説明

枕設計のための身体測定器

【課題】本発明は、使用者にとって適切な枕を設計するための身体測定器を提供するものである。
【解決手段】本発明に係る枕設計のための身体測定器Mは、身体の背面及び側面における少なくとも頭部から尻部までの凹凸状態をそれぞれ測定する身体測定器Mであって、変位測定部110と、該変位測定部110を上下に移動させる昇降ロッド103とを備え、該変位測定部110は、ローラー状の測定子111が固定され、測定子111が配されている側に向かって一定の付勢力が働くアーム113と、昇降ロッド103に対する変位測定部110の変位を検出する第1検出器と、変位測定部110に対する測定子111の変位を検出する第2検出器とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕使用者各人の体格や寝癖に応じた枕を設計するためのものであって、使用者の体格を測定する身体測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より様々な方法にて使用者に適した枕が開発されている。例えば、枕の充填材を収納する収納袋、すなわち枕の側地の内部を複数に区画し、充填材の収納量を区画された部分毎に変化させて枕の高低差をつけたり、また使用者自らが充填材の収納量を調節できるようにした枕が開発されている。
【0003】
その一方で、身体の形状を測定し、敷き布団等の身体の下部に敷く寝具について、その上に人が仰臥したり、横臥した際の寝具の沈み込み量を測定して各使用者の体型に即した寝具を開発する努力がなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人が敷き布団などの寝具上に枕をしながら仰臥あるいは横臥したときに、その人にとってその枕の高さが適切であるか否かを判断するには、その人の体格が寝具及び枕へ及ぼす影響と枕が寝具へ及ぼす影響とを考慮しなければならない。
【0005】
すなわち、寝具についてみた場合、寝具に荷重をかけたときの寝具自体の性能に基づく沈み込み量に対し、寝具を利用する人の体重や寝具と接触する身体の凹凸状態が個人個人によって異なるため、身体と接触する寝具の各部分の現実の沈み込み量が変化する。また、枕についてみた場合、頭の重量による枕の沈み込み量と、枕の重量による寝具の沈み込み量とが、それぞれ箇々に異なることにより枕の高さが変化する。すなわち、見掛けの寝具の厚みと見掛けの枕の高さとからは、実際に枕を使用したときの枕の高さは判断できない。これらの変化を数値的に把握しなければ、人が敷き布団などの寝具上に枕を使用しながら仰臥あるいは横臥したときの枕の高さが想定できず、使用者にとって適切な枕を設計することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明者は、上記の実情に鑑み、使用者にとって適切な枕を設計するための身体測定器を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る枕設計のための身体測定器は、身体の背面及び側面における少なくとも頭部から尻部までの凹凸状態をそれぞれ測定する身体測定器であって、変位測定部と、該変位測定部を上下に移動させる昇降ロッドとを備え、該変位測定部は、ローラー状の測定子が固定され、測定子が配されている側に向かって一定の付勢力が働くアームと、昇降ロッドに対する変位測定部の変位を検出する第1検出器と、変位測定部に対する測定子の変位を検出する第2検出器とを有することを特徴とするものである。
【0008】
このような身体計測器を採用すると、身体の身長及び体重を考慮し、測定により得られた身体の背面及び側面における頭部から尻部にかけての凹凸状態、及び、身体の下部に敷く寝具の沈み込み量の各測定結果に基づいて、枕を設計することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る枕設計のための身体測定器は、身体の身長及び体重を考慮し、測定により得られた身体の背面及び側面における頭部から尻部にかけての凹凸状態、及び、身体の下部に敷く寝具の沈み込み量の各測定を行うことができるので、その測定結果に基づいて、枕の使用者である被測定者に対して適切な高さ及び沈み込み量を有する枕を設計することができる。しかも、仰臥状態で眠る方が寝やすい人あるいは横臥状態で眠る方が寝やすい人等のように各人の好みに合わせた適切な高さの枕を設計することができる。したがって、本発明に係る枕は安眠状態を長時間継続することができ、十分な睡眠をとることができるため、現代人に特有の慢性的な睡眠不足を解消でき、健康が促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る好適な実施例を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
〔枕の構成〕
図1〜図12は、本実施例に係る枕の構成を示す。図1は枕の側地を上から見た一部切欠斜視図であり、図2は枕の側地を下から見た斜視図であり、図3は開口部の部分拡大斜視図であり、図4は枕基材の斜視図であり、図5は枕の側地に充填材及び枕基材を収納した状態を示す一部切欠斜視図であり、図6は枕の側地に充填材及び枕基材を収納した状態の中央横断面図であり、図7は図6に示す枕において充填材の充填量を変化させた状態の中央横断面図であり、図8は枕の側地に充填材及び枕基材を収納した状態の中央縦断面図であり、図9は枕の側地の変更例を示す一部切欠斜視図であり、図10は枕基材の変更例を示す斜視図であり、図11は図9に示す枕の側地に充填材及び図10に示す枕基材を収納した状態の中央横断面図であり、図12は図9に示す枕の側地に充填材及び図10に示す枕基材を収納した状態の中央縦断面図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、枕側地Aは、その上面側に粒状の充填材Bを収納する袋体10を配し、下面側にクッション材からなる枕基材Cを収納する基材収納部50を配してなるものである。
【0013】
袋体10は、袋体10を構成する上面生地11及び下面生地12の内側において、長さ方向に1本の連続した細幅の襠布13が2箇所の屈曲点a、bにて屈曲するようにして縫着され、またこの襠布13の各屈曲点a、bから幅方向の両方に延びる細幅の襠布14a、15a、14b、15bが縫着されており、これらの襠布により袋体10には6箇所の区画室16a、16b、16c、16d、16e、16fが形成されてなるものである。なお、このように構成された区画室のうち16bの部分が使用者の頭を載置する部分として設計される。また、区画室16a、16b、16cは、長さ方向に配されたスライドファスナー17a及び各一対の面ファスナー18a、18b、18cによりそれぞれ開閉自在な開口部19a、19b、19cが設けられており、区画室16c、16d、16eは、長さ方向に配されたスライドファスナー17b及び各一対の面ファスナー18d、18e、18fによりそれぞれ開閉自在な開口部19d、19e、19fが設けられている。前記の各開口部の上下には、図2及び図3に示すように、内包される充填材Bが外部に零れ出ないように逆止弁となる当て布20a、20bが内方に向けて縫着されており、この当て布20a、20bに前記の面ファスナー18a、・・・が取着されていて、該面ファスナーを結合することにより、各開口部19a、・・・を塞ぐ構造となって逆止弁効果が向上するように構成されている。また、このように構成したことによりスライドファスナー17a,17bが開放されただけでは充填材Bが簡単に零れ出ない利点がある。なお、袋体10を構成する上面生地11及び当て布20a、20bは、枕の通気性を高め、使用中の蒸れを防止するするためにメッシュ生地などを使用するのが好ましい。
【0014】
基材収納部50は、前記のスライドファスナー17a、17bの取付箇所に両端部51a、51bを縫着して各スライドファスナー間を架け渡すように配された底布51から構成され、長さ方向の両側部は枕基材が出し入れできるように開口している。
【0015】
図4は、前記基材収納部50に収納される枕基材Cであって、復元速度が緩いクッション材を布地で包被して構成されてなり、長さ幅方向中央部C1が薄く、中央部C1を除く両側部C2が厚く形成されてなるものである。
【0016】
図5は、例として、枕側地Aの袋体10の各区画室16a、16b、16c、16d、16e、16fに充填材Bを収納し、基材収納部50に枕基材Cを挿入して枕を形成したものである。この枕の形状は、枕基材Cの中央部C1が薄く、その両側部C2が厚く形成されているために、図6に示されるように、区画室16bの部分が低く、その両側の区画室16a、16cの部分が高くなる。また、区画室16bへの充填材Bの充填量を少なくし、その両側の区画室16a、16c、への充填材Bの充填量を多くすれば、図7に示すように、その高低差は大きくなる。このようにして長さ方向の高低を調整することができる。また、本実施例においては区画室16bへの充填量よりも区画室16eへの充填量を多くしているので、図8に示すように頭を載置する区画室16bよりも区画室16eが高くなっている。このように区画室16b、16eへの充填量を調整することにより幅方向の高低を調整することができる。
【0017】
図9は、上記した枕の側地Aの構成を一部変更した枕の側地A’を示し、変更した構成は、袋体10’の襠布13’を設けた位置であって、枕の側地Aにおいて設けた襠布13の位置より若干端部側に移設したものである。このように構成することにより、区画室16a’、16b’、16c’、16d’、16e’、16f’の面積が変化し、特に頭を載置する区画室16b’の面積が大きくなる。
【0018】
図10は、上記した枕基材Cの構成を一部変更した枕基材C’を示し、変更した構成は、枕基材Cが中央部C1薄く、両側部C2を厚くしたのに対し、枕基材C’は全体的に薄くして高低差をなくし、フラットにしたものである。
【0019】
上記の枕の側地A’に枕基材C’を収納し、かつ、袋体10’に充填材Bを充填して枕を構成すると、例として、図11の中央横断面及び図12の中央縦断面図に示すように、それぞれ頭を載置する区画室16b’およびその両側の区画室16a’、16c’の部分が全体的に凹凸の少ないフラットな枕が完成する。尤も区画室16a’、16c’の部分の充填量を増やせば当該部分の高さを高くすることができる。
【0020】
このように枕側地A、A’を構成したので、各区画室に充填する充填材Bの分量を適宜調節することにより枕の高さを調節することができる。また、厚みの異なる枕基材C、C’を基材収納部50に収納することにより、枕全体の高さを調整し、各区画室毎の充填材Bの分量を調整することにより、各区画室毎の枕の高さを微調整することができる。
【0021】
〔計測器の構成〕
次に枕設計のための身体計測器の構成について詳述する。
【0022】
図13〜図19は身体計測器を示し、図13の(a)は本実施例の身体測定器の平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図であり、図14は図13(b)の部分拡大図であって、変位測定部の正面図であり、図15は図13(c)の部分拡大図であって、変位測定部の側面図であり、図16は図13(a)の部分拡大図であって、変位測定部の平面図であり、図17は身体測定器の制御に関するブロック図であり、図18は身体測定器を使用して身体の背面側を測定している状態を示す模式図であり、図19は身体測定器を使用して身体の側面側を測定している状態を示す模式図である。
【0023】
図13において、Mは身体測定器を示し、101は被測定者が載る踏み台であり、踏み台101の下面には4個のゴムブッシュ105が配設されており、身体測定器Mの安定性を維持している。103は、後述する変位測定部110を上下に移動させるときのレールの機能を果たす昇降ロッドである。
【0024】
なお、本実施例において被測定者の体重及び身長は、自己申告によりデータを得てもよく、また、体重計や身長計を別途用意して測定してもよく、さらに該踏み台101に体脂肪率計を備えた体重計を内蔵し、足形106の上に載れば体重及び体脂肪率が測定できるように構成し、前記の昇降ロッド103及び変位測定部110を利用して、被測定者の身長が測定できるように構成してもよい。
【0025】
次に図14〜図16に基づき変位測定部110の構成について詳細に説明する。図において111はローラー状の測定子であり、アーム113に固定されている。該アーム113は測定子111が配されている側に向かってスプリングなどにより一定の付勢力が働くようになっており、被測定者の背中部などにおける凹凸及び曲線形状に沿って無理なくスムーズに出入するようになっている。また、アーム113は、その長手方向に回転防止のための溝が入っている。測定子111は、その周囲にスポンジなどの弾性材料で包被されており、被測定者に対して違和感を感じさせないようにしている。
【0026】
変位測定部110は、自重により自然落下するしくみになっており、その落下速度を調整するための速度調整用つまみ114が組み込まれていて、測定時に適度の速度で測定できるようになっている。また、変位測定部110の底面の側部には、変位測定部110を手動で上下に移動させることが可能なように取っ手119が配設されており、測定者が変位測定部110を自由に移動できるので便利である。さらに、変位測定部110を上下動させる必要のない不使用時などには、変位測定部110の落下を防止するために落下防止用ノブ115が配設されており、この落下防止用ノブ115を緩めると、変位測定部110は自重により自然落下する状態となり、速度調整用つまみ114を調整することにより適度な速度で落下するように構成されている。
【0027】
また、変位測定部110の内部にはエンコーダが2個設置されており、その一つは昇降ロッド103に対する変位測定部110の変位を検出する第1検出器として機能し、他の1つは変位測定部110に対する測定子111の変位を検出する第2検出器として機能する。そして、変位測定部110の底面に接続されるケーブル121を介して変位測定部110と接続するポイントスイッチ120が設けられており、このポイントスイッチ120を、変位測定部110の落下中における任意の位置、すなわち計測点で押すことにより、その計測点における第1検出器により計測された変位測定部110の変位量と、第2検出器により計測された測定子111の変位量とが測定できるようになっている。また、変位測定部110の底面に接続されるケーブル125を介して変位測定部110と接続する電源用のACアダプタ123とデータ出力のためのコネクタ124とが設けられており、ACアダプタ123を介して変位測定部110に電気が供給され、ポイントスイッチ120により決定された計測点における各検出器により検出された変位量がコネクタ124を通じてパーソナルコンピュータ等の情報処理装置(以下、単に「パソコン」という)に出力できるようになっている。なお、パソコンに対しては、シリアルインターフェースの規格RS−232C通信によるパソコンからの読み出し要求コマンドにより、計測した全データをアスキー形式で出力する。なお、アスキー形式以外で出力してもよい。
【0028】
さらに、変位測定部110の正面パネルには、その下部に変位測定部110を操作する操作部130が設けられ、中央部に変位測定部110の状況が発光ダイオード(以下、単に「LED」という)による点灯、点滅及び消灯により確認できる表示部140が設けられている。そして、操作部130には、計測を開始する際及び終了する際に操作する[計測開始/終了]スイッチ131及び再計測を行うための[再計測]スイッチ132が配されており、1回目に[計測開始/終了]ボタンを押すと計測を開始し、2回目に[計測開始/終了]ボタンを押すことで計測を終了する。また、表示部140には、計測中であることを表示する[計測中]表示141、ポイントスイッチ120を押したときのみ表示する[位置確認]表示142、計測が完了したことを知らせる[計測完了]表示143、及び、計測中にエラーが発生したことを知らせる[エラー]表示144が配設されている。
【0029】
なお、変位測定部110にはデータ処理部150が内蔵されており、図17に示すように、データ処理部150は、操作することによりデータ処理部150に信号を発信する[計測開始/終了]スイッチ131及び[再計測]スイッチ132から構成される操作部130及びポイントスイッチ120が接続されている。また、昇降ロッド103に対する変位測定部110の変位、すなわち垂直方向の変位を検出する第1検出器151及び変位測定部110に対する測定子111の変位、すなわち水平方向の変位を検出する第2検出器152が接続されている。さらにデータ処理部150にはこれらの入力信号及びパソコンから送信される指令信号に基づいて点灯、点滅及び消灯する[計測中]表示141、[位置確認]表示142、[計測完了]表示143、[エラー]表示144からなる表示部140が接続されている。このようにデータ処理部150は、これに入力された信号に基づいてデータ処理を行い、RS−232C通信を通じてパソコンに出力されるようになっている。
【0030】
上記のように構成したことにより、図18及び図19に示すように、測定点を決定するポイントスイッチ120をケーブル121を介してリモートコントロール的に片手で簡単に操作できるようになっている。また、操作部130及び表示部140を1つの面にまとめて配置したので、操作し易く、かつ、確認し易い利点がある。
【0031】
次に上記構成をなす身体測定器Mの操作方法について詳述する。その概要は、ポイントスイッチ120を持ち、変位測定部110が落下している間に、各計測点のところでポイントスイッチ120を押し、その計測点における変位量を測定する。
【0032】
具体的操作手順は以下のとおりである。
【0033】
(1)落下防止用ノブ115で変位計測部110が落下しないように固定する。
【0034】
(2)アーム113を基準位置に固定する。
【0035】
(3)パソコンに、RS−232Cのコネクタ124を接続する。
【0036】
(4)ACアダプタ123をACコンセントに差し込む。そうすると、電源が入り、[計測中]表示141及び[計測完了]表示143の各LEDが点滅する。
【0037】
(5)パソコンにインストールされている身体計測器用ソフトを立ち上げる。
【0038】
(6)パソコンから、エンコーダリセットコマンドを身体測定器Mにおける変位測定部110のデータ処理部150に送信し、水平方向のデータの零点補正を行う。
【0039】
以上(1)〜(6)までは、電源投入時にのみ一度行うだけでよい。
【0040】
(7)パソコンに、被測定者の氏名、年齢、性別、身長及び体重等の必要なデータ入力する。
【0041】
(8)パソコンから、計測準備コマンドを身体計測器Mにおける変位測定部110のデータ処理部150に送信し、計測データ待ちの状態にする。このときには、[計測完了]表示143のLEDが消え、[計測中]表示141のLEDのみが点滅する。
【0042】
(9)被測定者を踏み台101に載せ、直立姿勢で静止させる。
【0043】
(10)被測定者の頭の頂部に測定子111を移動し、落下防止用ノブ115で変位測定部110が落下しないように固定する。
【0044】
(11)[計測開始/終了]スイッチ131を押す。このとき、[計測中]表示141のLEDが点滅から点灯に変わる。
【0045】
(12)落下防止用ノブ115を解除し、変位計測部110を落下させる。
【0046】
(13)頭頂部から背中を経由して踵までの間を測定子111がゆっくりなぞりながら降下し、凹凸及び曲面形状を測定する。その途中で5個所の計測点(例えば、頭、首、背、腰、尻等)で、ポイントスイッチ120を押し、その計測点におけるデータをデータ処理部150に送信する。なお、ポイントスイッチ120を押す毎に、[位置確認]表示142のLEDが1秒だけ点灯する。
【0047】
(14)[計測開始/終了]スイッチ131を押し、計測を終了する。このとき[計測中]表示141のLEDが消え、[計測完了]表示143のLEDが点灯する。
【0048】
なお、測定をやり直す場合は[再計測]スイッチ132を押し、上記(10)に戻る。
【0049】
(15)パソコンから、データ収録コマンドを、身体測定器Mにおける変位測定部110のデータ処理部150に送信し、上記の測定により得られた計測データを読みとる。
【0050】
(16)次に、パソコンから、リセットコマンドを、身体測定器Mにおける変位測定部110のデータ処理部150に送信し、初期状態にする。このとき、[計測中]表示141及び[計測完了]表示143の各LEDが点滅する。
【0051】
以上で被測定者1人の測定が完了し、次の被測定者の測定をする場合は上記の(7)から行う。
【0052】
図18は、身体の背面側の凹凸状態を測定するものであるが、図19に示すように被測定者の身体の向きを変えることにより身体の側面側の凹凸状態を測定することができる。
【0053】
また、これらの検出器から測定されるデータから被測定者の身体背面及び側面の凹凸形状をグラフィック化することができる。例えば、第1検出器151から得られるデータを横軸にとり、第2検出器152から得られるデータを縦軸にとるとすれば、図20及び図21に示すように被測定者の仰臥及び横臥状態において、身体背面又は側面の突出した部分と窪んだ部分との凹凸形状をそのままそれぞれ曲線で表示することができる。よって、本身体測定器Mによれば、被測定者の身体背面及び側面の凹凸形状が視覚的に把握することができるようになるので、極めて便利である。したがって、グラフィック化が極めて容易となり、かつ、被測定者のデータが完全に記録されるので、該データの利用性が著しく向上する。
【0054】
なお、本実施例に係る身体測定器Mは、頭部から踵部までの身体の背面及び側面を測定できるように構成されているが、踏み台101の位置に椅子を置いて上半身のみを測定するようにして使用することもできる。また、本実施例に係る身体測定器Mにおいては、広幅測定子111として長尺のローラ状のものを使用しているが、これに限られるものではなく、身体背面又は側面をなぞっていけるものであればよい。また、本実施例においては、身体の背面又は側面に測定子を当接させる方法を採用しているが、身体背面及び側面に当接させずに行うように変更することも可能である。すなわち、測定子から光や音などの信号を発射させ、その反射により背面又は側面の隆起の度合いを測定するようにしてもよい。
【0055】
〔枕の設計〕
先ず、上記した身体計測器Mにより、枕の使用者すなわち被測定者の身長及び体重を確認し、身体の背面及び側面における頭部から尻部までの凹凸状態をそれぞれ測定する。以下に測定結果の1例を述べる。
【0056】
被測定者は身長163cm、体重55kgの男性であり、被測定者の身体の背面における頭部から尻部までの凹凸状態の測定結果は、図20の立位背面測定結果グラフに示される。また、被測定者の身体の側面における頭部から尻部までの凹凸状態の測定結果は、図21の立位側面測定結果グラフに示される。
【0057】
次に被測定者が使用する敷き布団等の身体の下に敷く寝具の沈み込み量を測定する。測定結果の1例として、1年以上使用した敷き布団の沈み込み量が10mm、同時に使用するウレタンマットレスの沈み込み量が15mmで、合計25mmの沈み込み量であった。なお、寝具の沈み込み量の測定は必ずしも測定器で行う必要はなく、測定者が寝具を押圧した感触などで得られる沈み込み量を採用してもよい。
【0058】
そこで、上記の測定結果から、仮想的に寝具の上に被測定者が仰臥した状態において、頭部と寝具との間を枕で埋めた図面を作成すると、図22のようになる。また、仮想的に寝具の上に被測定者が横臥した状態において、頭部と寝具との間を枕で埋めた図面を作成すると、図23のようになる。この仰臥状態及び横臥状態は、立位の姿勢における頭部の位置がそのまま維持できるように枕を頭部の下に敷くことが首や肩に対して余分な負担がかからず、安眠できることに基づいている。
【0059】
そして、図22及び図23に示される仮想の枕の高さを、図8及び図12に示す枕の中央縦断面図に当てはめ、枕自体の沈み込み量を考慮に入れて、所望の枕の高さになるように袋体の区画室16b又は区画室16b’に充填材を充填する。なお、区画室16a、16c又は16a’、16c’に充填する充填材の分量は、区画室16b又は区画室16b’へ充填した充填材の分量により適宜決定する。最終的には、このような設計方法にて製作された枕を被測定者が実際に使用し、各区画室の充填材の分量を微調整する。
【0060】
上記のような設計方法を採用すると、身体の身長及び体重、測定により得られた身体の背面及び側面における少なくとも頭部から尻部にかけての凹凸状態、及び、身体の下部に敷く寝具の沈み込み量の各測定結果に基づいて、複数に区画された充填材を収納する袋体内部の各区画室に充填材の量を調整して充填することにより、枕の使用者である被測定者に対して適切な高さ及び沈み込み量を有する枕を設計することができる。しかも、仰臥状態で眠る方が寝やすい人あるいは横臥状態で眠る方が寝やすい人等のように各人の好みに合わせた適切な高さの枕を設計することができる。したがって、本発明に係る枕は安眠状態を長時間継続することができ、十分な睡眠をとることができるため、現代人に特有の慢性的な睡眠不足を解消でき、健康が促進される。
【0061】
また、上記の枕の設計方法における枕使用者に関する各測定結果及び情報を記録して顧客を管理する方法を採用すれば、新たに枕を設計するときに過去の記録と比較してより適切な枕を提供することができるので、極めて便利である。
【0062】
さらに、上記の顧客の管理方法における枕使用者の各測定結果及び情報に基づいて身体の下部に敷く寝具を設計する方法を採用すれば、顧客の寝環境に変化があった場合でも、その変化に応じて、適切な枕及び身体の下に敷く寝具を即座に提供することができ、寝環境全体を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】枕の構成を示す図であって、枕の側地を上から見た一部切欠斜視図である。
【図2】枕の側地を下から見た斜視図である。
【図3】開口部の部分拡大斜視図である。
【図4】枕基材の斜視図である。
【図5】枕の側地に充填材及び枕基材を収納した状態を示す一部切欠斜視図である。
【図6】枕の側地に充填材及び枕基材を収納した状態の中央横断面図である。
【図7】図6に示す枕において充填材の充填量を変化させた状態の中央横断面図である。
【図8】枕の側地に充填材及び枕基材を収納した状態の中央縦断面図である。
【図9】枕の側地の変更例を示す一部切欠斜視図である。
【図10】枕基材の変更例を示す斜視図である。
【図11】図9に示す枕の側地に充填材及び図10に示す枕基材を収納した状態の中央横断面図である。
【図12】図9に示す枕の側地に充填材及び図10に示す枕基材を収納した状態の中央縦断面図である。
【図13】本発明に係る枕設計のための身体測定器の構成を示す図であって、(a)は身体測定器の平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図である。
【図14】図13(b)の部分拡大図であって、変位測定部の正面図である。
【図15】図13(c)の部分拡大図であって、変位測定部の側面図である。
【図16】図13(a)の部分拡大図であって、変位測定部の平面図である。
【図17】身体測定器の制御に関するブロック図である。
【図18】身体測定器を使用して身体の背面側を測定している状態を示す模式図である。
【図19】身体測定器を使用して身体の側面側を測定している状態を示す模式図である。
【図20】身体測定器を使用して身体の背面側を測定した結果を示す立位背面測定結果グラフである。
【図21】身体測定器を使用して身体の側面側を測定した結果を示す立位側面測定結果グラフである。
【図22】立位背面測定結果グラフに基づいて作成した仰臥状態の仮想図である。
【図23】立位側面測定結果グラフに基づいて作成した横臥状態の仮想図である。
【符号の説明】
【0064】
A・・・・枕の側地 B・・・・充填材
C・・・・枕基材 C1・・・中央部
C2・・・側部 10・・・袋体
11・・・上面生地 12・・・下面生地
13・・・襠布
a・・・・屈曲点 b・・・・屈曲点
14a・・襠布 15a・・襠布
14b・・襠布 15b・・襠布
16a・・区画室 16b・・区画室
16c・・区画室 16d・・区画室
16e・・区画室 16f・・区画室
17a・・スライドファスナー 17b・・スライドファスナー
18a・・面ファスナー 18b・・面ファスナー
18c・・面ファスナー 18d・・面ファスナー
18e・・面ファスナー 18f・・面ファスナー
19a・・開口部 19b・・開口部
19c・・開口部 19d・・開口部
19e・・開口部 19f・・開口部
20a・・当て布 20b・・当て布
50・・・基材収納部 51・・・底布
51a・・端部 51b・・端部
A’・・・枕の側地 C’・・・枕基材
10’・・袋体 13’・・襠布
16a’・区画室 16b’・区画室
16c’・区画室 16d’・区画室
16e’・区画室 16f’・区画室
M・・・・身体測定器 101・・踏み台
103・・昇降ロッド 105・・ゴムブッシュ
106・・足形 110・・変位測定部
111・・測定子 113・・アーム
114・・速度調整用つまみ 115・・落下防止用ノブ
119・・取っ手 120・・ポイントスイッチ
121・・ケーブル 123・・ACアダプタ
124・・コネクタ 125・・ケーブル
130・・操作部 131・・[計測開始/終了]スイッチ
132・・[再計測]スイッチ 140・・表示部
141・・[計測中]表示 142・・[位置確認]表示
143・・[計測完了]表示 144・・[エラー]表示
150・・データ処理部 151・・第1検出器
152・・第2検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の背面及び側面における少なくとも頭部から尻部までの凹凸状態をそれぞれ測定する枕設計のための身体測定器であって、
変位測定部と、該変位測定部を上下に移動させる昇降ロッドとを備え、
該変位測定部は、ローラー状の測定子が固定され、測定子が配されている側に向かって一定の付勢力が働くアームと、昇降ロッドに対する変位測定部の変位を検出する第1検出器と、変位測定部に対する測定子の変位を検出する第2検出器とを有する
ことを特徴とする枕設計のための身体測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−113056(P2006−113056A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290565(P2005−290565)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【分割の表示】特願2002−119709(P2002−119709)の分割
【原出願日】平成14年4月22日(2002.4.22)
【出願人】(591034143)西川リビング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】