水中油型エマルション及び機能性送達のためのその使用
本発明は、水中油型エマルションであって、直径が5nmから数百ミクロンの範囲の油滴が、親油性添加剤の存在によって、0.5から200nmの範囲の直径の大きさを有する親水性ドメインのナノサイズの自己集合構造化を示し、該水中油型エマルションが、組成物全体を基準として、0.00001%と79%の間を含む範囲で存在する有効成分を含有する水中油型エマルションに関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、新たな又は改良された機能性を送達するために、栄養素、薬物、芳香又は化学物質等の有効成分を溶解又は分散させるために使用される分散した油滴が自己集合構造を示す水中油型エマルションに関する。
【0002】
[発明の背景]
産業におけるエマルション
エマルションは、食品、化粧品、医薬品又は農薬等の多くの工業製品における共通のコロイド系である。それらは、消費者に官能分子を送達するため、又は一定の質感若しくは喜びを与えるためにしばしば使用される。水中油型エマルションは、水の連続相中に分散した油滴からできている。その分散した油滴はその油滴の回りに層を形成する親水性の界面活性分子によって安定化される。油相を連続水相中に分散させるためには様々な大きさの範囲の油滴(約100nmから数百ミクロンまでの半径を有する)を生み出すことを可能にするホモジナイザーが使用される。均質化ステップの間の油滴の周りの層の形成は、油滴を、融合、凝集又は凝析に対して動的に安定化させる。水中油型系のエマルション製品中に使用される界面活性物質は、低分子量の親水性界面活性剤、例えばポリソルベート、リゾレシチンなど、又はポリマー類、例えばタンパク質、例えばゼラチン若しくはミルク、大豆由来のタンパク質、又は多糖類、例えばアラビアゴム若しくはキサンタン、又は粒子材料、例えばシリカ粒子、又はそれらの混合物のいずれかであり得る。
【0003】
水中油型エマルションに基づく製品は、食品、化粧品、医薬品又は農薬に広く普及している。顕著な水中油型エマルション系食品は、例えば、ミルク、マヨネーズ、サラダ用ドレッシング類、又はソース類である。化粧品工業又は医薬工業で使用される顕著な水中油型エマルションに基づく製品は、ローション類、クリーム類、乳液類、ピル類、錠剤類などである。かかる製品中の油滴は、通常、例えばトリグリセリド類、ジグリセリド類、ワックス類、脂肪酸エステル類、脂肪酸類、アルコール類、鉱物油類、炭化水素類、又はその他の油性物質でできている。
【0004】
エマルションは、出発材料、中間体又は最終生成物として、或いは最終生成物への添加剤としてのいずれかで使用される。
【0005】
有効成分を送達するためのエマルション
工業におけるエマルションの使用の1つは、活性化合物、例えばフレーバー類、ビタミン類、抗酸化物質類、栄養補助食品類(neutraceuticals)、植生化学物質類、薬物類、化学物質類等を送達することである。活性成分の投与には、有効量の活性成分を所望の作用場所に持っていくための適切なビヒクルの使用が必要である。水中油型エマルションは、それらが親油性の活性化合物の油中への増大した溶解性の利点を利用するので共通して使用される送達系である。欧州特許第1116515号明細書では、フレーバー性能を制御するためのエマルション使用の例として、製品をさらに加工する間に導入した活性成分の安定性を増すために、フレーバー成分など疎水性活性成分を、母体中に押出機によって水中油型エマルションの形で混合している。国際公開第00/59475号パンフレットでは、医薬品の水中油型エマルションの例として、イオン化疎水性治療薬の改良された送達のための組成物及び方法が記載されており、それはイオン化剤、界面活性剤及びトリグリセリドと共に混合して水中油型エマルションを形成している。国際公開第99/63841号パンフレットは、食品分野におけるエマルションの使用例として、エマルション又はマイクロエマルションの形成が原因で水相中の高められた溶解性及び分散性を有するフィトステロールを含む組成物を記載している。
【0006】
フィトステロール類、リコペン又は水不溶性薬物などの有効成分のo/wエマルション又は分散体の油滴中への溶解は、分散性、即ち、有効成分の製品中への均一な混和を促進することができるばかりでなく、それらの生物学的送達度又はバイオアベイラビリティーを増すために使用することもできる。臨床実験及び動物実験により、薬物及び栄養素等の有効成分の最大の効果及びバイオアベイラビリティーは、一般に、有効成分が、可溶化又は溶解されて例えばミセルとなり、大きな結晶の形では存在しないときに得られることが示された[Ostlund,E.0.、C.A.Spilbourgら(1999)、「Sitostanol adminstered in lecithin micelles potently reduces cholesterol absorption in humans」、American Journal of Clinical Nutrition 70:826〜31;M.Kinoshita、K.Babaら、(2002)、「Improvement of solubility and oral bioavailability of a poorly water−soluble drug,TAS−301,by its melt adsorption on a porous calcium silicate」、Journal of Pharmaceutical Sciences、91(2):362〜370]。小さな又は微細化された結晶は、それらが消化される間により速く溶解するために大きなものより一層のバイオアベイラビリティーがある可能性がある。
【0007】
水中油型エマルション中の油滴が、極端に小さく、例えば、直径がほぼ数ナノメートルから約200nm程度の場合、そのエマルションは、水中油型マイクロエマルションと呼ばれる[Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編);「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York、(1999)]。これらのエマルションは、透明で、熱力学的に安定であり、それ故、当業者にとっては、熱力学的に不安定であり一般に濁っている通常のエマルションとは異なる。
【0008】
[発明の説明]
最新技術では、油滴に溶解している親油性分子のビヒクルとして、水中油型エマルションの分散油滴が用いられている。ビヒクル系としてのこの種のエマルションの欠点は、結晶性分子(即ち結晶の形態で存在する)、親水性分子又は両親媒性分子を、単独又は親油性の化合物の組合せでは、油相中の分子の溶解性の欠如のために、受け入れられないことである。結晶性又は両親媒性又はヒドロトロープ化合物の送達は、それらが親水性乳化剤の安定化機能を阻害する傾向があり、その結果、それらはエマルションを不安定にする可能性があるために特に困難である。
【0009】
本発明は、親油性、両親媒性及び親水性分子のいずれをも蓄積することができる通常の油滴の内部の新規なナノサイズの自己集合構造の発見に基づいている。その構造は、親油性の添加剤(LPAで表す)の油滴中への添加によって形成される。かかる構造は、親油性成分ばかりでなく同時に親水性成分及び/又は両親媒性成分又はヒドロトロープ性成分又は結晶性成分もまた可溶化することができる。このナノサイズの自己集合油滴中の構造は主としてナノサイズであり熱力学的に安定な親水性ドメイン類即ち水滴、水ロッド又は水チャネルからなる。エマルション油滴内部に自発的に(熱力学的に誘導された)形成されたナノサイズのドメイン類は、LPAによって安定化される。LPA分子の親水性部分は、親水性ドメイン構造の一部である。その親水性ドメイン類は、直径が0.5〜200nmの大きさのものであり得る。好ましくはその親水性ドメインは直径が0.5〜150nmの範囲である。さらにより好ましくは、その親水性ドメインは、直径が0.5〜100nmの範囲である。そして最も好ましくは、その親水性ドメインは、0.5〜50nmの範囲である。
【0010】
本明細書では、「親水性ドメイン」は、水ドメイン類及びLPA分子の親水性頭部領域からなる。親水性ドメイン類の大きさは極端に小さいために、それらはまた、様々な異なる有効成分の可溶化に対して好適な場所となる大きな表面積も提供する。
【0011】
本発明は、油滴中のLPA鎖領域内に局在すると思われる親油性、及び/又は結晶性、及び/又は両親媒性有効成分の送達を対象とする。さらに、本発明は、油滴内の親水性ドメイン類の頭部領域中又は油滴内の親水性ドメイン中又は油滴の外側の水相中に局在する親水性又は両親媒性の有効成分の送達を対象とする。油滴内の大きな表面積の存在によって、水中油型エマルションの油滴内に表面積又は親水性ドメイン類がなければ生み出すことが不可能な新規な又は改良された機能性を生み出すことが可能となる。例えば、油滴中のこれらの自己集合構造中への有効成分の可溶化又は会合は、異なる機能性を引き起こす。本発明は、さらに、以下の用途のための上記水中油型エマルションに関する:
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を存在させることによる、水不溶性、油不溶性有効成分、結晶性有効成分の溶解性及び/又は分散性の向上。該有効成分は、通常の水中油型エマルション中に溶解された場合、使用温度又は保存温度で晶出する。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、水中油型エマルション中の有効成分の安定性、化学劣化又は酸化に対する保護の向上。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、消化中の有効成分のバイオアベイラビリティー、生物学的送達度、バイオディスポニビリティー(biodisponibility)、又は吸収性の向上。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、健康に作用する機能性を創造又は改良するための消費又は消化中の有効成分の放出、バースト放出、又は持続放出の制御。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、健康に作用する機能性を追加又は改良するための有効成分の効率性、有効成分の持続的効率、又は有効成分のバースト放出の増大。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、新たな、又は改良された知覚特性を生み出すための芳香又はフレーバーの放出、芳香又はフレーバーのバースト放出、或いは芳香又はフレーバーの持続放出の制御。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、異なる味覚、異なる質感、口当り、口を覆う感覚、又はクリーム感覚の創造。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、有効成分の味マスキング又は異味マスキング。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、構造物などの有効成分のフレーバーマスキング又はオフフレーバーマスキング。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、有効成分の味又はフレーバーの調節。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、色調節又はメイラード反応を介する褐変の増大。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、加熱又はマイクロ波作用中の色調節、褐変の増大、化学反応収率又はメイラード反応収率の向上。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、化学反応収率の制御又はメイラード反応収率の制御。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、加熱又はマイクロ波作用中の化学反応収率の制御又はメイラード反応収率の制御。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、水中油型エマルション中の有効成分を富化するための任意の種類の原料又は製品からの有効成分の抽出。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、健康又は感覚に有利なように有効成分の放出を制御するための消費、咀嚼又は消化の間の口内での原料又は製品からの有効成分の抽出。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、上記の機能性の組合せに基づく任意の種類の機能性。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、加熱中、冷却中、加工中、咀嚼中、消費中又は消化中に、或いは口中で水中油型エマルションの内部構造を変化させるか又は水中油型エマルション全体の構造を変化させることによって得られる上記の任意の種類の機能性又は機能性の組合せ。
【0012】
本発明の水中油型エマルション中の有効成分の存在は、製品に新たな、又は改良された機能性をもたらす。有効成分の例は、フレーバー類、フレーバー前駆物質類、芳香類、芳香前駆物質類、旨味向上剤類、塩類、糖類、アミノ酸類、多糖類、酵素類、ペプチド類、タンパク質類又は炭水化物類、栄養補助食品類(foodsupplements)、食品添加剤類、ホルモン類、細菌類、植物エキス類、薬剤類、薬物類、栄養素類、農薬用途又は化粧品用途向けの化学物質類、カロテノイド類、ビタミン類、抗酸化物類又はルテイン、ルテインエステル類を含む群から選択される栄養補給食品類、β−カロテン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコトリエノール、リコペン、Co−Q10、亜麻油、魚油、オメガ−3油類、オメガ−6油類、DHA、EPA、アラキドン酸富化油類、LCPUFA油類、メントール、ハッカ油、リポ酸、ビタミン類、ポリフェノール類及びそれらのグリコシド類、エステル及び/又は硫酸抱合体類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバノン類及びそれらのグリコシド類、例えばヘスペリジンなど、カテキンモノマー類及びそれらのガレートエステル類例えばエピガロカテキンガレートなどを含むフラバン3−オール類及びそれらのプロシアニジンオリゴマー類、ビタミンC、ビタミンCパルミテート、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD、α−及び/又はγ−ポリ不飽和脂肪酸類、フィトステロール類、エステル化したフィトステロール類、遊離のエステル化されていないフィトステロール類、ゼアキサンチン、カフェイン、並びにそれらの組合せである。
【0013】
有効成分は、油、LPAであり、水溶性、水不溶性、油溶性又は油不溶性であり得る。
【0014】
有効成分は、新たな又は改良された機能性を製品に送達するためにエマルションに直接加えることができる。かかる有効成分は、例えば、薬物類、栄養素類、芳香類又はフレーバー類であり得る。有効成分は、新たな又は改良された機能性を、製品に間接的に送達することもできる。例えば、モノグリセリド又はリン脂質等の親油性添加剤の添加は、油滴の内部ナノ構造を変化させる。油滴の内部ナノ構造の変化は、新たな又は改良された機能性、例えば製品に対するより良好な口当り、口を覆う感覚、質感又は安定性を誘発させるであろう。
【0015】
製品に間接的に送達される機能性の例は、本発明の水中油型エマルションのクリーミング、融合又は凝集に対する物理的安定性に関係する。LPAの分散した油滴への添加は、通常のエマルション配合物(油滴相にLPAを添加していない;参照のエマルション)と比較したとき、該エマルションのクリーミング及び融合に対する物理的安定性を著しく改善する。LPAの油滴への添加は、即ち、油滴内に親水性ドメイン(一定量の水を含む)を発生させることにより、エマルションの液滴の比重が増大し、したがって、クリーミングの割合を減少し、又はその液滴のクリーミングを停止さえして、エマルションの上端の「リング」の形成を回避する。リングの形成は、過剰なクリーミングの典型的な結果である。
【0016】
本発明のエマルション系は、水−油−水ダブルエマルションとして普通に知られているエマルションとははっきりと区別される。w/o/w(水/油/水)ダブルエマルションは、油滴がミクロンサイズの水滴を含む水中油型エマルションである(Garti,N.;Bisperink,C;Curr.Opinion in Colloid & Interface Science(1998)、3、657〜667)。分散しているダブルエマルション油滴の内側の水滴は、機械的エネルギー入力、例えば、均質化によって調製(分散)され、結果として熱力学的に不安定であり、自己集合ではない。w/o/wダブルエマルション中の内部の水滴の直径は、300nmの直径より大きい。本発明のエマルションは、本発明のエマルションの油滴の内側のナノサイズの自己集合構造の形成が、自発的であり、熱力学的に進められ、水滴又はチャネルの平均直径が200nm未満であるので、通常のw/o/wダブルエマルションとは容易に区別することができる。
【0017】
したがって、本発明は、0.5nmから200nmの範囲の親水性ドメインを備えたナノサイズの自己集合構造を含む油滴に向けられており、本発明のその油滴又は水中油型エマルションは有効成分を含有する。その有効成分の量は、組成物全体の0.00001%より高い。好ましくは、それは0.00003%より高く、より好ましくは0.0001%より高い。さらにより好ましくは、有効成分の量は、組成物全体の0.001%より高い。その有効成分の量は、0.00001%と79%の間である。0.00001%と50%の間である有効成分の量を有することも可能である。その有効成分の量は、0.001%と10%の間であることもできる。その有効成分の量は、79%未満である。好ましくは、その有効成分の量は、組成物全体を基準として50%未満である。その低い範囲と高い範囲の任意の組合せが、本発明の範囲に含まれる。その有効成分の量は、重量%又はモル%で示すことができる。
【0018】
「自己集合」又は「自己組織化」という概念は、別々の分子による凝集体(結合体)又はナノ構造の自発的な形成を指す。自己集合構造中の分子は、もっぱら、与えられた分子間力、例えば疎水性、水和作用又は静電気の力等によるそれらの構造及び化学特性に基づくそれらの適切な位置を見出す[Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編);「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York、(1999)]。自己集合の結果は、調製方法自体には依存せず、その系の最低エネルギーの状態(安定平衡)に相当する。
【0019】
公開特許公報第2004−008837号明細書は、油滴中に存在する水溶性固体粒子を含有する水中油型エマルションを開示している。その粒子は、20nmから10μmの大きさの範囲内である。粒子を、脱水(即ち、自発的過程ではない)によって油中水型(w/o)エマルションの形で調製した後に、全体の粒子/油(S/O)懸濁液を、多孔質膜乳化方法を用いて水相に分散させる。
【0020】
国際公開第02/076441号パンフレットは、固体ナノ粒子を調製するための前駆物質としてのフルオロカーボン中のアルコール型マイクロエマルションの使用を開示している。そのナノ粒子は、200〜300ナノメートルより下の直径を有する。ナノ粒子の形成は、自発的ではなく、前駆物質のマイクロエマルションを約35℃より下に冷却するか、又は前駆物質のマイクロエマルション中のアルコールを蒸発させるか、又はそのマイクロエマルションを適当な極性溶媒で希釈することによって引き起こされる。
【0021】
米国特許出願公開第2004/022861号明細書は、油滴がタンパク質又は別の親水性物質を含有する水性の微細な水相を含有するw/o/w型ダブルエマルションを開示している。そのダブルエマルション全体は、タンパク質が詰まった微小粒子を製造するために、毛細管ノズルによって例えば液体窒素中に噴射される。
【0022】
これらの例は、すべて、w/o型マイクロエマルション又はw/o型若しくはw/o/w型ダブルエマルションを用い、油滴の内部の親水性ドメインの固化に対する外部からのきっかけを必要とする固体の親水性(ナノ)粒子の非自発的形成について記載している。(ナノ)粒子の調製後、それらは、温度、pH、又は外側流体の性質などの環境因子によって大きくは影響されない。水滴が固化されない、即ち流体である通常のw/o型マイクロエマルションは、上記のような環境因子によって大きく影響されることを述べておかなくてはならない。
【0023】
多数の科学的研究により、それぞれのウインザー系(Winsor system)[ウインザーI(o/w型マイクロエマルション+過剰の油)又はウインザーII(w/o型マイクロエマルション+過剰の水)]の均質化によって形成されたエマルションのタイプは、その過剰の連続相が平衡状態にあるマイクロエマルション相中で形成されたものと同じであることが示されている。例えば、w/o型マイクロエマルション+過剰の水(ウインザーII系)の乳化は、十分に高い、即ち油相中の界面活性剤の臨界濃度cμcoilより大きい界面活性剤濃度において、w/o型エマルションを与え、その連続相は、それ自体がw/o型マイクロエマルションである(B.P.Binks、Langmuir(1993)、9、25〜28)。このことは、通常のw/o型マイクロエマルションが水相によって希釈されるとき、o/w型エマルションの形成よりもw/o型エマルションの形成が好ましいことを意味する。Binksら、(B.P.Binks、Langmuir(1993)、9、25〜28)は、この挙動をBancroftの規則(W.D.Bancroft、J.Phys.Chem.(1913)17、501)と関わる水相と油相の間の界面活性剤の分割の観点から説明した。つまり、界面活性剤が油相中に蓄積される場合、即ち、水相中より油によりよく溶解する場合、形成されるエマルションのタイプは、常にw/o型であってo/w型ではない。w/o型マイクロエマルション又はウインザーII系(w/o型マイクロエマルション+過剰水)からo/w型エマルションを形成するためには、その界面活性剤が転相、即ちその溶解性の油溶性(w/o型エマルションの形成)から水溶性(o/w型エマルションの形成)への変化を受けることが必要である(P.Izquierdoら、Langmuir(2002)18、26〜30)。アルキルエトキシレート、例えばC12EO4などの非イオン界面活性剤を使用し、系を冷却して40〜50℃(PIT温度)から25℃に下げることによってこれを達成することができる。これは、親油性添加剤の相挙動(LPAは、室温で油相中にw/o型マイクロエマルションを形成する)を、親水性ドメイン又はLPAを含有する油滴が通常の水溶性乳化剤によって安定化されるo/w型エマルションの形成と相互に関連付ける本発明とは完全に異なる。この場合には親水性ドメインは、流体であって固体ではない。w/o型マイクロエマルション又は親水性ドメインを含有する油は、転相を受けることも、分散した油滴中の親水性ドメインを失うこともなく、且つ分散ステップの前に油滴中の内部親水性ドメインを固化する必要もなく、水相中に希釈する(分散させる)ことができる。
【0024】
本発明によれば、本発明の水中油型エマルションの油滴中のナノサイズの自己集合構造の自発的形成は、様々な方法で実現させることができる。1つの方法は、均質化ステップの前に、ナノサイズの自己集合構造の自発的形成を可能にする親油性添加剤(LPA)を油相に添加するものである。他の方法は、親油性添加剤(LPA)を、均質化ステップの後でエマルション製品に添加するものである。この場合、その親油性添加剤は、油滴中に溶解し、油滴中のナノサイズの自己集合構造の自発的形成をもたらす。ホモジナイザーとしては、通常の工業用又は実験室規模のホモジナイザー、例えば、Rannie社製ピストンホモジナイザー、Kinematica社製ローターステーターミキサー、コロイドミル、ステファンミキサー、クエットシェアセル又は膜乳化装置を用いることができる。さらに、超音波、水蒸気圧入又は調理用ミキサーもまた本発明に記載のエマルションを製造するのに適する。油滴中のナノサイズの自己集合構造の自発的形成は、エマルションを作製するために使用されるエネルギーの摂取量、及び一連のLPA添加には依存しない。このことは、ナノ及びマイクロ流体工学技術もまた本発明のエマルションを製造するのに適していることを意味する。
【0025】
加熱もまた、高温においては内部構造がより低粘度であり、分散過程が低温におけるよりも高温における方がより少ないせん断力を必要とすることになり得るために分散過程を促進し得る。
【0026】
本発明のエマルションを製造するための別の手段は、ヒドロトロープ又は水構造ブレーカー、或いは化学的又は熱力学的に推し進めることができる自発的乳化の使用である[Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編);「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York、(1999)]。
【0027】
本発明のエマルションを製造するための別の手段は、ジブロックコポリマー若しくはアポタンパク質に似たバイオポリマー類、例えばタンパク質−多糖複合体類若しくはコアセルベート類、又はタンパク質−多糖、タンパク質−タンパク質、又は多糖−多糖ハイブリッド、又はポリマー類とバイオポリマー類の混合物など、或いは親水性低分子量界面活性剤を添加することによって、水中油型エマルションの油滴中のナノサイズの自己集合構造の自発的形成を油滴の自発的形成と組み合わせることによるもの、即ち本発明の全体のエマルションである。
【0028】
本発明のエマルションを製造するための別の手段は、透析を用いるものである。その1つは、親油性添加剤(LPA)を油相及びエマルション中の油滴を安定化するために使用する親水性乳化剤に混合する方法である。LPA、油相及び親水性乳化剤からなる混合物を、ミセル相又はラメラ相又は任意のその他の相が形成されるように水と混合する。透析膜を使用することによって、バルクの水相中の過剰の親水性乳化剤を除去することが可能となり、本発明の水中油型エマルションが形成される。
【0029】
本発明のエマルションを製造するための別の手段は、ゲスト分子の制御作用を使用して、本発明の油滴の内部構造を、該油滴相が油−LPA−水からなっておりゲスト分子を含まない液滴相中よりも水相中に分散するように、より小さい粘性であってより少ないエネルギーを要するものとなるように修正するものである。集結した混合物(油−LPA−ゲスト分子−水)を分散させることは、油相構造が低粘度のものであるので容易である。エマルションの油滴の内部構造は、希釈したとき、ゲスト分子が均質化及び希釈の間に油滴を離れて水性の連続相中に溶解するために変化する。この手段に対して、該ゲスト分子は、親水性であり、浸透活性であることが望ましい。
【0030】
エマルション調合物
本発明は、油滴(5nmから数百ミクロンの範囲の直径を有する)が親油性添加剤(LPA)によって形成される0.5nm〜200nmの範囲の親水性ドメインによるナノサイズの構造化を示す水中油型エマルションに関するものであり、その水中油型エマルションは、有効成分を含有する。その有効成分の量は、組成物全体の0.00001%を超える。好ましくは、それは組成物全体の0.00003%を超え、より好ましくは、0.0001%を超え、さらにより好ましくは0.001%を超える。有効成分が含まれる量は、0.00001%と79%の間である。0.00001%と50%の間である有効成分の量を有することも可能である。有効成分の量は、79%より低い。好ましくは有効成分の量は、組成物全体を基準として50%より低い。低い範囲及び高い範囲の任意の組合せが、本発明の範囲内のものである。有効成分の量は、重量%又はモル%で示すことができる。
【0031】
LPAは、化学的、生化学的、酵素的又は生物学的手段によってそれ自体添加又はin−situで製造することができる。本発明のエマルション中に存在する油滴の量(油滴体積分率)は、通常の水中油型エマルション製品において一般に使用される量である。それは、0.00001重量%と80重量%の間で変動することができる。本発明の水中油型エマルションは、油滴の大きさによって、水中油型エマルション(大き目の油滴)、o/w型ミニエマルション、o/w型ナノエマルション又はo/w型マイクロエマルションのいずれかであり得る。
【0032】
より正確には、本発明は、
(i)鉱物油類、炭化水素類、植物油類、ワックス類、アルコール類、脂肪酸類、モノ−、ジ−、又はトリ−アシルグリセロール類、精油類、フレーバー油類、親油性ビタミン類、エステル類、栄養補給食品類、テルピン類、テルペン類及びそれらの混合物からなる群から選択された油と、
(ii)親油性添加剤(LPA)又は約10より低い、好ましくは8より低い結果としてのHLB値(親水性−親油性バランス)を有する親油性添加剤と親水性添加剤の混合物と、
(iii)水又はポリオール等の非水性極性液体を含む液滴、ロッド又はチャネルの形の親水性ドメインと
を含むナノサイズの自己集合構造化内部を有する分散した油滴、
及び
親水性エマルション乳化剤類を含有する水の連続相
を含む水中油型エマルションを対象とする。
【0033】
本明細書において使用される「親油性添加剤」(「LPA」と略されもする)とは、分散した油相中に安定なナノサイズの自己集合構造を自発的に形成する親油性両親媒性物質を指す。その親油性添加剤(混合物)は、脂肪酸類、ソルビタンエステル類、プロピレングリコールモノ−又はジエステル類、ペギル化脂肪酸類、モノグリセリド類、モノグリセリド類の誘導体類、ジグリセリド類、ペギル化植物油類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類、リン脂質類、ケファリン類、脂質類、糖エステル類、糖エーテル類、スクロースエステル類、ポリグリセロールエステル類及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
本発明の第1の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造又はL2構造及び油構造の組合せ(マイクロエマルション又は等方性液滴)とからなる群から取られる内部構造を有する油滴を示す。
【0035】
本発明の第2の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造(マイクロエマルション又は等方性液滴)を有する油滴を示す。
【0036】
本発明の第3の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造(マイクロエマルション又は等方性液滴)又は液晶(LC)構造(例えば、逆ミセルキュービック、逆バイコンティニュアスキュービック又は逆ヘキサゴナル)及びそれらの組合せからなる群から選択される内部構造を有する油滴を示す。
【0037】
本発明の第4の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、LC内部構造を有する油滴を示す。
【0038】
本発明の第5の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L3構造、L2構造とL3構造の組合せ、ラメラ液晶(Lα)構造とL2構造の組合せ、並びにラメラ結晶構造とL2構造の組合せからなる群から選択される内部構造を有する油滴を示す。
【0039】
本発明の第6の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、これまでに記載した構造の組合せである内部構造を有する油滴を示す。
【0040】
上記の内部構造は、すべて紛れもなく、小角X線散乱(SAXS)分析及び低温電子顕微鏡(cryo−TEM)[Qiuら、Biomaterials(2000)21、223〜234、Seddon.Biochimica et Biophysica Acta(1990)1031、1〜69、Delacroixら、J.MoI.Biol.(1996)258、88〜103、Gustafssonら、Langmuir(1997)13、6964〜6971、Portes.J.Phys:Condens Matter(1992)4、8649〜8670]、並びにcryo−TEM画像の高速フーリエ変換(FFT)によって測定することができる。
【0041】
一定の用途に対しては、100℃より高い温度を使用すること(例えば、結晶分子をレトルトにかける温度又は溶融させる温度或いは油又は/及びLPAを含む媒体中で結晶分子を溶融させる温度)も可能であり、本発明の対象である。
【0042】
親油性添加剤(LPA)は、また、親水性添加剤(10より大きいHLBを有する)と混合して、全体的な混合物のHLBが10又は好ましくは8を超えない量までの混合物とすることもできる。その添加剤(混合物)は、また、化学的、生化学的、酵素的又は生物学的手段によってin−situで製造することもできる。
【0043】
添加される親油性添加剤の量は、αとして定義される。αは、比LPA/(LPA+油)×100として定義される。αは、好ましくは0.1より高い。より好ましくは、αは、0.5より高い。さらにより好ましくは、αは1より高い。さらにより好ましくは、αは3より高い。さらにより好ましくは、αは、10より高い。最も好ましくは、αは、15より高い。
【0044】
比α=LPA/(LPA+油)*100は、好ましくは99.9より低い。より好ましくは、αは、99.5より低い。さらにより好ましくは、αは、99.0より低い。さらにより好ましくは、αは、95より低い。さらにより好ましくは、αは、84より低い。さらにより好ましくは、αは、80より低く、最も好ましくは、αは、70より低い。その低い範囲と高い範囲の任意の組合せが、本発明の領域に含まれる。αは、重量%又はモル%のいずれかで示すことができる。αの下限及び上限は、用いた油及びLPAの特性、例えば極性、分子量、誘電率など、或いは油滴相中のLPAの臨界凝集濃度(cac)又は臨界ミセル濃度(cmc)などの物理的特性に依存する。
【0045】
該エマルションは、通常の水中油型エマルションの液滴を安定化させるのに適する親水性乳化剤によって安定化される。その親水性乳化剤は、「補助的な乳化剤」又は「安定剤」であることを示すこともできる。該エマルションは、使用する親水性乳化剤によって、凝集(凝結)させたりさせなかったりすることができる。その親水性乳化剤は、8を超えるHLBを有する低分子量親水性界面活性剤類、ゼラチン、例えばミルクから(乳漿タンパク質単離物、カゼイン塩)又は大豆からのタンパク質類、ブロックコポリマー類、アラビアゴム等の界面活性親水コロイド類、ジブロックコポリマー又はアポタンパク質に似たバイオポリマー類、例えばタンパク質−多糖複合体類若しくはコアセルベート類、又はタンパク質−多糖、タンパク質−タンパク質、又は多糖−多糖ハイブリッド類、複合体類若しくはコアセルベート類、或いはポリマー類とバイオポリマー類の混合物などからなる群から選択される。粒子類(ナノ又はマイクロ)も、本発明の水中油型エマルションを安定化させるために使用することができる。
【0046】
エマルション技術の主要な検討事項は、界面活性剤又は乳化剤とも称される、優れた表面特性(又は活性)、即ち、油滴の周囲に形成される界面への効果的な吸着、及び有効で効率的な界面張力の低減を示す界面活性成分の選択と関係する。水相と油相の間で低い界面張力が得られれば、それだけ水−油界面の面積を増大するために必要なエネルギーは少なくてすむ、即ち、より小さい油滴及びより安定なエマルションをつくるのがより容易である。
【0047】
乳化すべき油相にLPAを添加することによって、その油相と純粋な水の間の界面張力は低下する。この事実は、本発明の油相(これは一定量の親油性添加剤を含有する)の小さい液滴への分解を著しく促進する。結果として、本発明の水中油型エマルションを製造するための分解過程は、効果的で高度に表面活性な、又は急速に吸着する乳化剤は必要としない。本発明により形成される水中油型エマルションの品質(安定性、均一性)は、通常のエマルションを安定化させるために使用するようには、効果的で表面活性な親水性乳化剤に依存しない。効果的でない乳化剤の「不適切に」吸着をする又は乱れた混合物、即ち粗悪な乳化剤混合物が、本発明の安定なエマルションの生成には完全に適する。このことは、本発明の水中油型エマルションの調製における親水性乳化剤の役割が、殆ど、既に離散している油滴の周囲に吸着してくるまり、融合に対してそれらを安定化させることであることを意味する。この目的のために、親水コロイド又はその他の比較的非能率的吸着を示すわずかに両親媒性のポリマー類、例えば、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、ガラクトマンナン類、タンパク質加水分解物類、ペプチド類、変性デンプンなど、或いは乳漿タンパク質濃縮物類もまた、本発明の水中油型エマルションを安定化させるために使用することができる。
【0048】
本発明の水中油型エマルションを形成する油滴の粒子(ナノ又はマイクロ)又は外側部分は、任意の種類の内部構造、例えば非結晶性、結晶性、層状結晶、ラメラ液晶、液晶(LC)、L3、L2又はそれらの混合物などを有することができる。
【0049】
親水性乳化剤は、LPA、又は油、或いはLPA及び油と混合することもできる。これは、親水性乳化剤が部分的に油滴内部に存在することもでき、内部ナノサイズ自己集合構造に影響を及ぼし得ることを意味している。
【0050】
比β=親水性乳化剤/(LPA+油)×100は、油+LPA含量に対する、油滴を安定化するために用いられる親水性乳化剤の量を表している。βは、好ましくは0.1を超える。より好ましくは、βは0.5を超える。より好ましくは、βは1を超え、より好ましくは、2を超える。比β=親水性乳化剤/(LPA+油)×100は、好ましくは90未満である。より好ましくは、βは75未満である。さらにより好ましくは、βは50未満である。下方及び上方範囲の任意の組合せが本発明の範囲に含まれる。βは、重量%又はモル%で示すことができる。ある場合には、該親水性乳化剤は、配合物中に添加することができる。他の場合には、該親水性乳化剤は、食品、クリームなどの製品それ自体に存在する可能性があり、この場合はそれを添加する必要がない。一例は、既に存在するタンパク質が本発明の水中油型エマルションの親水性乳化剤として使用することができるミルクである。
【0051】
様々な有効成分を、油滴のナノサイズ自己集合構造化内部に可溶化することができる。それらは、フレーバー類、フレーバー前駆物質類、芳香類、芳香前駆物質類、旨味向上剤類、塩類、糖類、アミノ酸類、多糖類、酵素類、ペプチド類、タンパク質類又は炭水化物類、栄養補助食品類、食品添加剤類、ホルモン類、細菌類、植物エキス類、薬剤類、薬物類、栄養素類、農薬用途又は化粧品用途向けの化学物質類、カロテノイド類、ビタミン類、抗酸化物類又はルテイン、ルテインエステル類を含む群から選択される栄養補給食品類、β−カロテン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコトリエノール、リコペン、Co−Q10、亜麻油、魚油、オメガ−3油類、オメガ−6油類、DHA、EPA、アラキドン酸富化油類、メントール、ハッカ油、リポ酸、ビタミン類、ポリフェノール類及びそれらのグリコシド類、エステル及び/又は硫酸抱合体類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバノン類及びそれらのグリコシド類、例えばヘスペリジンなど、カテキンモノマー類及びそれらのガレートエステル類例えばエピガロカテキンガレートなどを含むフラバン3−オール類及びそれらのプロシアニジンオリゴマー類、ビタミンC、ビタミンCパルミテート、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD、α−及びγ−ポリ不飽和脂肪酸類、フィトステロール類、エステル化したフィトステロール、エステル化されていないフィトステロール、ゼアキサンチン、カフェイン、並びにそれらの組合せからなる群から選択される油溶性、油不溶性、水溶性又は結晶性成分であり得る。
【0052】
本発明による水中油型エマルションにおいて、LPAは、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、PEG1−4ステアレート、PEG2−4オレエート、PEG−4ジラウレート、PEG−4ジオレエート、PEG−4ジステアレート、PEG−6ジオレエート、PEG−6ジステアレート、PEG−8−ジオレート、PEG−3−16ヒマシ油、PEG5−10水素化ヒマシ油、PEG6−20トウモロコシ油、PEG6−20アーモンド油、PEG−6オリーブ油、PEG−6ラッカセイ油、PEG−6パーム核油、PEG−6水素化パーム核油、PEG−4カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、植物油及びソルビトールのモノ、ジ、トリ、テトラエステル類、ペンタエリトリチルジ、テトラステアレート、イソステアレート、オレエート、カプリレート又はカプレート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル2−4オレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ポリグリセリル−6ジオレエート、ポリグリセリル−10トリオレエート、ポリグリセリル−3ジステアレート、C6からC20脂肪酸のプロピレングリコールモノ−又はジエステル類、C6からC20脂肪酸のモノグリセリド類、モノグリセリド類の乳酸誘導体類、ジグリセリド類の乳酸誘導体類、モノグリセリド類のジアセチル酒石酸エステル、トリグリセロールモノステアレートコレステロール、フィトステロール、PEG5−20大豆ステロール、PEG−6ソルビタンテトラ、ヘキサステアレート、PEG−6ソルビタンテトラオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノトリオレエート、ソルビタンモノ及びトリステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキステアレート、PEG−2−5オレイルエーテル、POE2−4ラウリルエーテル、PEG−2セチルエーテル、PEG−2ステアリルエーテル、スクロースジステアレート、スクロースジパルミテート、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ポロキサマー類、リン脂質類、レシチン類、ケファリン類、オート脂質及びその他の植物に由来する親油性両親媒性脂質類、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
本発明による水中油型エマルションは通常、液体又は半液体形態である。本発明の他の実施形態によれば、エマルションは乾燥しており、粉末形態で入手できる。小角X線散乱及びCryo−TEMは、本発明の水中油型エマルション中に存在する油滴の内部ナノ構造が、乾燥したエマルションを、水を加えることによって戻したとき、復帰することを示す。
【0054】
本発明による水中油型エマルションは、最終生成物であるか、又は添加剤のいずれかである。最終生成物の添加剤の量は重要ではなく、多様であり得る。
【0055】
本発明に記載の機能性を送達するためのエマルションは、内部自己集合(Internally Self−Assembled)である構造を含有する油滴の特有の性質を説明し、油滴が親水性ドメインを含むナノサイズ自己集合構造を持たないナノエマルション及びマイクロエマルションを含む、通常の水中油型又はw/o/wダブルエマルションから本発明のエマルションを除外するために、本出願人等が「ISAMULSION」と命名する新規な型のエマルションである。ISAMULSION液滴は、基本的に親水性ドメインを含むナノサイズ自己集合構造を有する油滴からなる。この構造は、ラメラ液晶、又はラメラ結晶、或いはL2、マイクロエマルション、等方性液相、ヘキサゴナル、ミセルキュービック、又は両連続キュービック相を含む逆性構造であり得る。油相におけるこれらの構造は、単一のナノ構造、又は種々のナノ構造の混合物として出現することができる。
【0056】
有効成分として以下のものを含む組成物は本発明から除外される:
− 2重量%R+リモネン、2.6%グリセロールモノリノレート及び0.4重量%Pluronic F127;
− 10重量%マルトデキストリン、2重量%d−α−トコフェリル酢酸塩、2.5重量%Dimodan U、0.5重量%アスコルビン酸及び0.375重量%Pluronic F127;
− 0.51重量%大豆油、2.49重量%Dimodan U、0.01重量%Lロイシン及び0.2重量%tween80;
− 0.02重量%大豆油、2.98重量%Dimodan U及び0.02重量%キシロース及び0.2重量%tween80;
− 0.51重量%大豆油、2.49重量%Dimodan U、0.03重量%lyco−mato及び0.2重量%tween80;
− 1.1重量%大豆油、0.3重量%遊離フィトステロール、1.7重量%Dimodan U及び0.2重量%Tween 80。
【0057】
したがって本発明の目的は、一定の数の機能性を送達するために有効成分を可溶化するために用いることができる新しい水中油型エマルション調合物を提供することである。
【0058】
本発明は、通常の水中油型エマルションを用いる使用温度又は保存温度で晶出する、水不溶性、油不溶性有効成分、又は結晶性有効成分の溶解性又は/及び分散性を向上させるために使用するための本発明の水中油型エマルションに関する。
【0059】
本発明は、さらに、水中油型エマルション中の有効成分の安定性、化学劣化又は酸化に対する保護を向上させるために使用するための本発明の水中油型エマルションに関する。
【0060】
本発明は、また、消化中の有効成分のバイオアベイラビリティー、生物学的送達度、バイオディスポニビリティー、又は吸収性を向上させるために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。
【0061】
本発明は、また、消費又は消化中の有効成分の放出、有効成分のバースト放出、又は有効成分の持続放出を制御して健康に作用する機能性を生み出すか改良するために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。
【0062】
本発明は、また、健康に作用する機能性を追加するために、有効成分の効率性、有効成分の持続する効率、又は有効成分のバースト放出を増大させるために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。
【0063】
本発明は、また、芳香又はフレーバーが有効成分であり、新たな、又は改良された知覚特性を生み出すための芳香又はフレーバー又は味の放出、芳香又はフレーバーのバースト放出、或いは芳香又はフレーバーの持続放出を制御するために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。
【0064】
本発明は、また、異なる味覚、異なる質感、口当り、口を覆う感覚、又はクリーム感覚を生み出すために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。この場合はLPAが有効成分である。
【0065】
本発明は、また、有効成分の味又は異味マスキングのため、有効成分、構造のフレーバー又はオフフレーバーマスキングのため、有効成分の味又はフレーバーの調節をするために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。この場合、LPAは、それ自体有効成分であり得る。
【0066】
本発明は、また、色調節、メイラード反応による褐変の増大、加熱又はマイクロ波作動中の化学反応又はメイラード反応収率の増大、化学反応収率の制御又はメイラード反応収率の制御、及び加熱又はマイクロ波作動中の化学反応収率の制御又はメイラード反応収率の制御に使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。有効成分は、この場合もやはりLPAであり得る。
【0067】
本発明は、また、ISAMULSION中の有効成分を富化するための任意の種類の原料又は製品からの有効成分の抽出、健康又は感覚に有利なように有効成分の放出を制御するための消費、咀嚼又は消化の間の口内での原料又は製品からそれら有効成分を抽出するために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。有効成分は、この場合もやはりLPAそれ自体であり得る。
【0068】
本発明は、さらに、上記の機能性の1つ又は組合せに基づく任意の種類の機能性、及び口中での加熱、冷却、加工、咀嚼、消費又は消化の間に水中油型エマルション液滴の内部構造を変化させるか水中油型エマルション全体の構造を変化させることによって得られる上記の任意の種類の機能性の又は機能性の組合せに関する。
【0069】
本発明は、食品に機能性を送達することだけでなく、他の産業において生産される製品、例えば、ペットフード、栄養補給剤、機能性食品、洗剤、栄養補給化粧品、化粧品、医薬品、薬物送達、ペイント類、医療又は農薬産業、火薬、繊維、鉱業、石油採掘、ペイント類、製紙業、高分子工業においても使用することができる。
【0070】
図1は、親油性添加剤の含量%(LPA%=α=100*LPA/(LPA+油))及び温度の関数として、ISAMULSIONの分散油滴内部に見出された典型的な構造順序を示す。L2は、逆マイクロエマルション様構造を表し、LCは、液晶相、又は様々な液晶相の混合物の存在を表す。図1が示すように、油滴内部において、所与の温度及び添加される親油性添加剤の特定量(α値)で、明確なナノサイズ自己集合構造が形成される(言及した構造のより詳しい説明は、Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編):「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York(1999)を参照のこと)。添加するLPAの量により、自己集合構造の型、親水性ドメインに存在する水の量、内部界面の量、及びISAMULSION液滴内部に形成される自己集合ナノ構造の大きさ、寸法を正確に制御することが可能となる。油の種類及び親油性添加剤(LPA)の種類に応じて、自己集合液滴内部構造の自発的形成を開始するのに必要とされるLPAの最小量は、油相の0.1から5重量%である。
【0071】
エマルション油滴の内部ナノサイズ自己集合構造は、Cryo−TEM又は小角X線散乱によって検出できる。
【0072】
図2のcryo−TEM画像は、Adrianら(Adrianら、Nature(1984)308、32〜36)の標準的な技法を用いて得られたものである。試料を凍結するために、自家製切断機を用いた。試料分散液3μlの液滴を、直径約2μmの穴を含有する穴の開いたカーボン膜で被覆された銅グリッドに載せた。過剰な試料溶液を除去するために、グリッドの液体側を濾紙で押さえた(ブロッティング)。液体を除去した直後に、ピンセットで保持したグリッドを、液体エタンに浸漬した。凍結したグリッドを液体窒素中に貯蔵し、−180℃に保持した低温ホルダーに移した。Philips CM12 TEMにおいて、電圧80kVで試料の分析を行った。電子線損傷を最小限にするために、低線量法を適用した。一部の例では、Egelhaafら(Egelhaafら、J.Microsc.(2000)200、128〜139)に記載されているものに類似した自家製の環境チャンバを用いた。薄化及びガラス状化前の温度を25℃に設定し、湿度100%を用いた。ISAMULSIONは、油滴内部の小さな明るい形状の存在によって同定できる。図2、6aは、周期構造のないISAMULSIONのCryo−TEM顕微鏡写真であり、明るい形状間の特性距離約7〜8nmを示している。そのような明るい形状は標準的な非構造化エマルションでは認められず、エマルション液滴の構造化されていない内部にはコントラストがないことに留意されたい(図6b)。
【0073】
図3のSAXS曲線は、シールド管Cu陽極を備えた、40kV及び50mAで操作するX線発生装置(Philips、PW1730/10)を用いる標準的な装置(Bergmannら、J.Appl.Cryst.(2000)33、869〜875)によって得られたものである。Gobelミラーを用いて、発散多色X線ビームをCuKα照射の集束された線状ビームに変換する(λ=0.154nm)。二次元散乱パターンはイメージングプレート検出器によって記録され、SAXSQuantソフトウェア(Anton Paar、グラーツ、オーストリア)を用いて一次元散乱関数I(q)に統合されるが、ここでqは、q=(4π/λ)Sinθ/2で定義される散乱ベクトルの長さであり、λは、波長であり、θは、散乱角である。散乱プロファイルの幅広いピークは、これらのデータを一般化間接フーリエ変換(Generalized Indirect Fourier Transformation)法に適合させることによってデスミアした(Bergmannら(2000)、33、1212〜1216)。特性距離は、d=2π/qで示される。図3は、ISAMULSION(図2で調査したものと同じ)の小角X線散乱パターンを、その製造に用いる相当する非分散バルク油相(LPAによってナノ構造化)、及び相当する通常のエマルション(LPAなし、ナノ構造なし)と共に示す。ISAMULSIONは、その製造に用いる非分散バルク油相と同じピーク位置を示すことが分かる。共に特性距離は、約7.5nmである。この特性距離は、親水性ドメインの直径より大きい。したがって、親水性ドメインは、7nmより小さい大きさを有する。当業者には、親水性ドメインがこのように小型であるのは、油滴の内部構造が熱力学的に安定であることを実証するものである。さらに、LPAを添加しない相当する通常のエマルション(ナノ構造なし)については、ピークは認められない。これは、ISAMULSIONの油滴内部にナノサイズ自己集合構造が存在することのさらなる証明である。内部ISAMULSION液滴構造は水に分散されたときにも変化せず、その構造が熱力学的平衡状態にあることを示している。
【0074】
図5は、油滴内周期構造のcryo−TEM画像を示す。粒子は、様々な方向のもとで画像化されており、1つの方向から別の方向に行くように向けられている。高速フーリエ変換(FFT)は、存在する面(又は影)を正確に測定するために使用され、電子回折像のインデクセーションと同様にインデクス化される(J.W.Edington、Practical Electron Microscopy in Materials Science、Phillips、Eindhoven、1974)。粒子は、[111]方向(図5a−c)、[332]方向(図5b−d)、[114]方向(図5e−g)、[112]方向(図5f−h)及び[110]方向(図5i−j)のもとで観察される。観察される最初の4つの影は、ミセルキュービック相(空間群Fd3m)を液晶相として識別する{111}、{220}、{311}及び{222}である。同じ実験を他の内部構造の粒子を識別するために実施することができる。粒子の内部結晶構造も、図10(ミセルキュービック、空間群Fd3m)及び図12に示すようにSAXSによって測定することができる。
【0075】
図9は、LPAの添加によってナノ構造化された油滴の概略図である。親水性ドメインの構造定義を図9に明示する。親水性ドメインはLPAの極性部分(頭部)を含む(炭化水素尾部及び水部分は含まない)。親水性ドメインの最小直径は、水分子を含有しない2つの頭部基のほぼ断面である、約0.5nmであり得る。親油性添加剤又は乳化剤の極性部分の最小サイズは、約0.2nmである。水分子の直径は、約0.3nmである。活性分子の可能性のある位置を図9に示す。
【0076】
図13は、遊離の(エステル化してない)フィトステロールを通常のエマルション(a)中に可溶化するときには結晶の存在を偏光顕微鏡法によって示すが、フィトステロールをISAMULSION(b)中に可溶化するときには結晶は存在しないことを示している。可溶化された形のフィトステロールは生物学的に利用可能であるが結晶の形のフィトステロールははるかに生物に取り込まれ難く、生物学的利用が困難なことはこれまでにもたくさん書かれている。
【0077】
図14は、貯蔵2日後に現れた芳香のヘッドスペース測定を示す。Y軸は、貯蔵2日後にヘッドスペース測定によって測定された残留している芳香の百分率を表す。芳香がISAMULSION中に可溶化される場合、芳香の明白な劣化はないが、それらが水に溶解するときは芳香の激しい劣化がある。ヘッドスペース測定は、次のようにして行われる。分析は、水素炎イオン化検出器を備えたHP6890ガスクロマトグラフ(GC)(FID)(Agilent、バーゼル、スイス)により実施した。そのGCを、70eVの電子イオン化(EI)モードで動いている質量分析計(5973MSD、Agilent)に連結した。DB−Waxキャピラリーカラム(30×0.25mm、0.25ミクロン膜厚、J&W Scietific、Folsom、USA)をすべての分析に使用した。オーブンを20℃で3分間保ち、6℃/分で100℃まで、次いで10℃/分で240℃まで昇温した。最後に、オーブンを240℃で10分間保った。キャリヤーガスは、流速1mL/分のヘリウムを用いた。平衡時間(2時間)の後、2mLのヘッドスペース試料を注入した。各試料はGC分析用に3通り用意した。以下の注入パラメータを用いた:注入器、2.5mLヘッドスペース;試料量、2mL;インキュベーション温度、37℃;攪拌スピード、300rpm;攪拌始動までの時間、5秒;攪拌停止までの時間、2秒;注入器温度、37℃;充填スピード、100マイクロリットル/秒;プルアップディレイ、60秒;注入スピード、1mL/秒;プレインジェクションディレイ、500ミリ秒;ポストインジェクションディレイ、500ミリ秒;注入器フラッシング、1分。重要性のある濃度範囲の各臭気剤に対して検出されたFID信号の直線性を、外部較正曲線によってチェックした。
【0078】
図15は、ISAMULSION及び通常の水中油型エマルションについて陽子移動反応−質量分析計(PTR−MS、Ionicon Analytik、インスブルック、オーストリア)によって芳香のヘッドスペース測定の結果を示す。通常のエマルションと比較してISAMULSIONについてはバースト放出が得られることが分かる。PTRMSは、オンライン式の芳香放出を追跡するために使用した。エマルション及びISAMULSIONで、m/z20から160までのフルマススペクトルが記録された。より感度のよい質量検出を得るために、各質量において確認される分子(1つ又は複数)の優れた代表性(representativity)に応じて質量の選択を実施した。試料から放出される分子を確認するために、Tenaxトラップをオーブンセル出口の排気口に5分間取り付けた。そのTenaxトラップから脱着した揮発性物質を分割し、PTR−MS及びガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)によって分析した。
【0079】
[実施例]
本発明の種々の実施形態は、親油性添加剤(LPA)の存在により、分散油滴が親水性ドメインのナノサイズ自己集合構造を示す水中油型エマルションを提供する。以下の実施例は本質的に例示的なものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0080】
実施例1:均質化によって得られ、鉱物油を含有するISAMULSIONの一般的実施例。この実施例は、ISAMULSIONがいかに特徴があり、通常の水中油型エマルションと区別することができるかを示すために使用される。
【0081】
典型的には、テトラデカンなどの鉱油1〜5重量%を、既に親水性乳化剤(MerckのTween 80又はBASFのPluronic F127)0.375重量%を含有する水95重量%に添加した。次いで、LPA(モノリノール酸グリセロール、乳化剤TS−PH 039、Danisco、ノルウェー)0.5〜4重量%を混合物に添加した。親油性分子(鉱油+LPA)の総量は、4.625重量%であった。
【0082】
次いで20分間、超音波処理を行った。これらのエマルションのISAMULSION特性は、図2及び図3〜4などのCryo−TEM画像及びSAXS曲線によって確認した。図2及び図3は、鉱油(テトラデカン)2.4重量%、LPA2.2重量%、親水性乳化剤(pluronic F127)0.375重量%、水95重量%の組成による、これらの一般的な実施例から得たものである。さらに、対応するバルク試料(油、LPA、過剰の水を含むが、親水性乳化剤を含まない非分散試料)を調製し、分析した。油(テトラデカン)/LPA(モノリノール酸グリセロール)重量比は、1.1/1.0であった。油−LPA−水の混合物を、試料が均質化されるまでボルテックスにより加熱及び混合した。水0、5、又は10重量%を油/LPA混合物に添加した後、試料は透明となり、水が油/LPA混合物に完全に可溶化され、w/oマイクロエマルションが形成されたことを示した。より大量の水を添加した後、試料は相分離を示す。15及び20重量%の水を含有する試料は、相当するISAMULSION試料(鉱油2.4重量%、LPA2.2重量%、親水性乳化剤0.375重量%)と同じSAXS曲線を示すことを示した。これは、ISAMULSION液滴が、相当するバルク相で観察されたものと同じ7.5nmの特性距離を示すことを実証している(図3を参照のこと)。さらに、図4は、既に比較的低含量のLPA及び高含量の油を含む場合(例えば、鉱油(テトラデカン)3.9重量%、LPA(モノリノール酸グリセロール)0.725重量%、親水性乳化剤(Pluronic F127)0.375重量%、水95重量%)、ISAMULSIONが形成される(例えば、SAXS曲線にピークが認められる)ことを示している。しかしながら、図3に示したように、LPAが存在しないとき、ISAMULSIONは形成されない(組成:油(テトラデカン)4.625重量%、Pluronic F127 0.375重量%、水95重量%)。さらに、より大量のLPAを含む場合(α値)(組成の例:テトラデカン1.32重量%、LPA3.3重量%、Pluronic F127 0.375重量%)、ISAMULSIONは形成される。SAXS曲線及びcryo−TEM画像(図5及び10)で示したように、その構造は低いα値(LPA含量)で観察されたものより規則的であり、親水性ドメインの逆ミセルキュービック配置を示す。
【0083】
製品に新たな又は改良された機能性を与えるために、有効成分を実施例1に記載のようにしてISAMULSION類に可溶化又は分散させることができる。
【0084】
実施例2:トリグリセリド油を用いるISAMULSION。
この実施例は、本発明に由来するISAMULSIONが、いかに特徴があり得るかを示すために使用される。
【0085】
大豆油0.5〜4.5重量%を、LPA(Dimodan U/J、Danisco、デンマーク)0.5〜4重量%と混合した。この混合物を親水性乳化剤(Pluronic F127)0.375%を含有する水95重量%に加えた。親油性分子(油+LPA)の全体量は、4.625重量%であった。この混合物にポリトロン(Kinematica、スイス)ポジション5を用いて5分間せん断をかけた。
【0086】
エマルションのISAMULSION特性は、cryo−TEM画像(図6a)、SAXS(図7a)及び対応するバルク試料の試験(実施例1で行ったものと同じ)によって確認した。図6a−7aは、トリグリセリド油1.525重量%、LPA3.1重量%、親水性乳化剤(pluronic F127)0.375重量%、水95重量%の組成による一般的な実施例から得たものである。通常の、例えばLPAの存在しない大豆油液滴内には内部構造は観察されない(図6b−7d)。
【0087】
製品に新たな又は改良された機能性を与えるために、有効成分を実施例2に記載のISAMULSIONに可溶化又は分散させることができる。
【0088】
実施例3:いくつかのLPAの混合物を含有するISAMULSION。この実施例は、ISAMULSIONが、いかに特徴があり得るかを示すために使用される。
【0089】
飽和及び不飽和モノグリセリドの混合物を含有するISAMULSION:
0〜1.8%の鉱物油(テトラデカン)を、0.2〜2%のLPAに加えた。そのLPAは、飽和モノグリセリド(Dimodan HR、(グリセロールモノステアレートを90%含有する飽和モノグリセリド)、Danisco、デンマーク)及び不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J、Danisco、デンマーク)の混合物であった。親油性分子(油+LPA)の全体量は、3%であった。その混合物を親水性乳化剤として0.3%のTween80を含有する96.7%の水に加えた。超音波処理を2分間実施した。20%の水において得られる飽和モノグリセリド(Dimodan HR)−不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J)混合物の擬似二元系相図(図8)によって示されるように、安定なL2相の形成は、飽和モノグリセリドの不飽和モノグリセリド試料への添加後の高温において得ることができ、L2系ISAMULSIONが、高温で形成され得ることを示している。例えば、1%テトラデカン、1%飽和モノグリセリド、1%不飽和モノグリセリド、0.3%Tween80及び1%テトラデカン1%の組成物に対して、ISAMULSIONが存在し、60℃を超える高温で安定である。
【0090】
鉱物油(テトラデカン)、グリセロールモノリノレート及びジグリセロールモノオレエートを含有する混合物:
テトラデカン、モノリノレイン(MLO)、ジグリセロールモノオレエート(DGMO)を、既に0.375重量%の親水性乳化剤(Pluronic F127)を含有する95.375重量%の水に加えた。次いで超音波処理を20分間行った。SAXSにより、その混合物のISAMULSION特性が明らかとなる(図11)。グリセロールモノオレエートのみで製造されDGMOを含まないISAMULSIONと比較すると(図11)、SAXSのピークは、高い間隔に向けて移動し、DGMOが不飽和モノグリセリドと組み合わせて使用される場合、親水性ドメインが大きくなり水の高含量を液滴の内部に可溶化することができる。この実施例は、様々なLPAの混合物が、ISAMULSION油滴の特徴的な構造を形成するために使用することができることを実証する。
【0091】
油とモノグリセリド及びリン脂質の混合物とでできたISAMULSION:
鉱物油(テトラデカン)、大豆油からのホスファチジルコリン(PC)及びジグリセロールモノオレエート(DGMO)を、既に0.375重量%の親水性乳化剤(Pluronic F127)を含有する95.375重量%の水に加えた。次いで超音波処理を20分間行った。
【0092】
SAXSにより、その混合物のISAMULSION特性が明らかとなる(図12)。正確な組成は、図12に示す。この実施例は、リン脂質が、ISAMULSION油滴の特徴的な構造を形成するために使用することができることを実証する。
【0093】
LPAとしてのリン脂質及び様々な油の混合物を含む油と乳化剤混合物を使用するISAMULSION:
2.2重量%の卵黄大豆ホスファチジルコリン(Lucas Meyer)を、2.2重量%のジオレイン及び0.6重量%のテトラデカンと混合した。この混合物を0.375重量%の親水性乳化剤(Pluronic F127)を含有する94.625重量%の水に加えた。次いで超音波処理を40分間行った。典型的なISAMULSIONの特徴を有するエマルションが形成された。そのPCは、また、ISAMULSIONの特徴を得るためにホスファチジルエタノールアミン(PE)又はその他のリン脂質と混合することもできる。様々なリン脂質及び油の任意の組合せを使用して本発明に記載されている典型的なISAMULSIONの特徴を生じさせることが可能である。
【0094】
LPAとしてのホスホエタノールアミン(PE)及び油を用いるISAMULSION:
2.2重量%の1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(AvantiPolar Lipids)を、0.8重量%の大豆油と混合した。0.3重量%の親水性乳化剤(Pluronic F127)を含有する96.7重量%の水に、この混合物を添加した。次いで40分間、超音波処理を行った。典型的なISAMULSIONの特徴を有するエマルションが形成された。
【0095】
製品に新たな又は改良された機能性を与えるために、有効成分を実施例3に記載のISAMULSIONに可溶化又は分散させることができる。
【0096】
実施例4:フレーバー感を制御するためのフレーバーリングオイルを含有するISAMULSION
2.3重量%の精油(R+リモネン)を、既に0.4重量%の親水性乳化剤(Pluronic F127)を含有する95重量%の水に導入した。2.3重量%のLPA(グリセロールモノリノレート)をその混合物に添加した。超音波処理を20分間行った。分散液が形成された。実施例1の場合と同様に、SAXSによってエマルションのISAMULSION特性が明らかとなる。超音波処理ステップ中に、ISAMULSIONが自発的に形成される。この実施例は、ISAMULSION構造を形成するための油相として、リモネンなどのフレーバーリングオイルを使用できることを実証している。
【0097】
実施例5:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーが向上したフィトステロールエステル及びリコペンを含有するISAMULSION
1.08重量%のフィトステロールエステル(ADM)、1.62重量%のDimodan U/J(LPA)、0.0015重量%のLycored製のLyc−O−Mato(10重量%のリコペンを含有する)を最初に加熱し、均一で透明な溶液が形成されるまでボルテックスにより混合した。この溶液を0.2重量%のTween80が溶解されている97.1重量%の水に添加した。その混合物を80℃で2分間超音波処理にかけた。油滴のナノ構造の内部に可溶化されたリコペンを有するISAMULSIONが形成された。この実施例は、親油性、結晶性の抗酸化物質をISAMULSION油滴構造の内部に可溶化させ、均一な水中油型エマルションを生じさせることができることを実証している。
【0098】
実施例6:溶解性又は/及び分散性並びにバイオアベイラビリティーが向上した遊離のフィトステロールを含有するISAMULSION
0.44重量%の遊離のフィトステロール(ADM)、1.65重量%の不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J、Danisco)及び1.06重量%の大豆油を、最初に、フィトステロールが溶解して溶液が形成されるまで120℃で加熱する。0.2重量%のTween80を96.65重量%の水中に分散させた。Tween80の溶液を80℃まで加熱し、フィトステロール−モノグリセリド−大豆油の溶融した混合物をそのTween80の溶液に80℃で加えた。超音波処理を80℃で2分間行った。その結果ISAMULSIONが形成され、偏光顕微鏡法によって確認されるように該エマルション中には結晶が存在しない。このISAMULSIONは、フィトステロール類のバイオアベイラビリティーを増すために使用することができる。同じ方法がとられても通常のエマルションが使用される場合は、含まれている遊離のフィトステロールが少なくてさえ(0.31重量%の遊離のフィトステロール及び2.75重量%の大豆油−0.2重量%のTween80−96.74重量%の水)、処理後多数の結晶が観察される。
【0099】
実施例7:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させるISAMULSION中に遊離のフィトステロールを含有するミルク
0.45重量%の遊離のフィトステロール(ADM)、1.67重量%の不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J、Danisco)及び1.07重量%の大豆油を、最初に、フィトステロールが溶解して溶液が形成されるまで120℃で加熱する。96.81重量%の低脂肪ミルク(Cremoゼロ脂肪ミルク、スイス)を80℃まで加熱した。脂質の溶液をそのミルクに加え、80℃で超音波処理を行った。そのミルクを冷却したとき、偏光顕微鏡法により結晶は観察されなかった(図13b)。ISAMULSION中に可溶化した遊離のフィトステロールを含有するミルクを次に63℃で30分間殺菌した。4℃で4週間保存しても結晶は観察されなかった。同じ方法がとられても通常のエマルション(0.39重量%の遊離のフィトステロール、2.37重量%の大豆油及び97.24重量%のゼロ脂肪ミルク)が使用される場合は、処理後(図13a)及び殺菌後多数の結晶が存在する。
【0100】
実施例8:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させる遊離のフィトステロール及び乳脂肪を含有するミルク
0.42重量%の遊離のフィトステロール(ADM)、1.59重量%の不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J又はDimodan MO90、Danisco)及び1.02重量%の乳脂肪を、最初に、フィトステロールが溶解して溶液が形成されるまで120℃で加熱する。低脂肪ミルク(CoopからのCremoゼロ脂肪ミルク、スイス)を80℃まで加熱した。脂質の溶液を96.97重量%のミルクに加え、80℃で超音波処理を行った。処理後、偏光顕微鏡法によりステロールの結晶は観察されず、そのミルクを室温まで冷却した。
【0101】
実施例9:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させるルテインを含有するISAMULSION
0.001gのルテイン、0.4gの大豆油及び0.6gのDimodan U/Jを、均一で透明な溶液が形成されるまで加熱した。0.2gのTween80を、80℃に加熱した19gの水中に溶解させた。80℃に加熱した脂質の混合物を、80℃のTween溶液に加えた。超音波処理を2分間行った。ISAMULSIONが形成され、その試料を室温まで冷却したとき、偏光顕微鏡法によって結晶は検出されなかった。
【0102】
実施例10:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させる油としての遊離のフィトステロール類及びフィトステロールエステル類を含有するISAMULSION
0.21重量%の遊離のフィトステロール(ADM)、0.79重量%の不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J又はDimodan MO90、Danisco)及び0.52重量%のフィトステロールエステル(Danisco)を、最初に、遊離のフィトステロールが溶解して溶液が形成されるまで120℃に加熱した。0.2重量%のTween80を、98.28重量%の水中に分散させた。そのTween80の溶液を80℃に加熱し、脂質混合物を80℃でそのTween80の溶液に加えた。超音波処理を80℃で2分間行った。その結果、ISAMULSIONが形成され、偏光顕微鏡法によって確認して結晶が存在しない。
【0103】
実施例11:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させる油としての遊離のフィトステロール及びフィトステロールエステルを含有するミルク
0.21重量%の遊離のフィトステロール(ADM)、0.79重量%の不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J又はDimodan MO90、Danisco)及び0.52重量%のフィトステロールエステル(Danisco)を、最初に、遊離のフィトステロールが溶解して溶液が形成されるまで120℃で加熱した。98.48重量%の低脂肪ミルク(Cremoゼロ脂肪、スイス)を80℃まで加熱した。脂質溶液をそのミルクに加え、超音波処理を80℃で行った。処理後、偏光顕微鏡法によってステロール結晶は観察されず、そのミルクを室温まで冷却させた。
【0104】
実施例12:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させるアスコルビルパルミテートを含有するISAMULSION。
0.01重量%のアスコルビルパルミテート及び0.594重量%のDimodan U/jを混合し、アスコルビルパルミテートが溶解するまで加熱した。0.3996重量%の大豆油を、次にその均一な溶液に加えた。得られた脂質溶液を、80℃で98.9重量%の水中に導入した0.1重量%のカゼイン酸ナトリウムに、80℃で加えた。2分間にわたって80℃で超音波処理を用いた。その処理の後、ISAMULSIONが得られる。室温まで冷却したとき、偏光顕微鏡法によって結晶は観察されなかった。
【0105】
実施例13:PUFAを酸化から保護するポリ不飽和脂肪酸類(PUFAs)、ビタミンE及びビタミンCを含有するISAMULSION。
2重量%の魚油(SOFINOL SA、Manno、スイス)を、2.625重量%のDimodan U/J及び0.001重量%のビタミンE(Covi−Ox T70を混合したトコフェロール、Cognis、シンシナティ、米国)と均一な溶液が得られるまで混合した。脂質の溶液を、次に0.375重量%のTween80を95重量%の水に導入した中に加えた。超音波処理を2分間用いた。その処理の後、ISAMULSIONが得られる。0.001重量%のビタミンC(Fluka、Buchs スイス)を次にそのISAMULSIONに添加する。
【0106】
実施例14:アスコルビルパルミテートを大量に含有するISAmulsion。
0.2%のアスコルビルパルミテート(Danisco、デンマーク)を2%のDimodan Uと混合し、60℃で加熱して溶液を得る。1%の大豆油を、次にその脂質混合物に加え、次いで0.5%のTween80を含有する96.3%の水中に導入する。超音波処理を60℃で5分間行った。可溶化されたアスコルビルパルミテートを含有するISAMULSIONが得られ、偏光顕微鏡法によって結晶は観察されない。
【0107】
実施例15:酸化から保護されたPUFAを含有するミルク。
0.05gのアスコルビルパルミテートを、60℃で5gのDimodan Uに溶解した。アスコルビルパルミテートとDimodan Uとから形成されたその混合物を95gの魚油に溶解して親油性溶液を形成させた。0.6gのその親油性溶液を、20gのスキムミルク(cremoゼロ脂肪ミルク、スイス)に加えた。ISAMULSIONを得るために超音波処理を用いた。
【0108】
実施例16:ポリ不飽和脂肪酸類(PUFA)、ビタミンE及びアスコルビルパルミテートを含有し、PUFAを酸化から保護するために使用されるISAMULSION類。
0.002重量%のアスコルビルパルミテート及び2.625重量%のDimodan Uを混合し、アスコルビルパルミテートが溶解するまで加熱した。2重量%の魚油(SOFINOL SA、Manno、スイス)及び0.001重量%のビタミンE(Covi−Ox T70を混合したトコフェロール、Cognis、シンシナティ、米国)を、その均一な溶液に加えた。得られたその脂質の溶液を、95重量%の水中に0.375重量%のTween80を導入した中に加える。超音波処理を2分間にわたって使用した。その処理後、魚油が酸化から著しく保護されているISAMULSIONが得られる。
【0109】
実施例17:遊離のフィトステロール、ポリ不飽和脂肪酸類(PUFAs)、ビタミンE及びアスコルビルパルミテートを含有し、PUFAsを送達し、コレステロールの吸収を防ぐために使用されるISAMULSION
0.002重量%のアスコルビルパルミテート及び2.625重量%のDimodan Uを混合し、アスコルビルパルミテートが溶解するまで加熱した。1.45重量%の魚油(SOFINOL SA、Manno、スイス)、0.55%の遊離のフィトステロール及び0.001重量%のビタミンE(Covi−Ox T70を混合したトコフェロール、Cognis、シンシナティ、米国)を、その均一な溶液に加えた。その脂質の混合物を均一な溶液が得られるまで加熱した。得られたその脂質の溶液を、80℃でプレヒートした95重量%の水中に0.375重量%のTween80を導入した中に80℃で加える。超音波処理を2分間にわたって使用した。その処理後、ISAMULSIONが得られ、偏光顕微鏡法によって結晶は観察されない。
【0110】
Dimodan Uを、油、例えば大豆油又は魚油などで置き換える(最終組成:0.002重量%のアスコルビルパルミテート、2.625重量%の大豆油、1.45重量%の魚油、0.55%の遊離のフィトステロール、0.001重量%のビタミンE,0.375重量%のTween80、95%の水)、ことによる通常のエマルションを用いて同じことを行った場合、その遊離のフィトステロールは可溶化されず、多数の大きな結晶が顕微鏡により観察される。
【0111】
実施例18:N−メチルピロールと酢酸アルデヒドの間の反応を防いで化学安定性を増すISAMULSION
3重量%のDimodan U/J、2重量%の大豆油及び0.5重量%のTween80を、94.5重量%の水に加えた。ISAMULSIONを生成させるために10分の超音波処理を用いた。200ppmのN−メチルピロール(N−MP)及び200ppmの酢酸アルデヒド(AC)をそのISAMULSIONに加えた。もう1つの実験においては、200ppmのN−メチルピロール(N−MP)及び200ppmの酢酸アルデヒド(AC)を直接水に加えた。
【0112】
図14は、2日後に該ISAMULSION中及び水中に残っている芳香の濃度を示す。ACとN−MPの間の反応が、水と比較してISAMULSION中では強力に減少されることを明らかに実証している。
【0113】
実施例19:化学安定性を増すためにサルファイト類とプロパナールの間の反応を防止するISAMULSION
3重量%のDimodan U/J、2重量%の大豆油及び0.5重量%のTween80を、94.5重量%の水に加えた。ISAMULSIONを生成させるために10分の超音波処理を用いた。200ppmのプロパナール及び200ppmのサルファイト類を、該ISAMULSION中に入れた。もう1つの実験においては、200ppmのサルファイト類と200ppmのプロパナールを直接水相に加えた。実施例18におけるように、2日後、ISAMULSIONが存在する場合には芳香物質が通常の水相中に存在する場合の状況と比較して該反応は著しく減少した。
【0114】
実施例20:溶解性及びバイオアベイラビリティーを向上するためのγ−オリザノールを含有するISAMULSION
0.05gのγ−オリザノール、0.27gのDimodan U/J、0.18gの大豆油を、均一な溶液が形成されるまで加熱し、80℃に冷却した。0.1gのTween80を、9.4gの水に溶解し、80℃に加熱した。その2つの溶液を一緒に混合し、超音波処理を2分間行った。その試料が室温まで冷却した時点で、偏光顕微鏡法によって結晶は観察されなかった。通常のエマルション(組成:0.5重量%のγ−オリザノール、4.5重量%の大豆油、1重量%のTween80及び94重量%の水)に同じ方法を適用した場合、その試料を室温まで冷却した後、偏光顕微鏡法によって多数の結晶が証明された。
【0115】
実施例21:口を覆う感覚及び口当たり機能性を送達するISAMULSION
1.507gのヒマワリ油を、1gのDimodan U/Jと均一な溶液が形成されるまで加熱して混合した。その脂質の溶液を、0.05gのカゼイン酸ナトリウムを含有する47.5gの水に加える。超音波処理を2分間にわたって行った。形成されたISAMULSIONについては口を覆う感覚が得られた。同様にエマルションがつくられる場合(組成:47.1gの水、0.4gのカゼイン酸ナトリウム、2.5gのヒマワリ油)は、より少ない口を覆う感覚しか得られなかった。
【0116】
実施例22:ビタミンEアセテートが高負荷の濃厚なISAMULSION
1重量%のカゼイン酸ナトリウムを94重量%の水中に分散させた。3%のビタミンEアセテートを2%のDimodan U/Jと混合して均一な溶液を形成した。その脂質溶液をカゼイン酸塩溶液に加え、濃厚なISAMULSIONが形成されるまで10分間超音波処理を適用した。
【0117】
この濃厚なISAMULSIONは、任意の食品又は化粧品に添加して、ビタミンEアセテートが富化又は強化された製品とすることが容易にできる。このビタミンEアセテートは、製品中に均一に分布される。
【0118】
実施例23:ビタミンEの化学安定性を高め、ビタミンEのバイオアベイラビリティー及び効率を増すためにビタミンE及びアスコルビルパルミテートを可溶化するISAMULSION。
0.01重量%のアスコルビルパルミテート及び0.595重量%のDimodan U/jを混合し、アスコルビルパルミテートが溶解するまで加熱した。0.3986重量%のビタミンEを、次にその均一な溶液に加えた。得られたその脂質溶液を、98.9重量%水中に導入した0.1重量%のカゼイン酸ナトリウムに加えた。超音波処理を2分間用いた。その処理の後、酸化に対してビタミンEを保護し、それによってビタミンEの効率を増すISAMULSIONが得られる。
【0119】
実施例24:抽出による天然の有効成分の豊富なISAMULSION
320gのトマト濃縮物と、80gの油、即ち大豆油とDIMODAN U/Jの35/65の割合の混合物の混合物を、45℃に温め、調理用ミキサーにより1分間混合した。その混合物を、Sorvall遠心分離機により1時間40℃で5000RPMの遠心分離をした後、60gの油相を回収した。この油相のHPCL分析により、4mg/100g抽出物のリコペン含量が明らかとなった。抽出温度を60℃に、混合物の混合を10分に上げたとき、遠心分離後、油相中のリコペン含量は、20mg/100gのリコペンに増えた。得られた5gの脂質相(Dimodan U/J、大豆油及び抽出されたリコペンを含む有効成分を含有する)を、0.5gのTween80を含有する94.5gの水中に加えた。超音波処理を5分間行った。リコペンを含む生体利用が可能な天然の有効成分(生のトマトから抽出)が富化されたISAMULSIONが得られる。
【0120】
実施例25:親油性ビタミンカクテルを含有する安定した飲料
10.0gのEficacia(CNI、フランス)を、979gのVittel(Nestle、フランス)水に加え、電磁攪拌機により溶解する。80mgのビタミンD(DSM、スイス)、18mgのビタミンK(DSM、スイス)、7.2gのビタミンE(DSM、スイス)、160mgのビタミンA(DSM、スイス)を、3.6gのDimodan U中に50℃で溶解する。
【0121】
そのDimodan U/ビタミン類の溶液を、Eficacia溶液に加え、ローター/ステーターホモジナイザー(Polytron)を5分間使用した。その溶液は、Rannieホモジナイザーを用いてさらに均一化した。最初の100mlを除外し、残りの900mlをビンに回収した。形成されたISAMULSIONは、物理的に安定である(相分離、クリーミング、リング形成なし)。
【0122】
Dimodan Uを大豆油のような標準的な油で置き換えて同じことを行う場合は、通常のエマルションが得られる。このエマルションの物理的安定性は、それぞれのISAMULSIONの安定性より大幅に低い。
【0123】
この濃厚なエマルションは、親油性が増したビタミン飲料を得るために通常の水又は芳香化した水によって希釈される。
【0124】
実施例26:芳香化飲料
10.0gのEficacia(CNI、フランス)を、980gのVittel(Nestle、フランス)水に加え、電磁攪拌機により溶解する。6.3gのオレンジ精油を、3.6gのDimodan Uに50℃で加えた。
【0125】
そのDimodan U/精油溶液を、Vittelに加え、ローター/ステーターホモジナイザー(Polytron)を5分間使用した。その溶液を、Rannieホモジナイザーを用いてさらに均一化した。最初の100mlを除外し、残りの900mlをビンに回収した。そうして形成されたISAMULSIONは、物理的に安定である(相分離又はクリーミング及びリング形成なし)。
【0126】
Dimodan Uを大豆油のような標準的な油で置き換えて同じことを行う場合は(10gのEficacia、3.6gのDimodan U、3.6gのオレンジ精油)、ISAMULSIONにおいて得られるものに比べて低い物理的安定性(保存数日後のクリーミング、リング形成)のみを有するエマルションが得られる。
【0127】
該エマルション濃厚液は、水で希釈して、親油性が増したビタミン飲料を得ることができる。
【0128】
実施例27:ハッカ油を含有する清涼飲料
0.13重量%のハッカ油及び0.0032重量%のDimodan Uを混合し、均一な溶液が形成されるまで加熱した。0.13重量%のEficacia(CNI、フランス)を99.74%の水に加え、磁気攪拌機を用いて分散させた。その脂質混合物をEficacia溶液に加えた。Polytronホモジナイザーを10分間使用して安定なエマルション(クリーミング、リング形成なし)を得る。このエマルションは、希釈して清涼飲料を得ることができる。
【0129】
実施例28:持続性リフレッシュ感覚を与える飲料
0.26重量%のハッカ油及び0.039重量%のDimodan Uを混合し、均一な溶液を形成するまで加熱した。0.26重量%のEficacia(CNI、フランス)を99.44%の水に加え、磁気攪拌機を用いて分散させた。その脂質混合物をEficacia溶液に加えた。Polytronホモジナイザーを10分間使用して安定なエマルションを得た。このエマルションは、希釈して長続きするリフレッシュ効果を有する即席飲料を得ることができる。
【0130】
実施例29:酸化から保護されたビタミンEを含有するISAMULSION
0.05%のアスコルビルパルミテート(Danisco、デンマーク)を、60℃で0.6%のDimadan U中に溶解した。0.4重量%のd−αトコフェロール(Acros organics、ニュージャージー、米国)を、該Dimadan U/アスコルビルパルミテート混合物と混合した。得られた脂質溶液を0.2%のカゼイン酸ナトリウム(Emmi、スイス)を含有する98.75%の水に加えた。超音波処理を2分間行い、ビタミンEが酸化から保護されているビタミンEの分散体を得た。
【0131】
上述の実施例に従って調製されたISAMULSIONは、そのまま、又は添加剤として用いることができる。
【0132】
本発明を十分に説明したが、本発明の範囲又は本発明のいずれの実施形態にも影響を及ぼすことなく、条件、処方、及び他の要因の広範且つ同等の範囲内で同様に実施できることを、当業者は理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】α=100*LPA/(LPA+油)の関数として、ISAMULSION油滴内部に見出された構造を示す図である。
【図2】周期性のない自己集合構造を有する油滴を含有する典型的なISAMULSIONのCryo−TEM顕微鏡写真を示す図である。
【図3】ISAMULSION、ISAMULSIONの製造に用いたバルク油相(LPAによってナノ構造化)、及び相当する通常のエマルション(LPAなし、ナノ構造なし)の小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。
【図4】様々なLPAの量、即ちα値(α=100*LPA/(LPA+油))を含有する、ISAMULSIONの小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。
【図5】油滴の内部構造がミセルキュービックであり、空間群がFd3mである複数のISAMULSIONのcryo−TEMを示す図である。
【図6】相当する通常のエマルション液滴(LPA不在下、ナノ構造なし)(b)と比較した、周期構造のないISAMULSION油滴(LPA存在下、ナノ構造あり)(a)のCryo−TEM画像を示す図である。ISAMULSION液滴内部で認められる内部構造(図6a)は、通常の油滴内では認められない(図6b)ことが分かる。
【図7】(a)は、ISAMULSION(LPAあり、ナノ構造あり)、及び相当する通常のエマルション(LPAなし、ナノ構造なし)(d)の小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。(b)及び(c)は、高含量の油及び低含量のLPAを含むISAMULSIONに相当する。
【図8】水20%の存在下における飽和−不飽和モノグリセリド混合物の擬二元相図を示す図である。
【図9】親水性ドメインを含有するISAMULSION油滴の概略図である。親水性ドメインは、球状、又は非球状、即ち、ロッド、ディスク又はチャネルであり得ることに留意されたい。活性分子の可能性のある位置の例が示されている。
【図10】逆ミセルキュービック構造を有する油滴を含有するISAMULSIONの小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。
【図11】油とLPAとして、モノリノレイン(MLO)及びモノオレイン酸ジグリセロール(DGMO)の混合物により製造したISAMULSIONの小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。
【図12】油とLPAとして、リン脂質(ホスファチジルコリン(PC))及びモノリノレイン(MLO)の混合物を用いて製造したISAMULSIONの小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。
【図13】(a)油中に遊離フィトステロールが存在し、通常のエマルションが形成されるときにフィトステロール結晶が見え、(b)遊離フィトステロールがISAMULSION液滴中に可溶化されているときにはフィトステロール結晶が存在しない偏光によって得られる光学顕微鏡画像を示す図である。
【図14】芳香を水中及びISAMULSION中に導入したとき、2日後に、結果として存在する芳香(Nメチルピロール(N−MP)及び酢酸アルデヒド(AC))を示す図である。2日後に芳香はISAMULSION中で安定であるが、それらは水中では劣化することに注意されたい。図14は、貯蔵2日後にヘッドスペース測定によって測定した分散体中に存在する油滴構造の機能としての芳香の残留百分率を示す(実施例18における組成物参照)。
【図15】ISAMULSION及び通常のエマルションに対する陽子移動反応−質量分析計(PTR−MS、Ionicon Analytik、インスブルック、オーストリア)によって芳香のヘッドスペース測定の結果を示す図である。芳香放出(PTR−MSによって検出した質量濃度の和)を、時間の関数として表している。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、新たな又は改良された機能性を送達するために、栄養素、薬物、芳香又は化学物質等の有効成分を溶解又は分散させるために使用される分散した油滴が自己集合構造を示す水中油型エマルションに関する。
【0002】
[発明の背景]
産業におけるエマルション
エマルションは、食品、化粧品、医薬品又は農薬等の多くの工業製品における共通のコロイド系である。それらは、消費者に官能分子を送達するため、又は一定の質感若しくは喜びを与えるためにしばしば使用される。水中油型エマルションは、水の連続相中に分散した油滴からできている。その分散した油滴はその油滴の回りに層を形成する親水性の界面活性分子によって安定化される。油相を連続水相中に分散させるためには様々な大きさの範囲の油滴(約100nmから数百ミクロンまでの半径を有する)を生み出すことを可能にするホモジナイザーが使用される。均質化ステップの間の油滴の周りの層の形成は、油滴を、融合、凝集又は凝析に対して動的に安定化させる。水中油型系のエマルション製品中に使用される界面活性物質は、低分子量の親水性界面活性剤、例えばポリソルベート、リゾレシチンなど、又はポリマー類、例えばタンパク質、例えばゼラチン若しくはミルク、大豆由来のタンパク質、又は多糖類、例えばアラビアゴム若しくはキサンタン、又は粒子材料、例えばシリカ粒子、又はそれらの混合物のいずれかであり得る。
【0003】
水中油型エマルションに基づく製品は、食品、化粧品、医薬品又は農薬に広く普及している。顕著な水中油型エマルション系食品は、例えば、ミルク、マヨネーズ、サラダ用ドレッシング類、又はソース類である。化粧品工業又は医薬工業で使用される顕著な水中油型エマルションに基づく製品は、ローション類、クリーム類、乳液類、ピル類、錠剤類などである。かかる製品中の油滴は、通常、例えばトリグリセリド類、ジグリセリド類、ワックス類、脂肪酸エステル類、脂肪酸類、アルコール類、鉱物油類、炭化水素類、又はその他の油性物質でできている。
【0004】
エマルションは、出発材料、中間体又は最終生成物として、或いは最終生成物への添加剤としてのいずれかで使用される。
【0005】
有効成分を送達するためのエマルション
工業におけるエマルションの使用の1つは、活性化合物、例えばフレーバー類、ビタミン類、抗酸化物質類、栄養補助食品類(neutraceuticals)、植生化学物質類、薬物類、化学物質類等を送達することである。活性成分の投与には、有効量の活性成分を所望の作用場所に持っていくための適切なビヒクルの使用が必要である。水中油型エマルションは、それらが親油性の活性化合物の油中への増大した溶解性の利点を利用するので共通して使用される送達系である。欧州特許第1116515号明細書では、フレーバー性能を制御するためのエマルション使用の例として、製品をさらに加工する間に導入した活性成分の安定性を増すために、フレーバー成分など疎水性活性成分を、母体中に押出機によって水中油型エマルションの形で混合している。国際公開第00/59475号パンフレットでは、医薬品の水中油型エマルションの例として、イオン化疎水性治療薬の改良された送達のための組成物及び方法が記載されており、それはイオン化剤、界面活性剤及びトリグリセリドと共に混合して水中油型エマルションを形成している。国際公開第99/63841号パンフレットは、食品分野におけるエマルションの使用例として、エマルション又はマイクロエマルションの形成が原因で水相中の高められた溶解性及び分散性を有するフィトステロールを含む組成物を記載している。
【0006】
フィトステロール類、リコペン又は水不溶性薬物などの有効成分のo/wエマルション又は分散体の油滴中への溶解は、分散性、即ち、有効成分の製品中への均一な混和を促進することができるばかりでなく、それらの生物学的送達度又はバイオアベイラビリティーを増すために使用することもできる。臨床実験及び動物実験により、薬物及び栄養素等の有効成分の最大の効果及びバイオアベイラビリティーは、一般に、有効成分が、可溶化又は溶解されて例えばミセルとなり、大きな結晶の形では存在しないときに得られることが示された[Ostlund,E.0.、C.A.Spilbourgら(1999)、「Sitostanol adminstered in lecithin micelles potently reduces cholesterol absorption in humans」、American Journal of Clinical Nutrition 70:826〜31;M.Kinoshita、K.Babaら、(2002)、「Improvement of solubility and oral bioavailability of a poorly water−soluble drug,TAS−301,by its melt adsorption on a porous calcium silicate」、Journal of Pharmaceutical Sciences、91(2):362〜370]。小さな又は微細化された結晶は、それらが消化される間により速く溶解するために大きなものより一層のバイオアベイラビリティーがある可能性がある。
【0007】
水中油型エマルション中の油滴が、極端に小さく、例えば、直径がほぼ数ナノメートルから約200nm程度の場合、そのエマルションは、水中油型マイクロエマルションと呼ばれる[Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編);「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York、(1999)]。これらのエマルションは、透明で、熱力学的に安定であり、それ故、当業者にとっては、熱力学的に不安定であり一般に濁っている通常のエマルションとは異なる。
【0008】
[発明の説明]
最新技術では、油滴に溶解している親油性分子のビヒクルとして、水中油型エマルションの分散油滴が用いられている。ビヒクル系としてのこの種のエマルションの欠点は、結晶性分子(即ち結晶の形態で存在する)、親水性分子又は両親媒性分子を、単独又は親油性の化合物の組合せでは、油相中の分子の溶解性の欠如のために、受け入れられないことである。結晶性又は両親媒性又はヒドロトロープ化合物の送達は、それらが親水性乳化剤の安定化機能を阻害する傾向があり、その結果、それらはエマルションを不安定にする可能性があるために特に困難である。
【0009】
本発明は、親油性、両親媒性及び親水性分子のいずれをも蓄積することができる通常の油滴の内部の新規なナノサイズの自己集合構造の発見に基づいている。その構造は、親油性の添加剤(LPAで表す)の油滴中への添加によって形成される。かかる構造は、親油性成分ばかりでなく同時に親水性成分及び/又は両親媒性成分又はヒドロトロープ性成分又は結晶性成分もまた可溶化することができる。このナノサイズの自己集合油滴中の構造は主としてナノサイズであり熱力学的に安定な親水性ドメイン類即ち水滴、水ロッド又は水チャネルからなる。エマルション油滴内部に自発的に(熱力学的に誘導された)形成されたナノサイズのドメイン類は、LPAによって安定化される。LPA分子の親水性部分は、親水性ドメイン構造の一部である。その親水性ドメイン類は、直径が0.5〜200nmの大きさのものであり得る。好ましくはその親水性ドメインは直径が0.5〜150nmの範囲である。さらにより好ましくは、その親水性ドメインは、直径が0.5〜100nmの範囲である。そして最も好ましくは、その親水性ドメインは、0.5〜50nmの範囲である。
【0010】
本明細書では、「親水性ドメイン」は、水ドメイン類及びLPA分子の親水性頭部領域からなる。親水性ドメイン類の大きさは極端に小さいために、それらはまた、様々な異なる有効成分の可溶化に対して好適な場所となる大きな表面積も提供する。
【0011】
本発明は、油滴中のLPA鎖領域内に局在すると思われる親油性、及び/又は結晶性、及び/又は両親媒性有効成分の送達を対象とする。さらに、本発明は、油滴内の親水性ドメイン類の頭部領域中又は油滴内の親水性ドメイン中又は油滴の外側の水相中に局在する親水性又は両親媒性の有効成分の送達を対象とする。油滴内の大きな表面積の存在によって、水中油型エマルションの油滴内に表面積又は親水性ドメイン類がなければ生み出すことが不可能な新規な又は改良された機能性を生み出すことが可能となる。例えば、油滴中のこれらの自己集合構造中への有効成分の可溶化又は会合は、異なる機能性を引き起こす。本発明は、さらに、以下の用途のための上記水中油型エマルションに関する:
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を存在させることによる、水不溶性、油不溶性有効成分、結晶性有効成分の溶解性及び/又は分散性の向上。該有効成分は、通常の水中油型エマルション中に溶解された場合、使用温度又は保存温度で晶出する。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、水中油型エマルション中の有効成分の安定性、化学劣化又は酸化に対する保護の向上。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、消化中の有効成分のバイオアベイラビリティー、生物学的送達度、バイオディスポニビリティー(biodisponibility)、又は吸収性の向上。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、健康に作用する機能性を創造又は改良するための消費又は消化中の有効成分の放出、バースト放出、又は持続放出の制御。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、健康に作用する機能性を追加又は改良するための有効成分の効率性、有効成分の持続的効率、又は有効成分のバースト放出の増大。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、新たな、又は改良された知覚特性を生み出すための芳香又はフレーバーの放出、芳香又はフレーバーのバースト放出、或いは芳香又はフレーバーの持続放出の制御。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、異なる味覚、異なる質感、口当り、口を覆う感覚、又はクリーム感覚の創造。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、有効成分の味マスキング又は異味マスキング。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、構造物などの有効成分のフレーバーマスキング又はオフフレーバーマスキング。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、有効成分の味又はフレーバーの調節。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、色調節又はメイラード反応を介する褐変の増大。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、加熱又はマイクロ波作用中の色調節、褐変の増大、化学反応収率又はメイラード反応収率の向上。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、化学反応収率の制御又はメイラード反応収率の制御。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、加熱又はマイクロ波作用中の化学反応収率の制御又はメイラード反応収率の制御。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、水中油型エマルション中の有効成分を富化するための任意の種類の原料又は製品からの有効成分の抽出。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、健康又は感覚に有利なように有効成分の放出を制御するための消費、咀嚼又は消化の間の口内での原料又は製品からの有効成分の抽出。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、上記の機能性の組合せに基づく任意の種類の機能性。
− 油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによる、加熱中、冷却中、加工中、咀嚼中、消費中又は消化中に、或いは口中で水中油型エマルションの内部構造を変化させるか又は水中油型エマルション全体の構造を変化させることによって得られる上記の任意の種類の機能性又は機能性の組合せ。
【0012】
本発明の水中油型エマルション中の有効成分の存在は、製品に新たな、又は改良された機能性をもたらす。有効成分の例は、フレーバー類、フレーバー前駆物質類、芳香類、芳香前駆物質類、旨味向上剤類、塩類、糖類、アミノ酸類、多糖類、酵素類、ペプチド類、タンパク質類又は炭水化物類、栄養補助食品類(foodsupplements)、食品添加剤類、ホルモン類、細菌類、植物エキス類、薬剤類、薬物類、栄養素類、農薬用途又は化粧品用途向けの化学物質類、カロテノイド類、ビタミン類、抗酸化物類又はルテイン、ルテインエステル類を含む群から選択される栄養補給食品類、β−カロテン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコトリエノール、リコペン、Co−Q10、亜麻油、魚油、オメガ−3油類、オメガ−6油類、DHA、EPA、アラキドン酸富化油類、LCPUFA油類、メントール、ハッカ油、リポ酸、ビタミン類、ポリフェノール類及びそれらのグリコシド類、エステル及び/又は硫酸抱合体類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバノン類及びそれらのグリコシド類、例えばヘスペリジンなど、カテキンモノマー類及びそれらのガレートエステル類例えばエピガロカテキンガレートなどを含むフラバン3−オール類及びそれらのプロシアニジンオリゴマー類、ビタミンC、ビタミンCパルミテート、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD、α−及び/又はγ−ポリ不飽和脂肪酸類、フィトステロール類、エステル化したフィトステロール類、遊離のエステル化されていないフィトステロール類、ゼアキサンチン、カフェイン、並びにそれらの組合せである。
【0013】
有効成分は、油、LPAであり、水溶性、水不溶性、油溶性又は油不溶性であり得る。
【0014】
有効成分は、新たな又は改良された機能性を製品に送達するためにエマルションに直接加えることができる。かかる有効成分は、例えば、薬物類、栄養素類、芳香類又はフレーバー類であり得る。有効成分は、新たな又は改良された機能性を、製品に間接的に送達することもできる。例えば、モノグリセリド又はリン脂質等の親油性添加剤の添加は、油滴の内部ナノ構造を変化させる。油滴の内部ナノ構造の変化は、新たな又は改良された機能性、例えば製品に対するより良好な口当り、口を覆う感覚、質感又は安定性を誘発させるであろう。
【0015】
製品に間接的に送達される機能性の例は、本発明の水中油型エマルションのクリーミング、融合又は凝集に対する物理的安定性に関係する。LPAの分散した油滴への添加は、通常のエマルション配合物(油滴相にLPAを添加していない;参照のエマルション)と比較したとき、該エマルションのクリーミング及び融合に対する物理的安定性を著しく改善する。LPAの油滴への添加は、即ち、油滴内に親水性ドメイン(一定量の水を含む)を発生させることにより、エマルションの液滴の比重が増大し、したがって、クリーミングの割合を減少し、又はその液滴のクリーミングを停止さえして、エマルションの上端の「リング」の形成を回避する。リングの形成は、過剰なクリーミングの典型的な結果である。
【0016】
本発明のエマルション系は、水−油−水ダブルエマルションとして普通に知られているエマルションとははっきりと区別される。w/o/w(水/油/水)ダブルエマルションは、油滴がミクロンサイズの水滴を含む水中油型エマルションである(Garti,N.;Bisperink,C;Curr.Opinion in Colloid & Interface Science(1998)、3、657〜667)。分散しているダブルエマルション油滴の内側の水滴は、機械的エネルギー入力、例えば、均質化によって調製(分散)され、結果として熱力学的に不安定であり、自己集合ではない。w/o/wダブルエマルション中の内部の水滴の直径は、300nmの直径より大きい。本発明のエマルションは、本発明のエマルションの油滴の内側のナノサイズの自己集合構造の形成が、自発的であり、熱力学的に進められ、水滴又はチャネルの平均直径が200nm未満であるので、通常のw/o/wダブルエマルションとは容易に区別することができる。
【0017】
したがって、本発明は、0.5nmから200nmの範囲の親水性ドメインを備えたナノサイズの自己集合構造を含む油滴に向けられており、本発明のその油滴又は水中油型エマルションは有効成分を含有する。その有効成分の量は、組成物全体の0.00001%より高い。好ましくは、それは0.00003%より高く、より好ましくは0.0001%より高い。さらにより好ましくは、有効成分の量は、組成物全体の0.001%より高い。その有効成分の量は、0.00001%と79%の間である。0.00001%と50%の間である有効成分の量を有することも可能である。その有効成分の量は、0.001%と10%の間であることもできる。その有効成分の量は、79%未満である。好ましくは、その有効成分の量は、組成物全体を基準として50%未満である。その低い範囲と高い範囲の任意の組合せが、本発明の範囲に含まれる。その有効成分の量は、重量%又はモル%で示すことができる。
【0018】
「自己集合」又は「自己組織化」という概念は、別々の分子による凝集体(結合体)又はナノ構造の自発的な形成を指す。自己集合構造中の分子は、もっぱら、与えられた分子間力、例えば疎水性、水和作用又は静電気の力等によるそれらの構造及び化学特性に基づくそれらの適切な位置を見出す[Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編);「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York、(1999)]。自己集合の結果は、調製方法自体には依存せず、その系の最低エネルギーの状態(安定平衡)に相当する。
【0019】
公開特許公報第2004−008837号明細書は、油滴中に存在する水溶性固体粒子を含有する水中油型エマルションを開示している。その粒子は、20nmから10μmの大きさの範囲内である。粒子を、脱水(即ち、自発的過程ではない)によって油中水型(w/o)エマルションの形で調製した後に、全体の粒子/油(S/O)懸濁液を、多孔質膜乳化方法を用いて水相に分散させる。
【0020】
国際公開第02/076441号パンフレットは、固体ナノ粒子を調製するための前駆物質としてのフルオロカーボン中のアルコール型マイクロエマルションの使用を開示している。そのナノ粒子は、200〜300ナノメートルより下の直径を有する。ナノ粒子の形成は、自発的ではなく、前駆物質のマイクロエマルションを約35℃より下に冷却するか、又は前駆物質のマイクロエマルション中のアルコールを蒸発させるか、又はそのマイクロエマルションを適当な極性溶媒で希釈することによって引き起こされる。
【0021】
米国特許出願公開第2004/022861号明細書は、油滴がタンパク質又は別の親水性物質を含有する水性の微細な水相を含有するw/o/w型ダブルエマルションを開示している。そのダブルエマルション全体は、タンパク質が詰まった微小粒子を製造するために、毛細管ノズルによって例えば液体窒素中に噴射される。
【0022】
これらの例は、すべて、w/o型マイクロエマルション又はw/o型若しくはw/o/w型ダブルエマルションを用い、油滴の内部の親水性ドメインの固化に対する外部からのきっかけを必要とする固体の親水性(ナノ)粒子の非自発的形成について記載している。(ナノ)粒子の調製後、それらは、温度、pH、又は外側流体の性質などの環境因子によって大きくは影響されない。水滴が固化されない、即ち流体である通常のw/o型マイクロエマルションは、上記のような環境因子によって大きく影響されることを述べておかなくてはならない。
【0023】
多数の科学的研究により、それぞれのウインザー系(Winsor system)[ウインザーI(o/w型マイクロエマルション+過剰の油)又はウインザーII(w/o型マイクロエマルション+過剰の水)]の均質化によって形成されたエマルションのタイプは、その過剰の連続相が平衡状態にあるマイクロエマルション相中で形成されたものと同じであることが示されている。例えば、w/o型マイクロエマルション+過剰の水(ウインザーII系)の乳化は、十分に高い、即ち油相中の界面活性剤の臨界濃度cμcoilより大きい界面活性剤濃度において、w/o型エマルションを与え、その連続相は、それ自体がw/o型マイクロエマルションである(B.P.Binks、Langmuir(1993)、9、25〜28)。このことは、通常のw/o型マイクロエマルションが水相によって希釈されるとき、o/w型エマルションの形成よりもw/o型エマルションの形成が好ましいことを意味する。Binksら、(B.P.Binks、Langmuir(1993)、9、25〜28)は、この挙動をBancroftの規則(W.D.Bancroft、J.Phys.Chem.(1913)17、501)と関わる水相と油相の間の界面活性剤の分割の観点から説明した。つまり、界面活性剤が油相中に蓄積される場合、即ち、水相中より油によりよく溶解する場合、形成されるエマルションのタイプは、常にw/o型であってo/w型ではない。w/o型マイクロエマルション又はウインザーII系(w/o型マイクロエマルション+過剰水)からo/w型エマルションを形成するためには、その界面活性剤が転相、即ちその溶解性の油溶性(w/o型エマルションの形成)から水溶性(o/w型エマルションの形成)への変化を受けることが必要である(P.Izquierdoら、Langmuir(2002)18、26〜30)。アルキルエトキシレート、例えばC12EO4などの非イオン界面活性剤を使用し、系を冷却して40〜50℃(PIT温度)から25℃に下げることによってこれを達成することができる。これは、親油性添加剤の相挙動(LPAは、室温で油相中にw/o型マイクロエマルションを形成する)を、親水性ドメイン又はLPAを含有する油滴が通常の水溶性乳化剤によって安定化されるo/w型エマルションの形成と相互に関連付ける本発明とは完全に異なる。この場合には親水性ドメインは、流体であって固体ではない。w/o型マイクロエマルション又は親水性ドメインを含有する油は、転相を受けることも、分散した油滴中の親水性ドメインを失うこともなく、且つ分散ステップの前に油滴中の内部親水性ドメインを固化する必要もなく、水相中に希釈する(分散させる)ことができる。
【0024】
本発明によれば、本発明の水中油型エマルションの油滴中のナノサイズの自己集合構造の自発的形成は、様々な方法で実現させることができる。1つの方法は、均質化ステップの前に、ナノサイズの自己集合構造の自発的形成を可能にする親油性添加剤(LPA)を油相に添加するものである。他の方法は、親油性添加剤(LPA)を、均質化ステップの後でエマルション製品に添加するものである。この場合、その親油性添加剤は、油滴中に溶解し、油滴中のナノサイズの自己集合構造の自発的形成をもたらす。ホモジナイザーとしては、通常の工業用又は実験室規模のホモジナイザー、例えば、Rannie社製ピストンホモジナイザー、Kinematica社製ローターステーターミキサー、コロイドミル、ステファンミキサー、クエットシェアセル又は膜乳化装置を用いることができる。さらに、超音波、水蒸気圧入又は調理用ミキサーもまた本発明に記載のエマルションを製造するのに適する。油滴中のナノサイズの自己集合構造の自発的形成は、エマルションを作製するために使用されるエネルギーの摂取量、及び一連のLPA添加には依存しない。このことは、ナノ及びマイクロ流体工学技術もまた本発明のエマルションを製造するのに適していることを意味する。
【0025】
加熱もまた、高温においては内部構造がより低粘度であり、分散過程が低温におけるよりも高温における方がより少ないせん断力を必要とすることになり得るために分散過程を促進し得る。
【0026】
本発明のエマルションを製造するための別の手段は、ヒドロトロープ又は水構造ブレーカー、或いは化学的又は熱力学的に推し進めることができる自発的乳化の使用である[Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編);「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York、(1999)]。
【0027】
本発明のエマルションを製造するための別の手段は、ジブロックコポリマー若しくはアポタンパク質に似たバイオポリマー類、例えばタンパク質−多糖複合体類若しくはコアセルベート類、又はタンパク質−多糖、タンパク質−タンパク質、又は多糖−多糖ハイブリッド、又はポリマー類とバイオポリマー類の混合物など、或いは親水性低分子量界面活性剤を添加することによって、水中油型エマルションの油滴中のナノサイズの自己集合構造の自発的形成を油滴の自発的形成と組み合わせることによるもの、即ち本発明の全体のエマルションである。
【0028】
本発明のエマルションを製造するための別の手段は、透析を用いるものである。その1つは、親油性添加剤(LPA)を油相及びエマルション中の油滴を安定化するために使用する親水性乳化剤に混合する方法である。LPA、油相及び親水性乳化剤からなる混合物を、ミセル相又はラメラ相又は任意のその他の相が形成されるように水と混合する。透析膜を使用することによって、バルクの水相中の過剰の親水性乳化剤を除去することが可能となり、本発明の水中油型エマルションが形成される。
【0029】
本発明のエマルションを製造するための別の手段は、ゲスト分子の制御作用を使用して、本発明の油滴の内部構造を、該油滴相が油−LPA−水からなっておりゲスト分子を含まない液滴相中よりも水相中に分散するように、より小さい粘性であってより少ないエネルギーを要するものとなるように修正するものである。集結した混合物(油−LPA−ゲスト分子−水)を分散させることは、油相構造が低粘度のものであるので容易である。エマルションの油滴の内部構造は、希釈したとき、ゲスト分子が均質化及び希釈の間に油滴を離れて水性の連続相中に溶解するために変化する。この手段に対して、該ゲスト分子は、親水性であり、浸透活性であることが望ましい。
【0030】
エマルション調合物
本発明は、油滴(5nmから数百ミクロンの範囲の直径を有する)が親油性添加剤(LPA)によって形成される0.5nm〜200nmの範囲の親水性ドメインによるナノサイズの構造化を示す水中油型エマルションに関するものであり、その水中油型エマルションは、有効成分を含有する。その有効成分の量は、組成物全体の0.00001%を超える。好ましくは、それは組成物全体の0.00003%を超え、より好ましくは、0.0001%を超え、さらにより好ましくは0.001%を超える。有効成分が含まれる量は、0.00001%と79%の間である。0.00001%と50%の間である有効成分の量を有することも可能である。有効成分の量は、79%より低い。好ましくは有効成分の量は、組成物全体を基準として50%より低い。低い範囲及び高い範囲の任意の組合せが、本発明の範囲内のものである。有効成分の量は、重量%又はモル%で示すことができる。
【0031】
LPAは、化学的、生化学的、酵素的又は生物学的手段によってそれ自体添加又はin−situで製造することができる。本発明のエマルション中に存在する油滴の量(油滴体積分率)は、通常の水中油型エマルション製品において一般に使用される量である。それは、0.00001重量%と80重量%の間で変動することができる。本発明の水中油型エマルションは、油滴の大きさによって、水中油型エマルション(大き目の油滴)、o/w型ミニエマルション、o/w型ナノエマルション又はo/w型マイクロエマルションのいずれかであり得る。
【0032】
より正確には、本発明は、
(i)鉱物油類、炭化水素類、植物油類、ワックス類、アルコール類、脂肪酸類、モノ−、ジ−、又はトリ−アシルグリセロール類、精油類、フレーバー油類、親油性ビタミン類、エステル類、栄養補給食品類、テルピン類、テルペン類及びそれらの混合物からなる群から選択された油と、
(ii)親油性添加剤(LPA)又は約10より低い、好ましくは8より低い結果としてのHLB値(親水性−親油性バランス)を有する親油性添加剤と親水性添加剤の混合物と、
(iii)水又はポリオール等の非水性極性液体を含む液滴、ロッド又はチャネルの形の親水性ドメインと
を含むナノサイズの自己集合構造化内部を有する分散した油滴、
及び
親水性エマルション乳化剤類を含有する水の連続相
を含む水中油型エマルションを対象とする。
【0033】
本明細書において使用される「親油性添加剤」(「LPA」と略されもする)とは、分散した油相中に安定なナノサイズの自己集合構造を自発的に形成する親油性両親媒性物質を指す。その親油性添加剤(混合物)は、脂肪酸類、ソルビタンエステル類、プロピレングリコールモノ−又はジエステル類、ペギル化脂肪酸類、モノグリセリド類、モノグリセリド類の誘導体類、ジグリセリド類、ペギル化植物油類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類、リン脂質類、ケファリン類、脂質類、糖エステル類、糖エーテル類、スクロースエステル類、ポリグリセロールエステル類及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
本発明の第1の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造又はL2構造及び油構造の組合せ(マイクロエマルション又は等方性液滴)とからなる群から取られる内部構造を有する油滴を示す。
【0035】
本発明の第2の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造(マイクロエマルション又は等方性液滴)を有する油滴を示す。
【0036】
本発明の第3の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造(マイクロエマルション又は等方性液滴)又は液晶(LC)構造(例えば、逆ミセルキュービック、逆バイコンティニュアスキュービック又は逆ヘキサゴナル)及びそれらの組合せからなる群から選択される内部構造を有する油滴を示す。
【0037】
本発明の第4の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、LC内部構造を有する油滴を示す。
【0038】
本発明の第5の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、L3構造、L2構造とL3構造の組合せ、ラメラ液晶(Lα)構造とL2構造の組合せ、並びにラメラ結晶構造とL2構造の組合せからなる群から選択される内部構造を有する油滴を示す。
【0039】
本発明の第6の実施形態によれば、該水中油型エマルションは、0℃から100℃の温度範囲で、これまでに記載した構造の組合せである内部構造を有する油滴を示す。
【0040】
上記の内部構造は、すべて紛れもなく、小角X線散乱(SAXS)分析及び低温電子顕微鏡(cryo−TEM)[Qiuら、Biomaterials(2000)21、223〜234、Seddon.Biochimica et Biophysica Acta(1990)1031、1〜69、Delacroixら、J.MoI.Biol.(1996)258、88〜103、Gustafssonら、Langmuir(1997)13、6964〜6971、Portes.J.Phys:Condens Matter(1992)4、8649〜8670]、並びにcryo−TEM画像の高速フーリエ変換(FFT)によって測定することができる。
【0041】
一定の用途に対しては、100℃より高い温度を使用すること(例えば、結晶分子をレトルトにかける温度又は溶融させる温度或いは油又は/及びLPAを含む媒体中で結晶分子を溶融させる温度)も可能であり、本発明の対象である。
【0042】
親油性添加剤(LPA)は、また、親水性添加剤(10より大きいHLBを有する)と混合して、全体的な混合物のHLBが10又は好ましくは8を超えない量までの混合物とすることもできる。その添加剤(混合物)は、また、化学的、生化学的、酵素的又は生物学的手段によってin−situで製造することもできる。
【0043】
添加される親油性添加剤の量は、αとして定義される。αは、比LPA/(LPA+油)×100として定義される。αは、好ましくは0.1より高い。より好ましくは、αは、0.5より高い。さらにより好ましくは、αは1より高い。さらにより好ましくは、αは3より高い。さらにより好ましくは、αは、10より高い。最も好ましくは、αは、15より高い。
【0044】
比α=LPA/(LPA+油)*100は、好ましくは99.9より低い。より好ましくは、αは、99.5より低い。さらにより好ましくは、αは、99.0より低い。さらにより好ましくは、αは、95より低い。さらにより好ましくは、αは、84より低い。さらにより好ましくは、αは、80より低く、最も好ましくは、αは、70より低い。その低い範囲と高い範囲の任意の組合せが、本発明の領域に含まれる。αは、重量%又はモル%のいずれかで示すことができる。αの下限及び上限は、用いた油及びLPAの特性、例えば極性、分子量、誘電率など、或いは油滴相中のLPAの臨界凝集濃度(cac)又は臨界ミセル濃度(cmc)などの物理的特性に依存する。
【0045】
該エマルションは、通常の水中油型エマルションの液滴を安定化させるのに適する親水性乳化剤によって安定化される。その親水性乳化剤は、「補助的な乳化剤」又は「安定剤」であることを示すこともできる。該エマルションは、使用する親水性乳化剤によって、凝集(凝結)させたりさせなかったりすることができる。その親水性乳化剤は、8を超えるHLBを有する低分子量親水性界面活性剤類、ゼラチン、例えばミルクから(乳漿タンパク質単離物、カゼイン塩)又は大豆からのタンパク質類、ブロックコポリマー類、アラビアゴム等の界面活性親水コロイド類、ジブロックコポリマー又はアポタンパク質に似たバイオポリマー類、例えばタンパク質−多糖複合体類若しくはコアセルベート類、又はタンパク質−多糖、タンパク質−タンパク質、又は多糖−多糖ハイブリッド類、複合体類若しくはコアセルベート類、或いはポリマー類とバイオポリマー類の混合物などからなる群から選択される。粒子類(ナノ又はマイクロ)も、本発明の水中油型エマルションを安定化させるために使用することができる。
【0046】
エマルション技術の主要な検討事項は、界面活性剤又は乳化剤とも称される、優れた表面特性(又は活性)、即ち、油滴の周囲に形成される界面への効果的な吸着、及び有効で効率的な界面張力の低減を示す界面活性成分の選択と関係する。水相と油相の間で低い界面張力が得られれば、それだけ水−油界面の面積を増大するために必要なエネルギーは少なくてすむ、即ち、より小さい油滴及びより安定なエマルションをつくるのがより容易である。
【0047】
乳化すべき油相にLPAを添加することによって、その油相と純粋な水の間の界面張力は低下する。この事実は、本発明の油相(これは一定量の親油性添加剤を含有する)の小さい液滴への分解を著しく促進する。結果として、本発明の水中油型エマルションを製造するための分解過程は、効果的で高度に表面活性な、又は急速に吸着する乳化剤は必要としない。本発明により形成される水中油型エマルションの品質(安定性、均一性)は、通常のエマルションを安定化させるために使用するようには、効果的で表面活性な親水性乳化剤に依存しない。効果的でない乳化剤の「不適切に」吸着をする又は乱れた混合物、即ち粗悪な乳化剤混合物が、本発明の安定なエマルションの生成には完全に適する。このことは、本発明の水中油型エマルションの調製における親水性乳化剤の役割が、殆ど、既に離散している油滴の周囲に吸着してくるまり、融合に対してそれらを安定化させることであることを意味する。この目的のために、親水コロイド又はその他の比較的非能率的吸着を示すわずかに両親媒性のポリマー類、例えば、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、ガラクトマンナン類、タンパク質加水分解物類、ペプチド類、変性デンプンなど、或いは乳漿タンパク質濃縮物類もまた、本発明の水中油型エマルションを安定化させるために使用することができる。
【0048】
本発明の水中油型エマルションを形成する油滴の粒子(ナノ又はマイクロ)又は外側部分は、任意の種類の内部構造、例えば非結晶性、結晶性、層状結晶、ラメラ液晶、液晶(LC)、L3、L2又はそれらの混合物などを有することができる。
【0049】
親水性乳化剤は、LPA、又は油、或いはLPA及び油と混合することもできる。これは、親水性乳化剤が部分的に油滴内部に存在することもでき、内部ナノサイズ自己集合構造に影響を及ぼし得ることを意味している。
【0050】
比β=親水性乳化剤/(LPA+油)×100は、油+LPA含量に対する、油滴を安定化するために用いられる親水性乳化剤の量を表している。βは、好ましくは0.1を超える。より好ましくは、βは0.5を超える。より好ましくは、βは1を超え、より好ましくは、2を超える。比β=親水性乳化剤/(LPA+油)×100は、好ましくは90未満である。より好ましくは、βは75未満である。さらにより好ましくは、βは50未満である。下方及び上方範囲の任意の組合せが本発明の範囲に含まれる。βは、重量%又はモル%で示すことができる。ある場合には、該親水性乳化剤は、配合物中に添加することができる。他の場合には、該親水性乳化剤は、食品、クリームなどの製品それ自体に存在する可能性があり、この場合はそれを添加する必要がない。一例は、既に存在するタンパク質が本発明の水中油型エマルションの親水性乳化剤として使用することができるミルクである。
【0051】
様々な有効成分を、油滴のナノサイズ自己集合構造化内部に可溶化することができる。それらは、フレーバー類、フレーバー前駆物質類、芳香類、芳香前駆物質類、旨味向上剤類、塩類、糖類、アミノ酸類、多糖類、酵素類、ペプチド類、タンパク質類又は炭水化物類、栄養補助食品類、食品添加剤類、ホルモン類、細菌類、植物エキス類、薬剤類、薬物類、栄養素類、農薬用途又は化粧品用途向けの化学物質類、カロテノイド類、ビタミン類、抗酸化物類又はルテイン、ルテインエステル類を含む群から選択される栄養補給食品類、β−カロテン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコトリエノール、リコペン、Co−Q10、亜麻油、魚油、オメガ−3油類、オメガ−6油類、DHA、EPA、アラキドン酸富化油類、メントール、ハッカ油、リポ酸、ビタミン類、ポリフェノール類及びそれらのグリコシド類、エステル及び/又は硫酸抱合体類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバノン類及びそれらのグリコシド類、例えばヘスペリジンなど、カテキンモノマー類及びそれらのガレートエステル類例えばエピガロカテキンガレートなどを含むフラバン3−オール類及びそれらのプロシアニジンオリゴマー類、ビタミンC、ビタミンCパルミテート、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD、α−及びγ−ポリ不飽和脂肪酸類、フィトステロール類、エステル化したフィトステロール、エステル化されていないフィトステロール、ゼアキサンチン、カフェイン、並びにそれらの組合せからなる群から選択される油溶性、油不溶性、水溶性又は結晶性成分であり得る。
【0052】
本発明による水中油型エマルションにおいて、LPAは、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、PEG1−4ステアレート、PEG2−4オレエート、PEG−4ジラウレート、PEG−4ジオレエート、PEG−4ジステアレート、PEG−6ジオレエート、PEG−6ジステアレート、PEG−8−ジオレート、PEG−3−16ヒマシ油、PEG5−10水素化ヒマシ油、PEG6−20トウモロコシ油、PEG6−20アーモンド油、PEG−6オリーブ油、PEG−6ラッカセイ油、PEG−6パーム核油、PEG−6水素化パーム核油、PEG−4カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、植物油及びソルビトールのモノ、ジ、トリ、テトラエステル類、ペンタエリトリチルジ、テトラステアレート、イソステアレート、オレエート、カプリレート又はカプレート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル2−4オレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ポリグリセリル−6ジオレエート、ポリグリセリル−10トリオレエート、ポリグリセリル−3ジステアレート、C6からC20脂肪酸のプロピレングリコールモノ−又はジエステル類、C6からC20脂肪酸のモノグリセリド類、モノグリセリド類の乳酸誘導体類、ジグリセリド類の乳酸誘導体類、モノグリセリド類のジアセチル酒石酸エステル、トリグリセロールモノステアレートコレステロール、フィトステロール、PEG5−20大豆ステロール、PEG−6ソルビタンテトラ、ヘキサステアレート、PEG−6ソルビタンテトラオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノトリオレエート、ソルビタンモノ及びトリステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキステアレート、PEG−2−5オレイルエーテル、POE2−4ラウリルエーテル、PEG−2セチルエーテル、PEG−2ステアリルエーテル、スクロースジステアレート、スクロースジパルミテート、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ポロキサマー類、リン脂質類、レシチン類、ケファリン類、オート脂質及びその他の植物に由来する親油性両親媒性脂質類、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
本発明による水中油型エマルションは通常、液体又は半液体形態である。本発明の他の実施形態によれば、エマルションは乾燥しており、粉末形態で入手できる。小角X線散乱及びCryo−TEMは、本発明の水中油型エマルション中に存在する油滴の内部ナノ構造が、乾燥したエマルションを、水を加えることによって戻したとき、復帰することを示す。
【0054】
本発明による水中油型エマルションは、最終生成物であるか、又は添加剤のいずれかである。最終生成物の添加剤の量は重要ではなく、多様であり得る。
【0055】
本発明に記載の機能性を送達するためのエマルションは、内部自己集合(Internally Self−Assembled)である構造を含有する油滴の特有の性質を説明し、油滴が親水性ドメインを含むナノサイズ自己集合構造を持たないナノエマルション及びマイクロエマルションを含む、通常の水中油型又はw/o/wダブルエマルションから本発明のエマルションを除外するために、本出願人等が「ISAMULSION」と命名する新規な型のエマルションである。ISAMULSION液滴は、基本的に親水性ドメインを含むナノサイズ自己集合構造を有する油滴からなる。この構造は、ラメラ液晶、又はラメラ結晶、或いはL2、マイクロエマルション、等方性液相、ヘキサゴナル、ミセルキュービック、又は両連続キュービック相を含む逆性構造であり得る。油相におけるこれらの構造は、単一のナノ構造、又は種々のナノ構造の混合物として出現することができる。
【0056】
有効成分として以下のものを含む組成物は本発明から除外される:
− 2重量%R+リモネン、2.6%グリセロールモノリノレート及び0.4重量%Pluronic F127;
− 10重量%マルトデキストリン、2重量%d−α−トコフェリル酢酸塩、2.5重量%Dimodan U、0.5重量%アスコルビン酸及び0.375重量%Pluronic F127;
− 0.51重量%大豆油、2.49重量%Dimodan U、0.01重量%Lロイシン及び0.2重量%tween80;
− 0.02重量%大豆油、2.98重量%Dimodan U及び0.02重量%キシロース及び0.2重量%tween80;
− 0.51重量%大豆油、2.49重量%Dimodan U、0.03重量%lyco−mato及び0.2重量%tween80;
− 1.1重量%大豆油、0.3重量%遊離フィトステロール、1.7重量%Dimodan U及び0.2重量%Tween 80。
【0057】
したがって本発明の目的は、一定の数の機能性を送達するために有効成分を可溶化するために用いることができる新しい水中油型エマルション調合物を提供することである。
【0058】
本発明は、通常の水中油型エマルションを用いる使用温度又は保存温度で晶出する、水不溶性、油不溶性有効成分、又は結晶性有効成分の溶解性又は/及び分散性を向上させるために使用するための本発明の水中油型エマルションに関する。
【0059】
本発明は、さらに、水中油型エマルション中の有効成分の安定性、化学劣化又は酸化に対する保護を向上させるために使用するための本発明の水中油型エマルションに関する。
【0060】
本発明は、また、消化中の有効成分のバイオアベイラビリティー、生物学的送達度、バイオディスポニビリティー、又は吸収性を向上させるために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。
【0061】
本発明は、また、消費又は消化中の有効成分の放出、有効成分のバースト放出、又は有効成分の持続放出を制御して健康に作用する機能性を生み出すか改良するために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。
【0062】
本発明は、また、健康に作用する機能性を追加するために、有効成分の効率性、有効成分の持続する効率、又は有効成分のバースト放出を増大させるために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。
【0063】
本発明は、また、芳香又はフレーバーが有効成分であり、新たな、又は改良された知覚特性を生み出すための芳香又はフレーバー又は味の放出、芳香又はフレーバーのバースト放出、或いは芳香又はフレーバーの持続放出を制御するために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。
【0064】
本発明は、また、異なる味覚、異なる質感、口当り、口を覆う感覚、又はクリーム感覚を生み出すために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。この場合はLPAが有効成分である。
【0065】
本発明は、また、有効成分の味又は異味マスキングのため、有効成分、構造のフレーバー又はオフフレーバーマスキングのため、有効成分の味又はフレーバーの調節をするために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。この場合、LPAは、それ自体有効成分であり得る。
【0066】
本発明は、また、色調節、メイラード反応による褐変の増大、加熱又はマイクロ波作動中の化学反応又はメイラード反応収率の増大、化学反応収率の制御又はメイラード反応収率の制御、及び加熱又はマイクロ波作動中の化学反応収率の制御又はメイラード反応収率の制御に使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。有効成分は、この場合もやはりLPAであり得る。
【0067】
本発明は、また、ISAMULSION中の有効成分を富化するための任意の種類の原料又は製品からの有効成分の抽出、健康又は感覚に有利なように有効成分の放出を制御するための消費、咀嚼又は消化の間の口内での原料又は製品からそれら有効成分を抽出するために使用するための本発明の水中油型エマルションにも関する。有効成分は、この場合もやはりLPAそれ自体であり得る。
【0068】
本発明は、さらに、上記の機能性の1つ又は組合せに基づく任意の種類の機能性、及び口中での加熱、冷却、加工、咀嚼、消費又は消化の間に水中油型エマルション液滴の内部構造を変化させるか水中油型エマルション全体の構造を変化させることによって得られる上記の任意の種類の機能性の又は機能性の組合せに関する。
【0069】
本発明は、食品に機能性を送達することだけでなく、他の産業において生産される製品、例えば、ペットフード、栄養補給剤、機能性食品、洗剤、栄養補給化粧品、化粧品、医薬品、薬物送達、ペイント類、医療又は農薬産業、火薬、繊維、鉱業、石油採掘、ペイント類、製紙業、高分子工業においても使用することができる。
【0070】
図1は、親油性添加剤の含量%(LPA%=α=100*LPA/(LPA+油))及び温度の関数として、ISAMULSIONの分散油滴内部に見出された典型的な構造順序を示す。L2は、逆マイクロエマルション様構造を表し、LCは、液晶相、又は様々な液晶相の混合物の存在を表す。図1が示すように、油滴内部において、所与の温度及び添加される親油性添加剤の特定量(α値)で、明確なナノサイズ自己集合構造が形成される(言及した構造のより詳しい説明は、Evans,D.F.;Wennerstrom,H.(編):「The Colloidal Domain」、Wiley−VCH、New York(1999)を参照のこと)。添加するLPAの量により、自己集合構造の型、親水性ドメインに存在する水の量、内部界面の量、及びISAMULSION液滴内部に形成される自己集合ナノ構造の大きさ、寸法を正確に制御することが可能となる。油の種類及び親油性添加剤(LPA)の種類に応じて、自己集合液滴内部構造の自発的形成を開始するのに必要とされるLPAの最小量は、油相の0.1から5重量%である。
【0071】
エマルション油滴の内部ナノサイズ自己集合構造は、Cryo−TEM又は小角X線散乱によって検出できる。
【0072】
図2のcryo−TEM画像は、Adrianら(Adrianら、Nature(1984)308、32〜36)の標準的な技法を用いて得られたものである。試料を凍結するために、自家製切断機を用いた。試料分散液3μlの液滴を、直径約2μmの穴を含有する穴の開いたカーボン膜で被覆された銅グリッドに載せた。過剰な試料溶液を除去するために、グリッドの液体側を濾紙で押さえた(ブロッティング)。液体を除去した直後に、ピンセットで保持したグリッドを、液体エタンに浸漬した。凍結したグリッドを液体窒素中に貯蔵し、−180℃に保持した低温ホルダーに移した。Philips CM12 TEMにおいて、電圧80kVで試料の分析を行った。電子線損傷を最小限にするために、低線量法を適用した。一部の例では、Egelhaafら(Egelhaafら、J.Microsc.(2000)200、128〜139)に記載されているものに類似した自家製の環境チャンバを用いた。薄化及びガラス状化前の温度を25℃に設定し、湿度100%を用いた。ISAMULSIONは、油滴内部の小さな明るい形状の存在によって同定できる。図2、6aは、周期構造のないISAMULSIONのCryo−TEM顕微鏡写真であり、明るい形状間の特性距離約7〜8nmを示している。そのような明るい形状は標準的な非構造化エマルションでは認められず、エマルション液滴の構造化されていない内部にはコントラストがないことに留意されたい(図6b)。
【0073】
図3のSAXS曲線は、シールド管Cu陽極を備えた、40kV及び50mAで操作するX線発生装置(Philips、PW1730/10)を用いる標準的な装置(Bergmannら、J.Appl.Cryst.(2000)33、869〜875)によって得られたものである。Gobelミラーを用いて、発散多色X線ビームをCuKα照射の集束された線状ビームに変換する(λ=0.154nm)。二次元散乱パターンはイメージングプレート検出器によって記録され、SAXSQuantソフトウェア(Anton Paar、グラーツ、オーストリア)を用いて一次元散乱関数I(q)に統合されるが、ここでqは、q=(4π/λ)Sinθ/2で定義される散乱ベクトルの長さであり、λは、波長であり、θは、散乱角である。散乱プロファイルの幅広いピークは、これらのデータを一般化間接フーリエ変換(Generalized Indirect Fourier Transformation)法に適合させることによってデスミアした(Bergmannら(2000)、33、1212〜1216)。特性距離は、d=2π/qで示される。図3は、ISAMULSION(図2で調査したものと同じ)の小角X線散乱パターンを、その製造に用いる相当する非分散バルク油相(LPAによってナノ構造化)、及び相当する通常のエマルション(LPAなし、ナノ構造なし)と共に示す。ISAMULSIONは、その製造に用いる非分散バルク油相と同じピーク位置を示すことが分かる。共に特性距離は、約7.5nmである。この特性距離は、親水性ドメインの直径より大きい。したがって、親水性ドメインは、7nmより小さい大きさを有する。当業者には、親水性ドメインがこのように小型であるのは、油滴の内部構造が熱力学的に安定であることを実証するものである。さらに、LPAを添加しない相当する通常のエマルション(ナノ構造なし)については、ピークは認められない。これは、ISAMULSIONの油滴内部にナノサイズ自己集合構造が存在することのさらなる証明である。内部ISAMULSION液滴構造は水に分散されたときにも変化せず、その構造が熱力学的平衡状態にあることを示している。
【0074】
図5は、油滴内周期構造のcryo−TEM画像を示す。粒子は、様々な方向のもとで画像化されており、1つの方向から別の方向に行くように向けられている。高速フーリエ変換(FFT)は、存在する面(又は影)を正確に測定するために使用され、電子回折像のインデクセーションと同様にインデクス化される(J.W.Edington、Practical Electron Microscopy in Materials Science、Phillips、Eindhoven、1974)。粒子は、[111]方向(図5a−c)、[332]方向(図5b−d)、[114]方向(図5e−g)、[112]方向(図5f−h)及び[110]方向(図5i−j)のもとで観察される。観察される最初の4つの影は、ミセルキュービック相(空間群Fd3m)を液晶相として識別する{111}、{220}、{311}及び{222}である。同じ実験を他の内部構造の粒子を識別するために実施することができる。粒子の内部結晶構造も、図10(ミセルキュービック、空間群Fd3m)及び図12に示すようにSAXSによって測定することができる。
【0075】
図9は、LPAの添加によってナノ構造化された油滴の概略図である。親水性ドメインの構造定義を図9に明示する。親水性ドメインはLPAの極性部分(頭部)を含む(炭化水素尾部及び水部分は含まない)。親水性ドメインの最小直径は、水分子を含有しない2つの頭部基のほぼ断面である、約0.5nmであり得る。親油性添加剤又は乳化剤の極性部分の最小サイズは、約0.2nmである。水分子の直径は、約0.3nmである。活性分子の可能性のある位置を図9に示す。
【0076】
図13は、遊離の(エステル化してない)フィトステロールを通常のエマルション(a)中に可溶化するときには結晶の存在を偏光顕微鏡法によって示すが、フィトステロールをISAMULSION(b)中に可溶化するときには結晶は存在しないことを示している。可溶化された形のフィトステロールは生物学的に利用可能であるが結晶の形のフィトステロールははるかに生物に取り込まれ難く、生物学的利用が困難なことはこれまでにもたくさん書かれている。
【0077】
図14は、貯蔵2日後に現れた芳香のヘッドスペース測定を示す。Y軸は、貯蔵2日後にヘッドスペース測定によって測定された残留している芳香の百分率を表す。芳香がISAMULSION中に可溶化される場合、芳香の明白な劣化はないが、それらが水に溶解するときは芳香の激しい劣化がある。ヘッドスペース測定は、次のようにして行われる。分析は、水素炎イオン化検出器を備えたHP6890ガスクロマトグラフ(GC)(FID)(Agilent、バーゼル、スイス)により実施した。そのGCを、70eVの電子イオン化(EI)モードで動いている質量分析計(5973MSD、Agilent)に連結した。DB−Waxキャピラリーカラム(30×0.25mm、0.25ミクロン膜厚、J&W Scietific、Folsom、USA)をすべての分析に使用した。オーブンを20℃で3分間保ち、6℃/分で100℃まで、次いで10℃/分で240℃まで昇温した。最後に、オーブンを240℃で10分間保った。キャリヤーガスは、流速1mL/分のヘリウムを用いた。平衡時間(2時間)の後、2mLのヘッドスペース試料を注入した。各試料はGC分析用に3通り用意した。以下の注入パラメータを用いた:注入器、2.5mLヘッドスペース;試料量、2mL;インキュベーション温度、37℃;攪拌スピード、300rpm;攪拌始動までの時間、5秒;攪拌停止までの時間、2秒;注入器温度、37℃;充填スピード、100マイクロリットル/秒;プルアップディレイ、60秒;注入スピード、1mL/秒;プレインジェクションディレイ、500ミリ秒;ポストインジェクションディレイ、500ミリ秒;注入器フラッシング、1分。重要性のある濃度範囲の各臭気剤に対して検出されたFID信号の直線性を、外部較正曲線によってチェックした。
【0078】
図15は、ISAMULSION及び通常の水中油型エマルションについて陽子移動反応−質量分析計(PTR−MS、Ionicon Analytik、インスブルック、オーストリア)によって芳香のヘッドスペース測定の結果を示す。通常のエマルションと比較してISAMULSIONについてはバースト放出が得られることが分かる。PTRMSは、オンライン式の芳香放出を追跡するために使用した。エマルション及びISAMULSIONで、m/z20から160までのフルマススペクトルが記録された。より感度のよい質量検出を得るために、各質量において確認される分子(1つ又は複数)の優れた代表性(representativity)に応じて質量の選択を実施した。試料から放出される分子を確認するために、Tenaxトラップをオーブンセル出口の排気口に5分間取り付けた。そのTenaxトラップから脱着した揮発性物質を分割し、PTR−MS及びガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)によって分析した。
【0079】
[実施例]
本発明の種々の実施形態は、親油性添加剤(LPA)の存在により、分散油滴が親水性ドメインのナノサイズ自己集合構造を示す水中油型エマルションを提供する。以下の実施例は本質的に例示的なものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0080】
実施例1:均質化によって得られ、鉱物油を含有するISAMULSIONの一般的実施例。この実施例は、ISAMULSIONがいかに特徴があり、通常の水中油型エマルションと区別することができるかを示すために使用される。
【0081】
典型的には、テトラデカンなどの鉱油1〜5重量%を、既に親水性乳化剤(MerckのTween 80又はBASFのPluronic F127)0.375重量%を含有する水95重量%に添加した。次いで、LPA(モノリノール酸グリセロール、乳化剤TS−PH 039、Danisco、ノルウェー)0.5〜4重量%を混合物に添加した。親油性分子(鉱油+LPA)の総量は、4.625重量%であった。
【0082】
次いで20分間、超音波処理を行った。これらのエマルションのISAMULSION特性は、図2及び図3〜4などのCryo−TEM画像及びSAXS曲線によって確認した。図2及び図3は、鉱油(テトラデカン)2.4重量%、LPA2.2重量%、親水性乳化剤(pluronic F127)0.375重量%、水95重量%の組成による、これらの一般的な実施例から得たものである。さらに、対応するバルク試料(油、LPA、過剰の水を含むが、親水性乳化剤を含まない非分散試料)を調製し、分析した。油(テトラデカン)/LPA(モノリノール酸グリセロール)重量比は、1.1/1.0であった。油−LPA−水の混合物を、試料が均質化されるまでボルテックスにより加熱及び混合した。水0、5、又は10重量%を油/LPA混合物に添加した後、試料は透明となり、水が油/LPA混合物に完全に可溶化され、w/oマイクロエマルションが形成されたことを示した。より大量の水を添加した後、試料は相分離を示す。15及び20重量%の水を含有する試料は、相当するISAMULSION試料(鉱油2.4重量%、LPA2.2重量%、親水性乳化剤0.375重量%)と同じSAXS曲線を示すことを示した。これは、ISAMULSION液滴が、相当するバルク相で観察されたものと同じ7.5nmの特性距離を示すことを実証している(図3を参照のこと)。さらに、図4は、既に比較的低含量のLPA及び高含量の油を含む場合(例えば、鉱油(テトラデカン)3.9重量%、LPA(モノリノール酸グリセロール)0.725重量%、親水性乳化剤(Pluronic F127)0.375重量%、水95重量%)、ISAMULSIONが形成される(例えば、SAXS曲線にピークが認められる)ことを示している。しかしながら、図3に示したように、LPAが存在しないとき、ISAMULSIONは形成されない(組成:油(テトラデカン)4.625重量%、Pluronic F127 0.375重量%、水95重量%)。さらに、より大量のLPAを含む場合(α値)(組成の例:テトラデカン1.32重量%、LPA3.3重量%、Pluronic F127 0.375重量%)、ISAMULSIONは形成される。SAXS曲線及びcryo−TEM画像(図5及び10)で示したように、その構造は低いα値(LPA含量)で観察されたものより規則的であり、親水性ドメインの逆ミセルキュービック配置を示す。
【0083】
製品に新たな又は改良された機能性を与えるために、有効成分を実施例1に記載のようにしてISAMULSION類に可溶化又は分散させることができる。
【0084】
実施例2:トリグリセリド油を用いるISAMULSION。
この実施例は、本発明に由来するISAMULSIONが、いかに特徴があり得るかを示すために使用される。
【0085】
大豆油0.5〜4.5重量%を、LPA(Dimodan U/J、Danisco、デンマーク)0.5〜4重量%と混合した。この混合物を親水性乳化剤(Pluronic F127)0.375%を含有する水95重量%に加えた。親油性分子(油+LPA)の全体量は、4.625重量%であった。この混合物にポリトロン(Kinematica、スイス)ポジション5を用いて5分間せん断をかけた。
【0086】
エマルションのISAMULSION特性は、cryo−TEM画像(図6a)、SAXS(図7a)及び対応するバルク試料の試験(実施例1で行ったものと同じ)によって確認した。図6a−7aは、トリグリセリド油1.525重量%、LPA3.1重量%、親水性乳化剤(pluronic F127)0.375重量%、水95重量%の組成による一般的な実施例から得たものである。通常の、例えばLPAの存在しない大豆油液滴内には内部構造は観察されない(図6b−7d)。
【0087】
製品に新たな又は改良された機能性を与えるために、有効成分を実施例2に記載のISAMULSIONに可溶化又は分散させることができる。
【0088】
実施例3:いくつかのLPAの混合物を含有するISAMULSION。この実施例は、ISAMULSIONが、いかに特徴があり得るかを示すために使用される。
【0089】
飽和及び不飽和モノグリセリドの混合物を含有するISAMULSION:
0〜1.8%の鉱物油(テトラデカン)を、0.2〜2%のLPAに加えた。そのLPAは、飽和モノグリセリド(Dimodan HR、(グリセロールモノステアレートを90%含有する飽和モノグリセリド)、Danisco、デンマーク)及び不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J、Danisco、デンマーク)の混合物であった。親油性分子(油+LPA)の全体量は、3%であった。その混合物を親水性乳化剤として0.3%のTween80を含有する96.7%の水に加えた。超音波処理を2分間実施した。20%の水において得られる飽和モノグリセリド(Dimodan HR)−不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J)混合物の擬似二元系相図(図8)によって示されるように、安定なL2相の形成は、飽和モノグリセリドの不飽和モノグリセリド試料への添加後の高温において得ることができ、L2系ISAMULSIONが、高温で形成され得ることを示している。例えば、1%テトラデカン、1%飽和モノグリセリド、1%不飽和モノグリセリド、0.3%Tween80及び1%テトラデカン1%の組成物に対して、ISAMULSIONが存在し、60℃を超える高温で安定である。
【0090】
鉱物油(テトラデカン)、グリセロールモノリノレート及びジグリセロールモノオレエートを含有する混合物:
テトラデカン、モノリノレイン(MLO)、ジグリセロールモノオレエート(DGMO)を、既に0.375重量%の親水性乳化剤(Pluronic F127)を含有する95.375重量%の水に加えた。次いで超音波処理を20分間行った。SAXSにより、その混合物のISAMULSION特性が明らかとなる(図11)。グリセロールモノオレエートのみで製造されDGMOを含まないISAMULSIONと比較すると(図11)、SAXSのピークは、高い間隔に向けて移動し、DGMOが不飽和モノグリセリドと組み合わせて使用される場合、親水性ドメインが大きくなり水の高含量を液滴の内部に可溶化することができる。この実施例は、様々なLPAの混合物が、ISAMULSION油滴の特徴的な構造を形成するために使用することができることを実証する。
【0091】
油とモノグリセリド及びリン脂質の混合物とでできたISAMULSION:
鉱物油(テトラデカン)、大豆油からのホスファチジルコリン(PC)及びジグリセロールモノオレエート(DGMO)を、既に0.375重量%の親水性乳化剤(Pluronic F127)を含有する95.375重量%の水に加えた。次いで超音波処理を20分間行った。
【0092】
SAXSにより、その混合物のISAMULSION特性が明らかとなる(図12)。正確な組成は、図12に示す。この実施例は、リン脂質が、ISAMULSION油滴の特徴的な構造を形成するために使用することができることを実証する。
【0093】
LPAとしてのリン脂質及び様々な油の混合物を含む油と乳化剤混合物を使用するISAMULSION:
2.2重量%の卵黄大豆ホスファチジルコリン(Lucas Meyer)を、2.2重量%のジオレイン及び0.6重量%のテトラデカンと混合した。この混合物を0.375重量%の親水性乳化剤(Pluronic F127)を含有する94.625重量%の水に加えた。次いで超音波処理を40分間行った。典型的なISAMULSIONの特徴を有するエマルションが形成された。そのPCは、また、ISAMULSIONの特徴を得るためにホスファチジルエタノールアミン(PE)又はその他のリン脂質と混合することもできる。様々なリン脂質及び油の任意の組合せを使用して本発明に記載されている典型的なISAMULSIONの特徴を生じさせることが可能である。
【0094】
LPAとしてのホスホエタノールアミン(PE)及び油を用いるISAMULSION:
2.2重量%の1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(AvantiPolar Lipids)を、0.8重量%の大豆油と混合した。0.3重量%の親水性乳化剤(Pluronic F127)を含有する96.7重量%の水に、この混合物を添加した。次いで40分間、超音波処理を行った。典型的なISAMULSIONの特徴を有するエマルションが形成された。
【0095】
製品に新たな又は改良された機能性を与えるために、有効成分を実施例3に記載のISAMULSIONに可溶化又は分散させることができる。
【0096】
実施例4:フレーバー感を制御するためのフレーバーリングオイルを含有するISAMULSION
2.3重量%の精油(R+リモネン)を、既に0.4重量%の親水性乳化剤(Pluronic F127)を含有する95重量%の水に導入した。2.3重量%のLPA(グリセロールモノリノレート)をその混合物に添加した。超音波処理を20分間行った。分散液が形成された。実施例1の場合と同様に、SAXSによってエマルションのISAMULSION特性が明らかとなる。超音波処理ステップ中に、ISAMULSIONが自発的に形成される。この実施例は、ISAMULSION構造を形成するための油相として、リモネンなどのフレーバーリングオイルを使用できることを実証している。
【0097】
実施例5:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーが向上したフィトステロールエステル及びリコペンを含有するISAMULSION
1.08重量%のフィトステロールエステル(ADM)、1.62重量%のDimodan U/J(LPA)、0.0015重量%のLycored製のLyc−O−Mato(10重量%のリコペンを含有する)を最初に加熱し、均一で透明な溶液が形成されるまでボルテックスにより混合した。この溶液を0.2重量%のTween80が溶解されている97.1重量%の水に添加した。その混合物を80℃で2分間超音波処理にかけた。油滴のナノ構造の内部に可溶化されたリコペンを有するISAMULSIONが形成された。この実施例は、親油性、結晶性の抗酸化物質をISAMULSION油滴構造の内部に可溶化させ、均一な水中油型エマルションを生じさせることができることを実証している。
【0098】
実施例6:溶解性又は/及び分散性並びにバイオアベイラビリティーが向上した遊離のフィトステロールを含有するISAMULSION
0.44重量%の遊離のフィトステロール(ADM)、1.65重量%の不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J、Danisco)及び1.06重量%の大豆油を、最初に、フィトステロールが溶解して溶液が形成されるまで120℃で加熱する。0.2重量%のTween80を96.65重量%の水中に分散させた。Tween80の溶液を80℃まで加熱し、フィトステロール−モノグリセリド−大豆油の溶融した混合物をそのTween80の溶液に80℃で加えた。超音波処理を80℃で2分間行った。その結果ISAMULSIONが形成され、偏光顕微鏡法によって確認されるように該エマルション中には結晶が存在しない。このISAMULSIONは、フィトステロール類のバイオアベイラビリティーを増すために使用することができる。同じ方法がとられても通常のエマルションが使用される場合は、含まれている遊離のフィトステロールが少なくてさえ(0.31重量%の遊離のフィトステロール及び2.75重量%の大豆油−0.2重量%のTween80−96.74重量%の水)、処理後多数の結晶が観察される。
【0099】
実施例7:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させるISAMULSION中に遊離のフィトステロールを含有するミルク
0.45重量%の遊離のフィトステロール(ADM)、1.67重量%の不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J、Danisco)及び1.07重量%の大豆油を、最初に、フィトステロールが溶解して溶液が形成されるまで120℃で加熱する。96.81重量%の低脂肪ミルク(Cremoゼロ脂肪ミルク、スイス)を80℃まで加熱した。脂質の溶液をそのミルクに加え、80℃で超音波処理を行った。そのミルクを冷却したとき、偏光顕微鏡法により結晶は観察されなかった(図13b)。ISAMULSION中に可溶化した遊離のフィトステロールを含有するミルクを次に63℃で30分間殺菌した。4℃で4週間保存しても結晶は観察されなかった。同じ方法がとられても通常のエマルション(0.39重量%の遊離のフィトステロール、2.37重量%の大豆油及び97.24重量%のゼロ脂肪ミルク)が使用される場合は、処理後(図13a)及び殺菌後多数の結晶が存在する。
【0100】
実施例8:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させる遊離のフィトステロール及び乳脂肪を含有するミルク
0.42重量%の遊離のフィトステロール(ADM)、1.59重量%の不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J又はDimodan MO90、Danisco)及び1.02重量%の乳脂肪を、最初に、フィトステロールが溶解して溶液が形成されるまで120℃で加熱する。低脂肪ミルク(CoopからのCremoゼロ脂肪ミルク、スイス)を80℃まで加熱した。脂質の溶液を96.97重量%のミルクに加え、80℃で超音波処理を行った。処理後、偏光顕微鏡法によりステロールの結晶は観察されず、そのミルクを室温まで冷却した。
【0101】
実施例9:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させるルテインを含有するISAMULSION
0.001gのルテイン、0.4gの大豆油及び0.6gのDimodan U/Jを、均一で透明な溶液が形成されるまで加熱した。0.2gのTween80を、80℃に加熱した19gの水中に溶解させた。80℃に加熱した脂質の混合物を、80℃のTween溶液に加えた。超音波処理を2分間行った。ISAMULSIONが形成され、その試料を室温まで冷却したとき、偏光顕微鏡法によって結晶は検出されなかった。
【0102】
実施例10:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させる油としての遊離のフィトステロール類及びフィトステロールエステル類を含有するISAMULSION
0.21重量%の遊離のフィトステロール(ADM)、0.79重量%の不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J又はDimodan MO90、Danisco)及び0.52重量%のフィトステロールエステル(Danisco)を、最初に、遊離のフィトステロールが溶解して溶液が形成されるまで120℃に加熱した。0.2重量%のTween80を、98.28重量%の水中に分散させた。そのTween80の溶液を80℃に加熱し、脂質混合物を80℃でそのTween80の溶液に加えた。超音波処理を80℃で2分間行った。その結果、ISAMULSIONが形成され、偏光顕微鏡法によって確認して結晶が存在しない。
【0103】
実施例11:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させる油としての遊離のフィトステロール及びフィトステロールエステルを含有するミルク
0.21重量%の遊離のフィトステロール(ADM)、0.79重量%の不飽和モノグリセリド(Dimodan U/J又はDimodan MO90、Danisco)及び0.52重量%のフィトステロールエステル(Danisco)を、最初に、遊離のフィトステロールが溶解して溶液が形成されるまで120℃で加熱した。98.48重量%の低脂肪ミルク(Cremoゼロ脂肪、スイス)を80℃まで加熱した。脂質溶液をそのミルクに加え、超音波処理を80℃で行った。処理後、偏光顕微鏡法によってステロール結晶は観察されず、そのミルクを室温まで冷却させた。
【0104】
実施例12:溶解性及び/又は分散性並びにバイオアベイラビリティーを向上させるアスコルビルパルミテートを含有するISAMULSION。
0.01重量%のアスコルビルパルミテート及び0.594重量%のDimodan U/jを混合し、アスコルビルパルミテートが溶解するまで加熱した。0.3996重量%の大豆油を、次にその均一な溶液に加えた。得られた脂質溶液を、80℃で98.9重量%の水中に導入した0.1重量%のカゼイン酸ナトリウムに、80℃で加えた。2分間にわたって80℃で超音波処理を用いた。その処理の後、ISAMULSIONが得られる。室温まで冷却したとき、偏光顕微鏡法によって結晶は観察されなかった。
【0105】
実施例13:PUFAを酸化から保護するポリ不飽和脂肪酸類(PUFAs)、ビタミンE及びビタミンCを含有するISAMULSION。
2重量%の魚油(SOFINOL SA、Manno、スイス)を、2.625重量%のDimodan U/J及び0.001重量%のビタミンE(Covi−Ox T70を混合したトコフェロール、Cognis、シンシナティ、米国)と均一な溶液が得られるまで混合した。脂質の溶液を、次に0.375重量%のTween80を95重量%の水に導入した中に加えた。超音波処理を2分間用いた。その処理の後、ISAMULSIONが得られる。0.001重量%のビタミンC(Fluka、Buchs スイス)を次にそのISAMULSIONに添加する。
【0106】
実施例14:アスコルビルパルミテートを大量に含有するISAmulsion。
0.2%のアスコルビルパルミテート(Danisco、デンマーク)を2%のDimodan Uと混合し、60℃で加熱して溶液を得る。1%の大豆油を、次にその脂質混合物に加え、次いで0.5%のTween80を含有する96.3%の水中に導入する。超音波処理を60℃で5分間行った。可溶化されたアスコルビルパルミテートを含有するISAMULSIONが得られ、偏光顕微鏡法によって結晶は観察されない。
【0107】
実施例15:酸化から保護されたPUFAを含有するミルク。
0.05gのアスコルビルパルミテートを、60℃で5gのDimodan Uに溶解した。アスコルビルパルミテートとDimodan Uとから形成されたその混合物を95gの魚油に溶解して親油性溶液を形成させた。0.6gのその親油性溶液を、20gのスキムミルク(cremoゼロ脂肪ミルク、スイス)に加えた。ISAMULSIONを得るために超音波処理を用いた。
【0108】
実施例16:ポリ不飽和脂肪酸類(PUFA)、ビタミンE及びアスコルビルパルミテートを含有し、PUFAを酸化から保護するために使用されるISAMULSION類。
0.002重量%のアスコルビルパルミテート及び2.625重量%のDimodan Uを混合し、アスコルビルパルミテートが溶解するまで加熱した。2重量%の魚油(SOFINOL SA、Manno、スイス)及び0.001重量%のビタミンE(Covi−Ox T70を混合したトコフェロール、Cognis、シンシナティ、米国)を、その均一な溶液に加えた。得られたその脂質の溶液を、95重量%の水中に0.375重量%のTween80を導入した中に加える。超音波処理を2分間にわたって使用した。その処理後、魚油が酸化から著しく保護されているISAMULSIONが得られる。
【0109】
実施例17:遊離のフィトステロール、ポリ不飽和脂肪酸類(PUFAs)、ビタミンE及びアスコルビルパルミテートを含有し、PUFAsを送達し、コレステロールの吸収を防ぐために使用されるISAMULSION
0.002重量%のアスコルビルパルミテート及び2.625重量%のDimodan Uを混合し、アスコルビルパルミテートが溶解するまで加熱した。1.45重量%の魚油(SOFINOL SA、Manno、スイス)、0.55%の遊離のフィトステロール及び0.001重量%のビタミンE(Covi−Ox T70を混合したトコフェロール、Cognis、シンシナティ、米国)を、その均一な溶液に加えた。その脂質の混合物を均一な溶液が得られるまで加熱した。得られたその脂質の溶液を、80℃でプレヒートした95重量%の水中に0.375重量%のTween80を導入した中に80℃で加える。超音波処理を2分間にわたって使用した。その処理後、ISAMULSIONが得られ、偏光顕微鏡法によって結晶は観察されない。
【0110】
Dimodan Uを、油、例えば大豆油又は魚油などで置き換える(最終組成:0.002重量%のアスコルビルパルミテート、2.625重量%の大豆油、1.45重量%の魚油、0.55%の遊離のフィトステロール、0.001重量%のビタミンE,0.375重量%のTween80、95%の水)、ことによる通常のエマルションを用いて同じことを行った場合、その遊離のフィトステロールは可溶化されず、多数の大きな結晶が顕微鏡により観察される。
【0111】
実施例18:N−メチルピロールと酢酸アルデヒドの間の反応を防いで化学安定性を増すISAMULSION
3重量%のDimodan U/J、2重量%の大豆油及び0.5重量%のTween80を、94.5重量%の水に加えた。ISAMULSIONを生成させるために10分の超音波処理を用いた。200ppmのN−メチルピロール(N−MP)及び200ppmの酢酸アルデヒド(AC)をそのISAMULSIONに加えた。もう1つの実験においては、200ppmのN−メチルピロール(N−MP)及び200ppmの酢酸アルデヒド(AC)を直接水に加えた。
【0112】
図14は、2日後に該ISAMULSION中及び水中に残っている芳香の濃度を示す。ACとN−MPの間の反応が、水と比較してISAMULSION中では強力に減少されることを明らかに実証している。
【0113】
実施例19:化学安定性を増すためにサルファイト類とプロパナールの間の反応を防止するISAMULSION
3重量%のDimodan U/J、2重量%の大豆油及び0.5重量%のTween80を、94.5重量%の水に加えた。ISAMULSIONを生成させるために10分の超音波処理を用いた。200ppmのプロパナール及び200ppmのサルファイト類を、該ISAMULSION中に入れた。もう1つの実験においては、200ppmのサルファイト類と200ppmのプロパナールを直接水相に加えた。実施例18におけるように、2日後、ISAMULSIONが存在する場合には芳香物質が通常の水相中に存在する場合の状況と比較して該反応は著しく減少した。
【0114】
実施例20:溶解性及びバイオアベイラビリティーを向上するためのγ−オリザノールを含有するISAMULSION
0.05gのγ−オリザノール、0.27gのDimodan U/J、0.18gの大豆油を、均一な溶液が形成されるまで加熱し、80℃に冷却した。0.1gのTween80を、9.4gの水に溶解し、80℃に加熱した。その2つの溶液を一緒に混合し、超音波処理を2分間行った。その試料が室温まで冷却した時点で、偏光顕微鏡法によって結晶は観察されなかった。通常のエマルション(組成:0.5重量%のγ−オリザノール、4.5重量%の大豆油、1重量%のTween80及び94重量%の水)に同じ方法を適用した場合、その試料を室温まで冷却した後、偏光顕微鏡法によって多数の結晶が証明された。
【0115】
実施例21:口を覆う感覚及び口当たり機能性を送達するISAMULSION
1.507gのヒマワリ油を、1gのDimodan U/Jと均一な溶液が形成されるまで加熱して混合した。その脂質の溶液を、0.05gのカゼイン酸ナトリウムを含有する47.5gの水に加える。超音波処理を2分間にわたって行った。形成されたISAMULSIONについては口を覆う感覚が得られた。同様にエマルションがつくられる場合(組成:47.1gの水、0.4gのカゼイン酸ナトリウム、2.5gのヒマワリ油)は、より少ない口を覆う感覚しか得られなかった。
【0116】
実施例22:ビタミンEアセテートが高負荷の濃厚なISAMULSION
1重量%のカゼイン酸ナトリウムを94重量%の水中に分散させた。3%のビタミンEアセテートを2%のDimodan U/Jと混合して均一な溶液を形成した。その脂質溶液をカゼイン酸塩溶液に加え、濃厚なISAMULSIONが形成されるまで10分間超音波処理を適用した。
【0117】
この濃厚なISAMULSIONは、任意の食品又は化粧品に添加して、ビタミンEアセテートが富化又は強化された製品とすることが容易にできる。このビタミンEアセテートは、製品中に均一に分布される。
【0118】
実施例23:ビタミンEの化学安定性を高め、ビタミンEのバイオアベイラビリティー及び効率を増すためにビタミンE及びアスコルビルパルミテートを可溶化するISAMULSION。
0.01重量%のアスコルビルパルミテート及び0.595重量%のDimodan U/jを混合し、アスコルビルパルミテートが溶解するまで加熱した。0.3986重量%のビタミンEを、次にその均一な溶液に加えた。得られたその脂質溶液を、98.9重量%水中に導入した0.1重量%のカゼイン酸ナトリウムに加えた。超音波処理を2分間用いた。その処理の後、酸化に対してビタミンEを保護し、それによってビタミンEの効率を増すISAMULSIONが得られる。
【0119】
実施例24:抽出による天然の有効成分の豊富なISAMULSION
320gのトマト濃縮物と、80gの油、即ち大豆油とDIMODAN U/Jの35/65の割合の混合物の混合物を、45℃に温め、調理用ミキサーにより1分間混合した。その混合物を、Sorvall遠心分離機により1時間40℃で5000RPMの遠心分離をした後、60gの油相を回収した。この油相のHPCL分析により、4mg/100g抽出物のリコペン含量が明らかとなった。抽出温度を60℃に、混合物の混合を10分に上げたとき、遠心分離後、油相中のリコペン含量は、20mg/100gのリコペンに増えた。得られた5gの脂質相(Dimodan U/J、大豆油及び抽出されたリコペンを含む有効成分を含有する)を、0.5gのTween80を含有する94.5gの水中に加えた。超音波処理を5分間行った。リコペンを含む生体利用が可能な天然の有効成分(生のトマトから抽出)が富化されたISAMULSIONが得られる。
【0120】
実施例25:親油性ビタミンカクテルを含有する安定した飲料
10.0gのEficacia(CNI、フランス)を、979gのVittel(Nestle、フランス)水に加え、電磁攪拌機により溶解する。80mgのビタミンD(DSM、スイス)、18mgのビタミンK(DSM、スイス)、7.2gのビタミンE(DSM、スイス)、160mgのビタミンA(DSM、スイス)を、3.6gのDimodan U中に50℃で溶解する。
【0121】
そのDimodan U/ビタミン類の溶液を、Eficacia溶液に加え、ローター/ステーターホモジナイザー(Polytron)を5分間使用した。その溶液は、Rannieホモジナイザーを用いてさらに均一化した。最初の100mlを除外し、残りの900mlをビンに回収した。形成されたISAMULSIONは、物理的に安定である(相分離、クリーミング、リング形成なし)。
【0122】
Dimodan Uを大豆油のような標準的な油で置き換えて同じことを行う場合は、通常のエマルションが得られる。このエマルションの物理的安定性は、それぞれのISAMULSIONの安定性より大幅に低い。
【0123】
この濃厚なエマルションは、親油性が増したビタミン飲料を得るために通常の水又は芳香化した水によって希釈される。
【0124】
実施例26:芳香化飲料
10.0gのEficacia(CNI、フランス)を、980gのVittel(Nestle、フランス)水に加え、電磁攪拌機により溶解する。6.3gのオレンジ精油を、3.6gのDimodan Uに50℃で加えた。
【0125】
そのDimodan U/精油溶液を、Vittelに加え、ローター/ステーターホモジナイザー(Polytron)を5分間使用した。その溶液を、Rannieホモジナイザーを用いてさらに均一化した。最初の100mlを除外し、残りの900mlをビンに回収した。そうして形成されたISAMULSIONは、物理的に安定である(相分離又はクリーミング及びリング形成なし)。
【0126】
Dimodan Uを大豆油のような標準的な油で置き換えて同じことを行う場合は(10gのEficacia、3.6gのDimodan U、3.6gのオレンジ精油)、ISAMULSIONにおいて得られるものに比べて低い物理的安定性(保存数日後のクリーミング、リング形成)のみを有するエマルションが得られる。
【0127】
該エマルション濃厚液は、水で希釈して、親油性が増したビタミン飲料を得ることができる。
【0128】
実施例27:ハッカ油を含有する清涼飲料
0.13重量%のハッカ油及び0.0032重量%のDimodan Uを混合し、均一な溶液が形成されるまで加熱した。0.13重量%のEficacia(CNI、フランス)を99.74%の水に加え、磁気攪拌機を用いて分散させた。その脂質混合物をEficacia溶液に加えた。Polytronホモジナイザーを10分間使用して安定なエマルション(クリーミング、リング形成なし)を得る。このエマルションは、希釈して清涼飲料を得ることができる。
【0129】
実施例28:持続性リフレッシュ感覚を与える飲料
0.26重量%のハッカ油及び0.039重量%のDimodan Uを混合し、均一な溶液を形成するまで加熱した。0.26重量%のEficacia(CNI、フランス)を99.44%の水に加え、磁気攪拌機を用いて分散させた。その脂質混合物をEficacia溶液に加えた。Polytronホモジナイザーを10分間使用して安定なエマルションを得た。このエマルションは、希釈して長続きするリフレッシュ効果を有する即席飲料を得ることができる。
【0130】
実施例29:酸化から保護されたビタミンEを含有するISAMULSION
0.05%のアスコルビルパルミテート(Danisco、デンマーク)を、60℃で0.6%のDimadan U中に溶解した。0.4重量%のd−αトコフェロール(Acros organics、ニュージャージー、米国)を、該Dimadan U/アスコルビルパルミテート混合物と混合した。得られた脂質溶液を0.2%のカゼイン酸ナトリウム(Emmi、スイス)を含有する98.75%の水に加えた。超音波処理を2分間行い、ビタミンEが酸化から保護されているビタミンEの分散体を得た。
【0131】
上述の実施例に従って調製されたISAMULSIONは、そのまま、又は添加剤として用いることができる。
【0132】
本発明を十分に説明したが、本発明の範囲又は本発明のいずれの実施形態にも影響を及ぼすことなく、条件、処方、及び他の要因の広範且つ同等の範囲内で同様に実施できることを、当業者は理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】α=100*LPA/(LPA+油)の関数として、ISAMULSION油滴内部に見出された構造を示す図である。
【図2】周期性のない自己集合構造を有する油滴を含有する典型的なISAMULSIONのCryo−TEM顕微鏡写真を示す図である。
【図3】ISAMULSION、ISAMULSIONの製造に用いたバルク油相(LPAによってナノ構造化)、及び相当する通常のエマルション(LPAなし、ナノ構造なし)の小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。
【図4】様々なLPAの量、即ちα値(α=100*LPA/(LPA+油))を含有する、ISAMULSIONの小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。
【図5】油滴の内部構造がミセルキュービックであり、空間群がFd3mである複数のISAMULSIONのcryo−TEMを示す図である。
【図6】相当する通常のエマルション液滴(LPA不在下、ナノ構造なし)(b)と比較した、周期構造のないISAMULSION油滴(LPA存在下、ナノ構造あり)(a)のCryo−TEM画像を示す図である。ISAMULSION液滴内部で認められる内部構造(図6a)は、通常の油滴内では認められない(図6b)ことが分かる。
【図7】(a)は、ISAMULSION(LPAあり、ナノ構造あり)、及び相当する通常のエマルション(LPAなし、ナノ構造なし)(d)の小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。(b)及び(c)は、高含量の油及び低含量のLPAを含むISAMULSIONに相当する。
【図8】水20%の存在下における飽和−不飽和モノグリセリド混合物の擬二元相図を示す図である。
【図9】親水性ドメインを含有するISAMULSION油滴の概略図である。親水性ドメインは、球状、又は非球状、即ち、ロッド、ディスク又はチャネルであり得ることに留意されたい。活性分子の可能性のある位置の例が示されている。
【図10】逆ミセルキュービック構造を有する油滴を含有するISAMULSIONの小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。
【図11】油とLPAとして、モノリノレイン(MLO)及びモノオレイン酸ジグリセロール(DGMO)の混合物により製造したISAMULSIONの小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。
【図12】油とLPAとして、リン脂質(ホスファチジルコリン(PC))及びモノリノレイン(MLO)の混合物を用いて製造したISAMULSIONの小角X線散乱(SAXS)パターンを示す図である。
【図13】(a)油中に遊離フィトステロールが存在し、通常のエマルションが形成されるときにフィトステロール結晶が見え、(b)遊離フィトステロールがISAMULSION液滴中に可溶化されているときにはフィトステロール結晶が存在しない偏光によって得られる光学顕微鏡画像を示す図である。
【図14】芳香を水中及びISAMULSION中に導入したとき、2日後に、結果として存在する芳香(Nメチルピロール(N−MP)及び酢酸アルデヒド(AC))を示す図である。2日後に芳香はISAMULSION中で安定であるが、それらは水中では劣化することに注意されたい。図14は、貯蔵2日後にヘッドスペース測定によって測定した分散体中に存在する油滴構造の機能としての芳香の残留百分率を示す(実施例18における組成物参照)。
【図15】ISAMULSION及び通常のエマルションに対する陽子移動反応−質量分析計(PTR−MS、Ionicon Analytik、インスブルック、オーストリア)によって芳香のヘッドスペース測定の結果を示す図である。芳香放出(PTR−MSによって検出した質量濃度の和)を、時間の関数として表している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が5nmから数百ミクロンの範囲の油滴が、親油性添加剤の存在によって、0.5から200nmの範囲の直径の大きさを有する親水性ドメインのナノサイズの自己集合構造化を示し、組成物全体を基準として、0.00001%と79%の間を含む範囲で存在する有効成分を含有する水中油型エマルション。
【請求項2】
組成物全体を基準として、0.00001%と50%の間の有効成分を含有する、請求項1に記載の水中油型エマルション。
【請求項3】
(i)鉱物油類、炭化水素類、植物油類、ワックス類、アルコール類、脂肪酸類、モノ−、ジ−、トリ−アシルグリセロール類、精油類、フレーバー油類、親油性ビタミン類、エステル類、栄養補給食品類、テルピン類、テルペン類及びそれらの混合物からなる群から選択された油と、
(ii)親油性添加剤(LPA)又は約10より低い結果としてのHLB値(親水性−親油性バランス)を有する親油性添加剤と親水性添加剤の混合物と、
(iii)水又はポリオール等の非水性極性液体を含む液滴又はチャネルの形の親水性ドメインと
を含むナノサイズの自己集合構造化内部を有する分散した油滴、
及び
親水性乳化剤を含有する水の連続相を含む、請求項1に記載の水中油型エマルション。
【請求項4】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造とL2構造及び油構造の組合せとからなる群に取り込まれる内部構造を有する、請求項1又は2に記載の水中油型エマルション。
【請求項5】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲でL2内部構造を有する、請求項1又は2に記載の水中油型エマルション。
【請求項6】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造、LC構造及びそれらの組合せからなる群に取り込まれる内部構造を有する、請求項1又は2に記載の水中油型エマルション。
【請求項7】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、LC内部構造を有する、請求項1又は2に記載の水中油型エマルション。
【請求項8】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、L3構造、L2構造とL3構造の組合せ、Lα構造とL2構造の組合せ、並びにラメラ結晶構造とL2構造の組合せからなる群に取り込まれる内部構造を有する、請求項1又は2に記載の水中油型エマルション。
【請求項9】
有効成分が、フレーバー類、フレーバー前駆物質類、芳香類、芳香前駆物質類、旨味向上剤類、塩類、糖類、アミノ酸類、多糖類、酵素類、ペプチド類、タンパク質類又は炭水化物類、栄養補助食品類、食品添加剤類、ホルモン類、細菌類、植物エキス類、薬剤類、薬物類、栄養素類、農薬用途又は化粧品用途向けの化学物質類、カロテノイド類、ビタミン類、抗酸化物類又はルテイン、ルテインエステル類を含む群から選択される栄養補給食品類、β−カロテン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコトリエノール、リコペン、Co−Q10、亜麻油、魚油、オメガ−3油類、オメガ−6油類、DHA、EPA、アラキドン酸富化油類、LCPUFA油類、メントール、ハッカ油、リポ酸、ビタミン類、ポリフェノール類及びそれらのグリコシド類、エステル及び/又は硫酸抱合体類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバノン類及びそれらのグリコシド類、例えばヘスペリジンなど、カテキンモノマー類及びそれらのガレートエステル類例えばエピガロカテキンガレートなどを含むフラバン3−オール類及びそれらのプロシアニジンオリゴマー類、ビタミンC、ビタミンCパルミテート、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD、α−及びγ−ポリ不飽和脂肪酸類、フィトステロール類、エステル化したフィトステロール、エステル化されていないフィトステロール、ゼアキサンチン、カフェイン、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項10】
LPAが、長鎖アルコール類、脂肪酸類、ペギル化脂肪酸類、グリセロール脂肪酸エステル類、モノグリセリド類、ジグリセリド類、モノ−ジグリセリド類の誘導体類、ペギル化植物油類、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類、プロピレングリコールモノ−又はジエステル類、リン脂質類、ホスファチド類、セレブロシド類、ガングリオシド類、ケファリン類、脂質類、糖脂質類、スルファチド類、糖エステル類、糖エーテル類、スクロースエステル類、ステロール類、ポリグリセロールエステル類の群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項11】
LPAが、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、PEG1−4ステアレート、PEG2−4オレエート、PEG−4ジラウレート、PEG−4ジオレエート、PEG−4ジステアレート、PEG−6ジオレエート、PEG−6ジステアレート、PEG−8−ジオレート、PEG−3−16ヒマシ油、PEG5−10水素化ヒマシ油、PEG6−20トウモロコシ油、PEG6−20アーモンド油、PEG−6オリーブ油、PEG−6ラッカセイ油、PEG−6パーム核油、PEG−6水素化パーム核油、PEG−4カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、植物油及びソルビトールのモノ−、ジ−、トリ−、テトラエステル類、ペンタエリトリチルジ−、テトラステアレート、イソステアレート、オレエート、カプリレート又はカプレート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル2−4オレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ポリグリセリル−6ジオレエート、ポリグリセリル−10トリオレエート、ポリグリセリル−3ジステアレート、C6からC20脂肪酸のプロピレングリコールモノ−又はジエステル類、C6からC20脂肪酸のモノグリセリド類、モノグリセリド類の乳酸誘導体類、ジグリセリド類の乳酸誘導体類、モノグリセリド類のジアセチル酒石酸エステル、トリグリセロールモノステアレートコレステロール、フィトステロール、PEG5−20大豆ステロール、PEG−6ソルビタンテトラ、ヘキサステアレート、PEG−6ソルビタンテトラオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノトリオレエート、ソルビタンモノ及びトリステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキステアレート、PEG−2−5オレイルエーテル、POE2−4ラウリルエーテル、PEG−2セチルエーテル、PEG−2ステアリルエーテル、スクロースジステアレート、スクロースジパルミテート、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ポロキサマー類、リン脂質類、レシチン類、ケファリン類、オート脂質及びその他の植物に由来する親油性両親媒性脂質類、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の水中油型エマルション。
【請求項12】
乳化剤が、8を超えるHLBを有する低分子量界面活性剤類、ミルクに由来するタンパク質類、例えば、乳漿タンパク質類、乳漿タンパク質単離物類、乳漿タンパク質濃縮物類、乳漿タンパク質凝集物類など、カゼイン塩類、カゼインミセル類、カゼイン類、リゾチーム、アルブミン、又は大豆に由来するタンパク質、又はアミノ酸ペプチド類、タンパク質加水分解物類、ブロックコポリマー類、ランダムコポリマー類、ジェミニ界面活性剤類、界面活性親水コロイド類、例えば、アラビアゴム、キサンタンゴム、ゼラチン、高分子電解質類、カラギーナン類、カルボキシメチルセルロース、セルロース誘導体類、アカシアゴム、ガラクトマンナン類、キトサン類、ヒアルロン酸、ペクチン類、アルギン酸プロピレングリコール、変性デンプン類、スベリヒユ、トラガカント、ジェランガムなど、アポタンパク質に似たバイオポリマー類、例えばタンパク質−多糖複合体類若しくはコアセルベート類、又はタンパク質−多糖、タンパク質−タンパク質、又は多糖−多糖ハイブリッド類、複合体類、或いはポリマー類とバイオポリマー類の混合物など、高分子電解質−界面活性剤錯体類、DNA、核酸、粒子類(ミクロンサイズ又はナノサイズ)、デンプン及びデンプン系ポリマー、アミロース、アミロペクチン並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の水中油型エマルションが乾燥され、粉末形状をしている粉末。
【請求項14】
最終生成物である、請求項1〜11のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項15】
出発材料、中間生成物又は最終生成物への添加剤である、請求項1〜13のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項16】
割合α=[LPA/(LPA+油)]×100が84未満である、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項17】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、通常の水中油型エマルション中での使用又は保存温度で晶出する、水不溶性、油不溶性有効成分、結晶性有効成分の溶解性及び/又は分散性を向上させるために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項18】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、水中油型エマルション中の有効成分の安定性、化学劣化又は酸化に対する保護を向上させるために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項19】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、消化中の有効成分のバイオアベイラビリティー、生物学的送達度、バイオディスポニビリティー、又は吸収性を向上させるために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項20】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、消費又は消化中の放出、バースト放出、又は持続放出を制御するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項21】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、有効成分の効率性、有効成分の持続する効率、又は有効成分のバースト放出を増大させるために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項22】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、新たな、又は改良された知覚特性を生み出すための芳香又はフレーバーの放出、芳香又はフレーバーのバースト放出、或いは芳香又はフレーバーの持続放出を制御するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項23】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、異なる味覚、異なる質感、口当り、口を覆う感覚、又はクリーム感覚を生み出すために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項24】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、味マスキング、異味マスキング、フレーバーマスキング、オフフレーバーマスキング、味の調節又はフレーバーの調節をするために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項25】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによって、色調節、褐変の増大、化学反応収率の制御又はメイラード反応収率の制御をするために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項26】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによって、水中油型エマルションを富化するために任意の種類の原料又は製品から有効成分を抽出するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項27】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによって、健康又は感覚に有利なように有効成分の放出を制御するための消費又は消化の間の口内での任意の種類の原料又は製品から有効成分を抽出するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項28】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによって、請求項16〜26に記載の機能性の組合せに基づく任意の種類の機能性を送達するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項29】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによって、1つの機能性又は複数の機能性が、加熱中、冷却中、加工中、咀嚼中、消費中、消化中に、又は口中で、水中油型エマルションの液滴の内部構造を変化させるか又は水中油型エマルション全体の構造を変化させることによって得られる、請求項16〜27に記載の機能性の組合せに基づく任意の種類の機能性を送達するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項1】
直径が5nmから数百ミクロンの範囲の油滴が、親油性添加剤の存在によって、0.5から200nmの範囲の直径の大きさを有する親水性ドメインのナノサイズの自己集合構造化を示し、組成物全体を基準として、0.00001%と79%の間を含む範囲で存在する有効成分を含有する水中油型エマルション。
【請求項2】
組成物全体を基準として、0.00001%と50%の間の有効成分を含有する、請求項1に記載の水中油型エマルション。
【請求項3】
(i)鉱物油類、炭化水素類、植物油類、ワックス類、アルコール類、脂肪酸類、モノ−、ジ−、トリ−アシルグリセロール類、精油類、フレーバー油類、親油性ビタミン類、エステル類、栄養補給食品類、テルピン類、テルペン類及びそれらの混合物からなる群から選択された油と、
(ii)親油性添加剤(LPA)又は約10より低い結果としてのHLB値(親水性−親油性バランス)を有する親油性添加剤と親水性添加剤の混合物と、
(iii)水又はポリオール等の非水性極性液体を含む液滴又はチャネルの形の親水性ドメインと
を含むナノサイズの自己集合構造化内部を有する分散した油滴、
及び
親水性乳化剤を含有する水の連続相を含む、請求項1に記載の水中油型エマルション。
【請求項4】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造とL2構造及び油構造の組合せとからなる群に取り込まれる内部構造を有する、請求項1又は2に記載の水中油型エマルション。
【請求項5】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲でL2内部構造を有する、請求項1又は2に記載の水中油型エマルション。
【請求項6】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、L2構造、LC構造及びそれらの組合せからなる群に取り込まれる内部構造を有する、請求項1又は2に記載の水中油型エマルション。
【請求項7】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、LC内部構造を有する、請求項1又は2に記載の水中油型エマルション。
【請求項8】
油滴が、0℃から100℃の温度範囲で、L3構造、L2構造とL3構造の組合せ、Lα構造とL2構造の組合せ、並びにラメラ結晶構造とL2構造の組合せからなる群に取り込まれる内部構造を有する、請求項1又は2に記載の水中油型エマルション。
【請求項9】
有効成分が、フレーバー類、フレーバー前駆物質類、芳香類、芳香前駆物質類、旨味向上剤類、塩類、糖類、アミノ酸類、多糖類、酵素類、ペプチド類、タンパク質類又は炭水化物類、栄養補助食品類、食品添加剤類、ホルモン類、細菌類、植物エキス類、薬剤類、薬物類、栄養素類、農薬用途又は化粧品用途向けの化学物質類、カロテノイド類、ビタミン類、抗酸化物類又はルテイン、ルテインエステル類を含む群から選択される栄養補給食品類、β−カロテン、トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコトリエノール、リコペン、Co−Q10、亜麻油、魚油、オメガ−3油類、オメガ−6油類、DHA、EPA、アラキドン酸富化油類、LCPUFA油類、メントール、ハッカ油、リポ酸、ビタミン類、ポリフェノール類及びそれらのグリコシド類、エステル及び/又は硫酸抱合体類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバノン類及びそれらのグリコシド類、例えばヘスペリジンなど、カテキンモノマー類及びそれらのガレートエステル類例えばエピガロカテキンガレートなどを含むフラバン3−オール類及びそれらのプロシアニジンオリゴマー類、ビタミンC、ビタミンCパルミテート、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD、α−及びγ−ポリ不飽和脂肪酸類、フィトステロール類、エステル化したフィトステロール、エステル化されていないフィトステロール、ゼアキサンチン、カフェイン、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項10】
LPAが、長鎖アルコール類、脂肪酸類、ペギル化脂肪酸類、グリセロール脂肪酸エステル類、モノグリセリド類、ジグリセリド類、モノ−ジグリセリド類の誘導体類、ペギル化植物油類、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類、プロピレングリコールモノ−又はジエステル類、リン脂質類、ホスファチド類、セレブロシド類、ガングリオシド類、ケファリン類、脂質類、糖脂質類、スルファチド類、糖エステル類、糖エーテル類、スクロースエステル類、ステロール類、ポリグリセロールエステル類の群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項11】
LPAが、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、PEG1−4ステアレート、PEG2−4オレエート、PEG−4ジラウレート、PEG−4ジオレエート、PEG−4ジステアレート、PEG−6ジオレエート、PEG−6ジステアレート、PEG−8−ジオレート、PEG−3−16ヒマシ油、PEG5−10水素化ヒマシ油、PEG6−20トウモロコシ油、PEG6−20アーモンド油、PEG−6オリーブ油、PEG−6ラッカセイ油、PEG−6パーム核油、PEG−6水素化パーム核油、PEG−4カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、植物油及びソルビトールのモノ−、ジ−、トリ−、テトラエステル類、ペンタエリトリチルジ−、テトラステアレート、イソステアレート、オレエート、カプリレート又はカプレート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル2−4オレエート、ステアレート、又はイソステアレート、ポリグリセリル4−10ペンタオレエート、ポリグリセリル−3ジオレエート、ポリグリセリル−6ジオレエート、ポリグリセリル−10トリオレエート、ポリグリセリル−3ジステアレート、C6からC20脂肪酸のプロピレングリコールモノ−又はジエステル類、C6からC20脂肪酸のモノグリセリド類、モノグリセリド類の乳酸誘導体類、ジグリセリド類の乳酸誘導体類、モノグリセリド類のジアセチル酒石酸エステル、トリグリセロールモノステアレートコレステロール、フィトステロール、PEG5−20大豆ステロール、PEG−6ソルビタンテトラ、ヘキサステアレート、PEG−6ソルビタンテトラオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノトリオレエート、ソルビタンモノ及びトリステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキステアレート、PEG−2−5オレイルエーテル、POE2−4ラウリルエーテル、PEG−2セチルエーテル、PEG−2ステアリルエーテル、スクロースジステアレート、スクロースジパルミテート、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、ポロキサマー類、リン脂質類、レシチン類、ケファリン類、オート脂質及びその他の植物に由来する親油性両親媒性脂質類、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の水中油型エマルション。
【請求項12】
乳化剤が、8を超えるHLBを有する低分子量界面活性剤類、ミルクに由来するタンパク質類、例えば、乳漿タンパク質類、乳漿タンパク質単離物類、乳漿タンパク質濃縮物類、乳漿タンパク質凝集物類など、カゼイン塩類、カゼインミセル類、カゼイン類、リゾチーム、アルブミン、又は大豆に由来するタンパク質、又はアミノ酸ペプチド類、タンパク質加水分解物類、ブロックコポリマー類、ランダムコポリマー類、ジェミニ界面活性剤類、界面活性親水コロイド類、例えば、アラビアゴム、キサンタンゴム、ゼラチン、高分子電解質類、カラギーナン類、カルボキシメチルセルロース、セルロース誘導体類、アカシアゴム、ガラクトマンナン類、キトサン類、ヒアルロン酸、ペクチン類、アルギン酸プロピレングリコール、変性デンプン類、スベリヒユ、トラガカント、ジェランガムなど、アポタンパク質に似たバイオポリマー類、例えばタンパク質−多糖複合体類若しくはコアセルベート類、又はタンパク質−多糖、タンパク質−タンパク質、又は多糖−多糖ハイブリッド類、複合体類、或いはポリマー類とバイオポリマー類の混合物など、高分子電解質−界面活性剤錯体類、DNA、核酸、粒子類(ミクロンサイズ又はナノサイズ)、デンプン及びデンプン系ポリマー、アミロース、アミロペクチン並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の水中油型エマルションが乾燥され、粉末形状をしている粉末。
【請求項14】
最終生成物である、請求項1〜11のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項15】
出発材料、中間生成物又は最終生成物への添加剤である、請求項1〜13のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項16】
割合α=[LPA/(LPA+油)]×100が84未満である、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項17】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、通常の水中油型エマルション中での使用又は保存温度で晶出する、水不溶性、油不溶性有効成分、結晶性有効成分の溶解性及び/又は分散性を向上させるために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項18】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、水中油型エマルション中の有効成分の安定性、化学劣化又は酸化に対する保護を向上させるために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項19】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、消化中の有効成分のバイオアベイラビリティー、生物学的送達度、バイオディスポニビリティー、又は吸収性を向上させるために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項20】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、消費又は消化中の放出、バースト放出、又は持続放出を制御するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項21】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、有効成分の効率性、有効成分の持続する効率、又は有効成分のバースト放出を増大させるために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項22】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、新たな、又は改良された知覚特性を生み出すための芳香又はフレーバーの放出、芳香又はフレーバーのバースト放出、或いは芳香又はフレーバーの持続放出を制御するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項23】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、異なる味覚、異なる質感、口当り、口を覆う感覚、又はクリーム感覚を生み出すために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項24】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成させることによって、味マスキング、異味マスキング、フレーバーマスキング、オフフレーバーマスキング、味の調節又はフレーバーの調節をするために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項25】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによって、色調節、褐変の増大、化学反応収率の制御又はメイラード反応収率の制御をするために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項26】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによって、水中油型エマルションを富化するために任意の種類の原料又は製品から有効成分を抽出するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項27】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによって、健康又は感覚に有利なように有効成分の放出を制御するための消費又は消化の間の口内での任意の種類の原料又は製品から有効成分を抽出するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項28】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによって、請求項16〜26に記載の機能性の組合せに基づく任意の種類の機能性を送達するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【請求項29】
油滴内にナノサイズの自己集合構造を形成することによって、1つの機能性又は複数の機能性が、加熱中、冷却中、加工中、咀嚼中、消費中、消化中に、又は口中で、水中油型エマルションの液滴の内部構造を変化させるか又は水中油型エマルション全体の構造を変化させることによって得られる、請求項16〜27に記載の機能性の組合せに基づく任意の種類の機能性を送達するために使用するための、請求項1〜15のいずれかに記載の水中油型エマルション。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【公表番号】特表2009−516724(P2009−516724A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541741(P2008−541741)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068761
【国際公開番号】WO2007/060177
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068761
【国際公開番号】WO2007/060177
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】
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