説明

樹脂およびフィラーを含有する高充填複合材料

高充填複合材料は、熱可塑性樹脂と自己造粒性押出物が押出機バレルを出るのに十分なフィラーとを多軸スクリュー押出機によって押し出すことによって形成される。押出機は出口マニホールド、ストランドダイまたはブレーカープレートなしで運転される。押出物は不規則な形状の顆粒を形成する。顆粒は、圧縮、射出または圧縮−射出成形によって燃料電池セパレータープレートおよびエンドプレートのような高充填成形物品を形成するのに使用することができる成形用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高充填複合材料におよびそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は典型的には熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを含有する高充填複合材料から製造されたエンドプレートとセパレータープレートとを用いて構築される。かかる複合材料を記載する参考文献には、米国特許第5,798,188号明細書、同第6,083,641号明細書、同第6,180,275号明細書、同第6,251,978号明細書および同第6,261,495号明細書;米国特許出願公開第2002/0039675 A1号明細書;欧州特許出願公開第1 059 348 Al号明細書;特開平8−1663号公報、特開2000−200142号公報、特開2000−348739号公報および特開2001−122677号公報;台湾特許出願第434930号明細書ならびにPCT特許出願国際公開第97/50138号パンフレット、同第97/50139号パンフレット、同第00/30202号パンフレット、同第00/30203号パンフレット、同第00/44005号パンフレットおよび同第01/89013号パンフレットが含まれる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
多くの研究者が燃料電池セパレータープレートおよび他の導電性部品の圧縮または射出成形に使用できる成形用組成物を探求してきた。例えば、上述の参考文献の幾つかで、熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを押出機で組み合わせ、ペレタイザーを用いて押出機からのアウトプットをペレットへ変換し、このように形成されたペレットを好適な成形装置に供給することによって高充填複合材料のペレットが形成されている。ペレットは典型的にはかなり規則的な形状、例えば、円筒形を有する。熱可塑性樹脂と導電性フィラーとを含有するそれほど高充填ではないペレット、例えば、セラニーズAGのチコナ・ディビジョン(Ticona Division of Celanese AG)から商業的に入手可能な、ベクトラ(VECTRA)(商標)A230炭素繊維強化液晶ポリマーはまた商業的に入手可能である。特開平8−1663号公報は、ダイおよびブレーカープレートなしで運転される押出機を用いるフレーク形ペレットの調製を報告している。米国特許出願公開第2002/0039675 A1号明細書は、より微細な粒子と混合されていてもよい、および好ましくはそれから分離されるペレットの調製を報告している。
【0004】
本発明者らは、出口マニホールド(いわゆる「8−0」アダプター)、ダイ、ブレーカープレートまたはペレタイザーなしで運転される多軸スクリュー押出機で熱可塑性樹脂とフィラー(例えば、導電性フィラー)とを組み合わせることによって特に有用な成形用組成物が形成され得ることを見いだした。生じた押出物は「自己造粒性」であり、または「自己造粒する」であろう、すなわち、押出物は、ペレットまたは他の造形粒子を形成するためのペレット化、チョッピング、粉砕、粗砕または他の微粉砕技術を必要とすることなく不規則な形状の顆粒として押出機バレルを出るであろう。自己造粒性押出物は、ペレット化する必要がなく、好ましい実施形態ではそれは容易にペレット化できないほど十分に高充填されている。押出物はより微細な粒子の分離および除去によって分級する必要がなく、好ましい実施形態ではそのように分級されない。押出物は、造形物品を成形するための熱可塑性複合材料として、その押し出されたままの自己造粒した形態で使用することができる。このように、本発明は、一態様では、
a)熱可塑性樹脂と、
b)自己造粒性押出物が押出機バレルを出るのに十分なフィラーと、
を多軸スクリュー押出機によって押し出す工程を含む熱可塑性複合材料顆粒の形成方法を提供する。
【0005】
別の態様では、本発明は、熱可塑性樹脂とフィラーとを含有する不規則な形状の顆粒のブレンドを含む自己造粒性の熱可塑性複合材料を提供する。
【0006】
熱可塑性複合材料顆粒の好ましい実施形態は、圧縮成形、射出成形または圧縮−射出成形によって高充填物品(例えば、燃料電池セパレータープレートおよびエンドプレート)を形成するための成形用コンパウンドとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施では、「不規則な形状の」顆粒は、その大部分がペレット化された押出熱可塑性樹脂に特徴的に見いだされる規則的な円筒形状を持たない顆粒である。
【0008】
図1は、ガス拡散電極13の対の間に挟まれる、かつ、集電装置としての機能を果たすバイポーラガスセパレータープレート14間に差し入れられる一連のポリマー電解質膜12から組み立てられた典型的な燃料電池10の分解斜視図である。流体導管18および締め具19を備えたエンドプレート16は、膜12およびセパレータープレート14を一緒にスタック中に固定する。セパレータープレート14およびエンドプレート16は好ましくは本発明の熱可塑性複合材料顆粒から成形される。
【0009】
図2は、典型的な二軸スクリュー押出機20の出口端の分解斜視図である。バレル22は、2つの共回転する十分に互いに噛み合う押出機スクリュー26を含有する8の字形の穴24を有する。バレル22の出口面28は、8−0アダプターベース32と8−0アダプター34とでできている2部分出口マニホールドを出口面28に固定する締め具(図2では示されていない)を普通は収容している穴30を備えている。8−0アダプター34内の集中チャンバは、8の字形の穴24から出る対の押出物流れを単一の押出物流れに変換し、それは普通は出口36を通過する。押出物は、普通は、1つもしくはそれ以上のストランドオリフィス40を備えた押出ダイ38を通過し、次に、翼44または押出物をさらに混合するために使用されてもよい他の好適なオリフィスを備えたブレーカープレート42を通過する。次に押出物はペレタイザー46のような好適な装置によってペレット化される。
【0010】
図3は、本発明の方法を実施する際での使用のための改良された二軸スクリュー押出機の側面図である。押出機50は、図2からバレル22および二軸スクリュー26(その1つは穴24中に隠線を用いて示されている)を用いているが、8−0アダプターベース32、8−0アダプター34、ダイ38およびブレーカープレート42は取り除いた。これらの部品は押出機中で背圧を増加させ、高いフィラー配合レベルの達成を妨げ得る。これらの部品が取り除かれた場合、押出中により高いフィラー量を添加することができる。
【0011】
熱可塑性樹脂はインプット端主供給口52で押出機50に加えることができ、フィラーは供給口54および56のようなバレル22の長さに沿った1つもしくはそれ以上の場所で押出機50に加えることができる。十分なフィラーが押出機に加えられる(例えば、押出物の総重量を基準にして約40重量%もしくはそれ以上の量)という条件で、自己造粒性押出物は、それが押出機50を出る時に顆粒58を形成することができ、出口面28の下方に置かれたホッパー60中に集めることができる。自己造粒法は、ある範囲のサイズの高充填顆粒を最小の装置および加工コストで効率的に形成する。図2のペレタイザー46もまた必要とされず、顆粒58はさらに加工することなくそれらの自己造粒した状態で使用することができる。
【0012】
伝統的なペレット化された成形用組成物は典型的には非常に規則的な形状および一様なサイズ、例えば、ペレットごとにおおよそ同じサイズである円筒形または枕形を有する。本発明の自己造粒押出物は典型的には、ある範囲の形状およびサイズを有する不規則な形状の顆粒のブレンドであり、伝統的なペレット化された成形用組成物の一様な外観を欠くであろう。かかる一様でない外観にもかかわらず、自己造粒押出物は、例えば、燃料電池セパレーターおよびエンドプレートのような複雑な形状を有する高充填導電性部品を圧縮成形するための優れた成形用組成物を提供することができる。
【0013】
好適な押出機は様々な供給業者から入手可能である。必要ならば、3つ以上のスクリューを有する押出機、例えば3または4スクリュー押出機を用いることができる。当業者であれば分かるように、スクリュー構成および押出機運転条件は、用いられる材料および装置と自己造粒押出物の所望の最終用途とに依存する最適化または調節から恩恵を受けるかもしれない。代表的な押出機および押出機スクリューは、米国特許第4,875,847号明細書、同第4,900,156号明細書、同第4,911,558号明細書、同第5,267,788号明細書、同第5,499,870号明細書、同第5,593,227号明細書、同第5,597,235号明細書、同第5,628,560号明細書および同第5,873,654号明細書に示されている。
【0014】
様々な熱可塑性樹脂を本発明で使用することができる。好適な樹脂には、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリエチレンまたはポリプロピレンのようなポリオレフィンが含まれる。他の好適な樹脂は、上述の参考文献にリストされているか、または「チコナ・インプルーブ燃料電池システムズからの高性能プラスチック(High Performance Plastics from Ticona Improve Feul Cell Systems)」(セラニーズAGのチコナ・ディビジョン)のような出版物に記載されている。代表的な商業的に入手可能なポリフェニレンサルファイドには、商標フォルトロン(FORTRON)でセラニーズAGのチコナ・ディビジョンから入手可能なもの、および商標ライトン(RYTON)でシェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニーLP(Chevron Phillips Chemical Company LP)から入手可能なものが含まれる。代表的な商業的に入手可能なポリフェニレンオキシドには、商標ノリール(NORYL)でGEプラスチックス(GE Plastics)から入手可能なものが含まれる。代表的な液晶ポリマーには、商標ベクトラでセラニーズAGのチコナ・ディビジョンから入手可能なもの、商標キシダール(XYDAR)でアモコ・パーフォーマンス・プロダクツ社(Amoco Performance Products,Inc.)から入手可能なもの、および商標ゼンナイト(ZENITE)でイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.duPont de Nemours and Company)から入手可能なものが含まれる。液晶ポリマーが特に好ましい。樹脂は、ニート(すなわち、フィラーなし)形で(例えば、ベクトラA950液晶ポリマー)、または1つもしくはそれ以上のフィラーを既に含む形で(例えば、ベクトラA230・30%炭素繊維強化液晶ポリマーおよびベクトラA625・25%グラファイト充填液晶ポリマー)使用することができる。リサイクルされた自己造粒押出物(そして必要ならば、リサイクルされた、そして再びすり砕かれた、かかる押出物から製造された成形品)を好適な量で熱可塑性樹脂に添加することができる。
【0015】
様々なフィラーを、粒子、フレーク、繊維およびそれらの組合せをはじめとする様々な形で、本発明で使用することができる。カーボン(例えば、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブ)、金属(例えば、チタン、金およびニオブ)、金属炭化物(例えば、炭化チタン)、金属窒化物(例えば、窒化チタンおよび窒化クロム)ならびに金属で被覆された粒子、フレークまたは繊維(例えば、ニッケル被覆グラファイトファイバー)をはじめとする、導電性フィラーが特に好ましい。グラファイトが特に好ましい導電性フィラーである。好適な非導電性フィラーには、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、酸化亜鉛、粘土、タルク、ガラス粉末、ガラス・マイクロバブル、硫酸バリウム、プラスチックビーズ(例えば、ポリエステルまたはポリスチレンビーズ)、オレフィン−ベース繊維(例えば、ポリエチレン繊維およびポリプロピレン繊維)、アラミド繊維(例えば、ノメックス(NOMEX)(商標)またはケブラー(KEVLAR)(商標)繊維)、岩綿、ガラスフレークおよび雲母が含まれる。フィラーは様々なサイズ(例えば、粒径、繊維長さ、または繊維長さ/直径比)および様々な表面積を有することができる。例えば、グラファイト粒子が本発明で使用される時、それらは好ましくは約0.1〜約200マイクロメートル、より好ましくは約0.1〜約25マイクロメートルの粒径、およびBET法を用いて測定されるところでは約1〜約100m2/g、より好ましくは約1〜約10m2/gの表面積を有する。カーボンブラック粒子は好ましくは約1マイクロメートル未満の粒度および約500m2/gよりも大きい表面積を有する。カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブは好ましくは数ナノメートル〜数百ナノメートルの範囲の直径、および約50〜約1,500の範囲のアスペクト比を有する。
【0016】
自己造粒押出物は、非常に高いフィラー配合レベルを含むことができる。少なくとも40重量%フィラーの配合レベルが好ましく、50〜95重量%、60〜95重量%、70〜95重量%または80〜95重量%フィラーの配合レベルがより好ましい。フィラーレベルは、押出物の自己造粒が起こらないほどに低くあるべきではなく、通常の成形装置および300℃以下の温度を用いて自己支持性の単一物品へ押出物を圧縮成形できないほどに高くあるべきではない。より高い配合率では押出物は容易にペレット化できない、すなわち、そのレオロジー挙動は、押出物を、ストランドダイを通して押し出し、通常のフィラー入り熱可塑性樹脂ペレット化装置を用いてペレットへ切り刻むことができないようなものである。自己造粒押出物は典型的には顆粒のブレンドを含有し、その平均粒径は約40〜約4000マイクロメートルの範囲であってもよい。ブレンドは、単峰性または多峰性の(例えば、2峰性の)粒度分布を有することができる。押出物を篩にかけるまたは他のやり方で分級することは一般に必要ではないであろうし、それはブレンドから細粒の除去なしにそのままで成形することができる。篩にかけることなく押出物を使用できることは圧縮成形にとって特に望ましい。必要ならば、異なる重量分率のフィラーを含有する自己造粒した押出物は、例えば、乾式混合によって互いに組み合わせることができる。
【0017】
熱可塑性複合材料顆粒は、染料、顔料、指示薬、光安定剤および防火剤または難燃剤のような他の補助剤を含有してもよい。かかる補助剤のタイプおよび量は当業者によく知られているであろう。
【0018】
熱可塑性複合材料顆粒は、典型的には、それらが押出機を出た後に成形されるかまたは別のやり方でさらなる加工を受けるであろう。顆粒は圧縮または射出成形に特に好適である。好適な成形装置および条件は当業者によく知られているであろう。生じた成形されたまたは別のやり方で加工された物品は、燃料電池セパレータープレートおよびエンドプレート、バッテリー電極、医療機器電極、電磁放射線吸収材料、熱伝導性または導電性遮蔽材、トレイおよびヒートシンクをはじめとする、多種多様な用途を有する。当業者であれば分かるように、最終加工物品は、所望レベルの表面または体積抵抗率の達成次第で、中空でない、中空の、発泡したまたは他の好適な構造を有することができる。導電性物品については、ブライズ、エイ.アール.(Blythe,A.R.)著「ポリマー材料の電気抵抗率測定(Electrical Resistivity Measurements of Polymer Materials)」、ポリマー・テスティング(Polymer Testing)、4(1984)、195〜200ページに記載されている4点探触子法を用いて評価されるところでは、約0.1オーム−cm以下、より好ましくは約0.01オーム−cm以下の体積抵抗率値が好ましい。
【0019】
本発明は次の例示実施例でさらに例示され、実施例ではすべての部および百分率は特に明記しない限り重量による。
【実施例】
【0020】
実施例1
8−0アダプター、ペレット化ダイまたはブレーカープレートなしで運転される、モデルZE40A二軸スクリュー押出機(クラウス−マフェイ社のバーストーフ・ディビジョン(Berstorff division of Krauss−Maffei Corp.)から商業的な入手可能な)で、粉末化ポリフェニレンサルファイド樹脂(フォルトロンTM203B6、セラニーズAGのチコナ・ディビジョンから商業的に入手可能な)を70重量%No.8920グラファイトフレーク(シューペリア・グラファイト社(Superior Graphite Co.)から商業的に入手可能な)と二軸スクリュー配合した。押出機バレルを出ると直ぐに、押出物は自発的に顆粒サイズの範囲の不規則な形状の顆粒を形成した。個々の顆粒は主として、丸い扁平な部分、幾らかの表面筋状痕および輝く灰色外観を有する扁平な塊(chunk)であった。顆粒の不規則なサイズおよび外観にもかかわらず、それらはペレット化を受けず、代わりに、それらの押し出されたままの形で成形用組成物として評価された。加熱されたラボプレス(カーバー社(Carver,Inc.)から商業的に入手可能な)を用いて顆粒を圧縮成形した。プレスを先ず34.5MPaで300℃にした。300℃に達した後、圧力を137.9MPaに上げ、この圧力に3分間保持して顆粒を102×102×3.2mmの平らな長方形プレートに成形した。生じた成形部品は、かなり十分に形作られたコーナー付きの一様で低光沢の艶消外観を有した。
【0021】
比較例1
実施例1で使用した樹脂とグラファイトフレークとの混合物を押し出すよりもむしろ乾式ブレンドした。生じたブレンドは、カーバー・ラボプレスを用いて十分に形作られたセパレータープレートへ成形できなかった。ち密な成形品を得るためには、成形サイクルに組み入れられたブレンドの数回の添加が必要とされた。しかしながら、金型を開いた時に成形品は薄い層に裂けた。
【0022】
比較例2
マニホールドおよび1.5mm直径ダイを備えた射出成形機(エンゲル・マシーナリー社(Engel Machinery Inc.)から商業的に入手可能な150トン(Ton)成形機)の往復単軸スクリュー押出機によって実施例1で使用した樹脂とグラファイトフレークとの混合物を押し出した。押出物を、パージ操作中にまたはエアショットを行う時に通常用いられる射出サイクルの間に成形した。押し出されたストランドを約4mmの長さを有するペレットへ手動で切り刻んだ。生じたペレットは、カーバー・ラボプレスを用いて、または20MPaおよび300℃の温度で運転されるより大きな加熱された圧縮成形機(ハル社(Hull Corp.)から商業的に入手可能な)を用いて十分に形作られたセパレータープレートへ成形できなかった。成形された部品は不満足に形作られたコーナーを有し、その「カッテージチーズ」外観は部分的に溶融したペレットの突き出た断片のせいであると思われた。
【0023】
実施例2
ペレット形液晶ポリマー樹脂(ベクトラ(商標)A950、セラニーズAGのチコナ・ディビジョンから商業的に入手可能な)を実施例1で用いた二軸スクリュー押出機の入口端に加えた。押出品中70重量%グラファイト配合レベルを与えるためにNo.2937Gグラファイトフレーク(シューペリア・グラファイト社から商業的に入手可能な)を主供給口で押出機に加えた。押出機バレルを出ると直ぐに、押出物は自発的に顆粒サイズの範囲の不規則な形状の顆粒を形成した。個々の顆粒は主として、丸い扁平な部分、幾らかの表面筋状痕および輝く灰色外観を有する扁平なチャンクであった。顆粒は、4〜400メッシュ・サイズのダブリュ.エス.タイラー・シーブ・トレイ(W.S.Tyler Sieve Trays)を用いて測定したところでは約586マイクロメートルの平均直径を有した。図4にさらに例示するように、顆粒はサイズが約45マイクロメートル〜約2000マイクロメートルの範囲であり、顆粒の大部分は約250〜約2000マイクロメートルの直径を有した。一点BET試験およびモデルSA−6201表面積分析器(ホリバ・インスツルメンツ社(Horiba Instruments Inc.)から商業的に入手可能な)を用いて行う表面積測定は図4に示す各サイズ分画について行った。全体的な平均表面積は0.13m2/gであり、グラファイトフレークの50m2/g表面積をはるかに下回った。図4に示す各サイズ分画の密度は、米国材料試験協会(ASTM)方法D782−91を用いて測定したところでは、1.78g/ccの平均で1.73〜1.80g/ccの範囲であった。真空で評価した時、密度は1.84g/ccの平均で1.81〜2.09g/ccの範囲であった。これは、各分画の気孔率が著しく異なり、かつ、(成形法に依存して)導電性に影響を与えるかもしれないことを示唆する。嵩密度もまた表面積分析器用の自動タップ付属品を用いて測定した。600タップ後に、嵩密度は1.02g/ccであり、顆粒は、真空中のその1.84g/cc平均密度を基準にして平均して約45%気孔率となった。
【0024】
顆粒の不規則なサイズおよび外観にもかかわらず、それらはペレット化を受けず、代わりに、それらの押し出されたままの形で成形用組成物として評価した。顆粒を100×100×2.5mmの平らな長方形プレート金型へ注ぎ込んだ。顆粒を、比較例2で用いたハルプレス(Hull Press)を用いて300℃の温度および20MPaの圧力で圧縮成形した。生じた成形部品は、十分に形作られた鋭いエッジのコーナー付きの一様な低光沢艶消外観を有した。上述の4点探触子試験を用いて、成形部品の平均体積抵抗率は約0.274オーム−cmであると測定した。
【0025】
実施例3〜4
実施例1の方法および材料を用いて、80重量%または90重量%フィラーを含有する熱可塑性複合材料顆粒を調製し、圧縮成形して燃料電池セパレータープレートを形成した。プレートは、それぞれ、0.0996または0.02094オーム−cmの4点探触子試験平均体積抵抗率を示した。これらの値は非常に低い抵抗率を表す。
【0026】
実施例5〜11および比較例3
実施例1の方法を用いて、熱可塑性複合材料顆粒を、キシダール(商標)液晶ポリマー(アモコ・パーフォーマンス・プロダクツ社から商業的に入手可能な)と実施例1で使用したグラファイトフレークとを使用して調製した。液晶ポリマー樹脂の密度は1.38g/cm3であり、グラファイトフレーク・フィラーの密度は2.25g/cm3であった。下の表1に、実施例番号、重量パーセント・フィラー、重量パーセント樹脂、計算された押出物の密度、計算された体積パーセント・フィラー、計算された体積パーセント樹脂、および押出物の外観および成形性を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示されるように、自己造粒性押出物は非常に高いフィラー配合レベルで形成され、有用な物品へ成形することができた。
【0029】
本発明の様々な修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明は、例示目的のためだけに本明細書に述べられたものに限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】典型的な燃料電池の分解斜視図である。
【図2】典型的な二軸スクリュー押出機の出口端の分解斜視図である。
【図3】本発明の方法の実施での使用のための改良された二軸スクリュー押出機の斜視図である。
【図4】実施例2の導電性複合材料について粒度範囲を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.熱可塑性樹脂と、
b.自己造粒性押出物が押出機バレルを出るのに十分なフィラーと、
を多軸スクリュー押出機によって押し出す工程を含む熱可塑性複合材料顆粒の形成方法。
【請求項2】
前記押出機が二軸スクリュー押出機である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記押出物が成形可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記押出物が容易にペレット化できない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記樹脂がポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデンまたはポリオレフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂が液晶ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フィラーが導電性粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フィラーがカーボン、金属、金属炭化物、金属窒化物、または金属で被覆された粒子、フレークもしくは繊維を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フィラーがグラファイトを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記押出物を成形して燃料電池セパレーターまたはエンドプレートを形成する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
プレート間の少なくとも1つの膜によって分離された複数のかかるセパレータープレートを組み立てて燃料電池を形成する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フィラーが前記押出物の重量の約40〜約95パーセントである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記フィラーが前記押出物の重量の約60〜約95パーセントである、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記フィラーが前記押出物の重量の約80〜約95パーセントである、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記フィラーが非導電性粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
熱可塑性樹脂とフィラーとを含有する不規則な形状の顆粒のブレンドを含む自己造粒性の熱可塑性複合材料。
【請求項17】
前記複合材料が成形可能なものである、請求項16に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項18】
前記複合材料が容易にペレット化できないものである、請求項16に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項19】
前記樹脂がポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデンまたはポリオレフィンを含む、請求項16に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項20】
前記樹脂が液晶ポリマーを含む、請求項16に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項21】
前記複合材料が約5mm未満の直径を有する扁平な塊を含む、請求項16に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項22】
前記複合材料が約3mm未満の直径を有する扁平な塊を含む、請求項16に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項23】
前記フィラーが導電性粒子を含む、請求項16に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項24】
前記フィラーがカーボン、金属、金属炭化物、金属窒化物、または金属で被覆された粒子、フレークもしくは繊維を含む、請求項23に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項25】
前記フィラーがグラファイトを含む、請求項23に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項26】
前記フィラーが前記複合材料の重量の約40〜約95パーセントである、請求項23に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項27】
前記フィラーが前記複合材料の重量の約60〜約95パーセントである、請求項23に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項28】
前記フィラーが前記複合材料の重量の約80〜約95パーセントである、請求項23に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項29】
前記複合材料を圧縮成形することによって形成された成形物品が約0.1オーム−cm以下の体積抵抗率を有する、請求項23に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項30】
前記複合材料を圧縮成形することによって形成された成形物品が約0.01オーム−cm以下の体積抵抗率を有する、請求項23に記載の熱可塑性材料。
【請求項31】
前記フィラーが非導電性粒子を含む、請求項16に記載の熱可塑性複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−506257(P2006−506257A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553426(P2004−553426)
【出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/029591
【国際公開番号】WO2004/045820
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】