説明

水晶デバイスとその製造方法

【課題】本発明は、水晶振動子、水晶発振器さらにジャイロセンサ等として利用される小型で安定した振動特性を有する信頼性の高い水晶デバイスを提供し、さらに、加工精度に優れ、生産性に優れた水晶デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】シリコンからなり凹部を備える蓋部材と、水晶からなり所定の周波数で振動する振動部とこの振動部を取り囲むようにして形成される枠部を備える水晶部材と、シリコンからなり凹部備え且つ一方の面から対向する他方の面に向かって形成された貫通電極を備える底部部材とを有しており、水晶部材が蓋部材と底部部材との間に接合される積層構造をなしている。さらに、水晶部材の振動部は、蓋部材に形成された凹部と底部部材に形成された凹部とで囲まれた密閉空間内に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子、水晶発振器さらにジャイロセンサ等として利用される小型で安定した振動特性を有する信頼性の高い水晶デバイスに関する。また、加工精度に優れ、生産性に優れた水晶デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は従来の最も一般的な水晶デバイスの構成を示した図である。図10に示すように従来の水晶デバイス40は、セラミックスからなるパッケージ240の内側に電極415が形成された水晶振動片130が導電性接着剤等の接合材700によって固定されている。
【0003】
さらに、このパッケージ240の開口部には蓋部材330が接合材600によって接合されており、これによりパッケージ240の内部は密閉状態に保たれている。なお、従来は蓋部材330にコバール等の金属材料やガラスを用いることが多かった。また接合材600には、金・錫(AuSn)合金や銀(Ag)等のろう材を使い、高温で加熱して行う溶融接合法によって接合していた。
【0004】
また、水晶発振器やジャイロセンサとして利用する場合には、図10に示す構成を形成した後に、別の工程で製造した集積化回路(一般にICと称する。)を付け加えていた。
【0005】
図11は従来のシリコンからなるパッケージを用いた水晶デバイスの構成を示した図である。水晶発振器やジャイロセンサのようなICを備えた水晶デバイスでは、ICを形成したシリコン(Si)ウェハーをパッケージに加工して用いる構成も提案されている(例えば特許文献1参照)。図11に示す水晶デバイス50では、シリコン(Si)からなるパッケージ230の内側に電極415が形成された水晶振動片130が接合材700によって固定されている。
【0006】
さらに、このパッケージ230の開口部には蓋部材330が接合材600によって接合されており、これによりパッケージ230の内部は密閉状態に保たれている。なお、図11に示す水晶デバイス50においても、蓋部材330にはコバール等の金属材料やガラスを用いることが多かった。
【0007】
水晶デバイス50に用いられるSiからなるパッケージ230には、外側にIC500が形成されている。さらに水晶振動片130に形成される電極415とIC500を電気的に接続するために、パッケージ230の内側からIC500に向かって貫通電極400が形成されている。なお、このような構成からなるパッケージ230は、以下に示す方法によって製造されていた。
【0008】
まず始めに、通常のIC製造工程と同様にSiウェハー上にIC500を形成する。次に、IC500が形成されたSiウェハーに凹部とIC500に貫通する穴をエッチング法によって加工する。その後、貫通した穴の内部に貫通電極400をメッキ等によって形成する。最後に、所定の大きさに切り出してパッケージ230が完成する。
【0009】
また近年の水晶デバイスの小型化要求に対応するのに有効な構成として、水晶デバイスと同じ大きさの水晶部材を、ガラスからなる2枚の平板(底部部材と蓋部材)で挟み込んで固定する構成も提案されている(例えば特許文献2参照)。図12は従来の水晶部材をガラスからなる底部部材と蓋部材で挟み込む構造の水晶デバイスの構成を示した図である
。図13は従来の水晶部材をガラスからなる底部部材と蓋部材で挟み込む構造の水晶デバイスの分解図である。
【0010】
図12及び図13に示す水晶デバイス60は、水晶部材110を底部部材210と蓋部材310で挟み込む構造をしている。底部部材210と蓋部材310は平坦なガラスからなる平板であり、水晶部材110は振動部110aとその振動部110aを取り囲む枠部110bとからなっている。なお、水晶部材110に備わる振動部110aは枠部110bよりも薄く形成されており、さらに、水晶部材110の両面には電極415が形成されている。
【0011】
これら水晶部材110、底部部材210、蓋部材310は、それぞれが重ね合わさって接合されるが、水晶部材110の振動部110aは枠部110bより薄く形成されているため、実際には、図12に示すように、水晶部材110の枠部110bと底部部材210の間、水晶部材110の枠部110bと蓋部材310の間で接合されることとなる。よって枠部110bで囲まれた内側にある振動部110aは、密閉空間内で自由に振動することができる。
【0012】
この水晶デバイス60では底部部材210と蓋部材310にガラス材料を用いることで、接着剤を用いずに水晶部材110と陽極接合させている点が一つの特徴である。接着剤を用いないので、振動部110aへの接着剤の付着を心配する必要が無く、且つ、接着剤の厚みの分だけ水晶デバイス60の厚みを薄くする事ができる等の利点を有する。なお、この水晶デバイス60を外部から電流を流して駆動させるには、水晶デバイス60の側面に現れている電極415を使っておこなう。
【0013】
このような構造からなる電子デバイス60は、電子デバイス40、50のように小さな水晶振動片130を接合材700によって固定する必要がないため、作業性が良好で小型化に適している。
【0014】
【特許文献1】特開2004−214787号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】特開2000−223669号公報(第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図10に示す従来のセラミックスからなるパッケージ240に水晶振動片130を接合材700によって固定する水晶デバイス40の場合、水晶振動片130が小型化されればされるほど、作業性が悪くなるため、パッケージ240の内側に精度良く水晶振動片130を固定する事が難しくなる。その結果、水晶振動片130がパッケージ240の内壁や底面に接触して、振動不良を起こすことが多かった。
【0016】
図11に示すシリコンからなるパッケージ230を用いた水晶デバイス50の場合でも、水晶振動片130が小型化されればされるほど、作業性が悪くなるため、パッケージ230の内側に精度良く水晶振動片130を固定する事が難しくなる。その結果、水晶振動片130がパッケージ240の内壁や底面に接触して、振動不良を起こすことが多かった。
【0017】
以上のように、図10、図11に示される従来の水晶デバイス40、50は、いずれも小型化に適しておらず、且つ生産性も悪かった。
【0018】
図12に示す水晶部材110をガラスからなる2枚の平板(底部部材210と蓋部材310)で挟み込んで固定する構造の水晶デバイス60の場合、水晶部材110は製品である水晶デバイス60と同じ大きさで形成されるので、図10、図11に示される従来の水晶デバイス40、50に比べると水晶部材110の取り扱いは容易である。その結果、水晶デバイス60が小型化されても、所定の位置に精度良く水晶部材110を固定することができ、信頼性の高い安定した振動を得ることができる。
【0019】
しかしながら、図12に示す水晶デバイス60の場合、水晶部材110は振動部110aと枠部110bとで厚みを異ならせる必要があるので振動部110aの厚みを薄く加工しなければならず、その結果、水晶部材110の形成工程が複雑になり生産性が悪かった。
【0020】
また、振動部110aを薄く加工する工程で生じる面荒れや内部応力は、振動特性を悪化させる原因となり、その結果、水晶デバイス60の信頼性は低かった。
【0021】
水晶デバイス60では底部部材210と蓋部材310にガラス材料を用いることで、接着剤を用いずに水晶部材110と陽極接合させている点が特徴のひとつであるが、逆に、底部部材210と蓋部材310にガラス材料を用いることで、多くの欠点も有している。例えば水晶発振器やジャイロセンサのようなICを備える水晶デバイスの場合、ガラス上にはICを形成することはできないので、別の工程で製造されたICを水晶デバイス60に接合して使わなくてはならない。よって、工程が多くなるので生産性が非常に悪い。
【0022】
さらに、ガラスは非常に加工性が悪いので、水晶デバイス60を所定の大きさにダイシングする工程において、割れや欠け等の不良を多く発生させていた。このことも生産性を悪化させる要因の一つであった。
【0023】
本発明の目的は、小型化に適し、発振周波数のばらつきが少なく安定した振動特性を有する信頼性の高い水晶デバイスを提供することにある。
【0024】
さらに、加工精度が高く、且つ大量生産が可能で、生産性が良好な水晶デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の水晶デバイスは、水晶の圧電振動を利用した水晶デバイスにおいて、シリコンからなり凹部を備える蓋部材と、水晶からなり所定の周波数で振動する振動部とその振動部を取り囲うようにして形成される枠部を備える水晶部材と、シリコンからなり凹部を備え、且つ一方の面から対向する他方の面に向かって形成された貫通電極を備える底部部材を有しており、その水晶部材が蓋部材と底部部材との間に接合される積層構造をなしていることを特徴としている。
【0026】
さらに、底部部材の接合面、水晶部材の枠部における接合面、蓋部材の接合面には、それぞれに金属膜が形成されるのが望ましい。
【0027】
さらには、金属膜はAu膜、もしくは表面がAu膜の積層膜であるのが望ましい。
【0028】
さらに、水晶部材の振動部は、蓋部材に形成された凹部と底部部材に形成された凹部とで囲まれた密閉空間内に収容されるのが望ましい。
【0029】
さらに、底部部材に形成される貫通電極は、水晶部材に形成され振動部を振動させるための水晶側電極に電気的に接続されているのが望ましい。
【0030】
さらに底部部材にICが形成されているのが望ましい。
【0031】
また、上記課題を解決するために、本発明の水晶デバイスの製造方法は、水晶の圧電振動を利用した水晶デバイスの製造方法において、水晶からなり所定の周波数で振動する複数の振動部を備える水晶基板を、シリコンからなり複数の凹部を備える蓋基板と、シリコンからなり複数の凹部を備え、且つ一方の面から対向する他方の面に向かって形成された貫通電極を備える底部基板とで挟み込んで接合する接合工程と、接合された蓋基板、水晶基板、底部基板を水晶デバイスの大きさに切断するダイシング工程を有することを特徴としている。
【0032】
さらに、底部基板の接合面、水晶基板の接合面、蓋基板の接合面のそれぞれに金属膜を形成し、且つ、これらの金属膜同士を接合させるのが望ましい。
【0033】
さらには、金属膜はAu膜、または表面がAu膜の積層膜であるのが望ましい。
【0034】
さらに、接合工程において、水晶基板の振動部を、蓋基板に形成された凹部と底部基板に形成された凹部とで囲まれた密閉空間内に配置させるのが望ましい。
【0035】
さらに、接合工程において、底部基板に形成される貫通電極と水晶基板に形成され振動部を振動させるための水晶側電極を、電気的に接続させるのが望ましい。
【0036】
さらに、接合工程において、表面活性化接合法を用いて接合するのが望ましい。
【0037】
さらに、水晶基板は、水晶ウェハーを所定の厚みに研磨する工程と、水晶基板の外形形状をエッチング法によって形成する工程と、フォトリソグラフィー法によって水晶側電極を形成する工程を有する方法で形成されるのが望ましい。
【0038】
さらに、底部基板は、SiウェハーにICを形成する工程と、Siウェハーを加工して凹部と貫通電極用穴を形成する工程と、その貫通電極用穴の内部に貫通電極を形成しICと電気的に接続する工程と、貫通電極の端部に接続される配線電極を形成する工程有する方法で形成されるのが望ましい。
【0039】
さらに、底部基板の凹部は、エッチング法によって形成されるのが望ましい。
【0040】
さらに、蓋基板の凹部は、エッチング法によって形成されるのが望ましい。
【0041】
さらに、底部基板の一部に金属膜を形成し、水晶基板の一部に金属膜を形成し、蓋基板の一部に金属膜を形成し、且つ、それら金属膜同士を接合させるのが望ましい。
【0042】
さらには、金属膜はAu膜、もしくは表面がAu膜の積層膜であるのが望ましい。
【0043】
(作用)
本発明の水晶デバイスでは、シリコンからなり凹部を備える蓋部材と、シリコンからなり凹部を備え、且つ一方の面から対向する他方の面に向かって形成された貫通電極を備える底部部材の間に、所定の周波数で振動する振動部とその振動部を取り囲むようにして形成される枠部を備える水晶部材を配置させ、水晶部材の枠部を蓋部材と底部部材とで挟み込んで接合し、積層構造にしている。
【0044】
小片化された水晶振動片をパッケージの内側に落とし込んで接合する従来の水晶デバイ
スに比べて作業性が良好なため、水晶部材を精度良く接合することができ、振動部が他の部材と接触して起こる振動不良を無くすことができる。
【0045】
また、蓋部材に形成された凹部と底部部材に形成された凹部とを対向させて配置し大きな密閉空間を形成し、その内側に水晶部材の振動部を配置させるので、蓋部材と底部部材が振動部と接触する危険性を極力抑えることができる。その結果、従来の水晶デバイスのように水晶部材の振動部を薄く加工する必要が無くなるので、加工工程に生じる振動部の面荒れや内部応力は無くなり、振動特性を安定化させることができる。
【0046】
さらに、底部部材には貫通電極が形成されており、この貫通電極と水晶部材に形成された水晶側電極を直接もしくは間接的に接続させることで、水晶デバイスを完成させた後、貫通電極を介して、外部から水晶部材に電圧をかけることが可能である。
【0047】
また、底部部材の接合面に金属膜を形成し、水晶部材の枠部にも同様の金属膜を形成することで、それら金属膜同士を表面活性化接合法によって接合させることが可能となる。その結果、底部部材と水晶部材を強固に接合することができる。
【0048】
さらに同様に、蓋部材の接合面に金属膜を形成し、水晶部材の枠部に金属膜を形成することで、それら金属膜同士を表面活性化接合法によって接合させることができる。その結果、蓋部材と水晶部材を強固に接合することができる。
【0049】
なお、表面活性化接合法はAuとAuの接合の場合、非常に接合強度が高くなることが知られており、金属膜として表面がAuからなる膜を用いれば、金属膜を介して非常に強固に底部部材と水晶部材、及び蓋部材と水晶部材を接合することができる。
【0050】
さらに、底部部材はシリコンからなっているので、一般に行われているIC製造工程を使って、底部部材上にICを形成することも可能である。また、底部部材に形成される貫通電極を介して、ICと水晶部材の間で電気信号のやり取りを行うことも可能である。
【0051】
また、本発明の水晶デバイスの製造方法では、まず始めに、水晶からなり所定の周波数で振動する複数の振動部を備える水晶基板を、シリコンからなり複数の凹部を備える蓋基板と、シリコンからなり複数の凹部を備え、且つ一方の面から対向する他方の面に向かって形成された貫通電極を備える底部基板とで挟み込んで接合する。その後、蓋基板、水晶基板、底部基板が接合された三層構造の部材を水晶デバイスの大きさに切断することで、複数の水晶デバイスを同時に形成することが可能である。そのため、大量生産に適しており、生産性が非常に高い。
【0052】
また、蓋基板に形成された凹部と底部基板に形成された凹部と対向させて配置し大きな密閉空間を形成し、その内側に水晶基板の振動部を配置させることで、振動部が蓋基板や底部基板と接触する危険性を極力抑えることができる。
【0053】
さらに、蓋基板に形成された複数の凹部の間隔と、底部基板に形成された複数の凹部の間隔と、水晶基板に形成された複数の振動部の間隔が、ともに一致していれば、少なくとも2箇所位置合わせすることにより、同時にすべてを正確に配置させることが可能である。そのため、非常に生産性が良好である。
【0054】
また、本発明の水晶デバイスの製造方法では、底部基板と水晶基板の接合工程で、底部基板に形成される複数の貫通電極と水晶基板に形成される複数の水晶側電極の接続も一緒に行う。一回の接合工程で同時に複数の電気的接続を行ってしまうので、非常に効率が良く、生産性が高い。
【0055】
また、蓋基板と水晶基板と底部基板を接合する工程において、常温での接合が可能な表面活性化接合法を用いることで、水晶基板に熱的なダメージを与える心配が無くなり、その結果信頼性が高まる。また、ICを備える水晶発振器やジャイロセンサのような水晶デバイスの場合、ICにも熱的なダメージを与える心配が無く、さらに信頼性が高まる。
【0056】
また本発明の水晶デバイスの製造方法において、水晶基板は、水晶ウェハーを所定の厚みに研磨する工程と、水晶基板の外形形状をエッチング法によって形成する工程と、フォトリソグラフィー法によって水晶側電極を形成する工程によって形成される。
【0057】
水晶ウェハーの表面を研磨することで、表面が平滑になり、表面にあるダメージ層を除去することができ、且つ厚みを所定の厚みにすることができるので、安定した振動特性を有する水晶基板が得られる。
【0058】
またエッチング法によって所定の外形形状に加工することで非常に微細な形状を形成することができ、今後進むと考えられる水晶デバイスの小型化にも対応可能である。
【0059】
またLSI分野の配線形成に使われるフォトリソグラフィー法を用いて水晶側電極を形成することで、高密度で高精細の電極を形成できるので、小型化に適している。
【0060】
さらに本発明の水晶デバイスの製造方法において、底部基板は、SiウェハーにICを形成する工程と、Siウェハーを加工して凹部と貫通電極用穴を形成する工程と、その貫通電極用穴の内部に貫通電極を形成しICと電気的接続する工程と、貫通電極の端部に接続される配線電極を形成する工程によって形成される。
【0061】
Siウェハー上にICを形成する工程は、通常のICを製造する工程であり、信頼性は確立されており、且つ生産性も高い。さらに、従来あるIC製造ラインをそのまま利用できるので新たな設備投資をする必要も無い。
【0062】
また、Siウェハーを加工して凹部と貫通電極用穴を形成する工程は、近年盛んに技術開発が進められているMEMS技術を利用して行われる。MEMS技術を用いることでSiウェハー上に非常に微細で精度の高い加工を施すことが可能であり、小型化に適している。
【0063】
また、あけられた貫通電極用穴の内側に貫通電極を形成し、底部基板に形成されたICと電気的に接続させ、さらにICが形成される面の裏側の面に配線電極を形成することで、ICの電気信号を、貫通電極を介して、ICが形成された面の裏側の面にある配線電極まで伝えることが可能になる。すなわち、底部基板の一方の面側から他方の面側に電気的に導通させることが可能になる。
【0064】
また、微細で加工精度の高いエッチング法を用いて底部基板の凹部や蓋基板の凹部を形成すれば、非常に微細な凹部を加工精度良く形成することができ、水晶デバイスの小型化が容易になる。
【0065】
また、底部基板の一部に金属膜を形成し、且つ水晶基板の一部にも同様の金属膜を形成することで、それら金属膜同士を表面活性化接合法によって接合させることが可能となる。その結果、底部基板と水晶基板を強固に接合することができる。
【0066】
さらに同様に、蓋基板の一部の金属膜を形成し、且つ水晶基板の一部に金属膜を形成することで、それら金属膜同士を表面活性化接合法によって接合させることができる。その
結果、蓋基板と水晶基板を強固に接合することができる。
【0067】
なお、表面活性化接合法はAuとAuの接合の場合、非常に接合強度が高くなることが知られており、金属膜として表面がAuからなる膜を用いれば、非常に強固に底部基板と水晶基板、及び蓋基板と水晶基板を接合することができる。
【発明の効果】
【0068】
本発明によれば、小型化に適し、発振周波数のばらつきが少なく安定した振動特性を有する信頼性の高い水晶デバイスを提供することが可能である。さらに、加工精度が高く、且つ大量生産が可能で、生産性が良好な水晶デバイスの製造方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
(第1の実施形態)
図1は本発明のICと貫通電極を備える水晶デバイスの断面図である。図2は本発明のICと貫通電極を備える水晶デバイスの分解斜視図である。本発明のIC500と貫通電極400を備える水晶デバイス10は大きく分けて三つの主要部材(水晶部材100、底部部材200、蓋部材300)からなっている。以下に各部材の構成について詳しく説明する。
【0070】
まず、第一の主要部材である水晶部材100は、図2に示すように振動部100aとその周りを取り囲むようにして形成される枠部100bからなっており、振動部100aと枠部100bは同じ厚みで構成されている。さらに振動部100aの表面には振動部100aを振動させるための水晶側電極410が形成され、枠部100bの表面には底部部材200や蓋部材300との接合時に接合強度を強化させる役目をする金属膜430、440が形成されている。
【0071】
本実施形態では、水晶側電極410、金属膜430、440はいずれも同一の膜構成をしており、下層が0.03μm厚のクロム(Cr)膜、上層が0.15μm厚の金(Au)膜からなる積層膜でできている。
【0072】
第二の主要部材である底部部材200は、シリコン(Si)からなる板状の部材であり、一方の面側には凹部2500が形成され、その凹部2500の裏側の面にはIC500が形成されている。また、IC500から凹部2500に向かって底部部材200を貫通するようにして貫通電極400が形成されており、さらにその貫通電極400の凹部2500側には配線電極420が形成されている。
【0073】
配線電極420は凹部2500の底面200aからその上段の接合面200bに向けてパターン化して配線されており、その先で水晶部材100に形成される水晶側電極410と接続される。また、底部部材200の接合面200bには、水晶部材100との接合時に接合強度を強化させる役目をする金属膜450が形成されている。本実施形態では、配線電極420、金属膜450はいずれも同一の膜構成をしており、下層が0.03μm厚のCr膜、上層が0.15μm厚のAu膜からなる積層膜でできている。
【0074】
第三の主要部材である蓋部材300は、シリコン(Si)からなる板状の部材であり、一方の面側には凹部3500が形成されている。さらに水晶部材100と接合される面には金属膜460が形成されている。本実施形態では、金属膜460は下層が0.03μm厚のCr膜、上層が0.15μm厚のAu膜からなる積層膜でできている。
【0075】
これら三つの部材は、水晶部材100に形成される金属膜440と底部部材200に形
成される金属膜450が接合され、さらに水晶部材100に形成される金属膜430と蓋部材300に形成される金属膜460が接合されることによって一体化される。
【0076】
なお、水晶部材100上の金属膜440と底部部材200上の金属膜450を接合する時には、同一構成で同一面に形成されている水晶側電極410と配線電極420も同時に接合されることとなる。本発明の構成では、このように接合工程で同時に水晶側電極410と配線電極420の接続も行うことができるので、生産効率が良く、生産性が良好である。
【0077】
また本発明の水晶デバイス10の構成において、底部部材200に形成される凹部2500と蓋部材300に形成される凹部3500は、それぞれが対向するようにして配置される。そのため、三つの部材を接合した後にはその内部に凹部2500と凹部3500で囲まれる大きな密閉空間が形成されることとなる。なお接合工程を真空中もしくは一定の圧力雰囲気中で行えばこの密閉空間を真空状態もしくは一定の気圧状態にすることが可能である。
【0078】
本発明の水晶デバイス10では、その密閉空間に水晶部材100の振動部100aを配置させることで、振動部100aの振動時に蓋部材と底部部材が振動部と接触する危険性を極力抑えることができる。また、この密閉空間を真空状態もしくは一定の気圧状態にすることにより、振動部100aを安定して振動させることが可能である。このように、本発明の水晶デバイス10の構成によれば、従来よりも振動特性の安定させることができ信頼性を高めることができる。
【0079】
また本発明の水晶デバイス10の構成では、IC500は水晶部材100の振動部100aとは全く別の空間に配置されており、貫通電極400によって、電気的につながっている。このような構成により、IC500と振動部100aの間で影響し合うようなノイズ等を極力少なくすることができるので、信頼性が高いという利点も有している。
【0080】
以上の構成からなる本発明の水晶デバイス10は、以下に示す製造方法によって製造することが可能である。図3は本発明の水晶デバイスの製造方法を示した図である。
【0081】
本発明の水晶デバイス10の製造方法は、図3(a)に示す複数の振動部100aを有する水晶基板1000、複数の凹部2500を有する底部基板2000、複数の凹部3500を有する蓋基板3000を形成する基板形成工程と、図3(b)に示す底部基板2000と蓋基板3000の間に水晶基板1000を挟み込んで接合する基板接合工程と、図3(c)に示す接合された底部基板2000、水晶基板1000、蓋基板3000を水晶デバイス10の大きさに切断するダイシング工程とを有した製造方法である。
【0082】
まず始めに、図3(a)に示す基板形成工程における蓋基板3000の形成方法について説明する。図4は本発明の水晶デバイスの製造方法における蓋基板の形成方法を示した図である。図4(a)に示すように蓋基板3000は一定の厚みで表面が平滑なシリコンウェハー(Siウェハー3200)から作られていく。本実施形態では、厚みが300μmで表面がポリッシング加工されたSiウェハー3200を用いた。
【0083】
次に、図4(b)に示すように、そのSiウェハー3200の一方の面側の所定の位置に、エッチング法によって所定の深さの凹部3500を加工し蓋基板3000を形成する。
【0084】
本実施形態では、幅1.2mm×奥行き1.6mm×深さ0.15mmの凹部3500を、蓋基板3000上に一定の間隔P1で、500個形成した(図4は蓋基板3000の
一部を拡大し、二つの凹部3500のみを表示した図である。)。なお、本実施形態ではエッチング法としてドライエッチング法を利用したが、ウェットエッチング法で凹部3500を形成してもかまわない。
【0085】
さらに、図4(c)に示すように、蓋基板3000の凹部3500が形成された側の接合面300bに金属膜460を形成する。なお接合面300bとは図4(b)で凹部3500加工されなかった面である。本実施形態では、スパッタリング法によって、下層が0.03μmのCr膜で、上層が0.15μmのAu膜からなる金属膜460を形成した。
【0086】
次に、図3(a)に示す基板形成工程における水晶基板1000の形成方法について説明する。図5は本発明の水晶デバイスの製造方法における水晶基板の形成方法を示した図である。図5(a)に示すように水晶基板1000は一定の厚みで表面が平滑な水晶ウェハー1400から作られていく。水晶ウェハー1400は作業性や輸送のしやすさを考慮して、ある程度の厚みをもって作られるのが一般的であり、通常は100μm以上の厚みで作られる。
【0087】
しかしながら、水晶デバイス10として利用する場合、板厚は振動特性を決定する大きな要素の一つであるので、希望する振動特性が得られるように、厚みを調整する必要がある。本発明の製造方法では、図5(b)に示すように、水晶ウェハー1400をエッチング法によって所定の厚みの水晶ウェハー1200に薄く加工する。本実施形態では、100μmの厚みの水晶ウェハー1400を、50μmの厚みの水晶ウェハー1200に加工した。
【0088】
さらに、図5(c)に示すように、水晶ウェハー1200をフォトリソグラフィー法とウェットエッチング法によって、所望の振動部100aを備える水晶基板1000に加工する。フォトリソグラフィー法とウェットエッチング法の組合せは、非常に微細な形状を形成するのに適した加工法であり、水晶デバイス10の小型化には有効な手段である。
【0089】
本実施形態では、振動部100aを、水晶基板1000上に、蓋基板3000の凹部3500と同じ間隔P1で、500個形成した(図5は水晶基板1000の一部を拡大し、二つの振動部100aのみを表示した図である。)。なお、本実施形態ではウェットエッチング法で水晶基板1000を形成したが、ドライエッチング法、サンドブラスト法、レーザー加工法等を用いて形成してもかまわない。
【0090】
最後に、図5(d)に示すように、水晶基板1000の振動部100aの所定の位置に水晶側電極410を形成し、その周囲の底部基板2000や蓋基板3000と接合される部分に金属膜430、440を形成する。なお水晶側電極410と金属膜430、440とは、電気的に導通しないようにして形成する。本実施形態では、スパッタリング法によって、下層が0.03μmのCr膜で、上層が0.15μmのAu膜からなる水晶側電極410、金属膜430、440を形成した。
【0091】
次に、図3(a)に示す基板形成工程における底部基板2000の形成方法について説明する。図6は本発明の水晶デバイスの製造方法における底部基板の形成方法を示した図である。底部基板2000の形成においては、まず始めに一定の厚みで表面が平滑なSiウェハー2200を用意し、図6(a)に示すように、そのSiウェハー2200の一方の面にIC500を形成する。
【0092】
Siウェハー2200上にIC500を形成する工程は、一般にLSI分野で行われているIC製造工程と何ら変わらない。よって、通常のIC製造ラインをそのまま流用でき
るため、生産性が良好で、且つ特性の安定した信頼性の高いIC500を形成することができる。なお本実施形態では、厚みが300μmで表面がポリッシング加工されたSiウェハー2200を用いた。
【0093】
次に図6(b)に示すように、Siウェハー2200のIC500が形成されている面の裏側の面の所定の位置に、エッチング法によって所定の深さの凹部2500を加工し、底部基板2100を形成する。本実施形態では、幅1.2mm×奥行き1.2mm×深さ0.15mmの凹部2500を、底部基板2100上に一定の間隔P1で、500個形成した。
【0094】
さらに、図6(c)に示すように、凹部2500の内側にIC500に到達する貫通穴2510を加工し、底部基板2000を形成する。なお、本実施形態では、直径が100μmの開口部からなる貫通穴2510をドライエッチング法によって形成した。その次に、図6(d)に示すように、貫通穴2510の内部に貫通電極400を形成する。これにより、IC500の電気信号を凹部2500の内側まで伝達させることが可能となる。なお、本実施形態ではメッキ法によって貫通電極400を形成した。
【0095】
最後に、図6(e)に示すように、底部基板2000の凹部2500が形成された側の接合面200bに金属膜450を形成し、さらに貫通電極400の凹部2500側の端部から接合面200bにかけて所定の形状で配線電極420を形成する。なお配線電極420と金属膜450は、電気的に導通しないようにして形成する。本実施形態では、下層が0.03μmのCr膜で、上層が0.15μmのAu膜からなる配線電極420と金属膜450を、スパッタリング法によって形成した。
【0096】
次に、図3(b)に示す基板接合工程について説明する。図7は本発明の水晶デバイスの製造方法における接合工程の接合前と接合後を示した図である。図4、図5、図6に示す方法で形成された三つの基板(蓋基板3000、水晶基板1000、底部基板2000)は図7(a)に示す位置関係で位置合わせされて接合工程が行われる。詳しくは、蓋基板3000の凹部3500と底部基板2000の凹部2500が対向するようにして配置され、その間に水晶基板1000の振動部100aが挟まれるような位置関係である。
【0097】
図7(a)は蓋基板3000、水晶基板1000、底部基板2000の一部を拡大して描かれているため、一つの凹部3500、一つの振動部100a、一つの凹部2500しか描かれていないが、本実施形態では、各基板にそれぞれ500個ある凹部3500、振動部100a、凹部2500をすべてこの位置関係で位置合わせする。
【0098】
なお本実施形態では、蓋基板3000に形成される各凹部3500の間隔と、水晶基板1000に形成される各振動部100aの間隔と、底部基板2000に形成される各凹部2500の間隔が、いずれも同一の間隔P1で形成されているので、少なくとも2箇所位置合わせを行えば、500個ある凹部3500、振動部100a、凹部2500すべてが同時に位置合わせされる。
【0099】
このように本発明の水晶デバイスの製造方法では、各基板の構成部を同じ間隔で形成することで位置合わせを簡略化できるので、生産性が非常に良好であり、大量生産に適している。
【0100】
図7(a)に示す位置関係で位置合わせされた蓋基板3000、水晶基板1000、底部基板2000は、図7(b)に示すように重ね合わせて、表面活性化接合法によって接合される。表面活性化接合法は、部材の表面をプラズマで活性化させて、その活性エネルギーで接合を行う方法であり、常温での接合が可能な点が大きな特徴である。
【0101】
本発明の本実施形態に示す水晶デバイス10は、高温での加熱によって破壊する恐れのあるIC500を有しているので、高温で加熱して接合する溶融接合法等は利用することはできない。本発明のように常温での接合が可能な表面活性化接合法を用いれば、IC500を高温状態にさらすことがないので、IC500を破壊や特性劣化から守ることができ、高い信頼性を得られる。
【0102】
なお、表面活性化接合法はいかなる材料同士でも接合できるわけではない。例えばSiとSiO2、SiO2とSiO2等を接合させることは難しく、仮に接合できたとしても接合強度は著しく低い。接合が可能で接合強度を高くできる材料の組み合わせとしては、SiとSi、SiとAl2O3、AuとAu、AgとAg、PtとPt、CuとCu、AlとAl等の組み合わせが挙げられる。
【0103】
本発明の水晶デバイス10は底部基板2000と蓋基板3000はSiであるが、間に挟まれる水晶基板1000は水晶(SiO2)であり、そのままでは表面活性化接合法を使って接合することはできない。また仮に接合できたとしても接合強度は低い。そこで本発明では、接合面に表面がAuである金属膜430、440、450、460を形成し、表面活性化接合法で高い接合強度が得られるAuとAuの組み合わせで接合を行うようにした。その結果、高い接合強度で底部基板2000と水晶基板1000、さらに蓋基板3000と水晶基板1000を接合することができた。
【0104】
なお、前記でも示したように接合が可能で接合強度を高くできる材料の組み合わせは、AuとAuに限られるわけではない。よって本発明では、金属膜430、440、450、460として、Auの代わりに、例えばAg、Pt、Cu、Al等を用いても、同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、本発明の水晶デバイス10の構成によれば、水晶基板1000の振動部100aに形成される水晶側電極410も、底部基板2000に形成される配線電極420も、金属膜430、440、450、460と同様に表面がAuからなる膜で構成されている。よって金属膜430、440、450、460が接合されるのと同時に、水晶電極410と配線電極420の接続も行われる。このように本発明の水晶デバイスの製造方法は、接合工程において電極の接続も同時に行うことができるので、工程が簡略化でき、生産性に優れている。
【0106】
さらに、表面活性化接合法は、プラズマを発生させる程度の真空中で接合がなされるという点も、本発明の水晶デバイス10にとって非常に大きな利点である。一般的に水晶デバイス10は振動部100aを振動しやすくするために、真空雰囲気中に振動部100aを設置させる。そうすることで、空気抵抗による振動エネルギーの損失を少なくでき、振動特性に優れ、高い信頼性を得ることができるからである。
【0107】
表面活性化接合法を用いた本発明の接合工程では、真空状態で接合がなされるため、接合後に形成される底部基板2000の凹部2500と蓋基板3000の凹部3500とで囲まれた密閉空間内を自動的に真空状態にすることができる。その結果、その密閉空間内に設置された振動部100aは空気抵抗によって振動エネルギーを損失させることなく振動することができ、振動特性に優れ、高い信頼性を有する水晶デバイス10を得ることができる。
【0108】
なお、本発明の接合工程によれば、図7(a)で精度良く位置合わせされ、且つ平坦な接合面を有する各基板(蓋基板3000、水晶基板1000、底部基板2000)でよって重ね合わせられるので、水晶基板1000の振動部100aが所定の位置に対して傾い
て固定される危険性はほとんど無い。非常に精度良く振動部100aを固定させることが可能である。
【0109】
また、水晶基板1000の振動部100aは、底部基板2000の凹部2500と蓋基板3000の凹部3500とで囲まれた広い密閉空間内に設置されるため、振動によって振動部100aが他の部材と接触する危険性は極力低い。このような点においても本発明よれば信頼性の高い水晶デバイス10を得ることができる。
【0110】
以上のような接合工程によって、図3(b)に示す三つの基板(蓋基板3000、水晶基板1000、底部基板2000)が接合された積層基板5000が完成する。本実施形態では、厚さ300μmの蓋基板3000と、厚さ50μmの水晶基板1000と、厚さ300μmの底部基板2000を接合したので、総厚が650μmの積層基板5000が出来上がった。
【0111】
次に、図3(c)に示すダイシング工程について説明する。本工程では、図3(b)で形成された積層基板5000を所定の水晶デバイス10の大きさに切断し、蓋部材300、水晶部材100、底部部材200が積層してなる水晶デバイスが完成する。本実施形態では、積層基板5000を格子状に切断して、幅2mm×奥行き2.5mm×高さ0.65mmの大きさの水晶デバイス10を500個、完成させた。
【0112】
(第2の実施形態)
図8は本発明の配線電極がICと直接接続される水晶デバイスの断面図である。図8に示す水晶デバイス20は、配線電極425を底部部材200の貫通穴の内壁にも形成して、IC500と水晶側電極410を配線電極425で直接配線した実施形態である。
【0113】
水晶デバイス20では、このように配線電極425が、貫通電極として役目もなしている。よって、本実施形態の水晶デバイス20も、本発明の特徴の一つである、シリコンからなり凹部を備え、且つ一方の面から対向する他方の面に向かって形成された貫通電極を備える底部部材を有する構成である。
【0114】
なお、蓋部材300と水晶部材100、水晶部材100と底部部材200は、図1に示す水晶デバイス10と同様に、金属膜460と金属膜430、金属膜450と金属膜440の間で表面活性化接合した。
【0115】
図1に示す水晶デバイス10のように、貫通電極400によって貫通穴2510を埋めなくても、本実施形態の水晶デバイス20は貫通穴2510の一方がIC500で塞がれているので、蓋部材300の凹部3500と底部部材200の凹部2500とで囲まれた空間を密閉空間にすることができ、その結果、水晶デバイス10と同様に、密閉空間内を真空雰囲気にすることが可能である。
【0116】
よって本実施形態の水晶デバイス20においても、水晶部材100の振動部100aは空気抵抗によって振動エネルギーを損失させることなく振動することができ、優れた振動特性を得ることができる。
【0117】
水晶デバイス20では、貫通穴2510を埋めるような貫通電極400を形成する必要がない。よって水晶デバイス20を製造するにあたり、図6に示す底部基板2000の形成において、図6(d)の貫通電極400を形成する工程を無くすことができる。図6(c)で貫通穴2510の形成を行った後に、貫通穴2510内及び所定の位置に配線電極425を形成すればよい。このように水晶デバイス20は、製造工程がより簡略化し、生産性がより向上する。
【0118】
(第3の実施形態)
図9は本発明の水晶デバイスの一応用例である水晶振動子の断面図である。図9に示す水晶振動子30は、Siからなり凹部3500を有する蓋部材300と、水晶からなり振動部100aと振動部100aを取り囲むようにして形成される枠部を備える水晶部材100と、Siからなり凹部2500と貫通電極400を備える底部部材200が、接合された積層構造をなしている。なお本実施形態の水晶振動子30において、貫通電極400は振動部100aに外部から電気的信号を送るための配線もしくは接続端子の役目をなす。
【0119】
図9に示すようなIC500を備えない水晶振動子30の場合、高温での加熱によって破壊する恐れのあるIC500が無いので、高温で加熱しなければならない接合法、例えば溶融接合法等を使うことが可能である。そこで、本実施形態では、AuSn合金からなる接合材600を使った溶融接合法で蓋部材300、水晶部材100、底部部材200を接合した。
【0120】
なお、本実施形態の水晶振動子30では、Siと水晶を接合することが可能な溶融接合法を用いたので、図1の水晶デバイス10で備わる金属膜430、440、450、460は形成しなかった。
【0121】
さらに、本実施形態では、水晶側電極410と配線電極420の間にもAuSn合金からなる接合材600を配し、接合工程において水晶側電極410と配線電極420の接続も同時に行った。そのため、生産効率が良く、生産性も良好であった。
【0122】
なお、図9に示す水晶振動子30も、図3に示す本発明の水晶デバイスの製造方法で製造することができる。図3(b)に示す基板接合工程で溶融接合法を用いればよい。この製造方法によれば、大量の水晶振動子30を一括して製造するので非常に生産性が高く、さらに、水晶振動子30が小型化されても大きな基板の状態で工程を流せるので、加工不良が少なく、その結果、小型で信頼性の高い水晶振動子30を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明のICと貫通電極を備える水晶デバイスの断面図である。
【図2】本発明のICと貫通電極を備える水晶デバイスの分解斜視図である。
【図3】本発明の水晶デバイスの製造方法を示した図である。
【図4】本発明の水晶デバイスに製造方法における蓋基板の形成方法を示した図である。
【図5】本発明の水晶デバイスの製造方法における水晶基板の形成方法を示した図である。
【図6】本発明の水晶デバイスに製造方法における底部基板の形成方法を示した図である。
【図7】本発明の水晶デバイスに製造方法における接合工程の接合前と接合後を示した図である。
【図8】本発明の配線電極がICと直接接続される水晶デバイスの断面図である。
【図9】本発明の水晶デバイスの一応用例である水晶振動子の断面図である。
【図10】従来の最も一般的な水晶デバイスの構成を示した図である。
【図11】従来のシリコンからなるパッケージを用いた水晶デバイスの構成を示した図である。
【図12】従来の水晶部材をガラスからなる底部部材と蓋部材で挟み込む構造の水晶デバイスの構成を示した図である。
【図13】従来の水晶部材をガラスからなる底部部材と蓋部材で挟み込む構造の水晶デバイスの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0124】
10、20、40、50、60 水晶デバイス
30 水晶振動子
100、110 水晶部材
100a、110a 振動部
100b、110b 枠部
130 水晶振動片
200、210 底部部材
200a 底面
200b、300b 接合面
230、240 パッケージ
300、310、330 蓋部材
400 貫通電極
410 水晶側電極
415 電極
420、425 配線電極
430、440、450、460 金属膜
500 IC
600、700 接合材
1000 水晶基板
1200、1400 水晶ウェハー
2000、2100 底部基板
2200、3200 Siウェハー
2500、3500 凹部
2510 貫通穴
3000 蓋基板
5000 積層基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶の圧電振動を利用した水晶デバイスにおいて、
シリコンからなり凹部を備える蓋部材と、
水晶からなり所定の周波数で振動する振動部と、この振動部を取り囲むようにして形成される枠部を備える水晶部材と、
シリコンからなり凹部を備え、且つ一方の面から対向する他方の面に向かって形成された貫通電極を備える底部部材とを有しており、
前記水晶部材が前記蓋部材と前記底部部材との間に接合される積層構造をなしていることを特徴とする水晶デバイス。
【請求項2】
前記底部部材の接合面、前記水晶部材の枠部における接合面、前記蓋部材の接合面には、それぞれに金属膜が形成されることを特徴とする請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項3】
前記金属膜はAu膜、または表面がAu膜の積層膜であることを特徴とする請求項2に記載の水晶デバイス。
【請求項4】
前記振動部は、前記蓋部材に形成された凹部と前記底部部材に形成された凹部とで囲まれた密閉空間内に収容されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水晶デバイス。
【請求項5】
前記貫通電極は、前記振動部を振動させるための水晶側電極に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の水晶デバイス。
【請求項6】
前記底部部材にICが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の水晶デバイス。
【請求項7】
水晶の圧電振動を利用した水晶デバイスの製造方法において、
水晶からなり所定の周波数で振動する複数の振動部を備える水晶基板を、シリコンからなり複数の凹部を備える蓋基板と、シリコンからなり複数の凹部を備え、且つ一方の面から対向する他方の面に向かって形成された貫通電極を備える底部基板とで挟み込んで接合する接合工程と、
接合された前記蓋基板、前記水晶基板、前記底部基板を前記水晶デバイスの大きさに切断するダイシング工程を有することを特徴とする水晶デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記底部基板の接合面、前記水晶基板の接合面、前記蓋基板の接合面のそれぞれに金属膜を形成し、且つ、これらの金属膜同士を接合させることを特徴とする請求項7に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記金属膜はAu膜、または表面がAu膜の積層膜であることを特徴とする請求項8に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記接合工程において、前記振動部を、前記蓋基板に形成された凹部と前記底部基板に形成された凹部とで囲まれた密閉空間内に配置させたことを特徴とする請求項7に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記接合工程において、前記貫通電極と前記振動部を振動させるための水晶側電極を、電気的に接続することを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記接合工程において、表面活性化接合法を用いて接合したことを特徴とする請求項7
から11のいずれか一項に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記水晶基板は、水晶ウェハーを所定の厚みに研磨する工程と、前記水晶基板の外形形状をエッチング法によって形成する工程と、フォトリスグラフィー法によって前記水晶側電極を形成する工程を有する方法で形成されることを特徴とする請求項7から12のいずれか一項に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記底部基板は、SiウェハーにICを形成する工程と、Siウェハーを加工して凹部と貫通電極用穴を形成する工程と、この貫通電極用穴の内部に貫通電極を形成し前記ICと電気的に接続する工程と、前記貫通電極の端部に接続される配線電極を形成する工程を有する方法で形成されることを特徴とする請求項7から13のいずれか一項に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記底部基板の凹部または前記蓋基板の凹部は、エッチング法によって形成されることを特徴とする請求項7から14のいずれか一項に記載の水晶デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−118143(P2009−118143A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288428(P2007−288428)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】