断熱充電メモリ回路
【課題】pMOSトランジスタのソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止する。
【解決手段】まず、ワード線WLを零電位とし、スイッチ素子S1、S2がオン、オフの状態で、ビット線BL、NBLを正電位VDDまで昇圧する。スイッチ素子S1をオフし、スイッチ素子S2をオンし、スイッチ素子S2を介して、グラウンド線MCGLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDDに昇圧する。スイッチ素子S2をオフする。ワード線を正電位VDDとする。ビット線BL、NBLの内のフリップフロップ回路FFにデータ0を書き込む側のビット線、例えば、ビット線NBLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、零電位に降圧する。
【解決手段】まず、ワード線WLを零電位とし、スイッチ素子S1、S2がオン、オフの状態で、ビット線BL、NBLを正電位VDDまで昇圧する。スイッチ素子S1をオフし、スイッチ素子S2をオンし、スイッチ素子S2を介して、グラウンド線MCGLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDDに昇圧する。スイッチ素子S2をオフする。ワード線を正電位VDDとする。ビット線BL、NBLの内のフリップフロップ回路FFにデータ0を書き込む側のビット線、例えば、ビット線NBLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、零電位に降圧する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pMOSトランジスタのソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止可能な断熱充電メモリ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に用いられているSRAM(Static Random Access Memory)の回路は、図16に示すように、pMOSトランジスタとnMOSトランジスタとで構成されるCMOSインバータを2つ用いて(P1、P2、N1、N2)、各CMOSインバータの出力端を他方の入力端に接続するフリップフロップをメモリ素子としている。そして、各CMOSインバータの出力信号を、nMOSトランジスタN3、N4を介してビット線BL、NBLに接続しており、1メモリセルにおいて合計6個のトランジスタを備えた構成である。
【0003】
近年、メモリ素子の微細化が進み、配線の断面積が小さくなるにつれて配線電流密度が増大し、その結果として、エレクトロマイグレーションなどによる配線の断線が発生するという問題がある。
【0004】
そこで、メモリセルにデータを書き込む際に電源線の電位をフリップフロップの時定数よりも長い時間で降圧させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
図17は特許文献1で開示された断熱充電メモリ回路の回路図である。
【0006】
メモリセルにおいて各pMOSトランジスタP1、P2のソース電極はメモリセル電源線(以下、MCPL(Memory Cell Power Line)という)により導通している。回路の電源部分は、正電位VDDに設定された定電圧電源線V1’とMCPLの間を開閉するスイッチS1’、及び、零電位に設定された定電圧電源線V2’とメモリセル電源線MCPLの間を開閉するスイッチS2’を備えた構成である。スイッチS1’は、nMOSトランジスタやpMOSトランジスタそのものを利用することも可能であり、その他、nMOSトランジスタとpMOSトランジスタとを並列接続することにより実現することもできる。
【0007】
次に、図18のタイミングチャートを用いてメモリセルへデータを書き込む時の動作を説明する。ここでは、スイッチS1’、S2’はnMOSトランジスタを用い、nMOSトランジスタのゲート電位が正電位VDDの時に、スイッチがオンとなる回路構成を用いることとしている。
【0008】
なお、スイッチS1’、S2’に用いられるnMOSトランジスタのしきい値電圧VTは、正電位VDDの大きさに対して十分小さく、nMOSトランジスタのオン時におけるしきい値電圧VTに応じた電圧降下を無視することとする。
【0009】
最初に、スイッチS1’をオンからオフ、スイッチS2’をオフからオンすることにより、MCPLを正電位VDDから零電位(0)に緩やかに降圧させる(t1→t2)。緩やかに降圧させるために、スイッチS2’は抵抗値の大きいトランジスタとする。
【0010】
次に、スイッチS2’をオンからオフし、MCPLをハイインピーダンス状態とする(t2)。
【0011】
続いて、ワード線WLを正電位VDDとし、nMOSトランジスタN3、N4をオンさせ、ビット線BL、NBLからの信号の入力を待ち受ける状態にする(t3)。
【0012】
次に、ビット線NBLを零電位とし、一方、ビット線BLには断熱充電信号A2を入力するとともに、断熱充電信号A2を零電位から正電位VDDに緩やかに昇圧する(t4→t5)。これにより、ビット線BLを流れる電流がnMOSトランジスタN3を介してフリップフロップ回路FFへ入力され、断熱充電メモリ回路を緩やかに充電してデータを書き込むことができる。MCPLも連動して零電位から正電位VDDに昇圧する。
【0013】
その後、スイッチS1’をオンにする(t5)。こうしてMCPLを正電位VDDに固定することにより、書き込まれたデータを保持することができる。
【0014】
この断熱充電メモリによれば、定電圧電源線V1’、V2’を用いて、スイッチS1’、S2’の操作により、MCPLを正電位VDDから零電位に緩やかに降圧させた後、データを書き込むことができるので、エレクトロマイグレーションによる断熱充電メモリ内部の配線断線を防ぐことができる。
【0015】
しかしながら、この断熱充電メモリは、pMOSトランジスタのソース電極の電位を変化させるべく、MCPLと定電圧電源線V1’、V2’との間にスイッチS1’、S2’を配置する構成としなければならないので、回路の設計自由度に制約があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−226927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的は、pMOSトランジスタのソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止可能な断熱充電メモリ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、第1の本発明に係る断熱充電メモリ回路は、直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続されたフリップフロップ回路と、前記一方のCMOSインバータ回路の入力端と第1のビット線の間に接続されたトランジスタと、前記他方のCMOSインバータ回路の入力端と第2のビット線の間に接続されたトランジスタと、前記フリップフロップ回路内の各nMOSトランジスタのソース電極を接続するグラウンド線と零電位を呈する回路節点との間を開閉する第1のスイッチ素子と、前記グラウンド線に一端を接続された第2のスイッチ素子とを備え、前記各pMOSトランジスタのソース電極が正電位に保たれ、前記各トランジスタがオフ、前記第1のスイッチ素子がオン、前記第2のスイッチ素子がオフの状態で、前記第1、第2のビット線を前記正電位まで昇圧し、前記第1のスイッチ素子がオフに変化し、前記第2のスイッチ素子がオンに変化した状態で、前記第2のスイッチ素子を介して、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記グラウンド線を前記正電位まで昇圧し、前記第2のスイッチ素子がオフに変化し、前記各トランジスタがオンに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1、第2のビット線の内の、前記フリップフロップ回路にデータ0を書き込む側のビット線を前記正電位から零電位まで降圧させることを特徴とする。
【0019】
第2の本発明に係る断熱充電メモリ回路は、直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続されたフリップフロップ回路と、前記一方のCMOSインバータ回路の入力端と第1のビット線の間に接続されたトランジスタと、前記他方のCMOSインバータ回路の入力端と第2のビット線の間に接続されたトランジスタと、前記フリップフロップ回路内の各nMOSトランジスタのソース電極を接続するグラウンド線と零電位を呈する回路節点との間を開閉する第1のスイッチ素子と、前記グラウンド線に一端を接続された接続された第2のスイッチ素子とを備え、前記各pMOSトランジスタのソース電極が正電位に保たれ、前記各トランジスタがオフ、前記第1のスイッチ素子がオン、前記第2のスイッチ素子がオフの状態で、前記第1、第2のビット線を前記第1の正電位まで昇圧し、前記第1のスイッチ素子がオフに変化し、前記第2のスイッチ素子がオンに変化した状態で、前記第2のスイッチ素子を介して、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1の正電位より低い第2の正電位まで前記グラウンド線を昇圧し、前記第2のスイッチ素子がオフに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1、第2のビット線の内の、前記フリップフロップ回路にデータ0を書き込む側のビット線を前記第2の正電位まで降圧させ、さらに前記各トランジスタがオンに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、当該ビット線を零電位まで降圧させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る断熱充電メモリ回路によれば、pMOSトランジスタのソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路の回路図である。
【図2】第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路にデータを書き込むときの動作を示すタイミングチャートである。
【図3】電荷を再利用する電源回路として、インダクタLとコンデンサCと用いた交流電源回路の回路図である。
【図4】電荷を再利用する電源回路として、階段状電圧を発生する電源回路の回路図である。
【図5】電荷を再利用する電源回路として、階段状電圧を発生する別の電源回路の回路図である。
【図6】電荷を再利用しない方法として用いる抵抗値の大きいインバータの回路図である。
【図7】電荷を再利用する電源回路として、階段状電圧を発生する電源回路の別の例を示す回路図である。
【図8】第2の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路にデータを書き込むときの動作を示すタイミングチャートである。
【図9】SRAMにおける縦型のレイアウトを示す図である。
【図10】SRAMにおける横型のレイアウトを示す図である。
【図11】縦型の2×2セルのレイアウトを示す図である。
【図12】横型の2×2セルのレイアウトを示す図である。
【図13】グリッチなどの影響を防止するための回路を示す図である。
【図14】グリッチなどの影響を防止するための別な回路を示す図である。
【図15】図13、図14に示す回路のタイミングチャートである。
【図16】従来におけるSRAMの回路構成例を示す図である。
【図17】従来におけるSRAMの別な回路構成例を示す図である。
【図18】図17に示す回路のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路の回路図である。
【0024】
断熱充電メモリ回路は、マトリクス状に配置された複数の断熱充電メモリ回路の内の1つを示すものであり、いわゆるSRAMである。
【0025】
断熱充電メモリ回路は、直列に接続されたpMOSトランジスタP1およびnMOSトランジスタN1とを含むCMOSインバータ回路IV1、直列に接続されたpMOSトランジスタP2およびnMOSトランジスタN2とを含むCMOSインバータ回路IV2が相補的に接続されたフリップフロップ回路FFと、CMOSインバータ回路IV1の入力端(pMOSトランジスタP1およびnMOSトランジスタN1の各ゲート電極を接続するノードND1)と第1のビット線BLの間に接続されたnMOSトランジスタN3と、CMOSインバータ回路IV2の入力端(pMOSトランジスタP2およびnMOSトランジスタN2の各ゲート電極を接続するノードND2)と第2のビット線NBLの間に接続されたトランジスタN4と、各nMOSトランジスタN1、N2のソース電極を接続するグラウンド線MCGLと定電圧電源線V1との間を開閉する第1のスイッチ素子S1と、グラウンド線MCGLと定電圧電源線V2との間を開閉する第2のスイッチ素子S2とを備える。
【0026】
各pMOSトランジスタP1、P2のソース電極を接続する電源線は正電位VDDに保たれる。CMOSインバータ回路IV1、IV2、トランジスタN3、N4は、いわゆるメモリセルを構成する。定電圧電源線V1、V2は、それぞれ零電位、正電位VDDを呈する回路節点である。
【0027】
スイッチ素子S1、S2は、ここでは、それぞれnMOSトランジスタとし、そのゲート電圧が正電位VDDになってオンすることとする。なお、スイッチ素子をpMOSトランジスタとしてもよい。
【0028】
また、トランジスタN3、N4を、それぞれnMOSトランジスタとし、そのゲート電圧が正電位VDDになってオンすることとする。なお、トランジスタをpMOSトランジスタとしてもよい。
【0029】
CMOSインバータ回路IV1の出力(pMOSトランジスタP1とnMOSトランジスタN1とのドレイン電極)は、CMOSインバータ回路IV2の入力(pMOSトランジスタP2とnMOSトランジスタN2とのゲート電極)に接続され、同様に、CMOSインバータ回路IV2の出力(pMOSトランジスタP2とnMOSトランジスタN2とのドレイン電極)は、CMOSインバータ回路IV1の入力(pMOSトランジスタP1とnMOSトランジスタN1とのゲート電極)に接続されている。
【0030】
pMOSトランジスタP1とnMOSトランジスタN1とのゲート電極とメモリセルアレイのビット線BLとの間にnMOSトランジスタN3が接続され、このnMOSトランジスタN3のゲート電極が、ワード線WLに接続されている。同様に、pMOSトランジスタP2とnMOSトランジスタN2とのゲート電極とメモリセルアレイのビット線NBLとの間にnMOSトランジスタN4が接続され、このnMOSトランジスタN4のゲート電極もワード線WLに接続されている。
【0031】
次に、第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路の動作、特にデータの書き込み時における動作について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路にデータを書き込むときの動作を示すタイミングチャートである。
【0032】
まず、ワード線WLを零電位とし、つまり、各トランジスタN3、N4をオフさせ、且つ、スイッチ素子S1がオン、スイッチ素子S2がオフの状態で、ビット線BL、NBLを正電位VDDまで昇圧する。
【0033】
次に、スイッチ素子S1をオフし、スイッチ素子S2をオンする(t1)。例えば、比較的にオン抵抗の大きいnMOSトランジスタをスイッチ素子S2とすることにより、グラウンド線MCGLが、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDDに昇圧する(t2)。これにより、フリップフロップ回路FFに書き込まれているデータが消去される。
【0034】
グラウンド線MCGLが正電位VDDに昇圧したらスイッチ素子S2をオフする(t2)。これにより、グラウンド線MCGLがハイインピーダンスの状態になる。
【0035】
次に、ワード線を正電位VDDとする。つまり、各トランジスタN3、N4をオンさせる(t3)。
【0036】
次に、ビット線BL、NBLの内のフリップフロップ回路FFに書き込むべきデータ0に対応するビット線、例えば、ビット線NBLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、零電位に降圧する(t3→t4)。
【0037】
このとき、正電位VDDのグラウンド線MCGLから、ビット線NBLへと電流が流れ、グラウンド線MCGLが正電位VDDから緩やかに零電位になる(t3→t4)。こうして、フリップフロップ回路FFの電源側電位が正電位VDD、接地側電位が零電位となる。つまり、フリップフロップ回路FFは従来の方法でデータが書き込まれた状態と同じになり、具体的には、ノードND1に高電圧、ノードND2に低電圧が書き込まれる。
【0038】
次に、スイッチ素子S1をオンし(t5)、ワード線WLを零電位とする。これにより、グラウンド線MCGLが零電位に保たれ、各トランジスタN3、N4がオフに保たれ、つまり、書き込まれたデータが保持される。
【0039】
ここで、上記のように、例えば、ビット線NBLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、零電位に降圧することは、ビット線NBLに断熱充電信号を与えるともいう。
【0040】
この断熱充電信号について説明する。断熱充電とは、回路の時定数よりも非常に緩やかに充電を行う方法であり、断熱という言葉は、物理学において、系を非常に緩やかに変化させる場合に用いられていることから、この言葉が用いられている。
【0041】
その意味では、上記のように、グラウンド線MCGLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDDに昇圧する(t2)ことは、グラウンド線MCGLにスイッチ素子S2を介して断熱充電信号を与えるともいう。
【0042】
上記の説明では、定電圧電源線V2の電位を正電位VDDとし(一定とし)、比較的にオン抵抗の大きいnMOSトランジスタをスイッチ素子S2とすることにより、これを実現したが、スイッチ素子S2のオン抵抗は任意とし、V2に与える断熱充電信号の電位を零電位から正電位VDDに高めることにより、これを実現してもよい。
【0043】
さて、そのようにグラウンド線MCGLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDDに昇圧すべく、断熱充電信号の電位を緩やかに昇圧すること、ならびに、ビット線NBLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、零電位に降圧すべく、断熱充電信号の電位を緩やかに降圧する方法について説明する。
【0044】
断熱充電信号の電位を緩やかに昇圧降圧させる具体的な回路は、電荷を再利用する方法を使用するインダクタとコンデンサを用いた交流電源回路や、コンデンサをN−1個用いたN段の階段状電圧を生成する電源回路を用いることができる。尚、電荷の再利用とは、電源から負荷容量に充電した電荷をGNDに捨てることなく、再び電源のほうに戻すことにより、電荷を再利用する方法である。
【0045】
図3は、インダクタLとコンデンサCと用いた交流電源回路の例を、図4は、3個のコンデンサC1〜C3を用いて4段の階段状電圧を発生する電源回路の例を示す。図4において、階段状電圧を発生する電源回路は、4つの定電圧電源VDD,3/4VDD,2/4VDD,1/4VDD、3個のコンデンサC1〜C3、8個のnMOSトランジスタN5〜N12を備えた構成である。3つのコンデンサC1〜C3は各々1/4VDD,2/4VDD,3/4VDDの電圧により充電される。3つのnMOSトランジスタN5〜N7のゲート電極には入力信号Preが印加され、4つのnMOSトランジスタN8〜N11のゲート電極には入力信号T1〜T4が印加され、1つのnMOSトランジスタN12のゲートには入力信号CLが印加される。尚、1/4VDD,2/4VDD,3/4VDDの各電源は、図5に示す、これらがない回路でも自然にコンデンサC1〜C3はそれぞれ1/4VDD,2/4VDD,3/4VDDに充電され安定状態となる。まず、入力信号Preを一定時間だけHighにして、nMOSトランジスタN5〜N7をオンとし、コンデンサC1〜C3を各々1/4VDD,2/4VDD,3/4VDDの電圧に充電する。次に、各入力信号T1〜T4を、T1→T2→T3→T4→T3→T2→T1の順に所定時間ずつHighにしてnMOSトランジスタN8〜N11をオンさせ、コンデンサC1〜C3に充電されている電圧1/4VDD,2/4VDD,3/4VDDを時分割的に出力電圧Voutとして出力し、最後に入力信号T1がLowになったら入力信号CLをHighにしてnMOSトランジスタN12を所定時間だけオンして出力電圧Voutを接地電位とする。このようなタイミング制御により、階段状電圧を発生する電源回路の出力電圧Voutは、立ち上がり立ち下がりに4つの階段をもつ波形となる。これらの電源回路では、その出力電圧を緩やかに上昇させ緩やかに下降させる交流波形(繰り返し波形)とすることができる。
【0046】
また、電荷を再利用することなく、図6に示すように、フリップフロップ回路の時定数よりも1桁程度以上長い時間で電圧を変化させることを可能とする抵抗値の大きいトランジスタを用いたインバータを利用して昇圧降圧することも可能である。具体的には、ゲート長を長くする方法や、トランジスタ幅を小さくする方法、また、ソースやドレインのイオン注入ドーピング濃度を小さくする方法などがある。また、トランジスタのしきい値電圧を大きくする方法を用いても良い。
【0047】
また、段階波形の生成において、キャパシタを用いた図4の回路に限定はされず、図7の回路でも良い。入力信号を、T0→T1→T2→T3→T4→T3→T2→T1→T0の順にHighにして、これを繰り返しても良い。
【0048】
したがって、第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路によれば、直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続され、各pMOSトランジスタのソース電極を接続する電源線が正電位VDDに保たれるフリップフロップ回路FFと、一方のCMOSインバータ回路IV1の入力端(ND1)と第1のビット線BLの間に接続されたトランジスタN3と、他方のCMOSインバータ回路IV2の入力端(ND2)と第2のビット線NBLの間に接続されたトランジスタN4と、各nMOSトランジスタ(N1,N2)のソース電極を接続するグラウンド線MCGLと零電位を呈する回路節点(V1)との間を開閉する第1のスイッチ素子S1と、グラウンド線MCGLに一端を接続された第2のスイッチ素子S2とを備え、各トランジスタN3、N4がオフにされ、第1のスイッチ素子S1がオン、第2のスイッチ素子S2がオフの状態で、第1、第2のビット線BL、NBLを正電位VDDまで昇圧し、第1のスイッチ素子S1がオフに変化し、第2のスイッチ素子S2がオンに変化した状態で、第2のスイッチ素子S2を介して、前記フリップフロップ回路の時定数よりも長い時間をかけて、グラウンド線MCGLを正電位VDDまで昇圧し、第2のスイッチ素子S2がオフに変化し、各トランジスタN3、N4がオンにされた状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、第1、第2のビット線BL、NBLの内のフリップフロップ回路FFにデータ0を書き込む側のビット線(上記例では、ビット線NBL)を正電位VDDから零電位まで降圧させるので、pMOSトランジスタP1、P2のソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止することができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路について説明する。断熱充電メモリ回路の回路構成は、第1の実施の形態と同じなので、重複説明を省略する。ただし、定電圧電源線V2の電位は、正電位VDDより低い電位(ここでは、正電位VDDの1/2の電位(以下、「正電位VDD/2」)とする。
【0050】
第2の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路の動作、特にデータの書き込み時における動作について、説明する。図8は、第2の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路にデータを書き込むときの動作を示すタイミングチャートである。
【0051】
まず、ワード線WLを零電位とし、つまり、各トランジスタN3、N4をオフさせ、且つ、スイッチ素子S1がオン、スイッチ素子S2がオフの状態で、ビット線BL、NBLを正電位VDDまで昇圧する。
【0052】
次に、スイッチ素子S1をオフし、スイッチ素子S2をオンする(t1)。例えば、比較的にオン抵抗の大きいnMOSトランジスタをスイッチ素子S2とすることにより、グラウンド線MCGLが、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDD/2に昇圧する。これにより、フリップフロップ回路FFに書き込まれているデータが保持される。
【0053】
グラウンド線MCGLが正電位VDD/2に昇圧したらスイッチ素子S2をオフする(t2)。これにより、グラウンド線MCGLがハイインピーダンスの状態になる。
【0054】
次に、ビット線BL、NBLの内のフリップフロップ回路FFに書き込むべきデータである0に対応するビット線、例えば、ビット線NBLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDD/2に降圧する(t3→t4)。
【0055】
次に、ワード線を正電位VDDとする。つまり、各トランジスタN3、N4をオンさせる(t4)。そして、同じビット線(上記例では、ビット線NBL)を、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、零電位に降圧する(t4→t5)。
【0056】
このとき、正電位VDD/2のグラウンド線MCGLから、ビット線NBLへと電流が流れ、グラウンド線MCGLが正電位VDD/2から緩やかに零電位になる(t4→t5)。こうして、フリップフロップ回路FFの電源側電位が正電位VDD、接地側電位が零電位となる。つまり、フリップフロップ回路FFは従来の方法でデータが書き込まれた状態と同じになり、具体的には、ノードND1に高電圧、ノードND2に低電圧が書き込まれる。
【0057】
次に、スイッチ素子S1をオンし(t6)、ワード線WLを零電位とする。これにより、グラウンド線MCGLが零電位に保たれ、各トランジスタN3、N4がオフに保たれ、つまり、書き込まれたデータが保持される。
【0058】
したがって、第2の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路によれば、直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続され、各pMOSトランジスタのソース電極を接続する電源線が第1の正電位VDDに保たれるフリップフロップ回路FFと、一方のCMOSインバータ回路IV1の入力端(ND1)と第1のビット線BLの間に接続されたトランジスタN3と、他方のCMOSインバータ回路IV2の入力端(ND2)と第2のビット線NBLの間に接続されたトランジスタN4と、フリップフロップ回路内の各nMOSトランジスタのソース電極を接続するグラウンド線MCGLと零電位を呈する回路節点(V1)との間を開閉する第1のスイッチ素子S1と、グラウンド線MCGLに一端を接続された第2のスイッチ素子S2とを備え、各トランジスタN3、N4がオフにされ、第1のスイッチ素子S1がオン、第2のスイッチ素子S2がオフの状態で、第1、第2のビット線BL、NBLを正電位VDDまで昇圧し、第1のスイッチ素子S1がオフに変化し、第2のスイッチ素子S2がオンに変化した状態で、第2のスイッチ素子S2を介して、前記フリップフロップ回路の時定数よりも長い時間をかけて、グラウンド線MCGLを正電位VDD/2まで昇圧し、第2のスイッチ素子S2がオフに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、第1、第2のビット線BL、NBLの内のフリップフロップ回路FFにデータ0を書き込む側のビット線(上記例では、ビット線NBL)を正電位VDD/2まで降圧させ、さらに各トランジスタN3、N4がオンにされた状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、当該ビット線(上記例では、ビット線NBL)を零電位まで降圧させるので、pMOSトランジスタP1、P2のソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止することができる。また、グラウンド線MCGLを正電位VDDより低い正電位まで昇圧すればよいので、データを迅速に書き込むことができる。
【0059】
次に、各実施の形態に係る断熱充電メモリ回路(総称して、単に断熱充電メモリ回路という)のレイアウトについて説明する。
【0060】
SRAMのレイアウトについては、図9に示す縦型と、図10に示す横型が知られている。
【0061】
図11は、縦型の2×2セルのレイアウトを示す図である。図1のワード線WLに該当するワード線WL0、WL1、図1のグラウンド線MCGLに該当するグラウンド線MCGL0、MCGL1を横方向に配置し、図1のビット線BLに該当するビット線BL0、BL1、正電位VDDに設定される配線(図示せず)を縦方向に配置するレイアウトが可能である。
【0062】
図12は、横型の2×2セルのレイアウトを示す図である。図1のワード線WLに該当するワード線WL0、WL1、正電位VDDに設定される配線(図示せず)を横方向に配置し、図1のビット線BLに該当するビット線BL0、BL1、図1のグラウンド線MCGLに該当するグラウンド線MCGL0、MCGL1を縦方向に配置するレイアウトが可能である。このレイアウトで、第1の実施の形態で説明した書き込みを行うと、グラウンド線が正電位VDDとなった際に、選択していない他の行のワード線のメモリセルのデータを消去してしまうので、このレイアウトで第1の実施の形態に係る書き込みは行えない。一方、このレイアウトで、第2の実施の形態で説明した書き込みを行っても、グラウンド線は正電位VDD/2までしか昇圧されないので、選択していない他の行のワード線のデータを保持でき、よって、このレイアウトで第2の実施の形態に係る書き込みを行うことができる。なお、縦型のレイアウトでは、グラウンド線は、異なるワード間で共有されることがないので、いずれの実施の形態に係る書き込みでも行うことができる。
【0063】
また、各実施の形態では、ビット線BL、NBLを共に正電位VDDとしているために、選択しないワードのメモリセルへ誤ってデータが書き込まれることがない。
【0064】
すなわち、ワード線WLを制御するデコーダ回路(図示せず)が、あるワード線WLを正電位VDDとする際、グリッチなどの影響により、他のワード線WLを瞬間的に正電位VDDにすることがある。このときに、ビット線BLを正電位VDD、ビット線NBLを零電位(または逆)にすると、反対のデータを誤って書き込むことが起こり得る。これを避けるためには、十分時間が経過した後、ワード線イネーブル信号を立ち上げ、グリッチのない安定状態の信号をワード線WLに伝達するという回路が必要となる。
【0065】
図13は、この回路を示す図である。図14は、NANDゲートとインバータで構成した等価な回路を示す図である。図15は、回路のタイミングチャートである。
【0066】
信号PRE−WORDは、デコーダ回路からの信号であり、グリッチを有する。ワード線イネーブル信号WORD−ENは、時刻t1において、正電位VDDとなる。この直後、信号WORDが正電位VDDとなる。よって、信号WORDにはグリッチが発生しないようにすることが可能となる。この信号WORDをワード線WLに伝達すればよいのである。しかし、図13、図14に示すような回路が必要となる。
【0067】
そこで、本発明の各実施の形態では、ビット線BL、NBLを共に正電位VDDとしているため、図13、図14に示すような回路が無くとも、選択しないワードのメモリセルへ誤ってデータが書き込まれることがないという利点がある。
【符号の説明】
【0068】
BL,NBL…ビット線
FF…フリップフロップ回路
IV1,IV2…CMOSインバータ回路
MCGL…グラウンド線
N1〜N4…nMOSトランジスタ
P1,P2…pMOSトランジスタ
S1、S2…スイッチ素子
V1、V2…定電圧電源線
WL…ワード線
【技術分野】
【0001】
本発明は、pMOSトランジスタのソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止可能な断熱充電メモリ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に用いられているSRAM(Static Random Access Memory)の回路は、図16に示すように、pMOSトランジスタとnMOSトランジスタとで構成されるCMOSインバータを2つ用いて(P1、P2、N1、N2)、各CMOSインバータの出力端を他方の入力端に接続するフリップフロップをメモリ素子としている。そして、各CMOSインバータの出力信号を、nMOSトランジスタN3、N4を介してビット線BL、NBLに接続しており、1メモリセルにおいて合計6個のトランジスタを備えた構成である。
【0003】
近年、メモリ素子の微細化が進み、配線の断面積が小さくなるにつれて配線電流密度が増大し、その結果として、エレクトロマイグレーションなどによる配線の断線が発生するという問題がある。
【0004】
そこで、メモリセルにデータを書き込む際に電源線の電位をフリップフロップの時定数よりも長い時間で降圧させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
図17は特許文献1で開示された断熱充電メモリ回路の回路図である。
【0006】
メモリセルにおいて各pMOSトランジスタP1、P2のソース電極はメモリセル電源線(以下、MCPL(Memory Cell Power Line)という)により導通している。回路の電源部分は、正電位VDDに設定された定電圧電源線V1’とMCPLの間を開閉するスイッチS1’、及び、零電位に設定された定電圧電源線V2’とメモリセル電源線MCPLの間を開閉するスイッチS2’を備えた構成である。スイッチS1’は、nMOSトランジスタやpMOSトランジスタそのものを利用することも可能であり、その他、nMOSトランジスタとpMOSトランジスタとを並列接続することにより実現することもできる。
【0007】
次に、図18のタイミングチャートを用いてメモリセルへデータを書き込む時の動作を説明する。ここでは、スイッチS1’、S2’はnMOSトランジスタを用い、nMOSトランジスタのゲート電位が正電位VDDの時に、スイッチがオンとなる回路構成を用いることとしている。
【0008】
なお、スイッチS1’、S2’に用いられるnMOSトランジスタのしきい値電圧VTは、正電位VDDの大きさに対して十分小さく、nMOSトランジスタのオン時におけるしきい値電圧VTに応じた電圧降下を無視することとする。
【0009】
最初に、スイッチS1’をオンからオフ、スイッチS2’をオフからオンすることにより、MCPLを正電位VDDから零電位(0)に緩やかに降圧させる(t1→t2)。緩やかに降圧させるために、スイッチS2’は抵抗値の大きいトランジスタとする。
【0010】
次に、スイッチS2’をオンからオフし、MCPLをハイインピーダンス状態とする(t2)。
【0011】
続いて、ワード線WLを正電位VDDとし、nMOSトランジスタN3、N4をオンさせ、ビット線BL、NBLからの信号の入力を待ち受ける状態にする(t3)。
【0012】
次に、ビット線NBLを零電位とし、一方、ビット線BLには断熱充電信号A2を入力するとともに、断熱充電信号A2を零電位から正電位VDDに緩やかに昇圧する(t4→t5)。これにより、ビット線BLを流れる電流がnMOSトランジスタN3を介してフリップフロップ回路FFへ入力され、断熱充電メモリ回路を緩やかに充電してデータを書き込むことができる。MCPLも連動して零電位から正電位VDDに昇圧する。
【0013】
その後、スイッチS1’をオンにする(t5)。こうしてMCPLを正電位VDDに固定することにより、書き込まれたデータを保持することができる。
【0014】
この断熱充電メモリによれば、定電圧電源線V1’、V2’を用いて、スイッチS1’、S2’の操作により、MCPLを正電位VDDから零電位に緩やかに降圧させた後、データを書き込むことができるので、エレクトロマイグレーションによる断熱充電メモリ内部の配線断線を防ぐことができる。
【0015】
しかしながら、この断熱充電メモリは、pMOSトランジスタのソース電極の電位を変化させるべく、MCPLと定電圧電源線V1’、V2’との間にスイッチS1’、S2’を配置する構成としなければならないので、回路の設計自由度に制約があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−226927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的は、pMOSトランジスタのソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止可能な断熱充電メモリ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、第1の本発明に係る断熱充電メモリ回路は、直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続されたフリップフロップ回路と、前記一方のCMOSインバータ回路の入力端と第1のビット線の間に接続されたトランジスタと、前記他方のCMOSインバータ回路の入力端と第2のビット線の間に接続されたトランジスタと、前記フリップフロップ回路内の各nMOSトランジスタのソース電極を接続するグラウンド線と零電位を呈する回路節点との間を開閉する第1のスイッチ素子と、前記グラウンド線に一端を接続された第2のスイッチ素子とを備え、前記各pMOSトランジスタのソース電極が正電位に保たれ、前記各トランジスタがオフ、前記第1のスイッチ素子がオン、前記第2のスイッチ素子がオフの状態で、前記第1、第2のビット線を前記正電位まで昇圧し、前記第1のスイッチ素子がオフに変化し、前記第2のスイッチ素子がオンに変化した状態で、前記第2のスイッチ素子を介して、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記グラウンド線を前記正電位まで昇圧し、前記第2のスイッチ素子がオフに変化し、前記各トランジスタがオンに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1、第2のビット線の内の、前記フリップフロップ回路にデータ0を書き込む側のビット線を前記正電位から零電位まで降圧させることを特徴とする。
【0019】
第2の本発明に係る断熱充電メモリ回路は、直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続されたフリップフロップ回路と、前記一方のCMOSインバータ回路の入力端と第1のビット線の間に接続されたトランジスタと、前記他方のCMOSインバータ回路の入力端と第2のビット線の間に接続されたトランジスタと、前記フリップフロップ回路内の各nMOSトランジスタのソース電極を接続するグラウンド線と零電位を呈する回路節点との間を開閉する第1のスイッチ素子と、前記グラウンド線に一端を接続された接続された第2のスイッチ素子とを備え、前記各pMOSトランジスタのソース電極が正電位に保たれ、前記各トランジスタがオフ、前記第1のスイッチ素子がオン、前記第2のスイッチ素子がオフの状態で、前記第1、第2のビット線を前記第1の正電位まで昇圧し、前記第1のスイッチ素子がオフに変化し、前記第2のスイッチ素子がオンに変化した状態で、前記第2のスイッチ素子を介して、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1の正電位より低い第2の正電位まで前記グラウンド線を昇圧し、前記第2のスイッチ素子がオフに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1、第2のビット線の内の、前記フリップフロップ回路にデータ0を書き込む側のビット線を前記第2の正電位まで降圧させ、さらに前記各トランジスタがオンに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、当該ビット線を零電位まで降圧させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る断熱充電メモリ回路によれば、pMOSトランジスタのソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路の回路図である。
【図2】第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路にデータを書き込むときの動作を示すタイミングチャートである。
【図3】電荷を再利用する電源回路として、インダクタLとコンデンサCと用いた交流電源回路の回路図である。
【図4】電荷を再利用する電源回路として、階段状電圧を発生する電源回路の回路図である。
【図5】電荷を再利用する電源回路として、階段状電圧を発生する別の電源回路の回路図である。
【図6】電荷を再利用しない方法として用いる抵抗値の大きいインバータの回路図である。
【図7】電荷を再利用する電源回路として、階段状電圧を発生する電源回路の別の例を示す回路図である。
【図8】第2の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路にデータを書き込むときの動作を示すタイミングチャートである。
【図9】SRAMにおける縦型のレイアウトを示す図である。
【図10】SRAMにおける横型のレイアウトを示す図である。
【図11】縦型の2×2セルのレイアウトを示す図である。
【図12】横型の2×2セルのレイアウトを示す図である。
【図13】グリッチなどの影響を防止するための回路を示す図である。
【図14】グリッチなどの影響を防止するための別な回路を示す図である。
【図15】図13、図14に示す回路のタイミングチャートである。
【図16】従来におけるSRAMの回路構成例を示す図である。
【図17】従来におけるSRAMの別な回路構成例を示す図である。
【図18】図17に示す回路のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路の回路図である。
【0024】
断熱充電メモリ回路は、マトリクス状に配置された複数の断熱充電メモリ回路の内の1つを示すものであり、いわゆるSRAMである。
【0025】
断熱充電メモリ回路は、直列に接続されたpMOSトランジスタP1およびnMOSトランジスタN1とを含むCMOSインバータ回路IV1、直列に接続されたpMOSトランジスタP2およびnMOSトランジスタN2とを含むCMOSインバータ回路IV2が相補的に接続されたフリップフロップ回路FFと、CMOSインバータ回路IV1の入力端(pMOSトランジスタP1およびnMOSトランジスタN1の各ゲート電極を接続するノードND1)と第1のビット線BLの間に接続されたnMOSトランジスタN3と、CMOSインバータ回路IV2の入力端(pMOSトランジスタP2およびnMOSトランジスタN2の各ゲート電極を接続するノードND2)と第2のビット線NBLの間に接続されたトランジスタN4と、各nMOSトランジスタN1、N2のソース電極を接続するグラウンド線MCGLと定電圧電源線V1との間を開閉する第1のスイッチ素子S1と、グラウンド線MCGLと定電圧電源線V2との間を開閉する第2のスイッチ素子S2とを備える。
【0026】
各pMOSトランジスタP1、P2のソース電極を接続する電源線は正電位VDDに保たれる。CMOSインバータ回路IV1、IV2、トランジスタN3、N4は、いわゆるメモリセルを構成する。定電圧電源線V1、V2は、それぞれ零電位、正電位VDDを呈する回路節点である。
【0027】
スイッチ素子S1、S2は、ここでは、それぞれnMOSトランジスタとし、そのゲート電圧が正電位VDDになってオンすることとする。なお、スイッチ素子をpMOSトランジスタとしてもよい。
【0028】
また、トランジスタN3、N4を、それぞれnMOSトランジスタとし、そのゲート電圧が正電位VDDになってオンすることとする。なお、トランジスタをpMOSトランジスタとしてもよい。
【0029】
CMOSインバータ回路IV1の出力(pMOSトランジスタP1とnMOSトランジスタN1とのドレイン電極)は、CMOSインバータ回路IV2の入力(pMOSトランジスタP2とnMOSトランジスタN2とのゲート電極)に接続され、同様に、CMOSインバータ回路IV2の出力(pMOSトランジスタP2とnMOSトランジスタN2とのドレイン電極)は、CMOSインバータ回路IV1の入力(pMOSトランジスタP1とnMOSトランジスタN1とのゲート電極)に接続されている。
【0030】
pMOSトランジスタP1とnMOSトランジスタN1とのゲート電極とメモリセルアレイのビット線BLとの間にnMOSトランジスタN3が接続され、このnMOSトランジスタN3のゲート電極が、ワード線WLに接続されている。同様に、pMOSトランジスタP2とnMOSトランジスタN2とのゲート電極とメモリセルアレイのビット線NBLとの間にnMOSトランジスタN4が接続され、このnMOSトランジスタN4のゲート電極もワード線WLに接続されている。
【0031】
次に、第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路の動作、特にデータの書き込み時における動作について、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路にデータを書き込むときの動作を示すタイミングチャートである。
【0032】
まず、ワード線WLを零電位とし、つまり、各トランジスタN3、N4をオフさせ、且つ、スイッチ素子S1がオン、スイッチ素子S2がオフの状態で、ビット線BL、NBLを正電位VDDまで昇圧する。
【0033】
次に、スイッチ素子S1をオフし、スイッチ素子S2をオンする(t1)。例えば、比較的にオン抵抗の大きいnMOSトランジスタをスイッチ素子S2とすることにより、グラウンド線MCGLが、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDDに昇圧する(t2)。これにより、フリップフロップ回路FFに書き込まれているデータが消去される。
【0034】
グラウンド線MCGLが正電位VDDに昇圧したらスイッチ素子S2をオフする(t2)。これにより、グラウンド線MCGLがハイインピーダンスの状態になる。
【0035】
次に、ワード線を正電位VDDとする。つまり、各トランジスタN3、N4をオンさせる(t3)。
【0036】
次に、ビット線BL、NBLの内のフリップフロップ回路FFに書き込むべきデータ0に対応するビット線、例えば、ビット線NBLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、零電位に降圧する(t3→t4)。
【0037】
このとき、正電位VDDのグラウンド線MCGLから、ビット線NBLへと電流が流れ、グラウンド線MCGLが正電位VDDから緩やかに零電位になる(t3→t4)。こうして、フリップフロップ回路FFの電源側電位が正電位VDD、接地側電位が零電位となる。つまり、フリップフロップ回路FFは従来の方法でデータが書き込まれた状態と同じになり、具体的には、ノードND1に高電圧、ノードND2に低電圧が書き込まれる。
【0038】
次に、スイッチ素子S1をオンし(t5)、ワード線WLを零電位とする。これにより、グラウンド線MCGLが零電位に保たれ、各トランジスタN3、N4がオフに保たれ、つまり、書き込まれたデータが保持される。
【0039】
ここで、上記のように、例えば、ビット線NBLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、零電位に降圧することは、ビット線NBLに断熱充電信号を与えるともいう。
【0040】
この断熱充電信号について説明する。断熱充電とは、回路の時定数よりも非常に緩やかに充電を行う方法であり、断熱という言葉は、物理学において、系を非常に緩やかに変化させる場合に用いられていることから、この言葉が用いられている。
【0041】
その意味では、上記のように、グラウンド線MCGLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDDに昇圧する(t2)ことは、グラウンド線MCGLにスイッチ素子S2を介して断熱充電信号を与えるともいう。
【0042】
上記の説明では、定電圧電源線V2の電位を正電位VDDとし(一定とし)、比較的にオン抵抗の大きいnMOSトランジスタをスイッチ素子S2とすることにより、これを実現したが、スイッチ素子S2のオン抵抗は任意とし、V2に与える断熱充電信号の電位を零電位から正電位VDDに高めることにより、これを実現してもよい。
【0043】
さて、そのようにグラウンド線MCGLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDDに昇圧すべく、断熱充電信号の電位を緩やかに昇圧すること、ならびに、ビット線NBLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、零電位に降圧すべく、断熱充電信号の電位を緩やかに降圧する方法について説明する。
【0044】
断熱充電信号の電位を緩やかに昇圧降圧させる具体的な回路は、電荷を再利用する方法を使用するインダクタとコンデンサを用いた交流電源回路や、コンデンサをN−1個用いたN段の階段状電圧を生成する電源回路を用いることができる。尚、電荷の再利用とは、電源から負荷容量に充電した電荷をGNDに捨てることなく、再び電源のほうに戻すことにより、電荷を再利用する方法である。
【0045】
図3は、インダクタLとコンデンサCと用いた交流電源回路の例を、図4は、3個のコンデンサC1〜C3を用いて4段の階段状電圧を発生する電源回路の例を示す。図4において、階段状電圧を発生する電源回路は、4つの定電圧電源VDD,3/4VDD,2/4VDD,1/4VDD、3個のコンデンサC1〜C3、8個のnMOSトランジスタN5〜N12を備えた構成である。3つのコンデンサC1〜C3は各々1/4VDD,2/4VDD,3/4VDDの電圧により充電される。3つのnMOSトランジスタN5〜N7のゲート電極には入力信号Preが印加され、4つのnMOSトランジスタN8〜N11のゲート電極には入力信号T1〜T4が印加され、1つのnMOSトランジスタN12のゲートには入力信号CLが印加される。尚、1/4VDD,2/4VDD,3/4VDDの各電源は、図5に示す、これらがない回路でも自然にコンデンサC1〜C3はそれぞれ1/4VDD,2/4VDD,3/4VDDに充電され安定状態となる。まず、入力信号Preを一定時間だけHighにして、nMOSトランジスタN5〜N7をオンとし、コンデンサC1〜C3を各々1/4VDD,2/4VDD,3/4VDDの電圧に充電する。次に、各入力信号T1〜T4を、T1→T2→T3→T4→T3→T2→T1の順に所定時間ずつHighにしてnMOSトランジスタN8〜N11をオンさせ、コンデンサC1〜C3に充電されている電圧1/4VDD,2/4VDD,3/4VDDを時分割的に出力電圧Voutとして出力し、最後に入力信号T1がLowになったら入力信号CLをHighにしてnMOSトランジスタN12を所定時間だけオンして出力電圧Voutを接地電位とする。このようなタイミング制御により、階段状電圧を発生する電源回路の出力電圧Voutは、立ち上がり立ち下がりに4つの階段をもつ波形となる。これらの電源回路では、その出力電圧を緩やかに上昇させ緩やかに下降させる交流波形(繰り返し波形)とすることができる。
【0046】
また、電荷を再利用することなく、図6に示すように、フリップフロップ回路の時定数よりも1桁程度以上長い時間で電圧を変化させることを可能とする抵抗値の大きいトランジスタを用いたインバータを利用して昇圧降圧することも可能である。具体的には、ゲート長を長くする方法や、トランジスタ幅を小さくする方法、また、ソースやドレインのイオン注入ドーピング濃度を小さくする方法などがある。また、トランジスタのしきい値電圧を大きくする方法を用いても良い。
【0047】
また、段階波形の生成において、キャパシタを用いた図4の回路に限定はされず、図7の回路でも良い。入力信号を、T0→T1→T2→T3→T4→T3→T2→T1→T0の順にHighにして、これを繰り返しても良い。
【0048】
したがって、第1の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路によれば、直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続され、各pMOSトランジスタのソース電極を接続する電源線が正電位VDDに保たれるフリップフロップ回路FFと、一方のCMOSインバータ回路IV1の入力端(ND1)と第1のビット線BLの間に接続されたトランジスタN3と、他方のCMOSインバータ回路IV2の入力端(ND2)と第2のビット線NBLの間に接続されたトランジスタN4と、各nMOSトランジスタ(N1,N2)のソース電極を接続するグラウンド線MCGLと零電位を呈する回路節点(V1)との間を開閉する第1のスイッチ素子S1と、グラウンド線MCGLに一端を接続された第2のスイッチ素子S2とを備え、各トランジスタN3、N4がオフにされ、第1のスイッチ素子S1がオン、第2のスイッチ素子S2がオフの状態で、第1、第2のビット線BL、NBLを正電位VDDまで昇圧し、第1のスイッチ素子S1がオフに変化し、第2のスイッチ素子S2がオンに変化した状態で、第2のスイッチ素子S2を介して、前記フリップフロップ回路の時定数よりも長い時間をかけて、グラウンド線MCGLを正電位VDDまで昇圧し、第2のスイッチ素子S2がオフに変化し、各トランジスタN3、N4がオンにされた状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、第1、第2のビット線BL、NBLの内のフリップフロップ回路FFにデータ0を書き込む側のビット線(上記例では、ビット線NBL)を正電位VDDから零電位まで降圧させるので、pMOSトランジスタP1、P2のソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止することができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路について説明する。断熱充電メモリ回路の回路構成は、第1の実施の形態と同じなので、重複説明を省略する。ただし、定電圧電源線V2の電位は、正電位VDDより低い電位(ここでは、正電位VDDの1/2の電位(以下、「正電位VDD/2」)とする。
【0050】
第2の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路の動作、特にデータの書き込み時における動作について、説明する。図8は、第2の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路にデータを書き込むときの動作を示すタイミングチャートである。
【0051】
まず、ワード線WLを零電位とし、つまり、各トランジスタN3、N4をオフさせ、且つ、スイッチ素子S1がオン、スイッチ素子S2がオフの状態で、ビット線BL、NBLを正電位VDDまで昇圧する。
【0052】
次に、スイッチ素子S1をオフし、スイッチ素子S2をオンする(t1)。例えば、比較的にオン抵抗の大きいnMOSトランジスタをスイッチ素子S2とすることにより、グラウンド線MCGLが、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDD/2に昇圧する。これにより、フリップフロップ回路FFに書き込まれているデータが保持される。
【0053】
グラウンド線MCGLが正電位VDD/2に昇圧したらスイッチ素子S2をオフする(t2)。これにより、グラウンド線MCGLがハイインピーダンスの状態になる。
【0054】
次に、ビット線BL、NBLの内のフリップフロップ回路FFに書き込むべきデータである0に対応するビット線、例えば、ビット線NBLを、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、正電位VDD/2に降圧する(t3→t4)。
【0055】
次に、ワード線を正電位VDDとする。つまり、各トランジスタN3、N4をオンさせる(t4)。そして、同じビット線(上記例では、ビット線NBL)を、フリップフロップ回路FFの時定数より長い時間をかけて、零電位に降圧する(t4→t5)。
【0056】
このとき、正電位VDD/2のグラウンド線MCGLから、ビット線NBLへと電流が流れ、グラウンド線MCGLが正電位VDD/2から緩やかに零電位になる(t4→t5)。こうして、フリップフロップ回路FFの電源側電位が正電位VDD、接地側電位が零電位となる。つまり、フリップフロップ回路FFは従来の方法でデータが書き込まれた状態と同じになり、具体的には、ノードND1に高電圧、ノードND2に低電圧が書き込まれる。
【0057】
次に、スイッチ素子S1をオンし(t6)、ワード線WLを零電位とする。これにより、グラウンド線MCGLが零電位に保たれ、各トランジスタN3、N4がオフに保たれ、つまり、書き込まれたデータが保持される。
【0058】
したがって、第2の実施の形態に係る断熱充電メモリ回路によれば、直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続され、各pMOSトランジスタのソース電極を接続する電源線が第1の正電位VDDに保たれるフリップフロップ回路FFと、一方のCMOSインバータ回路IV1の入力端(ND1)と第1のビット線BLの間に接続されたトランジスタN3と、他方のCMOSインバータ回路IV2の入力端(ND2)と第2のビット線NBLの間に接続されたトランジスタN4と、フリップフロップ回路内の各nMOSトランジスタのソース電極を接続するグラウンド線MCGLと零電位を呈する回路節点(V1)との間を開閉する第1のスイッチ素子S1と、グラウンド線MCGLに一端を接続された第2のスイッチ素子S2とを備え、各トランジスタN3、N4がオフにされ、第1のスイッチ素子S1がオン、第2のスイッチ素子S2がオフの状態で、第1、第2のビット線BL、NBLを正電位VDDまで昇圧し、第1のスイッチ素子S1がオフに変化し、第2のスイッチ素子S2がオンに変化した状態で、第2のスイッチ素子S2を介して、前記フリップフロップ回路の時定数よりも長い時間をかけて、グラウンド線MCGLを正電位VDD/2まで昇圧し、第2のスイッチ素子S2がオフに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、第1、第2のビット線BL、NBLの内のフリップフロップ回路FFにデータ0を書き込む側のビット線(上記例では、ビット線NBL)を正電位VDD/2まで降圧させ、さらに各トランジスタN3、N4がオンにされた状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、当該ビット線(上記例では、ビット線NBL)を零電位まで降圧させるので、pMOSトランジスタP1、P2のソース電極の電位を一定にしつつ、微細化に起因するエレクトロマイグレーションによる配線の断線を防止することができる。また、グラウンド線MCGLを正電位VDDより低い正電位まで昇圧すればよいので、データを迅速に書き込むことができる。
【0059】
次に、各実施の形態に係る断熱充電メモリ回路(総称して、単に断熱充電メモリ回路という)のレイアウトについて説明する。
【0060】
SRAMのレイアウトについては、図9に示す縦型と、図10に示す横型が知られている。
【0061】
図11は、縦型の2×2セルのレイアウトを示す図である。図1のワード線WLに該当するワード線WL0、WL1、図1のグラウンド線MCGLに該当するグラウンド線MCGL0、MCGL1を横方向に配置し、図1のビット線BLに該当するビット線BL0、BL1、正電位VDDに設定される配線(図示せず)を縦方向に配置するレイアウトが可能である。
【0062】
図12は、横型の2×2セルのレイアウトを示す図である。図1のワード線WLに該当するワード線WL0、WL1、正電位VDDに設定される配線(図示せず)を横方向に配置し、図1のビット線BLに該当するビット線BL0、BL1、図1のグラウンド線MCGLに該当するグラウンド線MCGL0、MCGL1を縦方向に配置するレイアウトが可能である。このレイアウトで、第1の実施の形態で説明した書き込みを行うと、グラウンド線が正電位VDDとなった際に、選択していない他の行のワード線のメモリセルのデータを消去してしまうので、このレイアウトで第1の実施の形態に係る書き込みは行えない。一方、このレイアウトで、第2の実施の形態で説明した書き込みを行っても、グラウンド線は正電位VDD/2までしか昇圧されないので、選択していない他の行のワード線のデータを保持でき、よって、このレイアウトで第2の実施の形態に係る書き込みを行うことができる。なお、縦型のレイアウトでは、グラウンド線は、異なるワード間で共有されることがないので、いずれの実施の形態に係る書き込みでも行うことができる。
【0063】
また、各実施の形態では、ビット線BL、NBLを共に正電位VDDとしているために、選択しないワードのメモリセルへ誤ってデータが書き込まれることがない。
【0064】
すなわち、ワード線WLを制御するデコーダ回路(図示せず)が、あるワード線WLを正電位VDDとする際、グリッチなどの影響により、他のワード線WLを瞬間的に正電位VDDにすることがある。このときに、ビット線BLを正電位VDD、ビット線NBLを零電位(または逆)にすると、反対のデータを誤って書き込むことが起こり得る。これを避けるためには、十分時間が経過した後、ワード線イネーブル信号を立ち上げ、グリッチのない安定状態の信号をワード線WLに伝達するという回路が必要となる。
【0065】
図13は、この回路を示す図である。図14は、NANDゲートとインバータで構成した等価な回路を示す図である。図15は、回路のタイミングチャートである。
【0066】
信号PRE−WORDは、デコーダ回路からの信号であり、グリッチを有する。ワード線イネーブル信号WORD−ENは、時刻t1において、正電位VDDとなる。この直後、信号WORDが正電位VDDとなる。よって、信号WORDにはグリッチが発生しないようにすることが可能となる。この信号WORDをワード線WLに伝達すればよいのである。しかし、図13、図14に示すような回路が必要となる。
【0067】
そこで、本発明の各実施の形態では、ビット線BL、NBLを共に正電位VDDとしているため、図13、図14に示すような回路が無くとも、選択しないワードのメモリセルへ誤ってデータが書き込まれることがないという利点がある。
【符号の説明】
【0068】
BL,NBL…ビット線
FF…フリップフロップ回路
IV1,IV2…CMOSインバータ回路
MCGL…グラウンド線
N1〜N4…nMOSトランジスタ
P1,P2…pMOSトランジスタ
S1、S2…スイッチ素子
V1、V2…定電圧電源線
WL…ワード線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続されたフリップフロップ回路と、
前記一方のCMOSインバータ回路の入力端と第1のビット線の間に接続されたトランジスタと、
前記他方のCMOSインバータ回路の入力端と第2のビット線の間に接続されたトランジスタと、
前記フリップフロップ回路内の各nMOSトランジスタのソース電極を接続するグラウンド線と零電位を呈する回路節点との間を開閉する第1のスイッチ素子と、
前記グラウンド線に一端を接続された第2のスイッチ素子とを備え、
前記各pMOSトランジスタのソース電極が正電位に保たれ、前記各トランジスタがオフ、前記第1のスイッチ素子がオン、前記第2のスイッチ素子がオフの状態で、前記第1、第2のビット線を前記正電位まで昇圧し、
前記第1のスイッチ素子がオフに変化し、前記第2のスイッチ素子がオンに変化した状態で、前記第2のスイッチ素子を介して、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記グラウンド線を前記正電位まで昇圧し、
前記第2のスイッチ素子がオフに変化し、前記各トランジスタがオンに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1、第2のビット線の内の、前記フリップフロップ回路にデータ0を書き込む側のビット線を前記正電位から零電位まで降圧させることを特徴とする断熱充電メモリ回路。
【請求項2】
直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続されたフリップフロップ回路と、
前記一方のCMOSインバータ回路の入力端と第1のビット線の間に接続されたトランジスタと、
前記他方のCMOSインバータ回路の入力端と第2のビット線の間に接続されたトランジスタと、
前記フリップフロップ回路内の各nMOSトランジスタのソース電極を接続するグラウンド線と零電位を呈する回路節点との間を開閉する第1のスイッチ素子と、
前記グラウンド線に一端を接続された接続された第2のスイッチ素子とを備え、
前記各pMOSトランジスタのソース電極が正電位に保たれ、前記各トランジスタがオフ、前記第1のスイッチ素子がオン、前記第2のスイッチ素子がオフの状態で、前記第1、第2のビット線を前記第1の正電位まで昇圧し、
前記第1のスイッチ素子がオフに変化し、前記第2のスイッチ素子がオンに変化した状態で、前記第2のスイッチ素子を介して、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1の正電位より低い第2の正電位まで前記グラウンド線を昇圧し、
前記第2のスイッチ素子がオフに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1、第2のビット線の内の、前記フリップフロップ回路にデータ0を書き込む側のビット線を前記第2の正電位まで降圧させ、さらに前記各トランジスタがオンに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、当該ビット線を零電位まで降圧させることを特徴とする断熱充電メモリ回路。
【請求項1】
直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続されたフリップフロップ回路と、
前記一方のCMOSインバータ回路の入力端と第1のビット線の間に接続されたトランジスタと、
前記他方のCMOSインバータ回路の入力端と第2のビット線の間に接続されたトランジスタと、
前記フリップフロップ回路内の各nMOSトランジスタのソース電極を接続するグラウンド線と零電位を呈する回路節点との間を開閉する第1のスイッチ素子と、
前記グラウンド線に一端を接続された第2のスイッチ素子とを備え、
前記各pMOSトランジスタのソース電極が正電位に保たれ、前記各トランジスタがオフ、前記第1のスイッチ素子がオン、前記第2のスイッチ素子がオフの状態で、前記第1、第2のビット線を前記正電位まで昇圧し、
前記第1のスイッチ素子がオフに変化し、前記第2のスイッチ素子がオンに変化した状態で、前記第2のスイッチ素子を介して、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記グラウンド線を前記正電位まで昇圧し、
前記第2のスイッチ素子がオフに変化し、前記各トランジスタがオンに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1、第2のビット線の内の、前記フリップフロップ回路にデータ0を書き込む側のビット線を前記正電位から零電位まで降圧させることを特徴とする断熱充電メモリ回路。
【請求項2】
直列に接続されたpMOSトランジスタとnMOSトランジスタとを含むCMOSインバータ回路が相補的に接続されたフリップフロップ回路と、
前記一方のCMOSインバータ回路の入力端と第1のビット線の間に接続されたトランジスタと、
前記他方のCMOSインバータ回路の入力端と第2のビット線の間に接続されたトランジスタと、
前記フリップフロップ回路内の各nMOSトランジスタのソース電極を接続するグラウンド線と零電位を呈する回路節点との間を開閉する第1のスイッチ素子と、
前記グラウンド線に一端を接続された接続された第2のスイッチ素子とを備え、
前記各pMOSトランジスタのソース電極が正電位に保たれ、前記各トランジスタがオフ、前記第1のスイッチ素子がオン、前記第2のスイッチ素子がオフの状態で、前記第1、第2のビット線を前記第1の正電位まで昇圧し、
前記第1のスイッチ素子がオフに変化し、前記第2のスイッチ素子がオンに変化した状態で、前記第2のスイッチ素子を介して、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1の正電位より低い第2の正電位まで前記グラウンド線を昇圧し、
前記第2のスイッチ素子がオフに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、前記第1、第2のビット線の内の、前記フリップフロップ回路にデータ0を書き込む側のビット線を前記第2の正電位まで降圧させ、さらに前記各トランジスタがオンに変化した状態で、前記時定数よりも長い時間をかけて、当該ビット線を零電位まで降圧させることを特徴とする断熱充電メモリ回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−54239(P2011−54239A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202442(P2009−202442)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】
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