説明

杭打機

【課題】油圧モータを備えた回転駆動装置の回転出力について、その回転トルクや回転数の可変範囲が広く取れるようにした油圧供給装置を備えた杭打機を提供すること。
【解決手段】油圧モータ121を駆動させて回転を出力する回転駆動装置120に対し、油圧ポンプ1とコントロールバルブ3と、正転側及び逆転側流路25,26と、メインリリーフバルブ5とを有する油圧供給装置を備えたものであって、その油圧供給装置は、正転側流路25に逆転側流路26内の油圧によって開弁するパイロットチェックバルブ5が設けられ、そのパイロットチェックバルブ5を跨ぐように接続された増圧流路27には、メインリリーフバルブ4の設定値で開弁するようにした開閉弁6と、一次側の作動油を減圧して二次側へ送る電磁比例減圧弁8と、作動油の圧力を増圧して二次側に吐出する油圧ブースタ9と、逆流を防止するチェックバルブ10とが設けられた杭打機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に装着される油圧オーガなどの回転駆動装置に対してその油圧モータに作動油を供給するための油圧供給装置を備えた杭打機に関し、特に増圧回路を設けて供給する作動油の圧力の可変範囲を広げた油圧供給装置を備える杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
自走式の杭打機100は、図4に示すように前側にリーダ101が立設され、その左右前方には長手方向に沿って一対のガイドパイプ102が固定されている。ガイドパイプ102には昇降装置110が摺動可能に装着され、またリーダ101の上下両端には回転可能に支持された1組のスプロケット103(一方のみ図示する)にチェーン104が掛け渡され、そのチェーン104の両端が昇降装置110に連結されている。そして、図示しない回転駆動源を介してチェーン104が動力を伝え、昇降装置110がリーダ101に沿った昇降を行うよう構成されている。
【0003】
昇降装置110には回転駆動装置である油圧オーガ120が搭載されている。油圧オーガ120は、油圧モータ121を備え、その回転が減速機を介して出力軸122に連結された鋼管杭130に伝えられるように構成されている。ここで、図5は、回転駆動装置である油圧オーガ120を駆動する、従来の杭打機に備えられている油圧供給装置を示した図である。
油圧オーガ120の油圧モータ121は、コントロールバルブ151を介して油圧ポンプ152に接続されている。油圧ポンプ152は、オイルタンク153内の作動油を加圧し、コントロールバルブ151を介して油圧モータ121に供給するものである。油圧ポンプ152から作動油を送り出す供給路154にはオイルタンク153側に分岐した排出流路155にリリーフバルブ156が接続されている。
【0004】
油圧ポンプ152が駆動すると、加圧された作動油が供給流路154に吐出される。そして、コントロールバルブ151がAポートブロックとBポートブロックのいずれか一方に切り換えられ、作動油が供給流路154から正転側流路157又は逆転側流路158に流れる。従って、コントロールバルブ151の切り換えによって油圧モータ121に正転側又は逆転側の回転が与えられる。こうした回転は、減速機123を介して鋼管杭130などに伝達される。そこで、図4に示す昇降装置110がリーダ101に沿って下降することで、鋼管杭130の螺旋刃によって地中に回転圧入が行われる。
【0005】
図5に示す油圧供給装置は、例えば油圧ポンプ152のポンプ流量が120L/min、リリーフバルブ156のリリーフ圧が27.45MPaである。一方、油圧オーガ120は、その油圧モータ121が可変容量型モータであり、容量が200〜600cc/revの範囲で可変するものである。そして、減速機123の減速比は10である。従って、こうした設計の場合、従来の油圧供給装置では、駆動する油圧オーガ120は、回転トルクが8.74〜26.2kN・m、回転数が20〜60rpmの範囲でそれぞれ調整可能であって、回転トルクと回転数との可変比が3であった。
【特許文献1】特開平10−280409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、油圧オーガ120を装着した杭打機100は、油圧オーガ120によって鋼管杭を地盤に回転圧入させる鋼管ねじ込み工法や、攪拌ロッドによって地盤の土とセメントミルクを混合攪拌させる地盤改良工法に使用される。鋼管ねじ込み工法の場合、径の異なる各種鋼管による施工が行われるが、その際、鋼管に対応して出力トルクの最大値が可変範囲である8.74〜26.2kN・m内で設定して行われる。小径の鋼管に過度の回転トルクが与えられると、その鋼管を変形させたりねじ切ってしまうからである。一方、剛性の高い大径の鋼管に対しては、可変範囲内での施工は可能であっても、必要とするより高い回転トルクが得られない。
【0007】
そこで、油圧オーガ120によって高い回転トルクを得るため、図5に示す油圧供給装置が作動油の供給圧を上げること、すなわちリリーフバルブ156のリリーフ圧を上げることが考えられる。しかし、そのためにはコントロールバルブ151のほか、油圧回路全体を高圧仕様に交換しなければならず、非常にコストがかかってしまう。一方で、地盤改良工法では、地盤の土とセメントミルクをより良く混合攪拌するため、回転数を上げた高速回転仕様が望まれている。それには、油圧オーガ120につて、減速機123の減速比を落とした変更で回転数を上げることができるが、その一方で回転トルクが下がって非力なものとなってしまう。
【0008】
このように、鋼管ねじ込み工法では、より広範囲の外径の鋼管杭を施工できるようにトルクの可変範囲を広げたいというニーズがあり、地盤改良工法でも、同じトルクでより高速回転数が得られる仕様のニーズがあった。しかし、図5に示すような従来の油圧供給装置の場合、可変容量の油圧モータ121において回転トルクや回転数の可変範囲が最大3倍までとなっており、それ以上の変速は現実には不可能であった。
【0009】
そこで本発明は、かかる課題を解決すべく、油圧モータを備えた回転駆動装置の回転出力について、その回転トルクや回転数の可変範囲が広く取れるようにした油圧供給装置を備えた杭打機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の杭打機は、油圧モータを駆動させて回転を出力する回転駆動装置に対し、作動油を加圧して供給する油圧ポンプと、その油圧ポンプから油圧モータへの作動油の供給方向を切り換えるコントロールバルブと、そのコントロールバルブと油圧モータとを接続する正転側及び逆転側流路と、流路内の圧力を設定値に保持するメインリリーフバルブとを有する油圧供給装置を備えたものであって、前記油圧供給装置は、前記正転側流路に前記逆転側流路内の油圧によって開弁するパイロットチェックバルブが設けられ、そのパイロットチェックバルブを跨ぐように接続された増圧流路には、前記メインリリーフバルブの設定値で開弁するようにした開閉弁と、一次側の作動油を減圧して二次側へ送る電磁比例減圧弁と、作動油の圧力を増圧して二次側に吐出する油圧ブースタと、その油圧ブースタへの逆流を防止するチェックバルブとが設けられたものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の杭打機は、前記油圧供給装置が、前記逆転側流路に前記正転側流路内の油圧によって開弁するパイロットチェックバルブが設けられ、そのパイロットチェックバルブを跨ぐように接続された増圧流路には、前記メインリリーフバルブの設定値で開弁するようにした開閉弁と、一次側の作動油を減圧して二次側へ送る電磁比例減圧弁と、作動油の圧力を増圧して二次側に吐出する油圧ブースタと、その油圧ブースタへの逆流を防止するチェックバルブとが設けられたものであることが好ましい。
また、本発明の杭打機は、前記開閉弁が、前記メインリリーフバルブと同じ設定値で開弁する増圧用リリーフバルブであることが好ましい。
また、本発明の杭打機は、前記増圧流路には、前記開閉弁と電磁比例減圧弁との間に、前記油圧ブースタの許容流量まで作動油の流量を減少させるための絞りが設けられたことことが好ましい。
【0012】
また、本発明の杭打機は、前記開閉弁は電磁開閉弁であり、前記正転側又は逆転側流路内の圧力が前記メインリリーフバルブの設定値に達したことを検出するプレッシャースイッチを有し、該プレッシャースイッチからの検知信号に基づいてコントローラが前記電磁開閉弁を開弁制御するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明の杭打機は、前記コントローラが、プレッシャースイッチからの検知信号に基づいて前記油圧ポンプの斜板制御を行い、前記油圧ブースタの許容流量まで作動油の流量を減少させるようにしたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の杭打機では、備えられた油圧供給装置において、メインリリーフバルブが開弁するリリーフ圧に達すると、開閉弁が開いて増圧流路に作動油が流れ、油圧ブースタによって増圧された作動油が油圧モータへ供給される。そのため、本発明によれば、増圧流路を通った作動油が油圧ブースタによって増圧された分だけ油圧モータへの供給圧を上げることができ、それによって油圧モータの回転トルクや回転数の可変範囲が広く取れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る杭打機の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態の杭打機が備える油圧供給装置は、油圧オーガなどの回転駆動装置を駆動させるものであり、特に図4に示すように杭打機100のリーダ101に装着され、その出力軸に連結された鋼管杭や攪拌ロッドに、油圧モータ121による回転を与えるものについて説明する。図1は、そうした油圧オーガを駆動させる第1実施形態の杭打機の油圧供給装置を示した図である。
【0015】
油圧モータ121へ作動油を供給する油圧ポンプ1は、オイルタンク2に接続され、オイルタンク2内の作動油を加圧して吐出する可変容量型のポンプである。油圧ポンプ1は、供給流路21を介してコントロールバルブ3に接続されている。コントロールバルブ3は、3ブロックの4ポート弁であり、油圧モータ121を正転させる場合のAポートブロックと、逆転させる場合のBポートブロックと、図示するように、供給流路21をオイルタンク2に接続した排出流路22に連通させるOFFブロックとから構成されている。供給流路21と排出流路22とは排出側流路23が接続され、その排出側流路23にはメインリリーフバルブ4が設けられている。
【0016】
コントロールバルブ3は、正転側流路25と逆転側流路26を介して油圧モータ121に接続されている。正転側流路25にはパイロットチェックバルブ5が設けられている。パイロットチェックバルブ5は、油圧モータ121から油圧ポンプ1側への流れを制限するようにしたものであるが、逆転側流路26内の圧力が高まった場合に開弁して同方向の流れを許容するように構成されている。そして、本実施形態では、正転側流路25に対しパイロットチェックバルブ5を跨いで増圧流路27が接続され、その増圧流路27に増圧回路が構成されている。
【0017】
増圧流路27には、メインリリーフバルブ4と同じリリーフ圧の増圧用リリーフバルブ6が設けられ、メインリリーフバルブ4が機能すると同時に正転側流路25から増圧流路27へ作動油が流れるように構成されている。そして、その増圧流路27には、増圧用リリーフバルブ6の二次側に、作動油の流量を減少させるための可変絞り7が接続されている。これは、更に二次側に接続されている油圧ブースタ9の許容流量まで作動油の流量を減少させる必要があるからである。そして、増圧流路27には電磁比例減圧弁8が接続され、二次側へ送られる作動油の油圧調整ができるように構成されている。本実施形態の電磁比例減圧弁8は、リリーフバルブ4,6のリリーフ圧である27.45MPaの半分である13.73MPaの値から22.06MPaまでの範囲で作動油の圧力を可変できるように構成されている。
【0018】
そして、電磁比例減圧弁8の二次側には、作動油の圧力を増圧して吐出する油圧ブースタ9が接続されている。ここで使用する油圧ブースタ9は、例えば流入した作動油の元圧をピストン振動によって増圧して吐出するようにしたものであり、増圧倍率を2倍にしたものである。従って、この油圧ブースタ9からは、13.73〜22.06MPaの範囲の圧力が2倍に増圧され、27.45〜44.12MPaの圧力範囲の作動油が供給できるようになっている。更に、この増圧流路27には、油圧ブースタ9によって増圧された作動油が逆流しないようにチェックバルブ10が設けられている。
【0019】
次に、こうした油圧供給装置を備える杭打機の作用について説明する。先ず、コントロールバルブ3が図示する状態では、油圧ポンプ1から送られた作動油は供給流路21から排出流路22を通ってオイルタンク2へ戻される。そこで次に、コントロールバルブ3がAポートブロックに切り換えられると、油圧ポンプ1から加圧して送られる作動油は、供給流路21から正転側流路25を通って油圧モータ121へと供給される。油圧モータ121は、その正転側流路25から逆転側流路26へ流れる作動油の圧力によって回転が与えられ、油圧オーガ120からは減速機123を介して回転が出力される。油圧モータ121を流れた作動油は、逆転側流路26からコントロールバルブ3を通り、戻り流路28から排出側流路23及び排出流路22を通ってオイルタンク2へと戻される。
【0020】
こうして油圧オーガ120の油圧モータ121に回転が与えられると、その回転が減速機123を介して鋼管杭130に伝達される。鋼管杭130は、オーガ120によって回転が与えられ、昇降装置110がリーダ101に沿って下降することで、先端の螺旋刃によって地中に圧入される。そして、鋼管杭130が固い支持地盤に達すると、回転抵抗が大きくなって油圧モータ121に供給される作動油の供給圧が増加する。本実施形態では、リリーフ圧が27.45MPaに設定されているため、その値を超えるとメインリリーフバルブ4と増圧用リリーフバルブ6とが一緒に開弁する。
【0021】
増圧用リリーフバルブ6が開いて増圧流路27に作動油が流れると、可変絞り7によって二次側に接続されている油圧ブースタ9の許容流量まで作動油の流量が減らされる。そして、更に二次側に流れた作動油は、その圧力が電磁比例減圧弁8によってリリーフ圧の半分の13.73MPaにまで減圧される。しかし、減圧された作動油は、油圧ブースタ9によって増圧されてリリーフ圧と同じ27.45MPaに戻される。
こうして一旦、減圧した作動油を増圧するのは、それまで正転側流路25を通って供給されていた作動油の圧力と、増圧回路からの作動油の圧力とを一致させ、作動油の圧力を連続的に上昇させるようにするためである。よって、作動油の流れが正転側流路25から増圧流路27に切り換えられても、油圧モータ121へ供給される作動油の圧力が連続的に変化する。
【0022】
増圧流路27へ流れた作動油は、前述したように最初はリリーフ圧と同じ圧力の27.45MPaで油圧ブースタ9から吐出され、その後、電磁比例減圧弁8の制御によって作動流体の圧力を13.73MPa〜22.06MPaの間で上昇させる方向に可変する。そのため、油圧ブースタ9から吐出される作動油の圧力が27.45〜44.13MPaまでの範囲で増圧される。油圧ブースタ9から増圧して吐出された作動油は、チェックバルブ10を通って油圧モータ121へと供給される。このとき、正転側流路25ではパイロットチェックバルブ5が閉じているため逆流が防止される。
【0023】
よって、従来は、メインリリーフバルブ4のリリーフ圧以上で油圧モータ121を駆動させることができなかったが、本実施形態の杭打機では、その油圧供給装置に油圧ブースタ9などを備えた増圧流路27を設けたため、より高い圧力の作動油を供給することが可能になった。具体的には、27.45MPaを限界としていた仕様から高圧の44.13MPaにまで供給可能な仕様の油圧供給装置になった。なお、高圧対応の油圧供給装置にするには、メインリリーフバルブ4のリリーフ圧を上げるようにすることも考えられるが、それでは装置全体を高圧対応にした構成部品に交換しなければならなくなってコストがかかってしまう。それに対して本実施形態では、増圧回路を構成する油圧ブースタ9などは必要になるが、従来の杭打機について、その油圧供給装置の一部を高圧対応にするだけでよいため、コストを抑えて高圧の作動油を供給することが可能になった。
【0024】
そして、本実施形態の杭打機では、その油圧供給装置によって例えば最大27.45MPaであった作動油の供給圧を44.13MPaにまで上げることができ、メインリリーフバルブ4のリリーフ圧以上の圧力で油圧モータ121を回転させ、油圧オーガから出力される回転トルクを大きくすることが可能になった。仮に、図5に示す従来の杭打機と同様に、油圧ポンプ1のポンプ流量が120L/minで、可変容量型モータである油圧モータ121は容量が200〜600cc/revの範囲で可変し、油圧オーガ120の減速比が10であるとする。すると、回転トルクは、通常運転時の最小トルク8.74kN・mから油圧ブースタ9を稼働させた最大トルク42.1kN・mの範囲で調整が可能となり、トルク可変比が3程度であった従来のものに比べて本実施形態では5程度にまで上がった。
【0025】
よって、鋼管ねじ込み工法においては、小径の鋼管杭は勿論、従来は扱うことのできなかった大きい径の鋼管杭であっても、油圧オーガ120のギヤ比を変えずに回転トルクの最大値を上げて対応できるようになった。従って、油圧オーガ120のギヤ比を従来のままにしたトルク重視設計では、トルク設定範囲が増えることにより、鋼管ねじ込み工法などでより多くの鋼管径に対応できるようになった。なお、こうした設計では、油圧オーガ12から出力される回転の回転数は従来例と同様に20〜60rpmの範囲で調整可能となる。
【0026】
一方、地盤改良を行うような場合には、大きな回転トルクは必要ないが、掘削後にセメントミルクと土とを攪拌する時には高速回転が必要になる。その点、本実施形態の杭打機では、その油圧供給装置を回転数重視設計にも対応させることが可能である。そのためには、油圧オーガ120の減速機123が、減速比を落としたものへの交換が行われ、例えば減速比10を6.5にまで落としたものが使用される。これは、従来の油圧モータ121を使用した場合に、回転トルクの最大値がほぼ同じになるようにして、最小トルクをより落として回転数を上げるように設計したためである。
【0027】
こうして減速比を落とした油圧オーガ120では、通常運転時の回転トルクは5.68〜17.0kN・mであって最小値が低くなった分、最高回転数を従来の60rpmから92rpmにまで上げることができるようになった。そして、メインリリーフバルブ4が開いて油圧ブースタ9が稼働した場合には、増圧が行われ、回転トルクの最大値が従来と同等の27.4kN・mまで得られた。よって、回転数重視の設計にした場合には、減速比を落としも従来と同程度の最大回転トルクが得られる一方で、より高速の回転が出せるようになったため、地盤改良工法などで高速回転が必要な場合に対応できるようなった。また、この場合、減速比を落とすことにより油圧オーガ自体もコンパクトにできる。
【0028】
第1実施形態の杭打機では、その油圧供給装置が正転側の回転の場合にだけ増圧が行われるように構成されている。従って、逆転させるためコントロールバルブ3がBポートブロックに切り換えられると、油圧ポンプ1から加圧して送られた作動油は、供給流路21から逆転側流路26を通って油圧モータ121へと供給される。このとき、逆転側流路26内の油圧によってパイロットチェックバルブ5が開くため、作動油は正転側流路25を逆流し、油圧モータ121は、その逆転側流路26から正転側流路25へ流れる作動油によって回転が与えられ、油圧オーガ120から逆回転が出力される。そして、油圧モータ121を流れた作動油は、正転側流路25からコントロールバルブ3を通り、戻り流路28から排出側流路23及び排出流路22を通ってオイルタンク2へと戻される。
【0029】
逆回転を出力するのは鋼管杭を引く抜く場合や、攪拌ロッドを引き上げるような場合であるため正転の場合のように大きなトルクを必要とすることは少ない。しかし、地盤改良を行う際、固い岩盤部分を無理矢理掘削するような場合には逆転側にも高トルクの必要が生じる。そこで、本発明の第2実施形態として、逆転側にも増圧回路を設けた油圧供給装置の杭打機について説明する。図2は、第2実施形態の油圧供給装置を示した図であるが、第1実施形態のものと同じ構成については同じ符号を付して説明する。
【0030】
本実施形態では、前記第1実施形態と同様に、正転側流路25にパイロットチェックバルブ5が設けられ、それを跨いで接続された増圧流路(以下、「正転側増圧流路」という)27に増圧回路が構成されている。そして、本実施形態は、更に逆転側流路26にパイロットチェックバルブ11が設けられ、それを跨ぐように接続された逆転側増圧流路29にも増圧回路が構成されている。その逆転側増圧流路29には、メインリリーフバルブ4と同じリリーフ圧の増圧用リリーフバルブ12が設けられ、メインリリーフバルブ4が機能すると同時に逆転側流路29から逆転側増圧流路29へ作動油が流れるよう構成されている。
【0031】
増圧用リリーフバルブ12の二次側には、作動油の流量を減少させるための可変絞り13と、作動油を減圧して二次側へ送る電磁比例減圧弁14が接続され、更に作動油の圧力を増圧して吐出する油圧ブースタ15が接続されている。可変絞り13は、油圧ブースタ15の許容流量まで作動油の流量を減少させるものであり、電磁比例減圧弁14は、油圧ブースタ15の増圧が2倍であるため、電磁比例減圧弁14は、リリーフバルブ4,12のリリーフ圧である27.45MPaの半分の値13.73MPaから、22.06MPaまでの範囲で作動油の圧力を可変できるように構成されている。そして、油圧ブースタ15の二次側には作動油の逆流を防止するチェックバルブ16が設けられている。
【0032】
よって、本実施形態では、正転時には前記第1実施形態で示したように、正転側増圧流路27を流れた作動油の増圧が行われる他、逆転時にも同じく増圧回路を構成する逆転側増圧流路29を流れた作動油の増圧が行われる。すなわち、増圧用リリーフバルブ12が開いて逆転側増圧流路27に作動油が流れると、可変絞り13によって二次側に接続されている油圧ブースタ15の許容流量まで作動油の流量が減らされ、更に電磁比例減圧弁14によってリリーフ圧の半分にまで減圧される。そして、減圧された作動油は、油圧ブースタ15によって増圧されてリリーフ圧と同圧に戻されて逆転側流路26へと送られ、油圧モータ121へと供給される。その後も、電磁比例減圧弁14の制御によって更に増圧した作動油が油圧モータ121へと供給される。
【0033】
よって、本実施形態では、従来と同じ油圧オーガ120を使用した場合でも、正転及び逆転時の作動油の増圧によって回転トルクの最大値を上げることができ、例えば従来は3程度あったトルク可変比を5程度にまで上がることができた。そのため、鋼管ねじ込み工法においては、小径の鋼管杭は勿論、従来は扱うことのできなかった大きい径の鋼管杭であっても、油圧オーガ120のギヤ比を変えずに回転トルクの最大値を上げて対応できるようになった。その一方で、油圧オーガ120のギヤ比を変えて回転数を落とした回転数重視設計のものでは、回転トルクの最大値は上がらないが、最小トルクをより落として回転数を上げることが可能である。
【0034】
続いて、第3実施形態について説明する。前記第1実施形態の杭打機では、その油圧供給装置を構成する増圧流路27に作動油の流量を減らすための可変絞り7が設けられていた。しかし、これでは作動油が可変絞り7を通る際の発熱によってエネルギーロスが生じてしまい効率が良くなかった。そこで、本実施形態では、そうしたエネルギーロスを考慮した油圧供給装置を備えたものを提案する。図3は、そうした油圧供給装置を示した図であるが、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付している。
【0035】
本実施形態の杭打機では、その油圧供給装置の正転側流路25に油圧を検出するプレッシャースイッチ17が設けられ、増圧流路27に電磁開閉弁18が設けられ、プレッシャースイッチ17がコントローラ19に接続されている。そして、このプレッシャースイッチ17から送られる検知信号に基づいてコントローラ19が電磁開閉弁18や油圧ポンプ1の制御を行うように構成されている。プレッシャースイッチ17は、メインリリーフバルブ4のリリーフ圧で検知信号が発信されるように設定されている。なお、このコントローラ19は、図1及び図2には図示していないが、杭打機が本来有しているものであって特別に構成されたものではない。
【0036】
そこで、本実施形態の杭打機では、その油圧供給装置においてコントロールバルブ3がAポートブロックに切り換えられると、油圧ポンプ1から加圧して送られる作動油が正転側流路25を通って油圧モータ121へと供給される。そのため、正転側流路25から逆転側流路26へ流れる作動油によって油圧モータ121に回転が与えられ、油圧オーガ120から回転が出力される。鋼管ねじ込み工法では、鋼管杭130が支持地盤に達すると回転抵抗が増加して作動油の供給圧が増加し、リリーフ圧に達するとメインリリーフバルブ4が開く。
【0037】
そして、同時にプレッシャースイッチ17からの信号を受けたコントローラ19の制御によって電磁開閉弁18が開弁し、遮断されていた増圧流路27が連通する。また、それと同時にコントローラ19から可変容量式の油圧ポンプ1に制御信号が送られ、油圧ポンプ1のポンプ流量が油圧ブースタ9の許容流量まで減少する。そのため、増圧流路27には減少した流量の作動油が流れ、電磁開閉弁18の二次側では、電磁比例減圧弁8によって最初は圧力が半分にまで減圧される。そして、その減圧された作動油が油圧ブースタ9によって2倍に増圧され、リリーフ圧と同じ圧力で正転側流路25に送り出される。油圧ブースタ9によって増圧された作動油は、チェックバルブ10を通って油圧モータ121へと供給される。このとき、パイロットチェックバルブ5が閉じているため、作動油が正転側流路25を逆流することはない。
【0038】
その後、電磁比例減圧弁8の制御によって作動流体の圧力が徐々に上げられていく。そのため、油圧ブースタ9によって増圧されて油圧モータ121に供給される作動油は、メインリリーフバルブ4と同じリリーフ圧から更に上昇したより高い圧力で供給される。具体的には、本実施形態でも電磁比例減圧弁8が作動流体の圧力を13.73MPa〜22.06MPaの間で上昇方向に可変するため、リリーフ圧の27.45MPaから44.13MPaにまで圧力を上げることができる。そして、本実施形態では、こうした高圧仕様の杭打機を提供することになったが、従来の杭打機に対し、その油圧供給装置の一部を高圧対応に交換するだけでよいため、コストを抑えたものとすることができた。
【0039】
また、本実施形態では、最大27.45MPaであった作動油の供給圧を44.13MPaにまで上げることで、油圧オーガ120から出力される回転トルクを大きくすることが可能になった。すなわち、第1実施形態の場合と同じ条件によって従来のトルク可変比が3程度であったものが本実施形態では5程度にまで上がった。よって、鋼管ねじ込み工法においては、小径の鋼管杭は勿論、従来は扱うことのできなかった大きい径の鋼管杭であっても、油圧オーガ120のギヤ比を変えずに回転トルクの最大値を上げて対応できるようになった。従って、油圧オーガ120のギヤ比を従来のまま上げたトルク重視設計では、トルク設定範囲が増えることにより、鋼管ねじ込み工法などでより多くの鋼管径に対応できるようになった。
【0040】
その一方で、回転数重視設計の油圧オーガ120にも対応可能であり、第1実施形態の場合と同様に、回転トルクの最大値がほぼ同じになるように減速比10を6.5にまで落としたものとすると、通常運転時の回転トルクの最小値が低くなった分、最高回転数を従来よりも上げることができるようになった。そして、メインリリーフ圧に達して油圧ブースタ9が稼働した場合には、増圧によって従来装置と同程度の最大回転トルクが得られる。よって、地盤改良工法などで高速回転が必要な場合に対応できるようなり、また、この場合、減速比を落とすことにより油圧オーガ自体もコンパクトにできる。
【0041】
更に、本実施形態では、第1実施形態の油圧供給装置に設けられていた増圧用リリーフバルブ6や可変絞り7に換えて、プレッシャースイッチ17からの信号によってコントローラ19が可変容量式の油圧ポンプ1の斜板を制御してポンプ流量を油圧ブースタ9の許容流量に合わせるようにしたため、可変絞り7での発熱によるエネルギーロスをなくし、効率のよい運転が可能になった。
なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に正転側だけに増圧回路を設けた油圧供給装置としたが、第2実施形態のように逆転側にも増圧回路を設けるようにしたものであってもよい。
【0042】
以上、本発明に係る杭打機の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態で示した数値は一例であって、そうした値に限定されるものではない。
また、前記実施形態では、油圧ブースタ15の許容流量まで作動油の流量が減少するように増圧流路に可変絞り13を設けたが、例えば油圧ブースタの性能によって流量を減少させる必要がない場合には絞りも不要である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1実施形態の杭打機の油圧供給装置を示した回路図である。
【図2】第2実施形態の杭打機の油圧供給装置を示した回路図である。
【図3】第3実施形態の杭打機の油圧供給装置を示した回路図である。
【図4】回転駆動装置を装着した杭打機を示した側面図である。
【図5】従来の杭打機の油圧供給装置を示した回路図である。
【符号の説明】
【0044】
1 油圧ポンプ
2 オイルタンク
3 コントロールバルブ
4 メインリリーフバルブ
5 パイロットチェックバルブ
6 増圧用リリーフバルブ
7 可変絞り
8 電磁比例減圧弁
9 油圧ブースタ
10 チェックバルブ
25 正転側流路
26 逆転側流路
27 増圧流路
120 油圧オーガ
121 油圧モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧モータを駆動させて回転を出力する回転駆動装置に対し、作動油を加圧して供給する油圧ポンプと、その油圧ポンプから油圧モータへの作動油の供給方向を切り換えるコントロールバルブと、そのコントロールバルブと油圧モータとを接続する正転側及び逆転側流路と、流路内の圧力を設定値に保持するメインリリーフバルブとを有する油圧供給装置を備えた杭打機において、
前記油圧供給装置は、前記正転側流路に前記逆転側流路内の油圧によって開弁するパイロットチェックバルブが設けられ、そのパイロットチェックバルブを跨ぐように接続された増圧流路には、前記メインリリーフバルブの設定値で開弁するようにした開閉弁と、一次側の作動油を減圧して二次側へ送る電磁比例減圧弁と、作動油の圧力を増圧して二次側に吐出する油圧ブースタと、その油圧ブースタへの逆流を防止するチェックバルブとが設けられたものであることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
請求項1に記載する杭打機において、
前記油圧供給装置は、前記逆転側流路に前記正転側流路内の油圧によって開弁するパイロットチェックバルブが設けられ、そのパイロットチェックバルブを跨ぐように接続された増圧流路には、前記メインリリーフバルブの設定値で開弁するようにした開閉弁と、一次側の作動油を減圧して二次側へ送る電磁比例減圧弁と、作動油の圧力を増圧して二次側に吐出する油圧ブースタと、その油圧ブースタへの逆流を防止するチェックバルブとが設けられたものであることを特徴とする杭打機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する杭打機において、
前記開閉弁は、前記メインリリーフバルブと同じ設定値で開弁する増圧用リリーフバルブであることを特徴とする杭打機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれに記載する杭打機において、
前記増圧流路には、前記開閉弁と電磁比例減圧弁との間に、前記油圧ブースタの許容流量まで作動油の流量を減少させるための絞りが設けられたことを特徴とする杭打機。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載する杭打機において、
前記開閉弁は電磁開閉弁であり、前記正転側又は逆転側流路内の圧力が前記メインリリーフバルブの設定値に達したことを検出するプレッシャースイッチを有し、該プレッシャースイッチからの検知信号に基づいてコントローラが前記電磁開閉弁を開弁制御するようにしたものであることを特徴とする杭打機。
【請求項6】
請求項5に記載する杭打機において、
前記コントローラは、プレッシャースイッチからの検知信号に基づいて前記油圧ポンプの斜板制御を行い、前記油圧ブースタの許容流量まで作動油の流量を減少させるようにしたものであることを特徴とする杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−25155(P2008−25155A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197110(P2006−197110)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】