説明

歯車伝動機構および遊星歯車機構

【課題】 二個一組の噛み合わせとすることなく慣性モーメントがより低い歯車伝動機構および遊星歯車機構を得る。
【解決手段】 複数の歯車3,4を含む歯車伝動機構において、相互に噛み合う二つの歯車3,4のうち少なくとも一方を磁石とし、他方を磁石または磁性体とすることにより、歯車3,4が相互に噛み合う部分で周回する磁路9を形成し、当該二つの歯車3,4の相異なる磁極となる部分同士が噛み合うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の歯車を含み、駆動側から従動側に回転を伝達する歯車伝動機構および遊星歯車機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯車伝動機構において、騒音の低減を図るべく静音化手段を備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図18に示すように、上記特許文献1の歯車伝動機構は、モータの駆動軸125の回転を減速して、出力軸126から出力するものであり、自転軸120に回転自在に支持され、歯車として形成された駆動軸125に噛み合う歯車122A,122Bと、自転軸121に回転自在に支持され、歯車122A,122Bとそれぞれ噛み合う歯車123A,123Bとを含んでいる。なお、自転軸121の一端側が出力軸126として機能している。
【0004】
かかる歯車伝動機構では、歯車122Aと122Bとで円板状の磁石124を狭持する一方、歯車123Aと123Bとで逆方向に磁化された円板状の磁石124を狭持することにより、歯車122AがN極、歯車123AがS極、歯車122BがS極、歯車123BがN極となるようにして、相互に噛み合う歯車同士で磁気的吸引力が作用するようにしてある。かかる磁気的吸引力により、バックラッシュが小さくなるという効果がある。
【特許文献1】特開平8−285050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の歯車伝動機構では、歯車を二個一組で用いているため、二箇所の噛み合い部分の双方で適切な噛み合い状態を得るのが難しく、一方ではバックラッシュが小さくなりすぎて噛み合い状態が悪くなり、伝達効率が低下したり、歯先が破損したりするおそれがあった。
【0006】
また、二個の歯車の他、磁石も一緒に回転するため、回転部分全体としての慣性モーメントが大きくなり、起動、停止、転換時等に、その応答性が低下してしまうという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、二個一組の噛み合わせとすることなく慣性モーメントがより低い歯車伝動機構および遊星歯車機構を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる歯車伝動機構にあっては、複数の歯車を含む歯車伝動機構において、相互に噛み合う二つの歯車のうち少なくとも一方を磁石とし、他方を磁石または磁性体とすることにより、当該二つの歯車の相異なる磁極となる部分同士が噛み合うように構成したことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、歯車自体を磁石としたため、歯車を二個一組とし、それら二個の歯車で磁石を狭持する構成とする必要がなく、その分、噛み合い状態が改善されるとともに、慣性モーメントを小さくすることができる。
【0010】
また、本発明にかかる歯車伝動機構にあっては、磁石または磁性体として構成された、相互に噛み合うかまたは他の歯車を介して協動する二つの歯車、当該二つの歯車をそれぞれ支持する二つの支持軸、および当該二つの支持軸を支持する基体部を含む歯車伝動機構であって、磁石を少なくとも一つ含むことにより、上記二つの支持軸のうち一方の支持軸、その支持軸に支持される歯車、他方の歯車、その歯車を支持する支持軸、および基体部を、その順またはその逆順に周回する磁路が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、歯車、支持軸、および基体部を経由する周回磁路を形成したため、二個の歯車で磁石を狭持する構成とすることなく、より簡素な構成で、噛み合う部分に磁気的吸引力を発生させることができる。
【0012】
また、上記本発明にかかる歯車伝動機構では、上記二つの支持軸のうち一方を、軸方向に磁化された磁石として構成するのが好適である。こうすれば、磁気的吸引力の発生源としての磁化された部分(磁石)を、支持軸として容易に配置することができる。
【0013】
また、上記本発明にかかる歯車伝動機構では、上記二つの支持軸の双方を、軸方向に磁化された磁石として構成するのが好適である。こうすれば、磁気的吸引力の発生源としての磁化された部分(磁石)を、支持軸として容易に配置することができる上、二つの支持軸を磁化する分、より大きな磁気的吸引力を得ることができる。
【0014】
また、上記本発明にかかる歯車伝動機構では、上記二つの支持軸のうち一方を、基体部に設けられた磁性体からなる軸受に取り付け、その軸受を径方向に磁化された磁石として構成するのが好適である。こうすれば、磁気的吸引力の発生源としての磁化された部分(磁石)を、軸受として容易に配置することができる。
【0015】
また、上記本発明にかかる歯車伝動機構では、上記二つの支持軸の双方を、基体部に設けられた磁性体からなる二つの軸受にそれぞれ取り付け、それら二つの軸受を径方向に磁化された磁石として構成するのが好適である。こうすれば、磁気的吸引力の発生源としての磁化された部分(磁石)を、軸受として容易に配置することができる。また、二つの軸受を磁化する分、より大きな磁気的吸引力を得ることができる。
【0016】
また、本発明にかかる歯車伝動機構にあっては、磁性体として構成された、相互に噛み合うかまたは他の歯車を介して協動する二つの歯車、および当該二つの歯車をそれぞれ支持する二つの支持軸と、上記二つの支持軸間に架設され、一方の支持軸から他方の支持軸に向けて磁化された磁石として構成された架設部材と、を含む歯車伝動機構であって、上記架設部材、上記二つの支持軸のうち一方の支持軸、その支持軸に支持される歯車、他方の歯車、およびその歯車を支持する支持軸を、その順またはその逆順に周回する磁路が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、歯車、支持軸、および架設部材を経由する周回磁路を形成したため、歯車を二個一組とし、それら二個の歯車で磁石を狭持する構成とする必要がなく、より簡素な構成で、噛み合う部分に磁気的吸引力を発生させることができる。
【0018】
また、本発明にかかる遊星歯車機構にあっては、サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを含む遊星歯車機構において、プラネタリギヤを軸方向に磁化した磁石として構成する一方、サンギヤおよびリングギヤを磁性体として構成することにより、サンギヤおよびプラネタリギヤの相異なる磁極となる部分同士が噛み合うとともに、プラネタリギヤおよびリングギヤの相異なる磁極となる部分同士が噛み合うようにしたことを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、磁性体からなるプラネタリギヤを磁化したため、歯車を二個一組とし、それら二個の歯車で磁石を狭持する構成とする必要がなく、その分、噛み合い状態が改善されるとともに、慣性モーメントを小さくすることができる。
【0020】
また、本発明にかかる遊星歯車機構にあっては、サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを含む遊星歯車機構において、サンギヤおよびリングギヤを軸方向に磁化した磁石として構成する一方、プラネタリギヤを磁性体として構成することにより、サンギヤおよびプラネタリギヤの相異なる磁極となる部分同士が噛み合うとともに、プラネタリギヤおよびリングギヤの相異なる磁極となる部分同士が噛み合うようにしたことを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、サンギヤおよびリングギヤを軸方向に磁化したため、歯車を二個一組とし、それら二個の歯車で磁石を狭持する構成とする必要がなく、その分、噛み合い状態が改善されるとともに、慣性モーメントを小さくすることができる。
【0022】
また、本発明にかかる遊星歯車機構にあっては、サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを含む遊星歯車機構において、磁石または磁性体として構成された、サンギヤ、複数のプラネタリギヤ、当該プラネタリギヤをそれぞれ支持する複数のプラネタリ支持軸、および当該複数のプラネタリ支持軸を支持する従動側キャリアを含み、磁石を少なくとも一つ含めることにより、上記複数のプラネタリ支持軸のうち一つのプラネタリ支持軸、そのプラネタリ支持軸に支持されるプラネタリギヤ、サンギヤ、他のプラネタリギヤ、そのプラネタリギヤを支持するプラネタリ支持軸、および従動側キャリアを、その順またはその逆順に周回する磁路が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、プラネタリ支持軸、プラネタリギヤ、サンギヤ、および従動側キャリアを経由する周回磁路を形成したため、二個一組としてそれら二個の歯車で磁石を狭持する構成とすることなく、より簡素な構成で、噛み合う部分に磁気的吸引力を発生させることができる。
【0024】
また、上記本発明にかかる歯車伝動機構では、上記複数のプラネタリ支持軸のうち少なくともいずれか一つを、軸方向に磁化された磁石として構成するのが好適である。こうすれば、磁気的吸引力の発生源としての磁化された部分(磁石)を、プラネタリ支持軸として容易に配置することができる。
【0025】
また、上記本発明にかかる歯車伝動機構では、上記従動側キャリアを、一対または複数対のプラネタリ支持軸のうち一方を支持する部分から他方を支持する部分に向かう方向に磁化された磁石として構成するのが好適である。こうすれば、磁気的吸引力の発生源としての磁化された部分(磁石)を、従動側キャリアとして容易に配置することができる。
【0026】
また、本発明にかかる遊星歯車機構にあっては、サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを含む遊星歯車機構において、磁石または磁性体として構成された、サンギヤ、当該サンギヤを支持する駆動軸、プラネタリギヤ、当該プラネタリギヤを支持するプラネタリ支持軸、および当該プラネタリ支持軸を支持する従動側キャリアを含み、上記駆動軸は従動側キャリアに当接または近接しており、磁石を少なくとも一つ含めることにより、上記プラネタリ支持軸、プラネタリギヤ、サンギヤ、駆動軸、および従動側キャリアを、その順またはその逆順に周回する磁路が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、プラネタリ支持軸、プラネタリギヤ、サンギヤ、駆動軸、および従動側キャリアを経由する周回磁路を形成したため、歯車を二個一組とし、それら二個の歯車で磁石を狭持する構成とする必要がなく、より簡素な構成で、噛み合う部分に磁気的吸引力を発生させることができる。
【0028】
また、本発明にかかる遊星歯車機構にあっては、サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを含む遊星歯車機構において、サンギヤ、プラネタリギヤ、リングギヤ、およびサンギヤを支持する駆動軸を磁性体として構成する一方、上記駆動軸とリングギヤとの間に架設された架設部材を駆動軸およびリングギヤのうち一方から他方に向けて磁化された磁石として構成することにより、上記架設部材、駆動軸、サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを、その順またはその逆順に周回する磁路が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0029】
このような構成によれば、架設部材、駆動軸、サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを経由する周回磁路を形成したため、二個一組としてそれら二個の歯車で磁石を狭持する構成とすることなく、より簡素な構成で、噛み合う部分に磁気的吸引力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、より簡素な構成で、より適切な噛み合い状態を維持しながら、噛み合い部分に磁気的吸引力を発生させることができるので、バックラッシュが適切に小さくなって騒音を低減することができる上、耐久信頼性を向上することができる。また、回転部分の慣性モーメントを小さくすることができるので、応答性向上、小型化、ならびに製造コスト低減という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
(第1実施形態)図1は、本発明の第1実施形態にかかる歯車伝動機構を示しており、(a)は、径方向外側から見た側面図、(b)は、軸方向から見た平面図、(c)は、二つの歯車が噛み合う部分((b)の破線で囲まれた領域)の拡大図である。
【0033】
本実施形態では、回転自在な支持軸1に固定される歯車3は、軸方向に磁化(着磁)された磁石として構成されており、図1(a)の上側(根元側)がN極部分5、下側(先端側)がS極部分6としてある。一方、回転自在な支持軸2に固定される磁性体からなる歯車4も、軸方向に磁化された磁石として構成されているが、この場合は、図1(a)の上側がS極部分8、下側がN極部分7である。なお、図1の例では、歯車3が主動側(駆動側)、歯車4が従動側(出力側)としてある。
【0034】
かかる構成により、歯車3と歯車4とが噛み合う部分には、歯車3のN極部分5、歯車4のS極部分8、歯車4のN極部分7、および歯車3のS極部分6を、この順に周回する磁路9が形成される。したがって、歯車3と歯車4とが噛み合って当接する面が相互に異極となり、これらの面の間に磁気的吸引力が生じる。
【0035】
ここで、相互に噛み合う歯車間で磁気的吸引力が作用しない場合には、負荷トルクの変動が大きいと、噛み合う歯の当接面が変化することがある。すなわち、図19を参照して、(a)に示す回転方向の先側の位置10で当接する状態と、(b)に示す回転方向の手前側の位置11で当接する状態とが交互に切り替わる。このような場合には、切り替わるときに歯同士が衝突して騒音が生じてしまう。
【0036】
これに対し、本実施形態によれば、歯の当接する面同士が磁気的吸引力によって吸着するため、こうした当接状態の切り替わり、ひいては騒音の発生を抑制することができる。
【0037】
以上の構成を備える本実施形態にかかる歯車伝動機構によれば、歯車3,4の相異なる磁極となる部分同士が噛み合うことになるため、バックラッシュが小さくなり、ひいては騒音が低減されるという効果がある。また、本実施形態によれば、歯車3,4自体を磁化したため、歯車伝動機構を従来に比べて簡素に構成することができ、小型・軽量化に資する上、回転部分の慣性モーメントを抑えることができ、起動、停止、転換等の応答性が向上するという効果がある。
【0038】
なお、本実施形態では、二個の歯車3,4のみが噛み合う例について述べたが、軸方向に磁化された歯車が三つ以上噛み合う構成でも、同様に実施することが可能である。ただし、その場合、相互に噛み合う二つの歯車については、それらの磁化方向を相互に逆の方向(図1の(a)と同じ視点では上方向と下方向)とする必要がある。
【0039】
(第2実施形態)図2は、本発明の第2実施形態にかかる歯車伝動機構を示しており、(a)は、径方向外側から見た側面図、(b)は、軸方向から見た平面図(下から見た図)である。
【0040】
本実施形態では、回転自在な支持軸1に固定される磁性体からなる歯車3が、軸方向に磁化された磁石として構成されており、図2(a)の上側(根元側)がN極部分5、下側(先端側)がS極部分6である。また、回転自在な支持軸14に固定される磁性体からなる歯車15も、歯車3と同様、軸方向に磁化された磁石として構成されており、上側がN極部分18、下側がS極部分19である。一方、回転自在な支持軸12に固定される歯車13、および回転自在な支持軸16に固定される歯車17は、磁化されていない磁性体によって構成されている。
【0041】
かかる構成により、歯車3と歯車13とが噛み合う部分には、歯車3のN極部分5、歯車13、および歯車3のS極部分6を、この順に周回する磁路20が形成される。すなわち、歯車3と歯車13とが噛み合う部分が相互に異極となり、これらの間に磁気的吸引力が生じる。同様に、歯車13と歯車15との間、ならびに歯車15と歯車17との間にも、周回する磁路20,21が形成され、磁気的吸引力が生じる。
【0042】
以上の構成を備える本実施形態にかかる歯車伝動機構によれば、上述した効果に加えて、全ての歯車を磁石とする必要が無い分、製造コストを低減することができるという効果がある。
【0043】
(第3実施形態)図3は、本発明の第3実施形態にかかる歯車伝動機構を示しており、(a)は、径方向外側から見た側面図、(b)は、軸方向から見た平面図である。
【0044】
本実施形態では、回転自在な支持軸22に固定される歯車23が、回転自在な支持軸24に固定される歯車28と噛み合う一方、支持軸24に固定されて歯車28と協動する歯車29が、回転自在な支持軸26に固定される歯車27と噛み合っている。
【0045】
本実施形態では、歯車23,28,29,27は全て磁石として構成されており、図3の(b)に示すように、各歯車23,28,29,27は周方向に一歯毎に区分され、相互に隣接する歯が異極となるように(すなわち、周方向に沿ってN極の歯とS極の歯が交互に出現するように)周方向に分割して磁化されている上、相互に噛み合う二つの歯車については、相異なる磁極となる部分同士が噛み合う(当接する)ように組み付けられている。図3(b)の例では、歯車23のS極となる歯面と、歯車28のN極となる歯面とが当接し、歯車29のS極となる歯面と、歯車27のN極となる歯面が当接している。したがって、相互に当接する歯面の間で磁気的吸引力が作用する。
【0046】
以上の構成を備える本実施形態にかかる歯車伝動機構によっても、上述した効果と同様の効果を得ることができる。かかる構成は、一つの支持軸に協動する歯車が複数装備される場合に有効である。なお、かかる構成では、相互に噛み合う歯車の歯数はともに偶数とする必要がある。
【0047】
(第4実施形態)図4は、本発明の第4実施形態にかかる歯車伝動機構を示しており、(a)は、径方向外側から見た側面図、(b)は、軸方向から見た平面図である。
【0048】
本実施形態では、複数の互いに平行な支持軸31,33,35が基体部30に回転自在に支持されており、支持軸31に固定された歯車32と、支持軸33に固定された歯車37とが噛み合う一方、支持軸33に固定され歯車37と協動する歯車34と、支持軸35に固定された歯車36とが噛み合っている。そして、本実施形態では、基体部30および支持軸31,33,35が磁性体として構成される一方、歯車32,37,34,36は、全て磁石として構成されている。
【0049】
そして、図4の(b)に示すように、歯車32,37,34,36は、それぞれ径方向に磁化されている。ただし、相互に噛み合う歯車については、磁化される方向が異なっている。すなわち、歯車32は、径方向内側をN極部分39とし、径方向外側をS極部分40としてあるのに対して、これと噛み合う歯車37は、径方向内側をS極部分42とし、径方向外側をN極部分41としてある。また、歯車36は、径方向内側をN極部分43とし、径方向外側をS極部分44としてあるのに対して、歯車37は、図示しないが、径方向内側をS極部分とし、径方向外側をN極部分としてある。
【0050】
したがって、図4の(a)に示すように、基体部30、支持軸33、歯車37、歯車32、および支持軸31をこの順に周回する磁路45が形成されるとともに、基体部30、支持軸33、歯車34、歯車36、および支持軸35をこの順に周回する磁路46が形成され、相互に噛み合う歯車32と歯車37との間、および歯車34と歯車36との間に磁気的吸引力が生じる。
【0051】
以上の構成を備える本実施形態にかかる歯車伝動機構によれば、基体部30を含む周回磁路45,46が形成されることにより、相互に噛み合う歯車同士に磁気的吸引力が作用し、バックラッシュが小さくなり、ひいては騒音が低減されるという効果がある。また、本実施形態によれば、歯車32,37,34,36自体を磁石としたため、歯車伝動機構を従来に比べて簡素に構成することができ、小型・軽量化に資する上、回転部分の慣性モーメントを抑えることができ、起動、停止、転換等の応答性が向上するという効果がある。
【0052】
なお、本実施形態では、四個の歯車32,37,34,36が協動する場合を例に挙げて説明したが、歯車が二つのみ噛み合う場合や、逆にさらに多くの歯車が協動するような場合にも同様に適用することができる。ただし、複数の磁路が形成される支持軸については、当該支持軸内で磁路の方向が同一となるようにしておくのが好適である。本実施形態でも、支持軸33を通る磁路45,46については、その方向が同じになるようにしてある。そのためには、一つの支持軸に支持されて協動する複数の歯車については、磁化方向を同じにしておけばよい。また、本実施形態のように、歯車を含め、支持軸やその他の部位を周回するように磁路を形成する構成は、歯数の奇数/偶数によらず適用可能である。
【0053】
(第5実施形態)図5は、本発明の第5実施形態にかかる歯車伝動機構を示しており、(a)は、径方向外側から見た側面図、(b)は、軸方向から見た平面図(下から見た図)である。
【0054】
本実施形態では、平行な複数の支持軸48,50が基体部47に回転自在に支持されており、支持軸48に固定された歯車49と、支持軸50に固定された歯車51とが噛み合っている。そして、本実施形態では、支持軸48が磁石として構成される一方、基体部47、支持軸50、および歯車49,51が磁性体で構成されている。
【0055】
そして、図5の(a)に示すように、支持軸48は、その下側がN極となるように軸方向に磁化されており、したがって、支持軸48、歯車49、歯車51、支持軸50、および基体部47を周回する磁路52が形成され、相互に噛み合う歯車49と歯車51との間に磁気的吸引力が生じる。
【0056】
以上の構成を備える本実施形態にかかる歯車伝動機構によれば、上述した効果に加えて、棒状の支持軸48を磁石とする分、構成が簡素化され、製造コストを低減することができるという効果がある。
【0057】
(第6実施形態)図6は、本発明の第6実施形態にかかる歯車伝動機構を示しており、(a)は、径方向外側から見た側面図、(b)は、軸方向から見た平面図である。
【0058】
本実施形態では、平行な複数の支持軸48,53が基体部47に回転自在に支持されており、支持軸48に固定された歯車49と、支持軸53に固定された歯車51とが噛み合っている。そして、本実施形態では、支持軸48,53が磁石として構成される一方、基体部47および歯車49,51が磁性体として構成されている。
【0059】
そして、図6の(a)に示すように、本実施形態では、支持軸48が、その下側がN極となるように磁化されているのに加えて、支持軸53が、その上側がN極となるように軸方向に磁化されており、したがって、支持軸48、歯車49、歯車51、支持軸53、および基体部47を周回する磁路55が形成され、相互に噛み合う歯車49と歯車51との間に磁気的吸引力が生じる。
【0060】
以上の構成を備える本実施形態にかかる歯車伝動機構によれば、上述した効果に加えて、二つの支持軸48,53を磁化する分、より大きな磁気的吸引力を得ることができるという効果がある。
【0061】
(第7実施形態)図7は、本発明の第7実施形態にかかる歯車伝動機構を示しており、(a)は、軸方向の一方側(基体部側)から見た平面図、(b)は、径方向外側から見た側面図、(c)は、軸方向の他方側(歯車側)から見た平面図である。
【0062】
本実施形態では、平行な複数の支持軸57,59が基体部56に回転自在に支持されており、支持軸57に固定された歯車58と、支持軸59に固定された歯車60とが噛み合っている。ここで、支持軸57は、基体部56に設けられた軸受61(例えばラジアルベアリング)の内側可動部分に取り付けられることで、回動自在となっている。そして、本実施形態では、軸受61が磁石として構成される一方、基体部56、支持軸57,59、および歯車58,60が磁性体として構成されている。
【0063】
そして、図7の(a)に示すように、本実施形態では、軸受61が径方向に磁化されている。すなわち、軸受61の径方向内側部分をN極部分62とし、径方向外側部分をS極部分63としてある。したがって、軸受61、支持軸57、歯車58、歯車60、支持軸59、および基体部56をこの順に周回する磁路64が形成され、相互に噛み合う歯車58と歯車60との間に磁気的吸引力が生じる。
【0064】
以上の構成を備える本実施形態にかかる歯車伝動機構によれば、上述した効果に加えて、軸受61を磁化する分、構成が簡素化され、製造コストを低減することができるという効果がある。
【0065】
(第8実施形態)図8は、本発明の第8実施形態にかかる歯車伝動機構を示しており、(a)は、軸方向の一方側(基体部側)から見た平面図、(b)は、径方向外側から見た側面図、(c)は、軸方向の他方側(歯車側)から見た平面図である。
【0066】
本実施形態では、平行な複数の支持軸57,59が基体部56に回転自在に支持されており、支持軸57に固定された歯車58と、支持軸59に固定された歯車60とが噛み合っている。ここで、本実施形態では、支持軸57に加えて、支持軸59も、基体部56に設けられた軸受65(例えばラジアルベアリング)の内側可動部分に取り付けられることで、回動自在となっている。そして、軸受61,65が磁石として構成される一方、基体部56、支持軸57,59、および歯車58,60が磁性体として構成されている。
【0067】
そして、図8の(a)に示すように、軸受65は径方向に磁化されている。ただし、その磁化方向は、軸受61とは逆方向である。すなわち、軸受65の径方向内側部分をS極部分67とし、径方向外側部分をN極部分66としてある。したがって、軸受61、支持軸57、歯車58、歯車60、支持軸59、軸受65、および基体部56を周回する磁路68が形成され、相互に噛み合う歯車58と歯車60との間に磁気的吸引力が生じる。
【0068】
以上の構成を備える本実施形態にかかる歯車伝動機構によれば、上述した効果に加えて、二つの軸受61,65を磁化する分、より大きな磁気的吸引力を得ることができるという効果がある。
【0069】
(第9実施形態)図9は、本発明の第9実施形態にかかる歯車伝動機構を示しており、(a)は、径方向外側から見た側面図、(b)は、軸方向から見た平面図である。
【0070】
本実施形態では、平行な複数の支持軸69,70が基体部47に回転自在に支持されており、支持軸69に固定された歯車49と、支持軸70に固定された歯車51とが噛み合っている。そして、本実施形態では、相互に噛み合う歯車49,51をそれぞれ支持する二つの支持軸69,70間に、磁石として構成される架設部材71が架設されており、その両端部は、支持軸69,70の周壁とは微小なギャップを持って非接触となるようにしてある。ただし、架設部材71の両端部と支持軸69,70の周壁とが接触しながら摺動するようにしてもよい。また、本実施形態では、支持軸69,70、および歯車49,51は、全て磁性体で構成されている。なお、この場合、基体部47は、磁性体としてもよいし非磁性体としてもよい。
【0071】
そして、図9の(a)に示すように、架設部材71は、一方の支持軸70から他方の支持軸69に向けて磁化されている。すなわち、支持軸69側をN極部分とし、支持軸70側をS極部分としてある。したがって、架設部材71、支持軸69、歯車49、歯車51、および支持軸70を周回する磁路72が形成され、相互に噛み合う歯車49と歯車51との間に磁気的吸引力が生じる。
【0072】
以上の構成を備える本実施形態にかかる歯車伝動機構によれば、上述した効果に加えて、歯車伝動機構の基本的な構成要素とは別に設けた架設部材71を磁化するようにしたため、磁化部分をより容易に構成することができる上、当初磁気的吸引力を発生できなかった歯車伝動機構に対し、当該架設部材71を追加することによって、相互に噛み合う歯車間で磁気的吸引力を発生させることができるという効果がある。
【0073】
(第10実施形態)図10は、本発明の第10実施形態にかかる歯車伝動機構を示しており、(a)は、径方向外側から見た側面図、(b)は、軸方向から見た平面図である。
【0074】
本実施形態では、複数の互いに平行な支持軸73,74が基体部47に回転自在に支持されており、支持軸73に固定された歯車49と、支持軸74に固定された歯車51とが噛み合っている。そして、本実施形態では、相互に噛み合う歯車49,51をそれぞれ支持する二つの支持軸73,74の間に、磁石として構成される架設部材75が架設されており、その端部は、支持軸73,74の周壁とは微小なギャップを持って非接触となるようにしてある。ただし、本実施形態では、架設部材75は、基体部47から見て歯車49,51より遠い側に設けてある。すなわち、支持軸73,74を、歯車49,51が固定される位置より長く伸ばし、当該延伸部分間に架設部材75を設けている。そして、本実施形態では、支持軸73,74、歯車49,51、および架設部材75を、全て磁性体で構成している。なお、基体部47は、磁性体としてもよいし非磁性体としてもよい。
【0075】
そして、図10の(a)に示すように、本実施形態でも、上記第9実施形態と同様に、架設部材75を、一方の支持軸74から他方の支持軸73に向けて磁化してある。すなわち、支持軸73側をN極部分とし、支持軸74側をS極部分としてある。したがって、架設部材75、支持軸73、歯車49、歯車51、および支持軸74をこの順に周回する磁路76が形成され、相互に噛み合う歯車49と歯車51との間に磁気的吸引力が生じる。
【0076】
以上の構成を備える本実施形態にかかる歯車伝動機構によれば、上述した効果に加えて、さらに架設部材75を設置しやすくなるというメリットがある。
【0077】
(第11実施形態)図11は、本発明の第11実施形態にかかる遊星歯車機構を示しており、(a)は、軸方向入力側から見た正面図、(b)は、径方向外側から見た側面図である。
【0078】
本実施形態にかかる遊星歯車機構は、サンギヤ81、プラネタリギヤ83,85、およびリングギヤ86を備えている。サンギヤ81は、回転が入力される駆動軸80とともに回転し、このサンギヤ81(の外周歯)に噛み合う複数(この例では二つ)のプラネタリギヤ83,85が、リングギヤ86(の内周歯)と噛み合いながら、サンギヤ81の周りを周回する。プラネタリギヤ83,85は、従動側キャリア87に支持されたプラネタリ支持軸82にそれぞれ支持されており、サンギヤ81周りのプラネタリギヤ83,85の周回動作が、従動側キャリア87の後段に設けられた出力軸88から出力されるようになっている。
【0079】
そして、本実施形態では、プラネタリギヤ83,85は軸方向に磁化された磁石として構成されている。本実施形態では、図11の(b)に示すように、プラネタリギヤ83,85の入力側(図11の(b)では左側)にN極部分91が設けられ、出力側(同図では右側)にS極部分92が設けられている。一方、サンギヤ81およびリングギヤ86は磁性体として構成されている。
【0080】
かかる構成により、プラネタリギヤ83,85とリングギヤ86とが噛み合う部分には、それぞれ、プラネタリギヤ83,85のN極部分91、リングギヤ86、およびプラネタリギヤ83,85のS極部分92を、この順に周回する磁路105が形成される。したがって、プラネタリギヤ83,85とリングギヤ86とが噛み合って相互に当接する面の間に磁気的吸引力が生じる。また、同様に、サンギヤ81とプラネタリギヤ83,85とが噛み合う部分には、プラネタリギヤ83,85のN極部分91、サンギヤ81、およびプラネタリギヤ83,85のS極部分92を、この順に周回する磁路106が形成される。したがって、プラネタリギヤ83,85とリングギヤ86とが噛み合って相互に当接する面の間にも磁気的吸引力が生じる。
【0081】
以上の構成を備える本実施形態にかかる遊星歯車機構によれば、噛み合って当接した歯面同士が磁気的に吸引されるため、騒音を抑制することができる。また、本実施形態によれば、プラネタリギヤ83,85自体を磁化したため、回転部分に別途磁石を取り付けた場合に比べて構成を簡素化することができ、小型・軽量化に資する上、回転部分の慣性モーメントを抑えることができる分、起動、停止、転換等の応答性が向上するという効果がある。
【0082】
(第12実施形態)図12は、本発明の第12実施形態にかかる遊星歯車機構を示しており、(a)は、軸方向入力側から見た正面図、(b)は、径方向外側から見た側面図である。
【0083】
上記第11実施形態にかかる遊星歯車機構では、プラネタリギヤ83,85を磁石としたが、本実施形態では、これに替えて、サンギヤ81Aおよびリングギヤ86Aを軸方向に磁化した磁石として構成している。すなわち、図12(b)に示すように、サンギヤ81Aについては、入力側(図12(b)では左側)をN極部分95とし、出力側(同図では右側)をS極部分96とするとともに、リングギヤ86Aについても、入力側をN極部分93とし、出力側をS極部分94としている。
【0084】
かかる構成により、プラネタリギヤ83A,85Aとリングギヤ86Aとが噛み合う部分には、リングギヤ86AのN極部分93、プラネタリギヤ83A,85A、およびリングギヤ86AのS極部分94を、この順に周回する磁路107が形成される。したがって、プラネタリギヤ83A,85Aとリングギヤ86Aとが噛み合って相互に当接する面の間に磁気的吸引力が生じる。また、同様に、サンギヤ81Aとプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合う部分には、サンギヤ81AのN極部分95、プラネタリギヤ83A,85A、およびサンギヤ81AのS極部分96を、この順に周回する磁路108が形成される。したがって、サンギヤ81Aとプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合って相互に当接する面の間にも磁気的吸引力が生じる。
【0085】
以上の構成を備える本実施形態にかかる遊星歯車機構によっても、上述の効果と同様の効果が得られる。
【0086】
(第13実施形態)図13は、本発明の第13実施形態にかかる遊星歯車機構を示しており、(a)は、軸方向入力側から見た正面図、(b)は、径方向外側から見た側面図である。
【0087】
本実施形態にかかる遊星歯車機構では、歯車を磁石とするのに替えて、プラネタリ支持軸82B,84Bを軸方向に磁化した磁石としている。すなわち、図13の(b)に示すように、プラネタリ支持軸82Bについては、入力側(図13(b)の左側)をN極部分97とし、出力側(同図では右側)をS極部分98とする一方、別のプラネタリ支持軸84Bについては、入力側をS極部分100とし、出力側をN極部分99としている。なお、本実施形態では、サンギヤ81、プラネタリギヤ83A,85A、リングギヤ86および従動側キャリア87を磁性体として構成している。
【0088】
かかる構成により、サンギヤ81とプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合う部分には、プラネタリ支持軸82B、プラネタリギヤ83A、サンギヤ81、プラネタリギヤ85A、プラネタリ支持軸84B、および従動側キャリア87をこの順に周回する磁路109が形成される。したがって、サンギヤ81とプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合って相互に当接する面の間に磁気的吸引力が生じる。
【0089】
以上の構成を備える本実施形態にかかる遊星歯車機構によっても、上述の効果と同様の効果が得られる。また、歯車ではなく、プラネタリ支持軸82B,84Bを磁石とした分、構成が簡素化され、製造コストを低減することができるという効果がある。
【0090】
(第14実施形態)図14は、本発明の第14実施形態にかかる遊星歯車機構を示しており、(a)は、軸方向入力側から見た正面図、(b)は、径方向外側から見た側面図である。
【0091】
本実施形態にかかる遊星歯車機構では、従動側キャリア87Cを180°ずつ二分割した磁石として構成している。すなわち、図14の(a)および(b)に示すように、従動側キャリア87Cのうち、プラネタリ支持軸82を支持している部分をN極部分101とし、別のプラネタリ支持軸84を支持している部分をS極部分102としている。なお、本実施形態でも、サンギヤ81、プラネタリギヤ83A,85A、およびプラネタリ支持軸82,84を磁性体として構成している。
【0092】
かかる構成により、サンギヤ81とプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合う部分には、プラネタリ支持軸82、プラネタリギヤ83A、サンギヤ81、プラネタリギヤ85A、プラネタリ支持軸84、および従動側キャリア87Cをこの順に周回する磁路109が形成される。したがって、サンギヤ81とプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合って相互に当接する面の間に磁気的吸引力が生じる。
【0093】
以上の構成を備える本実施形態にかかる遊星歯車機構によっても、上述の効果と同様の効果が得られる。また、歯車ではなく、従動側キャリア87Cを磁石とした分、より容易に製造することができるようになる上、磁石の容積を大きくとることができる分、より大きな磁力を得ることができる。
【0094】
(第15実施形態)図15は、本発明の第15実施形態にかかる遊星歯車機構を示しており、(a)は、軸方向入力側から見た正面図、(b)は、径方向外側から見た側面図である。
【0095】
本実施形態にかかる遊星歯車機構では、プラネタリ支持軸82B,84Dを軸方向に磁化した磁石としている。すなわち、図15の(b)に示すように、プラネタリ支持軸82の入力側(図15(b)では左側)をN極部分97とし、出力側(同図では右側)をS極部分としている。また、駆動軸80をサンギヤ81の取付位置から出力側に延伸させ、従動側キャリア87に当接あるいは微小なギャップをもって近接するようにしている。なお、本実施形態でも、サンギヤ81、プラネタリギヤ83A,85A、および従動側キャリア87を磁性体として構成してある。
【0096】
かかる構成により、サンギヤ81とプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合う部分には、プラネタリギヤ83A,85A毎に磁路110a,110bが形成される。すなわち、磁路110aは、図15の(b)で上側のプラネタリ支持軸82B、プラネタリギヤ83A、サンギヤ81、駆動軸80、および従動側キャリア87をこの順に周回し、一方、磁路110bは、同図で下側のプラネタリ支持軸84D、プラネタリギヤ85A、サンギヤ81、駆動軸80、および従動側キャリア87をこの順に周回する。したがって、サンギヤ81とプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合って相互に当接する面の間に磁気的吸引力が生じる。
【0097】
以上の構成を備える本実施形態にかかる遊星歯車機構によっても、上述の効果と同様の効果が得られる。
【0098】
(第16実施形態)図16は、本発明の第16実施形態にかかる遊星歯車機構を示しており、(a)は、軸方向入力側から見た正面図、(b)は、径方向外側から見た側面図である。
【0099】
本実施形態にかかる遊星歯車機構では、駆動軸80とリングギヤ86との間に架設部材89を設けている。すなわち、図16(b)に示すように、架設部材89は、リングギヤ86の入力側端面から軸方向入力側(図では左側)に向けて延伸し、径方向内側に向けて直角に折れ曲がって駆動軸80の側面まで伸びている。ただし、架設部材89は、リングギヤ86とは当接するが、駆動軸80とは微小なギャップをあけて非接触とするか、あるいは当接しながら摺動するようにしてある。また、本実施形態では、架設部材89を、駆動軸80側がN極、リングギヤ86側がS極となるように磁化された磁石とする一方、サンギヤ81、プラネタリギヤ83A,85A、リングギヤ86、および駆動軸80を、磁性体としてある。
【0100】
かかる構成により、サンギヤ81とプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合う部分、ならびにプラネタリギヤ83A,85Aとリングギヤ86とが噛み合う部分には、プラネタリギヤ83A,85A毎に磁路111a,111bが形成される。すなわち、磁路111aは、図16の(b)で上側の架設部材89、駆動軸80、サンギヤ81、プラネタリギヤ83A、およびリングギヤ86をこの順に周回し、一方、磁路111bは、同図で下側の架設部材89、駆動軸80、サンギヤ81、プラネタリギヤ85A、およびリングギヤ86をこの順に周回する。したがって、サンギヤ81とプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合って相互に当接する面、ならびにプラネタリギヤ83A,85Aとリンギギヤ86とが噛み合って相互に当接する面で磁気的吸引力が生じる。
【0101】
以上の構成を備える本実施形態にかかる遊星歯車機構によっても、上述の効果と同様の効果が得られる。また、上記効果を得るため、磁石としての架設部材89を後付けすることできるという利点がある。
【0102】
(第17実施形態)図17は、本発明の第17実施形態にかかる遊星歯車機構を示しており、それを径方向外側から見た側面図である。
【0103】
本実施形態にかかる遊星歯車機構では、従動側キャリア87Fを軸方向に磁化した磁石として構成している。すなわち、図17に示すように、従動側キャリア87Fの出力側をN極部分104とし、入力側をS極部分103としている。また、ケーシング(外筐体)90を経由して複数の磁路112a,112b,113a,113bが形成されるようにしている。すなわち、同図に示すように、遊星歯車機構の基本構成部分の周囲を囲い、駆動軸80および出力軸88を回転自在に保持するとともに、リングギヤ86を内接するケーシング90を設け、当該ケーシング90を磁性体によって形成する。そして、駆動軸80、サンギヤ81、プラネタリギヤ83A,85A、リングギヤ86、および出力軸88を、磁性体で構成している。
【0104】
かかる構成により、サンギヤ81とプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合う部分、ならびにプラネタリギヤ83A,85Aとリングギヤ86とが噛み合う部分には、複数の磁路112a,112b,113a,113bが形成される。すなわち、磁路112aは、従動側キャリア87FのN極部分104、出力軸88、ケーシング90、リングギヤ86、プラネタリギヤ83A、およびプラネタリ支持軸82をこの順に周回し、磁路112bは、従動側キャリア87FのN極部分104、出力軸88、ケーシング90、リングギヤ86、プラネタリギヤ85A、およびプラネタリ支持軸84をこの順に周回する。また、磁路113aは、従動側キャリア87FのN極部分104、出力軸88、ケーシング90、駆動軸80、サンギヤ81、プラネタリギヤ83A、およびプラネタリ支持軸82をこの順に周回し、磁路113bは、従動側キャリア87FのN極部分104、出力軸88、ケーシング90、駆動軸80、サンギヤ81、プラネタリギヤ85A、およびプラネタリ支持軸84をこの順に周回する。したがって、サンギヤ81とプラネタリギヤ83A,85Aとが噛み合って相互に当接する面、ならびにプラネタリギヤ83A,85Aとリンギギヤ86とが噛み合って相互に当接する面で磁気的吸引力が生じる。
【0105】
以上の構成を備える本実施形態にかかる遊星歯車機構によっても、上述の効果と同様の効果が得られる上、歯車数や、歯数、モジュール構成によらず、ケーシングを利用して騒音の低い遊星歯車機構を実現することができる。
【0106】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。例えば、本発明は、歯車の数や、大きさ、歯数等を変更したものとしても実施可能であるし、磁石の大きさ、磁化方向、設置位置等も適宜改変可能である。
【0107】
なお、以上の全ての実施形態において、相互に噛み合う歯車の噛み合い率を2以上とすると、磁気飽和限界が高くなる。また、より磁力の強い磁石を用いることで、大トルクの歯車伝動機構や遊星歯車機構についても、騒音低減その他の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図2】本発明の第2実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図3】本発明の第3実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図4】本発明の第4実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図5】本発明の第5実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図6】本発明の第6実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図7】本発明の第7実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図8】本発明の第8実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図9】本発明の第9実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図10】本発明の第10実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図11】本発明の第11実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図12】本発明の第12実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図13】本発明の第13実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図14】本発明の第14実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図15】本発明の第15実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図16】本発明の第16実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図17】本発明の第17実施形態にかかる歯車伝動機構の概略構成図。
【図18】従来の歯車伝動機構の概略構成図。
【図19】負荷トルク変動に伴う当接歯面の変化の一例を示す図。
【符号の説明】
【0109】
3,4,13,15,17,23,27,28,29,32,34,36,37,49,51,58,60 歯車
9,20,21,45,46,52,55,64,68,72,76,105,106,107,108,109,110a,110b,111a,111b,112a,112b,113a,113b 磁路
30,47,56 基体部
31,33,35,48,50,53,57,59,69,70,73,74 支持軸
61,65 軸受
71,75,89 架設部材
80 駆動軸
81,81A サンギヤ
82,82B,84,84B,84D プラネタリ支持軸
83,83A,85,85A プラネタリギヤ
86,86A リングギヤ
87,87C,87F 従動側キャリア
88 出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯車を含む歯車伝動機構において、
相互に噛み合う二つの歯車のうち少なくとも一方を磁石とし、他方を磁石または磁性体とすることにより、当該二つの歯車の相異なる磁極となる部分同士が噛み合うように構成したことを特徴とする歯車伝動機構。
【請求項2】
磁石または磁性体として構成された、相互に噛み合うかまたは他の歯車を介して協動する二つの歯車、当該二つの歯車をそれぞれ支持する二つの支持軸、および当該二つの支持軸を支持する基体部を含む歯車伝動機構であって、
磁石を少なくとも一つ含むことにより、前記二つの支持軸のうち一方の支持軸、その支持軸に支持される歯車、他方の歯車、その歯車を支持する支持軸、および基体部を、その順またはその逆順に周回する磁路が形成されるようにしたことを特徴とする歯車伝動機構。
【請求項3】
前記二つの支持軸のうち一方を、軸方向に磁化された磁石として構成したことを特徴とする請求項2に記載の歯車伝動機構。
【請求項4】
前記二つの支持軸の双方を、軸方向に磁化された磁石として構成したことを特徴とする請求項2に記載の歯車伝動機構。
【請求項5】
前記二つの支持軸のうち一方を、基体部に設けられた磁性体からなる軸受に取り付け、その軸受を径方向に磁化された磁石として構成したことを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか一つに記載の歯車伝動機構。
【請求項6】
前記二つの支持軸の双方を、基体部に設けられた磁性体からなる二つの軸受にそれぞれ取り付け、それら二つの軸受を径方向に磁化された磁石として構成したことを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか一つに記載の歯車伝動機構。
【請求項7】
磁性体として構成された、相互に噛み合うかまたは他の歯車を介して協動する二つの歯車、および当該二つの歯車をそれぞれ支持する二つの支持軸と、
前記二つの支持軸間に架設され、一方の支持軸から他方の支持軸に向けて磁化された磁石として構成された架設部材と、
を含む歯車伝動機構であって、
前記架設部材、前記二つの支持軸のうち一方の支持軸、その支持軸に支持される歯車、他方の歯車、およびその歯車を支持する支持軸を、その順またはその逆順に周回する磁路が形成されるようにしたことを特徴とする歯車伝動機構。
【請求項8】
サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを含む遊星歯車機構において、
プラネタリギヤを軸方向に磁化した磁石として構成する一方、サンギヤおよびリングギヤを磁性体として構成することにより、サンギヤおよびプラネタリギヤの相異なる磁極となる部分同士が噛み合うとともに、プラネタリギヤおよびリングギヤの相異なる磁極となる部分同士が噛み合うようにしたことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項9】
サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを含む遊星歯車機構において、
サンギヤおよびリングギヤを軸方向に磁化した磁石として構成する一方、プラネタリギヤを磁性体として構成することにより、サンギヤおよびプラネタリギヤの相異なる磁極となる部分同士が噛み合うとともに、プラネタリギヤおよびリングギヤの相異なる磁極となる部分同士が噛み合うようにしたことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項10】
サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを含む遊星歯車機構において、
磁石または磁性体として構成された、サンギヤ、複数のプラネタリギヤ、当該プラネタリギヤをそれぞれ支持する複数のプラネタリ支持軸、および当該複数のプラネタリ支持軸を支持する従動側キャリアを含み、
磁石を少なくとも一つ含めることにより、前記複数のプラネタリ支持軸のうち一つのプラネタリ支持軸、そのプラネタリ支持軸に支持されるプラネタリギヤ、サンギヤ、他のプラネタリギヤ、そのプラネタリギヤを支持するプラネタリ支持軸、および従動側キャリアを、その順またはその逆順に周回する磁路が形成されるようにしたことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項11】
前記複数のプラネタリ支持軸のうち少なくともいずれか一つを、軸方向に磁化された磁石として構成したことを特徴とする請求項10に記載の遊星歯車機構。
【請求項12】
前記従動側キャリアを、一対または複数対のプラネタリ支持軸のうち一方を支持する部分から他方を支持する部分に向かう方向に磁化された磁石として構成したことを特徴とする請求項10に記載の遊星歯車機構。
【請求項13】
サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを含む遊星歯車機構において、
磁石または磁性体として構成された、サンギヤ、当該サンギヤを支持する駆動軸、プラネタリギヤ、当該プラネタリギヤを支持するプラネタリ支持軸、および当該プラネタリ支持軸を支持する従動側キャリアを含み、
前記駆動軸は従動側キャリアに当接または近接しており、
磁石を少なくとも一つ含めることにより、前記プラネタリ支持軸、プラネタリギヤ、サンギヤ、駆動軸、および従動側キャリアを、その順またはその逆順に周回する磁路が形成されるようにしたことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項14】
サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを含む遊星歯車機構において、
サンギヤ、プラネタリギヤ、リングギヤ、およびサンギヤを支持する駆動軸を磁性体として構成する一方、前記駆動軸とリングギヤとの間に架設された架設部材を駆動軸およびリングギヤのうち一方から他方に向けて磁化された磁石として構成することにより、
前記架設部材、駆動軸、サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤを、その順またはその逆順に周回する磁路が形成されるようにしたことを特徴とする遊星歯車機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−38110(P2006−38110A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219250(P2004−219250)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】