説明

歩行者用ナビゲーションシステム及び案内装置

【課題】歩行者が求めている目的地を分かり易く案内できる歩行者用ナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】歩行者が目的地を指定すると、当該目的地の方向を提示する歩行者用ナビゲーションシステムであって、目的地の方向を示す矢印を水平面内に表示する表示手段11と、歩行者から提示された目的地の情報を読み取る読取手段12と、を備える案内装置10が固定的に設置され、歩行者が目的地の情報を読取手段12に読み取らせると、表示手段11が、目的地の方向を示す矢印を表示する。このシステムでは、歩行者が指定した目的地の方向を、案内装置10が指し示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者用ナビゲーションシステムと、そこで用いる案内装置に関し、歩行者が求めている目的地の方向を分かり易く表示できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、先に、空港で旅客を誘導・案内する案内システムを提案した(下記特許文献1)。このシステムでは、空港に到着した旅客にe−タグ(RFID)を渡し、搭乗手続の際に、そのe−タグのタグIDと旅客情報(フライト番号、出発時刻、旅券番号等)とを関連付け(紐付け)している。旅客の保持するe−タグには、タグIDのみが格納しているが、このタグIDと旅客情報とがシステムのサーバにより紐付けされる。旅客は、また、出発前に立ち寄りたいレストランや店舗などを登録することができ、登録された情報も、タグIDと紐付けされてサーバで保持される。
【0003】
空港の各所には、図9に示すような道案内装置60が設置されている。この道案内装置60は、e−タグの情報を読み取るリーダ61と、誘導方向を矢印で示す表示装置62とを有している。e−タグ63を所持する旅客がリーダ61にe−タグを翳すと、e−タグ63のタグIDが読み取られ、そのタグIDに紐付けされた情報に基づいて、旅客の進むべき方向が表示装置62の矢印で表示される。
例えば、出発時刻までに十分余裕がある場合は、予め登録されたレストランや店舗の方向が表示され、出発時刻が迫っているときは、出発ゲートの方向が表示される。
【特許文献1】特開2007−199805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この空港案内システムは、旅客がトイレに行きたいと思っても、事前に登録していなければ、誘導してくれない。また、事前登録した店舗とは別の店舗で買物をしたいと思ったときも同様である。
そのため、このシステムは、空港内で旅客を出発時刻に遅れないように誘導する上では有効なシステムであるが、ユーザが求めている場所を案内する目的には、必ずしも沿うものではない。
【0005】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、歩行者が求めている目的地を分かり易く案内できる歩行者用ナビゲーションシステムを提供し、また、このシステムに組み込む案内装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、歩行者が目的地を指定すると、当該目的地の方向を提示する歩行者用ナビゲーションシステムであって、目的地の方向を示す矢印を水平面内に表示する表示手段と、歩行者から提示された目的地の情報を読み取る読取手段と、を備える案内装置が固定的に設置され、歩行者が目的地の情報を前記読取手段に読み取らせると、前記表示手段が、前記目的地の方向を示す矢印を表示することを特徴とする。
このシステムでは、歩行者が指定した目的地の方向を、案内装置が指し示す。
【0007】
また、本発明の歩行者用ナビゲーションシステムでは、前記読取手段を、非接触ICリーダ/ライタで構成し、歩行者が、非接触ICチップを内蔵する携帯端末装置の前記非接触ICチップに目的地の情報を書き込んで、前記携帯端末装置を前記非接触ICリーダ/ライタに翳したときに、前記非接触ICリーダ/ライタが、前記携帯端末装置の非接触ICチップから前記目的地の情報を読み取り、前記表示装置が、前記目的地の方向を示す矢印を表示するように構成することができる。
歩行者は、携帯端末装置に内蔵された非接触ICチップのフリーエリアに目的地を書き込み、この情報を案内装置の非接触ICリーダ/ライタに読み取らせる。
【0008】
また、本発明は、歩行者が指定した目的地の方向を表示する案内装置であって、前記目的地の方向を示す矢印が水平面内に表示される表示装置と、前記表示装置を頂面で支持する柱状の筐体と、前記筐体の前記頂面に配置された、歩行者が提示する目的地の情報を読み取る読取手段と、前記筐体内に配置されたプロセッサと、前記筐体内に配置された、複数の目的地と各目的地の方向との関係が記述されたデータベースと、を備え、前記読取手段が歩行者から提示された目的地の情報を読み取ると、前記プロセッサが、前記データベースから前記目的地の方向を求め、前記表示装置に、前記目的地の方向を示す矢印を表示させることを特徴とする。
この案内装置は、歩行者が指定した目的地の方向を指し示す。
【0009】
また、本発明の案内装置では、前記読取手段を、携帯端末装置に内蔵された非接触ICチップから目的地の情報を読み出す非接触ICリーダ/ライタで構成することができる。
この案内装置では、歩行者が、携帯端末装置に内蔵された非接触ICチップのフリーエリアに目的地を書き込んだ後、この携帯端末装置を非接触ICリーダ/ライタに翳すと、表示装置が、目的地の方向の矢印を表示する。
【0010】
また、本発明の案内装置では、前記データベースに、複数の目的地と各目的地の方向との関係に加えて、各目的地への行き方を示す補足情報を記述し、前記プロセッサが、前記表示装置に前記目的地の方向を示す矢印を表示させるとき、前記データベースから得た前記補足情報を併せて表示させるように構成することができる。
この案内装置では、歩行者の進むべき方向と、目的地までの行き方などが表示される。
また、本発明の案内装置では、前記表示装置の高さを70cm〜110cmの範囲に設定することが望ましい。
この高さに設定すれば、腰を曲げたりせずに、楽な姿勢で、携帯端末装置を非接触ICリーダ/ライタに翳し、また、表示装置の表示を見ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歩行者用ナビゲーションシステム及び案内装置は、歩行者が求めている目的地への方向を分かり易く案内することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る歩行者用ナビゲーションシステム及び案内装置について、図面を基に説明する。
図1は、この歩行者用ナビゲーションシステムを模式的示す図、図2は、案内装置の斜視図、図3は、表示装置の表示画面を示す図、図4は、案内装置のデータベースで保持されるデータのデータ構造を示す図、また、図5は、この歩行者用ナビゲーションシステムの動作手順を示す図である。
【0013】
図1に示すように、非接触ICチップ21が内蔵された携帯端末装置20を保持する歩行者は、非接触ICチップ21に目的地を書き込み、この携帯端末装置20を案内装置10の非接触ICリーダ/ライタ12に翳す。
図6に示すように、非接触ICチップ21には、共通領域とフリー領域とが用意されており、フリー領域は、3つのフリーエリアで構成されている。共通領域の使用には許可が必要であるが、フリーエリアの使用は自由であり、このフリーエリアへの書き込みを可能にするソフトウエアを携帯端末装置20にインストールすれば、フリーエリアの1つを目的地情報の書き込み場所として利用することができる。
【0014】
案内装置10は、設置位置が固定されており、目的地情報の読取手段である非接触ICリーダ/ライタ12と、目的地の方向を矢印で表示する表示装置11と、目的地の方向や目的地への行き方を示す情報が保持されたデータベース15と、非接触ICリーダ/ライタ12が読み取った目的地情報に基づいて表示装置11の表示を制御するプロセッサ14とを有している。
表示装置11は、図3に示すように、8方向の矢印を表示する液晶画面を備えており、プロセッサ14から指示された方向の矢印を強調表示する。
【0015】
データベース15は、図4に示すように、目的地の名称と、案内装置10の設置位置から見た目的地の方向と、目的地への行き方を示す補足情報とが記述されたテーブルを保持している。目的地名称の欄には、歩行者が、その目的地の情報として入力する可能性がある表記が網羅的に記述されている。
【0016】
案内装置10は、図2に示すように、柱状の筐体13を備えており、この筐体13の頂面に表示装置11と非接触ICリーダ/ライタ12とが配置され、筐体13の内部にプロセッサ14とデータベース15とが収納されている。
筐体13は、縦40cm、横40cm、高さ90cmの外形を有している。この高さは、平均的な大人が無理な姿勢を取らずに携帯端末装置20を非接触ICリーダ/ライタ12に翳したり、表示装置11の表示画面を見たりできるように設定されている。
表示装置11の表示画面は、水平に設置されている。そのため、歩行者は、表示装置11が表示する矢印から、進むべき方向を直感的に把握することができる。
【0017】
図5には、この歩行者用ナビゲーションシステムの動作手順を丸で囲んで数字で示している。
(1)携帯端末装置20を携帯する歩行者は、携帯端末装置20にインストールしたナビゲーションソフトウェアを用いて、目的地情報を非接触ICチップ21のメモリ領域(フリーエリア)に書き込む。
(2)歩行者は、目的地情報が書き込まれた携帯端末装置20を案内装置10に設置された非接触ICリーダ/ライタ12に翳し、非接触ICリーダ/ライタ12は、携帯端末装置20に内蔵された非接触ICチップ21のフリーエリアに書き込まれた目的地情報を読み出す。
(3)非接触ICリーダ/ライタ12は、読み出した目的地情報をプロセッサ14に出力する。
(4)プロセッサ14は、データベース15に保持されたテーブルにアクセスし、
(5)目的地情報と一致する目的地名称を検索し、該当する目的地名称に対応する「案内方向」及び「補足情報」を読み出す。
(6)プロセッサ14は、表示装置11に対して「案内方向」の矢印を強調表示するように指示し、また、「補足情報」を表示装置11に送り、その表示を指示する。表示装置11は、指示された矢印を強調表示し、また、「補足情報」を予め決められた表示領域に表示する。
そのため、歩行者は、表示装置11に表示された矢印から、進むべき方向を直感的に把握することができ、また、表示された補足情報から、目的地への行き方を具体的に知ることができる。
【0018】
なお、ここでは、表示装置11及び非接触ICリーダ/ライタ12を筐体13の頂面に配置しているが、図7に示すように、表示装置11を電子ペーパーで形成して床面に配置し、非接触ICリーダ/ライタ12だけを筐体13の頂面に配置するようにしても良い。
また、表示装置11は、図8に示すように、LEDや振動モータなどで方向を伝える形式でも良い。
また、ここでは、目的地情報を非接触ICチップ21のフリーエリアに書き込み、これを読出手段の非接触ICリーダ/ライタ12で読み出しているが、携帯端末装置20の表示画面に目的地情報を文字で表示し、これを読出手段のOCRで読み出すように構成しても良い。
また、ここでは、表示装置11に矢印と補足情報とを表示させているが、案内装置10を多数設置する場合は、矢印だけを表示するようにしても良い。
また、ここでは、筐体13の高さを90cmに設定しているが、その高さが70cm〜110cmの範囲であれば、歩行者は、腰を大きく曲げたりせずに、楽な姿勢で、携帯端末装置を非接触ICリーダ/ライタに翳したり、表示装置11の表示を見ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、屋外施設や屋内施設などで、歩行者の道案内に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る歩行者用ナビゲーションシステムを模式的示す図
【図2】本発明の実施形態に係る案内装置の斜視図
【図3】本発明の実施形態に係る案内装置の表示画面を示す図
【図4】本発明の実施形態に係る案内装置のデータベースで保持されるデータのデータ構造を示す図
【図5】本発明の実施形態に係る歩行者用ナビゲーションシステムの動作手順を示す図
【図6】携帯端末装置に内蔵された非接触ICチップのメモリ領域を説明する図
【図7】床に配置する形式の案内装置の表示装置を示す図
【図8】振動する形式の案内装置の表示装置を示す図
【図9】従来の道案内装置を示す図
【符号の説明】
【0021】
10 案内装置
11 表示装置
12 非接触ICリーダ/ライタ
13 筐体
14 プロセッサ
15 データベース
20 携帯端末装置
21 非接触ICチップ
60 道案内装置
61 リーダ
62 表示装置
63 タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者が目的地を指定すると、当該目的地の方向を提示する歩行者用ナビゲーションシステムであって、
目的地の方向を示す矢印を水平面内に表示する表示手段と、歩行者から提示された目的地の情報を読み取る読取手段と、を備える案内装置が固定的に設置され、
歩行者が目的地の情報を前記読取手段に読み取らせると、前記表示手段が、前記目的地の方向を示す矢印を表示することを特徴とする歩行者用ナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行者用ナビゲーションシステムであって、前記読取手段が、非接触ICリーダ/ライタであり、歩行者が、非接触ICチップを内蔵する携帯端末装置の前記非接触ICチップに目的地の情報を書き込んで、前記携帯端末装置を前記非接触ICリーダ/ライタに翳すと、前記非接触ICリーダ/ライタが、前記携帯端末装置の非接触ICチップから前記目的地の情報を読み取り、前記表示装置が、前記目的地の方向を示す矢印を表示することを特徴とする歩行者用ナビゲーションシステム。
【請求項3】
歩行者が指定した目的地の方向を表示する案内装置であって、
前記目的地の方向を示す矢印が水平面内に表示される表示装置と、
前記表示装置を頂面で支持する柱状の筐体と、
前記筐体の前記頂面に配置された、歩行者が提示する目的地の情報を読み取る読取手段と、
前記筐体内に配置されたプロセッサと、
前記筐体内に配置された、複数の目的地と各目的地の方向との関係が記述されたデータベースと、
を備え、前記読取手段が歩行者から提示された目的地の情報を読み取ると、前記プロセッサが、前記データベースから前記目的地の方向を求め、前記表示装置に、前記目的地の方向を示す矢印を表示させることを特徴とする案内装置。
【請求項4】
請求項3に記載の案内装置であって、前記読取手段が、携帯端末装置に内蔵された非接触ICチップから目的地の情報を読み出す非接触ICリーダ/ライタであることを特徴とする案内装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の案内装置であって、前記データベースには、複数の目的地と各目的地の方向との関係に加えて、各目的地への行き方を示す補足情報が記述され、前記プロセッサは、前記表示装置に前記目的地の方向を示す矢印を表示させるとき、前記データベースから得た前記補足情報を併せて表示させることを特徴とする案内装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載の案内装置であって、前記表示装置の高さが70cm〜110cmの範囲に設定されていることを特徴とする案内装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−223837(P2009−223837A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70485(P2008−70485)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【Fターム(参考)】