説明

案内システム

【課題】 ユーザが最終目的地を設定あるいは特定しない場合であっても最終目的地に応じた情報の提供に役立つ案内システムを提供する。
【解決手段】 該当ユーザの目的地設定履歴と駐車位置履歴を収集し(ステップS1)目的地の設定履歴の有無を判定する(ステップS2)。駐車位置に対応しうる目的地の設定履歴がある場合は、複数のユーザが設定した目的地と実際に到達した駐車位置との関係履歴情報に基づいて、目的地と駐車場との対応関係を抽出し、記憶装置に格納する(ステップS5)。ステップS2で駐車位置に対応しうる目的地の設定履歴がない場合には、抽出された目的地と駐車位置の対応情報を参照して、どの目的地に行った可能性が高いかを推定する(ステップS3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信によりセンターからユーザに対して目的地や周辺の情報を案内する案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や車両用ナビゲーション装置のナビゲーション機能として目的地周辺の情報を案内する案内機能が知られている。特許文献1に記載されている技術は、そうした技術の一例であって、センターが広告提供者の店舗情報等を案内し、ユーザが広告に基づいて当該店舗を目的地に設定して、経路案内を受け、当該店舗への到着告知を受けて、店舗から広告料金を徴収するというシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−183591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このシステムは、広告情報提供時の課金システムであるため、ユーザが店舗を目的地に設定し、当該店舗を訪れることを前提としてシステムが構築されている。しかしながら、例えば、目的地への移動手段として車両を用いる場合、最終目的地に駐車施設が付随していないことも多く、そのような場合に、ユーザは、経路案内の際に最終目的地を入力するのではなく、最終目的地付近の駐車施設を目的地として経路案内を行う場合がある。また、こうした経路案内を利用しないことも多い。
【0005】
そこで本発明は、ユーザが最終目的地を設定あるいは特定しない場合であっても最終目的地に応じた情報の提供に役立つ案内システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る案内システムは、位置情報を取得する手段と、通信機能とを備える移動体と、該移動体からの通信要求に応じて目的地および周辺の案内情報を通知するセンターとで構成される案内システムにおいて、センターは、複数の移動体において入力された目的地と、当該移動体が目的地付近で停留した際の位置情報とをリンクさせて記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された情報に基づいて停留位置に対応する目的地候補を抽出する抽出手段と、停留位置に対応した抽出目的地候補を移動体に通知する目的地候補通知手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
センターから移動体に対して、到達した停留位置に対応する目的地候補の情報を提供するとよい。この移動体は、車両であって、停留位置は、駐車場であるとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多数のユーザから入力された目的地と停留地との対応関係から目的地候補を抽出しておき、ユーザに対して停留地に応じた抽出目的地候補を通知することにより、最終目的地が特定されていない場合(停留地を目的地とする場合のほか、目的地自体を入力していない場合を含む。)においてもユーザの最終目的地を精度よく予測することができる。
【0009】
こうして予測した目的地候補の情報を提供することで、ユーザの利便性が向上する。特に、移動体が車両の場合、停留地である駐車場と最終目的地とは一致しないケースが多く見られるが、本発明によれば、こうした場合でも適切な目的地情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る案内システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の案内システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係る案内システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態は、移動体である車両1とセンター2との間で無線通信により情報を送受する案内システムである。
【0012】
車両1は、センター2の通信システム26と無線通信を通じて通信を行う通信機11と、ナビゲーション機能を実現する車両用ナビゲーション装置12と、運転席に配置され、運転者の着座状態を判別する着座センサ13を備える。
【0013】
車両用ナビゲーション装置12は、自律航法装置やGPSを用いて車両の現在位置を取得するとともに、センター2から送られる情報等に基づいて運転者に対して、設定した目的地までの経路を案内する機能や、目的地周辺の情報を提供する機能を有している。ナビゲーション装置12は、設定入力のための入力手段(タッチパネル、キーボード、カーソルキー等)を備えるほか、情報を画像として視覚的に表示するためのディスプレイと、情報を音声により提供するためのスピーカーを備えているとよい。なお、入力手段、ディスプレイ、スピーカーは車両に搭載されるAV機器と共用のものであってもよい。また、地図情報や周辺情報を格納する記憶装置を備えていてもよい。この記憶装置としては、ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリ等を用いることができる。着座センサ13としては、感圧式、赤外線式、画像センサ等の各種センサを用いることができる。
【0014】
センター2側は、センター2内の案内システム設備を制御する演算処理装置20を中心に構成される。この演算処理装置20は、複数の処理装置により構成されていてもよい。演算処理装置20には、演算処理装置20内には、目的地と駐車位置との関係を抽出する関係抽出部21と目的地が未設定の場合の目的地を推定する未設定目的地推定部22を備える。この演算処理装置20には、ユーザ毎の目的地設定、閲覧履歴等を保存するユーザ履歴保存部23と、複数のユーザが設定した目的地設定履歴と駐車位置情報を格納する記憶装置24と、目的地ごとのコンテンツ情報(施設情報)を格納するPOI−DB(Point Of Interest - DataBase)25、車両1の通信機11と相互通信を行う通信システム26が接続されている。ユーザ履歴保存部23、POI−DB25は記憶装置24内に格納されていてもよい。また、通信システム26と車両の通信機11との間には、複数の中継装置(基地局)が、設置されていると好ましく、この基地局と通信システム26間は無線、有線のいずれの通信方式で接続されていてもよい。
【0015】
次に、この案内システムにおける案内動作の一例を図2のフローチャートを参照して説明する。この動作は、センター2の演算処理装置20を中心として実行される。最初に、該当ユーザの目的地設定履歴と駐車位置履歴を収集する(ステップS1)。駐車したか否かの判断は、車両1の着座センサ13の出力から運転者が離席した場合に駐車したと判断すればよい。あるいは、車両1のエンジンを所定時間以上停止させた場合や補機電源をオフにした場合に駐車したと判断してもよい。車両ナビゲーション装置12によりこの駐車時点における現在位置情報、つまり駐車位置情報を検出して、この駐車位置情報とともに、該当駐車位置へ至る際にユーザが設定した目的地情報を通信機11を用いてセンター2に通知し、ユーザ履歴保存部23に格納しておくとよい。
【0016】
ステップS2では、目的地の設定履歴の有無を判定する。駐車位置に対応しうる目的地(目的地が当該駐車位置に合致する駐車場である場合を除く。)の設定履歴がある場合は、ステップS5へと移行する。ステップS5では、関係抽出部21が、記憶装置24内に格納されている複数のユーザが設定した目的地と実際に到達した駐車位置との関係履歴情報に基づいて、目的地と駐車場との対応関係を抽出し、記憶装置24に格納する。
【0017】
具体的には、駐車位置ごとに目的地設定された地点情報であるPOIの頻度をカウントする。次に、頻度の割合が設定しきい値を超えるだけの上位のPOIを抽出する。そして、抽出した全てのPOIについて、その頻度の割合が信頼に値するか否かをそのサンプル数によって確認する。抽出したPOIに対する頻度割合がPのとき、この割合が誤差Eで信頼度αで正しいことを保証するサンプル数Nは以下の式(1)により求めることができる。
【数1】




なお、zはz関数である。全体サンプル数Nallが、抽出した全てのPOIについて求めたNを超えるときに、抽出したPOIを、その駐車位置に対する目的地候補として設定する。
【0018】
例えば、ある駐車位置に対して、複数ユーザの目的地設定履歴を集計した結果、表1に示される結果となったとする。
【表1】





累積割合のしきい値を80%とする。この場合、上位2件であるレストランAとレストランBとの累積割合が80.7%でこのしきい値を超えるため、レストランAとレストランBとが目的地候補として抽出される。
【0019】
レストランAの頻度は150であり、全体の割合は48.4%である。この割合48%が90%の信頼度、誤差5%で信頼できるとしたときのサンプル数Nは、z(0.90/2)=1.645であるから、N=(1.645/0.05)×0.484×(1−0.484)≒270である。サンプル数合計310は、これより大きいからこのサンプルは基準を満たすことがわかる。式(1)より信頼度、誤差が同一のときに必要とされるサンプル数は、頻度割合Pが50%に近いほど多く必要になることがわかる。したがって、レストランAとレストランBとでは、より頻度割合が50%に近いレストランAが基準を満たすサンプル数は多いことになり、レストランAがサンプル数基準を満たしている以上、レストランBもサンプル数基準を満たしている。これにより、最終的にレストランAとレストランBの2つのPOIを当該駐車位置に対応する目的地候補として抽出する。
【0020】
ステップS5の抽出処理後は、ユーザ履歴保存部23に目的地履歴を格納して保存し(ステップS6)、処理を終了する。なお、ステップS5の処理と、S6の処理との順番は逆であってもよく、並列して行ってもよい。
【0021】
ステップS2おおいて駐車位置に対応しうる目的地の設定履歴がない場合(目的地が当該駐車位置に合致する駐車場である場合を含む。)には、ステップS3へと移行し、記憶装置24内の目的地と駐車位置の対応情報(紐付け情報)を参照して、どの目的地に行った可能性が高いかを推定する。例えば、抽出された上位POIのうち、上位の所定の数を目的地候補と推定して、車両1に対してPOI−DB25から読み出した当該目的地候補のPOI情報とあわせて通知する。
【0022】
次に、推定された目的地候補の推定確度のしきい値が所定値以上の場合には、この目的地候補をユーザ履歴保存部23の目的地履歴に格納する(ステップS4)。この際、ユーザが実際に入力した目的地履歴とは区別がつけられるように格納するとよい。例えば、実際に入力した目的地履歴とは別のデータベース情報として格納するほか、同じデータベースに格納する場合には、入力した目的地と推定した目的地候補とを区別するフラグを設定する手法を用いることができる。
【0023】
車両1側では、運転者に対し、車両用ナビゲーション装置12を通じて通知された目的地候補のPOI情報を通知する。これにより、目的地が特定されていない場合や、目的地として最終目的地ではないこれに近い駐車場を設定した場合であっても最終目的地のPOI情報を提供することができるので、システムの利便性が向上する。
【0024】
さらに、ユーザが対話形式等により目的地候補のリストから最終目的地を選別できるようにすることで、目的地候補の検証を行うようにしてもよい。あるいは、ユーザが車両用ナビゲーション装置のほかに携帯電話等の携帯端末によっても同じ案内システムを利用できる場合には、当該携帯端末の位置情報通知機能を利用して、最終目的地を判定可能とする構成をとってもよい。こうして取得した最終目的地情報を利用して抽出データを検証することで、データの信頼性がより向上する。
【0025】
以上の説明では、車載のナビゲーション装置に適用した場合を例に説明したが、各種の携帯端末装置を対象とする場合でも本発明は好適に適用できる。例えば、最終目的地において位置情報の取得や送受信が困難であるような場合に好適である。
【符号の説明】
【0026】
1…車両、2…センター、11…通信機、12…車両用ナビゲーション装置、13…着座センサ、20…演算処理装置、21…関係抽出部、22…未設定目的地推定部、23…ユーザ履歴保存部、24…記憶装置、25…POI−DB、26…通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報を取得する手段と、通信機能とを備える移動体と、該移動体からの通信要求に応じて目的地および周辺の案内情報を通知するセンターとで構成される案内システムにおいて、
センターは、複数の移動体において入力された目的地と、当該移動体が目的地付近で停留した際の位置情報とをリンクさせて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて停留位置に対応する目的地候補を抽出する抽出手段と、
停留位置に対応した抽出目的地候補を移動体に通知する目的地候補通知手段と、
を備えていることを特徴とする案内システム。
【請求項2】
センターから移動体に対して、到達した停留位置に対応する目的地候補の情報を提供することを特徴とする請求項1記載の案内システム。
【請求項3】
前記移動体は、車両であって、前記停留位置は、駐車場であることを特徴とする請求項1または2に記載の案内システム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−163904(P2011−163904A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26634(P2010−26634)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】