説明

有機金属前駆体化合物

本発明は、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属化合物、有機金属化合物を製造する方法並びに有機金属前駆体化合物の熱的又はプラズマ強化解離により基体上に金属及び/又は金属炭化物/窒化物層を堆積する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属化合物、有機金属化合物を製造する方法及び有機金属前駆体化合物から膜又は被膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工業は、様々な用途のために種々の金属の薄膜の使用を現在検討している。多数の有機金属錯体は、これらの薄膜の形成のための潜在的前駆体として評価されている。新しい化合物を開発すること及び膜の堆積のための前駆体としてのこれらの可能性を探求することに対する必要性がこの工業には存在する。薄膜においてより高度の均一性及び適合性に対する要求の増加による、物理堆積(PVD)法から化学堆積(CVD)法及び原子層堆積(ALD)法への工業的移行は、更なる半導体材料のために好適な前駆体に対する要望をもたらした。
【0003】
この工業において、銅等の導電性金属は、集積回路の製造中に基体上でサブミクロン形状を充填するために使用されている。しかしながら、銅は隣接する誘電体層の構造中へ拡散する可能性があり、これによって形成されるデバイスの完全性が損なわれる。拡散は層剥離等の層間欠陥と同様に、バリヤー層、ライナー層又は両者の組合せを、導電性金属を堆積する前に下地材料の上に堆積することにより防ぐことができる。バリヤー層は下地材料の上に堆積され、多くの場合、層間拡散を防ぐ金属の窒化物であり、下地材料とその後に堆積される材料との間の化学反応を最小にする。ライナー層は、導電性金属層への接着を与える金属から通常構成される。
【0004】
タングステン、タンタル、ニオブ等の金属、及びそれぞれの金属窒化物は、銅の適用におけるライナー及びバリヤー材料として検討されている。例えば、米国特許第6,491,978B1号及び第6,379,748B1号を参照されたい。用途によって、ライナー接着層及び/又は拡散バリヤー層は、タングステン、タンタル、又はニオブ等の金属、窒化タングステン、窒化タンタル、又は窒化ニオブ層等の金属窒化物層、金属及び金属窒化物スタック、又は拡散バリヤー材料のその他の組合せを含み得る。金属及び金属窒化物層は、古くはPVD技法により堆積されていた。しかしながら、従来のPVD技法は、高アスペクト比バイアス及びその他の形状の壁及び底部表面上でコンフォーマルカバレッジを与えるには十分適したものではない。したがって、アスペクト比が増加しデバイス形状が縮小するにつれて、新しい前駆体及び堆積技法が、これらのデバイス形状においてコンフォーマルカバレッジを与えるために研究されている。
【0005】
上記で触れたような金属及び金属窒化物層のPVD技法に代わるものとして提案されているものは、基体形状の良好なコンフォーマルカバレッジを与えるためにCVD技法で層を堆積することである。有機金属前駆体の解離により高アスペクト比形状においてコンフォーマルな金属及び金属窒化物層を堆積するための能力はCVD技法の開発によって近年興味がもたれてきている。そのような技法では、金属成分及び有機成分を含む有機金属前駆体は処理室中へ導入され、基体上に金属成分を堆積するために解離し、一方前駆体の有機部分は室から排出される。
【0006】
CVD技法による金属層の堆積のための市販の有機金属前駆体、例えば、タングステン、タンタル、及びニオブ前駆体等は殆ど存在していない。利用可能な前駆体は、炭素及び酸素等の汚染物質の受け入れがたい水準を有し得る層を生成し、要求に満たない拡散抵抗性、低い熱安定性、及び望ましくない層特性を有する。更に、幾つかの場合では、金属窒化物層を堆積するために使用される利用可能な前駆体は高い抵抗性を有する層を生成し、幾つかの場合では、絶縁性の層を生成する。
【0007】
PVD法に代わるものとして提案されている別の方法はALD法である。ALD技術は、薄膜を堆積することにおいてPVD技術よりも優れていると考えられている。しかしながら、ALD技術にとっての課題は適当な前駆体の入手可能性である。ALD法は一連のステップを含む。このステップは、1)基体の表面上での前駆体の吸着、2)気相での過剰前駆体分子の放出、3)基体表面上で前駆体と反応させるための反応体の導入、及び4)過剰反応体の放出を含む。
ALD法では、前駆体は厳しい要件を満たさねばならない。第一に、ALD前駆体は、堆積条件下で物理吸着又は化学吸着により基体表面上に単分子層を形成することができなければならない。第二に、吸着された前駆体は高い不純物水準をもたらす表面上での早期分解を防ぐために十分安定でなければならない。第三に、吸着された分子は、相対的に低い温度で、表面上に所望の材料の純粋相を残すために反応体と相互作用するために十分反応性でなければならない。
CVDと同様に、ALD技法による金属層の堆積のための市販の有機金属前駆体、例えば、タングステン、タンタル、及びニオブ前駆体等は殆ど存在していない。利用可能なALD前駆体は、次の不利益の1つ又は複数を有し得る:1)低い蒸気圧、2)堆積した材料の不良相、及び3)膜中の高炭素導入。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,491,978B1号
【特許文献2】米国特許第6,379,748B1号
【特許文献3】米国特許第6,605,735B2号
【特許文献4】米国特許出願公開第US2004/0127732A1号
【特許文献5】米国特許第6,287,965号
【特許文献6】米国特許第6,342,277号
【特許文献7】米国特許第5,789,027号
【特許文献8】米国特許第6,541,278B2号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Fischer,E.O.ら、Chem.Ber.、1959年、92、2995頁
【非特許文献2】Leigh,G.J.ら、J.Organomet.Chem.、1965年、4、461頁
【非特許文献3】Laine,R.M.、Transition Met.Chem.、1990年、5、158頁
【非特許文献4】Legzdins,P.ら、Inorg.Synth.1990年、28、196頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、膜堆積のためのCVD及びALD前駆体としての新たな化合物の開発及びこれらの可能性を探求することの必要性が依然としてある。また、CVD及びALD技法を使用して有機金属前駆体から金属又は金属誘導体材料のライナー及び/又はバリヤー層を形成するための方法に対する必要性が依然として存在する。理想としては、堆積されるライナー及び/又はバリヤー層は実質的に汚染物質がなく、PVD法で製造されるものよりも減少した層抵抗性、改善された層間接着、改善された拡散抵抗性、及び改善された熱安定性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、1つには、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属化合物に関する。一般的に、Mは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、(i)置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンド、例えば、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等、(ii)置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンド、例えばニトロシル等、及び(iii)置換又は非置換中性2電子供与体リガンド、例えば、カルボニル、ホスフィノ、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトリル(例えば、アセトニトリル)及びイソニトリル等から選択される。
【0012】
本発明は、また、1つには、式LM”(L(Ly’(Lz’(ここで、M”は、nの酸化状態を有する第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、nは整数0又は2であり、z’は整数0又は1であり、xはz’−n+1に等しい整数であり、但し、xは0以上であり、y’は7n/2+2x−4z’に等しい整数であり、但し、y’は0以上であり、M”の酸化数とL、L、L及びLの電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属化合物に関する。一般的に、M”は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、ニトロシル等の置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、カルボニル、ホスフィン、アミン、ニトリル、及びアルケン等の置換又は非置換中性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等の置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドから選択される。
【0013】
本発明は、更に、1つには、式(LM(CO)x’(Lz−y−x’(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、又は(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、x’は整数0〜3であり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL、L及びCO基の電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属化合物に関する。一般的に、Mは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、(i)置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンド、例えば、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等、及び(ii)置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンド、例えばニトロシル等から選択される。
【0014】
本発明は、なお更に、1つには、式LM’L(L(ここで、M’は第5族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、M’の酸化数とL、L及びLの電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属化合物に関する。一般的に、M’は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、カルボニル、ホスフィン、アミン、ニトリル、及びアルケン等の置換又は非置換中性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等の置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドから選択される。
【0015】
本発明は、また、1つには、式LM’L(L(ここで、M’は第5族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、M’の酸化数とL、L及びLの電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属化合物に関する。一般的に、M’は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、ニトロシル等の置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、カルボニル、ホスフィン、アミン、ニトリル、及びアルケン等の置換又は非置換中性2電子供与体リガンドから選択される。
【0016】
本発明は、更に、1つには、式(LM(NO)x”(Lz−y−x”(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、又は(ii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、x”は整数0〜2であり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL、L及びNO基の電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属化合物に関する。一般的に、Mは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジルから選択され、Lは、(i)置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンド、例えば、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等、及び(ii)置換又は非置換中性2電子供与体リガンド、例えば、カルボニル、ホスフィノ、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトリル(例えば、アセトニトリル)及びイソニトリル等から選択される。
【0017】
本発明は、なお更に、1つには、式LM’(L(ここで、M’は第5族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、Lは置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、M’の酸化数とL、L及びLの電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属化合物に関する。一般的に、M’は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、ニトロシル等の置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等の置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドから選択される。
【0018】
本発明は、また、1つには、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは置換キレートジエンリガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属化合物に関する。一般的に、Mは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lは、カルボニル、ホスフィノ、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトリル(例えば、アセトニトリル)及びイソニトリル等の置換又は非置換中性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、例えば、アルキル置換1,4−シクロヘキサジエニル、アルキル置換1,3−シクロペンタジエニル、アルキル置換1,5−シクロヘプタジエニル、及びアルキル置換1,6−シクロオクタジエニル等の置換キレートジエンリガンドから選択される。
【0019】
本発明は、更に、式(L)M”(L(ここで、M”は第6族金属であり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは置換キレートジエンリガンドであり、M”の酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属化合物に関する。一般的に、M”は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、又はクロム(Cr)から選択され、Lは、カルボニル、ホスフィン、アミン、アルケン、アルキン、ニトリル(例えば、アセトニトリル)及びイソニトリル等の置換又は非置換中性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、アルキル置換1,4−シクロヘキサジエン、アルキル置換1,3−シクロペンタジエン、アルキル置換1,5−シクロヘプタジエン、及びアルキル置換1,6−シクロオクタジエン等の置換キレートジエンリガンドから選択される。
【0020】
本発明は、また、1つには、上記各式で表される有機金属前駆体に関する。
【0021】
本発明は、更に、1つには、上記各式で表される化合物、例えば、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する化合物を製造する方法であって、金属ハロゲン化物、塩及び還元剤を、第一溶媒の存在下で、中間体反応材料を製造するのに十分な反応条件下で反応させること、前記中間体反応材料と塩基性材料とを、第二溶媒及び前記化合物を製造するのに十分な反応条件下で反応させることを含む方法に関する。
【0022】
本発明は、なお更に、1つには、有機金属前駆体であって、前記有機金属前駆体が上記各式で表される、例えば、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する有機金属前駆体を分解すること、それにより、膜、被膜又は粉末を製造することによる、膜、被膜又は粉末を製造する方法に関する。
【0023】
本発明は、また、1つには、処理室で基体を処理する方法であって、前記方法が、(i)有機金属前駆体であって、前記有機金属前駆体が上記各式で表される、例えば、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する有機金属前駆体を処理室中へ導入すること、(ii)前記基体を約100℃〜約400℃の温度に加熱すること、及び(iii)前記有機金属前駆体を処理ガスの存在下で解離し、前記基体上に金属層を堆積することを含む方法に関する。
【0024】
本発明は、更に、1つには、有機金属前駆体から基体上に金属材料を形成する方法であって、前記方法が、前記有機金属前駆体を気化して蒸気を形成すること、及び蒸気と基体とを接触させて基体上に前記金属材料を形成することを含み、前記有機金属前駆体が上記各式で表される、例えば、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)で表される有機金属前駆体である、方法に関する。
【0025】
本発明は、なお更に、1つには、超小型電子デバイス構造を作製する方法であって、前記方法が、上記各式で表される有機金属前駆体、例えば、式(L)M(L’)z−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性リガンドであり、L’は同じか異なり、水素又は置換若しくは非置換炭化水素又はヘテロ原子含有リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価である)を有する有機金属前駆体を気化して蒸気を形成すること、前記蒸気を基体と接触させて基体上に金属含有膜を堆積すること、その後、基体を銅で金属化するか、強誘電性薄膜と一緒に一体化することを含む方法に関する。
【0026】
本発明は幾つかの利益を有する。例えば、本発明方法は、化学構造及び物性を変えた有機金属化合物前駆体を発生させることにおいて有用である。有機金属化合物前駆体から発生した膜を短い温置時間で堆積することができ、有機金属化合物前駆体から堆積した膜は良好な平滑性を示す。
【0027】
本発明の好ましい実施形態は、有機金属前駆体化合物が室温で液体であり得ることである。幾つかの状況において、液体は、半導体プロセス集積の見込みの容易さから固体よりも好ましいことがある。
【0028】
CVD及びALD用途では、本発明の有機金属前駆体は熱安定性、蒸気圧、及び半導体用途のために意図された基体との反応性の理想的な組合せを示すことができる。本発明の有機金属前駆体は、実施温度で液相を、及び/又は半導体基体との良好な反応性をもたらすことのできる調整されたリガンド球体を望み通りに示すことができる。本発明の全ての有機金属前駆体はハロゲン化物を基にしたリガンドの使用を回避する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上で示した通り、本発明は、金属を基にした材料、例えば、金属及び金属炭化物/窒化物、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステン等を、CVD及びALD等の技法により基体上に形成することのできる有機金属前駆体化合物に関する。基体は、好ましくは、半導体デバイス構造の銅金属化等の用途のための超小型電子デバイス構造であることができる。
【0030】
金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンバリヤー層の形成にとって有用な本発明の有機金属前駆体化合物としては、上記各式で表されるそれらの化合物、例えば、式(LM(Lz−y(ここで、Mは、第5族金属又は第6族金属、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)であり、Lは、置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジルであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、例えば、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、例えばニトロシル等、又は(iii)カルボニル、ホスフィノ、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトリル(例えば、アセトニトリル)及びイソニトリル等の置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する有機金属前駆体が挙げられる。例えば、Lは、水素又は置換若しくは非置換炭化水素又はヘテロ原子含有リガンドであることができる。
【0031】
1つの実施形態では、Mがタングステンである場合、本発明の有機金属化合物としては次のものが挙げられる:(i)Mは、(+2)の酸化数を有するタングステン(W)であり、Lは、(−1)の電荷を有する置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、1つのLリガンドは、(−1)の電荷を有する置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、残りの3つのLリガンドは同じか異なり、それぞれ、ゼロ(0)の電荷を有する置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであるもの、(ii)Mは、(0)の酸化数を有するタングステン(W)であり、Lは、(−1)の電荷を有する置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、1つのLリガンドは、(+1)の電荷を有する置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、残りの2つのLリガンドは同じか異なり、それぞれ、ゼロ(0)の電荷を有する置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであるもの、及び(iii)Mは、(0)の酸化数を有するタングステン(W)であり、Lは、(−1)の電荷を有する置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、1つのLリガンドは、(−1)の電荷を有する置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、残りの2つのLリガンドは同じか異なり、それぞれ、(+1)の電荷を有する置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであるもの。上記有機金属化合物の全てに対して、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい。
【0032】
金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンバリヤー層の形成にとって有用な本発明のその他の有機金属前駆体化合物としては、式LM”(L(Ly’(Lz’(ここで、M”は、nの酸化状態を有する第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、nは整数0又は2であり、z’は整数0又は1であり、xはz’−n+1に等しい整数であり、但し、xは0以上であり、y’は7n/2+2x−4z’に等しい整数であり、但し、y’は0以上であり、M”の酸化数とL、L、L及びLの電荷との合計は0に等しい)を有するそれらの化合物が挙げられる。一般的に、M”は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、ニトロシル等の置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、カルボニル、ホスフィン、アミン、ニトリル、及びアルケン等の置換又は非置換中性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等の置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドから選択される。例えば、L、L及びLは、必要に応じて、水素又は置換若しくは非置換炭化水素又はヘテロ原子含有リガンドであることができる。
【0033】
金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンバリヤー層の形成にとって有用な本発明のその他の有機金属前駆体化合物としては、式(LM(CO)x’(Lz−y−x’(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、又は(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、x’は整数0〜3であり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL、L及びCO基の電荷との合計は0に等しい)を有するそれらの化合物が挙げられる。一般的に、Mは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、(i)置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンド、例えば、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等、及び(ii)置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンド、例えばニトロシル等から選択される。例えば、Lは、水素又は置換若しくは非置換炭化水素又はヘテロ原子含有リガンドであることができる。
【0034】
金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンバリヤー層の形成にとって有用な本発明のその他の有機金属前駆体化合物としては、式LM’L(L(ここで、M’は第5族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、M’の酸化数とL、L及びLの電荷との合計は0に等しい)を有するそれらの化合物が挙げられる。一般的に、M’は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)から選択され、Lは、置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、置換又は非置換中性2電子供与体リガンド、例えば、カルボニル、ホスフィン、アミン、ニトリル及びアルケン等から選択され、Lは、置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンド、例えば、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等から選択される。例えば、L及びLは、必要に応じて、水素又は置換若しくは非置換炭化水素又はヘテロ原子含有リガンドであることができる。
【0035】
金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンバリヤー層の形成にとって有用な本発明のその他の有機金属前駆体化合物としては、式LM’L(L(ここで、M’は第5族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、M’の酸化数とL、L及びLの電荷との合計は0に等しい)を有するそれらの化合物が挙げられる。一般的に、M’は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、ニトロシル等の置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、カルボニル、ホスフィン、アミン、ニトリル、及びアルケン等の置換又は非置換中性2電子供与体リガンドから選択される。例えば、L及びLは、必要に応じて、置換若しくは非置換炭化水素又はヘテロ原子含有リガンドであることができる。
【0036】
金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンバリヤー層の形成にとって有用な本発明のその他の有機金属前駆体化合物としては、式(LM(NO)x”(Lz−y−x”(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、又は(ii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、x”は整数0〜2であり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL、L及びNO基の電荷との合計は0に等しい)を有するそれらの化合物が挙げられる。一般的に、Mは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは、(i)置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンド、例えば、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等、及び(ii)置換又は非置換中性2電子供与体リガンド、例えば、カルボニル、ホスフィノ、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトリル(例えば、アセトニトリル)及びイソニトリルから選択される。例えば、Lは、水素又は置換若しくは非置換炭化水素又はヘテロ原子含有リガンドであることができる。
【0037】
金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンバリヤー層の形成にとって有用な本発明のその他の有機金属前駆体化合物としては、式LM’(L(ここで、M’は第5族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、Lは、置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、M’の酸化数とL、L及びLの電荷との合計は0に等しい)を有するそれらの化合物が挙げられる。一般的に、M’は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)から選択され、Lは、置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジル等から選択され、Lは置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンド、例えばニトロシル等から選択され、Lは置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンド、例えば、ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル、エチル等)等から選択される。例えば、L及びLは、必要に応じて、水素又は置換若しくは非置換炭化水素又はヘテロ原子含有リガンドであることができる。
【0038】
金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンバリヤー層の形成にとって有用な本発明のその他の有機金属前駆体化合物としては、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは置換キレートジエンリガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有するそれらの化合物が挙げられる。一般的に、Mは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lは、カルボニル、ホスフィノ、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトリル(例えば、アセトニトリル)及びイソニトリル等の置換又は非置換中性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、例えば、アルキル置換1,4−シクロヘキサジエニル、アルキル置換1,3−シクロペンタジエニル、アルキル置換1,5−シクロヘプタジエニル、及びアルキル置換1,6−シクロオクタジエニル等の置換キレートジエンリガンドから選択される。例えば、Lは、置換若しくは非置換炭化水素又はヘテロ原子含有リガンドであることができる。
【0039】
金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンバリヤー層の形成にとって有用な本発明のその他の有機金属前駆体化合物としては、式(L)M”(L(ここで、M”は第6族金属であり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは置換キレートジエンリガンドであり、M”の酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有するそれらの化合物が挙げられる。一般的に、M”は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、又はクロム(Cr)から選択され、Lは、カルボニル、ホスフィン、アミン、アルケン、アルキン、ニトリル(例えば、アセトニトリル)及びイソニトリル等の置換又は非置換中性2電子供与体リガンドから選択され、Lは、アルキル置換1,4−シクロヘキサジエン、アルキル置換1,3−シクロペンタジエン、アルキル置換1,5−シクロヘプタジエン、及びアルキル置換1,6−シクロオクタジエン等の置換キレートジエンリガンドから選択される。例えば、Lは、置換若しくは非置換炭化水素又はヘテロ原子含有リガンドであることができる。
【0040】
本発明は、1つには、有機金属前駆体、及び金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステン層を、有機金属前駆体のCVD又はALDにより基体上に形成するために基体を処理する方法に関する。金属を基にした材料層は、処理ガスの存在下で上記各式を有する有機金属前駆体の熱的又はプラズマ強化解離によって、加熱された基体上に堆積される。処理ガスは、不活性ガス、例えば、ヘリウム及びアルゴン等、並びにこれらの組合せであってもよい。処理ガスの組成は、金属を基にした材料層、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステン層を、必要に応じて堆積するために選択される。
【0041】
上記各式で表される本発明の有機金属前駆体に対して、M、M’及びM”は堆積される金属を表す。本発明により堆積することのできる金属の例は、タングステン、モリブデン及びクロムの第6族金属、並びにバナジウム、タンタル及びニオブの第5族金属である。zの文字は、前駆体の金属Mの原子価を表し、第6族金属に対しては6の原子価を持ち、第5族の金属に対しては5の原子価を有する。
【0042】
本発明で有用な例示的置換及び非置換アニオン性リガンド(L)としては、例えば、6電子アニオン供与体リガンド、例えば、シクロペンタジエニル(Cp)、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、ボラタベンジル、ピラゾリル、イミダゾリル等が挙げられる。Cpは、金属Mと一緒にリガンドを形成する一般式(C)を有するシクロペンタジエニル環である。シクロペンタジエニル環は置換されていてもよく、それによって、式(Cp(R’)を有する。前駆体は、1つの6電子アニオン供与体リガンド基、例えば、シクロペンタジエニル基を含む。
【0043】
その他の例示的置換及び非置換6電子アニオン供与体リガンドとしては、シクロジエニル錯体、例えば、シクロヘキサジエニル環、シクロヘプタジエニル環、シクロオクタジエニル環、複素環式環、芳香族環、例えば、エチルシクロペンタジエニルのような置換シクロペンタジエニル環等、及び当該技術分野で公知のその他のものが挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される置換アニオン性、カチオン性及び中性リガンドの許容される置換基としては、ハロゲン原子、1〜約12個の炭素原子を有するアシル基、1〜約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1〜約12個の炭素原子を有するアルキル基、1〜約12個の炭素原子を有するアミン基又は0〜約12個の炭素原子を有するシリル基が挙げられる。
【0045】
例示的ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。好ましいハロゲン原子としては塩素及びフッ素が挙げられる。
【0046】
例示的アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、1−メチルプロピルカルボニル、イソバレリル、ペンチルカルボニル、1−メチルブチルカルボニル、2−メチルブチルカルボニル、3−メチルブチルカルボニル、1−エチルプロピルカルボニル、2−エチルプロピルカルボニル等が挙げられる。好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル及びプロピオニルが挙げられる。
【0047】
例示的アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、1−メチルブチルオキシ、2−メチルブチルオキシ、3−メチルブチルオキシ、1,2−ジメチルプロピルオキシ、ヘキシルオキシ、1−メチルペンチルオキシ、1−エチルプロピルオキシ、2−メチルペンチルオキシ、3−メチルペンチルオキシ、4−メチルペンチルオキシ、1,2−ジメチルブチルオキシ、1,3−ジメチルブチルオキシ、2,3−ジメチルブチルオキシ、1,1−ジメチルブチルオキシ、2,2−ジメチルブチルオキシ、3,3−ジメチルブチルオキシ等が挙げられる。好ましいアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ及びプロポキシが挙げられる。
【0048】
例示的アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、シクロプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等が挙げられる。好ましいアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル及びシクロプロポキシカルボニルが挙げられる。
【0049】
例示的アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロブチルメチル等が挙げられる。好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル及びシクロプロピルが挙げられる。
【0050】
例示的アミン基としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、t−ブチルアミン、ジ(t−ブチル)アミン、エチルメチルアミン、ブチルメチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。好ましいアミン基としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジイソプロピルアミンが挙げられる。
【0051】
例示的シリル基としては、例えば、シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリス(トリメチルシリル)メチル、トリシリルメチル、メチルシリル等が挙げられる。好ましいシリル基としては、シリル、トリメチルシリル及びトリエチルシリルが挙げられる。
【0052】
例示的置換キレートジエンリガンドとしては、置換シクロ−オレフィン、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンの種々の異性体、シクロヘプタジエン環、シクロオクタジエン環、複素環式環、芳香族環、及び当該技術分野で公知のその他のものが挙げられる。
【0053】
置換キレートジエンリガンドの許容される置換基としては、ハロゲン原子、1〜約12個の炭素原子を有するアシル基、1〜約12個の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜約12個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、1〜約12個の炭素原子を有するアルキル基、1〜約12個の炭素原子を有するアミン基又は0〜約12個の炭素原子を有するシリル基が挙げられる。
【0054】
好ましい実施形態では、本発明は、1つには、以下各式で表される有機金属タングステン化合物に関する:
【0055】
タングステン(II)の四脚ピアノ椅子型錯体
【化1】

【0056】
タングステン(0)の三脚ピアノ椅子型錯体
【0057】
【化2】

【0058】
タングステン(II)の三脚ピアノ椅子型錯体
【0059】
【化3】

【0060】
式中、L及びLのそれぞれは同じか異なり、独立に、炭化水素基又はヘテロ原子含有基である。
【0061】
中性タングステン錯体の例示的ジエン誘導体は、この式で表すことができる。
【0062】
【化4】

【0063】
式中、Lは、置換又は非置換中性2電子供与体リガンド、例えば、カルボニル、ホスフィノ、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトリル(例えば、アセトニトリル)及びイソニトリル等であり、mは整数0〜2であり、nは整数2〜4であり、R、R’、R及びR’は、独立に、水素又は1〜約12個の炭素原子を有するアルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル等である、但し、R、R’、R及びR’の少なくとも1つは水素以外である。
【0064】
本発明の例示的有機金属化合物は、例えば、次の通りである(Cpはペンタメチルシクロペンタジエニルを表す):
【0065】
トリス(カルボニル)(メチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、(MeCp)W(CO)H;
【0066】
トリス(カルボニル)(エチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、(EtCp)W(CO)H;
【0067】
トリス(カルボニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、Cp*W(CO)H;
【0068】
トリス(カルボニル)(メチルシクロペンタジエニル)メチルタングステン、(MeCp)W(CO)CH
【0069】
トリス(カルボニル)(エチルシクロペンタジエニル)メチルタングステン、(EtCp)W(CO)CH
【0070】
トリス(カルボニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)メチルタングステン、Cp*W(CO)CH
【0071】
トリス(カルボニル)(メチルシクロペンタジエニル)エチルタングステン、(MeCp)W(CO)
【0072】
トリス(カルボニル)(エチルシクロペンタジエニル)エチルタングステン、(EtCp)W(CO)
【0073】
トリス(カルボニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)エチルタングステン、Cp*W(CO)
【0074】
トリス(アセトニトリル)(メチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、(MeCp)W(NCCHH;
【0075】
トリス(アセトニトリル)(エチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、(EtCp)W(NCCHH;
【0076】
トリス(アセトニトリル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、Cp*W(NCCHH;
【0077】
トリス(カルボニル)(シクロヘプタジエニル)ヒドリドタングステン、(C)W(CO)H;
【0078】
トリス(カルボニル)(2,4−ジメチルペンタジエニル)ヒドリドタングステン、((CH)W(CO)H;
【0079】
トリス(カルボニル)(2,5−ジメチルピロリル)ヒドリドタングステン、((CHN)W(CO)H;
【0080】
メチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、(EtCp)W(NO)H;
【0081】
エチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、(MeCp)W(NO)H;
【0082】
ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、Cp*W(NO)H;
【0083】
メチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)メチルタングステン、(EtCp)W(NO)CH
【0084】
エチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)メチルタングステン、(MeCp)W(NO)CH
【0085】
ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)メチルタングステン、Cp*W(NO)CH
【0086】
メチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)エチルタングステン、(EtCp)W(NO)
【0087】
エチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)エチルタングステン、(MeCp)W(NO)
【0088】
ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)エチルタングステン、Cp*W(NO)
【0089】
シクロヘプタジエニルビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、(C)W(NO)H;
【0090】
(2,4−ジメチルペンタジエニル)ビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、((CH)W(NO)H;
【0091】
(2,5−ジメチルピロリル)ビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、((CHN)W(NO)H;
【0092】
メチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(ヒドリド)タングステン、(MeCp)W(NO)H
【0093】
エチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(ヒドリド)タングステン、(EtCp)W(NO)H
【0094】
ペンタメチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(ヒドリド)タングステン、Cp*W(NO)H
【0095】
メチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(メチル)タングステン、(MeCp)W(NO)(CH
【0096】
エチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(メチル)タングステン、(EtCp)W(NO)(CH
【0097】
ペンタメチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(メチル)タングステン、Cp*W(NO)(CH
【0098】
メチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(エチル)タングステン、(MeCp)W(NO)(C
【0099】
エチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(エチル)タングステン、(EtCp)W(NO)(C
【0100】
ペンタメチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(エチル)タングステン、Cp*W(NO)(C
【0101】
シクロヘプタジエニルニトロシルビス(エチル)タングステン、(C)W(NO)(C
【0102】
2,4−ジメチルペンタジエニルニトロシルビス(エチル)タングステン、((CH)W(NO)(C
【0103】
2,5−ジメチルピロリルニトロシルビス(エチル)タングステン、((CHN)W(NO)(C
【0104】
など。
【0105】
アニオン供与体基の存在は好ましい物性を強化することが考えられる。これらの置換基は、有機金属前駆体の揮発度を増加させ、前駆体を解離するために必要とされる温度を減少させ、有機金属前駆体の沸点を下げることが考えられる。有機金属前駆体化合物の増加した揮発度は、層の有効な堆積のために処理室への気化流体流中に同伴される前駆体の十分に高い濃度を確実にする。改善された揮発度は、また、昇華による有機金属前駆体の気化の使用及び早期解離の危険性を伴うことなく処理室への送達を可能とする。更に、6電子アニオン供与体置換基の存在は、また、液体送達系での使用のための有機金属前駆体の十分な溶解度を与え得る。
【0106】
本明細書で説明されている有機金属前駆体は、約150℃より下の温度で熱的に安定である熱分解性有機金属化合物の形成を可能とする官能基を有し、約150℃より上の温度で熱的に解離することができる。有機金属前駆体は、また、処理室へ、約0.6ワット/cm以上、又は200mm基体に対して約200ワット以上のパワー密度を供給することにより生じるプラズマ中で解離することができる。
【0107】
本明細書で説明されている有機金属前駆体は、堆積方法のための処理ガス組成及びプラズマガス組成によって金属及び金属炭化物層を堆積し得る。金属及び金属炭化物層は、アルゴン等の不活性処理ガス、水素等の反応体処理ガス、及びこれらの組合せの存在下で堆積される。
【0108】
水素等の反応体処理ガスの使用は、6電子アニオン供与体基との反応を促進して揮発性ガスを形成し、これによって前駆体から置換基を除去し、基体上に金属又は金属炭化物層を堆積するものと考える。金属層は、好ましくは、アルゴンの存在下で堆積される。
【0109】
上述の前駆体からの層を堆積するための例示的処理体制は次の通りである。本明細書で説明されている組成を有する前駆体、例えば、トリス(カルボニル)(メチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン等及び処理ガスは処理室へ導入される。前駆体は約5〜約500sccmの流量で導入され、処理ガスは、約5〜約500sccmの流量で室内に導入される。堆積方法の1つの実施形態では、前駆体及び処理ガスは、約1:1のモル比で導入される。処理室は約100ミリTorr〜約20Torrの圧力に維持される。処理室は、好ましくは、約100ミリTorr〜約250ミリTorrの圧力に維持される。流量及び圧力条件は、使用される処理室の異なる構造、サイズ及び型で変動し得る。
【0110】
前駆体の熱的解離は、基体から脱着して基体上に金属を残す炭化水素を揮発させるために、基体に隣接する揮発性金属化合物の炭化水素部分に解離を引き起こさせるのに十分高い温度まで基体を加熱することを含む。正確な温度は、堆積条件下で使用される有機金属前駆体及び処理ガスの種類並びに化学的、熱的及び安定性特性による。しかしながら、約室温〜約400℃の温度は、本明細書に記載されている前駆体の熱的解離のために考慮される。
【0111】
熱的解離は、好ましくは、基体を約100℃〜約400℃の温度に加熱することにより実施される。熱的解離工程の1つの実施形態では、基体温度は、基体表面での前駆体及び反応ガスの完全な反応を確実にするために約250℃〜約450℃に維持される。別の実施形態では、基体は熱的解離工程中、約400℃より下の温度に維持される。
【0112】
プラズマ強化CVD法では、プラズマを発生させるためのパワーが、前駆体の解離を高め、基体上に層を堆積するために存在するいずれかの反応体ガスとの反応を増加するために室内に容量結合又は誘導結合される。約0.6ワット/cm〜約3.2ワット/cm、又は200mm基体に対して約200〜約1000ワット、中でも最も好ましく使用される約750ワットのパワー密度がプラズマを発生するために室へ供給される。
【0113】
前駆体の解離及び基体上での材料の堆積後に、堆積した材料はプラズマ処理に曝露される。プラズマは、水素等の反応体処理ガス、アルゴン等の不活性ガス及びこれらの組合せを含む。プラズマ処理方法では、プラズマを発生させるためのパワーは、処理ガスを励起してプラズマ状態にし、堆積した材料と反応し得るイオン等のプラズマ種を生成するために室内に静電又は誘電結合される。プラズマは、処理室へ、約0.6ワット/cm〜約3.2ワット/cm、又は200mm基体に対して約200〜約1000ワットのパワー密度を供給することにより生じる。
【0114】
1つの実施形態では、プラズマ処理は、プラズマ工程中に、室圧を約50ミリTorr〜約20Torrに維持し、基体を約100℃〜約400℃の温度に維持して、約5sccm〜約300sccmの速度でガスを処理室へ導入すること及び約0.6ワット/cm〜約3.2ワット/cm、又は200mm基体に対して約200ワット〜約1000ワットのパワーを供給することによりプラズマを発生することを含む。
【0115】
プラズマ処理は層の抵抗性を下げ、炭素又は過剰の水素等の汚染物質を除去し、層を密にしてバリヤー及びライナー性を高めることが考えられる。プラズマ中の水素種等の反応体ガスからの種は炭素不純物と反応して、基体表面から容易に脱着でき、処理帯域及び処理室から放出することのできる揮発性炭化水素を生成するものと考えられる。アルゴン等の不活性ガスからのプラズマ種は、更に層を攻撃して抵抗性成分を除去し、層の抵抗性を下げ、電気伝導率を改善する。
【0116】
プラズマ処理は、プラズマ処理が層の所望の炭素含有量を除去し得るので、好ましくは、金属炭化物層に対しては実施されない。金属炭化物層に対するプラズマ処理が実施される場合、プラズマガスは、好ましくは、炭素を除去するために、アルゴン及びヘリウム等の不活性ガスを含む。
【0117】
上記で確認された前駆体から層を堆積すること及び層をその後の堆積プラズマ工程へ曝露することは、改善された材料の性質を伴う層を生成するものと考えられる。本明細書に記載された材料の堆積及び/又は処理は、改善された拡散抵抗性、改善された層間接着、改善された熱安定性、及び改善された層間結合を有すると考えられている。
【0118】
本発明の1つの実施形態では、基体上に誘電層を堆積すること、基体中へパターンをエッチングすること、誘電層上に金属炭化物層を堆積すること、及び金属炭化物層上に導電性金属層を堆積することを含む、基体上の形状の金属化方法が提供される。基体は、金属炭化物層の堆積前に基体上での酸化物形成を除去するために水素及びアルゴンのプラズマを含む反応性プレクリーンへ場合により曝露されてもよい。導電性金属は、好ましくは銅であり、物理堆積、化学堆積、又は電気化学堆積で堆積され得る。金属層及び金属炭化物層は、処理ガスの存在下で、好ましくは、約20Torr未満の圧力で、本発明の有機金属前駆体の熱的又はプラズマ強化解離により堆積される。一度堆積されたら、金属層及び金属炭化物層は、その後の層堆積前にプラズマへ曝露することができる。
【0119】
現在の銅集積の仕組みは、最上層に銅湿潤層を持ちそれに続いて銅シード(seed)層を有する拡散バリヤーを含む。本発明による、徐々にタングステンに富むものとなる炭化タングステンの層は、現在の集積の仕組みの複数ステップを置き換える。炭化タングステン層は、その無定形性により銅拡散に対する優れたバリヤーである。タングステンに富む層は湿潤層として機能し、タングステン上への直接メッキを可能とし得る。この単一層は、堆積中に堆積パラメータを操作することにより1ステップで堆積することができる。後堆積処理は、また、膜中のタングステンの比率を増加するために使用され得る。半導体製造での1つ又は複数のステップの除去は半導体製造業者に実質的な節約をもたらす。
【0120】
炭化タングステン膜は、400℃より低い温度で堆積され、腐食性の副生成物を形成しない。炭化タングステン膜は無定形で、銅拡散に対してWNよりも優れたバリヤーである。堆積パラメータ及び後堆積処理を同調させることにより、炭化タングステンバリヤーは、その最上層に堆積されたタングステンに富む膜を有することができる。このタングステンに富む膜は、銅に対して湿潤層として作用し、タングステン層の最上層での直接銅メッキを可能にし得る。1つの実施形態では、堆積パラメータは、組成が層の厚さを横断して変動する層を得るために同調され得る。例えば、層は、マイクロチップのケイ素部分表面で炭化タングステンに富む、例えば、良好なバリヤー性、及び銅層表面でタングステンに富む、例えば、良好な接着性であり得る。
【0121】
また、上で示したように、本発明は、また、1つには、上記各式により表される有機金属化合物、例えば、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する有機金属化合物を製造する方法に関し、この方法は、金属ハロゲン化物、塩及び還元剤を、第一溶媒の存在下で、中間体反応材料を製造するのに十分な反応条件下で反応させること、前記中間体反応材料と塩基性材料とを、第二溶媒の存在下で、前記有機金属化合物を生成するのに十分な反応条件下で反応させることを含む。本発明の方法から生じる有機金属化合物の収率は、40%以上、好ましくは、35%以上、更に好ましくは、30%以上であることができる。
【0122】
この方法は、同じ装置、幾つかの同じ試薬及び広範囲の生成物を製造するために簡単に適合させることのできるプロセスパラメータを使用して実施することができるので大規模製造に特に良く適している。この方法は、全ての操作が単一容器で実施することができ、有機金属前駆体化合物への経路が中間体錯体の単離を必要としない方法を使用する有機金属前駆体化合物の合成を提供する。
【0123】
金属ハロゲン化物化合物の出発材料は、当該技術分野で公知の広範囲の化合物から選択され得る。本明細書における本発明では、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択される金属が最も好ましい。例示的金属ハロゲン化物化合物としては、例えば、六塩化タングステン、六塩化モリブデン、六塩化クロム、五塩化タンタル、五塩化ニオブ又は五塩化バナジウム等が挙げられる。
【0124】
金属源化合物の出発材料の濃度は広範囲にわたって変動することができ、塩及び還元剤と反応して中間体反応材料を生成し、使用するのに望ましい一定の金属濃度を与え、少なくとも本発明の有機金属化合物にとって必要な金属の量の基礎となるのに必要な最小量であることだけが必要である。一般的に、反応混合物のサイズによって、約1ミリモル以下から約10,000ミリモル以上までの範囲の金属源化合物の出発材料の濃度は殆どの方法にとって十分なものであるはずである。
【0125】
塩の出発材料は、当該技術分野で公知の広範囲の化合物から選択され得る。例示的塩としては、ナトリウムシクロペンタジエン、カリウムシクロペンタジエン、リチウムシクロペンタジエン又はマグネソセン等が挙げられる。塩の出発材料は、好ましくは、ナトリウムシクロペンタジエン等である。
【0126】
塩の出発材料の濃度は広範囲にわたって変動することができ、金属源化合物の出発材料及び還元剤と反応して中間体反応材料を生成するのに必要な最小量であることだけが必要である。一般的に、第一反応混合物のサイズによって、約1ミリモル以下から約10,000ミリモル以上までの範囲の塩の出発材料の濃度は殆どの方法にとって十分なものであるはずである。
【0127】
還元剤の出発材料は、当該技術分野で公知の広範囲の材料から選択され得る。例示的還元剤としては、ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジヒドリド(例えば、Red−Al(登録商標)及びVitride還元剤材料)、ナトリウムボロヒドリド、リチウムアルミニウムヒドリド等が挙げられる。還元剤材料は、好ましくは、ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジヒドリド(例えば、Red−Al(登録商標)還元剤材料)等である。
【0128】
還元剤の出発材料の濃度は広範囲にわたって変動することができ、金属源化合物の出発材料及び塩の出発材料と反応して中間体反応材料を生成するのに必要な最小量であることだけが必要である。一般的に、第一反応混合物のサイズによって、約1ミリモル以下から約10,000ミリモル以上までの範囲の還元剤の出発材料の濃度は殆どの方法にとって十分なものであるはずである。
【0129】
本発明方法で使用される第一溶媒は、いずれかの飽和及び不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、芳香族複素環、アルキルハライド、シリル化炭化水素、エーテル、ポリエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、ラクトン、アミド、アミン、ポリアミン、シリコーン油、その他の非プロトン性溶媒、又は上記の1つ若しくは複数の混合物、更に好ましくは、ジエチルエーテル、ペンタン、又はジメトキシエタン、最も好ましくは、トルエン若しくはジメトキシエタン(DME)又はこれらの混合物であり得る。意図した反応を過度に不利に妨害しないいずれかの適当な溶媒を使用することができる。1つ又は複数の異なる溶媒の混合物は、必要に応じて使用され得る。使用される溶媒の量は、対象発明にとっては重要ではなく、反応混合物中の反応成分を溶解するのに十分な量であることだけが必要である。一般的に、溶媒の量は、反応混合物の出発材料の合計重量を基準にして、約5重量%〜約99重量%の範囲であり得る。
【0130】
中間体反応材料を生成するための塩化合物及び還元剤と金属源化合物との反応のための反応条件、例えば、温度、圧力及び接触時間等は、また、大きく変動し得るもので、そのような条件のいずれかの適当な組合せが本明細書で使用され得る。反応温度は、前述の溶媒のいずれかの還流温度であり得るもので、更に好ましくは、約−80℃〜約150℃、最も好ましくは、約20℃〜約120℃であり得る。通常、反応は周囲圧力下で実施され、接触時間はおよそ秒又は分位から2〜3時間又はそれ以上まで変動し得る。反応体は反応混合物へ添加することができ、又はいずれの順序でも組み合わせることができる。使用される撹拌時間は、全ステップに対して約0.1〜約400時間、好ましくは、約1〜75時間、更に好ましくは、約4〜16時間の範囲であることができる。
【0131】
中間体反応材料は、当該技術分野で公知の広範囲の材料から選択され得る。例示的中間体反応材料としては、アニオン性第6族金属と1つの負帯電6電子供与体及び3中性2電子供与体との塩、例えば、Li[(EtCp)W(CO)]、Na[(EtCp)W(CO)]、PPN[(2,5−ジメチルピロリル)W(CO)]等が挙げられる。中間体反応材料は、好ましくは、Li[(EtCp)W(CO)]である。本発明方法は、中間体反応材料の単離を必要としない。
【0132】
中間体反応材料の濃度は広範囲にわたり変動することができ、塩基性材料と反応して本発明の有機金属化合物を生成するのに必要な最小量であることだけが必要である。一般的に、第二反応混合物のサイズによって、約1ミリモル以下から約10,000ミリモル以上までの範囲の中間体反応材料の濃度は殆どの方法にとって十分なものであるはずである。
【0133】
塩基性材料は、当該技術分野で公知の広範囲の材料から選択され得る。例示的塩基性材料としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸エチル等が挙げられる。塩基性材料は、好ましくは、水酸化ナトリウム等である。
【0134】
塩基性材料の濃度は広範囲にわたって変動することができ、中間体反応材料が反応して本発明の有機金属化合物を生成するのに必要な最小量であることだけが必要である。一般的に、第二反応混合物のサイズによって、約1ミリモル以下から約10,000ミリモル以上までの範囲の塩基性材料の濃度は殆どの方法にとって十分なものであるはずである。
【0135】
本発明方法で使用される第二溶媒は、いずれかの飽和及び不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、芳香族複素環、アルキルハライド、シリル化炭化水素、エーテル、ポリエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、ラクトン、アミド、アミン、ポリアミン、シリコーン油、その他の非プロトン性溶媒、又は上記の1つ若しくは複数の混合物、更に好ましくは、ジエチルエーテル、ペンタン、又はジメトキシエタン、最も好ましくは、トルエン、へキサン若しくはこれらの混合物であり得る。意図した反応を過度に不利に妨害しないいずれかの適当な溶媒を使用することができる。1つ又は複数の異なる溶媒の混合物は、必要に応じて使用され得る。使用される溶媒の量は、対象発明にとっては重要ではなく、反応混合物中の反応成分を溶解するのに十分な量であることだけが必要である。一般的に、溶媒の量は、反応混合物の出発材料の合計重量を基準にして、約5重量%〜約99重量%の範囲であり得る。
【0136】
本発明の有機金属前駆体を生成するための中間体反応材料と塩基性材料の反応のための反応条件、例えば、温度、圧力及び接触時間等は、また、大きく変動し得るもので、そのような条件のいずれかの適当な組合せが本明細書で使用され得る。反応温度は、前述の溶媒のいずれかの還流温度であり得るもので、更に好ましくは、約−80℃〜約150℃、最も好ましくは、約20℃〜約120℃であり得る。通常、反応は周囲圧力下で実施され、接触時間はおよそ秒又は分位から2〜3時間又はそれ以上まで変動し得る。反応体は反応混合物へ添加することができ、又はいずれの順序でも組み合わせることができる。用いられる撹拌時間は、全ステップに対して約0.1〜約400時間、好ましくは、約1〜75時間、更に好ましくは、約4〜16時間の範囲であることができる。
【0137】
1つの実施形態では、上で表されたタングステン(II)の四脚ピアノ椅子型錯体は、次の合成方法で調製することができる:
1)3中性2電子供与体リガンド及び1負帯電6電子供与体リガンドがタングステンに直接に配位されるタングステネートアニオン塩を生成するための、負帯電6電子供与体の塩又は錯体(例えば、Li(EtCp)又はBuSn(EtCp))と、6中性2電子供与体とのタングステン(0)錯体(例えば、W(CO))との反応;
2)1負帯電6電子供与体リガンド、3中性2電子供与体リガンド及び1負帯電2電子供与体リガンドとのタングステン(II)錯体を与えるための、第二成分、例えば、酢酸又はトリメチルブロミンと中間体タングステネートアニオン塩との反応。
【0138】
錯体の単離は、固体を除去するための濾過、溶媒を除去するための減圧、及び最終の純粋化合物を与えるための蒸留(又は昇華)によって達成され得る。クロマトグラフィーも、また最終精製方法として使用され得る。
【0139】
上記反応1の一例(以下の反応スキーム1)及び上記反応2の2つの例(以下の反応スキーム2a及び2b)は以下で示される:
【0140】
【化5】

【0141】
1つの実施形態では、上で表されたタングステン(0)の三脚ピアノ椅子型錯体は、次の合成方法で同様に調製され得る:
1)[W(NO)(ここで、Xはハロゲン化物である)は、負帯電6電子供与体の塩又は錯体(例えば、BuSn(EtCp))と反応して、1つのハロゲン化物リガンド、2ニトロシルリガンド及び負帯電6電子供与体リガンドとの中間体錯体を与える;
2)ハロゲン化物錯体(例えば、(Et(Cp)W(NO)Cl)は、第二の源、例えば、Na[AlH(OCHCHOMe)]と反応して、ハロゲン化物塩及び中性タングステン(0)有機金属化合物を与え得る。第二の源の例としては、メチルリチウム、Na[AlH(OCHCHOMe)]等が挙げられる。この合成方法は以下で示される。
【0142】
【化6】

【0143】
ペンダントアルキル鎖を伴うジエンの使用は、追加のエントロピーを導入することにより有機金属前駆体錯体の融点を減少させることができる。タングステン(0)のジエン誘導体の合成方法は、一般的に、ジエン錯体によるW(CO)の光化学的に又は熱的に触媒される置換を含む。融点減少での助けが期待され得るジエンの例は、2−エチルシクロオクタ−1,4−ジエン及び3−エチルシクロオクタ−1,4−ジエンである。
【0144】
【化7】

【0145】
アルキル置換ジエンが、本明細書における置換キレートジエンリガンドを有する有機金属化合物を得るために報告されているジエンに対して置換することのできる例示的合成方法としては、1)Fischer,E.O.ら、Chem.Ber.、1959年、92、2995頁;2)Leigh,G.J.ら、J.Organomet.Chem.、1965年、4、461頁;及び3)Laine,R.M.、Transition Met.Chem.、1990年、5、158頁が挙げられる。
【0146】
本発明の有機金属化合物を調製する際に使用され得るその他の選択的方法としては、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,605,735B2号及び米国特許出願公開第US2004/0127732A1号(2004年7月1日公開)に開示されている方法が挙げられる。本発明の有機金属化合物は、また、Legzdins,P.ら、Inorg.Synth.1990年、28、196頁及びその参考文献に記載されているような通常の方法でも調製され得る。
【0147】
本発明の方法で調製された有機金属化合物では、精製は、再結晶化により、更に好ましくは、反応残渣の抽出(例えば、へキサン)及びクロマトグラフィーにより、最も好ましくは、昇華及び蒸留により行うことができる。
【0148】
当業者は、以下の特許請求の範囲において更に具体的に定義されている本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、本明細書で詳細に説明されている方法に対して多数の変更が為され得ることを認識するであろう。
【0149】
上述の合成方法により形成される有機金属化合物を特徴付けるために使用することのできる技法の例としては、分析的ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴、熱重量分析、誘導結合プラズマ質量分析、示差走査熱量測定、蒸気圧及び粘度測定が挙げられるがこれらに限定されない。
【0150】
上述の有機金属化合物前駆体の相対蒸気圧、又は相対揮発度は、当該技術分野で公知の熱重量分析技法で測定することができる。平衡蒸気圧もまた、当該技術分野で公知のように、例えば、密閉容器から全ての気体を排出し、その後に化合物の蒸気を容器に導入してその圧力を測定することにより測定することができる。
【0151】
本明細書に記載されている有機金属化合物前駆体は、その場で粉末及び被膜を調製するのに大変適している。例えば、有機金属化合物前駆体は、基体に適用し、次いで、前駆体を分解するのに十分な温度まで加熱し、それによって、基体上に金属又は金属炭化物/窒化物、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンの被膜を形成することができる。前駆体の基体への適用は、塗布、噴霧、浸漬又は当該技術分野で公知のその他の技法によることができる。加熱は、ヒートガン付オーブンで、基体を電気的に加熱することにより、又は当該技術分野で公知のその他の手段により実施することができる。層状化被膜は、有機金属化合物前駆体を適用し、それを加熱し、分解し、それによって、第一層を形成し、次いで、同じか異なる前駆体で少なくとも1つのその他の被膜を被覆し、加熱することにより得ることができる。
【0152】
上述の有機金属化合物前駆体は、また、霧状にして基体上に噴霧することができる。使用することのできる、ノズル、噴霧器及びその他のもの等の霧状化及び噴霧手段は当該技術分野では公知である。
【0153】
本発明は、1つとして、有機金属前駆体及び有機金属前駆体のCVD又はALDによる基体上での金属又は金属炭化物層の形成方法を提供する。本発明の1つの態様では、本発明の有機金属前駆体は減圧下で金属又は金属炭化物を堆積するために使用される。金属又は金属炭化物層を堆積するための方法は、前駆体を、好ましくは、約20Torr未満の圧力に維持された処理室に導入すること、及び前駆体を処理ガスの存在下で解離して金属又は金属炭化物層を堆積することを含む。前駆体は熱的又はプラズマ強化方法で解離され堆積され得る。この方法は、堆積した層をプラズマ処理に曝露して汚染物質を除去し、層を密度化し、層の抵抗性を減少させるステップを更に含む。
【0154】
本発明の好ましい実施形態では、上述のような有機金属化合物は、粉末、膜又は被膜を形成するための気相堆積技法で使用される。この化合物は単独源前駆体として使用することができ、又は1つ若しくは複数のその他の前駆体と一緒に、例えば、少なくとも1つのその他の有機金属化合物又は金属錯体を加熱して発生させた蒸気と一緒に使用することができる。例えば、上述のような有機金属化合物前駆体の2つ以上を所定の方法で使用することもできる。
【0155】
上で示したように、本発明は、また、1つには、膜、被膜又は粉末を製造する方法に関する。この方法は、以下で更に説明されるように、少なくとも1つの有機金属化合物前駆体を分解するステップ、それによって膜、被膜又は粉末を生成するステップを含む。
【0156】
本明細書に記載される堆積方法は、単独の金属若しくは金属炭化物/窒化物、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、若しくは炭窒化タングステンを含む単独の金属又は膜、粉末若しくは被膜を含む膜、粉末又は被膜を形成するために実施することができる。混合された膜、粉末又は被膜、例えば混合された金属/金属炭化物膜も堆積することができる。
【0157】
気相膜堆積は、所望の厚さ、例えば、約1nm〜1mmを超える範囲の所望の厚さの膜層を形成するために実施することができる。本明細書に記載される前駆体は、薄膜、例えば、約10nm〜約100nmの範囲の厚さを有する膜を生成するために特に有用である。本発明の膜は、例えば、金属電極、特に、ロジックにおけるn−チャンネル金属電極、DRAM用の蓄電器電極、及び誘電体材料を作製するために考慮することができる。
【0158】
この方法は、また、少なくとも2つの層が相又は組成において異なる層状化膜を調製するのに適している。層状化膜の例としては、金属−絶縁体−半導体、及び金属−絶縁体−金属が挙げられる。
【0159】
1つの実施形態では、本発明は、上述の有機金属化合物前駆体の蒸気を、熱的に、化学的に、光化学的に又はプラズマ活性によって分解するステップ、それによって基体上に膜を形成するステップを含む方法に関する。例えば、化合物により生じた蒸気は、有機金属化合物の分解を引き起こすのに十分な温度を有する基体と接触して基体上に膜を形成する。
【0160】
有機金属化合物前駆体は、化学堆積で又は更に具体的に言えば、当該技術分野で公知の金属有機化学堆積法で使用することができる。例えば、上述の有機金属化合物前駆体は、大気圧での、並びに低圧での化学堆積法で使用することができる。化合物は、熱壁化学堆積、即ち全体の反応室が加熱されている方法で、並びに冷暖壁化学堆積、即ち基体だけが加熱されている技法で使用することができる。
【0161】
上述の有機金属化合物前駆体は、また、プラズマ又は電磁エネルギーからのエネルギーが、それぞれに、化学堆積前駆体を活性化するために使用される、プラズマ又は光補助化学堆積法で使用することもできる。化合物は、また、それぞれに、イオンビーム又は電子ビームが基体に向かって、化学堆積前駆体を分解するためのエネルギーを供給する、イオンビーム、電子ビーム補助化学堆積法でも使用することができる。レーザー光線が基体に向かって、化学堆積前駆体の光分解反応に作用するレーザー補助化学堆積法でも使用することができる。
【0162】
本発明方法は、当該技術分野で公知の種々の化学堆積反応器、例えば、熱若しくは冷壁反応器、プラズマ補助、ビーム補助若しくはレーザー補助反応器で実施することができる。
【0163】
本発明方法を使用して被覆することのできる基体の例としては、固体基体、例えば、金属基体等、例えば、Al、Ni、Ti、Co、Pt、金属ケイ素化合物、例えば、TiSi、CoSi、NiSi;半導体材料、例えば、Si、SiGe、GaAs、InP、ダイアモンド、GaN、SiC;絶縁体、例えば、SiO、Si、HfO、Ta、Al、バリウムストロンチウムチタネート(BST);又は組合せ材料を含む基体上の固体基体が挙げられる。更に、膜又は被膜は、ガラス、セラミック、プラスチック、熱硬化性ポリマー材料、及びその他の被膜又は膜層の上に形成することができる。好ましい実施形態では、膜の堆積は、電子部品の製造又は処理で使用される基体上である。その他の実施形態では、基体は、高温で酸化剤の存在下で安定な低抵抗性コンダクター堆積物又は光透過膜を支持するために使用される。
【0164】
本発明方法は、平滑で平らな表面を有する基体上に膜を堆積するために実施することができる。1つの実施形態では、方法は、ウエハーの製造又は処理で使用される基体上に膜を堆積するために実施される。例えば、方法は、溝、孔又はバイアス等の形状を含むパターン化された基体上に膜を堆積するために実施することができる。更に、本発明方法は、また、ウエハーの製造又は処理におけるその他のステップ、例えば、マスキング、エッチング等と一体化することもできる。
【0165】
本発明の1つの実施形態では、プラズマ補助ALD(PEALD)方法が、炭化タングステン及びタングステンに富む膜を堆積するために有機金属前駆体を使用するために開発された。固体前駆体は、それをCVD室中へ導入するための不活性ガスの流れの下で昇華させることができる。炭化タングステン膜は水素プラズマの助けで基体上で成長する。タングステン対炭素の比率は、水素プラズマのパルス期間を調節することにより調節することができる。
【0166】
化学堆積膜は所望の厚さまで堆積することができる。例えば、形成される膜は、1ミクロン厚未満、好ましくは、500ナノメートル未満、更に好ましくは、200ナノメートル厚未満であることができる。50ナノメートル厚未満の膜、例えば、約0.1〜約20ナノメートルの厚さを有する膜も製造することができる。
【0167】
上述の有機金属化合物前駆体は、また、基体が、前駆体、酸化剤及び不活性ガス流の交互パルスに曝露されるALD法又は原子層核化(ALN)技法により膜を形成するために本発明方法で使用することができる。順次層堆積技法は、例えば、米国特許第6,287,965号及び米国特許第6,342,277号に記載されている。両方の特許の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0168】
例えば、1つのALDサイクルでは、基体は、段階的に、a)不活性ガス、b)不活性ガス担持前駆体蒸気、c)不活性ガス及びd)酸化剤単独又は不活性ガスと一緒の酸化剤に曝露される。一般的に、各ステップは、装置が許す限り短時間(例えば、ミリ秒)で、そして方法が必要とする限り長時間(例えば、数秒又は数分)であることができる。1つのサイクル期間は数ミリ秒と短く、数分まで長くてもよい。サイクルは、2〜3分から数時間の範囲であることができる期間にわたって繰り返される。生成された膜は2〜3ナノメートルの薄い又は厚い、例えば、1ミリメートル(mm)の膜であることができる。
【0169】
本発明は、金属材料、例えば、タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンを、本発明の有機金属前駆体から基体、例えば、超小型電子デバイス構造上に形成するための方法を含み、前記方法は、前記有機金属前駆体を気化して蒸気を形成すること、及び蒸気を基体と接触させてその上に前記金属材料を形成することを含む。タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンが基体上に堆積された後に、基体は、その後銅で金属化されてもよく又は強誘電性薄膜と一体化されてもよい。
【0170】
本発明方法は、また、超臨界流体を使用して実施することもできる。当該技術分野で現に公知の超臨界流体を使用する膜堆積方法の例としては、化学液相析出、超臨界流体輸送−化学析出、超臨界液相化学析出及び超臨界浸漬析出が挙げられる。
【0171】
化学液相析出法は、例えば、高純度膜の製造並びに複雑な表面の被覆及び高アスペクト比形状の充填に良く適している。化学液相析出は、例えば、米国特許第5,789,027号に記載されている。膜を形成するための超臨界流体の使用は、また、米国特許第6,541,278B2号に記載されている。これらの2つの特許の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0172】
本発明の1つの実施形態では、加熱されパターン化された基体は、溶媒、例えば、臨界に近い又は超臨界流体等、例えば、臨界に近い又は超臨界COの存在下で、1つ又は複数の有機金属化合物前駆体に曝露される。COの場合では、溶媒流体は約1000psigより上の圧力及び少なくとも約30℃の温度で供給される。
【0173】
前駆体は、基体上に金属膜を形成するために分解される。この反応は、また、前駆体から有機材料を発生させる。有機材料は溶媒流体により可溶性にされ、基体から簡単に除去される。
【0174】
一例では、堆積方法は、1つ又は複数の基体を収容する反応室で実施される。基体は、全体の室を、例えば、炉によって加熱することにより所望の温度まで加熱される。有機金属化合物の蒸気は、例えば、室に真空を適用することにより生成することができる。低沸点化合物に対して、室は化合物の気化を引き起こすのに十分に熱いものであることができる。蒸気が加熱された基体表面と接触すると、蒸気は分解して金属又は金属炭化物膜を形成する。上述のように、有機金属化合物前駆体は、単独で又は1つ若しくは複数の成分、例えば、その他の有機金属前駆体、不活性キャリアガス若しくは反応性ガスとの組合せで使用することができる。
【0175】
本発明方法で膜を生成する際に使用することのできるシステムでは、原料は、膜成長が行われる堆積反応器へ供給される処理ガスを生成するためにガス−ブレンドマニホールドへ導くことができる。原料としては、キャリアガス、反応性ガス、パージガス、前駆体、エッチ/クリーンガス等が挙げられるがこれらに限定されない。処理ガス組成の正確な制御は、質量流量コントローラー、バルブ、圧力変換器、及び当該技術分野で公知のその他の手段を使用して達成される。排気マニホールドは、堆積反応器を出て行くガス、並びにバイパス流を真空ポンプまで運ぶことができる。真空ポンプの下流の排ガス処理装置は、排気ガスからのいずれかの有害物質を除去するために使用することができる。堆積システムは、処理ガス組成の測定を可能とする残留ガス分析器を含めて、現場に分析システムを装着することができる。制御及びデータ取得システムは、種々のプロセスパラメータ(例えば、温度、圧力、流量等)を監視することができる。
【0176】
上述の有機金属化合物前駆体は、単独金属を含む膜又は単独金属炭化物を含む膜を生成するために使用することができる。混合膜、例えば、混合金属炭化物膜を堆積することもできる。そのような膜は、例えば、幾つかの有機金属前駆体を使用することにより生成される。金属膜は、また、例えば、キャリアガス、蒸気又はその他の酸素源を使用せずに形成することもできる。
【0177】
本明細書に記載されている方法により形成される膜は、当該技術分野で公知の技術、例えば、X線回折、Auger分光法、X線光電子放出分光法、原子間力顕微鏡、走査電子顕微鏡、及び当該技術分野で公知のその他の技術により特徴付けることができる。膜の抵抗性及び熱安定性は、当該技術分野で公知の方法で測定することができる。
【0178】
膜堆積のための化学堆積又は原子層堆積前駆体として半導体用途でのこれらの使用に加えて、本発明の有機金属化合物は、また、例えば、触媒、燃料添加剤として及び有機合成においても有用であり得る。
【0179】
本発明の種々の変更及び変化は当業者にとっては自明であり、そのような変更及び変化は、本願の範囲並びに特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれるべきものであることが理解されるべきである。
【実施例】
【0180】
(例1)
リチウムエチルシクロペンタジエニドの合成
オーブン乾燥した2.0リットルの丸底三つ口フラスコに、テフロン(登録商標)被覆した撹拌棒、500ミリリットル滴下漏斗及び栓アダプターを取り付けた。フラスコの残りの口をゴムセプタムで密封した。次いで、フラスコを、Tygon(登録商標)管を介して窒素/真空マニホールドへ接続し、フラスコの内容物を排出し、窒素で3回再充填した。
【0181】
次いで、無水ヘキサン(500ミリリットル)をフラスコ中にカニューレ挿入し、2.0リットルフラスコを冷却浴の内側で−10℃まで冷却した。この溶液へ、新しく割ったエチルシクロペンタジエン(97.5グラム、1.06モル)を添加した。次いで、n−ブチルリチウム(380ミリリットル、ヘキサン中の2.5M、1.0モル)を滴下漏斗へ添加した。次いで、n−ブチルリチウム溶液を、撹拌しながらエチルシクロペンタジエン溶液へ滴状添加した。反応の温度を熱電対で監視しながら、3時間の添加の間、温度を−10℃〜0℃に維持した。添加中に、不溶性白色沈殿物(リチウムエチルシクロペンタジエニド)の兆候が明らかになった。
【0182】
添加が完了したら、実験装置を不活性雰囲気のグローブボックスの内部へ移した。反応フラスコの内容物を粗いフリットで濾過し、白色固体を100ミリリットルのヘキサンで3回洗浄した。次いで、フワフワした白色固体を真空下で乾燥し、100.1グラムのリチウムエチルシクロペンタジエニドを得た。
【0183】
(例2)
Li[(EtCp)W(CO))]の合成
オーブン乾燥した3.0リットルのフラスコに、コンデンサー、機械的撹拌軸及びゴムセプタムを取り付けた。栓アダプターをコンデンサーに取り付け、次いで、この一式を、栓アダプターを介してTygon(登録商標)管で窒素/真空マニホールドへ接続した。フラスコの中身を排出し、窒素で3回再充填した。
【0184】
真空下で、装置を窒素/真空マニホールドから外し、不活性雰囲気のグローブボックスの内部へ移した。ゴムセプタムを外し、タングステンヘキサカルボニル(300グラム、0.85モル)を3.0リットルフラスコ中へ投入した。ゴムセプタムを元に戻し、フラスコをグローブボックスの外に取り出し、真空/窒素マニホールドへ再接続した。
【0185】
次いで、ジメトキシエタン(1.0リットル、無水)を、Sureseal(登録商標)瓶から反応容器中へカニューレ挿入し、溶液を撹拌した。タングステンヘキサカルボニルは、この溶液にごく僅かな溶解度を示し、不均質溶液での分散白色懸濁液として出現した。
【0186】
一口の2.0リットル丸底フラスコへ、不活性雰囲気のグローブボックス内部で、リチウムエチルシクロペンタジエニド(85.3グラム)及びTeflon(登録商標)被覆撹拌棒を付加した。口をゴムセプタムで密封し、グローブボックスから取り出した。次いで、ジメトキシエタン(500ミリリットル、無水)を、撹拌しながら不活性窒素充填下で一口フラスコ中へカニューレ挿入した。リチウムエチルシクロペンタジエニドはジメトキシエタンに完全に溶解し、淡黄色溶液が得られた。
【0187】
次いで、両方の反応フラスコを撹拌しながら、リチウムエチルシクロペンタジエニド溶液を、ジメトキシエタン及びW(CO)を含むフラスコ中へカニューレ挿入した。添加が完了したら、水の流動をコンデンサーを通して開始し、反応容器の内容物を還流するために加熱した。最初の日の過程全体で、溶液の色は、白色懸濁液を伴う淡黄色溶液から暗赤色へと変わった。初めに、機械的撹拌が、反応容器の内容物を撹拌するのに十分なトルクを発生するために必要であるが、初日の終わりでは、機械的撹拌装置をTeflon(登録商標)被覆撹拌棒に置き換えた。この時点で、固体の十分な部分は溶液となり、Teflon(登録商標)撹拌棒は溶液中で機械的撹拌を維持することができる。
【0188】
溶液を室温まで冷却する前に、穏やかな還流を3日間続けた。この時点で、Li[(EtCp)W(CO)]の赤色溶液は、その後の合成のための合成試薬として使用することができ、又は単離され得る。塩の単離は、減圧下で溶媒の除去により、又はペンタン等の非極性溶媒の添加により実施され得る。殆どの場合、溶液は、揮発性Wベースの有機金属の調製で単離なしで合成中間体として使用された。
【0189】
(例3)
(EtCp)W(CO)Hの合成
三つ口1.0リットルフラスコへ、撹拌棒及び2つのゴムセプタ及び栓アダプターを接続した。次いで、フラスコを窒素/真空マニホールドへ接続し、排出し、3回再充填した。次いで、ジメトキシエタン(500ミリリットル)を容器へカニューレ挿入し、液体を撹拌した。次いで、氷酢酸(51グラム、0.85モル)を、ゴムセプタを通して注射器で容器へ添加した。次いで、溶液をNで30分間散布した。
【0190】
ジメトキシエタン中のLi[(EtCp)W(CO)]の溶液(1.5リットルのDME中の0.85モルのLi[(EtCp)W(CO)])を例2に記載されたように調製した。ゴムセプタムを外し、オーブン乾燥した不活性雰囲気の1.0リットル滴下漏斗で置き換えた。
【0191】
次いで、DME中の氷酢酸溶液を、不活性N充填下でカニューレによって1.0リットルフラスコから1.0リットル滴下漏斗へ移した。滴下漏斗の内容物を2時間掛けて滴状添加した。この時間中に、褐色固体が赤色溶液から沈殿した。添加の後、反応フラスコの内容物を一晩中撹拌した。
【0192】
次いで、3.0リットルフラスコを不活性雰囲気のグローブボックスの内部へ移し、反応容器の内容物を粗いフリットで、3.0リットルの二口丸底フラスコ中へ濾過した。フリット上で集められた固体を廃棄した。濾過された溶液を移したら、フラスコを不活性雰囲気の蒸留頭部に取り付け、窒素充填下でグローブボックスから取り出した。
【0193】
蒸留を、初めに大気圧で実施してジメトキシエタンを除去した。ジメトキシエタンの大部分が除去されたら、蒸留を減圧で実施した。複数のカットが集まり、蒸留中の初期にW(CO)の昇華の証拠が存在した。248グラムの所望の生成物の黄色液体生成物(EtCp)W(CO)Hが、3×10−1Torrの圧力及び81℃の頭部温度で集められた。(EtCp)W(CO)Hは、H NMR、TGA、GC及びDSCで特徴付けられた。
【0194】
(例4)
(EtCp)W(CO)CHの合成
三つ口1.0リットルフラスコへ、撹拌棒及び2つのゴムセプタ及び栓アダプターを接続した。次いで、フラスコを窒素/真空マニホールドへ接続し、排出し、3回再充填した。次いで、ジメトキシエタン(500ミリリットル)を容器へカニューレ挿入し、液体を撹拌した。次いで、ブロモメタン(81グラム、0.85モル)を、ゴムセプタを通して注射器で容器へ添加した。次いで、溶液をNで30分間散布した。
【0195】
ジメトキシエタン中のLi[(EtCp)W(CO)]の溶液(1.5リットルのDME中の0.85モルのLi[(EtCp)W(CO)])を例2に記載されたように調製した。ゴムセプタムを外し、オーブン乾燥した不活性雰囲気の1.0リットル滴下漏斗で置き換えた。
【0196】
次いで、DME中のブロモメタン溶液を、不活性N充填下でカニューレによって1.0リットルフラスコから1.0リットル滴下漏斗へ移した。滴下漏斗の内容物を2時間掛けて滴状添加した。この時間中に、褐色固体が赤色溶液から沈殿した。添加の後、反応フラスコの内容物を一晩中撹拌させた。
【0197】
次いで、3.0リットルフラスコを不活性雰囲気のグローブボックスの内部へ移し、反応容器の内容物を粗いフリットで、3.0リットルの二口丸底フラスコ中へ濾過した。フリット上で集められた固体を廃棄した。濾過された溶液を移したら、フラスコを不活性雰囲気の蒸留頭部に取り付け、窒素充填下でグローブボックスから取り出した。
【0198】
蒸留を、初めに大気圧で実施してジメトキシエタンを除去した。ジメトキシエタンの大部分が除去されたら、蒸留を減圧で実施した。複数のカットが集まり、蒸留中の初期にW(CO)の昇華の証拠が存在した。227グラムの所望の生成物の黄色液体生成物(EtCp)W(CO)CHが、3×10−1Torrの圧力及び94℃の頭部温度で集められた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、Mが、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lが、シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジルから選択される置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lが、(i)ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基から選択される置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)ニトロシルから選択される置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)カルボニル、ホスフィノ、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトリル及びイソニトリルから選択される置換又は非置換中性2電子供与体リガンドである、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、
(i)Mが(+2)の酸化数を有するタングステン(W)であり、Lが(−1)の電荷を有する置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、1つのLリガンドが(−1)の電荷を有する置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、残りの3つのLリガンドが同じか異なり、かつ、それぞれがゼロ(0)の電荷を有する置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであるもの、
(ii)Mが(0)の酸化数を有するタングステン(W)であり、Lが(−1)の電荷を有する置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、1つのLリガンドが(+1)の電荷を有する置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、残りの2つのLリガンドが同じか異なり、それぞれがゼロ(0)の電荷を有する置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであるもの、及び
(iii)Mが(0)の酸化数を有するタングステン(W)であり、Lが(−1)の電荷を有する置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、1つのLリガンドが(−1)の電荷を有する置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、残りの2つのLリガンドが同じか異なり、それぞれが(+1)の電荷を有する置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであるもの
から選択される、化合物。
【請求項4】
(i)式LM”(L(Ly’(Lz’(ここで、M”は、nの酸化状態を有する第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、nは整数0又は2であり、z’は整数0又は1であり、xはz’−n+1に等しい整数であり、但し、xは0以上であり、y’は7n/2+2x−4z’に等しい整数であり、但し、y’は0以上であり、M”の酸化数とL、L、L及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する化合物、
(ii)式(LM(CO)x’(Lz−y−x’(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、又は(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、x’は整数0〜3であり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL、L及びCO基の電荷との合計は0に等しい)を有する化合物、
(iii)式LM’L(L(ここで、M’は第5族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、M’の酸化数とL、L及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する化合物、
(iv)式LM’L(L(ここで、M’は第5族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、M’の酸化数とL、L及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する化合物、
(v)式(LM(NO)x”(Lz−y−x”(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、又は(ii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、x”は整数0〜2であり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL、L及びNO基の電荷との合計は0に等しい)を有する化合物、
(vi)式LM’(L(ここで、M’は第5族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換カチオン性2電子供与体リガンドであり、Lは置換又は非置換アニオン性2電子供与体リガンドであり、M’の酸化数とL、L及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する化合物、
(vii)式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは置換キレートジエンリガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する化合物、並びに
(viii)式(L)M”(L(ここで、M”は第6族金属であり、Lは同じか異なり、かつ、置換又は非置換中性2電子供与体リガンドであり、Lは置換キレートジエンリガンドであり、M”の酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する化合物
から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
(i)式LM”(L(Ly’(Lz’(ここで、M”は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、又はクロム(Cr)から選択され、Lは、置換又は非置換シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジルから選択され、Lは置換又は非置換ニトロシルから選択され、Lは、置換又は非置換カルボニル、ホスフィン、アミン、ニトリル、アルキン及びアルケンから選択され、Lは、置換又は非置換ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)を有する化合物、
(ii)式(LM(CO)x’(Lz−y−x’(ここで、Mは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lは、置換又は非置換シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジルから選択され、Lは、(i)置換又は非置換ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、及び(ii)置換又は非置換ニトロシルから選択される)を有する化合物、
(iii)式LM’L(L(ここで、M’は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)から選択され、Lは、置換又は非置換シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジルから選択され、Lは、置換又は非置換カルボニル、ホスフィン、アミン、ニトリル、アルキン及びアルケンから選択され、Lは、置換又は非置換ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)を有する化合物、
(iv)式LM’L(L(ここで、M’は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)から選択され、Lは、置換又は非置換シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジルから選択され、Lは置換又は非置換ニトロシルから選択され、Lは、置換又は非置換カルボニル、ホスフィン、アミン、ニトリル、アルキン及びアルケンから選択される)を有する化合物、
(v)式(LM(NO)x”(Lz−y−x”(ここで、Mは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lは、置換又は非置換シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジルから選択され、Lは、(i)置換又は非置換ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、及び(ii)置換又は非置換カルボニル、ホスフィノ、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトリル及びイソニトリルから選択される)を有する化合物、
(vi)式LM’(L(ここで、M’は、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)から選択され、Lは、置換又は非置換シクロペンタジエニル、シクロヘプタジエニル、ペンタジエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びボラタベンジルから選択され、Lは置換又は非置換ニトロシルから選択され、Lは置換又は非置換ヒドリド、ハロ及び1〜12個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)を有する化合物、
(vii)式(LM(Lz−y(ここで、Mは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)又はクロム(Cr)から選択され、Lは、置換又は非置換カルボニル、ホスフィノ、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトリル及びイソニトリルから選択され、Lは、アルキル置換1,4−シクロヘキサジエニル、アルキル置換1,3−シクロペンタジエニル、アルキル置換1,5−シクロヘプタジエニル、及びアルキル置換1,6−シクロオクタジエニルから選択される)を有する化合物、並びに
(viii)式(L)M”(L(ここで、M”は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、又はクロム(Cr)から選択され、Lは、置換又は非置換カルボニル、ホスフィン、アミン、アルケン、アルキン、ニトリル及びイソニトリルから選択され、Lは、アルキル置換1,4−シクロヘキサジエン、アルキル置換1,3−シクロペンタジエン、アルキル置換1,5−シクロヘプタジエン、及びアルキル置換1,6−シクロオクタジエンから選択される)を有する化合物
から選択される請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
トリス(カルボニル)(メチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、(MeCp)W(CO)H;
トリス(カルボニル)(エチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、(EtCp)W(CO)H;
トリス(カルボニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、Cp*W(CO)H;
トリス(カルボニル)(メチルシクロペンタジエニル)メチルタングステン、(MeCp)W(CO)CH
トリス(カルボニル)(エチルシクロペンタジエニル)メチルタングステン、(EtCp)W(CO)CH
トリス(カルボニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)メチルタングステン、Cp*W(CO)CH
トリス(カルボニル)(メチルシクロペンタジエニル)エチルタングステン、(MeCp)W(CO)
トリス(カルボニル)(エチルシクロペンタジエニル)エチルタングステン、(EtCp)W(CO)
トリス(カルボニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)エチルタングステン、Cp*W(CO)
トリス(アセトニトリル)(メチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、(MeCp)W(NCCHH;
トリス(アセトニトリル)(エチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、(EtCp)W(NCCHH;
トリス(アセトニトリル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ヒドリドタングステン、Cp*W(NCCHH;
トリス(カルボニル)(シクロヘプタジエニル)ヒドリドタングステン、(C)W(CO)H;
トリス(カルボニル)(2,4−ジメチルペンタジエニル)ヒドリドタングステン、((CH)W(CO)H;
トリス(カルボニル)(2,5−ジメチルピロリル)ヒドリドタングステン、((CHN)W(CO)H;
メチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、(EtCp)W(NO)H;
エチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、(MeCp)W(NO)H;
ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、Cp*W(NO)H;
メチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)メチルタングステン、(EtCp)W(NO)CH
エチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)メチルタングステン、(MeCp)W(NO)CH
ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)メチルタングステン、Cp*W(NO)CH
メチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)エチルタングステン、(EtCp)W(NO)
エチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)エチルタングステン、(MeCp)W(NO)
ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(ニトロシル)エチルタングステン、Cp*W(NO)
シクロヘプタジエニルビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、(C)W(NO)H;
(2,4−ジメチルペンタジエニル)ビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、((CH)W(NO)H;
(2,5−ジメチルピロリル)ビス(ニトロシル)ヒドリドタングステン、((CHN)W(NO)H;
メチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(ヒドリド)タングステン、(MeCp)W(NO)H
エチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(ヒドリド)タングステン、(EtCp)W(NO)H
ペンタメチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(ヒドリド)タングステン、Cp*W(NO)H
メチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(メチル)タングステン、(MeCp)W(NO)(CH
エチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(メチル)タングステン、(EtCp)W(NO)(CH
ペンタメチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(メチル)タングステン、Cp*W(NO)(CH
メチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(エチル)タングステン、(MeCp)W(NO)(C
エチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(エチル)タングステン、(EtCp)W(NO)(C
ペンタメチルシクロペンタジエニルニトロシルビス(エチル)タングステン、Cp*W(NO)(C
シクロヘプタジエニルニトロシルビス(エチル)タングステン、(C)W(NO)(C
2,4−ジメチルペンタジエニルニトロシルビス(エチル)タングステン、((CH)W(NO)(C;及び
2,5−ジメチルピロリルニトロシルビス(エチル)タングステン、((CHN)W(NO)(C
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは1の整数であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する化合物を製造する方法であって、
金属ハロゲン化物、塩及び還元剤を、第一溶媒の存在下で、中間体反応材料を製造するのに十分な反応条件下で反応させること、及び、
前記中間体反応材料と塩基性材料とを、第二溶媒の存在下で、前記有機金属化合物を製造するのに十分な反応条件下で反応させること
を含む、方法。
【請求項8】
前記金属ハロゲン化物が、六塩化タングステン、六塩化モリブデン、六塩化クロム、五塩化タンタル、五塩化ニオブ又は五塩化バナジウムを含み、前記塩が、ナトリウムシクロペンタジエン、カリウムシクロペンタジエン、リチウムシクロペンタジエン又はマグネソセンを含み、前記還元剤が、ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジヒドリド、ナトリウムボロヒドリド又はリチウムアルミニウムヒドリドを含み、前記第一溶媒が、ジメトキシエタン(DME)、トルエン又はこれらの混合物を含み、前記中間体反応材料が、Li[(EtCp)W(CO)]、Na[(EtCp)W(CO)]、及びPPN[(2,5−ジメチルピロリル)W(CO)]から選択され、前記塩基性材料が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は酢酸エチルを含み、前記第二溶媒が、トルエン、ヘキサン又はこれらの混合物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
有機金属前駆体化合物を分解することによる、膜、被膜又は粉末を製造する方法であって、
前記有機金属前駆体化合物が式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する、方法。
【請求項10】
前記有機金属前駆体化合物の分解が、熱的、化学的、光化学的であるか、プラズマ活性化性である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記膜、被膜又は粉末が、化学堆積、原子層堆積、プラズマ補助化学堆積又はプラズマ補助原子層堆積で製造される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
処理室で基体を処理する方法であって、(i)有機金属前駆体化合物を前記処理室中へ導入すること、(ii)前記基体を約100℃〜約400℃の温度に加熱すること、及び(iii)前記有機金属前駆体化合物を処理ガスの存在下で解離し、前記基体上に金属層を堆積することを含み、前記有機金属前駆体化合物が式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する、方法。
【請求項13】
タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンが、前記基体上に堆積される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属層が、化学堆積、原子層堆積、プラズマ補助化学堆積又はプラズマ補助原子層堆積により前記基体上に堆積される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記有機金属前駆体化合物を解離することが、約0.6ワット/cm〜約3.2ワット/cmのパワー密度でプラズマを発生することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記堆積した金属層を、約0.6ワット/cm〜約3.2ワット/cmのパワー密度で発生したプラズマへ曝露することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記金属層上に第二金属層を堆積することを更に含み、前記第二金属層が銅を含み、電気メッキ技法により堆積される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
有機金属前駆体化合物から基体上に金属材料を形成する方法であって、前記有機金属前駆体化合物が、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有し、前記方法が、前記有機金属前駆体化合物を気化して蒸気を形成すること、及び前記蒸気を前記基体と接触させて前記基体上に金属材料を形成することを含む、方法。
【請求項19】
タングステン、窒化タングステン、炭化タングステン、又は炭窒化タングステンが、前記基体上に堆積され、その後、前記基体が銅で金属化されるか、強誘電性薄膜と一体化される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
マイクロ電子デバイス構造を作製する方法であって、有機金属前駆体化合物を気化して蒸気を形成すること、前記蒸気を基体と接触させて前記基体上に金属含有膜を堆積すること、その後、前記基体を銅で金属化するか、強誘電性薄膜と一体化させることを含み、前記有機金属前駆体化合物が、式(LM(Lz−y(ここで、Mは第5族金属又は第6族金属であり、Lは置換又は非置換アニオン性6電子供与体リガンドであり、Lは同じか異なり、かつ、(i)置換若しくは非置換アニオン性2電子供与体リガンド、(ii)置換若しくは非置換カチオン性2電子供与体リガンド、又は(iii)置換若しくは非置換中性2電子供与体リガンドであり、yは整数1であり、zはMの原子価であり、Mの酸化数とL及びLの電荷との合計は0に等しい)を有する、方法。


【公表番号】特表2010−504999(P2010−504999A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530598(P2009−530598)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/079707
【国際公開番号】WO2008/039916
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】