説明

樹脂組成物、光学膜及び光学用部材

【課題】段差を有する基材に対する優れた追随塗布性を有し、かつ高屈折率で、パターニング可能な硬化膜を与える、樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で示される構造を有するポリアミック酸、


[R=炭素数1〜3のアルキル基又はシアノ基;a=0〜4の整数;R=4価の有機基;n=1〜4の整数;m=1〜100000の整数]及び一般式(1)のポリアミック酸のイミド化重合体の1種、(B)第4族元素の酸化物を主成分とする粒子、(C)成分(A)の貧溶媒、及び(D)成分(A)の良溶媒の少なくとも1種を含有し、組成物中の全有機溶媒量を100重量%としたときに、成分(C)を30〜80重量%、及び成分(D)を20〜70重量%含有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、それから得られる光学膜及び光学用部材に関する。より詳細には、深さ0.4〜1.2μm、幅1〜5mm程度の段差を有する基材に対して、追随塗布可能な樹脂組成物、それから得られる光学膜及び光学用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子の受光部への集光効率を向上させるため、透明性の高いポリイミド等の樹脂に屈折率の高い金属酸化物粒子を導入した樹脂組成物を固体撮像素子のレンズに用いることが知られている。例えば、特許文献1には露光部がアルカリ現像により溶解するポジ型の感光性樹脂と酸化チタン粒子等を組合せた高屈折率樹脂組成物を用いる例が記載されている。しかしながら、上記ポジ型感光性高屈折率樹脂組成物では、深さ0.4〜1.2μm、幅1〜5mm程度の段差を有する基材に対して、ストリエーションや膜厚ムラが発生するなど、塗布欠陥なく追随塗布することができないことが問題であった。
【0003】
【特許文献1】再表2005/088396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、段差を有する基材に対する優れた追随塗布性を有し、かつ高屈折率の硬化膜を与える樹脂組成物を提供することを目的とする。ここで、「追随塗布性」とは、段差に追随して塗布され、周囲のストリエーションや凹み内に膜厚ムラを生じないという特性をいう。
さらに、本発明は、段差を有する基材上に形成された、高屈折率であり、かつ透明性に優れた光学膜及び光学用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、特定の構造を有するポリアミック酸及び/又はイミド化重合体及び透明性及び屈折率の高い金属酸化物粒子に、ポリアミック酸及び/又はイミド化重合体の、特定の温度範囲の沸点を有する貧溶媒及び良溶媒を特定の割合で配合した組成物が、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は下記の樹脂組成物、光学膜及び光学用部材を提供する。
1.(A)下記一般式(1)で示される構造を有するポリアミック酸、
【化2】

[式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はシアノ基であり、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示し、mは1〜100000の整数を示す。]
及び該ポリアミック酸のイミド化重合体からなる群から選択される少なくとも1種、
(B)周期律表第4族元素の酸化物を主成分とする、動的光散乱で測定した粒子径が1〜100nmの範囲内の粒子、
(C)1気圧における沸点が100〜170℃であり、成分(A)の貧溶媒である有機溶媒、及び、
(D)1気圧における沸点が170℃を超え230℃以下であり、成分(A)の良溶媒である有機溶媒(D−1)及び1気圧における沸点が100〜170℃であり、成分(A)の良溶媒である有機溶媒(D−2)からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒
を含有し、
上記組成物中の全有機溶媒量を100重量%としたときに、成分(C)を30〜80重量%、及び成分(D)を20〜70重量%含有し、かつ(D−1)の割合が0〜30重量%である樹脂組成物。
2.前記成分(B)の割合が、有機溶媒を除く成分の合計量を100重量%としたときに、30〜80重量%である上記1に記載の樹脂組成物。
3.さらに、(E)キノンジアジド化合物を含有する上記1又は2に記載の樹脂組成物。
4.前記一般式(1)中のRが、4価の脂環族基からなる群から選択される上記1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
5.前記成分(B)が、ルチル型酸化チタン粒子である上記1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.前記成分(B)が、酸化珪素被覆されたルチル型酸化チタン粒子である上記5に記載の樹脂組成物。
7.さらに、(F)界面活性剤を含有する上記1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.上記1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に塗布した後、加熱して得られる光学膜。
9.波長633nmでの屈折率が1.65以上である上記8に記載の光学膜。
10.上記8又は9に記載の光学膜からなる光学用部材。
11.上記1〜7のいずれかに記載の感光性組成物を基材に塗布した後、マスクを介して露光、現像して形成される光学用部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、段差を有する基材に対する優れた追随塗布性を有する樹脂組成物を提供できる。
本発明によれば、本発明の組成物は固体撮像素子の高屈折率部材の製造原料として有用な、透明性に優れ、屈折率が1.80超と非常に高く、さらにパターニング可能な硬化膜を与える硬化性組成物を提供できる。
本発明によれば、透明性に優れ、屈折率の高い光学膜を提供できる。
本発明によれば、さらにパターニングされた光学用部材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の樹脂組成物、光学膜及び光学用部材について詳細に説明する。
I.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物(以下、本発明の組成物という)は、下記成分(A)〜(G)を含み得る。これらの成分のうち、成分(A)〜(D)は必須成分であり、成分(E)〜(G)は、目的に応じて添加される任意成分である。
下記成分(A)〜(D):
(A)下記一般式(1)で示される構造を有するポリアミック酸、
【化3】

[式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はシアノ基であり、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示し、mは1〜100000の整数を示す。]
及び該ポリアミック酸のイミド化重合体からなる群から選択される少なくとも1種、
(B)周期律表第4族元素の酸化物を主成分とする、動的光散乱で測定した粒子径が1〜100nmの範囲内の粒子、
(C)1気圧における沸点が100〜170℃であり、成分(A)の貧溶媒である有機溶媒
(D)1気圧における沸点が170℃を超え230℃以下であり、成分(A)の良溶媒である有機溶媒(D−1)及び1気圧における沸点が100〜170℃であり、成分(A)の良溶媒である有機溶媒(D−2)からなる群から選択される少なくとも1種
(E)キノンジアジド化合物
(F)界面活性剤
(G)添加剤
【0009】
本発明の組成物は、(C)所定範囲の沸点を有する成分(A)の貧溶媒である有機溶媒と、(D)所定範囲の沸点を有する成分(A)の良溶媒である有機溶媒(D−1)及び有機溶媒(D−2)からなる群から選択される少なくとも1種とを、組成物中の全有機溶媒量を100重量%としたときに、成分(C)及び(D)を下記割合で含有し、
(C):30〜80重量%
(D):20〜70重量%
かつ、成分(D−1)を、0〜30重量%の範囲で含有していることにより、追随塗布性及び透明性に優れ、かつパターニング可能な硬化膜を形成することができる。
本発明の組成物は、(A)所定の構造を有するポリアミック酸及び/又はイミド化重合体、並びに(B)の粒子を含有していることにより、透明性に優れ、かつ高屈折率の硬化膜を形成することができる。
【0010】
以下、各成分について説明する。
(A)一般式(1)で示される構造を有するポリアミック酸及びイミド化重合体
本発明における成分(A)は、特定の構造を有するポリアミック酸(A−1)及びポリアミック酸(A−1)のイミド化重合体(A−2)からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0011】
(A−1)ポリアミック酸
本発明で用いるポリアミック酸は、下記一般式(1)で示される構造を有し、それ自体の屈折率(25℃、波長400〜700nm)が非常に高く、高屈折率で、透明性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる。
【化4】

【0012】
式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はシアノ基を示し、aは基Rの置換数であり、0〜4の整数を示す。aは0(即ち、置換基無し)であるか、又はRがシアノ基であり、aが1であることが好ましい。
Rは4価の有機基を示し、具体的には、脂肪族、脂環族又は芳香族テトラカルボン酸二無水物から無水物基を除去した残基に相当し、得られる硬化物が透明性に優れることから、脂環族テトラカルボン酸二無水物又は脂肪族テトラカルボン酸二無水物の残基であることが好ましい。また、Rは、高屈折率が得られることから、硫黄原子を含んでいることも好ましい。
nは1〜4の整数を示し、2〜4の整数であることが好ましい。
mは1〜100000の整数を示し、10〜10000の整数であることが好ましい。
【0013】
(a)一般式(1)で示される構造を有するポリアミック酸の製造
本発明の成分(A)は、下記一般式(3)で示されるジアミンと、下記一般式(4)で示されるテトラカルボン酸二酸無水物を反応させて得られる。
【化5】

上記式(3)及び(4)中、R、R、a及びnは、一般式(1)で説明した通りであるため、ここでは省略する。
【0014】
(b)一般式(3)で示されるジアミン
一般式(3)で示されるジアミンの例としては、例えば、4,4’−(p−フェニレンジスルファニル)ジアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノールスルファニル)5−シアノベンゼン、4,4’−チオビス[(p−フェニレンスルファニル)アニリン]、4,4’−ビス(4−アミノフェニルスルファニル)−p−ジチオフェノキシベンゼン等が挙げられ、4,4’−チオビス[(p−フェニレンスルファニル)アニリン]等が好ましい。
【0015】
尚、本発明の組成物には、上記一般式(1)で示される構造を有するポリアミック酸以外のポリアミック酸を含有していてもよい。即ち、上記一般式(3)で示されるジアミンの他に、本発明の効果を損なわない範囲内で、硫黄原子を含有しないジアミンを併用することができる。この硫黄原子を含有しないジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリンを挙げることができる。
【0016】
また、上記の硫黄原子を含有しないジアミンの他、ジアミノテトラフェニルチオフェン等のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン等の脂肪族又は脂環族ジアミンを併用することもできる。
【0017】
成分(A)のポリアミック酸の製造に用いるジアミン類のうち、一般式(3)で示されるジアミンの割合は、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、高屈折率を達成するためには100モル%であることが特に好ましい。
【0018】
(c)一般式(4)で示されるテトラカルボン酸二酸無水物
本発明において用いられる酸無水物は上記一般式(4)で表される。式(4)中、Rはテトラカルボン酸二無水物から無水物基を除去した残基に相当する。このような化合物としては、脂肪族、脂環族又は芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられ、得られる硬化膜が優れた透明性を有することから、脂肪族及び脂環族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0019】
脂肪族及び脂環族テトラカルボン酸二無水物の例としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、4,10−ジオキサトリシクロ[6.3.1.02,7]ドデカン−3,5,9,11−テトラオン、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二水和物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族及び脂環族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらのうちではブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、4,10−ジオキサトリシクロ[6.3.1.02,7]ドデカン−3,5,9,11−テトラオン、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物及び1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオンが好ましく、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、4,10−ジオキサトリシクロ[6.3.1.02,7]ドデカン−3,5,9,11−テトラオン、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0020】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(フタル酸)二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらのうちでは、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(フタル酸)二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0021】
また、より高屈折率のポリアミック酸が得られることから、硫黄原子を含むテトラカルボン酸二無水物を用いることも好ましい。硫黄原子含有酸無水物の例としては、例えば、4,4’−[p−チオビス(フェニレン−スルファニル)]ジフタル酸無水物等が挙げられる。
【0022】
(d)一般式(3)で示されるジアミンと一般式(4)で示されるテトラカルボン酸二酸無水物の反応
一般に、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性有機溶媒中において、ジアミン化合物と酸二無水物とを攪拌混合することによって、成分(A)のポリアミック酸を溶液として得ることができる。例えば、ジアミン化合物を有機溶媒に溶解し、これに酸二無水物を加えて、攪拌混合してもよく、また、ジアミン化合物と酸二無水物との混合物を有機溶媒に加えて、攪拌混合してもよい。反応は、通常、100℃以下、好ましくは、80℃以下の温度で、常圧下に行われる。しかし、反応は、必要に応じて、加圧下又は減圧下に行ってもよい。反応時間は、用いるジアミン化合物と酸二無水物や、有機溶媒、反応温度等によって異なるが、通常、4〜24時間の範囲である。
【0023】
本発明の組成物中における成分(A)の配合量は、有機溶媒を除く固形分全量を100重量%としたときに、通常10〜100重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲内である。成分(A)の配合量が10重量%未満では、十分な屈折率や耐熱性が発現できないおそれがある。
尚、本発明の組成物の必須成分は成分(A)のみであるが、通常は、成分(A)の製造に用いられる有機溶媒を含み、組成物の塗工性等の観点からも有機溶媒を含有することが好ましい。
【0024】
(A−2)イミド化重合体
本発明で用いるイミド化重合体は、下記一般式(2)で示される構造を有し、波長633nmにおける屈折率が、通常1.60以上であり、好ましくは1.68以上、より好ましくは1.70以上である。
【化6】

式(2)中のR、a、R、n及びmは、一般式(1)と同様であるためここでは説明を省略する。
【0025】
イミド化重合体(A−2)は、上記ポリアミック酸(A−1)を、窒素雰囲気下で80〜150℃の温度で、1〜5時間加熱することによって得られる。
【0026】
成分(A)中のイミド化重合体(A−2)の割合は、イミド化率(%)で表され、20〜80%の範囲内であることが好ましく、50〜70%の範囲内であることがより好ましい。イミド化率が20%未満であると、アルカリ現像時にパターンが剥離するおそれがあり、80%を超えると、アルカリ現像時にパターンを形成出来ないおそれがある。
ここで、イミド化率(%)は、H−NMRを測定し、芳香環部位のプロトンとアミド部位のプロトンの積分値から算出して決定される。
【0027】
尚、イミド化率(%)は、イミド化触媒の量や加熱温度、反応時間等によって調節できる。
【0028】
本発明の組成物中における成分(A)の割合は、組成物中の固形分量(有機溶媒を除く成分の合計量)を100重量%としたときに、10〜50重量%の範囲内であることが好ましく、15〜40重量%の範囲内であることがより好ましい。成分(A)の割合が10重量%未満であると、硬化膜の屈折率の低下や、アルカリ現像時にパターンを形成出来ないおそれがあり、50重量%を超えると、硬化膜の透過率が低下するおそれがある。
【0029】
(B)周期律表第4族元素の酸化物を主成分とする、動的光散乱で測定した粒子径が1〜100nmの範囲内の粒子
本発明における成分(B)は周期律表第4属元素の酸化物粒子である。屈折率の高い粒子成分を添加することにより、得られる硬化物の屈折率をさらに高めることができる。
成分(B)の粒子の動的光散乱で測定した粒子径は、1〜100nmの範囲内であることが必要であり、1〜50nmの範囲内であることが好ましく、5〜15nmの範囲内であることがより好ましい。粒子径が1nm未満であると、二次凝集が起こり易く硬化膜が白化するおそれがあり、100nmを超えると、薄膜形成時の面均一性が損なわれるおそれがある。
【0030】
成分(B)の粒子として用いることができる酸化物粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム及びこれらの金属酸化物と酸化ケイ素や酸化スズの複合粒子が挙げられ、得られる硬化物の屈折率を高める効果の点から、酸化チタン及び酸化ジルコニウムが好ましい。
【0031】
尚、酸化チタンには、結晶型の違いにより、アナターゼ型とルチル型が存在するが、屈折率が高く、耐光性に優れることからルチル型が好ましい。
また、酸化チタンは、光触媒活性が有るため、そのままでは光学用途に用いることは難しいため、粒子表面を酸化ケイ素で被覆されていることが好ましい。
【0032】
成分(B)として用いる酸化物粒子は、粉体状であってもよいし、溶媒分散ゾルであってもよい。分散媒としては、例えば、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレングレコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0033】
成分(B)として用いることができる粒子の市販品の例としては、例えば、酸化ケイ素被覆アナターゼ型酸化チタン−メタノール分散ゾル(触媒化成工業社製、オプトレイクシリーズ)、酸化ケイ素被覆−酸化スズ含有ルチル型酸化チタン−メタノール分散ゾル(テイカ社製、TSシリーズ)、酸化ジルコニウム−メチルエチルケトン分散ゾル(大阪セメント社製、HXU−120JC)等が挙げられる。
【0034】
本発明の組成物中における成分(B)の割合は、有機溶媒を除く成分の合計量を100重量%としたときに、30〜80重量%の範囲内であることが好ましく、50〜70重量%の範囲内であることがより好ましい。成分(B)の割合が30重量%未満であると、高屈折率な膜が得られないおそれがあり、80重量%を超えると、製膜性が低下するおそれがある。
尚、成分(B)が溶媒分散ゾルである場合には、成分(B)の配合量には分散媒を含まない。
【0035】
(C)1気圧における沸点が100〜170℃であり、成分(A)の貧溶媒である有機溶媒
(D)1気圧における沸点が170℃を超え230℃以下であり、成分(A)の良溶媒である有機溶媒(D−1)及び1気圧における沸点が100〜170℃であり、成分(A)の良溶媒である有機溶媒(D−2)からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒
本発明の組成物は、上述した通り、特定の温度範囲の沸点を有する、成分(A)の貧溶媒及び良溶媒を所定の割合で配合することにより、段差を有する基材に対する優れた追随塗布性が達成される。
基材への塗布法としてスピンコート法が用いられる。本発明の組成物は、溶媒として特定の溶剤を一定の割合で使用することにより、スピンコート中の乾燥が促進され、塗布中の樹脂の動き、偏りが抑制されることによって、追随塗布性が向上すると考えられる。
【0036】
成分(A)に対する貧溶媒である成分(C)と、成分(A)に対する良溶媒である成分(D)の割合は、本発明の組成物中の全有機溶媒量を100重量%としたときに、成分(C)の割合が30〜80重量%の範囲内であり、成分(D)の割合が20〜70重量%の範囲内であることが必要である。成分(C)の割合が80重量%を超えると、組成物中に不溶物や沈殿物が生じ、塗布性が悪くなり、得られる硬化膜の透過率等の光学的特性が低下するおそれがある。一方、成分(D)が70重量%を超えると、成分(B)の分散性が低下し、組成物中に沈殿物が生じ、塗布性が低下するおそれがある。この様な理由から、全有機溶媒中の、成分(C)の割合が50〜80重量%、成分(D)の割合が20〜50重量%であることが好ましい。
尚、本発明の組成物は、通常、成分(A)のポリアミック酸製造の際に用いる溶媒を含有する。また、成分(B)の酸化物粒子として粒子の溶媒分散ゾルを用いる場合には、その分散媒も本発明の組成物中に含有される。上記割合はこれらの溶媒を含むものである。
【0037】
成分(C)として用いることができる有機溶媒の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
尚、本発明において「良溶媒」とは、溶媒100gに成分(A)10gを均一に溶解させ、不溶物や沈殿等を生じない溶媒を表す。
【0038】
成分(D)は、1気圧における沸点が170℃超230℃以下の有機溶媒(D−1)と、1気圧での沸点が100〜170℃である有機溶媒(D−2)からなる群から選択される1種以上であることが必要である。
全有機溶媒中の成分(D)の割合は上述したとおり20〜70重量%であるが、その内、成分(D−1)は、全溶媒中の0〜30重量%であることが必要である。高沸点な(D−1)の割合が30重量%を超えると溶媒の蒸発が遅くなりすぎ、段差の追随性が返って悪化してしまうおそれがある。
【0039】
成分(D−1)の有機溶媒の例としては、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0040】
成分(D−2)の有機溶媒の例としては、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0041】
本発明の組成物中における(C)、(D)を含む有機溶媒の配合量は、組成物中の有機溶媒を除く成分の合計量100重量部に対して、200〜900重量部の範囲であり、300〜600重量部の範囲であることが好ましい。また、全溶媒の20%を上限として(C)、(D)以外の溶媒を含むこともできるが、本発明の効果を得るためには、(C)、(D)以外の溶媒を含まないことが好ましい。
【0042】
(E)キノンジアジド化合物
本発明の組成物には、キノンジアジド化合物を配合することができる。キノンジアジド化合物は、本発明の組成物にパターン形成性を付与し、本発明の組成物をポジ型感光性にするために配合される。
キノンジアジド化合物に紫外線を照射することでインデンカルボン酸化合物になりアルカリ水溶液に可溶となるためパターニングが可能となる。
【0043】
キノンジアジドスルホン酸エステル化合物としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物の1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル及び1,2−ナフトキノンジアジド−6−スルホン酸エステル等が挙げられ、特に、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルが好ましい。
【0044】
キノンジアジドスルホン酸エステル化合物は、例えばポリヒドロキシ化合物とキノンジアジドスルホニルクロリドとを塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られる。通常、ポリヒドロキシ化合物の全水酸基に対するキノンジアジドスルホン酸エステルの割合(平均エステル化率)は、20%〜100%であり、好ましくは40%〜95%である。平均エステル化率が低すぎると、パターン形成が難しく、高すぎると感度の低下を招くことがある。ここで、用いられるポリヒドロキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、具体例として下記式に示す化合物が挙げられる。
【0045】
【化7】

[式中、Z〜Z15は、独立に、水素原子、C〜Cのアルキル基、C〜Cのアルコキシ基、又は水酸基である。但し、Z〜Z及びZ〜Z10の各群において少なくとも1つは水酸基である。また、Aは、水素原子又はC〜Cのアルキル基である]
【0046】
【化8】

[式中、Z16〜Z30は、前記Z〜Z15に関して定義した通りである。但し、Z16〜Z20、Z21〜Z25及びZ26〜Z30の各群において少なくとも1つは水酸基である。また、A〜Aは、独立に、水素原子又はC〜Cのアルキル基である]
【0047】
【化9】

[式中、Z31〜Z44は、前記Z〜Z15に関して定義した通りである。。但し、Z31〜Z35及びZ36〜Z39の各群において少なくとも1つは水酸基である。また、A〜Aは、独立に水素原子又はC〜Cのアルキル基である]
【0048】
【化10】

[式中、Z45〜Z58は、独立に、水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルキル基、C〜Cのアルコキシ基、又は水酸基である。但し、Z45〜Z48及びZ54〜Z58の各群において少なくとも1つは水酸基である。また、A及びA10は、独立に水素原子、C〜Cのアルキル基である]
【0049】
【化11】

[式中、Z59〜Z80は、前記Z〜Z15に関して定義した通りである。但し、Z59〜Z63、Z64〜Z67、Z72〜Z75及びZ76〜Z80の各群において少なくとも1つは水酸基である。また、A11〜A18は、独立に水素原子又はC〜Cのアルキル基である]
【0050】
【化12】

[式中、Z81〜Z98は、前記Z〜Z15に関して定義した通りである。但し、Z81〜Z85、Z86〜Z89、Z90〜Z93及びZ94〜Z98の各群において少なくとも1つは水酸基である。また、A19〜A24は、独立に水素原子又はC〜Cのアルキル基である]
【0051】
【化13】

[式中、Z99〜Z121は、前記Z〜Z15に関して定義した通りである。但し、Z99〜Z103、Z104〜Z108、Z112〜Z116及びZ117〜Z121の各群において少なくとも1つは水酸基である]
【0052】
キノンジアジド化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明の組成物における成分(E)は、組成物中の有機溶媒を除く全成分の合計量を100重量%としたときに、通常10〜40重量%の範囲内で配合され、10〜20重量%の範囲内で配合されることが好ましい。成分(E)の割合が10重量%未満であると、パターニング性が得られないおそれがあり、40重量%を超えると、組成物の塗布性が悪くなり、製膜そのものが困難となるおそれがある。
【0054】
(F)界面活性剤
本発明の組成物をスピンコートによって基材等に塗布する場合には、均一な塗膜が得られることから、界面活性剤を配合することが好ましい。
本発明で用いることができる界面活性剤の種類としては、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられ、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤が好ましい。
【0055】
ポリジメチルシロキサン系の界面活性剤の例としては、例えば、SH28PA(東レダウコーニング社製、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体)、ペインタッド19、54(東レダウコーニング社製、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体)、FM0411(サイラプレーン、チッソ社製)、SF8428(東レダウコーニング社製、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(側鎖OH含有))、BYK UV3510(ビックケミー・ジャパン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)、DC57(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)、DC190(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)、サイラプレーンFM−4411、FM−4421、FM−4425、FM−7711、FM−7721、FM−7725、FM−0411、FM−0421、FM−0425、FM−DA11、FM−DA21、FM−DA26、FM0711、FM0721、FM−0725、TM−0701、TM−0701T(チッソ社製)、UV3500、UV3510、UV3530(ビックケミー・ジャパン社製)、BY16−004、SF8428(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、VPS−1001(和光純薬製)等が挙げられる。特にサイラプレーンFM−7711、FM−7721、FM−7725、FM−0411、FM−0421、FM−0425、FM0711、FM0721、FM−0725、VPS−1001等を挙げることができる。また、エチレン性不飽和基を有する当該シリコーン化合物の市販品としては、例えば、Tego Rad 2300、2200N、テゴ・ケミー社等を挙げることができる。
【0056】
フッ素系の界面活性剤の例として、例えば、メガファックF−114、F410、F411、F450、F493、F494、F443、F444、F445、F446、F470、F471、F472SF、F474、F475、R30、F477、F478、F479、F480SF、F482、F483、F484、F486、F487、F172D、F178K、F178RM、ESM−1、MCF350SF、BL20、R08、R61、R90(大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0057】
本発明の組成物中における成分(F)の配合量は、有機溶媒を除く成分全量を100重量%としたときに、通常0〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜1重量%の範囲内である。成分(E)の配合量が10重量%を超えると、屈折率が低下するおそれがある。
【0058】
(G)添加剤
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、上記成分以外の硬化性化合物、酸化防止剤等が挙げられる。
【0059】
硬化性化合物には、熱硬化性化合物及び光硬化性化合物を含む。これらの化合物を配合することにより、得られる硬化物の硬度を高めることができる。
熱硬化性化合物としては、例えば、メラミン化合物、アルコキシシラン等が挙げられる。
光硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物等が挙げられる。
【0060】
本発明の樹脂組成物の調製は、既知の方法で行うことができる。ポリアミック酸及び/又はイミド化重合体溶液とキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、γ−ブチロラクトン、ジメチルアセトアミド、乳酸エチル等の溶媒及び界面活性剤とを常温常圧下で撹拌溶解させ、更に本溶液をチタニア粒子の分散液に撹拌しながら添加し、常温常圧下で混合し、樹脂組成物を得ることができる。なお、組成物は感光性を有するため、作業は全て紫外線遮光下で行うことが好ましい。
【0061】
上記本発明の組成物は、孔径0.05〜1μm程度のフィルター、好ましくは0.5μmのフィルターで予めろ過しておくことが好ましい。また、本発明の組成物を塗布する基板はHMDS(ヘキサメチルジシラザン)で表面処理されていても良い。HMDSの処理方法は、例えばHMDSを基板上に滴下しスピンコータで基板を回転させて余剰のHMDSを除去する方法や、気化したHMDSが存在する雰囲気に基板を曝す方法等が挙げられる。本発明の組成物を塗布する方法は、スピンコート、ロールコート、バーコート、大コート、グラビア印刷等が挙げられるが、膜厚の均一性を得やすいことからスピンコートが好ましい。上記、塗布基板は、更にホットプレートやオーブンでベークすることが好ましい。ベークの条件は組成物により適宜調整できるが、例えば50〜150℃、好ましくは80〜120℃のホットプレートで、30〜300秒、好ましくは60〜120秒加熱することにより塗膜を作製することができる。更に、照度が10〜1000mW/cm、照射光量が10〜1000mJ/cm程度の条件で露光し、次いで80〜300℃、好ましくは100〜280℃のホットプレートで、30〜500秒、好ましくは120〜300秒加熱することにより、硬化膜を作製することができる。露光の光源は、本発明の組成物の成分(C)が感応する波長の光を含んでいれば特に限定されないが、高圧水銀ランプ、紫外線レーザー等が適用できる。
【0062】
II.光学膜
本発明の光学膜は、上記本発明の組成物を基材に塗布した後、加熱して得られる。
基材としては、例えば、イメージセンサが製造された酸化ケイ素や窒化ケイ素基材等が挙げられる。
本発明の光学膜の形成は、上述した通りであるためここでは省略する。
本発明の光学膜は、通常0.1〜2μm、好ましくは0.3〜1μmの膜厚を有し、633nmにおける屈折率が、通常1.65以上であり、好ましくは1.70以上であり、より好ましくは1.80以上である。
本発明の光学膜は屈折率が高く、透明性に優れているため、固体撮像素子の高屈折率部材、 等として有用である。
【0063】
III.光学用部材
本発明の光学用部材は、上記本発明の光学膜からなり、好ましくは所望のパターンマスクを介して露光、現像して形成された、パターニングされた部材である。
尚、本発明の光学用部材の製造において用いる上記本発明の組成物は、非露光の部分が硬化し、露光した部分が未硬化となるポジ型の光硬化性組成物である。
本発明のパターニングされた光学用部材は、例えば、固体撮像素子のマイクロレンズアレイ等として有用である。
【0064】
本発明のパターニングされた光学用部材は、次のようにして製造することができる。
上記光学膜の作製と同様にして形成した塗膜に、所望のパターンを有するマスクを介して露光し、パターン形成を行う。露光は、マスクアライナーや縮小投影露光装置等を用いることができる。露光の光源は、本発明の組成物の(C)成分が感応する波長の光を含んでいれば特に限定されないが、高圧水銀ランプ、紫外線レーザー等が適用できる。露光した膜は続く現像工程で現像される。現像方法は、パドル現像、ディップ現像、シャワー現像等が挙げられる。現像して得られたパターニングざれた光学膜を、更に照度が10〜1000mW/cm、照射光量が10〜1000mJ/cm程度の条件で露光し、次いで80〜300℃、好ましくは100〜280℃のホットプレートで、30〜500秒、好ましくは120〜300秒加熱することにより、光学用部材を形成することができる。
【0065】
パターニングに用いる現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を溶解したアルカリ水溶液等が好ましい。
本発明で用いることができる現像液の市販品の例としては、PD523、PD523AD、CD200CR(JSR社製)等が挙げられる。
現像液の濃度は、必要に応じて適宜決定すべきであるが、通常は0.01〜10重量%の範囲内、好ましくは0.1〜1重量%の範囲内である。
【0066】
上記に得られるパターニングされた光学用部材の解像性は、例えばL/Sパターンで確認できる。1L/1Sパターンの解像性は、通常は0.2〜1000μm、好ましくは0.2〜100μm、より好ましくは0.2〜10μmのパターンが残渣無く得られる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0068】
合成例1
4,4’−チオビス[(p−フェニレンスルファニル)アニリン](3SDA)の合成
【化14】

攪拌機、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、4,4’−ビス(4−ニトロフェニルスルファニル)ジフェニルスルフィド(13.7g、0.028mol)と脱水エタノール(100mL)、そして10%パラジウム活性炭(1.20g)、を加え、加熱還流した。その後、ヒドラジン・一水和物(60mL)と脱水エタノール(20mL)を1.5時間かけ滴下し、反応液を6時間加熱還流した。反応液を熱濾過し、黄色の析出物を濾取しエタノールで洗浄した。得られた黄色の個体はエタノールを用いて再結晶し精製した。
【0069】
収量:10.2g
収率:84.0%
融点:142〜143℃(DSC)
FT−IR(KBr、cm−1):3428.8、3382.5、1619.9、1592.9、1496.5、1473.3、1292.0、1176.4、1099.2、1010.5、825.4
H−NMR(300MHz、DMSO−d、ppm):5.46(s、4H)、6.62−6.64(d、4H)、6.98−7.01(d、4H)、7.15−7.19(m、8H)
元素分析:計算値 C2420:C、66.63%;H、4.66%;N、6.48%
測定値 C、66.59%;H、4.77%;N、6.34%
【0070】
製造例1
ポリアミック酸/イミド化重合体P−1(成分(A))の製造
窒素導入管を備えた反応容器に、3SDA(43.19g、99.8mmol)とN−メチル−2−ピロリドン(250g)を加え、室温で撹拌し完全に溶解させた。次に、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物(新日本理化社製、BT−100)(19.81g、100mmol)を添加し、60℃で3時間撹拌して、ポリアミック酸のNMP溶液を得た。次いでNMP(300g)、無水酢酸(10.21g、100mmol)及びピリジン(7.91g、100mmol)を加え、110℃で4時間撹拌して、ポリアミック酸/イミド化重合体P−1(成分(A))のNMP溶液を得た。エバポレーターを用いて残留無水酢酸、ピリジン及びNMPを減圧除去し、固形分濃度20%に濃縮した後、γ−ブチロラクトンを固形分濃度が10%になるように添加した。濃縮、γ−ブチロラクトンによる希釈を3回繰り返した後、固形分濃度25%に調整し、ポリアミック酸/イミド化重合体P−1(成分(A))のγ−ブチロラクトン溶液を得た。本溶液を滴下漏斗を用いてメタノール(6300g)に撹拌しながら滴下し、析出した白色沈殿物をろ別し、減圧乾燥器を用いて乾燥してポリアミック酸/イミド化重合体P−1(成分(A))の粉体を得た。
H−NMR測定により、芳香環部位(δ6.5〜8.0)とアミド部位(δ9.9〜10.6)の積分値の比から算出したイミド化率は50%であった。
【0071】
合成例2
4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(48重量%)と6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソ−ナフタレン−1−スルホン酸(52重量%)とのエステル(成分(E))の製造
【化15】

【0072】
攪拌装置付きの容器に、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(本州化学(株)製、Tris−PPA)42.4g(0.1モル)、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリド(東洋合成(株)製、NAC−5)53.7g(0.2モル)をアセトン600mLに溶解させた。この溶液を氷冷し、トリエチルアミン22.3g(0.22モル)をアセトン100mLに希釈した溶液を内温が30℃を越えないように30分掛けて滴下した。滴下終了後、室温で1時間攪拌をした。その後、ろ過でトリエチルアミンの塩酸塩を除き、ろ液を0.1%塩酸水溶液20Lに投入して、反応生成物を析出させ、ついで析出物を濾過し、回収し、真空乾燥器中40℃で一昼夜乾燥してキノンジアジド化合物を得た。
【0073】
実施例1
樹脂組成物の製造
製造例1で得たポリアミック酸/イミド化重合体P−1(成分(A))の粉体(32g)をγ−ブチロラクトン(120.1g)に溶解した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(16.6g)、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(東レ・ダウコーニング社製 DC−190)(0.1g)を加え、常温常圧下で攪拌混合し、均一溶液とした。次いで酸化ケイ素被覆−酸化スズ含有ルチル型酸化チタンのプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液(固形分濃度20.5%)(テイカ社製、TS−103)(331.2g)を加え、常温常圧下で攪拌し、均一に分散させた。
【0074】
実施例2〜6及び比較例1〜3
下記表1に記載の配合割合とした他は実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。
【0075】
<組成物の特性>
実施例及び比較例で製造した組成物の液外観及び段差追随塗布性について評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(1)液外観
液組成物の外観を観察し、不溶物、沈殿物等が無い場合を「○」、ある場合を「×」と評価した。
【0077】
(2)段差追随塗布性
シリコンウェハ上に、テトラエトキシシランを用いて深さ1.3μm、幅5mmサイズの凹みパターンを有する基板を作成した。
上記基板に対して液組成物をスピン塗布した場合に、ストリエーションや膜厚ムラ等なく、凹みパターンに均一に追随して塗布された場合を「○」、均一に追随して塗布されなかった場合を「×」と評価した。
段差部の膜厚を触針式段差測定装置(アルバック社製 Dektak 3ST)を用いて測定した結果を図1に示す。
【0078】
<硬化膜の特性>
実施例及び比較例で製造した組成物を、シリコンウェハ上にスピンコートし、120℃で1分間加熱乾燥させた後、照度20mW/cm、照射光量1J/cmの条件で露光し、次いで250℃で5分間加熱し、膜厚0.6μmの測定試料(硬化膜)を得た。
得られた硬化膜の屈折率及び透過率を測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0079】
(1)屈折率
液組成物を、シリコンウェハ上にスピンコートし、120℃で1分間加熱乾燥させ、膜厚0.6μmの測定試料を得た。
上記測定試料について、メトリコン社製プリズムカップラーを用いて波長633nmでの屈折率を測定した。
【0080】
(2)透過率
ガラスウェハ上に塗布する以外は上記(1)屈折率と同様にして測定試料を作製した。上記測定試料について、日本分光社製分光光度計を用いて透過率を測定し、波長400nmでの透過率が90%以上の場合を「○」、90%未満の場合を「×」と評価した。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例及び比較例で用いた有機溶媒に対する成分(A)であるP−1の溶解性及び沸点を下記表2に示す。
【表2】

【0083】
表1及び表2中の成分は下記のものを示す。
成分(A):
P−1:製造例1で製造
成分(B):
酸化ケイ素被覆−酸化スズ含有ルチル型酸化チタン:テイカ社製、(商品名:TS−103)、粒子径:5〜15nm
成分(E):
キノジンジアジドスルホン酸エステル化合物:4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(48重量%)と6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソ−ナフタレン−1−スルホン酸(52重量%)とのエステル、合成例2で合成
成分(F):
ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体:東レ・ダウコーニング社製、DC−190
【0084】
表1の結果から、所定の沸点を有する2種類の有機溶媒(C)及び(D)を所定の割合で含有させた実施例の組成物は、段差追随塗布性に優れ、屈折率が1.85〜1.87と高く、透明性に優れた硬化膜を与えることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の組成物は、段差を有する基材に対して追随塗布可能であり、透明性に優れ、屈折率が1.80超と非常に高く、さらにパターニング可能な硬化膜を与えることができ、固体撮像素子の高屈折率部材の製造原料として有用である。
本発明の組成物は、追随塗布性を有するため、段差を有する基板上にマイクロレンズを形成する固体撮像素子等に好適に用いることができる。
本発明の光学膜は、透明性に優れ、屈折率が高く、樹脂部材として有用である。
本発明の光学用部材は、所望の形状にパターニングすることができ、例えば、マイクロレズ材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例2及び比較例2の組成物を、それぞれ段差を有する基材に塗布した場合の様子を示す段差形状計測結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示される構造を有するポリアミック酸、
【化1】

[式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はシアノ基であり、aはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、Rは4価の有機基を示し、nは1〜4の整数を示し、mは1〜100000の整数を示す。]
及び該ポリアミック酸のイミド化重合体からなる群から選択される少なくとも1種、
(B)周期律表第4族元素の酸化物を主成分とする、動的光散乱で測定した粒子径が1〜100nmの範囲内の粒子、
(C)1気圧における沸点が100〜170℃であり、成分(A)の貧溶媒である有機溶媒、及び、
(D)1気圧における沸点が170℃を超え230℃以下であり、成分(A)の良溶媒である有機溶媒(D−1)及び1気圧における沸点が100〜170℃であり、成分(A)の良溶媒である有機溶媒(D−2)からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒
を含有し、
上記組成物中の全有機溶媒量を100重量%としたときに、成分(C)を30〜80重量%、及び成分(D)を20〜70重量%含有し、かつ(D−1)の割合が0〜30重量%である樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(B)の割合が、有機溶媒を除く成分の合計量を100重量%としたときに、30〜80重量%である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(E)キノンジアジド化合物を含有する請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)中のRが、4価の脂環族基からなる群から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分(B)が、ルチル型酸化チタン粒子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記成分(B)が、酸化珪素被覆されたルチル型酸化チタン粒子である請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(F)界面活性剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物を基材に塗布した後、加熱して得られる光学膜。
【請求項9】
波長633nmでの屈折率が1.65以上である請求項8に記載の光学膜。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の光学膜からなる光学用部材。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性組成物を基材に塗布した後、マスクを介して露光、現像して形成される光学用部材。


【図1】
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【公開番号】特開2010−37425(P2010−37425A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201510(P2008−201510)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】