説明

水素検出装置、内燃機関の異常判定装置

【課題】酸素濃度を検出するセンサ(いわゆる空燃比センサ)を用いて安価に水素の濃淡レベルに関する情報を検出する装置を提供することを課題とする。この装置を使って内燃機関の異常判定を行う装置を提供することを課題とする。
【解決手段】水素の濃淡レベルに関する情報を検出する装置は、空燃比センサと空燃比制御手段と検出部とからなり、検出部は、空燃比制御手段が目標空燃比をリッチからリーンに切り替えてから空燃比センサがこれを検出するまでの応答時間、及びリーンからリッチに切り替えてから空燃比センサがこれを検出するまでの応答時間の比もしくは差を算出して、水素の濃淡レベルを検出する。この装置を使って、気筒間ばらつきと排気浄化触媒劣化を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の濃淡レベルに関する情報を検出する水素検出装置、及びこの水素検出装置が検出した水素の濃淡レベルに関する情報に基づいて内燃機関の異常を判定する内燃機関の異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検出ガス中に水素が存在すると、空燃比センサの出力にずれが生じることが公知になっている。特許文献1には、水素が存在するとリッチ空燃比からリーン空燃比への変化の検出に遅れが生じることが開示されている。
【0003】
特許文献2には、水素を含むリッチガスの影響を受けて、空燃比センサの出力がリッチ側にずれることが開示されている。
【特許文献1】特開平11−247687号公報
【特許文献2】特開2006−291893号公報
【特許文献3】特開平8―49585号公報
【特許文献4】特開2006−152845号公報
【特許文献5】特開2003−120383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2に開示された技術内容からでは水素の濃淡レベルや水素濃度を算出することはできない。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題に鑑み、酸素濃度を検出するセンサを用いて安価に水素の濃淡レベルに関する情報を検出する装置を提供することを目的とする。また、酸素濃度を検出するセンサを用いて安価に水素の濃淡レベルに関する情報を検出して内燃機関の異常を判定する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、被検出ガスの酸素濃度を検出するセンサと、センサに流入する被検出ガスの酸素濃度を制御する酸素濃度制御手段と、酸素濃度制御手段が基準酸素濃度ガスに比して高濃度酸素ガス供給から低濃度酸素ガス供給へ切り替えた場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間である低酸素濃度応答時間、及び酸素濃度制御手段が基準酸素濃度ガスに比して低濃度酸素ガス供給から高濃度酸素ガス供給へ切り替えた場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間である高酸素濃度応答時間に基づいて水素の濃淡レベルに関する情報を検出する検出部と、を備えたことを特徴とする水素検出装置が提供される。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、被検出ガスは、内燃機関から排出される排気ガスとし、酸素濃度制御手段は、目標空燃比を制御する空燃比制御手段とし、低酸素濃度応答時間は、空燃比制御手段が目標空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比へ切り替えた場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間とし、高酸素濃度応答時間は、空燃比制御手段が目標空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比へ切り替えた場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間とする、ことを特徴とする請求項1記載の水素検出装置が提供される。
【0008】
請求項3に記載の発明によれば、検出部は、高酸素濃度応答時間と低酸素濃度応答時間との比もしくは差に基づいて水素の濃淡レベルに関する情報を検出する、ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の水素検出装置が提供される。
【0009】
請求項4に記載の発明によれば、センサは、被検出ガスに晒される外側電極と、大気に晒される内側電極と、外側電極と内側電極とに挟まれた酸素イオン導電性電解質と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水素検出装置が提供される。
【0010】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の水素検出装置を備え、被検出ガスは、内燃機関から排出される排気ガスとし、検出部が検出した水素の濃淡レベルに関する情報に基づいて内燃機関の異常を判定する異常判定手段を備えたことを特徴とする内燃機関の異常判定装置が提供される。
【0011】
請求項6に記載の発明によれば、内燃機関は複数の気筒を備え、異常判定手段は、水素検出装置が検出した水素の濃淡レベルが所定値以上に高い場合には、気筒間ばらつきが発生したと判定する、ことを特徴とする請求項5記載の内燃機関の異常判定装置が提供される。
【0012】
請求項7に記載の発明によれば、センサは、複数の気筒に接続された排気管の集合部、もしくは該集合部より下流の排気ガスの酸素濃度を検出する、ことを特徴とする請求項6記載の内燃機関の異常判定装置が提供される。
【0013】
請求項8に記載の発明によれば、センサは、排気浄化触媒下流の排気ガスの酸素濃度を検出し、異常判定手段は、水素検出装置が検出した水素の濃淡レベルが所定値以下に低い場合には、排気浄化触媒が劣化したと判定する、ことを特徴とする請求項5記載の内燃機関の異常判定装置が提供される。
【0014】
請求項9に記載の発明によれば、酸素濃度を検出するセンサに流入する被検出ガスの酸素濃度が基準酸素濃度に比して高濃度から低濃度へ切り替わった場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間である低酸素濃度応答時間を取得するステップと、センサに流入する被検出ガスの酸素濃度が基準酸素濃度に比して低濃度から高濃度へ切り替わった場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間である高酸素濃度応答時間を取得するステップと、高酸素濃度応答時間及び低酸素濃度応答時間に基づいて水素の濃淡レベルに関する情報を検出するステップとを備えたことを特徴とする水素検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至4に記載の発明によれば、酸素濃度制御手段とセンサを用いて、水素の濃淡レベルに関する情報を検出することを可能とする効果を奏する。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、空燃比制御手段とセンサを用いて、水素の濃淡レベルに関する情報を検出することを可能とする効果を奏する。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、高酸素濃度応答時間と低酸素濃度応答時間との差もしくは比に基づいて水素の濃淡レベルに関する情報を検出することを可能とする効果を奏する。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、外側電極と、内側電極と、外側電極と内側電極とに挟まれた酸素イオン導電性電解質と、を備えたセンサを用いて、水素の濃淡レベルに関する情報を検出することを可能とする効果を奏する。
【0019】
請求項5乃至8に記載の発明によれば、酸素濃度制御手段とセンサを用いて、水素の濃淡レベルを検出し、水素の濃淡レベルによって内燃機関の異常を判定することを可能とする効果を奏する。
【0020】
請求項6もしくは7に記載の発明によれば、気筒間ばらつきを判定することを可能とする効果を奏する。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、排気浄化触媒の劣化を判定することを可能とする効果を奏する。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、水素の濃淡レベルに関する情報を検出することを可能とする効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付して説明を簡素化ないし省略する。
【実施例1】
【0024】
以下の順番で内燃機関に設置された本発明の水素検出装置について説明をする。
1.内燃機関の基本構成
2.空燃比センサの原理
3.リッチからリーンへの空燃比制御に対する空燃比センサの応答
4.リーンからリッチへの空燃比制御に対する空燃比センサの応答
5.空燃比センサと空燃比制御手段を組み合わせた水素検出装置の原理
6.水素の濃淡レベル検出のフローチャート
7.本実施例の別の態様
8.本実施例の効果
【0025】
1.内燃機関の基本構成
図1及び図2は、実施例1の基本構成を説明するための模式図である。図1は内燃機関の模式的な側面図であって、気筒とその前後に設置された吸気管19と排気ガスの通路である排気管15の断面図を示している。図2は同じ内燃機関を上から見た模式図である。図2は、図1と共通の吸気管19と排気管15を図示しており、複数の気筒を持つ内燃機関の図である。内燃機関の各気筒の吸気ポートには、吸気枝管が接続されている。吸気枝管には、燃料噴射弁(211、212、213、214)が設置されている。これら複数の燃料噴射弁を代表して図1は燃料噴射弁21を図示している。また、吸気枝管は、共通のサージタンク(不図示)に接続されている。サージタンクの上流には吸気圧を検出するエアフロメーター23、スロットルセンサ24が設置されている。内燃機関の各気筒の排気ポートは、共通の排気マニホルド36に接続されている。排気マニホルド36は、排気管の集合部37を持つ。排気管15には排気浄化触媒14を内蔵する触媒コンバータ13が設置されている。触媒コンバータ13の下流の排気管12には、マフラー(不図示)が設置されている。排気浄化触媒の上流と下流には空燃比センサが設置されている。触媒コンバータ13の上流には、上流側空燃比センサ10が、触媒コンバータ13の下流には下流側空燃比センサ11が設置されている。被検出ガスの酸素濃度を検出するセンサは上流側空燃比センサ10もしくは下流側空燃比センサ11に相当する。
【0026】
この内燃機関は制御システムを備え、電子制御装置(Electronic Control Unit:ECU)1を備える。ECU1は、マイクロコンピュータ2を有する。マイクロコンピュータ2は、CPU、RAM、ROM、A/D変換器、I/Oポート等を備える周知の論理演算回路にて構成されており、マイクロコンピュータの入力ポートは、A/D変換器を介して、それぞれ、上流側空燃比センサ10、下流側空燃比センサ11、エアフロメーター23、スロットルセンサ24に接続されている。ECU1は検出した電流信号(アナログ信号)をA/D変換器を介して取り込み、A/F値の演算や素子インピーダンスZacの演算を適宜実施する。また、マイクロコンピュータの出力ポートは、駆動回路を介して、燃料噴射弁21に接続されている。また、出力ポートは、MILランプ22に接続されている。内燃機関に異常が発生した場合には、MILランプ22が点灯してドライバに異常を知らせるようになっている。ECU1は本発明の基本構成をソフトウェアで実現し、ROM内に格納されたフログラムに従い、後述するフローチャートの処理を行う。
【0027】
ECU1は各センサの入力信号から演算を行い、検出した吸入空気量と目標空燃比から燃料噴射量(噴射時間)を決定し、燃料噴射弁を制御する。こうして、燃料噴射弁21から所定量の燃料の噴射が行われる。各センサの入力信号から演算を行って目標空燃比を決定するECU1が、空燃比制御手段もしくは酸素濃度制御手段を実現するものである。ECU1は、請求項に記載の空燃比制御手段もしくは酸素濃度制御手段と検出部とを実現するものである。ECU1及び上流側空燃比センサ10もしくは下流側空燃比センサ11は、水素検出装置を実現するものである。
【0028】
空燃比フィードバック制御について説明する。ECU1は、上流側空燃比センサ10もしくは下流側空燃比センサ11の検出結果によって排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチ側とリーン側とのいずれに変動しているかを判定する。空燃比制御手段が目標空燃比をこの変動と反対側に補正し、実際の空燃比が理論空燃比の近傍となるように目標空燃比を修正する。例えば、特開平8―49585号公報に詳しい記載がある。本実施例では、空燃比フィードバック制御に使用される空燃比センサと空燃比制御手段とを用いて、制御に特徴を持つ水素検出装置で水素の濃淡レベルに関する情報を検出することが可能である。そのため、新しいセンサなど新しいハード構成が不要であるから、安価に水素の濃淡レベルに関する情報を検出することが可能である。
【0029】
ここで、排気ガスの成分について、燃焼室内に形成される混合気の空燃比がリッチ空燃比である場合と、リーン空燃比である場合とに分けて説明する。空燃比がリッチ空燃比のときには理論空燃比より多い燃料が噴射されるために、燃焼後に燃焼室で未燃炭化水素HC、水HO、一酸化炭素CO等が発生する。詳細は後述するが、排気管中では水性ガスシフト反応と水蒸気改質とによって、これら成分が反応して水素H、メタンCH、二酸化炭素CO等が発生する。図7にあるように、空燃比がリッチ空燃比のときには、リーン空燃比のときと比して、排気ガスは、水素Hの濃度が高くなる。
【0030】
一方、空燃比がリーン空燃比のときには、燃料のほぼすべてが燃焼に供され、燃焼後に燃焼室では酸素Oが残る。理論空燃比のときに比べ、空燃比がリーン空燃比のときには、排気ガスは酸素濃度が高くなる。
【0031】
2.空燃比センサの原理
ここで、上流側空燃比センサ10もしくは下流側空燃比センサ11に使用される空燃比センサについて説明する。空燃比センサは、酸素分圧に基づいて被検出ガスの酸素濃度を検出するセンサである。図3は空燃比センサを説明するための模式図である。図3に示すように、空燃比センサは、カバー108を備える。カバー108は、排気ガスに晒されるように取り付けられている。カバー108にはその内部に排気ガスを導くための複数の通気孔107が設けられている。排気管中の排気ガスの最低流速は1〜2m/s程度であり、この通気孔107は内部に入り込む排気ガスの流速が1/10程度になるように設定されている。通気孔107により、カバー内部における排気ガスの圧力は、大気圧とほぼ等しい。
【0032】
カバー内には、センサ素子109が配置されている。センサ素子109は、一端が閉じられた管状の構造を有している。管状構造の外側表面は、拡散抵抗層を実現する多孔質層104で覆われている。多孔質層は、セラミックス、例えば、アルミナを用いたスピネル型化合物(MgO・Al)により構成される。多孔質層についてガス透過率(気孔率)を定義する。気孔率は多孔質層中の空間の体積を多孔質層全体の体積で割ったものである。
【0033】
多孔質層104の内側には、外側電極103が設けられている。言い換えると、外側電極の外表面に多孔質層104が設けられている。多孔質層104の外側に触媒やコーティング層を別に設けてもよい。外側電極103は、多孔質層104を通過した排気ガスに晒されている。外側電極103の更に内側に酸素イオン導電性電解質である固体の電解質、酸素イオン導電性固体電解質102が設けられている。酸素イオン導電性固体電解質102は、ジルコニアからなる。酸素イオン導電性固体電解質102の内側の面には、内側電極101が設けられている。内側電極101及び外側電極103は、Ptなどの金属で構成される。内側電極及び外側電極は、酸素イオン導電性固体電解質102表面に押圧接触した金属端子を通じて外部へ延びるリード線に接続される。
【0034】
内側電極の内側には、大気室110が形成されている。大気室内には、大気が導かれる構造となっている。従って内側電極は大気に晒されている。大気室内には、ヒータ(不図示)を配置して、センサの早期活性化を図ってもよい。なお、センサ素子109は700℃程度の活性温度に加熱されることにより、安定した出力特性を示す。
【0035】
図4を使って、空燃比センサの動作原理を説明する。図4は空燃比センサの特徴部分である、外側電極103、内側電極101、酸素イオン導電性固体電解質102及び多孔質層104を模式的に示した図である。通気孔107によって外側電極にかかる排気ガスの圧力は大気圧とほぼ等しくなるように設定されている。そのため、空燃比センサは外側電極103と内側電極101における酸素分圧の違いに基づいて、両電極に流れる電流もしくは電圧で酸素濃度を検出している。
【0036】
図4(a)に示すように、酸素濃度検出素子の両面に設けた内側電極101、外側電極103間に印加電圧V0が印加される。センサ素子109周囲の排気ガスは多孔質層104の側方部位から多孔質層104に浸入し、外側電極103に達する。このとき、排気ガスがリッチであれば、図4(c)に示すように、多孔質層104内を未燃成分分子HC、一酸化炭素CO、水素Hが移動する一方、大気室の酸素Oが内側電極でイオン化され、酸素イオン導電性固体電解質内を内側電極から外側電極の向きに酸素イオン(O2-)が移動する。これは、大気側の内側電極101における酸素分圧が排気側の外側電極103における酸素分圧より大きいためである。そして、内側電極での電極反応により酸素分子Oが生成され、未燃成分分子HC、一酸化炭素CO、水素Hとの触媒反応により二酸化炭素COや水HOが生成される。こうして、外側電極から内側電極の向きに素子電流Ip(マイナス電流)が流れることになり、素子の起電力(1V)が発生する。一方、排気ガスがリーンであれば、図4(e)に示すように、多孔質層内を酸素分子Oが移動し、酸素分子Oは外側電極103で電極反応を起こし、酸素分子Oはイオン化される。そして、酸素イオン導電性固体電解質内を外側電極103から内側電極101の向きに酸素イオン(O2-)が移動した後、内側電極101で酸素分子Oが生成され大気室110に排出される。こうして、内側電極から外側電極の向きに素子電流Ip(プラス電流)が流れることになる。素子の起電力は0Vである。理論空燃比時には、図4(d)に示すように、素子の起電力が印加電圧と釣り合うため素子電流Ipは0となる。
【0037】
このように、両電極間の酸素濃度差、つまり両電極間の酸素分圧差に応じて、酸素イオン導電性固体電解質内を酸素イオン(O2-)が移動する。両電極間に、論空燃比で生じる起電力に相当する電圧V0=0.5V(図4(b)参照)を逆向きに印加している。この図で空気過剰率(λ)=1が理論空燃比に相当する。この原理によって、両電極間を流れる素子電流値から空燃比を検出することができる。両電極間に発生する素子の起電力は図4(b)のとおり、理論空燃比近傍でいわゆるZ特性を示す。
【0038】
本実施例において、空燃比センサはセンサ素子109近傍の排気ガスの圧力と大気圧とがあまり変わらない条件で使用される。そのため、上記のとおり外側電極と内側電極との酸素分圧差に基づいて排気ガスの酸素濃度を検出することができる。空燃比センサは、素子電流Ipを検出するA/Fセンサと電極間で発生する起電力を検出するOセンサとがある。
【0039】
3.リッチからリーンへの変化に対する空燃比センサの応答
酸素濃度制御手段である空燃比制御手段が目標空燃比をリッチからリーンに切り替えるとき、排気ガス中に水素が多く存在する場合(以下、高水素雰囲気という)と、水素がほとんど存在しない場合(以下、低水素雰囲気という)とで、空燃比センサの応答がどのように変化するか、図5を使って説明する。図5(b)は、多孔質層104内であって外側電極近傍における、各成分の濃度分布を時系列で示した模式図である。図5(c)は空燃比センサの両電極に発生する起電力電圧の時系列変化を示した図である。実線は高水素雰囲気の場合であり、破線は低水素雰囲気の場合を示している。
【0040】
目標空燃比がリッチ空燃比(A/F値14)のときには、空燃比センサの外側電極近傍には、排気ガス成分のうち、水素H、メタンCH、炭化水素HC及び一酸化炭素CO成分が存在する。図5(b)のt<tにおいて、この状態を示している。このとき、図4(c)のように酸素分圧は内側電極より外側電極の方が低く、正の起電力が生じ(図5(c)参照)、マイナス電流を生じる。
【0041】
t=tで空燃比制御手段が目標空燃比をリッチ空燃比(A/F値14)からリーン空燃比(A/F値15)に切り替えた。すると、燃料の噴射量が変化し、燃焼の特性が変化する。排気ガス中の成分は時間経過に伴って徐々に炭化水素HCや一酸化炭素COの濃度は低下して、酸素Oの濃度が増加する。成分が変化した排気ガスが燃焼室を出て、空燃比センサの外側電極103に到達する。ここで、高水素雰囲気の場合と低水素雰囲気の場合とを比較して説明する。高水素雰囲気の場合では、外側電極近傍にある水素Hと酸素Oが反応して(O+2H→2HO)、酸素Oが消費される。空燃比制御手段が目標空燃比をリッチからリーンに切り替えたt=tから、空燃比センサにリーン空燃比(A/F値15)を示すV1の起電力が生じる時点までの時間を高濃度応答時間(T1)とする。図5(c)のとおり、高水素雰囲気の場合の高酸素濃度応答時間(T1)は、低水素雰囲気の場合の高酸素濃度応答時間(T1´)に比して大きい。すなわち、T1>T1´である。
【0042】
4.リーンからリッチへの空燃比制御に対する空燃比センサの応答
空燃比制御手段が目標空燃比をリーンからリッチに切り替えるとき、排気ガスが高水素雰囲気の場合と、低水素雰囲気の場合とで、空燃比センサの応答がどのように変化するか、図6を使って説明する。図6(b)は、図5(b)と同様で、多孔質層104内であって外側電極近傍における、各成分の濃度分布を時系列で示した模式図である。実線は高水素雰囲気の場合を示し、破線は低水素雰囲気の場合を示している。図6(c)は空燃比センサの両電極に発生する起電力電圧の時系列変化を示した図である。実線は高水素雰囲気の場合を示し、破線は低水素雰囲気の場合を示している。
【0043】
目標空燃比がリーン空燃比のときには、空燃比センサの外側電極近傍には、排気ガス成分のうち酸素成分が多く存在する。図6(b)におけるt<tでこの状態を示している。このとき、図4(e)のように酸素の分圧は内側電極より外側電極の方が高く、電極間の起電力は0となり(図6(c)参照)、プラス電流を生じる。
【0044】
t=tで空燃比制御手段が目標空燃比をリーン空燃比(A/F値15)からリッチ空燃比(A/F値14)に切り替えた。すると、時間経過に伴って徐々に酸素の濃度は低下して、かわりに炭化水素HCや一酸化炭素COの濃度が増加する。図8に示すとおり、水素Hは酸素O等の拡散速度に比べて4倍程度はやい。拡散速度の違いにより、水素Hが他の成分よりも先に外側電極近傍に到着する。外側電極近傍にある水素Hと酸素Oとが反応して(O+2H→2HO)、酸素Oが消費される。高水素雰囲気では、酸素Oは急激に消費される。空燃比制御手段が目標空燃比をリーンらリッチに切り替えたt=tから、空燃比センサにリッチ空燃比(A/F値14)を示すV2の起電力が生じる時点までの時間を低酸素濃度応答時間(T2)とする。図6(c)のとおり、高水素雰囲気の場合の高酸素濃度応答時間(T2)は、低水素雰囲気の場合の低酸素濃度応答時間(T2´)に比して小さい。すなわち、T2<T2´である。
【0045】
5.空燃比センサと空燃比制御手段を組み合わせた水素検出装置の原理
上述のとおり、高水素雰囲気の場合には低水素雰囲気の場合と比して、高酸素濃度応答時間(T1)は大きく、低酸素濃度応答時間(T2)は小さい。このことを利用して、検出部は水素の濃淡レベルに関する情報を検出する。検出部は、高酸素濃度応答時間(T1)と低酸素濃度応答時間(T2)との両方を検出して、両者の差異(非対称性)に注目する。つまり、
T(div)=(高酸素濃度応答時間)/(低酸素濃度応答時間)=T1/T2
を算出し、T(div)をもって水素の濃淡レベルとする。なお、本実施例では比をとってT(div)としたが、他の様態として差をとって、
T(dif)=(高酸素濃度応答時間)−(低酸素濃度応答時間)=T1−T2
を水素の濃淡レベルとしてもよい。他の様態として、高酸素濃度応答時間と低酸素濃度応答時間とから水素の濃淡レベルを対応させる実験をあらかじめ行い、図21に示すマップを記録しておき、このマップから水素の濃淡レベルを求めてもよい。
T(Map)=Map((高酸素濃度応答時間)、(低酸素濃度応答時間))
【0046】
T(div) もしくはT(dif)の具体的な数値データを示す。後述するが、図10に記載のとおり、気筒間ばらつきと水素濃度(%)には相関がある。図10の水素濃度(%)は本願の水素検出装置とは別の水素センサで検出した数値データである。気筒間ばらつきの度合いに応じ、低酸素濃度応答時間及び高酸素濃度応答時間を検出した数値データを示した図が図9である。図9及び図10から気筒間ばらつき0%と20%のときの水素濃度を推定すると、それぞれ0.08%、0.98%となり、この水素濃度と、T(div) もしくはT(dif)との関係を図示したものが、図11である。図11では、水素濃度とT(div) もしくはT(dif)との関係を直線で近似し、比例関係にあると推定したが、実験を重ねてサンプル数を増やし、水素の濃淡レベルとT(div) もしくはT(dif)との関係を曲線で近似してもよいし、あらかじめ実験をしてマップを記録して、水素濃度とT(div) もしくはT(dif)との関係を規定することとしてもよい。使用する空燃比センサの初期条件によって、水素濃度とT(div) もしくはT(dif)との関係は適宜変わる。
【0047】
高酸素濃度応答時間と低酸素濃度応答時間とから水素濃度を対応させる実験をあらかじめ行い、マップを記録しておき、決められたマップから水素濃度を求めてもよい。
水素濃度(%)=Map2((高酸素濃度応答時間)、(低酸素濃度応答時間)).
【0048】
以下、低酸素濃度応答時間と高酸素濃度応答時間の両方を検出して両者の差異(非対称性)に注目し、比、差もしくはマップであるT(div)、T(dif)もしくはT(Map)を算出して水素の濃淡レベルとし、水素濃度を検出したことについて、効果を説明する。
【0049】
上述のとおり、高水素雰囲気では高酸素濃度応答時間は大きい。このことから、水素の濃淡レベルと高酸素濃度応答時間との関係を比例させて、水素の濃淡レベルや水素濃度を推定する方法が考えられえる。同様に、水素の濃淡レベルと低酸素濃度応答時間との関係を比例させて、水素の濃淡レベルや水素濃度を推定する方法が考えられえる。しかし、二つの応答時間(高酸素濃度応答時間と低酸素濃度応答時間)のうち、一方の応答時間だけから水素濃度を推定する方法では問題がある。なぜなら、これら応答時間は空燃比センサの個体差や、水素及び酸素等の拡散速度によって変化するからである。
【0050】
酸素分子や炭化水素等の拡散速度は多孔質層104のガス透過率(気孔率)の違いにより変化するため、製造時の個体差や経時変化等によりガス透過率が相違すると、それに伴う拡散速度の違いによりセンサ特性が変わる。例えば、経時変化により多孔質層104に微小なクラック(マイクロクラック)が生じると、ガス透過率が増加する。また逆に、多孔質層104で目詰まりが生じると、ガス透過率が減少する。従って、センサ特性が変わる。また、内燃機関の燃焼の状態、運転状態、大気の温度及び機関の温度等、さまざまな内燃機関の内外の環境等によって引き起こされる温度変化によっても拡散速度は変化する。つまり、高酸素濃度応答時間と水素濃度との関係や低酸素濃度応答時間と水素の濃淡レベルとの関係は不変ではなく、環境、経年変化や製造時の個体差等を原因として変化する。このため、高酸素濃度応答時間から水素の濃淡レベルを推定すると誤差が大きくなるおそれがある。同様に、低酸素濃度応答時間から水素の濃淡レベルを推定すると誤差が大きくなるおそれがある。
【0051】
ところが、T(div) もしくはT(dif)を使って水素の濃淡レベルや水素濃度を検出すると、この問題によって生じる水素濃度検出誤差を小さくすることができる。これについて説明する。
【0052】
なんらかの原因でガス透過率の違いが発生し、よって拡散速度が変化した場合に応答時間がどのように変化するかについて、図12、図13を使って説明する。図12(b)では、図5と同様に縦軸に外側電極近傍での各成分の濃度、空燃比センサの出力電圧の時系列変化を示した図である。実線はなんらかの原因で酸素や水素の拡散速度が大きい場合を示し、破線は酸素と水素の拡散速度が小さい場合を示している。図からわかるように、酸素と水素の拡散速度が大きい場合は高酸素濃度応答時間と低酸素濃度応答時間の両方が小さくなる。
【0053】
よって、T1とT2の差異(非対称性)に注目した値であるT(div) もしくはT(dif)の値はガス透過率の違いを原因とする検出誤差は比較的小さい。T(div) もしくはT(dif)によって水素の濃淡レベルや水素濃度を推定する本実施例の方法では、高酸素濃度応答時間と水素の濃淡レベルや水素濃度とを関連付ける方法や、低酸素濃度応答時間と水素の濃淡レベルや水素濃度とを関連付ける方法よりも検出誤差を少なくすることができる。言い換えると、本実施例では、環境、経年変化や製造時の個体差等による検出誤差がより少ない素の濃淡レベルや水素濃度を検出することができる。
【0054】
6.水素の濃淡レベル検出のフローチャート
空燃比センサによって水素の濃淡レベル、水素濃度を検出する方法について動作原理と効果を説明した。以下、図14を使って本実施例の水素検出装置による水素の濃淡レベル、水素濃度の検出についてフローチャートを用いて順を追って説明する。この水素濃度検出ルーチンはECU1によって実行される。
【0055】
まず、S1では下記の条件を全て満たしているかどうかが判定される。全て条件を満たしていればS2へ進み、一つでも満たしていなければ、このルーチンを終了する。
(1)エンジンが暖気完了していること。(例えば冷却水温が所定値以上であること。)
(2)空燃比センサが暖気完了していること。
このステップで内燃機関の暖機が完了し、かつ空燃比センサが活性化温度に達していて排気ガスの成分を検出できる状態にあるか否かを判断することで、誤った水素の濃淡レベル、水素濃度を算出してしまうことを防いでいる。この他、下記の条件を加えてもよい。
(3)空燃比センサが異常(故障)と判定されていないこと。
【0056】
次にS2では高濃度応答時間T1を計測する。空燃比制御手段が目標空燃比をリッチからリーンへ、すなわちA/F値を14から15へと切り替えてこの時点をt=tとする。この時点から空燃比センサがA/F値14の出力値からA/F値15の出力値に切り替わり、A/F値15に相当する電圧V1を検出する時点までの時間を計測して応答時間とする。この応答時間を高酸素濃度応答時間(T1)と言う。
【0057】
次にS3では低濃度応答時間T2を計測する。空燃比制御手段が目標空燃比をリーンからリッチへ、すなわちA/F値を15から14へと切り替えてこの時点をt=tとする。この時点から空燃比センサがA/F値15の出力値からA/F値14の出力値に切り替わり、A/F値14に相当する電圧V2を検出する時点までの時間を計測して応答時間とする。この応答時間を低酸素濃度応答時間(T2)と言う。
【0058】
次にS3でT1とT2の差異を算出する。すなわち、
T(div)=(高酸素濃度応答時間)/(低酸素濃度応答時間)=T1/T2
を算出する。T(div)をもって水素の濃淡レベルとする。次にS4では、図11のマップを読み出し、T(div)から水素濃度(%)を算出している。
【0059】
検出部がフローチャートのうちS2及びS3における計測とS4におけるT(div)算出とを実行する。ECU1は空燃比制御手段と検出部とを備え、ECU1と上流側空燃比センサ10もしくは下流側空燃比センサ11とで水素検出装置が実現される。
【0060】
本実施例のフローチャートでは、S2、S3において空燃比制御手段が設定する目標空燃比の値をリーン空燃比としてA/F値14、リッチ空燃比としてA/F値15を採用した。これは、空燃比フィードバック制御を実行中の内燃機関において、空燃比制御手段は空燃比フィードバック制御をいったん中止し、水素の濃淡レベルや水素濃度を検出する目的で、目標空燃比を制御することを意味する。このように、A/F値として14、15を採用して、空燃比制御手段が空燃比フィードバック制御をいったん中止することにより、図9にあるように、応答時間は0.5秒から、1.1秒程度と比較的大きな値をとる。そのため、水素及び酸素の拡散速度の違いによって生じる応答時間の差異(非対称性)がより大きくなり、より正確に水素の濃淡レベルや水素濃度を検出できる。
【0061】
7.本実施例の別の態様
本実施例では空燃比制御手段が設定する目標空燃比の値をリーン空燃比としてA/F値14、リッチ空燃比としてA/F値15を採用した。しかし、別の態様として別のA/F値を採用してもよい。空燃比制御手段が理論空燃比をはさんで目標空燃比を切り替え、所定の目標空燃比とするようにすればよい。空燃比フィードバック制御実行中にこのルーチンを行うことができるように、リーン空燃比及びリッチ空燃比のA/F値を理論空燃比の近傍の値に設定してもよい。
【0062】
なお、本実施例では、高酸素濃度応答時間T1の定義として、t=tから空燃比センサにA/F値15に相当するV1の起電力が生じる時点までとし、低酸素濃度応答時間T2の定義として、t=tから空燃比センサにA/F値14に相当するV2の起電力が生じる時点までとした。しかし、本実施例の別の態様として、V1とV2とは適宜変更してもよい。V1´としてV1とV0(0.5V)との間の値でV1に十分近い値として、T1をt=tから空燃比センサにV1´の起電力が生じる時点までと定義してもよい。V2´としてV2とV0(0.5V)との間の値でV2に十分近い値として、T2をt=tから空燃比センサにV2´の起電力が生じる時点までと定義してもよい。
【0063】
本実施例の別の態様として、T1、T2の計測の開始時間は適宜変更できる。T1の定義として、t以降のある時点、例えば理論空燃比に相当する電圧(0.5V)を空燃比センサが検出してから、V1の電圧を検出するまでとし、T2の定義として、t以降のある時点、例えば理論空燃比に相当する電圧V0(0.5V)を空燃比センサが検出してから、V2の電圧を検出するまでとしてもよい。
【0064】
8.本実施例の効果
このような水素検出装置を用いて、水素の濃淡レベルや水素濃度を検出するようにすれば、空燃比センサと空燃比制御手段を併せて用い、制御に特徴を持たせて水素の濃淡レベルや水素濃度に関する情報を検出するようにしたので、安価に水素の濃淡レベルや水素濃度に関する情報を検出することができる。また、高酸素濃度応答時間と低酸素濃度応答時間との差異(非対称性)に注目して水素の濃淡レベルや水素濃度を検出するようにしたので、温度や個体差等による検出誤差を少なくして水素の濃淡レベルや水素濃度に関する情報を検出することができる。
【実施例2】
【0065】
以下の順番で本発明の水素検出装置を適用した気筒間ばらつきの問題が発生したかどうかを判定する内燃機関の異常判定装置について説明する。
1.気筒間ばらつきと水素の発生について
2.水素検出装置を利用した判定方法(フローチャート)
【0066】
1.気筒間ばらつきと水素の発生について
排気エミッション向上のために、内燃機関の異常を早期に検出されることが望まれている。内燃機関の異常の一つに内燃機関の燃焼異常が挙げられる。この一つの原因として、複数の気筒を有する内燃機関において、ある気筒において燃料噴射量や吸入空気が何らかの原因で多くなる、あるいは少なくなるためである。この気筒間で燃焼のばらつきが生じる問題を気筒間ばらつきの問題と言う。気筒別の空燃比と目標空燃比との偏差を気筒間ばらつき(%)と言う。
【0067】
気筒間ばらつきの問題が発生すると、燃費の悪化や排気エミッションが悪化するという問題を生じる。特開2006−152845号公報には各気筒の空燃比を推定する技術が開示されている。しかし、この方法で正確に各気筒の空燃比を測定するためには、排気管の集合部に空燃比センサを設置しなければならない。排気管とセンサの取り付け位置が制限されるという問題や、排気管の自由な設計を妨げるという問題がある。
【0068】
図7に示すとおり、目標空燃比がリッチ空燃比のときに機関の燃焼によって水素が発生する。このことを説明する。理論空燃比より多い燃料が噴射されるために、燃焼室で水HO、一酸化炭素CO、未燃炭化水素HC等が発生する。燃焼室や排気マニホルドは高温であって還元反応が促進される環境下にあるので、排気管中の排気ガスはこれらの成分が反応して、
O+CO→CO+H (水性ガスシフト反応)
HC+2HO→CO+(5/2)H (水蒸気改質)
等の水性ガス還元反応が生じる。よって水素が発生する。この反応は、高温ほど起こりやすく、また排気空燃比がリッチであるほど、すなわち未燃炭化水素HC、一酸化炭素CO成分が多いほど起こりやすい。従って、リッチかつ高温になるほど排気中の水素濃度が高くなる。よって、リッチ空燃比のときには水素H、メタンCH、炭化水素HC、二酸化炭素CO等が主成分となる。
【0069】
そこで、気筒間ばらつきが発生すると、ある気筒では排気ガスが意図せず目標空燃比よりリッチな空燃比となる。すると水素が多く発生する。この気筒から出た排気ガスと他の気筒から出た排気ガスが集合部37で集合されても、集合部37の下流に水素が流入する。なぜなら、この水素と反応して相殺するガス成分は他の気筒で発生はしないためである。こうして、気筒間ばらつきが生じると排気管では水素の濃度が高くなる(図10参照)。なお、気筒間ばらつきが発生すると、ある気筒では排気ガスが目標空燃比よりリッチな空燃比となり、他の気筒では排気ガスがリーンな空燃比となり、集合部37より下流では、リッチ排気ガスとリーン排気ガスとが合流し、酸素濃度に注目すれば目標空燃比であることが検出される場合がある。そのため、集合部37より下流の空燃比センサで空燃比(酸素濃度)を検出するようにする判定方法では、気筒間ばらつきが発生していることを判定できない。そこで、本実施例では、上流側空燃比センサ10と空燃比制御手段とを用い、実施例1に記載の技術で排気管の水素を検出する。
【0070】
2.水素検出装置を利用した判定方法(フローチャート)
本実施例の内燃機関の異常判定装置は、上流側空燃比センサ10を用いて排気ガス中の水素を検出する。以下、図15を使って本実施例の内燃機関の異常判定装置による気筒間ばらつき判定についてフローチャートを用いて順を追って説明する。この気筒間ばらつき判定ルーチンはECU1によって実行される。ECU1はこのルーチンを例えば10分ごとに実行する。
【0071】
まず、S11では下記の条件を全て満たしているかどうかが判定される。全て条件を満たしていればS12へ進み、一つでも満たしていなければ、このルーチンを終了する。
(1)エンジンが暖気完了していること。
(2)空燃比センサが暖気完了していること。
このステップで内燃機関の暖機が完了し、かつ空燃比センサが活性化温度に達していて排気ガスの成分を検出できる状態にあるか否かを判断することで、誤った判定をしてしまうことを防いでいる。
この他、下記の条件を加えてもよい。
(3)空燃比センサが異常(故障)と判定されていないこと。
【0072】
S12では、気筒間ばらつき検出条件成立か否かを判断する。これは、定常運転状態の条件と燃料カットが行われていないという条件とが満たされているかどうかを判断する。この二つの条件がともに成立していればS13に進み、一つでも成立していなければ、このルーチンを終了する。このステップで気筒間ばらつきが発生していることが検出できない条件であることがあらかじめ分かっている場合には、気筒間ばらつきの判定を行わない。
【0073】
S13及びS14はS2及びS3とそれぞれ同じであるので説明を省略する。図16、図17のとおり、空燃比制御手段がリーンからリッチ、リッチからリーンへの切り替えを行う。この図のように、空燃比制御手段はこの切り替えを連続して行い、検出部はこのT1及びT2の計測を連続して行うことが好ましい。
【0074】
S15では、T1/T2>Kか否かが判定される。この条件が成立する場合はS16に進み気筒間ばらつきが発生したと判定して、MILランプ22を点灯させる。成立しない場合はこのルーチンを終了する。このKは気筒間ばらつきダイアグ判定値としてあらかじめ決められた値である。T1/T2は実施例1におけるT(div)に相当し、水素の濃淡レベルに相当する。つまり、S15では、水素の濃淡レベルが所定値以上であるか否かを判定している。このステップでは、水素の濃淡レベルが所定値以上であれば気筒間ばらつきが発生していると判定している。
【0075】
検出部はフローチャートのうちS13及びS14における計測とS15におけるT1/T2の算出とを実行する。S15における判定は異常判定手段が実行する部分である。ECU1は空燃比制御手段、検出部及び異常判定手段を備え、ECU1と上流側空燃比センサ10とで内燃機関の異常判定装置が実現される。
【0076】
気筒間ばらつきダイアグ判定値Kはエンジン回転数、負荷のマップで与えてもよい。空燃比センサの設置場所は排気ガスが検出できる場所であればどこにあってもよい。このように、空燃比センサの設置場所に制約がなく、排気管の設計に制約が生じるということもない。そのため排気管の設計が自由に行える。好ましくは、排気浄化触媒の上流で集合部37より下流に空燃比センサを設置することがよい。言い換えると、上流側空燃比センサ10を利用するとよい。更に好ましくは排気浄化触媒の上流近傍で凝縮水の被水を避けられる場所に設置することがよい。なぜなら、空燃比センサが凝縮水で被水してしまうと、空燃比センサに異常をきたすおそれがあるからである。
【0077】
このようにして、気筒間ばらつきを判定すると、実施例1の技術を使って水素の濃淡レベルに関する情報を検出するため、安価で温度や空燃比センサの個体差等による検出誤差が少ない気筒間ばらつきの判定をすることができる。また、空燃比センサの設置場所に制限がなく、排気管の設計が自由に行える。更に空燃比センサは集合部より下流に設置することで凝縮水の被水を避けることができ、空燃比センサに異常が発生することを避けることができる。
【実施例3】
【0078】
以下の順番で本発明の水素検出装置を適用した排気浄化触媒劣化が発生したかどうかを判定する内燃機関の異常判定装置について説明する。
1.触媒劣化と水性ガスシフト反応
2.水素検出装置を利用した判定方法(フローチャート)
【0079】
1.触媒劣化と水性ガスシフト反応
内燃機関の異常の一つである内燃機関の排気浄化系の異常に、排気浄化触媒劣化が挙げられる。以下、触媒劣化の問題と言う。排気浄化触媒は、未燃炭化水素HC、酸化窒素NOや一酸化炭素COを吸着吸収、放出還元して浄化をしている。この排気浄化触媒が劣化をして、排気ガスを正常に浄化できない場合は、大気中に未浄化排気ガスが放出されるおそれがあり排気エミッションの悪化につながる。
【0080】
これまで、排気浄化触媒の劣化を判定する手法として、酸素吸蔵量(SOC)を推定する技術が知られているが、近年の研究では貴金属の使用を抑えた排気浄化触媒が開発されている。すると、酸素吸蔵量と排気浄化触媒の劣化との相関関係が弱くなるために、酸素吸蔵量を検出しない別の方法で排気浄化触媒の劣化を判定する方法を確立する必要がある。排気浄化触媒は劣化すると、排気浄化触媒中の貴金属が脱落するなどして、活性度が落ちるために、還元性能が低下する。すると、水性ガスシフト反応(HO+CO→CO+H)の反応性が低下するため、排気浄化触媒の下流で水素の発生が少なくなるという特徴がある。つまり、新しい排気浄化触媒は水素を大量に発生させ、劣化した排気浄化触媒は少量の水素を発生させる。排気浄化触媒下流の水素を検出することで、貴金属の使用を抑えた排気浄化触媒の劣化判定を、酸素吸蔵量を基に判定するより正確に行うことができる。特開2003−120383号公報には触媒の下流に水素センサと排気空燃比センサを設置する技術が開示されている。しかし、水素センサを異常判定のために設けることはコスト上問題がある。そこで、本実施例では、下流側空燃比センサ11と空燃比制御手段とを用い、実施例1に記載の技術で排気浄化触媒下流の水素を検出する。
【0081】
2.水素検出装置を利用した判定方法(フローチャート)
本実施例の内燃機関の異常判定装置は、下流側空燃比センサ11を用いて排気ガス中の水素を検出する。以下、図18を使って本実施例の内燃機関の異常判定装置による排気浄化触媒劣化判定についてフローチャートを用いて順を追って説明する。この触媒劣化ルーチンはECU1によって実行される。ECU1はこのルーチンを例えば10分ごとに実行する。
【0082】
まず、S21では下記の条件を全て満たしているかどうかが判定される。全て条件を満たしていればS22へ進み、一つでも満たしていなければ、このルーチンを終了する。
(1)エンジンが暖気完了していること。
(2)空燃比センサが暖気完了していること。
(3)排気浄化触媒が暖気完了していること。
このステップで内燃機関の暖機が完了し、かつ空燃比センサが活性化温度に達していて排気ガスの成分を検出できる状態にあるか否かを判断することで、誤った判定をしてしまうことを防いでいる。この他、下記の条件を加えてもよい。
(4)空燃比センサが異常(故障)と判定されていないこと。
【0083】
S22では触媒劣化検出条件か否かを判定する。これは、定常運転状態の条件や燃料カットが行われていないという条件が満たされているかどうかを判断する。この条件が成立していればS23に進み、成立していなければ、このルーチンを終了する。このステップで排気浄化触媒の劣化が発生していることが検出できない条件であることがあらかじめ分かっている場合には、排気浄化触媒の劣化判定を行わない。
【0084】
S23及びS24はS13及びS14とそれぞれ同じであるので説明を省略する。図19、図20のとおり、空燃比制御手段がリーンからリッチ、リッチからリーンへの切り替えを行う。この図のように、空燃比制御手段はこの切り替えを連続して行い、検出部はこのT1及びT2の計測を連続して行うことが好ましい。
【0085】
S25では、T1/T2<K´か否かが判定される。この条件が成立する場合はS26に進み排気浄化触媒の劣化が発生したと判定して、MILランプ22を点灯させる。成立しない場合はこのルーチンを終了する。このKは触媒劣化判定値としてあらかじめ決められた値である。T1/T2は実施例1におけるT(div)に相当し、水素の濃淡レベルに相当する。つまり、S25では、水素の濃淡レベルが所定値以下であるか否かを判定している。このステップでは、水素の濃淡レベルが所定値以下であれば触媒劣化していると判定している。
【0086】
検出部はフローチャートのうちS23及びS24における計測とS25におけるT1/T2の算出を実行する。S25における判定は異常判定手段が実行する部分である。ECU1は空燃比制御手段、検出部及び異常判定手段を備え、ECU1と下流側空燃比センサ11とで内燃機関の異常判定装置が実現される。
【0087】
触媒劣化判定値K´はエンジン回転数や負荷のマップで与えてもよい。空燃比センサの設置場所は排気浄化触媒の下流の排気ガスが検出できる場所であればどこにあってもよい。
【0088】
なお、本実施例では酸素濃度制御装置を実現するものとして空燃比制御手段を利用した。しかし、本実施例の他の様態として排気浄化触媒上流に二次空気を流入させるシステムの内燃機関にあっては、排気浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を制御する装置である二次空気制御装置をもって酸素濃度制御装置としてもよい。
【0089】
このようにして、排気浄化触媒の劣化を判定すると、実施例1の技術を使って水素の濃淡レベルに関する情報を検出するため、安価で空燃比センサの温度や個体差等による検出誤差が少ない排気浄化触媒の劣化判定をすることができる。
【0090】
なお、本発明の水素検出装置は内燃機関の異常判定装置における利用に限定されるものではない。本発明の水素検出装置を備え、被検出ガスは、内燃機関から排出される排気ガスとし、検出部が検出した水素の濃淡レベルに関する情報に基づいて内燃機関を制御する制御手段を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置を提供することができる。空燃比制御手段が空燃比フィードバック制御を実行中に、水素の濃淡レベルを検出してもよい。しかし、空燃比制御手段は空燃比フィードバック制御をいったん中止し、水素の濃淡レベルを検出する目的で、目標空燃比を制御して、検出部が水素の濃淡レベルを検出すこととしてもよい。空燃比制御手段は空燃比フィードバック制御をいったん中止し、このように水素の濃淡レベルを検出すれば、上述のとおり、より正確に水素の濃淡レベルを検出できるので、内燃機関の制御をより正確に達成できる。
【0091】
なお、本発明の水素検出装置は内燃機関における利用に限定されるものではない。起電力が基準酸素濃度付近でZ特性を示し、酸素分圧に基づいて被検出ガスの酸素濃度を検出するセンサと、センサに流入する被検出ガスの酸素濃度を基準酸素濃度と比して高濃度、低濃度に制御する酸素濃度制御手段を備えて、高酸素濃度高応答時間と低酸素濃度応答時間とを計測できれば、水素の濃淡レベルを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】内燃機関の全体構成を示す模式的な側面図である。
【図2】複数の気筒を持つ内燃機関の全体構成を上から見た模式図である。
【図3】センサ素子を中心に空燃比センサ示す模式図である。
【図4】空燃比センサの動作原理を示す模式図である。
【図5】空燃比制御手段が目標空燃比をリッチからリーンに切り替えた場合、空燃比センサ外側電極近傍における各成分の濃度の時系列変化とOセンサの電圧の時系列変化とを説明する図である。
【図6】空燃比制御手段が目標空燃比をリーンからリッチに切り替えた場合、空燃比センサ外側電極近傍における各成分の濃度の時系列変化とOセンサの電圧の時系列変化とを説明する図である。
【図7】目標空燃比がリッチ及びリーンの場合に燃焼によって生成する水素の量を示した図である。
【図8】拡散係数を示した図と表である。
【図9】気筒間ばらつき有無の場合で空燃比センサの応答時間を示した図である。
【図10】気筒間ばらつきの程度(%)と水素濃度の関係を示した図である。
【図11】T(div)、T(dif)と水素濃度との関係を示した図である。
【図12】空燃比制御手段が目標空燃比をリッチからリーンに切り替えた場合、空燃比センサ外側電極近傍における各成分の濃度の時系列変化とOセンサの電圧の時系列変化とを説明する図である。
【図13】空燃比制御手段が目標空燃比をリーンからリッチに切り替えた場合、空燃比センサ外側電極近傍における各成分の濃度の時系列変化とOセンサの電圧の時系列変化とを説明する図である。
【図14】実施例1に記載の水素濃度検出ルーチンを示した図である。
【図15】実施例2に記載の気筒間ばらつき判定ルーチンを示した図である。
【図16】実施例2に記載の気筒間ばらつきが大きい場合と小さい場合とでA/Fセンサで検出される電流の応答が変化することを説明した図である。
【図17】実施例2に記載の気筒間ばらつきが大きい場合と小さい場合とでOセンサで検出される電圧の応答が変化することを説明した図である。
【図18】実施例3に記載の排気浄化触媒劣化判定ルーチンを示した図である。
【図19】実施例3に記載の排気浄化触媒劣化が大きい場合と小さい場合とでA/Fセンサで検出される電流の応答が変化することを説明した図である。
【図20】実施例3に記載の排気浄化触媒劣化が大きい場合と小さい場合とでOセンサで検出される電圧の応答が変化することを説明した図である。
【図21】T1とT2からT(Map)を求めるためのマップである。
【符号の説明】
【0093】
1 ECU
10 上流側空燃比センサ
11 下流側空燃比センサ
13 触媒コンバータ
14 排気浄化触媒
15 排気管
20 スロットルバルブ
21 燃料噴射弁
22 MILランプ
23 エアフロメーター
24 スロットルセンサ
36 排気マニホルド
37 集合部
101 内側電極
102 酸素イオン導電性固体電解質
103 外側電極
104 多孔質層
107 通気孔
108 カバー
109 センサ素子
110 大気室
211、212、213、214 燃料噴射弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出ガスの酸素濃度を検出するセンサと、
前記センサに流入する前記被検出ガスの酸素濃度を制御する酸素濃度制御手段と、
前記酸素濃度制御手段が基準酸素濃度ガスに比して高濃度酸素ガス供給から低濃度酸素ガス供給へ切り替えた場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間である低酸素濃度応答時間、及び前記酸素濃度制御手段が前記基準酸素濃度ガスに比して低濃度酸素ガス供給から高濃度酸素ガス供給へ切り替えた場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間である高酸素濃度応答時間に基づいて水素の濃淡レベルに関する情報を検出する検出部と、
を備えたことを特徴とする水素検出装置。
【請求項2】
前記被検出ガスは、内燃機関から排出される排気ガスとし、
前記酸素濃度制御手段は、目標空燃比を制御する空燃比制御手段とし、
前記低酸素濃度応答時間は、前記空燃比制御手段が目標空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比へ切り替えた場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間とし、
前記高酸素濃度応答時間は、前記空燃比制御手段が目標空燃比をリッチ空燃比からリーン空燃比へ切り替えた場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間とする、
ことを特徴とする請求項1記載の水素検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記高酸素濃度応答時間と前記低酸素濃度応答時間との比もしくは差に基づいて水素の濃淡レベルに関する情報を検出する、
ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の水素検出装置。
【請求項4】
前記センサは、
被検出ガスに晒される外側電極と、
大気に晒される内側電極と、
前記外側電極と前記内側電極とに挟まれた酸素イオン導電性電解質と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水素検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の水素検出装置を備え、
前記被検出ガスは、内燃機関から排出される排気ガスとし、
前記検出部が検出した前記水素の濃淡レベルに関する情報に基づいて内燃機関の異常を判定する異常判定手段を備えたことを特徴とする内燃機関の異常判定装置。
【請求項6】
前記内燃機関は複数の気筒を備え、
前記異常判定手段は、前記水素検出装置が検出した前記水素の濃淡レベルが所定値以上に高い場合には、気筒間ばらつきが発生したと判定する、
ことを特徴とする請求項5記載の内燃機関の異常判定装置。
【請求項7】
前記センサは、複数の気筒に接続された排気管の集合部、もしくは該集合部より下流の排気ガスの酸素濃度を検出する、
ことを特徴とする請求項6記載の内燃機関の異常判定装置。
【請求項8】
前記センサは、排気浄化触媒下流の排気ガスの酸素濃度を検出し、
前記異常判定手段は、前記水素検出装置が検出した前記水素の濃淡レベルが所定値以下に低い場合には、排気浄化触媒が劣化したと判定する、
ことを特徴とする請求項5記載の内燃機関の異常判定装置。
【請求項9】
酸素濃度を検出するセンサに流入する被検出ガスの酸素濃度が基準酸素濃度に比して高濃度から低濃度へ切り替わった場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間である低酸素濃度応答時間を取得するステップと、
前記センサに流入する前記被検出ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度に比して低濃度から高濃度へ切り替わった場合に、該切り替えがセンサ出力に反映されるまでの応答時間である高酸素濃度応答時間を取得するステップと、
前記高酸素濃度応答時間及び前記低酸素濃度応答時間に基づいて水素の濃淡レベルに関する情報を検出するステップと、
を備えたことを特徴とする水素検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−13967(P2009−13967A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180283(P2007−180283)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】