説明

新規の金属パターンの製造方法及びこれを用いた平板表示素子

【課題】新規の金属パターンの製造方法及びこれを用いた平板表示素子を提供する。
【解決手段】光触媒化合物、金属触媒化合物及び光増感剤を含む溶液を基板にコーティングして光金属触媒層を形成した後、これを選択的に露光して結晶成長用核の潜在的パターンを得、該潜在的パターンを1種以上の金属でメッキ処理して金属結晶を成長させて1層以上の金属パターンを得る、金属パターンの製造方法及びこれを用いた平板表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な金属パターンの製造方法及びこれを用いた平板表示素子に係り、より詳細には、光触媒化合物、金属触媒化合物及び光増感剤を含む溶液を基板にコーティングして光金属触媒層を形成した後、これを選択的に露光して結晶成長用核の潜在的パターンを得、該潜在的パターンを1種以上の金属でメッキ処理し金属結晶を成長させて1層以上の金属パターンを得る、金属パターンの製造方法及び得られた平板表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の発展に伴って表示素子に対する要求も様々な形態に増加しており、これに応えて近来、LCD(Liquid Crystal Display Device)、PDP(Plasma Display Panel)、ELD(Electro Luminescent Display)、VFD(Vacuum Fluorescent Display)など様々な平板表示素子に対する研究が活発に行われている。
【0003】
このような平板表示素子において、特に表示面積の大画面化と高画質化の要求に伴って金属配線の長さが著しく増加し、開口率の増加のためのデザインルール(design rule)が減少している。その結果、配線抵抗とキャパシタンス(capacitance)の値が急激に上昇し、信号遅れと歪みが生じてしまう。そこで、低い比抵抗及び接触抵抗の金属配線についての工程開発が、高画質・大面積の平板表示素子の開発に絶対的に必要な技術として認識されている。
【0004】
これに関連して、特許文献1は、半導体層とオーミックコンタクト層との間の接触抵抗を減らすために、シード(seed)として作用できる触媒金属を用いる薄膜トランジスタの形成方法について、さらに、特許文献2は、Tiからなる抵抗の低減層と銀メッキのためのPd触媒層を用いる半導体装置の配線形成方法について開示している。しかしながら、これらの技術は、パターン形成のために高真空・高温などを要する金属薄膜工程及び、露光、エッチングなどのフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ工程などの複雑で費用のかかる工程が必要で、製造工程及び製造費用の面で不経済的だった。
【0005】
また、特許文献3は、ガラス基板上にシラン層と水性Pdコロイド溶液を適用して結晶成長用核を形成し、該基板をレーザービームで露光したのち、その非露光領域に無電解メッキ処理を施して金属パターンを形成する金属パターンの製造方法について開示している。しかし、この技術も、付加的な表面処理を必要とし、露光源として高出力のレーザー光源を使用しなければならず、好ましくない。
【0006】
そこで、本発明者らは、金属薄膜工程、微細形状露光工程または後続するエッチング工程などを用いるのではなく、光触媒化合物及び必要によって水溶性高分子を用いる簡単で低費用の工程によって高伝導の金属パターンを製造できる方法について、特許文献4、5及び6で開示している。
【特許文献1】韓国公開特許第2004−103521号公報
【特許文献2】特開平08−083796号公報
【特許文献3】特開平07−188936号公報
【特許文献4】韓国公開特許第2005−61285号公報
【特許文献5】韓国公開特許第2005−28646号公報
【特許文献6】韓国公開特許第2006−46935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの光触媒による配線工程は、電極の金属パターンを形成するための触媒層として、ゲート絶縁層に使われるものと同じ絶縁体であるTiOなどの光触媒のみを使用している。そのため、図1に示すように、ゲート絶縁層3上にソース/ドレイン電極5,6が形成され、これらの絶縁層及び電極上に半導体層4が形成されるボトムコンタクト(Bottom contact)方式の電極構造には有利に適用される。ところが、図2に示すように、ゲート絶縁層3’上に半導体層4’がまず形成され、該半導体層上にソース/ドレイン電極5’,6’が形成されるLCD駆動TFTの一般類型であるトップコンタクト(Top contact)方式の電極構造においては、半導体層とソース/ドレイン電極間の高い接触抵抗(Contact Resistance)によって多少適用しにくい側面があった。
【0008】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためのもので、その目的は、ボトムコンタクトだけでなくトップコンタクト方式の電極構造にも容易に適用できる、低接触抵抗の効率的な金属パターンの製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、上記の方法によって製造された金属パターンを備えることによって高解像度の優れた性能を示すことができる平板表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明は、(a)光触媒化合物、金属触媒化合物及び光増感剤を含む溶液を基板にコーティングして光金属触媒層を形成する段階と、(b)前記光金属触媒層を選択的に露光したり、必要によって前記露光後の溶液処理によって非露光部分の金属イオンを除去したりして結晶成長用核の潜在的パターンを得る段階と、(c)前記結晶成長用核の潜在的パターンを1種以上の金属でメッキ処理して金属結晶を成長させ、1層以上の金属パターンを得る段階と、を含む金属パターンの製造方法に関する。
【0011】
また、上記の目的を達成するための本発明は、上記金属パターンの製造方法によって得られた金属パターンを含む平板表示素子に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、簡単なコーティング、露光及びメッキ処理によってトップコンタクト方式の電極構造にも容易に適用できる低接触抵抗の金属パターンを容易に形成できるため、既存の高真空条件が要求されるスパッタリングやフォトパターニング、現像、エッチングなどの工程を行うことなく短時間で効率よく高解像度及び高伝導度の安定した金属配線パターンが得られ、LCDを含め、PDP、ELD、VFDなどの平板表示素子に有利に適用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の一側面は、(a)光触媒化合物、金属触媒化合物及び光増感剤を含む溶液を基板にコーティングして光金属触媒層を形成する段階と、(b)該光金属触媒層を選択的に露光したり、この露光後に必要によって溶液処理によって非露光部分の金属イオンを除去したりして結晶成長用核の潜在的パターン(latent pattern)を得る段階と、(c)該結晶成長用核の潜在的パターンを1種以上の金属でメッキ処理して金属結晶を成長させ、1層以上の金属パターンを得る段階と、を含む金属パターンの製造方法に関する。
【0015】
本発明の金属パターンの製造方法は、触媒層の物質として導電性の高い金属触媒化合物を光触媒化合物と共に使用することによって、半導体層及びソース/ドレイン電極間の接着特性及び電気的接触特性などを向上させ、その結果、トップコンタクト方式の電極構造においても低接触抵抗及び高導電度を有する優れた金属パターンを容易に形成できる。
【0016】
また、本発明の金属パターンの製造方法によれば、従来の金属配線工程とは違い、基板上に触媒層を形成する過程において光触媒化合物の焼成過程や水溶性高分子層の形成などによる別の触媒活性化段階を必要とせず、いわゆる「one−step工程」によって結晶成長用核の潜在的パターンが得られるため、より簡単で低費用で高解像度の安定したパターンを形成することが可能になる。したがって、本発明による金属パターンの製造方法は、LCDを含め、PDP、ELD、VFDなどの平板表示素子に容易に適用できる。
【0017】
以下、本発明を段階別に詳しく説明する。
【0018】
第(a)段階:
まず、光触媒化合物、金属触媒化合物及び光増感剤を含む溶液を基板にコーティングして光金属触媒層を形成する。
【0019】
本発明でいう「光触媒化合物」は、光によってその特性が顕著に変化する化合物であって、露光前には非活性であるが、紫外線などの光を受けると活性化されて反応性が強くなる化合物を意味する。
【0020】
この光触媒化合物は、露光時に露光部位に電子励起が起きて還元性などの活性を帯び、露光部分で金属イオンの還元がおきることからネガティブパターンを提供できる。その好ましい例には、露光時に透明な無定形のTiO(ここで、xは2以下の実数である。)を形成できるTiを含む有機金属化合物が挙げられる。このTiを含む有機金属化合物の好ましい例には、テトライソプロピルチタネート(tetraisopropyl titanate)、テトラ−n−ブチルチタネート(tetra−n−butyl titanate)、テトラキス(2−エチル−へキシル)チタネート[tetrakis(2−ethyl−hexyl)titanate]、ポリブチルチタネート(polybutyl titanate)などが含まれるが、これに制限されることはない。
【0021】
本発明でいう「金属触媒化合物」は、化合物内の金属イオンが露光時に露光部分で光触媒化合物によって還元して沈積し、後続するメッキ段階時に金属結晶成長用の触媒として働く金属イオン含有化合物を意味する。
【0022】
この金属触媒化合物は、光触媒化合物と相互作用してより緻密な組織の金属パターン形成を可能にし、下部の半導体層とソース/ドレイン電極間のショットキーバリア及び接触抵抗などを下げることによって、より効果的に優れた性能の金属パターンを形成できる。
【0023】
このような金属触媒化合物は、特に制限されることはなく、使用される基板との接着特性、基板、絶縁膜または半導体層との接触特性、またはメッキ工程で使われる金属の種類などを考慮して適宜選択すればよい。その具体例としては、Ag塩化合物、Pd塩化合物またはこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
光増感剤は、露光時に光感度をより増加させて光触媒及び金属触媒の活性を向上させる役割を担っている。このような光増感剤には、色素、有機酸、有機酸塩、有機アミンのうち、水溶性の化合物が1種以上使われる。具体的には、タール(tar)色素、クロロフィリン(chlorophylline)のカリウムまたはナトリウム塩、リボフラビンまたはその誘導体、水溶性アナト(annatto)、CuSO、カラメル(caramel)、クルクミン(curcumine)、コチニール(cochineal)、クエン酸(citric acid)、クエン酸アンモニウム(ammonium citrate)、クエン酸ナトリウム(sodium citrate)、グリコール酸(glycolic acid)、シュウ酸(oxalic acid)、酒石酸カリウム(K−tartrate)、酒石酸ナトリウム(Na−tartrate)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、蟻酸(formic acid)、トリエタノールアミン(triethanolamine)、モノエタノールアミン(monoethanolamine)、マレイン酸(malic acid)などが使われるが、これらに制限されることはない。
【0025】
これらの光触媒化合物、金属触媒化合物及び光増感剤は、アルコール系溶媒などの適切な溶媒に溶かしてスピンコーティング、スプレーコーティング、スクリーンプリンティングなどの通常のコーティング方法によって基板に被覆できる。アルコール系溶媒の非制限的な例としては、イソ−プロパノール、1−ブタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノールなどが挙げられる。
【0026】
ここで、光触媒化合物、金属触媒化合物及び光増感剤が溶液全体に含有される量は、場合及び用途によって当業者が適宜選択すればよく、好ましくは、光触媒化合物0.01〜50質量%、金属触媒化合物0.01〜30質量%、光増感剤0.01〜10質量%の範囲とすればよいが、これに制限されるわけではない。
【0027】
本発明で使用可能な基板は、特に制限はないが、好ましくは、半導体物質または透明な導電膜の基板を使用すればよい。ここで、半導体物質は、従来の技術分野で一般的に使用される半導体性物質であればいずれも使用可能であり、その具体例には、シリコンウエハ、非晶質シリコン、ポリシリコン、結晶質シリコンなどがある。透明な導電膜基板もまた、従来の技術分野で一般的に使用されるものであればいずれも使用可能である。好ましくは、上部に酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)などの透明な導電性物質がコーティングされているガラスまたはプラスチック基板などを使用することができる。このプラスチック基板の非制限的な例としては、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、オレフィンマレイミド共重合体、ノルボネン系樹脂などが挙げられる。
【0028】
一方、本発明では、光金属触媒層を形成するために上記コーティング後に高温での焼成過程を行う必要がなく、コーティング後にスピンドライ(spin dry)されている状態で、直ちに次の段階である露光処理を行って結晶成長用核の潜在的パターンが得られる。このようにして得られた本発明の結晶成長用核の潜在的パターンは、露光後に少なくとも1時間以上触媒活性が維持され、結果として高い解像度及び立体的に安定した特性の優れた金属パターンを形成できる。
【0029】
第(b)段階:
上記第(a)段階で得られた光金属触媒層を、フォトマスクなどを用いてUVなどに選択的に露光することで、活性化された部分と非活性化部分とからなる結晶成長用核の潜在的パターンを得る。
【0030】
このとき、露光雰囲気または露光量などの露光条件に特別な制限はないので、使用する光触媒化合物及び金属触媒化合物の種類によって適宜選択すればよい。充分な触媒活性度を得るためには、200〜1500Wの紫外線露光機で1秒〜3分間照射することが好ましいが、これに制限されることはない。
【0031】
この光金属触媒層を露光すると、前述のように、露光部分に電子励起が起き、光触媒化合物が還元特性などの活性を示すことによって、金属触媒化合物内の金属イオンが還元及び沈積し、後続するメッキ段階時に金属結晶の成長を促進させる。
【0032】
必要によっては、上記露光後に溶液処理によって非露光部分に残っている金属イオンを除去する段階をさらに行ってもよい。すなわち、非露光部分に多量の金属イオンが残存する場合には、後続するメッキ段階時に金属イオンの還元過程に妨害要素となる恐れがあるため、溶液処理によって当該金属イオンを除去する。なお、この溶液処理によって、残存していた水溶性の光触媒化合物及び光増感剤も、非露光部分から除去される。
【0033】
この溶液処理に用いられる溶液は、特に制限されないが、イソ−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール系溶媒、水、または前記アルコール系溶媒を含む水溶液のうちの1つ以上を使用する。その処理時間はそれぞれ、10秒〜5分程度が好ましい。一方、該水溶液中のアルコール系溶媒の含量は、5〜100体積%とすることが好ましい。
【0034】
第(c)段階:
続いて、上記(b)段階で得られた結晶成長用核の潜在的パターンを、1種以上の金属でメッキ処理して1層以上の金属パターンを得る。より詳細には、該パターンを、所望の金属でメッキ処理して1層の金属層を形成する、または、前記パターンを所望の金属でメッキ処理して第1金属層を形成し、これを再び所望の他の金属でメッキ処理し、前記第1金属層の形成された部分に第2金属層を形成することによって多層の金属パターンを得る。このとき、前記メッキ処理は、無電解メッキ方式または電解メッキ方式で実施する。
【0035】
前記金属の種類及びメッキの順序は、必要及び場合によって当業者が適宜選択すればよい。2層以上の金属パターンを形成する場合、それぞれの金属層は、同一または相異なる金属で形成することができる。具体的には、本発明で使用可能な金属は、Ni、Pd、Cu、Ag、Mo、Cr、Au、Co、Al、Sn、Znまたはこれらの合金などがあるが、この限りではない。
【0036】
また、前記金属層の厚さは、それぞれ必要に応じて適宜調節すればよく、好ましくは、0.01〜10μm、より好ましくは、0.1〜2μmの範囲にするとよい。
【0037】
Cu、Ni、Agなどの高導電性金属を含む多層の金属パターンでは、基板との接着特性及び基板、絶縁膜または半導体層との接触特性を考慮して、第1金属層としてNi、Pd、Sn、Znまたはこれらの合金をメッキ処理し、第2金属層として高い電気伝導度も持つCu、Ag、Auまたはこれらの合金でメッキ処理する。第1金属層としては価格及び容易性の側面でNiを使用することが好ましく、第2金属層としてはCuまたはAgを使用することが好ましい。
【0038】
さらに、第3金属層を形成する場合、第2金属層がITOなどの透明導電性物質や半導体物質と接触する場合には、これらの接触抵抗を改良するために、Ni、Pd、Sn、Znまたはこれらの合金でメッキ処理することが好ましく、第2金属層がCuである場合には、表面酸化膜の形成による物性の低下を防止するために、第3金属層としてAg、Auなどの貴金属層を形成すればよい。好ましくは、接触抵抗の改良のために、第1金属層と同じ金属をメッキ処理して第3金属層を形成する。
【0039】
上記のような多層の金属パターンを形成するメッキ方法は、特に制限されなく、必要に応じて当業者が適宜組み合わせて使用すればよい。好ましくは、第1金属層を無電解メッキ方式で形成し、CuまたはAgなどを使用する第2金属層は、無電解または電解メッキ方式で形成するとよい。
【0040】
ここで、無電解メッキまたは電解メッキでは、従来公知の方法及び商用のメッキ用組成物を使用すればよい。
【0041】
例えば、無電解メッキでは、1)Ni、Cu、Agなどの特定金属塩、2)還元剤、3)錯化剤、4)pH調節剤、5)pH緩衝剤、及び6)改良剤を含むメッキ溶液に、前記結晶成長核パターンを持つ基板を浸漬(dipping)して形成する。
【0042】
1)金属塩は、基板に金属イオンを供給する役割を担い、好ましくは、特定金属の塩化物、窒酸塩、硫酸塩、酢酸塩化合物などを使用する。
【0043】
2)還元剤は、基板上の金属イオンを還元する役割を担い、該還元剤の具体例には、NaBH、KBH、NaHPO、ヒドラジン、ホルマリンまたはブドウ糖などの多糖類の化合物が挙げられる。好ましくは、ニッケルメッキ液の場合、NaHPOを使用し、CuまたはAgメッキ液の場合、ホルマリンまたは多糖類の化合物を使用する。
【0044】
3)錯化剤は、アルカリ性溶液における水酸化物の沈殿を防止し、遊離した金属イオンの濃度を調節することによって、金属塩の分解防止及びメッキ速度を調節する役割を担う。この錯化剤の具体例には、アンモニア溶液、酢酸、グアニン酸、酒石酸塩、EDTAなどのキレート剤または有機アミン化合物が挙げられる。好ましくは、EDTAなどのキレート剤である。
【0045】
4)pH調節剤は、メッキ液のpHを調節する役割を担うもので、酸または塩基性化合物である。
【0046】
5)pH緩衝剤は、メッキ液のpH変動を抑えるもので、各種の有機酸、弱酸性の無機化合物である。
【0047】
6)改良剤は、コーティング特性及び平坦化特性を改良させる化合物で、その具体例には、一般的な界面活性剤、結晶成長に妨害となる成分を吸着できる吸着性物質がある。
【0048】
電解メッキ法による場合、1)金属塩、2)錯化剤、3)pH調節剤、4)pH緩衝剤、及び5)改良剤を含有するメッキ用組成物を使用する。メッキ溶液組成物に含まれるこれらの成分の役割及び具体例は、上述した通りである。
【0049】
一方、図3及び図4はそれぞれ、本発明の方法による好ましい具現例で、Niを含む1層の金属パターン製造工程、及びNi、Cuを含む多層の金属パターン製造工程を模式的に示している。図3及び図4の、それぞれの2.UV−露光において、UV−露光に該当する箇所に活性サイトができ、金属イオンが沈積する。
【0050】
本発明の方法によると、ボトムコンタクトだけでなくトップコンタクト方式のTFT(Thin Film Transistor)電極構造においても、低接触抵抗及び高解像度の金属配線パターンを簡単な工程で効率よく製造でき、かつ、低製造コストも図られるため、LCDを含めてPDP、ELD、VFDなどの平板表示素子に容易に適用することが可能になる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の構成及び効果を具体的な実施例に挙げて詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明をより明確に説明するためのもので、本発明の権利範囲を制限するためのものではない。
【0052】
(実施例1)
ポリブチルチタネートのイソ−プロパノール溶液(2.5質量%)6mL;シュウ酸のイソ−プロパノール溶液(5質量%)3mL;PdCl 0.7g及びHCl 0.5mLをイソ−プロパノール5mLに溶かして製造した溶液5mL;及び、1−ブタノール10mLを混合して得た溶液(24mL)を、スピンコーティング(500〜2000rpm)によってITOガラス基板に塗布し、微細パターンの形成されているフォトマスクを通って広い波長範囲(broad range)の500W紫外線を基板上に1分間照射して露光した後(米国オリエル社のUV露光装備を使用する)、この露光された基板を10体積%のイソ−プロパノールを含有する水溶液で少なくとも1分間きれいに洗浄し、非露光部分に残っているPd2+イオンを除去した。
続いて、この洗浄された基板をゆっくり振りながら水で洗浄した後、下記表1の(A)に表す組成を持つ無電解ニッケルメッキ液に浸し、パターン化した金属配線の結晶を成長させ、ネガティブ方式のニッケル配線パターンを得た。
得られたパターンの基本物性を、下記の表2に示す。
【0053】
(実施例2)
実施例1で、ニッケル配線パターンを得た後、下記表1の(B)に表す組成を持つ無電解銅メッキ液に浸漬してネガティブ方式のニッケル−銅配線パターンを得た。得られたパターンの基本物性を、表2に示す。
【0054】
(実施例3)
ITO−ガラス基板の代わりにシリコンウエハを用いた以外は、実施例1と同一の過程によってネガティブ方式のニッケル配線パターンを得た。得られたパターンの基本物性を、表2に示す。
【0055】
(実施例4)
ITO−ガラス基板の代わりにシリコンウエハを用いた以外は、実施例2と同一の過程によってネガティブ方式のニッケル−銅配線パターンを得た。得られたパターンの基本物性を、表2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
表2において、厚さ測定はDektak社のアルファステップで、接触抵抗はプローブステーション(probe station)及びパラメータ分析器(parameter analyzer(HP 4145))で、解像度は光学顕微鏡でそれぞれ測定して評価した。
【0059】
フォトレジスト工程及びエッチング工程を用いなくても、高解像度の金属パターンの形成が可能であり、さらに、下部膜が半導体あるいは導電膜であっても金属パターンの形成が可能である。金属パターンと導電膜との間の通電ができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ボトムコンタクト方式のLCD駆動TFTの電極構造を示す断面概略図である。
【図2】トップコンタクト方式のLCD駆動TFTの電極構造を示す断面概略図である。
【図3】本発明の一具現例による金属パターンの製造方法を概略的に示す模式図である。
【図4】本発明の他の具現例による金属パターンの製造方法を概略的に示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
1,1' 基板
2,2' ゲート電極
3,3' ゲート絶縁層
4,4' 半導体層
5,5' ソース電極
6,6' ドレイン電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光触媒化合物、金属触媒化合物及び光増感剤を含む溶液を基板にコーティングして光金属触媒層を形成する段階と、
(b)前記光金属触媒層を選択的に露光して結晶成長用核の潜在的パターンを得る段階と、
(c)前記結晶成長用核の潜在的パターンを少なくとも1種の金属でメッキ処理して金属結晶を成長させ、少なくとも1層の金属パターンを得る段階と、
を含む、金属パターンの製造方法。
【請求項2】
前記光触媒化合物は、TiO(ここで、xは2以下の実数である)化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項3】
前記光触媒化合物は、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラキス(2−エチル−へキシル)チタネートまたはポリブチルチタネートであることを特徴とする、請求項2に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項4】
前記金属触媒化合物は、Ag塩、Pd塩またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項5】
前記光増感剤は、色素、有機酸、有機酸塩及び有機アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項6】
前記光増感剤は、タール色素、クロロフィリンのカリウムまたはナトリウム塩、リボフラビンまたはその誘導体、水溶性アナト、CuSO、カラメル、クルクミン、コチニール、クエン酸、クエン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、グリコール酸、シュウ酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、アスコルビン酸、蟻酸、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン及びマレイン酸からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項5に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項7】
前記(a)段階の溶液は、光触媒化合物0.01〜50質量%、金属触媒化合物0.01〜30質量%、光増感剤0.01〜10質量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項8】
前記基板は、半導体物質または透明な導電膜の基板であることを特徴とする、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項9】
前記基板は、シリコンウエハ、非晶質シリコン、ポリシリコン、結晶質シリコン、上部に酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、及びフッ素ドープ酸化スズ(FTO)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む透明な導電性物質がコーティングされているガラスまたはプラスチック基板であることを特徴とする、請求項8に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項10】
前記(b)段階の露光処理は、200〜1500Wの紫外線を照射することを特徴とする、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項11】
前記(c)段階の金属は、Ni、Pd、Cu、Ag、Mo、Cr、Au、Co、Al、Sn、Zn及びこれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項12】
前記(c)段階のメッキ処理は、無電解メッキ方式または電解メッキ方式によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項13】
前記(b)段階で、露光後に溶液処理によって非露光部分の金属イオンを除去する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項14】
前記溶液処理は、アルコール系溶媒、水、または、アルコール系溶媒を含む水溶液のうちの少なくとも1つを用いて行われることを特徴とする、請求項13に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項15】
得られた金属パターンの厚さは、0.01〜10μmの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法によって製造された金属パターンを含む平板表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−47874(P2008−47874A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168118(P2007−168118)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】