説明

検知装置および方法

【課題】簡単な構成で、確実に漏電を検出するとともに、より安全性を高めることができるようにする。
【解決手段】バンドパスフィルタ62乃至平滑回路64により、抵抗54に流れる信号のうち、10Hzの周波数の信号成分であって、発振回路61が出力する三角波の成分の検出が行なわれる。三角波の成分が検出された場合、コンパレータ回路65の出力がONとなる。三角波の成分が検出されない場合、漏電が発生したと考えられる。バンドパスフィルタ66乃至平滑回路68により、抵抗54に流れる信号のうち、50Hz/60Hzの周波数の信号成分であって、リップル成分の検出が行なわれる。リップル成分が検出された場合、コンパレータ回路69の出力がONとなる。リップル成分が検出されない場合、断線が発生したと考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知装置および方法に関し、特に、簡単な構成で、確実に漏電を検出するとともに、より安全性を高めることができるようにする検知装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年電気自動車の普及がめざましい。電気自動車に搭載されるモータは、高電圧のバッテリを使用している。そのため、安全性の点から、バッテリとその高電圧が印加されるインバータ回路部及びモータ巻線が一般に車体(対地)から絶縁され、さらに、直流電源又はインバータ回路部又はモータと車体間の絶縁不良を検出する回路が設けられている。
【0003】
このような、絶縁不良を検出する回路として、例えば、電動車両の電気系統における漏電を検出する漏電検出装置が開発されている。しかし、漏電検出装置と電動車両の電気系統と接続するケーブルなどが断線した場合、漏電の検出ができなくなってしまう。
【0004】
そこで、漏電検出装置の断線を、検出部が接続される電線上に接続されたモータのPWMキャリア周波数を検出して断線を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第4133601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、PWM周波数が変更になった場合、その周波数を透過するためのバンドパスフィルタを変更しなければならない。また、モータ動作はIG ONしなければ動作しないので車両停止時には断線を検出することができない。
【0007】
また、例えば、強制的に絶縁を低下させるプリチェック機能を漏電センサの機能の外に追加し、上位ECU(BMU)でプリチェック動作させたときに漏電センサが漏電を検出しなければ、断線またはセンサ異常と判断する方式もある。ただし、このような場合、プリチェック機能を漏電センサと独立させる必要があるため配線が増えたり、独立して取り付けるためのコスト増、重量増などを招く。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、確実に漏電を検出するとともに、より安全性を高めることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による検知装置は、第1の周波数の交流電源を用いた充電器によるバッテリの充電中の漏電を検知する検知装置であって、バッテリの充電中に第1の信号成分および第2の信号成分が検出されたか否かを判定する判定手段を備え、判定手段により、第1の周波数の信号成分が検出されなかった場合、自分の異常を通知する信号を出力し、判定手段により、第1の周波数の信号成分が検出され、かつ第2の周波数の信号成分が検出されなかった場合、漏電の発生を通知する信号を出力する。
【0010】
本発明の検知装置においては、バッテリの充電中に第1の信号成分および第2の信号成分が検出されたか否かが判定され、第1の周波数の信号成分が検出されなかった場合、自分の異常を通知する信号が出力され、第1の周波数の信号成分が検出され、かつ第2の周波数の信号成分が検出されなかった場合、漏電の発生を通知する信号が出力される。
【0011】
従って、断線により漏電センサが正常に稼動しない状態であること、ユーザに通知することが可能となる。
【0012】
第2の周波数で発振する発振器をさらに備え、判定手段は、第1の周波数の信号を通過させる第1のバンドパスフィルタと、第2の周波数の信号を通過させる第2のバンドパスフィルタと、第1のバンドパスフィルタを通過した信号の振幅レベルの大きさが第1の閾値を超えるか否かを判定する第1のコンパレータと、第2のバンドパスフィルタを通過した信号の振幅レベルの大きさが第2の閾値を超えるか否かを判定する第2のコンパレータとを備えるようにすることができる。
【0013】
前記発振器から出力される信号は、前記第2のバンドパスフィルタに接続された抵抗と、前記バッテリとの接続端に設けられたコンデンサに同時に供給されるようにすることができる。
【0014】
前記第2の閾値が前記第1の閾値より小さく設定されているようにすることができる。
【0015】
本発明による検知方法は、第1の周波数の交流電源を用いた充電器によるバッテリの充電中の漏電を検知する検知装置の検知方法であって、前記バッテリの充電中に前記第1の信号成分および前記第2の信号成分が検出されたか否かを判定し、前記第1の周波数の信号成分が検出されなかった場合、自分の異常を通知する信号を出力し、前記第1の周波数の信号成分が検出され、かつ第2の周波数の信号成分が検出されなかった場合、漏電の発生を通知する信号を出力するステップを含む。
【0016】
本発明の検知方法においては、バッテリの充電中に第1の信号成分および第2の信号成分が検出されたか否かが判定され、第1の周波数の信号成分が検出されなかった場合、自分の異常を通知する信号が出力され、第1の周波数の信号成分が検出され、かつ第2の周波数の信号成分が検出されなかった場合、漏電の発生を通知する信号が出力される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡単な構成で、確実に漏電を検出するとともに、より安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明を適用した漏電センサ、BMU(Battery Management Unit)を搭載した車両のバッテリ周辺の回路の構成の例を示している。
【0020】
図1の車両1は、バッテリ13を動力源とする電動車両である。車両1のバッテリ13の充電は、急速充電および通常充電の2種類の充電方法により行うことができる。急速充電は、車両1のバッテリ13を専用の急速充電装置(不図示)に接続し、短時間で充電を行う充電方法である。一方、通常充電は、専用の充電ケーブルを介して、車両1の車載充電器11を一般家庭やオフィスなどにある標準的なコンセント(英語でOutlet)に接続し、接続したコンセントの先にある電源から供給される電力を用いて、車載充電器11がバッテリ13の充電を行う充電方法である。
【0021】
BMU(Battery Management Unit)12は、車載充電器11および急速充電装置とCAN(Controller Area Network)に準拠した通信を行い、バッテリ13の通常充電および急速充電の制御を行う。また、BMU12は、ECU17などの車両1の他の車載部品ともCANに準拠した通信を行う。
【0022】
バッテリ13の電力は、インバータ14により直流から交流に変換され、車両1の走行を駆動するモータ15に供給される。また、バッテリ13の電力は、DC/DCコンバータ(以下、DC/DCと略する)16により、所定の電圧に変換され、ECU(Electronic Control UnitまたはEngine Control Unit)17などの直流電力で駆動される車載部品に供給される。
【0023】
表示部18は、例えば、カーナビケーション装置のモニタ、インストルメントパネル、または、専用のモニタなどにより構成され、ECU17の制御の基に、各種の情報を表示する。
【0024】
入力部19は、例えば、各種のスイッチ、ボタン、キーなどの入力装置により構成される。ユーザは、入力部19を操作することにより、各種の指令をECU17に与える。ECU17は、必要に応じて、与えられた指令をBMU12などの他の車載部品に供給したり、与えられた指令に基づいて、他の車載部品の制御を行ったりする。
【0025】
なお、図示していないが、表示部18および入力部19も、バッテリ13の電力を利用して動作する。
【0026】
漏電センサ20は、後述するように漏電を検出し、BMU12に漏電の発生を通知する信号を供給する。モータ15は、高電圧のバッテリ13を使用しおり、安全性の点から、バッテリ13とその高電圧が印加されるインバータ14及びモータ15の巻線が車体から絶縁されている。この絶縁不良を検出するために、漏電センサ20が設けられている。
【0027】
図2は、図1の各部の電気的接続を説明する図である。なお、同図においては、モータ15、ECU17、および急速充電の接続に関する構成が省略されている。
【0028】
同図に示されるように、スイッチ31とスイッチ32を閉じることで、車載充電器11によるバッテリ13の充電が行なわれるようになされている。上述したように、車載充電器11は、一般家庭やオフィスなどにある標準的なコンセントの先にある電源から供給される電力を用いてバッテリ13の充電を行なうので、車載充電器11には、60Hzまたは50Hz(図には60Hz/50Hzと表記)の交流電流が供給されることになる。
【0029】
また、スイッチ33とスイッチ34を閉じることにより、車載充電器11からDC/DCに電力を供給することもできるようになされている。
【0030】
また、図2のバッテリ21は、BMU12およびDC/DC16に電力を供給するバッテリである。バッテリ21は、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどを動力源とする自動車において、従来より搭載されているバッテリと同様のものである。
【0031】
BMU12には、漏電センサ20が接続されている。漏電センサ20は、バッテリ13の負極に接続され、BMU12を介してボディアースに接続されている。
【0032】
上述したように、安全性の点から、バッテリ13は車体から絶縁されており、図2においては、擬似的に抵抗41によりバッテリ13がボディアース(すなわち車体)から絶縁されていることが表されている。バッテリ13と車体との絶縁が劣化した場合、漏電が発生する。すなわち、抵抗41の抵抗値が所定の値より小さくなると、バッテリ13がボディアースに接続されることとなり、漏電が発生するのである。
【0033】
漏電センサ20は、バッテリ13と車体との絶縁劣化を検出することで、漏電の発生を検知するようになされており、漏電を検知した場合、その旨を表す信号をBMU12に出力するようになされている。
【0034】
しかしながら、漏電センサ20とバッテリ13との接続部分が断線してしまった場合、漏電センサ20は、漏電の発生を検知することができない。すなわち、漏電センサ20とバッテリ13との接続部分が断線してしまった場合、実際には漏電が発生しているのにも係らず、BMU12に漏電の発生が通知されないこととなり危険である。
【0035】
そこで、本発明においては、漏電センサ20が漏電の発生の検知だけでなく、漏電センサ20とバッテリ13との接続部分の断線も検知できるようになされている。
【0036】
図3は、図1の漏電センサ20の構成例を示す回路図である。なお、同図においては、車載充電器11およびバッテリ13の構成も示されている。
【0037】
同図の車載充電器11に設けられた力率改善回路は、入力電流を半サイクル毎に交流電源の入力電圧と相似形の正弦波にすることで力率を改善するものである。また、スイッチング回路は、MOSFET(Metallic Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などを用いて構成されるフルブリッジ、ハーフブリッジによって100kHz乃至140kHzの周波数でスイッチングされ、トランスパルスを生成する。さらに、整流回路は、スイッチング回路により生成されたトランスパルスをトランスによって変圧し、平滑化することで200V乃至400Vの直流電圧を出力するものである。
【0038】
バッテリ13の負極側は、漏電センサ20のコンデンサ52とプリチェック回路51に接続されている。
【0039】
プリチェック回路51は、スイッチを閉じることでコンデンサ52の右端部をボディアースに接続するようになされている。すなわち、プリチェック回路51は、スイッチを閉じることで強制的にバッテリ13と車体との絶縁劣化を生じさせ、漏電を発生させるものである。従って、例えば、ユーザがプリチェック回路のスイッチを操作することにより、漏電センサ20が漏電の発生を検知してBMU12に信号を出力するか否かをテストすることが可能となる。
【0040】
コンデンサ52の左端部には、抵抗53と抵抗54が接続されている。抵抗54の抵抗値は、プリチェック回路51の抵抗値より充分大きいものとされる。
【0041】
抵抗53の左端部には、発振回路61が接続されている。発振回路61は、例えば、10Hzの三角波を発生させるようになされている。
【0042】
抵抗54には、バンドパスフィルタ62とバンドパスフィルタ66が接続されている。
【0043】
バンドパスフィルタ62は、抵抗54に流れる信号のうち、10Hzの周波数の信号のみを通過させて、整流回路63に出力する。
【0044】
整流回路63は、バンドパスフィルタ62から供給される信号を、例えば、単相ブリッジ整流により整流して平滑回路64に出力する。
【0045】
平滑回路64は、整流回路63から供給される信号を平滑化することにより得られる電圧を、コンパレータ回路65に出力する。
【0046】
コンパレータ回路65は、平滑回路64から供給される電圧を予め設定された基準電圧と比較し、比較結果を表す信号をBMU12に出力するようになされている。
【0047】
バンドパスフィルタ66は、抵抗54に流れる信号のうち、50Hz乃至120Hzの周波数の信号のみを通過させて、整流回路67に出力する。
【0048】
整流回路67は、バンドパスフィルタ66から供給される信号を、例えば、単相ブリッジ整流により整流して平滑回路68に出力する。
【0049】
平滑回路68は、整流回路67から供給される信号を平滑化することにより得られる電圧を、コンパレータ回路69に出力する。
【0050】
コンパレータ回路69は、平滑回路68から供給される電圧を予め設定された基準電圧と比較し、比較結果を表す信号をBMU12に出力するようになされている。
【0051】
バンドパスフィルタ62乃至コンパレータ回路65により、10Hzの周波数の信号であって、その振幅が所定の値より大きいものが抵抗54上に流れている場合、例えば、検出結果(コンパレータ回路69の出力)としてONがBMU12に出力されるようになされている。
【0052】
また、バンドパスフィルタ66乃至コンパレータ回路69により、50Hz乃至120Hzの周波数の信号であって、その振幅が所定の値より大きいものが抵抗54上に流れている場合、例えば、検出結果(コンパレータ回路65の出力)としてONがBMU12に出力されるようになされている。
【0053】
図4は、発振回路61が出力する三角波の例を示す図である。同図は横軸が時間とされ、縦軸が信号の振幅レベルとされる。この三角波は、例えば、10Hzの周波数の信号として抵抗54上に流れることになる。
【0054】
ところで、図3の車載充電器11においては、整流回路により、スイッチング回路により生成されたトランスパルスが平滑化されるものの、バッテリ13との接続線上では、交流電源の周波数(50Hz/60Hz)の2倍の周期での電圧の変化が生じる。このため、コンデンサ52の右端部においても100Hz/120Hzの周期で電圧の変化が生じており、これにより、抵抗54上に流れる信号にACリップル成分が加わることになる。このACリップル成分により、抵抗54上に流れる信号の波形は、図5に示されるようなものとなる。
【0055】
図5は、発振回路61が出力する三角波に、上述したACリップル成分が加わった波形の例を示す図である。同図は横軸が時間とされ、縦軸が信号の振幅レベルとされる。この例では、図4に示される三角波に、100Hz/120Hzの周期で変化する小さい振幅が加えられている。すなわち、図5においては、比較的大きい周期(10Hz)で変化する三角波が比較的小さい周期(100Hz/120Hz)で変化する小さな振幅を伴った線により描かれている。この比較的小さい周期で変化する小さな振幅がACリップル成分である。従って、車載充電器11によりバッテリ13の充電が行なわれているとき、図5に示されるような波形の信号が抵抗54上に流れていることになる。
【0056】
図5に示されるような波形の信号が抵抗54上に流れている場合、バンドパスフィルタ62により、10Hzの周波数の信号が透過させられ、整流回路63の処理を経て平滑回路64から図5に示される波形の振幅のレベルに対応する電圧が出力される。この場合、ちょうど図4に示される三角波が整流されて平滑化された電圧が出力されることになる。図4に示される三角波が整流されて平滑化された電圧が供給された場合、コンパレータ回路65の出力はONとなる。すなわち、コンパレータ回路65に予め設定された基準電圧は、図4に示される三角波が整流されて平滑化された電圧よりやや低い電圧とされ、平滑回路64から供給される電圧が基準電圧より高いため、コンパレータ回路65の出力がONとなる。
【0057】
また、図5に示されるような波形の信号が抵抗54上に流れている場合、バンドパスフィルタ66により、50Hz乃至120Hzの周波数の信号が透過させられ整流回路67に出力される。いまの場合、図5に示される波形から上述したACリップル成分のみが抽出されて整流回路67に供給され、整流されることになる。そして、平滑回路68から図5に示される波形のACリップル成分の振幅のレベルに対応する電圧が出力される。図5に示される波形のACリップル成分が整流されて平滑化された電圧が供給された場合、コンパレータ回路69の出力はONとなる。すなわち、コンパレータ回路65に予め設定された基準電圧は、図5に示されるACリップル成分が整流されて平滑化された電圧よりやや低い電圧とされ、平滑回路68から供給される電圧が基準電圧より高いため、コンパレータ回路69の出力がONとなる。
【0058】
いま、図3の回路において漏電が発生した場合を考える。図3の回路においては、漏電が発生した状態を、図3のプリチェック回路51のスイッチが閉じられたものと擬制することができる。
【0059】
図3のプリチェック回路51のスイッチが閉じられた場合、発振回路61から出力される信号は、プリチェック回路51の抵抗と抵抗54により分圧され、発振回路61から出力される信号の電力は、プリチェック回路51の抵抗と抵抗54に供給されることになる。上述したように、抵抗54の抵抗値は、プリチェック回路51の抵抗の抵抗値より充分大きいので、プリチェック回路51のスイッチが閉じられた場合、抵抗54上に流れる信号の振幅レベルは、例えば、図4の場合と比較すると、充分小さいものとなる。
【0060】
しかし、図3のプリチェック回路51のスイッチが閉じられた場合でも、抵抗54上に流れる信号に加わるACリップル成分の振幅の大きさにはほとんど変化がない。
【0061】
図6は、図3のプリチェック回路51のスイッチが閉じられた場合、抵抗54上に流れる波形の例を示す図である。同図は横軸が時間とされ、縦軸が信号の振幅レベルとされる。図6の波形は、図5の場合と比較して比較的大きい周期(10Hz)の振幅レベルが小さくなっている。一方、図6の波形も、図5の場合と同様にACリップル成分が加えられている。
【0062】
図6に示されるような波形の信号が抵抗54上に流れている場合、バンドパスフィルタ62により、10Hzの周波数の信号が透過させられ、整流回路63の処理を経て平滑回路64から図5に示される波形の振幅のレベルに対応する電圧が出力される。いまの場合、平滑回路64から供給される電圧が基準電圧より低いため、コンパレータ回路65の出力はOFFとなる。
【0063】
コンパレータ回路65の出力がOFFである場合、BMU12には、漏電の発生が検知されたことが通知されるのである。
【0064】
また、図6に示されるような波形の信号が抵抗54上に流れている場合、バンドパスフィルタ66により、50Hz乃至120Hzの周波数の信号が透過させられ整流回路67に出力される。いまの場合、図6に示される波形から上述したACリップル成分のみが抽出されて整流回路67に供給され、整流されることになる。そして、平滑回路68から図6に示される波形のACリップル成分の振幅のレベルに対応する電圧が出力される。図6の場合も、平滑回路68から供給される電圧が基準電圧より高いため、コンパレータ回路69の出力がONとなる。
【0065】
これに対して、図3の回路において断線が発生した場合を考える。例えば、図3の回路において、バッテリ13とコンデンサ52を接続する導線が断線したものとする。
【0066】
バッテリ13とコンデンサ52を接続する導線が断線した場合、コンデンサ52の右端部においても100Hz/120Hzの周期で電圧の変化が生じないことになるので、抵抗54上を流れる信号に上述したACリップル成分が加えられないことになる。すなわち、バッテリ13とコンデンサ52を接続する導線が断線した場合、抵抗54上には、図4に示されるような波形の信号が流れることになる。
【0067】
図4に示されるような波形の信号が抵抗54上に流れている場合、バンドパスフィルタ62により、10Hzの周波数の信号が透過させられ、整流回路63の処理を経て平滑回路64から図5に示される波形の振幅のレベルに対応する電圧が出力される。この場合、平滑回路64から供給される電圧が基準電圧より高いため、コンパレータ回路65の出力がONとなる。
【0068】
また、図4に示されるような波形の信号が抵抗54上に流れている場合、バンドパスフィルタ66により透過させられる信号(ACリップル成分)がないので、当然、平滑回路68から供給される電圧が基準電圧より低くなり、コンパレータ回路69の出力はOFFとなる。
【0069】
このように、本発明においては、コンパレータ回路69の出力がOFFである場合、BMU12には、断線が検知されことが通知されるのである。例えば、断線が検知された場合、漏電センサ20による漏電の発生の検知は信頼できないものとなるので、BMU12は、コンパレータ回路65の出力を無視するようになされている。
【0070】
つまり、BMU12は、コンパレータ回路69の出力がONであり、かつコンパレータ回路65の出力がONである場合、漏電の発生はなかったものとして充電の制御を行なうのである。また、BMU12は、コンパレータ回路69の出力がONであり、かつコンパレータ回路65の出力がOFFである場合、漏電の発生があったものとして充電の制御を行なうのである。さらに、BMU12は、コンパレータ回路69の出力がOFFである場合、コンパレータ回路65の出力の如何に係らず、漏電センサ20の異常が発生したものとして充電の制御を行なうのである。
【0071】
次に、図7のフローチャートを参照してBMU12による漏電検出処理について説明する。
【0072】
ステップS11において、BMU12は、現在、一般家庭やオフィスなどにある標準的なコンセントの先にある電源(ここでは家庭用電源と表記)から供給される電力を用いてバッテリ13の充電中であるか否かを判定する。家庭用電源での充電中であるか否かは、例えば、車載充電器11から出力される信号などに基づいて判断される。
【0073】
ステップS11において、家庭用電源での充電中であると判定された場合、処理は、ステップS12に進む。
【0074】
ステップS12において、BMU12は、ACリップル成分の検出結果をチェックする。このとき、例えば、図3のコンパレータ回路69の出力がチェックされることになる。
【0075】
ステップS13において、BMU12は、ACリップル成分が検出されたか否かを判定する。上述したように、図5または図6に示されるような波形の信号が抵抗54上に流れている場合、コンパレータ回路69の出力はONとなる。従って、ステップS13では、例えば、コンパレータ回路69の出力がONである場合、ACリップル成分が検出されたと判定され、処理は、ステップS14に進む。
【0076】
ステップS14において、BMU12は、三角波の検出結果をチェックする。このとき、例えば、図3のコンパレータ回路65の出力がチェックされることになる。
【0077】
ステップS15において、BMU12は、三角波が検出されたか否かを判定する。上述したように、図6に示されるような波形の信号が抵抗54上に流れている場合、コンパレータ回路65の出力はOFFとなる。従って、ステップS15では、例えば、コンパレータ回路65の出力がOFFである場合、三角波が検出されなかったと判定され、処理は、ステップS17に進む。また、上述したように、コンパレータ回路65の出力はOFFである場合、漏電が発生していることになる。
【0078】
ステップS17において、BMU12は、漏電発生対応処理を実行する。このとき、例えば、充電が中止されるように、バッテリ13の制御が行なわれる。
【0079】
ステップS15において、BMU12は、三角波が検出されたと判定された場合、すなわち、例えば、コンパレータ回路65の出力がONである場合、処理は終了する。
【0080】
一方、上述したように、例えば、図4に示されるような波形の信号が抵抗54上に流れている場合、コンパレータ回路69の出力はOFFとなる。従って、ステップS13では、コンパレータ回路69の出力がOFFである場合、ACリップル成分が検出されなかったと判定され、処理は、ステップS16に進む。
【0081】
ステップS16において、BMU16は、漏電センサ異常対応処理を実行する。このとき、例えば、充電の中止の制御、または、ユーザに漏電センサの断線の有無を確認するように促すメッセージの表示の制御などの処理が実行されることになる。
【0082】
また、ステップS11において、家庭用電源での充電中ではないと判定された場合、処理は終了する。
【0083】
このようにして漏電検出処理が実行される。
【0084】
本発明においては、家庭用電源の交流周波数に基づいて生成されるACリップル成分の検出結果に基づいて断線を検出するようにしたので、例えば、モータを動作させるなどすることなく断線を検出することができる。
【0085】
また、本発明においては、漏電センサ自身が断線を検出可能な構成とすることができるので、低コストで断線検出機能を追加でき、重量も殆ど増加しない。
【0086】
その結果、簡単な構成で、確実に漏電を検出するとともに、より安全性を高めることができる。
【0087】
また、漏電センサ20を、マイクロコンピュータを用いて構成するようにすることも可能である。
【0088】
図8は、図3に示した漏電センサ20の別の構成例を示す回路図である。同図の例において、図3と対応する部分には同一の符号が付されており、それらの部分の動作は、図3の場合と同様である。
【0089】
図8の例では、図3の場合と異なり、漏電センサ20にマイクロコンピュータ80が設けられている。この例では、抵抗53の左端部がマイクロコンピュータ80のインタフェース(I/F)82に接続され、バンドパスフィルタ62とバンドパスフィルタ66の出力がマイクロコンピュータ80のADC(Analog-to-Digital Converter)に供給されるようになされている。マイクロコンピュータ80には、発振回路61が設けられており、発振回路61が発生する10Hzの三角波は、I/F82から出力される。
【0090】
マイクロコンピュータ80は、例えば、ROM85に記憶されているプログラムをRAM86にロードしてCPU81実行することにより、上述した三角波の検出、およびACリップル成分の検出の処理を実行する。
【0091】
そして、CPU81の処理により得られた検出結果を表す信号が、例えば、2ビットのデジタル信号としてI/F87からBMU12に出力されるようになされている。
【0092】
このように、マイクロコンピュータを用いて図3の場合と同様の機能を有する漏電センサを構成することが可能である。
【0093】
以上においては、発振回路61が三角波を出力するものとして説明したが、例えば、発振回路61が正弦波を出力するようにしてもよい。
【0094】
本明細書において上述した一連の処理を実行するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明を適用したBMUを搭載した車両のバッテリ周辺の回路の構成の例を示す図である。
【図2】図1の各部の電気的接続を説明する図である。
【図3】図1の漏電センサの構成例を示す回路図である。
【図4】発振回路が出力する三角波の例を示す図である。
【図5】ACリップル成分が加えられた三角波の例を示す図である。
【図6】漏電発生時の波形の例を示す図である。
【図7】漏電検出処理を説明するフローチャートである。
【図8】図3の漏電センサの別の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
11 車載充電器,
12 BMU,
13 バッテリ,
14 インバータ,
15 モータ,
16 DC/DC,
17 ECU,
20 漏電センサ,
51 プリチェック回路,
61 発振回路,
62,66 バンドパスフィルタ,
63,67 整流回路,
64,68 平滑化回路,
65,69 コンパレータ回路,
80 マイクロコンピュータ,
81 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数の交流電源を用いた充電器によるバッテリの充電中の漏電を検知する検知装置であって、
前記バッテリの充電中に前記第1の信号成分および前記第2の信号成分が検出されたか否かを判定する判定手段を備え、
前記判定手段により、前記第1の周波数の信号成分が検出されなかった場合、自分の異常を通知する信号を出力し、
前記判定手段により、前記第1の周波数の信号成分が検出され、かつ第2の周波数の信号成分が検出されなかった場合、漏電の発生を通知する信号を出力する
検知装置。
【請求項2】
前記第2の周波数で発振する発振器をさらに備え、
前記判定手段は、
前記第1の周波数の信号を通過させる第1のバンドパスフィルタと、
前記第2の周波数の信号を通過させる第2のバンドパスフィルタと、
前記第1のバンドパスフィルタを通過した信号の振幅レベルの大きさが第1の閾値を超えるか否かを判定する第1のコンパレータと、
前記第2のバンドパスフィルタを通過した信号の振幅レベルの大きさが第2の閾値を超えるか否かを判定する第2のコンパレータと
を備える請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記発振器から出力される信号は、前記第2のバンドパスフィルタに接続された抵抗と、前記バッテリとの接続端に設けられたコンデンサに同時に供給される
請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記第2の閾値が前記第1の閾値より小さく設定されている
請求項2に記載の検知装置。
【請求項5】
第1の周波数の交流電源を用いた充電器によるバッテリの充電中の漏電を検知する検知装置の検知方法であって、
前記バッテリの充電中に前記第1の信号成分および前記第2の信号成分が検出されたか否かを判定し、
前記第1の周波数の信号成分が検出されなかった場合、自分の異常を通知する信号を出力し、
前記第1の周波数の信号成分が検出され、かつ第2の周波数の信号成分が検出されなかった場合、漏電の発生を通知する信号を出力するステップ
を含む検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−151595(P2010−151595A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329683(P2008−329683)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】