説明

永久磁石発電機/電動機用電力変換システム

【課題】主回路や制御回路の構成が簡単で汎用性に富むと共に、永久磁石発電機/電動機の過熱を防ぐことができる永久磁石発電機/電動機用電力変換システムを提供する。
【解決手段】永久磁石発電機/電動機23とダイオードコンバータ装置31の直流出力側との間に、半導体スイッチング素子からなる電力変換補償装置38を接続し、前記発電機/電動機23の低速回転時には、電力変換補償装置38により前記発電機/電動機23を電動機動作させ、前記発電機/電動機23の高速回転時には、発電機動作する前記発電機/電動機23の出力電流に含まれる高調波成分を、アクティブフィルタとして運転される電力変換補償装置38の出力電流により補償して低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばターボチャージャーにより駆動される永久磁石発電機/電動機用の電力変換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、ターボチャージャーを備えた発電システムの構成図である。
図4において、ターボチャージャー24は、ディーゼルエンジン10から廃棄される排気ガスを利用してタービン21を高速回転させ、その回転力により遠心式圧縮機22を駆動して圧縮空気をディーゼルエンジン10に送り込む。これにより、ディーゼルエンジン10では、従来廃棄されていたエネルギーを回収しつつエンジン本来の排気量を超える混合気を吸入し燃焼させることができる。その結果、熱効率が向上して燃料消費率が低減されるほか、排気ガスの有害成分を減少させることが可能である。
【0003】
なお、ターボチャージャー24の回転軸は永久磁石発電機/電動機23の回転子に直結されており、この永久磁石発電機/電動機23を電動機として動作させて低速時のターボチャージャー24の過給をアシストしたり、永久磁石発電機/電動機23を発電機として動作させて排気ガスのエネルギーから電力を取出すことが可能となっている。
【0004】
図5は、永久磁石発電機/電動機23による発電電力を電源系統に供給する電力変換システムの従来技術を示す構成図である。
永久磁石発電機/電動機23の交流出力電圧は、ダイオードをブリッジ接続したコンバータ装置(以下、ダイオードコンバータ装置ともいう)31により整流されて直流電圧に変換され、平滑コンデンサ32を介してインバータ装置33により所定の大きさ及び周波数の交流電圧に変換される。インバータ装置33から出力された交流電圧は、交流リアクトル34を介してフィルタ回路35により高調波成分が除去され、電源系統に供給される。
図5では交流回路を単線図にて示してあるが、コンバータ装置31の交流側及びインバータ装置33の交流側は、例えば三相回路となっている。
【0005】
図5の従来技術では、永久磁石発電機/電動機23にダイオードコンバータ装置31が接続されるので、永久磁石発電機/電動機23の出力電流は、原理上、高調波成分を含む。この高調波電流は、永久磁石発電機/電動機23のステータ及びロータの鉄損である渦電流損を発生させる。その結果、永久磁石が発熱して高温になり、最悪の場合には永久減磁されるため、高調波電流を低減することが求められていた。
【0006】
なお、特許文献1には、図6に示すように、交流電源100と直流中間コンデンサ106との間に、ダイオード整流器101、チョッパ用スイッチング素子102及びダイオード105a,105bからなる整流一石型回路103と、半導体電力変換装置からなるアクティブフィルタ104とを並列に接続し、スイッチング素子102を制御することでアクティブフィルタ104による補償電流のピーク値を減少させつつダイオード整流器101による高調波を低減させるようにした並列型AC−DC変換器が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、図7に示すように、ガスタービン201,202、発電機203,204、周波数変換装置205,206及び始動用制御装置207,208を備えた発電設備において、一方の周波数変換装置206にアクティブフィルタ209を接続し、電流検出器212により検出した他方の周波数変換装置205の高調波電流成分に応じて周波数変換装置206内のインバータINVを制御することにより、前記高調波電流成分を打ち消すような補償電流を出力して発電機203の始動時における発熱を防止するようにした発電設備の始動装置が記載されている。なお、図7において、210はアクティブフィルタ制御装置、211は負荷である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−248383号公報(段落[0010]〜[0022]、図1〜図4等)
【特許文献2】特開平6−261454号公報(段落[0022]〜[0036]、図1〜図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5に示した如く、永久磁石発電機/電動機23にダイオードコンバータ装置31が接続された電力変換システムでは、永久磁石発電機/電動機23の出力電流に含まれる高調波成分に起因して永久磁石が発熱するという問題がある。
【0010】
特許文献1に係る従来技術によれば、スイッチング素子102の制御により、ダイオード整流器101の入力電流を方形波状に制御してアクティブフィルタ104による補償電流のピーク値を小さく抑え、アクティブフィルタ104の容量を低減させることができる。しかし、アクティブフィルタ104の制御回路に加えて整流一石型回路103内のスイッチング素子102の制御回路が必要であり、回路構成やソフトウェアが複雑になってコスト高になるという問題があった。
また、特許文献2に係る従来技術は、少なくとも二組のガスタービン発電機と周波数変換装置とを備えた発電設備を対象としており、汎用性に乏しい。
【0011】
そこで、本発明の解決課題は、主回路や制御回路の構成が簡単で汎用性に富むと共に、永久磁石発電機/電動機の過熱を防ぐことができる永久磁石発電機/電動機用電力変換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、永久磁石発電機/電動機の交流出力電圧をダイオードコンバータ装置にて直流電圧に変換し、この直流電圧をインバータ装置により所定の大きさ及び周波数の交流電圧に変換して電源系統に連系する永久磁石発電機/電動機電力変換装置において、
前記永久磁石発電機/電動機と前記ダイオードコンバータ装置の直流出力側との間に、半導体スイッチング素子からなる電力変換補償装置を接続し、
前記永久磁石発電機/電動機の低速回転時には、前記電力変換補償装置により前記永久磁石発電機/電動機を電動機動作させ、
前記永久磁石発電機/電動機の高速回転時には、発電機動作する前記永久磁石発電機/電動機の出力電流に含まれる高調波成分を、アクティブフィルタとして運転される前記電力変換補償装置の出力電流により打ち消して低減するものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、永久磁石発電機/電動機の交流出力電圧をコンバータ装置にて直流電圧に変換し、この直流電圧をインバータ装置により所定の大きさ及び周波数の交流電圧に変換して電源系統に連系する永久磁石発電機/電動機用電力変換システムにおいて、
前記コンバータ装置及びインバータ装置を有する電力変換部を二組構成してこれら第1,第2の電力変換部を前記永久磁石発電機/電動機の固定子巻線と電源系統との間に並列二重化して接続し、かつ、前記コンバータ装置及びインバータ装置を半導体スイッチング素子からなる自励式の半導体電力変換装置により構成し、
前記第1,第2の電力変換部を構成する前記コンバータ装置の相互間及び前記インバータ装置の相互間でキャリアの位相をそれぞれ反転し、前記永久磁石発電機/電動機の出力電流に含まれる高調波成分を低減するものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、永久磁石発電機/電動機とダイオードコンバータ装置の直流側との間に接続された電力変換補償装置をアクティブフィルタとして運転することにより、永久磁石発電機/電動機に流れる高調波電流を抑制することができる。
請求項2に係る発明によれば、並列二重化された第1,第2の電力変換部を構成する自励式のコンバータ装置及びインバータ装置の相互間で、キャリアの位相をそれぞれ反転させることにより、永久磁石発電機/電動機及び電源系統に流れる高調波電流を更に抑制することが可能である。
これにより、本発明によれば、特許文献1,2に記載された従来技術に比べて主回路や制御回路の構成が簡単で汎用性に富み、永久磁石発電機/電動機の過熱や永久減磁を防止可能な電力変換システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態を示す電力変換システムの構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す電力変換システムの構成図である。
【図3】第2実施形態の効果を説明するための電圧、電流の波形図である。
【図4】ターボチャージャーを備えた発電システムの構成図である。
【図5】永久磁石発電機/電動機用電力変換システムの従来技術を示す構成図である。
【図6】特許文献1に記載された従来技術の構成図である。
【図7】特許文献2に記載された従来技術の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示す電力変換システムの構成図であり、ターボチャージャー(図示せず)の遠心式圧縮機に回転子が直結された永久磁石発電機/電動機23の固定子巻線には、交流リアクトル36を介してダイオードコンバータ装置31の交流端子が接続されている。ここで、ダイオードコンバータ装置31は、ダイオードをブリッジ接続して構成されている。
【0017】
ダイオードコンバータ装置31の直流端子には、直流中間コンデンサ32を介してインバータ装置33の直流端子が接続されており、インバータ装置33の交流端子は、交流リアクトル34及びフィルタ回路35を介して電源系統に接続されている。インバータ装置33は、還流ダイオードを逆並列に接続したIGBT等の自己消弧形半導体スイッチング素子をブリッジ接続して構成されている。
なお、図1では、永久磁石発電機/電動機23の交流回路及びインバータ装置33の交流回路を単線図にて示してあり、これらの交流回路は例えば三相交流回路からなるものである。
【0018】
永久磁石発電機/電動機23の固定子巻線には、交流リアクトル37を介して電力変換補償装置38の交流端子が接続されており、その直流端子は直流中間コンデンサ32の両端に接続されている。すなわち、コンバータ装置31及び電力変換補償装置38は、永久磁石発電機/電動機23と直流中間コンデンサ32との間に並列に接続されている。
電力変換補償装置38は、インバータ装置33と同様に、還流ダイオードが逆並列に接続されたIGBT等の自己消弧形半導体スイッチング素子をブリッジ接続して構成されている。
【0019】
次に、この実施形態の動作を説明する。
永久磁石発電機/電動機23の低速回転領域(例えば、定格回転数の50[%]未満)では、電力変換補償装置38をインバータとして動作させる。これにより、電力変換補償装置38は、直流中間コンデンサ32の直流電圧を交流電圧に変換して永久磁石発電機/電動機23に供給し、電動機運転させてその回転をアシストする。これにより、例えば図4に示したターボチャージャー24の圧縮機22の運転を助勢し、過給をアシストすることができる。
【0020】
また、永久磁石発電機/電動機23の高速回転領域(例えば、定格回転数の50[%]以上)では、発電機として運転されている永久磁石発電機/電動機23の交流出力電圧をコンバータ装置31及びインバータ装置33により交流/直流/交流変換して所定の大きさ及び周波数の交流電圧に変換し、交流リアクトル34及びフィルタ回路35を介して電源系統に供給する。
これと同時に、永久磁石発電機/電動機23の出力電流に含まれる高調波成分を電流検出器(図示せず)により検出し、電力変換補償装置38をアクティブフィルタとして動作させる。これにより、電力変換補償装置38から永久磁石発電機/電動機23の交流側に補償電流を供給し、上記高調波成分を打ち消して低減させる。
上記動作により、永久磁石発電機/電動機23のステータ及びロータの鉄損である渦電流損を減少させ、永久磁石の過熱や永久減磁を防止することができる。
【0021】
次に、図2は、本発明の第2実施形態を示す電力変換システムの構成図である。
図2において、永久磁石発電機/電動機23の固定子巻線には、交流リアクトル36a、コンバータ装置38a、直流中間コンデンサ32a、インバータ装置33a、交流リアクトル34a、フィルタ回路35aからなる第1の電力変換部41と、同じく交流リアクトル36b、コンバータ装置38b、直流中間コンデンサ32b、インバータ装置33b、交流リアクトル34b、フィルタ回路35bからなる第2の電力変換部42とが並列に接続され、フィルタ回路35a,35bの出力側は変圧器39を介して電源系統に接続されている。すなわち、永久磁石発電機/電動機23と変圧器39との間で、同一構成の第1,第2の電力変換部41,42が並列二重化されている。
なお、変圧器39は、フィルタ回路35a,35b側がデルタ結線され、電源系統側がスター結線されている。
【0022】
コンバータ装置38a,38bは互いに同一の構成であり、例えば還流ダイオードが逆並列に接続されたIGBT等の自己消弧形半導体スイッチング素子をブリッジ接続してなる自励式電力変換装置により構成されている。また、インバータ装置33a,33bの構成は、図1におけるインバータ装置33と同一である。
その他、第1,第2の電力変換部41,42における受動素子の回路定数は、互いに等しくなっている。
【0023】
コンバータ装置38a,38b及びインバータ装置33a,33bはいずれもPWM制御されるものであり、コンバータ装置38a,38bに対するキャリアは位相を互いに反転させ(キャリアの位相を電気角で180度ずらす)、また、インバータ装置33a,33bに対するキャリアも位相を互いに反転させてある。
【0024】
以下、この実施形態の動作を説明する。
第1,第2の電力変換部41,42は、永久磁石発電機/電動機23の出力電圧をそれぞれ交流/直流/交流変換する。インバータ装置33a,33bの交流出力電圧は、交流リアクトル34a,34b及びフィルタ回路35a,35bを介して変圧器39により重畳され、電源系統に供給される。
このとき、自励式電力変換装置であるコンバータ装置38a,38bを並列二重化して運転し、更にこれらのキャリアの位相を互いに反転させることにより、永久磁石発電機/電動機23の出力電流に含まれる高調波成分を低減することができる。なお、自励式半導体電力変換装置を用いた高調波電流の補償方法は、例えば特開2001−136663号公報、同2002−374681号公報に開示されている。
【0025】
図3(a)はコンバータ装置38a,38bのキャリアが互いに同相の場合の交流電圧波形、交流電流波形であり、図3(b)は同じくキャリアが互いに反転している場合の交流電圧波形、交流電流波形である。
コンバータ装置38a,38bのキャリアを反転させることにより、三相各相について見ると、例えばコンバータ装置38a側の一相の上アームのスイッチング素子がオンのとき、コンバータ装置38b側の同一相の下アームのスイッチング素子がオンする。その結果、永久磁石発電機/電動機23の出力側(交流側)の電流が平均化され、高調波成分が相殺されて低減されることになる。この点は、図3(b)の電流波形の方が図3(a)よりもリプル成分が少なくなっていることからも明らかである。
インバータ装置33a,33bに関しても同様の原理により、キャリアを互いに反転させることで電源系統側の高調波成分を低減することができる。
【0026】
以上のように第1または第2実施形態によれば、電力変換補償装置38またはコンバータ装置38a,38bの高調波抑制機能により、永久磁石発電機/電動機23の固定子巻線に流れる高調波成分を低減させ、渦電流損を減少させて永久磁石の過熱や永久減磁を防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
10:ディーゼルエンジン
20:発電システム
21:タービン
22:遠心式圧縮機
23:永久磁石発電機/電動機
24:ターボチャージャー
31:コンバータ装置
32:直流中間コンデンサ
32a,32b:直流中間コンデンサ
33:インバータ装置
33a,33b:インバータ装置
34:交流リアクトル
34a,34b:交流リアクトル
35:フィルタ回路
35a,35b:フィルタ回路
36,37:交流リアクトル
36a,36b:交流リアクトル
38:電力変換補償装置
38a,38b:コンバータ装置
39:変圧器
41,42:電力変換部
100:交流電源
101:ダイオード整流器
102:チョッパ用スイッチング素子
103:整流一石型回路
104:アクティブフィルタ
105a,105b:ダイオード
106:直流中間コンデンサ
201,202:ガスタービン
203,204:発電機
205,206:周波数変換装置
207,208:始動用制御装置
209:アクティブフィルタ
210:アクティブフィルタ制御装置
211:負荷
212:電流検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石発電機/電動機の交流出力電圧をダイオードコンバータ装置にて直流電圧に変換し、この直流電圧をインバータ装置により所定の大きさ及び周波数の交流電圧に変換して電源系統に連系する永久磁石発電機/電動機用電力変換システムにおいて、
前記永久磁石発電機/電動機と前記ダイオードコンバータ装置の直流出力側との間に、半導体スイッチング素子からなる電力変換補償装置を接続し、
前記永久磁石発電機/電動機の低速回転時には、前記電力変換補償装置により前記永久磁石発電機/電動機を電動機動作させ、
前記永久磁石発電機/電動機の高速回転時には、発電機動作する前記永久磁石発電機/電動機の出力電流に含まれる高調波成分を、アクティブフィルタとして運転される前記電力変換補償装置の出力電流により打ち消して低減することを特徴とする永久磁石発電機/電動機用電力変換システム。
【請求項2】
永久磁石発電機/電動機の交流出力電圧をコンバータ装置にて直流電圧に変換し、この直流電圧をインバータ装置により所定の大きさ及び周波数の交流電圧に変換して電源系統に連系する永久磁石発電機/電動機用電力変換システムにおいて、
前記コンバータ装置及びインバータ装置を有する電力変換部を二組構成してこれら第1,第2の電力変換部を前記永久磁石発電機/電動機の固定子巻線と電源系統との間に並列二重化して接続し、かつ、前記コンバータ装置及びインバータ装置を半導体スイッチング素子からなる自励式の半導体電力変換装置により構成し、
前記第1,第2の電力変換部を構成する前記コンバータ装置の相互間及び前記インバータ装置の相互間でキャリアの位相をそれぞれ反転し、前記永久磁石発電機/電動機の出力電流に含まれる高調波成分を低減することを特徴とする永久磁石発電機/電動機用電力変換システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−239346(P2012−239346A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108156(P2011−108156)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】