説明

数値制御型オシレータ(NCO)出力クロック位相平滑化

【課題】 入力クロックに基づく選択可能周波数において複数個のNCOクロックパルスを発生する形態とされている数値制御型オシレータ(NCO)を包含する位相平滑化回路が記載される。
【解決手段】 該複数個のNCOクロックパルスのエッジは該入力クロックのエッジに整合している。位相エラー計算モジュールが該NCOへ結合されており且つ該複数個のNCOクロックパルスの各々に対する対応する位相エラーを発生する形態とされている。クロック位相選択可能遅延が該位相エラー計算モジュールへ結合されており且つ該選択可能周波数において出力クロックを発生するために該対応する位相エラーに従って該複数個のNCOクロックパルスの各々を調節する形態とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載する実施例は、数値制御型オシレータの分野に関するものである。更に詳細には、一般的に、数値制御型オシレータによって発生されるクロックにおけるジッタを最小とすることに関するものである。
【背景技術】
【0002】
数値制御型オシレータ(NCO)は、アキュムレータ及び制御レジスタに基づくクロック周波数合成及び制御のために通常使用されるデジタル回路である。NCOの出力クロック平均周波数は、多数の出力クロックサイクルを包含する或る期間にわたり任意的に正確であるようにさせることが可能である。周波数精度は、入力クロック周波数及びNCOアキュムレータ幅によって決定される。特に、NCOは、しばしば、デジタルPPL実現例において使用され且つ機能においてアナログPLLにおける電圧制御型オシレータ(VCO)に類似している。NCOは、周波数出力を正確に制御することが可能であり且つVCOの場合に存在するようなノイズ、ドリフト等の本質的な問題が存在しないという点において、アナログVCOよりも有益性を有している。
【0003】
然しながら、NCOは性質上デジタルであるために、クロック位相の時間離散化によって誘起されるジッタの問題を抱えている。即ち、NCOクロック信号のクロックパルスのどの前端も入力クロックエッジの発生と整合することに拘束されている。従って、1個のNCOクロックエッジから次のものへの時間は、一つの入力クロック周期だけ変化する場合がある。NCOクロックの平均周波数は所望通りの精度とさせることが可能であるが、入力クロックの周期と等しいジッタが常にクロック上に存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、1実施例においては、位相平滑化システムについて記載し、それは、入力クロックに基づいて選択可能な周波数において複数個のNCOクロックパルスを発生する形態とされている数値制御型オシレータ(NCO)を包含している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
該複数個のNCOクロックパルスのエッジは、入力クロックのエッジに整合されている。位相エラー計算モジュールが該NCOへ結合されており、且つ該複数個のNCOクロックパルスの各々に対して対応する位相エラーを発生する形態とされている。クロック位相選択可能遅延が該位相エラー計算モジュールへ結合されており、且つ選択可能な周波数において出力クロックを発生するために該対応する位相エラーに従って該複数個のNCOクロックパルスの各々の位相を調節する形態とされている。該出力クロックのエッジは、理想的な位相をより良く近似するために該位相エラーに従って調節され且つ入力クロックのエッジに対して必ずしも整合することを必要とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本特許請求の範囲に記載されている発明の1実施例に基づくNCOの出力クロックにおけるジッタを最小とさせることが可能なシステムのブロック図。
【図2】本発明の1実施例に基づく図1のクロック位相選択可能遅延モジュールのブロック図。
【図3】本発明の1実施例に基づく図1のNCOの出力クロックの位相遅延補償を例示しているタイミング線図。
【図4】本発明の1実施例に基づくNCOの出力クロックにおけるジッタを最小とさせる方法を例示したフローチャート400。
【発明を実施するための形態】
【0007】
NCOによって発生されるクロックにおけるジッタを最小とさせる本発明の好適実施例、システム及び方法について詳細に説明するが、それらの例は添付の図面に例示されている。
【0008】
従って、本発明の種々の実施例は、NCO出力クロック位相平滑化を実施するシステム及び方法を開示するものである。本発明の実施例は、上述したことを達成し、且つ更にNCOによって発生される出力クロック信号におけるジッタを最小化させる。
【0009】
以下の詳細な説明は、添付の図面を参照して現在特許請求の範囲に記載されている発明の例示的実施例についてのものである。この様な説明は、本発明の範囲に関しては、制限的なものではなく例示的なものであることが意図されている。この様な実施例は、当業者が本発明を実施することが可能であるのに十分であるように記載され、且つ本発明の精神又は範囲を逸脱すること無しに幾らかの変形を伴ってその他の実施例として実施することが可能であることが理解される。
【0010】
表記法及び用語法
本発明の実施例は、LCDディスプレイ(例えば、テレビジョンディスプレイ)などのイメージングシステムと関連するハードウエア又はコンピュータ上で稼動するソフトウエア上で実現させることが可能である。該コンピュータシステムは、パソコン、ノートブックコンピュータ、サーバコンピュータ、メインフレーム、ネットワーク型コンピュータ、ワークステーション等とすることが可能である。このソフトウエアプログラムは、NCOクロック位相平滑化を与えるべく動作可能である。1実施例においては、該コンピュータシステムは、バスに結合されているプロセッサ、及び該バスに結合されているメモリ格納部を包含している。該メモリ格納部は、揮発性又は非揮発性とすることが可能であり、且つ着脱自在な格納媒体を包含することが可能である。該コンピュータは、又、ディスプレイ、データ入力及び出力用設備等を包含することが可能である。
【0011】
以下の詳細な説明の内の幾つかの部分は、手順、ステップ、論理ブロック、処理、及びコンピュータメモリ上で実施することが可能なデータビットに関する演算のその他の記号的表現により示される。これらの説明及び表現は、当該技術における他の当業者に対して作業実体を最も効果的に伝達するためにデータ処理技術における当業者によって使用されている手段である。手順、コンピュータにより実行されるステップ、論理ブロック、プロセス等は、ここでは且つ一般的に、所望の結果に通じる演算又は命令の首尾一貫したシーケンスであると考えられる。該演算は、物理的量の物理的操作を必要とするようなものである。通常、といっても必ずしもというわけではないが、これらの量は、コンピュータシステム内において格納され、転送され、結合され、比較され、且つその他の態様で操作されることが可能な電気的又は磁気的信号の形式を取る。これらの信号のことをビット、値、要素、記号、文字、項目、数等として参照することが、主に一般的な使用態様の理由から、時折便利であることが証明されている。
【0012】
然しながら、これらの及び同様の項目は全て適宜の物理的量と関連すべきものであり、これらの量に対して適用される単なる便利なラベルであることを銘記すべきことである。以下の説明から明らかなようにそうでないことが特筆されない限り、本発明全体を通じて、「決定する」、「発生する」、「適用する」等の用語を使用する説明は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理的(電子的)量として表されているデータを操作し且つ該コンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又はその他のその様な情報格納部、伝送又はディスプレイ装置内の物理的量として同様に表されるその他のデータへ変換するコンピュータシステム、又は埋込型システムを包含する同様の電子的コンピューティング装置の動作及び処理のことを意味するものである。
【0013】
NCOクロック位相平滑化
本発明の実施例は、最小のジッタを示す一次クロックから二次クロックを派生する目的のためのNCOクロックを実現する。特に、本発明の実施例は、従来のNCOクロック出力によって発生される離散化によって発生されるジッタと比較した場合にNCOクロックの出力上のジッタを減少させることが可能である。
【0014】
図1は、本発明の1実施例に従って、NCOにより発生されるクロックのジッタを最小化させることが可能な位相平滑化システム100のブロック図である。NCOクロックジッタは、NCO110に続くクロック位相選択可能遅延モジュールの付加によって減少される。NCOクロックジッタは、以下により詳細に説明する選択可能係数Lによって従来のNCOシステムにおける入力クロックの1クロック周期から減少される。
【0015】
位相平滑化システム100は、選択可能な周波数における複数個のNCOクロックパルスを有するNCOクロック180を発生する形態とされているNCO110を有している。該NCOクロックは、入力クロック160及び基準入力、即ち周波数制御入力150、に基づいている。NCOクロック180は非常に精密な平均クロック周波数を発生するが、NCOクロック180はこの点においてクロックのサイクル毎のジッタを示している。即ち、NCOクロック180の複数個のNCOクロックパルスのエッジ(例えば、前端)は入力クロック160のエッジに整合されている。そうであるから、結果的に発生するジッタは入力クロック160の周期、例えばTckin、と等しい。
【0016】
1実施例においては、NCO110は、入力クロック160を受け取り且つ入力クロックの前端において前の蓄積した値(例えば、N−1)を与える形態とされているアキュムレータ140を有している。該アキュムレータの出力は加算ブロック及び位相エラー計算モジュール130へ送られる。例示目的のために、本発明の実施例は入力クロック160のリーディングエッジ即ち前端でトリガーされるものとして説明する。然しながら、その他の実施例は、入力クロック160のフォーリングエッジ即ち後端でトリガーされる場合にも適している。
【0017】
加算ブロック120はアキュムレータ140へ結合されており且つ入力クロックのエッジにおいて前の蓄積した値(例えば、N−1)を周波数制御入力150と加算する形態とされている。加算ブロック120はアキュムレータ140内に格納するために次の前に蓄積した値(例えば、N)を発生する。
【0018】
その結果、アキュムレータ140は、入力クロックの各前端において格納されている値と周波数制御入力150とを断続的に加算する。その結果、アキュムレータ140は、NCOクロック180の複数個のNCOクロックパルスを発生することが可能である。特に、1実施例においては、アキュムレータ140は、該アキュムレータ内の蓄積された値に基づいてNCOクロックパルス(例えば、N−1)を発生する。1実施例においては、アキュムレータ140は1ビットの蓄積された値に基づいてNCOクロックパルスを発生する。別の実施例においては、アキュムレータ140はアキュムレータ140によって出力される蓄積された値の最大桁ビット(MSB)に基づいてNCOクロックパルスを発生する。更に別の実施例においては、アキュムレータ140は、MSBが1である場合にNCOクロックパルスを発生する。
【0019】
特に、NCO110の平均出力周波数は以下のように式1で与えられる。
【0020】
【数1】

【0021】
式1において、以下の項、
【0022】
【数1a】

【0023】
はHzでのNCO出力180平均周波数を意味している。又、以下の項、
【0024】
【数1b】

【0025】
はHzでの入力クロック160周波数を意味している。以下の項、
【0026】
【数1c】

【0027】
はアキュムレータ140の大きさを意味しており、それは、1実施例においては、2の冪である(例えば、MNCO=2)。又、以下の項、
【0028】
【数1d】

【0029】
はアキュムレータ140内のビット数を意味している。以下の項、
【0030】
【数1e】

【0031】
はNCO周波数制御入力150を意味している。
【0032】
NCO110は、又、位相エラー計算モジュール130を有している。1実施例においては、位相エラー計算モジュールはアキュムレータ140へ結合されており且つアキュムレータ140の出力(例えば、N−1)を受け取る形態とされている。NCOクロック180の各パルスに対して、該位相エラー計算モジュールは対応する位相エラーを発生する形態とされている。
【0033】
特に、位相エラー計算モジュール130はセレクト入力SCOMP135を発生し、それはNCOクロックパルス(例えば、N−1)の対応する位相エラーを表している。このセレクト入力は、NCOクロック180のジッタを減少させるためにNCOクロックパルスへ適用される位相遅延を発生するために使用される。
【0034】
1実施例において、位相エラー計算モジュール130は、アキュムレータ140によって発生されるNCOクロックパルス(例えば、N−1)の位相エラーを決定する形態とされている。該位相エラーは、以下に更に詳細に説明するように、NCOクロックパルスの実際の位相を選択可能な周波数においての理想的なNCOクロックの位相と比較することによって決定される。付加的に、該位相エラーは、1実施例においては、アキュムレータ140内の蓄積された値のフラクショナルビット(fractional bits)に基づいており、又は、別の実施例によれば、アキュムレータ140内の蓄積された値と周波数制御入力150との結合に基づいている。
【0035】
1実施例においては、遅延パイプラインが位相エラー計算モジュールの後に導入される。該遅延パイプラインは、クロック入力の少なくとも一つの位相を有しており且つ出力クロック190に一様に適用される。該遅延パイプラインは、1実施例においては、位相エラー計算モジュール130がその計算を実行することを可能とするために導入される。
【0036】
位相平滑化システム100は、又、クロック位相選択可能遅延170を有しており、それは位相エラー計算モジュール130へ結合されている。クロック位相選択可能遅延170は、選択可能周波数においてジッタを減少させた出力クロックを発生するために、それに対応する位相エラー(例えば、位相エラー計算モジュール130によって発生されるセレクト入力)に従ってNCOクロック180の複数個のNCOクロックパルスの各々を調節する形態とされている。特に、該出力クロックの前端は入力クロックの前端と必ずしも整合するものではない。より特定的には、出力クロックのエッジは理想的な出力位相に一層近く近似すべく位相調節されており、入力クロックのエッジと必ずしも整合することは必要ではない。
【0037】
特に、NCO110によって発生されるNCOクロックパルスの位相エラーは以下の如くに決定される。任意の与えられた時間において、アキュムレータ140の値は、以下の式2によって表されるように、デジタル形式におけるNCOクロックパルス(例えば、N−1)の位相を表すものと考えることが可能である。
【0038】
【数2】

【0039】
式1において、A(t)はアキュムレータ140の瞬間的な値である。1実施例においては、NCOクロック180はアキュムレータ140のMSBであるから、このことは真の位相の大雑把な近似と考えることが可能であり、それは180度の分解能での正確度である。
【0040】
式1から、該アキュムレータの増分的正規化された位相変化は以下の式3によって与えられる。
【0041】
【数3】

【0042】
これは、又、NCOクロックエッジが発生する位相エラーの上限である。NCOクロック180の全てのエッジにおいて、対応するNCOクロックパルスの正規化された位相エラーは以下の式4によって与えられる。
【0043】
【数4】

【0044】
付加的に、対応するNCOクロックパルスの実際の位相は、1実施例においては、アキュムレータ140のフラクショナルビットから決定することが可能である。フラクショナルビット(AFRAC)は、アキュムレータ140内のMSB未満の値全てである。実際の位相は以下の式5によって与えられる。
【0045】
【数5】

【0046】
該実際の位相は、1実施例においては、NCOクロック180のエッジの離散化によって発生される位相エラーを取除くために使用される。特に、式5は正規化された位相エラーを表しており、それは理想的なクロックエッジ(例えば、0度)とNCO110によって発生されたNCOクロック180のNCOクロックパルスの実際の位相との間の差である。これはNCOクロック周波数に対して正規化される。然しながら、この位相エラーは式4によって拘束されるので、該位相エラーの補償はこの境界内において必要であるに過ぎない。そうであるから、該位相エラーは以下の式6における入力クロック周期に関しての正規化されたエラーとして表される。
【0047】
【数6】

【0048】
図3は、本発明の1実施例に従うシステム100によって発生される信号のタイミングを例示したタイミング線図300である。例えば、図3はクロック入力信号(CLKIN)310のタイミングを例示している。又、実際のNCOクロック(NCO CLK)320が示されている。1実施例においては、実際のNCO CLKは図1のNCOクロック180に類似している。更に、図3は、又、NCO110によって発生された位相エラーを補償する補償されたNCOクロック(NCO CLK)340を例示している。
【0049】
特に、式6において計算される位相エラーは、理想的なNCO CLK320とNCO CLK330の実際のクロック位相との間の位相差を例示している。例えば、該差異はφERRCLK350で示されている。
【0050】
式6において計算された正規化されたエラー(例えば、φERRCLK350)は、実際のNCO CLK330の実際の位相における「遅れ」を表している。この遅れが発生する理由は、ゼロのエラーは、実際のNCO CLK330のNCOクロックエッジはそれが理想的なNCO CLK320において理想的であるべき箇所に正確に発生することを暗示しているからである。そうであるから、正のエラーは、実際のNCO CLK330からの実際のNCOクロックエッジは式6において計算される位相エラーに等しい量だけ理想的なものより遅れて発生することを示している。1実施例においては、式6において計算されるこの位相エラーを補償するために、以下の式7において計算されるように、1−位相エラーである位相遅延を付加することが必要である。
【0051】
【数7】

【0052】
式7において計算される補償された位相エラーは図3においてφCOMP360として示してある。
【0053】
更に、図3に示されているように、NCO位相補償の位相遅延は、以下の式8に示されるように、一定とさせることが可能である。
【0054】
【数8】

【0055】
全位相φCOMP370も一定のものとして図3に示してある。式8に示されるように、NCO110の離散化によって導入される位相エラーに拘わらずに、この位相エラーは、最小のジッタ又はジッタ無しでの固定した位相遅延を発生させるための補償スキームによって取除くことが可能である。
【0056】
次に図2を参照すると、本発明の1実施例に基づくクロック位相選択可能遅延(CPSD)モジュール170のブロック線図が一層詳細に例示されている。CPSDモジュール170は、位相エラー計算モジュールによって出力されるセレクト入力SCOMP135に基づくNCOクロック180のNCOクロックパルス(例えば、N−1)の位相遅延させたバージョンを発生する。
【0057】
CPSDモジュール170は、式7における位相補償を発生する。CPSDモジュール170は、入力クロック160を受け取る形態とされている遅延ロックループ(DLL)240を有している。特に、DLL240は、1実施例においては、入力クロック160をL個の等しい位相へロックする。即ち、該LDDは、入力クロック160の周期TckinのL個の等しい位相がバッファLによって示されているようにバッファストリング245内の遅延ステージによって表されるように、入力クロック160をロックする。
【0058】
特に、入力クロック160は、位相周波数検知器(PFD)247及びチャージポンプ249によって断続的にロックされる。即ち、PFD247はバッファのストリング245へ結合されており且つL個の等しい位相が入力クロック周期Tckinと等しく無い場合の位相エラーを計算する形態とされている。更に、チャージポンプ249はPFD147へ結合されており且つバッファのストリング245を入力クロックへロックさせるためにその差を補正する形態とされており、そのことは、入力クロック周期TckinにわたりL個の等しく離隔された位相を発生する。
【0059】
更に、CPSDモジュール170は、アキュムレータ140へ結合されている電圧制御型遅延線(VCDL)230を有している。VCDL230は、NCOクロック180の複数個のNCOクロックパルスを受け取る形態とされている。更に、VCDL230は、入力クロック周期TckinのL個の等しい位相を発生する形態とされている。即ち、DLL240は、VCDL230におけるバッファLによって表されるバッファストリング235の遅延ステージを横断しての電圧を制御する制御型電圧245を発生する。
【0060】
VCDL235は、DLL240におけるバッファストリング235と同一であり且つマッチングする遅延ステージをバッファストリング235内に有している。そうであるから、VCDL230は、その遅延が1個の入力クロック周期Tckinと正確に等しく且つその位相が各々Tckin/Lによって表される遅延線を形成している。
【0061】
CPSDモジュール170は、又、位相エラー計算モジュール130へ結合されているマルチプレクサ190を有している。該マルチプレクサは、入力NCOクロックパルス(例えば、N−1)の対応する位相エラーを受け取り且つ該対応する位相エラーに基づいて適宜の位相遅延を選択する形態とされている。該適宜の位相遅延は、出力クロック190を発生するために、前記複数個のNCOクロックパルスの内の対応するNCOクロックパルス(例えば、N−1)へ適用される。
【0062】
特に、該NCOクロックパルス(例えば、N−1)は、前述したように、セレクト信号SCOMP135から選択される適宜の位相遅延でVCDL235を介して通過される。即ち、1実施例においては、該マルチプレクサは、該バッファストリング235内の適宜のタップ点を選択して、適宜の位相遅延をNCOクロックパルス(例えば、N−1)へ付加してジッタを減少させる。
【0063】
1実施例においては、使用可能な位相選択の数は離散的であるので、式7の位相補償は、SCOMP135を発生させるために式9において修正される。
【0064】
【数9】

【0065】
式9において、1実施例においては、SCOMPは最も近い整数値へ切り捨てられる。図2に示されているように、SCOMPのより低い値は一層大きな位相遅延を選択して式7の逆の関係を実現する。本発明の実施例においては、全体的なシステムのジッタ要件を満足させるためにバッファストリング235の遅延線内に位相タップの数を増加させるためにLを変化させることが可能である。
【0066】
別の実施例においては、出力クロック190はグリッチが無いものであるように構成されている。特に、セレクト入力SCOMPは、VCDLバッファストリング235の要素の全てが同一の値(例えば、全て低)にある場合にのみ変化される。1実施例において、マルチプレクサ220がこれらの条件下においてグリッチの無いものである場合には、出力クロック190におけるジッタは最小化されており且つグリッチの無いものである。
【0067】
図4は、本発明の1実施例に従ってNCOクロックに対して位相平滑化を与える方法における段階を例示しているフローチャート400である。即ち、本実施例は、NCOによって発生される出力クロックにおけるジッタを最小化させる。
【0068】
410において、本実施例は入力クロックに基づく選択可能周波数において複数個のNCOクロックパルスを発生する。特に、NCO110は選択可能周波数において複数個のNCOクロックパルスを発生する。該複数個のNCOクロックパルスの前端は入力クロックの前端と整合されている。
【0069】
更に詳細には、入力クロックの前端において、本実施例は、前の蓄積した値を周波数制御入力と加算して現在の蓄積された値を発生する。この現在の蓄積された値は、入力クロックの次の前端によって導入される次のサイクルに対する次の前に蓄積された値を有している。
【0070】
又、本実施例は、該前の蓄積された値のMSBが1である場合に該複数個のNCOクロックパルスの内の1個のNCOクロックパルスを発生する。即ち、図1のアキュムレータ140内の蓄積された値のMSBが1の値をアサートする場合にはいつでも、該アキュムレータはNCOクロックパルス(例えば、N−1)を発生する。
【0071】
420において、本実施例は、該複数個のNCOクロックパルスの各々に対しての対応する位相エラーを決定する。特に、位相エラー計算モジュール130は位相エラーを決定する。該位相エラーは、対応するNCOクロックパルスの実際の位相を選択可能周波数の理想的なNCOクロックの理想的な位相と比較することにより計算される。
【0072】
特に、本実施例は、周波数制御入力及び前の蓄積した値のフラクショナルビットに基づいてNCOクロックパルスの正規化された位相エラーを決定する。該正規化された位相エラーは、1から該正規化された位相エラーを減算して対応するNCOクロックパルスの対応する位相エラーを発生させることにより補償される。
【0073】
430において、本実施例は、該対応する位相エラーを該複数個のNCOクロックパルスの各々へ適用する。特に、CPSDモジュール170は、該対応する位相エラーを適用して選択可能周波数における出力クロックを発生し、そのことはジッタを最小化させる。特に、出力クロックの前端は入力クロックの前端に必ずしも整合していることは必要ではない。
【0074】
特に、本実施例は、入力クロックのL個の等しい位相に対応するL個のタップ点、又はVCDLにおける例を有している遅延線を形成している。即ち、入力クロックは、例えば、VCDLを制御するDLLにおいて、L個の等しい位相へロックされる。NCOクロックパルスを受け取った後に、本実施例は、対応するNCOクロックパルスに対して適宜の位相遅延を適用するために対応する位相エラーに基づいて該遅延線内の適宜のタップ点を選択することが可能である。その後に、本実施例は、出力クロックの一部として適宜の位相遅延を具備する対応するNCOクロックパルスを出力することが可能である。
【0075】
要するに、フローチャート400の方法は、VCDL230を制御するDLL240から構成されているCPSDモジュール170を使用する。CPSDモジュール170は、CPSDモジュール170に対するセレクト入力によって選択される入力クロック周期TckinのL個の等しく離隔された遅延を発生する。該適宜の遅延は、全てのNCOクロック出力に関するNCOフラクショナルビットに基づいて選択される。CPSD機能の出力は、i×Tckinだけ遅延された出力クロックであり、尚i=0,1,...,L−1である。そうであるから、このことは、1実施例においては、NCOクロックジッタをTckinからTckin/Lへ減少させる所望の効果を具備している。
【0076】
広義には、本記載は出力クロック位相平滑化を実施するシステム及び方法を開示している。位相平滑化回路を記載しており、それは入力クロックに基づいている選択可能周波数において複数個のNCOクロックパルスを発生する形態とされている数値制御型オシレータ(NCO)を包含している。該複数個のNCOクロックパルスのエッジは入力クロックのエッジに対して整合される。位相エラー計算モジュールがNCOへ結合されており且つ該複数個のNCOクロックパルスの各々に対して対応する位相エラーを発生する形態とされている。クロック位相選択可能遅延が該位相エラー計算モジュールへ結合されており且つ一層近接して理想的な出力クロック位相と整合するように位相調節された選択可能周波数における出力パルスを発生するために、対応する位相エラーに従って該複数個のNCOクロックパルスの各々を調節する形態とされている。出力クロックのエッジは入力クロックのエッジに対して必ずしも整合していることは必要ではない。
【0077】
従って、本発明の種々の実施例はNCO出力クロック位相平滑化を実施するためのシステム及び方法を開示している。本発明の実施例は、上の成果を与え且つ更にNCOによって発生される出力クロック信号におけるジッタを最小化させることを与える。
【0078】
本発明の実施例、NCOによって発生されるクロックにおけるジッタを最小化させるためのシステム及び方法を記載している。本発明は好適実施例に関連して記載してあるが、本発明をこれらの実施例に制限することを意図したものでないことが理解される。それとは反対に、本発明は特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の精神及び範囲内に包含される場合のある変形例、修正例、及び均等物をカバーするものであることが意図されている。更に、本発明の詳細な説明においては、本発明の完全なる理解を与えるために多数の特定的な詳細について記載されている。然しながら、当業者によって認識されるように、本発明はこれらの特定的な詳細無しで実施することも可能である。その他の場合において、周知の方法、手順、コンポーネント、及び回路については詳細に記載していないが、本発明の側面を不必要にぼかすことがないためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相平滑化システムにおいて、
入力クロックに基づく選択可能周波数において複数個のNCOクロックパルスを発生する形態とされており、前記複数個のNCOクロックパルスのエッジが前記入力クロックのエッジに整合されている、数値制御型オシレータ(NCO)、
前記NCOへ結合されており、前記複数個のNCOクロックパルスの各々に対して対応する位相エラーを発生する形態とされている位相エラー計算モジュール、
前記位相エラー計算モジュールへ結合されており、前記選択可能周波数において出力クロックを発生するために前記対応する位相エラーに従って前記複数個のNCOクロックパルスの各々を調節する形態とされているクロック位相選択可能遅延、
を有しており、前記出力クロックのエッジは理想的な出力位相を一層近接して近似するべく位相調節されており且つ前記入力クロックの前記エッジと必ずしも整合することが必要ではない位相平滑化システム。
【請求項2】
請求項1において、前記NCOが、
前記入力クロックを受け取り且つ前記入力クロックのエッジにおいて蓄積した値を与える形態とされているアキュムレータ、
を有している位相平滑化システム。
【請求項3】
請求項2において、前記NCOが更に、
前記アキュムレータへ結合されており、前記アキュムレータ内の値を周波数制御入力と加算させる形態とされている加算ブロック、
を有している位相平滑化システム。
【請求項4】
請求項3において、前記加算ブロックが、前記入力クロックの前記エッジにおいて前記周波数制御入力を前記蓄積した値と加算させ且つ前記アキュムレータ内に格納するために次の前に蓄積した値を発生する形態とされている位相平滑化システム。
【請求項5】
請求項2において、前記アキュムレータが、前記複数個のNCOクロックパルスの内の1個のNCOクロックパルスを出力する形態とされている位相平滑化システム。
【請求項6】
請求項2において、前記位相エラー計算モジュールが、前記選択可能周波数において理想的なNCOクロックと比較される前記アキュムレータによって発生するNCOクロックパルスの位相エラーを決定する形態とされており、前記位相エラーが前記アキュムレータ内の前記蓄積した値のフラクショナルビットに基づいている位相平滑化システム。
【請求項7】
請求項1において、前記クロック位相選択可能遅延が、
前記入力クロックを受け取り且つ前記入力クロックをL個の等しい位相へロックさせる形態とされている遅延ロックループ(DLL)、
前記アキュムレータへ結合されており、前記複数個のNCOクロックパルスを受け取り且つ前記入力クロックの前記L個の等しい位相を発生する形態とされている電圧制御型遅延線(VCDL)、
前記位相エラー計算モジュールへ結合されており、前記対応する位相エラーを受け取り且つ前記複数個のNCOクロックパルスの内の対応するNCOクロックパルスへ適用される前記対応する位相エラーに基づいて適宜の位相遅延を選択する形態とされているマルチプレクサ、
を有している位相平滑化システム。
【請求項8】
請求項7において、前記DLLが、
L個のバッファからなるストリング、
前記ストリングに結合されており、前記Lに等しい位相が入力クロック周期に等しく無い場合に差エラーを計算する形態とされている位相周波数検知器(PFD)、
前記ストリングを前記入力クロックへロックさせるために前記差エラーを補正するために前記PFDへ結合されているチャージポンプ、
を有している位相平滑化システム。
【請求項9】
位相平滑化システムにおいて、
入力クロックを受け取り且つ前記入力クロックのエッジにおいて蓄積された値を供給する形態とされており、選択可能周波数においてNCOクロックのNCOクロックパルスを発生するアキュムレータ、
前記アキュムレータへ結合されており、前記アキュムレータ内に格納するために次の蓄積した値を発生するために前記蓄積した値を周波数制御入力と加算させる形態とされている加算ブロック、
前記アキュムレータへ結合されており、前記NCOクロックパルスに対する位相エラーを発生する形態とされている位相エラー計算モジュール、
前記位相エラー計算モジュールへ結合されており、前記選択可能周波数において出力クロックの出力クロックパルスを発生するために前記位相エラーに従って前記NCOクロックパルスを調節する形態とされているクロック位相選択可能遅延、
を有しており、前記出力クロックのエッジが理想的な出力位相を一層近接して近似するように位相調節されており且つ前記入力クロックの前記エッジに必ずしも整合していることを必要とするものではない位相平滑化システム。
【請求項10】
請求項9において、前記位相エラー計算モジュールが前記蓄積した値のフラクショナルビットに基づいて前記位相エラーを決定する形態とされている位相平滑化システム。
【請求項11】
請求項9において、前記クロック位相選択可能遅延が、
前記入力クロックを受け取り且つ前記入力クロックをL個の等しい位相へロックさせる形態とされている遅延ロックループ(DLL)、
前記アキュムレータへ結合されており、前記NCOクロックパルスを受け取り且つ前記入力クロックの前記L個の等しい位相を発生する形態とされている電圧制御型遅延線(VCDL)、
前記位相エラー計算モジュールへ結合されており、前記位相エラーを受け取り且つ前記出力クロックとして前記NCOクロックパルスへ印加される前記位相エラーに基づいて適宜の位相遅延を選択する形態とされているマルチプレクサ、
を有している位相平滑化システム。
【請求項12】
請求項9において、前記アキュムレータが前記蓄積した値の1個のビットに基づいて前記NCOクロックパルスを発生する位相平滑化システム。
【請求項13】
位相平滑化を与える方法において、
入力クロックに基づく選択可能周波数において複数個のNCOクロックパルスを発生し、前記複数個のNCOクロックパルスの前端は前記入力クロックの前端に整合しており、
前記選択可能周波数の理想的なNCOクロックと比較された場合に前記複数個のNCOクロックパルスの各々に対する対応する位相エラーを決定し、
前記選択可能周波数において出力クロックを発生するために前記対応する位相エラーを前記複数個のNCOクロックパルスの各々へ適用し、前記出力クロックの前記前端は前記理想的なNCOクロックの理想的な位相に一層近接して近似するように位相調節されており且つ前記入力クロックの前記前端と必ずしも整合していることを必要とするものではない、
ことを包含している方法。
【請求項14】
請求項13において、前記複数個のNCOクロックパルスを発生することが、
前記入力クロックの前端において、蓄積した値を周波数制御入力と加算して次の蓄積した値を発生し、且つ
前記次の蓄積した値を格納する、
ことを包含している方法。
【請求項15】
請求項14において、更に、
前記複数個のNCOクロックパルスの内の1個のNCOクロックパルスを発生する、
ことを包含している方法。
【請求項16】
請求項14において、前記対応する位相エラーを決定することが、
前記蓄積した値のフラクショナルビットに基づいてNCOクロックパルスの正規化した位相エラーを決定し、
1から前記正規化した位相エラーを減算することにより前記対応する位相エラーを発生するために前記正規化した位相エラーを補償する、
ことを包含している方法。
【請求項17】
請求項13において、前記対応する位相エラーを適用することが、
前記入力クロックのL個の等しい位相に対応するL個のタップ点を有する遅延線を形成し、
前記NCOクロックパルスを受け取り、
前記NCOクロックパルスへ適宜の位相遅延を適用するために前記対応する位相エラーに基づいて適宜のタップ点を選択する、
ことを包含している方法。
【請求項18】
請求項17において、更に、
前記入力クロックを受け取り、
前記入力クロックをL個の等しい位相へロックする、
ことを包含している方法。
【請求項19】
請求項17において、更に、
前記出力クロックとして前記適宜の位相遅延を具備する前記NCOクロックパルスを出力する、
ことを包含している方法。
【請求項20】
請求項17において、前記適宜のタップ点を選択することが、
前記L個のタップ点を与える電圧制御型遅延線(VCDL)の全てのバッファが同一の値である場合に前記適宜のタップ点を選択する、
ことを包含している方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−504068(P2010−504068A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529327(P2009−529327)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/078688
【国際公開番号】WO2008/036613
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(591013469)ナショナル セミコンダクタ コーポレイション (64)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL SEMICONDUCTOR CORPORATION
【Fターム(参考)】