説明

断面積測定装置、プログラム

【課題】測定対象物の断面積を精度良く測定する。
【解決手段】変位測定装置では、測定対象物が載置されている範囲を含む変位測定範囲の変位を測定し、測定された変位に平準化処理を実行して第1処理情報を生成し、第1処理情報から断面積測定範囲を決定する。変位測定装置は、断面積測定範囲における前記変位情報から測定対象物の断面積を検出する。第1処理情報から断面積測定範囲を決定することで、配線パターン等などによって生じるノイズを除去することができ、断面積測定範囲を正確に決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の断面積を測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レーザ光などの光を測定対象物に照射し測定対象物の変位情報を測定する変位測定装置が知られている(例えば、特許文献1)。この装置では、レーザ光などの光を測定対象物に出射し、この出射光と同軸方向に反射される反射光を受光し、変位情報を測定する。同軸方向に反射される反射光を受光することで、出射光と異なる方向に反射される反射光を用いて変位情報を測定する場合に比べ、測定可能な測定対象物の形状範囲を広げることができる。変位測定装置では、受光された反射光を分析し、出射光が反射した反射面と変位測定装置との間の変位情報を測定する。この装置では、測定対象物の表面で反射された反射光から測定対象物と変位測定装置との間の変位情報を測定し、測定対象物が載置されているベース部材の表面と変位測定装置との間の変位情報から測定対象物と変位測定装置との間の変位情報を差し引くことで、測定対象物の高さを測定することができる。また、測定対象物の所定の断面に沿って測定対象物を移動させながら高さを測定することで、当該所定の断面における測定対象物の断面積及び断面形状を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−504716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定対象物の断面積を測定する場合、予め断面積を測定する断面積測定範囲を決定する必要がある。変位測定装置では、入射光が反射した反射面と変位測定装置との間の変位情報と、測定対象物が載置されているベース部材の表面と変位測定装置との間の変位情報と、を比較し、これらの変位情報が等しい場合に、測定対象物がベース部材に載置されていないと検知し、これらの変位情報が異なる場合に、測定対象物がベース部材に載置されていると検知する。変位測定装置は、測定対象物がベース部材に載置されていると検知された範囲から断面積測定範囲を決定する。
【0005】
しかし、測定対象物の近傍あるいは下部のベース部材の表面には、配線パターンなどの金属膜などが形成されていることがあり、これらの配線パターンからの局所的な反射光が変位情報におけるノイズの原因となることがある。変位情報にノイズが含まれていると、測定対象物がベース部材に載置されているか否かを判別することが難しい。そのため、断面積測定範囲を正確に決定することができず、測定対象物の断面積を正確に測定できない問題が生じる。
【0006】
本明細書は、測定対象物の断面積を測定する新たな技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る断面積測定装置は、ベース部材の表面に載置された透光性を有する測定対象物の変位から当該測定対象物の断面積を測定する断面積測定装置であり、前記ベース部材と測定対象物の少なくとも一方へ垂直方向に向けて光を出射する出光部と、前記出射に伴って前記ベース部材の表面と前記測定対象物表面の少なくとも一方から前記光と同軸方向に反射される反射光を、複屈折結晶と偏光手段を通過させることで干渉させた干渉光を受光する受光部と、前記ベース部材に対して前記測定対象物が載置されている範囲を含む変位測定範囲に亘って相対移動させて受光された前記干渉光を周波数解析することで得られる変位情報を検出する検出部と、複数の前記変位情報を用いて平準化処理を実行して第1処理情報を生成する第1処理部と、前記第1処理情報から前記測定対象物の断面積を測定する断面積測定範囲決定する第1決定部と、前記断面積測定範囲における前記変位情報から前記測定対象物の断面積を検出する断面積検出部と、を備える。
【0008】
この断面積測定装置では、変位測定範囲から断面積測定範囲を決定する際に、第1処理情報から断面積測定範囲を決定する。第1処理情報には、平準化処理が実行されており、例えば、高反射率を有する配線パターンからの局所的な反射光によるノイズが変位情報に含まれる場合に、これを除去することができる。この断面積測定装置によれば、変位情報から断面積測定範囲を正確に決定することができ、精度良く測定対象物の断面積を測定することができる。
【0009】
また、上記の断面積測定装置では、前記断面積測定範囲における前記変位情報から前記断面積測定範囲を補正する第2決定部を備える構成としても良い。この断面積測定装置によれば、第2決定部により断面積測定範囲が補正されることで、例えば測定対象物の形状に応じて断面積測定範囲を補正することができ、さらに精度良く測定対象物の断面積を測定することができる。
【0010】
また、上記の断面積測定装置では、複数の前記変位情報を用いて平準化処理を実行して第2処理情報を生成する第2処理部を備え、前記第1処理に用いられる前記変位情報の第1情報数は、前記第2処理に用いられる前記変位情報の第2情報数よりも多く設定されており、前記断面積検出部は、前記断面積測定範囲における前記第2処理情報から前記測定対象物の断面積を検出する構成としても良い。
【0011】
この断面積測定装置では、測定対象物の断面積を求める際に、第1処理情報を用いて断面積測定範囲を決定し、第2処理情報を用いて測定対象物の断面積を測定する。第1処理情報と第2処理情報は、複数の変位情報を用いて実行される平準化処理である点で共通するものの、その処理に用いられる変位情報の情報数が異なる。この断面積測定装置では、断面積測定範囲を決定する際には、第2処理情報よりも多くの変位情報を用いて生成された第1処理情報を用いることで、断面積測定範囲を精度良く決定することができる。また、測定対象物の断面積を求める際には、第1処理情報よりも少ない変位情報を用いて生成された第2処理情報を用いることで、第1処理情報より変位情報からの変更が少ない第2処理情報を用いて測定対象物の断面積を測定することができる。この断面積測定装置によれば、精度良く測定対象物の断面積を測定することができる。
【0012】
また、上記の断面積測定装置では、前記第1決定部は、前記第1処理情報に微分処理を実行して平準化情報を生成するとともに閾値を有しており、前記平準化情報と前記閾値とを比較して前記断面積測定範囲を決定する構成としても良い。
【0013】
この断面積測定装置では、第1処理情報に微分処理を実行して生成された平準化情報から断面積測定範囲を決定している。平準化情報は、測定対象物の有無が切り換わる測定対象物の端部において値が大きく変化しやすい。そのため、閾値を用いて断面積測定範囲を決定する際に、平準化情報から断面積測定範囲を決定することで、第1処理情報から断面積測定範囲を決定する場合に比べて測定対象物の断面積測定範囲を精度良く決定することができる。
【0014】
また、上記の断面積測定装置では、前記第1決定部は、前記平準化情報のピーク値を検出し、前記平準化情報が前記閾値に対して前記ピーク値と同一側の情報を有する特定側範囲を検出しており、前記変位測定範囲に複数の前記特定側範囲が存在する場合、隣接する前記特定側範囲の間の距離が予め定められた基準距離以下となる特定側範囲を含む範囲であり、最も幅の広い前記範囲を前記断面積測定範囲として決定する構成としても良い。
【0015】
平準化情報は、測定対象物の有無が切り換わる測定対象物の端部等において値が大きく変化することから、平準化情報と閾値を比較した場合、変位測定範囲に複数の特定側範囲が存在することがある。この断面積測定装置では、上記の場合に、隣接する特定側範囲の間の距離が基準距離以下となる特定側範囲群を含む範囲を設定し、この範囲のうち、最も幅の広い範囲を面積対象範囲として決定する。この断面積測定装置によれば、例えばノイズ等に起因して基準範囲以上に離れて存在する特定側範囲が断面積測定範囲に含まれることが抑制される。
【0016】
また、上記の断面積測定装置では、前記ベース部材は、その表面と前記断面積測定装置との間の変位情報が前記変位測定範囲に亘って一定となるように配置されており、前記変位測定範囲のうち、前記断面積測定範囲に含まれない範囲における前記第1処理情報から前記ベース部材の変位情報を算出する算出部と、を備える構成としても良い。
【0017】
この断面積測定装置では、変位測定範囲のうち、断面積測定範囲に含まれない範囲における第1処理情報から測定対象物が載置されたベース部材の表面までの距離を測定することができる。この断面積測定装置によれば、一度の変位情報の測定によって、ベース部材の表面までの変位情報及び測定対象物までの変位情報の両方を測定することができ、この2つの変位情報を用いて、測定対象物の断面積を精度良く測定することができる。
【0018】
本発明は、上記断面積測定装置を実現する為に用いられるプログラムにも具現化される。このプログラムは、ベース部材の表面に載置された透光性を有する測定対象物の変位から当該測定対象物の断面積を測定する断面積測定装置に用いられるコンピュータに、前記ベース部材と測定対象物の少なくとも一方へ垂直方向に向けて光を出射する出光処理と、前記出射に伴って前記ベース部材の表面と前記測定対象物表面の少なくとも一方から前記光と同軸方向に反射される反射光を、複屈折結晶と偏光手段を通過させることで干渉させた干渉光を受光する受光処理と、前記ベース部材に対して前記測定対象物が載置されている範囲を含む変位測定範囲に亘って相対移動させて受光された前記干渉光を周波数解析することで得られる前記反射光から変位情報を検出する検出処理と、複数の前記変位情報から第1処理情報を生成する平準化処理と、前記第1処理情報から前記測定対象物の断面積を測定する断面積測定範囲を決定する第1決定処理と、前記断面積測定範囲における前記変位情報から前記測定対象物の断面積を検出する断面積検出処理と、を実行させる。本発明によれば、精度良く測定対象物の断面積を測定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、測定対象物の断面積を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】変位測定装置10の構成を概略的に示す図
【図2】受光部18の詳細な構成を示す図
【図3】実施形態1の裏面処理を示すフローチャート
【図4】変位測定とその測定結果
【図5】変位測定とその測定結果
【図6】断面積測定処理を示すフローチャート
【図7】測定範囲決定処理過程における変位情報
【図8】測定範囲決定処理過程における変位情報
【図9】測定範囲決定処理過程における変位情報
【図10】測定範囲決定処理過程における変位情報
【図11】測定範囲決定処理過程における変位情報
【図12】測定範囲決定処理過程における変位情報
【図13】測定範囲決定処理過程における変位情報
【図14】圧縮処理過程における変位情報
【図15】変位測定装置10の問題点を示す図
【図16】実施形態2の裏面処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
実施形態1を、図1ないし図15を用いて説明する。
【0022】
1.変位測定装置の機械的構成
図1は、本実施形態の変位測定装置(断面積測定装置でもある)10の全体構成の概略図である。変位測定装置10は、測定対象物に対向して配置され、光学的に測定対象物の高さ及び断面積を測定する機能を備えている。本実施形態では、測定対象物として、表面20Aがフラットに形成された液晶パネル用のガラス板(ベース部材の一例)20に載置された高粘度シール材(以下、シール材)22を用いた例を示す。ガラス板20には、液晶パネルに用いられるアルミなどの高反射率を有する金属膜である配線パターンの複数本が形成されており、その配線パターンの一部は、シール材22の近傍及び下部にも設けられている。変位測定装置10は、ガラス板20に垂直な方向に光を照射し、それに応じてガラス板20に垂直な方向に反射される光を受光することで、シール材22の高さ及び断面積を測定する。シール材22は、任意の断面において、幅約600μmかつ高さ約20μmで形成されている。ガラス板20とシール材22は、共に透光性を有しており、シール材22の屈折率ncはガラス板20の屈折率ngよりも高い。
【0023】
図1に示すように、変位測定装置10は、中央処理装置(以下、CPU)12、ROMやRAMなどのメモリ14、出光部16、受光部18を備えている。
メモリ14には、各種パラメータの他、変位測定装置10の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されており、CPU12は、メモリ14から読み出したプログラムに従って、検出部30、判断部32、断面積検出部34、処理部36、決定部38、算出部40、出力部41等として機能し、各部の制御を行う。
【0024】
出光部16は、CPU12からの命令に基づいてガラス板20及びシール材22に対してレーザ光を出射する。本実施形態では、出光部16はガラス板20及びシール材22に対してφ90μmのレーザ光を出射する。受光部18は、仮想線24に示すように、変位測定装置10内において、出光部16がレーザ光を出射するのと同軸上に配置されており、CPU12からの命令に基づいて出光部16の出射に伴って同軸方向に反射された反射光を受光する。つまり、仮想線24は、ガラス板20に垂直な方向に延びている。
【0025】
2.受光部の機械的構成
図2に、受光部18の具体的な構成を示す。受光部18は、対物レンズ42、偏光ビームスプリッタ44、第1偏光板(偏光手段の一例)46、クリスタル(複屈折結晶の一例)48、第2偏光板(偏光手段の別例)50、イメージセンサ52を備えており、これらが仮想線24方向にこの順に並んで配置されている。
【0026】
偏光ビームスプリッタ44には、内部にハーフミラー44Aが設けられている。検出部30として機能するCPU12は、変位測定装置10からガラス板20及びシール材22までの変位を測定する変位測定処理を開始すると、出光部16を用いて、受光部18の偏光ビームスプリッタ44にレーザ光を出射する。出光部16から出射されたレーザ光は、入光レンズ54を介してハーフミラー44Aに照射され、反射される。ハーフミラー44Aで反射されたレーザ光は、仮想線24に沿った方向に進み、対物レンズ42を介してガラス板20及びシール材22に直接的に照射される。
【0027】
ガラス板20及びシール材22に照射されたレーザ光は、ガラス板20及びシール材22で反射され、あるいはシール材22を透過してガラス板20で反射され、偏光ビームスプリッタ44を透過し、第1偏光板46に照射される。これにより、第1偏光板46に照射されたレーザ光のうち、第1偏光板46の偏光方向に平行な偏光方向を有するレーザ光の成分が第1偏光板46を透過し、クリスタル48に照射される。
【0028】
クリスタル48は複屈折結晶であり、仮想線24に垂直な平面上に、屈折率が異なる2つの軸方向を有する。そのため、クリスタル48に照射されたレーザ光は、クリスタル48を通過する際に偏光が変更されて第2偏光板50に照射される。これにより、第2偏光板50に照射されたレーザ光のうち、第2偏光板50の偏光方向に平行な偏光方向を有するレーザ光の成分が第2偏光板50を透過し、イメージセンサ52に照射される。この結果、イメージセンサ52では干渉波形52Aが観測される。イメージセンサ52は、干渉波形52Aから輝度の高い明線部分の間隔を測定し、これをCPU12に送信する。
【0029】
3.裏面処理
図3に示すように、CPU12は、変位測定処理において、イメージセンサ52から明線間隔の情報が送信されると、裏面処理を実行する。図3は、CPU12が所定のプログラムに従って実行する裏面処理のフローチャートを示す。CPU12は、裏面処理を開始すると、イメージセンサ52から送信された明線間隔を高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:周波数解析の一例)する。これにより、イメージセンサ52に照射されたレーザ光のうち、ガラス板20やシール材22などで反射されたレーザ光の各成分がお互いに分離され、各成分の変位(変位情報の一例)Zが、各成分の反射強度に関連付けられて検出される。ここで、「各成分の変位Z」とは、変位測定装置10から各成分が反射された反射面までの変位を意味しており、例えば、シール材22の表面22Aで反射されたレーザ光の成分であれば、変位測定装置10からシール材22の表面22Aまでの変位を意味する。検出部30として機能するCPU12は、各成分の変位Zのうち、反射強度が最も高い第1測定値D1の変位(第1変位情報の一例)Z1と、第1測定値D1の次に反射強度が高い第2測定値D2の変位(第2変位情報の一例)Z2を選出し、反射強度と関連付けた状態でメモリ14に記憶する(S2)。
【0030】
次に、CPU12は、変位Z1、Z2の差分変位(絶対値)を求める。メモリ14には、基準変位ZKが予め記憶されており、基準変位ZKはガラス板20に垂直な方向における厚さLと略等しく設定されている。CPU12は、差分変位を算出後、メモリ14から基準変位ZKを読み出し、差分変位と比較する(S4)。
【0031】
変位測定装置10からガラス板20の表面20Aまでの変位を測定する場合、レーザ光が比較的反射率が高いガラス板20に直接的に照射される。この場合、図4に示すように、比較的近接した変位範囲に測定値D1、D2が検出されることがあり、いずれの変位Zがガラス板20の表面20Aまでの変位Zであるかが解からないことがあった(図4の測定結果の点線参照)。
【0032】
本実施形態において判断部32として機能するCPU12は、変位Z1、Z2の差分変位と基準変位ZKを比較し、差分変位と比較変位Z1、Z2の差分変位が基準変位ZKよりも小さい場合(S4:YES)、第1測定値D1の変位Z1を変位測定装置10からガラス板20の表面20Aまでの変位と判断し(S6)、反射強度の弱い第2測定値D2を反射強度の強い第1測定値D1のノイズ成分であると判断する。CPU12は、第1測定値D1の変位Z1を、変位測定装置10からガラス板20の表面20Aまでの変位と判断することで、ノイズ成分を排除して正確に変位測定装置10からガラス板20の表面20Aまでの変位Zを測定することができる。
【0033】
また、変位測定装置10からシール材22の表面22Aまでの変位を測定する場合、レーザ光が透光性を有するガラス板20に直接的に照射される。この場合、図5に示すように、測定値Dはシール材22の表面22Aで測定されるとともに、ガラス板20の裏面20Bで測定される。その一方、シール材22の屈折率ncはガラス板20の屈折率ngよりも高く設定されているため、レーザ光はガラス板20の表面20Aでほとんど反射されず、測定値Dはシール材22の表面22Aで測定されない。図5に測定値Dを実線及び点線で示すように、シール材22の表面22Aで測定される測定値Dと、ガラス板20の裏面20Bで測定される測定値Dは、シール材22の材質の他、シール材22の表面形状によってその大小関係が変化する。そのため、従来技術のように、第1測定値D1の変位Z1を、変位測定装置10からシール材22の表面22Aまでの変位と判断した場合、図5に点線で示すように、変位測定装置10からシール材22の表面22Aまでの変位Zに代わって、変位測定装置10からガラス板20の裏面20Bまでの変位Zが測定されることがあり、安定してシール材22の表面22Aまでの変位Zを測定することができなかった。
【0034】
本実施形態において判断部32として機能するCPU12は、変位Z1、Z2の差分変位と基準変位ZKを比較し、変位Z1、Z2の差分変位が基準変位ZK以上である場合(S4:YES)、変位Z1、Z2のうち小さいものを変位測定装置10からシール材22の表面22Aまでの変位と判断する(S8)。これにより、シール材22の表面22Aで測定される測定値Dと、ガラス板20の裏面20Bで測定される測定値Dの大小関係が変化した場合でも、変位Z1、Z2から変位測定装置10に近い側に存在するシール材22の表面22Aまでの変位Zを選出することができる。
【0035】
本実施形態では、ガラス板20とシール材22のいずれもが透光性を有しており、シール材22の屈折率ncがガラス板20の屈折率ngよりも高く設定されている。そのため、シール材22にレーザ光を照射した場合に、差分変位が基準変位ZK以上離れた2つの測定値Dが検出された場合、これらはシール材22の表面22Aで反射された反射光とガラス板20の裏面20Bで反射された反射光のいずれかであることが解かる。そのため、基準変位ZKを設定する際に、基準変位ZKをガラス板20の厚さL程度に設定しておくことで、これらの測定値Dを確実に判別することができ、精度良く測定対象物までの変位情報を選出することができる。
【0036】
4.断面積測定処理
次に、図6ないし図15を参照して、シール材22の断面積を測定する場合の、CPU12における処理について説明する。
【0037】
(測定範囲決定処理)
図6は、CPU12が所定のプログラムに従って実行する断面積測定処理のフローチャートを示す。CPU12は、ユーザによってシール材22が載置されたガラス板20の表面20Aに対向するように変位測定装置10が配置され、操作部(図示されていない)を介して断面積の測定指示が入力されると、処理を開始する。
【0038】
CPU12は、処理を開始すると、まず、サンプリング処理を実行する(S12)。変位測定装置10は、ユーザによって変位を測定する変位測定範囲HSが予め定められている(図1参照)。検出部30として機能するCPU12は、図示しない駆動部によって変位測定装置10をガラス板20の表面20Aに沿って相対移動させ、変位測定範囲HS内に一定の間隔毎に設定された複数の測定ポイントで変位Zを測定し、測定された複数の変位Zを測定ポイントに関連つけてメモリ14に記憶する。これにより、図7に示すように、変位測定範囲HSにおける変位Zがメモリ14に記憶される。なお、変位Zの測定方法は、上述した通りであり、重複した説明を省略する。
【0039】
次に、CPU12は、第1処理を実行する(S14)。メモリ14には、メディアンフィルタ処理(平準化処理の一例)を実行するためのプログラムが記憶されている。処理部36として機能するCPU12は、サンプリング処理で測定された複数の変位Zのうち、15個(第1情報数の一例)の変位Zを用いたメディアンフィルタ処理である第1処理を実行し、図8に示す第1処理情報JS1を生成する。
【0040】
次に、決定部38として機能するCPU12は、第1処理情報JS1から面積対象範囲HMを決定する第1サーチ処理を実行する(S16)。ここで、「面積対象範囲HM」とは、シール材22の断面積を測定する範囲の一例であり、後述する第2サーチ処理により補正される前の断面積測定範囲である。通常、ユーザは、シール材22の断面積を測定する際に、シール材22の一部が欠けることがないように、シール材22が載置されているよりも広い変位測定範囲HSを設定する。本実施形態では、シール材22が載置されているガラス板20の表面20Aがフラットに形成されており、ガラス板20の表面20Aを測定した際に測定される変位Zが一定値となるように設定されている。そのため、変位測定範囲HSにおいて変位測定装置10が測定した変位Zが、ガラス板20の表面20Aを示す一定値と異なる値となった場合に、シール材22が載置されていることを検出し、面積対象範囲HMを決定する。
【0041】
第1処理では、変位Zに平準化処理の一種であるメディアンフィルタ処理を実行して生成された第1処理情報JS1から面積対象範囲HMを決定している。メディアンフィルタ処理によれば、変位Zを含む一定範囲の変位情報の中から中間値を変位Zとすることで、一定範囲内の極端に外れた値を除くことができる。第1処理情報JS1では、平準化処理を実行して生成されていることから、高反射率を有する配線パターンからの反射による局所的なノイズN1(図7参照)が除去されており、これらノイズN1の影響を受ける事無く、正確に面積対象範囲HMを決定することができる。
【0042】
具体的には、CPU12は、以下に示す手順で面積対象範囲HMを決定する。
まず、CPU12は、第1サーチ処理において、第1処理情報JS1に微分処理を実行し、図9に示す平準化情報JHを生成し、変位測定範囲HSにおける平準化情報JHの平均値JHAを算出する。メモリ14には、閾値係数KSが予め記憶されており、CPU12は平均値JHAを算出後、メモリ14から閾値係数KSを読み出し、平均値JHAに閾値係数KSを乗じて第1閾値SV1を算出する。また、CPU12は、平準化情報JHのピーク値(最大値)JHPを検出するとともに、平準化情報JHと第1閾値SV1を比較する。ここで、「ピーク値」とは、平準化情報JHのうち、絶対値が最も大きくなる値を言う。CPU12は、平準化情報JHが第1閾値SV1に対してピーク値JHPと同一側となる(本実施形態では、第1閾値SV1よりも大きくなる)特定側範囲HTを検出する。
【0043】
図10に、特定側範囲HTを示す。図8に示すように、一般に、シール材22の表面22Aに起因して第1処理情報JS1には複数の凹凸が存在しており、それに応じて変位測定範囲HSに複数の特定側範囲HTが含まれる。メモリ14には、基準距離LKが予め記憶されており、CPU12は隣接する特定側範囲HT間の距離を、基準距離LKと比較する。CPU12は、隣接する特定側範囲HT間の距離が基準距離LK以下である場合、それらの特定側範囲HTとその間の範囲を併せて面積対象候補範囲HKを生成する。一方、CPU12は、隣接する特定側範囲HT間の距離が基準距離LKよりも離れている場合、これらの特定側範囲HTが同一の測定対象物に起因したものでない、あるいはいずれか一方の特定側範囲HTがノイズ等に起因したものであると判断し、面積対象候補範囲HKを生成しない。これにより、図11に示すように、変位測定範囲HSには、特定側範囲HTよりも少数の複数の面積対象候補範囲HKが生成される。CPU12は、複数の面積対象候補範囲HKからその幅が最大となる面積対象候補範囲HKを選出し、これを面積対象範囲HMと決定し(図12参照)、第1サーチ処理を終了する。
【0044】
第1サーチ処理では、第1処理情報JS1に微分処理を実行して生成された平準化情報JHから面積対象範囲HMを決定している。平準化情報JHは、シール材22の有無が切り換わるシール材22の端部において値が大きく変化しやすい。そのため、第1閾値SV1を用いて面積対象範囲HMを決定する際に、平準化情報JHから面積対象範囲HMを決定することで、面積対象範囲HMを精度良く決定することができる。
【0045】
第1サーチ処理実行後、CPU12は、傾き補正処理を実行する(S18)。CPU12は、変位測定範囲HSのうち面積対象範囲HMから一定距離離れた一定区間(図12参照)を決定する。CPU12は、一定区間における第1処理情報JS1から変位測定装置10に対するガラス板20の傾きを検出するとともに、この傾きが「0」となるように、第1処理情報JS1を補正する。
【0046】
次に、CPU12は、ベース計算処理を実行する(S20)。算出部40として機能するCPU12は、一定区間における補正後の第1処理情報JS1から、変位測定装置10からガラス板20の表面20Aまでの変位を算出する。この際、CPU12は、一定区間における補正後の第1処理情報JS1に中間平均処理を行う。
【0047】
中間平均処理において、CPU12は、一定区間における補正後の第1処理情報JS1に含まれる複数の変位情報を大きさで順番付けし、当該順番において最大側及び最小側から10%に含まれる変位情報を除いた中間変位情報を選出する。CPU12は、この中間変位情報の平均値を、変位測定装置10からガラス板20の表面20Aまでの変位として算出する。
【0048】
本実施形態では、ガラス板20の表面20Aがフラットに形成されていることから、ベース計算処理において、一定区間における第1処理情報JS1から求めた変位測定装置10からガラス板20の表面20Aまでの変位を算出することで、ガラス板20の表面20Aまでの変位を算出することができる。つまり、本実施形態の変位測定装置10では、一度の変位Zの測定によって、面積対象範囲HMにおけるシール材22の表面22Aまでの変位と、面積対象範囲HMにおけるガラス板20の表面20Aまでの変位の両方の変位Zを測定することができ、これらの変位Zの差を用いて、シール材22の高さ及び断面積を測定することができる。
【0049】
次に、CPU12は、第2処理を実行する(S22)。処理部36として機能するCPU12は、サンプリング処理で測定された複数の変位Zのうち、3個(第2情報数の一例)の変位Zを用いたメディアンフィルタ処理を実行し、図13に示す第2処理情報JS2を生成する。図13に示すように、第2処理情報JS2は、図8に示す第1処理情報JS1よりもメディアンフィルタ処理で使用される変位Zの情報数が少ない為、第1処理情報JS1よりも滑らかではない一方、第1処理情報JS1よりもシール材22の形状の特徴を含んでいる。
【0050】
CPU12は、第2処理情報JS2生成後、S20において検出したガラス板20の傾きを用いて、第2処理情報JS2の傾きを補正する(S24)。次に、決定部38として機能するCPU12は、補正後の第2処理情報JS2を用いて面積対象範囲HMを補正し、断面積測定範囲HDを決定する第2サーチ処理を実行する(S26)。ここで、「断面積測定範囲HD」とは、シール材22の断面積を測定する範囲の別例であり、前述した面積対象範囲HMを補正し、実際にシール材22の断面積を測定する際に用いられる断面積測定範囲である。
【0051】
メモリ14には、第2閾値SV2が予め記憶されている。第2サーチ処理において、CPU12は、メモリ14から第2閾値SV2を読み出し、面積対象範囲HMにおける第2処理情報JS2と比較する。CPU12は、図13に示すように、第1閾値SV1よりも大きな値に設定されている第2閾値SV2を用いて範囲を検出し、当該範囲を断面積測定範囲HDとして決定する。
【0052】
サンプリング処理で測定された変位Zでは、シール材22の境界部においてシール材22の有無が切り換わるシール材22の端部において値が大きく変化しやすい。そのため、シール材22の端部では、変位Zがガラス板20の表面20Aよりも低く測定されることもあれば(紙面左側)、ガラス板20の表面20Aよりも高く測定されることもあり(紙面右側)、当該部分にノイズN2(図7参照)が生じやすい。第2サーチ処理では、第1閾値SV1よりも大きな値に設定されている第2閾値SV2を用いることで、ノイズN1の影響を除去し、正確に面積対象範囲HMを決定することができる。
【0053】
本実施形態の変位測定装置10では、変位測定範囲HSから断面積測定範囲HDを決定する際に、第1処理情報JS1を用いて面積対象範囲HMを決定し、第2処理情報JS2を用いて面積対象範囲HMを補正し、シール材22の断面積を測定するのに用いる断面積測定範囲HDを決定する。第1処理情報JS1と第2処理情報JS2は、複数の変位Zを用いて実行される平準化処理である点で共通するものの、その処理に用いられる変位Zの数が異なる。この変位測定装置10では、面積対象範囲HMを決定する際には、第2処理情報JS2よりも多くの変位Zを用いて生成された第1処理情報JS1を用いることで、配線パターンからの反射による局所的なノイズN1を除去することができ、面積対象範囲HMを精度良く決定することができる。また、断面積測定範囲HDを決定する際には、第1処理情報JS1よりも少ない変位Zを用いて生成された第2処理情報JS2を用いることで、第1処理情報JS1よりシール材22の変位Zの特徴を含んでいる第2処理情報JS2を用いて断面積測定範囲HDを決定することができ、これにより、シール材22の断面積を精度良く測定することができる。
【0054】
(断面形状出力処理)
次に、CPU12は、圧縮処理を実行する(S28)。
圧縮処理において、算出部40として機能するCPU12は、まず、断面積測定範囲HDに含まれる補正後の第2処理情報JS2を選出し、選出した第2処理情報JS2に中間平均処理を行う。図14に示すように、CPU12は、最大側及び最小側から10%に含まれる変位情報を除いた中間変位情報から平均値を算出し、当該平均値を圧縮値ATとしてメモリ14に記憶する。
【0055】
次に、CPU12は、圧縮変位情報ZAを算出する。CPU12は、選出した各第2処理情報JS2に対して、圧縮値ATを差し引いた差分値を算出する。メモリ14には、圧縮係数AKが予め記憶されており、圧縮係数AKは「0」よりも大きく、「1」よりも小さい値に設定されている。CPU12は、各第2処理情報JS2に対応した差分値を算出後、メモリ14から圧縮係数AKを読み出し、差分値に圧縮係数AKを乗ずるとともに圧縮値ATを加算し、当該第2処理情報JS2に対応する圧縮変位情報ZAを算出する。
0<AK<1、ZA=(JS2−AT)×AK+AT
【0056】
出力部41として機能するCPU12は、算出された圧縮変位情報ZAを変位測定装置10外部の表示器19に出力する(S29)。これにより、表示器19において、断面積測定範囲HDにおいて算出された圧縮変位情報ZAが、シール材22の断面形状として表示され、シール材22の断面形状が測定される。つまり、断面積測定範囲HDは断面形状出力範囲を兼ねており、圧縮変位情報ZAは測定されたシール材22の形状を表示器19に伝達する形状データを兼ねる。
【0057】
(断面積検出処理)
次に、CPU12は、断面積検出処理を実行する(S30)。断面積検出部34として機能するCPU12は、S20で算出された変位測定装置10からガラス板20の表面20Aまでの変位ZからS28で算出した断面積測定範囲HDにおける圧縮変位情報ZAを差し引いた差分変位を算出し、これを断面積測定範囲HDに亘って足し合わせることで、シール材22の断面積を検出する。
【0058】
本実施形態の変位測定装置10では、断面積測定範囲HDにおける第2処理情報JS2を用いて断面形状を表示し、断面積を算出する際に、中間平均処理を行い、当該第2処理情報JS2にける最も大きい側または最も小さい側となる変位情報を除いた中間変位情報に基づいて圧縮値ATを求め、断面積を算出する。そのため、圧縮値ATを求める際に、最も大きい側または最も小さい側となる変位情報が用いられることがない。
【0059】
ガラス板20上に形成されるシール材22は、通常整形されて形成されないため、その表面の形状は連続的に変化し、それに伴って表面の傾きも様々に変化する。本実施形態のように、ガラス板20に垂直な方向に光を照射し、それに応じてガラス板20に垂直な方向に反射される光を受光する変位測定装置10では、図15に示すように、精度良く測定可能な測定対象物の表面の傾き範囲が限られている。そのため、表面の形状が連続的に変化するシール材22などの断面積測定では、図14に示すように、断面に含まれる複数の測定ポイントにおいて変位情報にノイズ成分が含まれ、正しい測定をすることが難しい。
【0060】
この結果、変位情報から断面形状の形状データを算出し、外部の表示器19に出力することで断面形状を測定する場合、又は変位情報から断面積を測定する場合に、断面形状の再現精度及び断面積の測定精度が悪化してしまう。
【0061】
本実施形態の変位測定装置10では、中間変位情報に基づいて圧縮値ATを求めることで、シール材22の表面の傾きに起因して、生成された第2処理情報JS2にノイズ成分が含まれることとなった場合に、そのノイズ成分を除去することができ、断面形状の再現精度及び断面積の測定精度を向上させることができる。
【0062】
本実施形態の変位測定装置10では、圧縮係数AKが「0」よりも大きく「1」よりも小さい値に設定されている。圧縮係数AKが「1」よりも小さい正の値に設定されていることで、圧縮変位情報ZAと圧縮値ATとの差分値を、第2処理情報JS2と圧縮値ATとの差分値よりも小さくすることができ、ノイズ等によって生じた第2処理情報JS2のバラツキを縮小することができる。また、圧縮係数AKが「0」よりも大きい正の値に設定されていることで、圧縮変位情報ZAに第2処理情報JS2が有するシール材22の形状の特徴を残すことができる。
【0063】
<実施形態2>
実施形態2を、図16を用いて説明する。本実施形態の変位測定装置10は、変位測定処理における裏面処理が実施形態1の変位測定装置10と異なる。本実施形態では、シール材22にレーザ光を照射した場合に、シール材22の表面22Aで反射された反射光やガラス板20の裏面20Bで反射された反射光の他に、ガラス板20の表面20Aで反射された反射光が存在し得る場合の例を用いて説明を行う。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0064】
(裏面処理)
CPU12は、裏面処理において、各成分の変位Zが各成分の反射強度に関連付けられて検出されると、各成分の変位Zのうち、反射強度が最も高い第1測定値D1の変位Z1と、第1測定値D1の次に反射強度が高い第2測定値D2の変位Z2と、第2測定値D2の次に反射強度が高い第3測定値D3の変位Z3とを選出し、反射強度と関連付けた状態でメモリ14に記憶する(S32)。
【0065】
次に、CPU12は、変位Z1、Z2の差分変位(絶対値)ΔZ12、変位Z2、Z3の差分変位ΔZ23、変位Z1、Z3の差分変位ΔZ31を求める。CPU12は、差分変位ΔZ12、ΔZ23、ΔZ31を算出後、メモリ14から基準変位ZKを読み出し、差分変位と比較する(S34)。なお、本実施形態では、必ずしも基準変位ZKはガラス板20に垂直な方向における厚さLと略等しく設定されている必要がない。
【0066】
CPU12は、差分変位ΔZ12、ΔZ23、ΔZ31がともに基準変位ZKよりも小さい場合、反射光が反射した反射面はシール材22の表面22Aだけから反射されていると判断し、第1判断処理を実行する(S36)。第1判断処理において、CPU12は、検出された測定値Dのうち、最も反射強度が高い第1測定値D1の変位Z1を変位測定装置10からシール材22の表面22Aまでの変位と判断する。
【0067】
また、CPU12は、差分変位ΔZ23が基準変位ZKよりも小さく、差分変位ΔZ12、ΔZ31が基準変位ZK以上である場合、あるいは、差分変位ΔZ31が基準変位ZKよりも小さく、差分変位ΔZ12、ΔZ23が基準変位ZK以上である場合、あるいは、差分変位ΔZ12が基準変位ZKよりも小さく、差分変位ΔZ23、ΔZ31が基準変位ZK以上である場合、反射光が反射した反射面はシール材22の表面22Aと、ガラス板20の表面20A又は裏面20Bの一方から反射されていると判断する。この際、CPU12は第2判断処理を実行する(S38)。第1判断処理において、CPU12は、差分変位ΔZが基準変位ZKよりも小さくなる2つの測定値Dのうち、反射強度の高い側の測定値Dを選出する。CPU12は、選出した測定値Dの変位Zと残りの測定値Dの変位Zとのうち小さいものを、変位測定装置10からシール材22の表面22Aまでの変位と判断する。
【0068】
また、CPU12は、差分変位ΔZ12、ΔZ23、ΔZ31がともに基準変位ZK以上である場合、反射光が反射した反射面は、シール材22の表面22Aと、ガラス板20の表面20A及び裏面20Bであると判断し、第3判断処理を実行する(S40)。第3判断処理において、CPU12は、変位Z1、Z2、Z3うち小さいものを、変位測定装置10からシール材22の表面22Aまでの変位と判断する。
【0069】
本実施形態の変位測定装置10では、シール材22の表面22A、ガラス板20の表面20A及び裏面20Bと3つの異なる反射面でレーザ光が反射された場合でも、シール材22の表面22Aからの反射光による測定値Dを選出することができ、精度良く測定対象物までの変位情報を選出することができる。
【0070】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、変位測定装置10が1つのCPU12を有し、検出部30、判断部32、断面積検出部34、処理部36、決定部38、算出部40等の機能を1つのCPU12によって実行する例を用いて示したが、本発明はこれに限られない。例えば、お互いに異なるCPUやシステムなどによって各部が構成されても良い。
【0071】
(2)上記実施形態では、測定範囲決定処理において傾き補正処理及びベース計算処理を実行する例を用いて説明を行ったが、例えば測定範囲決定処理に先立ってガラス板20の傾きや変位測定装置10とガラス板20の表面20Aまでの変位が予め知られている場合には、必ずしも実行される必要がない。
【0072】
(3)上記実施形態では、測定対象物としてシール材22、測定対象物を載置するベース部材としてガラス板20を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。測定対象物を他の透光性を有するものとしてもよければ、透光性を有しないものとしてもよい。
【0073】
(4)上記実施形態では、ベース部材として透光性を有するガラス板20を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。ベース部材をクロム蒸着面等の鏡面を有する鏡面体であってもよく、測定対象物がその鏡面上に載置されていてもよい。測定対象物が鏡面体の鏡面上に載置されていると、ノイズ成分が検出されることが多く、比較的近接した変位範囲に測定値D1、D2が検出されることが多い。本発明によれば、ノイズ成分を排除して正確に変位測定装置10から鏡面体の鏡面までの変位Zを測定することができる。
【0074】
(5)上記実施形態では、第1処理におけるメディアンフィルタ処理で用いられる変位Zの数を15個、第2処理におけるメディアンフィルタ処理で用いられる変位Zの数を3個として説明を行ったが、第1処理におけるメディアンフィルタ処理で用いられる変位Zの数が、第2処理におけるメディアンフィルタ処理で用いられる変位Zの数よりも少なければ、各処理におけるメディアンフィルタ処理で用いられる変位Zの数はこれに限られない。また、実施される平準化処理もメディアンフィルタ処理に限られるものでない。たとえば、一般的に知られている移動平均処理などでも良い。移動平均処理によれば、変位Zを含む一定範囲の変位情報を平均した値を変位Zとすることで、一定範囲内の極端に外れた値をならすことができる。
【0075】
(6)上記実施形態では、中間平均処理において中間変位情報を選出する際に、最大側及び最小側から10%の変位情報が除去される例を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、5%や15%であってもよい。また、最大側で設定される割合と、最小側で設定される割合が異なっていても良い。
【符号の説明】
【0076】
10:変位測定装置、12:CPU、14:メモリ、16:出光部、18:受光部、20:ガラス板、22:シール材、30:検出部、32:判断部、34:断面積検出部、36:処理部、38:決定部、40:算出部、41:出力部、46、50:偏光板、48:クリスタル、Z:変位、ZK:基準変位、nc:シール材の屈折率、ng:ガラス板の屈折率、JS1:第1処理情報、SV1:第1閾値、JS2:第2処理情報、JH:平準化情報、SV2:第2閾値、HS:変位測定範囲、HM:面積対象範囲、HT:特定側範囲、HD:断面積測定範囲、HK:面積対象候補範囲、LK:基準距離、AK:圧縮係数、AT:圧縮値、ZA:圧縮変位情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材の表面に載置された透光性を有する測定対象物の変位から当該測定対象物の断面積を測定する断面積測定装置であり、
前記ベース部材と測定対象物の少なくとも一方へ垂直方向に向けて光を出射する出光部と、
前記出射に伴って前記ベース部材の表面と前記測定対象物表面の少なくとも一方から前記光と同軸方向に反射される反射光を、複屈折結晶と偏光手段を通過させることで干渉させた干渉光を受光する受光部と、
前記ベース部材に対して前記測定対象物が載置されている範囲を含む変位測定範囲に亘って相対移動させて受光された前記干渉光を周波数解析することで得られる変位情報を検出する検出部と、
複数の前記変位情報を用いて平準化処理を実行して第1処理情報を生成する第1処理部と、
前記第1処理情報から前記測定対象物の断面積を測定する断面積測定範囲を決定する第1決定部と、
前記断面積測定範囲における前記変位情報から前記測定対象物の断面積を検出する断面積検出部と、
を備えることを特徴とする断面積測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の断面積測定装置であって、
前記断面積測定範囲における前記変位情報から前記断面積測定範囲を補正する第2決定部を備えることを特徴とする断面積測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の断面積測定装置であって、
複数の前記変位情報を用いて平準化処理を実行して第2処理情報を生成する第2処理部を備え、
前記第1処理に用いられる前記変位情報の第1情報数は、前記第2処理に用いられる前記変位情報の第2情報数よりも多く設定されており、
前記断面積検出部は、前記断面積測定範囲における前記第2処理情報から前記測定対象物の断面積を検出することを特徴とする断面積測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の断面積測定装置であって、
前記第1決定部は、前記第1処理情報に微分処理を実行して平準化情報を生成するとともに閾値を有しており、前記平準化情報と前記閾値とを比較して前記断面積測定範囲を決定することを特徴とする断面積測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の断面積測定装置であって、
前記第1決定部は、前記平準化情報のピーク値を検出し、前記平準化情報が前記閾値に対して前記ピーク値と同一側の情報を有する特定側範囲を検出しており、前記変位測定範囲に複数の前記特定側範囲が存在する場合、隣接する前記特定側範囲の間の距離が予め定められた基準距離以下となる特定側範囲を含む範囲であり、最も幅の広い前記範囲を前記断面積測定範囲として決定することを特徴とする断面積測定装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の断面積測定装置であって、
前記ベース部材は、その表面と前記断面積測定装置との間の変位情報が前記変位測定範囲に亘って一定となるように配置されており、
前記変位測定範囲のうち、前記断面積測定範囲に含まれない範囲における前記第1処理情報から前記ベース部材の変位情報を算出する算出部と、
を備えることを特徴とする断面積測定装置。
【請求項7】
ベース部材の表面に載置された透光性を有する測定対象物の変位から当該測定対象物の断面積を測定する断面積測定装置に用いられるコンピュータに、
前記ベース部材と測定対象物の少なくとも一方へ垂直方向に向けて光を出射する出光処理と、
前記出射に伴って前記ベース部材の表面と前記測定対象物表面の少なくとも一方から前記光と同軸方向に反射される反射光を、複屈折結晶と偏光手段を通過させることで干渉させた干渉光を受光する受光処理と、
前記ベース部材に対して前記測定対象物が載置されている範囲を含む変位測定範囲に亘って相対移動させて受光された前記干渉光を周波数解析することで得られる変位情報を検出する検出処理と、
複数の前記変位情報から第1処理情報を生成する平準化処理と、
前記第1処理情報から前記測定対象物の断面積を測定する断面積測定範囲を決定する第1決定処理と、
前記断面積測定範囲における前記変位情報から前記測定対象物の断面積を検出する断面積検出処理と、
を実行させる特徴とする断面積測定装置用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−2988(P2013−2988A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135033(P2011−135033)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】