説明

有限ストローク型ボールねじ装置

【課題】 有限ストローク型ボールねじでは、端部にシール装置を設けることができない場合があり、ボールねじ内の温度が上昇したり、ねじ軸およびナット体が軸心方向に往復移動を繰り返す間にグリースが端部側へ流れ、軌道面とボール表面の潤滑性が低下し、ボールねじの寿命が低下してしまう。
【解決手段】 軌道面とボール15a,15b,15cの潤滑に混和稠度を258に調節したグリースを用いることで、固定環91および可動環92が使用に伴って往復移動回数が増大した場合や温度が上昇した場合であっても、グリースがボールねじ装置9の端方に流れにくくボール保持器17に停留し、グリースから油分がボール15a,15b,15cに供給されて潤滑性を維持し、ボール15a,15b,15cが軌道面を転動する際にボール傷の発生を長期に防止し、ボールねじ装置9の寿命を延長することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボールがばらけないように保持器で保持された状態で、ボールがねじ軸に形成した螺旋溝の溝壁面およびナット体に形成した螺旋溝の溝壁面を軌道面として転動するようにした、有限ストローク型ボールねじ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の有限ストローク型(ボール非循環型)ボールねじ装置には、ボールがばらつかないよう保持するための保持器をねじ軸とナット体との間に配置した構成とし、ねじ軸とナット体との相対的な移動を、例えばねじ軸に設けたストッパピンに保持器が当たることで規制する構成のものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来のような有限ストローク型ボールねじ装置では、ねじ軸とナット体との軸心方向の幅に差がないことから、端部にシール装置を設けることができない。このため、ボールねじ内の温度が上昇したり、ねじ軸およびナット体が軸心方向に相対的な往復移動を繰り返す間に、ねじ軸およびナット体の軌道面とボール表面の潤滑に用いているグリースが端部側へ流れてしまい、軌道面とボール表面の潤滑性が低下し、ボールねじ装置の寿命が低下してしまっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明における課題解決手段は、ねじ軸の外周面に形成した螺旋溝の溝壁面およびねじ軸に外嵌するナット体の内周面に形成した螺旋溝の溝壁面を軌道面とし、保持器に形成した複数のポケットにそれぞれ装着された複数のボールが、前記ねじ軸とナット体とに挟持された状態で転動自在に設けられ、前記ねじ軸またはナット体のうちの少なくとも一方を軸心回りに回転させることで、ねじ軸およびナット体が軸心方向に相対的にかつ有限ストローク内を往復移動可能に構成され、前記軌道面とボール表面の潤滑に、ねじ軸およびナット体の使用に伴なう往復移動回数が増大しても前記保持器に停留し易い混和稠度の小さいグリースが用いられている。また、混和稠度を150〜280の範囲内のウレア系グリースとしている。
【0005】このようなボールねじ装置では、シール装置を設置するスペースを有しないため軌道面と玉との潤滑に用いるグリースを封入できないないが、上記のように混和稠度の小さいグリースを用いることで、これが保持器に停留し易く、ねじ軸およびナット体の相対的な往復移動回数が増大した場合であってもグリースがボールねじ装置の端方に流れにくく、グリースが保持器に停留して油分がボールに供給されるようになり、ボールと軌道面との潤滑性が維持されてボール傷の発生が抑えられ、ボールねじ装置の寿命が延長する。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態のボールねじ装置を車両の無段変速機に用いた全体断面図、図2R>2はボールねじ装置の全体構成を示す断面図、図3はボールねじ装置の要部拡大断面図、図4はボールを保持した状態の保持器の斜視図である。
【0007】ここで図1に基づいて、本発明のボールねじ装置9を用いた無段変速機の全体構成を説明する。図例の無段変速機は、互いに平行に配置された入力軸1および出力軸2とを備え、入力軸1は不図示のエンジン出力に応じた回転数で回転され、出力軸2は不図示の車輪に動力を伝達するもので、乾式の無段変速機である。
【0008】前記入力軸1には主動側V溝プーリ3が、出力軸2には従動側V溝プーリ4がそれぞれ連結されており、これら両プーリ3,4間には、複合ベルト5が巻き掛けられている。そして操作ユニット6を駆動して各プーリ3,4の幅を変更することで複合ベルト5の巻き掛け径を調節し、エンジン出力を無段階に変速して出力軸2に伝達する構成になっている。
【0009】前記主動側V溝プーリ3は、入力軸1に固定された固定フランジ31と、入力軸1に同軸状に配設されてスプライン嵌合された可動フランジ32とを有し、両フランジ31,32は互いの対向面が円錐面になっていて、両対向面間でV溝33が構成されている。
【0010】前記従動側V溝プーリ4は、出力軸2に固定された固定フランジ41と、出力軸2に同軸状に配設されてスプライン嵌合された可動フランジ42とを有する。両フランジ41,42は互いの対向面が円錐面になっていて、両対向面間でV溝43が構成されている。可動フランジ42は、図示しないバネ部材で固定フランジ41に向けて常時付勢されている。
【0011】前記操作ユニット6は、主動側V溝プーリ3の可動フランジ32を軸心方向にスライドさせることによりプーリ3,4に対する複合ベルト5の巻き掛け径を可変させて無段変速操作を行うものであり、DCモータ7と、変速用アクチュエータ歯車列8と、ボールねじ装置(送り装置)9とを含む。
【0012】前記変速用アクチュエータ歯車列8は、モータ7側に設けられる第1歯車81と、主動側V溝プーリ3側に設けられる第2歯車82と、第1歯車81と第2歯車82とに噛合する第3歯車83とを備えている。第2歯車82は、第3歯車83に噛合する大径歯車部84と、この大径歯車部84から軸心方向に離れた位置に設けられる軸心方向に長い小径歯車部85とを一体に有している。
【0013】前記ボールねじ装置9は、上記変速用アクチュエータ歯車列8の第2歯車82から与えられる回転動力を軸心方向推進力に変換するボール非循環型のものであり、図2に示すように、後述の固定環(ねじ軸に相当する)91の外周面に形成した螺旋溝16aの溝壁面および固定環91に外嵌する可動環(ナット体に相当する)92の内周面に形成した螺旋溝16bの溝壁面を軌道面とすることで、螺旋溝16a,16bとほぼ同径で複数のボール15a,15b,15cが固定環91と可動環92との間に転動自在に設けられ、前記固定環91と可動環92との間に、前記ボール15a,15b,15cがばらつかないよう保持するための保持器17が配置され、固定環91および可動環92は軸心方向に相対移動可能(この場合固定環91に対して可動環92軸心方向に移動可能)に構成されている。
【0014】図4に示すように、この保持器17には、ボール15a,15b,15cが装着されるポケット17a,17b,17cが保持器本体17dの周方向に所定間隔置きに並べて形成され、この保持器17は、単純な円筒形に形成されて、前記ポケット17a,17b,17cどうしは1リード分だけの螺旋上に配置されている。
【0015】図2および図3に示すように、前記固定環91の外周面および可動環92の内周面に、可動環92が軸心方向への移動する際に端部のポケット17a,17cに装着したボール15cの螺旋方向への移動を規制するストッパ96a,96b,97a,97bが配置され、これらそれぞれのストッパ96a,96b,97a,97bは、胴部98が固定環91の外周面および可動環92の内周面に植設され、胴部98に対して拡径されるとともに前記ボール15cが当たる頭部99が、螺旋溝16aおよび螺旋溝16bに突出している(可動環92に設けた分は図示省略)。
【0016】なおこれらストッパ96a,96b,97a,97bの位置は、ボールねじ装置9においてエンジン出力を必要な範囲で無段階に変速可能な位置に配置され、従って、前記ボール保持器17は、固定環91の螺旋溝16aに取り付けられるストッパ96a,96bと、可動環92の螺旋溝16bに取り付けられるストッパ97a,97bとにより、軸心両方向への所定の移動量になるよう規制されている。
【0017】ところで、前記軌道面とボール15a,15b,15cの表面の潤滑には、固定環91および可動環92の使用に伴なう往復移動回数が増大しても前記ボール保持器17に停留し易いグリースを用いている。
【0018】すなわちこのグリースは混和稠度を小さく調節してあり、このグリースの混和稠度は150〜280の範囲内に設定している。具体的には、この実施の形態では、グリースの基油として鉱油を用い、増稠剤としてウレア系化合物を用いて混和稠度を258に調節している。
【0019】また前記固定環91は、大径部91aと小径部91bとを有し、図1に示すように、その大径部91aが入力軸1とハウジング10との間に転がり軸受11を介して取り付けられることで主動側V溝プーリ3と同軸状に固定配設され、小径部91bが軸心方向に延長されてその外周面に前記螺旋溝16aが形成されている。
【0020】前記可動環92は、主動側V溝プーリ3における可動フランジ32の胴部の外周面に転がり軸受12を介して取り付けられており、可動環92の外周部の軸心方向端部に歯車部(インボリュート平歯車)95が形成されている。
【0021】またこの可動環92の側面は、前記可動フランジ32の側面に当接されており、前記転がり軸受12によって可動環92と可動フランジ32とはともに同一の軸心方向に移動可能に構成されている。
【0022】前記歯車部95は、前記第2歯車82の小径歯車部85と噛合して回転動力が付与されるようになっている。この歯車部95は、可動環92の外周に形成される径方向外向きの環状凸部92aに対して樹脂を射出成型することで一体的に形成されている。
【0023】なお、環状凸部92bの外周面にはスプライン(またはセレーション)が形成されており、このスプラインの凹凸に対して樹脂材からなる歯車部95の一部が食い込むことで回り止めされている。
【0024】上記構成において、図示しないエンジンの駆動が入力軸1に伝達されて入力軸1および主動側V溝プーリ3が軸心回りに回転し、この回転駆動力が複合ベルト5を介して従動側V溝プーリ4に伝達され、従動側V溝プーリ4および出力軸2が軸心回りに回転して車輪が回転し、車両が走行する。
【0025】ところで無段変速機において無段変速操作を行う場合、必要に応じて主動側V溝プーリ3の固定フランジ31に対する可動フランジ32の離間幅を調節して複合ベルト5の巻き掛け径を変更することにより行う。
【0026】ここで、この無段変速の際の動作を説明する。DCモータ7を駆動すると、その回転動力が変速用アクチュエータ歯車列8に伝達されてこれが軸心回りに回転し、その回転動力がボールねじ装置9の可動環92に伝達されてこれが軸心回りに回転する。
【0027】そしてボールねじ装置9において、可動環92が例えば図2の状態で軸心回りに半時計方向に回転すると、可動環92が固定環91に対し図面右方向に移動して全体が伸張し、これに伴なって可動フランジ32が固定フランジ31に接近するよう軸心方向に沿って移動し、複合ベルト5が可動フランジ32および固定フランジ31の斜面に沿ってせり上がって複合ベルト5の巻き掛け径が大きくなり、出力軸2の回転数(車輪)の回転数が増加する。
【0028】反対に、可動環92が時計方向に回転すると、可動環92が固定環91に対し図面左方向に移動してボールねじ装置9全体が縮み、これに伴なって可動フランジ32が固定フランジ31から離れるよう軸心方向に沿って移動し、複合ベルト5が可動フランジ32および固定フランジ31の斜面に沿って下がり、複合ベルト5の巻き掛け径が小さくなり、出力軸2の回転数が減少する。
【0029】図2の実線で示した状態は、ボールねじ装置9全体が縮んだ姿勢を示し、従って出力軸2の回転数が小さい状態にある。そしてこの状態では、螺旋方向側端部のポケット17aに保持されたボール15a,15b,15cのうちボール15cはストッパ97aによって螺旋方向の移動を規制されている。別の端部のポケット17cに保持されたボール15a,15b,15cのうちボール15cはストッパ96aによって螺旋方向の移動を規制されている。
【0030】ここで図2に基づいて、出力軸2の回転数を増大させる場合の動作を、ボールねじ装置9の動作を中心に説明する。
【0031】すなわち、可動環92が例えば図2の状態で軸心回りに半時計方向に回転することで可動フランジ32が固定フランジ31に接近するよう軸心方向に沿って移動し、複合ベルト5が可動フランジ32および固定フランジ31の斜面に沿ってせり上がり、複合ベルト5の巻き掛け径が大きくなり、出力軸2(車輪)の回転数が増加するもので、可動環92が回転して図の右方向へ移動すると、ボール15cがストッパ97aから離れ、各ポケット17a,17b,17cに保持された各ボール15a,15b,15cが螺旋溝16aおよび螺旋溝16bに沿って転動しながら右方向へ移動する。
【0032】そして、螺旋方向側端部のポケット17cにおけるボール15cがストッパ97bに当たり、ストッパ96bがポケット17aに保持されたボール15cに当たると、ボール15a,15b,15cの螺旋溝16aおよび螺旋溝16bに沿っての移動が規制され、それ以上移動しなくなる。このとき可動環92は、例えば図の仮想線で示す位置に至っている。
【0033】ところで再び出力軸2の回転数を減少させる場合は、可動環92が図2の仮想線状態で軸心回りに半時計方向に回転することで可動フランジ32が固定フランジ31に離間するよう軸心方向に沿って移動し、複合ベルト5が可動フランジ32および固定フランジ31の斜面に沿って下がり、複合ベルト5の巻き掛け径が小さくなって出力軸2の回転数が減少するもので、可動環92が回転して図の左方向へ移動するとき、ポケット17cに保持されたボール15cがストッパ97bから離れ、各15a,15b,15cが螺旋溝16aおよび螺旋溝16bに沿って転動しながら左方向へ移動する。
【0034】そして、螺旋方向側端部のポケット17aにおけるボール15cがストッパ97aに当たると、ボール15a,15b,15cの螺旋溝16aおよび螺旋溝16bに沿っての移動が規制され、それ以上移動しない。なお場合によっては可動環92を回転し続けることにより可動環92はさらに左方へ移動し、このとき各15a,15b,15cは、螺旋溝16a,16b内で自転のみし、可動環92は図の実線で示す位置に至るものである。
【0035】そしてこれらストッパ96a,96b,97a,97bは、従来のように保持器17が当接するものではなく、螺旋溝16a,16bに植設されて端部のポケット17a,17cに保持されたボール15cが当たることでボール15a,15b,15cが螺旋溝16a,16bに沿って移動するのを防止するので、ボール15a,15b,15cが脱落してばらけるのを確実に防止できる。
【0036】また保持器17をストッパ96a,96b,97a,97bに当てて端部のボール15a,15b,15cの移動を規制するものではないので、従来のように保持器17を螺旋形状に形成して軸心方向に突出した段付き面を幅方向の両側に形成する必要はなく、単純な円筒状に形成すればよく、従ってその形成が容易であり、また段付き面が不要になる分だけ省スペース化を図ることができ、これによって限られたスペースの中で、可動環92の移動量を最大限になし得、上記のように無段変速機に用いることにより、無段変速の範囲を広げることができる。
【0037】また、上記実施形態におけるボール15a,15b,15cを軸受鋼で製作し、ストッパ96a,96b,97a,97bに浸炭焼入れを施す場合、端部のボール15cがストッパ96a,96b,97a,97bに圧接した際に圧痕が発生し易く、このように圧痕が生じたままの端部のボール15cが螺旋溝16a,16bの軌道面を転動すると、軌道面の摩耗が促進され易くなるが、端部のボール15cをセラミックで形成したことにより、ストッパ96a,96b,97a,97bに浸炭焼入れを施した場合であってもセラミックの方が硬度が高いので、ボール15cに圧痕が生じるのを防止して、軌道面の摩耗を抑えることができる。
【0038】そしてこの実施形態のように、端部のボール15cをセラミックで形成したことによりボール15cに圧痕が生じるのを防止するので、螺旋溝16a,16bとほぼ同一の径のボール15cを用いることができ、従来発生していたボール15cがストッパ96a,96b,97a,97bと螺旋溝16a,16bの間に噛込むといった現象を回避でき、固定環91に対する可動環92の移動を円滑に行い得る。
【0039】さらに、端部のボール15cの径をボール15bの径に対して、例えば15〜100μm程度小さく形成した場合、ボール15cがストッパ96a,96b,97a,97bに圧接した際に、仮に圧痕が発生しても、ボール15cは軌道面に対して転がり運動となりにくく滑り運動となり易いため、圧痕による変形部分で軌道面が損傷するのを防止することができる。
【0040】またこの実施の形態のように、シール装置を設置するスペースを有しないボールねじ装置9において、軌道面とボール15a,15b,15cの表面の潤滑に、混和稠度を258に調節したグリースを用いることで、固定環91および可動環92が、使用に伴って往復移動回数が増大した場合や、使用に伴なってボールねじ装置9の温度が上昇した場合であっても、グリースがボールねじ装置9の端方に流れにくく、グリースは特にボール保持器17に停留し易いため、ボール保持器17に停留したグリースから油分がボール15a,15b,15cに供給されるようになり、ボール15a,15b,15cと軌道面との潤滑性を維持できる。これによってボール15a,15b,15cが軌道面を転動する際に、ボール傷の発生を長期に防止することができ、ボールねじ装置9の寿命を延長することができる。
【0041】また、上記のような乾式の無段変速機では内部が無潤滑になっており、特に、モータ7から主動側V溝プーリ3の可動フランジ32までの動力伝達経路に配設される第2歯車82と可動環92の歯車部95とが摩耗しやすいので、前記第2歯車82を金属製歯車とし、また歯車部95を樹脂製歯車とすることで、無潤滑で潤滑条件が厳しくても、第2歯車82および可動環92の歯車部95の耐摩耗性、相手攻撃性が改善されることになり、寿命向上に大きく貢献できるとともに、メインテナンスフリーが可能となる。
【0042】なお上記実施形態では、固定環91の外周面および固定環91に外嵌する可動環92の内周面に形成した螺旋溝16a,16bの双方にストッパ96a,96b,97a,97bを設けたがこれに限定されるものではなく、これらを固定環91の外周面または可動環92の内周面の何れか一方に設けるようにして、ボール15a,15b,15cがばらけるのを防止するよう構成してもよい。
【0043】
【発明の効果】以上の説明から明らかな通り、本発明は、ねじ軸の外周面に形成した螺旋溝の溝壁面およびねじ軸に外嵌するナット体の内周面に形成した螺旋溝の溝壁面を軌道面として転動するボールが保持器に保持されて、シール装置を設置するスペースを有せずグリースを封入できないボールねじ装置において、軌道面とボール表面の潤滑に、ねじ軸およびナット体の相対的な往復移動回数が増大した場合であっても保持器に停留し易い混和稠度の小さいグリースを用いているので、グリースがボールねじ装置の端方に流れにくく、グリースの油分が特にボール保持器からボールに供給されるようになり、従って、ボールと軌道面との潤滑性を維持でき、これによってボールが軌道面を転動する際のボール傷の発生を確実、かつ長期に防止することができ、ボールねじ装置の寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のボールねじ装置を車両の無段変速機に用いた全体断面図である。
【図2】同じくボールねじ装置の全体構成を示す断面図である。
【図3】同じくボールねじ装置の要部拡大断面図である。
【図4】同じくボールを保持した状態の保持器の斜視図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 出力軸
3 主動側V溝プーリ
4 従動側V溝プーリ
5 複合ベルト
9 ボールねじ装置
15a ボール
15c ボール
16a 螺旋溝
16b 螺旋溝
17 保持器
17a ポケット
17c ポケット
31 固定フランジ
32 可動フランジ
91 固定環
92 可動環
96a ストッパ
97a ストッパ
96b ストッパ
97b ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ねじ軸の外周面に形成した螺旋溝の溝壁面およびねじ軸に外嵌するナット体の内周面に形成した螺旋溝の溝壁面を軌道面とし、保持器に形成した複数のポケットにそれぞれ装着された複数のボールが、前記ねじ軸とナット体とに挟持された状態で転動自在に設けられ、前記ねじ軸またはナット体のうちの少なくとも一方を軸心回りに回転させることで、ねじ軸およびナット体が軸心方向に相対的にかつ有限ストローク内を往復移動可能に構成された有限ストローク型ボールねじ装置であって、前記軌道面とボール表面の潤滑に、ねじ軸およびナット体の使用に伴なう往復移動回数が増大しても前記保持器に停留し易い混和稠度の小さいグリースが用いられたことを特徴とする有限ストローク型ボールねじ装置。
【請求項2】 混和稠度を150〜280の範囲内のウレア系グリースとしたことを特徴とする請求項1記載の有限ストローク型ボールねじ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−310255(P2002−310255A)
【公開日】平成14年10月23日(2002.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−112504(P2001−112504)
【出願日】平成13年4月11日(2001.4.11)
【出願人】(000001247)光洋精工株式会社 (7,053)
【Fターム(参考)】