説明

樹脂組成物、樹脂ワニス、耐熱性接着剤、耐熱性接着フィルム、これを用いた接着フィルム付きリードフレーム、接着フィルム付き有機基板及び半導体装置

【課題】無色透明性と耐熱性に優れた樹脂組成物、これを有機溶媒中に溶解して得られる組成物、無色透明性と耐熱性に優れた耐熱性接着剤、耐熱性接着フィルム、接着フィルム付きリードフレーム、接着フィルム付き有機基板、及びこれらを用いた半導体装置を提供。
【解決手段】エーテル基含有芳香族ジアミン化合物と芳香族ジカルボン酸化合物との反応により得られた重合体を含有し、波長400nmの光の光透過率が10%〜100%である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂ワニス、耐熱性接着剤、耐熱性接着フィルム、これを用いた接着フィルム付きリードフレーム、接着フィルム付き有機基板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、エレクトロニクスの分野において用いられる接着材料、例えば印刷回路用基板における金属箔とポリイミドフィルム等の支持材との接着材料や、樹脂封止型の半導体装置内におけるリードフレームと半導体素子(チップ)の接着材料や、いわゆるTABテープの金属箔とポリイミドフィルムとの接着材料には高温特性、純度、作業性に優れた材料が求められている。従来、これら接着材料として用いられてきたエポキシ系、ゴム変性エポキシ系、フェノール系、アクリル系等の熱硬化性樹脂は優れた接着性を示すが、耐熱性、純度に劣り、また、硬化時に副生するアウトガスにより被接着体を汚染するという欠点がある。
【0003】
一方、接着材料として、耐熱性の高い熱可塑性樹脂を溶融圧着して用いる検討もなされている(例えば特開平1−268778号公報、特開平1−282283号公報等)。上記の熱可塑性樹脂を用いた接着材料は,耐熱性に優れ、硬化が不要でなおかつアウトガスの発生も少ないので、LOC(lead on chip)パッケージ等に広く用いられている。しかし上記の熱硬化性接着材料及び熱可塑性接着材料は、着色や濁りがあるため、無色透明性が要求される用途には用いることが出来なかった。
【特許文献1】特開平1−268778号公報
【特許文献2】特開平1−282283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、無色透明性と耐熱性に優れた樹脂組成物、これを有機溶媒に溶解してなる樹脂ワニス、耐熱性接着剤、耐熱性接着フィルム、接着フィルム付きリードフレーム、接着フィルム付き有機基板、及びこれらを用いた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(1)下記式(I)で表される構造単位を有する重合体を含有し、波長400nmの光の光透過率が10%〜100%のフィルムが得られるである樹脂組成物に関する。
【化1】

【0006】
(ただし、一般式(I)中、Yは下記式(II)表される基を示す。)
【化2】

【0007】
また、本発明は、(2)前記(1)記載の樹脂組成物を有機溶媒に溶解してなることを特徴とする樹脂ワニスに関する。
【0008】
また、本発明は、(3)前記有機溶媒が、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機溶媒であることを特徴とする前記(2)記載の樹脂ワニスに関する。
【0009】
また、本発明は、(4)前記(1)記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする耐熱性接着剤に関する。
【0010】
また、本発明は、(5)前記(1)記載の樹脂組成物から成る波長400nmの光の光透過率が10%〜100%である耐熱性接着フィルムに関する。
【0011】
また、本発明は、(6)前記(1)記載の樹脂組成物から成ることを特徴とする単層の耐熱性接着フィルムに関する。
【0012】
また、本発明は、(7)前記(1)記載の樹脂組成物から成る接着フィルムを、支持フィルムの片面又は両面に有することを特徴とする多層の耐熱性接着フィルムに関する。
【0013】
また、本発明は、(8)半導体素子をリードフレームまたは有機基板に接着部材で接着して半導体パッケージを製造するための接着部材として使用されることを特徴とする前記(6)〜(7)のいずれか一項に記載の耐熱性接着フィルムに関する。
【0014】
また、本発明は、(9)前記(6)〜(7)のいずれか一項に記載の耐熱性接着フィルムを用いることを特徴とする接着フィルム付きリードフレームに関する。
【0015】
また、本発明は、(10)前記(6)〜(7)のいずれか一項に記載の耐熱性接着フィルムを用いることを特徴とする接着フィルム付き有機基板に関する。
【0016】
また、本発明は、(11)前記(9)に記載の接着フィルム付きリードフレームと、半導体素子とを接着させてなることを特徴とする半導体装置に関する。
【0017】
また、本発明は、(12)前記(10)記載の接着フィルム付き有機基板と、半導体素子とを接着させてなることを特徴とする半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、無色透明性と耐熱性に優れた樹脂組成物、これを有機溶媒中に溶解してなる組成物、耐熱性接着剤、耐熱性接着フィルム、接着フィルム付きリードフレーム、接着フィルム付き有機基板、及びこれらを用いた半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の樹脂組成物は、下記式(I)で表される構造単位を有する重合体を含有することを特徴とする。
【化3】

【0020】
(ただし、式(I)中、Yは下記式(II)表される基を示す。)
【化4】

【0021】
上記式(I)で表される構造単位を有する重合体は、芳香族ジアミンとして1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、酸成分としてイソフタル酸、テレフタル酸及びそれらの反応性誘導体から選ばれる少なくとも一種とを重縮合させて得られることが好ましい。
【0022】
本発明においては、芳香族ジアミンとして1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることにより、接着性と溶剤に対する溶解性、及び無色透明性を向上することができる。かかる1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの製造法は特に限定されないが、蒸留などの精製処理により、透過率を向上させたものを用いることが好ましい。精製処理した1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることにより、得られる重合体の透過率を向上することができ、無色透明性に優れたフィルムを作製することができる。1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの精製方法は特に限定されないが、蒸留などの方法を用いることができる。精製処理した1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの透過率は特に限定されないが、試料5gをジメチルアセトアミド25mlに溶解した時の波長400nmの光の光透過率が20%〜100%であることが好ましく、50%〜100%であることがさらに好ましく、70%〜100%であることが特に好ましい。
【0023】
上記イソフタル酸及びテレフタル酸の誘導体としては、それらのジクロライド、ジブロマイド、ジエステル等を挙げることができる。これらのなかでも重合体の分子量を十分高くするためにテレフタル酸ジクロライド及びイソフタル酸ジクロライドが好ましい。本発明において、酸成分としてはイソフタル酸、テレフタル酸及びそれらの反応性誘導体から選ばれる少なくとも一種を用いればよいが、イソフタル酸の誘導体及び/又はテレフタル酸の誘導体を用いることにより無色透明性をより向上することが出来る。この場合、イソフタル酸の誘導体及び/又テレフタル酸の誘導体の酸成分中の割合は特に限定されないが、接着性と溶剤に対する溶解性を向上するために、30〜100モル%であることが好ましく、50〜100モル%であることがより好ましく、70〜100モル%であることが特に好ましい。
【0024】
本発明においては、芳香族ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンの他に、既知の芳香族ジアミンを用いてもよい。既知の芳香族ジアミンとしては、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)]ヘキサフルオロプロパン、4,4′−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルアミン)等が挙げられる。これらのなかでも、接着性をより高めるために、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。上記した既知の芳香族ジアミンを併用する場合、芳香族ジアミン全体に対する既知の芳香族ジアミンの割合は特に限定されないが、0〜50モル%であることが好ましく、0〜30モル%であることがより好ましく、0〜10モル%であることが特に好ましい。既知の芳香族ジアミンの割合が50モル%超である場合は、接着性と無色透明性が低下しやすくなる傾向にある。
【0025】
本発明においては、接着性をより高めるために芳香族ジアミンの他に、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等のα,ω−ビス(3−アミノプロピル)−ポリジメチルシロキサン、1,12−ジアミノドデカン、1,6−ジアミノヘキサン等のα,ω−ジアミノアルカン等を併用することができる。上記したα,ω−ビス(3−アミノプロピル)−ポリジメチルシロキサンとしては、接着性を高めるために1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンが好ましい。上記したα,ω−ジアミノアルカンとしては、接着性を高めるために1,12−ジアミノドデカンが好ましい。芳香族ジアミンを含むジアミン類の総量に対する、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)−ポリジメチルシロキサン及び/又はα,ω−ジアミノアルカンの割合は、特に限定されないが、0〜60モル%であることが好ましく、0〜30モル%であることがより好ましく、0〜10モル%であることが特に好ましい。α,ω−ビス(3−アミノプロピル)−ポリジメチルシロキサン及び/又はα,ω−ジアミノアルカンの割合が60モル%超である場合は、無色透明性と耐熱性が低下しやすい傾向にある。
【0026】
本発明において、イソフタル酸、テレフタル酸及びそれらの反応性誘導体から選ばれる少なくとも一種の酸性分の使用量は、芳香族ジアミンを含むジアミン類の総量に対して、好ましくは80〜120モル%、より好ましくは95〜105モル%である。前記酸成分と前記ジアミン類を等モル使用したときに最も高分子量の重合体が得られる。前記酸成分の使用量が80モル%未満または120モル%超の場合は、得られる重合体の分子量が低下し機械的強度、耐熱性等が低下しやすい。
【0027】
本発明において、ジアミン類と酸成分とを重縮合させる反応に際しては公知の反応に用いられている方法をそのまま採用することができ、諸条件についても特に限定されるものではない。得られる重合体の光透過率を高めるために、重合に際しジアミン類と酸成分は精製したものを用いることが好ましい。
また、上記重合体の重量平均分子量は、10,000〜200,000であることが好ましく、20,000〜100,000であることがより好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、波長400nmの光の光透過率が10%〜100%、好ましくは50%〜100%、さらに好ましくは70%〜100%のフィルムが得られる樹脂組成物である。上記光透過率が10%未満である場合は、無色透明性に劣ってしまい本発明の課題を達成することが出来ない。光透過率は上記範囲内であれば無色透明性に優れており、接着フィルムの用途等に応じて適宜好適な透過率に設定される。光透過率を前記の範囲に調整する方法としては、重合体の構成モノマ(ジアミン類と酸成分)を精製処理する方法、重合体を精製処理する方法などが挙げられる。上記光透過率は、日本分光株式会社製、分光光度計V−570を用いて、厚さ10μmの樹脂フィルムを波長400nmで測定することができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、セラミック粉、ガラス粉、銀粉、銅粉、樹脂粒子、ゴム粒子等のフィラーが添加されていてもよい。フィラーを添加する場合、その添加量は、樹脂組成物100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、5〜15重量部がより好ましい。
【0030】
また、本発明の樹脂組成物は、被接着体と接着剤の密着性を高めなおかつ耐熱性を高めるためにカップリング剤が添加されていてもよい。カップリング剤としては、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、チタネート、アルミキレート、ジルコアルミネート等のカップリング剤が使用できるが、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の末端に有機反応基を有するシランカップリング剤で、これらの内、エポキシ基を有するエポキシシランカップリング剤が好ましく用いられる。なお、ここで有機反応性基とは、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、メルカプト基等の官能基である。カップリング剤の添加量は、樹脂組成物100重量部に対して、1〜10重量部が好ましく、2〜7重量部がより好ましい。
【0031】
本発明においては、耐熱性を向上する目的で上記により得られる樹脂組成物にエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を添加してもよい。熱硬化性樹脂を添加する場合,上記樹脂100重量部に対し、熱硬化性樹脂0〜30重量部とすることが好ましく、0〜20重量部とすることがより好ましく、0〜15重量部とすることが特に好ましい。
【0032】
本発明において、上記成分を含む樹脂組成物を有機溶媒中に溶解して樹脂ワニスとすることもできる。有機溶媒の種類は特に限定されないが、樹脂組成物の溶解性の点で、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒からなる群から選ばれることが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノンがより好ましく、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0033】
本発明の耐熱性接着剤は上記樹脂組成物を含有してなる。かかる本発明の耐熱性接着剤の製造方法は特に限定されないが、例えば上記樹脂組成物を有機溶媒中に溶解して得られる樹脂ワニスから有機溶媒を蒸発させることによって得ることができる。
【0034】
本発明の耐熱性接着フィルムは上記樹脂組成物から成り、その構成は特に限定されないが、上記樹脂組成物から成る単層のフィルムや、接着フィルムを支持フィルムの片面又は両面に有してなる多層の接着フィルムが好ましい。無色透明性と耐熱性の点で、単層のフィルムが特に好ましい。
【0035】
上記単層の接着フィルムを作製する方法としては特に制限はないが、通常、樹脂組成物をN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒に溶解して作製した樹脂ワニスを、支持フィルムの片面又は両面に塗工した後、加熱処理して有機溶媒を除去し、次いで支持フィルムを除去することにより作製することができる。
【0036】
単層の接着フィルムを作製する際に使用する支持フィルムとしては、特に制限はないが、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルエーテルケトン及びポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートよりなる群から選ばれる樹脂フィルムが好ましく、コストの点でポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持フィルムを単層フィルムから除去しやすくするために、支持フィルムの表面に離型処理してあることが好ましい。
【0037】
また、多層の接着フィルムを作製する方法としても、特に制限はないが、上記樹脂ワニスを、支持フィルムの片面又は両面に塗工した後、加熱処理して有機溶媒を除去することにより形成することができる。
【0038】
多層の接着フィルムを作製する際に使用する支持フィルムとしては、特に制限はないが、半導体装置組立工程中の熱に耐えられる樹脂からなるフィルムが好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルエーテルケトン及びポリエチレンナフタレートよりなる群から選ばれることが好ましく、耐熱性の点で芳香族ポリイミドが特に好ましい。かかる支持フィルムは、接着フィルムに対する密着性を十分高めるために、表面を処理することが好ましい。支持フィルムの表面処理方法には特に制限はないが、アルカリ処理、シランカップリング処理等の化学処理、サンドマット処理等の物理的処理、プラズマ処理、コロナ処理等が挙げられる。支持フィルムの厚さは特に制限はないが、半導体パッケージを薄型化するために100μm以下であることが好ましく、50μm以下がより好ましい。なお十分な強度をもたせる為に5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
【0039】
単層または多層の接着フィルムを作製する方法において、樹脂ワニスを支持フィルムに塗工する方法は特に制限はないが、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、コンマコート等を用いて行なわれる。また、樹脂ワニス中に支持フィルムを通して塗工しても良い。また、溶媒の除去やイミド化等のために加熱処理する場合の処理温度や時間は、特に限定されないが、接着フィルム中の残存溶剤量を10重量%以下にできる温度や時間であることが好ましい。
【0040】
上記において、樹脂ワニスの塗工方法は特に制限はないが、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、コンマコート等を用いて行なわれる。また、樹脂ワニス中に支持フィルムを通して塗工しても良い。
【0041】
本発明の耐熱性接着材料または耐熱性接着フィルムの用途は特に限定されないが、例えば、半導体素子をリードフレーム、または有機基板に接着部材で接着して半導体パッケージを製造するための接着部材として使用される。本発明の接着フィルム付きリードフレームは、例えば、本発明の耐熱性接着フィルムを、リードフレームの片面に接して接着することにより製造することができる。また、本発明の接着フィルム付き有機基板は、例えば、本発明の耐熱性接着フィルムを、有機基板の片面に接して接着することにより製造することができる。
【0042】
上記接着フィルム付きリードフレームまたは接着フィルム付き有機基板を製造する際に用いる場合の接着フィルムは、単層のフィルムであることが好ましい。この場合は、接着フィルムの厚さは特に限定されないが、十分な接着力を得るために5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また半導体パッケージを薄型化するために接着シートは50μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0043】
本発明の半導体装置の構造は特に限定されないが、例えば上記の接着フィルム付きリードフレームと半導体素子とを、または接着フィルム付き有機基板と半導体素子とを、上記の接着フィルムを介して接着させることにより製造することができる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0045】
実施例1
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを蒸留により精製して、波長400nmの光の光透過率が86%の1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを作製した。その後、温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔をとりつけた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、上記1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン78.9g(0.27モル)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン457gに溶解した。さらにこの溶液を0℃に冷却し、この温度でプロピレンオキサイド62.7g(1.1mol)を添加し、攪拌した。さらに、イソフタル酸ジクロライド50.1g(0.25mol)を添加した。10℃で30分間撹拌を続けた後、イソフタル酸ジクロライド4.7g(0.02mol)を3等分して20分おきに添加した。イソフタル酸ジクロライドを添加し終わった後、10℃で1時間攪拌し、反応を完結させた。得られた反応液をメタノール中に投入して重合体を単離させた。これを乾燥した後、N−メチル−2−ピロリドンに溶解しメタノール中に投入して再度重合体を単離した。その後、減圧乾燥して精製されたポリエーテルアミド粉末を得た。得られたポリエーテルアミドのTgは180℃で5%重量減少温度は408℃であった。このポリエーテルアミド粉末120gをN−メチル−2−ピロリドン480gに溶解し、芳香族ポリエーテルアミドワニスを得た。
【0046】
さらに厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、ユーピレックスS)を支持フィルムとして用い、このポリイミドフィルムの片面に、上記ワニスを50μmの厚さに流延し、100℃で5分、250℃で5分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ10μmの樹脂層を形成した。その後、支持フィルムを除去して厚さ10μmの単層の接着フィルムを得た。
【0047】
得られた単層の接着フィルムは肉眼で無色透明であった。次に、得られた単層の接着フィルムの波長400nmの光の光透過率を測定したところ、83%と良好であった。次に、温度350℃、圧力3MPa、時間0.5秒でリードフレーム(材質42アロイ)に接着した。そして接着フィルムとリードフレームとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm、以下同様)を測定したところ、1000N/mと、良好な接着力を示した。
【0048】
実施例2
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを蒸留により精製して、波長400nmの光の光透過率が86%の1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを作製した。温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔をとりつけた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、上記1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン78.9g(0.27モル)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン457gに溶解した。さらにこの溶液を0℃に冷却し、この温度でプロピレンオキサイド62.7g(1.1mol)を添加し、攪拌した。さらに、イソフタル酸ジクロライド35.1g(0.175mol)とテレフタル酸ジクロライド15.0g(0.075mol)の混合物を添加した。10℃で30分間撹拌を続けた後、イソフタル酸ジクロライド3.3g(0.014mol)とテレフタル酸ジクロライド1.4g(0.006mol)の混合物を3等分して20分おきに添加した。イソフタル酸ジクロライドとテレフタル酸ジクロライドの混合物を添加し終わった後、10℃で1時間攪拌し、反応を完結させた。得られた反応液をメタノール中に投入して重合体を単離させた。これを乾燥した後、N−メチル−2−ピロリドンに溶解しメタノール中に投入して再度重合体を単離した。その後、減圧乾燥して精製されたポリエーテルアミド粉末を得た。得られたポリエーテルアミドのTgは185℃で5%重量減少温度は410℃であった。このポリエーテルアミド粉末120gをN−メチル−2−ピロリドン480gに溶解し、芳香族ポリエーテルアミドワニスを得た。
【0049】
さらに厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製 ユーピレックスS)を支持フィルムとして用い、このポリイミドフィルムの片面に、上記ワニスを50μmの厚さに流延し、100℃で5分、250℃で5分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ10μmの樹脂層を形成した。その後、支持フィルムを除去して厚さ10μmの単層の接着フィルムを得た。得られた単層の接着フィルムは肉眼で無色透明であった。次に、得られた単層の接着フィルムの波長400nmの光の光透過率を測定したところ、80%と良好であった。次に、温度350℃、圧力3MPa、時間0.5秒でリードフレーム(材質42アロイ)に接着した。そして接着フィルムとリードフレームとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm、以下同様)を測定したところ、800N/mと、良好な接着力を示した。
【0050】
実施例3
実施例1で得られたポリエーテルアミド粉末6.0gをシクロヘキサノン180gに溶解し、芳香族ポリエーテルアミドワニスを得た。さらに厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製 ユーピレックスS)を支持フィルムとして用い、このポリイミドフィルムの片面に、上記ワニスを50μmの厚さに流延し、100℃で5分、180℃で5分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ10μmの樹脂層を形成した。その後、支持フィルムを除去して厚さ10μmの単層の接着フィルムを得た。得られた単層の接着フィルムは肉眼で無色透明であった。次に、得られた単層の接着フィルムの波長400nmの光の光透過率を測定したところ、85%と良好であった。次に、温度350℃、圧力3MPa、時間0.5秒でリードフレーム(材質42アロイ)に接着した。そして接着フィルムとリードフレームとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm、以下同様)を測定したところ、1000N/mと、良好な接着力を示した。
【0051】
実施例4
実施例1で得られたポリエーテルアミド粉末6.0gをジエチレングリコールジメチルエーテル180gに溶解し、芳香族ポリエーテルアミドワニスを得た。さらに厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製 ユーピレックスS)を支持フィルムとして用い、このポリイミドフィルムの片面に、上記ワニスを50μmの厚さに流延し、100℃で5分、180℃で5分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ10μmの樹脂層を形成した。その後、支持フィルムを除去して厚さ10μmの単層の接着フィルムを得た。得られた単層の接着フィルムは肉眼で無色透明であった。次に、得られた単層の接着フィルムの波長400nmの光の光透過率を測定したところ、84%と良好であった。次に、温度350℃、圧力3MPa、時間0.5秒でリードフレーム(材質42アロイ)に接着した。そして接着フィルムとリードフレームとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm、以下同様)を測定したところ、1000N/mと、良好な接着力を示した。
【0052】
比較例1
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔をとりつけた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン110.8g(0.27モル)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン457gに溶解した。さらにこの溶液を0℃に冷却し、この温度でプロピレンオキサイド62.7g(1.1mol)を添加し、攪拌した。さらに、イソフタル酸ジクロライド50.1g(0.25mol)を添加した。10℃で30分間撹拌を続けた後、イソフタル酸ジクロライド4.7g(0.02mol)を3等分して20分おきに添加した。イソフタル酸ジクロライドを添加し終わった後、10℃で1時間攪拌し、反応を完結させた。得られた反応液をメタノール中に投入して重合体を単離させた。これを乾燥した後、N−メチル−2−ピロリドンに溶解しメタノール中に投入して再度重合体を単離した。その後、減圧乾燥して精製されたポリエーテルアミド粉末を得た。得られたポリエーテルアミドのTgは220℃で5%重量減少温度は408℃であった。このポリエーテルアミド粉末120gをN−メチル−2−ピロリドン480gに溶解し、芳香族ポリエーテルアミドワニスを得た。
【0053】
さらに厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製 ユーピレックスS)を支持フィルムとして用い、このポリイミドフィルムの片面に、上記ワニスを50μmの厚さに流延し、100℃で5分、250℃で5分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ10μmの樹脂層を形成した。その後、支持フィルムを除去して厚さ10μmの単層の接着フィルムを得た。得られた単層の接着フィルムは肉眼で淡黄色に着色していた。次に、得られた単層の接着フィルムの波長400nmの光の光透過率を測定したところ、50%であった。次に、温度350℃、圧力3MPa、時間0.5秒でリードフレーム(材質42アロイ)に接着した。そして接着フィルムとリードフレームとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm、以下同様)を測定したところ、300N/mであった。
【0054】
比較例2
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔をとりつけた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン110.8g(0.27モル)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン457gに溶解した。さらにこの溶液を0℃に冷却し、この温度で無水トリメリット酸クロライド56.8g(0.27モル)を添加した。無水トリメリット酸クロライドが溶解したら、トリエチルアミン32.7gを添加した。室温で2時間撹拌を続けた後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させた。得られた反応液をメタノール中に投入して重合体を単離させた。これを乾燥した後、N−メチル−2−ピロリドンに溶解しメタノール中に投入して再度重合体を単離した。その後、減圧乾燥して精製されたポリエーテルアミドイミド粉末を得た。得られたポリエーテルアミドイミドのTgは230℃で5%重量減少温度は410℃であった。このポリエーテルアミドイミド粉末120gをN−メチル−2−ピロリドン480gに溶解し、芳香族ポリエーテルアミドワニスを得た。
【0055】
さらに厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製 ユーピレックスS)を支持フィルムとして用い、このポリイミドフィルムの片面に、上記ワニスを50μmの厚さに流延し、100℃で5分、250℃で5分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ10μmの樹脂層を形成した。その後、支持フィルムを除去して厚さ10μmの単層樹脂フィルムを得た。得られた単層樹脂フィルムは肉眼で黄色に着色していた。次に、得られた単層の接着フィルムの波長400nmの光の光透過率を測定したところ、1%と低かった。次に、温度350℃、圧力3MPa、時間0.5秒でリードフレーム(材質42アロイ)に接着した。そして接着フィルムとリードフレームとの90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm、以下同様)を測定したところ、400N/mであった。
【0056】
実施例1〜4及び比較例1〜2の結果より、芳香族ジアミンとして1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、酸成分として、イソフタル酸及び/又はテレフタル酸の反応性誘導体とを重縮合させて得られる重合体を含有してなる耐熱性接着材料は,溶剤に対する溶解性、耐熱性、無色透明性に優れることが示される。
【0057】
耐熱性と無色透明性に優れた樹脂組成物、これを有機溶媒中に溶解して得られる組成物、無色透明性と耐熱性に優れた耐熱性接着材料(耐熱性接着フィルム)、耐熱性接着材料(耐熱性接着フィルム)及びこれらを用いた半導体装置を提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される構造単位を有する重合体を含有し、波長400nmの光の光透過率が10%〜100%のフィルムが得られる樹脂組成物。
【化1】

(ただし、式(I)中、Yは下記式(II)表される基を示す。)
【化2】

【請求項2】
請求項1記載の樹脂組成物を有機溶媒に溶解してなることを特徴とする樹脂ワニス。
【請求項3】
前記有機溶媒が、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2記載の樹脂ワニス。
【請求項4】
請求項1記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする耐熱性接着剤。
【請求項5】
請求項1記載の樹脂組成物から成る波長400nmの光の光透過率が10%〜100%である耐熱性接着フィルム。
【請求項6】
請求項1記載の樹脂組成物から成ることを特徴とする単層の耐熱性接着フィルム。
【請求項7】
請求項1記載の樹脂組成物から成る接着フィルムを支持フィルムの片面又は両面に有することを特徴とする多層の耐熱性接着フィルム。
【請求項8】
半導体素子をリードフレームまたは有機基板に接着部材で接着して半導体パッケージを製造するための接着部材として使用されることを特徴とする請求項6〜7のいずれか一項に記載の耐熱性接着フィルム。
【請求項9】
請求項6〜7のいずれか一項に記載の耐熱性接着フィルムを用いることを特徴とする接着フィルム付きリードフレーム。
【請求項10】
請求項6〜7のいずれか一項に記載の耐熱性接着フィルムを用いることを特徴とする接着フィルム付き有機基板。
【請求項11】
請求項9記載の接着フィルム付きリードフレームと半導体素子とを接着させてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項10記載の接着フィルム付き有機基板と半導体素子とを接着させてなることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2008−81717(P2008−81717A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25373(P2007−25373)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】