説明

樹脂フィルム加工装置

【課題】 端面処理にばらつきがなく、安定した研磨性能の樹脂フィルムを加工する加工装置を提供する。
【解決手段】 固定ステージ2にバッキングフィルム5を固定し、押圧プレート3を加熱した状態で、固定ステージ2に固定されたバッキングフィルム5に押圧し、バッキングフィルム5の端面部分を熱破壊してシーリングを行う。押圧プレート3は、プレート移動部4に、所定の傾斜角度に保持されるとともに、バッキングフィルム5の厚み方向に平行な方向に移動させてバッキングフィルム5に押圧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの端面部分を熱加工処理するための樹脂フィルム加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置用ガラス製造分野における平坦化技術は、液晶表示装置の普及に伴い必要不可欠な技術となっている。そのガラスの平坦化に大きな影響を及ぼすのがガラス研磨工程である。ガラス研磨工程においては液晶画面の大画面化によって新しい研磨品質が要求されている。研磨技術の適用では、ガラスの研磨精度に直接的に作用するバッキングフィルム(被研磨物保持剤)の特性がその工程に大きく作用している。バッキングフィルムは、表層部分に涙滴気泡を有するポリウレタン樹脂により構成されており、ガラス表面の均一な平坦化のためには、バッキングフィルム表面の平坦性と被研磨物への固定能力とが必要となる。最近ではその大型化した被研磨物の固定を行うために、表面の気泡の開口径を微細化し、吸着力をより強化することによりテンプレートを用いないバッキングフィルムの使用を可能としている。
【0003】
吸着力の強いバッキングフィルムを使用することにより、大型のガラスに対しても研磨時の固定が可能になる。しかし、表面の気泡の開口径を極端に微細化したことにより、今までは端面から浸入しても表面から抜けていたスラリー液などの水分がバッキングフィルム内部に滞留する現象が発生してしまう。この現象は滞留する水分によりフィルム表面を局所的に膨らませることになり、研磨によるガラスの平坦性を悪化させる原因となる。
【0004】
このような問題を解決するために、研磨に先立ってバッキングフィルムの端面を熱処理することで水分の浸入を防ぐ技術が用いられている。
【0005】
たとえば、作業者が180〜220℃の熱源(コテ)をフィルム端面に約30mm幅で接触させ、そのまま一定の速度(35〜45mm/sec)でフィルムの端辺に沿って移動させ、涙滴気泡を破壊する。
【0006】
このような方法では、熱源とフィルムとの接触長さが短く、接触角度および移動速度の制御も難しいため、バッキングフィルムごとに端面処理にばらつきが生じてしまう。端面処理のばらつきにより、研磨性能にもばらつきが生じるため、非常に大きな問題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、端面処理にばらつきがなく、安定した研磨性能の樹脂フィルムを加工する加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被加工物である樹脂フィルムを固定する固定ステージと、
加熱された状態で樹脂フィルムに押圧し、樹脂フィルムの端面部分を熱破壊してシーリングを行う押圧プレートと、
押圧プレートを所定の傾斜角度に保持するとともに、樹脂フィルムの厚み方向に平行な方向に押圧プレートを移動させるプレート移動部とを備えることを特徴とする樹脂フィルム加工装置である。
【0009】
また本発明は、固定ステージとプレート移動部とは、押圧プレートが樹脂フィルムに押圧した状態で、固定ステージのプレート移動部に対向する辺に沿って、相対的に移動可能に構成されることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、被加工物である樹脂フィルムを固定する固定ステージと、
加熱された状態で樹脂フィルムに押圧し、樹脂フィルムの端面部分を熱破壊してシーリングを行う押圧プレートと、
押圧プレートを固定ステージ方向に押し付ける押付部とを備え、
押圧プレートは、固定ステージから所定の間隔を空けた位置に下方端部が固定されるとともに固定部分を軸として固定ステージ方向に斜倒するよう構成され、
押付部が押圧プレートを固定ステージ方向に押し付けることで、押圧プレートが傾斜した状態で樹脂フィルムに押圧されることを特徴とする樹脂フィルム加工装置である。
【0011】
また本発明は、固定ステージと押圧プレートおよび押付部とは、押圧プレートが樹脂フィルムに押圧した状態で、固定ステージの押圧プレートに対向する辺に沿って、相対的に移動可能に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固定ステージに被加工物である樹脂フィルムを固定し、押圧プレートを加熱した状態で、固定ステージに固定された樹脂フィルムに押圧し、樹脂フィルムの端面部分を熱破壊してシーリングを行う。
【0013】
押圧プレートは、プレート移動部に、所定の傾斜角度に保持されるとともに、樹脂フィルムの厚み方向に平行な方向に移動させて樹脂フィルムに押圧される。
【0014】
これにより、一定の傾斜角度で押圧プレートを樹脂フィルムに接触させることで、端面処理にばらつきがなく、安定した研磨性能の樹脂フィルムを加工することができる。
【0015】
また本発明によれば、固定ステージとプレート移動部とは、押圧プレートが樹脂フィルムに押圧した状態で、固定ステージのプレート移動部に対向する辺に沿って、相対的に移動可能に構成される。
【0016】
押圧プレートを樹脂フィルムに接触した状態で移動させることにより被処理部分のシーリング特性をより向上させることができる。
【0017】
また本発明によれば、固定ステージに被加工物である樹脂フィルムを固定し、押圧プレートを加熱した状態で、固定ステージに固定された樹脂フィルムに押圧し、樹脂フィルムの端面部分を熱破壊してシーリングを行う。
【0018】
押圧プレートは、固定ステージから所定の間隔を空けた位置に下方端部が固定されるとともに固定部分を軸として固定ステージ方向に斜倒するよう構成され、押付部が押圧プレートを固定ステージ方向に押し付けることで、押圧プレートが傾斜した状態樹脂フィルムに押圧される。
【0019】
これにより、一定の傾斜角度で押圧プレートを樹脂フィルムに接触させることで、端面処理にばらつきがなく、安定した研磨性能の樹脂フィルムを加工することができる。
【0020】
また本発明によれば、固定ステージと押圧プレートおよび押付部とは、押圧プレートが樹脂フィルムに押圧した状態で、固定ステージの押圧プレートに対向する辺に沿って、相対的に移動可能に構成される。
【0021】
押圧プレートを樹脂フィルムに接触した状態で移動させることにより被処理部分のシーリング特性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1,2は、本発明の第1実施形態である加工装置1の構成を示す概略図である。図1は正面図を示し、図2は側面図を示す。また、いずれの図面も端面加工処理前の状態を示している。
【0023】
加工装置1は、被加工物であるバッキングフィルム5を固定する固定ステージ2と、加熱された状態でバッキングフィルム5に押圧し、バッキングフィルム5の端面部分の涙滴気泡を破壊してシーリングを行う押圧プレート3と、押圧プレート3を所定の傾斜角度に保持するとともに、バッキングフィルム5の厚み方向に平行な方向およびバッキングフィルム5の一辺に平行に沿って押圧プレート3を移動させるプレート移動部4とを含んで構成される。
【0024】
固定ステージ2は、バッキングフィルム5の主面の一部または全部を支持し、端面の加工時にバッキングフィルム5を固定する固定機構を有している。
【0025】
バッキングフィルム5の一部を支持する場合は、たとえば、バッキングフィルムの1辺を所定の幅で支持する態様、バッキングフィルム5の2辺を支持するL字型の態様、3辺を支持するコの字型の態様、4辺を支持する口の字型の態様などがあり、バッキングフィルム5の大きさや厚みなどに応じて適切な形状としてもよい。
【0026】
固定ステージ2によるバッキングフィルム5の固定機構は、端面部分を部分的に固定爪などで固定する固定機構や、バッキングフィルム5との接触面において、真空チャックによる固定機構などを適応することが可能であり、本実施形態では、真空チャック固定機構を採用している。
【0027】
固定テーステージ2には、固定ステージ2のバッキングフィルム5を支持する支持面側に開放し、固定ステージ2を厚み方向に貫く複数の吸着孔2aが、支持面方向に一様に分布して設けられ、複数の吸着孔2aは固定テーステージ2の底部で連通されて不図示の真空ポンプに接続されている。
【0028】
真空チャック固定機構は、一般的なものが使用できる。また、吸着孔2aは、固定ステージ2の全面に設けるよりも、端面から150〜200mmまでの領域のみに分布させることが好ましい。
【0029】
押圧プレート3は、縦30〜100mm、横70〜500mmの板状部材のいわゆるコテであり、抵抗体などの発熱体をバッキングフィルム5との接触面に一様に設けてもよいし、プレート自体が発熱体からなる構成であってもよい。詳しくは後述するが、押圧プレート3は、バッキングフィルム5に接触した状態で移動させてシーリングする。横寸法が70mm未満の場合は、この移動中の処理にばらつきが生じ、150mmを越えるとフィルム破損のおそれがある。
【0030】
バッキングフィルム5との接触面を所定の温度範囲、たとえば190〜210℃に保持し、接触面内において温度分布にムラがないことが好ましい。
【0031】
押圧プレート3の材質としては、特に制限はないが、例えばステンレス、鉄などの金属類、またはアルミナなどのセラミックス類が挙げられ、加工処理後のバッキングフィルム5との離型性を向上させるために接触面には、フッ素樹脂加工を施すことが好ましい。
【0032】
押圧プレート3は、バッキングフィルム5の接触面が、固定ステージ2の一辺に対して平行であって、固定ステージ2の支持面に対して傾斜するように、プレート移動部4に固定される。バッキングフィルム5との接触面は、固定ステージ2の外方に向かうにつれて低くなるように傾斜され、固定ステージ2の支持面を基準(0°)としたときの固定ステージ2の支持面と押圧プレート3の接触面とが成す角度である傾斜角度θは、15°≦θ≦35°の範囲内に設定される。傾斜角度θによって、バッキングフィルム5の端面処理されたシール部分の幅が変化し、傾斜角度が大きいほどシール部分の幅は小さくなり、傾斜角度が小さいほどシール部分の幅は大きくなる。
【0033】
押圧プレート3は、プレート移動部4の上端部分に、傾斜角度を変更可能に固定される。押圧プレート3の接触面に設けられた固定片を、プレート移動部4の上端部分に設けられた切り欠き部で挟持し、固定片と上端部分とを接触面に平行な方向に挿通するねじ部材などで固定する。このように固定することで、押圧プレート3をねじ部材の軸線周りに角変位可能とし、傾斜角度θを調整することができる。
【0034】
プレート移動部4は、1または複数の棒状部材からなり、バッキングフィルム5の厚み方向に平行な方向、すなわち固定ステージ2の支持面に垂直な方向に摺動可能に構成され、これによって、その上端部に固定した押圧プレート3をバッキングフィルム5に押圧させたり、離反させることができる。
【0035】
プレート移動部4は、たとえば、ラックアンドピニオン機構によって、摺動可能に設けられる。固定ステージ2の底面部分にピニオンギア4aが設けられ、棒状部材の固定ステージ2に対向する部分にラック4bが設けられ、ピニオンギア4aを回転させることで、棒状部材を固定ステージ2の支持面に垂直な方向に移動させる。
【0036】
ピニオンギア4aは直径が20〜50mm、ラック4bは長さ(ストローク)が100〜300mm、それぞれ幅が10〜30mmで構成される。
【0037】
押圧プレート3を所定の温度に加熱した状態で、図2に示すように、プレート移動部4を降下させることで、固定ステージ2の支持面上に固定されたバッキングフィルム5の端面に、押圧プレート3の接触面が押圧されてバッキングフィルム端面がシーリングされる。プレート移動部4が複数の棒状部材からなる場合は、全てのピニオンギア4aを同時に同じ回転速度で回転させ、押圧プレート3の、バッキングフィルム5に対する押圧力が接触面内でばらつかないようにする必要がある。
【0038】
押圧プレート3は、バッキングフィルム5に接触した状態で5〜10秒間静止させ、接触した状態のまま、バッキングフィルム5の辺に沿って押圧プレート3を3〜5mm/秒の速度で10mmほど移動させる。このように押圧プレート3を接触した状態で移動させることにより被処理部分のシーリング特性が向上する。
【0039】
次にプレート移動部4を上昇させて押圧プレート3をバッキングフィルム5から離反させる。押圧プレート3を離反させた状態でプレート移動部4を固定ステージ2の辺に沿った方向に移動させることで、未加工状態の端面の上方に移動させる。
【0040】
再度プレート移動部4を下降させて未加工状態の端面に、押圧プレート3を接触させて端面加工を行う。これを繰り返すことで全辺にわたって端面加工処理を行う。
【0041】
なお、押圧プレート3とバッキングフィルム5(固定ステージ2)とは相対的に移動すればよいので、上記のようにプレート移動部4を固定ステージ2の辺に沿った方向に移動させる構成に限らず、プレート移動部4の位置を変えず、バッキングフィルム5を載置した状態の固定ステージ2を移動させるような構成であってもよい。
【0042】
以上のように、本発明の加工装置1によれば、一定の傾斜角度で押圧プレート3を接触させ、被加工端面に沿って押圧プレート3を移動させることで、端面処理にばらつきがなく、安定した研磨性能のバッキングフィルムを加工することができる。
【0043】
本発明の加工装置によって加工される被加工物であるバッキングフィルムの材質は、特に限定されるものではないが、研磨時の金属汚染回避、加工の容易性、および作業性を考慮して、例えば、ポリカーボネイト、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、高分子ポリエチレン、結晶化ポリエステル、カーボンファイバーエポキシ、テトロンエポキシ積層板、およびガラスエポキシ積層板等を使用することができる。
【0044】
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態である加工装置11の構成を示す概略図である。
【0045】
加工装置11は、被加工物であるバッキングフィルム5を固定する固定ステージ12と、加熱された状態でバッキングフィルム5に押圧し、バッキングフィルム5の端面部分の涙滴気泡を破壊してシーリングを行う押圧プレート13と、押圧プレート13をバッキングフィルム5方向に押し付ける押付部14と、押し付けられた押圧プレート13を所定の位置で支持するためのプレート支持部15と、固定ステージ12、押圧プレート13、圧プレート13と、押圧プレート13をバッキングフィルム5方向に押し付ける、プレート支持部15を上面に載置し、それぞれを所定の位置に固定するための基台16とを含んで構成される。
【0046】
固定ステージ12は、第1実施形態で示した固定ステージ2と同様の構成を有しているので、詳細な説明は省略する。
【0047】
第1実施形態の固定ステージ2と異なる構成は、固定ステージ12がバッキングフィルム5の支持面に平行であって、押圧プレート13に対して接離する方向に移動可能に構成されていることである。詳細は後述するが、押圧プレート13の位置は基台16上で固定されており、固定ステージ12と押圧プレート13との距離を変えることで、バッキングフィルム5への接触角度を変える構成となっている。
【0048】
押圧プレート13は、縦30〜100mm、横70〜500mmの板状部材のいわゆるコテであり、抵抗体などの発熱体をバッキングフィルム5との接触面に一様に設けてもよいし、プレート自体が発熱体からなる構成であってもよい。押圧プレート13は、バッキングフィルム5に接触した状態で移動させてシーリングする。横寸法が70mm未満の場合は、この移動中の処理にばらつきが生じ、500mmを越えるとフィルム破損のおそれがある。
【0049】
バッキングフィルム5との接触面を所定の温度範囲、たとえば190〜210℃に保持し、接触面内において温度分布にムラがないことが好ましい。
【0050】
押圧プレート13の材質としては、特に制限はないが、例えばステンレス、鉄などの金属類、またはアルミナなどのセラミックス類などが挙げられ、加工処理後のバッキングフィルム5との離型性を向上させるために接触面には、フッ素樹脂加工を施すことが好ましい。
【0051】
押圧プレート13は、その長辺の一方が基台16上面であって、固定ステージ12から所定の間隔を空けた位置に固定される。一方の長辺に沿って回転軸が設けられており、押圧プレート13は、長辺に沿った軸周りに角変位可能に構成されている。
【0052】
押圧プレート13を押付部14が固定ステージ12に向かって押しつけることにより、押圧プレート13は回転軸周りに角変位し、傾斜した状態で固定ステージ12に固定されたバッキングフィルム5に当接する。
【0053】
このとき、固定ステージ12を移動させ、押圧プレート13に近接または離反させる。これにより、固定ステージ12と押圧プレート13との距離が変化するので、長辺が基台16に角変位可能に固定された押圧プレート13が押し付けられることでバッキングフィルム5への接触角度が変化する。
【0054】
接触角度は第1実施形態における傾斜角度θと同じで15°≦θ≦35°の範囲内となるように、固定ステージ12を移動させればよい。
【0055】
押付部14は、押圧プレート13を固定ステージ12に向かって押し付けることが可能であればどのような構成でもかまわない。押圧プレート13を挟んで固定ステージ12とは反対側に押付部14を設け、押圧プレート13の高さ中央部分を出入り可能な突出片などにより固定ステージ12に向かって押し付けるような構成であればよい。
【0056】
単に、押圧プレート13を挟んで固定ステージ12とは反対側に押付部14を設けると、押圧プレート13から外側に押付部14を設ける設置面積が大きくなり、加工装置11全体が大型化してしまう。
【0057】
本実施形態では、加工装置11をよりコンパクトに収めるために、押圧プレート13を挟んで固定ステージ12とは反対側の押圧プレート13近傍に、上下動する突出片14aを設け、突出片14aの先端に当接する斜面を有し、突出片14aの上下動に従って水平方向にスライドするスライド片14bを設ける。
【0058】
このように、本実施形態の押付部14では、突出片14aの上下方向の変位を、スライド片14bによって水平方向の変位に変換し、スライド片14bが水平方向であって、固定ステージ12に向かう方向に押圧プレート13を押し出す構造となっている。
【0059】
スライド片14bの、突出片14a先端に当接する斜面は、固定ステージ12の押圧プレート13に対向する辺には平行であり、固定ステージ12から押圧プレート13に向かう方向に傾斜している。傾斜角度を小さくして斜面を広く設けることで、スライド片14bの水平方向の変位を大きくすることができ、傾斜角度を大きくして斜面を狭くすることで、スライド片14bの水平方向の変位を小さくすることができる。
【0060】
上下動する突出片14aは、たとえばエアシリンダ、電磁シリンダなどのシリンダを用いて実現可能である。
【0061】
固定ステージ12側に斜倒した押圧プレート13は、プレート支持部15によって下方から所定の位置に支持される。本実施形態において、プレート支持部15は、コイルばねによって実現され、固定ステージ12の、押圧プレート13に対向する側面に隣接し、上下方向に伸縮するように設けられる。コイルばねの伸縮方向上端部には、押圧プレート13と接触して支持するための支持片15aが設けられ、支持片15aは、バッキングフィルム5の表面と同じか高い位置になるようにコイルばねの長さなどは設定される。
【0062】
図3(a)に示すように、押圧プレート13が固定ステージに対して斜倒したときには、一旦コイルばねからなるプレート支持部15によって支持された状態で保持される。この状態では、プレート支持部15によって押圧プレート13が支持され、バッキングフィルム5には接触しない状態で保持される。
【0063】
プレート支持部15によって支持された状態の押圧プレート13を、押付手段14によって押し付けると、図3(b)に示すように、コイルばねは押し付け力に対して収縮し、加熱された押圧プレート13の接触面がバッキングフィルム5に当接し、端面加工が施される。
【0064】
押圧プレート13の接触面の温度、押圧プレート13をバッキングフィルム5に接触させる時間などの加工処理条件は、第1実施形態と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0065】
次に押付部14を戻して押し付け力を開放すると、プレート支持部15のコイルばねの反発力により押圧プレート13が押し上げられ、バッキングフィルム5から離反される。押圧プレート13を離反させた状態で押圧プレート13および押付部14を固定ステージ2の辺に沿った方向に移動させることで、押圧プレート13を未加工状態の端面に対向する位置に移動させる。
【0066】
再度押付部14により押圧プレート13を固定ステージ12方向に押し付け、未加工状態の端面に押圧プレート13を接触させて端面加工を行う。これを繰り返すことで全辺にわたって端面加工処理を行う。
【0067】
なお、押圧プレート13とバッキングフィルム5(固定ステージ12)とは相対的に移動すればよいので、上記のように押圧プレート13および押付部14を固定ステージ2の辺に沿った方向に移動させる構成に限らず、押圧プレート13および押付部14の位置を変えず、バッキングフィルム5を載置した状態の固定ステージ12を移動させるような構成であってもよい。
【0068】
以上のように、本発明の加工装置11によれば、一定の接触角度で押圧プレート13を接触させることで、端面処理にばらつきがなく、安定した研磨性能のバッキングフィルムを加工することができる。
【実施例】
【0069】
[加工処理断面]
第1実施形態の加工装置1を用いて、バッキングフィルムの端面加工処理を行った。
押圧プレート3の接触面温度を200℃、傾斜角度を25°とし、プレート移動部4のピニオンギア4a径を40mm、ラック4b長さを200mmとした。
【0070】
バッキングフィルムは、ポリウレタン樹脂製のものを用いた。
図4は、加工処理後のバッキングフィルムの断面写真である。断面写真からわかるように、端面部分において熱による涙滴気泡の破壊が十分に進んでおり、スラリーが浸入する隙間は埋められていた。また、処理むらも少なく、端面全体にわたって一様な加工処理を施すことが可能であった。
[作業時間]
たて400mm×よこ500mmのサイズのバッキングフィルムの全辺加工処理に要した作業時間を計測した。
【0071】
比較例としては、加工装置1を使用せず、作業者がコテを手に持って、作業を行った。
作業時間は、10枚のバッキングフィルムを加工した時の平均作業時間を算出して比較した。比較例では、1枚あたりの平均作業時間は約92秒間であるのに対し、実施例では、約76秒間であり、16秒間(約17%)の作業時間短縮を達成できた。
【0072】
[研磨特性]
本発明の加工装置11で加工したバッキングフィルムと、上記のように手作業で加工したバッキングフィルムを用いて以下の条件で研磨処理を行った。
【0073】
研磨特性としては、被研磨物の平坦性が所定の範囲から外れるまでに研磨処理することができたガラス基板の枚数(処理可能枚数)を計数した。処理枚数が多いほど安定した研磨特性を有するバッキングフィルムであるといえる。
【0074】
・研磨条件
被研磨基板:たて400mm×よこ500mm×厚み1.1mmガラス基板
研磨装置:SP−800(スピードファム社製)
研磨パッド:MH−C15Aパッド(ニッタ・ハース社製)
研磨定盤回転速度:20rpm
キャリア回転速度:60rpm
研磨荷重面圧:150g/cm
スラリー流量:4.0L/min
研磨時間:7分間
【0075】
処理可能枚数は、10回の研磨処理における平均処理可能枚数を算出して比較した。比較例では、平均処理可能枚数が約132枚であるのに対し、実施例では約155枚であり、約23枚(約17%)の処理可能枚数増加を達成できた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態である加工装置1の構成を示す概略正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態である加工装置1の構成を示す概略側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態である加工装置11の構成を示す概略図である。
【図4】加工処理後のバッキングフィルムの断面写真である。
【符号の説明】
【0077】
1,11 加工装置
2,12 固定ステージ
3,13 押圧プレート
4 プレート移動部
5 バッキングフィルム
14 押付部
15 プレート支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物である樹脂フィルムを固定する固定ステージと、
加熱された状態で樹脂フィルムに押圧し、樹脂フィルムの端面部分を熱破壊してシーリングを行う押圧プレートと、
押圧プレートを所定の傾斜角度に保持するとともに、樹脂フィルムの厚み方向に平行な方向に押圧プレートを移動させるプレート移動部とを備えることを特徴とする樹脂フィルム加工装置。
【請求項2】
固定ステージとプレート移動部とは、押圧プレートが樹脂フィルムに押圧した状態で、固定ステージのプレート移動部に対向する辺に沿って、相対的に移動可能に構成されることを特徴とする請求項1記載の樹脂フィルム加工装置。
【請求項3】
被加工物である樹脂フィルムを固定する固定ステージと、
加熱された状態で樹脂フィルムに押圧し、樹脂フィルムの端面部分を熱破壊してシーリングを行う押圧プレートと、
押圧プレートを固定ステージ方向に押し付ける押付部とを備え、
押圧プレートは、固定ステージから所定の間隔を空けた位置に下方端部が固定されるとともに固定部分を軸として固定ステージ方向に斜倒するよう構成され、
押付部が押圧プレートを固定ステージ方向に押し付けることで、押圧プレートが傾斜した状態で樹脂フィルムに押圧されることを特徴とする樹脂フィルム加工装置。
【請求項4】
固定ステージと押圧プレートおよび押付部とは、押圧プレートが樹脂フィルムに押圧した状態で、固定ステージの押圧プレートに対向する辺に沿って、相対的に移動可能に構成されることを特徴とする請求項3記載の樹脂フィルム加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−83430(P2009−83430A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259270(P2007−259270)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000116127)ニッタ・ハース株式会社 (150)
【Fターム(参考)】