説明

水溶解度の低い治療剤のナノ粒子

本発明は、水溶解度の低い治療用活性剤の、水に分散可能な誘導体において、上記誘導体は、スクワレン構造の炭化水素をベースとする化合物又はその類似体の少なくとも1の分子に共有結合した上記活性剤の少なくとも1の分子から形成され、上記活性剤は、室温において測定されて純水1ml当たり100μg未満の溶解度を有する上記誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性でさえあり得る水溶解度の低い治療用活性剤の、水に分散可能なナノ粒子配合物に向けられる。
【背景技術】
【0002】
一般的に、活性剤は室温、すなわち約25℃の温度において純水1ml当たり100μg未満の溶解度を有するとき水溶解度が低いと言われる。
【0003】
従って、以下に記載するように、多くの治療用活性剤及び/又は治療用候補薬剤は、水溶解度が低いか、又は総合すると疎水性であり、そのことは、それらの治療用配合物に関して使用上の困難を提起する。特に、全身投与に適合する形でそれらを配合することは非常に困難である。
【0004】
確かに、水性媒体におけるそれらの溶解は、それらのうちあるものの場合には、有機塩又は無機塩の形で配合されるならば、獲得される可能性がある。
【0005】
しかし、これらの塩又は誘導体は、多くの場合、容易に合成的に入手可能ではなく、さらに常に望ましいわけではない。この理由は、その製造は活性な分子の安定性の損失を起こし得ることである。
【0006】
これらの水に溶けにくい治療用活性剤の例として、シクロスポリン、タキソイド、タキサン、及びペプチド分子、例えばインスリンを特に挙げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シクロスポリンは一般的に、免疫抑制活性を与えられた抗菌性化合物である。これらのシクロスポリンは通常、25μg/mlを超えない水溶解度、即ち、体による通常の吸収に必要とされる値より約100倍低い値、を示す。シクロスポリンの許容可能な生体利用効率を得るために、慣用の配合物は、親水性相、疎水性相、及び界面活性剤を併用する分散系を一般的に使用する。
【0008】
それらに関しては、その抗腫瘍性で知られるタキソイド又はタキサンは、ジテルペン性の物質である。天然のタキソイドであるパクリタキセル及びその半合成誘導体であるドセタキセルは、腫瘍を治療するために広く使用されている。タキサン誘導体は一般的に、シクロスポリンよりずっと水溶解度が低い。したがって、この非常に低い水溶解度は、特異的な配合物の開発を余儀なくさせる。例えば、ブリストルマイヤーズスクイブによりタキソールの名前で流通され、全身投与を意図されているパクリタキセル配合物は、30mgの無水ドセタキセルを含む単独投与として入手可能な、無菌の非発熱性配合物である。活性剤の外に、各1回分は、ポリオキシエチレングリコールトリリシノールエート、クレモフォアEL(Cremophore EL(商標))及びエタノールを含む。最後に、このタイプの配合物は、投与の前に、無菌、無発熱原性かつ等浸透圧のかん流溶液(0.9%の塩化ナトリウム、5%のグルコース等)中で希釈される必要がある。
【0009】
今、パクリタキセルの溶解度の欠如を克服するために必要なクレモフォアEL(商標)及びエタノールの存在は、残念なことに副作用を起こす性質がある。従って、二次過敏性の発現のリスクを防ぐために、治療されるべき個人は一般的に、化学療法を開始する3日前に、経口のデキサメタゾンの前投薬を受ける。
【0010】
別の代替のパクリタキセル配合物は、アルブミンと組み合わせてパクリタキセルを使用する。この特異的な配合物は、アブラキサン(Abraxane)(商標)の名前で販売されている。明らかな理由から、この代替物もまた満足できるものではない、なぜならアルブミン分子をパクリタキセル分子に共有結合させることによる、この誘導体の形成を強制するからである。さらに、この結合がパクリタキセルの治療的活性に影響を有することは、完全には排除されることができない。
【0011】
最後に、水溶解度の低い活性剤の生物利用効率性のこの欠如は、該活性剤が、治療的に活性な剤の投与を評価される別のルートである経口的に投与されることを意図されているとき、悪化されたハンディキャップになることは明らかである。
【0012】
本発明は、具体的には、水に溶けにくい治療用活性剤の従来の配合物の欠点を克服することのできる、そのような活性な剤の配合物の新規な様式を製造することに向けられる。
【0013】
本発明は、これらの水に溶けにくい又は疎水性でさえある治療用活性剤がスクワレン誘導体又は類似体と組み合わされれば、特に注射による投与と両立する、水性媒体中に懸濁されかつ小さいサイズのナノ粒子の形で、これらの治療用活性剤を配合することが可能であるという本発明者らによる観察からより特に生まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、第一の特徴に従うと、本発明は、水溶解度の低い治療用活性剤の水に分散可能な誘導体において、該誘導体はスクワレン構造の炭化水素をベースとする化合物又はその類似体の少なくとも1の分子と共有結合された、水溶解度の低い治療用活性剤の少なくとも1の分子から形成される該誘導体に関する。
【0015】
より具体的には、本発明は、使用される治療用活性剤が室温で測定されて100μg/ml未満、特に25μg/ml未満、とりわけ20μg/ml未満、又は10μg/ml未満、より特に5μg/ml未満の純水への溶解度を有する、上記の水に分散可能な誘導体に関する。
【0016】
本発明の目的のために、そのような誘導体は「複合体(conjugate)」ともまた呼ばれる。
【0017】
より特に、本発明は、その別の特徴に従うと、水溶解度の低い少なくとも1の治療用活性剤の水に分散可能なナノ粒子において、該活性剤がスクワレン構造の少なくとも1の炭化水素をベースとする化合物又はその類似体と組み合わされた形で該ナノ粒子中に存在する該ナノ粒子に関する。
【0018】
公報PCT/FR2005/050488において、本発明者らはすでにスクワレンの能力、即ち、スクワレンが極性のある親水性分子であるゲムシタビンに共有結合しているときには、水性媒体中で約100ナノメートルのナノ粒子を自然に形成する能力を述べた。この能力は該公報において、そのようにして合成された誘導体の両親媒性挙動(スクワレン部分は疎水性の部分及びゲムシタビン部分は親水性部分を表す)により特に、説明されている。
【0019】
今、すべての予測に反して、本発明者らは、水溶解度が低い又は疎水性でさえある治療用活性剤の少なくとも1の分子とスクワレン骨格を有する炭化水素をベースとする化合物の少なくとも1分子との共有結合から生じる該治療用活性剤の誘導体を、極性溶媒、例えば水の存在下に置くこともまた、数十ナノメートルから数百ナノメートルの粒子であって、全身投与と有利に両立し、考慮下の活性剤の治療効果を与えられたままである該粒子の自然な形成をもたらすことを見出した。
【0020】
従って、本発明に従うナノ粒子の形のこれらの疎水性治療用活性剤を配合することは、既に存在する配合物の有利な代替物を構成する。
【0021】
スクワレン構造の炭化水素をベースとする誘導体
本発明の目的のために、「スクワレン構造」は、イソプレン単位から形成された直鎖の炭化水素をベースとする構造、より特にスクワレンのようなそのうちの6、を意味することを意図される。該構造の式は以下の通りである。
【0022】

【0023】
これらの炭化水素をベースとする化合物の例として、より特にスクワレン酸及びその誘導体が挙げられ得る。
【0024】
本発明者ら見出したように、このスクワレン構造は、極性媒体、より特に水、との接触に置かれたとき、圧縮されたコンフォメーションを自然に示すので本発明の文脈において特に重要である。
【0025】
意外なことに、本発明者らは、この能力は、そのような誘導体が、やはり疎水性である別の化学種と併用されるとき、特に共有結合されたとき、そのままであることを見出した。これは、2つの化学種が互いに緊密に混合されているナノ粒子の形の圧縮された構造の発生をもたらす。
【0026】
本発明の目的のために、用語「類似体」は一方では、極性媒体との接触に置かれたとき、スクワレン誘導体の挙動を再現することができ、他方では、水溶解度の低い治療用活性剤の分子に結合されたとき、この能力を再現することのできる炭化水素をベースとする化合物を意味する。スクワレン誘導体、特にスクワレン酸及びその誘導体、の置換された形、特に置換体、は特にこの定義により包含される。
【0027】
そのような誘導体は、例えば1,1’,2−トリス−ノルスクワレン酸、スクワレノイル酢酸、1,1’,2−トリス−ノルスクワレンアミン、1,1’,2−トリス−ノルスクワレノール、1,1’,2−トリス−ノルスクワレンチオール、スクワレン酢酸、スクワレニルエタノール、スクワレニルエタンチオール又はスクワレニルエチルアミンであり得る。
【0028】
一般的に、スクワレン構造の少なくとも1の炭化水素をベースとする分子は水溶解度の低い治療用活性剤の分子に共有結合的に結合されている。言うまでもなく、治療用活性剤の分子と相互作用することのできる炭化水素をベースとする誘導体の分子の数は1より多い。本発明に従う誘導体は、少なくとも2の、スクワレン構造の同一又は異なる基を含み得る。
【0029】
この炭化水素をベースとする化合物は、考慮下の活性剤の分子上に存在する官能基と反応することができる官能基を有しており、2つの種、例えばエステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、ホスフェート又はアミドタイプ、の間の共有結合を確立する。有利には、それはカルボキシル基である。この場合、スクワレン構造の炭化水素をベースとする誘導体は、スクワレン酸又はその誘導体、例えばスクワレノイルN−ヒドロキシスクシニミジルエステルである。
【0030】
一つの実施態様の変形に従うと、2つのタイプの分子の間に存在する共有結合は、「リンカー」又は結合するための腕を特徴とする。そのような腕は、スクワレン構造の化合物上及び溶解度の低い治療用活性剤上にそれぞれ存在する官能基が、互いに反応できるだけの親和性を有せず、従って期待されるような共有結合を形成しそうもないとき、特に有用であることが分かる。そのような腕はその骨格の両末端それぞれに十分な官能基、即ち、それぞれが期待される反応性の親和性を有し、一つはスクワレン構造の誘導体上に存在し、他方は考慮下の活性剤上に存在する官能基、を導入することを正に可能にする。
【0031】
このリンカーもまたその骨格に不安定な官能基であって、従って、治療用活性剤からスクワレン構造の化合物を分離するのに適する官能基を有することもまた想定され得る。それは、例えば、酵素により認識されることのできるペプチド単位であり得る。
【0032】
リンカータイプの単位は当業者に周知であり、それらの使用は明らかに当業者の能力の範囲に入る。
【0033】
本発明に従って想定され得るリンカーの代表的な例は、特に(ポリ)アミノ酸単位、ポリオール、糖類及び低分子量のポリエチレングリコール(ポリエーテルオキサイド)、特にポリオール、糖類、及び低分子量のポリエチレングリコール(ポリエーテルオキサイド)を含む。
【0034】
従って、本発明の目的のために、「供給結合」は好ましくは特に上で述べた共有結合を特徴とするだけでなく、前に定義されたリンカーにより具体化された共有結合をも包含する。
【0035】
低い溶解度の治療用活性剤
本発明の目的のために、水溶解度の低い治療用活性剤は、室温、即ち約25℃において測定されて純水に、100μg/ml未満、特に25μg/ml未満、特に20μg/ml未満、とりわけ15μg/ml未満、又は10μg/ml未満さえの、より特に5μg/ml未満の溶解度を有する化合物である。本発明の目的のために、純水は、中性に近いpH(pH5〜pH8)を有し、他の化合物、例えば有機塩又は鉱物塩を全く含まない水である。
【0036】
本発明の目的のために、より特に考慮下の治療用活性剤は生物薬学分類(biopharmaceutical classification)の第2グループ及び第4グループの物質から選択され得る。
【0037】
特に挙げられ得る水溶解度の低いこれらの物質の代表的な例は、免疫抑制物質、化学療法剤、特に抗腫瘍剤、例えばタキソイド、ドクソルビシン(アドリアマイシンとしても知られる)及びその異性体であるエピルビシン、抗血管新生薬、抗ウィルス剤、抗菌剤、抗生物質及び抗寄生虫剤、糖、ペプチド、脂質の代謝に作用する物質、カルシウムチャンネルに作用する剤、非ステロイド系の抗炎症剤(antiflogistic agent)及びペプチド化合物、例えばインスリンを含む。
【0038】
本発明の文脈において、考慮されているのは、上記の活性剤の疎水性の形又は非常に低い溶解度の形のみであることが理解される。それらのイオン性の形などは、水性媒体に可溶であり得るが、水溶解度の欠如を補う点において必要性がないので本発明の文脈においては関心がない。
【0039】
従って、本発明の場合において、スクワレン構造の少なくとも1の分子に結合された活性剤の形は、一般的には中性の形、即ち非イオン性又は非塩化された形である。ただし、この形自身が水溶解度が低い場合を除く。
【0040】
免疫抑制剤は、疎水性の化合物であり、N−メチル化された環状ウンデカペプチドである。活性剤のこのファミリーの中で、シクロスポリン類はより特に考慮される。シクロスポリン類は特にシクロスポリンA及びGである。しかし、他のマクロライドもまた本発明に従って考慮され得る。
【0041】
免疫抑制剤、例えばデオキシスペルグアリン、ラパマイシン又はアスコマイシンについても真実であり得る。
【0042】
本発明の一つの好ましい変形に従うと、低い溶解度の治療用活性剤はより特にタキサン及びタキソイドである。
【0043】
そのような化合物は特に国際公開第2005/013968号に記載されている。より好ましくはドセタキセル、パクリタキセル又はその誘導体である。
【0044】
前述したように、これらの物質はスクワレン構造の炭化水素をベースとする化合物又はその類似体の少なくとも1の分子で官能化されている。従って、本発明に従って考慮されている治療用活性剤は、2つの誘導体、3つの誘導体、又はもっと多い誘導体を含み得、これらの誘導体はおそらく同一であるか又は異なる。
【0045】
水溶解度の低い治療用活性剤の分子と、スクワレン構造の炭化水素をベースとする誘導体又はその類似体との少なくとも1の分子の間に少なくとも1の共有結合を確立するために必要な反応は、標準の条件下で行われ得、従ってその実行は明らかに当業者の能力の範囲内である。
【0046】
この反応は、スクワレン構造の少なくとも1の化合物の存在下で及び考慮下の水に溶けにくい活性剤に対して過剰において、例えばそれぞれの分子に保持された2つの特定の官能基を相互作用させるために必要な標準的な条件に従って2当量の割合で、一般的に行われる。
【0047】
本発明に従う水に分散可能な誘導体の非制限的な例として、以下のタキソイド誘導体が最も特に挙げられ得る。
【0048】

【0049】

【0050】
これらは、それぞれ1及び2のスクワレン酸分子で、パクリタキセル分子の官能化から誘導された2つの化合物である。
【0051】
本発明に従う他の水に分散可能な誘導体は、
以下の式を有するスクワレノイルインスリン:
【0052】

【0053】
以下の式を有するスクワレノイルエピルビシン:
【0054】

【0055】
及び以下の式を有するスクワレノイルデオキシスペルグアリン:
【0056】

である。
【0057】
これらの化合物は一般的に、水性分散物の形で得られる。
【0058】
従って、本発明の別の側面に従うと、本発明は前に定義された少なくとも1の誘導体の水性分散物に関する。
【0059】
本発明に従うナノ粒子
前に述べたように、治療用活性物質とスクワレン構造の炭化水素をベースとする少なくとも1の分子との共有結合は、少なくとも1のスクワレノイル基で官能化された活性剤に、極性溶媒媒体において圧縮された形で組織化され、その結果ナノ粒子の形成をもたらす能力を与える性質を有する。
【0060】
一般的に、このようにして得られたナノ粒子は、コールター(Coulter)エレクトロニクス社(ハイアリー、USA)製のコールター(商標)N4MDを使用して光散乱により測定されて30〜650nm、特に30〜500nm、特に50〜250nm、100〜200nmさえの範囲の平均サイズを有する。
【0061】
従って、本発明に従って考慮されている水に溶けにくい治療用活性剤と本発明に従う炭化水素をベースとする誘導体、より特にスクワレン酸又はその誘導体、例えばスクワレノイルN−ヒドロキシスクシニミジルエステル、との相互作用は、該治療用物質に、そのサイズが非経口の投与及び特に静脈投与と両立する粒子を形成する能力を該物質に与えるのに十分である物理化学的性質を与える。
【0062】
本発明の別の特徴に従うと、本発明はこれらのナノ粒子を製造する方法において、
本発明に従う誘導体、即ち、スクワレン構造の炭化水素をベースとする化合物又はその類似体の少なくとも1の分子を、水溶解度の低い治療用活性剤の分子とまず結合させることにより形成される誘導体を、少なくとも1の有機溶媒、例えばアルコール例えばエタノールに、得られる混合物を撹拌しながら一般的には一滴ずつ、溶解させること、ここで、該誘導体の濃度は、得られる混合物を水性相に添加する間に該水性相中の懸濁物として該誘導体のナノ粒子の瞬間的な形成が得られるのに十分な濃度であること、及び
適切な場合には、該ナノ粒子を単離すること
を含むことを特徴とする該製造する方法である。
【0063】
反応は、一般的には室温において行われる。反応温度は、その値にかかわらず、考慮下の活性剤の活性に影響を与えるべきではない。本発明に従うナノ粒子を製造する方法は、それが界面活性剤の存在を必要としない限りにおいて、特に有利である。
【0064】
前に述べたように、スクワレン構造の炭化水素をベースとする誘導体と活性剤の分子との結合は直接であってもリンカーによってもよい。
【0065】
本発明者らは、これらの粒子のサイズを、使用される治療用活性剤の量によりナノ沈殿のために制御することが可能であることを見出した。具体的には、結合する生成物の濃度を増大させることはサイズの増加を一般的にもたらし、その逆も成り立つ。
【0066】
一つの有利な実施態様に従うと、本発明に従うナノ粒子は、一般的に全身的にそれらを投与することを視野に入れて水性分散物の形で配合される。
【0067】
一つの実施態様に従うと、この水性分散物は5重量%未満、又は2重量%未満のC〜Cアルコール、例えばエタノールを含む。
【0068】
別の有利な実施態様に従うと、この水性分散物は界面活性剤又はその類似物、例えばポリエチレングリコール、ポリグリセロール及びその誘導体、例えばエステル、を5重量%未満、又は2重量%未満さえ含み、より特に全く含まない。
【0069】
別の有利な実施態様に従うと、この水性分散物はポリオキシエチレン化ひまし油、例えばクレモフォアEL(商標)の名前で販売されている製品を5重量%未満、又は2重量%未満さえ含み、より特に全く含まない。
【0070】
別の有利な実施態様に従うと、この水性分散物は静脈投与と両立する粘度を本質的に有している。
【0071】
即ち、水に分散可能な形のスクワレン酸を使用する、タキソイド、例えばパクリタキセル(商標)の水性媒体中の配合物は、注射可能な懸濁物の等張性を得るために必要な5%デキストロース以外には如何なる添加剤もなしにナノ粒子懸濁物を得ることを有利に可能にする。即ち、(i)毒性のあるクレモフォアの使用をなしにすること(ii)直接的に注射可能な水性配合物を提供すること及び(iii)製品のより高い濃度を投与すること(4mg/mlまで)が可能であることが分かった。
【0072】
本発明の別の特徴に従うと、本発明は医薬組成物におけるこれらの誘導体及びナノ粒子の使用にもまた関する。
【0073】
本発明は、活性剤として、本発明に従う少なくとも1の誘導体、特にナノ粒子の形のものを含む医薬組成物にもまた関する。
【0074】
本発明に従う誘導体は、任意の慣用のルートで投与されることもまた可能である。しかし、上記の通り、その粒子の小さいサイズを考えると、水性懸濁物の形で静脈に投与され得、従って、毛細血管循環と両立する。
【0075】
即ち、本願発明の別の特徴は、活性物資として特にナノ粒子の形の本発明に従う少なくとも1の化合物を含む医薬組成物に関する。本発明に従う誘導体は、該医薬において少なくとも1の薬学的に許容されるビヒクルと共に併用されてもよい。
【0076】
本発明に従う組成物と両立する薬学的配合物の例として、特に以下のものが挙げられ得る。
静脈注射又はかん流
生理食塩水又は精製水の溶液
吸入剤用の組成物
カプセル、糖衣錠及びカプセル特にビヒクルとして水を取り込んでいるもの、カルシウムホスフェート、糖例えばラクトース、デキストロース又はマンニトール、タルク、ステアリン酸、澱粉、炭酸水素ナトリウム及び/又はゼラチン。
【0077】
該化合物が水性溶液中の分散物として使用されるとき、該化合物は賦形剤、例えばセキストラント又はキレーティング剤、抗酸化剤、pH調節剤及び/又はバッファー剤と併用され得る。
【0078】
言うまでもなく、本発明に従うナノ粒子は、表面に多数の反応性官能基、例えば、ヒドロキシ又はアミン官能基、を有し得る。従って、これらの官能基にすべての種類の分子を、特に共有結合を通して、結合させることが想定され得る。
【0079】
該ナノ粒子と併用され得るこのタイプの分子の非制限的な例として、特に、マーカータイプの分子、ターゲッティング機能を実行することのできる化合物、そしてナノ粒子に特定の薬物動態の特徴を与えることのできる任意の化合物もまた挙げられ得る。この最後の特徴に関して、これらのナノ粒子の表面に親油性のポリエチレングリコール誘導体、例えば、ポリエチレングリコールコレステロール又はポリエチレングリコールホスファチジルエタノールアミン又はより良くはポリエチレングリコールスクワレンを結合させることが想定され得る。そのような化合物に基づく表面コーティングは、肝臓マクロファージによるナノ粒子の吸収が有意に減少するので、増加された血管の残留磁気を与えるために実際、有利である。
【0080】
上記の化合物以外に、本発明に従う医薬組成物は、剤、例えば、保存剤、湿潤化剤、溶解剤及び着色剤を含み得る。
【0081】
明らかな理由から、使用され得る、本発明に従う誘導体の量は、使用の態様及び投与のために選択されたルートに依存して大きく変化し易い。
【0082】
例えば、成人の患者に対して意図された、タキソイドによる全身治療のためには、本発明に従う誘導体を1日当たり体重1kg当たり約0.1〜150mg、より特に1〜40mgの投与量で投与することが想定され得る。
【0083】
他方、局所投与のためには、本発明に従う少なくとも1の誘導体を考慮下の医薬配合物の合計重量に対して0.1〜40重量%又はさらにより多くの割合で配合することが想定され得る。
【0084】
本発明に従う少なくとも1の誘導体を、考慮下の病気に関して有益である少なくとも1の他の活性剤ともまた共に配合することもまた可能である。
【0085】
本発明に従う誘導体と併用され得るこれらの活性物質の代表的な例として、特に、他の抗ガン性又は細胞増殖抑制性分子又はマクロ分子(例えば、白金塩、
アントラサイクリン類(antracyclins)、紡錘体毒(mitotic spindle poisons)、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤又はメタロプロテアーゼ阻害剤)、コーチコイドタイプの抗炎症剤(例えば、デキサメタゾン)又は非コーチコイドタイプの抗炎症剤、又は免疫補助活性を有する分子(例えば、抗ガン活性を有する抗体)が挙げられ得る。ある種の化学療法において使用される温熱療法との組み合わせが想定され得る。本発明に従う誘導体は、外科療法及び/又はガンを治療するための放射線ともまた併用され得る。
【0086】
本発明の別の特徴に従うと、本発明は患者に本発明に従う少なくとも1の誘導体及び/又はナノ粒子を投与することを含み、上で記載したように任意的に他の活性物質及び/又は治療方法(発熱、放射)及び/又は外科的治療法と組み合わせてもよい治療方法にもまた関する。
【0087】
下に与えられる実施例及び図は、本発明の分野の非制限的な例として示される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】処理されていないKB細胞(1A)に対してスクワレノイルパクリタキセルナノ粒子(1B)でKB細胞をインキュベートした後のチューブリンの蓄積
【図2】実施例11に従って得られたスクワレノイルジグリコリルパクリタキセル誘導体のナノ粒子のインビボの抗ガン活性の評価。マウスに移植された腫瘍の体積(mm)の時間(腫瘍の移植後の日数)の関数としての特徴評価による
【図3】転位により誘起された白血病L1210を有するマウスであってスクワレノイル‐ドクソルビシンナノ粒子で治療されてない又は治療されたマウスの重さの時間(L1210白血病細胞の静脈注射後の日数)関数としての変動の評価
【図4】L1210白血病を有するマウスであってスクワレノイル‐ドクソルビシンナノ粒子で治療されてない又は治療されたマウスの生存率の時間(L1210白血病細胞の静脈注射後の日数)の関数としての評価
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0089】
モノスクワレノイルパクリタキセルの合成
ジクロロメタン(DCM)中の450mg(0.526mmol)のパクリタキセルが、室温においてDCMにあらかじめ溶解された1−エチル‐3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCA,パクリタキセルに対して2.5モル当量)、ジメチルアミノピリジン(DMAP,パクリタキセルに対して0.5モル当量)、及びスクワレン酸(パクリタキセルに対して2モル当量)と反応される。1時間後、反応は完結し、pH5において水を使用して停止され、抽出は水性塩化ナトリウム(NaCl)溶液で行われる。次に水性相はDCMで洗浄される。得られる混合物の精製はDCM/酢酸エチル混合物で溶出されるSiO(2.5×40cm)のフラッシュクロマトグラフィーで行われる。画分62〜80が回収され、このようにして得られたモノスクワレノイルパクリタキセルはH NMR(ブルッカー300MHz)、質量分析(マイクロマス ウォーターズ ESI)及びRP−HPLCにより同定される。
化学式:C7493NO15;分子量:1236.53
【実施例2】
【0090】
ジスクワレノイルパクリタキセルの合成
ジクロロメタン(DCM)中の450mg(0.526mmol)のパクリタキセルが、室温においてDCMにあらかじめ溶解された1−エチル‐3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCA,パクリタキセルに対して2.5モル当量)、ジメチルアミノピリジン(DMAP,パクリタキセルに対して0.5モル当量)、及びスクワレン酸(パクリタキセルに対して2モル当量)と反応される。1時間後、反応は完結し、pH5において水を使用して停止され、抽出は水性塩化ナトリウム(NaCl)溶液で行われる。次に水性相はDCMで洗浄される。得られる混合物の精製はDCM/酢酸エチル混合物で溶出されるSiO(2.5×40cm)のフラッシュクロマトグラフィーで行われる。画分21〜32が回収され、このようにして得られたジスクワレノイルパクリタキセルはH NMR(ブルッカー300MHz)、質量分析(マイクロマス ウォーターズ ESI)及びRP−HPLCにより同定される。
化学式:C101135NO16;分子量:1619.15
【実施例3】
【0091】
スクワレノイルパクリタキセルナノ粒子の製造
4mgのスクワレノイルパクリタキセルが1.5mlのエタノールに溶解され(2.5mg/ml)、連続撹拌しながら5%のデキストロースを含む水性溶液の1mlに滴下される。スクワレノイルパクリタキセルは100〜200nmのサイズを有するナノ粒子の形に自己集合する。次に、エタノールはロタベイパー(商標)を使用して減圧下完全に気化除去されて、4mg/mlの最終濃度のスクワレノイルパクリタキセルのナノ粒子状の懸濁物を得る。
【実施例4】
【0092】
他のスクワレノイルパクリタキセルナノ粒子の製造
スクワレノイルパクリタキセルの種々の量(下の表1に記載されている)が0.25mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解される。得られた溶液は連続撹拌(500rpmのスピード)しながら0.25mlの水に添加される。スクワレノイルパクリタキセルは100〜200nmのサイズのナノ粒子の形で沈殿する。次にTHFは、ロタベイパー(商標)を使用して減圧下完全に気化除去されて、ナノ粒子状の懸濁物を得る。そのサイズは濃度の関数として変動する(下の表参照)。
【0093】

【実施例5】
【0094】
マウスへのスクワレノイルパクリタキセルナノ粒子の注射及びタキソールとの比較
実施例3で製造されたナノ粒子状のスクワレノイルパクリタキセル懸濁物は、4×50mg/kg(パクリタキセル当量)の投与量においてマウス(C57BL6)に直接静脈注射される。注射は0,5,9及び14日に行われる。注射は容易であり動物は毒性の兆候を一切示さない。死は記録されない(少なくとも1月の期間内)。タキソール溶液の直接の静脈注射(0.9%NaClの希釈なし)は、処置されたマウスの100%の即死をもたらす。タキソール溶液が0.9%のNaClで予備希釈されるとき、注射されることのできる最大の投与量は20mg/kgである。
【実施例6】
【0095】
スクワレノイルパクリタキセルナノ粒子の抗ガン活性
この活性の同定は以下のプロトコルに従う免疫蛍光法により行われる。
【0096】
第1日:ヒトの首のガンから生じるKB3.1細胞及びヒトの大腸ガン細胞株に相当するHT−29細胞が、1ウェル当たり20000細胞の密度で6ウェルのプレートに堆積される(最終体積2ml RPMIプラスFCS)。細胞は37℃の温度及び5%COにおいてインキュベートされる。
【0097】
第2日:該細胞はすすがれ、実施例3に記載されたプロトコルに従って製造されたスクワレノイルパクリタキセルナノ粒子(濃度5μM)がそこに添加される。
【0098】
第3日:14〜16時間後、すすぎはPBSで2回行われ、抽出溶液(トリトンX−100プラス0.5%PEM−PIPES100mM、EGTA2mM、MgCl2mM、pH6.8)が次に添加される。4分後、すすぎが行われ、続いてホルムアルデヒドの3%PEM溶液2mlが添加される。40分後、すすぎが行われ、PBS中の20%FCSが30分にわたって添加される。
【0099】
次にマウス抗αチューブリンFITCモノクロナール抗体(1:200に希釈されている)が添加され、該混合物は1時間インキュベートされる。最後にPBSですすがれ、共焦点蛍光顕微鏡(ライカTCS SP2)による分析が行われる。
【0100】
図1Bに示されるように、チューブリンの塊の形成は蛍光顕微鏡により明らかに見え、スクワレノイルパクリタキセルナノ粒子の紡錘体‐毒活性を示す。処理されていないKB細胞は対照として示される(図1A)。
【実施例7】
【0101】
スクワレノイルインスリンナノ粒子の製造
a)スクワレノイルN−ヒドロキシスクシニミジルエステルの製造
インスリンとの反応は、スクワレノイルN−ヒドロキシ‐スクシニミジルエステル、即ち反応性中間体の予備的な製造及び単離を必要とする。実際には、2mlのジクロロメタン(DCM)に溶解された300mg(0.75mmol)のスクワレン酸が、ジクロロメタンに溶解された72.5mgのN−ヒドロキシスクシンイミド(2.0モル過剰)及び309mgのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCD)(2×)と反応されて、2時間撹拌される。次に、沈殿した尿素は除去され、該混合物は酢酸エチルに溶解され、ろ過され、−20℃の温度で貯蔵される。スクワレノイルN−ヒドロキシスクシニミジルエステル(Sq−CO−NHS)はNMR及び質量分析により同定される。
【0102】
b)スクワレノイルインスリン複合体の製造
50mgのインスリン(ウシ膵臓から得られたものであり、USP試験の基準を満たす)が5mlの乾燥ジメチルスルホキサイド(>99%純度)に溶解され、13.2mgのSq−CO−NHS(3:1のモル過剰)を含むフラスコ中のN,N−ジイソプロピルエチルアミン、30μlに添加される。反応は室温において2時間行われ、有機溶媒及び小さな分子の不純物を除去するために、溶液は集中的に透析され、次に凍結乾燥される。次に固体はDCMで洗浄され、ろ過される。46mgの白色粉末が得られる。
【0103】
複合化反応はウォーターズのRP C18カラム(150.9mm、5μm、300Å)及び溶出溶媒としてメタノール/水(勾配プラス0.1%TFA)を使用して分析HPLCにより制御される。
【0104】
インスリンのスクワレン複合物の同定はMALDI−TOF及び Orbi−Trap質量分析により行われた。該化合物は以下の構造式に該当する。
【0105】

【0106】
c)スクワレノイルインスリンナノ粒子の製造
精製された、インスリンのスクワレン複合体4mgが乾燥ジメチルスルホキサイド(DMSO)(1ml)に溶解され、蒸留水で集中的に透析された。透析工程の間にナノ粒子が生成する。最終体積はポリエチレングリコール(PEG)10kDaの固体濃縮(solid concentration)により1mlまで減少される。
【実施例8】
【0107】
スクワレノイルピルビシンナノ粒子の製造
a)3’‐アミドスクワレノイルピルビシン誘導体の製造
100mgのエピルビシンが2mlの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に素早く溶解されて、予め乾燥DMFに溶解された180mgのスクワレノイルN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(モル過剰:2.0)の溶液と混合され、20μlのN,N−ジイソプロピルエチルアミンが添加される。25℃の温度において2時間混合した後、溶液はDCMで希釈され、蒸留水で洗浄される。精製はDCM/エタノール混合物で溶出されるSiO(2.5×25cm)のフラッシュクロマトグラフィーにより行われる。画分60〜67が回収され、100mgの3’‐アミドスクワレノイルピルビシン複合体が得られ、NMR及び質量分析により同定される。該化合物は以下の構造式に該当する。
【0108】

【0109】
b)スクワレノイルピルビシンナノ粒子の製造
アセトンに溶解されたスクワレノイル−3−エピピルビシン(10mg/ml)の体積200μlが、激しく撹拌しながら5mlの蒸留水に滴下される。細かく、赤い懸濁物が直ちに得られる。ロタベイパー(商標)を使用して減圧下でアセトンを気化除去した後、安定したナノ粒子懸濁物が得られる。
【実施例9】
【0110】
スクワレノイルデオキシスペルグアリンナノ粒子の製造
a)スクワレノイルデオキシスペルグアリンの製造
まず、グスペリムス(Gusperimus)(スパニジン(Spanidine))として知られる市販品を精製することによりデオキシスペルグアリンが製造される。2つのクロマトグラフィー工程(イオン交換及びゲル上でのろ過)の後、デオキシスペルグアリンの塩基形(水に溶解しにくい)が、スクワレノイルN−ヒドロキシスクシニミジルエステルと反応される。これを行うために、24mgのデオキシスペルグアリンが1mlの乾燥DMFに素早く溶解され、同じ溶媒に予め溶解された29mgのスクワレノイルN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(モル過剰:1.3)が添加される。次に10μlのN,N−ジイソプロピルエチルアミンが添加される。25℃の温度において2時間混合した後、該溶液はDCMで希釈され、蒸留水で洗浄される。精製は、DCM/エタノールプラス1%のトリエチルアミン(TEA)で溶出されるSiO(1.5×28cm)のフラッシュクロマトグラフィーにより行われる。次に、サカグチ試験(グアニジン基)において陽性であることが見出された画分が回収される。15mgのスクワレノイルデオキシスペルグアリン複合体が得られ、NMR及び質量分析により同定される。スクワレノイルデオキシスペルグアリン複合体は以下の構造式を有する。
【0111】

【0112】
b)スクワレノイルデオキシスペルグアリンのナノ粒子の製造
エタノールに溶解されたスクワレノイルデオキシスペルグアリン(4mg/ml)の100μlが、激しく撹拌しながら2mlの蒸留水に滴下される。ロタベイパー(商標)を使用して減圧下でエタノールを気化させた後、162nmのサイズのナノ粒子の懸濁物(27.38±2.60mVの表面ポテンシャルにより同定された多分散度指数は0.12)が得られる。
【実施例10】
【0113】
スクワレノイルスクシニルパクリタキセルの合成
ステップ1
パクリタキセルが4−ジメチルアミノピリジン(0.1当量)及びコハク酸無水物(2当量)に溶解され、真空下、2時間乾燥される。乾燥ピリジンを添加した後、反応混合物は室温において3時間撹拌される。溶媒を除去した後、粗混合物はジクロロメタン(DCM)に溶解され、塩水で洗浄される。パクリタキセル2’スクシネートの精製の追加のステップは不必要である。2’OHの不存在、2’C−H(5.51におけるもの)の転化及び本来の位置(4.48)における7C−Hの定量的な存在を検出するNMR分析は、出発物質がスクシネート誘導体に完全に転化したことを示す。
【0114】
ステップ2
N−ヒドロキシスクシンイミドジフェニルホスフェート(SDPP)がDCMにおいてジフェニルホスホリルクロライド、N−ヒドロキシスクシンイミド及びトリエチルアミン(TEA)から製造される。粗SDPPは、エーテル中で粉末にされ、酢酸エチルに溶解され、水ですすがれ、乾燥され真空下で濃縮されて、SDPPを得る。質量分析(MS)による同定は、348に分子ピークを確認する。
【0115】
パクリタキセル2’−スクシネートの溶液に、TEA(4当量)と一緒にアセトニトリル中のSDPP(1.5当量)が添加される。反応混合物は6時間室温において撹拌され、次に真空下で濃縮される。粗反応は酢酸エチルに溶解され、塩水で抽出される。パクリタキセル2’−スクシニル−NHSの形成が上記のように、TLC及びHPLC分析によりモニターされ、追加の精製ステップの必要性が回避される。
【0116】
ステップ3
【0117】

【0118】
乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解されたパクリタキセル2’‐スクシニル‐NHSが、トリエチルアミン(1当量)の存在下でスクワレンアミン(1当量)と反応される。室温において8時間、かつ25℃において終夜後、混合物は塩水で抽出され、DCM−酢酸エチルで溶出されるところのSiOゲル上で精製される。主生成物(スクワレノイルスクシニルパクリタキセル)は30〜50%の酢酸エチルで溶出され、その純度はRP−18カラムでのHPLC分析により制御される。
【0119】
H−NMR(CDCl):d8.13(d,2h,OC(O)o−ArH),7.75(d,2H,NC(O)o−ArH),7.62(t,1H,OC(O)p−ArH),7.53±7.49(バンド,3H),7.43±7.35(バンド,7H),6.91(t,1H,NH),6.35(s,1H,C(10)−H),6.27(t,1H,C(13)−H),5.99(t,1H,C(3’)−H),5.69(d,1H,C(2)−H),5.30(dd,lH,C(7)−H),5.44(dd,1H,C(2’−H)),5.20(s,5H,C(sq−H)),4.97(d,1H,C(5)−H),4.39±4.25(バンド,3H),4.24±4.10(バンド,7H),3.96(d,lH),3.85(dd,1H),3.75(m,1H),3.42(t,2H,sqCH−NH),2.61(p,1H,C(6)−H及びm4HスクシニルのCH),2.46(d,3H,C(4)−OAc),2.41(m,1H,C(14)−H),2.29及び2.20(s,4H,CHsq.酸),2.23(m,1H,C(14)−H),2.14(d,3H,C(10)−OAc),2.01(s,3H,C(12)−CH),2.00(m,16H,CHsq),1.97(m,1H,C(6)−H),1.81(s,3H,C(8)−CH),1.71(m,18H,C(sq)−CH),1.41(d,3H),1.21(s,3H,C(15)−CH),1.16(s,3H,C(15)−CH)。
【実施例11】
【0120】
スクワレノイルジグリコリルパクリタキセルの合成
ステップ1
アルコール形のスクワレンが、ジグリコール酸無水物(2.5当量)と乾燥ピリジン中で室温において終夜撹拌しながら混合される。溶媒は除去され、残さは希塩酸及びDCMを含む塩水で抽出される。期待される生成物の転化はTLCにより制御される。このようにして得られる生成物は真空下で乾燥され、該酸はさらなる精製ステップなしに使用される。
【0121】
ステップ2

【0122】
ステップ1に記載されたスクワレンジグリコール酸(2当量)がDCMに溶解され、次に、予めDCMに溶解されたパクリタキセル(1当量)及び4−N,N−ジメチルアミノピリジン(3当量)が添加される。10分後、EDCI(1.3当量)が添加され、溶液は室温において2時間撹拌される。溶媒を除去した後、粗生成物はDCM/エタノール勾配を使用してシリカゲルのカラムを通過させられ、精製された生成物を得る。該生成物の純度はRP−18カラム上でのHPLC分析により制御される。
【0123】
H−NMR(CDC1):d8.13(d,2H,OC(O)o−ArH),7.75(d,2H,NC(O)o−ArH),7.62(t,1H,OC(O)p−ArH),7.53±7.49(バンド,3H),7.43±7.35(バンド,7H),6.91(t,1H,NH),6.35(s,1H,C(10)−H),6.27(t,1H,C(13)−H),5.99(t,1H,C(3’)−H),5.69(d,1H,C(2)−H),5.30(dd,lH,C(7)−H),5.44(dd,1H,C(2’−H),5.20(s,5H,C(sq−H),4.97(d,1H,C(5)−H),4.39±4.25(バンド,3H),4.33(m,4HジグリコイルCH),4.24±4.10(バンド,7H),4.12(m,2HC(1)スクワレン),3.96(d,lH),3.85(dd,1H),3.75(m,1H),2.61(p,1H,C(6)−H),2.46(d,3H,C(4)−OAc),2.41(m,1H,C(14)−H),2.29及び2.35(s,4H,CHsq酸),2.23(m,1H,C(14)−H),2.14(d,3H,C(10)−OAc),2.01(s,3H,C(12)−CH),2.00(m,16H,5CHsq),1.97(m,1H,C(6)−H),1.81(s,3H,C(8)−CH),1.71(m,18H,C(sq)−CH),1.41(d,3H),1.21(s,3H,C(15)−CH),1.16(s,3H,C(15)−CH)。
【実施例12】
【0124】
スクワレノイルスクシニル−PEG340−パクリタキセルの合成
ステップ1
パクリタキセルスクシニル−NHS(実施例10、ステップ3を参照)はDCMに溶解され、DCM中のtBoc−NH−PEG3−NH(1当量)の溶液が該溶液に、撹拌しながら添加される。トリエチルアミン(0.5当量)が4℃の温度において添加され、反応は20℃において5時間保たれる。粗反応混合物は0.1NHClで、次に塩水で抽出される。このようにして得られた生成物は、以下のステップにおいてさらなる精製なしに使用される。
【0125】
ステップ2

【0126】
パクリタキセルスクシニル−PEG3−NH−tBocが乾燥DCMに溶解され、トリフルオロ酢酸(TFA)が20℃において撹拌しながら添加される。2時間後、反応は完結し、混合物は酢酸ナトリウム溶液、次に塩水で、中性になるまで抽出される。
【0127】
スクワレン酸とNHSとを反応させることにより予め製造されたスクワレンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(1.2当量)が、EDCIの存在下でパクリタキセルスクシニルPEG3−アミン(1当量)に添加される。トリエチルアミン(0.3当量)が添加され、反応混合物は室温において6時間撹拌される。溶媒を除去した後、粗生成物はDCM/エタノール勾配を使用してシリカゲルのカラムを通して精製され、精製された生成物を得る。該精製物の純度はRP−18カラムにおけるHPLC分析により制御される。
【0128】
H−NMR(CDC1):d8.13(d,2H,OC(O)o−ArH),7.75(d,2H,NC(O)o−ArH),7.62(t,1H,OC(O)p−ArH),7.53±7,49(バンド,3H),7.43±7.35(バンド,7H),6.91(t,1H,NH),6.35(s,H,C(10)−H),6.27(t,1H,C(13)−H),5.99(t,1H,C(3’)−H),5.69(d,1H,C(2)−H),5.30(dd,lH,C(7)−H),5.44(dd,1H,C(2’−H),5.20(s,5H,C(sq−H),4.97(d,1H,C(5)−H),4.39±4.25(バンド,3H),4.24±4.10(バンド,7H),3.96(d,lH),3.85(dd,1H),3.75(m,1H),3.42(t,2H,sqCH−NH),3.54(m,6H,CH−O),3.37(m,4H,O−CH),3.13(m,4H,CH−N),2.61(p,1H,C(6)−H及びm4HスクシニルCH),2.46(d,3H,C(4)−OAc),2.41(m,1H,C(14)−H),2.29及び2,20(s,4H,CHsq.酸),2.23(m,1H,C(14)−H),2.14(d,3H,C(10)−OAc),2.01(s,3H,C(12)−CH),2,00(m,16H,CHsq),1.97(m,1H,C(6)−H),1.81(s,3H,C(8)−CH),1.71(m,18H,C(sq)−CH),1.41(d,3H),1.21(s,3H,C(15)−CH),1.16(s,3H,C(15)−CH).
【実施例13】
【0129】
スクワレノイルC22−パクリタキセルの合成

【0130】
乾燥DMF中のスクワレン酸C−22の溶液にDMF中のEDCA(1.5当量)、DMAP(0.5当量)及びパクリタキセル(1.6当量)が添加される。5時間後、反応は5.0のpHを有する水でクェンチされ、塩水で抽出される。
【0131】
粗混合物は最適化された勾配を使用するDCM/酢酸エチルで溶出されるところのSiO上のクロマトグラフィーにより精製される。期待される生成物を含む画分は10%の酢酸エチルで溶出される。スクワレノイルC22−パクリタキセルの純粋な画分は回収され、純度は、アセトニトリル/水混合物で溶出される逆相極性のRP−18カラム上でのHPLC分析により制御される。
【0132】
H−NMR(CDCl3):d8.13(d,2H,OC(O)o−ArH),7.75(d,2H,NC(O)o−ArH),7.62(t,1H,OC(O)p−ArH),7.53±7.49(バンド,3H),7.43±7.35(バンド,7H),6.91(t,1H,NH),6.35(s,1H,C(10)−H),6.27(t,1H,C(13)−H),5.99(t,1H,C(3’)−H),5.69(d,1H,C(2)−H),5.30(dd,lH,C(7)−H),5.44(dd,1H,C(2’−H),5.20(s,5H,C(sq−H)),4.97(d,1H,C(5)−H)4.39±4.25(バンド,3H),4.24±4.10(バンド,7H),3.96(d,lH),3.85(dd,1H),3.75(m,1H),2.61(p,1H,C(6)−H),2.46(d,3H,C(4)−OAc),2.41(m,1H,C(14)−H),2.29及び2.35(s,4H,CHsq.酸),2.23(m,1H,C(14−H),2.14(d,3H,C(10)−OAc),2.01(s,3H,C(12)−CH),2.00(m,16H,CHsq),1.97(m,1H,C(6)−H),1.81(s,3H,C(8)−CH),1.71(m,15H,C(sq)−CH),1.41(d,3H),1.21(s,3H,C(15)−CH),1.16(s,3H,C(15)−CH)。
【実施例14】
【0133】
14−スクワレノイルドクソルビシンの合成

【0134】
ドクソルビシンは、臭素及びトリメチルオルソホルメートの存在下でドクソルビシン14−ブロモ−13−ジメチル‐アセテートを形成し、該アセテートはアセトンと共に撹拌すると14−ブロモドクソルビシンを与える。乾燥アセトンに溶解されたブロモドクソルビシンは、スクワレン酸(3当量)と炭酸カリウムの存在下で反応される。20時間後、反応物はろ過され、溶解は気化除去され、粗生成物はSiOカラム上のクロマトグラフィーにより精製され(4:1、DCM−メタノール)、14−スクワレノイルドクソルビシンを得る。
【0135】
H NMR(CDCl3):8.02(d,1H,H−3),7.87(d,1H,H−1),7.70(t,1H,H−2),5.46(s,1H,H−10),5.3−5.25(m,2H,H−14a,H−14b)及び5,20(s,5H,C(sq−H),5.19(s,1H,H−7),4.15(q,1H,H−50),4.01(s,3H,OCH),3.74(m,2H,H−30,H−40),3.24(d,1H,H−10),3.00(d,1H,H−10),2.43(m,1H,H−8),2.29及び2.35(s,4H,CHsq.酸),2.13(m,1H,H−8),2.03(m,16H,CHsq),1.97(m,1H,H−20),1.82(m,1H,H−20),1.71(m,18H,C(sq)−CH),1.29(d,3H,CH).
【実施例15】
【0136】
実施例10〜14に従って合成された誘導体のナノ粒子の製造と同定
種々の活性剤のナノ粒子がナノ沈殿により製造される。パクリタキセルの場合、スクワレノイル/パクリタキセルの複合体を含むエタノール性溶液(5〜10mg/ml塩基溶液)が、5%の水性デキストロース溶液に撹拌(500rpm)しながら滴下される。ナノ粒子の沈殿は自然に起きる。有機溶媒はロタベイパー(商標)で完全に気化除去されて、純粋なナノ粒子の水性懸濁物を得る。
【0137】
スクワレノイル−ポリエチレングリコール(1:0.5の比におけるもの)は、エタノール性溶液中で混合され、ナノ粒子が上記された方法に従って製造される。
【0138】
スクワレノイルドクソルビシンナノ粒子の製造については、純粋エタノールの代わりにジクロロメタン及びエタノールの混合物が使用されるが、その他の手順は上記のものと類似する。
【0139】
実施例10〜14に上記された複合体から形成されるナノ粒子の組成物は、以下の表に示される。
【0140】

【0141】
ナノ粒子の平均サイズ及びナノ粒子の多分散度指数は20℃の温度において光散乱によりゼータサイザーマシーン(マルベルンインスツルメンツ、英国)で測定される。測定はナノ粒子懸濁物をMilliQ(商標)水で希釈した後行われる。
【0142】
パクリタキセル及びドクソルビシンのスクワレノイル誘導体のナノ粒子のサイズ及びその多分散度指数が以下の表に列挙される。
【0143】

【実施例16】
【0144】
スクワレノイル複合体のインビトロでの抗ガン活性の評価
ナノ粒子の形のスクワレノイル/パクリタキセルタイプの複合体のインビトロでの抗ガン活性は、マジソンの109(M109)のマウスの肺腫瘍細胞株(cell line)で行われる。M109細胞が、10%のウシ胎仔血清、50U.ml−1のペニシリン及び50μg・ml−1のストレプトマイシン及び2mMのL−グルタミンを補足されたRPMI1640で培養される。この分析は、3−[4,5−ジメチルチアゾール‐2−イル]−3,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)試験を使用して行われる。該試験は、ミトコンドリアのデヒドロゲナーゼの活性を測定する。指数的な成長相における細胞が96ウェルのプレートに接種され、空気中に5%のCOを含む加湿された雰囲気において37℃において24時間プレインキュベートされる、種々の希釈のパクリタキセルナノ粒子が培養媒体における細胞に添加される。各希釈物は3回試験される。37℃において72時間後、細胞培養媒体における200μlのMTT溶液(0.5mg/ml)が各ウェルに添加される。2時間30分、37℃においてインキュベートした後、培養媒体は除去され、得られたホルマザン結晶が200μlの抽出溶液(ジメチルスルホキサイド)に溶解される。変形された色素の吸収力(生きた細胞の数に比例する)はマイクロプレートリーダー(メーターテクΣ960、フィッシャーバイオブロック、イルカーチ(Illkirch)、フランス)を使用して570nmで測定される。生き残った細胞のパーセンテージは、処理された細胞と処理されていない細胞の間の吸収力の比を測定することにより計算される。
【0145】
スクワレノイル‐ドクソルビシンのナノ粒子のインビトロ抗ガン活性は、L1210WTマウス白血病細胞株で評価される。細胞は10%のウシ胎仔血清、50U.ml−1のペニシリン及び50μg・ml−1のストレプトマイシン及び2mMのL−グルタミンを補足されたRPMI1640で培養される。評価は上記のプロトコルに従って行われる。
【0146】
スクワレノイル/パクリタキセル及びスクワレノイル−ドクソルビシンタイプの種々の複合体のナノ粒子の50%阻害濃度(IC50)が以下の表に列挙される。
【0147】

【実施例17】
【0148】
実施例11に従って得られたスクワレノイルジグリコリル−パクリタキセル誘導体のナノ粒子のインビボの抗ガン活性の評価
約15〜18グラムのCD2F1マウス(4〜5週齢)がこの調査のために使用された。マウスはマウスの標準的な餌及び水を自由に与えられる。M109の皮下の腫瘍性モデル(マウス肺腫瘍)が、懸濁物としての指数的成長(1×10細胞)におけるM109細胞を、マウスの腹部の下方部分の皮膚の下に注射することにより発現される。触診可能な腫瘍(約50〜100mm)が注射の部位において成長することを許される。腫瘍をもつマウスは5〜6の2つの群即ち治療されないマウス及びスクワレノイルジグリコリルパクリタキセルナノ粒子160mg・kg−1で治療されるマウス(連続して5日間、静脈注射される)、に分割される。マウスは規則的にコントロールされ、腫瘍の体積の変化をチェックし、そうして抗ガン性の効果を評価する。
【0149】
スクワレノイルジグリコリル−パクリタキセルのナノ粒子はマウスに皮下移植されたM109腫瘍の進行を制御することにより抗ガン活性を示す。
【0150】
これらの結果は図2に示される。
【実施例18】
【0151】
実施例14に従って得られた、スクワレノイルドクソルビシン誘導体のナノ粒子のインビボの抗ガン活性の評価
約15〜18グラムのDBA/2マウス(4〜5週齢)がこの調査のために使用された。実施例17の場合、マウスはマウスの標準的な餌及び水を自由に与えられる。指数的成長(0.1×10細胞)におけるL1210細胞を懸濁物としてマウスに静脈注射することにより、L1210の悪性の転位性白血病モデル(マウス白血病)が発現される。腫瘍をもつマウスは5〜6の2つの群、即ち治療されていないマウス及びスクワレノイルドクソルビシンナノ粒子で治療されているマウス(13mg・kg−1、腫瘍細胞の注射後、1、7、及び14日に静脈注射される)に分割される。治療後、マウスは規則的にコントロールされ、体重の変化及び生存率をチェックする。これらのパラメーターは、抗ガン性の効果を評価することを可能にする。
【0152】
ガンの悪性転位性の形を表すこのモデルにおいて、スクワレノイルドクソルビシンナノ粒子は、効果的な抗ガン活性を示し(図3)、白血病を有するマウスの生存率を改善する(図4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶解度の低い治療用活性剤の水に分散可能な誘導体において、上記誘導体は、スクワレン構造の炭化水素をベースとする化合物又はその類似体の少なくとも1の分子に共有結合した上記活性剤の少なくとも1の分子から形成され、上記活性剤は、室温において測定されて純水1ml当たり100μg未満の溶解度を有する上記誘導体。
【請求項2】
スクワレン構造の少なくとも1の基を含む、請求項1に記載の誘導体。
【請求項3】
スクワレン構造の少なくとも2の同じ又は異なる基を含む、請求項1又は2に記載の誘導体。
【請求項4】
上記活性剤が室温において測定されて純水1ml当たり、25μg未満、特に20μg未満、又は10μg未満さえ、より特に5μg未満の溶解度を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項5】
上記活性剤が、免疫抑制剤、化学療法の抗腫瘍剤、血管新生阻害剤、抗ウィルス剤、抗菌剤、抗生物質及び抗寄生虫剤、糖、ペプチド、脂質の代謝に作用する物質、カルシウムチャンネルに作用する剤、非ステロイド系の抗炎症剤及びペプチド化合物から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項6】
活性剤がタキソイド、ドクソルビシン及びエピルビシンから選択される化学療法の抗腫瘍剤である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項7】
上記活性剤がタキサン及びタキソイドから選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項8】
上記活性剤がドクセタキセル、パクリタキセル、及びその誘導体から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項9】
上記活性剤がインスリンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項10】
水溶解度の低い上記治療用活性剤と、スクワレン構造の炭化水素をベースとする化合物又はその類似体の分子との間に存在する共有結合が、リンカーにより具体化されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項11】
リンカーが(ポリ)アミノ酸単位、ポリオール、糖類、及び低分子量のポリエチレングリコール(ポリエーテルオキサイド)から選択される、請求項10に記載の誘導体。
【請求項12】
以下から選択される請求項1〜11のいずれか1項に記載の誘導体:





【請求項13】
水溶解度の低い少なくとも1の治療用活性剤の水に分散可能なナノ粒子において、上記活性剤が、スクワレン構造の炭化水素をベースとする化合物又はその類似体の少なくとも1と組み合わされた形で上記ナノ粒子に存在する、上記水に分散可能なナノ粒子。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の誘導体から形成される、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
30〜650nm、特に30〜500nm、特に50〜250nm、又は100〜200nmの範囲の平均サイズを有する、請求項13又は14に記載のナノ粒子。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子の水性分散物。
【請求項17】
請求項13〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子を製造する方法において、
少なくとも1の有機溶媒に請求項1〜12のいずれか1項に記載の少なくとも1の誘導体を溶解させること、ここで、該誘導体の濃度は、対応する混合物を撹拌しながら水性相に添加する間に、上記水性相に懸濁されたナノ粒子の瞬間的な形成を得るのに十分な濃度であること、及び
適切であれば、上記ナノ粒子を単離すること
を少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
有機溶媒がアルコールである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記方法が界面活性剤を使用しないことを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
活性物質として請求項1〜12のいずれか1項に記載の少なくとも1の誘導体又は請求項13〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子を、少なくとも1の薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせて含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−506276(P2011−506276A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535434(P2010−535434)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/FR2008/052147
【国際公開番号】WO2009/071850
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【出願人】(510146090)ユニヴェルシテ パリ シュド オンズ (1)
【Fターム(参考)】