説明

有機薄膜トランジスタ、面状光源及び表示装置

【課題】優れた電界効果移動度を得ることができる有機薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】下式で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む有機半導体層を備える、有機薄膜トランジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタ、面状光源及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリア輸送層として機能する半導体層が有機物によって構成される有機トランジスタ(有機薄膜トランジスタ)は、低コストで製造可能であるほか、回路が柔軟であるため折り曲げ可能であるといった特性を有することから、例えば、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ等の用途に好適であり、近年、注目されている。上述した半導体層(有機半導体層)を構成する有機物としては、有機半導体材料が用いられる。
【0003】
この有機半導体材料としては、製造工程を容易化できることから、溶媒に溶解させ塗布することによって有機半導体層を形成することができる高分子化合物が検討されている。そのような高分子化合物としては、例えば、フルオレンとビチオフェンとの交互共重合体からなる高分子化合物が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】APPLIED PHYSICS LETTERS, Vol.77, No.3, 2000,p.406〜408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機薄膜トランジスタの特性は、有機半導体層における電荷(電子やホール)の移動度に主に依存し、この電荷の移動度が高いほど有機薄膜トランジスタの電界効果移動度が向上し、特性の優れたものとなる。近年では、有機薄膜トランジスタの用途も多様化しており、従来にも増して高い電荷の移動度が得られることが求められている。しかしながら、上述したような従来の高分子化合物を用いた場合は、近年求められている高い移動度を十分に得ることは困難な傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明はこのような事情に鑑み、有機薄膜トランジスタの有機半導体層に用いた場合に高い電荷の移動度が得られる高分子化合物を見出し、この高分子化合物を用いることで優れた電界効果移動度を得ることができる有機薄膜トランジスタを提供することを目的とする。また、本発明は、上記有機薄膜トランジスタを備える面状光源及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び/又は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位と、下記一般式(3)で表される繰り返し単位とを有する高分子化合物を含む有機半導体層を備える、有機薄膜トランジスタを提供する。
【化1】



[式(1)中、X及びXは同一又は異なり、カルコゲン原子を示し、R、R、R及びRは同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、置換カルボキシル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【化2】



[式(2)中、X11及びX12は同一又は異なり、カルコゲン原子を示し、R13、R14、R15及びR16は同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、置換カルボキシル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【化3】



[式(3)中、Yは置換基を有していてもよい3つ以上の芳香族環が縮合したアリーレン基、置換基を有していてもよい2価の複素環基、置換基を有していてもよい金属錯体構造を有する2価の基、又は、−C≡C−で表される基を示し、nは1〜5の整数を示す。なお、Yが複数存在する場合、複数のYはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0008】
上記高分子化合物は、一般式(1)で表される繰り返し単位、及び/又は、一般式(2)で表される繰り返し単位と、一般式(3)で表される繰り返し単位とを有することにより、有機薄膜トランジスタの有機半導体層に用いた場合に、高い電荷の移動度を得ることができる。そして、上記有機薄膜トランジスタは、上記高分子化合物を含有する有機薄膜を備えることにより、優れた電界効果移動度を得ることができる。
【0009】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記一般式(1)におけるRとR、及び、RとR、並びに、上記一般式(2)におけるR13とR15、及び、R14とR16のうちの少なくとも一組が同種の基であることが好ましい。これにより、高分子化合物の電荷の移動度がより向上し、有機薄膜トランジスタは、より優れた電界効果移動度が得られ易くなる。
【0010】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記一般式(1)におけるR〜Rが水素原子である、及び/又は、上記一般式(2)におけるR13〜R16が水素原子であることが好ましい。これにより、高分子化合物の電荷の移動度がより向上し、有機薄膜トランジスタは、より優れた電界効果移動度が得られ易くなる。
【0011】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記一般式(1)におけるX、及び、X、並びに、上記一般式(2)におけるX11、及び、X12のうちの少なくとも1つが硫黄原子であることが好ましい。これにより、高分子化合物の電荷の移動度がより向上し、有機薄膜トランジスタは、より優れた電界効果移動度が得られ易くなるし、環境面にも優れる。
【0012】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記一般式(3)におけるYが置換基を有していてもよい2価の複素環基であることが好ましい。これにより、高分子化合物の電荷の移動度がより向上し、有機薄膜トランジスタは、より優れた電界効果移動度が得られ易くなる。
【0013】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記一般式(3)で表される繰り返し単位が、下記一般式(4)で表される繰り返し単位であることが好ましい。これにより、高分子化合物の電荷の移動度がより向上し、有機薄膜トランジスタは、より優れた電界効果移動度が得られ易くなる。なお、下記一般式(4)で表される繰り返し単位においては、2つのチオフェン環が、これらを結合している単結合を軸に回転可能である。したがって、下記一般式(4)で表される繰り返し単位としては、各チオフェン環が、それぞれの硫黄原子を上記軸に対して同一の側に有するように配置された繰り返し単位も含まれる。
【化4】



[式(4)中、R20、R21、R22及びR23は同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、置換シリル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【0014】
ここで、上記一般式(4)におけるR20、R21、R22及びR23のうちの少なくとも1つが、炭素数6〜20のアルキル基であることが好ましい。これにより、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にすることができる。
【0015】
本発明はまた、上記本発明の有機薄膜トランジスタを備える面状光源を提供する。
【0016】
本発明はさらに、上記本発明の有機薄膜トランジスタを備える表示装置を提供する。
【0017】
上記面状光源及び表示装置は、優れた電界効果移動度を有する上記本発明の有機薄膜トランジスタを備えることから、優れた特性を発揮することができる。
【発明の効果】
【0018】
上述した特定の構造を有する高分子化合物は、有機薄膜トランジスタの有機半導体層に用いた場合に、高い電荷の移動度を得ることができる。本発明によれば、上記高分子化合物を用いることにより、優れた電界効果移動度を得ることができる有機薄膜トランジスタを提供することができる。また、本発明によれば、上記有機薄膜トランジスタを備える面状光源及び表示装置を提供することができる。本発明の有機薄膜トランジスタは、例えば、液晶ディスプレイや電子ペーパーの駆動回路、照明用としての曲面状や平面状の光源のスイッチ回路、セグメントタイプの表示素子、ドットマトリックスのフラットパネルディスプレイ等の駆動回路に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図6】第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図7】第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図8】実施形態に係る面状光源の模式断面図である。
【図9】実施例で作製した有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書において、「繰り返し単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する構造単位を意味する。また、「n価の複素環基」(nは1又は2である)とは、複素環式化合物(特には、芳香族性をもつ複素環式化合物)からn個の水素原子を除いてなる基を意味する。ここで、「複素環式化合物」とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素として炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、燐原子、硼素原子等のヘテロ原子を含むものをいう。
【0021】
(高分子化合物)
本発明の有機薄膜トランジスタの有機半導体層に用いられる高分子化合物は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び/又は、上記一般式(2)で表される繰り返し単位と、上記一般式(3)で表される繰り返し単位とを有するものである。
【0022】
上記一般式(1)及び(2)中、X、X、X11及びX12は同一又は異なり、カルコゲン原子を示す。
【0023】
上記カルコゲン原子としては、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子が挙げられるが、電荷移動を良好にする観点から硫黄原子、セレン原子、テルル原子が好ましく、環境面から硫黄原子がさらに好ましい。
【0024】
また、上記一般式(1)及び(2)中、R〜R及びR13〜R16は同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、置換カルボキシル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。
【0025】
上記アルキル基は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよく、炭素数が好ましくは1〜24であり、より好ましくは6〜22であり、さらに好ましくは8〜18である。上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサドデシル基、オクタドデシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。これらの中でも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にする観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサドデシル基、オクタドデシル基が好ましい。
【0026】
上記アルコキシ基は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよく、炭素数が好ましくは1〜24であり、より好ましくは6〜22である。上記アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基、2−エトキシエチルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にする観点からは、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基が好ましい。
【0027】
上記アルキルチオ基は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよく、炭素数が好ましくは1〜24であり、より好ましくは6〜22である。上記アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ウンデシルチオ基、ドデシルチオ基、テトラデシルチオ基、ヘキサデシルチオ基、オクタデシルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等が挙げられる。これらの中でも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にする観点からは、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ウンデシルチオ基、ドデシルチオ基、テトラデシルチオ基、ヘキサデシルチオ基、オクタデシルチオ基が好ましい。
【0028】
上記アリール基は、芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環を持つものや、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン基等を介して結合したものを含む。上記アリール基は、炭素数が好ましくは6〜60であり、より好ましくは6〜48であり、さらに好ましくは6〜20であり、特に好ましくは6〜10である。上記アリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−テトラセニル基、2−テトラセニル基、5−テトラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ペリレニル基、3−ペリレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、1−ビフェニレニル基、2−ビフェニレニル基、2−フェナンスレニル基、9−フェナンスレニル基、6−クリセニル基、1−コロネニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、4−(アントラン−9−イル)フェニル基、[1,1’]ビナフタレン−4−イル基、10−フェニルアントラセン−9−イル基、[9,9’]ビアントラセン−10−イル基等が挙げられる。これらの基を構成する水素原子の一部又は全部は、さらにアルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アシル基、N,N−ジアルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、塩素原子、フッ素原子等で置換されていてもよいが、これらの置換基の炭素数は、アリール基の炭素数には含まないこととする。
【0029】
上記アリールオキシ基は、炭素数が好ましくは6〜60であり、より好ましくは7〜48である。上記アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、C〜C18アルコキシフェノキシ基(「C〜C18アルコキシ」は、アルコキシ部分の炭素数が1〜18であることを示す。以下、同様である。)、C〜C18アルキルフェノキシ基(「C〜C18アルキル」は、アルキル部分の炭素数が1〜18であることを示す。以下、同様である。)、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にする観点からは、C〜C18アルコキシフェノキシ基、C〜C18アルキルフェノキシ基が好ましい。上記C〜C18アルコキシフェノキシ基として具体的には、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、i−プロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、i−ブトキシフェノキシ基、t−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、ウンデシルオキシフェノキシ基、ドデシルオキシフェノキシ基、テトラデシルオキシフェノキシ基、ヘキサデシルオキシフェノキシ基、オクタデシルオキシフェノキシ基等が例示される。上記C〜C18アルキルフェノキシ基として具体的には、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、i−プロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、i−ブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ウンデシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基、テトラデシルフェノキシ基、ヘキサデシルフェノキシ基、オクタデシルフェノキシ基等が例示される。
【0030】
上記アリールチオ基は、炭素数が好ましくは3〜60である。上記アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、C〜C18アルコキシフェニルチオ基、C〜C18アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基等が挙げられる。これらの中でも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にする観点からは、C〜C18アルコキシフェニルチオ基、C〜C18アルキルフェニルチオ基が好ましい。
【0031】
上記アリールアルキル基は、炭素数が好ましくは7〜60であり、より好ましくは7〜48である。上記アリールアルキル基の具体例としては、フェニル−C〜C18アルキル基、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルキル基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルキル基、1−ナフチル−C〜C18アルキル基、2−ナフチル−C〜C18アルキル基等が挙げられる。これらの中でも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にする観点からは、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルキル基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルキル基が好ましい。
【0032】
上記アリールアルコキシ基は、炭素数が好ましくは7〜60であり、より好ましくは7〜48である。上記アリールアルコキシ基の具体例としては、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチロキシ基、フェニルヘキシロキシ基、フェニルヘプチロキシ基、フェニルオクチロキシ基等のフェニル−C〜C18アルコキシ基、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルコキシ基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルコキシ基、1−ナフチル−C〜C18アルコキシ基、2−ナフチル−C〜C18アルコキシ基等が挙げられる。これらの中でも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にする観点からは、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルコキシ基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルコキシ基が好ましい。
【0033】
上記アリールアルキルチオ基は、炭素数が好ましくは7〜60であり、より好ましくは7〜48である。上記アリールアルキルチオ基の具体例としては、フェニル−C〜C18アルキルチオ基、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルキルチオ基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルキルチオ基、1−ナフチル−C〜C18アルキルチオ基、2−ナフチル−C〜C18アルキルチオ基等が挙げられる。これらの中でも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にする観点からは、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルキルチオ基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルキルチオ基が好ましい。
【0034】
上記置換シリル基としては、シリル基における水素原子が、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群から選ばれる1、2又は3個の基で置換されたシリル基が挙げられる。上記置換シリル基の炭素数は、好ましくは1〜60であり、より好ましくは3〜48である。なお、シリル基の置換基であるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は、置換基をさらに有していてもよいが、これらの置換基の炭素数は、置換シリル基の炭素数には含まないこととする。上記置換シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、ジメチル−i−プロピリシリル基、ジエチル−i−プロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチルジメチルシリル基、ウンデシルジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、テトラデシルジメチルシリル基、ヘキサデシルジメチルシリル基、オクタデシルジメチルシリル基、フェニル−C〜C18アルキルシリル基、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルキルシリル基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルキルシリル基、1−ナフチル−C〜C18アルキルシリル基、2−ナフチル−C〜C18アルキルシリル基、フェニル−C〜C18アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等が例示される。
【0035】
上記置換カルボキシル基としては、カルボキシル基における水素原子が、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基で置換されたカルボキシル基が挙げられる。置換カルボキシル基の炭素数は、好ましくは2〜60であり、より好ましくは炭素数2〜48である。上記置換カルボキシル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ウンデシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、テトラデシルオキシカルボニル基、ヘキサデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。なお、カルボキシル基の置換基であるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は、置換基をさらに有していてもよいが、これらの置換基の炭素数は、置換カルボキシル基の炭素数には含まないこととする。
【0036】
上記1価の複素環基は、炭素数が好ましくは4〜60であり、より好ましくは4〜20である。上記1価の複素環基として具体的には、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジル基、トリアジニル基等が例示される。これらの中でも、チエニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジル基、トリアジニル基が好ましく、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基がより好ましい。上記1価の複素環基は、さらにアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよいが、これらの置換基の炭素数は、1価の複素環基の炭素数には含まないこととする。
【0037】
高分子化合物の主鎖のパッキングを良好にして電荷の移動度をより向上させる観点から、上記一般式(1)又は(2)の置換基の置換位置は、繰り返し単位中の任意の1つの軸に対して線対称であるか、又は重心に対して点対称となる構造になる位置であることが好ましい。
【0038】
上記のように高分子化合物の主鎖のパッキングを良好にして電荷の移動度をより向上させる観点から、上記一般式(1)においては、RとR、及び/又は、RとRが同種の基であることが好ましい。同様に、上記一般式(2)においては、R13とR15、及び/又は、R14とR16が同種の基であることが好ましい。ここで「同種の基」とは、例えば、アルキル基同士、アルコキシ基同士といった、同じ種類に分類される基であることを意味する。これらの同種の基は、鎖長や分岐の位置、置換基も同じである同一構造の基であることがより好ましい。
【0039】
さらに、高分子化合物の主鎖のパッキングをより良好にするとともに、主鎖内の平面性を向上させ、電荷の移動度をより一層向上させる観点から、上記一般式(1)においては、R、R、R及びRが水素原子であることが好ましい。同様に、上記一般式(2)においては、R13、R14、R15及びR16が水素原子であることが好ましい。
【0040】
具体的には、上記一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(10)で表される繰り返し単位であることが好ましく、上記一般式(2)で表される繰り返し単位は、下記一般式(11)で表される繰り返し単位であることが好ましい。なお、下記一般式(10)及び(11)中のX、X、X及びXは、上記一般式(1)及び(2)中のX、X、X及びXと同義である。
【0041】
【化5】



【0042】
【化6】



【0043】
また、高分子化合物は、上記一般式(3)で示される繰り返し単位をさらに有している。
【0044】
上記一般式(3)中、Yは、置換基を有していてもよい3つ以上の芳香族環が縮合したアリーレン基、置換基を有していてもよい2価の複素環基、置換基を有していてもよい金属錯体構造を有する2価の基、又は、−C≡C−で表される基を示す。
【0045】
上記3つ以上の芳香族環が縮合したアリーレン基は、3つ以上の芳香族環が縮合した多環芳香族炭化水素から水素原子2個を除いてなる原子団を意味し、独立したベンゼン環又は縮合環を持つものを含む。縮合している芳香族環が3環未満であるアリーレン基では、高分子化合物の電荷移動度が不十分となるため好ましくない。また、芳香族環の縮合環の数が多くなり過ぎると酸化されやすくなり、有機薄膜トランジスタの製造プロセスにおける安定性やデバイスの駆動時の寿命の点で好ましくない。そのため、縮合環数としては3環以上7環以下であることが好ましく、3環以上5環以下であることがより好ましい。さらに、3つ以上の芳香族環が縮合したアリーレン基としては、3環以上5環以下のアセン系化合物から水素原子2個を除いた基であることが特に好ましい。
【0046】
上記3つ以上の芳香族環が縮合したアリーレン基の具体例としては、1,4−アントラセンジイル基、1,5−アントラセンジイル基、2,6−アントラセンジイル基、9,10−アントラセンジイル基等の非置換若しくは置換のアントラセンジイル基;2,7−フェナントレンジイル基等の非置換若しくは置換のフェナントレンジイル基;1,7−ナフタセンジイル基、2,8−ナフタセンジイル基、5,12−ナフタセンジイル基等の非置換若しくは置換のナフタセンジイル基;1,6−ピレンジイル基、1,8−ピレンジイル基、2,7−ピレンジイル基、4,9−ピレンジイル基等の非置換若しくは置換のピレンジイル基;3,9−ペリレンジイル基、3,10−ペリレンジイル基等の非置換若しくは置換のペリレンジイル基等が挙げられる。これらの中でも、非置換若しくは置換のアントラセンジイル基が好ましい。
【0047】
上記2価の複素環基は、炭素数が好ましくは4〜60であり、より好ましくは4〜48であり、さらに好ましくは4〜30であり、特に好ましくは4〜22であり、とりわけ好ましくは4〜12であり、極めて好ましくは4である。2価の複素環基は置換基を有していてもよいが、置換基の炭素数は、2価の複素環基の炭素数には含まないこととする。上記2価の複素環基の具体例としては、2,5−チオフェンジイル基等の非置換若しくは置換のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等の非置換若しくは置換のフランジイル基;2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等の非置換若しくは置換のピリジンジイル基;2,6−キノリンジイル基等の非置換若しくは置換のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等の非置換若しくは置換のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等の非置換若しくは置換のキノキサリンジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等の非置換若しくは置換のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等の非置換若しくは置換のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等の非置換若しくは置換のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等の非置換若しくは置換のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等の非置換若しくは置換のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等の非置換若しくは置換のジベンゾシロールジイル基等が挙げられる。これらの中でも、2,5−チオフェンジイル基等の非置換若しくは置換のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等の非置換若しくは置換のフランジイル基;2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等の非置換若しくは置換のピリジンジイル基;2,6−キノリンジイル基等の非置換若しくは置換のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基が好ましく、2,5−チオフェンジイル基等の非置換若しくは置換のチオフェンジイル基がより好ましい。
【0048】
2価の複素環基が置換基を有する場合、置換基としては、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基及びフッ素原子からなる群から選ばれるものが挙げられる。なかでも、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、特に好ましくはアルキル基である。アルキル基としては、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にする観点から、炭素数6〜20のアルキル基が好ましく、炭素数8〜18のアルキル基がより好ましい。
【0049】
上記金属錯体構造を有する2価の基とは、有機配位子と中心金属とを有する金属錯体の有機配位子から水素原子を2個除いてなる残りの原子団を意味する。この金属錯体としては、低分子の蛍光材料、燐光材料として公知の金属錯体、三重項発光錯体等が挙げられる。
【0050】
上記金属錯体における有機配位子の炭素数は、好ましくは4〜60である。上記有機配位子としては、8−キノリノール及びその誘導体、ベンゾキノリノール及びその誘導体、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体、2−フェニル−ベンゾチアゾール及びその誘導体、2−フェニル−ベンゾキサゾール及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体等が挙げられる。
【0051】
上記金属錯体の中心金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ベリリウム、イリジウム、白金、金、ユーロピウム、テルビウム等が挙げられる。
【0052】
上記一般式(3)中、nは1〜5の整数であり、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは1〜3の整数であり、さらに好ましくは1又は2である。
【0053】
上記一般式(3)中、Yが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0054】
さらに、電荷の移動度をより向上させる観点から、上記一般式(3)で表される繰り返し単位は、上記一般式(4)で表される繰り返し単位であることが特に好ましい。
【0055】
上記一般式(4)中、R20、R21、R22及びR23は同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、置換シリル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスを良好にする観点から、上記一般式(4)におけるR20、R21、R22及びR23のうちの少なくとも1つが、炭素数6〜20のアルキル基であることが好ましく、R20とR23、及び/又は、R21とR22が炭素数6〜20のアルキル基であることがより好ましい。なお、このアルキル基の炭素数は、上記と同様の観点から、炭素数8〜18であることがより好ましい。
【0056】
本発明の有機薄膜トランジスタに用いられる高分子化合物においては、高分子化合物の電荷注入性、有機溶媒への溶解性などを良好にする観点から、全繰り返し単位の合計モル数に対する、上記一般式(1)で表される繰り返し単位及び/又は上記一般式(2)で表される繰り返し単位の合計モル数の割合が20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましく、40〜60%であることがさらに好ましく、50%であることが特に好ましい。
【0057】
また、高分子化合物が上記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び、上記一般式(2)で表される繰り返し単位の両方を有する場合、高分子化合物の主鎖配向性を良好にする観点から、上記一般式(1)で表される繰り返し単位及び上記一般式(2)で表される繰り返し単位の合計のモル数に対する、少ない方の繰り返し単位のモル数の割合が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.05%以下であることが特に好ましい。
【0058】
また、高分子化合物においては、電荷注入性、有機溶媒への溶解性の観点から、全繰り返し単位の合計モル数に対する、上記一般式(3)で表される繰り返し単位の合計モル数の割合が20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましく、40〜60%であることがさらに好ましく、45〜55%であることが特に好ましい。
【0059】
高分子化合物は、如何なる共重合体であってもよく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。ただし、高分子化合物の電荷移動特性をより良好にする観点から、上記一般式(1)で表される繰り返し単位及び/又は上記一般式(2)で表される繰り返し単位と、上記一般式(3)で表される繰り返し単位とが交互に結合した構造を有していることが好ましい。また、上記の特性をより良好にする観点から、高分子化合物は、上記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位のいずれか一方と上記一般式(3)で表される繰り返し単位とが交互に結合した構造を有していることがさらに好ましく、上記一般式(1)で表される繰り返し単位と上記一般式(3)で表される繰り返し単位とが交互に結合した構造を有していることが特に好ましい。
【0060】
さらに、高分子化合物は、高分子化合物の電荷移動特性をより良好にする観点から、全繰り返し単位に対する、上記一般式(1)で表される繰り返し単位及び/又は上記一般式(2)で表される繰り返し単位と、上記一般式(3)で表される繰り返し単位とが交互に結合した構造に含まれる繰り返し単位の割合が90%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましく、99.9%以上であることが特に好ましい。
【0061】
また、高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1×10〜1×10であり、成膜性の観点から、より好ましくは1×10〜5×10、特に好ましくは1×10〜5×10である。
【0062】
高分子化合物の末端基は安定な基であることが好ましい。このような末端基としては、主鎖と共役結合しているものが好ましく、例えば、炭素−炭素結合を介してアリール基又は複素環基と結合している構造が挙げられる。具体的には、特開平9−45478号公報の化10に記載された置換基等が末端基として例示できる。
【0063】
(高分子化合物の製造方法)
次に、上述した構造を有する高分子化合物の好ましい製造方法について説明する。
【0064】
高分子化合物は、例えば、下記一般式(5)又は(6)で表される化合物の1種類以上と、下記一般式(7)で表される化合物の1種類以上とを縮合重合することにより製造することができる。
【0065】
【化7】



【0066】
【化8】



【0067】
【化9】



【0068】
上記一般式(5)〜(7)中、X、X、X11、X12、R〜R、R13〜R16及びnは、上記一般式(1)〜(3)中のものと同義である。また、Z、Z、Z11、Z12、Z21、Z22は同一又は異なり、ハロゲン原子、下記一般式(a−1)で表されるスルホネート基、メトキシ基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(即ち、−B(OH)で表される基)、下記一般式(a−2)で表される基、下記一般式(a−3)で表される基、又は、下記一般式(a−4)で表される基を示す。
【0069】
【化10】



[式中、R31は、非置換若しくは置換のアルキル基、又は、非置換若しくは置換のアリール基を示す。]
【0070】
【化11】



[式中、Xは、ハロゲン原子を示す。]
【化12】



[式中、Xは、ハロゲン原子を示す。]
【化13】



[式中、R32は、非置換若しくは置換のアルキル基、又は、非置換若しくは置換のアリール基を示す。なお、複数存在するR32はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0071】
上記一般式(5)〜(7)、(a−2)及び(a−3)中、Z、Z、Z11、Z12、Z21、Z22及びXで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0072】
上記一般式(5)〜(7)中、Z、Z、Z11、Z12、Z21及びZ22で表されるホウ酸エステル残基としては、例えば、下記の化学式で表される基が挙げられる。
【化14】



【0073】
上記一般式(a−1)中、R31で表されるアルキル基及びアリール基の定義、具体例は、上記一般式(1)及び(2)中のR〜R、R13〜R16の置換基の項で説明した定義、具体例と同様である。上記一般式(a−1)で表されるスルホネート基としては、例えば、メタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基、フェニルスルホネート基、4−メチルフェニルスルホネート基等が挙げられる。
【0074】
上記一般式(a−4)中、R32で表されるアルキル基及びアリール基の定義、具体例は、上記一般式(1)及び(2)中のR〜R、R13〜R16の置換基の項で説明した定義、具体例と同様である。上記一般式(a−4)で表される基としては、例えば、トリメチルスタナニル基、トリエチルスタナニル基、トリブチルスタナニル基等が挙げられる。
【0075】
上記一般式(5)〜(7)で表される化合物は、予め合成して単離したものを用いてもよいし、反応系中で調製してそのまま用いてもよい。
【0076】
上記一般式(5)〜(7)中、Z、Z、Z11、Z12、Z21及びZ22は、上記一般式(5)〜(7)で表される化合物の合成の簡便さや取り扱いやすさ等から、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基であることが好ましい。
【0077】
上記縮合重合の方法としては、上記一般式(5)〜(7)で表される化合物を、必要に応じて、適切な触媒や適切な塩基を用いて、反応させる方法が挙げられる。
【0078】
上記反応に用いる触媒としては、例えば、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート等のパラジウム錯体、ニッケル[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル、[ビス(1,4−シクロオクダジエン)]ニッケル等のニッケル錯体等の遷移金属錯体や、これらの遷移金属錯体と、トリフェニルホスフィン、トリ(t−ブチルホスフィン)、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、ビピリジル等の配位子とからなる触媒が挙げられる。上記触媒は、予め合成したものを用いてもよいし、反応系中で調製したものをそのまま用いてもよい。上記触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0079】
上記触媒を用いる場合、その量は、上記一般式(5)〜(7)で表される化合物のモル数の合計に対する遷移金属化合物の量として、0.00001〜3モル当量であることが好ましく、0.00005〜0.5モル当量であることがより好ましく、0.0001〜0.2モル当量であることがさらに好ましい。
【0080】
一方、上記反応に用いる塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の有機塩基が挙げられる。
【0081】
上記塩基を用いる場合、その量は、上記一般式(5)〜(7)で表される化合物のモル数の合計に対して、0.5〜20モル当量であることが好ましく、1〜10モル当量であることがより好ましい。
【0082】
上記縮合重合は、溶媒の非存在下で行っても、溶媒の存在下で行ってもよいが、好ましくは有機溶媒存在下で行われる。
【0083】
上記有機溶媒は、上記一般式(5)〜(7)で表される化合物の種類や、重合反応の種類によって異なるが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。一般的に、副反応を抑制するために、溶媒としては、脱酸素処理が施されたものを用いることが望ましい。これらの有機溶媒は一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0084】
上記有機溶媒を使用する場合、その使用量は、上記一般式(5)〜(7)で表される化合物の合計濃度が、好ましくは0.1〜90質量%、より好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは2〜30質量%となる量にすることが好ましい。
【0085】
上記縮合重合の反応温度は、好ましくは−100℃〜200℃であり、より好ましくは−80℃〜150℃であり、さらに好ましくは0℃〜120℃である。
【0086】
上記縮合重合の反応時間は、反応温度等の条件にもよるが、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは2〜500時間である。
【0087】
上記縮合重合は、脱水条件下で行うことが望ましい場合がある。例えば、上記一般式(5)〜(7)中のZ、Z、Z11、Z12、Z21及びZ22が、上記一般式(a−2)で表される基である場合には、脱水条件下で行うことが望ましい。
【0088】
上記縮合重合を行う方法としては、例えば、Suzuki反応により重合する方法(ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年))、Grignard反応により重合する方法(共立出版、高分子機能材料シリーズ第2巻、高分子の合成と反応(2)、432〜433頁)、山本重合法により重合する方法(プログレッシブ ポリマー サイエンス(Prog.Polym.Sci.),第17巻,1153〜1205頁,1992年)等が挙げられる。
【0089】
上記縮合重合の後処理は、公知の方法で行うことができ、例えば、メタノール等の低級アルコールに上記縮合重合で得られた反応溶液を加えて析出させた沈殿を濾過、乾燥する方法が挙げられる。
【0090】
上記後処理により本発明の高分子化合物が得られるが、該高分子化合物の純度が低い場合には、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製すればよい。
【0091】
上記一般式(5)、(6)で表される化合物のいずれか一方と、上記一般式(7)で表される化合物とを共重合する場合、繰り返し単位として交互に存在することが好ましいので、一般式(5)、(6)中のZ、Z、Z11、Z12がハロゲン原子である化合物と、一般式(7)中のZ21、Z22がホウ酸残基又はホウ酸エステル残基である化合物との組み合わせ、或いは、一般式(5)、(6)中のZ、Z、Z11、Z12がホウ酸残基又はホウ酸エステル残基である化合物と、一般式(7)中のZ21、Z22がハロゲン原子である化合物との組み合わせを、Suzuki重合を用いて重合させる方法が好ましい。
【0092】
その中でも、上記一般式(5)におけるRとR、及び/又は、RとRが同種の基であることが好ましく、上記一般式(6)におけるR13とR15、及び/又は、R14とR16が同種の基であることが好ましい。また、上記一般式(5)におけるR、R、R及びRが水素原子であること、及び、上記一般式(6)におけるR13、R14、R15及びR16が水素原子であることがさらに好ましい。
【0093】
(有機薄膜トランジスタ)
次に、上述した高分子化合物を含有する有機半導体層を備える本発明の有機薄膜トランジスタの好適な実施形態について説明する。
【0094】
有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり上記高分子化合物を含有する有機半導体層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えるものであり、電界効果型、静電誘導型などが例示される。
【0095】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、有機半導体層(活性層)に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0096】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層中に設けられたゲート電極が、有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0097】
図1は、第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔をもって形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0098】
図2は、第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、有機半導体層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0099】
図3は、第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、を備えるものである。
【0100】
図4は、第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0101】
図5は、第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔をもって複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして有機半導体層2上に形成された有機半導体層2a(有機半導体層2aを構成する材料は、有機半導体層2と同一でも異なっていてもよい)と、有機半導体層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0102】
図6は、第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔をもって形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0103】
図7は、第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された有機半導体層2と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように有機半導体層2上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔をもって有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0104】
上述した第1〜第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aは、上述した高分子化合物を含む有機薄膜から構成されており、ソース電極5とドレイン電極6との間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0105】
上述した有機薄膜トランジスタのうち、電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば、特開平5−110069号公報に記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば、特開2004−006476号公報に記載の方法により製造することができる。
【0106】
基板1は、有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければよく、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0107】
有機半導体層2は、上述した高分子化合物を含むものであり、高分子化合物のみから構成されていてもよく、高分子化合物以外の材料を含んで構成されていてもよい。また、有機半導体層2は、上記高分子化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、上記高分子化合物の2種類以上を含むものであってもよい。有機半導体層2は、電子輸送性又はホール輸送性を高めるために、上記高分子化合物以外に、電子輸送性又はホール輸送性を有する低分子化合物や高分子化合物をさらに含有していてもよい。
【0108】
ホール輸送性材料としては、公知のものが使用でき、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体、並びに、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体等が例示される。
【0109】
電子輸送性材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、並びに、C60等のフラーレン類及びその誘導体等が例示される。
【0110】
また、有機半導体層2は、機械的特性を高めるために、上記以外の高分子化合物材料を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0111】
このような高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、並びに、ポリシロキサン等が例示される。
【0112】
有機半導体層2の膜厚は、好ましくは1nm〜100μmであり、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは3nm〜500nmであり、特に好ましくは5nm〜200nmである。
【0113】
有機半導体層2の製造方法としては、例えば、上記高分子化合物や、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダー等を含む溶液を用いて成膜する方法が例示される。また、高分子化合物がオリゴマーである場合には、真空蒸着法により薄膜に形成することもできる。
【0114】
溶液から有機半導体層2を成膜する場合に用いる溶媒としては、上記高分子化合物、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを溶解できるものであればよい。このような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒等が例示される。高分子化合物の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に高分子化合物を0.1質量%以上溶解させた溶液を用いて有機半導体層2を成膜することができる。
【0115】
溶液から有機半導体層2を成膜する場合の成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0116】
有機半導体層2を製造する際には、高分子化合物を配向させる工程を行ってもよい。この工程により、高分子化合物が配向した状態で含まれる有機半導体層2が得られる。このような有機半導体層2は、主鎖分子又は側鎖分子が一方向に並ぶので、電子移動度又はホール移動度が向上するため好ましい。
【0117】
高分子化合物を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。中でもラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が、配向手法として簡便かつ有用で利用しやすいため好ましく、ラビング法、シェアリング法がより好ましい。
【0118】
有機半導体層2に接する絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知のものを用いることができる。絶縁層3の構成材料としては、例えば、SiOx、SiNx、Ta、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジスト等が挙げられる。低電圧化の観点からは、絶縁層3には誘電率の高い材料を用いることが好ましい。
【0119】
絶縁層3の上に有機半導体層2を形成する場合は、絶縁層3と有機半導体層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3表面を処理して表面改質した後に有機半導体層2を形成することも可能である。
【0120】
電界効果型有機薄膜トランジスタの場合、電子やホール等のキャリアは、一般に絶縁層3と有機半導体層2の界面付近を通過する。したがって、この界面の状態がトランジスタの移動度に大きな影響を与える。そこで、この界面状態を改良して特性を向上させる方法として、シランカップリング剤による界面の制御が知られている(例えば、表面科学,Vol.28.No.5,pp242−248,2007)。
【0121】
シランカップリング剤としては、アルキルクロロシラン類(オクチルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)、フェニルエチルトリクロロシラン等)、アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリルアミン化合物等が挙げられる。また、表面処理剤で処理する前には、絶縁層表面をオゾンUV、Oプラズマで処理をしておくことも可能である。
【0122】
このような処理によって、絶縁層3として用いられるシリコン酸化膜などの表面エネルギーを制御することができる。また、表面処理により、有機半導体層2を構成している高分子化合物の絶縁層3上での配向性が向上し、これによって高いキャリア輸送性(移動度)が得られる。
【0123】
ゲート電極4としては、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等の材料を用いることができる。これらの材料は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ゲート電極4としては、高濃度にドープされたシリコン基板を用いることも可能である。高濃度にドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての性質とともに、基板としての性質も併せて有する。このような基板としての性質をも有するゲート電極4を用いる場合には、基板1とゲート電極4とが接している有機薄膜トランジスタにおいて、基板1を省略してもよい。例えば、上述した第3、4、7実施形態の有機薄膜トランジスタにおいて、ゲート電極4が基板1を兼ねる構成とすることができる。
【0124】
ソース電極5及びドレイン電極6は、低抵抗の材料から構成され、例えば、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム及びモリブデン等から構成される。これらの中でも、電荷注入の観点から、金、白金が好ましく、プロセス容易性の観点から金がさらに好ましい。これらの材料は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0125】
以上、好適な実施形態の有機薄膜トランジスタとして幾つかの例を説明したが、有機薄膜トランジスタは上記の実施形態に限定されない。例えば、ソース電極5及びドレイン電極6と、有機半導体層2との間には、上述した高分子化合物とは異なる化合物からなる層が介在していてもよい。これにより、ソース電極5及びドレイン電極6と、有機半導体層2との間の接触抵抗が低減され、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度をさらに高めることができる場合がある。
【0126】
このような層としては、上述したような電子又はホール輸送性を有する低分子化合物;アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属やこれらの金属と有機化合物との錯体等;ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素等のハロゲン;硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物;硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物;過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物;アルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物等からなる層が挙げられる。
【0127】
また、上述したような有機薄膜トランジスタを作製した後には、素子を保護するため、有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタが大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑制することができる。また、有機薄膜トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合、保護膜によって、その形成工程における有機薄膜トランジスタへの影響も低減することができる。
【0128】
保護膜を形成する方法としては、有機薄膜トランジスタを、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機薄膜トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程は、大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で)行うことが好ましい。
【0129】
(面状光源及び表示装置)
次に、本発明の有機薄膜トランジスタを用いた面状光源及び表示装置について説明する。
【0130】
面状光源及び表示装置は、駆動トランジスタ及びスイッチングトランジスタの少なくとも2つの有機薄膜トランジスタを備えるものである。本発明の面状光源及び表示装置は、このうちの少なくとも1つの有機薄膜トランジスタとして、上述した本発明の有機薄膜トランジスタを用いたものである。
【0131】
図8は、好適な実施形態に係る面状光源の模式断面図である。図8に示す面状光源200においては、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2全体を覆うように有機半導体層2上に形成された保護膜11とにより、有機薄膜トランジスタTが構成されている。
【0132】
また、面状光源200においては、有機薄膜トランジスタT上に、層間絶縁膜12を介して、下部電極(陽極)13、発光素子14及び上部電極(陰極)15が順次積層されており、層間絶縁膜12に設けられたビアホールを通じて下部電極13とドレイン電極6とが電気的に接続されている。また、下部電極13及び発光素子14の周囲にはバンク部16が設けられている。さらに、上部電極15上方には基板18が配置され、上部電極15と基板18との間は封止部材17により封止されている。
【0133】
図8に示した面状光源200において、有機薄膜トランジスタTは、駆動トランジスタとして機能する。また、図8に示した面状光源200においては、スイッチングトランジスタは省略されている。
【0134】
本実施形態に係る面状光源200においては、有機薄膜トランジスタTに上述した本発明の有機薄膜トランジスタが用いられる。それ以外の構成部材については、公知の面状光源における構成部材を用いることができる。なお、上部電極15、封止部材17及び基板18としては、透明なものが用いられる。
【0135】
また、図8に示した面状光源200は、発光素子14に白色発光材料を用いることで面状光源として機能するが、発光素子14に赤色発光材料、青色発光材料及び緑色発光材料を用い、それぞれの発光素子の駆動を制御することで、カラー表示装置とすることができる。
【0136】
面状光源及び表示装置において、パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、発光素子を構成する発光層の非発光とすべき部分を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。さらに、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【実施例】
【0137】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0138】
(重量平均分子量の測定)
以下の実施例において、高分子化合物の分子量は、島津製作所製GPC(商品名:LC−10Avp)又はGPCラボラトリー製GPC(商品名:PL−GPC2000)を用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めることにより測定した。
【0139】
LC−10Avpにて測定する場合、高分子化合物を約0.5質量%の濃度となるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入した。この際、GPCの移動相にはテトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本と、TSKgel SuperH2000(東ソー製)1本とを直列に繋げた。検出器には、示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いた。
【0140】
一方、PL−GPC2000にて測定する場合、高分子化合物を約1質量%の濃度となるようにo−ジクロロベンゼンに溶解させた。この際、GPCの移動相にはo−ジクロロベンゼンを用い、測定温度140℃で、1mL/分の流速で流した。カラムは、PLGEL 10μm MIXED−B(PLラボラトリー製)を3本直列で繋げた。
【0141】
<合成例1:高分子化合物(1)の合成>
50mL3つ口フラスコに、4,4’−ジドデシル−5,5’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,5−ジオキサボロラン−2−イル)−2,2’−ビチオフェン(319mg、0.4mmol)、2,6−ジブロモナフト[1,8−bc:5,4−b’c’]ジチオフェン(149mg、0.4mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(7.3mg、0.008mmol)、トリターシャリーブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(9.3mg、0.032mmol)、テトラヒドロフラン(7.7mL)を入れた。ここへ、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液(0.6mL)を加え、40℃で2時間反応させた後、5時間還流しながら撹拌させた。
【0142】
反応後の溶液にクロロベンゼンと水を加え、120℃で15分撹拌した後、水層を取り除いた。次いで、もう一度水を加え、120℃で15分撹拌した後、水層を取り除いた。得られたクロロベンゼン溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式(8)で表される高分子化合物(1)(200mg)を得た。高分子化合物(1)のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.1×10であった。
【0143】
【化15】



[式中、mは重合度を表す。]
【0144】
[実施例1]
(有機薄膜トランジスタの作製)
合成例1で得られた高分子化合物(1)を用い、以下の方法で図9に示す構造を有する有機薄膜トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、200nmのシリコン酸化膜32を形成した。次に、フォトリソ工程によりシリコン酸化膜32上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(シリコン酸化膜側から、クロム、金の順)を作製した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)を用いて、スピンコート法により基板の表面をシラン処理した。次に、合成例1で得られた高分子化合物(1)をオルトジクロロベンゼンに溶解して0.5質量%の溶液を作製し、メンブランフィルターでろ過した後、この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。これにより、高分子化合物(1)を含む厚さ約30nmの有機半導体層35を形成し、有機薄膜トランジスタを得た。
【0145】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを40〜−40V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−40Vに変化させてトランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性でVg=−40V、Vsd=−40Vにおいてドレイン電流0.04μAが得られた。また、この特性から電界効果移動度は8×10−4cm/Vsと算出された。
【0146】
<合成例2:高分子化合物(2)の合成>
50mL3つ口フラスコに4,4’−ジドデシル−5,5’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,5−ジオキサボロラン−2−イル)−2,2’−ビチオフェン(341mg、0.452mmol)、2,7−ジブロモ−4,5−ジヘプチルベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(246mg、0.452mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(8.3mg、0.009mmol)、トリターシャリーブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(10.5mg、0.036mmol)、テトラヒドロフラン(12mL)を入れた。この溶液を60℃に加熱し、そこへ、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液(0.7mL)を加え、3時間還流撹拌させた。ここへ、フェニルボロン酸(9mg)、テトラヒドロフラン(3mL)を加え、さらに4.5時間還流撹拌させた。続いて、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(0.25g)と水(6mL)を加え、12時間還流しながら撹拌させた。
【0147】
反応後の溶液にトルエンを加え、温水、酢酸水溶液、温水の順で洗浄した。次いで、トルエン溶液をシリカゲルカラムとアルミナカラムに通液させた。その後、トルエン溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式(9)で表される高分子化合物(2)(302mg)を得た。高分子化合物(2)のポリスチレン換算の重量平均分子量は4.3×10であった。
【0148】
【化16】



[式中、mは重合度を表す。]
【0149】
[比較例1]
(有機薄膜トランジスタの作製)
合成例2で得られた高分子化合物(2)をトルエンに溶解して0.5質量%溶液を作製した。この溶液を用いて有機半導体層35を形成した以外は実施例1と同様にして、有機薄膜トランジスタを作製した。
【0150】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを40〜−40V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−40Vに変化させてトランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性でVg=−40V、Vsd=−40Vにおいてドレイン電流値は0.002μAであり、実施例1と比較して低かった。また、電界効果移動度は1×10−5cm/Vsと算出され、実施例1と比較して低かった。
【符号の説明】
【0151】
1…基板、2…有機半導体層、2a…有機半導体層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7a…第1の電極、7b…第2の電極、8…電荷発生層、11…保護膜、12…層間絶縁膜、13…下部電極(陽極)、14…発光素子、15…上部電極(陰極)、16…バンク部、17…封止部材、18…基板、100…第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、200…実施形態に係る面状光源。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び/又は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位と、下記一般式(3)で表される繰り返し単位とを有する高分子化合物を含む有機半導体層を備える、有機薄膜トランジスタ。
【化1】



[式(1)中、X及びXは同一又は異なり、カルコゲン原子を示し、R、R、R及びRは同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、置換カルボキシル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【化2】



[式(2)中、X11及びX12は同一又は異なり、カルコゲン原子を示し、R13、R14、R15及びR16は同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、置換カルボキシル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【化3】



[式(3)中、Yは置換基を有していてもよい3つ以上の芳香族環が縮合したアリーレン基、置換基を有していてもよい2価の複素環基、置換基を有していてもよい金属錯体構造を有する2価の基、又は、−C≡C−で表される基を示し、nは1〜5の整数を示す。なお、Yが複数存在する場合、複数のYはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(1)におけるRとR、及び、RとR、並びに、前記一般式(2)におけるR13とR15、及び、R14とR16のうちの少なくとも一組が同種の基である、請求項1記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるR〜Rが水素原子である、及び/又は、前記一般式(2)におけるR13〜R16が水素原子である、請求項1記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるX、及び、X、並びに、前記一般式(2)におけるX11、及び、X12のうちの少なくとも1つが硫黄原子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記一般式(3)において、Yが置換基を有していてもよい2価の複素環基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記一般式(3)で表される繰り返し単位が、下記一般式(4)で表される繰り返し単位である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【化4】



[式(4)中、R20、R21、R22及びR23は同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、置換シリル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【請求項7】
前記一般式(4)におけるR20、R21、R22及びR23のうちの少なくとも1つが、炭素数6〜20のアルキル基である、請求項6記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタを備える面状光源。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機薄膜トランジスタを備える表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−283072(P2010−283072A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134177(P2009−134177)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】