説明

有機ポリマー、ラミネート、およびコンデンサー

コンデンサーなどのラミネートに使用するための有機ポリマー。このポリマーは、式:
【化1】


で示される反復単位を含む。上記式中、各R1は、独立して、H、アリール基、Cl、Br、I、または架橋性基を含む有機基であり;各R2は、独立して、H、アリール基、またはR4であり;各R3は、独立して、Hまたはメチルであり;各R5は、独立して、アルキル基、ハロゲン、またはR4であり;各R4は、独立して、少なくとも1つのCN基を含みかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり;そしてnは0〜3に等しく;ただし、ポリマー中の少なくとも1つの反復単位は、R4を含む。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
有機誘電体のような有機高分子材料は、光電子デバイスをはじめとする多種多様な電子デバイスで使用される。例としては、トランジスター、ダイオード、コンデンサー(たとえば、内蔵コンデンサー)、レジスターが挙げられる。これらは、たとえば、増幅器、受信機、送信機、インバーター、および発振器を形成するために、種々のアレイで使用することができる。有機高分子材料は、プリント回路板および集積回路(IC)パッケージで使用することができる。
【0002】
テトラセン、ペンタセン、およびセキシチオフェンのような有機半導体は、現在、さまざまなエレクトロニクス用途でも大きな関心が寄せられている。標準的なシリコン系材料に対して有機半導体を用いる主要な利点の1つは、溶液堆積法を使用しうる点である。しかしながら、この利点を十分に生かすために、誘電体層を含めてデバイスのすべての素子を溶液から堆積させなければならない。
【0003】
さらに、有用なデバイス(たとえば、トランジスター)を得るために、デバイス内の適正な電荷キャリヤー移動度(好ましくは1.0cm/V・s超)を有することが重要である。歴史的にみると、有機ポリマー誘電体は、低い移動度を有するデバイスを生じる。しかしながら、有機ポリマー誘電体を使用する利点は、溶液加工可能かつ光パターニング可能であるという点にある。有機ポリマーの薄層は、ほとんどの有機ポリマーよりも高い誘電率を有するAlやSiOのような無機酸化物上で作製されたデバイスの移動度を改善することが明らかにされている。
【0004】
いくつかの有機ポリマーは誘電体材料であると考えられている。これらには、ポリイミド、パリレンC、架橋ベンゾシクロブテン、およびシアノエチルプルランが包含される。たとえば、非特許文献1、特許文献1(カッツ(Katz)ら)、および特許文献2(ガルニエ(Garnier)ら)を参照されたい。しかしながら、これらのポリマーを用いて作製されたデバイスで測定された移動度は、典型的には0.7cm/V・s以下である。
【0005】
これに加えて、薄膜よりもピンホール欠陥の可能性が比較的低い比較的厚い膜を使用できるようにするために、高誘電率が望ましい。また、同一電荷分極を保持しつつデバイスの動作電圧を低下させるためにも、高誘電率が望ましい。
【0006】
したがって、さまざまな電子デバイス(たとえば、トランジスター、コンデンサーなど)で有機ポリマーが望まれる。とくに、比較的高いデバイス移動度観測値と比較的高い誘電率とを兼備しかつ好ましくは溶液堆積(たとえば、スピンコーティング法または類似の方法による)が可能である有機ポリマーが望まれる。
【特許文献1】米国特許第6,265,243号明細書
【特許文献2】米国特許第5,347,144号明細書
【非特許文献1】シー・ディー・シェロー(C.D.Sheraw)ら著、「高性能有機薄膜トランジスター用のスピンオンポリマーゲート誘電体(Spin−on polymer gate dielectric for high performance organic thin film transistors)」、材料研究学会シンポジウム予稿集(Materials Research Society Symposium Proceedings)、第558巻、材料研究学会(Materials Research Society)、米国ペンシルバニア州ウォーレンデール(Warrendale,PA,USA)、p.403−408(2000年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電子デバイスに使用するのに好適なポリマーに関する。より特定的には、本発明は、好ましくは比較的高い誘電率を有するシアノ官能性(好ましくはシアノ官能性スチレン系)ポリマーを提供する。これらのポリマーは、標準的化学技術(たとえば、対応するモノマーからの遊離基重合または既存のポリマーの化学修飾)により調製可能であり、場合により表面改質膜を付加することなく、電子デバイスで誘電体層として使用可能である。
【0008】
デバイスに使用するのに好適なポリマーは、好ましくは、シアノ官能性部分と、ポリマー全体に比較的高い誘電率を付与する部分と、を含む。それらの部分は、同一であっても異なっていてもよい。ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。コポリマーは、2種以上の異なるモノマーから調製されるポリマーであり、ターポリマー、テトラポリマーなどを包含する。ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、さらには任意のさまざまな他の構造配列を形成するように、モノマーを連結させることができる。
【0009】
一実施形態では、本発明は、有機ポリマー誘電体層を含む電子デバイスを提供する。誘電体層は、式:
【化1】


で示される反復単位を有する実質的にフッ素化されていない有機ポリマーを含む。上記式中、各Rは、独立して、H、アリール基(アラルキルおよびアルカリールを包含する)、Cl、Br、I、または架橋性基(すなわち、1つ以上の架橋性基)を含む有機基であり;各Rは、独立して、H、アリール基(アラルキルおよびアルカリールを包含する)、またはRであり;各Rは、独立して、Hまたはメチルであり;各Rは、芳香環上の置換基であり、独立して、アルキル基、ハロゲン、またはRであり;n=0〜3;そして各Rは、独立して、少なくとも1つのCN基を含みかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり;ただし、ポリマー中の少なくとも1つの反復単位は、Rを含む。好ましくは、少なくとも1つのRは、架橋性基を含む。2つの反復単位が同一になってホモポリマーを形成することも可能である。特定の実施形態については、実質的にフッ素化されていない誘電体ポリマーは架橋されている。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、式:
【化2】


で示される反復単位を有する有機ポリマー(好ましくは実質的にフッ素化されていない有機ポリマー)を含む光パターニング可能な有機ポリマー誘電体層を備えた電子デバイスを提供する。上記式中、各Rは、独立して、架橋性基(すなわち、1つ以上の架橋性基)を含む有機基であり;各Rは、独立して、H、アリール基(アルカリールおよびアラルキルを包含する)、またはRであり;各Rは、独立して、Hまたはメチルであり;各Rは、芳香環上の置換基であり、独立して、アルキル基、ハロゲン、またはRであり;n=0〜3;そして各Rは、独立して、少なくとも1つのCN基を含みかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり;ただし、ポリマー中の少なくとも1つの反復単位は、Rを含む。2つの反復単位が同一になってホモポリマーを形成することも可能である。特定の実施形態については、有機ポリマーは、光パターンニング時に架橋されている。
【0011】
デバイス、方法、および好ましいポリマーの特定の実施形態をも提供する。
【0012】
たとえば、とくに好ましいデバイスとしては、コンデンサー(たとえば、内蔵コンデンサー)、薄膜トランジスターまたはトランジスターアレイ、およびエレクトロルミネセンスランプが挙げられる。デバイスは、好ましくは、スチレン系単位(好ましくはシアノ官能性スチレン系単位)を表面に有する有機ポリマー誘電体層を含む。
【0013】
本明細書に記載の有機ポリマーの層(すなわち膜)を形成し、場合により有機ポリマーをアニーリングし、そして場合により有機ポリマーを架橋することにより、多種多様な電子デバイスを作製することができる。
【0014】
電子デバイスを作製するとくに好ましい方法は、少なくとも約3.5の誘電率を有する有機ポリマーの層を形成することと、ここで、有機ポリマーは、シアノ官能性基およびスチレン系単位(シアノ官能性基を含んでいてもよい)を含む;有機ポリマーをアニーリングしてスチレン系単位を層の表面に移動させることと;場合により、有機ポリマーを架橋させて有機ポリマー誘電体層を形成することと;を含む。本発明はまた、この方法により作製される電子デバイスを提供する。
【0015】
本明細書中で使用する場合、「ポリマー」は、2つ以上の反復単位を含み(たとえば、ホモポリマーおよびコポリマー)、「コポリマー」は、2つ以上の異なる反復単位を含み、ターポリマー、テトラポリマーなどを包含する。コポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互コポリマーなどでありうる。
【0016】
本明細書中で使用する場合、「a」または「an」または「the」は、「1つ以上」の素子が改変されることを示すべく、「少なくとも1つ」と同義的に用いられる。
【0017】
本明細書中で使用する場合、「有機基」という用語は、脂肪族基、環状基、または脂肪族基と環状基との組合せ(たとえば、アルカリール基およびアラルキル基)として分類される炭化水素基(酸素、窒素、硫黄、ケイ素、およびハロゲンのような炭素および水素を除く任意の元素を有していてもよい)を意味する。本発明に関連して、有機基は、有機誘電体層の皮膜形成性および/または有機誘電体層に隣接する半導体層の形成もしくは機能を阻害しないものである。「脂肪族基」という用語は、飽和もしくは不飽の線状もしくは分枝状の炭化水素基を意味する。この用語は、たとえば、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基を包含するように使用される。「アルキル基」という用語は、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ヘキシル、ヘプチル、ドデシル、オクタデシル、アミル、2−エチルヘキシルなどをはじめとする飽和の線状もしくは分枝状の炭化水素基を意味する。「アルケニル基」という用語は、ビニル基のような炭素−炭素二重結合を1つ以上有する不飽和の線状もしくは分枝状の炭化水素基を意味する。「アルキニル基」という用語は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する不飽和の線状もしくは分枝状の炭化水素基を意味する。「環状基」という用語は、脂環式基、芳香族基、またはヘテロ環式基として分類される閉環炭化水素基を意味する。「脂環式基」という用語は、脂肪族基の特性に類似した特性を有する環状炭化水素基を意味する。「芳香族基」または「アリール基」という用語は、単核もしくは多核の芳香族炭化水素基を意味し、その範囲内にアルカリール基およびアラルキル基を包含する。「ヘテロ環式基」という用語は、環中の1つ以上の原子が炭素以外の元素(たとえば、窒素、酸素、硫黄など)である閉環炭化水素を意味する。
【0018】
本発明に係るポリマーの有機基上での置換が予想される。考察および本出願全体にわたって使用される特定の専門用語の記述を簡潔にする手段として、「基」および「部分」という用語は、置換が許容され置換されていてもよい化学種と、置換が許容されもしないし置換されていてもいけない化学種と、を区別するように使用される。したがって、化学置換基を記述するために「基」という用語が使用された場合、記述された化学物質は、無置換型の基および(アルコキシ基の場合のように)鎖中にたとえばO、N、Si、またはS原子を有する基さらにはカルボニル基または他の従来型の置換を有する基を包含する。化学化合物または置換基を記述するために「部分」という用語が使用された場合、無置換型の化学物質だけが包含されるものとする。たとえば、「アルキル基」という表現は、メチル、エチル、プロピル、t−ブチルなどのような純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基だけでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシルなどのような当技術分野で公知のさらなる置換基を有するアルキル置換基も包含されるものとする。したがって、「アルキル基」は、エーテル基、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、スルホアルキルなどを包含する。一方、「アルキル部分」という表現は、メチル、エチル、プロピル、t−ブチルなどのような純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基だけを包含するように限定される。
【0019】
本明細書中で使用する場合、「層」とは、たとえば溶液コーティング法または気相堆積法を用いて前駆体化合物から基板上に形成しうる任意の層を意味する。「層」という用語は、「バリヤー層」、「誘電体層」、「絶縁層」、および「導電層」のような半導体産業に特有な層を包含するものとする(「層」という用語は、半導体産業でよく使用される「膜」という用語と同義である)。「層」という用語はまた、ガラス上のコーティングのような半導体技術以外の技術で見いだされる層をも包含するものとする。本明細書中で使用される「誘電体層」は、シアノ官能性ポリマー(好ましくはスチレン系ポリマー)を含有する比較的高い誘電率を有する層(または膜)を意味する。
【0020】
本発明の他の特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。本開示の原理に関する上記の概要は、例示されたそれぞれの実施形態について説明しようとするものではなく、本開示のすべての実施態様について説明しようとするものでもない。以下の詳細な説明により、本明細書中に開示されている原理を利用する特定の好ましい実施形態についてより具体的に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、光電子デバイスをはじめとする電子デバイスに使用するのに好適なポリマーに関する。より特定的には、本発明は、比較的高い誘電率(好ましくは少なくとも約3.5、より好ましくは少なくとも約4.0、さらにより好ましくは少なくとも約4.5)を有するシアノ官能性ポリマーを提供する。特定の好ましい実施形態では、ポリマーは、シアノ官能性基およびスチレン系単位を含む。スチレン系単位はシアノ官能性基を含んでいてもよくかつ/またはシアノ官能性基は他のインター重合単位の一部分であってもよい。
【0022】
本明細書に記載のポリマーは、標準的化学技術(たとえば、対応するモノマーからの遊離基重合または既存のポリマーの化学修飾)により調製可能であり、電子デバイス(たとえば、電界効果薄膜トランジスター、コンデンサー、内蔵コンデンサー、またはエレクトロルミネセンスランプ)中の誘電体層として、または集積回路の素子(たとえば、インバーターまたは発振器)として使用されるデバイス中の誘電体層として使用可能である。本発明に係るデバイスにおいて、本明細書に記載のシアノ官能性ポリマー(他の有機ポリマーの有無を問わず)の種々の組合せ(たとえば混合物)を使用することができる。
【0023】
電子デバイスとしては、トランジスター、トランジスターアレイ、ダイオード、コンデンサー、内蔵コンデンサー、および回路の形成に使用されるレジスターのような素子が挙げられる。このほかに、電子デバイスとしては、エレクトロニクス機能を発揮する回路のアレイが挙げられる。これらのアレイまたは集積回路の例は、増幅器、受信機、送信機、インバーター、および発振器である。
【0024】
これらのデバイスおよびアレイの用途としては、無線周波数識別デバイス(RFID)、スマートカード、ランプ、ディスプレイなどが挙げられる。本発明に係るデバイスには、カメラフラッシュコンデンサー、エネルギー貯蔵コンデンサーなども包含されうる。本発明は、デバイスのタイプによって限定されるものではない。
【0025】
とくに好ましいタイプのデバイスとしては、薄膜トランジスター、コンデンサー、内蔵コンデンサーおよびエレクトロルミネセンスランプが挙げられる。薄膜トランジスター(TFT)では、本発明に係るポリマー層は、典型的には、導電性ゲート電極層と半導体層との間または代替的に導電性ゲート電極層と第2の導電性ソース/ドレイン層との間に挟置されるであろう。コンデンサーでは、本発明に係る高分子層は、典型的には、2層の導電層間に挟置されるであろう。
【0026】
内蔵コンデンサーとは、多層プリント回路板、集積回路パッケージ、またはフレキシブル回路の素子として内蔵または集積されるコンデンサーである。単一用途で複数の内蔵コンデンサーを使用することができる。内蔵コンデンサーは、第1の自立性導電性基板と、第2の自立性導電性基板と、第1および第2の基板間の電気絶縁性層(2つの基板に固着する)と、を含みうる。電気絶縁性層は自立性シートであってもよいし、または各導電性基板の一方の主要表面上に電気絶縁性材料をコーティングしてからコーテッド表面を向かい合わせにして導電性基板をラミネート一体化させることにより形成してもよい。他の選択肢として、自立性電気絶縁性層の両側に導電層を形成することにより(たとえば、スパッタリングにより)コンデンサーを作製してもよい。このほかの方法では、導電性基板上に電気絶縁性層をコーティングしてからスパッタリングや蒸発などにより電気絶縁性層の上に導電層をコーティングしてもよい。
【0027】
本発明に係る高分子層は、コーティング後に急速にキュアーされるので、いくつかの他のポリマーよりも優れた利点を提供しうる。したがって、ポリマー層は、後続の処理時の損傷に対してより耐性がある。この耐損傷性は、生成物収率および印加電圧に伴う破壊を回避する能力を増大させるのに寄与する。
【0028】
内蔵コンデンサーデバイスでは、本発明に係る高分子層は、2つの基板に固着する電気絶縁性層であろう。それは、典型的には、約2〜約25μmの厚さを有する。
【0029】
内蔵コンデンサーの基板は、単一の層または複数の層(たとえばラミネート)を含みうる。多層導電性基板の一例は、ポリイミド上の銅である。第1および第2の基板は、同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
「自立性導電性基板」という用語は、支持用担体を用いることなくコーティングおよび取扱いが可能になるように構造的完全性を有する導電性基板を意味する。導電性基板は可撓性であることが好ましいが;剛性導電性基板も使用することも可能である。
【0031】
導電性基板の厚さは、具体的用途に依存する。典型的には、プリント配線板の場合、自立性導電性基板は、約0.5〜約3ミル(約10〜約80μm)の範囲内の厚さを有する。典型的には、ICパッケージング用途の場合、自立性導電性基板は、約0.15〜約1.5ミル(約3〜約38μm)の範囲内の厚さを有する。
【0032】
好ましい基板は銅である。代表的な銅としては、独国ニュルンベルクのカール・シュレンク・アーゲー(Carl Schlenk,AG,Nurnberg,Germany)またはコネチカット州ウォーターベリーのオーリン(Olin Corporation,Waterbury,CT)から入手可能な銅箔が挙げられる。
【0033】
導電性材料を電気絶縁性層上にスパッタリングする場合、それは、典型的には、約10nm〜約1500nmの厚さを有する。スパッタリング法を用いる場合、銅は、通常、導電性材料として使用される。
【0034】
内蔵コンデンサーは、たとえば、回路板およびチップパッケージで使用しうる。内蔵コンデンサーを備えた回路板およびチップパッケージの種々の作製方法が当技術分野で公知である。
【0035】
エレクトロルミネセンスランプ(EL)は、電流を流したときに光を発生する電子デバイスである。そのようなデバイスでは、本発明に係る高分子層は、発光層と一方または両方の電極との間に挟置されるであろう。
【0036】
本発明に係る材料を用いて作製されるトランジスター(たとえばペンタセン系トランジスター)は、好ましくは約0.5cm/V・s超、より好ましくは約1.5cm/V・s超、さらにより好ましくは約3.0cm/V・s超の電荷キャリヤー移動度を有する。これらのトランジスターは、好ましくは、許容範囲内(たとえば、+15ボルト(v)と−15Vとの間のスレッショルド電圧、少なくとも10のオン/オフ比、および約2.5V/decade未満のサブスレッショルドスロープ)の妥当なデバイスパラメーターを有する。
【0037】
これに加えて、本発明に係る材料はまた、一般的には、オリゴチオフェン類、アセン類、ペリレン類、フラーレン類、フタロシアニン類などをはじめとする他のタイプの有機半導体と併用するのに有用である。本発明に係る材料はまた、一般的には、アモルファスなSi、CdS、CdSeなどのような無機半導体および当技術分野で周知の他の半導体と併用するのに有用である。
【0038】
有機高分子誘電体はまた、高分子半導体、たとえば、限定されるものではないが、出願人の譲受人の同時係属出願(2001年9月27日出願および2003年5月22日公開の米国特許公開US2003−0097010−A1号明細書、2001年9月27日出願の米国特許出願第09/966,961号明細書、ならびに2002年9月27日出願および2003年5月29日公開の米国特許公開US2003−0100779−A1号明細書)に論述されているような高分子半導体を用いる有機薄膜トランジスターを作製するのに有用でありうる。
【0039】
本発明に係る材料を用いて作製されるコンデンサーの特定の実施形態は、好ましくは、高い降伏電圧(たとえば、2000オングストローム(Å)の層厚さで50V超)および/または周波数の関数として比較的一定した誘電損失を呈する。
【0040】
特定の実施形態では、本発明に係る比較的高い誘電率のポリマーは、次の特性:溶液からのコーティング性、架橋性、光パターニング性、高い熱安定性(たとえば、約250℃の温度まで安定)、低い加工温度(たとえば、約150℃未満、好ましくは約100℃未満)、および可撓性基材との適合性のうちの1つ以上を有する。
【0041】
架橋可能および/または光パターニング可能なポリマーは、とくに望ましい。この理由は、それらが製造方法に柔軟性を提供し、溶液加工されたデバイス層に容易に集積され、高速ロールツーロール処理を可能にすることにある。放射線(ごく一般的にはUV線)を照射したときに架橋網状構造を形成するように誘導することのできる1つ以上の架橋性(すなわち架橋可能)基を含む場合、ポリマーは光パターニング可能である。照射部分(ポリマーの架橋部分)は、特定の溶媒に不溶になり、ポリマーの非照射部分は、現像溶媒を用いて洗浄除去することができる。これは、ネガ型光パターニング性ポリマーの例である。特定の溶媒に最初は不溶であるが照射時にUV照射領域が可溶になるポリマーを光パターニングすることも可能である。これは、ポジ型光パターニング性ポリマーの例である。
【0042】
光パターンニングは、当業者に周知のさまざまな方法により実施可能である。典型的には、光パターンニングは、紫外光およびフォトマスクを用いて行われる。光パターンニングについては、1997年4月24日公開の国際出願国際公開第97/15173号パンフレットにさらに記載されている。マスクもパターンも用いずにデバイスの全表面上に一様に光パターニング性ポリマーをコーティングすることが望ましいこともある。次に、パターン形成を行ってまたは行わずに、先に記載したようにポリマー層を架橋することができる。
【0043】
本発明に係るポリマーは、好ましくは、溶液コーティング法を用いて堆積される。そのような方法の例としては、ナイフコーティング、スピンコーティング、ドロップコーティング、ディップコーティング、インクジェッティング、輪転グラビアコーティング、スプレーコーティング、およびロールコーティングが挙げられる。溶液コーティングで本発明に係るポリマーと併用するのに好適な溶媒には、ポリマーを溶解したときに上記の方法のいずれかによりコーティングするのに適した低粘度溶液を形成する任意の溶媒または溶媒混合物が包含される。有用な溶媒の例としては、炭化水素、塩素系溶媒、およびケトン系溶媒が挙げられる。より特定的には、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、トルエン、およびクロロホルムのような溶媒が有用である。これに加えて、本発明に係るポリマーは転写印刷が可能である。
【0044】
TFTの場合、本発明に係る高分子誘電体層は、約5000オングストローム(Å)未満、より好ましくは約3000Å未満、最も好ましくは約2000Å未満の厚さを有する。本発明に係る高分子誘電体層は、好ましくは少なくとも約500Å、より好ましくは少なくとも約1000Åの厚さを有する。厚さは、エリプソメトリーやプロフィルメトリーなどの公知の方法により決定しうる。プリント回路板およびICパッケージの用途を含めて、内蔵コンデンサーの場合、誘電体層の厚さは、TFTに対して先に記載した厚さを包含しうるが、典型的には、約2ミクロン〜約25ミクロン(すなわち、マイクロメーターすなわちμm)またはそれ以上であろう。
【0045】
CN含有ポリマーおよび調製方法
本発明に係るポリマーは、シアノ官能性基とシアノ官能性基を含んでいてもよいスチレン系単位とを含む。本発明に係る好ましいポリマーは、式:
【化3】


で示される反復単位を含む。上記式中、各Rは、独立して、H、アリール基、Cl、Br、I、または架橋性基(すなわち、1つ以上の架橋性基)を含む有機基であり;各Rは、独立して、H、アリール基、またはRであり;各Rは、独立して、Hまたはメチルであり;各Rは、芳香環上の置換基であり、独立して、アルキル基、ハロゲン、またはRであり;そしてn=0〜3であり;さらに各Rは、少なくとも1つのCN基を含み(特定の実施形態では、窒素原子および酸素原子を含む)かつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり;ただし、ポリマー中の少なくとも1つの反復単位は、Rを含む。2つの反復単位が同一になって(たとえば、RおよびRが水素でありかつRがフェニル−(R基と同一である場合)ホモポリマーを形成することも可能である。本発明に係るポリマーは、上記の反復単位を形成する1つ以上のモノマーと共重合(たとえば、イオン共重合、遊離基共重合)しうる他のモノマー(たとえばスチレン)を含みうる。
【0046】
特定の実施形態では、ポリマーは架橋されている。架橋ポリマーは、典型的には、それらの非架橋類似体よりも高い降伏電界強度に耐える。また、典型的には、架橋ポリマーの誘電率と非架橋ポリマーの誘電率との間には差異がある。
【0047】
特定の実施形態では、ポリマーは、実質的にフッ素化されていない。本明細書中では、「実質的にフッ素化されていない」とは、高分子層中の炭素の約5%未満(より好ましくは約1%未満、さらにより好ましくは0%)がフッ素置換基を有することを意味する。したがって、特定のポリマーは、少量のフッ素を有しうる(たとえば、R中に)。
【0048】
特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、少なくとも1つの架橋性基を含む。架橋性基の例としては、たとえば、(メタ)アクリレート類(すなわち、アクリレート類およびメタクリレート類)、アミン類、ヒドロキシル類、チオール類、オキシラン類、アジリジン類、クロロシラン類(たとえば、トリアルコキシシラン類)、ビニル類、およびアルコキシシラン類(たとえば、トリアルコキシシラン類)が挙げられる。好ましくは、架橋性基はアクリレート類である。種々の架橋性基の組合せがいずれか1つのポリマー内に存在しうる。架橋性基は、典型的には、約20炭素原子までのサイズをとりうる有機基中に組み込まれる。これに加えて、架橋性基は、O、N、S、P、およびSiのようなヘテロ原子を含有しうる。
【0049】
特定の実施形態では、RおよびRは、18炭素原子までのサイズを含みうるアリール基を含む。好ましくは、RおよびRのアリール基は、(C5〜C8)アリール基であり、その例としては、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、またはそれらのアルキル置換誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。RおよびRの好ましいアリール基としては、フェニルが挙げられる。これらの基は、1〜3個のR基で置換可能である。
【0050】
特定の実施形態では、Rは、(C1〜C20)アルキル基、より好ましくは(C1〜C12)アルキル基、さらにより好ましくは(C1〜C8)アルキル基、さらにより好ましくは(C1〜C4)アルキル基でありうる。その例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の他の実施形態では、Rは、ハロゲン、好ましくは、Cl、Br、またはIでありうる。特定の他の実施形態では、RはRでありうるが、この場合、Rは、少なくとも1つのCN基を有しかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する(C2〜C12)有機基である。
【0051】
特定の実施形態では、各Rは、少なくとも1つのCN基を含みかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する(C2〜C20)有機基、より好ましくは(C2〜C12)有機基である。特定の実施形態では、Rは、1つ以上の芳香族基を含む。好ましくは、分子量は、CN基1つあたり約30〜約150である。RのCN含有基の例としては、N−メチル−(2−シアノエチル)カルバミド、N−ビス(2−シアノエチル)カルバミド、p−(2−シアノエチル)フェニル、p−(2,2−ジシアノプロピル)フェニル、p−(1,2−ジシアノプロピオニトリロ)フェニル、N−メチル−N−(2−シアノエチル)ベンジルアミノ、ビス−N−(2−シアノエチル)ベンジルアミノ、シアノメチル、2,2’−ジシアノプロピル、1,2,2’−トリシアノエチル、およびN,N’−ビス(2−シアノエチル)アミノエチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
特定の実施形態では、Rは、独立して、H、(C5〜C8)アリール基、またはRであり、そしてRは、少なくとも1つのCN基を有しかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する(C2〜C20)有機基、より好ましくは(C2〜C12)有機基である。
【0053】
好ましいポリマーは、スチレン系インター重合単位を含む。特定の実施形態では、そのようなスチレン系単位(場合によりシアノ官能性)は、ポリマーの膜の表面に移動することにより相分離ポリマーを形成することができる。次に、所望により、ポリマーを架橋するができる。そのような相分離ポリマーは、上側表面改質層(以下で論述する)を用いることなく使用することができる。ポリマー膜の表面へのスチレン系単位のそのような移動は、アニーリング処理時に生じうる。アニーリング条件は、アニーリング条件に付されるポリマーまたは他の材料の劣化や損傷を引き起こすことなくこの移動を生じるように選択される。当業者であれば過度の実験を行うことなく、そのようなアニーリング条件を決定することができる。好ましくは、アニーリングは、少なくとも120℃の温度で少なくとも10分間にわたり行われる。好ましくは、アニーリングは、160℃以下の温度で60分間以下の時間にわたり行われる。
【0054】
本発明に係るポリマーの設計では、比較的高い誘電率を有するポリマーが得られると同時に、形成されるデバイスの比較的高い移動度が保持されるように、いくつかの方法を使用することができる。典型的には、これらのポリマーは、対応するモノマーからの遊離基重合または既存のポリマーの化学修飾のような標準的化学技術により調製することができる。これらの方法は、これらの望ましい特性を得るための実質的に異なる材料を提供する。
【0055】
一方法では、架橋を目的としてメタクリレート官能基を付加することにより、かつ無置換ポリ(スチレン)(好ましくは約1000〜約500,000の数平均分子量を有する)と比較して誘電率(ポリマー系列1および2)が増大されるようにCN官能基を結合させることにより、スチレン無水マレイン酸(SMA)コポリマーをスキーム1に示されるように修飾することができる。
【化4】

スキーム1
【0056】
したがって、本発明は、式:
【化5】


で示される反復単位を含むポリマーを提供する。上記式中、Rは、CHまたはCHCHCNであり;各Rは、独立して、アルキル基、ハロゲン、または少なくとも1つのCN基を含みかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり;そしてn=0〜3である。
【0057】
他の方法は、良好な有機半導体膜を成長させるための基板として不適当である高誘電率を有するポリマーをベースにしたものである。たとえば、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアセテートなどをはじめとする多くのエステル含有材料およびアミド含有材料は、表面エネルギー、粗さ、および/または露出した官能基もしくは化学基のような因子が原因で、ペンタセンの成長に不十分な基板を形成する。しかしながら、有機半導体堆積の前にアニーリング下で自由表面に移動させることのできるポリスチレンのブロックまたはグラフトをこのポリマーに導入すると、誘電率を減少させることなくデバイス性能を改善することができる。これらは、たとえば、リビング重合法を用いて逐次重合することにより、または官能性マクロマー(たとえばオリゴマー)との共重合を介してグラフトコポリマーを形成することにより、調製可能である。
【0058】
第3の方法では、有機半導体膜を成長させるのに本質的により好適であるポリマーを調製する。たとえば、エステル基およびアミド基を除去し、誘電率を増大させるためのシアノ基および半導体膜の成長および周波数非依存性を改善するための芳香族基を含有するモノマーを調製することにより、好適なポリマーを直接生成させることができる。続いて、架橋性のような追加の官能性を提供すべく、共重合を介して他の基を導入することができる。
【0059】
これらの方法のいずれかにより、さまざまな材料を生成させることができる。とくに有用であるポリマーの例は、ビス(2−シアノエチル)アクリルアミドとポリスチレン(PS)マクロマー(たとえばオリゴマー)とのコポリマーである(ポリマー3)。
【化6】


このポリマーは、低い多分散度を有するポリスチレンを生成させるべくスチレンをn−ブチルリチウムにアニオン付加させることにより生成させたアクリル化ポリスチレンマクロマーの共重合により生成される。次に、米国特許第4,554,324号明細書(フスマン(Husman))に記載されている手順に従って、リビングポリマーをエチレンオキシドでクエンチングし、2−イソシアナトエチルメタクリレートと反応させることにより、アクリル化ポリスチレンマクロマーを形成する。次に、アクリル化ポリスチレンマクロマーをビス(2−シアノエチル)アクリルアミド(シュラー(Schuller)ら、有機化学誌(J.Org.Chem.)、第23号、p.1047(1958年)の手順に従って調製した)と共重合させる。
【0060】
エステル結合も遊離ヒドロキシル基も含まれることなくシアノ官能性スチレンを含む他の材料の例は、4−ビニルベンジルシアニド(ポリマー4)、4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレン(ポリマー5)、4−(1,1’,2−トリシアノエチル)スチレン(ポリマー6)、および/または4−(ビス−シアノエチル)アミノメチル)スチレン(ポリマー7)の重合から誘導されるポリマー(たとえば、コポリマーまたはホモポリマー)である。他のそのような材料としては、1:1の比で4−ビニルベンジルシアニドと4−ビニルベンジルアクリレートとを共重合させることにより生成されるコポリマー(コポリマー8)、または他のモノマーの有無を問わずそのようなモノマーの他のコポリマーが挙げられる。
【化7】

【0061】
電子デバイスに使用するのに好適なポリマーは、好ましくは、スチレン系部分(好ましくはシアノ官能性スチレン系部分)と、ポリマー全体に比較的高い誘電率を付与する部分と、を含む。それらの部分は、同一であっても異なっていてもよい。したがって、ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーでありうる。コポリマーは、2種以上の異なるモノマーから調製されるポリマーであり、ターポリマー、テトラポリマーなどを包含する。ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、さらには任意のさまざまな他の構造配列を形成するように、モノマーを連結させることができる。好ましいポリマーは、スチレン系ブロック(好ましくはシアノ官能性スチレン系ブロック)と、比較的高い誘電率を有するブロックと、を有するブロックコポリマーである。
【0062】
スチレン系部分(すなわち、スチレン系インター重合単位、好ましくはシアノ官能性スチレン系単位)を含むコポリマーは、これらのポリマーとしてとくに望ましく、ポリマーの膜の表面に移動することにより相分離ポリマーを形成することができる。そのような相分離ポリマーは、上側表面改質層(以下で論述する)を用いることなく使用することができる。ポリマー膜の表面へのスチレン系単位のそのような移動は、アニーリング処理時に生じうる。
【0063】
さまざまなシアノ基連結部を用いて、多くの他の類似の構造体を調製することも可能である。これらの材料の合成については、実施例の節で詳述する。
【0064】
所望により、たとえば、放射線(たとえば、紫外(UV)線、eビーム線、ガンマ線)または熱エネルギーを用いて、本発明のポリマーを架橋することができる。所望により、化学架橋剤を使用することもできる。例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、グリセリルジ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールトリアクリレート、および1,3,5−トリ(2−メタクリルオキシエチル−s−トリアジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。少量のジエポキシドを添加することにより、架橋を引き起こすこともできる。他の選択肢として、ジオール類、トリオール類などを添加することにより、ペンダントエポキシド官能基を有するポリマーを化学架橋させることも可能である。
【0065】
適切な反応性希釈剤を用いて、固形分100%の配合物として本発明に係るポリマーを配合することが可能である。この方法に有用な反応性希釈剤には、架橋剤として先に挙げたものが包含され、さらにまた、ポリマーを溶解することが可能でありかつ架橋反応時にポリマーと重合することが可能である任意の低粘度モノマーが包含されるが、これらに限定されるものではない。反応性希釈剤の例としては、エチレン性不飽和モノマー、たとえば、アクリル酸およびアクリレートエステル類、具体的には、メチルメタクリレート、エチルアクリレート(ethyl arcylate)、2−エチルヘキシルアクリレート、およびシクロヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0066】
所望により、架橋を増強するために本発明に係るポリマーを光開始剤と混合することが可能である。遊離基重合を開始させる有用な光開始剤については、たとえば、「光化学(Photochemistry)」、カルバート(Calvert)およびピッツ(Pitts)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)刊、(1966年)の第II章に記載されている。これらの光開始剤の例としては、アシロイン(acryloin)およびその誘導体、たとえば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、および(アルファ)−メチルベンゾイン;ジケトン類、たとえば、ベンジルおよびジアセチルなど;有機スルフィド類、たとえば、ジフェニルモノスルフィド、ジフェニルジスルフィド、デシルフェニルスルフィド、およびテトラメチルチウラムモノスルフィド;S−アシルチオカルバメート類、たとえば、S−ベンゾイル−N,N−ジメチルジチオカルバメート;ならびにフェノン類、たとえば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、および誘導体が挙げられる。
【0067】
他の添加剤を本発明に係るポリマーと併用することができる。これらには、たとえば、充填剤、希釈剤(たとえばモノアクリレート)、レオロジー増粘剤、着色剤、界面活性剤、酸化防止剤、強靭化剤などが包含される。
【0068】
特定の実施形態では、好ましくは、キュア時にポリマー複合体になるディスパージョンを形成すべく本発明のCN含有ポリマーを充填剤とブレンドする。ベースポリマーが高誘電率を有する場合および高誘電率を有する材料で充填剤が構成される場合、これらのポリマー複合体は、高誘電率を有しうる。有機薄膜トランジスター(OTFT)を作製するために、超微細セラミック粒子が組み込まれた誘電体が使用されており、これについては米国特許第6,586,791号明細書(リー(Lee)ら)で論じられている。高誘電率を有する他の有用な充填剤としては、強誘電性セラミック充填剤、たとえば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ジルコン酸鉛、または米国特許第6,159,611号明細書(リー(Lee)ら)に開示されているような高誘電率を有する多くの他の充填剤が挙げられる。
【0069】
充填された誘電体材料もまた、コンデンサーの電気絶縁性材料として使用することが可能である。内蔵コンデンサー用の代表的な誘電性または絶縁性の粒子としては、ペロブスカイト材料、たとえば、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、チタンジルコン酸鉛(PZT)、およびそれらの混合物(PZTまたはチタン酸バリウムと、カルシウム、ビスマス、鉄、ランタン、またはストロンチウムの添加剤との混合物を包含する)が挙げられる。市販のチタン酸バリウムは、商品名「AKBT」としてニューヨーク州のジェイシーアイ・ユーエスエイ(JCI USA,NY)から入手可能である。粒子の誘電率は、約100〜約1000の範囲内である。
【0070】
粒子は、任意の形状をとることが可能であり、規則的形状であっても不規則的形状であってもよい。代表的な形状としては、スフェア、プレートレット、キューブ、ニードル、オブレート、スフェロイド、ピラミッド、プリズム、フレーク、ロッド、プレート、ファイバー、チップ、ウィスカー、およびそれらの混合が挙げられる。粒子分布は、無秩序なものであってもよいし、秩序化されたものであってもよい。内蔵コンデンサーの場合、粒径(すなわち、粒子の直径)は、典型的には約0.16〜約11μm、好ましくは約0.05〜約0.3μm、より好ましくは約0.05〜約0.2μmの範囲内である。好ましくは、粒子は、電気絶縁性層の厚さ内で鉛直線上に約10個の粒子をスタッキングすることが可能なサイズを有する。
【0071】
内蔵コンデンサーの場合、ポリマー中の粒子の充填率は、電気絶縁性または電気伝導性の層の全体積を基準にして、典型的には20〜60体積%、好ましくは30〜55体積%、より好ましくは40〜50体積%である。
【0072】
ポリマー系との相溶性をもたせるべく、充填剤にカップリング剤(たとえばシランカップリング剤)をコーティングするかまたはそれらを反応させることが有用なこともある。他の好適な充填剤としては、金属酸化物(たとえば、SiO、A1、およびTiO)、窒化物(たとえば、Si)など、さらには米国特許第5,126,915号明細書(ペピン(Pepin)ら)、同第5,739,193号明細書(ウォルピタ(Walpita)ら)、および同第5,358,775号明細書(ホーン,III(Horn,III))に開示されているものが挙げられる。好ましいそのような充填された複合体は、少なくとも25、より好ましくは少なくとも30、さらにより好ましくは少なくとも40の誘電率を有しうる。
【0073】
薄膜トランジスター
図1に示されるように、本発明は、基板12と、基材上に配設されたゲート電極14と、ゲート電極上に配設された本発明に係る誘電体材料16と、ゲート誘電体上に配設されたオプションの表面改質膜18と、表面改質膜に隣接する半導体層20と、半導体層に隣接するソース電極22およびドレイン電極24と、を含む薄膜トランジスター(TFT)10を提供する。図1は、1つの実現可能な薄膜トランジスター構成を示している。本発明に係る材料を用いて任意の他の公知の薄膜トランジスター構成が実現可能である。たとえば、半導体層をソース電極およびドレイン電極の上に配置した状態で、ソース電極およびドレイン電極を誘電体材料に隣接させてもよいし、またはソース電極およびドレイン電極と誘電体との間に半導体層を挟置してもよい。
【0074】
内蔵コンデンサー
図2に示されるように、本発明は、2つの導電性基板214および216を2つの基板間に挟置された本発明に係る誘電体材料218と共に含む内蔵コンデンサー213を提供する。コンデンサー213は、ファイバーガラス/エポキシ複合体212のような材料中に内蔵される。能動電子デバイス220は、内蔵コンデンサー213上に位置し、導電性基板214および216に対してそれぞれ電気接続部222aおよび222bを有する。内蔵コンデンサーは、高速電子デバイスで低インピーダンスパワー分配のために使用される。内蔵コンデンサーのさらなる説明は、米国特許第6,274,224号明細書(オブライアン(O’Bryan)ら)に見いだすことができる。
【0075】
エレクトロルミネセンスランプ
図3に示されるように、本発明は、絶縁性透明膜(たとえばポリエチレンテレフタレート)312の上側表面上に形成された透明導電性膜(たとえばインジウムスズ酸化物)314を含むエレクトロルミネセンスランプ310を提供する。発光層315は、たとえば、スクリーン印刷により透明導電性膜314上にパターン印刷される。発光層315の組成物は、ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリジノンのような有機溶媒中にシアノエチルプルランまたはビニリデンフルオリド系ゴムのような高誘電体樹脂を溶解させてから硫化亜鉛のような発光体をその中に拡散させることにより作製される。本発明に係る誘電体材料316は、発光層315上に形成される。バック表面電極322は、カーボンレジン系ペーストまたは銀レジン系ペーストを用いて誘電体層316上に形成される。絶縁性コート層326は、たとえば絶縁性ペーストを用いて、背面電極層322上に形成される。電極314aおよび322aは、それぞれ、図示されるように導電層314および322上に形成される。これらのデバイスのさらなる説明は、たとえば米国特許第5,844,362号明細書(田邉ら)に見いだしうる。
【0076】
表面改質膜
本発明のいくつかの実施形態では、本発明に係るポリマー誘電体を用いて作製されるデバイス(たとえば有機薄膜トランジスター)の性能を改善するために、表面改質膜(すなわち表面処理)が使用される。たとえば、そのような表面処理を施すと、最適には、トランジスター移動度を3倍以上に増大させることができるので、これらのデバイスは、標準的な金属酸化物誘電体層で作製されたものに匹敵するようになる。この増大された移動度のおかげで、本発明に係る電子デバイスはまた、より複雑な回路で使用することも可能である。
【0077】
そのような表面処理は、誘電体層の少なくとも一部分上に配設された高分子表面改質膜の形態をとることができる。典型的なデバイスは、さらに、有機半導体層を含みうるが、この場合、高分子表面改質膜は、誘電体層と有機半導体層との間に挟置される。
【0078】
表面改質膜に好適な材料の例は、出願人の譲受人の同時係属出願(インター重合シロキサン単位を含有するポリマーが開示されている2001年11月5日出願および2003年6月5日公開の米国特許公開US2003−0102472−A1号明細書、ならびにスチレン系インター重合単位を含有するポリマーが開示されている2001年11月5日出願および2003年6月5日公開の米国特許公開US2003−0102741−A1号明細書)に開示されている。他の表面改質材料の例としては、エイチ・クラウク(H.Klauk)ら著、応用物理誌(J.Applied Physics)、第92巻(第9号)、p.5259−5263(2002年)に記載されているようなオクタデシルトリクロロシランが挙げられる。
【0079】
特定の実施形態では、スチレン、α−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、もしくは4−メチルスチレンのホモポリマー;スチレンと(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートとのコポリマー;シリル含有末端基を有するポリスチレン;またはスチレン、シリル含有コモノマー、α−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、および4−メチルスチレンから選択される少なくとも2種の異なるモノマーのコポリマー;のようなスチレン含有表面改質ポリマーが使用される。
【0080】
本発明に係る高分子表面改質膜は、好ましくは約400オングストローム(Å)未満、より好ましくは約200Å未満、最も好ましくは約100Å未満の厚さを有する。本発明に係る高分子表面改質膜は、好ましくは少なくとも約5Å、より好ましくは少なくとも約10Åの厚さを有する。厚さは、エリプソメトリーなどの公知の方法により決定しうる。
【0081】
基板
基板は、たとえば、製造時、試験時、保存時、使用時、またはそれらの任意の組合せにおいて、デバイスを支持するために使用しうる。他の選択肢として、誘電体層は、他の基板が必要とされないように、得られるデバイスの使用目的に十分な支持体を提供しうる。特定の実施形態では、種々の実施形態の試験またはスクリーニングのために1つの基板を選択することが可能であり、一方、市販の実施形態に対しては他の基板を選択する。他の実施形態では、一時的な目的で支持体が望まれる場合のように、支持体を引離し可能に基板に接着させたり、または機械的に固定したりすることが可能である。たとえば、取外し可能な剛性ガラス支持体に可撓性高分子基板を接着されることが可能である。いくつかの実施形態では、基板は、デバイスに必要な電気的機能をなんら提供しない。このタイプの基板は、「非関与基板」と呼ばれる。
【0082】
有用な基板材料には、有機および/または無機の材料が包含されうる。たとえば、基板としては、無機ガラス、セラミック箔、高分子材料、充填高分子材料、コーテッドもしくは非コーテッド金属箔、アクリル、エポキシ、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリケトン、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレンカルボニル−1,4−フェニレン)(ポリ(エーテルエーテルケトン)すなわちPEEKと呼ばれることもある)、ポリノルボルネン、ポリフェニレンオキシド、ポリ(エチレンナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、および繊維強化プラスチック(FRP)が挙げられうる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態では可撓性基板が使用される。これによりロール加工(連続方式をとりうる)が可能になるので、いくつかのフラット基板および/または剛性基板よりも優れた規模の経済性および製造の経済性が提供されうる。好ましく選択された可撓性基板は、歪みや破壊を生じることなく直径約50センチメートル(cm)未満のシリンダーの周囲にラッピングすることが可能である。より好ましく選択された基板は、基板に歪みや破壊を生じることなく直径約25cm未満のシリンダーの周囲にラッピングすることが可能である。いくつかの実施形態では、最も好ましく選択された基板は、基板に歪みや破壊を生じることなく直径約10cm未満、さらには直径約5cm未満のシリンダーの周囲にラッピングすることが可能である。特定のシリンダーの周囲に本発明に係る可撓性基板をラッピングするのに使用される力は、典型的には、素手で行える程度に、すなわち、レバー、機械、液圧などの助けが要らない程度に、小さい。好ましい可撓性基板は、それ自体に巻き取ることが可能である。
【0084】
半導体
半導体層に有用な材料には、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、および置換ペンタセンのようなアセンを含む有機半導体が包含される。本発明で有機半導体として有用な置換ペンタセン化合物は、電子供与性置換基(たとえば、アルキル、アルコキシ、またはチオアルコキシ)、ハロゲン置換基、およびそれらの組合せよりなる群から選択されて少なくとも1つの置換基を含む。有用な置換ペンタセンとしては、2,9−ジアルキルペンタセン、2,9−ジフルオロペンタセン、および2,10−ジアルキルペンタセン(ここで、アルキル基は1〜12個の炭素を有する);2,10−ジアルコキシペンタセン;ならびに1,4,8,11−テトラアルコキシペンタセンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのような置換ペンタセンは、出願人の譲受人の同時係属出願(2001年9月26日出願および2003年5月22日公開の米国特許公開US2003−0097010−A1号明細書および2001年9月26日出願の米国特許出願第09/966,961号明細書)に教示されている。
【0085】
他の有用な半導体の例としては、ペリレン、フラーレン、フタロシアニン、オリゴチオフェン、およびそれらの置換誘導体が挙げられる。特定の有機半導体化合物としては、セキシチオフェン、α,ω−ジヘキシルセキシチオフェン、キンクエチオフェン、クアテルチオフェン、α,ω−ジヘキシルクアテルチオフェン、α,ω−ジヘキシルキンクエチオフェン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ビス(ジチエノチオフェン)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、アントラジチオフェン、ジヘキシルアントラジチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(チエニレンビニレン)、ポリ(フェニレンビニレン)、C60、銅(II)ヘキサデカフルオロフタロシアニン、およびN,N’ビス(ペンタデカフルオロヘプチルメチル)ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドが挙げられる。
【0086】
有機半導体層は、たとえば、気相堆積法、溶液堆積法、スピンコーティング法、および印刷法のような任意の有用な手段により提供することができる。有機半導体層は、アパーチャーマスクを介して堆積させるにより、パターニングすることができる。この目的に有用なアパーチャーマスクについては、出願人の譲受人の同時係属出願(いずれも2002年2月14日出願およびいずれも2003年8月14日公開の米国特許公開US2003−0151118−A1号明細書および米国特許公開US2003−0150384−A1号明細書)に記載されている。
【0087】
本発明に係るデバイスに無機半導体を含むこともまた本発明の範囲内である。そのような半導体の例としては、アモルファスシリコンおよび無機ナノ粒子系半導体(たとえば、硫化カドミウムまたはセレン化カドミウム)が挙げられる。
【0088】
ゲート電極
ゲート電極は、任意の有用な導電性材料でありうる。たとえば、ゲート電極は、ドープドシリコンまたは金属(たとえば、アルミニウム、クロム、銅、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、タンタル、もしくはチタン)を含みうる。同様に、ポリアニリンまたはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)のような導電性ポリマーを使用することもできる。このほか、これらの材料の合金、組合せ、および多層が有用なこともある。
【0089】
ソース電極およびドレイン電極
ソース電極およびドレイン電極は、本発明に係る誘電体材料(たとえばゲート誘電体)によりゲート電極から分離されるが、有機半導体層は、ソース電極およびドレイン電極の上または下に存在しうる。ソース電極およびドレイン電極は、任意の有用な導電性材料でありうる。有用な材料には、ゲート電極に対して先に記載したものが包含される。たとえば、有用な材料としては、アルミニウム、バリウム、カルシウム、クロム、銅、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、ポリアニリン、PEDOT:PSS、他の導電性ポリマー、それらの合金、それらの組合せ、およびそれらの多層が挙げられる。
【0090】
薄膜電極(たとえば、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極)は、物理気相堆積(たとえば、熱蒸発、スパッタリング)、メッキ、またはインクジェット印刷のような任意の有用な手段により提供することができる。これらの電極のパターニングは、シャドウマスキング、エッチング、アディティブフォトリソグラフィー、サブトラクティブフォトリソグラフィー、印刷、マイクロコンタクト印刷、転写印刷、およびパターンコーティングのような公知の方法により達成することができる。
【0091】
本発明の目的および利点について以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例に記載の特定の材料およびその量ならびに他の条件および細目は、本発明を過度に限定するように解釈すべきものでない。
【実施例】
【0092】
これらの実施例で使用される材料はすべて、とくに指定されていないかぎり、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))から入手可能である。溶媒を含めて材料はすべて、とくに明示されていないかぎり、入手したまま状態で使用した。
【0093】
ガラス転移温度
ガラス転移温度(Tg)は、変調DSC(モデルQ1000(Model Q1000)、デラウェア州ニューカッスルのティーエイ・インストラメンツ(TA Instruments,New Castle,DE))を用いて決定した。60秒間ごとに±0.796℃の摂動振幅で毎分(min)5℃の直線加熱速度を利用した。サンプルを15℃〜265℃の範囲で加熱−冷却−加熱プロファイルに付した。
【0094】
分子量および分子量分布
内部標準としてポリスチレンを使用し、モデルRID−10Aリフレクティブ・インデックス・ディテクター(Model RID−10A Refractive Index Detector)(マサチューセッツ州コロンビアのシマズN.A.(Shimadzu N.A.,Columbia,MD)から入手可能)を備えたモデル2695セパレーション・モジュール(Model2695 Separation Module)(マサチューセッツ州ミルフォードのウェーターズ・インコーポレーテッド(Waters,Inc.,Milford,MA)から入手可能)を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量を決定した。
【0095】
フーリエ変換赤外分光測定
ネクサス670フーリエ・トランスフォーム・インフラレッド・スペクトロメーター(NEXUS 670 Fourier Transform Infrared Spectrometer)(ウィスコンシン州マジソンのサーモ・ニコレット(Thermo−Nicolet,Madison,WI)から入手可能)を用いて赤外分光を行った。塩化ナトリウムプレート上にキャンティングしたポリマーのフィルムを用いて透過モードでスペクトルを測定した。
【0096】
実施例1. ポリマー1の合成
磁気攪拌機および窒素入口を備えた250ミリリットル(mL)三口フラスコに、8.32グラム(g)の3−メチルアミノプロピオニトリル(アルドリッチ(Aldrich))と、50mLの無水ジメチルアクリルアミド(DMAc,アルドリッチ(Aldrich))中の20.00gのスチレン−無水マレイン酸コポリマー(ペンシルバニア州エクストンのサートマー(Sartomer,Exton,PA.)から入手可能なSMA1000樹脂)の溶液と、を仕込んだ。混合物を室温で30分間(min)攪拌した後、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.18g、99%、アルドリッチ(Aldrich))を添加し、次に、溶液を110℃で17時間(h)加熱した。溶液を室温まで冷却させ、機械攪拌しながら1.5リットル(L)のイソプロパノール中に徐々に注いだ。生成した黄色の沈殿を濾過により捕集し、減圧下(約30ミリメートル(mm)Hg)、80℃で、48時間で乾燥させた。収量:26.0g。
【0097】
この材料の20グラム(20g)を50mL無水DMAcに溶解させ、続いて、28.00gのグリシジルメタクリレート(GMA)(サートマー(Sartomer))、0.20gのヒドロキノン(ニュージャージー州フィリップスバーグのジェイ・ティー・ベイカー(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ))、および0.5gのN,N−ジメチルベンジルアミン(アルドリッチ(Aldrich))を添加した。混合物を窒素でフラッシングし、次に、55℃で20時間加熱した。溶液を室温まで冷却させた後、機械攪拌しながら、ヘキサンとイソプロパノールとの1.5Lの混合物(2:1、体積:体積(v/v)、GR、イー・エム・サイエンス(E.M.Science))中に徐々に注いだ。生成した沈殿を50mLアセトンに溶解させ、そして最初に先に使用したのと同一の溶媒混合物中に加え、次に、イソプロパノールを使用することにより、2回沈澱させた。固体を濾過により捕集し、減圧下(約30mmHg)、50℃で、24時間乾燥させた。収量:22.30g。FT−IR(フィルム):3433、2249、1723、1637、1458、1290、1160、および704cm−1。Mn(数平均分子量)=8000グラム/モル(g/mol)、Mw(重量平均分子量)=22,000g/mol。Tg=105℃。
【0098】
実施例2. ポリマー2の合成
25.00gのSMA1000、22.84gの3,3’−イミノジプロピオニトリル(アルドリッチ(Aldrich))および28.00gのGMAを用いて、実施例1で使用したのと同一の手順により、ポリマー2を調製し、20.00gの薄褐色粉末を得た。FT−IR(フィルム):3457、2247、1700、1632、1494、1454、1292、および1166cm−1。Mn=6500g/mol、Mw=47,100g/mol。Tg=117℃。
【0099】
実施例3. ビス(2−シアノエチル)アクリルアミドとポリスチレンとのグラフトコポリマー(ポリマー3)の合成
10.82gのメチルエチルケトン中の205gのビス(2−シアノエチル)アクリルアミド(シュラー(Schuller)ら著、有機化学誌(J.Org.Chem.)、第23巻、p.1047(1958年)の手順に従って調製した)および2.06gのポリスチレン−メタクリレートマクロマー(米国特許第4,554,324号明細書(フルマン(Husman)ら)の実施例の部分の「モノマー”C−4(a)」の節に詳述されている手順に従って調製した)の溶液を調製した。これに0.02gのバゾ67(VAZO 67)(デラウェア州のデュポン・ケミカルズ(Dupont Chemicals,Delaware))を添加した。溶液を窒素で20分間スパージングし、70℃の振盪機浴中で一晩加熱した。過剰のメタノール中で沈殿させ、続いて、減圧濾過し、そして真空下、室温で、一晩乾燥させることにより、ポリマーを回収した。得られたポリマーは、140,000g/molの重量平均分子量(Mw)およびポリスチレン標準に対するテトラヒドロフラン中のGPCに基づいて5.5の多分散度を有していた。
【0100】
実施例4. ポリ(4−ビニルベンジルシアニド)(ポリマー4)の合成
22.2gの4−ビニルベンジルクロリド(0.131mol)と60mLジメチルスルホキシドと12.8gのカリウムシアニド(0.196mol)との混合物を室温で17時間攪拌した。混合物を500mLの水中に注ぎ、エチルアセテートで数回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、真空下で濃縮させた。7/93エチルアセテート/ヘキサンを用いてシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより粗製の赤い油を精製し、黄色の油(18.03g、96%)の4−ビニルベンジルシアニドを得た。
【0101】
次に、4−ビニルベンジルシアニド(1.0g)とシクロペンタノン(18.0g)とバゾ67(VAZO 67)(0.04g)とを含有する溶液を調製した。溶液を窒素ガスで10分間スパージングし、次に、65℃の振盪機浴上で一晩加熱した。過剰のメタノール中に加えて沈殿させ、続いて、減圧濾過し、そして真空オーブン中、室温で、一晩乾燥させることにより、ポリ(4−ビニルベンジルシアニド)ポリマーを回収した。それは、23,500g/molの重量平均分子量およびポリスチレン標準に対するTHF中のGPCに基づいて2.75の多分散度を有していた。
【0102】
実施例5. ポリ(4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレン)(ポリマー5)の合成
以下に記載される一連の反応により、4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレンモノマーを調製した。
【0103】
メチルマロンアミドの合成。アンモニアで飽和された200mLのメタノールと0.40gのナトリウム(17mmol)との混合物を0℃に冷却し、これに100mLのメタノール中の32.15gのジメチルメチルマロネート(0.22mol)の溶液を添加した。混合物を室温に加温し、3日間放置した。沈殿した白色の固体を濾過し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥させた(17.0g、67%)。
【0104】
モノメチルマロンニトリルの合成。9.50gのメチルマロンアミド(82mmol)と62gの五酸化リン(0.22mol)との混合物を真空下(2mmHg)で200℃に加熱した。反応混合物から生成物を蒸留し、冷却トラップ中に捕集した。生成物は、低融点の無色の固体(3.35g、51%)である。
【0105】
4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレンの合成。4.01gの4−ビニルベンジルクロリド(25mmol)と2.00gのモノメチルマロンニトリル(25mmol)と15mLのDMSOとの混合物に、トリエチルアミン(25mmol)のサンプル(2.53g)を室温で滴下した。混合物を室温で17時間攪拌し、次に100mLの水中に注いだ。桃色の固体を沈殿させ、濾過した。メタノールと水との混合物から固体を再結晶させ、3.141g(64%)の帯桃色の結晶を得た。
【0106】
ポリ(4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレン)の合成。次に、1.0gの4−(2,2’−ジシアノプロピル)スチレンと9.0gのシクロペンタノンと0.0195gのバゾ67(VAZO 67)とを含有する溶液を調製した。この溶液を窒素ガスで10分間スパージングし、次に、65℃の振盪機浴中で一晩加熱した。過剰のメタノール中に加えて沈殿させ、次に、減圧濾過し、そして真空オーブン中、室温で、一晩乾燥させることにより、ポリマーを回収した。それは、18,300g/molの重量平均分子量およびポリスチレン標準に対するTHF中のGPCに基づいて2.58の多分散度を有していた。
【0107】
実施例6. ポリ(4−(1,1’,2−トリシアノエチル)スチレン)(ポリマー6)の合成
以下に記載される一連の反応により、4−(1,1’,2−トリシアノエチルスチレンモノマーを調製した。
【0108】
4−ビニルベンズアルデヒドの合成。26.82gのp−テレフタルアルデヒド(p−terepthaldehyde)(0.20mol)と47.63gのメチルトリフェニルホスホニウムブロミド(0.13mol)と300mLの無水テトラヒドロフランとの混合物に、テトラヒドロフラン(0.13mol)中のカリウムt−ブトキシドの1モル(M)溶液130mLを1時間かけて添加した。室温で17時間攪拌した後、真空下で溶媒を除去した。残渣を100mLの50/50エチルアセテート/ヘキサンと混合し、濾過した。濾液を真空下で濃縮させ、ヘキサン中の5%酢酸エチルを用いてシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。黄色の油(11.51g、67%)として生成物を得た。
【0109】
4−(2,2’−ジシアノエテニル)スチレンの合成。5.00gの4−ビニルベンズアルデヒド(38mmol)と2.50gのマロンニトリル(38mmol)と20mLのエタノールとの混合物に1滴のピペリジンを添加した。2時間攪拌した後、沈殿した固体を濾過し、エタノールで洗浄した。次に、黄色の固体を真空下で乾燥させた(5.62g、83%)。
【0110】
4−(1,2,2’−トリシアノエチル)スチレンの合成。2.00gの4−(2,2’−ジシアノエテニル)スチレン(11mmol)と30mLのエタノールとの混合物に3mLの水中の1.45gのカリウムシアニド(22mmol)の溶液を添加した。混合物を室温で17時間攪拌した。次に、1.8mLの濃HCl(22mmol)を添加し、混合物を真空下で濃縮した。10ミリリットルの(10mL)水を残渣に添加し、混合物をエチルアセテートで抽出した。合わせた有機層を真空下で濃縮し、ヘキサン中の20%酢酸エチルを用いてシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより生成物を精製した。分離から回収された生成物を1.5mLのメチレンクロリドおよび10mLのヘキサンと混合し、次に、濾過した。白色の固体を得た(1.009g、44%)。
【0111】
ポリ(4−(1,2,2’−トリシアノエチル)スチレン)の合成。0.50gの4−(1,2,2’−トリシアノエチル)スチレンと4.53gのシクロペンタノンと0.01gのバゾ67(VAZO 67)とを含有する溶液を調製した。これを窒素ガスで10分間スパージングし、次に、65℃の振盪機浴中で一晩加熱した。過剰のヘキサン中に加えて沈殿させ、続いて、減圧濾過し、そして真空オーブン中、室温で、一晩乾燥させることにより、ポリマーを回収した。
【0112】
実施例7. ポリ(4−(ビス−シアノエチル)アミノメチル)スチレン)(ポリマー7)の合成
5.00gの4−ビニルベンジルクロリド(32.8mmol)と8.97gのビス(シアノエチル)アミン(65.5mmol)と11mLのクロロホルムとの混合物を65℃に8時間加熱した。室温に冷却した後、混合物を20mLのエチルアセテートで希釈し、次に濾過した。濾液を真空下で濃縮させ、エチルアセテートとヘキサンとの1:1混合物を用いてシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製した。粘稠な黄色の油(4.10g、収率52%)として生成物を単離した。
【0113】
この物質のサンプル(2.68g)を0.0149gのバゾ52(VAZO 52)の存在下で6.04gのメチルエチルケトンに溶解させた。溶液を窒素ガスで20分間スパージングし、次に、ガラスボトル中に封入した。次に、50℃の水浴中で攪拌しながら36時間加熱した。溶液を約100mLのメタノールに加えて沈殿させた。上澄みをデカントすることによりポリマー沈殿を回収し、真空下、約50℃で一晩乾燥させた。
【0114】
実施例8. ポリ(4−ビニルベンジルシアニド−co−4−ビニルベンジルアクリレート)(ポリマー8)の合成
2.06gの4−ビニルベンジルシアニドと0.51gの4−ビニルベンジルクロリドと10.04gのメチルエチルケトンと0.0143gのバゾ67(VAZO 67)とを含有する溶液を調製した。溶液を窒素ガスで20分間スパージングし、次に、振盪機浴上、65℃で、一晩加熱した。過剰のメタノール中に加えて沈殿させ、次に、減圧濾過し、そして真空オーブン中、室温で、一晩乾燥させることにより、ポリマーを回収した。
【0115】
このポリマーのサンプル(0.40g)を4.66gのジメチルホルムアミドに溶解させた。この溶液に、0.09gのアクリル酸、0.01gのヒドロキノン、および0.20gのトリエチルアミンを添加した。この溶液を室温で一晩攪拌した。この間、沈殿が生成した。濾過後、水に加えて沈殿させ、次に、真空オーブン中、室温で、一晩乾燥させることにより、ポリマーを回収した。
【0116】
誘電率の測定
図4に示されるような試験デバイス(コンデンサー)410を構築することにより、本発明に係る高分子誘電体の誘電率を決定した。カリフォルニア州サンノゼのシリコン・バレー・マイクロエレクトロニクス(Silicon Valley Microelectronics,San Jose,CA)から購入した高ドープドシリコンウェーハ412(<100>方位、背面上に5000オングストローム(Å)のAl 414、前面上に5000ÅのTa 415)を四等分し、薄い(10000Å未満の)高分子誘電体層416をTa層上にスピンコーティングした。表1に示されるようにシクロペンタノンまたはジメチルホルムアミドのいずれかに5〜15重量%の充填率でポリマーを加えて、スピンコーティング溶液を調製した。毎分500回転(rpm)で20秒間(sec)、続いて、1000rpmで40秒間、溶液をスピニングした。オーブン中、140℃で、コーテッドポリマーを35分間アニーリングした。金属ステンシルマスク(アパーチャーは長方形の形状をもち、寸法は8〜18ミリメートル(mm)の範囲であった)を介して、各高分子誘電体サンプル上に、5×10−6torr未満の圧力および2.5Å/秒の速度で、1000オングストローム(1000Å)のAu422を熱堆積させた。インピーダンスモードのアジレント4396Bネットワーク/スペクトラム/インピーダンスアナライザー(Agilent 4396B Network/Spectrum/Impedance Analyzer)(カリフォルニア州パロアルトのアジレント(Agilent,Palo Alto,CA)から入手可能)および43961A RFインピーダンス・テスト・アダプター(43961A RF Impedance Test Adapter)(アジレント(Agilent))を用いて、直列キャパシタンス測定値を得た。各測定値セットを取得する前に、43961Aインピーダンス・テスト・キット(43961A Impedance Test Kit)を用いてアナライザーを校正し、補正ルーチンを実施してアナライザーおよび試験用固定具の内部キャパシタンスを補正した。補正ルーチンにより、試験用固定具の実効電気的長さを規定することが可能であった。各ウェーハのAl層を試験用固定具の研磨平面に接触した状態で配置し、試験用固定具のプローブをAu膜に接触した状態で配置した。とくに明示されていないかぎり、100キロヘルツ(kHz)の周波数で各サンプルのキャパシタンスを測定した。測定を個別に3回行い、平均を求めて以下の表1に提示した最終値を得た。デクタック3030(Dektak 3030)プロフィルメーター(ニューヨーク州pレインビューのビーコ(Veeco,Plainview,NY)から入手可能)を用いてポリマー層厚さを測定し、続いて、これらの値を用いて誘電率を計算した。この計算は次式:ε=Cst/Aε(すべてSI単位、Csは、測定された直列キャパシタンスであり、tは誘電体層の厚さであり、AはAu接触の面積であり、εは自由空間の誘電率であり、8.85×10−12F/mとした)に基づくものであった。これらの測定の結果を以下の表1にまとめる。
【0117】
表1. ポリマー誘電率


a = ジェイ・ブランドラップ(J. Brandrup)およびイー・エイチ・イマーガット(E.H. Immergut)著、 ポリマー便覧(Polymer Handbook)、 第3版、 V/81、 ポリスチレンの物理定数(Physical Constants of Polystyrene)、 ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、 ニューヨーク(NY)、 1989年からの文献値。
ポリマー1および2は、実施例9に記載の手順に従って架橋させた。
【0118】
デバイス移動度の測定
先に記載したのと類似の方法で調製した誘電体膜を、米国特許第6,433,359号明細書(ケリー(Kelley))に記載されているような有機トランジスターデバイスの作製および試験のための基本要素として使用した。記載のごとく作製されたデバイス510を図5に示す。カリフォルニア州サンノゼのシリコン・バレー・マイクロエレクトロニクス(Silicon Valley Microelectronics,San Jose,CA)から購入した高ドープドシリコンウェーハ512(<100>方位、背面上に5000ÅのAl(ゲート電極)514、前面上に5000ÅのTa 515)を四等分し、上記の誘電率測定に関して前の節に記載されているのと同一のスピンコーティング手順を用いて、高誘電体ポリマー516の膜をウェーハの前面上に堆積させた。オーブン中、140℃で、ポリマーを35分間アニーリングした。2×10−6torr(水晶発振子微量天秤により測定)の圧力で600Åのペンタセン520を約0.1Å/秒の速度で基板の前面上に直接堆積させた。最後に、2.5Å/秒の速度および2×10−6torrの圧力でシャドウマスクを介して600Åの金ソースパッド522およびドレインパッド524をペンタセン520上に堆積させた。各ポリマーで測定されたトランジスター性能特性を以下の表2にまとめる。
【0119】
表2. 有機誘電体層を用いて作製された薄膜トランジスターの特性


Al2O3対照およびSiO2対照は、米国特許第6,433,359号明細書(ケリー(Kelley))に記載されているように作製した。
【0120】
実施例9. 有機誘電体の光パターンニング
20gのシクロペンタノン(85.20部)中に、3.00gのポリマー1(12.80部)、0.3gのペンタエリトリトールトリアクリレート(1.30部、アルドリッチ(Aldrich))、および0.17gのイルガキュア819(IRGACURE 819)光開始剤(0.70部、スイス国バーゼルのチバ(Ciba,Basel,Switzerland))を溶解させることにより、ポリマー1の光パターニング可能な溶液を作製した。溶液を暗所で保存し、使用前に0.45マイクロメートル(μmすなわちミクロン)フィルターに通して濾過した。
【0121】
スピンコーター上に取り付けられたシリコンウェーハを覆うのに十分なこの溶液をピペットにより移した。指触乾燥状態になるまでウェーハを6000rpmでスピニングした。ホットプレート上、80℃で、コーテッドウェーハを5分間焼成し、残留溶媒を除去した。40μmのバー間隔で1ミリメートル(mm)×0.2mmの寸法に切り抜かれた長方形バーを有するシリコンシャドウマスクを基板上に掴持した。窒素環境中で基板にUV光を照射し、ポリマーの露光領域を架橋させた。照射は、300ミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm)のエネルギーの紫外スペクトルのCバンドであった。
【0122】
シャドウマスクを除去し、基板を照射後焼成(ホットプレート上、約150℃で5秒間)に付してシステムの感受性を増強させた。テトラヒドロフラン中、20秒間未満でウェーハを現像することにより、非照射フォトポリマーを除去した。最後に、架橋を完了させるために、残留する光パターン化ポリマーを165℃で約2分間後焼成した。結果として、シャドウマスクのボイド空間に一致する光パターン化誘電体架橋ポリマーの長方形バーを有するシリコンウェーハが得られた。
【0123】
実施例10. 光パターニング可能な誘電体層の高周波安定性
実施例2に記載の手順に従って調製したポリマー1の光パターニング可能な溶液を、厚さ35μmの銅箔(表面を酸素プラズマで処理した)上に500rpmで40秒間スピンコーティングした。サンプルを80℃で4分間ソフト焼成した後、紫外スペクトルのCバンドの550mJ/cmのエネルギーを有するUV光を照射し、続いて、110℃で2分間後焼成した。43961A RFインピーダンス・テスト・アダプター(43961A RF Impedance Test Adapter)(アジレント(Agilent))に結合されたインピーダンスモードのアジレント4396Bネットワーク/スペクトラム/インピーダンスアナライザー(Agilent4396B Network/Spectrum/Impedance Analyzer)(カリフォルニア州パロアルトのアジレント(Agilent,Palo Alto,CA)から入手可能)を用いて、高周波領域におけるサンプルのキャパシタンスおよび発散損の応答を記録した。結果を表3にまとめる。
【0124】
表3. ポリマー1の高周波応答

【0125】
実施例11. 光パターニング可能な誘電体層を有するパターン化トランジスターの構築
パターン化トランジスターのアレイ610(図4)をガラス基材上に次のように作製した。シリコン(Si)シャドウマスクを介して15Åのチタンおよび600Åの金のパターン化ゲート層614をクリーンなガラススライド612上に堆積させた。次に、実施例9に記載されるように作製したポリマー1の溶液をガラス基材上にスピンコーティングし、適切なシリコンシャドウマスクを介してフォトポリマー層にUV線を照射し、パターン化誘電体層616を形成した。実施例9に記載されるように非架橋誘電体ポリマー層を除去して後焼成した後、図示されるように、600Åのパターン化気相堆積ペンタセン620、続いて600Åの金ソース電極622およびドレイン電極624を設けてトランジスター610を完成させた。すべての層を十分にアライメントし、先に記載したようにデバイスを試験した。
【0126】
シリコンシャドウマスクを介してアルミナを電子ビーム蒸発により堆積させたこと以外は先に記載したもと同じ方法で、気相堆積アルミナを有するトランジスターのアレイを作製し、出願人の譲受人の同時係属出願(2001年11月5日出願および2003年6月5日公開の米国特許公開US2003−0102471−A1号明細書)に記載されているようにポリ(α−メチルスチレン)で表面処理した。表面処理後、シリコンシャドウマスクを介して600Åの最終厚さになるようにペンタセンを気相堆積させ、そしてシリコンシャドウマスクを介して600Åの金を熱蒸発させることによりトランジスターを完成させた。
【0127】
各グループの形成された薄膜トランジスターの1つを、先に記載したように試験した。結果を表4に示す。
【0128】
表4. パターン化有機誘電体層を有する有機薄膜トランジスターの特性

【0129】
実施例12. 移動度に及ぼす誘電体の表面処理の影響
誘電体層716とペンタセン半導体層720との間に位置するポリ(α−メチルスチレン)の層718を有する一連の試験構造体710(図5)を作製した。次のようにデバイスを作製した。
【0130】
カリフォルニア州サンノゼのシリコン・バレー・マイクロエレクトロニクス(Silicon Valley Microelectronics,San Jose,CA)から購入した高ドープドシリコンウェーハ712(<100>方位、背面上に5000ÅのAl(ゲート電極)714、前面上に5000ÅのTa 715)を四等分し、実施例9に記載の調合物を用いてポリマー1の光パターニング可能なフィルム716を基板上にスピンコーティングした。先に記載したように窒素雰囲気下でUV光をブランケット照射することにより、ポリマー誘電体層716を架橋させた。対照のために、Alコーテッドシリコンウェーハをシリコン・バレー・マイクロエレクトロニクス(Silicon Valley Microelectronics)から入手した。
【0131】
トルエン中、キシレン中、またはシクロヘキサン中の0.1%ポリ(α−メチルスチレン)718の表面処理材を誘電体716上に配置した。500rpmで20秒間、続いて2,000rpmで40秒間、スピンコーターでスピニングし、表面処理剤層718を適用した。次に、120℃のオーブン中にコーテッドサンプルを約30分間配置した。次に、600Åのペンタセン720を0.2Å/秒の速度で処理表面上に堆積させた。最後に、シャドウマスクを介して600Åの金ソースおよびドレインパッド(722および724)をペンタセン上に堆積させた。デバイスを試験した。結果を以下の表5に示す。
【0132】
表5. 表面処理が施された高分子薄膜トランジスター

【0133】
実施例13. ポリマー/セラミックス誘電体材料の作製
次の成分:2.00gのポリマー1または2、20.0gのシクロペンタノン、および0.20gのペンタエリトリトールトリアクリレート(アルドリッチ(Aldrich))を混合することにより、溶液を調製した。この混合物を0.45μm濾過カートリッジに通して濾過した。この濾過された溶液2.0gに、メチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン中に分散されたチタン酸バリウムの1.0gのディスパージョン(2:3v/v、固形分60重量パーセント(重量%))を添加した。最終混合物は、ポリマーに対して充填率37体積%のBaTiOを有する。使用前、この混合物を超音波攪拌した。
【0134】
グラビアコーターを用いてポリマー/チタン酸バリウムディスパージョンを35ミクロン銅箔上にコーティングし、乾燥させて溶媒を除去した。このコーティングをエポキシの薄層でコーティングされた銅箔の第2の部片にラミネーションした。次に、窒素下、190℃〜200℃で、ラミネートを約10〜約30分間キュアさせた。フォトレジストのラミネーション、マスクを介する照射、さらに現像、銅エッチング、およびフォトレジストストリッピングを行う標準的フォトリソグラフィー法を用いて、ラミネートの片面上または両面上に個別電極を作製した。これらの電極は、個別コンデンサーを規定する。そのような方法でパターニングされたラミネートは、キャパシタンスを提供すべくプリント回路板およびICパッケージ中の内層として使用することができる。
【0135】
同一手順に従って、異なる体積充填率のBaTiOを有するさらなるディスパージョンを調製した。
【0136】
他のポリマー系に対して、先に記載したようにキャパシタンス試験を行った。結果を以下の表6に示す。
【0137】
表6. チタン酸バリウムを有するポリマー1および2の誘電率

【0138】
本明細書に引用されている特許、特許出願、および刊行物はすべて、あたかも個別に組み入れられたごとく、その全体が参照により組み入れられるものとする。以上の説明にかんがみて、本発明の種々の修正形態および変更形態は、本発明の範囲および原理から逸脱することなく、当業者には自明なものとなろう。したがって、当然のことながら、本発明は、以上に明示された例示的な実施形態に過度に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】有機薄膜トランジスターの概略図である。
【図2】内蔵コンデンサーの概略図である。
【図3】エレクトロルミネセンスランプの概略図である。
【図4】非パターン化電極、非パターン化誘電体層、およびパターン化電極を有する試験構造体(コンデンサー)の概略図である。
【図5】非パターン化ゲート電極、非パターン化誘電体層、非パターン化半導体層、およびパターン化ソース/ドレイン電極を有する有機薄膜トランジスターの試験構造体の概略図である。
【図6】パターン化ゲート電極、パターン化誘電体層、パターン化半導体層、およびパターン化ソース/ドレイン電極を有する有機薄膜トランジスターアレイの概略図である。
【図7】非パターン化ゲート電極、非パターン化誘電体層、非パターン化パッシベーション層、非パターン化半導体層、およびパターン化ソース/ドレイン電極を有する有機薄膜トランジスターの試験構造体の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の導電層間に誘電体層を有するラミネートを含む物品であって、該誘電体層が、式:
【化1】


(式中、
各Rは、独立して、H、Cl、Br、I、アリール基、または架橋性基を含む有機基であり;
各Rは、独立して、H、アリール基、またはRであり;
各Rは、独立して、Hまたはメチルであり;
各Rは、独立して、アルキル基、ハロゲン、またはRであり;
各Rは、独立して、少なくとも1つのCN基を含みかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり;そして
n=0〜3であり;
ただし、ポリマー中の少なくとも1つの反復単位は、Rを含む)
で示される反復単位を有する実質的にフッ素化されていない有機ポリマーを含む、物品。
【請求項2】
各Rが、独立して、H、(C5〜C8)アリール基、Cl、Br、I、または(メタ)アクリレート基、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、オキシラン基、アジリジン基、クロロシラン基、ビニル基、もしくはアルコキシシラン基を含む有機基である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
各Rが、独立して、H、(C5〜C8)アリール基、またはRであり、しかも各Rが、少なくとも1つのCN基を含みかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する(C2〜C20)有機基である、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
が、N−メチル−(2−シアノエチル)カルバミド、N−ビス(2−シアノエチル)カルバミド、p−(2−シアノエチル)フェニル、p−(2,2−ジシアノプロピル)フェニル、p−(1,2−ジシアノプロピオニトリロ)フェニル、N−メチル−N−(2−シアノエチル)ベンジルアミノ、ビス−N−(2−シアノエチル)ベンジルアミノ、シアノメチル、2,2’−ジシアノプロピル、1,2,2’−トリシアノエチル、およびN,N’−ビス(2−シアノエチル)アミノエチルから選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
少なくとも1つのRが架橋性基を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記架橋性基が、(メタ)アクリレート基、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、オキシラン基、アジリジン基、クロロシラン基、ビニル基、またはアルコキシシラン基を含む、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記ラミネートがコンデンサーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記ラミネートが内蔵コンデンサーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記ポリマー誘電体層が充填材をさらに含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記充填材が、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、チタンジルコン酸鉛(PZT)、およびそれらの混合物(PZTまたはチタン酸バリウムと、カルシウム、ビスマス、鉄、ランタン、またはストロンチウムの添加剤との混合物を包含する)から選択される、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記充填材が、約20〜約60体積パーセントで誘電体材料中に充填される、請求項9に記載の物品。
【請求項12】
充填剤が、約0.05〜約11μmの直径を有する粒子を含む、請求項9に記載の物品。
【請求項13】
前記充填材の誘電率が約200〜約1000である、請求項9に記載の物品。
【請求項14】
前記誘電体層が少なくとも約3.5の誘電率を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記ラミネートが、約20〜約100の誘電率を有するコンデンサーを含む、請求項9に記載の物品。
【請求項16】
前記誘電体層の厚さが約2μm〜約25μmである、請求項9に記載の物品。
【請求項17】
前記導電層の厚さが約3μm〜約80μmである、請求項9に記載の物品。
【請求項18】
前記ポリマー誘電体層がポリマーの混合物を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記実質的にフッ素化されていない有機ポリマーが、架橋されている、請求項1に記載の物品。
【請求項20】
前記有機ポリマー誘電体層が、その表面にスチレン系単位を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項21】
前記有機ポリマー誘電体層の表面のスチレン系単位が、シアノ官能性スチレン系単位である、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
請求項1に記載のラミネートを含む回路板を含む、物品。
【請求項23】
請求項1に記載のラミネートを含むチップパッケージを含む、物品。
【請求項24】
第1および第2の導電層間に光パターニング可能な誘電体層を有するラミネートを含む物品であって、該誘電体層が、式:
【化2】


(式中、
各Rは、独立して、架橋性基を含む有機基であり;
各Rは、独立して、H、アリール基、またはRであり;
各Rは、独立して、Hまたはメチルであり;
各Rは、独立して、アルキル基、ハロゲン、またはRであり;
各Rは、独立して、少なくとも1つのCN基を含みかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり;そして
n=0〜3であり;
ただし、ポリマー中の少なくとも1つの反復単位は、Rを含む)
で示される反復単位を有する有機ポリマーを含む、物品。
【請求項25】
が、N−メチル−(2−シアノエチル)カルバミド、N−ビス(2−シアノエチル)カルバミド、p−(2−シアノエチル)フェニル、p−(2,2−ジシアノプロピル)フェニル、p−(1,2−ジシアノプロピオニトリロ)フェニル、N−メチル−N−(2−シアノエチル)ベンジルアミノ、ビス−N−(2−シアノエチル)ベンジルアミノ、シアノメチル、2,2’−ジシアノプロピル、1,2,2’−トリシアノエチル、およびN,N’−ビス(2−シアノエチル)アミノエチルから選択される、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
前記架橋性基が、(メタ)アクリレート基、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、オキシラン基、アジリジン基、クロロシラン基、ビニル基、またはアルコキシシラン基を含む、請求項24に記載の物品。
【請求項27】
前記ラミネートがコンデンサーを含む、請求項24に記載の物品。
【請求項28】
前記ラミネートが内蔵コンデンサーを含む、請求項24に記載の物品。
【請求項29】
請求項24に記載のラミネートを含む集積回路を含む、物品。
【請求項30】
前記ポリマー誘電体層が充填材をさらに含む、請求項24に記載の物品。
【請求項31】
前記充填材が、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、チタンジルコン酸鉛(PZT)、およびそれらの混合物(PZTまたはチタン酸バリウムと、カルシウム、ビスマス、鉄、ランタン、またはストロンチウムの添加剤との混合物を包含する)から選択される、請求項24に記載の物品。
【請求項32】
前記ポリマー誘電体層がポリマーの混合物を含む、請求項24に記載の物品。
【請求項33】
前記誘電体層が少なくとも約3.5の誘電率を有する、請求項24に記載の物品。
【請求項34】
前記有機ポリマーが、実質的にフッ素化されていない有機ポリマーである、請求項24に記載の物品。
【請求項35】
前記有機ポリマー誘電体層が、その表面にスチレン系単位を含む、請求項24に記載の物品。
【請求項36】
前記有機ポリマー誘電体層の表面のスチレン系単位が、シアノ官能性スチレン系単位である、請求項35に記載の物品。
【請求項37】
式:
【化3】


(式中、
Rは、CHまたはCHCHCNであり;
各Rは、独立して、アルキル基、ハロゲン、または少なくとも1つのCN基を含みかつCN基1つあたり約30〜約200の分子量を有する有機基であり;そして
n=0〜3である)
で示される反復単位を有するポリマーを含む有機ポリマー誘電体層を有するラミネートを含む、物品。
【請求項38】
ビス(2−シアノエチル)アクリルアミドと反応性ポリスチレンオリゴマーとのコポリマーを含む有機ポリマー誘電体層を有するラミネートを含む、物品。
【請求項39】
式:
【化4】

で示される反復単位を有するポリマーを含む有機ポリマー誘電体層を有するラミネートを含む、物品。
【請求項40】
式:
【化5】


で示される反復単位を有するポリマーを含む有機ポリマー誘電体層を有するラミネートを含む、物品。
【請求項41】
式:
【化6】


で示される反復単位を有するポリマーを含む有機ポリマー誘電体層を有するラミネートを含む、物品。
【請求項42】
式:
【化7】


で示される反復単位を有するコポリマーを含む有機ポリマー誘電体層を有するラミネートを含む、物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−528811(P2007−528811A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532815(P2006−532815)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014101
【国際公開番号】WO2004/102690
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】