説明

放射線画像撮影装置

【課題】放射線検出素子を微細に形成した場合でも放射線検出素子の集光率を向上させることが可能な放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1は、走査線5と信号線6により区画された各小領域rに設けられた放射線検出素子7ごとに設けられ、放射線検出素子7の第1電極7aにソース電極8sが接続され、信号線6にドレイン電極8dが接続されたTFTからなるスイッチ手段8を備え、TFTからなるスイッチ手段8は、放射線検出素子7同士の間の部分に設けられた走査線5上に形成され、走査線5自体がスイッチ手段8のゲート電極8gとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に係り、特に、交差するように配設された走査線と信号線で区画された各領域に放射線検出素子が設けられた放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病気診断等を目的として、X線画像に代表される放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。こうした医療用の放射線画像は、従来から銀塩フィルム等のスクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、放射線画像のデジタル化を図るため、輝尽性蛍光体シートを内蔵したCR(Computed Radiography)カセッテを用いた撮影方法が開発された。
【0003】
しかし、CRカセッテでは、撮影を終了するごとにCRカセッテを専用の画像読取装置に挿入して輝尽性蛍光体シートから画像データを読み出す処理が必要になる等の不便さがあった。そこで、最近では、照射された放射線を、二次元状に配置された放射線検出素子で検出し、放射線検出素子から読み出した電荷を画像データとして取得する放射線画像撮影装置が開発されている(例えば特許文献1、2等参照)。
【0004】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られている。そして、このような放射線画像撮影装置としては、照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。
【0005】
なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0006】
そして、放射線画像撮影装置は、従来、支持台等と一体的に形成されていたが(例えば特許文献3参照)、近年、放射線検出素子等を筐体内に収納して持ち運びできるようにした可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献4、5参照)。
【0007】
ところで、このような放射線画像撮影装置では、撮影された放射線画像を医師等が見た場合に、従来の銀塩フィルム等を用いて撮影された高精細な放射線画像と同様の高精細さで放射線画像を撮影できることが要求される。そのため、個々の放射線検出素子を微細に形成することが求められる。
【0008】
しかし、放射線検出素子を微細に形成すると、個々の放射線検出素子に入射する放射線の線量、或いは、放射線画像撮影装置に照射された放射線がシンチレータで変換された電磁波が個々の放射線検出素子に到達する電磁波の光量が少なくなる。そして、入射する放射線の線量や電磁波の光量が少なくなると、個々の放射線検出素子から読み出される画像データのS/N比が低下し易くなる。
【0009】
そこで、放射線検出素子を微細に形成する中で、できるだけ放射線検出素子の集光率を高めて光感度を向上させるために(すなわち画像データのS/N比を向上させるために)、個々の放射線検出素子の集光面積をできるだけ大きくすることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−133837号公報
【特許文献2】特開2009−219538号公報
【特許文献3】特開平9−73144号公報
【特許文献4】特開2006−058124号公報
【特許文献5】特開平6−342099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、例えば特許文献1、2に記載された放射線画像撮影装置におけるフォトダイオード等の放射線検出素子では、例えば図19の拡大図に示すように、放射線検出素子PDの一部が切り欠かれた状態に形成される。そして、その部分に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)等からなるスイッチ手段(図中ではTFTと記載)が設けられている。なお、図19において、Lgは走査線、Lsは信号線、Lbはバイアス線を表す。
【0012】
そのため、放射線検出素子PDの一部が切り欠かれている分だけ放射線検出素子PDの集光面積が小さくなり、集光率が低下してしまう。そして、そのため、画像データのS/N比が低下してしまう。
【0013】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線検出素子を微細に形成した場合でも放射線検出素子の集光率を向上させることが可能な放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、
前記走査線と前記信号線により区画された各小領域ごとに設けられた放射線検出素子と、
前記各放射線検出素子ごとに設けられ、前記放射線検出素子の第1電極にソース電極が接続され、前記信号線にドレイン電極が接続された薄膜トランジスタからなるスイッチ手段と、
を備える基板と、
オン電圧を印加する前記各走査線を切り替えながら前記各走査線にオン電圧を順次印加する走査駆動手段と、
前記信号線に接続され、前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記薄膜トランジスタからなるスイッチ手段は、前記放射線検出素子同士の間の部分に設けられた前記走査線上に形成され、前記走査線自体が前記スイッチ手段のゲート電極とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置によれば、スイッチ手段であるTFTを、放射線検出素子同士の間の部分に設けられた走査線上に形成し、走査線自体がTFTのゲート電極とされるように構成した。そのため、放射線検出素子を、図19に示した従来の放射線検出素子PDのように一部が切り欠かれた状態に形成せず、一部が切り欠かれていない矩形状の形状に形成しても、基板上にTFTを形成することが可能となる。
【0016】
そのため、少なくとも図19に示した従来の放射線検出素子PDに構成する場合に比べて、放射線検出素子が大きくなるように構成することが可能となる。そして、放射線検出素子を微細に形成する場合でも、放射線検出素子の集光面積を大きくすることが可能となり、集光率を向上させることが可能となる。
【0017】
また、このように放射線検出素子の集光率が向上されるため、放射線検出素子の光感度を向上させることが可能となり、放射線検出素子から読み出される画像データのS/N比を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】各実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図4】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図5】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図6】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図7】各放射線検出素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図8】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図9】図4に示した基板の検出部の拡大図である。
【図10】図9におけるY−Y線に沿う断面図である。
【図11】各放射線検出素子の集光面積が大きくなるように構成された実際の基板の検出部の拡大図である。
【図12】TFTを介して各放射線検出素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図13】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図14】読み出されるリークデータを時系列的にプロットしたグラフである。
【図15】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と各放射線検出素子のリセット処理を交互に行うように構成した場合の電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図16】第2の実施形態における基板の検出部の拡大図である。
【図17】図16におけるZ−Z線に沿う断面図である。
【図18】第1の実施形態に第2の実施形態を適用した場合の基板の検出部の拡大図である。
【図19】スイッチ手段を設けるために放射線検出素子の一部が切り欠かれた従来の場合の基板の検出部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレータ等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明する.しかし、本発明は、シンチレータ等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。また、放射線画像撮影装置がいわゆる可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0021】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3や基板4等で構成されるセンサパネルSPが収納されている。
【0022】
本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。
【0023】
また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクタ39、バッテリ状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケータ40等が配置されている。
【0024】
図示を省略するが、コネクタ39は、例えば、ケーブルが接続されることにより外部装置との間で信号やデータの送受信等の処理を行うことができるようになっている。また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図5参照)が、例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられており、アンテナ装置41も放射線画像撮影装置1の通信手段として機能するようになっている。
【0025】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリ24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレータ3の放射線入射面R側には、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、センサパネルSPと筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材35が設けられている。
【0026】
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0027】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。そして、基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0028】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域rの全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0029】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレータ3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0030】
なお、本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。また、本実施形態に係る放射線検出素子7の構成等については、後で詳しく説明する。
【0031】
本実施形態では、図3に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0032】
また、本実施形態では、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。
【0033】
各入出力端子11には、図4に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0034】
そして、フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPが形成されている。なお、図4では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0035】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図5は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図6は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0036】
基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。
【0037】
図5や図6に示すように、本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極7bにバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧、すなわちいわゆる逆バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0038】
また、各放射線検出素子7の第1電極7aは、それぞれスイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。また、図5では、TFT8のゲート電極8gが走査線5に接続されているように記載されているが、後で説明するように、本実施形態では、TFT8は走査線5上に形成されており、走査線5自体がTFT8のゲート電極8gとなるように構成されている。
【0039】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5すなわちゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。
【0040】
また、TFT8は、走査線5すなわちゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0041】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
【0042】
各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図5や図6中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図6中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0043】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。そして、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されている。
【0044】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、後述する制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0045】
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図7に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされる。
【0046】
すると、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す。このようにして、各放射線検出素子7のリセット処理が行われるようになっている。
【0047】
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図8に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積される。
【0048】
そして、増幅回路18では、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各放射線検出素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
【0049】
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図8参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。また、その後、上記のように各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積された後に制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0050】
そして、相関二重サンプリング回路19は、2回目のパルス信号Sp2で電圧値Vfiを保持すると、電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。
【0051】
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサ21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0052】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。また、図5等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0053】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ24が接続されている。また、バッテリ24には、図示しない充電装置からバッテリ24に電力を供給してバッテリ24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0054】
前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17等を制御して画像データDの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理等を行わせたり、アンテナ装置41やコネクタ39(図1参照)を制御して外部装置との間で信号やデータ等の送受信を行わせたりするなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0055】
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の放射線検出素子7やスイッチ手段であるTFT8等の構成等について説明する。
【0056】
図9は、図4に示した本実施形態の基板の検出部の拡大図であり、図10は、図9におけるY−Y線に沿う断面図である。
【0057】
なお、図9や図10では、図示が省略されているが、放射線検出素子7の図9では手前側、図10では図中上側にシンチレータ3(図2参照)が設けられている。また、シンチレータ3の図9ではさらに手前側、図10では図中のさらに上側に放射線画像撮影装置1の放射線入射面(図1、図2参照)が配置されている。また、以下では、図9や図10では図示しないシンチレータ3側、すなわち図9ではより手前側、図10では図中のより上側を「上方」や「上側」等として説明する。
【0058】
本実施形態では、スイッチ手段であるTFT8は、放射線検出素子7同士の間の部分に設けられた走査線5上に形成されており、走査線5自体がTFT8のゲート電極8gとされている。
【0059】
具体的には、基板4の面4a上には、AlやCr等からなる走査線5が積層されて形成されている。そして、基板4の面4a上および走査線5上には、窒化シリコン(SiN)等からなる絶縁層4bが積層されており、絶縁層4bにより基板4の面4aや走査線5が被覆されている。
【0060】
走査線5上にTFT8が形成されている部分では、上記の絶縁層4bがゲート絶縁層81として機能するようになっている。また、この部分では、走査線5自体が、TFT8のゲート電極8gになっている。
【0061】
ゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分には、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82が設けられている。そして、半導体層82の上方に、導電体Aを介して放射線検出素子7の第1電極7aと電気的に接続されたTFT8のソース電極8sと、信号線6(図9参照)と一体的に形成されるTFT8のドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0062】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiN)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されている。第1パッシベーション層83は、さらに両電極8s、8dや絶縁層4b等を上側から被覆している。
【0063】
また、半導体層82とTFT8のソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。
【0064】
本実施形態では、以上のようにして、走査線5上にTFT8が形成されている。なお、信号線6は、TFT8のドレイン電極8dと一体的に、絶縁層4b上にAlやCr等が積層されて形成されている。そのため、本実施形態では、信号線6は、スイッチ手段であるTFT8が形成された絶縁層4bと同じ絶縁層4b上に形成されている。
【0065】
一方、本実施形態では、TFT8や基板4の上方、すなわち第1パッシベーション層83の上方に、アクリル樹脂等が積層されており、TFT8等の表面の凹凸を平坦化するための平坦化層4cが設けられている。
【0066】
本実施形態では、この平坦化層4cにより、基板4上に少なくとも2つの層が形成されるようになっている。そして、走査線5やTFT8は、上記のように、平坦化層4cの下側の層、すなわち図9や図10では図示を省略した放射線入射面Rやシンチレータ3から遠い側の層(以下、下層という。)上に形成される。
【0067】
また、本実施形態では、放射線検出素子7は、平坦化層4cの上側の層、すなわち放射線入射面Rやシンチレータ3に近い側の層(以下、上層という。)上に形成されるようになっている。
【0068】
具体的には、放射線検出素子7の第1電極7aが、平坦化層4a上にAlやCr、Mo等が積層されて形成されている。なお、前述したように、第1電極7aは、平坦化層4aを貫通する導電体Aを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
【0069】
第1電極7aの上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層71や、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層72、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層73が、下方から順に積層されて形成されている。
【0070】
そして、放射線画像撮影装置1の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層72に到達する。そして、電磁波がi層72に到達すると、i層72内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線がシンチレータ3で変換されて照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
【0071】
また、p層73の上には、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の導電性酸化物等からなる透明電極とされた第2電極7bが積層されて形成されている。本実施形態では、このように、放射線検出素子7の第2電極7bが、第1電極7aよりもシンチレータ3や放射線入射面Rに近い側に設けられている。そして、シンチレータ3から照射された電磁波が、透明電極である第2電極7bを透過してi層72等に到達するようになっている。
【0072】
本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層73、i層72、n層71の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層73、i層72、n層71の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
【0073】
本実施形態では、放射線検出素子7は、図19に示した従来の放射線検出素子PDのように一部が切り欠かれた状態にはなっておらず、図9に示したように、一部が切り欠かれていない矩形状の形状に形成される。
【0074】
なお、図9や後述する図18では、放射線検出素子7と走査線5、信号線6等が区別して見えるように表現したが、実際には、例えば図11に示すように、各放射線検出素子7の集光面積が可能な限り大きくなるように構成される。ただし、放射線検出素子7同士が接触することはなく、放射線検出素子7同士の間に間隙が設けられるように構成される。
【0075】
本実施形態では、図10に示すように、平坦化層4cの上方の、放射線検出素子7同士の間の部分、すなわち走査線5上に形成されたTFT8の上方の部分には、窒化シリコン(SiN)等からなる第2パッシベーション層4dが積層されている。本実施形態では、第2パッシベーション層4dは、放射線検出素子7同士の間の部分だけでなく、放射線検出素子7の第2電極7bの周縁部にかかるように積層されている。
【0076】
そして、第2パッシベーション層4dのさらに上方には、アクリル樹脂等の透明な絶縁層4eが積層されている。そして、絶縁層4eは、放射線検出素子7の第2電極7bよりも若干上側に盛り上がるように積層されており、絶縁層4eも放射線検出素子7の第2電極7bの周縁部にかかるように積層されている。
【0077】
また、図9に示すように、放射線検出素子7の第2電極7bの上面には、上記のように第2電極7bを介して放射線検出素子7に逆バイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、図10では図示を省略するが、本実施形態では、バイアス線9は、放射線検出素子7の間の部分に盛り上げられた絶縁層4eの部分では、絶縁層4eの上面に沿うように配設されている。
【0078】
なお、図10等では図示を省略したが、第2パッシベーション層4dや絶縁層4e、放射線検出素子7の第2電極7b、バイアス線9等の上方に、さらに窒化シリコン等を積層してパッシベーション層を形成したり、或いはアクリル樹脂等を積層して第2の平坦化層を形成するように構成することも可能である。
【0079】
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明する。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、図10に示したように、スイッチ手段であるTFT8が、放射線検出素子7同士の間の部分に設けられた走査線5自体がゲート電極8gになるように、走査線5上に形成されている。
【0080】
そのため、放射線検出素子7を、図19に示した従来の放射線検出素子PDのように一部が切り欠かれた状態に形成せず、図9や図11に示したように、一部が切り欠かれていない矩形状の形状に形成しても、基板4上にスイッチ手段としてのTFT8を形成することが可能となる。
【0081】
そのため、本実施形態に係る放射線検出素子7は、少なくとも図19に示した従来の放射線検出素子PDに構成する場合に比べて、第2電極7bや変換層であるi層72(図10参照)が大きくなるように構成することが可能となる。そのため、放射線検出素子7の集光面積を大きくすることが可能となり、集光率を向上させることが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、走査線5やスイッチ手段であるTFT8を、基板4の、装置の放射線入射面R(図1等参照)から遠い側の層上すなわち下層上に形成し、放射線検出素子7を、基板4の、装置の放射線入射面Rに近い側の層上すなわち上層上に形成するように構成した。このように構成すれば、TFT8と放射線検出素子7とが互いに異なる層上に形成されるため、互いに干渉しあうことがなくなる。
【0083】
そのため、走査線5が放射線検出素子7同士の間の部分に設けられ、かつ、TFT8が走査線5上に形成されている状態が維持される限りにおいて、矩形状の放射線検出素子7を可能な限り大きくするように構成することが可能となる。そのため、放射線検出素子7の集光面積をより大きくすることが可能となり、集光率をさらに向上させることが可能となる。
【0084】
さらに、本実施形態のように、信号線6をスイッチ手段であるTFT8が形成された下層と同じ下層上に形成すれば、信号線6が形成されている層と、放射線検出素子7が形成されている層が異なる層になる。
【0085】
そのため、このように構成すれば、放射線検出素子7と信号線6とが互いに干渉しあうこともなくなり、矩形状の放射線検出素子7をより大きく構成することが可能となる。そのため、放射線検出素子7の集光面積をさらに大きくすることが可能となり、集光率をさらに向上させることが可能となる。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、スイッチ手段であるTFT8を、放射線検出素子7同士の間の部分に設けられた走査線5上に形成し、走査線5自体がTFT8のゲート電極8gとされるように構成した。
【0087】
そのため、放射線検出素子7を、図19に示した従来の放射線検出素子PDのように一部が切り欠かれた状態に形成せず、図9や図11に示したように、一部が切り欠かれていない矩形状の形状に形成しても、基板4上にスイッチ手段としてのTFT8を形成することが可能となる。
【0088】
そのため、本実施形態に係る放射線検出素子7は、少なくとも図19に示した従来の放射線検出素子PDに構成する場合に比べて、第2電極7bや変換層であるi層72(図10参照)が大きくなるように構成することが可能となる。そして、前述したように、放射線検出素子7を微細に形成する場合でも、放射線検出素子7の集光面積を大きくすることが可能となり、集光率を向上させることが可能となる。
【0089】
また、このように放射線検出素子7の集光率が向上されるため、放射線検出素子7の光感度を向上させることが可能となり、放射線検出素子7から読み出される画像データのS/N比を向上させることが可能となる。
【0090】
なお、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、上記のように、走査線5上にTFT8が形成されるため、走査線5にTFT形成用の分岐等を設けなくてもよい。そのため、上記のように構成することで、放射線画像撮影装置1の製造工程における基板4への走査線5の配線等をより容易に行うことが可能となるといったメリットもある。
【0091】
また、上記のように構成することのもう1つの重要なメリットについて、以下説明する。
【0092】
本実施形態では、各放射線検出素子7は、前述したように、基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rにそれぞれ設けられている(図3や図9、図11参照)。そして、上記のように、TFT8は、走査線5上に、走査線5自体をゲート電極8gとして形成されている(図9、図10参照)。
【0093】
そのため、基板4の面4aをシンチレータ3や放射線入射面R側(すなわち図9では図の手前側、図10では図中上側)から見た場合、本実施形態では、スイッチ手段であるTFT8は、放射線検出素子7とそれに隣接する放射線検出素子7との間の部分に設けられる状態になっている。つまり、TFT8の上側の部分には、放射線検出素子7が形成されていない。
【0094】
また、本実施形態では、TFT8の上方には、アクリル樹脂等からなる透明な平坦化層4cや絶縁層4eが積層されており、第2パッシベーション層4dも窒化シリコン(SiN)等で形成されていて透明である。そのため、シンチレータ3からの電磁波が、放射線検出素子7により遮断されずにTFT8に直接到達する。
【0095】
このように、本実施形態では、スイッチ手段であるTFT8のシンチレータ3側すなわち上側には、シンチレータ3からの電磁波が遮光される遮光材(放射線検出素子7やそれ以外の遮光材を含む。)が設けられていない。
【0096】
通常、このような場合、例えば特開2010−080635号公報等にも記載されているように、スイッチ手段であるTFT8にシンチレータ3からの電磁波が照射されると、TFT8への光照射によるリーク電流が増加する。そして、それを防止するために、TFT8のシンチレータ3側に、遮光性メタルを主体とする合金や積層膜等からなる遮光材が設けられる。
【0097】
或いは、例えば特開2007−49124号公報に記載されているように、スイッチ手段であるTFT8を、放射線検出素子7の下側に設けるように構成される。すなわち、シンチレータ3からの電磁波を放射線検出素子7で受光し、その下側のTFT8には電磁波が照射されないように構成される。
【0098】
しかし、本実施形態では、上記のように、スイッチ手段であるTFT8は、放射線検出素子7同士の間に設けた走査線5上に形成される。そして、スイッチ手段であるTFT8のシンチレータ3側に遮光材や放射線検出素子7を設けず、シンチレータ3から照射された電磁波がTFT8に直接到達するように構成される。このように構成することのメリットは、以下の通りである。
【0099】
放射線画像撮影装置1と、放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置との間でインターフェースを構築することができないような場合、放射線発生装置は、放射線画像撮影装置1に対して放射線源から放射線を照射させても、そのことを放射線画像撮影装置1に伝達することができない。そのため、放射線画像撮影装置1自体で放射線源から放射線が照射されたことを検出するように構成することが必要となる。
【0100】
この場合、放射線画像撮影装置1自体で放射線が照射されたことを検出する手法としては、種々の手法が開発されているが(例えば前述した特許文献2参照)、例えば、上記の場合には問題となっていた、TFT8にシンチレータ3からの電磁波が照射されるとTFT8を介するリーク電流が増加する現象を逆に利用して、上記の検出を行うように構成することができる。
【0101】
上記のように、TFT8を介して放射線検出素子7から電荷qがリークする場合、例えば図12に示すように、読み出し回路17(図6等参照)の増幅回路18のコンデンサ18bに、当該読み出し回路17が接続されている信号線6に接続されている各放射線検出素子7から各TFT8を介してリークした電荷qの合計の電荷が蓄積される。
【0102】
そして、その際に、読み出し回路17を駆動させると、各放射線検出素子7から各TFT8を介してリークした電荷qの合計値の電荷に相当するデータが読み出される。以下、このデータを、リークデータdleakという。
【0103】
すなわち、リークデータdleakとは、図12に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0104】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図7に示した各放射線検出素子7のリセット処理や図8に示した画像データDの読み出し処理の場合と異なり、図13に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7、8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2が送信される。
【0105】
相関二重サンプリング回路19は、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様に、制御手段22からパルス信号Sp1が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。
【0106】
そして、増幅回路18のコンデンサ18bに各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが蓄積されると、増幅回路18から出力される電圧値が上昇する。そして、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0107】
相関二重サンプリング回路19が電圧値の差分Vfi−Vinを算出して出力した値が、リークデータdleakとなる。リークデータdleakが、その後、A/D変換器20でデジタル値に変換されることは、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様である。リークデータdleakの読み出し処理は、以上のようにして行われる。
【0108】
このようなリークデータdleakの読み出し処理を、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて行われる放射線画像撮影の前から繰り返し行うように構成する。
【0109】
そして、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、シンチレータ3(図2参照)で放射線から変換された電磁波が、各TFT8に照射される。すると、前述したように、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷q(図12参照)がそれぞれ増加する。
【0110】
そのため、読み出されたリークデータdleakを時系列的にプロットすると、例えば図14に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点で読み出されたリークデータdleakが、それ以前に読み出されたリークデータdleakよりも格段に大きな値になる。
【0111】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22(図5参照)で、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されたリークデータdleakを監視するように構成し、読み出されたリークデータdleakが、例えば予め設定された所定の閾値dleak_th(図14参照)を越えた時点(図14の時刻t1参照)で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能となる。
【0112】
このように構成する場合、スイッチ手段であるTFT8は、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出するためのセンサとして機能することになる。
【0113】
その際、前述した特開2010−080635号公報等にも記載されているように、スイッチ手段であるTFT8のシンチレータ3側に遮光材を設けたり、或いは、特開2007−49124号公報に記載されているように、TFT8を放射線検出素子7の下側に設けてシンチレータ3からの電磁波がTFT8に到達しないように構成すると、TFT8を上記のようにセンサとして機能させることができない。
【0114】
それに対して、本実施形態のように、スイッチ手段であるTFT8を、放射線検出素子7同士の間に設けた走査線5上に形成し、TFT8にシンチレータ3から照射された電磁波が直接到達するように構成することで、スイッチ手段であるTFT8を上記のようにセンサとして機能させることが可能となる。
【0115】
そのため、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置との間でインターフェースを構築できない場合でも、放射線画像撮影装置1自体で放射線源から放射線が照射されたことを的確に検出することが可能となる。上記の本実施形態のように構成すれば、このような重要で且つ有益なメリットを得ることが可能となる。
【0116】
なお、図13に示したように読み出し回路17等を駆動させてリークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成すると、走査線5を介して各TFT8にオフ電圧が印加された状態が続く。すなわち、各TFT8がオフ状態になったままの状態になる。そのため、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になってしまう。
【0117】
そこで、上記のように、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、例えば図15に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理と、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返し行うように構成することが望ましい。
【0118】
[第2の実施の形態]
放射線検出素子7の集光面積を大きくし、集光率を向上させるという観点から見た場合、例えば図9や図11に示したように、Al等の金属で形成されたバイアス線9が、放射線検出素子7の第2電極7b上を通過する状態で第2電極7bに接続されていると、バイアス線9が通過する部分では、シンチレータ3から照射された電磁波がバイアス線9で遮蔽される。
【0119】
そのため、放射線検出素子7の第2電極7bに到達する電磁波の光量が減り、その分、放射線検出素子7の集光面積が小さくなり、集光率が低下することになる。
【0120】
そこで、このバイアス線9による遮蔽を回避するために、例えば図16に示すように、バイアス線9を複数の部分バイアス線9aに分割するように構成することが可能である。そして、図16やその断面図である図17に示すように、各部分バイアス線9aは、隣接する放射線検出素子7の第2電極7bの各縁部にそれぞれ接続されており、これらの隣接する放射線検出素子7の第2電極7b同士を電気的に接続するように構成される。
【0121】
このように構成すると、バイアス電源14(図5参照)から結線10を介して供給された逆バイアス電圧は、各部分バイアス線9aと各放射線検出素子7の各第2電極7bとを通って伝播する。そのため、各部分バイアス線9aと各放射線検出素子7の各第2電極7bとを通って伝播した逆バイアス電圧が、各放射線検出素子7の各第2電極7bにそれぞれ印加される状態になる。
【0122】
本実施形態では、このように、各放射線検出素子7の第2電極7bを、逆バイアス電圧を印加する対象としてのみならず、バイアス線9の一部として活用することで、各放射線検出素子7に逆バイアス電圧をそれぞれ印加するようになっている。
【0123】
例えば図19に示した従来のバイアス線Lbの設け方、すなわち、1本のバイアス線Lbを列状に並ぶ各放射線検出素子PDの第2電極に接続する場合、上記のように、Al等の金属で形成されたバイアス線Lbにより放射線検出素子PDの第2電極が遮蔽される面積が大きくなる。
【0124】
それに対して、図16等に示した本実施形態のように、バイアス線9が分割されて形成された部分バイアス線9aを、隣接する放射線検出素子7の第2電極7bの各縁部にそれぞれ接続するように構成することにより、Al等の金属で形成された部分バイアス線9aにより放射線検出素子7の第2電極7bが遮蔽される面積をより小さくすることが可能となる。
【0125】
このように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、Al等の金属で形成された部分バイアス線9aにより放射線検出素子7の第2電極7bが遮蔽される面積をより小さくすることができるため、放射線検出素子7の集光面積をより大きくすることが可能となる。
【0126】
そのため、放射線検出素子7の集光率が向上されるため、放射線検出素子7の光感度を向上させることが可能となり、放射線検出素子7から読み出される画像データのS/N比を向上させることが可能となる。
【0127】
なお、図16等では、図19に示した従来の放射線検出素子7等においてバイアス線9を分割して形成した部分バイアス線9aを各放射線検出素子7の第2電極7bに接続する場合を示したが、図18に示すように、上記の第1の実施形態で説明したように構成された各放射線検出素子7の第2電極7bに部分バイアス線9aを接続するように構成することも可能である。
【0128】
すなわち、第1の実施形態に第2の実施形態を適用することも可能である。そして、このように構成すれば、第1の実施形態において、放射線検出素子7の集光面積をさらに大きくすることが可能となり、放射線検出素子7の集光率をさらに向上させることが可能となる。
【0129】
なお、その場合、前述したように、スイッチ手段であるTFT8を、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出するためのセンサとして機能させるように構成する場合には、各部分バイアス線9aが、TFT8の上側以外の位置、すなわちTFT8の、シンチレータ3や放射線入射面R側の位置以外の位置で、隣接する放射線検出素子7の第2電極7bの各縁部にそれぞれ接続されることが望ましい。
【0130】
このように構成すれば、Al等の金属で形成された部分バイアス線9aによりスイッチ手段であるTFT8が遮蔽されることが防止される。そのため、TFT8にシンチレータ3からの電磁波が確実に照射されるようになり、スイッチ手段であるTFT8が、上記のセンサとして的確に機能するようになる。
【0131】
また、上記の第1の実施形態や第2の実施形態について、その効果をより的確に発揮させるために種々の変形や改良を加えることは可能であり、適宜行われる。
【符号の説明】
【0132】
1 放射線画像撮影装置
3 シンチレータ
4 基板
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
7a 第1電極
7b 第2電極
8 TFT(スイッチ手段)
8d ドレイン電極
8g ゲート電極
8s ソース電極
9 バイアス線
9a 部分バイアス線
14 バイアス電源
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
D 画像データ
dleak リークデータ
q リークした電荷
R 放射線入射面
r 小領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、
前記走査線と前記信号線により区画された各小領域ごとに設けられた放射線検出素子と、
前記各放射線検出素子ごとに設けられ、前記放射線検出素子の第1電極にソース電極が接続され、前記信号線にドレイン電極が接続された薄膜トランジスタからなるスイッチ手段と、
を備える基板と、
オン電圧を印加する前記各走査線を切り替えながら前記各走査線にオン電圧を順次印加する走査駆動手段と、
前記信号線に接続され、前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記薄膜トランジスタからなるスイッチ手段は、前記放射線検出素子同士の間の部分に設けられた前記走査線上に形成され、前記走査線自体が前記スイッチ手段のゲート電極とされていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
少なくとも前記走査線および前記スイッチ手段は、前記基板の、装置の放射線入射面から遠い側の層上に形成され、
前記放射線検出素子は、前記基板の、装置の放射線入射面に近い側の層上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記信号線は、前記スイッチ手段が形成された前記層と同じ層上に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記基板より装置の放射線入射面に近い側にシンチレータを備え、
前記スイッチ手段は、照射された放射線が前記シンチレータで変換された電磁波が前記放射線検出素子により遮断されずに到達する位置に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記スイッチ手段の前記シンチレータ側には、前記シンチレータからの前記電磁波が遮光される遮光材が設けられないことを特徴とする請求項4に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記スイッチ手段は、前記制御手段が、放射線画像撮影前に前記走査駆動手段から全ての前記走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記読み出し回路に読み出し動作を行わせて、前記スイッチ手段を介して前記放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出した前記リークデータに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出するためのセンサとして機能するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記第1電極よりも装置の放射線入射面に近い側に設けられた前記放射線検出素子の第2電極に接続されたバイアス線と、
前記バイアス線を介して前記放射線検出素子に逆バイアス電圧を印加するバイアス電源と、
を備え、
前記バイアス線は、複数の部分バイアス線に分割されており、
前記部分バイアス線は、隣接する前記放射線検出素子の前記第2電極の各縁部にそれぞれ接続されていて、当該隣接する放射線検出素子の前記第2電極同士を電気的に接続しており、
前記バイアス電源から、前記各部分バイアス線と前記各放射線検出素子の各第2電極とを介して、前記各放射線検出素子にそれぞれ逆バイアス電圧が印加されるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記各部分バイアス線は、前記スイッチ手段の、装置の放射線入射面側の位置以外の位置で、前記隣接する放射線検出素子の第2電極の各縁部にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−182346(P2012−182346A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44853(P2011−44853)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】