説明

検査装置及び検査方法

【課題】筒状成形体に生じた傷、歪みその他の異常を、高い精度で、かつ、効率よく検査することのできる検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】樹脂の成形により成形した筒状成形体に対して検査光を照射する光源と、筒状成形体の内部に配置した第1偏光手段と、筒状成形体の外部であって、検査光の進行方向上に配置した第2偏光手段と、検査光が第1偏光手段及び第2偏光手段を通ることによって生ずる干渉模様を撮像する撮像手段と、干渉模様に基づいて筒状成形体の、歪み、形状及び外観のうち少なくとも一つを解析する解析手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を成形してなる筒状成形体を検査する検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料その他の液体を充填する容器として、樹脂を成形してなるものが広く利用されている。このような樹脂製容器では、容器の耐久性、内容物の品質維持、外観その他の観点から、容器の外形形状や容器外周面に装着されるフィルムの装着状態を検査する必要があり、さまざまな検査装置及び検査方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平9−72861号公報)記載の検査方法においては、白色光源とカラーイメージセンサーの間に2枚の偏光板を設置するとともに、これらの偏光板の間に透明容器を配置している。この透明容器の外周には透明フィルムが装着されており、照射される白色光が透明フィルムの光弾性効果によって呈色する干渉色をカラーイメージセンサーで検知することにより、透明フィルムの有無又は/及びフィルムエッジ位置を計測することができる。
【0004】
また、特許文献2(特開2005−24547号公報)記載の機械においては、光源とボトルの間に第1の偏光器を、ボトルとカメラの間に強誘電性の液晶を、さらに、強誘電性の液晶とカメラの間に第2の偏光器を、それぞれ配置している。この機械では、第1及び第2の偏光器の偏光方向、並びに強誘電性の液晶の回転極性の設定により、ボトル内の欠陥をカメラの結像面上に結像させることができる。
【特許文献1】特開平9−72861号公報
【特許文献2】特開2005−24547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の検査装置や検査方法では、検査精度及び検査効率を高いレベルで実現することが困難であった。例えば、特許文献1記載の検査方法及び特許文献2記載の機械では、有底筒状の容器の中心軸に関して対称な位置(光源側の位置及びカメラ(イメージセンサー)側の位置)にそれぞれ傷や歪みがあった場合、これらに基づく干渉模様が重なり合って撮像されることとなるため、それぞれの干渉模様を正確かつ迅速に確認することが困難となり、検査精度及び検査効率の点で適切とは言い難かった。
【0006】
そこで本発明は、筒状成形体の中心軸に関して対称な位置に、傷、歪みその他の異常(形状又は外観の異常)がそれぞれ発生している場合であっても、高い精度で、かつ、効率よく検査することのできる検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の検査装置は、透明又は半透明な筒状成形体の検査装置であって、筒状成形体に対して検査光を照射する光源と、筒状成形体の内部に配置した第1偏光手段と、筒状成形体の外部であって、検査光の進行方向上に配置した第2偏光手段と、検査光が第1偏光手段及び第2偏光手段を通ることによって生ずる干渉模様を撮像する撮像手段と、干渉模様に基づいて筒状成形体の歪み、形状、及び外観のうち少なくとも一つを解析する解析手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の検査装置において、第1偏光手段及び第2偏光手段は、それぞれ、少なくとも1枚の偏光板を備えることが好ましい。
【0009】
本発明の検査装置において、第1偏光手段に含まれる偏光板の少なくとも1枚が備える偏光方向と、第2偏光手段に含まれる偏光板の少なくとも1枚が備える偏光方向は互いに90度をなすとよい。さらに、これらの偏光方向は、圧縮成形の成形方向に対して45度をなすことが好ましい。
【0010】
本発明の検査装置において、第2偏光手段は、光源と筒状成形体との間、又は、筒状成形体と撮像手段との間に配置することが好ましい。
【0011】
本発明の検査装置において、筒状成形体と、第1偏光手段に含まれる偏光板の少なくとも1枚との相対位置を変更する偏光板移動手段を備えるのが望ましい。
【0012】
本発明の検査装置において、筒状成形体は樹脂の圧縮成形により成形することができる。
【0013】
本発明の検査装置において、筒状成形体は有底とすることができる。
【0014】
本発明の検査装置において、筒状成形体はポリエステル樹脂の成形により成形されることが好ましい。
【0015】
本発明の検査装置において、筒状成形体は、ブロー成形容器のプリフォーム(予備成形体)であるとよい。
【0016】
本発明の検査装置において、撮像手段が筒状成形体の全周を撮像可能とする撮像補助手段を備えることが好ましい。
【0017】
さらに、撮像補助手段は、筒状成形体をその中心軸の周りに回転させる回転手段を備えるとよい。
【0018】
本発明の検査装置において、光源は、筒状成形体のうち、少なくとも検査部分に検査光を照射するとよい。
【0019】
本発明の検査装置において、検査光は3原色を含む白色光であるとよい。
【0020】
本発明の検査装置において、撮像手段は白黒画像を撮像するCCDであることが好ましい。
【0021】
本発明の検査方法は、透明又は半透明な筒状成形体を検査する検査方法であって、筒状成形体の内部に第1偏光手段を、筒状成形体の外部であって、検査光の進行方向上に第2偏光手段を、それぞれ配置する偏光手段配置工程と、筒状成形体に対して検査光を照射する検査光照射工程と、検査光が第1偏光手段及び第2偏光手段を通ることによって生ずる干渉模様を撮像する干渉模様撮像工程と、干渉模様に基づいて筒状成形体の歪み、形状、及び外観のうち少なくとも一つを解析する解析工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、透明又は半透明な筒状成形体に対して検査光を照射する光源と、筒状成形体の内部に配置した第1偏光手段と、筒状成形体の外部であって、検査光の進行方向上に配置した第2偏光手段と、検査光が第1偏光手段及び第2偏光手段を通ることによって生ずる干渉模様を撮像する撮像手段と、干渉模様に基づいて筒状成形体の歪み、形状、及び外観のうち少なくとも一つを解析する解析手段と、を備えることにより、筒状成形体の中心軸に関してほぼ対称な位置に、傷、歪みその他の異常(形状又は外観の異常)がそれぞれ発生している場合であっても、筒状成形体の、撮像手段側の筒壁のみの干渉模様、または、光源側の筒壁のみの干渉模様を撮像・解析できるので、高い精度で、かつ、効率よく検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る検査装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。本実施形態は、本発明の筒状成形体として、圧縮成形により成形した有底のプリフォーム(予備成形体)を用いた場合の実施形態を示すものである。しかしながら、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、プリフォーム以外の成形品、貫通した筒状成形体、圧縮成形以外の成形方法(例えば射出成形、押出成形)による成形品にも適用することができる。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る検査装置10は、プリフォームPへ照射する光源20、プリフォームPからの出射光を撮像する白黒カメラ40、制御ユニット50、プリフォームPの内部に配置された第1偏光板30、及びプリフォームPの外部側であって光源20と白黒カメラ40との間に配置された第2偏光板35を備える。また、制御ユニット50は、図2に示すように、入力部51(例えばタッチパネル)、記憶部52(例えばRAM(Random Access Memory))、解析部53、制御部54、及び、表示部55(例えば液晶ディスプレイ)を備える。ここで、解析部53及び制御部54は、例えば、別個の、又は、共通の集積回路で構成する。制御部54は、使用者が入力部51を操作して入力した情報に基づいて、検査装置10の動作を制御する。入力部51の操作により入力された情報及び検査結果は、表示部55に表示されるとともに、記憶部52に保存される。
【0025】
検査装置10において光源20から出射した検査光は、プリフォームPに入射すると、プリフォームP内の第1偏光板30に入射する。第1偏光板30を通った光は、第1偏光板30の偏光方向に振動する光であり、さらに、プリフォームPから出射した光は第2偏光板35に入射する。第2偏光板35を通った光は、その偏光方向に振動する光であって、白黒カメラ40側へ入射する。このように検査光が第1偏光板30及び第2偏光板35の順に通ると、第1偏光板30の偏光方向と第2偏光板35の偏光方向の関係に応じて干渉模様が発生する。検査装置10では、このようにして発生する干渉模様を白黒カメラ40によって撮像し、撮像された干渉模様に基づいて解析部53においてプリフォームPの歪み、形状、及び外観のうちの少なくとも一つを解析する。
【0026】
ここで、検査の対象となるプリフォームP(筒状成形体)について説明する。プリフォームPは、飲料等を充填するための容器の形成に供される有底の筒状成形体である。プリフォームPは、射出成形よりも低温で実施することのできる圧縮成形により形成することが好ましい。具体的には、プリフォーム形状を形成するためのキャビティを備えた雌型内に、加熱・軟化させた熱可塑性樹脂を挿入した後に、雌型内に導入した雄型と雌型によって熱可塑性樹脂を圧縮加工することによって、プリフォームPを所望の形状に成形する。本実施形態のプリフォームPでは、その中心軸Cの方向において雄型を移動することによって、熱可塑性樹脂を圧縮して筒状の成形体とする。
【0027】
こうして成形されるプリフォームPは、延伸温度に予備加熱された後に、ブロー金型中で中心軸C方向に引っ張ることにより延伸されるともに、周方向にブロー延伸され、これにより容器(ブロー成形容器)が形成される。
【0028】
プリフォームPは、圧縮成形後に透明又は半透明となる物質(例えば樹脂)を用いて形成する。このような物質としては、例えば、ポリエチレンテエレフタレートや、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリオレフィンが挙げられる。
【0029】
ここで、「透明」及び「半透明」は、測定に用いる光、好ましくは波長400〜700nmの可視光のうち、検査光に相当する特定波長の光を空のプリフォームPに入射したときの透過率で定義することができ、透過率が70%以上である場合を「透明」、10%以上70%未満である場合を「半透明」とする。したがって、本実施形態に係るプリフォームPに対する可視光の透過率は10%以上となる。なお、プリフォームPの透過率は、光源20から出射する検査光の波長、白黒カメラ40の撮像解像度、ブロー成形容器の種類その他の条件に応じて、任意に設定することができる。
【0030】
つづいて、検査装置10の各部分の詳細な構成について説明する。
まず、プリフォームPに対して検査光を照射する光源20は、例えば蛍光灯、LED(発光ダイオード)、ハロゲンランプを用いる。光源20は、検査光として、3原色(R、G、Bの光の3原色)の波長を含む白色光を出射する。光源20は、プリフォームP全体を照射してもよいが、プリフォームPのうち、検査部分に検査光を照射するようにすると光源20の照射範囲・出力を絞り込むことができ、不要にエネルギーを使わずに済むので好ましい。
【0031】
第1偏光板30(第1偏光手段)は、公知の長板状の偏光板であり、検査光の進行方向上であって、プリフォームPの内部に配置する。ここで、検査光の進行方向とは、光源20から白黒カメラ40に向かう方向であって、光源20の光軸に沿った方向を意味する。
【0032】
第2偏光板35(第2偏光手段)は、第1偏光板30と同様に公知の長板状の偏光板である。第2偏光板35は、検査光の進行方向上であって、プリフォームPと白黒カメラ40との間に配置する。なお、第2偏光板35は、プリフォームPの外部であって、検査光の進行方向上であれば、プリフォームPと白黒カメラ40との間以外の位置に配置することもでき、例えば、光源20とプリフォームPとの間に配置することができる。
【0033】
第1偏光板30及び第2偏光板35は、いずれも、通った光が直線偏光となる偏光板である。第1偏光板30及び第2偏光板35は、偏光方向(偏光板を通った光が振動する方向)が、それぞれ、プリフォームPの成形方向(射出成形または圧縮成形における、樹脂の流動方向)である中心軸Cの方向(図1)に対して45度をなし、かつ、互いに90度をなすように配置すると、樹脂に生じた歪みなどの異常を示す干渉模様が顕著に現れ、異常をより検出しやすくなるので好ましい。偏光方向は、異なる偏光方向を備える偏光板に交換することによって変更する。
【0034】
なお、偏光方向は、プリフォームPの成形方向に対して一定の角度だけ傾斜し、かつ、互いに一定の角度をなすように配置できれば、任意の角度に設定することができる。また、第1偏光板30及び第2偏光板35の一方又は両方を、直線偏光以外の偏光(例えば円偏光)を生じさせる偏光板とすることもできる。
【0035】
また、プリフォームPの内部には、第1偏光板30のほかに、第1偏光手段としての偏光板をさらに配置してもよい。また、プリフォームPと白黒カメラ40との間には、第2偏光板35のほかに、第2偏光手段としての偏光板をさらに配置してもよい。追加配置する偏光板は、第1偏光板30と第2偏光板35による干渉効果を阻害しなければ任意の偏光方向を設定することができるが、第1偏光手段として追加する偏光板は第1偏光板30と、第2偏光手段として追加する偏光板は第2偏光板35と、それぞれ同一の偏光方向を備えることが好ましい。
【0036】
上述のように、第1偏光板30と第2偏光板35の偏光方向のなす角度を90度とすると、光源20からプリフォームPに検査光を入射すると、プリフォームPの状態に応じた干渉模様が生じ、公知の白黒カメラ40(撮像手段)によって撮像することができる。この白黒カメラ40は、白黒画像を撮像可能なCCD(電荷結合素子)を備え、このCCDによって干渉模様を撮像する。撮像手段としては、例えば、カラー画像を撮像可能なCCD、白黒画像又はカラー画像を撮像可能なCMOS(相補型金属酸化膜半導体)を用いることもできるが、白黒画像の方が、画像解析上簡便に処理でき好ましいので、あらかじめ白黒CCDカメラで撮像した方が多色にわたる干渉模様を初めから簡便に白黒模様で取り込めるため、好ましい。
【0037】
白黒カメラ40で撮像された干渉模様は、CCD及び白黒カメラ40内の画像処理回路(不図示)によって所定の電気信号に変換され、制御ユニット50へ出力される。制御ユニット50においては、制御部54による制御のもと、解析部53が干渉模様に基づいてプリフォームPの歪み、形状、及び外観のうちの少なくとも一つを解析する。解析は、あらかじめ記憶部52に保存された演算プログラムを制御部54が読み出して、解析部53が実行することによって行う。解析の手法としては、例えば形状及び外観に異常のないプリフォームPについてあらかじめ取得した干渉模様(例えば、円柱状部分については全面黒色の画像)と比較して、画像濃度の相違量が所定値よりも大きく、かつ、所定以上の面積を有する部分を、歪み、形状又は外観に異常がある部分として認識する。ここで、形状の異常としては、例えば、プリフォームPを構成する壁面の傷、歪みによる外形形状の異常があり、外観の異常としては、例えば、壁面内部の構造の歪み、空洞がある。また、異常部分として認識するための画像濃度の相違量及び面積の所定値(閾値)は、入力部51の操作によりあらかじめ記憶部52に記憶してあり、解析の際に制御部54がこれらの値を参照する。なお、プリフォームPを一周以上回転させて筒部を撮像し、筒部の側面に異常がないかを、近隣部分と比較することにより解析する方法については後述する。
【0038】
第1偏光板30は、偏光板移動機構60(偏光板移動手段)を用いて、中心軸Cの方向(上下方向)に移動することができる。偏光板移動機構60は、取付ロッド61及びエアシリンダ62を備える(図1、図3)。円柱形状を備える取付ロッド61は、その中心軸が、プリフォームPの中心軸Cの延長線上にあるように、プリフォームPの上方に配置される。
なお、偏光板移動手段として、エアシリンダ62の代わりにモーター(好ましくはサーボモーターやステッピングモーターなどの位置制御可能なモーター)やカム機構など、別の駆動源や機構を用いてもよい。
【0039】
取付ロッド61の下部には、取付治具(不図示)により、第1偏光板30の上部が脱着可能に装着される。第1偏光板30は、プリフォームPの中心軸C上に延びるように配置される。一方、取付ロッド61の上部は、エアシリンダ62に取り付けられている。エアシリンダ62は、制御部54の制御により動作し、取付ロッド61を中心軸Cの方向に上下させる。したがって、エアシリンダ62の動作によって、取付ロッド61の下部に装着された第1偏光板30が中心軸C方向に上下に移動可能となることから、第1偏光板30のプリフォームPへの出し入れが可能となる。
【0040】
エアシリンダ62は通常、ストローク量を機械的に規制されているだけだが、さらに、エアシリンダ62の動作を制御することで、プリフォームPへの第1偏光板30の挿入量をコントロールすることができる。すなわち、プリフォームPと第1偏光板30との上下方向における相対位置を変更することができる。したがって、プリフォームPの底まで第1偏光板30を挿入することもできる一方、検査を希望する部分(検査部分)Pt(図3)に対応する高さまで挿入することもできる。プリフォームPの第1偏光板30への挿入量は、使用者が入力部51を操作して設定する。
【0041】
なお、本実施形態では、偏光板移動機構60により第1偏光板30を上下移動可能としたが、第2偏光板35についても偏光板移動機構60と同様の偏光板移動機構によって上下移動可能とすることができる。
【0042】
一方、上述のように内部に第1偏光板30が挿入されるプリフォームPは、プリフォーム回転機構70(回転手段)によって、中心軸Cの周りに回転可能である。プリフォーム回転機構70は、支持パイプ71、プーリ72、チャック部73、及び吸引バルブ74を備える(図1、図3)。
【0043】
支持パイプ71は、中空の円筒形状をなし、その中心軸がプリフォームPの中心軸Cの延長線上にあるように、プリフォームPの上方に配置される。さらに、支持パイプ71には、その内周面71aが偏光板移動機構60の取付ロッド61の外周面61aとの間に隙間G(図3)を有するように、内部に取付ロッド61が挿入される。これにより、支持パイプ71と取付ロッド61は同心状に配置される。
【0044】
支持パイプ71の下部の外周面にはプーリ72が固定されている。このプーリ72には、回転ベルト(不図示)が掛け回されている。この回転ベルトは、制御部54の制御によって駆動する回転駆動部(不図示)からの動力をプーリ72に伝達し、これにより支持パイプ71はその中心軸の周りを回転する。支持パイプ71は、一定の角度(例えば30度)ずつ順次回動することができ、一度に回動する角度は、入力部51を操作することによって設定する。
【0045】
支持パイプ71の下端にはチャック部73が、上端には吸引バルブ74が、それぞれ固定されている。チャック部73と吸引バルブ74は、支持パイプ71の内周面71aと取付ロッド61の外周面61aとの間の隙間Gを介して互いに連なっている。吸引バルブ74には、パイプ75を介して外部のポンプ76(図3)が接続されている。外部のポンプ76は、制御部54の制御により吸引動作を行い、これにより、内周面71aと取付ロッド61の外周面61aとの間の隙間G、及びチャック部73の内部を負圧とすることができる。なお、上記外部のポンプ76の制御による吸引動作の代わりに、ポンプ76を連続吸引作動させ、チャック部73との間に電磁弁(図示せず)を設けて、この電磁弁の開閉制御により、チャック部73の内部を適宜負圧にしてもよい。チャック部73の下端には、吸引口73aが設けられており、チャック部73の内部が負圧の状態で、この吸引口73aをプリフォームPの上端内部に密着配置すると、プリフォームPをチャック部73に吸着保持することができる。この吸引動作によって実現する圧力は、入力部51を操作することによって任意の値に設定することができる。このように有底筒状成形体であるプリフォームPの場合、簡便な吸引式のチャック部73を使ってプリフォームPを吸引保持することができるので好ましい。なお、他にも、機構は複雑になるが公知のグリッパー(機械式の爪でプリフォームを把持、または挟み込む機構)を用いてもよく、底無しの筒状成形体を保持する場合はこちらの方が好ましい。
【0046】
取付ロッド61は、支持パイプ71の上端から支持パイプ71内に挿入される。取付ロッド61は、支持パイプ71の上部及び下部に設けた封止部材により、吸引バルブ74と外部のポンプ76によるチャック部73内の負圧を維持しつつ、チャック部73内で上下移動可能である。また、取付ロッド61は、プリフォーム回転機構70による回転とは独立しており、プリフォーム回転機構70を回転させたとしてもプリフォーム回転機構70とともに回転することがない。
【0047】
プリフォーム回転機構70を以上のように構成したため、プリフォームPをチャック部73に吸引保持した状態で回転駆動部を動作させると、回転ベルトを介してプーリ72に動力が伝達されてプリフォーム回転機構70がその中心軸の周りに回転する。これにより、プリフォーム回転機構70と一体となってプリフォームPも中心軸Cの周りに回転する。この回転の速度及び回転角度は制御部54によって制御するする。白黒カメラ40の撮像範囲に合わせてプリフォーム回転機構70(撮像補助手段)を回転させることによって、プリフォームPを順次回転させると、複数回の回動によってプリフォームPの外周面の全周を撮像することができる。
【0048】
なお、プリフォームPの保持は、プリフォーム回転機構70のように上部を吸引保持するもののほか、例えば下部を把持するような機構によって行っても良い。この場合も、把持機構の回転によってプリフォームPがその中心軸Cの周りを回転することが好ましい。
【0049】
また、上述の説明では、プリフォーム回転機構70を用いてプリフォームPを回転させつつ白黒カメラ40で撮像することによって、プリフォームPの外周面の全周を撮像していたが、これに代えて、プリフォームPの周りを白黒カメラ40が回転する機構を設けて、プリフォームPの外周面の全周を撮像することとしてもよい。
【0050】
さらにまた、プリフォームPの中心軸Cの周りに、一定の角度間隔おきに、複数の白黒カメラを配置するとともに、各カメラとプリフォームPとの間に第2偏光板に相当する偏光板を配置すると、プリフォーム回転機構70を用いてプリフォームPを回転させる場合よりも、迅速にプリフォームPの外周面の全周を撮像することができる。
【0051】
つづいて、本実施形態の検査装置10を用いた検査方法について説明する。
まず、光源20から出射する検査光の進行方向上であって、白黒カメラ40との間の所定位置に、プリフォーム回転機構に保持された状態のプリフォームPを配置する。一方、入力部51を操作して、検査条件(例えば、検査光の種類、第1偏光板30の高さ位置、1回の撮像ごとのプリフォームPの回動角度、並びに、干渉模様解析における画像濃度及び面積の閾値)を設定する。
【0052】
次に、プリフォームPの内部に第1偏光板30を、プリフォームPと白黒カメラ40との間に第2偏光板35を、それぞれ配置する(偏光手段配置工程)。
【0053】
第1偏光板30は、偏光板移動機構60に保持された状態で、取付ロッド61を支持パイプ71内に挿入し、プリフォームP内の所定位置に至ったところで挿入を停止することによって配置する。第1偏光板30の配置は、入力部51を操作することにより開始し、予定位置に配置されたところで自動的に終了する。
【0054】
一方、第2偏光板35は、使用者による入力部51の操作により、検査装置10が備える保持具(不図示)にセットさせる。
以上により、検査光の進行方向上に、プリフォームP、第1偏光板30、及び第2偏光板35が配置される。
【0055】
この状態で、入力部51を操作することにより、光源20からプリフォームPに対して検査光を出射する(検査光照射工程)。プリフォームPに入射した検査光は、光源20側の筒状壁面を通過し、検査部分Pt(図3)においては第1偏光板30に入射し、検査部分以外の部分については第1偏光板30に入射することなく壁面を通ってプリフォームPの外部に出射する。第1偏光板30に入射した光は、第1偏光板30の偏光方向に沿って振動する光のみが通り抜ける。第1偏光板30を通り抜けた検査光は、壁面を通ってプリフォームPの外部へ出射する。
【0056】
プリフォームPからの出射光は、第2偏光板35に入射する。第2偏光板35に入射した光は、第2偏光板35の偏光方向に沿って振動する光のみが通り抜ける。第1偏光板30の偏光方向と第2偏光板35の偏光方向が互いに90度をなす場合には、第1偏光板30と第2偏光板35との間で第1偏光板30からの出射光の振動方向に変化がなければ、第2偏光板35からは光が出射することがない。
【0057】
これに対して、第1偏光板30と第2偏光板35との間で第1偏光板30からの出射光の振動方向に変化があったときは、変化のあった光が第2偏光板35を通るため、白黒カメラ40は、第1偏光板30と第2偏光板35による干渉模様を撮像することができる。撮像された干渉模様は、白黒カメラ40のCCD及び画像処理回路(不図示)によって所定の電気信号に変換されて制御ユニット50の解析部53へ出力される。
【0058】
干渉模様の撮像は、プリフォーム回転機構70によってプリフォームPを中心軸Cの周りに一定角度ずつ回動させるたびに行い、撮像された干渉模様は、撮像のたびに電気信号に変換して解析部53に出力される。プリフォームPの回動角度は白黒カメラ40の撮像範囲に対応させており、順次撮像することによってプリフォームPの外周面の全周を撮像することができる。解析部53では、入力された電気信号に基づいてプリフォームPの歪み、形状、及び外観のうち少なくとも一つを解析する(解析工程)。
【0059】
ここで、第1偏光板30と第2偏光板35との間で検査光の振動方向に変化が生じる主な要因としては、通過するプリフォームPの壁面の内部歪み、外形形状、及び、壁面内部の構造がある。これらの壁面の内部歪み、外形形状、及び、壁面内部の構造は、プリフォームPの設計上設けられたものと、成形の不具合によって生じたものと、がある。なお、プリフォームPの外形形状については、検査光の入射面が入射方向と、出射面が出射方向と、それぞれ直交する場合には検査光の振動方向に変化は生じない。
【0060】
解析部53における解析は、成形に不具合のなかったプリフォームPによる干渉模様と、検査対象とするプリフォームPによる干渉模様と、を比較することにより行う。成形に不具合のなかったプリフォームPによる干渉模様は、あらかじめ撮像して記憶部52に保存しておき、解析を行うときに制御部54が読み出す。なお、成形に不具合のなかった場合のプリフォームPによる干渉模様は、実際に成形及び撮像を行うことなく、演算手段(例えばコンピュータ)を用いたシミュレーションによって取得することもできる。
解析部53における干渉模様の比較の結果、画像濃度の相違量が所定値よりも大きく、かつ、所定以上の面積を有する部分があった場合には、その部分に歪みがあり、又は形状若しくは外観に異常があるものとして認識し、異常通知信号を制御部54へ出力する。異常通知信号を受けた制御部54は、表示部55に、異常があった旨及び異常があった位置を表示させる。
【0061】
なお、画像解析は、他にも、プリフォームPを一周以上回転させて筒部を撮像し、筒部の側面に異常がないかを、近隣部分と比較することにより解析する方法もある。図4はプリフォームPを前述の検査装置10を用いて一周回転させ、撮像した図とその輝度値をグラフ化した図であるが、例えばこの撮像した図を記憶部52に保存し、検査位置の画像データから、プリフォームPの周角度における明るさ(輝度値)を読みとって数値化し、その値を検査角度位置についてデータ化、表化、あるいは、グラフ化し、その単位周角度(幅)あたりの輝度値の増減値(傾き)を計算等から割り出し、その増減値が所定の閾値内であれば良品(;周方向について干渉模様に差がほとんどなくほぼ一様な出来)、閾値外であれば不良品(;周方向について干渉模様に差があるため、歪みなどの異常かある)と識別する。
【0062】
以上のように構成されたことから、上記実施形態によれば、次の効果を奏する。
(1)光源20として3原色を含む白色光源を用い、かつ、偏光板を、プリフォームPの内部、及び、プリフォームPの外側に1枚ずつ配置する、という簡易な構成により、プリフォームPの壁面についての干渉模様を撮像することができ、これに基づいた検査が可能になる。
(2)ポリエステル樹脂製のブロー成形容器の予備成形品(プリフォームP)に本発明を用いることにより、低温成形可能な圧縮成形品の検査が容易となるため、産業上極めて有用である。
(3)第1偏光板30をプリフォームPの内部に配置するとともに、第2偏光板35をプリフォームPの外部であってプリフォームPと白黒カメラ40との間に配置したことにより、第1偏光板30を通った光はプリフォームPの壁面を一度通るのみで第2偏光板35に至ることになる。これにより、従来のように、検査光が二枚の偏光板の間で検査対象物に複数回入射することに起因して、複数箇所の干渉模様が重なることにより撮像する干渉模様が薄くなってしまうという問題が発生することがなくなる。すなわち、検査対象となる壁面のみについての干渉模様を鮮明に撮像することができるため、干渉模様の解析に長時間を要することがなくなり、かつ、高い精度で対象部分の異常の有無及び種類を把握して、必要な対策を迅速にとることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明に係る検査装置及び検査方法は、透明又は半透明な筒状成形体の検査に有用であり、特に、樹脂を圧縮成形により成形した透明又は半透明のブロー成形容器のプリフォームに適している。他にも、射出成形によって成形したプリフォームに用いてもよいし、また、略筒状であれば、プリフォームをブロー成形後のボトル(容器)に適用してもよいし、透明または半透明であれば筒状のスパウトやストローなどに適用してもよい。さらには樹脂製に限らず、例えばガラス瓶に用いてもよい。さらにまた、測定に用いる光と撮像手段も、必要に応じて紫外、赤外などの不可視域の波長の光と、その光の輝度(強度)を検出できる手段とを組合せて用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る検査装置の構成を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る検査装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1のIII部分の要部拡大図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態に係る検査装置を用いてプリフォームPを一周回転させて撮像した図であり、(b)は、(a)に対応した周角度を横軸にとり、各周角度におけるプリフォームPの輝度値を縦軸にとったグラフである。
【符号の説明】
【0065】
10 検査装置
20 光源
30 第1偏光板(第1偏光手段)
35 第2偏光板(第2偏光手段)
40 白黒カメラ(撮像手段)
50 制御ユニット
51 入力ユニット
52 記憶部
53 解析部(解析手段)
54 制御部
60 偏光板移動機構(偏光板移動手段)
61 取付ロッド
62 エアシリンダ
70 プリフォーム回転機構(撮像補助手段、回転手段)
71 支持パイプ
72 プーリ
73 チャック部
74 吸引バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明な筒状成形体の検査装置であって、
前記筒状成形体に対して検査光を照射する光源と、
前記筒状成形体の内部に配置した第1偏光手段と、
前記筒状成形体の外部であって、前記検査光の進行方向上に配置した第2偏光手段と、
前記検査光が前記第1偏光手段及び前記第2偏光手段を通ることによって生ずる干渉模様を撮像する撮像手段と、
前記干渉模様に基づいて前記筒状成形体の歪み、形状、及び外観のうち少なくとも一つを解析する解析手段と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第1偏光手段及び前記第2偏光手段は、それぞれ、少なくとも1枚の偏光板を備える請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第1偏光手段に含まれる偏光板の少なくとも1枚が備える偏光方向と、前記第2偏光手段に含まれる偏光板の少なくとも1枚が備える偏光方向は互いに90度をなす請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第2偏光手段は、前記光源と前記筒状成形体との間、又は、前記筒状成形体と前記撮像手段との間に配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記筒状成形体と、前記第1偏光手段に含まれる偏光板の少なくとも1枚との相対位置を変更する偏光板移動手段を備える請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記筒状成形体は樹脂の圧縮成形により成形する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記偏光方向は、前記圧縮成形の成形方向に対して45度をなす請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記筒状成形体は有底である請求項6又は請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記筒状成形体はポリエステル樹脂の成形により成形される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項10】
前記筒状成形体は、ブロー成形容器のプリフォームである請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項11】
前記撮像手段が前記筒状成形体の全周を撮像可能とする撮像補助手段を備える請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項12】
前記撮像補助手段は、前記筒状成形体をその中心軸の周りに回転させる回転手段を備える請求項11に記載の検査装置。
【請求項13】
前記光源は、前記筒状成形体のうち、少なくとも検査部分に前記検査光を照射する請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項14】
前記検査光は3原色を含む白色光である請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項15】
前記撮像手段は白黒画像を撮像するCCDである請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項16】
透明又は半透明な筒状成形体を検査する検査方法であって、
前記筒状成形体の内部に第1偏光手段を、前記筒状成形体の外部であって、前記検査光の進行方向上に第2偏光手段を、それぞれ配置する偏光手段配置工程と、
前記筒状成形体に対して検査光を照射する検査光照射工程と、
前記検査光が前記第1偏光手段及び前記第2偏光手段を通ることによって生ずる干渉模様を撮像する干渉模様撮像工程と、
前記干渉模様に基づいて前記筒状成形体の歪み、形状、及び外観のうち少なくとも一つを解析する解析工程と、
を備えることを特徴とする検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−85597(P2009−85597A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251617(P2007−251617)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】