説明

欠陥レビュー装置及び欠陥レビュー方法

【課題】迅速に欠陥レビューを行うことができる欠陥レビュー装置及び欠陥レビュー方法を提供する。
【解決手段】電子ビーム31を試料8の表面に照射し、試料8の表面の観察領域内で電子ビーム31を走査させる電子鏡筒1と、電子ビーム31の光軸周りに相互に90°の角度を開けて配置された4つの電子検出器9a〜9dと、電子検出器9a〜9dの検出信号に基づいて、観察領域をそれぞれ異なる方向から写した複数の画像データを生成する信号処理部11とを備えた欠陥レビュー装置100において、観察領域のパターンがラインアンドスペースパターンである場合には、欠陥検査部12によってラインパターンに平行であって電子ビーム31を挟んで対抗する2方向からの画像データの差分をとった差分画像に基づいて、欠陥の検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥レビュー装置及び欠陥レビュー方法に関し、特に電子ビームを試料表面に照射して欠陥の観察を行う欠陥レビュー装置及び欠陥レビュー方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の微細化にともない、ウェハやフォトマスク等のパターンの微細化が進み、より微細な欠陥が製造歩留まりに大きく影響するようになっていることから、欠陥検査の重要性が増している。
【0003】
このようなウェハやフォトマスクの欠陥検査では、まずスループットが高い光学式の検査装置を使用した検査を行なう。光学式の検査装置によれば、例えば10nm以下といった非常に微細な欠陥を検出することもできるが、解像度の制約により欠陥の形状までは判別できない。
【0004】
そこで、光学式の検査装置で欠陥が検出された場合には、次の欠陥レビュー工程で欠陥の位置、形状及び大きさを確認する。この欠陥レビュー工程では、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron microscope;SEM)を使用し、高倍率のSEM画像に基づいて、光学式器の検査装置では捉えきれない微細な欠陥の形状の計測を行う。
【0005】
また、引用文献1には、複数(2台)の電子検出器を設置した走査型電子顕微鏡により試料表面の形状を三次元的に観察する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−192645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の欠陥レビュー工程では、まずSEM画像において欠陥を特定する必要がある。そのため、試料のSEM画像と、欠陥の無いパターンを表す設計データ等とのパターンマッチング(比較処理)を行なって欠陥を検出している。
【0008】
しかし、パターンマッチングによる欠陥検出では多量の計算が必要とされ、欠陥の検出に比較的長い時間を要することから迅速に欠陥レビューを行うことができないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は迅速に欠陥レビューを行うことができる欠陥レビュー装置及び欠陥レビュー方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、電子ビームを試料表面の観察領域に照射するとともに、前記観察領域内で前記電子ビームを走査させる電子走査部と、前記電子ビームの光軸の周りに配置され、前記電子ビームの照射によって前記試料の表面から放出される電子を検出する複数の電子検出器と、前記電子検出器の検出信号に基づいて、前記観察領域をそれぞれ異なる方向から写した複数の画像データを生成する信号処理部と、前記複数の画像データの各々の差分をとった差分画像を生成し、該差分画像に基づいて前記観察領域内の欠陥を検出する欠陥検査部と、を備える欠陥レビュー装置が提供される。
【0011】
上記の欠陥レビュー装置において、前記欠陥検査部は、前記観察領域のパターンがラインパターンとスペースとからなるラインアンドスペースパターンである場合には、前記ラインパターンの延在方向に平行で且つ前記電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向からの画像データの差分を取って差分画像を生成し、該差分画像に残ったパターンを欠陥として検出するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の別の観点によれば、電子ビームを試料の表面の観察領域に照射つつ走査させるとともに、前記電子ビームの照射によって前記試料の表面から放出される電子を前記電子ビームの光軸の周りに配置された複数の電子検出器で検出するステップと、前記電子検出器からの検出信号に基づいて、前記観察領域をそれぞれ異なる方向から写した複数の画像データを生成するステップと、前記複数の画像データの各々の差分をとった差分画像を生成し、該差分画像に基づいて前記観察領域内の欠陥を検出するステップと、を有する欠陥レビュー方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
上記の欠陥レビュー装置及び欠陥レビュー方法によれば、複数の画像データの各々の差分を取ることにより、欠陥のみが現れた差分画像を生成する。これにより、欠陥を容易かつ迅速に検出でき、欠陥レビューを迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る欠陥レビュー装置を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1の欠陥レビュー装置の電子検出器の配置を示す模式図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る欠陥レビュー装置を用いた欠陥レビュー方法を示すフローチャートである。
【図4】図4は、信号処理部が生成する画像データの一例を示す模式図である。
【図5】図5は、試料表面のパターンの一例を示す平面図である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係る欠陥レビュー装置による欠陥の検出方法を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る欠陥レビュー装置によるラインアンドスペースパターン上の欠陥検出の原理を説明する模式図である。
【図8】図8は、ラインアンドスペースパターンの方向に応じた差分画像の生成方法を説明する模式図である。
【図9】図9は、第1の実施形態に係る欠陥レビュー装置における欠陥の凹凸及び高さの測定の原理を説明する模式図である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係る欠陥レビュー装置による欠陥の凹凸及び高さの測定方法を示すフローチャートである。
【図11】図11は、第1の実施形態に係る欠陥の凹凸及び高さの測定方法を説明する図である。
【図12】図12は、実験例1の試料のSEM画像及び差分画像を示す図である。
【図13】図13は、実験例1の欠陥の差分プロファイル及び積分プロファイルを示す図である。
【図14】図14は、実験例1の参照パターンの差分画像、差分プロファイル及び積分プロファイルを示す図である。
【図15】図15は、実験例2の試料のSEM画像及び差分画像を示す図である。
【図16】図16は、実験例2の欠陥の差分プロファイル及び積分プロファイルを示す図である。
【図17】図17は、実験例2の参照パターンの差分画像、差分プロファイル及び積分プロファイルを示す図である。
【図18】図18は、第1の実施形態の変形例に係る欠陥レビュー装置の電子検出器の配置を示す模式図である。
【図19】図19は、図18に示す変形例における差分画面の生成方法を説明する模式図である。
【図20】図20は、第2の実施形態に係る欠陥レビュー方法を示すフローチャートである。
【図21】図21は、第2の実施形態に係る画像の生成方法を示すフローチャートである。
【図22】図22は、第2の実施形態におけるラインパターンの角度の定義を示す図である。
【図23】図23は、第2の実施形態における左画像、右画像、上画像及び下画像の生成方法を説明する模式図である。
【図24】図24は、第2の実施形態における左画像、右画像、上画像及び下画像の生成に用いる係数を示す図である。
【図25】図25は、第2の実施形態に係る欠陥の検出方法を示すフローチャートである。
【図26】図26(a)〜(d)は、実験例3の試料の左下画像、左上画像、右上画像及び右下画像をそれぞれ示す図である。
【図27】図27(a)〜(d)は、実験例3の試料の左画像、右画像、上画像及び下画像の輝度の分布をそれぞれ示す図である。
【図28】図28は、実験例3の試料の差分プロファイルを示す図である。
【図29】図29は、実験例3の試料の積分プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について添付の図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る欠陥レビュー装置を示すブロック図であり、図2は、第1の実施形態に係る欠陥レビュー装置の電子検出器の配置を示す模式図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の欠陥レビュー装置100は、試料8を収容するチャンバー2と、試料8に電子線を照射する電子走査部1と、電子走査部1及びチャンバー2内のステージ7の制御並びに測定データの処理を行う制御部10とに大別される。
【0018】
電子走査部1は、電子銃3を備え、電子銃3からは電子ビーム31が放出される。この電子ビーム31はコンデンサレンズ4で集束され、偏向コイル5で位置決めされた後、対物レンズ6による焦点合わせを経て試料8の表面に照射される。
【0019】
また、電子走査部1には、試料表面から放出される電子を検出するための4つの電子検出器9a〜9dが設けられている。
【0020】
図2に示すように、第1〜第4の電子検出器9a〜9dは、電子ビーム31の照射方向から見て、電子ビーム31の光軸の周りに相互に90°の角度を開けて対称に配置されている。ここでは、各電子検出器9a〜9dは矩形状の観察領域81の対角線方向に配置されるものとする。これらの電子検出器9a〜9dは、例えばシンチレータ等よりなり、試料8の上に電子ビーム31を照射することによって発生する二次電子や反射電子を捕捉して、各検出器の設置位置における電子量を、それぞれ信号ch1〜ch4として出力する。
【0021】
図1のように、チャンバー2には、支持体7aを上部に備えたステージ7が設けられている。このステージ7は支持体7aを介してウェハやフォトマスク等の試料8を保持するとともに、不図示の駆動機構により試料8を移動させることができる。
【0022】
制御部10は、試料8の表面の観察対象となる領域(観察領域)81(図2参照)を設定する欠陥座標処理部14と、観察領域81に対応する部分の設計データを抽出する設計データ処理部15とを備える。設計データは、試料であるフォトマスクやウェハのパターンの形状を表すデータであり、欠陥を含まないパターンの基準として、観察領域81のパターンの形状の判別や欠陥の検出等に用いられる。
【0023】
さらに、制御部10は、電子検出器9a〜9dからの信号を処理して画像データ(SEM画像)を生成する信号処理部11と、信号処理部11で生成された画像データに基づいて欠陥の検出を行う欠陥検査部12及び比較検査部13と、欠陥の凹凸及び高さを測定する欠陥凹凸測定部16とを備える。
【0024】
以下、欠陥レビュー装置100を用いた欠陥レビュー方法について説明する。図3は、欠陥レビュー装置100による欠陥レビュー方法を示すフローチャートである。
【0025】
まず、図3のステップS11のように、制御部10の欠陥座標処理部14が欠陥座標データに基づいて試料8の表面に矩形状の観察領域81を設定する。なお、欠陥座標データは、光学式の検査装置等で検出された欠陥の位置を表す座標データであり、通信回線などを通じて欠陥座標処理部14に入力される。
【0026】
次のステップS12において、制御部10の設計データ処理部15が欠陥座標処理部14で設定された観察領域81の設計データを抽出し、これを記憶部(不図示)に記憶させる。
【0027】
次に、ステップS13において、制御部10の制御の下で電子走査部1及びステージ7を駆動させて試料8の観察を行う。ここでは、制御部10がステージ7に制御信号を出力して、試料8の位置決めを行なう。その後、制御部10が電子走査部1に制御信号を出力して電子ビーム31を試料8の観察領域81内に照射して走査させる。このとき試料表面から放出される電子は電子検出器9a〜9dによって捕捉され、電子検出器9a〜9dは検出した電子の量を信号ch1〜ch4として信号処理部11に送出する。
【0028】
次のステップS14において、制御部10の信号処理部11は、電子検出器9a〜9dから送出された信号ch1〜ch4をAD変換器でデジタル信号に変換し、このデジタル信号に基づいて画像データ(SEM画像)を生成する。
【0029】
図4は、信号処理部11が生成する画像データを示す模式図である。
【0030】
図4に示すように、信号処理部11は、信号ch1〜ch4に基づいて左下画像a1、左上画像a2、右上画像a3及び右下画像a4を生成する。左下画像a1、左上画像a2、右上画像a3及び右下画像a4は、観察領域81をそれぞれ左下、左上、右上及び右下の各方向から写したSEM画像に相当する。
【0031】
また、信号処理部11は、隣接する電子検出器からの信号同士を加算することにより、各電子検出器9a〜9dの中間方向(左、右、下、及び上)から観察領域81を写したSEM画像に相当する、左画像a5、右画像a6、下画像a7及び上画像a8を生成する。
【0032】
さらに、信号処理部11は、ch1〜ch4を全て加算することにより、全加算画像a9を生成する。この全加算画像a9は、通常の走査型電子顕微鏡による二次電子像と同様な画像であり、全ての方向のエッジが略同一の高い輝度で表示されるため、欠陥の平面形状の測定等に用いられる。
【0033】
信号処理部11で生成された画像a1〜a8は、それぞれ異なる向きのエッジ(斜面)が強調されて表示される。ここに、図5は試料8の表面の凸状のパターンの一例を示す図である。図5において、71は左下、左上、右上及び右下の各方向を向いたエッジ71a〜71dを有する凸状のパターンを示し、72は左、右、下及び上の各方向を向いたエッジ72a〜72dを有する凸状のパターンを示す。
【0034】
図5のような試料を観察すると、左下画像a1では左下を向いたエッジ71aが最も高い輝度を示し、左上画像a2では左上を向いたエッジ71bが最も高い輝度を示す。また、右上画像a3及び右下画像a4では、それぞれエッジ71c、エッジ71dが最も高い輝度を示す。そして、左画像a5、右画像a6、下画像a7及び上画像a8では、それぞれエッジ72a、エッジ72b、エッジ72c及びエッジ72dが最も高い輝度を示す。
【0035】
以上のようにして、信号処理部11で生成された画像データは記憶部(不図示)に記憶される。
【0036】
その後、図3のステップS15において、欠陥検査部12又は比較検査部13で欠陥の検出を行い、ステップS16において、欠陥凹凸測定部16が欠陥の凹凸及び高さの測定を行う。
【0037】
以下、ステップS15の欠陥の検出方法及びステップS16の欠陥の凹凸及び高さの測定方法について更に詳しく説明する。
【0038】
図6は欠陥レビュー装置100による欠陥の検出方法を示すフローチャートである。図7は、欠陥レビュー装置100によるラインアンドスペースパターン上の欠陥検出の原理を説明する模式図である。図8は、ラインアンドスペースパターンの方向に応じた差分画像の生成方法を説明する模式図である。
【0039】
図6に示すように、先ずステップS21において、制御部10は、観察領域81の設計データを参照して、観察領域81のパターンが、縦、横、斜め45°及び斜め135°のラインアンドスペースパターンであるか否かを判断する。観察領域81のパターンが縦、横、斜め45°及び斜め135°のラインアンドスペースパターンである場合(YES)には、ステップS22に移行して欠陥検査部12による欠陥の検出を行う。
【0040】
ステップS22では、欠陥検査部12がラインパターンの延在方向に平行であって、電子ビーム31の光軸を挟んで向かい合う2方向からの画像データを記憶部から取得し、これらの画像データの差分を取って差分画像を生成する。
【0041】
例えば、図7に示すように、観察領域81のパターンが横方向のラインアンドスペースパターンである場合には、欠陥検査部12は、左画像a5と、右画像a6を記憶部から取得してこれらの差分をとる。なお、図7において、符号99a、99bは、それぞれ左画像a5及び右画像a6に対応する仮想的な電子検出器の位置を示すものとする。
【0042】
図示のように、ラインパターン83の縁にはエッジ83a、83b存在するが、これらのエッジ83a、83bの向き(法線方向)は、電子検出器99a及び電子検出器99bの間の方向を向いている。そのため、これらのエッジ83a、83bは、左画像a5及び右画像a6においてほぼ同じ輝度を示す。また、ラインパターン83の上面及びスペース82の向き(法線方向)は、電子検出器99a及び電子検出器99bの中間の方向であるため、これらの部分も左画像a5及び右画像a6において同じ輝度で表される。そのため、左画像a5及び右画像a6との差分を取ると、エッジ83a、83b、ラインパターン83、及びスペース82が相殺されてラインアンドスペースパターンが消去される。
【0043】
一方、欠陥85には電子検出器99a側を向いたエッジ85aと、電子検出器99b側を向いたエッジ85bとが存在する。この場合、左画像a5ではエッジ85aの輝度がエッジ85bの輝度よりも高くなる。また、右画像a6ではエッジ85bの輝度がエッジ85aの輝度よりも高くなる。そのため、左画像a5と右画像a6との差分をとると、欠陥85のエッジ85a、85bが除去されずに残る。
【0044】
したがって、左画像a5と右画像a6との差分を取ることにより、ラインアンドスペースパターンが消去され、欠陥85のみが現れた差分画像が得られる。
【0045】
なお、図8(a)のようにラインアンドスペースパターンの向きが縦(0°)の場合には、下画像a7と上画像a8との差分を取れば、欠陥のみが残った差分画像が得られる。また、図8(b)のような斜め45°のラインアンドスペースパターンの場合は、左下画像a1と右上画像a3との差分をとれば良く、図8(c)のような斜め135°のラインアンドスペースパターンの場合は、左上画像a2と右下画像a4との差分をとればよい。
【0046】
その後、図6のステップS23において、欠陥検査部12は、ステップS22で求めた差分画像に基づいて欠陥を検出する。この場合、例えば差分画像からエッジを抽出する処理を行うことにより迅速に欠陥を検出できる。
【0047】
一方、ステップS21において、観察領域81のパターンが縦、横、斜め45°及び斜め135°のラインアンドスペースパターンではないと判断された場合(NO)には、ステップS24に移行して比較検査部13による欠陥の検出を行う。
【0048】
ステップS24では、比較検査部13が斜め方向のエッジを強調したエッジ強調画像を生成する。ここでは、左下画像a1及び右上画像a3の差分を取ることで、左上と右下とを結ぶ対角線方向のエッジを強調した画像を生成する。また、左上画像a2及び右下画像a4の差分を取ることで、左下と右上とを結ぶ対角線方向のエッジを強調した画像を生成する。そして、左下画像a1及び右上画像a3の差分を取った画像と、左上画像a2及び右下画像a4の差分を取った画像とを加算することにより、斜め方向のエッジを強調したエッジ強調画像を生成する。
【0049】
次に、ステップS25において、比較検査部13は、ステップS24で生成したエッジ強調画像と、設計データとを重ね合わせ比較して、エッジ強調画像と設計データとのエッジ位置の相違部分に基づいて欠陥を検出する。このように、比較検査部13による検出処理により、所定方向のラインアンドスペースパターン以外の任意のパターンの欠陥を検出できる。
【0050】
次に、上記の方法で検出した欠陥の凹凸及び高さ(又は深さ)の測定方法について説明する。図9は、欠陥の凹凸及び高さの測定の原理を説明する模式図である。
【0051】
一般に、凹凸を有する試料表面を電子ビーム31で走査したときに、電子検出器からの信号の強度は電子ビーム31が照射されている部分の試料表面の向きに応じて変化する。すなわち、電子ビーム31が照射されている部分の試料表面の向き(法線方向)が電子検出器の設置方向に近い程、電子検出器からの信号の強度が大きくなる。
【0052】
したがって、図9(a)のような断面を有する試料の表面に沿って電子ビーム31を走査させ、電子ビーム31を挟んで向かい合う2台の電子検出器99a、99bで試料表面から放出される電子を検出すると、電子検出器99aからは図9(b)の信号波形が得られ、電子検出器99bからは図9(c)の信号波形が得られる。
【0053】
図9(b)に示すように、電子検出器99aの信号波形は、電子検出器99a側を向いた凹凸87の左側の斜面で高くなり、電子検出器99aの設置方向から離れた方向を向いた凹凸87の右側の斜面で低くなる。すなわち、図9(b)の信号波形は、電子検出器99aの設置方向に対する試料表面の向き(法線方向)を反映している。
【0054】
また、図9(c)に示すように、電子検出器99bからの信号波形は、電子検出器99bの設置方向と離れた方向を向いた凹凸87の左側の斜面で低くなり、電子検出器99bの設置方向側を向いた凹凸87の右側の斜面で高くなる。すなわち、図9(c)の信号波形は、電子検出器99bの設置方向に対する試料表面の向き(法線方向)を反映している。
【0055】
図9(b)、(c)の信号波形の差分をとると、図9(d)のような試料の表面の差分プロファイルが得られる。この差分プロファイルでは、試料表面の平坦部分からの信号が消去される。上記のように、図9(b)、(c)の信号波形は、それぞれ電子検出器99a及び電子検出器99bに対する凹凸87の表面の向きを反映しており、図9(b)、(c)の差分を取った差分プロファイルは試料表面の平坦部分に対する凹凸87の表面の傾斜の大きさを反映したものとなる。
【0056】
したがって、図9(d)の波形を積分することにより、図9(e)のように、試料表面の凹凸87の形状を反映した積分プロファイルが得られる。この凹凸87を反映した積分プロファイルが凹であるか凸であるかを調べることにより、凹凸87が試料表面から突出した凸状のものか、試料表面がえぐられた凹状のものかを判別することができる。
【0057】
また、予め高さが判明しているパターン(以下、参照パターンと呼ぶ)について、上記と同様の手順で積分プロファイルを求め、その参照パターンの積分プロファイルと凹凸87を反映した積分プロファイルとの高さを比較することにより、凹凸87の実際の高さを求めることができる。
【0058】
そこで、本実施形態では、下記の方法により欠陥の高さを検出する。図10は、欠陥レビュー装置100による欠陥の凹凸及び高さの測定方法を示すフローチャートであり、図11は、同じく欠陥の凹凸及び高さの測定方法を説明する模式図である。なお、図11において、符号31は電子ビームを示し、符号83はラインパターンを示し、符号85は欠陥を示す。
【0059】
まず、図10のステップS31のように、制御部10の欠陥凹凸測定部16が欠陥の差分プロファイルを取得する。例えば図11(a)に示すように、欠陥凹凸測定部16が電子ビーム31を挟んで向かい合う2方向からの画像データ(左画像a5及び右画像a6)を抽出する。そして、図11(b)に示すように、それらの画像データの差分を取ることにより差分画像b1を求める。次に、その差分画像b1において、左画像a5及び右画像a6の方向(左右方向)に平行で欠陥85を通るラインAを設定し、そのラインAに沿った部分の差分値を抽出する。これにより、図11(c)に示すように欠陥の差分プロファイルが求まる。
【0060】
次に、図10のステップS32において、欠陥凹凸測定部16はステップS31で求めた差分プロファイルを積分して欠陥を反映した積分プロファイルを算出する。すなわち、図11(c)の差分プロファイルを積分してゆくことにより、図11(d)のように積分プロファイルを算出する。この積分プロファイルは、ラインAに沿った断面における欠陥の高さの分布を反映している。
【0061】
次のステップS33において、欠陥凹凸測定部16は、欠陥を反映した積分プロファイルが上に凸であるか凹であるかを調べることにより、欠陥が試料表面から突出した凸状のものであるか、試料表面がえぐれて形成された凹状のものであるかを判別する。例えば、図11(a)の欠陥85は、図11(d)の積分プロファイルに基づいて、凸状であると判別される。
【0062】
次に、ステップS34で、欠陥凹凸測定部16は、参照パターンの差分プロファイルを求める。例えば図11(a)に示す試料において、高さが判明しているラインパターン83がある場合には、そのラインパターン83を参照パターンとする。この場合には、ラインパターン83と直交する方向の画像データ(下画像a7及び上画像a8)の差分を取った差分画像を生成する。そして、図11(a)のような、ラインパターン83と直交するラインBを設定し、そのラインBに沿った部分の差分値を差分画像から抽出して、参照パターンの差分プロファイルを求める。
【0063】
次いで、ステップS35で、欠陥凹凸測定部16は、ステップS34で求めた参照パターンの差分プロファイルを積分して、参照パターンの積分プロファイル(図11(e)参照)を求める。
【0064】
その後、ステップS36において、欠陥を反映した積分プロファイルのピーク値と、参照パターンの積分プロファイルのピーク値とを比較することにより、欠陥の高さHを算出する。例えば、図11(d)、(e)に示すように、欠陥を反映した積分プロファイルのピーク値がI1であり、参照パターンの積分プロファイルのピーク値がI2である場合には、欠陥及び参照パターンの積分プロファイルのピーク値の比がI1/I2と求まる。そして、図11(a)に示すように参照パターン(ラインパターン83)の実際の高さがH0である場合には、欠陥及び参照パターンの積分プロファイルの比I1/I2に参照パターンの高さH0を乗ずることにより、欠陥85の高さH(=I1/I2×H0)が求まる。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、観察領域81がラインアンドスペースパターンである場合には、差分画像に基づいて欠陥を迅速に検出できる。また、本実施形態によれば、試料の回転させることなく縦、横、斜め45°及び斜め135°の4方向のラインアンドスペースパターン上の欠陥を検出できるので、欠陥の検出処理がより一層迅速化される。
【0066】
さらに、欠陥を反映した積分プロファイルに基づいて、欠陥が凹であるか又は凸であるかを判別できるとともに、参照パターンの積分プロファイルと比較することにより欠陥の高さを検出できる。
【0067】
(実験例1)
実験例1の試料は、ガラス基板の上に厚さが約80nm及び幅が約80nmのクロム(Cr)からなる複数のラインパターンを形成したものであり、各ラインパターンの間には幅が約80nmのスペースが設けられている。ここでは、ラインパターンは観察領域81において横方向に伸びているものとする。
【0068】
図12(a)は実験例1の試料の右画像a6を示し、図12(b)は実験例1の試料の左画像a5を示し、図12(c)は実験例1の試料の全加算画像a9を示し、図12(d)は右画像a6と左画像a5との差分をとった差分画像を示す。
【0069】
図12(a)〜(c)に示すように、観察領域81の中央部に矩形状のパターンが現れているが、従来であれば、この矩形状のパターンが欠陥であるか否かは設計データや正常なパターンの観察結果とのパターンマッチング(比較処理)を行うまで判別できない。
【0070】
しかし、本実験例では、図12(d)のように、左画像a5と右画像a6との差分を取ることにより、ラインアンドスペースパターンが消去され、欠陥のみが現れた差分画像が得られる。これにより、欠陥を容易に検出できることが分かる。
【0071】
次に、検出した欠陥の差分プロファイル及び積分プロファイルを求めた結果を図13に示す。図13(a)は、図12(d)のI−I線における差分プロファイルを示すグラフであり、図13(b)は、図13(a)の差分プロファイルを積分して得た積分プロファイルを示すグラフである。
【0072】
図13(b)のように、欠陥の積分プロファイルは上に凸状であることから、欠陥が凸状であることが分かる。また、欠陥の積分プロファイルのピーク値は約600(輝度値)であった。
【0073】
次に、参照パターンの積分プロファイルを算出し、欠陥の高さを求めた結果について説明する。図14は、実験例1の試料の差分画像、差分プロファイル及び積分プロファイルを示す図である。
【0074】
図14(a)に示すように、実験例1では、ラインパターンを参照パターンとし、ラインパターンの延在方向と直交する方向に向かい合う上画像a8及び下画像a7の差分を取った差分画像を生成した。そして、その差分画像からラインパターンを横切るII−II線での差分値を抽出することにより、図14(b)に示す差分プロファイルを得た。また、図14(b)の差分プロファイルを積分することにより、図14(c)に示すような参照パターンの積分プロファイルを求めた。
【0075】
図14(c)に示すように、参照パターンの積分プロファイルのピーク値は約1000(輝度値)であることが分かる。また、この参照パターンの(ラインパターン)の高さは80nmであることが分かっている。したがって、欠陥を反映した積分プロファイル及び参照パターンの積分プロファイルのピーク値の比は、600/1000であり、これに参照パターンの高さ80nmを乗ずることにより、欠陥の高さが約48nm(=600/1000×80nm)と求まる。
【0076】
(実験例2)
実験例2では、凹状の欠陥を有する試料の欠陥レビューを行った例について説明する。
【0077】
実験例2の試料は、実験例1と同様に、ガラス基板の上に高さが約80nm及び幅が約80nm及びのクロム(Cr)からなる複数のラインパターンを設けたものであり、各ラインパターンの間には幅が約80nmのスペースが設けられている。実験例2においても、ラインパターンは横方向に配置されているものとする。
【0078】
図15(a)は、実験例2の試料の全加算画像a9を示す図であり、図15(b)は、実験例2の試料の左画像a5と右画像a6との差分画像を示す図である。
【0079】
図15(a)に示すように、観察領域81の中央部に矩形状のパターンが確認できる。また、図15(b)の差分画像により、図15(a)の矩形状のパターンが欠陥であることが分かる。
【0080】
次に、欠陥の差分プロファイル及び積分プロファイルを求めた結果を図16に示す。図16(a)は、図15(b)のIII−III線での差分プロファイルを示す図であり、図16(b)は、図16(a)の差分プロファイルを積分して得られる欠陥の積分プロファイルを示す図である。
【0081】
図16(b)に示すように、欠陥の積分プロファイルは凹状であり、この欠陥は、ラインアンドスペースパターンの一部が削れてできた凹状のパターンであることが分かる。また、欠陥の積分プロファイルのピーク値は約−280(輝度値)であった。
【0082】
次に、参照パターン(ラインパターン)の差分プロファイル及び積分プロファイルを求めた。図17(a)は、実験例2の試料の上画像a8及び下画像a7の差分をとった差分画像を示す図であり、図17(b)は図17(a)のIV−IV線における差分プロファイルを示す図であり、図17(c)は図17(b)の差分プロファイルを積分して得られる参照パターンの積分プロファイルを示す図である。
【0083】
図17(c)に示すように、参照パターンの積分プロファイルのピーク値は約560(輝度値)であった。また、参照パターンの高さは80nmであることが分かっている。したがって、欠陥及び参照パターンの積分プロファイルのピーク値の比は−280/560であり、これに参照パターンの高さ(80nm)を乗ずることにより、図15(a)の欠陥の高さ(深さ)が約−40nm(=−280/560×80nm)と求まる。
【0084】
(第1の実施形態の変形例)
上記の欠陥レビュー装置100では電子検出器を4台設けているが、これに限定されるものではなく、電子検出器9は少なくとも2台以上の任意の台数とすることができる。
【0085】
図18は、第1の実施形態の変形例に係る欠陥レビュー装置100の電子検出器の配置を示す模式図であり、電子検出器を3台とした場合の配置を示している。
【0086】
図18に示すように、電子検出器を3台とする場合には、第1〜第3の電子検出器9a〜9cは電子ビーム31の照射方向から見て電子ビーム31の光軸の周りに相互に120°の角度を開けて配置する。
【0087】
また、信号処理部11は、各電子検出器9a〜9cからの信号ch1〜ch3に基づいて、各電子検出器9a〜9cの設置方向から観察領域を写した第1の画像c1、第2の画像c2及び第3の画像c3を生成する。さらに信号処理部11は、隣接する電子検出器からの信号同士を加算して第4の画像c4、第5の画像c5及び第6の画像c6を生成するとともに、ch1〜ch3を加算して全加算画像c7を生成する。なお、第4〜第6の画像c4、c5、c6は、各電子検出器9a、9b、9cの中間の方向から観察領域を写したSEM画像に相当する。
【0088】
図19は、図18に示す変形例における差分画像の生成方法を説明する模式図である。
【0089】
本変形例では、60°及び120°のラインアンドスペースパターンである場合に、欠陥検査部12による欠陥の検出を行なう。
【0090】
この場合、図19(a)のように、縦方向(0°)のラインアンドスペースパターンに対しては、第4の画像c4と第1の画像c1との差分をとってラインアンドスペースパターンが消去された差分画像を生成し、その差分画像に基づいて欠陥を検出する。また、図19(b)のように、60°方向のラインアンドスペースパターンに対しては、第6の画像c6と第3の画像c3との差分をとった差分画像に基づいて欠陥を検出する。さらに、図19(c)のように、120°方向のラインアンドスペースパターンの場合には、第5の画像c5と第2の画像c2との差分を取った差分画像に基づいて欠陥を検出する。
【0091】
なお、本変形例の欠陥検査装置100において、電子検出器を2台としてもよい。この場合には、電子検出器を電子ビーム31の光軸を挟んで対向するように配置すればよく、ステージ7に回転機構を設けて任意の方向のラインアンドスペースパターン上の欠陥を検出できるようにしてもよい。
【0092】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、任意の方向のラインパターンについて差分画像に基づいて欠陥を検出する方法について説明する。なお、本実施形態でも、図1に示す欠陥レビュー装置100により欠陥の検出を行う。
【0093】
図20は本実施形態における欠陥レビュー方法を示すフローチャートである。
【0094】
図20に示すように、欠陥レビュー装置100は、ステップS41において観察領域81を設定する。その後、ステップS42に移行して、観察領域81の設計データを抽出する。さらに、ステップS43において観察領域81に電子ビーム31を照射しつつ走査させて試料表面の観察を行う。なお、上記のステップS41〜S43は図3を参照しつつ説明したステップS11〜S13と同様である。
【0095】
次に、ステップS44において欠陥レビュー装置100の信号処理部11は各電子検出器9a〜9dからの検出信号ch1〜ch4に基づいて観察領域81を複数の方向から写した画像を生成する。
【0096】
図21は、ステップS44における画像の生成方法を示すフローチャートである。
【0097】
まず、図21のステップS51において、信号処理部11は各電子検出器9a〜9dからの検出信号ch1〜ch4に基づいて、左下画像a1、左上画像a2、右上画像a3及び右下画像a4を生成する。これらの画像は、観察領域81をそれぞれ、左下、左上、右上及び右下の各方向から写したSEM画像に相当する。
【0098】
次に、ステップS52において、信号処理部11は、設計データを参照して、観察領域81上のパターンがラインアンドスペースパターンか否かを判断する。ステップS52において、信号処理部11が観察領域81上のパターンがラインアンドスペースパターンであると判断した場合(YES)にはステップS53に移行し、ラインアンドスペースパターンでないと判断した場合(NO)には画像の生成を終了する。
【0099】
次に、ステップS53において、信号処理部11は、設計データに基づいて、ラインアンドスペースパターンに含まれるラインパターンの角度αを検出する。
【0100】
ここで、図22は、本実施形態におけるラインパターンの角度αの定義を示す図である。
【0101】
本実施形態では、図22のように左右方向に延在する直線Mと、ラインパターン83の延在方向とのなす角度をラインパターンの角度αとする。また、180°以上の角度のラインパターンは、その角度から180°を差し引いた角度のラインパターンと同じものとして扱う。たとえば、200°のラインパターンは20°のラインパターンとして扱うものとする。
【0102】
次に、ステップS54に移行して、信号処理部11は、ラインパターンの角度αが45°〜135°であるか否かを判断する。ステップS54において信号処理部11がラインパターンの角度αが45°〜135°であると判断した場合(YES)には、ステップS55に移行する。
【0103】
図23(a)は、本実施形態において、ラインパターンの角度αが45°〜135°の場合の左画像、右画像、上画像及び下画像の生成方法を説明する模式図である。また、図24(a)〜(d)は、本実施形態での左画像、右画像、上画像及び下画像の生成に用いる係数r1〜r4をそれぞれ示す図である。
【0104】
ステップS55では、信号処理部11は、図23(a)に示すように左画像d1を、係数r1を乗じた信号ch1と係数r2を乗じた信号ch2とを加算して生成する。また、右画像d2を、係数r3を乗じた信号ch3と係数r4を乗じた信号ch4とを加算して生成する。
【0105】
さらに、信号処理部11は、上画像d3を、係数r3を乗じた信号ch2と係数r2を乗じた信号ch3とを加算して生成し、下画像d4を、係数r4を乗じた信号ch1と係数r1を乗じた信号ch4とを加算して生成する。
【0106】
上記各画像d1〜d4の生成に用いる係数r1〜r4は、図24(a)〜(d)にそれぞれ示すように、ラインパターンの角度αに応じて0〜1の間で周期的に変化する。ここでは、係数r1、r3は(1+sin2α)/2で表され、係数r2、r4は(1−sin2α)/2で表わされるものとする。
【0107】
上画像d3の生成に用いる係数r2、r3に着目すると、図24(b)、(c)に示すように、ラインパターンの角度αが、信号ch3に対応する電子検出器9cの設置方向である135°に近づくほど、信号ch3に係る係数r2が増大し、信号ch2に係る係数r3が減少する。これとは逆に、ラインパターンの角度αが信号ch2に対応する電子検出器9bの設置方向である45°に近づくと、信号ch2に係る係数r3が増大し、信号ch3に係る係数r2が減少する。このようにして、ラインパターンの角度αが電子検出器9cの設置方向に近づくと、上画像d3において電子検出器9cからの信号ch3の割合が増加する。また、ラインパターンの角度αが電子検出器9bの設置方向に近づくと上画像d3において電子検出器9bからの信号ch2の割合が増加する。
【0108】
そして、上画像d3が観察領域を写す方向は、角度αが45°〜135°のラインパターンに対してラインパターンの延在方向に平行な方向となる。
【0109】
同様に、下画像d4はラインパターンの延在方向に平行な方向から写した画像となる。
【0110】
一方、左画像d1及び右画像d2は、ラインパターンの延在方向に直交する方向から写した画像となる。
【0111】
以上のように、ステップS55において信号処理部11は、ラインパターンの延在方向に平行な方向から写した上画像d3及び下画像d4と、ラインパターンの延在方向に直交する方向から写した左画像d1及び右画像d2とを生成する。
【0112】
図21のステップS54において、信号処理部11がラインパターンの角度αが45°〜135°でないと判断した場合(NO)、すなわちラインパターンの角度αが0°〜45°又は135°〜180°の場合は、ステップS56に移行する。
【0113】
図23(b)は、ラインパターンの角度αが0°〜45°または135°〜180°の場合における左画像、右画像、上画像及び下画像の生成方法を説明する模式図である。
【0114】
ステップS56において、信号処理部11は図23(b)に示すように左画像d1を、係数r2を乗じた信号ch1と係数r1を乗じた信号ch2とを加算して生成する。また、右画像d2を、係数r4を乗じた信号ch3と係数r3を乗じた信号ch4とを加算して生成する。
【0115】
さらに、信号処理部11は、上画像d3を、係数r2を乗じた信号ch2と係数r3を乗じた信号ch3とを加算して生成し、下画像d4を、係数r1を乗じた信号ch1と係数r4を乗じた信号ch4とを加算して生成する。
【0116】
ここでは、左画像d1及び右画像d2がラインパターンの延在方向に平行な方向から写した画像となり、上画像d3及び下画像d4はラインパターンの延在方向に直交する方向から写した画像となる。
【0117】
このようにして、ステップS56において信号処理部11は、ラインパターンの延在方向に平行な方向から写した左画像d1及び右画像d2と、ラインパターンの延在方向に直交する方向から写した上画像d3及び下画像d4とを生成する。
【0118】
以上により、信号処理部11による画像の生成(ステップS44、図20)が完了する。
【0119】
次に、図20のステップS45に移行して、欠陥検査部12及び比較検査部13により欠陥の検出を行う。
【0120】
図25は、ステップS45における欠陥の検出方法を示すフローチャートである。
【0121】
まず、図25のステップS61において、欠陥検査部12は観察領域81のパターンがラインアンドスペースパターンか否かを判断する。ステップS61において、欠陥検査部12が観察領域81のパターンがラインアンドスペースパターンであると判断した場合(YES)には、ステップS62に移行する。
【0122】
次に、ステップS62において、欠陥検査部12は、ラインアンドスペースパターンを構成するラインパターンの延在方向に平行であって、電子ビーム31の光軸を挟んで向かい合う2方向からの画像データの差分をとって差分画像を生成する。
【0123】
ここでは、ラインパターンの角度αが0°<α<45°又は135°<α<180°の場合には、左画像d1と右画像d2との差をとって差分画像を生成する。
【0124】
また、ラインパターンの角度αが45°<α<135°の場合には、上画像d3と下画像d4との差をとって差分画像を生成する。
【0125】
さらに、ラインパターンの角度αが45°の場合には、左上画像a2と右下画像a4との差をとって差分画像を生成する。また、ラインパターンの角度αが135°の場合には左下画像a1と右上画像a3との差をとって差分画像を生成する。
【0126】
これにより、図7を参照しつつ説明したように、ラインパターンのエッジが消去されて欠陥85のみが残った差分画像が得られる。
【0127】
次に、図25のステップS63において、欠陥検査部12は、ステップS62で生成した差分画像に残ったパターンを欠陥として検出する。この場合、例えば差分画像において、所定の輝度値以上のエッジを検出することにより、欠陥のみを迅速に検出できる。
【0128】
一方、ステップS61で、欠陥検査部12が観察領域81のパターンがラインアンドスペースパターンでないと判断した場合(NO)には、ステップS64に移行して比較検査部13によりエッジ強調画像を生成する。
【0129】
その後、ステップS65において、比較検査部13がエッジ強調画像と設計データとを重ね合わせて比較して、エッジ強調画像のエッジが設計データのエッジと異なる部分を欠陥として検出する。
【0130】
以上により、欠陥の検出が完了する。
【0131】
その後、図20のステップS46に移行して、欠陥凹凸測定部16が欠陥の凹凸及び高さの測定を行う。なお、本実施形態の欠陥凹凸測定部16による欠陥の凹凸及び高さの測定は図9〜図11を参照しつつ説明した方法で行う。この場合、参照パターンの積分プロファイルは、ラインパターンの延在方向に直交する2方向からの画像に基づいて求めればよい。
【0132】
以上のように、本実施形態によれば、隣接する信号同士にラインパターンの角度αに応じて変化する係数を乗じた上で加算することにより、任意の角度のラインパターンに対して、ラインパターンの延在方向に平行な方向から写した画像を生成する。これにより、任意の角度のラインパターンに対して、差分画像に基づいて迅速に欠陥を検出できる。
【0133】
(実験例3)
実験例3の試料は、ガラス基板の上に厚さが約80nm及び幅が約400nmのクロム(Cr)からなる複数のラインパターンを形成したものであり、各ラインパターンの間には、幅が約400nmのスペースが設けられている。本実験例において、ラインパターンの角度は105°とした。
【0134】
図26(a)は、実験例3の試料の左下画像a1を示し、図26(b)は実験例3の試料の左上画像a2を示し、図26(c)は実験例3の試料の右上画像a3を示し、図26(d)は実験例3の試料に右下画像a4を示す。
【0135】
次に、係数r1、r3を0.25とし、係数r2、r4を0.75として、図23(a)に示す方法で左画像d1、右画像d2、上画像d3及び下画像d4を生成した。続いて、生成した各画像d1〜d4から図26(a)のVI−VI線に対応する部分の輝度の分布を抽出した。
【0136】
図27(a)は、左画像d1における輝度の分布を示し、図27(b)は右画像d2における輝度の分布を示す。また、図27(c)は上画像d3における輝度の分布を示し、図27(d)は下画像d4における輝度の分布を示す。
【0137】
次に、図27(a)の輝度の分布と図27(b)の輝度の分布との差分をとることにより、左画像d1及び右画像d2の差分プロファイルを求めた。また、図27(c)の輝度の分布と図27(d)の輝度の分布との差分をとることにより、上画像d3及び下画像d4の差分プロファイルを求めた。
【0138】
図28(a)は、左画像d1及び右画像d2の差分プロファイルを示し、図28(b)は上画像d3及び下画像d4の差分プロファイルを示す。
【0139】
図28(a)に示すように、ラインパターンの延在方向に直交する方向から写した左画像d1及び右画像d2の差分プロファイルでは、ラインパターンのエッジが強調されて、エッジ部分に比較的大きな差分値の凸部及び凹部が表れている。
【0140】
これに対し、図28(b)に示すように、ラインパターンの延在方向に平行な方向から写した上画像d3及び下画像4の差分プロファイルでは、ラインパターンのエッジ部分の差分値の凹凸が図28(a)よりも小さくなり、ラインパターンのエッジがほぼ消去される。
【0141】
以上の結果から、ラインパターンの角度αが105°の場合でも、差分画像でラインパターンを消去できることが確認できた。
【0142】
次に、ラインパターンの延在方向に直交する方向から写した左画像d1及び右画像d2の差分プロファイルを積分して積分プロファイルを求めた。図29は、図28(a)の差分プロファイルを積分して求めた積分プロファイルを示している。
【0143】
図29に示すように、ラインパターンの延在方向に直交する方向から写した左画像d1及び右画像d2の積分プロファイルでは、ラインパターンの形状を反映して上に凸のピークが現れる。この積分プロファイルは参照パターンの積分プロファイルとして、欠陥の高さの測定に使用できる。
【符号の説明】
【0144】
1…電子走査部、2…チャンバー、3…電子銃、4…コンデンサレンズ、5…偏向コイル、6…対物レンズ、7…ステージ、7a…保持部材、8…試料、9a〜9d…電子検出器、10…制御装置、11…信号処理部、12…欠陥検査部、13…比較検査部、14…欠陥座標処理部、15…設計データ処理部、16…欠陥凹凸測定部、17…記憶部、20…表示部、31…電子ビーム、81…観察領域、82…スペース、83…ラインパターン、83a、83b、85a、85b…エッジ、85…欠陥、87…凹凸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを試料表面の観察領域に照射するとともに、前記観察領域内で前記電子ビームを走査させる電子走査部と、
前記電子ビームの光軸の周りに配置され、前記電子ビームの照射によって前記試料の表面から放出される電子を検出する複数の電子検出器と、
前記電子検出器の検出信号に基づいて、前記観察領域をそれぞれ異なる方向から写した複数の画像データを生成する信号処理部と、
前記複数の画像データの各々の差分をとった差分画像を生成し、該差分画像に基づいて前記観察領域内の欠陥を検出する欠陥検査部と、
を備えることを特徴とする欠陥レビュー装置。
【請求項2】
前記欠陥検査部は、前記観察領域のパターンがラインパターンとスペースとからなるラインアンドスペースパターンである場合には、前記ラインパターンの延在方向に平行で且つ前記電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向からの前記画像データの差分を取って前記差分画像を生成し、該差分画像に残ったパターンを欠陥として検出することを特徴とする請求項1に記載の欠陥レビュー装置。
【請求項3】
前記電子検出器は、前記電子ビームの光軸の周りに相互に均等な角度を開けて、少なくとも2台以上配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の欠陥レビュー装置。
【請求項4】
前記観察領域は矩形状に設定され、前記電子検出器は、矩形状の前記観察領域の対角線方向に4台設けられていることを特徴とする請求項3に記載の欠陥レビュー装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、隣り合う前記電子検出器の検出信号を加算することにより前記各電子検出器の中間の方向から前記観察領域を写した画像データを生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の欠陥レビュー装置。
【請求項6】
前記観察領域のパターンがラインアンドスペースパターン以外のパターンである場合に、前記観察領域の画像データと前記観察領域の設計上のパターンを表す設計データとを比較することにより欠陥を検出する比較検査部を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の欠陥レビュー装置。
【請求項7】
前記比較検査部は、前記観察領域の一方の対角線方向の画像データ同士の差分をとった画像と、前記観察領域の他方の対角線方向の画像データ同士の差分をとった画像とを加算することにより斜め方向のエッジを強調したエッジ強調画像を生成し、該エッジ強調画像と前記設計データのパターンのエッジとを比較することにより欠陥を検出することを特徴とする請求項6に記載の欠陥レビュー装置。
【請求項8】
前記欠陥の凹凸を測定する欠陥凹凸測定部を備え、
前記欠陥凹凸測定部は、前記電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向からの画像データの差分値の分布を示す差分プロファイルを求め、さらに前記差分プロファイルを積分して前記積分プロファイルを求め、前記欠陥を反映して前記積分プロファイルに現れる形が凹であるか凸であるかに基づいて、前記欠陥が凹であるか凸であるかを判別することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の欠陥レビュー装置。
【請求項9】
前記欠陥凹凸測定部は、高さが既知の参照パターンについて前記積分プロファイルを求め、前記参照パターンについての前記積分プロファイルのピーク値と、前記欠陥を反映した前記積分プロファイルのピーク値とを比較することにより、前記欠陥の高さを算出することを特徴とする請求項8に記載の欠陥レビュー装置。
【請求項10】
前記信号処理部は、隣り合う前記電子検出器の検出信号に前記ラインパターンの角度に応じて変化する係数を乗じて加算することにより、前記ラインパターンの延在方向に平行で、且つ前記電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向から前記観察領域を写した画像データを生成することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の欠陥レビュー装置。
【請求項11】
電子ビームを試料の表面の観察領域に照射つつ走査させるとともに、前記電子ビームの照射によって前記試料の表面から放出される電子を前記電子ビームの光軸の周りに配置された複数の電子検出器で検出するステップと、
前記電子検出器からの検出信号に基づいて、前記観察領域をそれぞれ異なる方向から写した複数の画像データを生成するステップと、
前記複数の画像データの各々の差分をとった差分画像を生成し、該差分画像に基づいて前記観察領域内の欠陥を検出するステップと、
を有することを特徴とする欠陥レビュー方法。
【請求項12】
前記欠陥を検出するステップは、
前記観察領域のパターンがラインパターンとスペースとからなるラインアンドスペースパターンである場合には、前記ラインパターンの延在方向に平行で且つ前記電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向からの前記画像データの差分を取って前記差分画像を生成するステップと、
前記差分画像に残ったパターンを欠陥として検出するステップと、
を有することを特徴とする請求項11に記載の欠陥レビュー方法。
【請求項13】
前記観察領域のパターンがラインアンドスペースパターン以外のパターンである場合には、前記観察領域の画像データと前記観察領域の設計上のパターンを表す設計データとを比較することにより欠陥を検出するステップを有することを特徴とする請求項11に記載の欠陥レビュー方法。
【請求項14】
検出された前記欠陥の凹凸を測定するステップを更に有し、
前記凹凸を測定するステップは、
前記電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向からの画像データの差分値の分布を示す差分プロファイルを求めるステップと、
前記差分プロファイルを積分して前記積分プロファイルを求めるステップと、
前記欠陥を反映して前記積分プロファイルに現れる形が凹であるか凸であるかに基づいて、前記欠陥が凹であるか凸であるかを判別するステップと、
を有することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の欠陥レビュー方法。
【請求項15】
前記前記欠陥の凹凸を測定するステップは、
高さが既知の参照パターンについて前記積分プロファイルを求めるステップと、
前記参照パターンについての前記積分プロファイルのピーク値と、前記欠陥を反映した前記積分プロファイルのピーク値とを比較することにより、前記欠陥の高さを算出するステップと、
を有することを特徴とする請求項14に記載の欠陥レビュー方法。
【請求項16】
前記画像データを生成するステップでは、
隣り合う前記電子検出器の検出信号に前記ラインパターンの角度に応じて変化する係数を乗じて加算することにより前記ラインパターンの延在方向に平行で、且つ前記電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向から前記観察領域を写した画像データを生成することを特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載の欠陥レビュー方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−112927(P2012−112927A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87197(P2011−87197)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】