説明

樹脂原料粉末の製造方法、樹脂原料粉末、樹脂成形体および電子部品装置

【課題】室温での長期保存性に優れ、硬化性や流動性が良好な樹脂原料粉末およびかかる樹脂原料粉末を製造することができる樹脂原料粉末の製造方法、かかる樹脂原料粉末を原料とする樹脂成形体、ならびにかかる樹脂原料粉末または樹脂成形体が用いられた電子部品装置を提供すること。
【解決手段】本発明の樹脂原料粉末の製造方法は、エポキシ樹脂、硬化剤および無機質充填材を含む第1組成分を混合、加熱溶融、混練することにより得られた混練物を破砕して第1粉体を得る混練・破砕工程と、硬化促進剤を含む第2組成分を粉砕して第2粉体を得る粉砕工程と、第1粉体と第2粉体とを、分散混合して樹脂原料粉末を得る混合工程とを有し、混練・粉砕工程において第1粉体を得る際の温度を40℃以下に設定し、粉砕工程において第2粉体を得る際の温度を、第2成分に含まれる各成分の融点のうち最も低い温度よりも20℃以上低い温度に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂原料粉末の製造方法、樹脂原料粉末、樹脂成形体および電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、デイスクリート等の素子は、主にエポキシ樹脂組成物を用いてトランスファー成形、圧縮成形等により封止されており、低コスト、高信頼性および生産性に適した方法として従来から用いられている。例えばトランスファー成形では、大部分がエポキシ樹脂組成物をタブレット状に成形した成形体を金型内のポットに投入し、加熱溶融させながらプランジャーで加圧し、金型キャビティ内に移送し、硬化させて成形するのが一般的である。
【0003】
このエポキシ樹脂組成物は、図2の既存の製造法に示したように、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機質充填材を含み、各成分を所定量秤量して混合した後、混練機で加熱溶融、混練を行い、冷却後に粉砕し、得られた粉砕物をタブレット状に成形した後、低温室に保管される。また、タブレット状としたエポキシ樹脂組成物を使用する際には、通常、このものを低温室から取り出した後、室温に戻るまで放置することが求められる。
【0004】
また、混練機で加熱溶融、混練、冷却、粉砕したエポキシ樹脂組成物(粉砕物)を、タブレット状に成形するまで長時間を要する場合には、エポキシ樹脂組成物の品質を損なわないように10℃〜−20℃程度の低温室に保管し、その後、タブレット状に成形する前に10数時間程度の室温戻しの処理をした後に成形することが求められる。
【0005】
さらに、成形時に全量使用されれば問題ないがエポキシ樹脂組成物が残った場合には、再度低温室に保管することが求められる。
【0006】
以上のように、エポキシ樹脂組成物の保管の際には、低温保管が求められるが、これは、低温保管をしないと、その保管期間にもよるが著しく流動性が低下するという問題が生じることに起因する。
【0007】
さらに、低温室から取り出した後に室温戻しの処置をせずに使用すれば、温度環境差による結露が発生し吸水状態となるため、ボイドや硬化性低下等が発生する等の取り扱い上の問題も生じる。
【0008】
また、タブレットを使用せず、エポキシ樹脂組成物を製造した後、必要に応じて篩分などをして粒度を整えた粉末状でも使用するコンプレッションモールドにおいても、エポキシ樹脂組成物の保管上の課題は同様である。
【0009】
これらの点から、低コスト化、大量生産性、省人化等に限界があり、室温付近(20℃〜25℃)で保管できることが望まれていた。
【0010】
このような課題に対して、エポキシ樹脂および無機質充填材を混合、加熱溶融、混練、破砕したものと、フェノール樹脂、硬化促進剤および無機質充填材を混合、加熱溶融、混練、破砕したものとを再混合した状態でタブレット状に成形し、その後このものを、トランスファー成形を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
しかしながら、この方法では、成形物の成形は可能であるが、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との硬化反応が不充分となり、成形物にひび割れ、フクレ等が発生する問題があった。
【0012】
さらに、硬化性を改善するために、スクリューインライン方式の射出成形機を用いる方法も考えられるが、新規設備の導入が必要となり、現実的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−5888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、室温での長期保存性に優れ、硬化性や流動性が良好な樹脂原料粉末およびかかる樹脂原料粉末を製造することができる樹脂原料粉末の製造方法、かかる樹脂原料粉末を原料とする樹脂成形体、ならびにかかる樹脂原料粉末または樹脂成形体が用いられた電子部品装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的は、下記(1)〜(14)に記載の本発明により達成される。
(1) エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および無機質充填材を含む樹脂原料粉末の製造方法であって、
前記エポキシ樹脂、前記硬化剤および前記無機質充填材を含み、かつ前記硬化促進剤を含まない第1組成分を混合、加熱溶融、混練することにより得られた混練物を破砕して第1粉体を得る混練・破砕工程と、
前記硬化促進剤を含み、かつ前記エポキシ樹脂および前記硬化剤のうちの少なくとも一方を含まない第2組成分を粉砕して第2粉体を得る粉砕工程と、
前記第1粉体と前記第2粉体とを、分散混合して前記樹脂原料粉末を得る混合工程とを有し、
前記混練・粉砕工程において、前記混練物を粉砕して前記第1粉体を得る際の温度を40℃以下に設定し、前記粉砕工程において、前記第2組成分を微粉砕して前記第2粉体を得る際の温度を、前記第2成分に含まれる各成分の融点のうち最も低い温度よりも20℃以上低い温度に設定することを特徴とする樹脂原料粉末の製造方法。
【0016】
(2) 前記硬化促進剤の融点は、前記エポキシ樹脂および前記硬化剤の融点のうち低い方の温度よりも高い上記(1)に記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【0017】
(3) 前記混練・粉砕工程において、前記混練物の粉砕は、クリプトロンゼプロス、ウイングミルおよびマイティーミルのうちの少なくとも1種の粉砕機を用いて行う上記(1)または(2)に記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【0018】
(4) 前記粉砕工程において、前記第2粉体の粉砕は、ジェットミルを用いて行う上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【0019】
(5) 前記硬化促進剤は、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、およびホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物のうちの少なくとも1種である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【0020】
(6) 前記混合工程は、回転式混合機および分散運動式混合機のうちの少なくとも1種の混合機を用いて行われる上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【0021】
(7) さらに、前記第1組成分は、離型剤を含む上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【0022】
(8) 前記エポキシ樹脂、前記硬化剤および前記無機質充填材を含み、かつ前記硬化促進剤を含まない第1粉体と、
前記硬化促進剤を含み、かつ前記エポキシ樹脂および前記硬化剤のうちの少なくとも一方を含まない第2粉体とで構成され、
前記第1粉体のメディアン径が20μm以上、300μm以下であり、かつ、前記第2粉体のメディアン径が30μm以下であることを特徴とする樹脂原料粉末。
【0023】
(9) 前記第1粉体は、粒子径500μm以上の粒子の割合が10質量%以下である上記(8)に記載の樹脂原料粉末。
【0024】
(10) 前記第2粉体は、粒子径50μm以上の粒子の割合が10質量%以下である上記(8)または(9)に記載の樹脂原料粉末。
【0025】
(11) 30℃、相対湿度50%RHで30日間保管後の高化式フローテスターによる溶融粘度の上昇率が20%以下である上記(8)ないし(10)のいずれかに記載の樹脂原料粉末。
【0026】
(12) 上記(8)ないし(11)のいずれかに記載の樹脂原料粉末を、加圧することにより成形されたことを特徴とする樹脂成形体。
【0027】
(13) 封止用樹脂タブレットである上記(12)に記載の樹脂成形体。
【0028】
(14) 上記(8)ないし(11)のいずれかに記載の樹脂原料粉末、または、上記(12)または(13)に記載の樹脂成形体を用いて、半導体素子が封止されてなることを特徴とする電子部品装置。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、樹脂原料粉末または樹脂成形体とした際に、硬化促進剤を含む第2粉体が、エポキシ樹脂および硬化剤を含む第1粉体中に混練されることなく、第1粉体の表面に付着した状態となっている。そのため、樹脂原料粉末または樹脂成形体を、室温保存したとしても、エポキシ樹脂と硬化剤との反応が進行してしまうのを的確に防止または抑制することができるため、室温における保存が実現可能となる。
【0030】
また、樹脂原料粉末および樹脂成形体中において、第1粉体および第2粉体の大きさが適切な範囲内に設定され、さらに第1粉体と第2粉体とが互いに均一に分散しているため、樹脂原料粉末または樹脂成形体を用いた半導体素子の封止を均一に行うことできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】樹脂原料粉末中における第1粉体と、第2粉体との状態を示す概略図である。
【図2】既存の製造方法と本発明の樹脂組成物を製造するための製造方法の一例を示す工程概略図である。
【図3】粉砕機の一例であるクリプトロンゼプロスの構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の樹脂原料粉末の製造方法、樹脂原料粉末、樹脂成形体および電子部品装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0033】
<樹脂原料粉末>
まず、本発明の樹脂原料粉末の製造方法を説明するのに先立って、本発明の樹脂原料粉末について説明する。
【0034】
本発明の樹脂原料粉末は、エポキシ樹脂、硬化剤および無機質充填材を含み、かつ硬化促進剤を含まない第1粉体と、硬化促進剤を含み、かつエポキシ樹脂および硬化剤のうちの少なくとも一方を含まない第2粉体とで構成される樹脂組成物であり、第1粉体のメディアン径が20μm以上、300μm以下であり、かつ、第2粉体のメディアン径が30μm以下であることを特徴とする。
【0035】
以下、樹脂原料粉末を構成する第1粉体および第2粉体に含まれる各成分について、順次説明する。
【0036】
エポキシ樹脂は、硬化剤および無機質充填材とともに、第1粉体に含まれる構成成分である。
【0037】
このエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェニレンまたはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキルエポキシ樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
樹脂原料粉末の保存性および作業性の観点から、エポキシ樹脂の融点または軟化点は40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。また、樹脂原料粉末または樹脂成形体を用いて半導体素子を封止する際の流動性の観点から、エポキシ樹脂の融点または軟化点は150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
【0039】
樹脂原料粉末(樹脂組成物)に対するエポキシ樹脂の含有量の下限値は、特に限定されないが、樹脂原料粉末全体に対して、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上に設定される。一方、エポキシ樹脂の含有量の上限値は、特に限定されないが、樹脂原料粉末全体に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下に設定される。
【0040】
硬化剤は、エポキシ樹脂および無機質充填材とともに、第1粉体に含まれる構成成分である。
【0041】
この硬化剤は、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェニレンまたはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
保存性および作業性の観点から、硬化剤の融点または軟化点は40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。また、流動性の観点から、硬化剤の融点または軟化点は150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
【0043】
樹脂原料粉末に対する硬化剤の含有量の下限値は、特に限定されないが、樹脂原料粉末全体に対して、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上に設定される。一方、硬化剤の含有量の上限値は、特に限定されないが、樹脂原料粉末全体に対して、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下に設定される。
【0044】
なお、硬化剤としてのフェノール樹脂と、エポキシ樹脂とは、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と、全フェノール樹脂(硬化剤)のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が、0.8以上、1.3以下となるように配合することが好ましい。当量比が上記範囲内であると、樹脂原料粉末または樹脂成形体を用いて半導体素子を封止する際に、十分な硬化特性を得ることができる。
【0045】
無機質充填材は、エポキシ樹脂および硬化剤とともに、第1粉体に含まれる構成成分である。
【0046】
無機質充填材としては、特に限定されないが、当該分野で一般的に用いられる無機質充填材を使用することができる。
【0047】
具体的には、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物等を挙げることができ、これらの無機質充填材は、単独でも混合して使用してもよい。
【0048】
これらの中でも溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末が好ましく、特に溶融球状シリカが好ましい。これにより耐熱性、耐湿性、強度等を向上させることができる。
【0049】
無機質充填材の形状は、特に限定されないが、真球状であることが好ましく、かつ粒度分布がブロードであることが好ましい。これにより流動性を特に向上させることができる。
【0050】
樹脂原料粉末に対する無機質充填材の含有量の下限値は、特に限定されないが、樹脂原料粉末全体に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは83質量%以上であり、さらに好ましくは85質量%以上である。含有量の下限値が上記範囲内であると、得られる樹脂原料粉末または樹脂成形体の硬化物の吸湿量を抑えることや、強度の低下を低減でき、したがって良好な耐半田クラック性を有する硬化物を得ることができる。
【0051】
また、樹脂原料粉末に対する無機質充填材の含有量の上限値は、樹脂原料粉末全体に対して、好ましくは93質量%以下であり、より好ましくは91質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。含有量の上限値が上記範囲内であると、得られる樹脂原料粉末は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。
【0052】
なお、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の無機系難燃剤を用いる場合には、これらの無機系難燃剤と上記無機質充填材の合計量を上記範囲内とすることが望ましい。
【0053】
硬化促進剤は、第2粉体に含まれる構成成分であり、第1粉体に含まれるエポキシ基と、第1粉体に含まれる硬化剤が備えるフェノール性水酸基との反応を促進する機能を有するものであり、常温で固体のものである。
【0054】
このような硬化促進剤としては、かかる機能を有するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、DBU(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7)の有機酸塩、無機酸塩等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート塩等のテトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
これらのうち、流動性、保存性および硬化性のバランスの観点から、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物のうちの1種または2種以上の化合物を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0056】
さらに、流動性という点を重視する場合には、テトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また樹脂原料粉末または樹脂成形体の硬化物熱時低弾性率という点を重視する場合にはホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を重視する場合にはホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。
【0057】
なお、テトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0058】
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、Pはリン原子を表す。R1、R2、R3およびR4は芳香族基またはアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1〜3の整数、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。)
【0059】
また、上記一般式(1)で表される化合物において、リン原子に結合するR1、R2、R3およびR4がフェニル基であり、かつAHがヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAが該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。
【0060】
ホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(2)で表される化合物等が挙げられる。
【0061】
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基、Y1はヒドロキシル基を表す。iは0〜5の整数であり、jは0〜4の整数である。)
【0062】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。
【0063】
【化3】

(ただし、上記一般式(3)において、Pはリン原子を表す。R5、R6およびR7は炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R8、R9およびR10は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R8とR9とが結合して環状構造となっていてもよい。)
【0064】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換またはアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。
【0065】
入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0066】
なお、一般式(3)で表される化合物において、リン原子に結合するR5、R6およびR7がフェニル基であり、かつR8、R9およびR10が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が樹脂原料粉末または樹脂成形体の熱時弾性率を低く維持できる点で好ましい。
【0067】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0068】
【化4】

(ただし、上記一般式(4)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中X2は、基Y2およびY3と結合する有機基である。式中X3は、基Y4およびY5と結合する有機基である。Y2およびY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2およびY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4およびY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4およびY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、およびX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、およびY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。)
【0069】
上記一般式(4)において、R11、R12、R13およびR14としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0070】
また、一般式(4)において、X2は、Y2およびY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4およびY5と結合する有機基である。Y2およびY3はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2およびY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4およびY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4およびY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X2およびX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、およびY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(4)中の−Y2−X2−Y3−、およびY4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオールおよびグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0071】
さらに、上記一般式(4)中のZ1は、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基およびビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基およびビニル基等の反応性置換基等が挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が一般式(4)の熱安定性を向上させることができるという点で、より好ましい。
【0072】
また、常温で液状のものでも、微細なマイクロカプセル状にしたり、充填材や多孔質粒子に担持させたりして、常温で固体状のものとし、硬化時にのみ硬化促進剤が作用するようにすることで使用することができる。
【0073】
樹脂原料粉末に対する硬化促進剤の含有量は、樹脂原料粉末全体に対して、0.1質量%以上、1質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が上記範囲内であると、充分な流動性、保存性および硬化性を得ることができる。
【0074】
さらに、上述したように、樹脂原料粉末には、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機質充填材が含まれるが、必要によって通常の封止材料に用いられている臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、燐酸エステル、ホスファゼン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の難燃剤;ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類またはパラフィン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤;シランカップリング剤等のうちの少なくとも1種を適宜含んでいてもよい。なお、これらの各成分は、第1粉体および第2粉体の双方に含まれていても良いし、またはこれらのうちの何れか一方に含まれていてもよい。
【0075】
以上のような各成分を含む第1粉体および第2粉体は、本発明の樹脂原料粉末中において、以下のような条件を満足している。
【0076】
すなわち、第1粉体のメディアン径が20μm以上、300μm以下となっており、さらに、前記第2粉体のメディアン径が30μm以下となっている。
【0077】
第1粉体のメディアン径と第2粉体のメディアン径とをかかる関係を満足するものとすることにより、第1粉体および第2粉体は、互いに樹脂原料粉末中において分散し、その結果、第1粉体に対して第2粉体がほぼ均一に存在しているものとなる。特に、樹脂原料粉末中に分散した第2粉体は、これら同士の凝集体を形成することなく、図1に示すように、第1粉体の表面にほぼ均一に付着しているのが好ましい。
【0078】
このように樹脂原料粉末を第1粉体に対して第2粉体がほぼ均一に存在しているものとし、さらに第2粉体の固形状態を維持することで、第1粉体および第2粉体に含まれる、エポキシ樹脂および硬化剤と、硬化促進剤とが接触してしまうのを第1粉体と第2粉体とが接触する接触点のみに限定することができる。したがって、樹脂原料粉末の保存時において、硬化促進剤(触媒)が存在することに起因するポキシ樹脂と硬化剤との反応の進行を的確に抑制することができる。その結果、第1粉体と第2粉体との混合物である樹脂原料粉末の室温保管が実現可能となる。
【0079】
さらに、この樹脂原料粉末、または樹脂原料粉末から得られる樹脂成形体を用いて、半導体素子を封止する際には、樹脂原料粉末または樹脂成形体を加熱することにより得られる硬化物により半導体素子は封止されることになる。このとき、図1に示すように、第1粉体の表面に第2粉体がほぼ均一に付着していれば、第1粉体および第2粉体を溶融状態とする際に、第1粉体の表面を第2粉体がコーティングするようになり、その後、中心に向かって硬化促進剤(触媒)を介したエポキシ樹脂と硬化剤との反応が進行する。そのため、均一な硬化物が生成されることから、この硬化物により、均一かつ優れた強度で半導体素子が封止される。
【0080】
なお、第1粉体のメディアン径は、20μm以上、300μm以下であればよいが、20μm以上、200μm以下であるのが好ましい。上記下限値未満であると、第1粉体に含まれる無機質充填材のメディアン径よりも小さくなり、第1粉体の芯材となるべき無機質充填材が、第1粉体の表面から露出することに起因して、第1の粉体の一部において、硬化物が生成されず、均一な強度の硬化物が得られないおそれがある。また、上記上限値を超えると、第1粉体の表面に付着する第2粉体だけでは、第1粉体の中止部にまで、硬化促進剤(触媒)を介したエポキシ樹脂と硬化剤との反応を進行させることができず、均一な強度の硬化物が得られないおそれがある。
【0081】
また、第2粉体のメディアン径は、30μm以下であればよいが、1μm以上、20μm以下であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することで、第2粉体を、第1粉体の表面により均一に付着させることができるようになるため、半導体素子の封止をより均一かつより優れた強度で行うことができる。
【0082】
さらに、第1粉体のメディアン径を[A]μmとし、第2粉体のメディアン径を[B]μmとしたとき、A/Bは、2〜100なる関係を満足するのが好ましく、5〜50なる関係を満足するのがより好ましい。これにより、第2粉体を、第1粉体の表面に均一に付着させることができるようになるため、半導体素子の封止をより均一かつ特に優れた強度で行うことができる。
【0083】
また、樹脂原料粉末中において、第1粉体と前記第2粉体との関係は、前記メディアン径の関係を満足していればよいが、第1粉体は、粒子径500μm以上の粒子の割合が10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。これにより、極端に大きい粒子径を有する第1粉体の含有率が低く設定され、その結果、第1粉体の中止部にまで、硬化促進剤(触媒)を介したエポキシ樹脂と硬化剤との反応を確実に進行させることができるため、半導体素子の封止をより均一かつより優れた強度で行うことができる。
【0084】
さらに、第2粉体は、粒子径50μm以上の粒子の割合が10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。これにより、極端に大きい粒子径を有する第2粉体の含有率が低く設定され、その結果、第2粉体を、前記第1粉体の表面により均一に付着させることができるため、半導体素子の封止をより均一かつより優れた強度で行うことができる。
以上のような樹脂原料粉末は、本発明の樹脂原料粉末の製造方法を用いて以下のようにして製造することができる。
【0085】
<樹脂原料粉末の製造方法>
図2は、既存の製造方法と本発明の樹脂原料粉末を製造するための製造方法の一例を示す工程概略図、図3は、粉砕機の一例であるクリプトロンゼプロスの構成概略図である。
【0086】
本発明の樹脂原料粉末の製造方法は、図2に示すように、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および無機質充填材を含む樹脂原料粉末の製造方法であり、エポキシ樹脂、硬化剤および無機質充填材を含み、かつ硬化促進剤を含まない第1組成分を混合、加熱溶融、混練することにより得られた混練物を破砕して第1粉体を得る混練・破砕工程と、硬化促進剤を含み、かつエポキシ樹脂および硬化剤のうちの少なくとも一方を含まない第2組成分を粉砕して第2粉体を得る粉砕工程と、前記第1粉体と前記第2粉体とを、分散混合して前記樹脂原料粉末を得る混合工程とを有し、前記混練・粉砕工程において、前記混練物を粉砕して前記第1粉体を得る際の温度を40℃以下(第1条件)に設定し、前記粉砕工程において、前記第2組成分を微粉砕して前記第2粉体を得る際の温度を、前記第2成分に含まれる各成分の融点のうち最も低い温度よりも20℃以上低い温度(第2条件)に設定することを特徴とする。
【0087】
以下、本発明の樹脂原料粉末の製造方法の各工程について、順次説明する。
(混練・破砕工程)
本工程は、エポキシ樹脂、硬化剤および無機質充填材を含み、かつ硬化促進剤を含まない第1組成分を混合、加熱溶融、混練することにより得られた混練物を破砕して第1粉体を得る工程である。なお、本工程において、混合、加熱溶融および混練は、従来と同様な方法が適用できる。
【0088】
以下、本工程について詳述する。
<1A> まず、上述した樹脂組成物の構成材料のうち、硬化促進剤を除く、エポキシ樹脂、硬化剤および無機質充填材を含む各成分について所定量秤量し、これらを配合することで第1組成分を調製する。そして、この第1組成分を、例えば、ミキサ、ジェットミルおよびボールミル等を用いて常温で均一に粉砕、混合する。
【0089】
<2A> 次に、混練機を用いて第1組成分(樹脂組成物)を加温しながら溶融し混練を行い、混練物を得る。
【0090】
混練機としては、特に限定されないが、例えば、加熱ロール、ニーダーおよび押出機等を用いることができる。
【0091】
また、第1組成分を溶融させる際の温度は、第1組成分の構成材料によって若干異なるが、90〜120℃程度であるのが好ましく、100〜110℃程度であるのがより好ましい。これにより、エポキシ樹脂および硬化剤を確実に溶融状態として、エポキシ樹脂、硬化剤および無機質充填材が均一に分散されている第1組成分で構成される混練物を確実に得ることができる。
【0092】
<3A> 次に、混練物を冷却した後、粉砕することで第1粉体を得る。
ここで、本発明では、混練物を粉砕して第1粉体を得る際の温度(第1条件)が40℃以下に設定されている。なお、本発明では混練物を粉砕して第1粉体を得る際の温度は前記混練物を粉砕した直後の温度である。
【0093】
このような温度条件で混練物を粉砕することで、前記樹脂原料粉末で説明したように、メディアン径が20μm以上、300μm以下である第1粉体を得ることができる。
【0094】
この際、混練物の粉砕は、圧縮、衝撃、剪断、摩擦(摩砕)および冷凍からなる群から選ばれる少なくとも1種類の外力により粉砕を行うことができる。より具体的には、例えば、クリプトロンゼプロス(アーステクニカ社製);ウイングミル(三庄インダストリー社製);マイティーミル(三庄インダストリー社製);ジェットミル等の気流式粉砕機;振動ボールミル、連続式回転ボールミル、バッチ式ボールミル等のボールミル;パルペライザー;ハンマーミル;湿式ポットミル、遊星ポットミル等のポットミル;ローラーミル等の粉砕機が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。これらの中でも、クリプトロンゼプロス、ウイングミルおよびマイティーミルが好ましく、クリプトロンゼプロスおよびウイングミルがより好ましい。
【0095】
このような粉砕機を用いることにより、メディアン径が前記範囲内となっている第1粉体を得る際に、第1条件を40℃以下に容易に設定することができる。
【0096】
これにより混練物が粉砕されることにより形成された第1粉体が溶融状態となり、これに起因して、隣接する第1粉体同士が凝集してダマを形成してしまうのを確実に防止できるため、第1粉体が粒子状の形態を維持することとなる。
【0097】
また、第1粉体を得る際の温度は、上記のように、40℃以下であればよいが、10〜30℃程度であるのが好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0098】
なお、エポキシ樹脂および硬化剤、さらには後述する硬化促進剤として、融点の概念がないものを用いる場合については、そのものの「融点」とは、本明細書中では、「軟化点」を意味することとする。
【0099】
また、第1粉体および後述する第2粉体(硬化促進剤)の粒度分布は、市販のレーザー式粒度分布計(例えば、島津製作所社製、「SALD−7000」等)を用いて測定することができ、この測定結果に基づいて、メディアン径等を算出することができる。
【0100】
ところで、上述した、ウイングミル(三庄インダストリー社製)およびマイティーミル(三庄インダストリー社製)は、衝撃により、混練物を複数の粉砕刃で微粉砕して、第1粉体を得る粉砕機である。
【0101】
また、クリプトロンゼプロス(アーステクニカ社製)は、剪断と摩砕とにより、混練物をローターとライナーとの間で、微粉砕して、第1粉体を得る粉砕機であり、図3に示すように、ケーシング8と、複数の溝を備えるローター1と、ローター1を回転させるためのモータ5とを有する。
【0102】
ケーシング8は、その下部と上部とにそれぞれ設けられた吸気口3と排気口4とを有し、その内壁の中心部には、複数の溝を備えるステータ2を有している。
【0103】
また、ローター1は、ケーシング8のほぼ中心部に配置されており、これにより、ステータ2とローター1との間で画成される空間により、混練物が破砕される破砕領域6が形成される。
【0104】
このローター1は、モータ5の駆動により、回転可能なように構成されており、ローター1の回転時に、破砕領域6に混練物を供給することで、剪断と摩砕とにより、混練物が微粉砕されて第1粉体が得られる。
【0105】
なお、破砕領域6への混練物の供給は、エアーに乗せた混練物を吸気口3から供給し、エアーに乗せた第1粉体を排気口4から排出する構成とすることで、吸気口3からの混練物が破砕領域6に供給されることにより行われる。また、このエアーを、冷却されたものとすることで、混練物が破砕される際に発生する熱により、得られる第1粉体が加熱されるのを的確に抑制または防止することができる。
【0106】
さらに、本装置では、ケーシング8の外周部には、冷却ジャケット7が設けられているため、この冷却ジャケット7に冷却液を供給することによっても、前記熱により第1粉体が加熱されるのをより的確に抑制または防止することができる。
【0107】
このように、クリプトロンゼプロスは、冷却機構を2つ有しているため、上述した第1条件における温度の制御を、より優れた精度で行うことができる。
【0108】
(粉砕工程)
本工程は、硬化促進剤を含む第2組成分を微粉砕して第2粉体を得る工程である。
【0109】
この本工程では、上述した樹脂組成物の構成材料のうち、硬化促進剤を所定量秤量し、その後、第2組成分としての硬化促進剤を粉砕することで第2粉体を得る工程である。
【0110】
ここで、本発明では、第2組成分を微粉砕して第2粉体を得る際の温度(第2条件)が前記第2成分に含まれる各成分の融点のうち最も低い温度よりも20℃以上低い温度に設定されている。なお、第2粉体を得る際の温度は第2組成分を微粉砕した直後の温度である。
【0111】
このような温度条件で第2組成分を粉砕することで、前記樹脂原料粉末で説明したように、メディアン径が30μm以下である第2粉体を得ることができる。
【0112】
この際、第2組成分の粉砕は、前記工程<3A>で説明したのと同様の粉砕機を用いることができるが、これらの中でも、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミルおよびポットミルが好ましく、ジェットミルがより好ましい。
【0113】
このような粉砕機を用いることにより、第2粉体(硬化促進剤)を効率良く、前述したメディアン径の範囲にまで微粉砕することができるとともに、前記第2条件における温度を、硬化促進剤、あるいはエポキシ樹脂や硬化剤も使用した場合はその融点のうち低い方の温度よりも20℃以上低い温度に容易に設定することができる。
【0114】
したがって、第2条件における温度をかかる範囲内に設定できれば、第2粉体が粉砕されることにより形成された第2粉体が溶融状態となり、これに起因して、隣接する第2粉体同士が凝集してダマを形成してしまうのを確実に防止でき、第2粉体が粒子状の形態を維持することとなる。
【0115】
また、第2条件における温度は、上記のように、硬化促進剤の融点よりも20℃以上低いのが好ましいが、30〜50℃程度低いのがより好ましい。第2条件における温度を硬化促進剤の融点よりも30℃以上低く設定することにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。また、50℃を超えて低く設定したとしてもそれ以上の効果は期待できない。
【0116】
なお、第2粉体に含まれる硬化促進剤の融点は、一般的に、第1粉体に含まれるエポキシ樹脂および硬化剤の融点のうち低い方の温度と比較して、高くなる組合せが多い。そのため、本発明のように、第1粉体を得る際の温度と、第2粉体を得る際の温度とを適宜設定する構成とすることで、目的とするメディアン径を有する各粉体を、凝集させることなく確実に形成させることができる。
【0117】
ところで、上述した、ジェットミルは、ジェットエアーに乗せた第2組成分を、成分同士を高速で衝突させることにより、微粉砕して、第2粉体を得る粉砕機である。
【0118】
また、ジェットミルを用いる場合、その粉砕条件は特に限定されないが、空気圧0.5〜1.0MPaが好ましく、特に0.6〜0.8MPaが好ましい。
【0119】
なお、第2粉体を得る本工程(粉砕工程)では、第2組成分は硬化促進剤で構成されることとしたが、これに限定されず、第2組成分には、硬化促進剤の他に、エポキシ樹脂および硬化剤のうちの少なくとも一方を含まない他の成分が含まれていてもよい。例えば、離型剤および/または無機質充填材の一部(微量)が第2組成分の含まれる構成とすれば、硬化促進剤として、融点が比較的低いものを用いた場合であっても、粉砕機の壁面等への硬化促進剤の付着を防止することができるため、作業性の向上を図ることができる。
【0120】
(混合工程)
本工程は、前記混練・破砕工程で得た第1粉体と、前記粉砕工程で得た第2粉体とを分散混合することにより分散混合物としての本発明の樹脂原料粉末を得る工程である。
【0121】
第1粉体と第2粉体とを分散混合する方法としては、特に限定されないが、例えば、羽根回転式ミキサ、ボールミル、リボンブレンダー等の回転式混合機およびV型混合機、ロッキングミル等の分散運動式混合機からなる群より選ばれる少なくとも1種類の混合機を用いることができる。
【0122】
かかる方法により分散混合された第1粉体と第2粉体とは、前記混練・破砕工程および前記粉砕工程において、第1粉体を得る第1条件と、第2粉体を得る第2条件とを上記のように設定することで、第1粉体のメディアン径が20μm以上、300μm以下となっており、さらに、前記第2粉体のメディアン径が30μm以下となっている。そのため、互いに樹脂原料粉末中において分散し、さらに、第2粉体が、第1粉体の表面にほぼ均一に付着している状態となる。
【0123】
したがって、第1粉体および第2粉体に含まれる、エポキシ樹脂および硬化剤と、硬化促進剤とが接触してしまうのを第1粉体と第2粉体とが接触する接触点のみに限定することができる。そのため、樹脂原料粉末の保存時において、硬化促進剤(触媒)が存在することに起因するポキシ樹脂と硬化剤との反応の進行を的確に抑制することができる。その結果、第1粉体と第2粉体との混合物である樹脂原料粉末の室温保管が実現可能となる。
【0124】
なお、本明細書中で、室温保管が実現可能な樹脂原料粉末、または後述する樹脂成形体とは、好ましくは、30℃、相対湿度50%RHで30日間保管後の高化式フローテスターによる溶融粘度の上昇率が20%以下であるもののことを言い、より好ましくは、10%以下であるもののことを言うこととする。
【0125】
さらに、かかる樹脂原料粉末を用いて、半導体素子を封止する際には、第1粉体および第2粉体が互いに樹脂原料粉末中において分散している。そのため、硬化促進剤の分散が不十分となり、部分的な反応速度の違いによるボイドや割れが発生したり、反応速度が十分得られないことによる硬化不良が発生したり、部分的な反応の進行により流動性が低下したりするおそれが少ない。
【0126】
また、第1粉体と第2粉体との混合比は、必要な硬化性を得るために適宜調整されるが、通常は重量比で、98.0:2.0〜99.9:0.1程度であるのが好ましい。
【0127】
ところで、一般に、粉体の混合においては、粒子同士のぶつかり合い等により発熱し、被混合物の温度が上昇することとなるが、本発明においては、被混合物の温度が、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤の融点以上の温度にならないように、粒子同士のぶつかり合い等による発熱が起こり難い混合機を用いたり、温度調節を行ったりすることが望ましい。
【0128】
これにより、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤の種類にかかわらず、室温での長期保存性に優れ、かつ成形性(特に流動性)、硬化性に優れた樹脂原料粉末を得ることができる。粒子同士のぶつかり合い等による発熱が起こり難い混合機としては、例えば、V型混合機等が挙げられる。
【0129】
また、温度調節を行う方法としては特に限定するものではないが、例えば、被混合物に冷風等の冷却媒体を供給する等、直接的な冷却方法、あるいは、混合機の容器を冷却液、冷風等の冷却媒体で冷却する等、間接的な冷却方法が挙げられる。温度調節を容易に行うことができる混合機としては、例えば、羽根回転式ミキサ等が挙げられる。
【0130】
例えば、混合機として羽根回転式ミキサを用い、温度調節せずにエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および無機質充填材を含む樹脂組成物を10分間混合した場合における被混合物の温度は30℃程度まで上昇するところ、15℃の冷水により容器を冷却した場合には、被混合物の温度を25℃程度に止めることができる。
【0131】
なお、本工程(混合工程)は、前記混練・粉砕工程において、第1組成分を溶融混練後に粉砕して第1粉体を得た後に、前記粉砕工程を経ることで予め用意した第2粉体を、第1粉体を製造した粉砕機中に添加混合する構成とすることもできる。これにより、第1組成分の混練・粉砕工程と第1粉体と第2粉体の混合工程とを一工程とすることができ、工程の効率を向上させることができる。
以上のような工程を経ることにより、樹脂原料粉末を製造することができる。
【0132】
上記のとおり、本発明の樹脂原料粉末の製造方法では、第1粉体のメディアン径が20μm以上、300μm以下となっており、さらに、前記第2粉体のメディアン径が30μm以下となっている。そのため、互いに樹脂原料粉末中において分散し、さらに、第2粉体が、第1粉体の表面にほぼ均一に付着している状態となることから、第1粉体と第2粉体との混合物である樹脂原料粉末の室温保管が実現可能となる。また、使用前に低温から室温に戻す準備が不要となり、使用して余っても特性変化しにくいことから、次回そのまま使用することができる。
【0133】
なお、前記効果は、硬化促進剤と、エポキシ樹脂および硬化剤とを含む樹脂原料粉末(混合物)を、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤の融点以上に加熱する工程を経ずに製造した際により顕著に発揮させることができる。
【0134】
<樹脂成形体の製造方法>
なお、樹脂原料粉末は、その保管、輸送および成形作業の容易性の観点から樹脂成形体としてもよい。以下、樹脂成形体として、封止用樹脂タブレットを上述した樹脂原料粉末を用いて製造する製造方法を一例に、詳細に説明する。
【0135】
封止用樹脂タブレット(樹脂成形体)は、前記樹脂原料粉末の製造方法により得られた樹脂原料粉末を加圧して、例えば、タブレット状に成形することにより、得ることができる。
【0136】
樹脂原料粉末を加圧してタブレット状の樹脂成形体とする方法としては、例えば、顧客の要求に合わせたタブレットのサイズ(径、高さ、重量)の金型を用意し、この金型に樹脂原料粉末を投入した後に、圧縮成形機を使用して圧縮率80〜95%で圧縮成形する方法等が挙げられる。
【0137】
また、封止用樹脂タブレットのサイズ等は、特に限定されないが、具体的には外径Dが20mm以下で、外径Dと長さ(高さ)Lとの比L/Dが1以上である場合;外径Dが20mm以上で、外径Dと長さLとの比L/Dが1以下である場合等の形状が挙げられる。
【0138】
一般に、粉体を加圧してタブレット状に成形する場合においては、得られるタブレットの形状保持性や作業性の観点から、樹脂原料粉末を圧縮成形して樹脂成形体とする際に、加熱を行う場合があった。また、金属等の不純物の混入が少ない半導体封止用樹脂タブレットを提供することを目的として、実質的に混合粉体を溶融混練する工程を経ずにタブレット状に成形することが開示された特開2006−187873号公報においては、所定の流動性を得るために、80〜130℃程度まで加熱を行ってタブレット状に成形することが必要であった。
【0139】
しかしながら、本発明では、封止用樹脂タブレットを成形する際には、得られた封止用樹脂タブレットの室温での長期保存性を、樹脂原料粉末と比較して低下させないという点から、加熱を行わないのが好ましい。これにより、第2粉体が、第1粉体の表面にほぼ均一に付着している状態を維持したまま、封止用樹脂タブレットを成形することができる。これにより、封止用樹脂タブレット中においても、第1粉体および第2粉体に含まれる、エポキシ樹脂および硬化剤と、硬化促進剤とが接触してしまうのを第1粉体と第2粉体とが接触する接触点のみに限定することができる。その結果、封止用樹脂タブレットについても、その室温保管が実現可能となる。
【0140】
なお、上述した粉砕工程において、硬化促進剤を微粉砕することで第2粉体が上述した範囲内のメディアン径を有しているため、加熱を行わずにタブレット状に成形された封止用樹脂タブレットを得たとしても、封止用樹脂タブレットの流動性が不足することはない。
【0141】
また、積極的に加熱を行わない場合であっても、連続でタブレット状に成形を行うと、金型中における封止用樹脂タブレットの摺動等により発熱し、これに起因して、封止用樹脂タブレットの温度が上昇することがある。そのため、樹脂原料粉末を圧縮成形する際には、封止用樹脂タブレットの温度が、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤の融点以上の温度とならないように、温度調節を行うことが好ましい。これにより、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤の種類にかかわらず、室温での長期保存性に優れ、かつ成形性(特に流動性)、硬化性に優れた封止用樹脂タブレットを得ることができる。
【0142】
温度調節を行う方法としては、特に限定するものではないが、例えば、タブレット成形用の前記金型を冷却液、冷風等の冷却媒体で冷却する等の間接的な冷却方法が挙げられる。
【0143】
これらの方法を用いることで、例えば、温度調節せずにエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および無機質充填材を含む樹脂組成物を1時間連続でタブレット状に成形した場合、タブレット形成用の金型の温度は40℃程度まで上昇するところ、15℃の冷水により前記金型を冷却した場合には、この金型の温度を25℃程度に止めることができる。
【0144】
なお、本実施形態では、封止用樹脂タブレットの製造方法を具体的に挙げて説明したが、かかる場合に限定されず、封止用ではない一般のエポキシ樹脂成形材料等にも適用可能である。また、樹脂成形体の形状についても、タブレット状のもの以外に、例えば、シート状、短冊状、ペレット状のもの等にも適用可能である。
【0145】
<電子部品装置の製造方法>
次に、電子部品装置の製造方法について説明する。
【0146】
なお、電子部品装置の製造方法には、樹脂原料粉末および樹脂成形体のうちの何れをも用いることができる。
【0147】
本発明の封止用樹脂タブレットを用いて電子部品装置を製造する方法としては、例えば、素子を搭載したリードフレームまたは回路基板等を金型キャビティ内に設置した後、封止用樹脂タブレットをトランスファーモールド、コンプレッションモールド等の成形方法で成形、硬化させることにより、この素子を封止する方法が挙げられる。
【0148】
封止される素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
得られる電子部品装置の形態としては、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
封止用樹脂組成物のトランスファーモールド等の成形方法により素子が封止された電子部品装置は、そのまま、あるいは80℃から200℃程度の温度で、10分から10時間程度の時間をかけてこの樹脂組成物を完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0151】
なお、電子部品装置の製造方法について、封止用樹脂タブレットを用いた製造方法を具体的に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、タブレット状のもの以外に、例えば、シート状、短冊状、ペレット状のもの等、他の形状の封止用樹脂成形体を用いることも可能である。
【0152】
また、樹脂原料粉末を、樹脂成形体に成形せずにそのまま用いることもできる。この場合、例えば、篩分等により粒度を整えた樹脂原料粉末を用いて、コンプレッションモールド法を適用して樹脂原料粉末を成形、硬化させることで、素子を封止することができる。
【0153】
また、電子部品装置の製造に、本発明の樹脂原料粉末または樹脂成形体を用いることにすれば、上述したように、これらはともに室温での保管が可能であるため、前記樹脂原料粉末または樹脂成形体の保管を10℃〜−20℃程度の低温で保管する必要がなく、かつ、トランスファーモールド、コンプレッションモールド等の成形方法により成形する前における10数時間程度の室温戻しの処理も不要とすることができる。
【0154】
以上、本発明の樹脂原料粉末の製造方法、樹脂原料粉末、樹脂成形体および電子部品装置について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0155】
例えば、本発明の樹脂原料粉末の製造方法には、必要に応じて任意の工程が追加されてもよい。
【0156】
また、本発明の樹脂原料粉末および樹脂成形体には、同様の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよい。
【0157】
また、本発明の電子部品装置の各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することもできる。
【実施例】
【0158】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。また、配合量の部は質量部を表す。
1.原材料の調製
まず、実施例および比較例で用いた原材料を以下に示す。
【0159】
なお、各原料、第1粉体および第2粉体の粒度分布は、特に記載がなければレーザー式粒度分布計(島津製作所社製、「SALD−7000」)を用いて、屈折率:D=1.70−1.00iの条件で測定を行った。
【0160】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、「NC−3000」を、サンプルミルKIIW−1(不二パウダル社製)を用いて、粗粉砕したもの。エポキシ当量280g/eq、軟化点55℃。メディアン径200μm、粒径200μm以上の粒子の割合48質量%。)
【0161】
(硬化剤)
硬化剤1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型樹脂(明和化成社製、「MEH−7851」を、サンプルミルKIIW−1(不二パウダル社製)を用いて、粗粉砕したもの。水酸基当量205g/eq、軟化点65℃。メディアン径160μm、粒径200μm以上の粒子の割合33質量%。)
【0162】
(無機質充填材)
無機質充填材1:溶融球状シリカ(電気化学工業社製、「FB560」、メディアン径30μm粒径200μm以上の粒子の割合0質量%。)
【0163】
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:下記式(5)で表される1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物(融点305℃。メディアン径100μm、粒径50μm以上の粒子の割合80質量%。)
【0164】
【化5】

【0165】
硬化促進剤2:硬化促進剤1を空気圧0.6MPa、原料供給速度3kg/hの条件でジェットミル(日本ニューマチック社製、「PJM200SP」)を用いて粉砕を行った。得られた粒子はメディアン径3μm、粒径50μm以上の粒子の割合が5%以下であった。
【0166】
硬化促進剤3:硬化促進剤1を空気圧1.0MPa、原料供給速度1kg/hの条件でジェットミル(日本ニューマチック社製、「PJM200SP」)を用いて粉砕を行った。得られた粒子はメディアン径1μm、粒径50μm以上の粒子の割合が2%以下であった。
【0167】
硬化促進剤4:硬化促進剤1を回転数60rpm、粉砕時間60分の条件でポットミル(森田鉄工社製、「ポットミルII型」)を用いて行った。得られた粒子はメディアン径15μm、粒径50μm以上の粒子の割合が10%以下であった。
【0168】
硬化促進剤5:トリフェニルホスフィン(融点80℃。メディアン径70μm、粒径50μm以上の粒子の割合70質量%。)を空気圧0.6MPa、原料供給速度3kg/hの条件でジェットミル(日本ニューマチック社製、「PJM200SP」)を用いて粉砕を行った。得られた粒子はメディアン径3μm、粒径50μm以上の粒子の割合が5%以下であった。
【0169】
硬化促進剤6:硬化促進剤1を3質量部と、離型剤1を0.1質量部とを空気圧0.6MPa、原料供給速度3kg/hの条件でジェットミル(日本ニューマチック社製、「PJM200SP」)を用いて粉砕を行った。得られた粒子はメディアン径4μm、粒径50μm以上の粒子の割合が8%以下であった。
【0170】
硬化促進剤7:硬化促進剤1を3質量部と、無機質充填材1を4.25質量部とを空気圧0.6MPa、原料供給速度3kg/hの条件でジェットミル(日本ニューマチック(株)製、PJM200SP)を用いて粉砕を行った。得られた硬化促進剤粒子を顕微鏡観察したところ、目視でほぼ10μm以下に粉砕されていた。
【0171】
硬化促進剤8:硬化促進剤1を回転数60rpm、粉砕時間40分の条件でポットミル(森田鉄工社製、「ポットミルII型」)を用いて行った。得られた粒子はメディアン径22μm、粒径50μm以上の粒子の割合が10%以下であった。
【0172】
(その他の添加剤)
シランカップリング剤1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM−403」)
着色剤1:カーボンブラック(三菱化学社製、「♯5」)
離型剤1:モンタン酸ワックス(クラリアントジャパン社製、「WE 4」)
【0173】
2.樹脂原料粉末を用いた封止用樹脂タブレットの製造
[実施例1]
硬化促進剤2を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、パルペライザーで混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0174】
次に、第1粉体に第2粉体としての硬化促進剤2を添加して、羽回転式ミキサで5分間回転させ分散混合することにより、樹脂原料粉末(樹脂組成物)を得た。
【0175】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂原料粉末をタブレット状に成形し、圧縮率91%、直径18mm、高さ31.6mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0176】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0177】
[実施例2]
硬化促進剤3を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いでパルペライザーで混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0178】
次に、第1粉体に第2粉体としての硬化促進剤3を添加して、羽根回転式ミキサで5分間回転させ分散混合することにより、樹脂組成物を得た。
【0179】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率90%、直径18mm、高さ31.8mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0180】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0181】
[実施例3]
硬化促進剤4を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、パルペライザーで混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0182】
次に、第1粉体に、第2粉体としての硬化促進剤4を添加して、Vブレンダーで5分間回転させ分散混合して、樹脂組成物を得た。
【0183】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率90%、直径18mm、高さ31.8mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0184】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0185】
[実施例4]
硬化促進剤3を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、ジェットミル(空気圧0.5MPa、原料供給速度3kg/hの条件)で混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0186】
次に、第1粉体に、第2粉体としての硬化促進剤3を添加して、羽根回転式ミキサで5分間回転させ分散混合することにより、樹脂組成物を得た。
【0187】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率88%、直径18mm、高さ32.5mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0188】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0189】
[実施例5]
硬化促進剤6を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、ジェットミル(空気圧0.5MPa、原料供給速度3kg/hの条件)で混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0190】
次に、第1粉体に、第2粉体としての硬化促進剤6を添加して、羽根回転式ミキサで5分間回転させ分散混合することにより、樹脂組成物を得た。
【0191】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率90%、直径18mm、高さ31.8mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0192】
なお、分散混合時における最高混合物温度およびタブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0193】
[実施例6]
硬化促進剤7を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、ジェットミル(空気圧0.5MPa、原料供給速度3kg/hの条件)で粉砕して第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0194】
次に、第1粉体に、第2粉体としての硬化促進剤7を添加して、羽根回転式ミキサで5分間回転させ分散混合することにより、樹脂組成物を得た。
【0195】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率90%、直径18mm、高さ31.8mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0196】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0197】
[実施例7]
硬化促進剤2を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、パルペライザーで混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0198】
次に、第1粉体に、第2粉体としての硬化促進剤2を添加して、V型混合機(Vブレンダー)で5分間回転させ分散混合して、樹脂組成物を得た。
【0199】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率90%、直径18mm、高さ31.8mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0200】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0201】
[実施例8]
硬化促進剤5を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、ジェットミル(空気圧0.5MPa、原料供給速度3kg/hの条件)で混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0202】
次に、第1粉体に、第2粉体としての硬化促進剤5を添加して、羽回転式ミキサで5分間回転させ分散混合することにより、樹脂組成物を得た。
【0203】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率90%、直径18mm、高さ31.8mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0204】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0205】
[実施例9]
硬化促進剤2を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、クリプトロンゼプロス(アーステクニカ社製、「KCM−50」)で混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0206】
次に、第1粉体に第2粉体としての硬化促進剤2を添加して、羽回転式ミキサで5分間回転させ分散混合することにより、樹脂原料粉末(樹脂組成物)を得た。
【0207】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂原料粉末をタブレット状に成形し、圧縮率91%、直径18mm、高さ31.6mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0208】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0209】
[実施例10]
硬化促進剤2を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、ウイングミル(三庄インダストリー社製、「WM−30」)で混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0210】
次に、第1粉体に第2粉体としての硬化促進剤2を添加して、羽回転式ミキサで5分間回転させ分散混合することにより、樹脂原料粉末(樹脂組成物)を得た。
【0211】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂原料粉末をタブレット状に成形し、圧縮率91%、直径18mm、高さ31.6mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0212】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0213】
[実施例11]
硬化促進剤8を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、パルペライザーで混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0214】
次に、第1粉体に、第2粉体としての硬化促進剤8を添加して、Vブレンダーで5分間回転させ分散混合して、樹脂組成物を得た。
【0215】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率90%、直径18mm、高さ31.8mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0216】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0217】
[実施例12]
硬化促進剤2を除く、表1に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、ジェットミル(空気圧0.5MPa、原料供給速度10kg/hの条件)で混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表1に示した。
【0218】
次に、第1粉体に、第2粉体としての硬化促進剤2を添加して、羽回転式ミキサで5分間回転させ分散混合することにより、樹脂組成物を得た。
【0219】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率90%、直径18mm、高さ31.8mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0220】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表1に示した。
【0221】
[比較例1]
硬化促進剤1を除く、表2に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、その後冷却して混練物を得た。次いでパルペライザーで混練物を粉砕することにより、第1粉体を得た。なお、第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表2に示した。
【0222】
次に、第1粉体に、第2粉体としての硬化促進剤1を添加して、羽根回転式ミキサで分散混合して、樹脂組成物を得た。
【0223】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率91%、直径18mm、高さ31.6mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0224】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表2に示した。
【0225】
[比較例2]
硬化促進剤3を除く、表2に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、冷却して混練物を得た。次いで、粗粉砕して第1粉体を得た。第1粉体のメディアン径および500μm以上の粒子の割合を表2に示した。
【0226】
次に、第1粉体に、第2粉体としての硬化促進剤3を添加して。羽根回転式ミキサで分散混合して、樹脂組成物を得た。
【0227】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率91%、直径18mm、高さ31.6mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
【0228】
なお、分散混合時における樹脂原料粉末の最高混合物温度および封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表2に示した。
【0229】
[比較例3]
硬化促進剤1および、表2に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、その後冷却して混練物を得た。次いで、粗粉砕してメディアン径720μm、500μm以上の粒子の割合が70質量%の樹脂組成物を得た。
【0230】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率91%、直径18mm、高さ31.6mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
なお、封止用タブレット成形時における最高タブレット温度を表2に示した。
【0231】
[比較例4]
硬化促進剤3、および表2に記載の各成分を羽根回転式ミキサにて室温で混合し、80℃〜100℃の加熱ロールで溶融混練を行い、その後冷却して混練物を得た。次いで、粗粉砕してメディアン径750μm、500μm以上の粒子の割合が70質量%の樹脂組成物を得た。
【0232】
次に、加圧力2MPaの条件でタブレットマシン(三菱マテリアルテクノ社製、「S−20A」)を用いて、得られた樹脂組成物をタブレット状に成形し、圧縮率91%、直径18mm、高さ31.6mm、重量14.5gの封止用樹脂タブレットを得た。
なお、封止用樹脂タブレット成形時における最高タブレット温度を表2に示した。
【0233】
3.評価
得られた各実施例および各比較例の封止用樹脂タブレットを、以下の方法で評価した。
3−1.流動性(溶融粘度)の評価
高化式フローテスター(島津製作所社製、「CFT−500」)を用いて、175℃、圧力10kgf/cm、キャピラリー径0.5mmで測定した。単位はPa・sで示した。
【0234】
また、判定基準は、溶融粘度値が20Pa・s以下のものを○、20Pa・sを超えるものを×とした。
【0235】
3−2.30℃長期保存性の評価
各実施例および各比較例の封止用樹脂タブレットを、30℃、相対湿度50%RHで30日間保管した後においても、上記の流動性の評価と同様にして高化式フローテスターによる溶融粘度を測定し、30℃、相対湿度50%RHで30日間保管する前の溶融粘度の値(初期値)に対する、30℃、相対湿度50%RHで30日間保管した後の溶融粘度の上昇値を百分率で表し、粘度上昇率とした。単位は%で示した。
【0236】
また、判定基準は、粘度上昇率が20%以下のものを○、20%を超えるものを×とした。
【0237】
3−3.硬化性の評価
175℃に制御された熱板上に、各実施例および各比較例の封止用樹脂タブレットを載せ、スパチュラで約1回/sec.のストロークで練る。樹脂タブレットが熱により溶解してから硬化するまでの時間を測定し、これをゲルタイムとした。単位は秒でしめした。
【0238】
また、判定基準は、ゲルタイムが60秒以下のものを○、60秒を超えるものを×とした。
【0239】
3−4.成形後外観の評価
低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、「KTS−30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120sで直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を成形し、成形品の外観を目視で観察した。
【0240】
合計10個観察を行い、ボイドや割れの発生がなかったものを○、ボイドや割れの発生が1個以上、3個未満のものを△、ボイドや割れの発生が3個以上のものを×とした。
【0241】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の封止用樹脂タブレットにおける評価結果を、それぞれ、下記の表1、2に示す。
【0242】
【表1】

【0243】
【表2】

【0244】
実施例1〜12は、本願発明の製造方法であり、混練・粉砕工程における粉砕機の種類および粉砕条件、粉砕工程における粉砕機の種類および被粉砕物の組み合わせ、混合工程における混合機の種類、ならびに、硬化促進剤の種類を変更したものを含むものであるが、いずれにおいても、流動性、30℃長期保存性、硬化性および成形後外観に優れる結果が得られた。
【0245】
なお、混練・粉砕工程における粉砕機として、クリプトロンゼプロスおよびウイングミルを用いて混練物を粉砕することで第1粉体を得た実施例9および実施例10では、混練物の単位時間あたりの粉砕処理量を顕著に増やすことができ、さらに粉砕する際の温度制御を特に容易に行うことが可能であった。
【0246】
一方、硬化促進剤の微粉砕を行わなかった点以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た比較例1では硬化性および成形後外観が著しく劣る結果となった。硬化促進剤以外を加熱混練した第1粉体の粒径が大きい比較例2では成形後外観が著しく劣る結果となった。
【0247】
また、硬化促進剤とともに、加熱混練して樹脂組成物を得た従来方法による比較例3では、30℃長期保存性に劣り、冷蔵保管が必要であった。さらに、硬化促進剤を微粉砕して比較例3と同様にして樹脂組成物を得た比較例4は、硬化性の向上はみとめられたが、30℃長期保存性は最も劣る結果となった。
【符号の説明】
【0248】
1 ローター
2 ステータ
3 吸気口
4 排気口
5 モータ
6 破砕領域
7 冷却ジャケット
8 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤および無機質充填材を含む樹脂原料粉末の製造方法であって、
前記エポキシ樹脂、前記硬化剤および前記無機質充填材を含み、かつ前記硬化促進剤を含まない第1組成分を混合、加熱溶融、混練することにより得られた混練物を破砕して第1粉体を得る混練・破砕工程と、
前記硬化促進剤を含み、かつ前記エポキシ樹脂および前記硬化剤のうちの少なくとも一方を含まない第2組成分を粉砕して第2粉体を得る粉砕工程と、
前記第1粉体と前記第2粉体とを、分散混合して前記樹脂原料粉末を得る混合工程とを有し、
前記混練・粉砕工程において、前記混練物を粉砕して前記第1粉体を得る際の温度を40℃以下に設定し、前記粉砕工程において、前記第2組成分を微粉砕して前記第2粉体を得る際の温度を、前記第2成分に含まれる各成分の融点のうち最も低い温度よりも20℃以上低い温度に設定することを特徴とする樹脂原料粉末の製造方法。
【請求項2】
前記硬化促進剤の融点は、前記エポキシ樹脂および前記硬化剤の融点のうち低い方の温度よりも高い請求項1に記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【請求項3】
前記混練・粉砕工程において、前記混練物の粉砕は、クリプトロンゼプロス、ウイングミルおよびマイティーミルのうちの少なくとも1種の粉砕機を用いて行う請求項1または2に記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【請求項4】
前記粉砕工程において、前記第2粉体の粉砕は、ジェットミルを用いて行う請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【請求項5】
前記硬化促進剤は、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、およびホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物のうちの少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【請求項6】
前記混合工程は、回転式混合機および分散運動式混合機のうちの少なくとも1種の混合機を用いて行われる請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【請求項7】
さらに、前記第1組成分は、離型剤を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂原料粉末の製造方法。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂、前記硬化剤および前記無機質充填材を含み、かつ前記硬化促進剤を含まない第1粉体と、
前記硬化促進剤を含み、かつ前記エポキシ樹脂および前記硬化剤のうちの少なくとも一方を含まない第2粉体とで構成され、
前記第1粉体のメディアン径が20μm以上、300μm以下であり、かつ、前記第2粉体のメディアン径が30μm以下であることを特徴とする樹脂原料粉末。
【請求項9】
前記第1粉体は、粒子径500μm以上の粒子の割合が10質量%以下である請求項8に記載の樹脂原料粉末。
【請求項10】
前記第2粉体は、粒子径50μm以上の粒子の割合が10質量%以下である請求項8または9に記載の樹脂原料粉末。
【請求項11】
30℃、相対湿度50%RHで30日間保管後の高化式フローテスターによる溶融粘度の上昇率が20%以下である請求項8ないし10のいずれかに記載の樹脂原料粉末。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれかに記載の樹脂原料粉末を、加圧することにより成形されたことを特徴とする樹脂成形体。
【請求項13】
封止用樹脂タブレットである請求項12に記載の樹脂成形体。
【請求項14】
請求項8ないし11のいずれかに記載の樹脂原料粉末、または、請求項12または13に記載の樹脂成形体を用いて、半導体素子が封止されてなることを特徴とする電子部品装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−1893(P2013−1893A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137645(P2011−137645)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】