説明

気相成長装置

【課題】冷媒の流通により気相成長装置本体の少なくとも一部(サセプタの対面、ヒータへの通電を制御する制御機器等)が冷却される構成を備えた気相成長装置であって、外気から冷媒中への雑菌や藻等の異物の混入を防止することができる気相成長装置を提供する。
【解決手段】冷媒の循環流路が密閉系であり、外部に設けられた冷却手段との熱交換により該冷媒を冷却できる構成とする。さらに好ましくは、該冷媒をイオン交換水とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置本体の冷却に用いられる冷媒中に雑菌や藻等の異物が混入することを防止できる気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶膜を基板上に成長する方法には、化学的気相成長(CVD)法等があり、基板加熱を伴うCVD法には熱CVD法等が知られている。
近年、高温条件(例えば1000℃以上)で基板を加熱して行う気相成長工程が増加しており、青色若しくは紫外LED又は青色若しくは紫外レーザーダイオードを製作するためのIII族窒化物半導体の気相成長工程もその一つである。例えば、III族窒化物半導体結晶膜の成長は、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、又はトリメチルアルミニウム等の有機金属ガスをIII族金属源として、アンモニアを窒素源として用い、1000℃程度の高温に加熱されたシリコン(Si)、サファイア(Al)又は窒化ガリウム(GaN)等の基板上に結晶膜を気相成長する熱CVD法により行われることがある。
【0003】
一般に、このような基板はサセプタにより保持されるが、サセプタにより直接保持されてもよく、基板ホルダーを介してサセプタにより保持されてもよい。気相成長装置には、1バッチあたり1枚の基板上に結晶膜を成長させる気相成長装置があるが、生産性を向上するために1バッチあたり複数枚の基板上に結晶膜を成長させる気相成長装置も知られている。1バッチあたり複数枚の基板上に結晶膜を成長させる気相成長装置においては、基板が基板ホルダーを介してサセプタにより保持する方式が用いられることが多い。また、気相成長装置には、基板の結晶成長面を上向きに配置するもの(フェイスアップ型)、基板の結晶成長面を下向きに配置するもの(フェイスダウン型)がある。
【0004】
このような基板はヒータにより加熱され、結晶膜の成長に必要な温度に加熱される。基板を保持するサセプタ及びサセプタの対面は反応炉を形成し、反応炉に原料ガスが流通されて気相成長反応が進行する。通常、反応炉は反応容器の中に収められ、外気と遮断して密閉されている。しかし、前述のように基板を高温に加熱して行われる気相成長工程において、反応容器やサセプタの対面等の気相成長装置の一部もヒータからの熱伝達により加熱されるため、良好な結晶膜の成長と安定した気相成長装置の運転ができないことがある。例えば、サセプタの対面が加熱されるとそこに反応生成物が生じ、このような反応生成物が蓄積すると基板上での気相成長反応に悪影響を及ぼすことがある。また、反応容器のシール部分、通電のためにヒータに接続された電流導入端子、ヒータへの通電を制御する制御機器、反応容器内部を観察するために設けられた観察窓、並びにサセプタを回転させるための回転駆動器及び回転駆動軸等、気相成長装置には耐熱性が少ない部分が存在する。
【0005】
そのため、特許文献1のサセプタの対面のように、このような部分は冷媒の流通により冷却されることがあり、循環流通された水が冷媒として用いられることが多い。このような場合には、外気との接触により冷却水の温度を低下させる冷却装置(一般にクーリングタワーと呼ばれることが多い)が循環流路の途中に設けられることが多い。また、冷媒の流路の一部は、冷却対象に貫通又は近接するように設けられる場合が多く、例えば、一部が反応容器壁の内部に設けられた流路や、一部がサセプタの対面に近接して設けられた流路に冷媒が流通される。冷媒の流路はこのような部分において、冷却効率を高めるために狭い又は複雑な形状となる場合が多い。例えば、特許文献2の成膜装置のように、観察窓に、二重の透明ガラスとこの間に冷却水を循環する手段とが備えられた成膜装置が知られている。
【特許文献1】特開2010−232624号公報
【特許文献2】特開平8−296045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、気相成長装置本体の少なくとも一部を冷却するための冷媒の循環流路に設けられるクーリングタワー等の従来の冷却装置は、外気との接触により冷媒を冷却する構造であるので、冷媒中に外気からの雑菌や藻等の異物が混入することが多い。冷却対象に循環流路が貫通又は近接する箇所において、流路は狭い又は複雑な形状になることが多く、例えばサセプタの対面及びヒータの電流導入端子の周辺は、特に流路が狭い又は複雑な形状になることが多い。このような個所では雑菌や藻等の異物の混入による閉塞が生じやすく、閉塞が生じた場合には復旧作業が煩雑になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、このような課題を解決すべく鋭意検討した結果、冷媒の流通により気相成長装置本体の少なくとも一部が冷却される構成を備えた気相成長装置において、冷媒の循環流路を密閉系とし、外部に設けられた冷却手段との熱交換により該冷媒を冷却できる構成とすることにより、前述の課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、冷媒の流通により気相成長装置本体の少なくとも一部が冷却される構成を備えた気相成長装置であって、冷媒の循環流路が密閉系であり、外部に設けられた冷却手段との熱交換により該冷媒を冷却できる構成を備えたことを特徴とする気相成長装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の気相成長装置は、気相成長装置本体の少なくとも一部を冷却するために流通される冷媒の循環流路が密閉系であるので、外気等から雑菌や藻等の異物が冷媒中に混入することを防止でき、冷却対象に循環流路が貫通又は近接する箇所等、流路が狭い又は複雑な形状となる部分における閉塞も抑制できる。また、冷媒としてイオン交換水を用いることにより、一般的に水道水に含まれるカルキ、次亜塩素酸カルシウム等の成分が析出することも防止できるので、流路の閉塞がさらに抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、冷媒の流通により気相成長装置本体の少なくとも一部を冷却する構成を備えた気相成長装置に適用される。以下、本発明の気相成長装置を、図1〜図5に基づいて詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。尚、図1は、本発明の気相成長装置の一例を示す構成図であり、図2は、図1に示す気相成長装置本体の垂直断面構成図であり、図3は、図2のA−A水平断面構成図、図4は、図2のB−B水平断面構成図、図5は、図2のC−C水平断面構成図である。
【0011】
本発明の気相成長装置は、図2に示すような、冷媒の流通により気相成長装置本体の少なくとも一部が冷却される構成を備えた気相成長装置であって、図1に示すように、冷媒の循環流路2が密閉系であり、外部に設けられた冷却手段4との熱交換により該冷媒を冷却できる構成を備えた気相成長装置である。
本発明においては、気相成長装置本体1に、図1に示すような冷却手段4を結合して気相成長装置とされる。冷却手段4としては、例えば図1(1)に示すように、循環流路2が冷却装置5の内部を直接通る構成のもの、あるいは図1(2)に示すように、循環流路2を流通する冷媒が冷却装置5を流通する水と熱交換器3により熱交換できる構成のものを用いることができる。
【0012】
図2に示すような気相成長装置本体においては、III族窒化物半導体結晶膜の成長を行なう場合、基板を1000℃以上の温度に加熱する必要がある。基板を1000℃以上の温度に加熱するとサセプタ(基板)の対面13を冷却しない場合は、サセプタの対面13上にも反応生成物が生じ、このような反応生成物が蓄積すると基板上での気相成長反応に悪影響を及ぼす虞がある。また、ヒータへの通電のために接続された電流導入端子14を冷却しない場合は、電流導入端子14を介して熱が外部に拡散し、外部の器具や装置に悪影響を及ぼす虞がある。本発明の冷却手段4は、これらの虞を防止するために設置されるものである。尚、本発明は、図2に示すような、反応容器の中央部から原料ガスを供給し、周辺部から外部に排出する気相成長装置に限定されることなく、例えば反応容器の一端から原料ガスを供給し、反応後のガスを他の一端から外部に排出する横型の気相成長装置に適用することもできる。
【0013】
本発明において、図1の循環流路2に流通する冷媒は、図2の気相成長装置本体の内部に導入され、基板上に気相成長が行われる気相成長装置本体1の少なくとも一部(サセプタの対面11、電流導入端子14等)に貫通又は近接して流通するので、循環流路2の中を循環流通する冷媒により少なくともこれらの部分が冷却される。循環流路2は密閉系であり、外気から遮断されている。冷媒は、循環流路2の途中に設けられた循環ポンプ(図示しない)等により循環されるが、循環手段は循環ポンプに限定されることはない。気相成長装置本体1の少なくとも一部の冷却に用いられた冷媒は、図1(1)に示すように冷却手段4により冷却され、あるいは図1(2)に示すように循環流路2の途中に設けられた熱交換器3を通り、熱交換器3において冷却手段4により冷却され、循環により気相成長装置本体1の少なくとも一部の冷却に再度用いられる。尚、冷媒導入口26及び冷媒取出口27を用いて、循環流路2を循環する冷媒の入替を行うこともできる。
【0014】
冷却手段4としては、氷冷系、空冷系、水冷系又は水循環系等の冷却手段が挙げられ、水循環系であることが好ましいが、水循環系に限定されることはない。図1(1)において、冷却手段4に含まれる冷却装置5は、冷却装置5の内部を通る循環流路2の配管を別系統の冷媒を用いて外部から冷却することにより、循環流路2の内部を循環する冷媒を冷却する装置であることが好ましいが、このような装置に限定されることはない。図1(2)において、冷却手段4は、水を循環するための配管、及び循環されている水を冷却するための冷却装置5から構成されている。熱交換器3は、冷却手段4に用いられる水が流れる流路、及び循環流路2の中を循環する冷媒が流れる流路を有し、これらの2つの流路は交わることなく近接しており、循環流路2を循環する冷媒は冷却手段4により冷却される。図1(2)において用いられる冷却装置5は、水を外気と接触させることにより冷却する装置(いわゆるクーリングタワー)であることが好ましく、水をスプレーノズルで水滴状にする、又は表面積の大きな充填材を用いる等により、水と外気との接触効率を高めた構造を有することが好ましい。尚、水導入口28及び水取出口29を用いて、冷却手段4に用いられる水の入替や補充を行うこともできる。
【0015】
循環流路2を循環する冷媒は水であることが好ましく、イオン交換水であることがより好ましいが、それらに限定されることはない。冷却手段4は、図1(2)のように水循環系であることが好ましく、このような冷却手段4に用いられる水は、殺菌剤または防腐剤を含有することが好ましい。
【0016】
次に、図2〜4を用いて本発明の気相成長装置本体の一例を詳細に説明するが、本発明を限定するものではない。図2に示すように、本発明の気相成長装置本体には、結晶膜を気相成長させるための基板7、基板7を保持するリング状の基板ホルダー8、基板10を保持する円盤状のサセプタ10、ベアリング17によりサセプタ10を回転自在に保持するリング状の架台22が備えられており、これらの部材は外形が円盤状の反応容器6の中に収められている。
【0017】
図2において、基板7は成長面を下向きにした状態で基板ホルダー8により保持されているが、上向きに保持される構造でもよく、成長面の向きは特に限定されない。基板ホルダー8は、直径が2インチ、3インチ、4インチ又は6インチの基板を1枚保持できるが、特にこれらの大きさの基板に限定されない。回転自在に保持されたサセプタ10を回転駆動器19から伝達される回転駆動力により回転させることができる。サセプタ10を回転させる場合には、回転駆動器19からの回転駆動力は、磁性流体シール等の手段により反応容器6の密封性を損なわないように回転自在にシールされた回転駆動軸20を介して、回転駆動軸20のサセプタ側先端に固定された回転板21に伝達される。サセプタ10の周縁部及び回転板21の周縁部にはそれぞれ歯車が設けられており、それらが互いに噛み合わさることにより回転駆動器19からの回転駆動力はサセプタ10に伝達されて、サセプタ10は回転する。このようにしてサセプタを回転させることにより均一な膜質及び膜厚の結晶膜を得ることができる。
【0018】
サセプタ10は、サセプタの対面11とともに反応炉12を形成し、反応炉12は、反応容器6に収められ密封され、反応炉12には原料ガス導入部15が設けられている。気相成長反応は、ヒータ13により基板7を加熱しながら、原料ガス導入部15から原料ガスを供給することにより行われ、基板7の成長面には結晶膜が形成される。気相成長反応に用いられた原料ガスは、そのまま反応ガスとして反応ガス排出部16から排出される。例えば、図2において、反応炉12の中心部に設けられた原料ガス導入部7からの原料ガスは、原料ガス導入部7から放射状に吹き出し、基板7の成長面に対して水平に供給されるが、このような形態に限定されることはない。基板ホルダー8には、ヒータ13からの熱を基板7に均一に熱を伝達するために均熱板9を設けてもよい。ヒータ13は、ヒータ13に接続され、周囲の環境と電気的に絶縁された電流導入端子14から導入される電流により発熱する。気相成長反応中、サセプタ3を常時回転させることが好ましく、サセプタ3の回転方向及び回転速度は、サセプタ回転駆動器13の回転方向及び回転速度を変化させることにより、任意に設定することができる。各基板間において均一な膜厚及び膜質を得るためには、各基板ホルダー2を反応炉の中心に対して同一円周上に配置して、原料ガス導入部15からの距離を等しくすることが好ましいが、特に限定されない。
【0019】
図2のように、サセプタの対面11、反応容器のシール部(図示しない)、観察窓(図示しない)、電流導入端子14、回転駆動器19及び回転駆動軸20等の冷却を必要とする部分は、循環流路2の一部を反応容器6の上部及び下部に貫通させて設けることにより冷却される。反応容器6の上部及び下部を貫通して設けられた循環流路の一部23には、反応炉の中心から周縁に向けて冷媒が流れるように冷媒の出入口が設けられているが、このような構造に限定されることはない。また、反応容器の各所で冷却が均一に行われるために、流路の途中に仕切板を設けて冷媒の流れを均一にすることもできる。
【0020】
循環流路2及び熱交換器3を構成する配管の材質には、樹脂、金属又は合金が挙げられるが、これらの材質に限定されることはない。循環流路2は密閉系であるので、循環流路2を構成する配管の接続部は、樹脂、金属又は合金等のシール材により密封されているが、これらの材質に限定されることはない。反応容器6は、内部に反応性又は腐食性の原料ガスが流通され、反応炉を外気から遮断しなくてはならず、気相成長反応を制御するためのパラメータとして反応炉の圧力を減圧、常圧または加圧に変化させる場合があるので、その材質は耐食性及び強度を備えた金属又は合金であることが好ましいが、これらの材質に限定されることはない。基板ホルダー8、サセプタ10、サセプタの対面11及び回転板21は、カーボン系材料又はカーボン系材料をセラミック材料でコーティングしたものが好ましいが、特に限定されない。回転駆動軸20は、金属、合金、金属酸化物、カーボン系材料、セラミック系材料、カーボン系材料をセラミック材料でコーティングしたもの、又はこれらの組み合わせが好ましいが、特に限定されない。ヒータ13はカーボンヒータ又はセラミックヒータが好ましいが、これらのヒータに限定されることはない。電流導入端子14は、周囲の環境と電気的に絶縁するために樹脂で被覆された金属又は合金が好ましいが、限定されることはない。ベアリング17は、セラミック材料であることが好ましいが、特に限定されない。
【0021】
ここで、樹脂の例には、塩化ビニル、アクリル又はフッ素ゴムがあるが、特に限定されない。金属の例には、アルミニウム又は銅があるが、特に限定されない。合金の例には、ステンレス又はインコネルがあるが、特に限定されない。カーボン系材料の例には、カーボン、パイオロリティックグラファイト(PG)、グラッシカーボン(GC)等があるが、特に限定されない。セラミックス系材料の例には、アルミナ、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)等があるが、特に限定されない。
【0022】
循環流路2及び熱交換器3を構成する配管の材質はステンレスが特に好ましい。循環流路2及び熱交換器3を構成する配管の接続部に用いられるシール材は、フッ素ゴムが特に好ましい。反応容器6はステンレス、基板ホルダー8、サセプタ10、サセプタの対面11及び回転板21は、SiCコートカーボン、ヒータ13はカーボンヒータ、電流導入端子14はフッ素樹脂で被覆された銅、ベアリング17はアルミナ、回転駆動軸20はステンレスであることが特に好ましい。
【0023】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
(気相成長装置の製作)
図1(2)及び図2〜5に示すような気相成長装置を製作した。サセプタ3(SiCコートカーボン製、直径720mm、厚さ11mm、6インチの基板を6枚保持可能)を製作し、直径6インチのサファイア基板を1枚保持可能である基板ホルダー2(SiCコートカーボン製)6個を上記のサセプタ3により保持した。ヒータ13はカーボンヒータであり、フッ素樹脂で被覆された銅製の電流導入端子14からの通電により発熱するが、電流導入端子14は、ステンレス製反応容器6及び循環流路の一部23からは絶縁されている。回転駆動軸20はステンレス製であり、磁性流体シールにより反応容器6の密閉性を損なわずに、反応容器6に対して回転自在にシールされている。循環流路2及び熱交換器3を構成する配管はステンレス製とし、接続部に用いられるシール材にはフッ素ゴムを用いた。
【0025】
(気相成長実験)
このような気相成長装置を用いて、基板7の表面に窒化ガリウム(GaN)を成長させた。まず、イオン交換水を冷媒として用い、これを38.5L/minの流量で循環流路2に循環させて、反応容器の上部(19L/min)及び下部(19.5L/min)に分配した。次に、冷却手段4に水道水(260L/min)を循環させ、クーリングタワー7を稼働させることにより、冷却手段4の運転を開始した。なお、すべての成長が終了するまで、冷媒の循環及び冷却手段の運転を継続し、反応容器内を大気圧に保った。
【0026】
次に、原料ガス導入部15から水素を流しながらヒータ13の温度を1050℃まで昇温させ、基板のクリーニングを行った。続いて、ヒータ13の温度を510℃まで下げて、原料ガスとしてトリメチルガリウム(TMG)とアンモニア、キャリアガスとして水素を用いて、基板上にGaNからなる膜厚20μmのバッファー層の成長を行い、バッファー層成長後に、TMGのみ供給を停止し、ヒータ13の温度を1050℃まで上昇させた。その後、原料ガス導入部から、TMGとアンモニアの他に、キャリアガスとして水素と窒素を供給して、アンドープGaNの成長を1時間行った。アンドープGaN成長終了直前、循環流路2に循環されている冷媒3の温度は、反応容器上流で28℃であり、反応容器下流で38℃であった。アンドープGaNの成長が終了した後、基板を室温付近まで放冷させ、反応容器から取り出した。以上のようなGaNの気相成長を10回繰り返したが、すべての成長において気相成長装置は正常に作動した。
【0027】
(循環流路内部の観察)
以上のようなGaNの気相成長(10回)が行われた後、循環流路2の内部を目視で点検したところ、藻等の異物は確認されなかった。
【0028】
[比較例1]
(気相成長装置の製作)
気相成長装置本体の冷却に用いられる冷媒を、循環流路の途中に設けたクーリングタワーにおいて外気と接触させることにより冷却する構成とし、熱交換器及び冷却手段を設けなかった他は、実施例と同様の気相成長装置を製作した。
【0029】
(気相成長実験)
水道水を冷媒として用い、実施例と同様の気相成長実験を行った。アンドープGaN成長終了直前、循環流路に循環されている冷媒の温度は、反応容器上流で28℃であり、反応容器下流で38℃であった。アンドープGaNの成長が終了した後、基板を室温付近まで放冷させ、反応容器から取り出した。以上のようなGaNの気相成長を10回繰り返したが、すべての成長において気相成長装置は正常に作動した。
【0030】
(循環流路内部の観察)
以上のようなGaNの気相成長(10回)が行われた後、循環流路2の内部を目視で点検したところ、若干の汚れが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、熱CVD法等のための気相成長装置として好適であり、特に、青色又は紫外の発光ダイオード又はレーザーダイオード等の製造に用いられるIII族窒化物半導体の気相成長装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の気相成長装置の一例を示す構成図である。
【図2】図1に示す気相成長装置本体の垂直断面構成図である。
【図3】図2のA−A水平断面構成図である。
【図4】図2のB−B水平断面構成図である。
【図5】図2のC−C水平断面構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 気相成長装置本体
2 循環流路
3 熱交換器
4 冷却手段
5 冷却装置
6 反応容器
7 基板
8 基板ホルダー
9 均熱板
10 サセプタ
11 サセプタの対面
12 反応炉
13 ヒータ
14 電流導入端子
15 原料ガス導入部
16 反応ガス排出部
17 ベアリング
18 ベアリング溝
19 回転駆動器
20 回転駆動軸
21 回転板
22 架台
23 循環流路の一部
24 冷媒の流れ
25 水の流れ
26 冷媒導入口
27 冷媒取出口
28 水導入口
29 水取出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の流通により気相成長装置本体の少なくとも一部が冷却される構成を備えた気相成長装置であって、冷媒の循環流路が密閉系であり、外部に設けられた冷却手段との熱交換により該冷媒を冷却できる構成を備えたことを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
冷媒の流通により冷却される部分にサセプタの対面が含まれている請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
冷媒の流通により冷却される部分にヒータの電流導入端子が含まれている請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項4】
冷媒がイオン交換水である請求項1に記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−45941(P2013−45941A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183586(P2011−183586)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000229601)日本パイオニクス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】