説明

樹脂組成物、絶縁層、プリプレグ、積層板、プリント配線板および半導体装置

【課題】 本発明の目的は、低弾性、低熱膨張性および低吸湿性を有する樹脂組成物を提供することである。また、前記樹脂組成物を用いることにより、低弾性、低熱膨張性および低吸湿性を有する絶縁層、プリプレグ、積層板、プリント配線板および半導体装置を提供することである。
【解決手段】 本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、内部に空孔を有する粒子(B)とを含むことを特徴とする。前記内部に空孔を有する粒子(B)を含むことにより、前記樹脂組成物に、低弾性、低熱膨張性および低吸湿性を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低弾性及び低熱膨張性に優れた樹脂組成物に関する。また、前記樹脂組成物を用いた、絶縁層、プリプレグ、積層板、プリント配線板および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の分野では高密度実装技術の進歩から従来の面実装からエリア実装に移行していくトレンドが進行し、BGAやCSPなど新しいパッケージが登場、増加しつつある。そのため、以前にもましてインターポーザ用リジッド基板が注目されるようになっている。
【0003】
さらに近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、更には高密度実装化等が進んでいる。そのため、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して、小型化かつ高密度化が進んでいる。これに伴い、プリント配線板の薄型化が要求されるため、基板の反りが問題となった。これを抑制すべく、プリント配線板材料の高弾性化が検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、材料の高弾性化に伴い、高温高湿といった過酷な条件下では、クラックが生じ易いといった問題が生じた。
【0004】
一方、耐クラック性を改善するために、低弾性、高耐熱性のプリント配線板材料の検討も行われている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、前述の通り、基板の弾性率の低下に伴い反りが生じやすくなるため、プリント配線板材料を低弾性化した場合、併せて、低熱膨張性を有することが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−231847号公報
【特許文献2】特開2006−22309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低弾性、低熱膨張性および低吸湿性に優れた樹脂組成物を提供することである。
また、前記樹脂組成物を用いることにより、低弾性、低熱膨張性および低吸湿性に優れた絶縁層、プリプレグ、積層板、プリント配線板および半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(13)の本発明により達成される。
(1)熱硬化性樹脂(A)と、内部に空孔を有する粒子(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
(2)前記内部に空孔を有する粒子(B)は、多孔質の粒子(B1)の周囲が被覆層(B2)で覆われているものである前記(1)に記載の樹脂組成物。
(3)前記多孔質の粒子(B1)は、無機化合物である前記(2)に記載の樹脂組成物。
(4)前記無機化合物は、シリカである前記(3)に記載の樹脂組成物。
(5)前記被覆層(B2)は、無機化合物である前記(2)乃至(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(6)前記被覆層(B2)は、有機ケイ素化合物及び/又はその重合体である前記(2)乃至 (5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(7)前記熱硬化性樹脂(A)は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種以上を含むものである前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(8)前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の樹脂組成物を熱硬化させて得られることを特徴とする絶縁層。
(9)前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸させて得られることを特徴とするプリプレグ。
(10)前記(9)に記載のプリプレグを1枚又は2枚以上重ね合わせ、少なくとも一方の外側の面に金属箔を配置して、加熱加圧成形して得られることを特徴とする積層板。
(11)前記(8)に記載の絶縁層を用いて得られることを特徴とするプリント配線板。
(12)前記(10)に記載の積層板を用いて得られることを特徴とするプリント配線板。
(13)前記(11)又は(12)に記載のプリント配線板を用いて得られることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低弾性、低熱膨張性および低吸湿性に優れた樹脂組成物を提供することができる。
また、前記樹脂組成物を用いることにより、低弾性、低熱膨張性および低吸湿性に優れた絶縁層、プリプレグ、積層板、プリント配線板および半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の樹脂組成物、絶縁層、プリプレグ、積層板、プリント配線板および半導体装置について説明する。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、内部に空孔を有する粒子(B)とを含むことを特徴とする。
また、本発明の絶縁層は、前記樹脂組成物を熱硬化して得られることを特徴とする。
また、本発明のプリプレグは、前記樹脂組成物で構成されることを特徴とする。
また、本発明の積層板は、前記プリプレグを1枚又は2枚以上重ね合わせ、少なくとも一方の外側の面に金属箔を配置して、加熱加圧成形して得られることを特徴とする。
また、本発明のプリント配線板は、前記絶縁層を用いて得られることを特徴とする。
また、本発明の半導体装置は、前記プリント配線板を用いて得られることを特徴とする。
【0011】
まず、樹脂組成物について説明する。前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、内部に空孔を有する粒子(B)とを含む。
【0012】
前記熱硬化性樹脂(A)としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、マレイン樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、ユリア樹脂及びエポキシアクリレート、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂およびシアネート樹脂等が挙げられる。これらの中でも、前記熱硬化性樹脂(A)は、耐熱性、電気特性、コスト面で優れていることから、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種以上であることが特に好ましい。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0013】
これらの前記熱硬化性樹脂(A)の中で、エポキシ樹脂は、積層板用材料として広く用いられているように、高耐熱性であり、絶縁性、絶縁信頼性に優れ、かつ低価格であるため好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0014】
また、これらの前記熱硬化性樹脂(A)の中で、シアネートエステル樹脂は、絶縁層の熱膨張率を小さくすることができ、さらに、絶縁層の電気特性(低誘電率、低誘電正接)、機機械強度等にも優れるため好ましい。
前記シアネートエステル樹脂は、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。具体的には、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。これにより、架橋密度増加による耐熱性向上と、樹脂組成物等の難燃性を向上することができる。ノボラック型シアネート樹脂は、硬化反応後にトリアジン環を形成するからである。さらに、ノボラック型シアネート樹脂は、その構造上ベンゼン環の割合が高く、炭化しやすいためと考えられる。さらに、絶縁層を厚さ0.5mm以下にした場合であっても、作製した絶縁層に優れた剛性を付与することができる。特に加熱時における剛性に優れるので、半導体素子実装時の信頼性にも特に優れる。
【0015】
前記ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば下記式(1)で示されるものを使用することができる。
【0016】
【化1】

【0017】
前記式(1)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、1〜10が好ましく、特に2〜7が好ましい。平均繰り返し単位nが前記下限値未満であるとノボラック型シアネート樹脂は耐熱性が低下し、加熱時に低量体が脱離、揮発する場合がある。また、平均繰り返し単位nが前記上限値を超えると溶融粘度が高くなりすぎ、プリプレグに用いた場合成形性が低下することがある。
【0018】
前記シアネートエステル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量500〜4,500が好ましく、特に600〜3,000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であるとプリプレグを作製した場合にタック性が生じ、プリプレグ同士が接触したとき互いに付着したり、樹脂の転写が生じたりする場合がある。また、重量平均分子量が前記上限値を超えると反応が速くなりすぎ、絶縁層に用いた場合に、成形不良が生じたり、層間ピール強度が低下したりすることがある。
前記シアネートエステル樹脂等の重量平均分子量は、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0019】
また、特に限定されないが、前記シアネートエステル樹脂は、1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0020】
前記シアネートエステル樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物または前記樹脂層の5〜50重量部が好ましく、特に20〜40重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であるとプリプレグを形成するのが困難となる場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグや樹脂層の強度が低下する場合がある。
【0021】
また、これらの前記熱硬化性樹脂(A)の中で、フェノール樹脂は、耐熱性と打抜性が向上するため好ましい。前記フェノール樹脂としては、特に限定されないが、フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でもアリールアルキレン型フェノール樹脂が好ましい。これにより、さらに耐熱性を向上させることができる。前記アリールアルキレン型フェノール樹脂としては、例えばキシリレン型フェノール樹脂、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂等が挙げられる。ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂は、例えば下記式(2)で示すことができる。
【0022】
【化2】

【0023】
式(2)で示されるビフェニルジメチレン型フェノール樹脂のnは、特に限定されないが、1〜12が好ましく、特に2〜8が好ましい。これより少ないと耐熱性が低下する場合がある。また、これより多いと他の樹脂との相溶性が低下し、作業性が悪くなる場合があるため好ましくない。前述のシアネート樹脂及び/またはそのプレポリマー(特にノボラック型シアネート樹脂)とアリールアルキレン型フェノール樹脂との組合せにより、架橋密度をコントロールし、金属と樹脂との密着性を向上することができる。
【0024】
前記フェノール樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1〜55重量%が好ましく、特に5〜40重量%が好ましい。フェノール樹脂が前記下限値未満では耐熱性が低下する場合があり、前記上限値を超えると低熱膨張の特性が損なわれる場合がある。前記フェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量400〜18,000が好ましく、特に500〜15,000が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満だとプリプレグにタック性が生じるなどの問題が起こる場合が有り、前記上限値を超えるとプリプレグ作製時、基材への含浸性が低下し、均一な製品が得られないなどの問題が起こる場合がある。
【0025】
前記樹脂組成物は、内部に空孔を有する粒子(B)を含む。これにより、内部に空孔を有する粒子(B)中の空孔により、前記樹脂組成物の空隙率も高くなるため、前記樹脂組成物を用いて得られる絶縁層、プリプレグ、積層板およびプリント配線板に低弾性を付与することができる。前記内部に空孔を有する粒子(B)の形状としては、特に限定されないが、例えば、内部が空洞になっている粒子、多孔質の粒子(B1)の周囲が被覆層(B2)で覆われている粒子等が挙げられる。これらの中でも、多孔質の粒子(B1)の周囲が被覆層(B2)で覆われている粒子が特に好ましい。これにより、前記内部に空孔を有する粒子(B)の空孔内部への水の吸着を被覆層(B2)により防ぐことができるため、前記樹脂組成物の吸湿性をより低下することができ、さらに耐熱性を向上することができる。また、前記樹脂組成物の圧縮強度を低下することができる。具体的には、前記樹脂組成物の成形品に対し、穴あけ、切断等の加工を行う際に、内部に空孔を有することにより粒子を容易に砕くことができるため、ドリル加工性、切断加工性に優れた絶縁層、プリプレグ、積層板およびプリント配線板を得ることができる。
【0026】
前記多孔質の粒子(B1)の形状としては、特に限定されないが、多孔性物質の粒子、繊維状材料の粒子、不均一な形状・大きさの微粒子を凝集させて形成された粒子、テンプレート剤を含む組成物により形成された粒子であって、焼成等によってテンプレート剤を除去し表面及び内部に複数の空孔が生じた粒子等が挙げられる。これらの中でも、前記樹脂組成物の成形品に低弾性を付与するため、特に不均一な形状・大きさの微粒子を凝集させて形成された粒子が好ましい。
【0027】
前記多孔質の粒子(B1)の材質としては、特に限定されないが、炭素繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛等の有機化合物、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。これらの中でも、難燃性が高いため、特に無機化合物がより好ましい。さらに、低熱膨張性を有するため、シリカが特に好ましい。
【0028】
前記被覆層(B2)としては、特に限定されないが、ゴム、ポリマー等の有機化合物、有機ケイ素化合物及び/又はその重合体、チタン、アルミナ、シリカ等の無機化合物等が挙げられる。これらの中でも、難燃性が高いため、無機化合物がより好ましい。さらに、前記多孔質の粒子(B1)の材質をシリカとした場合、前記多孔質の粒子(B1)との親和性が高く密着性が高い点、または、被覆時の作業性が高い点から、有機ケイ素化合物及び/又はその重合体が特に好ましい。
【0029】
前記被覆層(B2)は、有機ケイ素化合物を溶媒中に添加し、有機ケイ素化合物及び/又はその重合体で、前記多孔質の粒子(B1)を被覆、焼成することにより、表面を無孔質化したものを用いることによって、高絶縁信頼性、低熱膨張性の積層板を作製することができる。
【0030】
前記内部に空孔を有する粒子(B)の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜8μmが好ましく、特に0.2〜3μmが好ましい。前記内部に空孔を有する粒子(B)の粒径が前記下限値より小さいとワニスの粘度が高くなるため、プリプレグ作製時の作業性に影響を与える場合がある。また、前記上限値より高いと、ワニス中で前記内部に空孔を有する粒子(B)の沈降等の現象が起こるため望ましくない。
更に平均粒径5μm以下の球状溶融シリカが好ましく、特に平均粒径2μm以下の球状溶融シリカが好ましい。これにより、前記内部に空孔を有する粒子(B)の充填性を向上させることができる。
【0031】
前記内部に空孔を有する粒子(B)の含有量は、樹脂組成物全体の10〜75重量%が好ましく、特に15〜70重量%が好ましい。前記内部に空孔を有する粒子(B)が前記範囲内であると、前記樹脂組成物に、低熱膨張性、低吸湿性を付与することができる。また、特に限定されないが、前記内部に空孔を有する粒子(B)は、1種類を単独で用いることもできるし、異なる種類の前記内部に空孔を有する粒子(B)2種類以上を併用しても良いし、内部に空孔を有しない粒子と併用することもできる。
【0032】
本発明の樹脂組成物では、必要に応じて、カップリング剤、硬化促進剤等の添加物を、特性を損なわない範囲で添加することができる。
【0033】
次に、絶縁層について説明する。
本発明の絶縁層としては、特に限定されないが、ビルトアップ、プリプレグ、樹脂付キャリア材、硬化膜、保護膜、絶縁膜、樹脂付きキャリア材料および後述するプリント配線板の絶縁層等が挙げられる。これらの絶縁層は、前記樹脂組成物を基材に、含浸又は塗布することにより、作製することができる。
【0034】
次に、プリプレグについて説明する。
本発明のプリプレグは、上記樹脂組成物を基材に含浸してなるものである。これにより、耐熱性、低膨張性および難燃性に優れたプリプレグを得ることができる。
前記基材としては、例えばガラス織布、ガラス不繊布、ガラスペーパー等のガラス繊維基材、紙、アラミド、ポリエステル、芳香族ポリエステル、フッ素樹脂等の合成繊維等からなる織布や不織布、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる織布、不織布、マット類等が挙げられる。これらの基材は単独又は混合して使用してもよい。これらの中でも、プリプレグの剛性、寸法安定性を向上することができるため、ガラス繊維基材が好ましい。
【0035】
前記樹脂組成物を前記基材に含浸させる方法は、例えば基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上することができるため、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。
【0036】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
前記樹脂ワニスの固形分は、特に限定されないが、前記樹脂組成物の固形分30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を向上できる。
前記基材に前記樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば90〜180℃で乾燥させることによりプリプレグを得ることが出来る。
【0037】
次に、積層板について説明する。
本発明の積層板は、上記のプリプレグを加熱加圧成形してなるものである。これにより、耐熱性、低熱膨張性に優れた積層板を得ることができる。プリプレグ1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層することもできる。プリプレグ2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。次に、プリプレグと金属箔とを重ねたものを加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。前記加熱する温度は、特に限定されないが、120〜220℃が好ましく、特に150〜200℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、1.5〜5MPaが好ましく、特に2〜4MPaが好ましい。
また、必要に応じて高温漕等で150〜300℃の温度で後硬化を行うこともできる。
【0038】
前記金属箔は、特に限定されないが、例えば銅及び銅系合金、アルミ及びアルミ系合金、銀及び銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金、鉄および鉄系合金等の金属箔が挙げられる。これらの中でも、誘電特性およびコスト面で優れているため、銅及び銅系合金が特に好ましい。
【0039】
次に、本発明のプリント配線板について説明する。
本発明のプリント配線板は、前記絶縁層及び前記プリプレグを絶縁層に用いてなる。また、本発明のプリント配線板は、上記に記載の積層板を内層回路基板に用いてなる。前記積層板を内層回路基板として用いる場合について説明する。
前記内層回路基板となる積層板の片面又は両面に回路形成する。場合によっては、ドリル加工、レーザー加工によりスルーホールを形成し、めっき等で両面の電気的接続をとることもできる。また、この内層回路基板に市販の樹脂シート、または前記プリプレグを重ね合わせて加熱加圧成形することにより、多層のプリント配線板を得ることができる。
具体的には、上記樹脂シートの絶縁層側と内層回路板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置等で絶縁層を加熱硬化させることにより得ることができる。ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
【0040】
また、前記プリプレグを前記内層回路板に重ね合わせ、これを平板プレス装置等で加熱加圧成形することにより得ることができる。ここで加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、圧力1〜4MPaで実施することができる。このような平板プレス装置等による加熱加圧成形では、加熱加圧成形と同時に絶縁層の加熱硬化が行われる。
【0041】
前記プリント配線板の製造方法は、前記樹脂シートまたはプリプレグを、内層回路基板の内層回路パターンが形成された面に重ね合わせて連続積層する工程および導体回路層をセミアディティブ法で形成する工程を含む。
【0042】
前記樹脂シートまたは前記プリプレグより形成された絶縁層の硬化は、次のレーザー照射および樹脂残渣の除去を容易にし、デスミア性を向上させるため、半硬化状態にしておく場合もある。また、一層目の絶縁層を通常の加熱温度より低い温度で加熱することにより一部硬化(半硬化)させ、絶縁層上に、一層ないし複数の絶縁層をさらに形成し半硬化の絶縁層を実用上問題ない程度に再度加熱硬化させることにより絶縁層間および絶縁層と回路との密着力を向上させることができる。この場合の半硬化の温度は、80〜200℃が好ましく、100〜180℃がより好ましい。尚、次工程においてレーザーを照射し、絶縁層に開口部を形成するが、その前に基材を剥離する必要がある。基材の剥離は、絶縁層を形成後、加熱硬化の前、または加熱硬化後のいずれに行っても特に問題はない。
なお、前記プリント配線板を得る際に用いられる内層回路板は、例えば、銅張積層板の両面に、エッチング等により所定の導体回路を形成し、導体回路部分を黒化処理したものを好適に用いることができる。
【0043】
次に、絶縁層に、レーザーを照射して、開孔部を形成する。前記レーザーは、エキシマレーザー、UVレーザーおよび炭酸ガスレーザー等が使用できる。
【0044】
レーザー照射後の樹脂残渣等は過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより除去することが好ましい。また、平滑な絶縁層の表面を同時に粗化することができ、続く金属メッキにより形成する導電配線回路の密着性を上げることができる。
【0045】
次に、外層回路を形成する。外層回路の形成方法は、金属メッキにより絶縁樹脂層間の接続を図り、エッチングにより外層回路パターン形成を行う。樹脂シート、またはプリプレグを用いたときと同様にして、プリント配線板を得ることができる。
尚、金属箔を有する樹脂シート、またはプリプレグを用いた場合は、金属箔を剥離することなく、導体回路として用いるためにエッチングにより回路形成を行ってもよい。その場合、厚い銅箔を使用した基材付き絶縁樹脂シートを使うと、その後の回路パターン形成においてファインピッチ化が困難になるため、1〜5μmの極薄銅箔を使うか、または12〜18μmの銅箔をエッチングにより1〜5μmに薄くするハーフエッチングする場合もある。
【0046】
さらに絶縁層を積層し、前記同様回路形成を行っても良いが、プリント配線板の設計上、最外層には、回路形成後、ソルダーレジストを形成する。ソルダーレジストの形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストを積層(ラミネート)し、露光、および現像により形成する方法、または液状レジストを印刷したものを露光、および現像により形成する方法によりなされる。なお、得られたプリント配線板を半導体装置に用いる場合、半導体素子を実装するため接続用電極部を設ける。接続用電極部は、金めっき、ニッケルメッキおよび半田めっき等の金属皮膜で適宜被覆することができる。このような方法によりプリント配線板を製造することができる。
【0047】
次に本発明のプリント配線板を用いて作製される半導体装置について説明する。
半導体装置の製造方法は、特に限定されないが、例えば前記プリント配線板を用い、プリント配線板と半導体素子とを、半田バンプを介して接続する。半導体素子とプリント配線板との接続方法は、フリップチップボンダーなどを用いて基板上の接続用電極部と半導体素子の金属バンプの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板等の加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、あらかじめプリント配線板上の接続用電極部に半田ペースト等、比較的融点の低い金属の層を形成しておいても良い。この接合工程に先んじて、半田バンプおよび、またはプリント配線板上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続性を向上させることもできる。
【0048】
次に、プリント配線板と半導体素子との間には液状封止樹脂を充填し、半導体装置を得ることができる。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
(1) 樹脂ワニスの調製
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−30)25重量部(以下、部と略す)、ビスフェノールA型シアネート樹脂(旭化成エポキシ株式会社製、AroCy B−30)25部、エポキシシラン型カップリング剤(日本ユニカー株式会社製、A−187)1部及び触媒(四国化成工業株式会社製、2MZ)1部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、充填材として多孔質シリカ(日揮触媒化成株式会社製、P15C)48部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌し、樹脂ワニスを得た。
(2) プリプレグの作製
前記樹脂ワニスをガラス織布(厚さ200μm、日東紡績製、WEA−7628)に含浸し、120℃の加熱炉で2分間乾燥して、ワニス固形分(プリプレグ中に樹脂とシリカの占める成分)が約50%のプリプレグを得た。
【0050】
(3) 積層板の作製
前記プリプレグを所定枚数重ね、両面に18μmの銅箔を重ねて、圧力4MPa、温度200℃で2時間加熱加圧成形することによって両面に銅箔を有する積層板を得た。
【0051】
(4)プリント配線板の製造
前記両面に銅箔を有する積層板を用いて、ドリル機で開孔後、無電解めっきで上下銅箔間の導通を図り、前記両面の銅箔をエッチングすることにより内層回路を両面に形成した。(L(導体回路幅)/S(導体回路間幅)=120/180μm、クリアランスホール1mmφ、3mmφ、スリット2mm)次に内層回路に過酸化水素水と硫酸を主成分とする薬液(旭電化工業(株)製テックSO−G)をスプレー吹き付けすることにより粗化処理による凹凸形成を行った。
【0052】
次に市販の樹脂フィルム(ビルドアップ材ともいう)(味の素ファインテクノ社製、ABF GX−13、厚さ40μm)を内層回路上に真空積層装置を用いて積層し、温度170℃、時間60分間加熱硬化し積層体を得た。
【0053】
その後、前記で得られた積層体のプリプレグに、炭酸レーザー装置を用いてφ60μmの開孔部(ブラインド・ビアホール)を形成し、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に15分浸漬後、中和して粗化処理を行った。次に脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅メッキ皮膜を約0.5μmの給電層を形成した。次にこの給電層表面に、厚さ25μmの紫外線感光性ドライフィルム(旭化成社製AQ−2558)をホットロールラミネーターにより貼り合わせ、最小線幅/線間が20/20μmのパターンが描画されたクロム蒸着マスク(トウワプロセス社製)を使用して、位置を合わせ、露光装置(ウシオ電機社製UX−1100SM−AJN01)にて露光、炭酸ソーダ水溶液にて現像し、めっきレジストを形成した。
【0054】
次に、給電層を電極として電解銅めっき(奥野製薬社製81−HL)を3A/dm2、30分間行って、厚さ約25μmの銅配線を形成した。ここで2段階剥離機を用いて、前記めっきレジストを剥離した。各薬液は、1段階目のアルカリ水溶液層にはモノエタノールアミン溶液(三菱ガス化学社製R−100)、2段階目の酸化性樹脂エッチング剤には過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液(日本マクダーミッド社製マキュダイザー9275、9276)、中和には酸性アミン水溶液(日本マクダーミッド社製マキュダイザー9279)をそれぞれ用いた。
【0055】
そして、給電層を過硫酸アンモニウム水溶液(メルテックス(株)製AD−485)に浸漬処理することで、エッチング除去し、配線間の絶縁を確保した。次に絶縁層を温度200℃時間60分で最終硬化させ、最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製PSR4000/AUS308)を形成しプリント配線板を得た。
【0056】
(5)半導体装置の製造
前記多層プリント配線板は、半導体素子の半田バンプ配列に相当するニッケル金メッキ処理が施された接続用電極部を配したものを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、Sn/Pb組成の共晶で形成された半田バンプを有し、半導体素子の回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、多層プリント配線板上に加熱圧着により搭載した。
次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂の硬化条件は、温度150℃、120分の条件であった。
【0057】
(実施例2)
以下に説明する樹脂ワニスを用いる以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−60)25部、ビフェニルアルキレン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC−3000SH)25部、エポキシシラン型カップリング剤(日本ユニカー株式会社製、A−187)1部及び触媒(四国化成工業株式会社製、2MZ)1部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、充填材として多孔質シリカ(日揮触媒化成株式会社製、L15C)28部及び水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、HP−350)20部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌し、樹脂ワニスを得た。
【0058】
(実施例3)
以下に説明する樹脂ワニスを用いる以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−30)29部、ノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、エピクロン N−775)19部、エポキシシラン型カップリング剤(日本ユニカー株式会社製、A−187)1部及び触媒(四国化成工業株式会社製、2MZ)1部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、充填材としてシリカ粒子(株式会社アドマテックス製、SO−32R)40部及び多孔質シリカ(日揮触媒化成株式会社製、N15C)10部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌し、樹脂ワニスを得た。
【0059】
(比較例1)
以下に説明する樹脂ワニスを用いる以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−30)19部、ビスフェノールA型シアネート樹脂(旭化成エポキシ株式会社製、AroCy B−30)19部、エポキシシラン型カップリング剤(日本ユニカー株式会社製、A−187)1部及び触媒(四国化成工業株式会社製、2MZ)1部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、充填材としてシリカ粒子(電気化学工業株式会社製、SFP−10X)60部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌し、樹脂ワニスを得た。
【0060】
(比較例2)
以下に説明する樹脂ワニスを用いる以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−30)19部、ビスフェノールA型シアネート樹脂(旭化成エポキシ株式会社製、AroCy B−30)19部、エポキシシラン型カップリング剤(日本ユニカー株式会社製、A−187)1部及び触媒(四国化成工業株式会社製、2MZ)1部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、充填材としてシリカ粒子(株式会社アドマテックス製、SO−32R)60部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌し、樹脂ワニスを得た。
【0061】
(比較例3)
以下に説明する樹脂ワニスを用いる以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−60)19部、ビフェニルアルキレン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC−3000SH)19部、エポキシシラン型カップリング剤(日本ユニカー株式会社製、A−187)1部及び触媒(四国化成工業株式会社製、2MZ)1部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、充填材としてシリカ粒子(株式会社アドマテックス製、SO−32R)40部及び水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、HP−350)20部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌し、樹脂ワニスを得た。
【0062】
(比較例4)
以下に説明する樹脂ワニスを用いる以外は、実施例1と同様にした。
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセット PT−30)23部、ノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、エピクロン N−775)15部、エポキシシラン型カップリング剤(日本ユニカー株式会社製、A−187)1部及び触媒(四国化成工業株式会社製、2MZ)1部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、充填材としてシリカ粒子(株式会社アドマテックス製、SO−32R)40部及び水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、HP−350)20部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌し、樹脂ワニスを得た。
【0063】
得られた積層板の評価方法を(1)〜(4)に示す。
(1)線膨張係数
厚さ1.2mmの両面に銅箔を有する積層板を全面エッチングし、得られた積層板から2mm×2mmのテストピースを切り出し、TMAを用いて厚み方向(Z方向)の線膨張係数を5℃/分で測定した。
【0064】
(2)吸湿半田耐熱性
厚さ0.6mmの両面に銅箔を有する積層板から50mm×50mmに切り出し、JIS6481に従い半面エッチングを行ってテストピースを作成した。125℃のプレッシャークッカーで処理した後、260℃のはんだ槽に銅箔面を下にして浮かべ、180秒後にフクレが発生する処理時間を計測した。
【0065】
(3)弾性率
作製した両面に銅箔を有する積層板の銅箔を全面エッチングし、得られた積層板から2mm×2mmのテストピースを切り出し、TAインスツルメント製DMA983を用いて3℃/分で昇温し、動的粘弾性測定を行った。
【0066】
(4)ドリル加工性
厚さ0.6mmの両面に銅箔を有する積層板を0.2mmφのドリルを用いて、16万回転、4000shot打ち、ドリル加工前のドリルの頂点面積と、ドリル加工後のドリルの頂点面積とを比較し、ドリル磨耗部の面積を測定した。
【0067】
得られた半導体装置の評価方法を(5)、(6)に示す。
(5)半導体装置の熱時反り
前記で得られた半導体装置(50mm×50mm)を260℃加熱下でのPKG全体の反りを評価した。測定範囲は、基板内の48mm×48mmの範囲とした。
【0068】
(6)半導体装置のTCTバイアス試験
前記で得られた半導体装置(50mm×50mm)を温度−55℃から150℃各温度で時間30分保持の温度サイクル試験を行った。判定は、導通抵抗が10%増加したサンプルをNGとし、5個の全サンプルがNGとなったところで終了とした。
【0069】
これらの評価結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表中の樹脂等について、以下に詳細に示す。
1)Primaset PT−30(ノボラック型シアネート樹脂、数平均分子量約380):ロンザジャパン株式会社製
2)Primaset PT−60(ノボラック型シアネート樹脂、数平均分子量約560):ロンザジャパン株式会社製
3)AroCy B−30(ビスフェノールA型シアネート樹脂):旭化成エポキシ株式会社製
4)NC−3000SH(ビフェニルアルキレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量290):日本化薬株式会社製
5)エピクロン N−775(ノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量190):大日本インキ化学工業株式会社製
6)SFP−10X(球状溶融シリカ、平均粒径0.3μm):電気化学工業株式会社製
7)SO−32R(球状溶融シリカ、平均粒径1.5μm):株式会社アドマテックス製
8)P15C(多孔質シリカ):日揮触媒化成株式会社製
9)L15C(多孔質シリカ):日揮触媒化成株式会社製
10)N15C(多孔質シリカ):日揮触媒化成株式会社製
11)HP−350(水酸化アルミニウム):昭和電工株式会社製
12)A−187(エポキシシラン型カップリング剤):日本ユニカー株式会社製
13)2MZ(2−メチルイミダゾール):四国化成工業株式会社製
【0072】
実施例1〜3では、得られた積層板は、低弾性及び低熱膨張性に優れている。そのため、得られた半導体装置は、低弾性の影響により260℃熱時反りが小さく、また、低弾性及び低熱膨張性の影響により、得られた半導体装置は応力の蓄積が小さくTCTバイアス試験において優れた結果を示している。また、得られた積層板は、吸湿半田耐熱性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明にかかる樹脂組成物は、低弾性、低熱膨張性および低吸湿性を有しており、小型化、高密度配線化、高信頼性が要求される半導体装置に用いられる基板に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂(A)と、内部に空孔を有する粒子(B)とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記内部に空孔を有する粒子(B)は、多孔質の粒子(B1)の周囲が被覆層(B2)で覆われているものである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記多孔質の粒子(B1)は、無機化合物である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機化合物は、シリカである請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記被覆層(B2)は、無機化合物である請求項2乃至4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記被覆層(B2)は、有機ケイ素化合物及び/又はその重合体である請求項2乃至5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂(A)は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種以上を含むものである請求項1乃至6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の樹脂組成物を熱硬化させて得られることを特徴とする絶縁層。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸させて得られることを特徴とするプリプレグ。
【請求項10】
請求項9に記載のプリプレグを1枚又は2枚以上重ね合わせ、少なくとも一方の外側の面に金属箔を配置して、加熱加圧成形して得られることを特徴とする積層板。
【請求項11】
請求項8に記載の絶縁層を用いて得られることを特徴とするプリント配線板。
【請求項12】
請求項10に記載の積層板を用いて得られることを特徴とするプリント配線板。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のプリント配線板を用いて得られることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2011−99072(P2011−99072A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256014(P2009−256014)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】