は、介在材料が存在していないことに対応しており、密度の大きな領域は、飽和したカラーで示されている。画素のカラーは、その画素に対するR値に対応している。すなわち、小さなR値は、青色に対応しており、中間的なR値は、青緑から緑色さらには黄色に対応しており、より大きなR値は、オレンジ色に対応している。R値とカラーとの間の正確なマッピングは、各イメージに関して相異している。すなわち、カラースケールは、各場合につき最大の情報を示すために調整される。ULD走査に関しては、増強された有機材料イメージも、示されている。これにより、イメージの有機材料領域が強調される。すなわち、黄色から、オレンジ色へと、さらに赤色へと、強調される。
【0071】
図5aは、自動二輪車に対してガンマ線走査だけを行った場合の結果を示している。図5bは、自動二輪車に関し、ガンマ線による形状情報および密度情報と、中性子線/ガンマ線の比に基づくイメージ走査から得られた組成情報と、を組み合わせて示している。このイメージは、装置の全体的なイメージ形成能力の高さを良好に示している。特に、たとえ20mmという画素サイズよりかなり小さくても、フロントブレーキケーブル52といったような詳細な細部が、図5bにおいては、明瞭に示されている。自動二輪車の金属フレーム54およびエンジン56は、図5bにおいては、青色で示されている。一方、ガソリンタンク中の燃料58や、ゴムタイヤ60や、プラスチック製シート62や、プラスチック製ライトは、オレンジ色で示されている。溜め(キックスタンドの直上)の中のオイル64は、そのまわりの金属と一緒に平均された時に、緑色のパッチとして示されている。これに対し、従来のガンマ線イメージである図5aにおいては、オイル64と溜めとをを識別することが困難であるあるいは不可能である。
【0072】
図6a〜図6cは、木製の棚上に配置された材料サンプルおよび共通の対象物の選択を図示している。この場合においても、図6cに示すように、例えば鉄66や鉛68やアルミニウム70といったような金属は、濃い青色で示されている。例えばコンクリート72やガラス74(コンピュータモニター75中のガラス74)やセラミック粉末(アルミナ、Al2O3)76といったような中間的材料は、薄い青色で示されている。最後に、ヘロイン77やメタアンフェタミン78やコカイン80やTNT82の擬似物といったような有機材料は、材料のR値に依存して、緑色からオレンジ色までにわたる様々なカラーで示されている。一番上の棚上に配置されている2つのセラミック製彫像は、一方が鉄塊84によって充填され、他方が砂糖86によって充填されたものであり、これらは、密度と組成とによって明瞭に識別することができる。
【0073】
図7a〜図7cは、さらなる材料の選択性が示されており、隠蔽された密輸品やアルコールや模擬爆発物や本物の爆発物(データシート)が示されている。3つの中空コンクリートブロックが、棚の上段に配置されている。左側のブロックには、隠蔽された有機材料94(麻薬代用品)が収容されている。中央のブロックは、空虚である。右側のブロックには、アルミナパウダー96が収容されている。これらの3つのブロックは、肉厚壁を有したセラミックや陶器の対象物や中空の対象物や空虚な対象物内に麻薬が隠蔽される状況を、単純にモデル化している。図7bのガンマ線イメージは、空虚なブロック95と、充填されたブロック94,96と、を明瞭に識別している。しかしながら、麻薬代用品が充填されたブロック94と、アルミナで充填されたブロック96と、を区別することはできない。からを分けることができません。これに対し、図7cの中性子線イメージは、隠蔽された有機充填物94を、黄色/オレンジ色のパッチで示すことにより、明瞭なものとしている。棚の中段の左側には、2つの容器が配置されている。一方の容器は、純粋なアルコール98(メタノール)が充填されており、他方の容器は、水100(H2O) が充填されている。アルコール98は、より『有機的な』なものとして(よりR値の大きなものとして)明瞭に示されており、カラー的には、主にオレンジ色で示されている。水100は、より小さなR値を有したものであって、主に緑色で示されている。同じ棚上において、爆発物の模擬品102と実物104とが、同じカラーで示されている。このことは、模擬品が、実物の爆発物の良好な代用品であることを示している。棚の下段においては、12本のガラス瓶が配置されている。このうち、4本のガラス瓶だけが図示されている。2つのガラス瓶は、模擬スピリッツ106(40%のエタノール、60%の水)で充填され、2つのガラス瓶は、水108で充填された。この場合にも、アルコールが含有された瓶106は、水108(主に青色)と比較して、より高いR値(より緑色/オレンジ色)を有したものとして、示されている。これは、図7bの中で示される瓶どうしが区別不可能であることとは、対照的である。
【0074】
図8a〜図8d、図9a〜図9d、図10a〜図10dは、様々な対象物を収容したULDに関して、イメージを形成した結果を示している。すべての図において、得られた結果の議論を単純化するため、ULDの充填は、故意にかなり単純なものとして行った。特に、通常は存在すると思われる大部分のパッキング材料(段ボール、発泡体、ポリスチレン、等)については、省略した。これにより、ULD内の対象物を明瞭に見ることができる。実際には、ほとんどのULDが、より乱雑なものとなることは、理解されるであろう。
【0075】
図8a〜図8dは、様々な家庭用電化製品(冷蔵庫120、および、いくつかのコンピュータ122)と金属部材と中空コンクリートブロック124(セラミックパイプまたは中空彫像または置物の代用品)とツールとが充填されたULDを示している。麻薬126の代用としてのプラスチックビーズの2つのパケットが、1つのコンピュータの内部に、および、1つのコンクリートブロックの内部に、隠蔽されている。さらに、プロパンガスシリンダ128が、ULDの内部に隠されている。図8aは、ULDスキャナによる写真を示している。図8bは、ガンマ線走査のみの結果を示している。いずれの場合においても、麻薬代用品126のパケットが、特に明瞭ではない。プロパンガスシリンダ128は、その形状に基づいて識別することができる。しかしながら、プロパンガスシリンダ内の内容物をなす有機物質の性質に関しては、明瞭ではない。図8cおよび図8dにおいては、中性子線/ガンマ線の比Rに基づいてカラー表示がなされている。その結果、図8cにおいては、無機材料は、青色(麻薬代用品126、および、ガスシリンダ128)で示されており、有機材料は、オレンジ色(コンピュータ122、および、ブロック124)で示されている。2つのイメージを互いに組み合わせる際の比率は、操作者によって調節することができる。これにより、有機材料に関するコントラストと感度とを最大化することができ、黄色や赤色によってカラー表示することができる。結果は、図8dに示されている。麻薬代用品126からなるパケットの双方を、明瞭に認識することができる。
【0076】
図9a〜図9dは、2台のコンピュータ122の内部に隠されたおよび冷蔵庫120の内部に隠された麻薬124を備えたULDを図示している。図8bのガンマ線イメージにおいては、上側の2台のコンピュータ122が、下側の2台のコンピュータとはわずかに相違して見えるかもしれないけれども、それが、機械の構造に起因する本来的な差異であるかどうかは、明らかではない。しかしながら、図9cおよび図9dにおいては、麻薬124の領域が明るいオレンジ色で示されていることによって、大量の有機材料が存在することのために、差異が存在することは、極めて明瞭である。上側2台のコンピュータ122は、パッケージングした麻薬を模擬したプラスチックビーズからなる約1kgのバッグを収容している。これは、コンピュータ構造126の残部の青色(無機材料、すなわち、R値が小さい)とは、対照的である。同様に、図9bのガンマ線イメージからは、冷蔵庫120に関し、イメージの中心部分の異常が冷蔵庫の構造の一部であるかどうかは、明瞭ではない。しかしながら、図9cおよび図9dにおいては、異常124が、明瞭に有機材料に基づくものであって、冷蔵庫の残部をなす構造(特に、右下のコンプレッサー125、および、上部の冷凍庫)とは異なることが明瞭であることは、理解されるであろう。この場合にも、図9dの増強された有機材料イメージにおいては、隠された麻薬124を、はっきり見ることができる。さらに、ULD内の有機材料(とりわけ、顕著に、冷蔵庫120の背後の木製棚128、および、冷蔵庫120の左側の水容器127)は、オレンジ色で示されている。
【0077】
図10a〜図10dは、隠蔽された実物の麻薬(ヘロイン1kg、および、メタアンフェタミン1kg)を収容した他のULDを示している。ヘロイン130は、中空コンクリートブロック132の内部に隠されている。メタアンフェタミン134は、小さな箱の内部に隠されている。この小さな箱は、衣類で満たされたより大きな箱136の内部に配置されている。隠された麻薬の有機的な性質は、図10cおよび図10dにおける組成イメージにおけるカラーによって、明瞭である。この場合にも、図10dの増強された有機物イメージは、隠された麻薬130,134を効果的に露呈させている。特に、コンクリートブロック132の内部で黄色で示すことによって、ヘロイン130を効果的に露呈させている。メタアンフェタミン134が、衣類の箱136(自転車140のフロントフォークの直後)の中に隠されているとともに、組成の識別は、この場合には、それほど参考にならない。しかしながら、麻薬134のパッケージは、その形状と高密度とに基づく潜在的異常性によって、認識することができる。
【0078】
上述したような放射線撮影装置は、密輸材料を検出して識別するに際して、少なくとも3つの方法で使用することができる。第1に、ガンマ線イメージは、例えばULDといったような対象物の内部の様々な物品の形状やサイズや密度に関するかなりの情報を提供する。いくつかの疑わしい材料は、この根拠で、識別することができる。特別の例は、中空物品の中のスペースすなわちキャビティの中に隠された麻薬パケットであろう。第2に、中性子線測定に由来した組成情報に基づくガンマ線イメージのカラー付与は、走査イメージの解釈および疑わしい材料の識別に関し、格別の強力な手掛かりを提供する。特に、主に無機物からなる物品の内部に収容された有機材料の検出が、大幅に促進される。第3に、ある状況下においては、装置を使用することによって、疑わしい材料に関して、中性子線/ガンマ線の比(R値)を測定することができ、これにより、さらに識別を補助することができる。この手法は、被測定対象物質の周囲に材料がほとんどないあるいはわずかしかない場合に、あるいは、被測定領域の近傍において周囲材料が一様である場合に、最良に機能する。これらの状況下においては、周囲材料による中性子線の吸収およびガンマ線の吸収を概略的に補正することができる。そのため、対象物質のR値を得ることができる。
【0079】
第2実施形態においては、14MeVに関する高速中性子線透過と2.45MeVに関する高速中性子線透過との双方を直接的に適用する。しかしながら、以下の議論は、また、2.45MeVや14MeVとは異なる2つのエネルギーを使用した透過に関しても、適用可能である。上述したような単一のエネルギーの中性子線透過の場合とは異なり、各画素に関し、単一の中性子線透過の場合の2つのカウント速度ではなく、3つのカウント割合が測定される。そして、2つの断面積の比を計算することができる。
【0080】
各イメージにおける特定の画素のカウント速度を、それぞれr14,r2.45,rX であると仮定する。これらカウント速度は、放射線源と検出ポイントとの間の材料に関する(未知の)質量(m)に関連するものであるとともに、14MeVという中性子線と2.45MeVという中性子線とX線またはガンマ線とのそれぞれに関しての当該材料の(未知の)質量減衰係数に関連するものである。それら質量減衰係数は、それぞれ、μ14,μ2.45,μX と表記される。以下の関係式が成立する。
r14 = R14exp(−mμ14) …(4)
rX = RX exp(−mμX ) …(5)
r2.45 = R2.45exp(−mμ2.45) …(6)
ここで、R14,R2.45,RX は、放射線の経路上に物品が存在しない場合の、14MeV中性子線、2.45MeV中性子線、X線またはガンマ線、に関するカウント速度である。
【0081】
断面積の比を直接的に計算することができる。
μ14/μX = log(r14/R14)/log(rX/RX) …(7)
μ2.45/μ14 = log(r2.45/R2.45)/log(r14/R14) …(8)
【0082】
これら双方の比が、放射線源と検出器との間のビーム経路内に存在する材料の質量に無関係であることに注意されたい。
【0083】
式(7)および式(8)によって与えられた断面積の比は、種々様々な有機材料や無機材料の識別を可能とする。
【0084】
図11は、各種材料に関し、14MeV中性子線断面積に対しての2.45MeV中性子線断面積の比を、X線またはガンマ線断面積に対しての14MeV中性子線断面積の比と相関させて、示している。2つの断面積の比を使用することは、様々な材料を識別し得るという本発明の能力をさらに増強する。したがって、3つの質量減衰係数イメージを分析することは、被検査対象物の内容物に関する情報によって内容物を推定することを可能としている。
【0085】
図12は、2つの中性子線エネルギーを使用することの付加的な利点を示している。図12a〜図12eに示されているスーツケース150の模擬イメージに関して説明する。イメージ12a〜12cは、それぞれ式(4)(5)(6)に対応するものであって、それぞれ、14MeV中性子線の透過、2.45MeV中性子線の透過、X線またはガンマ線の透過、を示している。イメージ12d,12eは、それぞれ式(7)(8)に対応するものであって、それぞれDT/X線に関するまたDD/DTに関する断面積比を示している。
【0086】
スーツケース150は、綿と羊毛から構成された衣類で満たされ、様々な合法的物品や疑わしい物品を収容している。ボトル152は、水を備えており、ボトル154は、スピリッツを備えている。スーツケース150の右下に見える3つのブロックは、文庫本156、ヘロイン158、および、RDX爆発物160である。さらに、銃162が、スーツケース150の右上に見える。
【0087】
従来のX線イメージ12cによれば、2本のボトル152,154の内容物を区別することは、また、スーツケースの右側に位置した3つのパッケージ156,158,160を区別することは、密度が互いに同等であることのために、困難であるかあるいは不可能である。中性子線イメージ12a,12bは、異なる材料間にわたって、より大きなコントラストを提供する。しかしながら、最良の結果は、断面積比イメージ12d,12eにおいて得られる。特に、図12a,12bにおいて示されているような本156は、図12d,12eにおいては、紙が周囲の衣類に対して同様の組成を有していることのために、実質的に消えている。これに対し、図12eにおいては、麻薬158を、明瞭に識別することができるとともに、図12d,12eにおいては、爆発物160を、明瞭に識別することができる。また、図12d,12eの双方においては、水152およびスピリッツ154をそれぞれ備えているボトルどうしの間の明瞭な違いも、認識することができる。
【0088】
2つの中性子線透過方法の第1の変形例においては、操作者は、2つの断面積比イメージの線形結合に対応するような新しいイメージを形成する。2つのイメージが組み合わせる比率は、操作者によって調節される。これにより、密輸材料に対するコントラストおよび感度を最大化し得るとともに、物品どうしのオーバーラップに起因するノイズの影響を最小化することができる。
【0089】
図13a,13bは、側方から撮影した場合の、コンテナー170に関しての、模擬的な、それぞれ、14MeV中性子線イメージおよびX線イメージを示している。高密度であることにより、スチールパイプ176は、イメージを支配しており、コンピュータ装置の外観を見ることを困難なものとしている。しかしながら、式(7)(8)によって与えられる2つの断面積比イメージから単一イメージを形成することによりすなわち図13cを形成することにより、スチールパイプ176に関連した『ノイズ』を除去することができ、コンピュータボックス174を明らかにすることができる。
【0090】
このアプローチは図11を参照して理解することができる。イメージ(7)(8)の線形結合を選ぶということは、図11の上で描かれた任意の向きのラインからのそれらの距離に基づいて、イメージ画素にカラーを付与することと等価である。2つの選択された材料と平行であるようにしてこのラインを選ぶことによって、これらの材料の任意の組合せに関して同じカラーが付与される。一例においては、ラインは、スチールと、コンピュータのポリスチレン製パッケージと、を結ぶラインに対して平行であるように選ばれている。このようにして、スチールパイプを、それらがコンピュータの前に位置していたとしても、大部分を消すことができる。図13cは、この手法の結果を示している。
【0091】
一例について説明したけれども、そのような実施形態が、本発明において利用可能な多数の原理のうちのほんの1つに過ぎないことは、理解されるであろう。上記の例においては、放射線源が被検査対象物の一方のサイドに配置されかつ検出器が反対側のサイドに配置されていたけれども、第1変形例においては、放射線源を、被検査対象物の上方または下方に配置することができ、なおかつ、検出器を反対側に(下方にまたは上方に)配置することができる。第2の変形例においては、放射線源および検出器は、被検査対象物の周囲において回転させることができる。これにより、様々な角度からの撮影を行うことができる。第3の変化例においては、複数の組をなすX線源と検出器とを使用することにより、同一対象物に関して、様々なイメージを同時に収集することができる。第4の変形例においては、複数組をなす検出器を、中心に位置した1つの放射線源の周囲に配置し、これにより、複数の対象物に関するイメージを同時に得ることができる。
【0092】
当然のことながら、動作時には、被走査対象物を、コンベヤーベルト上においてトンネル内を通過させることができる、あるいは、適切な機構の使用によって吊り上げたり押し込んだりすることができる。
【0093】
上記実施形態においては、対象物を分析装置によって走査するに際して、2つの放射線源を順次的に動作させている。第1の変形例においては、対象物を、2回にわたって分析装置内に通過させ、各走査ごとに1つの放射線源を動作させる。第2の変形例においては、各放射線源に対してそれぞれ専用の検出器を設けておき、対象物を、一度だけ走査する。第3の変形例においては、2つの放射線源を同時に動作させなおかつ単一の検出器を使用する。その際、エネルギー識別を行うことによって、中性子線による信号と、X線またはガンマ線による信号と、を区別する。
【0094】
一変形例(2つの中性子線エネルギーを使用するという実施形態)においては、放射線源は、互いに個別の3つ放射線源を備えている。すなわち、14MeV中性子線を生成する放射線源と、2.45MeV中性子線を生成する放射線源と、X線またはガンマ線を生成する放射線源と、を備えている。中性子線を生成する放射源は、シールされたチューブ状中性子線源とされあるいは同様の性質の他のコンパクトな放射線源とされ、D−TおよびD−D核融合反応によって中性子線を生成する。
【0095】
3つの放射線源は、対象物を分析装置内にわたって走査する際に、連続して駆動される。第1の変形例においては、対象物を、3回にわたって分析装置内を走査させ、各走査のたびごとに、それぞれ1つの放射線源を動作させる。第2の変形例においては、各放射線源に、それぞれ専用の検出器を設けておく。この場合には、対象物を、一度だけ走査する。第3の変形例においては、単一の検出器を使用しつつ2つ以上の放射線源を使用する。その際、エネルギーの識別を行うことにより、高エネルギー中性子線に由来する信号と、低エネルギー中性子線に由来する信号と、X線またはガンマ線に由来する信号と、を識別することができる。
【0096】
当業者であれば、広義に規定されているような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、上記特定の実施形態に対して、様々な変形や修正を行い得ることは、理解されるであろう。したがって、上記実施形態は、本発明の観点を例示するものに過ぎず、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】放射線撮影装置を示す斜視図である。
【図2】放射線撮影装置における検出器アレイの1つのモジュールを概略的に示す図である。
【図3】様々な合法材料や麻薬材料や爆発性材料に関し、14MeV中性子線の質量減衰係数と60Coガンマ線の質量減衰係数との比に関する計算値(R)を示す棒グラフである。
【図4】様々な元素に関し、14MeV中性子線の質量減衰係数と60Coガンマ線の質量減衰係数との比に関する計算値(R)を示すグラフである。
【図5a】自動二輪車に関するガンマ線走査の場合のディスプレイ表示を示す図である。
【図5b】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比に基づいてカラー表示されている。
【図6a】木製の棚内に配置された様々な材料サンプルや共通の対象物の選択を概略的に示す図である。
【図6b】ガンマ線走査におけるディスプレイ表示を示す図である。
【図6c】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比(R)に基づいてカラー表示されている。
【図7a】隠蔽された密輸品やアルコールや模擬爆発物や本物の爆発物といったようさ様々な材料サンプルの選択を概略的に示す図である。
【図7b】ガンマ線走査におけるディスプレイ表示を示す図である。
【図7c】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比(R)に基づいてカラー表示されている。
【図8a】様々な家庭用電気製品金属物質やコンクリートブロックや隠蔽された密輸品を収容したULDを示す写真である。
【図8b】ガンマ線走査におけるディスプレイ表示を示す図である。
【図8c】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比(R)に基づいてカラー表示されている。
【図8d】図8cと同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、有機材料を強調し得るようなさらなる処理が施されている。
【図9a】様々な家庭品や隠蔽された密輸品を収容したULDを示す写真である。
【図9b】ガンマ線走査におけるディスプレイ表示を示す図である。
【図9c】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比(R)に基づいてカラー表示されている。
【図9d】図9cと同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、有機材料を強調し得るようなさらなる処理が施されている。
【図10a】様々な家庭品や隠蔽された密輸品を収容したULDを示す写真である。
【図10b】ガンマ線走査におけるディスプレイ表示を示す図である。
【図10c】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比(R)に基づいてカラー表示されている。
【図10d】図10cと同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、有機材料を強調し得るようなさらなる処理が施されている。
【図11】様々な合法材料や麻薬材料や爆発性材料に関し、特に2.45MeVの中性子線と14MeV中性子線とに関しての断面積の比と、14MeV中性子線とX線またはガンマ線とに関しての断面積の比と、の関係を示すグラフである。
【図12a】スーツケースに関してのシミュレーションにおけるカウント速度のDT中性子線のイメージを示す図である。
【図12b】スーツケースに関してのシミュレーションにおけるカウント速度のDD中性線のイメージを示す図である。
【図12c】スーツケースに関してのシミュレーションにおけるカウント速度のX線のイメージを示す図である。
【図12d】DTとX線とに関しての断面積比のイメージを示す図である。
【図12e】DDとDTとに関しての断面積比のイメージを示す図である。
【図13a】飛行機荷物に関してのシミュレーションにおける14MeV中性子線のイメージを示す図である。
【図13b】同じ荷物に関してのX線のイメージを示す図である。
【図13c】同じ荷物に関して組み合わせたイメージを示す図である。
【符号の説明】
【0098】
10 放射線撮影装置
12 中性子線源
14 X線源
18 検出器アレイ
19 シンチレータロッド
21 フォトダイオード
28 ULD(対象物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置に関するものである。特に、本発明は、隠された物品や物質や材料を検知用の放射線撮影装置に関係がある。例えば、本発明は、例えば航空機手荷物や航空貨物や運送用コンテナといったような入れ物の中に隠匿されたような、武器や爆発物や密輸品や麻薬や他の物品や物質や材料を検出することに、応用することができる。
【背景技術】
【0002】
X線やガンマ線や中性子線に基づいた技術が、上記課題に取り組むために、提案された( Hussein, E.氏、1992年;Gozani, T.氏、1997年;An, J.氏他、2003年)。最も広く採用された技術は、X線スキャナである。このX線スキャナにおいては、X線源から、入れ物を通して、空間的にセグメント化された検出器へと到達するような、X線の透過を測定することにより、被検査対象物のイメージを形成する。X線は、例えば金属といたような稠密でありかつより高い原子番号の材料によって、最も強く減衰する。したがって、X線スキャナは、例えば銃やナイフや他の武器といったような物品の検知に関し、理想的である。しかしながら、X線は、有機物質と無機物質との間の識別力をほとんど有していない。X線を使用した場合には、例えば爆発物や麻薬といったような不法の有機物質と、通常的に使用されている悪意のない有機物質とを、区別することができない。
【0003】
パレット上で荷造りされた商品の検査のために、元素同定システムが、開発されている。NELIS(Neutron Elemental Analysis System)と称されるシステムにおいては、14MeVの中性子発生源と3つのガンマ線検出器とを使用することによって、積荷から誘起されたガンマ線を測定する(Dokhale, P.A.氏他、2001年;Barzilov, A.P.氏、
Womble, P.C.氏、および、Vourvopoulos, G.氏、2001年)。NELIS は、イメージ形成システムでなく、X線スキャナと一緒に使用されて、全体的な組成物の異常を識別することを補助する。
【0004】
パルス型高速中性子分析(Pulsed Fast Neutron Analysis、PFNA)積荷検査システムが、開発され(Gozani, T.氏、1997年;Sawa氏他、1991年)、Ancore株式会社によって市販されている。PFNAシステムにおいては、ナノ秒パルスの高速中性子からなるコリメートされたビームを使用し、得られるガンマ線スペクトルを測定する。PFNA方法においては、測定対象をなす重要な有機物質間の比率を測定することができる。ナノ秒パルスの高速中性子は、飛行時間分光測定法によってガンマ線信号に寄与している特定領域を位置決めするために、必要とされている。実際には、この技術は、粒子加速器が非常に高価で複雑であることによって、中性子源の強度が制限されていることによって、ガンマ線検出効率が低いことによって、さらに、走査速度が遅いことによって、制限されている。
【0005】
中性子線撮影システムは、透過した中性子線を直接的に測定するという利点を有しており、そのため、例えば中性子線によって誘起されたガンマ線を測定するといったような二次的な放射線を測定する技術と比較して、より効率的である。高速中性子線撮影装置は、対象物の視野方向『有機物イメージ』を決定する可能性を有している(Klann 氏、1996年)。X線とは異なり、中性子線は、有機材料によって、特に高い水素含有量を有した有機材料によって、最も強く減衰する。
【0006】
PFNAを補足するため、Rynes 氏他によって、高速中性子とガンマ線との双方を使用した放射線撮影システムが開発された(1999年)。このシステムにおいては、加速器から放出されたナノ秒パルスの高速中性子とガンマ線とが、対象物を透過し、検出された中性子線信号とガンマ線信号とが、到着時刻によって分離される。得られたシステムは、X線撮影装置の利点とPFNAシステムの利点との双方を組み合わせることを主張している。しかしながら、この手法は、非常に高価で複雑な粒子加速器によって制限されている。
【0007】
Bartle氏(1995年)は、高速中性子およびガンマ線透過技術(Millen氏他、1990年)を使用することにより、荷物などにおける密輸品の存在を検出することを提案した。しかしながら、この技術は、イメージの形成を行うものではなく、密輸品検出に対する実用的な適用は、追求されなかった。
【0008】
Mikerov, V.I. 氏他(2000年)は、14MeV中性子発生源と発光スクリーン/CCDカメラ検出システムとを使用したような高速中性子放射線撮影装置の可能性を追求した。Mikerov 氏は、高速中性子用の2mmという厚い発光スクリーンの検出効率が低いことと、中性子発生源によって生成されたX線に対してスクリーンが過敏であることと、の両方によって適用が制限されていることを見出した。
【0009】
14MeV中性子源と熱中性子検出とを使用する中性子線撮影システムは、市販されている(Le Tourneur, P.氏、Bach, P.氏、および、Dance, W.E.氏、1998年)。しかしながら、放射線撮影を行うに先立って、高速中性子が遅くなるという(熱中性子化される)という事実は、撮影対象をなす対象物のサイズを、数cmへと制限する。高速中性子検出を行っているような高速中性子放射線撮影システムは、市販されていない。
【0010】
中性子線撮影に関して行われた最も多くの研究は、原子炉あるいは粒子加速器からの中性子線を使用して研究室で行われたものであり、これは、飛行機荷物を取り扱うような用途には不向きである(Lefevre, H.W.氏他、1996年;Miller, T.G. 氏、1997年;Chen, G.氏および Lanza, R.C.氏、2000年;Brzosko, J.S. 氏他、1992年)。
【0011】
高速中性子放射線撮影システムの能力を向上させて、様々な有機物質間における識別を可能とするために、複数の中性子線エネルギー源と、様々な中性子線エネルギーを識別し得る手段を備えた検出器と、を使用したシステムが、提案された(Chen, G. 氏および Lanza, R.C.氏、2000年;Buffler氏、2001年)。これらのシステムの重大な欠点は、複雑であるようなエネルギー識別型中性子検出器を使用していること、および/または、複雑であるような高エネルギー加速器に基づいた中性子源を使用していること、である。
【0012】
Perion氏他(Perion 氏、2000年)は、高エネルギー(MeV)のX線制道放射または放射性同位体発生源を使用したスキャナを提案した。小さな原子番号のフィルタを急速に挿入して除去することにより、あるいは、検出されたX線のエネルギーを測定することにより、X線源の平均エネルギーを変調することによって、2つのX線エネルギーに関して走査される対象物の透過を測定することが可能である。1つは、コンプトン散乱が支配的であり、他は、対生成が重要である。この情報を使用することにより、走査イメージの各画素内における材料の密度および平均原子番号を決定することができる。この手法の主な欠点は、たとえ非常に高エネルギーのX線源を使用した場合であっても、異なる元素間でのコントラストが低いことである。また、Perion検出器アレイのコストは、非常に高いものである。これに代えて、Perion氏は、X線と中性子線(制道放射ターゲット内で直接的に生成された、あるいは、中性子線生成フィルタの挿入により生成された)との双方の透過の測定によって、同様の情報がもたらし得ることを提案している。この手法の主要な欠点は、反応によって(ガンマ、n)生成された中性子線のエネルギーが小さいことである。これは、中性子線が厚い積荷に侵入するという能力を制限し、透過した中性子線を適切に検出する際の困難さを増大させる。特に、開示された積層型のシンチレータ検出器では、はるかに強度の大きなX線ビームの存在下であると、中性子線を識別し得ないものと考えられる。2重のエネルギーのX線を使用する手法と、X線/中性子線を使用する手法と、に共通した欠点は、X線と中性子線とが広範囲のエネルギーをカバーすることである。これは、単純な指数関数的関係を使用して透過をモデル化することができないこと、および、材料認識のために使用し得るような定量的横断面情報を容易には抽出氏得ないこと、を意味している。
【特許文献1】Bartle, C.M.氏による“Method and apparatus for detectingconcealed substances”と題する米国特許第5,479,023号明細書(1995年12月26日)
【特許文献2】Perion, D.氏他による“System for differentiating betweenorganic and inorganic materials” と題する国際公開第00/43760号パンフレット
【特許文献3】Sawa, Z.P.氏、Gozani, T.氏、Ryge, P.氏による“Contrabanddetection system using direct imaging pulsed fast neutrons”と題する米国特許第5,076,993号明細書(1991年12月31日)
【特許文献4】Tickner, J.R.氏および Sowerby, B.D.氏による“A DetectionSystem”と題するオーストラリア国特許予備出願第2002/953244号明細書(出願日:2002年12月10日)
【非特許文献1】An, J., Xiang, X., Wu, Z., Zhou, L., Wang, L. and Wu, H.,2003. “Progress on developing 60Co container inspection systems”, AppliedRadiation and Isotopes 58 (2003) 315-320.
【非特許文献2】Barzilov, A.P., Womble, P.C. and Vourvopoulos, G., 2001.“NELIS - a neutron elemental analysis system of commodities of pallets”, 2001 Office of National Drug Control Policy International Symposium.
【非特許文献3】Brzosko, J.S. et al, 1992. “Advantages and limitations of 14-MeV neutron radiography”, Nuclear Instruments and Methods B72 (1992) 119-131.
【非特許文献4】Buffler, A., 2001. “Contraband detection by fast neutronscattering”, 2nd National Nuclear Technology Conference, NAC, South Africa,13-15 May 2001, paper D-03.
【非特許文献5】Chen, G. and Lanza, R.C., 2000. “Fast neutron resonanceradiography for elemental mapping”, Final Research Co-ordination Meeting on“Bulk Hydrogen Analysis using Neutrons”, Cape Town, South Africa, 23-26October 2000, pp. 31-38.
【非特許文献6】Dokhale, P.A., Csikai, J., Womble, P.C. and Vourvopoulos, G., 2001. “NELIS - an illicit drug detection system”, AIP Conference Proceedings, 576 (2001) 1061-1064.
【非特許文献7】Gozani, T., 1997. “Neutron based non-intrusive inspection techniques”, Proc. Internat. Conf. On Neutrons in Research and Industry, Crete,Greece, 9-15 June 1996, SPIE Proceedings Series 2867 (1997) 174-181.
【非特許文献8】Hussein, E., 1992. “Detection of explosive materials using nuclear radiation: a critical review”, SPIE Vol. 1736 (1992) 130-137.
【非特許文献9】Klann, R.T., 1996. “Fast neutron (14.5 MeV) radiography: a comparative study”, 5th World Conference on Neutron Radiography, Berlin, 17-20 June 1996,469-483.
【非特許文献10】Lefevre, H. W, et al, 1997. “Using a fast neutronspectrometer system to candle luggage for hidden explosives”, Proc. Internat. Conf. On Neutrons in Research and Industry, Crete, Greece, 9-15 June 1996, SPIE Proceedings Series 2867 (1997) 206-210.
【非特許文献11】Le Tourneur, P., Bach, P. and Dance, W.E., 1998.“Neutron fan beam source for neutron radiography purpose”, 15th Int. Conf. on Applications of Accelerators in Research and Industry, Denton, Texas, USA, Nov. 4-7, 1998.
【非特許文献12】Mikerov, V.I. et al, 2000. “Investigation of prospects offast neutron radiography on the basis of portable equipment”, IAEA Coordinated Research Programme on “Bulk Hydrogen Analysis using Neutrons”, Cape Town,South Africa, 23-6 October 2000, Report F1-RC-655.3.
【非特許文献13】Millen, M.J., Rafter, P.T., Sowerby, B.D., Rainbow, M.T. and Jelenich, L., 1990. “Plant trial of a fast neutron and gamma-raytransmission gauge for the on-belt determination of moisture in lump coke”,Nuclear Geophysics 4 (1990) 215-226.
【非特許文献14】Rynes, J. et al, 1999. “Gamma-ray and neutron radiographyas part of a pulsed fast neutron analysis inspection system”, NuclearInstruments and Methods A422 (1999) 895-899.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、放射線撮影装置に関するものであって、
重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって生成された実質的に単一エネルギーの高速中性子を生成するための中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の中性子線源と;
撮影対象をなす対象物を実質的に透過し得る程度に十分なエネルギーを有したX線源またはガンマ線源と;
中性子線源とX線源とガンマ線源とを包囲するコリメート用ブロックであるとともに、実質的に扇型形状でもって放射させるための1つまたは複数のスロットが形成されているような、ブロックと;
線源から放射された放射エネルギーを受領しさらにその受領したエネルギーを光パルスへと変換する複数のシンチレータ画素を備えた検出器アレイであるとともに、コリメート用ブロックからコリメートされて放射された扇型形状の放射ビームに対して位置合わせされており、これにより、線源からの検出器アレイへと直接的に透過してきた放射のみを受領し得るものとされた、検出器アレイと;
シンチレータによって生成された光パルスを電気信号へと変換するための変換手段と;
線源と検出器アレイとの間を通して対象物を搬送するための搬送手段と;
電気信号に基づいて中性子線の減衰およびX線またはガンマ線の減衰を決定するとともに、線源と検出器アレイとの間に位置した対象物の質量分布および組成を表す出力信号を生成するための、計算手段と;
対象物の質量分布および組成に基づいたイメージを表示するためのディスプレイ手段と;
を具備している。
【0014】
本発明の利点は、中性子線が実質的に単一エネルギー的であるということである。したがって、単純な指数関数的な関係を使用して、中性子線透過をモデル化することができる。さらに、材料認識に役立つ情報が、より正確に得られる。
【0015】
本発明の少なくとも1つの実施形態による装置は、透過した中性子線の直接測定という追加的な利点を有しており、したがって、例えば中性子線によって誘起されたガンマ線といったような二次的放射線を測定するような従来技術システムと比較した場合、はるかに効率的である。
【0016】
放射線撮影装置は、1つ以上の中性子線エネルギーを利用することができる。2つの中性子線エネルギーを使用するという例においては、放射線撮影装置は、2つのチューブを使用することができる。すなわち、一方のチューブは、重水素−三重水素間のム核融合反応によって実質的に14MeVという中性子線を生成し、他方のチューブは、重水素−重水素間の核融合反応によって実質的に2.45MeVという中性子線を生成する。第2エネルギーの中性子線透過の測定を使用することにより、単一のエネルギー透過を行う技術の能力を増強することができる。
【0017】
X線またはガンマ線源は、撮影対象をなす対象物内を実質的に透過し得るに十分であるようなエネルギーを有した、60Coあるいは 137Csといったような放射性同位体放射源を備えることができる。60Coあるいは 137CsX線源は、約1MeVというエネルギーを有することができる。しかしながら、X線源に応じて、他のエネルギーを使用することもできる。これに代えて、X線管または電子リニア加速器を使用することによって、制道放射を生成するができる。
【0018】
X線またはガンマ線源と中性子線源との双方のコリメートは、有利には、散乱を最小化するよう機能する。さらに、放射線源と検出器との双方を適切にコリメートすることにより、ビーム形状を狭いものとすることができ、これにより、対象物に通しての中性子線とガンマ線との減衰を決定する場合に、高い精度を保証することができる。さらに、大いにコリメートされた扇形のビームは、放射線安全性を増大させる。コリメート用ブロックは、厚いパラフィンや、厚いコンクリートや、鉄塊コンクリートシールドブロックや、スチールや、鉛、等から形成することができる。同様に、各検出器アレイは、検出器シールド内に収容することができ、検出器シールドには、コリメート用のスロットを形成することができる。検出器のコリメート用シールドは、鉄から形成することができ、約100mm以上の厚さとすることができる。スロットの幅は、放射線源からの中性子線またはガンマ線を検出器に向けて直接的に通過させ得るものとされ、検出器アレイを散乱放射線から保護することができる。検出器スロットは、検出器アレイとほぼ同じ幅のものとすることができる。線源のコリメート用スロットは、より狭いものとすることができる。
【0019】
検出器アレイは、複数のシンチレータ画素からなる1つ以上の行を備えることができる。
【0020】
同じ検出器アレイによって、中性子線と、X線またはガンマ線と、の双方を検出することができる。エネルギー的識別を使用することによって、信号を識別することができる。あるいは、検出器を、中性子線と、X線またはガンマ線と、に関して、交互的に動作させることができる。中性子線とX線またはガンマ線との検出に際して同一の検出器アレイを使用することの利点は、検出器アレイに要するコストを低減し得ることである。
【0021】
付加的には、個別の検出器アレイを使用することによって、中性子線と、X線またはガンマ線と、をそれぞれ個別に検出することができる。その際、中性子線用の検出器コリメータと、X線またはガンマ線用の検出器コリメータとは、個別的なものとすることも、また、同一のものとすることも、できる。
【0022】
シンチレータは、それらのスペクトル感度がフォトダイオードに緊密に一致するように、選択することができる。さらに、シンチレータは、各シンチレータの少なくとも一部をカバーするために、マスクによって囲むことができる。各マスクは、シンチレータ内へと戻ってくる逸脱した光パルスを反射させ得るような、第1反射表面を有する。マスクは、フォトダイオードによって検出されるシンチレータ光を通すための開口を有している。マスクは、PTFEテープ、および/または、Tyvek(登録商標)紙からなる層を備えることができる。有利には、中性子線用のマスクを備えたプラスチック製シンチレータの効率は、10%以上とすることができる。シンチレータを囲む材料は、シンチレータへと戻ってきた散乱光を確実に反射させて、検出させないことである。各検出器アレイがオレンジ色の発光性プラスチック製シンチレータとシリコン製フォトダイオードとを備えている例においては、装置は、より大きな効率を有しており、イメージ収集を迅速に行うことができて、有利である。さらに、装置は、比較的より安いコストで製造することができる。
【0023】
シリコーンオイルや、GE−688グリース(登録商標)や、ポリシロキサンや、例えばEljen EJ−500セメント(登録商標)といったような光学的セメント、等を使用することにより、フォトダイオードとそれぞれ対応するシンチレータとを光学的に接続することができる。
【0024】
放射線撮影装置が、中性子線とX線またはガンマ線との双方を検出し得るような単一の検出器アレイを備えている場合には、シンチレータは、プラスチック製シンチレータまたは液体シンチレータとすることができる。
【0025】
放射線撮影装置が2つの中性子線源とX線源またはガンマ線源とを備えているような他の例においては、シンチレータは、プラスチック製シンチレータまたは液体シンチレータとすることができる。この例においては、シンチレータは、光電子増倍管に対して接続することができる。
【0026】
放射線撮影装置が個別の中性子線用検出器アレイとガンマ線用検出器アレイとを備えているような場合には、中性子線シンチレータは、好ましくは、プラスチック製シンチレータあるいは液体シンチレータとすることができ、ガンマ線シンチレータは、プラスチック製シンチレータ、または、液体シンチレータ、または、例えばヨウ化セシウムやヨウ化ナトリウムやあるいはゲルマニウム化ビスマスといったような無機物製シンチレータ、とすることができる。これに代えて、X線検出器あるいはガンマ線検出器は、イオン化チャンバとすることができる。
【0027】
各シンチレータの放射線受領面、すなわち、各シンチレータの『エリア』は、単一の画素に対応している。各シンチレータのエリアは、典型的には、およそ20mm×20mmよりも小さいものとすることができる。エリアが小さいほど、空間的解像度が向上する。
【0028】
各シンチレータの厚さは、50〜100mmという範囲とすることができ、検出効率および光収集効率に応じたものとすることができる。イメージ形成の対象物が、空港環境内において典型的に使用されるものといったようなユニットロードデバイスすなわちULDであるような例においては、シンチレータがなすアレイの放射受領面は、およそ120mm×3300mmという寸法を有することができ、約1000個の画素を備えることができる。中性子をおよそ1010個/秒で放出する14MeVの中性子源エネルギーと組み合わされた時には、単一のULDの内容物は、約1分という時間で、イメージ形成することができる。
【0029】
これに代えて、個別の中性子線シンチレータとガンマ線シンチレータとを使用することができる。その場合、例えば、約1000個の中性子線画素と、約500個のガンマ線画素と、が使用される。実際上、ガンマ線画素は、中性子線画素より小さなものとして、形成することができる。これにより、有利には、より大きな解像度の空間的イメージをもたらす。
【0030】
他の例においては、変換手段は、光電子増倍管と波長シフト光ファイバー(WSF)とを備えることができる。この例においては、シンチレータロッドの列または行からの光は、WSFによって集めることができ、マルチアノード型の光電子増倍管へと伝達することができる。光パルスを生成している行および列を場所指定することによって、放射線を遮断しているシンチレータロッドを決定することができる。
【0031】
変換手段は、出力信号を増幅し得るよう、低ノイズかつ高ゲインのアンプを備えることができる。変換手段は、コンピュータを備えることができ、コンピュータは、イメージ処理を行って、コンピュータスクリーン上にイメージを表示することができる。
【0032】
検出器は、ノイズを低減し得るようまた安定性を改善し得るよう、温度を制御することができる。例えば、フォトダイオードおよびプリアンプは、約−10℃あるいはそれ以下にまで、冷却することができる。
【0033】
一例においては、イメージ形成対象をなす対象物を走査する際に、1つ以上の出力が、例えば、対象物を通しての14MeV中性子線の透過の測定と、対象物を通しての1MeVのX線あるいはガンマ線の透過の測定と、によって、得られる。2つのエネルギーの中性子線で走査する場合には、対象物を通しての2.45MeV中性子線の透過が、さらに測定される。本発明は、これら特定のエネルギー値の使用に限定されるものではない。
【0034】
X線源またはガンマ線源および中性子線源から放射線エネルギーを受け取るために単一の検出器アレイが使用される場合には、対象物は、二度以上にわたって走査することができる。
【0035】
X線源またはガンマ線源および中性子線源から放射線エネルギーを受け取るために互いに個別の検出器アレイが使用される場合には、出力信号は、第1シンチレータアレイからの第1出力と、第2シンチレータアレイからの第2出力と、を有することができる。この場合、第1出力は、検出器の各画素位置の中性子線カウント速度に関連するものであり、第2出力は、検出器の各画素位置のX線またはガンマ線のカウント速度に関連するものである。
【0036】
各入力信号は、別々に処理することができる。各画素に関して、単純なシンチレーションスペクトルを個別的に収集することができ、これにより、各画素に関して、中性子線やX線やガンマ線のカウント速度を決定することができる。その後、情報に基づいて、完全な2次元の中性子線イメージと、完全な2次元のX線またはガンマ線イメージと、を形成することができる。得られたイメージは、鉛直方向の解像度が、画素サイズによって支配され、水平方向の解像度が、画素サイズと、アレイが読み取られる周波数と、によって支配されている。
【0037】
コンピュータは、さらに、自動的な材料認識を行うことができる。例えば、透過出力は、コンピュータスクリーン上への表示のために各画素に関し、質量減衰係数イメージへと変換することができる。その場合、様々な画素値に対して、それぞれ対応するカラーを付与することができる。特に、質量減衰係数イメージは、14MeV中性子線の透過とX線またはガンマ線の透過とによって測定されたカウント速度に基づいて、あるいは、14MeV中性子線の透過と2.45MeV中性子線の透過とX線またはガンマ線の透過とによって測定されたカウント速度に基づいて、得ることができる。
【0038】
質量減衰係数イメージの分析は、様々な無機材料および有機材料の識別を可能とする。そのような分析は、対をなす質量減衰係数イメージどうし間の断面積比イメージを形成することにより、行うことができる。1つの中性子線源が使用されているかあるいは2つの中性子源が使用されているかどうかに応じて、断面積比イメージは、中性子線源およびX線源またはガンマ線源の質量減衰係数イメージに基づいて、あるいは、第1および第2中性子源およびX線源またはガンマ線源の質量減衰係数イメージに基づいて、形成することができる。例えば、14MeV中性子線源およびX線源またはガンマ線源を使用して、あるいは、14MeV中性子線源と2.45MeV中性子線源とX線源またはガンマ線源とを使用して、形成することができる。有利には、そのような比は、対象物の質量に依存しない。
【0039】
断面積比イメージどうしを組み合わせる割合は、イメージ内において検査されるべき特定の対象物に対するコントラストおよび感度を最大化し得るように、操作者によって調整することができる。
【0040】
2つの断面積比イメージの一次結合によって、イメージを形成することができる。
【0041】
イメージ内における2つの領域であるとともに、双方の領域が第1物質を備え、なおかつ、一方の領域だけが第2物質を備えている場合、これら領域を識別することができる。断面積の引き算を行うことによって、第1物質のイメージを、効果的に除去することができる。これにより、第2物質のイメージを残して、識別に利用することができる。第2物質の質量は、X線あるいはガンマ線による透過データから得ることができる。
【0042】
一例においては、中性子線源および検出器が静止状態とされ、搬送手段が、中性子線源およびガンマ線源の前方にわたって、対象物を搬送する。他の例においては、対象物が静止状態とされ、搬送手段が、放射線源および検出器アレイを、対象物の両サイドにわたって同期的に移動させる。さらに他の例においては、複数組をなす検出器が、中央に配置された線源の周囲に配置され、これにより、複数の対象物を同時に走査し得るようになっている。これは、処理能力の改善という利点をもたらす。そのような例においては、搬送手段は、中性子線源とそれぞれ対応する検出器との間を通して対象物を移動させ得るように、構成される。これに代えて、放射線源と検出器とは、被検査対象物の周囲にわたって回転可能とされ、これにより、様々な角度からの測定を行い得るようになっている。
【0043】
対象物が中性子線源の前方を移動し得る速度は、あるいは、対象物が中性子線源とX線源あるいはガンマ線との前方を移動し得る速度は、部分的には、中性子線源の強度とガンマ線源の強度とに依存する。14MeVという単一の中性子線源の強度は、1010個/秒の程度とすることができる、あるいは、実用的に可能な大きな値とすることができる。これにより、カウント操作を改良することができる。
【0044】
対象物が中性子線源とX線源あるいはガンマ線との前方を移動し得る速度は、また、シンチレータアレイの放射線受領面と、シンチレータの数と、に依存する。加えて、アレイの長さは、部分的には、イメージ形成対象をなす対象物の長さに依存する。
【0045】
対象物は、中性子線源とガンマ線源と検出器との間を通して走査することができ、シールドされたトンネルを通り抜けさせることができる。搬送手段は、一対をなすレールを備えることができる。これらレールを使用して、対象物を搬送し得る台車またはプラットホームを配置することができる。これに代えて、搬送手段は、トンネルを通して対象物を搬送したりまたは吊り上げたりするための、コンベヤベルト等を備えることができる。搬送手段は、自動化することができ、これにより、対象物を、制御可能な一定速度でもって、中性子線源の前方にわたって、滑らかに搬送することができる。
【0046】
本発明は、船便貨物や、航空貨物のユニットロードデバイス(ULD)や、より小さなコンテナや、パッケージ、に対して適用することができ、密輸品や、爆発物や、他の物品や物質や材料、を検出することができる。本発明は、大部分が無機材料とされた中に隠された有機物質といったような密輸物質の特定能力を向上させることができ、また、特定のクラスの有機材料を、検出したり識別したりすることができる。本発明は、特に、航空機手荷物や航空貨物コンテナや輸送用コンテナ内に隠された爆発物や麻薬や他の密輸品の検出に適している。
【0047】
本発明の少なくとも1つの実施形態における他の利点は、中性子線を生成するための中性子線源の使用を、オンオフ切り替えし得ることである。
【0048】
また、本発明は、検査過程の自動化を促進し得るものであり、人間の操作者に対する依存性を低減させる。
【0049】
さらに、本発明は、高速操作を行うことができる。これにより、大きな処理速度を達成することができる。本発明は、単純であり、低コストであり、さらに、安全な放射線源を使用する。そのため、本発明は、単純でありかつ低コストであるような放射線検出システムを提供する。本発明は、大きな検出速度でもって、なおかつ、小さな誤認確率でもって、動作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明のいくつかの実施形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。
【0051】
図1は、放射線撮影装置10の全体的なレイアウトを図示している。装置10は、互いに個別の2つの放射線源を備えている。第1の放射線源は、MF Physics社による A-325型の中性子線源であって、D−T中性子放出モジュールを備えており、14MeVというエネルギーを有した中性子線エネルギー源12を形成している。この中性子線源は、80〜110kVという電圧で動作する。第2の放射線源は、0.82GBq(あるいは、22mCi)という60Co源14であって、ガンマ線源を構成するものであり、中性子源に対して隣接してかつ右側に位置して、配置されている。中性子線源12および60CoX線源14は、放射線源シールドハウジング16内に配置されいる。
【0052】
1600mm長さかつ20mm幅の検出器アレイ18が、放射線源の近くに配置されており、検出器シールドハウジング20内に収容されている。検出器アレイ18は、図2においてより明瞭に示すように、80個のプラスチック製から構成されている(80個のうちの一部分だけが図示されている)。各シンチレータロッド19は、放射線受領面積が20mm×20mmであり、長さが75mmである。各シンチレータロッド19の放射線受領面積は、イメージフレーム内における単一の画素に対応している。イメージフレームという用語は、所定時間間隔にわたって集積された各画素内でのカウント数からなる二次元配列について記述するために使用されている。シンチレータロッド19は、オレンジ色のプラスチック製のシンチレータから形成されている。これにより、それぞれのプラスチック製シンチレータに対してシリコン製フォトダイオード21のスペクトル応答を適合させることができる。フォトダイオード21は、光学的セメントを介して、それぞれ対応するシンチレータ19に対して光学的に連結されている。反射性マスクが、オレンジ色のシンチレータロッドおよびフォトダイオードとの各組合せに対して塗布されている。これにより、シンチレータロッドから逸脱しようとするすべての光の損失を最小化することができる。
【0053】
第1実施形態においては、入射した中性子線やX線やあるいはガンマ線によってロッド19内に生成されたシンチレーション光は、ロッド19の端部に取り付けられたフォトダイオード21によって検出される。第1の変形例においては、シンチレータロッドの列または行からの光は、波長シフト光ファイバーによって収集され、フォトダイオードに対して伝達される。光パルスを生成する列および行を指標付けすることによって、放射線を遮断しているシンチレータロッドを決定することができる。第2の変形例においては、様々なシンチレータロッドからの光を、波長シフト光ファイバまたは透明な光ファイバーによって収集し、位置認識可能なフォトダイオードに対してあるいは多重陽極光電子増倍管に対して伝達する。これにより、単一の検出器によって、多数のシンチレータロッドからの情報を読み取ることができる。第3の変形例においては、シンチレータロッドのいくつかの列または行からの光を、波長シフト光ファイバーによって収集し、位置認識可能なフォトダイオードあるいは多重陽極光増倍管へと伝達する。光パルスを生成する列および行を指標付けすることによって、放射線を遮断しているシンチレータロッドを決定することができる。
【0054】
それぞれのフォトダイオード21が内部ゲインを有していないので、信号調整用電子回路23は、互いに協働して使用されるプリアンプとゲインの大きなアンプとを備えている。これにより、中性子線とガンマ線との双方に関する出力信号を増幅することができる。
【0055】
装置10は、幅が最大で2.5mでありかつ高さが1.7mであるようなULD28を備えている。イメージの形成対象をなす各ULD28は、プラットホーム30上に設置されている。プラットホーム30は、一対をなすトラック32に対して係合するランナーを有している。実際、空港においては、空港周辺にわたってULDを輸送するために使用されるそれぞれの台車上に搭載された状態で、ULDを走査する。ULDとその台車とは、プラットホーム上を駆動させることができ、プラットホームに対しては、既知の速度で放射線ビームを横断させることができる。これは、空港でのULDの取扱いを最小化する。
【0056】
トンネル34の形態とされたさらなるシールドが、設けられている。トンネル34は、装置が両端にドアを備えていなくても動作し得るよう、十分に長いものとされている。これにより、装置10を通り抜けるULDの数が最大化される。
【0057】
コリメートのためのスリット(図示せず)が、放射線源と検出器シールドとに、形成されている。それらスリットは、放射線源12,14から放射線検出器18に向けて、放射線ビームを扇形でもって案内するよう機能する。検出器のコリメート用スリット38および検出器18は、トンネル34の高さ全体にわたって延在している。シールド34の側面には、スロット(図示せず)が形成されており、コリメート用スリットと協働して、放射線源12,14から放射線検出器18に向けて放射線を通過させる。
【0058】
放射線シールド16,20,34の各々は、ガンマ線と中性子線との双方を減衰させさらに吸収する。シールドとして使用される材料には、コンクリートや、鉄や、ポリエチレン、がある。放射線シールド16,20,34は、装置の操作者やあるいは装置の近辺にいる他の人を、放射線から保護する。
【0059】
動作時には、イメージ形成対象をなす対象物が、プラットフォーム30上に搭載される。その後、プラットホーム30を、トンネル34を通してモータによって駆動する。ここで説明する実寸大の試作品のスキャナにおいては、プラットフォーム30は、典型的には、10mmという増分に約40秒を要するような速度でもって、駆動された。これは、0.25mm/秒という速度に対応している。したがって、ULD全体のイメージを収集するには、約2時間半という時間を必要とする。実際、ULDが装置を通って移動する速度は、中性子源の強度を増大させることによって、また、検出器アレイの放射線受領面積を増大させることによって、100以上にわたって増大させることができる。
【0060】
対象物がトンネル34を通過する際に、シンチレーションスペクトルが、80個の画素アレイの各要素によって個別的に収集される。プラットフォーム30が10mmだけ移動するたびごとに、これらスペクトルが読み取られてリセットされる。そして、そのスペクトルを使用することによって、各画素ごとに、中性子線のカウント速度とガンマ線のカウント速度とが決定される。その後、各鉛直方向ストリップ内の上方を組み合わせることによって、全体の2次元的な中性子線イメージおよびガンマ線イメージが形成される。
【0061】
得られたイメージは、画素サイズによって制限されるような20mmという鉛直方向の解像度と、80個の画素アレイが読み取る周波数によって制限されるような10mmという水平方向の解像度と、を有している。後述するように、最終イメージを得るに際してデコンボリューション(分解)操作を行うことにより、走査時のプラットフォーム30の運動と20っmという画素幅との組合せの結果として発生するかもしれないようなすべてのにじみを、修正することができる。
【0062】
対象物を透過して各イメージ内の特定の画素において検出される中性子線強度およびガンマ線強度を、それぞれInおよびIgと仮定し、さらに、対象物が存在しない状態で、透過して各イメージ内の特定の画素において検出される中性子線強度およびガンマ線強度を、それぞれI0nおよびI0gと仮定する。
【0063】
その場合、密度ρおよび厚さxという対象物を透過しての実質的に単一エネルギー的な高速中性子線の減衰は、次式を使用して計算することができる。すなわち、
In/I0n = exp(−μ14ρx) …(1)
【0064】
同様に、対象物を透過しての実質的に単一エネルギー的なガンマ線の減衰は、次式を使用して計算することができる。すなわち、
Ig/I0g = exp(−μgρx) …(2)
ここで、μ14は、14MeVにおける中性子線の質量減衰係数である。また、μg は、ガンマ線の質量減衰係数である。そして、これら質量減衰係数の比は、直接的に計算することができる。すなわち、
R= μ14/μg = ln(In/I0n)/ln(Ig/I0g) …(3)
【0065】
ここで、Rは、対象物の組成と直接的に関連しており、種々様々な無機材料や有機材料を識別することを可能とする。
【0066】
図3および図4は、Rが、種々様々な無機材料および有機材料を識別し得る可能性を示している。例えば綿や紙や木といったような主として炭水化物ベースの天然材料や、多くの食品や、例えば羊毛や絹や革といったようなタンパク質ベースの天然材料や、主としてポリマーといったような合成有機材料は、広く識別することができる。図示されるように、例えば陶器やセラミックスや金属物品といったような無機材料は、有機物質と容易に識別することができる。
【0067】
ガンマ線の場合には、カウント速度が大きいことのために、および、背景散乱が小さいことのために、ガンマ線イメージは、形状や密度に関する大部分の情報を付帯している。イメージ内の各画素に関し、量ln(Ig/I0g) が計算される。この量は、放射線源から当該画素に向けての材料の単位面積あたりの合計質量に比例する。このイメージに対して『メキシカンハット』型の尖鋭化フィルタを適用することにより、対象物の解像度を改良し得るとともに、移動の影響を低減させることができ、さらに、画素サイズのにじみを低減させてイメージの水平方向の解像度を向上させることができる。
【0068】
中性子線イメージおよびガンマ線イメージの画素ごとの比は、各画素の平均組成に関する情報を付帯している。この情報は、存在している材料の量には依存しない。
【0069】
中性子線イメージ内におけるカウント値が比較的小さいことのために、組成イメージ内には、多くの画素対画素の雑音が存在する。したがって、5×5画素のガウシアンスムージングフィルタが、イメージに対して適用される。これにより、最終イメージ内における組成情報の解像度が低減するけれども、これによって、約50mm以上の寸法を有した対象物の組成のわずかな変化の可視化を著しく増強することができる。
【0070】
6回の走査に関する結果が、図5〜10に示されている。グレイスケールイメージは、ガンマ線走査だけに関する結果を示している。そのため、従来のX線スキャナによって得られる結果を示している。材料がほとんどない領域あるいは材料が存在していない領域は、白色で示されており、密度の大きな材料は、より濃いグレーで示されている。カラーイメージは、ガンマ線に基づく形状情報および密度情報と、中性子線/ガンマ線の比率イメージからの組成情報と、を組み合わせる。カラーの密度は、材料の密度を示している。すなわち、白色は、介在材料が存在していないことに対応しており、密度の大きな領域は、飽和したカラーで示されている。画素のカラーは、その画素に対するR値に対応している。すなわち、小さなR値は、青色に対応しており、中間的なR値は、青緑から緑色さらには黄色に対応しており、より大きなR値は、オレンジ色に対応している。R値とカラーとの間の正確なマッピングは、各イメージに関して相異している。すなわち、カラースケールは、各場合につき最大の情報を示すために調整される。ULD走査に関しては、増強された有機材料イメージも、示されている。これにより、イメージの有機材料領域が強調される。すなわち、黄色から、オレンジ色へと、さらに赤色へと、強調される。
【0071】
図5aは、自動二輪車に対してガンマ線走査だけを行った場合の結果を示している。図5bは、自動二輪車に関し、ガンマ線による形状情報および密度情報と、中性子線/ガンマ線の比に基づくイメージ走査から得られた組成情報と、を組み合わせて示している。このイメージは、装置の全体的なイメージ形成能力の高さを良好に示している。特に、たとえ20mmという画素サイズよりかなり小さくても、フロントブレーキケーブル52といったような詳細な細部が、図5bにおいては、明瞭に示されている。自動二輪車の金属フレーム54およびエンジン56は、図5bにおいては、青色で示されている。一方、ガソリンタンク中の燃料58や、ゴムタイヤ60や、プラスチック製シート62や、プラスチック製ライトは、オレンジ色で示されている。溜め(キックスタンドの直上)の中のオイル64は、そのまわりの金属と一緒に平均された時に、緑色のパッチとして示されている。これに対し、従来のガンマ線イメージである図5aにおいては、オイル64と溜めとをを識別することが困難であるあるいは不可能である。
【0072】
図6a〜図6cは、木製の棚上に配置された材料サンプルおよび共通の対象物の選択を図示している。この場合においても、図6cに示すように、例えば鉄66や鉛68やアルミニウム70といったような金属は、濃い青色で示されている。例えばコンクリート72やガラス74(コンピュータモニター75中のガラス74)やセラミック粉末(アルミナ、Al2O3)76といったような中間的材料は、薄い青色で示されている。最後に、ヘロイン77やメタアンフェタミン78やコカイン80やTNT82の擬似物といったような有機材料は、材料のR値に依存して、緑色からオレンジ色までにわたる様々なカラーで示されている。一番上の棚上に配置されている2つのセラミック製彫像は、一方が鉄塊84によって充填され、他方が砂糖86によって充填されたものであり、これらは、密度と組成とによって明瞭に識別することができる。
【0073】
図7a〜図7cは、さらなる材料の選択性が示されており、隠蔽された密輸品やアルコールや模擬爆発物や本物の爆発物(データシート)が示されている。3つの中空コンクリートブロックが、棚の上段に配置されている。左側のブロックには、隠蔽された有機材料94(麻薬代用品)が収容されている。中央のブロックは、空虚である。右側のブロックには、アルミナパウダー96が収容されている。これらの3つのブロックは、肉厚壁を有したセラミックや陶器の対象物や中空の対象物や空虚な対象物内に麻薬が隠蔽される状況を、単純にモデル化している。図7bのガンマ線イメージは、空虚なブロック95と、充填されたブロック94,96と、を明瞭に識別している。しかしながら、麻薬代用品が充填されたブロック94と、アルミナで充填されたブロック96と、を区別することはできない。からを分けることができません。これに対し、図7cの中性子線イメージは、隠蔽された有機充填物94を、黄色/オレンジ色のパッチで示すことにより、明瞭なものとしている。棚の中段の左側には、2つの容器が配置されている。一方の容器は、純粋なアルコール98(メタノール)が充填されており、他方の容器は、水100(H2O) が充填されている。アルコール98は、より『有機的な』なものとして(よりR値の大きなものとして)明瞭に示されており、カラー的には、主にオレンジ色で示されている。水100は、より小さなR値を有したものであって、主に緑色で示されている。同じ棚上において、爆発物の模擬品102と実物104とが、同じカラーで示されている。このことは、模擬品が、実物の爆発物の良好な代用品であることを示している。棚の下段においては、12本のガラス瓶が配置されている。このうち、4本のガラス瓶だけが図示されている。2つのガラス瓶は、模擬スピリッツ106(40%のエタノール、60%の水)で充填され、2つのガラス瓶は、水108で充填された。この場合にも、アルコールが含有された瓶106は、水108(主に青色)と比較して、より高いR値(より緑色/オレンジ色)を有したものとして、示されている。これは、図7bの中で示される瓶どうしが区別不可能であることとは、対照的である。
【0074】
図8a〜図8d、図9a〜図9d、図10a〜図10dは、様々な対象物を収容したULDに関して、イメージを形成した結果を示している。すべての図において、得られた結果の議論を単純化するため、ULDの充填は、故意にかなり単純なものとして行った。特に、通常は存在すると思われる大部分のパッキング材料(段ボール、発泡体、ポリスチレン、等)については、省略した。これにより、ULD内の対象物を明瞭に見ることができる。実際には、ほとんどのULDが、より乱雑なものとなることは、理解されるであろう。
【0075】
図8a〜図8dは、様々な家庭用電化製品(冷蔵庫120、および、いくつかのコンピュータ122)と金属部材と中空コンクリートブロック124(セラミックパイプまたは中空彫像または置物の代用品)とツールとが充填されたULDを示している。麻薬126の代用としてのプラスチックビーズの2つのパケットが、1つのコンピュータの内部に、および、1つのコンクリートブロックの内部に、隠蔽されている。さらに、プロパンガスシリンダ128が、ULDの内部に隠されている。図8aは、ULDスキャナによる写真を示している。図8bは、ガンマ線走査のみの結果を示している。いずれの場合においても、麻薬代用品126のパケットが、特に明瞭ではない。プロパンガスシリンダ128は、その形状に基づいて識別することができる。しかしながら、プロパンガスシリンダ内の内容物をなす有機物質の性質に関しては、明瞭ではない。図8cおよび図8dにおいては、中性子線/ガンマ線の比Rに基づいてカラー表示がなされている。その結果、図8cにおいては、無機材料は、青色(麻薬代用品126、および、ガスシリンダ128)で示されており、有機材料は、オレンジ色(コンピュータ122、および、ブロック124)で示されている。2つのイメージを互いに組み合わせる際の比率は、操作者によって調節することができる。これにより、有機材料に関するコントラストと感度とを最大化することができ、黄色や赤色によってカラー表示することができる。結果は、図8dに示されている。麻薬代用品126からなるパケットの双方を、明瞭に認識することができる。
【0076】
図9a〜図9dは、2台のコンピュータ122の内部に隠されたおよび冷蔵庫120の内部に隠された麻薬124を備えたULDを図示している。図8bのガンマ線イメージにおいては、上側の2台のコンピュータ122が、下側の2台のコンピュータとはわずかに相違して見えるかもしれないけれども、それが、機械の構造に起因する本来的な差異であるかどうかは、明らかではない。しかしながら、図9cおよび図9dにおいては、麻薬124の領域が明るいオレンジ色で示されていることによって、大量の有機材料が存在することのために、差異が存在することは、極めて明瞭である。上側2台のコンピュータ122は、パッケージングした麻薬を模擬したプラスチックビーズからなる約1kgのバッグを収容している。これは、コンピュータ構造126の残部の青色(無機材料、すなわち、R値が小さい)とは、対照的である。同様に、図9bのガンマ線イメージからは、冷蔵庫120に関し、イメージの中心部分の異常が冷蔵庫の構造の一部であるかどうかは、明瞭ではない。しかしながら、図9cおよび図9dにおいては、異常124が、明瞭に有機材料に基づくものであって、冷蔵庫の残部をなす構造(特に、右下のコンプレッサー125、および、上部の冷凍庫)とは異なることが明瞭であることは、理解されるであろう。この場合にも、図9dの増強された有機材料イメージにおいては、隠された麻薬124を、はっきり見ることができる。さらに、ULD内の有機材料(とりわけ、顕著に、冷蔵庫120の背後の木製棚128、および、冷蔵庫120の左側の水容器127)は、オレンジ色で示されている。
【0077】
図10a〜図10dは、隠蔽された実物の麻薬(ヘロイン1kg、および、メタアンフェタミン1kg)を収容した他のULDを示している。ヘロイン130は、中空コンクリートブロック132の内部に隠されている。メタアンフェタミン134は、小さな箱の内部に隠されている。この小さな箱は、衣類で満たされたより大きな箱136の内部に配置されている。隠された麻薬の有機的な性質は、図10cおよび図10dにおける組成イメージにおけるカラーによって、明瞭である。この場合にも、図10dの増強された有機物イメージは、隠された麻薬130,134を効果的に露呈させている。特に、コンクリートブロック132の内部で黄色で示すことによって、ヘロイン130を効果的に露呈させている。メタアンフェタミン134が、衣類の箱136(自転車140のフロントフォークの直後)の中に隠されているとともに、組成の識別は、この場合には、それほど参考にならない。しかしながら、麻薬134のパッケージは、その形状と高密度とに基づく潜在的異常性によって、認識することができる。
【0078】
上述したような放射線撮影装置は、密輸材料を検出して識別するに際して、少なくとも3つの方法で使用することができる。第1に、ガンマ線イメージは、例えばULDといったような対象物の内部の様々な物品の形状やサイズや密度に関するかなりの情報を提供する。いくつかの疑わしい材料は、この根拠で、識別することができる。特別の例は、中空物品の中のスペースすなわちキャビティの中に隠された麻薬パケットであろう。第2に、中性子線測定に由来した組成情報に基づくガンマ線イメージのカラー付与は、走査イメージの解釈および疑わしい材料の識別に関し、格別の強力な手掛かりを提供する。特に、主に無機物からなる物品の内部に収容された有機材料の検出が、大幅に促進される。第3に、ある状況下においては、装置を使用することによって、疑わしい材料に関して、中性子線/ガンマ線の比(R値)を測定することができ、これにより、さらに識別を補助することができる。この手法は、被測定対象物質の周囲に材料がほとんどないあるいはわずかしかない場合に、あるいは、被測定領域の近傍において周囲材料が一様である場合に、最良に機能する。これらの状況下においては、周囲材料による中性子線の吸収およびガンマ線の吸収を概略的に補正することができる。そのため、対象物質のR値を得ることができる。
【0079】
第2実施形態においては、14MeVに関する高速中性子線透過と2.45MeVに関する高速中性子線透過との双方を直接的に適用する。しかしながら、以下の議論は、また、2.45MeVや14MeVとは異なる2つのエネルギーを使用した透過に関しても、適用可能である。上述したような単一のエネルギーの中性子線透過の場合とは異なり、各画素に関し、単一の中性子線透過の場合の2つのカウント速度ではなく、3つのカウント割合が測定される。そして、2つの断面積の比を計算することができる。
【0080】
各イメージにおける特定の画素のカウント速度を、それぞれr14,r2.45,rX であると仮定する。これらカウント速度は、放射線源と検出ポイントとの間の材料に関する(未知の)質量(m)に関連するものであるとともに、14MeVという中性子線と2.45MeVという中性子線とX線またはガンマ線とのそれぞれに関しての当該材料の(未知の)質量減衰係数に関連するものである。それら質量減衰係数は、それぞれ、μ14,μ2.45,μX と表記される。以下の関係式が成立する。
r14 = R14exp(−mμ14) …(4)
rX = RX exp(−mμX ) …(5)
r2.45 = R2.45exp(−mμ2.45) …(6)
ここで、R14,R2.45,RX は、放射線の経路上に物品が存在しない場合の、14MeV中性子線、2.45MeV中性子線、X線またはガンマ線、に関するカウント速度である。
【0081】
断面積の比を直接的に計算することができる。
μ14/μX = log(r14/R14)/log(rX/RX) …(7)
μ2.45/μ14 = log(r2.45/R2.45)/log(r14/R14) …(8)
【0082】
これら双方の比が、放射線源と検出器との間のビーム経路内に存在する材料の質量に無関係であることに注意されたい。
【0083】
式(7)および式(8)によって与えられた断面積の比は、種々様々な有機材料や無機材料の識別を可能とする。
【0084】
図11は、各種材料に関し、14MeV中性子線断面積に対しての2.45MeV中性子線断面積の比を、X線またはガンマ線断面積に対しての14MeV中性子線断面積の比と相関させて、示している。2つの断面積の比を使用することは、様々な材料を識別し得るという本発明の能力をさらに増強する。したがって、3つの質量減衰係数イメージを分析することは、被検査対象物の内容物に関する情報によって内容物を推定することを可能としている。
【0085】
図12は、2つの中性子線エネルギーを使用することの付加的な利点を示している。図12a〜図12eに示されているスーツケース150の模擬イメージに関して説明する。イメージ12a〜12cは、それぞれ式(4)(5)(6)に対応するものであって、それぞれ、14MeV中性子線の透過、2.45MeV中性子線の透過、X線またはガンマ線の透過、を示している。イメージ12d,12eは、それぞれ式(7)(8)に対応するものであって、それぞれDT/X線に関するまたDD/DTに関する断面積比を示している。
【0086】
スーツケース150は、綿と羊毛から構成された衣類で満たされ、様々な合法的物品や疑わしい物品を収容している。ボトル152は、水を備えており、ボトル154は、スピリッツを備えている。スーツケース150の右下に見える3つのブロックは、文庫本156、ヘロイン158、および、RDX爆発物160である。さらに、銃162が、スーツケース150の右上に見える。
【0087】
従来のX線イメージ12cによれば、2本のボトル152,154の内容物を区別することは、また、スーツケースの右側に位置した3つのパッケージ156,158,160を区別することは、密度が互いに同等であることのために、困難であるかあるいは不可能である。中性子線イメージ12a,12bは、異なる材料間にわたって、より大きなコントラストを提供する。しかしながら、最良の結果は、断面積比イメージ12d,12eにおいて得られる。特に、図12a,12bにおいて示されているような本156は、図12d,12eにおいては、紙が周囲の衣類に対して同様の組成を有していることのために、実質的に消えている。これに対し、図12eにおいては、麻薬158を、明瞭に識別することができるとともに、図12d,12eにおいては、爆発物160を、明瞭に識別することができる。また、図12d,12eの双方においては、水152およびスピリッツ154をそれぞれ備えているボトルどうしの間の明瞭な違いも、認識することができる。
【0088】
2つの中性子線透過方法の第1の変形例においては、操作者は、2つの断面積比イメージの線形結合に対応するような新しいイメージを形成する。2つのイメージが組み合わせる比率は、操作者によって調節される。これにより、密輸材料に対するコントラストおよび感度を最大化し得るとともに、物品どうしのオーバーラップに起因するノイズの影響を最小化することができる。
【0089】
図13a,13bは、側方から撮影した場合の、コンテナー170に関しての、模擬的な、それぞれ、14MeV中性子線イメージおよびX線イメージを示している。高密度であることにより、スチールパイプ176は、イメージを支配しており、コンピュータ装置の外観を見ることを困難なものとしている。しかしながら、式(7)(8)によって与えられる2つの断面積比イメージから単一イメージを形成することによりすなわち図13cを形成することにより、スチールパイプ176に関連した『ノイズ』を除去することができ、コンピュータボックス174を明らかにすることができる。
【0090】
このアプローチは図11を参照して理解することができる。イメージ(7)(8)の線形結合を選ぶということは、図11の上で描かれた任意の向きのラインからのそれらの距離に基づいて、イメージ画素にカラーを付与することと等価である。2つの選択された材料と平行であるようにしてこのラインを選ぶことによって、これらの材料の任意の組合せに関して同じカラーが付与される。一例においては、ラインは、スチールと、コンピュータのポリスチレン製パッケージと、を結ぶラインに対して平行であるように選ばれている。このようにして、スチールパイプを、それらがコンピュータの前に位置していたとしても、大部分を消すことができる。図13cは、この手法の結果を示している。
【0091】
一例について説明したけれども、そのような実施形態が、本発明において利用可能な多数の原理のうちのほんの1つに過ぎないことは、理解されるであろう。上記の例においては、放射線源が被検査対象物の一方のサイドに配置されかつ検出器が反対側のサイドに配置されていたけれども、第1変形例においては、放射線源を、被検査対象物の上方または下方に配置することができ、なおかつ、検出器を反対側に(下方にまたは上方に)配置することができる。第2の変形例においては、放射線源および検出器は、被検査対象物の周囲において回転させることができる。これにより、様々な角度からの撮影を行うことができる。第3の変化例においては、複数の組をなすX線源と検出器とを使用することにより、同一対象物に関して、様々なイメージを同時に収集することができる。第4の変形例においては、複数組をなす検出器を、中心に位置した1つの放射線源の周囲に配置し、これにより、複数の対象物に関するイメージを同時に得ることができる。
【0092】
当然のことながら、動作時には、被走査対象物を、コンベヤーベルト上においてトンネル内を通過させることができる、あるいは、適切な機構の使用によって吊り上げたり押し込んだりすることができる。
【0093】
上記実施形態においては、対象物を分析装置によって走査するに際して、2つの放射線源を順次的に動作させている。第1の変形例においては、対象物を、2回にわたって分析装置内に通過させ、各走査ごとに1つの放射線源を動作させる。第2の変形例においては、各放射線源に対してそれぞれ専用の検出器を設けておき、対象物を、一度だけ走査する。第3の変形例においては、2つの放射線源を同時に動作させなおかつ単一の検出器を使用する。その際、エネルギー識別を行うことによって、中性子線による信号と、X線またはガンマ線による信号と、を区別する。
【0094】
一変形例(2つの中性子線エネルギーを使用するという実施形態)においては、放射線源は、互いに個別の3つ放射線源を備えている。すなわち、14MeV中性子線を生成する放射線源と、2.45MeV中性子線を生成する放射線源と、X線またはガンマ線を生成する放射線源と、を備えている。中性子線を生成する放射源は、シールされたチューブ状中性子線源とされあるいは同様の性質の他のコンパクトな放射線源とされ、D−TおよびD−D核融合反応によって中性子線を生成する。
【0095】
3つの放射線源は、対象物を分析装置内にわたって走査する際に、連続して駆動される。第1の変形例においては、対象物を、3回にわたって分析装置内を走査させ、各走査のたびごとに、それぞれ1つの放射線源を動作させる。第2の変形例においては、各放射線源に、それぞれ専用の検出器を設けておく。この場合には、対象物を、一度だけ走査する。第3の変形例においては、単一の検出器を使用しつつ2つ以上の放射線源を使用する。その際、エネルギーの識別を行うことにより、高エネルギー中性子線に由来する信号と、低エネルギー中性子線に由来する信号と、X線またはガンマ線に由来する信号と、を識別することができる。
【0096】
当業者であれば、広義に規定されているような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、上記特定の実施形態に対して、様々な変形や修正を行い得ることは、理解されるであろう。したがって、上記実施形態は、本発明の観点を例示するものに過ぎず、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】放射線撮影装置を示す斜視図である。
【図2】放射線撮影装置における検出器アレイの1つのモジュールを概略的に示す図である。
【図3】様々な合法材料や麻薬材料や爆発性材料に関し、14MeV中性子線の質量減衰係数と60Coガンマ線の質量減衰係数との比に関する計算値(R)を示す棒グラフである。
【図4】様々な元素に関し、14MeV中性子線の質量減衰係数と60Coガンマ線の質量減衰係数との比に関する計算値(R)を示すグラフである。
【図5a】自動二輪車に関するガンマ線走査の場合のディスプレイ表示を示す図である。
【図5b】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比に基づいてカラー表示されている。
【図6a】木製の棚内に配置された様々な材料サンプルや共通の対象物の選択を概略的に示す図である。
【図6b】ガンマ線走査におけるディスプレイ表示を示す図である。
【図6c】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比(R)に基づいてカラー表示されている。
【図7a】隠蔽された密輸品やアルコールや模擬爆発物や本物の爆発物といったようさ様々な材料サンプルの選択を概略的に示す図である。
【図7b】ガンマ線走査におけるディスプレイ表示を示す図である。
【図7c】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比(R)に基づいてカラー表示されている。
【図8a】様々な家庭用電気製品金属物質やコンクリートブロックや隠蔽された密輸品を収容したULDを示す写真である。
【図8b】ガンマ線走査におけるディスプレイ表示を示す図である。
【図8c】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比(R)に基づいてカラー表示されている。
【図8d】図8cと同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、有機材料を強調し得るようなさらなる処理が施されている。
【図9a】様々な家庭品や隠蔽された密輸品を収容したULDを示す写真である。
【図9b】ガンマ線走査におけるディスプレイ表示を示す図である。
【図9c】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比(R)に基づいてカラー表示されている。
【図9d】図9cと同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、有機材料を強調し得るようなさらなる処理が施されている。
【図10a】様々な家庭品や隠蔽された密輸品を収容したULDを示す写真である。
【図10b】ガンマ線走査におけるディスプレイ表示を示す図である。
【図10c】同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、イメージは、14MeV中性子線とガンマ線とに関する質量減衰係数比(R)に基づいてカラー表示されている。
【図10d】図10cと同様のディスプレイ表示を示す図であり、この場合には、有機材料を強調し得るようなさらなる処理が施されている。
【図11】様々な合法材料や麻薬材料や爆発性材料に関し、特に2.45MeVの中性子線と14MeV中性子線とに関しての断面積の比と、14MeV中性子線とX線またはガンマ線とに関しての断面積の比と、の関係を示すグラフである。
【図12a】スーツケースに関してのシミュレーションにおけるカウント速度のDT中性子線のイメージを示す図である。
【図12b】スーツケースに関してのシミュレーションにおけるカウント速度のDD中性線のイメージを示す図である。
【図12c】スーツケースに関してのシミュレーションにおけるカウント速度のX線のイメージを示す図である。
【図12d】DTとX線とに関しての断面積比のイメージを示す図である。
【図12e】DDとDTとに関しての断面積比のイメージを示す図である。
【図13a】飛行機荷物に関してのシミュレーションにおける14MeV中性子線のイメージを示す図である。
【図13b】同じ荷物に関してのX線のイメージを示す図である。
【図13c】同じ荷物に関して組み合わせたイメージを示す図である。
【符号の説明】
【0098】
10 放射線撮影装置
12 中性子線源
14 X線源
18 検出器アレイ
19 シンチレータロッド
21 フォトダイオード
28 ULD(対象物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線撮影装置であって、
重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって生成された実質的に単一エネルギーの高速中性子を生成するための中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の中性子線源と;
撮影対象をなす対象物を実質的に透過し得る程度に十分なエネルギーを有したX線源またはガンマ線源と;
前記中性子線源と前記X線源と前記ガンマ線源とを包囲するコリメート用ブロックであるとともに、実質的に扇型形状でもって放射させるための1つまたは複数のスロットが形成されているような、ブロックと;
前記線源から放射された放射エネルギーを受領しさらにその受領したエネルギーを光パルスへと変換する複数のシンチレータ画素を備えた検出器アレイであるとともに、前記コリメート用ブロックからコリメートされて放射された前記扇型形状の放射ビームに対して位置合わせされており、これにより、前記線源からの前記検出器アレイへと直接的に透過してきた放射のみを受領し得るものとされた、検出器アレイと;
前記シンチレータによって生成された前記光パルスを電気信号へと変換するための変換手段と;
前記線源と前記検出器アレイとの間を通して前記対象物を搬送するための搬送手段と;
前記電気信号に基づいて前記中性子線の減衰および前記X線または前記ガンマ線の減衰を決定するとともに、前記線源と前記検出器アレイとの間に位置した前記対象物の質量分布および組成を表す出力信号を生成するための、計算手段と;
前記対象物の前記質量分布および前記組成に基づいたイメージを表示するためのディスプレイ手段と;
を具備することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
前記X線源または前記ガンマ線源が、 137Cs、または、60Co、または、実質的に1MeVというエネルギーを有した同様の放射性同位体発生源、を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
前記X線源または前記ガンマ線源が、ターゲット上においてX線制道放射を行うことによってX線を生成するような、X線チューブまたは電子加速器とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源が、前記X線源または前記ガンマ線源からのX線またはガンマ線よりも実質的に大きなエネルギーを有した中性子線を生成し、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の同じスロットを通して放射するように配置され、
単一の検出器アレイが使用され、
この検出器アレイが、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
ガンマ線と中性子線との間の区別が、前記シンチレータに対するエネルギーに基づいて行われていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の同じスロットを通して放射するように配置され、
単一の検出器アレイが使用され、
この検出器アレイが、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、交互に駆動されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の互いに平行な別々のスロットを通して放射するように配置され、
2つの検出器アレイが使用され、
一方の検出器アレイが、中性子線の検出用に、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
他方の検出器アレイが、X線またはガンマ線の検出用に、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源に関連するスロットおよび前記検出器に関連するスロットが、前記線源によって前記検出器を十分に照射し得るよう、なおかつ、散乱した放射の検出を最小化し得るよう、十分に幅広のものとされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって中性子線を生成するための第2中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の第2中性子線源を具備し、
この第2中性子線源を使用して、前記中性子線源に対して相補的な核融合反応を行うことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
請求項8記載の放射線撮影装置において、
前記第2中性子線源からの中性子線を、個別の検出器アレイによって検出し、
この個別の検出器アレイを、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備えたものとすることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項10】
請求項9記載の放射線撮影装置において、
前記2つの中性子線源のうちの一方が、実質的に14MeVというエネルギーを有し、
前記2つの中性子線源のうちの他方が、実質的に2.45MeVというエネルギーを有していることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段が、複数のフォトダイオードを備え、
シンチレータ材料が、前記フォトダイオードの応答に対して実質的に適合した発光波長を有するものとして選択可能とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段が、交差した複数の波長シフトファイバを備え、
これらファイバが、単一アノード型のまたはマルチアノード型の複数の光電子増倍管に対して接続されていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項13】
請求項11または12記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段からの電気信号を使用して、前記中性子線源からの中性子線の前記対象物を通しての透過と前記X線源またはガンマ線源からのX線またはガンマ線の前記対象物を通しての透過とを決定する、あるいは、前記双方の中性子線源からの中性子線の前記対象物を通しての透過と前記X線源またはガンマ線源からのX線またはガンマ線の前記対象物を通しての透過とを決定することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項14】
請求項13記載の放射線撮影装置において、
前記透過を使用して、ディスプレイの各画素に関する質量減衰係数イメージを計算し、
様々な画素の値に対してそれぞれ対応したカラーを付与し、
前記イメージを、質量分布と、前記計算によって決定された組成と、に基づいて決定することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記計算手段が、コンピュータを備え、
このコンピュータが、イメージ処理を実行するとともに、コンピュータスクリーン上にそれらイメージを表示することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項16】
請求項15記載の放射線撮影装置において、
前記出力信号が、各画素に関する質量減衰係数イメージへと変換され、
このイメージが、様々な画素値に応じてそれぞれ対応するカラーを付与した上で、コンピュータスクリーン上に表示されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項17】
請求項16記載の放射線撮影装置において、
前記質量減衰係数イメージが、重水素−三重水素由来の中性子線または重水素−重水素由来の中性子線とX線またはガンマ線との各々に関する透過から測定されたカウント速度に基づいて得られる、または、重水素−三重水素由来の中性子線と重水素−重水素由来の中性子線とX線またはガンマ線との各々に関する透過から測定されたカウント速度に基づいて得られることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項18】
請求項17記載の放射線撮影装置において、
前記コンピュータを動作させることにより、複数の質量減衰係数イメージの間にわたって複数の断面積比イメージを得ることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項19】
請求項18記載の放射線撮影装置において、
前記複数の断面積比イメージの各々を、検査対象をなす特定の対象物に関するコントラストおよび感度を最大化し得るような比率でもって、組み合わせることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項20】
請求項18または19記載の放射線撮影装置において、
前記コンピュータが、測定された断面積に基づいて自動的に材料を識別し得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源および前記検出器アレイが、固定され、
前記搬送手段が、前記中性子線源の前方にわたって、前記対象物を搬送することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記対象物が、固定され、
前記搬送手段が、前記線源および前記検出器アレイを、前記対象物の両サイドにわたって同期的に移動させることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項23】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
複数組をなす検出器が、中央に配置された前記線源の周囲に配置され、
これにより、複数の対象物を同時に走査し得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項24】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源および前記検出器アレイが、被検査対象物の周囲にわたって回転可能とされ、これにより、様々な角度からの測定を行い得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
重水素−重水素に由来するおよび/または重水素−三重水素に由来する前記中性子線源の強度が、1010個/秒の程度とされている、あるいは、実用的に可能な大きな値とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項26】
請求項11記載の放射線撮影装置において、
前記複数のシンチレータが、マスクによって囲まれており、これにより、それらシンチレータの少なくとも一部が被覆されており、
各マスクが、前記シンチレータ内へと戻ってくる逸脱した光パルスを反射させ得るような、第1反射表面を有していることを特徴とする放射線撮影装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線撮影装置であって、
重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって生成された実質的に単一エネルギーの高速中性子を生成するための中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の中性子線源と;
撮影対象をなす対象物を実質的に透過し得る程度に十分なエネルギーを有したX線源またはガンマ線源と;
前記中性子線源と前記X線源と前記ガンマ線源とを包囲するコリメート用ブロックであるとともに、実質的に扇型形状でもって放射させるための1つまたは複数のスロットが形成されているような、ブロックと;
前記線源から放射された放射エネルギーを受領しさらにその受領したエネルギーを光パルスへと変換する複数のシンチレータ画素を備えた検出器アレイであるとともに、前記コリメート用ブロックからコリメートされて放射された前記扇型形状の放射ビームに対して位置合わせされており、これにより、前記線源からの前記検出器アレイへと直接的に透過してきた放射のみを受領し得るものとされた、検出器アレイと;
前記シンチレータによって生成された前記光パルスを電気信号へと変換するための変換手段と;
前記線源と前記検出器アレイとの間を通して前記対象物を搬送するための搬送手段と;
前記電気信号に基づいて前記中性子線の減衰および前記X線または前記ガンマ線の減衰を決定するとともに、前記線源と前記検出器アレイとの間に位置した前記対象物の質量分布および組成を表す出力信号を生成するための、計算手段と;
前記対象物の前記質量分布および前記組成に基づいたイメージを表示するためのディスプレイ手段と;
を具備することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
前記X線源または前記ガンマ線源が、 137Cs、または、60Co、または、実質的に1MeVというエネルギーを有した同様の放射性同位体発生源、を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
前記X線源または前記ガンマ線源が、ターゲット上においてX線制道放射を行うことによってX線を生成するような、X線チューブまたは電子加速器とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源が、前記X線源または前記ガンマ線源からのX線またはガンマ線よりも実質的に大きなエネルギーを有した中性子線を生成し、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の同じスロットを通して放射するように配置され、
単一の検出器アレイが使用され、
この検出器アレイが、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
ガンマ線と中性子線との間の区別が、前記シンチレータに対するエネルギーに基づいて行われていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の同じスロットを通して放射するように配置され、
単一の検出器アレイが使用され、
この検出器アレイが、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、交互に駆動されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の互いに平行な別々のスロットを通して放射するように配置され、
2つの検出器アレイが使用され、
一方の検出器アレイが、中性子線の検出用に、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
他方の検出器アレイが、X線またはガンマ線の検出用に、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源に関連するスロットおよび前記検出器に関連するスロットが、前記線源によって前記検出器を十分に照射し得るよう、なおかつ、散乱した放射の検出を最小化し得るよう、十分に幅広のものとされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって中性子線を生成するための第2中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の第2中性子線源を具備し、
この第2中性子線源を使用して、前記中性子線源に対して相補的な核融合反応を行うことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
請求項8記載の放射線撮影装置において、
前記第2中性子線源からの中性子線を、個別の検出器アレイによって検出し、
この個別の検出器アレイを、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備えたものとすることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項10】
請求項9記載の放射線撮影装置において、
前記2つの中性子線源のうちの一方が、実質的に14MeVというエネルギーを有し、
前記2つの中性子線源のうちの他方が、実質的に2.45MeVというエネルギーを有していることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段が、複数のフォトダイオードを備え、
シンチレータ材料が、前記フォトダイオードの応答に対して実質的に適合した発光波長を有するものとして選択可能とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段が、交差した複数の波長シフトファイバを備え、
これらファイバが、単一アノード型のまたはマルチアノード型の複数の光増倍管に対して接続されていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項13】
請求項11または12記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段からの電気信号を使用して、前記中性子線源からの中性子線の前記対象物を通しての透過と前記X線源またはガンマ線源からのX線またはガンマ線の前記対象物を通しての透過とを決定する、あるいは、前記双方の中性子線源からの中性子線の前記対象物を通しての透過と前記X線源またはガンマ線源からのX線またはガンマ線の前記対象物を通しての透過とを決定することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項14】
請求項13記載の放射線撮影装置において、
前記透過を使用して、ディスプレイの各画素に関する質量減衰係数イメージを計算し、
様々な画素の値に対してそれぞれ対応したカラーを付与し、
前記イメージを、質量分布と、前記計算によって決定された組成と、に基づいて決定することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記計算手段が、コンピュータを備え、
このコンピュータが、イメージ処理を実行するとともに、コンピュータスクリーン上にそれらイメージを表示することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項16】
請求項15記載の放射線撮影装置において、
前記出力信号が、各画素に関する質量減衰係数イメージへと変換され、
このイメージが、様々な画素値に応じてそれぞれ対応するカラーを付与した上で、コンピュータスクリーン上に表示されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項17】
請求項16記載の放射線撮影装置において、
前記質量減衰係数イメージが、重水素−三重水素由来の中性子線または重水素−重水素由来の中性子線とX線またはガンマ線との各々に関する透過から測定されたカウント速度に基づいて得られる、または、重水素−三重水素由来の中性子線と重水素−重水素由来の中性子線とX線またはガンマ線との各々に関する透過から測定されたカウント速度に基づいて得られることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項18】
請求項17記載の放射線撮影装置において、
前記コンピュータを動作させることにより、複数の質量減衰係数イメージの間にわたって複数の断面積比イメージを得ることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項19】
請求項18記載の放射線撮影装置において、
前記複数の断面積比イメージの各々を、検査対象をなす特定の対象物に関するコントラストおよび感度を最大化し得るような比率でもって、組み合わせることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項20】
請求項18または19記載の放射線撮影装置において、
前記コンピュータが、測定された断面積に基づいて自動的に材料を識別し得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項21】
請求項19記載の放射線撮影装置において、
断面積イメージどうしを組み合わせる比率が、操作者によって調節可能とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源および前記検出器アレイが、固定され、
前記搬送手段が、前記中性子線源の前方にわたって、前記対象物を搬送することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記対象物が、固定され、
前記搬送手段が、前記線源および前記検出器アレイを、前記対象物の両サイドにわたって同期的に移動させることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
複数組をなす検出器が、中央に配置された前記線源の周囲に配置され、
これにより、複数の対象物を同時に走査し得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源および前記検出器アレイに対して前記対象物を回転させることにより、あるいは、前記対象物に対して前記線源および前記検出器アレイを回転させることにより、様々な角度からの測定を行い得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
重水素−重水素に由来するおよび/または重水素−三重水素に由来する前記中性子線源の強度が、1010個/秒の程度とされている、あるいは、実用的に可能な大きな値とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項27】
請求項11記載の放射線撮影装置において、
前記複数のシンチレータが、マスクによって囲まれており、これにより、それらシンチレータの少なくとも一部が被覆されており、
各マスクが、前記シンチレータ内へと戻ってくる逸脱した光パルスを反射させ得るような、第1反射表面を有していることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項1】
放射線撮影装置であって、
重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって生成された実質的に単一エネルギーの高速中性子を生成するための中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の中性子線源と;
撮影対象をなす対象物を実質的に透過し得る程度に十分なエネルギーを有したX線源またはガンマ線源と;
前記中性子線源と前記X線源と前記ガンマ線源とを包囲するコリメート用ブロックであるとともに、実質的に扇型形状でもって放射させるための1つまたは複数のスロットが形成されているような、ブロックと;
前記線源から放射された放射エネルギーを受領しさらにその受領したエネルギーを光パルスへと変換する複数のシンチレータ画素を備えた検出器アレイであるとともに、前記コリメート用ブロックからコリメートされて放射された前記扇型形状の放射ビームに対して位置合わせされており、これにより、前記線源からの前記検出器アレイへと直接的に透過してきた放射のみを受領し得るものとされた、検出器アレイと;
前記シンチレータによって生成された前記光パルスを電気信号へと変換するための変換手段と;
前記線源と前記検出器アレイとの間を通して前記対象物を搬送するための搬送手段と;
前記電気信号に基づいて前記中性子線の減衰および前記X線または前記ガンマ線の減衰を決定するとともに、前記線源と前記検出器アレイとの間に位置した前記対象物の質量分布および組成を表す出力信号を生成するための、計算手段と;
前記対象物の前記質量分布および前記組成に基づいたイメージを表示するためのディスプレイ手段と;
を具備することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
前記X線源または前記ガンマ線源が、 137Cs、または、60Co、または、実質的に1MeVというエネルギーを有した同様の放射性同位体発生源、を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
前記X線源または前記ガンマ線源が、ターゲット上においてX線制道放射を行うことによってX線を生成するような、X線チューブまたは電子加速器とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源が、前記X線源または前記ガンマ線源からのX線またはガンマ線よりも実質的に大きなエネルギーを有した中性子線を生成し、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の同じスロットを通して放射するように配置され、
単一の検出器アレイが使用され、
この検出器アレイが、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
ガンマ線と中性子線との間の区別が、前記シンチレータに対するエネルギーに基づいて行われていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の同じスロットを通して放射するように配置され、
単一の検出器アレイが使用され、
この検出器アレイが、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、交互に駆動されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の互いに平行な別々のスロットを通して放射するように配置され、
2つの検出器アレイが使用され、
一方の検出器アレイが、中性子線の検出用に、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
他方の検出器アレイが、X線またはガンマ線の検出用に、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源に関連するスロットおよび前記検出器に関連するスロットが、前記線源によって前記検出器を十分に照射し得るよう、なおかつ、散乱した放射の検出を最小化し得るよう、十分に幅広のものとされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって中性子線を生成するための第2中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の第2中性子線源を具備し、
この第2中性子線源を使用して、前記中性子線源に対して相補的な核融合反応を行うことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
請求項8記載の放射線撮影装置において、
前記第2中性子線源からの中性子線を、個別の検出器アレイによって検出し、
この個別の検出器アレイを、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備えたものとすることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項10】
請求項9記載の放射線撮影装置において、
前記2つの中性子線源のうちの一方が、実質的に14MeVというエネルギーを有し、
前記2つの中性子線源のうちの他方が、実質的に2.45MeVというエネルギーを有していることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段が、複数のフォトダイオードを備え、
シンチレータ材料が、前記フォトダイオードの応答に対して実質的に適合した発光波長を有するものとして選択可能とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段が、交差した複数の波長シフトファイバを備え、
これらファイバが、単一アノード型のまたはマルチアノード型の複数の光電子増倍管に対して接続されていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項13】
請求項11または12記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段からの電気信号を使用して、前記中性子線源からの中性子線の前記対象物を通しての透過と前記X線源またはガンマ線源からのX線またはガンマ線の前記対象物を通しての透過とを決定する、あるいは、前記双方の中性子線源からの中性子線の前記対象物を通しての透過と前記X線源またはガンマ線源からのX線またはガンマ線の前記対象物を通しての透過とを決定することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項14】
請求項13記載の放射線撮影装置において、
前記透過を使用して、ディスプレイの各画素に関する質量減衰係数イメージを計算し、
様々な画素の値に対してそれぞれ対応したカラーを付与し、
前記イメージを、質量分布と、前記計算によって決定された組成と、に基づいて決定することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記計算手段が、コンピュータを備え、
このコンピュータが、イメージ処理を実行するとともに、コンピュータスクリーン上にそれらイメージを表示することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項16】
請求項15記載の放射線撮影装置において、
前記出力信号が、各画素に関する質量減衰係数イメージへと変換され、
このイメージが、様々な画素値に応じてそれぞれ対応するカラーを付与した上で、コンピュータスクリーン上に表示されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項17】
請求項16記載の放射線撮影装置において、
前記質量減衰係数イメージが、重水素−三重水素由来の中性子線または重水素−重水素由来の中性子線とX線またはガンマ線との各々に関する透過から測定されたカウント速度に基づいて得られる、または、重水素−三重水素由来の中性子線と重水素−重水素由来の中性子線とX線またはガンマ線との各々に関する透過から測定されたカウント速度に基づいて得られることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項18】
請求項17記載の放射線撮影装置において、
前記コンピュータを動作させることにより、複数の質量減衰係数イメージの間にわたって複数の断面積比イメージを得ることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項19】
請求項18記載の放射線撮影装置において、
前記複数の断面積比イメージの各々を、検査対象をなす特定の対象物に関するコントラストおよび感度を最大化し得るような比率でもって、組み合わせることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項20】
請求項18または19記載の放射線撮影装置において、
前記コンピュータが、測定された断面積に基づいて自動的に材料を識別し得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源および前記検出器アレイが、固定され、
前記搬送手段が、前記中性子線源の前方にわたって、前記対象物を搬送することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記対象物が、固定され、
前記搬送手段が、前記線源および前記検出器アレイを、前記対象物の両サイドにわたって同期的に移動させることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項23】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
複数組をなす検出器が、中央に配置された前記線源の周囲に配置され、
これにより、複数の対象物を同時に走査し得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項24】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源および前記検出器アレイが、被検査対象物の周囲にわたって回転可能とされ、これにより、様々な角度からの測定を行い得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
重水素−重水素に由来するおよび/または重水素−三重水素に由来する前記中性子線源の強度が、1010個/秒の程度とされている、あるいは、実用的に可能な大きな値とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項26】
請求項11記載の放射線撮影装置において、
前記複数のシンチレータが、マスクによって囲まれており、これにより、それらシンチレータの少なくとも一部が被覆されており、
各マスクが、前記シンチレータ内へと戻ってくる逸脱した光パルスを反射させ得るような、第1反射表面を有していることを特徴とする放射線撮影装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線撮影装置であって、
重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって生成された実質的に単一エネルギーの高速中性子を生成するための中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の中性子線源と;
撮影対象をなす対象物を実質的に透過し得る程度に十分なエネルギーを有したX線源またはガンマ線源と;
前記中性子線源と前記X線源と前記ガンマ線源とを包囲するコリメート用ブロックであるとともに、実質的に扇型形状でもって放射させるための1つまたは複数のスロットが形成されているような、ブロックと;
前記線源から放射された放射エネルギーを受領しさらにその受領したエネルギーを光パルスへと変換する複数のシンチレータ画素を備えた検出器アレイであるとともに、前記コリメート用ブロックからコリメートされて放射された前記扇型形状の放射ビームに対して位置合わせされており、これにより、前記線源からの前記検出器アレイへと直接的に透過してきた放射のみを受領し得るものとされた、検出器アレイと;
前記シンチレータによって生成された前記光パルスを電気信号へと変換するための変換手段と;
前記線源と前記検出器アレイとの間を通して前記対象物を搬送するための搬送手段と;
前記電気信号に基づいて前記中性子線の減衰および前記X線または前記ガンマ線の減衰を決定するとともに、前記線源と前記検出器アレイとの間に位置した前記対象物の質量分布および組成を表す出力信号を生成するための、計算手段と;
前記対象物の前記質量分布および前記組成に基づいたイメージを表示するためのディスプレイ手段と;
を具備することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
前記X線源または前記ガンマ線源が、 137Cs、または、60Co、または、実質的に1MeVというエネルギーを有した同様の放射性同位体発生源、を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
前記X線源または前記ガンマ線源が、ターゲット上においてX線制道放射を行うことによってX線を生成するような、X線チューブまたは電子加速器とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源が、前記X線源または前記ガンマ線源からのX線またはガンマ線よりも実質的に大きなエネルギーを有した中性子線を生成し、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の同じスロットを通して放射するように配置され、
単一の検出器アレイが使用され、
この検出器アレイが、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
ガンマ線と中性子線との間の区別が、前記シンチレータに対するエネルギーに基づいて行われていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の同じスロットを通して放射するように配置され、
単一の検出器アレイが使用され、
この検出器アレイが、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、交互に駆動されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記中性子線源と前記X線源または前記ガンマ線源とが、前記コリメート用ブロック内の互いに平行な別々のスロットを通して放射するように配置され、
2つの検出器アレイが使用され、
一方の検出器アレイが、中性子線の検出用に、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備え、
他方の検出器アレイが、X線またはガンマ線の検出用に、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源に関連するスロットおよび前記検出器に関連するスロットが、前記線源によって前記検出器を十分に照射し得るよう、なおかつ、散乱した放射の検出を最小化し得るよう、十分に幅広のものとされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項1記載の放射線撮影装置において、
重水素−重水素間のまたは重水素−三重水素間の核融合反応によって中性子線を生成するための第2中性子線源であるとともに、シールされたチューブ状のまたは同様の態様の第2中性子線源を具備し、
この第2中性子線源を使用して、前記中性子線源に対して相補的な核融合反応を行うことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
請求項8記載の放射線撮影装置において、
前記第2中性子線源からの中性子線を、個別の検出器アレイによって検出し、
この個別の検出器アレイを、プラスチック製のまたは液体有機物製のシンチレータからなる複数の画素を備えたものとすることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項10】
請求項9記載の放射線撮影装置において、
前記2つの中性子線源のうちの一方が、実質的に14MeVというエネルギーを有し、
前記2つの中性子線源のうちの他方が、実質的に2.45MeVというエネルギーを有していることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段が、複数のフォトダイオードを備え、
シンチレータ材料が、前記フォトダイオードの応答に対して実質的に適合した発光波長を有するものとして選択可能とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段が、交差した複数の波長シフトファイバを備え、
これらファイバが、単一アノード型のまたはマルチアノード型の複数の光増倍管に対して接続されていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項13】
請求項11または12記載の放射線撮影装置において、
前記変換手段からの電気信号を使用して、前記中性子線源からの中性子線の前記対象物を通しての透過と前記X線源またはガンマ線源からのX線またはガンマ線の前記対象物を通しての透過とを決定する、あるいは、前記双方の中性子線源からの中性子線の前記対象物を通しての透過と前記X線源またはガンマ線源からのX線またはガンマ線の前記対象物を通しての透過とを決定することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項14】
請求項13記載の放射線撮影装置において、
前記透過を使用して、ディスプレイの各画素に関する質量減衰係数イメージを計算し、
様々な画素の値に対してそれぞれ対応したカラーを付与し、
前記イメージを、質量分布と、前記計算によって決定された組成と、に基づいて決定することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記計算手段が、コンピュータを備え、
このコンピュータが、イメージ処理を実行するとともに、コンピュータスクリーン上にそれらイメージを表示することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項16】
請求項15記載の放射線撮影装置において、
前記出力信号が、各画素に関する質量減衰係数イメージへと変換され、
このイメージが、様々な画素値に応じてそれぞれ対応するカラーを付与した上で、コンピュータスクリーン上に表示されることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項17】
請求項16記載の放射線撮影装置において、
前記質量減衰係数イメージが、重水素−三重水素由来の中性子線または重水素−重水素由来の中性子線とX線またはガンマ線との各々に関する透過から測定されたカウント速度に基づいて得られる、または、重水素−三重水素由来の中性子線と重水素−重水素由来の中性子線とX線またはガンマ線との各々に関する透過から測定されたカウント速度に基づいて得られることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項18】
請求項17記載の放射線撮影装置において、
前記コンピュータを動作させることにより、複数の質量減衰係数イメージの間にわたって複数の断面積比イメージを得ることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項19】
請求項18記載の放射線撮影装置において、
前記複数の断面積比イメージの各々を、検査対象をなす特定の対象物に関するコントラストおよび感度を最大化し得るような比率でもって、組み合わせることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項20】
請求項18または19記載の放射線撮影装置において、
前記コンピュータが、測定された断面積に基づいて自動的に材料を識別し得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項21】
請求項19記載の放射線撮影装置において、
断面積イメージどうしを組み合わせる比率が、操作者によって調節可能とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源および前記検出器アレイが、固定され、
前記搬送手段が、前記中性子線源の前方にわたって、前記対象物を搬送することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記対象物が、固定され、
前記搬送手段が、前記線源および前記検出器アレイを、前記対象物の両サイドにわたって同期的に移動させることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
複数組をなす検出器が、中央に配置された前記線源の周囲に配置され、
これにより、複数の対象物を同時に走査し得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
前記線源および前記検出器アレイに対して前記対象物を回転させることにより、あるいは、前記対象物に対して前記線源および前記検出器アレイを回転させることにより、様々な角度からの測定を行い得るようになっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の放射線撮影装置において、
重水素−重水素に由来するおよび/または重水素−三重水素に由来する前記中性子線源の強度が、1010個/秒の程度とされている、あるいは、実用的に可能な大きな値とされていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項27】
請求項11記載の放射線撮影装置において、
前記複数のシンチレータが、マスクによって囲まれており、これにより、それらシンチレータの少なくとも一部が被覆されており、
各マスクが、前記シンチレータ内へと戻ってくる逸脱した光パルスを反射させ得るような、第1反射表面を有していることを特徴とする放射線撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6a】
【図7a】
【図8a】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図12d】
【図12e】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6a】
【図7a】
【図8a】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図12d】
【図12e】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【公表番号】特表2006−510033(P2006−510033A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502291(P2005−502291)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001641
【国際公開番号】WO2004/053472
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(591269435)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーション (23)
【氏名又は名称原語表記】COMMONWEALTH SCIENTIFIC AND INDUSTRIAL RESEARCH ORGANIZATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001641
【国際公開番号】WO2004/053472
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(591269435)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーション (23)
【氏名又は名称原語表記】COMMONWEALTH SCIENTIFIC AND INDUSTRIAL RESEARCH ORGANIZATION
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]