説明

有機モールドおよびその製造方法

【課題】不可逆的な接着や欠陥が発生することなく、基板から容易かつ反復的に離型され、他の樹脂層にサブミクロンのパターンを形成するのに十分高いモジュラス、優れた化学安定性および寸法安定性を有する多層構造の有機モールドを実現できるようにする。
【解決手段】他の樹脂層に微細パターンを形成するための多層構造の有機モールドは、シート状の支持体層と、支持体の上に形成され、活性エネルギー硬化型の樹脂組成物からなり、微細パターンを有する有機モールド層とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンの形成に用いられるモールド用樹脂組成物、および前記組成物を用いて有機モールドを製作する方法、並びにこのような方法によって製作された有機モールドに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路、半導体素子、電子素子、光電素子、表示素子、磁気素子または電気機械素子などの様々な素子、および光学レンズ(たとえば、プリズムシートおよびレンチキュラレンズシート)は、通常、フォトリソグラフィー(photolithography)によって形成される微細パターンを含んでいる。しかし、前記フォトリソグラフィーは、複雑なパターニング工程および高い生産コストが求められるため、100nm以下の線幅を有する超微細パターンの形成には適さない。
【0003】
したがって、最近はナノ・インプリント・リソグラフィー(nano-imprint lithography)が開発されたが、この方法はケイ素(Si)モールドのような硬い(hard)材質からなるモールドのパターンを熱可塑性高分子層上に複製するものである。この方法は、モールドの硬さのため約7nmの狭い線幅を有するパターンの製作に有利である(非特許文献1を参照)。しかし、このナノ・インプリントリソグラフィーは、モールドを基板から離型しにくく、高温高圧の条件下で加圧する間に破損しやすいという問題がある。
【0004】
微細パターンを製作するための非伝統的リソグラフィー法の他の例としては、微細接触印刷法(mCP: micro contact printing)、微細毛細管モールディング(MIMIC: micro-molding in capillaries)、微細転移モールディング(mTM: micro-transfer molding)、軟性成形モールディング(soft molding)、毛細管力リソグラフィー(CFL: capillary force lithography)などの方法がある。これらの方法は、一般的にシリコーンゴムタイプのポリジメチルシロキサン(PDMS)のような弾性重合体からなるモールドを用いるが、このPDMSモールドは寸法安定性および化学安定性に劣るため、500nm以下の狭い線幅を達成できない。
【0005】
PDMSの問題を解決するためにh−PDMS(硬質PDMS)およびhv−PDMS(光硬化型PDMS)のような改質されたPDMSが開発されている。しかし、h−PDMSは、依然として脆性、低い破断伸びおよび基材との不良な順応性などが問題となっており(非特許文献2を参照)、hv−PDMSは、通常のPDMSのいくつかの限界を克服するために導入されたものの、100nm以下の微細パターンを複製するのに十分なモジュラスを有していない(非特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S. Y. Chou ら, J. Vac. Sci. Technol. B15, 2897, 1997年発行
【非特許文献2】Odom, Y. W. ら, Langmuir, 18, 5314-5320, 2002年発行
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc. 125, 4060-4061, 2003年発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、不可逆的な接着や欠陥が発生することなく、基板から容易かつ反復的に離型され得る有機モールドの製造に使用できる、サブミクロンのパターンを形成するために十分高いモジュラス、および優れた化学安定性および寸法安定性を有する新規なモールド材料を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記材料を用いて有機モールドを製作する方法およびそれによって製作されたモールドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様によって、支持体層と、支持体層の上に形成され、活性エネルギー硬化型の樹脂組成物からなり、微細パターンを有する有機モールド層とを備え、他の樹脂層に微細パターンを形成するための有機モールドが提供される。
【0010】
この場合に、樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリールエーテルおよびこれらの組合せからなる群から選ばれる反応性基を有する活性エネルギー硬化型ウレタン系オリゴマー40〜90重量部、(B)前記ウレタン系オリゴマーと反応性があり、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリールエーテルおよびこれらの組合せからなる群から選ばれる反応性基を有する単量体10〜60重量部、(C)前記成分(A)と(B)の合計100部に対して、シリコーンまたはフッ素含有化合物0.01〜200重量部、および(D)前記成分(A)、(B)および(C)の合計100部に対して、光開始剤0.1〜10重量部を含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明の他の実施態様によれば、本発明の樹脂組成物をマスターモールドのパターン面にコーティングまたはキャスティングし、
その樹脂層上に支持体を載せ、得られた積層体に活性エネルギー線を照射することによって前記樹脂層を予備硬化させ、前記マスターモールドのパターンに対して反対のパターン面を有し、支持体と一体に形成された有機モールドを前記マスターモールドから離型し、有機モールドを完全硬化させることを含む、有機モールドの製作方法が提供される。
【0012】
さらに、本発明のさらに他の実施態様によれば、本発明の樹脂組成物をマスターモールドのパターン面にコーティングまたはキャスティングし、
前記樹脂層に活性エネルギー線を照射して予備硬化させ、硬化した樹脂層上に紫外線硬化型または熱硬化型樹脂組成物を骨組(backbone)材料として注ぎ、生成物を加熱するか照射して樹脂層および骨組層を完全硬化させ、前記マスターモールドのパターンに対して反対のパターン面を有し、骨組層と一体に形成された有機モールドを前記マスターモールドから離型し、有機モールドを完全硬化させることを含む、有機モールドの製作方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の実施態様によれば、前記方法のいずれかによって製作された、サブミクロンパターンを有する有機モールドが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物は活性エネルギー線の作用によって容易に硬化され、それから製作された有機モールドは不可逆的な接着や欠陥が発生することなく、マスターモールドから容易に離型され、優れた寸法安定性および化学的安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による樹脂組成物を用いたモールドの製作過程を示す概略図である。
【図2A】本発明の方法によって製作された、80nmの線幅と間隔を有するモールドの電子顕微鏡写真である。
【図2B】図2Aのモールドを用いて基板上に形成したパターンの電子顕微鏡写真である。
【図3A】本発明の方法によって製作された円柱状のパターン(cylindrical pattern)を有するモールドの電子顕微鏡写真である。
【図3B】図3Aのモールドを用いて基板上に形成したパターンの電子顕微鏡写真である。
【図4A】本発明の比較例によってモールドの製作に用いられたピラミッド形パターンを有するマスターモールドの光学顕微鏡写真である。
【図4B】図4Aのマスターモールドを用いて製作された有機モールドの光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明は、微細パターン、好ましくはサブミクロンパターンの形成に用いられる有機モールド用樹脂組成物、および前記組成物を用いて有機モールドを製作する方法、並びにこのような方法によって製作されたモールドを提供する。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、脂環族環または芳香族環のようなハードセグメントと直鎖脂肪族長鎖のようなソフトセグメントを同時に有するエネルギー硬化型成分を含んでいるため、微細パターンの形成を可能するとともにモールドに柔軟性を与え、また、シリコーンまたはフッ素含有化合物を含んでいるため、モールドに優れた離型性を与えながらもモールドの優れた物理的特性を保持できることを特徴とする。前記モールドの緻密度、すなわち、分子構造内の架橋度は前記組成物に存在する反応性基の総量を調節することによって向上できる。
【0019】
本願において、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートおよびメタクリレートを意味し、「活性エネルギー線(active energy ray)という用語は、紫外線、赤外線または電子線を意味する。
【0020】
具体的には、本発明の樹脂組成物は、組成物に高弾性および曲げ性を与えるために、活性エネルギー線硬化型ウレタン系オリゴマー(「成分A」)を含む。前記活性エネルギー硬化型ウレタン系オリゴマーは、少なくとも2つの反応性基を有する直鎖脂肪族、脂環族または芳香族ウレタン系オリゴマー、およびこれらの混合物であってもよい。
【0021】
前記ウレタン系オリゴマーは本発明の組成物中に40〜90重量部の量で使用され得る。前記含量が下限値未満の場合は組成物から得られたモールドの機械的強度が劣り、上限値を超える場合はモールドが過度に脆くなる。
【0022】
前記ウレタン系オリゴマーは、組成物の柔軟性、表面硬度、耐摩耗性、耐熱性、耐候性および耐化学性のような物性を向上させるために反応性オリゴマーで部分的に取り替えられてもよい。このようなオプションのオリゴマーは、(メタ)アクリル化ポリエステル、(メタ)アクリル化ポリエーテル、(メタ)アクリル化エポキシ、(メタ)アクリル化ポリカーボネート、(メタ)アクリル化ポリブタジエンまたはこれらの混合物であってもよく、これらはウレタン系オリゴマーの0〜200重量%の範囲の量で使用され得る。
【0023】
本発明において、前記ウレタン系オリゴマーと反応性を有する単量体(「成分B」)は反応性希釈剤として用いられるものであって、その代表的な例としては、イソボルニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトール(ヒドロキシ)ペンタアクリレート、アルコキシル化テトラアクリレート、オクチルデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、スチレン系単量体およびこれらの混合物のような(メタ)アクリレート系化合物;およびシクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、アリールプロピルエーテル、アリールブチルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリールエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルおよびこれらの混合物のようなビニルエーテル系またはアリールエーテル系化合物がある。
【0024】
前記反応性希釈剤は、組成物の架橋密度を調整して組成物に優れた柔軟性を与え、組成物に10〜60重量部の量で使用され得る。
【0025】
また、本発明の樹脂組成物は官能化された添加剤としてシリコーン基またはフッ素基含有化合物(「成分C」)を含む。成分Cは少なくとも一つのシリコーンまたはフッ素基を有し、その代表的な例としては、(i)シリコーン基を有する反応性モノマー若しくはオリゴマー、たとえば、シリコーン含有ビニル誘導体、シリコーン含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシ含有オルガノシロキサンまたはシリコーンポリアクリレート;(ii)フッ素基を有する反応性モノマー若しくはオリゴマー、たとえば、フルオロアルキル含有ビニル誘導体またはフルオロアルキル含有(メタ)アクリレート、またはフッ素ポリアクリレート;(iii)シリコーン若しくはフッ素含有樹脂、たとえば、オルガノポリシロキサンおよびフッ化された重合体;および成分(iv)シリコーン若しくはフッ素含有界面活性剤またはオイル、たとえば、ジメチルシリコーンオイル;およびこれらの混合物がある。
【0026】
前記官能化された添加剤はモールドに優れた離型性を与えることができ、前記成分AおよびBの合計100重量部に対して、成分(i)〜(iii)の場合は5〜200重量部の範囲の量で、成分(iv)の場合は0.01〜5重量部の範囲の量で使用され得る。
【0027】
本発明の組成物に用いられる光開始剤(「成分D」)は、通常のフリーラジカル開始剤若しくはカチオン開始剤、またはこれらの混合物であってもよい。前記フリーラジカル開始剤の代表的な例としては、ベンジルケタール類、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン誘導体、ケトキシムエーテル類、ベンゾフェノン、ベンゾおよびチオキサントン化合物、およびこれらの混合物があり、前記カチオン開始剤はオニウム塩(onium salts)、フェロセニウム塩(ferrocenium salts)、ジアゾニウム塩(diazonium salts)、およびこれらの混合物がある。成分Bとしてビニルエーテル化合物を使用する場合、フリーラジカル開始剤とカチオン開始剤の適切な混合物を使用することが好ましい。
【0028】
前記光開始剤は前記成分A、BおよびCの総量100部に対して0.1〜10重量部の量で使用することが好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、活性エネルギー線で硬化されて優れた離型性、低い溶媒膨潤性、基材に対する優れた順応性、および高い機械的強度を有する有機モールドを提供できる。また、本発明の樹脂組成物は大型モールドを簡単な工程で少ない製造コストで提供でき、したがって、有機モールドの大量生産に有用である。
【0030】
得られた有機モールドは数十nm以下の線幅を有する超微細またはサブミクロンパターンを形成するのに有利に使用できる。本発明の有機モールドを用いた微細パターンの形成は当分野で公知の任意の複製方法、たとえば、ナノ・インプリント・リソグラフィー、微細接触印刷法(mCP)、微細毛細管モールディング(MIMIC)、微細転移モールディング(mTM)、軟性モールディングおよび毛細管力リソグラフィー(CFL)によって行ってもよい。
【0031】
図1は、本発明による樹脂組成物を用いてモールドを製作する工程を示す概略図である。具体的には、工程(a)に示すように、本発明の樹脂組成物をマスターモールドのパターン面にコーティングまたはキャスティングし、その上にモールド用支持体を載せる。得られた積層体に紫外線のような活性エネルギー線を照射して樹脂組成物を予備硬化させる。マスターモールドのパターンと反対のパターン面を有する硬化した有機モールドをマスターモールドから除去し、樹脂中の残りの反応基が完全に消耗されるまでさらにUV硬化させることによって有機モールドの硬度を向上させる。前記モールド用支持体は、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、軟質若しくは硬質エラストマーなどのような高分子材質が好ましい。このように製作された有機モールドは、モールドの最終の用途によって目的とする形状および厚さを有する軟質弾性高分子または硬質高分子のバッキングに接着または接合されてもよい。前記バッキングは、エポキシ樹脂、ウレタンエラストマー、ブタジエン系ゴム、またはこれらの混合物からなる材質であり得る。
【0032】
代わりに、図1の工程(b)に従って、マスターモールドを前記工程(a)と同様に本発明の樹脂組成物でまずコーティング若しくはキャスティングし、UV線で擬硬化させた後、容器の内で、これに骨組(backbone)材料としてUV硬化型または熱硬化型樹脂組成物を目的の厚さまで注いで完全に硬化させる。硬化した有機モールドをマスターモールドから除去する。前記熱またはUV硬化型骨組樹脂はモールドの最終用途によってエポキシ樹脂、ウレタンエラストマー、ブタジエン系ゴムおよびこれらの混合物から選ばれる軟質または硬質重合体の材料であってもよい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を下記実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、これらは本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を制限しない。
【0034】
[製造例1〜5]
下記表1に示す組成を有するモールド組成物を製造した。
【0035】
【表1】

【0036】
[実施例1−1]
図1の工程(a)に示すような複製方法によって有機モールドを製作した。
【0037】
具体的には、目的とする樹脂パターンと反対のパターン構造を有するシリコンマスターモールドを準備した。前記マスターモールドのパターン面上に製造例1による樹脂組成物を15μmの厚さにコーティングした。次いで、そのコーティング面上に、188μm厚さの透明接着性ポリエチレンテレフタレートのシートを載せた後、得られた積層体に5mJ/cm2の紫外線を15秒間照射して樹脂組成物を硬化させた。
【0038】
硬化した有機モールドをマスターモールドから離型して、ポリエチレンテレフタレート(PET)支持体と結合された、目的とするパターンを有する有機モールドを得た。次いで、UV(5mJ/cm2)をさらに2時間照射して有機モールドを完全硬化した。
【0039】
[実施例1−2]
図1の工程(b)に示すように複製された有機モールドを製作した。
【0040】
具体的には、実施例1−1で用いられたシリコンマスターモールドのパターン面をまず製造例1の樹脂組成物で15μmの厚さにコーティングした後、5mJ/cm2の紫外線で3分間予備硬化させた。得られた積層体を容器内に入れ、UV硬化型アクリル化ブタジエン樹脂組成物を注ぎ、硬化させて骨組層を2mmの厚さに形成した。
【0041】
硬化した生成物を容器から取り出し、アクリル化ブタジエン骨組を有する目的とするパターンが形成された有機モールドをマスターモールドから離型した後、さらにUV(5mJ/cm2)を2時間照射して有機モールドを完全硬化させた。
【0042】
図2Aは、実施例1−1と同様に製作された、80nmの線幅と間隔を有する有機モールドの電子顕微鏡写真である。
【0043】
また、図3Aは、実施例1−1と同様に製作された、直径100nm、高さ450nmの円柱状のキャビティが整列されている、円柱状のパターンを有する有機モールドの電子顕微鏡写真である。
【0044】
[実施例2−1]
図2Aに示した有機モールドを用いて軟質モールディング法によってパターンを形成した。具体的には、シリコンウエハの基板上にポリスチレン樹脂溶液をコーティングし、コーティングされた樹脂層上にモールドを載せた後、少し加圧して、目的とするパターンをポリスチレン樹脂層に転移させた。図2Bは、このようにして形成されたパターンの電子顕微鏡写真を示す。
【0045】
[実施例2−2]
図3Aに示した有機モールドを用いてUVフラッシュ複製方法によってパターンを形成した。具体的には、PET基板上にUV硬化型アクリル化エポキシ樹脂溶液をコーティングし、前記コーティングされたエポキシ樹脂層上に、製造されたモールドを載せた後、得られた積層体をUV照射してエポキシ樹脂組成物を硬化させた。図3Bは、このようにして形成されたパターンの電子顕微鏡写真である。
【0046】
図2Bおよび3Bは、本発明の樹脂組成物から複製したモールドは接着や欠陥を発生させずにサブミクロンパターンを提供できることを示す。
【0047】
[実施例3および4]
製造例1の組成物の代わりに各々製造例2および3のモールド組成物を用いたことを除いては前記実施例1−1の工程を繰り返して有機モールドを製作し、これらを実施例2−1によるパターンの形成に用いた。
【0048】
このようにして製作された有機モールドおよびそれから得られたパターンは、各々図2Aおよび3A、および2Bおよび3Bに示す特性と同様な特性を示した。
【0049】
[比較例1]
官能化された添加剤を含有していない製造例4の樹脂組成物および180μm×180μmの底面積および70μm高さのピラミッド形キャビティが整列されている構造のピラミッドパターンを有するシリコンマスターモールドを用いたことを除いては実施例1−1の工程を繰り返して有機モールドを製作した。
【0050】
図4Aは、前記ピラミッドパターン形成用マスターモールドの光学顕微鏡写真であり、図4Bは、前記マスターモールドを用いて製作された有機モールドの光学顕微鏡写真である。図4Aと図4Bを比べてみると、前記で製作された有機モールドが数多くの欠陥を有することが分かる。
【0051】
[比較例2]
少量の反応性希釈剤を含む製造例5の有機モールド組成物を用いたことを除いては、前記実施例1−1の工程を繰り返して有機モールドを製作した。前記有機モールドは高い脆性を有するためパターニング段階中に容易に破損した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の支持体層と、
前記支持体層の上に形成され、活性エネルギー硬化型の樹脂組成物からなり、微細パターンを有する有機モールド層とを備え、
他の樹脂層に前記微細パターンに対応した微細パターンを形成するために用いることを特徴とする多層構造の有機モールド。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、
(A)(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリールエーテルおよびこれらの組合せからなる群から選ばれる反応性基を有する活性エネルギー硬化型ウレタン系オリゴマー40〜90重量部、
(B)前記ウレタン系オリゴマーと反応性があり、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリールエーテルおよびこれらの組合せからなる群から選ばれる反応性基を有する単量体10〜60重量部、
(C)前記成分(A)と(B)の合計100部に対して、シリコーンまたはフッ素含有化合物0.01〜200重量部、および
(D)前記成分(A)、(B)および(C)の合計100部に対して、光開始剤0.1〜10重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の多層構造の有機モールド。
【請求項3】
前記活性エネルギー硬化型ウレタン系オリゴマーは、少なくとも2つの反応性基を有する直鎖脂肪族、脂環族および芳香族ウレタン系オリゴマー並びにこれらの混合物からなる群から選ばれることをことを特徴とする請求項2に記載の多層構造の有機モールド。
【請求項4】
前記成分Aの代替物として、(メタ)アクリル化ポリエステル、(メタ)アクリル化ポリエーテル、(メタ)アクリル化エポキシ、(メタ)アクリル化ポリカーボネート、(メタ)アクリル化ポリブタジエンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる反応性オリゴマーの少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の多層構造の有機モールド。
【請求項5】
前記成分Bとして用いられる(メタ)アクリレートが、イソボルニルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトール(ヒドロキシ)ペンタアクリレート、アルコキシル化テトラアクリレート、オクチルデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、スチレン系単量体およびこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の多層構造の有機モールド。
【請求項6】
前記成分Bとして用いられるビニルエーテルが、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルおよびこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の多層構造の有機モールド。
【請求項7】
前記成分Bとして用いられるアリールエーテルが、アリールプロピルエーテル、アリールブチルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリールエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の多層構造の有機モールド。
【請求項8】
前記シリコーンまたはフッ素を含有する化合物が、
(i)シリコーン含有ビニル誘導体、シリコーン含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシ含有オルガノシロキサン、シリコーンポリアクリレートおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるシリコーン含有反応性化合物、
(ii)フルオロアルキル含有ビニル誘導体、フルオロアルキル含有(メタ)アクリレート、フッ素ポリアクリレートおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるフッ素含有反応性化合物、
(iii)シリコーン若しくはフッ素含有樹脂、またはこれらの混合物、および
(iv)シリコーン若しくはフッ素含有界面活性剤またはオイル、またはこれらの混合物
から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の多層構造の有機モールド。
【請求項9】
前記支持体層の前記有機モールド層と反対側の面に結合され、曲面または平面を有する軟質または硬質のバッキング層をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の多層構造の有機モールド。
【請求項10】
活性エネルギー硬化型の樹脂組成物をマスターモールドのパターン面にコーティングまたはキャスティングして樹脂層を形成する工程(a)と、
前記樹脂層の上に前記樹脂組成物に対する接着性を有する軟質または硬質の支持体を載置した後、前記樹脂層に活性エネルギー線を照射することによって前記樹脂層を予備硬化させる工程(b)と、
予備硬化した前記樹脂層を前記マスターモールドから離型することにより、一の面に前記マスターモールドのパターンに対して反対のパターンを有し、他の面が前記支持体と結合した有機モールド層を形成する工程(c)と、
前記工程(c)よりも後に、前記有機モールド層を完全硬化させる工程(d)とを備え、
前記樹脂組成物は、
(A)(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリールエーテルおよびこれらの組合せからなる群から選ばれる反応性基を有する活性エネルギー硬化型ウレタン系オリゴマー40〜90重量部、
(B)前記ウレタン系オリゴマーと反応性があり、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリールエーテルおよびこれらの組合せからなる群から選ばれる反応性基を有する単量体10〜60重量部、
(C)前記成分(A)と(B)の合計100部に対して、シリコーンまたはフッ素含有化合物0.01〜200重量部、および
(D)前記成分(A)、(B)および(C)の合計100部に対して、光開始剤0.1〜10重量部を含むことを特徴とする多層構造の有機モールドの製造方法。
【請求項11】
前記工程(d)よりも後に、前記支持体と、曲面または平面を有する軟質または硬質のバッキング層とを貼り合わせる工程(e)をさらに備えていることを特徴とする請求項10に記載の多層構造の有機モールドの製造方法。
【請求項12】
活性エネルギー硬化型の樹脂組成物をマスターモールドのパターン面にコーティングまたはキャスティングする工程(a)と、
前記樹脂層に活性エネルギー線を照射して前記樹脂層を予備硬化させる工程(b)と、
予備硬化した前記樹脂層の上に紫外線硬化型または熱硬化型樹脂組成物からなる支持層形成体を形成する工程(c)と、
前記支持体形成層を完全硬化させ支持体を形成する工程(d)と、
予備硬化した前記樹脂層を前記マスターモールドから離型することにより、一の面に前記マスターモールドのパターンに対して反対のパターンを有し、他の面が前記支持体と結合した有機モールド層を形成する工程(e)と、
前記工程(e)よりも後に、前記有機モールド層を完全硬化させる工程(d)とを備え、
前記樹脂組成物は、
(A)(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリールエーテルおよびこれらの組合せからなる群から選ばれる反応性基を有する活性エネルギー硬化型ウレタン系オリゴマー40〜90重量部、
(B)前記ウレタン系オリゴマーと反応性があり、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリールエーテルおよびこれらの組合せからなる群から選ばれる反応性基を有する単量体10〜60重量部、
(C)前記成分(A)と(B)の合計100部に対して、シリコーンまたはフッ素含有化合物0.01〜200重量部、および
(D)前記成分(A)、(B)および(C)の合計100部に対して、光開始剤0.1〜10重量部を含むことを特徴とする多層構造の有機モールドの製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2009−292150(P2009−292150A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158830(P2009−158830)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【分割の表示】特願2006−500673(P2006−500673)の分割
【原出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【出願人】(501409382)ミヌタ・テクノロジー・カンパニー・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】