説明

樹脂成形品の製造方法

【課題】製造される樹脂成形品の寸法や強度を安定させることのできる樹脂成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】帯状の樹脂発泡シートを熱成形機に間欠送りして該熱成形機の加熱ゾーンにおいて前記樹脂発泡シートを加熱し、該加熱ゾーンに続けて設けられている成形ゾーンにおいて前記加熱ゾーンで加熱された樹脂発泡シートを成形型に沿わせて変形させるとともに冷却させて該樹脂発泡シートに製品形状を形成させる樹脂成形品の製造方法であって、前記成形ゾーンに導入させた樹脂発泡シートに温度差が生じることを抑制すべく、前記加熱ゾーンでは、前記間欠送りによって次に成形ゾーンに送られる樹脂発泡シートの先端側の温度を末端側の温度よりも高温にさせることを特徴とする樹脂成形品の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯状の樹脂発泡シートを熱成形機に間欠送りして該熱成形機で前記樹脂発泡シートに製品形状を形成させる樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂が用いられてなる樹脂発泡シート(以下単に「発泡シート」ともいう)を熱成形した発泡トレーなどの樹脂成形品が広く用いられており、この種の樹脂成形品は、連続的な生産方法によって大量生産されている。
例えば、発泡トレーでは、数十cmから1mを超えるような広幅な帯状の発泡シートがロール状に巻き取られた原反ロールと呼ばれるシートロールから発泡シートを繰り出して、製品形状を発泡シートに形成させる工程から形成させた製品を発泡シートから取り出す工程までを自動的に行う熱成形機に供給し、該熱成形機で連続的に発泡トレーを生産させるような方法が採用されている。
【0003】
このような熱成形機としては、発泡シートを加熱して変形可能な状態に軟化させるための加熱ゾーンと、該加熱ゾーンで軟化された発泡シートに製品形状を形成させるとともに発泡シートを冷却して形成させた製品形状を維持させる成形ゾーンと、該成形ゾーンで製品形状の形成された発泡シートを前記製品形状の外縁に沿って切断して製品(樹脂成形品)を切り出すための切り出しゾーンとを備えたものが従来広く用いられており、前記発泡シートを、クランプなどと呼ばれる金属製の保持具によって幅方向両端部を保持させた状態で搬送し、上記のようなゾーンを順次通過させ得るように構成されたものが広く用いられている。
【0004】
なお、前記熱成形機には、例えば、成形ゾーンでの一度の熱成形によって複数の製品形状を発泡シートに形成させ得るように、複数の製品形状が縦横に配列された成形型が前記成形ゾーンに配されたりしている。
このようなことから、従来、前記発泡シートは、成形型での一度の熱成形に必要な長さ分が成形ゾーンに搬送された後、該成形ゾーンでの熱成形の間(通常、数秒間程度)停止されることになり、搬送、停止を繰り返す、いわゆる“間欠送り”と呼ばれる方法で熱成形機に供給されている。
【0005】
上記のような方法で作製される樹脂成形品に対しては、従来、寸法や強度に対する安定性が求められている。
このような要望に対して、前記成形ゾーンで成形される発泡シートに他と温度が異なるような箇所が存在すると発泡シートの伸び方や成形型への追従性といった点においてバラツキが生じてしまいワンショットの熱成形において得られる複数の樹脂成形品の内の一部の樹脂成形品が他の樹脂成形品と形状や強度を異ならせるおそれがある。
したがって、前記加熱ゾーンは、時間をかけて全体が均一な温度となるように発泡シートを加熱すべく前記間欠送りにおける一度の搬送長さ以上に発泡シートを加熱し得るように設けられている。
例えば、前記加熱ゾーンは、成形ゾーンの手前において前記搬送長さの2〜3倍の長さにわたって発泡シートを加熱し得るように設けられたりしている。
また、加熱ゾーンにおいては、発泡シートの幅方向両端部が前記クランプによって熱を奪われやすいために、この両端部を中央部よりも温度設定を高めにして発泡シートの温度バラツキを抑制させることが試みられている(下記特許文献1参照)。
【0006】
しかし、実際は、このような対策を講じても樹脂成形品の寸法や強度に十分な安定性を付与することが困難であり上記のような要望を満足させるための有効な対策は確立されていない。
なお、このような問題は、発泡トレーを製造する場合においてのみ存在するものではなく、発泡シートを熱成形機で成形して樹脂成形品を製造する場合において広く共通する問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭63−21399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、製造される樹脂成形品の寸法や強度を安定させることのできる樹脂成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく本発明者が鋭意検討を行ったところ、加熱ゾーンから成形ゾーンに導入される際に、成形ゾーンの雰囲気温度によって樹脂発泡シートが冷却され、しかも、成形ゾーンを通過する距離の長い、送り方向先端側の樹脂発泡シートが末端側よりも温度低下しやすくなっていることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、樹脂成形品の製造方法に係る本発明は、帯状の樹脂発泡シートを熱成形機に間欠送りして該熱成形機の加熱ゾーンにおいて前記樹脂発泡シートを加熱し、該加熱ゾーンに続けて設けられている成形ゾーンにおいて前記加熱ゾーンで加熱された樹脂発泡シートを成形型に沿わせて変形させるとともに冷却させて該樹脂発泡シートに製品形状を形成させる樹脂成形品の製造方法であって、前記成形ゾーンに導入させた樹脂発泡シートに温度差が生じることを抑制すべく、前記加熱ゾーンでは、前記間欠送りによって次に成形ゾーンに送られる樹脂発泡シートの先端側の温度を末端側の温度よりも高温にさせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記間欠送りによって次に成形ゾーンに送られる樹脂発泡シートの先端側の温度が末端側の温度よりも高温になるように加熱ゾーンでの前記加熱が実施されることから成形ゾーンにおける樹脂発泡シートの温度が不均一になることを抑制させることができる。
従って、製造される樹脂成形品の寸法や強度を安定させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の樹脂成形品の製造方法に使用する装置構成を示す図((a)平面図、(b)正面図)。
【図2】図1(a)における成形ゾーン手前の加熱ゾーンにおける加熱状況と、成形ゾーンの状況を説明するための部分平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の樹脂成形品の製造方法について、発泡トレーを製造する場合を例にして説明する。
図1は、発泡トレーの製造方法に使用する装置構成を示す図であり、(a)は前記製造装置の一部を切り欠いて内部の様子を示した平面図であり、(b)は正面図である。
また、図2は、図1(a)における成形ゾーン手前の加熱ゾーンにおける加熱状況と、成形ゾーンの状況を説明するための部分平面図である。
【0014】
この図においては、符号1が原反ロールを表しており、符号2が熱成形機を表している。
また、符号3は、前記熱成形機で形成された樹脂成形品(発泡トレー)を搬送するための搬送装置であり、符号4は熱成形した発泡シートから製品となる発泡トレーを切り出した残りの端材を裁断処理するための破砕機を表している。
【0015】
この図からも明らかなように、本実施形態に係る前記熱成形機2は、前記原反ロール1から繰り出される帯状の発泡シート11を熱成形すべく設けられており、前記発泡シート11の流通方向上流側から順に、前記発泡シート11を加熱するための加熱ゾーン21、該加熱ゾーン21で加熱された発泡シート11を真空成形して該発泡シート11に製品(発泡トレー5)の形状を形成させるための成形ゾーン22、及び、前記成形ゾーン22で発泡トレー形状の付与された発泡シートを打ち抜いて前記発泡トレー5を切り出す切り出しゾーン23が備えられている。
【0016】
なお、前記熱成形機2には、前記発泡シート11を略水平に保持した状態で前記加熱ゾーン21から前記切り出しゾーン23までの間を通過させ得るようにシート搬送手段が備えられており、該シート搬送手段は、成形ゾーン22での一度の熱成形に必要な長さの発泡シート11を成形ゾーンに搬送した後、該成形ゾーン22での熱成形が終了するまでの間発泡シート11を停止させ、該熱成形完了後、再び発泡シート11を下流側に移動させて新たなる発泡シート11を成形ゾーン22に供給し得るように構成されている。
即ち、前記シート搬送手段は、発泡シート11を間欠送りによって前記加熱ゾーン21から前記切り出しゾーン23までの間通過させ得るように備えられている。
【0017】
本実施形態における前記シート搬送手段は、前記加熱ゾーン21から前記切り出しゾーン23までの間を前記発泡シート11の側方において周回する左右一対の金属チェーン(図2中の符号24a)と、該金属チェーン24aに所定間隔を設けて取り付けされてなる把持具(図2中の符号24b)と、前記金属チェーン24aに所定の動作をさせるためのモーター及び制御装置(図示せず)などから構成されている。
【0018】
前記発泡シート11の進行方向(図2中の矢印D)に向かって左側の把持具24bと右側の把持具24bとの間の距離(W1)は、発泡シート11の幅(W0)よりも僅かに短くなるように設定されており、それぞれの把持具24bは、発泡シート11の側縁11eよりもわずかに内側の位置を把持しうるように備えられている。
【0019】
本実施形態における前記加熱ゾーン21は、前記成形ゾーン22での1バッチの熱成形に利用される発泡シート11の長さ、即ち、間欠送りにおいて一度に搬送される発泡シート11の長さの3倍の長さにわたって発泡シート11を予め加熱し得るように設けられている。
即ち、前記成形ゾーン22で1バッチの熱成形に利用される発泡シート11の長さを“L”とすると、加熱ゾーン21の全長は約“3L”の長さとなるように設けられている。
【0020】
この加熱ゾーン21は、この1バッチ長さ(L)を基本単位として大まかな温度設定が可能となるように形成されており、最も上流側の領域(以下「第一加熱ゾーン21a」ともいう)、中段の領域(以下「第二加熱ゾーン21b」ともいう)、最下流側の領域(以下「第三加熱ゾーン21c」ともいう)の3つの領域を個別に温度設定させ得るように形成されている。
【0021】
具体的には、前記第一加熱ゾーン21aには、発泡シート11の通過位置の上下に一対のヒータh11,h12が配されており、この内の上側のヒータh11は、下方に向けた輻射加熱を実施し発泡シート11を上面側から加熱し得るように配されており、下側のヒータh12は、上方に向けた輻射加熱を実施して発泡シート11を下面側から加熱し得るように配されている。
同様に第二加熱ゾーン21bにも上下一対のヒータh21,22が配され、前記第三加熱ゾーン21cにも上下一対のヒータh31,32が配されている。
そして、本実施形態に係る熱成形機2は、これらのヒータを個別に制御し得るように構成されている。
【0022】
なお、この第一加熱ゾーン21aから第三加熱ゾーン21cまでの領域の内、少なくとも、成形ゾーン22に隣接する第三加熱ゾーン21cは、さらに領域内を細分化した形で温度設定させ得るように形成されていることが本実施形態において重要な要件となる。
より具体的には、前記成形ゾーン22に近い領域(シート送り方向先端側)と、成形ゾーン22から遠い第二加熱ゾーン側の領域(シート送り方向末端側)とを別々の温度条件となるように形成されていることが重要であり、さらには、発泡シート11の幅方向においても温度差を設け得るように形成されていることが好ましい。
即ち、発泡シート11の幅方向両端部と中央部との温度に差を設け得るように形成されていることが好ましい。
【0023】
この加熱ゾーン21に続けて熱成形機2に設けられている成形ゾーン22と、該加熱ゾーン21との間には前記発泡シート11の間欠送りに連動して開閉するシャッター25が設けられており、該シャッター25は、発泡シート11の搬送時以外(成形ゾーンでの成形時)において加熱ゾーン21と成形ゾーン22との空気の流通を抑制し得るように設けられている。
【0024】
前記成形ゾーン22には、前記発泡トレー5の形状に相当する凹部26aを上面に向けて開口させた成形型26が該成形ゾーン22を通過する発泡シート11の下方に備えられており、本実施形態においては、前記発泡シート11の送り方向Dに3個、該送り方向Dに直交する方向に4個の凹部26aが配列され、計12個の凹部26aが配列された成形型26が備えられている。
該成形ゾーン22には、前記成形型26の凹部26aに相当する位置において下方に突出する凸部27aの形成されたプラグ27が備えられており、該プラグ27は、前記凸部27aの形成された面を前記成形型26の凹部形成面と対向させて発泡シート11の上方に備えられている。
【0025】
前記プラグ27は、前記成形型26による発泡シート11の真空成形をアシストさせるべく設けられており、前記真空成形において前記成形型26に向けて移動されることによって前記凸部27aによって発泡シート11を成形型26の凹部26aに侵入させるべく設けられている。
即ち、前記プラグ27は、真空成形に際して、前記凹部26aに形成された真空孔(図示せず)に発泡シート11を接近させるように作用し、当該作用によって発泡シート11を真空孔で真空吸引し易くさせ、成形型26の形状に沿わせて変形させるのをアシストさせ得るように設けられている。
【0026】
前記加熱ゾーン21が発泡シート11を軟化させ得る温度に設定されているのに対して、前記成形ゾーン22は、通常、常温(例えば、30℃)以下に設定されており、前記成形型26に沿って変形された発泡シート11を、前記成形型26との接触、並びに、雰囲気温度による冷却によって略加熱前の硬さとさせ得るようになっている。
このことによって次いで設けられている前記切り出しゾーン23において発泡シート11に意図しない変形が生じないようにされている。
【0027】
本実施形態における前記切り出しゾーン23には、板状の刃台28aの一面側から突出する抜き刃28bを有するトムソン刃型28が前記抜き刃28bを上面側に突出させた状態で前記発泡シート11の下方に備えられている。
前記トムソン刃型28は、前記成形型26に配列されている凹部26aの配列と同じように前記抜き刃28bを配列させており、ワンショットの打ち抜きによって前記成形型26で形成させた12個全ての製品を発泡シート11から切り出し得るように構成されている。
【0028】
なお、当該切り出しゾーン23には、前記トムソン刃型28との間に前記発泡シート11を挟んでその表面に前記抜き刃28bの先端部を当接させるための当て板29がさらに備えられており、該当て板29は、前記トムソン刃型28と上下に対向するように前記発泡シート11の上方に設けられている。
【0029】
前記切り出しゾーン23は、熱成形機2の最下流側に位置しており、該切り出しゾーン23の下流側には前記搬送装置3が設けられている。
この搬送装置3は、前記熱成形機2の側から下流側に向けて発泡トレー5を搬送するためのコンベヤベルト31を備えており、前記破砕機4は、このコンベヤベルト31の下方に設置されている。
そして、前記熱成形機2の切り出しゾーン23に設けられた当て板29は、トムソン刃型28で切り出された発泡トレー5を吸着して保持させる機構を備えるとともに発泡シート11の送り方向前後に向けて移動可能な状態で備えられており、打抜かれた発泡トレーを吸着させた状態で下流側に移動して、前記コンベヤベルト31の上に発泡トレー5を載置し得るように構成されている。
【0030】
また、発泡トレー5が切り出された後の端材は、前記シート搬送手段による新たなる発泡シートの供給によって自動的に切り出しゾーンから排出され、前記コンベヤベルト31の下方に設置された破砕機4に導入されて破砕されるようになっている。
【0031】
次に、上記製造装置を用いた発泡トレーの製造方法について、特に、加熱ゾーン21における温度設定を中心にして図2を参照しつつ説明する。
【0032】
前記発泡トレー5を作製するためには、前記原反ロール1から発泡シート11を繰り出し、繰り出した発泡シート11の幅方向両端部をそれぞれ熱成形機2の把持具24bに挟み込んで幅方向に軽いテンションをかけた状態でシート搬送装置にセットし、該発泡シート11を前記加熱ゾーン21、成形ゾーン22、及び、切り出しゾーン23を順次通過させる方法を採用することができる。
なお、通常、成形ゾーンにおいて熱成形に要する時間は3〜10秒程度である。
従って、前記シート搬送手段によって搬送される発泡シートが、各加熱ゾーン21a〜21cに滞留する時間も3〜10秒程度となる。
このような点において本実施形態に係る熱成形機2のごとく発泡シート11を加熱するヒータとして輻射式のヒータを採用していることが好ましい。
即ち、前記加熱ゾーン21a〜21cにおける発泡シート11の加熱温度は、発泡シートの材質などによっても異なるが、いずれにせよ各加熱ゾーンでは短時間に所定の温度にまで発泡シートを加熱させることが求められるため、主として雰囲気温度による加熱を行うような態様に比べて輻射式の加熱を行う方が好適であるといえる。
【0033】
なお、図2にA1からA6までの符号によって模式的に示しているように、成形ゾーン22の直前に設けられた第三加熱ゾーン21cにおいては、成形ゾーン22に近い領域(A1〜A3)と遠い領域(A4〜A6)とで所定の温度差を設けるように発泡シート11を加熱することが重要であり、好ましくは、成形ゾーン22に近い領域内においても発泡シート11の幅方向両端部(A2、A3)と中央部(A1)との間に温度差を設けることが好ましく、成形ゾーン22から遠い領域においても発泡シート11の幅方向両端部(A5、A6)と中央部(A4)との間に温度差を設けることが好ましい。
【0034】
このことに関して、より詳細に説明すると、図2に、A1〜A3で示した成形ゾーン22に近い領域は、次に成形ゾーン22に送られる発泡シートの先端側に位置し、A4〜A6で示した領域に比べて成形ゾーン内における移動距離が長くなる。
そのため、A1〜A3で示した領域を移動方向末端側のA4〜A6で示した領域と同じ温度に発泡シートを加熱していただけでは、成形ゾーン22においてA4〜A6で示した領域に比べてA1〜A3で示した領域が温度低下するおそれを有する。
温度の低い部分は、温度の高い部分に比べて変形し難くなるため、例えば、真空成形においてA1〜A3で示した領域で発泡シートの伸びが乏しくなる結果、発泡シートの幅方向両端部が極端に伸ばされてA2、A3の外側部分に相当する箇所において厚みが薄い発泡トレーが作製されてしまうおそれを有する。
【0035】
従って、成形ゾーンに導入後、真空成形が開始されるまでの間に、発泡シート11に温度差が生じることを抑制するために、第三加熱ゾーン21cでは、A1〜A3で示した移動方向先端側の領域の温度がA4〜A6で示した移動方向末端側の領域の温度よりも高温にさせることが重要で、このことによって製造される発泡トレーの寸法や強度を安定させ得る。
【0036】
また、A1〜A3で示した領域、及び、A4〜A6で示した領域についても、前記把持具24bに近い部分は冷却されやすいことから、少なくともA1〜A3で示した領域においては発泡シート11の幅方向においても温度差を設け、幅方向両端部のA2、A3の領域の温度がA1で示す中央部の温度よりも高温になるように発泡シート11を加熱することが好ましい。
また、要すれば、末端側のA4〜A6の領域においても幅方向両端部のA5、A6の領域の温度がA4で示す中央部の温度よりも高温になるようにしてもよい。
【0037】
なお、一般的な発泡トレーでは、発泡シートの移動方向における成形ゾーンの長さ(L)は、通常、80cm〜110cmである。
このような場合においては、前記A1〜A3で示した領域として、発泡シートの先端側の1/4〜1/8の領域をこれよりも末端側の領域と別の管理温度に設定することが好ましい。
また、発泡シートの幅方向に温度差を設ける場合においては、用いられる発泡シートの幅が、一般的な64cm〜104cmである場合には、前記A2、A3で示した領域として、発泡シートの幅方向の1/3〜1/5の領域をそれぞれ中央のA1で示す領域と別の管理温度とすることが好ましい。
【0038】
なお、一般的な発泡トレーでは、その形成材料としてスチレン系樹脂が採用されている。
例えば、スチレンホモポリマーである汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)や、耐熱ポリスチレン樹脂と呼ばれる樹脂が採用されている。
この耐熱ポリスチレン樹脂とは、スチレンホモポリマーとポリフェニレンエーテル樹脂との混合樹脂や、スチレン−不飽和カルボン酸共重合体樹脂が知られており、スチレン−不飽和カルボン酸共重合体樹脂としては、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、スチレン− マレイミド共重合樹脂などが知られている。
【0039】
通常、JIS K7206(B法、50℃/h)に基づいて測定される汎用ポリスチレン樹脂のビカット軟化温度は、102℃程度であり汎用ポリスチレン樹脂を主成分としたポリスチレン樹脂発泡シートを熱成形する際における加熱ゾーンでの最終的な発泡シート11の加熱温度は、105℃〜130℃とされる。
そして、このような場合においてA1〜A3で示した発泡シートの移動方向先端側の領域では、A4〜A6で示した移動方向末端側の領域よりも発泡シート11の表面温度を10℃〜25℃高温にさせることが好ましく、特には、20℃〜25℃高温にさせることが好ましい。
また、発泡シートの幅方向に温度差を設ける場合においては、用いられる発泡シートの幅が、前記のような一般的な幅のものである場合には、前記A2、A3で示した領域では中央部のA1で示す領域に対して発泡シート11の表面温度を10℃〜25℃高温にさせることが好ましく、特には、20℃〜25℃高温にさせることが好ましい。
【0040】
なお、通常、ヒータの設定温度に上記のような温度差を設けることで発泡シートも同様の温度差となるが、例えば、ヒータの設定温度と発泡シートの温度との間に乖離が生じるようなおそれがある場合には、全域に所定の間隔でサーモラベルを貼り付けた発泡シートを、実際の熱成形時と同じ間欠送り条件で加熱ゾーンを通過させて、どのようなヒータ温度設定をした場合に、発泡シートにどの程度の温度差が生じるかを予め確認しておけばよい。
【0041】
また、前記発泡シートとしてビカット軟化温度が110〜155℃の前記耐熱ポリスチレン樹脂を主成分とした耐熱ポリスチレン樹脂発泡シートを用いる場合であれば、A1〜A3で示した領域では、A4〜A6で示した領域よりも発泡シート11の表面温度を10℃〜35℃高温にさせることが好ましく、特には、20℃〜30℃高温にさせることが好ましい。
また、前記A2、A3で示した領域では、A1で示す領域に対して発泡シート11の表面温度を10℃〜35℃高温にさせることが好ましく、特には、20℃〜30℃高温にさせることが好ましい。
【0042】
なお、樹脂発泡シートとして、単なる発泡シートではなく、一面側又は両面にポリスチレン樹脂フィルムなどがラミネートされてなる積層発泡シートを用いるような場合においても温度条件等については上記と同様に設定することができる。
【0043】
また、ポリプロピレン樹脂を主成分としたポリプロピレン樹脂発泡シートを用いる場合においては、A1〜A3で示した発泡シートの移動方向先端側の領域では、A4〜A6で示した移動方向末端側の領域の温度よりも発泡シート11の表面温度を20℃〜50℃高温にさせることが好ましく、特には、20℃〜30℃高温にさせることが好ましい。
また、発泡シートの幅方向に温度差を設ける場合においては、用いられる発泡シートの幅が、前記のような一般的な幅のものである場合には、前記A2、A3で示した領域では中央部のA1で示す領域に対して発泡シート11の表面温度を10℃〜30℃高温にさせることが好ましく、特には、20℃〜30℃高温にさせることが好ましい。
【0044】
このようにして、前記間欠送りによって次に成形ゾーン22に送られる発泡シート11の先端側(A1〜A3)の温度が末端側(A4〜A6)の温度よりも高温になるように前記加熱ゾーン21における発泡シート11の加熱が実施されることから成形ゾーン22において発泡シート22の温度が不均一になることを抑制させることができ製造される発泡トレーの寸法や強度を安定させ得る。
【0045】
なお、本実施形態においては、上記に例示したような構成を有する製造装置を用いて、上記のような加熱条件で発泡シートを加熱して発泡トレーを作製する場合を例にして本発明に係る樹脂成形品の製造方法を説明しているが、本発明は上記例示に限定されるものではない。
【0046】
また、本発明は、製造する樹脂成形品を発泡トレーのような容器に限定するものではなく、少なくとも成形型に沿わせた変形が樹脂発泡シートに加えられる全ての場合において、当該樹脂発泡シートに温度差が生じることが抑制され、得られる樹脂成形品の寸法や強度を安定させることができるという本発明の効果は、容器以外の樹脂成形品を作製する場合においても同様に発揮されるものである。
さらに、上記に例示がされていない従来公知の事象についても、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、必要に応じて本発明の樹脂成形品の製造方法に適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1:原反ロール、2:熱成形機、3:搬送装置、4:破砕機、5:発泡トレー、11:発泡シート、21:加熱ゾーン、21a:第一加熱ゾーン、21b:第二加熱ゾーン、21c:第三加熱ゾーン、22:成形ゾーン、23:切り出しゾーン、26:成形型、27:プラグ、28:トムソン刃型、29:当て板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の樹脂発泡シートを熱成形機に間欠送りして該熱成形機の加熱ゾーンにおいて前記樹脂発泡シートを加熱し、該加熱ゾーンに続けて設けられている成形ゾーンにおいて前記加熱ゾーンで加熱された樹脂発泡シートを成形型に沿わせて変形させるとともに冷却させて該樹脂発泡シートに製品形状を形成させる樹脂成形品の製造方法であって、
前記成形ゾーンに導入させた樹脂発泡シートに温度差が生じることを抑制すべく、前記加熱ゾーンでは、前記間欠送りによって次に成形ゾーンに送られる樹脂発泡シートの先端側の温度を末端側の温度よりも高温にさせることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記加熱ゾーンでは、前記先端側と前記末端側との間において温度差を設けるとともに前記先端側においては樹脂発泡シートの幅方向においても温度差を設け、前記幅方向両端部の温度を中央部の温度よりもさらに高温にさせる請求項1記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂発泡シートが、スチレンホモポリマーを主成分とするポリスチレン樹脂発泡シートであり、前記先端側の温度が前記末端側の温度よりも10℃〜25℃高温になるように前記加熱を実施する請求項1又は2記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂発泡シートが、ビカット軟化温度が110〜155℃の耐熱ポリスチレン樹脂を主成分とする耐熱ポリスチレン樹脂発泡シートであり、前記先端側の温度が前記末端側の温度よりも10℃〜35℃高温になるように前記加熱を実施する請求項1又は2記載の樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−135983(P2012−135983A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290770(P2010−290770)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000158943)株式会社積水技研 (35)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】