説明

比抵抗制御装置

【課題】半導体製造工程のいわゆる前工程で好適に使用されるものであり、簡便な制御機構によって炭酸ガスの流量を制御可能で、設置スペースが小さく、その製造コストが低廉である比抵抗制御装置を提供する。
【解決手段】薬液流体を供給する薬液流体供給手段10と、超純水を供給する稀釈流体供給手段20と、薬液流体及び超純水を混合させて処理水として排出する処理水調合手段30とを備え、薬液流体供給手段10が、分岐した第一の分岐路42及び第二の分岐路43からなる送液路40と、第一の分岐路42及び第二の分岐路43に配置され、処理水調合手段30に流入する薬液流体の流量を制限するフィルタ51と、処理水調合手段30から排出される処理水の比抵抗値に対応して、第一の分岐路42、または第一の分岐路42及び第二の分岐路43を開閉する一つの開閉弁52とを備える比抵抗制御装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比抵抗制御装置に関する。更に詳しくは、半導体製造工程のシリコンウエハの基板上に集積回路を形成する工程、いわゆる前工程で好適に使用される比抵抗制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において、シリコンウエハを洗浄するための洗浄水が使用されている。この洗浄水は、超純水に、例えば、炭酸ガスを溶解させたものであり、この炭酸ガスによって、超純水に比べて電気抵抗値(比抵抗値)が低下されたものである。このような洗浄水を使用することによって、静電気によるシリコンウエハ上へのゴミの再付着が防止されるとともに、静電破壊が防止されている。
【0003】
上記洗浄水に溶解させる炭酸ガスの流量は、例えば、洗浄水の比抵抗を0.2MΩ・cmにする場合には、超純水の流量1〜10L/minの範囲に対して、数10〜数100mL/minである。即ち、炭酸ガスの流量は、超純水の流量に対して非常に少ない。そのため、オリフィスなどの流路径を細くした配管を用いた場合であっても、炭酸ガスの流量を制御することは困難である。
【0004】
そこで、オリフィスなどを使用する代わりに、炭酸ガスを供給する配管にフィルタを設け、炭酸ガスの流量を制御することが報告されている。このフィルタは、配管を流れる炭酸ガスの流れを規制する障害(抵抗)として機能するため、フィルタの数や径を選択することによって炭酸ガスの流量を調整することができるものである。具体的には、炭酸ガスの流路(配管)を複数に分岐させ、各分岐した流路に、それぞれ流量抵抗の異なるフィルタを設置し、これらのフィルタの上流または下流に、流路を遮断可能なバルブを設け、各バルブの開閉により炭酸ガスの流量を調整する稀釈薬液流体(機能性超純水)の製造装置が報告されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−25078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の製造装置は、炭酸ガスの流量を高精度で調整すること、即ち、比抵抗値1〜5MΩ・cmの範囲の洗浄水を製造することが可能である。そのため、半導体製造工程の後工程(例えば、ダイシング工程など)で使用する洗浄水を製造するための装置として好適に用いられるものである。しかしながら、特許文献1の製造装置は、炭酸ガスの流量を高精度で調整するものであるため、その制御機構が複雑であり、この制御機構を設置するためのスペースを必要とするものであった。
【0007】
ここで、半導体製造工程のシリコンウエハの基板上に集積回路を形成する工程(以下、「前工程」と記す場合がある)で使用する洗浄水(例えば、ウェハに配線を施した後にウェハを洗浄するための水)は、上記後工程で使用される洗浄水のような比抵抗値の範囲を満たすものである必要はなく、例えば、比抵抗値が0.2±0.1MΩ・cm以下の範囲であり、その変動幅も比較的広く(±50%以内)設定されているものである。そのため、特許文献1の製造装置によって、半導体製造工程の前工程で使用する洗浄水を製造する場合、製造される洗浄水が、オーバースペックになるおそれがあった。また、半導体製造工程の前工程では上記洗浄水を製造する装置を洗浄装置に組み込むことが切望されているが、特許文献1の製造装置は複雑な制御機構を有するため大きなスペースが必要であり、洗浄装置に組み込むことが困難であった。
【0008】
そこで、半導体製造工程の前工程で好適に使用するための装置であって、簡便な制御機構によって炭酸ガスの流量を制御(調整)することができ、設置に必要なスペースが小さく、その製造コストが低廉である洗浄水の製造装置(比抵抗制御装置)の開発が切望させている。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、半導体製造工程の前工程で好適に使用されるものであり、簡便な制御機構によって炭酸ガスの流量を制御(調整)することができ、設置に必要なスペースが小さく、その製造コストが低廉である比抵抗制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、半導体製造工程の前工程で使用する洗浄水であれば、高い精度で炭酸ガスの流量を調整する必要性は低いため、より簡便な構成の装置とすることが可能であることに着眼し、分岐路及び開閉弁の数を少なくしたことに加え、二つの分岐路を一つの開閉弁で開閉することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、以下に示す比抵抗制御装置が提供される。
【0012】
[1] 薬液流体を供給する薬液流体供給手段と、超純水を供給する超純水供給手段と、前記薬液流体及び前記超純水を混合させて調合し、その比抵抗値が前記超純水に比して低く制御された処理水として排出する処理水調合手段とを備える比抵抗制御装置であって、前記薬液流体供給手段が、前記薬液流体を貯留する薬液貯留手段と、前記薬液貯留手段に接続した導入路、並びに前記導入路から分岐した第一の分岐路及び第二の分岐路からなる送液路と、前記第一の分岐路及び第二の分岐路に配置され、前記処理水調合手段に流入する前記薬液流体の流量を制限するフィルタと、前記処理水調合手段から排出される前記処理水の比抵抗値に対応して、前記第一の分岐路、または前記第一の分岐路及び前記第二の分岐路を開閉する一つの開閉弁と、を備える比抵抗制御装置。
【0013】
[2] 半導体製造工程の、シリコンウエハの基板上に集積回路を形成する工程で使用される前記処理水を製造する前記[1]に記載の比抵抗制御装置。
【0014】
[3] 比抵抗値が0.2MΩ・cm以下である前記処理水を得るためのものである前記[1]または[2]に記載の比抵抗制御装置。
【0015】
[4] 前記開閉弁が、前記第一の分岐路を開いたとき前記第二の分岐路を閉じ、前記第一の分岐路を閉じたとき前記第二の分岐路が開くように開閉する三方弁である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の比抵抗制御装置。
【0016】
[5] 前記開閉弁が、前記第一の分岐路に配置され、前記第一の分岐路を開閉するものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の比抵抗制御装置。
【0017】
[6] 前記薬液流体が、炭酸ガス、またはアンモニアガスである前記[1]〜[5]のいずれかに記載の比抵抗制御装置。
【0018】
[7] 前記処理水調合手段が、中空糸膜を備え、前記中空糸膜の外周面から前記中空糸膜を透過して前記中空糸膜内に流入した前記薬液流体を、前記中空糸膜の一方の開口から前記中空糸膜内に流入した前記超純水によって、高稀釈倍率で、前記中空糸膜内で混合させて調合し、その比抵抗値が前記超純水に比して低く制御された処理水として排出するものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の比抵抗制御装置。
【0019】
[8] 前記処理水調合手段が、中空糸膜を備え、前記中空糸膜の内周面から前記中空糸膜を透過して前記中空糸膜外に流出した前記薬液流体を、前記中空糸膜の外側を流れる前記超純水によって、高稀釈倍率で混合させて調合し、その比抵抗値が前記超純水に比して低く制御された処理水として送液するものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の比抵抗制御装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の比抵抗制御装置は、半導体製造工程の前工程で好適に使用されるものであって、簡便な制御機構によって炭酸ガスの流量を制御(調整)することができ、設置に必要なスペースが小さく、その製造コストが低廉であるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0022】
[1]比抵抗制御装置:
図1は、本発明の比抵抗制御装置の一実施形態を示す概念図である。図1に示すように、本実施形態の比抵抗制御装置100は、薬液流体を供給する薬液流体供給手段10と、超純水を供給する超純水供給手段20と、薬液流体及び超純水を混合させて調合し、その比抵抗値が超純水に比して低く制御された処理水として排出する処理水調合手段30と備えている。以下、図面を参照しつつその詳細について説明する。
【0023】
[1−1]薬液流体供給手段:
本発明の比抵抗制御装置の薬液流体供給手段は、薬液流体を供給するものであって、薬液流体を貯留する薬液貯留手段と、薬液貯留手段に接続した導入路、並びに導入路から分岐した第一の分岐路及び第二の分岐路からなる送液路と、第一の分岐路及び第二の分岐路に配置され、処理水調合手段に流入する薬液流体の流量を制限するフィルタと、処理水調合手段から排出される処理水の比抵抗値に対応して、第一の分岐路、または第一の分岐路及び第二の分岐路を開閉する一つの開閉弁と、を備えるものである。
【0024】
このように、本発明の比抵抗制御装置の薬液流体供給手段は、特許文献1の製造装置のように、多数(例えば、四つ)の分岐路を備えることなく、少数(二つ)の分岐路を備えるものであるため、装置を小さくすることが可能であるという利点がある。また、特許文献1の製造装置は、多数の分岐路にそれぞれ開閉弁を配置する構造であるため、装置が大型化し、その制御も複雑である。しかし、本発明の比抵抗制御装置は、一つの開閉弁によって二つの分岐路を制御するため、装置がコンパクトになるとともに、一つの開閉弁を制御すれば良いので制御が容易であるという利点がある。
【0025】
具体的には、図1に示す比抵抗制御装置100の薬液流体供給手段10は、薬液流体を貯留する薬液貯留手段11と、薬液貯留手段11に接続した導入路41、導入路41から分岐した同一径の第一の分岐路42及び第二の分岐路43、並びに第一の分岐路42及び第二の分岐路43が合流する合流路44からなる送液路40と、第一の分岐路42に配置され、処理水調合手段30に流入する薬液流体の流量を制限する一つのフィルタ51と、第二の分岐路43に配置され、処理水調合手段30に流入する薬液流体の流量を制限する二つのフィルタ51と、処理水調合手段30から排出される処理水の比抵抗値に対応して、第一の分岐路42を開閉する一つの開閉弁52と、導入路41に配置されたレギュレータ53と、導入路41に配置され、レギュレータ53の下流に位置するバルブ54とを備えている。
【0026】
上記フィルタは、処理水調合手段に流入する薬液流体の流量を制限するものである。ここで、「薬液流体の流量を制限する」とは、フィルタを通過した薬液流体の流量が所定の流量に調整されるように制限することを意味する。別言すると、薬液貯留手段から供給される薬液流体の流れに対して抵抗を与えて、薬液流体を流れ難くすることを意味する。
【0027】
上記フィルタは、上述した条件を満たすものである限りその材質、孔径、厚さなどに特に制限はないが、材質としては、例えば、高分子膜(例えば、ポリプロピレン製、PTFE製)、セラミック膜、金属膜などを好適に用いることができる。これらの中でも、疎水性、低溶出性が良好であるという観点から、膜材質として高分子膜が好ましく、特に、ポリプロピレン製、PTFE製が好ましい。また、フィルタが多孔質体からなる場合には、フィルタの孔径としては、例えば、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜5μmであることが更に好ましく、0.1〜1μmであることが特に好ましい。フィルタの孔径が0.01μm未満であると、ガス(薬液流体)が流れないおそれがある。一方、10μm超であると、ガス(薬液流体)が流れ過ぎるおそれがある。
【0028】
フィルタの厚さは、例えば、10〜200μmであることが好ましく、30〜100μmであることが更に好ましく、50〜80μmであることが特に好ましい。フィルタの厚みが10μm未満であると、ガス(薬液流体)が流れ過ぎるおそれがある。一方、200μm超であると、ガス(薬液流体)が流れないおそれがある。
【0029】
フィルタとしては、例えば、中空糸膜、平膜、チューブ膜、ハニカム構造膜、モノリス膜(マルチルーメン膜)などを挙げることができる。これらの中でも、膜面積を広く取れる点から、中空糸膜が好ましい。
【0030】
なお、第一の分岐路及び第二の分岐路から排出される薬液流体の流量は、同じであっても、それぞれ異なっても良いが、2種類の流量を作り出す点から(特に、開閉弁として後述する三方弁を使用する場合には)、それぞれ異なることが好ましい。ここで、薬液流体の流量の調整は、例えば、材質、孔径、厚さなどが同じフィルタを使用し、図1に示す比抵抗制御装置100のように、その配置する数を異ならせることによって行うことができる。また、薬液流体の流量の別の調整方法としては、材質、孔径、厚さなどが同じフィルタを同じ数だけ使用し、フィルタの使用面積(薬液流体が透過可能な面積)を異ならせること、即ち、異なる内径を有する第一の分岐路及び第二の分岐路を用いることも挙げられる。なお、上記調整方法を組み合わせて行うこともできる。
【0031】
開閉弁は、処理水調合手段から排出される処理水の比抵抗値に対応して、第一の分岐路、または第一の分岐路及び第二の分岐路を開閉するものである限り特にその種類に制限はない。例えば、電磁弁、エアー駆動式自動弁などを挙げることができる。ここで、本明細書において「処理水調合手段から排出される処理水の比抵抗値に対応」とは、処理水調合手段から排出される処理水の比抵抗値を測定し、その測定値が所定の値よりも大きい場合には、比抵抗値を小さくし、測定値が所定の値よりも小さい場合には、比抵抗値を大きくすることを意味する。例えば、図1に示す比抵抗制御装置100の開閉弁52は、処理水調合手段30に接続された比抵抗計55によって測定される比抵抗値が所定の値よりも大きい場合、その信号を受けたときには弁を閉じ、比抵抗値が所定の値よりも小さい場合、その信号を受けたときには弁を開けるものである。
【0032】
図1に示す比抵抗制御装置100のバルブ54は、上記開閉弁52と同様のものを用いることができる。また、手動で開閉可能な手動バルブであってもよい。なお、薬液貯留手段11は、例えば、炭酸ガスなどの加圧ガスを圧入したキャニスター缶などを挙げることができる。
【0033】
なお、薬液流体として、例えば、炭酸ガス、アンモニアガスなどを挙げることができる。これらの中でも、帯電防止の観点から、炭酸ガスが好ましく、更に、ウェハ上の微粒子の再付着防止などの洗浄性が良好であるという観点からはアンモニアガス、アンモニア水が好ましい。
【0034】
[1−2]超純水供給手段:
本発明の比抵抗制御装置の超純水供給手段は、超純水を供給することが可能なものである限り特に制限はないが、例えば、貯水タンクと、この貯水タンクに接続された送液ポンプとを備えたものなどを挙げることができる。図1に示す比抵抗制御装置100の超純水供給手段20は、超純水を貯留する貯水タンク21と、この貯水タンク21に接続された送液ポンプ(図示せず)とを備えたものである。なお、貯水タンク21内を加圧して超純水を送液する場合には、送液ポンプを用いなくてもよい。
【0035】
超純水供給手段から供給される超純水は、その比抵抗値などについて特に制限されるものではないが、例えば、比抵抗値が16MΩ・cm以上のものを好適に用いることができる。
【0036】
[1−3]処理水調合手段:
本発明の比抵抗制御装置の処理水調合手段は、薬液流体及び超純水を混合させて調合し、その比抵抗値が前記超純水に比して低く制御された処理水として排出するものである限り特に制限はないが、膜面積が広く取れる点から、中空糸膜を備えるものであることが好ましい。
【0037】
例えば、本実施形態の比抵抗制御装置100の処理水調合手段30は、図10に示すような、多孔質樹脂からなるキャピラリー状の隔壁を有し、その隔壁によって中心部を貫通するセルが形成された構造を有する中空糸を濾材とし、この中空糸を多数本集合させて全体として円柱状に形成された中空糸膜31と、この中空糸膜31を収納し、薬液流体が流入する薬液流入口(図示せず)、超純水が流入する超純水流入口32a、処理水を排出する処理水排出口32bが形成された中空糸膜収納本体32とを備えるものである。
【0038】
この処理水調合手段30は、中空糸膜31の内周面から中空糸膜31を透過して中空糸膜31外に流出した薬液流体を、中空糸膜31の外側を流れる超純水によって、高稀釈倍率で混合させて調合し、その比抵抗値が前記超純水に比して低く制御された処理水として送液する。
【0039】
なお、上記処理水調合手段は、薬液流体を内側から外側へ透過させるものであるが、外側から内側へ透過させるものであってもよい。即ち、中空糸膜の外周面から中空糸膜を透過して中空糸膜内に流入した薬液流体を、中空糸膜の一方の開口から中空糸膜内に流入した超純水によって、高稀釈倍率で、中空糸膜内で混合させて調合し、その比抵抗値が前記超純水に比して低く制御された処理水として排出するものであってもよい。なお、薬液流体を外側から内側へ透過させるか、または内側から外側へ透過させるかは、超純水の線速の制限によって決定することが好ましい。
【0040】
上記中空糸膜としては、例えば、膜面積が0.5×10−3〜2.5×10−3で、単位膜面積当たりの透水量が25〜100リットル/mhの、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリスルフォンからなるものを挙げることができる。この場合、中空糸の本数、または長さにより膜面積を制御することが好ましい。
【0041】
[1−4]乾燥空気供給手段:
本発明の比抵抗制御装置は、更に、乾燥空気供給手段を備えることができる。この乾燥空気供給手段は、薬液流体の代わりに乾燥空気を処理水調合手段に供給するものであり、処理水の製造前、及び製造停止時に、超純水が薬液流体供給手段に逆流してしまうことを防止するものである。
【0042】
例えば、図1に示す比抵抗制御装置100は、乾燥空気貯留タンク61と、この乾燥空気貯留タンク61に接続したレギュレータ62と、このレギュレータ62に接続したバルブ63とを備え、合流路44に接続した乾燥空気供給手段60を有しているものである。乾燥空気供給手段60は、比抵抗制御装置100が停止したとき、洗浄機から信号を受けて薬液流体(例えば、炭酸ガス)の供給が停止した後、または停止したと同時にバルブ63を開放し、乾燥空気を処理水調合手段30に供給する。バルブ63を開放して乾燥空気を処理水調合手段30に供給すると、超純水の蒸気が、比抵抗制御装置100の停止中に中空糸膜を逆流して薬液流体供給手段側に透過してしまうことを防ぐことができる。
【0043】
乾燥空気とは、上記効果を発揮する気体を意味し、その種類などに特に制限はないが、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを挙げることができる。
【0044】
なお、本発明の比抵抗制御装置は、半導体製造工程の前工程で使用されることが好ましく、比抵抗値が0.2MΩ・cm以下である処理水を得るためのもとして好適に用いることができる。特に、比抵抗値が、0.1または0.2MΩ・cmの処理水(洗浄水)を選択的に製造することができるものとして好適に用いることができる。
【0045】
[2]処理水の製造:
まず、処理水(稀釈薬液流体)を製造する前は、図2に示すように、乾燥空気供給手段60から処理水調合手段30に乾燥空気を供給する。このとき、処理水調合手段30に対して超純水を供給してもよいし、供給しなくてもよい。
【0046】
次に、乾燥空気供給手段60のバルブ63を閉じ、図3、図4に示すように、薬液流体供給手段10から処理水調合手段30に薬液流体を供給する。図3は、開閉弁52が、処理水調合手段30に接続された比抵抗計55により測定される比抵抗値が所定の値よりも小さいとの信号を受けている場合であり、開閉弁52は開放している。即ち、薬液流体は、第一の分岐路42及び第二の分岐路43を流れ、第一の分岐路42及び第二の分岐路43に配置された、それぞれのフィルタ51によって所定の流量に調整された後、処理水調合手段30に供給されている。
【0047】
図4は、開閉弁52が、処理水調合手段30に接続された比抵抗計55により測定される比抵抗値が所定の値よりも大きいとの信号を受けている場合であり、開閉弁52は閉じられている。即ち、薬液流体は、第二の分岐路43を流れ、第二の分岐路43に配置された二つのフィルタ51によって所定の流量に調整された後、処理水調合手段30に供給されている。
【0048】
このようにして供給される薬液流体を、処理水調合手段30によって、超純水供給手段20から供給される超純水と混合させて調合し、薬液流体よりも超低濃度の処理水(稀釈薬液流体)とする。排出される処理水は、半導体製造工程の前工程で、例えば、ウェハを洗浄するため洗浄水として好適に使用される。なお、処理水は、比抵抗値を0.2MΩ・cm以下に調整されることが好ましい。
【0049】
[3]比抵抗制御装置:
図5は、本発明の比抵抗制御装置の別の実施形態を示す概念図である。図5に示す比抵抗制御装置110は、図1に示す比抵抗制御装置100の薬液流体供給手段10の開閉弁52に代えて、開閉弁(第二の三方弁)152を用いたことに特徴がある。
【0050】
本実施形態の比抵抗制御装置110は、処理水を製造する前は、図6に示すように、開閉弁(第一の三方弁)154を介して、乾燥空気供給手段60から処理水調合手段30に乾燥空気を供給する。次に、第一の三方弁154を切り替え、図7、図8に示すように、薬液流体供給手段10から処理水調合手段30に薬液流体を供給する。図7は、第二の三方弁152が、処理水調合手段30に接続された比抵抗計55により測定される比抵抗値が所定の値よりも小さいとの信号を受けている場合である。即ち、薬液流体は、第一の分岐路42を流れ、第一の分岐路42に配置された、一つのフィルタ51によって所定の流量に調整された後、処理水調合手段30に供給されている。
【0051】
図8は、第二の三方弁152が、処理水調合手段30に接続された比抵抗計55により測定される比抵抗値が所定の値よりも大きいとの信号を受けている場合である。即ち、第二の三方弁152は、薬液流体が、第二の分岐路43を流れるように切り替えられている。そのため、薬液流体は、第二の分岐路43に配置された二つのフィルタ51によって所定の流量に調整された後、処理水調合手段30に供給される。
【0052】
このようにして、供給される薬液流体を、処理水調合手段30によって、超純水供給手段20から供給される超純水と混合させて調合し、薬液流体よりも超低濃度の処理水(稀釈薬液流体)とする。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
まず、図1に示す比抵抗制御装置100を用意した。この比抵抗制御装置100の第一の分岐路42には、炭酸ガス(薬液流体)の流量が60NmL/minとなるようにフィルタ51を一つ配置した。また、第二の分岐路43には、炭酸ガス(薬液流体)の流量が30NmL/minとなるようにフィルタ51を二つ配置した。なお、フィルタ51は、材質がポリテトラフルオロエチレン、孔径が0.5μm、厚さが60μmのものを用いた。次に、比抵抗制御装置100において、処理水(稀釈薬液流体)の比抵抗値が0.2MΩ・cmとなるように薬液流体供給手段10のレギュレータ53を調節した。具体的には、処理水(稀釈薬液流体)の比抵抗値を0.2MΩ・cmとするには、超純水(稀釈流体)の流量が10L/minの場合に、炭酸ガスの流量は約90NmL/minであるため、電磁弁(開閉弁)52を開放状態にして、超純水(稀釈流体)の流量を10L/minに調整した。
【0055】
超純水の流量は、後段に配置される洗浄機の運転モードによってランダムに変化してしまう。そのため、超純水の流量が10L/minよりも少なくなった場合、炭酸ガスの流量が90NmL/minのままであると、超純水中の炭酸ガス濃度が上昇し、処理水の比抵抗値が低下してしまう。
【0056】
そこで、例えば、超純水の流量が少なくなり、比抵抗値が0.15MΩ・cmに低下した場合に第一の分岐路42に設置した電磁弁(開閉弁)52をOFFとする(閉じる)。電磁弁(開閉弁)52をOFFとすると、炭酸ガスは第二の分岐路43にのみ流れる。この第二の分岐路43には、フィルタ51を、第一の分岐路42よりも一つ多く設置しているため、炭酸ガスの流量は第一の分岐路42よりも少なっている(30NmL/min)。なお、電磁弁(開閉弁)52をOFFとする制御を行わなければ、炭酸ガスの流量が90NmL/minのままであるが、電磁弁を制御することによって30NmL/minに減少させることができる。
【0057】
図9は、超純水流量と比抵抗との関係を示すグラフである。即ち、一つの電磁弁を設置し、この電磁弁にて制御を行った場合における超純水流量と比抵抗との関係を示すグラフである。
【0058】
具体的には、比抵抗18MΩ・cmの超純水を使用した。超純水の温度は、23℃、水圧は0.15MPaとした。また、超純水の流量が10L/minのとき、比抵抗値が0.2MΩ・cmになるようにフィルタ51、薬液流体供給手段10のレギュレータ53を調整した。なお、炭酸ガスの圧力は0.05MPaであった。
【0059】
その後、比抵抗制御装置100の後段で、バルブを調整し、超純水の流量を10L/minから徐々に低下させて1L/minとした。このような条件において、本実施例では電磁弁による制御を行うため、処理水(稀釈薬液流体)の比抵抗値が0.15MΩ・cm以下になったとき、電磁弁(開閉弁)52を閉じる。電磁弁(開閉弁)52を閉じると、炭酸ガスの流量を減らすことができる。そのため、超純水の流量が低下した場合にも、処理水(稀釈薬液流体)の比抵抗値を0.1MΩ・cm以上に保つことができた。なお、通常、処理水(稀釈薬液流体)の比抵抗値を0.2MΩ・cmに設定した場合、その変動が許容される幅(変動幅)は±0.1MΩ・cmである。
【0060】
なお、炭酸ガスの消費量を考慮した場合、電磁弁による制御を行わない場合と比較して、その消費量を少なくすることができる。
【0061】
(実施例2)
電磁弁(開閉弁)52に代えて、三方弁152を備えた、図2に示す比抵抗制御装置110を使用した。比抵抗計55により測定される比抵抗値が所定の範囲内である場合には、図7に示すように、三方弁152は、電源がOFFの状態であり、第一の分岐路42に炭酸ガスが流れる。その後、超純水の流量が低下し、処理水(稀釈薬液流体)の比抵抗値が低下して設定値以下になった場合、三方弁152は、比抵抗計55から信号を受け、電源が入り、第二の分岐路43に炭酸ガスが流れる。このように超純水の流量の変動に応じ、炭酸ガスの供給量(流量)を2段階で制御することができる。
【0062】
なお、比抵抗制御装置を使用しないとき、即ち、比抵抗制御装置に電源が入っていないときは、図6に示すように、乾燥空気供給手段60から処理水調合手段30の中空糸膜31に乾燥空気が供給され、超純水由来の水蒸気が中空糸膜31を透過を防止し、上記水蒸気の凝縮水の払い出しを行う。また、本実施例において、電磁弁を設けることなく、電磁弁による制御を行わない場合と、一つの電磁弁を設置し、この電磁弁にて制御を行った場合における超純水流量と比抵抗との関係は、実施例1における図9に示す結果と同様であった。
【0063】
(比較例1)
図9は、超純水流量と比抵抗との関係を示すグラフである。即ち、電磁弁を設けることなく、電磁弁による制御を行わない場合における超純水流量と比抵抗との関係を示すグラフである。
【0064】
具体的には、比抵抗18MΩ・cmの超純水をとして使用した。超純水の温度は、23℃、水圧は0.15MPaとした。また、超純水の流量が10L/minのとき、比抵抗値が0.2MΩ・cmになるようにフィルタ51、薬液流体供給手段10のレギュレータ53を調整した。なお、炭酸ガスの圧力は0.05MPaであった。
【0065】
その後、比抵抗制御装置100の後段で、バルブを調整し、超純水の流量を10L/minから徐々に低下させて1L/minとした。このような条件において、本比較例では電磁弁による制御を行わないため、1L/minになったとしても炭酸ガスの流量は変化しない。そのため、処理水(稀釈薬液流体)の比抵抗値は、許容の下限値である0.1MΩ・cmを下回ってしまった。なお、通常、処理水(稀釈薬液流体)の比抵抗値を0.2MΩ・cmに設定した場合、その変動が許容される幅(変動幅)は±0.1MΩ・cmである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の比抵抗制御装置は、半導体製造工程のいわゆる前工程で使用される洗浄水を好適に製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の比抵抗制御装置の一実施形態を示す概念図である。
【図2】本発明の比抵抗制御装置の一実施形態における作動状態の一部を示す概念図である。
【図3】本発明の比抵抗制御装置の一実施形態における作動状態の一部を示す概念図である。
【図4】本発明の比抵抗制御装置の一実施形態における作動状態の一部を示す概念図である。
【図5】本発明の比抵抗制御装置の別の実施形態を示す概念図である。
【図6】本発明の比抵抗制御装置の別の実施形態における作動状態の一部を示す概念図である。
【図7】本発明の比抵抗制御装置の別の実施形態における作動状態の一部を示す概念図である。
【図8】本発明の比抵抗制御装置の別の実施形態における作動状態の一部を示す概念図である。
【図9】超純水流量と比抵抗との関係を示すグラフである。
【図10】図1に示す処理水調合手段の一実施形態の一部を示す概念図である。
【符号の説明】
【0068】
10:薬液流体供給手段、11:薬液貯留手段、20:超純水供給手段、21:貯水タンク、30:処理水調合手段、31:中空糸膜、32a:稀釈流入口、32b:稀釈薬液排出口、32:中空糸膜収納本体、41:導入路、42:第一の分岐路、43:第二の分岐路、44:合流路、51:フィルタ、52:開閉弁、53:レギュレータ、54:バルブ、55:比抵抗計、60:乾燥空気供給手段、61:乾燥空気貯留タンク、62:レギュレータ62、63:バルブ、152:開閉弁(第二の三方弁)、154:開閉弁(第一の三方弁)、100,110:比抵抗制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液流体を供給する薬液流体供給手段と、超純水を供給する超純水供給手段と、前記薬液流体及び前記超純水を混合させて調合し、その比抵抗値が前記超純水に比して低く制御された処理水として排出する処理水調合手段とを備える比抵抗制御装置であって、
前記薬液流体供給手段が、
前記薬液流体を貯留する薬液貯留手段と、
前記薬液貯留手段に接続した導入路、並びに前記導入路から分岐した第一の分岐路及び第二の分岐路からなる送液路と、
前記第一の分岐路及び第二の分岐路に配置され、前記処理水調合手段に流入する前記薬液流体の流量を制限するフィルタと、
前記処理水調合手段から排出される前記処理水の比抵抗値に対応して、前記第一の分岐路、または前記第一の分岐路及び前記第二の分岐路を開閉する一つの開閉弁と、
を備える比抵抗制御装置。
【請求項2】
半導体製造工程の、シリコンウエハの基板上に集積回路を形成する工程で使用される前記処理水を製造する請求項1に記載の比抵抗制御装置。
【請求項3】
比抵抗値が0.2MΩ・cm以下である前記処理水を得るものである請求項1または2に記載の比抵抗制御装置。
【請求項4】
前記開閉弁が、前記第一の分岐路を開いたとき前記第二の分岐路を閉じ、前記第一の分岐路を閉じたとき前記第二の分岐路が開くように開閉する三方弁である請求項1〜3のいずれか一項に記載の比抵抗制御装置。
【請求項5】
前記開閉弁が、前記第一の分岐路に配置され、前記第一の分岐路を開閉するものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の比抵抗制御装置。
【請求項6】
前記薬液流体が、炭酸ガス、またはアンモニアガスである請求項1〜5のいずれか一項に記載の比抵抗制御装置。
【請求項7】
前記処理水調合手段が、中空糸膜を備え、前記中空糸膜の外周面から前記中空糸膜を透過して前記中空糸膜内に流入した前記薬液流体を、前記中空糸膜の一方の開口から前記中空糸膜内に流入した前記超純水によって、高稀釈倍率で、前記中空糸膜内で混合させて調合し、その比抵抗値が前記超純水に比して低く制御された処理水として排出するものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の比抵抗制御装置。
【請求項8】
前記処理水調合手段が、中空糸膜を備え、前記中空糸膜の内周面から前記中空糸膜を透過して前記中空糸膜外に流出した前記薬液流体を、前記中空糸膜の外側を流れる前記超純水によって、高稀釈倍率で混合させて調合し、その比抵抗値が前記超純水に比して低く制御された処理水として送液するものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の比抵抗制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−211096(P2008−211096A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48102(P2007−48102)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(593157781)エヌジーケイ・フィルテック株式会社 (5)
【Fターム(参考)】