説明

欠陥検出装置及び欠陥検出方法

【課題】複数の撮像画素を配列した撮像素子によって反復パターンが形成された試料の表面を撮像して取得した撮像画像に、反復パターンに対応して繰り返し現れる単位パターンのうちの2つの、一方の単位パターン内の画素とこの画素に対応する他の単位パターン内の画素との間のグレイレベル差を検出し、グレイレベル差が検出閾値を超えるときこのグレイレベル差を検出した画素を欠陥であると検出する欠陥検出において、撮像画素のそれぞれのS/N比に応じて、これら撮像画素からそれぞれ得られた画像信号を用いて行う欠陥検出の検出感度を調整する。
【解決手段】グレイレベル差を、このグレイレベル差が検出されたグレイレベル値をそれぞれ生成した撮像画素の出力信号のS/N比に応じて補正する。またはグレイレベル差と比較される検出閾値を、このグレイレベル差が検出されたグレイレベル値をそれぞれ生成した撮像画素の出力信号のS/N比に応じて補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象である互いに同一であるべきパターンを撮像して得た検査画像と参照画像とを比較して、相違する箇所を前記パターンの欠陥として検出する欠陥検査装置及び欠陥検査方法に関する。
より詳しくは、繰り返しパターンが形成された試料の表面を撮像して取得した撮像画像において、繰り返しパターンに対応して繰り返し現れる複数の単位パターンのうちの2つの単位パターン間の、互いに対応し合う画素同士のグレイレベル差を検出し、検出されたグレイレベル差が所定の検出閾値を超えるとき、このグレイレベル差が検出された画素が示す部分に欠陥候補が存在すると判定する欠陥検査装置及び欠陥検査方法において、検出されたグレイレベル差又は検出閾値を補正することにより欠陥検出感度を調節する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや、フォトマスク用基板、並びに液晶表示パネルなどの半導体装置等の製造は多数の工数から成り立っており、最終及び途中の工程での欠陥の発生具合を検査して製造工程にフィードバックすることが歩留まり向上の上からも重要である。製造工程の途中で欠陥を検出するために、半導体ウエハ、フォトマスク用基板、液晶表示パネル用基板、液晶デバイス用基板などの試料の表面に形成されたパターンを撮像し、これにより得られた画像を検査することにより試料表面に存在する欠陥を検出するパターン欠陥検査が広く行われている。
以下の説明では、半導体ウエハ上に形成されたパターンの欠陥を検査する半導体ウエハ用欠陥検査装置を例として説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体メモリ用フォトマスク用基板や、液晶デバイス用基板、液晶表示パネル用基板などの半導体装置を検査する欠陥検査装置にも広く適用可能である。
【0003】
図1に、本願の出願人が特願2003−188209(下記特許文献1)にて提案するものと同様の欠陥検査装置のブロック図を示す。欠陥検査装置1には、3次元方向に移動可能なステージ11が設けられており、ステージ11の上面には試料台(チャックステージ)12が設けられている。この試料台12の上に検査対象となる試料であるウエハ2を載置して固定する。
また試料台12の上方には、ウエハ2の表面の光学像を撮像するための撮像部14が設けられる。撮像部14には、1次元又は2次元のCCDセンサ(好適には1次元TDIセンサ)といったイメージセンサ(撮像素子)が使用され、その受光面に結像されたウエハ2の表面の光学像を電気信号に変換する。ここででは撮像部14は1次元のTDIセンサを撮像素子として使用するものとして、以下図1の構成例について説明する。
【0004】
ステージ11の移動により撮像部14とウエハ2とを相対的に移動させることによって、ウエハ2に対して撮像部14をX方向又はY方向に走査させてウエハ2の表面の2次元画像を得る。ウエハ2を照明する照明光学系として、明視野照明光学系又は暗視野照明光学系が使用される。
【0005】
撮像部14から出力される画像信号は、多値のディジタル信号(グレイレベル値)に変換された後に画像記憶部21に記憶される。
ウエハ2上には、図2に示すように複数のダイ(チップ)3がX方向とY方向にそれぞれ繰返しマトリクス状に配列されている。いま図3に示すように、図示の「ライン方向」にN個の撮像画素P1〜PNが一次元的に配列された1次元TDIセンサ141を備えた撮像部14で、ウエハ2の表面を図示の「走査方向」に沿って走査することにより、ウエハ3a及び3bを含む領域101の画像を取得する場合を想定する。以下、本明細書において1次元TDIセンサ141について使用する用語「走査方向」とはTDIセンサで撮影対象を走査する方向をいい、「ライン方向」とは「走査方向」と直交する方向を意味する。
【0006】
ウエハ2上の各ダイ3a、3b…には同じパターンが形成される。そのためウエハ2を撮像すると、各ダイを撮像した領域にそれぞれ生じるパターンを単位パターンとし、これら単位パターンが繰り返し現れる反復パターンが、ウエハ2の撮像画像に現れる。したがって、各ダイの撮像画像の対応する部分同士のグレイレベル値は本来同様の値となる。図3の例では、ダイ3aとダイ3bを撮像した撮像画像内において互いに対応する画素、すなわちダイ3aとダイ3bの同じ箇所の像が結像する画素111及び112のグレイレベル値は本来同様の値となる。
したがって2つのダイの撮像画像内の本来同一となるべき対応する箇所(画素111及び112)同士のグレイレベル値の差分(グレイレベル差)を検出すると、両方のダイに欠陥がない場合に比べて一方のダイに欠陥がある場合にグレイレベル差が大きくなる。このような大きなグレイレベル差を検出することによりダイ上に存在する欠陥を検出できる(ダイトゥダイ比較)。
【0007】
また、1つのダイ内にメモリセルのような繰り返しパターンが形成されている場合には、この繰り返しパターン内の本来同一となるべき対応箇所を撮像した画像同士のグレイレベル差を検出しても欠陥を検出できる(セルトゥセル比較)。
なお、ダイトゥダイ比較では、隣り合う2つのダイ同士を撮像した画像を比較するのが一般的である(シングルティテクション)。これではどちらのダイに欠陥があるか分からない。したがって、更に異なる側に隣接するダイとの比較を行い、再び同じ部分のグレイレベル差が閾値より大きくなった場合にそのダイに欠陥があると判定する(ダブルディテクション)。セルトゥセル比較でも同様である。
【0008】
図1に戻り、欠陥検査装置1は差分検出部22を備える。差分検出部22には、画像記憶部21に記憶された撮像画像において本来互いに同一となる箇所のグレイレベル信号が入力され、差分検出部22はこれらのグレイレベル信号同士の差信号(グレイレベル差)を算出する。
【0009】
撮像部14をウエハ2に対して相対的に走査される間に、1次元TDIカメラである撮像部14の出力信号を取り込むと、画像記憶部21にウエハ2の2次元画像が蓄積される。
ダイトゥダイ比較を行う場合には、隣接する2つのダイの互いに対応する部分の各々の画像が画像記憶部21から取り出されて、差分検出部22に入力される。これら2つの画像の一方は検査画像、他方は参照画像とされ、差分検出部22は、検査画像と参照画像との間の対応箇所の画素同士のグレイレベル差信号を各々算出する。グレイレベル差信号は検出閾値決定部23と欠陥検出部24に入力される。
セルトゥセル比較を行う場合には、検査画像及び参照画像として、隣接する2つのセルの互いに対応する部分の各々の画像が画像記憶部21から取り出され、差分検出部22は、これら検査画像と参照画像との間の対応箇所の画素同士のグレイレベル差信号を各々算出する。
検査速度を向上させるため、画像比較処理では並列処理が行われるのが通常である。この場合には、ウエハ2を撮像して得た撮像画像を「フレーム」と呼ばれる所定サイズの小さな部分画像に分割し、本来互いに同一となる2箇所のフレームをそれぞれ検査画像及び参照画像として使用する。
【0010】
検出閾値決定部23は、差分検出部22が検出したグレイレベル差の分布に基づいて、所定の統計処理により検出閾値を決定して欠陥検出部24に出力する。欠陥検出部24は、差分検出部22から入力したグレイレベル差と検出閾値決定部23が決定した検出閾値とを比較して、検査画像に含まれる欠陥を検出する。すなわち欠陥検出部24は、グレイレベル差信号が検出閾値を超える場合には、検査画像及び参照画像のうちどちらかが、このようなグレイレベル差信号を算出した画素の位置に欠陥を含んでいると判断する。
そして欠陥検出部24は、検出した欠陥の位置、大きさ、検査画像と参照画像との間のグレイレベル差、これらの画像のグレイレベル値等の情報を含む欠陥情報を検出した欠陥毎に作成し出力する。
【0011】
【特許文献1】特開2004−177397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のパターン欠陥検査では試料表面の撮像画像を用いるが、試料表面の撮像のために、配列された複数の撮像画素を備え1次元画像信号又は2次元画像信号を生成する撮像素子が使用される。
一般に、1つの撮像素子に設けられた複数の撮像画素の間には出力信号のS/N比にバラツキがある。この様子を図4を参照して説明する。1次元TDIセンサ141はN個の撮像画素P1〜PNを備えている。いま上述のパターン欠陥検査と同様に、1次元TDIセンサ141でウエハ上を走査して得た2次元画像を取得し、2つのダイの互いに対応する画素同士のグレイレベル差ΔGLを検出し、これを検出閾値と比較して、グレイレベル差ΔGLが検出閾値を超える画素を欠陥として検出することを考える。
【0013】
図4に示す参照符号120は、出力信号のS/N比が比較的大きい撮像画素P2により得られたグレイレベル値同士のグレイレベル差ΔGLのヒストグラムであり、参照符号121は、出力信号のS/N比が比較的小さい撮像画素P(N−1)により得られたグレイレベル値同士のグレイレベル差ΔGLのヒストグラムである。S/N比が比較的小さい撮像画素P(N−1)のグレイレベル値から検出されたグレイレベル差のヒストグラム121は、S/N比が比較的大きな撮像画素P2のグレイレベル値から検出されたグレイレベル差のヒストグラム120よりも分布が広がっており、撮像画素P(N−1)のグレイレベル値のノイズレベルが撮像画素P2のグレイレベル値よりも大きいことが示されている。
【0014】
欠陥検出処理においてグレイレベル差ΔGLと比較される検出閾値は、疑似欠陥(すなわち試料の当該箇所には真の欠陥がないにも関わらず欠陥検査において検出された欠陥)をできるだけ発生させないように、かつ真の欠陥をできるだけ見逃さないように決定される。
したがって、ヒストグラム121に示されるようなノイズレベルが大きなグレイレベル値から得られたグレイレベル差ΔGLと対比される検出閾値は、できるだけ疑似欠陥が検出されないように、図示検出閾値Thのような比較的大きな値に設定されるべきであり、ヒストグラム120に示されるようなノイズレベルが小さなグレイレベル値から得られたグレイレベル差ΔGLと対比される検出閾値は、できるだけ真欠陥を見逃さないように、図示検出閾値Th’のような比較的小さな値に設定されるべきである。
【0015】
従来のパターン欠陥検査においては、疑似欠陥の発生を抑えるために、出力信号のS/N比が小さな撮像画素から出力されるグレイレベル値のノイズレベルに合わせた検出閾値Thを、出力信号のS/N比が比較的大きな小さな撮像画素からグレイレベル値が得られる画素領域における欠陥検出にも使用していた。このため、本来ならばより高感度の検出閾値Th’を用いて欠陥検出をおこなうことができたはずの画素領域において、欠陥検出感度が犠牲になっていた。
【0016】
上記問題点に鑑み、本発明は、パターン欠陥検出に使用する撮像素子を構成する各々の撮像画素の出力信号のS/N比に応じて、これら撮像画素からそれぞれ得られた画像信号を用いて行う欠陥検出の検出感度を適切に設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明では、複数の撮像画素を配列した撮像素子によって繰り返しパターンが形成された試料の表面を撮像して取得した撮像画像に、繰り返しパターンに対応して繰り返し現れる単位パターンのうちの2つの、一方の単位パターン内のある画素とこの画素に対応する他の単位パターン内の画素の、各々のグレイレベル値の差分であるグレイレベル差を検出し、このグレイレベル差と所定の検出閾値とを比較して、グレイレベル差が所定の検出閾値を超えるとき、このグレイレベル差を検出した画素を欠陥候補であると検出する欠陥検出において、検出されたグレイレベル差を、このグレイレベル差が検出された2つのグレイレベル値をそれぞれ生成した各撮像画素の出力信号のS/N比に応じて補正する。または、検出されたグレイレベル差と比較される所定の検出閾値をこのグレイレベル差が検出された2つのグレイレベル値をそれぞれ生成した各撮像画素の出力信号のS/N比に応じて補正する。
【0018】
このとき、S/N比がより小さな撮像画素が生成したグレイレベル値から検出されたグレイレベル差ほど、より低減されるようにグレイレベル差を補正する。これによって、S/N比が比較的小さな(すなわちノイズレベルが高い)撮像画素のグレイレベル値から検出されたグレイレベル差が低減されるように補正され検出閾値を超えにくくなるので、ノイズレベルが比較的高いグレイレベル値を持つ画素領域では検出感度が相対的に低くなる。反対にノイズレベルが比較的低いグレイレベル値を持つ画素領域では検出感度が相対的に高くなる。
【0019】
検出閾値を補正する場合には、S/N比がより小さな撮像画素が生成したグレイレベル値から検出されたグレイレベル差と対比される検出閾値ほど、より増加するように検出閾値を補正する。これによって、S/N比が比較的小さな(すなわちノイズレベルが高い)撮像画素のグレイレベル値から検出されたグレイレベル差が検出閾値を超えにくくなるので、ノイズレベルが比較的高いグレイレベル値を持つ画素領域の検出感度が相対的に低くなる。反対にノイズレベルが比較的低いグレイレベル値を持つ画素領域の検出感度が相対的に高くなる。
【0020】
複数の撮像画素を配列した上記の撮像素子として、1次元TDIセンサのようなラインセンサが用いられる場合や、2次元CCDセンサのような2次元撮像素子が用いられる場合がある。ラインセンサの場合には、繰り返しパターンに対応して繰り返し現れる単位パターンのうちの2つの、一方の単位パターン内のある画素とこの画素に対応する他の単位パターン内の画素の各グレイレベル値が、両方とも同じ撮像画素によって得られる場合がある。例えば、試料を走査する際の1次元TDIセンサを移動方向と、単位パターンの配列方向が同じ場合には、このようなことが起こる。
このような場合には、この撮像画素の出力のS/N比に応じて、この撮像画素から得られた2つの画素の各々のグレイレベル値のグレイレベル差、又はこのグレイレベル差と対比される検出閾値を補正すればよい。
【0021】
また、繰り返しパターンに対応して繰り返し現れる単位パターンのうちの2つの、一方の単位パターン内のある画素とこの画素に対応する他の単位パターン内の画素の各グレイレベル値が、異なる撮像画素によって得られる場合がある。
このような場合には、異なる2つの撮像画素の出力のS/N比の平均値や二乗平均値などの値に応じて、これら撮像画素からそれぞれ得られた2つの画素の各々のグレイレベル値のグレイレベル差、又はこのグレイレベル差と対比される検出閾値を補正すればよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、パターン欠陥検出に使用する撮像素子を構成する複数の撮像画素の出力信号のS/N比にバラツキがある場合に、これら撮像画素からそれぞれ得られた画像信号を用いて行う欠陥検出の検出感度を、各画素毎に撮像画素の出力信号のS/N比に応じて適切に設定することが可能となるため、S/N比が大きい撮像画素から画像信号が得られた画素の部分において、従来よりも高い検出感度で欠陥検出を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例を説明する。図5は、本発明の第1実施例による欠陥検査装置のブロック図である。欠陥検査装置1は、図1を参照して説明した構成と類似の構成を有しており、同様の構成要素には同じ参照番号を付すこととし同様の機能については説明を省略する。
欠陥検査装置1の撮像部14は、図4を参照して説明した1次元TDIセンサ141を有しており、1次元TDIセンサ141はN個の撮像画素P1〜PNを直線上に配列した撮像素子である。
【0024】
欠陥検査装置1には、1次元TDIセンサ141の各撮像画素P1〜PNの出力信号のS/N比を測定するS/N比測定部30と、各撮像画素P1〜PNについてそれぞれ測定されたS/N比を記憶しておくS/N比記憶部31と、S/N比記憶部31に記憶された各撮像画素P1〜PNの出力信号のS/N比に応じて、差分検出部22が検出したグレイレベル差を補正するグレイレベル差補正部40とが設けられる。
【0025】
グレイレベル差補正部40は、補正値計算部42と、補正パラメータ決定部41とを備える。
補正値計算部42は、差分検出部22が出力するグレイレベル差を、そのグレイレベル差が検出されたグレイレベル値を生成した撮像画素P1〜PNの出力信号のS/N比に基づいて、所定の補正式に従って補正する。
補正パラメータ決定部41は、補正値計算部42が使用する所定の補正式を定めるパラメータ(補正パラメータ)を、S/N比記憶部31に記憶された各撮像画素P1〜PNのそれぞれの出力信号のS/N比に応じて定める。
【0026】
図6は、図5に示す欠陥検査装置1の動作フローチャートである。
ステップS11において、S/N比測定部30は、欠陥検査装置1によるウエハ2の欠陥検出処理が始まる前に、予め、所定の試験パターンを撮像部14で撮像した撮像画像の信号強度とノイズ強度を、各画素毎に検出することによって、各撮像画素P1〜PNの出力信号のS/N比を測定する。
ステップS12において、S/N比測定部30により各撮像画素P1〜PN毎に測定された出力信号のS/N比はS/N比記憶部31に記憶される。
【0027】
ステップS13において、図7に示すように1次元TDIセンサ141を有する撮像部14とウエハ2とを相対的に移動させることによって、1次元TDIセンサ141でウエハ2を走査させてウエハ2の表面の2次元画像を得る。1次元TDIセンサ141でウエハ2を走査すると、1次元TDIセンサ141の幅と同じ幅を有する参照番号101で示す点線で囲った帯状領域の画像が取得され、かかる帯状領域にはウエハ3a〜3cが存在している。
帯状領域101を撮像した撮像画像を102にて示す。撮像画像102には、ウエハ2に繰り返し形成されたダイ3a〜3cのそれぞれに対応して、単位パターン3s〜3uが現れる。撮像画像102は画像記憶部21に記憶される。
【0028】
ステップS14では、画像記憶部21から、撮像画像102内の隣接する2つの単位パターン3s及び3tの互いに対応するフレーム103及び104が取り出されて差分検出部22に入力される。これら2つの画像の一方は検査画像とされ他方は参照画像とされる。差分検出部22は、検査画像に含まれる各画素111とこれに対応する参照画像内の画素112との間のグレイレベル差を各々算出する。
【0029】
図7に示すとおり、本構成例ではダイ3a〜3cの配列方向に沿って1次元TDIセンサ141でウエハ2を走査し、この走査方向に沿って配列されたウエハ3a及び3bを撮像して取得した単位パターン画像3s及び3t間の対応する画素同士のグレイレベル差を検出する。したがってグレイレベル差を検出した2つの画素のグレイレベル値は、同一の撮像画素から取得されそのノイズレベルは等しくなる。
【0030】
グレイレベル差は、グレイレベル差補正部40の補正値計算部42に入力され、補正値計算部42は、後のステップS16において所定の補正式に従って、グレイレベル差を補正する。そこでステップS15では、この所定の補正式を定義する補正パラメータを補正パラメータ決定部41が決定する。
いま図8に示すように、撮像画素141の、ある撮像画素P2はその出力信号のS/N比が比較的大きく、他のある撮像画素P(N−1)はその出力信号のS/N比が比較的小さいと仮定する。このため差分検出部22が、撮像画素P2から得られたグレイレベル値同士の差分を検出して得たグレイレベル差ΔGLのヒストグラム131は分散が小さく、撮像画素P(N−1)から得られたグレイレベル値同士の差分を検出して得たグレイレベル差ΔGLのヒストグラム132は分散が大きくなる。
【0031】
補正パラメータ決定部41は、上記所定の補正式にしたがってグレイレベル差ΔGLを補正すると、出力信号のS/N比がより小さな撮像画素が生成したグレイレベル値から検出したグレイレベル差ΔGLほど、補正によってより低減されるように、補正式の補正パラメータを決定する。
したがって、撮像画素P2から得られたグレイレベル値同士の差分を検出して得たグレイレベル差を補正した補正グレイレベル差ΔGL2のヒストグラム133の分散と、撮像画素P(N−1)から得られたグレイレベル値同士の差分を検出して得たグレイレベル差を補正した補正グレイレベル差ΔGL2のヒストグラム134の分散との間の差を、ヒストグラム131の分散とヒストグラム132の分散との間の差よりも小さくすることができる。
【0032】
したがって、図8の補正グレイレベル差のヒストグラム133及び134に示すように、撮像画素P2及びP(N−1)について得た補正グレイレベル差ΔGL2を、同一の検出閾値Thと比較して、検出閾値Thを補正グレイレベル差ΔGL2が超えた画素を欠陥候補として検出したとき、撮像画素P2によりグレイレベル値が得られた画素において疑似欠陥が発生する確率と、撮像画素P(N−1)によりグレイレベル値が得られた画素において疑似欠陥が発生する確率との間の差を、従来よりも小さくすることができる。これは出力信号のS/N比がより大きな撮像画素P2によりグレイレベル値が得られる画素における検出感度を従来よりも高めることができることを意味する。
【0033】
補正値計算部42が、撮像画素Pi(i=1〜N)から得られたグレイレベル値同士の差分を検出して得たグレイレベル差ΔGLを補正するために使用する所定の補正式は例えば次式(1)のように定義してよい。
ΔGL2=αi×ΔGL+βi (i=1〜N) (1)
ここで、ΔGL2は補正後のグレイレベル差であり、αi及びβiは各撮像画素毎に定める補正パラメータであり、添字iは撮像画素P1〜PNの画素番号を示す。
ここで、補正パラメータαi及びβiは、撮像画素Piの出力信号のS/N比(SN)の関数として定められる。補正パラメータαi及びβiを定める関数のグラフの例を図9の(A)及び図9の(B)に示す。撮像画素Piの出力信号のS/N比(SN)がより小さいとき、補正前のグレイレベル差ΔGLから補正後のグレイレベル差ΔGL2への低減量が大きくなるように、本例の補正パラメータαi及びβiは、その定義域においてS/N比(SN)に対して単調増加関数となるように定義される。
【0034】
ステップS16では、補正値計算部42は、ステップS14において差分検出部22が検出したグレイレベル差ΔGLを、ステップS15において決定された補正パラメータαi及びβiにより定義される式(1)により補正した補正グレイレベル差ΔGL2を決定する。補正グレイレベル差ΔGL2は、検出閾値決定部23及び欠陥検出部24へ入力される。
【0035】
ステップS17において検出閾値決定部23は、1フレーム分の検査画像の各画素及び参照画像の各画素との間で検出した各グレイレベル差を補正した各補正グレイレベル差に所定の統計処理を施して、検出閾値を決定して欠陥検出部24に出力する。図10は、図6の検出閾値決定ステップS17の処理内容を説明するフローチャートであり、図11は、図10に示す検出閾値決定処理の説明図である。なお、図10及び図11を参照して以下に説明する検出閾値決定処理はあくまでも例示であり、本発明に使用する検出閾値決定処理がこれに限定されるものではない。
【0036】
ステップS21において検出閾値決定部23はグレイレベル差を入力し、ステップS22においてグレイレベル差のヒストグラムを、図11の(A)に示すように作成する。ステップS23において検出閾値決定部23は、このヒストグラムからグレイレベル差の累積頻度を算出する。
ステップS24において検出閾値決定部23は、入力されたグレイレベル差がある所定の分布に従うと仮定した上でグレイレベル差に対して累積頻度が直線関係となるように、ステップS23で算出した累積頻度を変換する。このとき、グレイレベル差が正規分布、ポアソン分布、又はχ二乗分布などのある分布に従うと仮定して累積頻度を変換する。この変換累積頻度を図11の(B)に示す。
【0037】
ステップS25では、ステップS24で変換した変換累積頻度に応じて、グレイレベル差と変換累積頻度との関係を示す近似直線(y=ax+b)を導出する(図11の(C)参照)。
ステップS26では、近似直線のパラメータa、b及び感度設定パラメータ(固定値)から検出閾値Thを決定する。
【0038】
ここでは、グレイレベル差と変換累積頻度の近似直線において、固定の感度設定パラメータとしてVOPとHOを設定しておき、累積確率(p)に相当する累積頻度P1(pにサンプル数を乗じて求める。)になる直線上の点を求め、その点から縦軸方向にVOP、横軸方向にHO移動したグレイレベル差を検出閾値Thとする。従って、検出閾値Thは、所定の計算式
Th=(P1−b+VOP)/a+HO …(2)
により算出される。
【0039】
ステップS18において、欠陥検出部24は、グレイレベル差補正部40から出力された補正グレイレベル差ΔGL2と検出閾値決定部23が決定した検出閾値とを比較して、補正グレイレベル差信号ΔGL2が検出閾値を超える場合には、検査画像及び参照画像のうちどちらかが、このような補正グレイレベル差ΔGL2が検出された画素の位置に欠陥を含んでいると判断する。
【0040】
上記の説明では、欠陥検査装置1の撮像部14が備える撮像素子がラインセンサであり、かつ差分検出部22がグレイレベル差を検出する2つの画素のグレイレベル値は、同一の撮像画素から取得される場合について説明した。しかし、撮像部14には、撮像素子として2次元撮像素子を採用してよい。このような場合において、差分検出部22がグレイレベル差を検出する2つの画素のグレイレベル値が異なる撮像画素により生成される場合がある。
【0041】
また、撮像部14が備える撮像素子がラインセンサであっても、差分検出部22がグレイレベル差を検出する2つの画素のグレイレベル値が異なる撮像画素により生成される場合がある。これは例えば、撮像部14によるウエハ2の走査方向が、ダイ3の配列方向と異なる場合や、以下に例示するような、差分検出部22によりグレイレベル差が検出される対応する画素が、撮像部14による走査方向と同じ方向に並んでいない場合にも生じる。
例えば図12に示すように1次元TDIセンサ141を有する撮像部14とウエハ2とを相対的に移動させることによって、撮像部14でウエハ2を走査させて、参照番号101で示す点線で囲った帯状領域の画像が取得する場合を考える。この帯状領域101にはウエハ3a〜3dが存在している。帯状領域101を撮像した撮像画像を102にて示す。撮像画像102には、ウエハ2に繰り返し形成されたダイ3a〜3dのそれぞれに対応して、単位パターン3s〜3vが現れる。
ここで、走査方向に並ぶ2つのダイ3a及び3bではなく、走査方向と直交する方向に並ぶ2つのダイ3a及び3dを撮像した2つの単位パターン3s及び3vの対応する画素111及び112同士のグレイレベル差を、差分検出部22が検出するように検査手順が定められていると、これら画素111及び112のグレイレベル値を得る撮像画素が異なることになる。
【0042】
撮像部14の撮像素子が、配列された複数の撮像画素P1〜PNを備え、差分検出部22がグレイレベル差ΔGLを検出する2つの画素のグレイレベル値が異なる撮像画素Pi、Pj(i,j=1〜N)により生成される場合には、補正値計算部42が、このようなグレイレベル差ΔGLを補正するために使用する所定の補正式は例えば次式(3)のように定義してよい。
ΔGL2=αij×ΔGL+βij (i,j=1〜N) (3)
ここで、ΔGL2は補正後のグレイレベル差であり、αij及びβijは各撮像画素毎に定める補正パラメータであり、添字i、jは撮像画素P1〜PNの画素番号を示す。
【0043】
ここで、補正パラメータαij及びβijは、撮像画素Pi及びPjの各々の出力信号のS/N比(SNi及びSNj)の平均値((SNi+SNj)/2)や、二乗平均値、
【0044】
【数1】

【0045】
の関数として定められる。そして撮像画素PiやPjの出力信号のS/N比(SNi及びSNj)がより小さいとき、補正前のグレイレベル差ΔGLから補正後のグレイレベル差ΔGL2への低減量が大きくなるように、補正パラメータαij及びβijは、その定義域においてS/N比の平均値や二乗平均値に対して単調増加関数となるように定義してよい。
【0046】
図13は、本発明の第2実施例による欠陥検査装置のブロック図である。撮像画素Pi(i=1〜N)の出力信号のS/N比が変わらなければ、検査対象のウエハ2の種類が変わっても、補正パラメータαi、βi、αij及びβijを変える必要はない。したがって、図13に示す第2実施例では、S/N比測定部30が検査前に予め撮像部14の撮像画素Pi(i=1〜N)の出力信号のS/N比を測定したときに、補正パラメータ決定部41にて補正パラメータαi、βi、αij及びβijを決定する。そして決定した補正パラメータαi、βi、αij及びβijを補正パラメータ記憶部43に記憶しておき、後の検査のときに補正パラメータ記憶部43から読み出して使用する。
【0047】
差分検出部22が、異なる撮像画素から取得されるグレイレベル値間のグレイレベル差を検出する場合には、検査対象のウエハ2の種類が変わることによって、グレイレベル差が検出される2つの画素のグレイレベル値を生成する撮像画素の画素番号i,jの組合せが変化する。このため予め全ての画素番号i,jの組合せについて補正パラメータαij及びβijを決定しておき、補正パラメータ記憶部43に記憶しておいてもよい。
【0048】
図14は図13に示す欠陥検査装置1の動作フローチャートである。図6に示す動作フローチャートと同じ処理のステップには同じ参照符号を付し説明を省略する。ステップS11において、S/N比測定部30が各撮像画素P1〜PNの出力信号のS/N比を測定した後に、ステップS31において補正パラメータ決定部41は、測定したS/N比に基づいて補正パラメータαi、βi、αij及びβijを決定する。補正パラメータの決定方法自体は図6のステップS15にて行った決定方法と同様である。ステップS32では、ステップS31において決定した補正パラメータαi、βi、αij及びβijを、補正パラメータ記憶部43に記憶する。
【0049】
以下ステップS13、S14、S16〜S18が、図6に示したステップS13、S14、S16〜S18と同様に実行されることにより欠陥検出処理が行われる。但し、ステップS16において、補正値計算部42は、ステップS32において補正パラメータ記憶部43に記憶された補正パラメータαi及びβi、αij及びβijにより定義される補正式により補正グレイレベル差ΔGL2を決定する。
【0050】
図15は、本発明の第3実施例による欠陥検査装置のブロック図である。欠陥検査装置1もまた、図1を参照して説明した構成と類似の構成を有しており、同様の構成要素には同じ参照番号を付すこととし同様の機能については説明を省略する。
本実施例による欠陥検査装置1は、撮像部14が備える撮像素子の各撮像画素の出力信号のS/N比を測定するS/N比測定部30と、各撮像画素についてそれぞれ測定されたS/N比を記憶しておくS/N比記憶部31と、S/N比記憶部31に記憶された各撮像画素の出力信号のS/N比に応じて、検出閾値決定部23が決定した検出閾値を補正する検出閾値補正部50が設けられる。S/N比測定部30とS/N比記憶部31の機能は、図5及び図13に示した実施例のものと同様の機能でよい。
【0051】
検出閾値補正部50は、検出閾値決定部23により決定された検出閾値を補正した補正検出閾値を計算する補正値計算部52と、補正パラメータ決定部51と、を備える。
補正値計算部52は、検出閾値決定部23により決定された検出閾値を、差分検出部22が順次出力する各グレイレベル差毎に補正して、それぞれのグレイレベル差と欠陥検出部24においてそれぞれ比較される補正検出閾値を計算する。補正値計算部52は、検出閾値決定部23により決定された検出閾値を、各グレイレベル差を検出したグレイレベル値を生成した撮像画素の出力信号のS/N比に基づいて、所定の補正式に従って補正することにより、各グレイレベル差と比較される補正検出閾値のそれぞれを算出する。
補正パラメータ決定部51は、補正値計算部52が使用する所定の補正式を定めるパラメータ(補正パラメータ)を、S/N比記憶部31に記憶された各撮像画素のそれぞれの出力信号のS/N比に応じて定める。
【0052】
図16は、図15に示す欠陥検査装置1の動作フローチャートである。
ステップS11において、S/N比測定部30は、撮像部14の撮像素子に設けられた複数の撮像画素のそれぞれの出力信号のS/N比を測定し、ステップS12において、測定された出力信号のS/N比がS/N比記憶部31に記憶される。
ステップS13において、撮像部14とウエハ2とを相対的に移動させることによって、撮像部14でウエハ2を走査させてウエハ2の表面の2次元画像を得る。ステップS14では、差分検出部22により、対応する2つの画素の間のグレイレベル差を各々算出する。
ステップS17では、検出閾値決定部23は、1フレーム分の検査画像の各画素及び参照画像の各画素との間で検出した各グレイレベル差に所定の統計処理を施して、検出閾値を決定する。ステップS11〜S14及びS17の処理は、図6を参照して上述した処理と同様の処理である。
【0053】
いま、撮像部14が図4に示すような1次元TDIセンサ141を備えていることとし、ステップS13において、図7に示すように、1次元TDIセンサ141でダイ3a〜3cの配列方向に沿ってウエハ2を走査して画像102を取得したものとする。またステップS14で得られるグレイレベル差は、この走査方向に沿って配列されたウエハ3a及び3bを撮像して取得した単位パターン画像3s及び3t間の対応する画素同士の差分を検出して得られたものとする。この場合、グレイレベル差を検出した2つの画素のグレイレベル値は、同一の撮像画素から取得されそのノイズレベルは等しい。
【0054】
また図17に示すように、撮像画素141の、ある撮像画素P2はその出力信号のS/N比が比較的大きく、他のある撮像画素P(N−1)はその出力信号のS/N比が比較的小さいと仮定する。撮像画素P2から得られたグレイレベル値同士の差分を検出して得たグレイレベル差ΔGLのヒストグラム140の分散は小さく、撮像画素P(N−1)から得られたグレイレベル値同士の差分を検出して得たグレイレベル差ΔGLのヒストグラム141の分散は大きくなる。
【0055】
補正値計算部52は、後のステップS42において所定の補正式に従って、検出閾値決定部23が決定した検出閾値を補正する。そこでステップS41では、この所定の補正式を定義する補正パラメータを補正パラメータ決定部51が決定する。
補正パラメータ決定部51は、上記所定の補正式にしたがって検出閾値を補正すると、比較的S/N比が小さな撮像画素が生成したグレイレベル値から検出したグレイレベル差ΔGLと比較される検出閾値ほど、補正によってより増大されるように補正式の補正パラメータを決定する。
【0056】
したがって図17のヒストグラム140及び141に示すように、比較的S/N比が大きな撮像画素P2から得られたグレイレベル値同士の差分を検出して得たグレイレベル差と対比される検出閾値Th1は、比較的S/N比が小さな撮像画素P(N−1)から得られたグレイレベル値同士の差分を検出して得たグレイレベル差と対比される検出閾値Th2よりも小さくなるように補正されるので、撮像画素P2から得られたグレイレベル値が得られる画素領域において欠陥の検出感度が比較的高くなる。
したがって従来は、比較的S/N比が小さい撮像画素P(N−1)によりグレイレベル値が得られる画素における検出感度と同じ検出感度で欠陥検出を検出していた、撮像画素P2によりグレイレベル値が得られる画素において、従来よりも高い検出感度で欠陥検出が行われる。
【0057】
撮像画素Pi(i=1〜N)から得られたグレイレベル値同士の差分を検出して得たグレイレベル差ΔGLと比較される検出閾値Thを補正するために、補正値計算部52が使用する所定の補正式は例えば次式(4)のように定義してよい。
Th2=γi×Th+δi (i=1〜N) (4)
ここで、Th2は補正後の検出閾値であり、γi及びδiは各撮像画素毎に定める補正パラメータであり、添字iは撮像画素P1〜PNの画素番号を示す。
【0058】
ここで、補正パラメータγi及びδiは、撮像画素Piの出力信号のS/N比(SN)の関数として定められる。補正パラメータγi及びδiを定める関数のグラフの例を図18の(A)及び図18の(B)に示す。撮像画素Piの出力信号のS/N比(SN)がより小さいとき、補正前の検出閾値Thから補正後の検出閾値Th2への増大量が大きくなるように、本例の補正パラメータγi及びδiは、その定義域においてS/N比(SN)に対して単調減少関数となるように定義される。
【0059】
ステップS42では、補正値計算部52は、ステップS17において検出閾値決定部23が決定した検出閾値Thを、ステップS41において決定された補正パラメータγi及びδiにより定義される式(4)により補正した補正検出閾値Th2を決定する。補正検出閾値Th2は欠陥検出部24へ入力される。
ステップS43において、欠陥検出部24は、差分検出部22から出力されるグレイレベル差ΔGLと、補正値計算部52から出力される補正検出閾値Th2とを比較して、グレイレベル差GLが補正検出閾値Th2を超える場合には、検査画像及び参照画像のうちどちらかが、このようなグレイレベル差GLが検出された画素の位置に欠陥を含んでいると判断する。
【0060】
上記第3実施例及び以下の第4実施例の欠陥検出装置1において、撮像部14の撮像素子が、配列された複数の撮像画素P1〜PNを備え、差分検出部22がグレイレベル差ΔGLを検出する2つの画素のグレイレベル値が異なる撮像画素Pi、Pj(i,j=1〜N)により生成される場合には、補正値計算部52が、このようなグレイレベル差ΔGLと比較する検出閾値Thを補正するために使用する所定の補正式は、例えば次式(5)のように定義してよい。
Th2=γij×Th+δij (i,j=1〜N) (5)
Th2は補正後の検出閾値であり、γij及びδijは各撮像画素毎に定める補正パラメータであり、添字i,jは撮像画素P1〜PNの画素番号を示す。
【0061】
ここで、補正パラメータγij及びδijは、撮像画素Pi及びPjの各々の出力信号のS/N比(SNi及びSNj)の平均値((SNi+SNj)/2)や、二乗平均値、
【0062】
【数2】

【0063】
の関数として定められる。そして撮像画素PiやPjの出力信号のS/N比(SNi及びSNj)がより小さいとき、補正前の検出閾値Thから補正後の検出閾値Th2への増大量が大きくなるように、補正パラメータγij及びδijは、その定義域においてS/N比の平均値や二乗平均値に対して単調減少関数となるように定義してよい。
【0064】
図19は、本発明の第4実施例による欠陥検査装置のブロック図である。図19に示す第4実施例では、S/N比測定部30が検査前に予め撮像部14の撮像画素Pi(i=1〜N)の出力信号のS/N比を測定したときに、補正パラメータ決定部51にて補正パラメータγi、δi、γij及びδijを決定する。そして決定した補正パラメータγi、δi、γij及びδijを補正パラメータ記憶部53に記憶しておき、後の検査のときに補正パラメータ記憶部53から読み出して使用する。
差分検出部22が、異なる撮像画素から取得されるグレイレベル値間のグレイレベル差を検出する場合には、予め全ての画素番号i,jの組合せについて補正パラメータγij及びδijを決定しておき、補正パラメータ記憶部53に記憶しておいてもよい。
【0065】
図20は、図19に示す欠陥検査装置1の動作フローチャートである。図16に示す動作フローチャートと同じ処理のステップには同じ参照符号を付し説明を省略する。ステップS11において、S/N比測定部30が各撮像画素P1〜PNの出力信号のS/N比を測定した後に、ステップS51において補正パラメータ決定部51は、測定したS/N比に基づいて補正パラメータγi、δi、γij及びδijを決定する。補正パラメータの決定方法自体は図16のステップS41にて行った決定方法と同様である。ステップS52では、ステップS51において決定した補正パラメータγi、δi、γij及びδijを、補正パラメータ記憶部53に記憶する。
【0066】
以下ステップS13、S14、S17、S42及びS43が、図16に示したS13、S14、S17、S42及びS43と同様に実行されることにより欠陥検出処理が行われる。但し、ステップS42において、補正値計算部52は、ステップS52において補正パラメータ記憶部53に記憶された補正パラメータγi、δi、γij及びδijにより定義される補正式により補正検出閾値Th2を決定する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、検査対象である互いに同一であるべきパターンを撮像して得た検査画像と参照画像とを比較して、相違する箇所を前記パターンの欠陥として検出する欠陥検査装置及び欠陥検査方法に利用可能である。
好適には、半導体ウエハ、フォトマスク用基板、液晶表示パネル用基板、液晶デバイス用基板などの試料の表面に形成されたパターンを撮像し、これにより得られた画像を検査することにより試料表面に存在する欠陥を検出するパターン欠陥検査に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】従来の欠陥検査装置のブロック図である。
【図2】半導体ウエハ上のダイの配列を示す図である。
【図3】欠陥検出処理においてグレイレベル差を検出する対応する2つの画素を示す図である。
【図4】出力信号のS/N比が異なる撮像画素を有する撮像素子の説明図である。
【図5】本発明の第1実施例による欠陥検査装置のブロック図である。
【図6】図5に示す欠陥検査装置の動作フローチャートである。
【図7】撮像部14によるウエハ2の撮像画像の第1例を示す図である。
【図8】グレイレベル差補正部40によるグレイレベル差の補正の説明図である。
【図9】(A)は補正パラメータαiの例を示すグラフであり、(B)は補正パラメータβiの例を示すグラフである。
【図10】検出閾値決定処理を説明するフローチャートである。
【図11】(A)〜(C)は図10に示す検出閾値決定処理の説明図である。
【図12】撮像部14によるウエハ2の撮像画像の第2例を示す図である。
【図13】本発明の第2実施例による欠陥検査装置のブロック図である。
【図14】図13に示す欠陥検査装置の動作フローチャートである。
【図15】本発明の第3実施例による欠陥検査装置のブロック図である。
【図16】図15に示す欠陥検査装置の動作フローチャートである。
【図17】検出閾値補正部50による検出閾値の補正の説明図である。
【図18】(A)は補正パラメータγiの例を示すグラフであり、(B)は補正パラメータδiの例を示すグラフである。
【図19】本発明の第4実施例による欠陥検査装置のブロック図である。
【図20】図19に示す欠陥検査装置の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 欠陥検出装置
2 ウエハ
3、3a〜3d ダイ
3s〜3v 単位パターン
102 撮像画像
111、112 画素
141 撮像素子
P1〜PN 撮像画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像画素を配列した撮像素子を備える撮像部と、
繰り返しパターンが形成された試料の表面を、前記撮像部により撮像して取得した撮像画像に前記繰り返しパターンに対応して繰り返し現れる単位パターンのうちの2つの、一方の単位パターン内のある画素とこの画素に対応する他の単位パターン内の画素の、各々のグレイレベル値の差分であるグレイレベル差を検出するグレイレベル差検出部と、
前記グレイレベル差検出部により検出された前記グレイレベル差を、該グレイレベル差が検出された2つの前記グレイレベル値をそれぞれ生成した各前記撮像画素の出力信号のS/N比に応じて補正するグレイレベル差補正部と、
前記グレイレベル差補正部により補正されたグレイレベル差が、所定の検出閾値を超えるとき、該グレイレベル差が検出された画素が示す部分に欠陥候補が存在すると判定する欠陥検出部と、を備え、
前記グレイレベル差補正部は、前記S/N比がより小さな撮像画素が生成したグレイレベル値から検出されたグレイレベル差ほどより低減されるように、前記グレイレベル差を補正することを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項2】
複数の撮像画素を配列した撮像素子を備える撮像部と、
繰り返しパターンが形成された試料の表面を、前記撮像部により撮像して取得した撮像画像に前記繰り返しパターンに対応して繰り返し現れる単位パターンのうちの2つの、一方の単位パターン内のある画素とこの画素に対応する他の単位パターン内の画素の、各々のグレイレベル値の差分であるグレイレベル差を検出するグレイレベル差検出部と、
前記グレイレベル差と所定の検出閾値とを比較し、前記グレイレベル差が前記所定の検出閾値を超えるとき該グレイレベル差が検出された画素が示す部分に欠陥候補が存在すると判定する欠陥検出部と、
前記グレイレベル差検出部により検出された各前記グレイレベル差とそれぞれ比較される前記所定の検出閾値を、各グレイレベル差が検出された2つの前記グレイレベル値をそれぞれ生成した各前記撮像画素の出力信号のS/N比に応じて補正する検出閾値補正部と、を備え、
前記検出閾値補正部は、前記S/N比がより小さな撮像画素が生成したグレイレベル値から検出されたグレイレベル差と対比される検出閾値ほど、より増加するように前記検出閾値を補正することを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項3】
前記撮像素子は、1次元画像信号を出力するラインセンサであって、
グレイレベル差検出部は、同じ撮像画素により生成される2つのグレイレベル値の差分を前記グレイレベル差として検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の欠陥検出装置。
【請求項4】
前記撮像素子は、1次元画像信号を出力するラインセンサであって、
グレイレベル差検出部は、異なる撮像画素によりそれぞれ生成される2つのグレイレベル値の差分を前記グレイレベル差として検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の欠陥検出装置。
【請求項5】
前記撮像素子は、2次元画像信号を出力する2次元撮像素子であって、
グレイレベル差検出部は、異なる撮像画素によりそれぞれ生成される2つのグレイレベル値の差分を前記グレイレベル差として検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の欠陥検出装置。
【請求項6】
複数の撮像画素を配列した撮像素子により、繰り返しパターンが形成された試料の表面を撮像し、
前記撮像素子により撮像して取得した撮像画像に前記繰り返しパターンに対応して繰り返し現れる単位パターンのうちの2つの、一方の単位パターン内のある画素とこの画素に対応する他の単位パターン内の画素の、各々のグレイレベル値の差分であるグレイレベル差を検出し、
検出された前記グレイレベル差を、該グレイレベル差が検出された2つの前記グレイレベル値をそれぞれ生成した各前記撮像画素の出力信号のS/N比に応じて補正し、
補正されたグレイレベル差が、所定の検出閾値を超えるとき、該グレイレベル差が検出された画素が示す部分に欠陥候補が存在すると判定し、
前記グレイレベル差を前記S/N比に応じて補正するとき、前記S/N比がより小さな撮像画素が生成したグレイレベル値から検出されたグレイレベル差ほどより低減されるように、前記グレイレベル差を補正することを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項7】
複数の撮像画素を配列した撮像素子により、繰り返しパターンが形成された試料の表面を撮像し、
前記撮像素子により撮像して取得した撮像画像に前記繰り返しパターンに対応して繰り返し現れる単位パターンのうちの2つの、一方の単位パターン内のある画素とこの画素に対応する他の単位パターン内の画素の、各々のグレイレベル値の差分であるグレイレベル差を検出し、
前記グレイレベル差と所定の検出閾値とを比較し、前記グレイレベル差が前記所定の検出閾値を超えるとき該グレイレベル差が検出された画素が示す部分に欠陥候補が存在すると判定し、
各前記グレイレベル差とそれぞれ比較される前記所定の検出閾値を、各グレイレベル差が検出された2つの前記グレイレベル値をそれぞれ生成した各前記撮像画素の出力信号のS/N比に応じて、前記S/N比がより小さな撮像画素が生成したグレイレベル値から検出されたグレイレベル差と対比される検出閾値ほど、より大きくなるように決定することを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項8】
前記撮像素子は、1次元画像信号を出力するラインセンサであって、
同じ撮像画素により生成される2つのグレイレベル値の差分を前記グレイレベル差として検出することを特徴とする請求項6又は7に記載の欠陥検出方法。
【請求項9】
前記撮像素子は、1次元画像信号を出力するラインセンサであって、
異なる撮像画素によりそれぞれ生成される2つのグレイレベル値の差分を前記グレイレベル差として検出することを特徴とする請求項6又は7に記載の欠陥検出方法。
【請求項10】
前記撮像素子は、2次元画像信号を出力する2次元撮像素子であって、
異なる撮像画素によりそれぞれ生成される2つのグレイレベル値の差分を前記グレイレベル差として検出することを特徴とする請求項6又は7に記載の欠陥検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−97959(P2009−97959A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269024(P2007−269024)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】