説明

油圧制御装置

【課題】電磁弁にポンプとしての機能を一体化して全体の小型化を図る。
【解決手段】スリーブ22とスプール24とによりクラッチC2のクラッチ圧を調圧するためのリニアソレノイドバルブとして機能する調圧バルブ部40を形成すると共にクラッチC1に作動油を圧送する電磁ポンプとして機能するポンプ部60を形成し、調圧バルブ部40とポンプ部60とを一つのソレノイド部30で駆動する。ポンプ部60は、ソレノイド部30をオンからオフしてスプリング28の付勢力によりスプール24をソレノイド部30側に移動させることによりポンプ室70内を負圧として作動油を吸入し、ソレノイド部30をオフからオンしてソレノイド部30の推力によりスプール24をエンドプレート26側に移動させることによりポンプ室70内を正圧として吸入した作動油を吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁弁装置としては、作動油が流出入する各種ポートとして入力ポートと出力ポートとドレンポートとフィードバックポートとが形成された円柱状のバルブ室を有するスリーブと、バルブ室に挿入される軸状部材であってバルブ室の内径と略同一の外径の円柱形状の複数のランドとランドの外径よりも小さな外径の円柱形状で各ポート間を連通させる連通部とを有するスプールと、スプールを軸方向に移動させるソレノイドとを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電磁コイルの励磁と非励磁との繰り返しにより液体を圧送する電磁ポンプも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この電磁ポンプでは、ポンプ室を形成するピストンを弾発力により押圧するばね部材が取り付けられると共にばね部材の弾発力と逆向きに吸引力を発生させる電磁コイルが配置されており、電磁コイルを非励磁(OFF)とすることによりばね部材の弾発力でピストンを移動させることにより液体を吸引し、電磁コイルを励磁(ON)することにより電磁コイルの吸引力でピストンを移動させることにより吸引した液体を吐出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−176895号公報
【特許文献2】特開2007−126974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電磁弁の他にポンプも組み込まれた装置、例えば、車載用の自動変速機のクラッチ(ブレーキ)をオンオフするための油圧回路にクラッチ圧を調圧するための電磁弁(リニアソレノイド)や流体圧を発生させるためのポンプが組み込まれたものにおいては、その搭載スペースに制約がある場合があり、できる限り小型化することが求められている。
【0006】
本発明の電磁弁装置は、ポンプとしての機能を一体化して全体の小型化を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁弁装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の電磁弁装置は、
流体圧源から供給される流体圧を調圧する調圧部と、
貯留部の作動流体の吸入と吐出とを行なうポンプ部と、
前記調圧部と前記ポンプ部とを駆動する1つの電磁部と
を備えることを要旨とする。
【0009】
この本発明の電磁弁装置では、流体圧源から供給される流体圧を調圧する調圧部と、貯留部の作動流体の吸入と吐出とを行なうポンプ部と、を1つの電磁部により駆動する。したがって、調圧弁と電磁ポンプとを別々に設けるものに比して装置全体をより小型化することができる。
【0010】
こうした本発明の電磁弁装置において、前記調圧部は、前記電磁部の電磁力により作動し、前記ポンプ部のポンプ室を圧縮・膨張する動作と、流体圧源から供給される流体圧を調圧する動作とを選択的に行なう弁体を備えるものとすることもできる。
【0011】
弁体を備える態様の本発明の電磁弁装置において、前記調圧部は、前記電磁部からの推力により駆動されたときの前記弁体の摺動方向に対向する向きに推力を発生させる弾性部材と、該弾性部材を収納する弾性部材室とを備え、前記弾性部材室を前記ポンプ室の少なくとも一部として共用するものとすることもできる。ここで、「弾性部材」には、スプリングが含まれる。この態様の本発明の電磁弁装置において、前記電磁部からの推力を解除したときに前記弾性部材の弾性力により前記弁体が摺動することにより作動流体を吸入し、前記電磁部から発生させた推力により前記弁体が摺動することにより前記吸入した作動流体を吐出するものとすることもできる。これらの態様の本発明の電磁弁装置において、前記調圧部は、フィードバックポートを有し、前記電磁部への通電を遮断しているときに閉弁するノーマルクローズ型の電磁弁として構成されてなるものとすることもできる。こうすれば、電磁部に通電しているときに開弁するノーマルオープン型の電磁弁に比して弾性部材(スプリング)の過重を小さくできるから、ポンプとして機能させるときに電磁部に要求される推力も小さくすることができ、電磁部の小型化を図ることができる。これは、ノーマルクローズ型の電磁弁ではフィードバック圧が電磁部からの推力と同方向に作用するのに対して、ノーマルオープン型の電磁弁ではフィードバック圧が電磁部からの推力と逆方向に作用することに基づく。
【0012】
また、本発明の電磁弁装置において、前記ポンプ部は、前記貯留部から作動流体を吸入すると共に該吸入した作動流体を作動対象に吐出する吸入・吐出機構を備えるものとすることもできる。
【0013】
吸入・吐出機構を備える態様の本発明の電磁弁装置において、前記吸入・吐出機構は、前記貯留部から前記ポンプ部が有するポンプ室への作動流体の流れを許容する吸入用逆止弁と、前記ポンプ室から前記作動対象への作動流体の流れを許容する吐出用逆止弁とから構成されてなるものとすることもできる。この態様の本発明の電磁弁装置において、前記吸入用逆止弁は、前記ポンプ室内が正圧のときに閉弁し負圧のときの開弁し、前記吐出用逆止弁は、前記ポンプ室内が負圧のときに閉弁し正圧のときに開弁するものとすることもできる。
【0014】
調圧部が弁体と弾性部材と弾性部材室とを備える態様の電磁弁装置において、前記貯留部から前記ポンプ部が有するポンプ室への作動流体の流れを許容する吸入用逆止弁と、前記ポンプ室から前記作動対象への作動流体の流れを許容する吐出用逆止弁と、を備え、前記吸入用逆止弁と前記吐出用逆止弁は、前記調圧部の外に配置されてなるものとすることもできるし、前記吸入用逆止弁は、前記調圧部に内蔵されてなるものとすることもできる。後者の場合では、容積効率に大きく寄与すると考えられる吸入用逆止弁を比較的精度よく構成できるから、容積効率の向上を図ることができる。また、後者の場合、前記吐出用逆止弁は、前記調圧部に内蔵されてなるものとすることもできる。こうすれば、容積効率をさらに向上させることができる。
【0015】
また、本発明の電磁弁装置において、前記ポンプ部が有するポンプ室内の作動流体をドレンする第1の状態と、前記ポンプ室内の作動流体のドレンを禁止する第2の状態とを切り替える切替装置を備えるものとすることもできる。この態様の本発明の電磁弁装置において、前記切替装置は、前記ポンプ室に流路を介して接続された中空部内を摺動可能なスプールを有し、該スプールが第1のポジションにあるときには前記第1の状態を形成し、前記スプールが第2のポジションにあるときには前記第2の状態を形成する切替バルブであるものとすることもできる。この態様の本発明の電磁弁装置において、前記調圧部は、前記ポンプ部を内蔵し、吸入ポートと吐出ポートと前記切替バルブの中空部に流路を介して接続されたドレンポートとを有し、前記吸入ポートを介して作動流体を吸入すると共に該吸入した作動流体を前記吐出ポートを介して吐出するものとすることもできる。
【0016】
さらに、本発明の電磁弁装置において、前記調圧部は、入力ポートと出力ポートとが形成された中空のスリーブと、該スリーブ内を摺動することにより前記入力ポートから入力された流体圧を調圧を伴って前記出力ポートに出力されるよう前記スリーブとの間で調圧室を形成するスプールとを備え、前記ポンプ部が有するポンプ室は、前記調圧室とは遮断された空間として形成されてなるものとすることもできる。こうすれば、一つのスリーブとスプールとにより調圧弁としての機能とポンプとしての機能を持たせることができ、装置をさらに小型化することができる。
【0017】
また、複数の摩擦係合要素の流体圧サーボを備える自動変速機を駆動する駆動装置に組み込まれた本発明の電磁弁装置において、前記複数の摩擦係合要素の流体圧サーボのうち一の摩擦係合要素の流体圧サーボに作用させる流体圧を調圧するための調圧弁として機能すると共に他の摩擦係合要素の流体圧サーボに作用させる流体圧を発生するための電磁ポンプとして機能するよう形成されてなるものとすることもできるし、前記複数の摩擦係合要素の流体圧サーボのうち一の摩擦係合要素の流体圧サーボに作用させる流体圧を調圧するための調圧弁として機能すると共に該一の摩擦係合要素の流体圧サーボに作用させる流体圧を発生するための電磁ポンプとして機能するよう形成されてなるものとすることもできる。ここで、「摩擦係合要素」には、二つの回転系を接続するクラッチが含まれる他、一つの回転系をケースなどの固定系に接続するブレーキも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例としての電磁弁20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】排出用バルブ100の構成の概略を示す構成図である。
【図3】自動変速機の駆動装置を搭載する自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図4】オートマチックトランスミッション130の構成の概略を示す構成図である。
【図5】オートマチックトランスミッション130の作動表である。
【図6】油圧回路140の構成の概略を示す構成図である。
【図7】切替バルブ148の動作を説明する説明図である。
【図8】自動停止時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図9】車速Vとエンジン回転数Neとアクセル開度Accとブレーキスイッチ信号BSWとシフトポジションSPとライン圧PLとクラッチC1の油圧とリニアソレノイドSLC1の電流指令と電磁ポンプの電流指令の時間変化の様子を示す説明図である。
【図10】変形例の電磁弁20Bの構成の概略を示す構成図である。
【図11】変形例の電磁弁20Cの構成の概略を示す構成図である。
【図12】変形例の電磁弁20Dの構成の概略を示す構成図である。
【図13】変形例の油圧回路240の構成の概略を示す構成図である。
【図14】切替バルブ250の動作を説明する説明図である。
【図15】変形例の電磁弁20Eの構成の概略を示す構成図である。
【図16】油圧回路340の構成の概略を示す構成図である。
【図17】切替バルブ350の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0020】
図1は本発明の一実施例としての電磁弁20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電磁弁20は、例えば、自動変速機に組み込まれたクラッチの油圧制御に用いられ、ライン圧から最適なクラッチ圧を生成してクラッチをダイレクトに制御可能なダイレクト制御用のリニアソレノイドバルブとして機能すると共に油圧を発生させる電磁ポンプとしても機能するよう構成されており、ソレノイド部30と、このソレノイド部30により駆動されてライン圧を入力すると共に入力したライン圧を調圧して出力する調圧バルブ部40と、同じくソレノイド部30により駆動されて作動油を圧送するポンプ部60とを備える。
【0021】
ソレノイド部30は、底付き円筒部材としてのケース31と、ケース31の内周側に配置され絶縁性のボビンに絶縁導線が巻回されてなるコイル(ソレノイドコイル)32と、ケース31の開口端部にフランジ外周部が固定されたフランジ部34aとフランジ部34aからコイル32の内周面に沿って軸方向に延伸された円筒部34bとからなる第1のコア34と、ケース31の底部に形成された凹部の内周面と接触すると共にコイル32の内周面に沿って第1のコア34の円筒部34bと所定間隔を隔てた位置まで軸方向に延伸された円筒状の第2のコア35と、第2のコア35に挿入され第1のコア34の内周面および第2のコア35の内周面を軸方向に摺動可能なプランジャ36と、第1のコア34の円筒部34bに挿入されプランジャ36の先端に当接すると共に円筒部34bの内周面を軸方向に摺動可能なシャフト38とを備える。また、ソレノイド部30は、コイル32からの端子がケース31の外周部に形成されたコネクタ部39に配策されており、この端子を介してコイル32への通電が行なわれる。ケース31と第1のコア34と第2のコア35とプランジャ36は、いずれも純度の高い鉄などの強磁性材料により形成されており、第1のコア34の円筒部34bの端面と第2のコア35の端面との間の空間は、非磁性体として機能するよう形成されている。なお、この空間は、非磁性体として機能させればよいから、ステンレススチールや黄銅などの非磁性金属を設けるものとしても構わない。
【0022】
ソレノイド部30では、コイル32に通電すると、ケース31,第2のコア35,プランジャ36,第1のコア34,ケース31の順にコイル32の周囲を周回するよう磁束が流れる磁気回路が形成され、これにより第1のコア34とプランジャ36との間に吸引力が作用してプランジャ36が吸引される。前述したように、プランジャ36の先端には第1のコア34の内周面を軸方向に摺動可能なシャフト38が当接されているから、プランジャ36の吸引に伴ってシャフト38は前方(図中左方向)に押し出される。
【0023】
調圧バルブ部40とポンプ部60は、その共用の部材として、バルブボディ10に組み込まれ一端がソレノイド部30のケース31により第1のコア34に取り付けられた略円筒状のスリーブ22と、スリーブ22の内部空間に挿入され一端がソレノイド部30のシャフト38の先端に当接されたスプール24と、スリーブ22の他端にネジ止めされたエンドプレート26と、エンドプレート26とスプール24の他端との間に設けられてスプール24をソレノイド部30側の方向へ付勢するスプリング28とを備える。
【0024】
スリーブ22は、調圧バルブ部40を形成する領域の開口部としては、作動油を入力する入力ポート42と、クラッチC2側に入力した作動油を吐出する出力ポート44と、入力した作動油をドレンするドレンポート46と、出力ポート44から出力される作動油をバルブボディ10の内面とスリーブ22の外面とにより形成された油路48aを介して入力してスプール24にフィードバック力を作用させるフィードバックポート48とが形成されている。また、スリーブ22のソレノイド部30側の端部には、スプール24の摺動に伴ってスリーブ22の内周面とスプール24の外周面との間から漏れ出た作動油を排出するための排出孔49も形成されている。
【0025】
また、スリーブ22は、ポンプ部60を形成する領域の開口部としては、作動油を吸入する吸入ポート62と、吸入した作動油を吐出する吐出ポート64と、ポンプ部60の機能を停止したときに残存している作動油を排出するドレンポート66とが形成されている。このドレンポート66からは、排出用バルブ100を介して作動油が排出されるようになっている。図2は、排出用バルブ100の構成の概略を示す構成図である。排出用バルブ100は、図示するように、上部に外径が値L1の上部ランド102aと下部に外径が値L1よりも大きな値L2の下部ランド102bとが配置されたスプール102が挿入されており、下部にはスプール102を図中上方に付勢するスプリング104が取り付けられ、図中上方から下方に向けて順にライン圧PLを信号圧として入力する信号圧用ポート106aとポンプ部60のドレンポート66と連通する入力ポート106bと排出用の出力ポート106cとが形成されている。この排出用バルブ100では、ライン圧PLが抜けているときにはスプリング104の付勢力によりスプール102を図中上方に移動させることにより外径が値L2のランド102bにより入力ポート106bと出力ポート106cとの連通を遮断し(図2(a)参照)、ライン圧PLが作用しているときには信号圧がスプリング104の付勢力に打ち勝ってスプール102が図中下方に移動することにより値L2よりも外径が小さな値L1のランド102aの隙間を介して入力ポート106bと出力ポート106cとを連通して残存している作動油を排出する(図2(b)参照)。
【0026】
スプール24は、スリーブ22の内部に挿入される軸状部材として形成されており、スリーブ22の内壁を摺動可能な円柱状の三つのランド52,54,56と、ランド52とランド54との間を連結しランド52,54の外径よりも小さな外径で且つ互いのランド52,54から中央部に向かうほど外径が小さくなるようテーパ状に形成され入力ポート42と出力ポート44とドレンポート46の各ポート間を連通可能な連通部58と、ランド54とこれよりも外径が小さなランド56との間を連結しスリーブ22の内壁と共にスプール24に対してソレノイド部30側の方向にフィードバック力を作用させるためのフィードバック室を形成する連結部59と、ランド56に接続された吸入用逆止弁80と、を備え、スリーブ22とスプール24の連通部58とランド52,54とにより調圧室50を形成し、スリーブ22とスプール24の吸入用逆止弁80とエンドプレート26とによりポンプ室70を形成する。
【0027】
吸入用逆止弁80は、ランド56と連結され中央にポンプ室70と吸入ポート62とを連通する開口部82aが形成された円筒状の本体82と、ボール84と、エンドプレート26をスプリング受けとしてボール84を本体82の開口部82aに押し付けるスプリング86とを備え、ポンプ室70内が正圧のときにスプリング86の付勢力により閉弁しポンプ室70内が負圧のときに開弁する。
【0028】
なお、バルブボディ10には、吸入用逆止弁80と対になる吐出用逆止弁90が組み込まれており、この吐出用逆止弁90は、ポンプ室70内が負圧のときに閉弁しポンプ室70内が正圧のときに開弁するよう構成されている。
【0029】
こうして構成された実施例の電磁弁20の動作、特に、リニアソレノイドバルブとして機能する際の動作と電磁ポンプとして機能する動作について説明する。まず、リニアソレノイドバルブとして機能する際の動作について説明する。いま、コイル32への通電がオフされている場合を考える。この場合、スプール24はスプリング28の付勢力によりソレノイド部30側へ移動しているから、ランド54により入力ポート42が遮断されると共に連通部58を介して出力ポート44とドレンポート46とが連通された状態となる。したがって、クラッチC2には油圧は作用しない。コイル32への通電がオンされると、コイル32に印加される電流の大きさに応じた吸引力で第1のコア34にプランジャ36が吸引され、これに伴ってシャフト38が押し出されてシャフト38の先端に当接されたスプール24がエンドプレート26側に移動する。これにより、入力ポート42と出力ポート44とドレンポート46とが互いに連通した状態となり、入力ポート42から入力された作動油は一部が出力ポート44に出力されると共に残余がドレンポート46に出力される。また、フィードバックポート48を介してフィードバック室に作動油が供給され、スプール24には出力ポート44の出力圧に応じたフィードバック力がソレノイド部30側の方向に作用する。したがって、スプール24は、プランジャ36の推力(吸引力)とスプリング28のバネ力とフィードバック力とが丁度釣り合う位置で停止することになる。この際、コイル32に印加される電流が大きくなるほど、即ちプランジャ36の推力が大きくなるほど、スプール24がエンドプレート26側に移動し、入力ポート42の開口面積を広げると共にドレンポート46の開口面積を狭める。コイル32への通電が最大となると、スプール24はプランジャ36の可動範囲の最もエンドプレート26側に移動し、連通部58により入力ポート42と出力ポート44とが連通されると共にランド52によりドレンポート46が閉塞されて出力ポート44とドレンポート46とが遮断される。これにより、クラッチC2には最大油圧が作用することになる。このように、実施例の電磁弁20では、コイル32への通電がオフされている状態で入力ポート42を遮断すると共に出力ポート44とドレンポート46とを連通するから、ノーマルクローズ型の電磁弁として機能することがわかる。
【0030】
次に、実施例の電磁弁20を電磁ポンプとして機能させる場合の動作について説明する。いま、コイル32への通電がオンされている状態からオフされた場合を考える。この場合、スプール24はエンドプレート26側からソレノイド部30側へ移動するから、ポンプ室70内は負圧となり、吸入用逆止弁80が開弁すると共に吐出用逆止弁90が閉弁して作動油を吸入用逆止弁80を介して吸入ポート62からポンプ室70内に吸入する。この状態からコイル32への通電をオンすると、スプール24はソレノイド部30側からエンドプレート26側に移動するから、ポンプ室70内は正圧となり、吸入用逆止弁80が閉弁すると共に吐出用逆止弁90が開弁してポンプ室70内に吸入した作動油を吐出用逆止弁90を介して吐出ポート64から吐出する。このように、コイル32への通電のオンとオフとを繰り返すことにより、実施例の電磁弁20を作動油を圧送する電磁ポンプとして機能させることができる。
【0031】
次に、こうして構成された電磁弁20を車載された自動変速機の駆動装置に組み込んだ場合の構成について説明する。図3は、自動変速機の駆動装置を搭載する自動車120の構成の概略を示す構成図であり、図4は、オートマチックトランスミッション130の構成の概略を示す構成図であり、図5は、オートマチックトランスミッション130の作動表であり、図6は、油圧回路140の構成の概略を示す構成図である。自動車120は、図3に示すように、内燃機関としてのエンジン122と、エンジン122をクランキングして始動するためのスタータモータ123と、エンジン122のクランクシャフト126にトルクコンバータ128を介して入力軸136が接続されると共にデファレンシャルギヤ172を介して駆動輪174a,174bに出力軸138が接続され入力軸136に入力された動力を出力軸138に伝達するオートマチックトランスミッション130と、オートマチックトランスミッション130を駆動するアクチュエータとしての油圧回路140と、車両全体をコントロールするメイン電子制御ユニット(以下、メインECUという)150とを備える。
【0032】
エンジン122は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)124により運転制御されている。エンジンECU124は、詳細に図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。このエンジンECU124には、クランクシャフト126に取り付けられた回転数センサ125などのエンジン122を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されており、エンジンECU124からは、スロットル開度を調節するスロットルモータへの駆動信号や燃料噴射弁への制御信号,点火プラグへの点火信号,スタータモータ123への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU124は、メインECU150と通信しており、メインECU150からの制御信号によってエンジン122を制御したり、必要に応じてエンジン122の運転状態に関するデータをメインECU150に出力する。
【0033】
オートマチックトランスミッション130は、図4に示すように、ダブルピニオン式の遊星歯車機構130aとシングルピニオン式の二つの遊星歯車機構130b,130cと三つのクラッチC1,C2,C3と四つのブレーキB1,B2,B3,B4と三つのワンウェイクラッチF1,F2,F3とを備える。ダブルピニオン式の遊星歯車機構130aは、外歯歯車としてのサンギヤ131aと、このサンギヤ131aと同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ132aと、サンギヤ131aに噛合する複数の第1ピニオンギヤ133aと、この第1ピニオンギヤ133aに噛合すると共にリングギヤ132aに噛合する複数の第2ピニオンギヤ134aと、複数の第1ピニオンギヤ133aおよび複数の第2ピニオンギヤ134aとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア135aとを備え、サンギヤ131aはクラッチC3を介して入力軸136に接続されると共にワンウェイクラッチF2を介して接続されたブレーキB3のオンオフによりその回転を自由にまたは一方向に規制できるようになっており、リングギヤ132aはブレーキB2のオンオフによりその回転を自由にまたは固定できるようになっており、キャリア135aはワンウェイクラッチF1によりその回転を一方向に規制されると共にブレーキB1のオンオフによりその回転を自由にまたは固定できるようになっている。シングルピニオン式の遊星歯車機構130bは、外歯歯車のサンギヤ131bと、このサンギヤ131bと同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ132bと、サンギヤ131bに噛合すると共にリングギヤ132bに噛合する複数のピニオンギヤ133bと、複数のピニオンギヤ133bを自転かつ公転自在に保持するキャリア135bとを備え、サンギヤ131bはクラッチC1を介して入力軸136に接続されており、リングギヤ132bはダブルピニオン式の遊星歯車機構130aのリングギヤ132aに接続されると共にブレーキB2のオンオフによりその回転を自由にまたは固定できるようになっており、キャリア135bはクラッチC2を介して入力軸136に接続されると共にワンウェイクラッチF3によりその回転を一方向に規制できるようになっている。また、シングルピニオン式の遊星歯車機構130cは、外歯歯車のサンギヤ131cと、このサンギヤ131cと同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ132cと、サンギヤ131cに噛合すると共にリングギヤ132cに噛合する複数のピニオンギヤ133cと、複数のピニオンギヤ133cを自転かつ公転自在に保持するキャリア135cとを備え、サンギヤ131cはシングルピニオン式の遊星歯車機構130bのサンギヤ131bに接続されており、リングギヤ132cはシングルピニオン式の遊星歯車機構130bのキャリア135bに接続されると共にブレーキB4のオンオフによりその回転を自由にまたは固定できるようになっており、キャリア135cは出力軸138に接続されている。
【0034】
オートマチックトランスミッション130は、図5に示すように、クラッチC1〜C3のオンオフとブレーキB1〜B4のオンオフにより前進1速〜5速と後進とニュートラルとを切り替えることができるようになっている。前進1速の状態、即ち入力軸136の回転を最も大きな減速比で減速して出力軸138に伝達する状態は、クラッチC1をオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB1〜B4とをオフとすることにより形成することができる。この状態では、シングルピニオン式の遊星歯車機構130cのリングギヤ132cはワンウェイクラッチF3によりその一方向の回転が固定されるため、入力軸136からクラッチC1を介してサンギヤ131cに入力される動力は大きな減速比で減速してキャリア135c即ち出力軸138に出力される。1速の状態では、エンジンブレーキ時には、ブレーキB4をオンとすることにより、ワンウェイクラッチF3に代えてリングギヤ132cの回転が固定される。前進2速の状態は、クラッチC1とブレーキB3とをオンとすると共にクラッチC2,C3とブレーキB1,B2,B4とをオフとすることにより形成することができる。この状態では、ワンウェイクラッチF2によりダブルピニオン式の遊星歯車機構130aのサンギヤ131aはその一方向の回転が固定されると共にワンウェイクラッチF1によりキャリア135aはその一方向の回転が固定されるため、リングギヤ132aおよびシングルピニオン式の遊星歯車機構130bのリングギヤ132bもその一方向の回転が固定され、入力軸136からクラッチC1を介してサンギヤ131bに入力される動力はリングギヤ132bの固定により減速してキャリア135bおよびシングルピニオン式の遊星歯車機構130cのリングギヤ132cに出力され、入力軸136からクラッチC1を介してサンギヤ131cに入力される動力はリングギヤ132cの回転状態に応じて前進1速よりも若干小さな減速比で減速してキャリア135c即ち出力軸138に出力される。2速の状態では、エンジンブレーキ時には、ブレーキB2をオンとすることにより、ワンウェイクラッチF1およびワンウェイクラッチF2に代えてリングギヤ132aおよびリングギヤ132bの回転が固定される。前進3速の状態は、クラッチC1,C3とブレーキB3とをオンとすると共にクラッチC2とブレーキB1,B2,B4とをオフとすることにより形成することができる。この状態では、ワンウェイクラッチF1によりダブルピニオン式の遊星歯車機構130aのキャリア135aはその一方向の回転が固定されるため、入力軸136からクラッチC3を介してサンギヤ131aに入力される動力は減速してリングギヤ132aおよびシングルピニオン式の遊星歯車機構130bのリングギヤ132bに出力され、入力軸136からクラッチC1を介してサンギヤ131bに入力される動力はリングギヤ132bの回転状態により減速してキャリア135bおよびシングルピニオン式の遊星歯車機構130cのリングギヤ132cに出力され、入力軸136からクラッチC1を介してサンギヤ131cに入力される動力はリングギヤ132cの回転状態に応じて前進2速よりも若干小さな減速比で減速してキャリア135c即ち出力軸138に出力される。3速の状態では、エンジンブレーキ時には、ブレーキB1をオンとすることにより、ワンウェイクラッチF1に代えてキャリア135aの回転が固定される。前進4速の状態は、クラッチC1〜C3とブレーキB3とをオンとすると共にブレーキB1,B2,B4をオフとすることにより形成することができる。この状態では、入力軸136はクラッチC1を介してシングルピニオン式の遊星歯車機構130bのサンギヤ131bおよびシングルピニオン式の遊星歯車機構130cのサンギヤ131cに接続されると共にクラッチC2を介してキャリア135bおよびリングギヤ132cに接続されるため、シングルピニオン式の遊星歯車機構130b,30cのすべての回転要素は一体回転し、入力軸136と出力軸138とが直結された状態となり、入力軸136から入力される動力は値1.0の減速比で動力が伝達される。前進5速の状態、即ち入力軸136の回転を最も小さな減速比で減速(増速)して出力軸138に伝達する状態は、クラッチC2,C3とブレーキB1,B3とをオンとすると共にクラッチC1とブレーキB2,B4とをオフとすることにより形成することができる。この状態では、ワンウェイクラッチF1によりダブルピニオン式の遊星歯車機構130aのキャリア135aはその一方向の回転が固定されるため、入力軸136からクラッチC3を介してサンギヤ131aに入力される動力は減速してリングギヤ132aおよびシングルピニオン式の遊星歯車機構130bのリングギヤ132bに出力され、入力軸136からクラッチC2を介してキャリア135bに入力される動力はリングギヤ132bの回転状態により増速してサンギヤ131bおよびシングルピニオン式の遊星歯車機構130cのサンギヤ131cに出力され、入力軸136からクラッチC2を介してリングギヤ132cに入力される動力はサンギヤ131cの回転状態に応じて最も小さな減速比で増速してキャリア135c即ち出力軸138に出力される。
【0035】
また、オートマチックトランスミッション130では、ニュートラルの状態、即ち入力軸136と出力軸138との切り離しは、すべてのクラッチC1〜C3とブレーキB1〜B4とをオフとすることにより行なうことができる。また、後進の状態は、クラッチC3とブレーキB4とをオンとすると共にクラッチC1,C2とブレーキB1〜B3をオフとすることにより形成することができる。この状態では、ワンウェイクラッチF1によりダブルピニオン式の遊星歯車機構130aのキャリア135aはその一方向の回転が固定されるため、入力軸136からクラッチC3を介してサンギヤ131aに入力される動力は減速してリングギヤ132aおよびシングルピニオン式の遊星歯車機構130bのリングギヤ132bに出力され、ブレーキB4によりシングルピニオン式の遊星歯車機構130bのキャリア135bおよびシングルピニオン式の遊星歯車機構130cのリングギヤ132cはその回転が固定されるため、リングギヤ132aに出力される動力は回転が反転してキャリア135c即ち出力軸138に出力される。後進の状態では、エンジンブレーキ時には、ブレーキB1をオンとすることにより、ワンウェイクラッチF1に代えてキャリア135aの回転が固定される。
【0036】
油圧回路140は、図6に示すように、エンジン122からの動力によりオイルを圧送する機械式オイルポンプ141と、機械式オイルポンプ141により圧送されたオイルの圧力(ライン圧PL)を調節するレギュレータバルブ142と、このレギュレータバルブ142を駆動するリニアソレノイド143と、ライン圧PLをマニュアルバルブ144を介して入力すると共に調圧してクラッチC1側に出力するリニアソレノイドバルブ(以下、リニアソレノイドという)SLC1と、リニアソレノイドSLC1に供給されるライン圧PLを蓄圧するアキュムレータ145と、ライン圧PLをマニュアルバルブ144を介して入力すると共に調圧してクラッチC2側に出力するリニアソレノイドバルブとして機能すると共にリニアソレノイドバルブとしての機能を停止して電磁ポンプとしても機能する前述した実施例の電磁弁20と、リニアソレノイドSLC1とクラッチC1との流路的な接続と電磁弁20の電磁ポンプとクラッチC1との流路的な接続とを選択的に切り替える切替バルブ148と、切替バルブ148を駆動するオンオフソレノイド149、実施例の電磁弁20の電磁ポンプとしての機能を停止するときにポンプ室70内の作動油を排出するための排出用バルブなどにより構成されている。なお、図6では、クラッチC1,C2についての油圧系を示したが、クラッチC1,C2以外の他のクラッチC3やブレーキB1〜B4の油圧系もリニアソレノイドバルブを用いて同様に構成することができる。
【0037】
切替バルブ148は、図7の動作説明図に示すように、下部にはスプール148aを図中上方に付勢するスプリング148bが取り付けられると共に上部にはオンオフソレノイド149からの信号圧を入力する入力ポート148cが形成されており、オンオフソレノイド149から信号圧が入力されているときには、信号圧がスプリング148bの付勢力に打ち勝ってスプール148aが図中下方に移動することにより電磁弁20のポンプ部60とクラッチC1とを流路的に遮断すると共にリニアソレノイドSLC1とクラッチC1とを流路的に接続し(図7(a)参照)、オンオフソレノイド149から信号圧が入力されていないときには、スプリング148bの付勢力によりスプール148aが図中上方に移動することにより電磁弁20のポンプ部60とクラッチC1とを流路的に接続すると共にリニアソレノイドSLC1とクラッチC1とを流路的に遮断する(図7(b)参照)。
【0038】
油圧回路140は、オートマチックトランスミッション用電子制御ユニット(以下、ATECUという)139により駆動制御されている。ATECU139は、詳細に図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。ATECU139からは、リニアソレノイド143への駆動信号やリニアソレノイドSLC1への駆動信号,実施例の電磁弁20への駆動信号,オンオフソレノイド149への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。ATECU139は、メインECU150と通信しており、メインECU150からの制御信号によってオートマチックトランスミッション130(油圧回路140)を制御したり、必要に応じてオートマチックトランスミッション130の状態に関するデータをメインECU150に出力する。
【0039】
メインECU150は、詳細には図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。メインECU150には、イグニッションスイッチ160からのイグニッション信号,シフトレバー161の操作位置を検出するシフトポジションセンサ162からのシフトポジションSP,アクセルペダル163の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ164からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル165の踏み込みを検出するブレーキスイッチ166からのブレーキスイッチ信号BSW,車速センサ168からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。メインECU150は、エンジンECU124やATECU139と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU124やATECU139と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0040】
こうして構成された実施例の自動車20では、エンジン122が始動され、シフトレバー161を「D(ドライブ)」の走行ポジションとして走行しているときに、車速Vが値0,アクセルオフ,ブレーキスイッチ信号BSWがオンなど予め設定された自動停止条件の全てが成立したときにエンジン122を自動停止する。エンジン122が自動停止されると、その後、ブレーキスイッチ信号BSWがオフ且つアクセルオンなど予め設定された自動始動条件が成立したときに自動停止したエンジン122を自動始動する。
【0041】
次に、こうして構成された自動車20が搭載する自動変速機の駆動装置の動作、特に、エンジン122の自動停止中の動作について説明する。なお、自動変速機の駆動装置としては、油圧回路140と、ATECU139とが該当する。図8は、ATECU139により実行される自動停止時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、シフトレバー161をDポジションとして走行しているときに、エンジン122の自動停止条件が成立したときに実行される。なお、この走行状態では、オンオフソレノイド149からは信号圧が出力されており、切替バルブ148は、電磁弁20のポンプ部60とクラッチC1とを流路的に遮断すると共にリニアソレノイドSLC1とクラッチC1とを流路的に接続した状態となっている。
【0042】
自動停止時制御ルーチンが実行されると、ATECU139のCPUは、まず、エンジン122の自動停止条件が成立してエンジン122の燃料カットが行なわれたときに(ステップS100)、クラッチC1に作用する油圧が徐々に値0まで減少するようリニアソレノイドSLC1を制御して(ステップS110)、エンジン122の回転数Neが値0近傍すなわちエンジン122の回転が停止するのを待つ(ステップS120,S130)。ここで、エンジン122の回転数Neは、回転数センサ125により検出されたものをエンジンECU124からメインECU150を介して入力するものとした。
【0043】
エンジン122の回転が停止すると、切替バルブ148が実施例の電磁弁20のポンプ部60とクラッチC1とを流路的に接続すると共にリニアソレノイドSLC1とクラッチC1とを流路的に遮断するようオンオフソレノイド149を駆動制御すると共に(ステップS140)、電磁弁20のポンプ部60の駆動を開始して(ステップS150)、以降にエンジン122の自動始動条件が成立するのを待つ(ステップS150)。電磁弁20のポンプ部60の圧送能力としては、電気モータにより駆動される電動オイルポンプの圧送能力に比して劣るものの、実施例では、クラッチC1が完全には係合されないがスタータモータ123によるエンジン122へのクランキングトルクよりも若干大きなトルク容量を持つ低圧状態でクラッチピストンをストロークさせると共にその状態を保持するために必要十分な圧送能力として設計するものとした。
【0044】
エンジン122の自動始動条件が成立すると、スタータモータ123によりエンジン122がクランキングされるから、切替バルブ148が電磁弁20のポンプ部60とクラッチC1とを流路的に遮断すると共にリニアソレノイドSLC1とクラッチC1とを流路的に接続するようオンオフソレノイド149を駆動制御して(ステップS170)、クラッチC1に作用する油圧が増圧するようリニアソレノイドSLC1を駆動制御し(ステップS180)、エンジン122が完爆したときに(ステップS190)、電磁弁20のポンプ部60を駆動停止して(ステップS200)、本ルーチンを終了する。エンジン122が完爆すると、エンジン122からの動力により機械式オイルポンプ141が駆動してライン圧PLが発生し、このライン圧PLにより前述した排出用バルブ100が作動して実施例の電磁弁20のポンプ部60におけるポンプ室70内に残存している作動油は排出用バルブ100を介して排出される。これにより、実施例の電磁弁20をクラッチC2のクラッチ圧を調圧するリニアソレノイドバルブとして機能させる際に支障が生じることはない。
【0045】
図9は、車速Vとエンジン回転数Neとアクセル開度Accとブレーキスイッチ信号BSWとシフトポジションSPとライン圧PLとクラッチC1の油圧とリニアソレノイドSLC1の電流指令と電磁ポンプの電流指令の時間変化の様子を示す説明図である。図示するように、時刻t1にエンジン122の自動停止条件が成立して時刻t2にエンジン122の燃料供給がカットされると、前進1速を形成するクラッチC1に作用する油圧が徐々に減少するよう電流指令を設定してリニアソレノイドSLC1を駆動し、エンジン122の回転が停止した後に切替バルブ148により電磁弁20のポンプ部60とクラッチC1とを流路的に接続すると共にソレノイド部30によりポンプ部60を駆動してクラッチC1に作用する油圧をクラッチC1がクランキングトルクよりも若干大きなトルク容量を持つ低圧状態とする(時刻t3)。この場合、ポンプ部60はリニアソレノイドSLC1を介さずに直接クラッチC1にオイルを圧送することができると共にクラッチC1に作用させるべき油圧は低圧状態でよいから、電磁ポンプとして機能するポンプ部60でも必要な圧送性能に不足は生じない。そして、時刻t4にブレーキオフされ時刻t5にアクセルオンされてエンジン122の自動始動条件が成立すると、スタータモータ123によりエンジン122がクランキングされる。このとき、クラッチC1の油圧はクランキングトルクよりも若干大きなトルク容量を持つ低圧状態で保持されているから、エンジン122のクランキングトルクはクラッチC1を介してクリープトルクとして駆動輪174a,174b側に伝達される。エンジン122のクランキングが開始されると、切替バルブ148によりリニアソレノイドSLC1とクラッチC1とを流路的に接続すると共にリニアソレノイドSLC1を駆動してクラッチC1に作用する油圧を増圧し、エンジン122が完爆したときに電磁弁20のポンプ部60を駆動停止する(時刻t6)。
【0046】
以上説明した実施例の電磁弁20によれば、スリーブ22とスプール24とによりクラッチC2のクラッチ圧を調圧するためのリニアソレノイドバルブとして機能する調圧バルブ部40を形成すると共にクラッチC1に作動油を圧送する電磁ポンプとして機能するポンプ部60を形成し、調圧バルブ部40とポンプ部60とを一つのソレノイド部30で駆動するから、リニアソレノイドバルブと電磁ポンプとを別個に設けるものに比して小型化を図ることができる。しかも、吸入用逆止弁80をスリーブ22内に内蔵するものとしたから、吸入用逆止弁80を比較的高い精度で形成することができ、電磁ポンプとして機能させたときの容積効率を向上させることができる。
【0047】
実施例の電磁弁20では、リニアソレノイドバルブとして機能したときにはライン圧PLから最適なクラッチ圧を生成してクラッチC2をダイレクトに制御するダイレクト制御用のリニアソレノイドバルブとして構成するものとしたが、リニアソレノイドバルブをパイロット制御用のリニアソレノイドバルブとして用いて別途コントロールバルブを駆動することによりこのコントロールバルブによりクラッチ圧を生成してクラッチC2を制御するものとしてもよい。なお、クラッチC1やブレーキB1〜B4についても同様の構成とするものとしてもよい。
【0048】
実施例の電磁弁20では、吸入用逆止弁80をスリーブ22内に内蔵すると共に吐出用逆止弁90をスリーブ22外のバルブボディ10に組み込むものとしたが、図10の変形例の電磁弁20Bに示すように、吸入用逆止弁80Bと吐出用逆止弁90Bとを共にスリーブ22外のバルブボディ10に組み込むものとしてもよい。変形例の電磁弁20Bでは、ソレノイド部30,調圧バルブ部40については実施例の電磁弁20と同一の構成である。電磁弁20Bのポンプ部60Bは、図10に示すように、スリーブ22とスプール24のランド56とエンドプレート26とによりポンプ室70Bが形成されており、ソレノイド部30のコイル32への通電をオンからオフしたときにはスプリング28の付勢力によりスプール24(ランド56)をソレノイド部30側に移動させることにより作動油をバルブボディ10に組み込まれた吸入用逆止弁80Bを介して吸入ポート62Bからポンプ室70B内に吸入し、ソレノイド部30のコイル32への通電をオフからオンしたときにはソレノイド部30からの推力によりスプール24をエンドプレート26側に移動させることにより吸入した作動油をバルブボディ10に組み込まれた吐出用逆止弁90Bを介して吐出ポート64Bから吐出する。
【0049】
実施例の電磁弁20では、吸入用逆止弁80をスリーブ22内に内蔵すると共に吐出用逆止弁90をスリーブ22外のバルブボディ10に組み込むものとしたが、図11の変形例の電磁弁20Cに示すように、吸入用逆止弁と吐出用逆止弁とを共にスリーブ22内に内蔵するものとしてもよい。変形例の電磁弁20Cでは、ソレノイド部30,調圧バルブ部40については実施例の電磁弁20と同一の構成である。電磁弁20Cのポンプ部60Cは、図11に示すように、スリーブ22内に吸入用逆止弁80Cと吐出用逆止弁90Cとが内蔵されており、スリーブ22と吸入用逆止弁80Cと吐出用逆止弁90Cとによりポンプ室70Cが形成されている。吸入用逆止弁80Cは、実施例の電磁弁20の吸入用逆止弁80と同一のものとして構成されている。一方、吐出用逆止弁90Cは、スプリング28と吸入用逆止弁80Cのスプリング86とを受けるスプリング受けとして機能すると共に中央にポンプ室70Cと吐出ポート64Cとを連通する開口部92aが形成された円筒状の本体92Cと、ボール94Cと、エンドプレート26をスプリング受けとしてボール94Cを本体92Cの開口部92aに押し付けるスプリング96Cとを備え、ポンプ室70C内が負圧のときにスプリング96Cの付勢力により閉弁しポンプ室70C内が正圧のときに開弁する。したがって、ソレノイド部30のコイル32への通電をオンからオフしたときにはスプリング96Cおよびスプリング28の付勢力によりスプール24をソレノイド部30側に移動させることにより作動油を吸入用逆止弁80Cを介して吸入ポート62Cからポンプ室70C内に吸入し、ソレノイド部30のコイル32への通電をオフからオンしたときにはソレノイド部30からの推力によりスプール24をエンドプレート26側に移動させることにより吸入した作動油を吐出用逆止弁90Cを介して吐出ポート64Cから吐出することができる。
【0050】
また、実施例の電磁弁20では、吸入用逆止弁80をスリーブ22内に内蔵すると共に吐出用逆止弁90をスリーブ22外のバルブボディ10に組み込むものとしたが、吸入用逆止弁80をスリーブ22外のバルブボディ10に組み込むと共に吐出用逆止弁90をスリーブ22内に内蔵するものとしても差し支えない。
【0051】
実施例の電磁弁20では、いわゆるノーマルクローズ型のリニアソレノイドバルブに対して電磁ポンプとしての機能を一体化するものとしたが、図12の変形例の電磁弁20Dに示すように、いわゆるノーマルオープン型のリニアソレノイドバルブに対して電磁ポンプとしての機能を一体化するものとしてもよい。なお、ソレノイド部30は実施例の電磁弁20と同一の構成である。変形例の電磁弁20Dの調圧バルブ部40Dでは、コイル32への通電をオフされている場合には、スプリング28の付勢力によりソレノイド部30側に移動しているから、スリーブ22Dに形成された入力ポート42Dと出力ポート44Dとをスプール24Dの連通部58Dを介して連通すると共にスプール24Dのランド56Dによりドレンポート46Dが遮断された状態となる。したがって、クラッチC2に最大油圧が作用する。コイル32への通電がオンされると、コイル32に印加される電流の大きさに応じた吸引力で第1のコア34にプランジャ36が吸引され、これに伴ってシャフト38が押し出されてシャフト38の先端に当接されたスプール24Dがエンドプレート26側に移動する。これにより、入力ポート42Dと出力ポート44Dとドレンポート46Dとが互いに連通した状態となり、入力ポート42Dから入力された作動油は一部が出力ポート44Dに出力されると共に残余がドレンポート46Dに出力される。また、フィードバックポート48Dを介してフィードバック室に作動油が供給され、スプール24Dには出力ポート44Dの出力圧に応じたフィードバック力がエンドプレート26側の方向に作用する。したがって、スプール24Dは、プランジャ36の推力(吸引力)とスプリング28のバネ力とフィードバック力とが丁度釣り合う位置で停止することになる。この際、コイル32に印加される電流が大きくなるほど、即ちプランジャ36の推力が大きくなるほど、スプール24Dがエンドプレート26側に移動し、入力ポート42Dの開口面積を狭めると共にドレンポート46Dの開口面積を広げる。コイル32への通電が最大となると、スプール24Dはプランジャ36の可動範囲の最もエンドプレート26側に移動し、ランド54Dにより入力ポート42Dが遮断されると共に連通部58Dを介して出力ポート44Dとドレンポート46Dとが連通された状態となる。したがって、クラッチC2には何らの油圧も作用しない。このように変形例の電磁弁20Dでは、コイル32への通電がオフされている状態で入力ポート42Dと出力ポート44Dとを連通すると共にドレンポート46Dを遮断するから、ノーマルオープン型の電磁弁として機能することがわかる。変形例の電磁弁20Dのポンプ部60Dでは、吸入用逆止弁80Dと吐出用逆止弁90Dとを共にスリーブ22外のバルブボディ10に組み込むものとし、ソレノイド部30をオンからオフしてスプリング28の付勢力によりスプール24Dをソレノイド部30側に移動させることによりポンプ室70D内を負圧として作動油を吸入ポート62Dから吸入し、ソレノイド部30をオフからオンしてソレノイド部30の推力によりスプール24Dをエンドプレート26側に移動させることによりポンプ室70D内を正圧として吸入した作動油を吐出ポート64Dから吐出することができるようになっている。勿論、吸入用逆止弁80Dと吐出用逆止弁90Dとを共にスリーブ22外のバルブボディ10に組み込むものに限られず、吸入用逆止弁80Dだけをスリーブ22内に内蔵するものとしてもよいし、吐出用逆止弁90Dだけをスリーブ22内に内蔵するものとしてもよいし、吸入用逆止弁80Dと吐出用逆止弁90Dとを共にスリーブ22内に内蔵するものとしてもよい。
【0052】
なお、上述した変形例の電磁弁20Dでは、ソレノイド部30はノーマルクローズ型のリニアソレノイドバルブに適用する場合に比して大型化する傾向となる。これは、ノーマルクローズ型のリニアソレノイドバルブではスプール24に作用するフィードバック力がソレノイド部30の推力の方向と逆方向となるのに対して、ノーマルオープン型のリニアソレノイドバルブではスプール24に作用するフィードバック力がソレノイド部30の推力の方向と同方向となるから、スプリング28のばね荷重が大きくならざるを得ず、その分、電磁ポンプとして機能させるときにソレノイド部30に要求される推力も大きくなるためである。
【0053】
実施例では、リニアソレノイドとしての機能と電磁ポンプとしての機能とを選択的に用いて、電磁ポンプとして機能させるときには発進用のクラッチC1に油圧を作用させ、電磁ポンプとして機能させるときには発進用のクラッチC1とは異なるクラッチC2に油圧を作用させるものとしたが、リニアソレノイドバルブとしての機能と電磁ポンプとしての機能のいずれを用いるときでも同一のクラッチC1に油圧を作用させるものとしてもよい。この場合の変形例の油圧回路240を図13に示す。変形例の油圧回路240では、実施例の油圧回路140と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は重複するから省略する。変形例の油圧回路240は、図示するように、実施例の油圧回路140における電磁弁20と排出バルブ100とリニアソレノイドSLC1と切替バルブ148に代えて、図11に示す変形例の電磁弁20Cと、ライン圧PLをマニュアルバルブ144を介して入力すると共に調圧してクラッチC2側に供給するリニアソレノイドSLC2と、電磁弁20Cの調圧バルブ部40(出力ポート44)とクラッチC1側との流路的な接続と電磁弁20Cのポンプ部60C(吐出ポート64C)とクラッチC1側との流路的な接続とを選択的に切り替えると共に電磁弁20Cの調圧バルブ部40側とクラッチC1側を流路的に接続してポンプ部60Cの機能を停止するときにポンプ室70C(図11参照)内の作動油を排出するための切替バルブ250とを備える。この切替バルブ250は、図14の動作説明図に示すように、下部にはスプール252を図中上方に付勢するスプリング254が取り付けられると共に上部にはオンオフソレノイド149からの信号圧を入力する入力ポート256が形成されており、オンオフソレノイド149から信号圧が入力されているときには、信号圧がスプリング254の付勢力に打ち勝ってスプール252が図中下方に移動することにより調圧バルブ部40の出力ポート44とクラッチC1とを流路的に接続しポンプ部60Cの吐出ポート64CとクラッチC1とを流路的に遮断すると共にポンプ部60Cのドレンポート66Cと排出ポート258とを流路的に接続し(図14(a)参照)、オンオフソレノイド149から信号圧が入力されていないときには、スプリング254の付勢力によりスプール252が図中上方に移動することにより調圧バルブ部40の出力ポート44とクラッチC1とを流路的に遮断しポンプ部60Cの吐出ポート64CとクラッチC1とを流路的に接続すると共にポンプ部60Cのドレンポート66Cと排出ポート258とを流路的に遮断する(図14(b)参照)。なお、この変形例では、図11の電磁弁20Cを用いるものとしたが、これに限定されるものではなく、電磁弁20Cに代えて、図1の電磁弁20や図10の電磁弁20B,図12の電磁弁20Dを用いるものとしてもよい。
【0054】
実施例では、クラッチC1の油圧を調圧するリニアソレノイドと電磁ポンプとを組み合わせて電磁弁20を構成するものとしたが、これに限られず、例えば、レギュレータバルブ142を駆動するリニアソレノイド143と電磁ポンプとを組み合わせるものとしてもよいし、リニアソレノイドに代えてオンオフソレノイドバルブと電磁ポンプとを組み合わせるものとしてもよい。
【0055】
実施例では、スリーブ22とスプール24などからなる調圧部の一部をポンプ部60として形成するものとしたが、これに限定されるものではなく、調圧部とポンプ部60とを別体とするものとしてもよい。即ち、実施例の電磁弁装置では、調圧用にスプリング28が収納されるスプリング室とは別にポンプ室を形成するものとしてもよい。この場合の変形例の電磁弁20Eの構成の概略を図15に示す。変形例の電磁弁20Eは、図示するように、スプリング28が収納されたスプリング室から順に調圧室50E(入力ポート42Eや出力ポート44E,ドレンポート46Eが接続された空間),フィードバック室48Eが形成されたノーマルオープン型のリニアソレノイドとして構成されており、スプリング28に押し付けられているスプール24Eのランド56Eとは反対のソレノイド部30側のランド52Eとスリーブ22Eとによりフィードバック室48Eに隣接するようにポンプ室70Eが形成されている。この電磁弁20Eでは、電磁ポンプとして機能させる場合には、ソレノイド部30のコイル32への通電をオフからオンしたときにはソレノイド部30からの推力によりスプール24Eをエンドプレート26側に移動させることによりポンプ室70E内を負圧として作動油を後述する吸入用逆止弁360を介してポンプ室70E内に吸入し、ソレノイド部30のコイル32への通電をオンからオフしたときにはスプリング28の付勢力によりスプール24Eをソレノイド部30側に移動させることによりポンプ室70E内を正圧として吸入した作動油を後述する吐出用逆止弁370を介して吐出する。
【0056】
変形例の電磁弁20Eでは、吸入用逆止弁360と吐出用逆止弁370とが切替バルブ350に内蔵されている。図16は電磁弁20Eと切替バルブ350とを備える油圧回路340の構成の概略を示す構成図であり、図17は切替バルブ350の動作を説明する説明図である。切替バルブ350は、図示するように、ライン圧を信号圧として入力するための信号圧用入力ポート352aと電磁弁20Eの出力ポート44Eに接続された入力ポート352bとチェック弁380を介してクラッチC1に接続された出力ポート352cとチェック弁380を介さずにクラッチC1に接続された二つの出力ポート352d,352eと電磁弁20Eのポンプ室70Eのポンプ室用ポート62Eに接続された入力ポート352fおよび出力ポート352gと機械式オイルポンプ141とストレーナ141aとの間の吸入用油路342に接続された入力ポート352hと二つのドレンポート352i,352jとが形成されたスリーブ352と、スリーブ352内を摺動し吐出用逆止弁370が一体化されたスプール354と、スプール354を軸方向に付勢するスプリング356と、スリーブ352内に内蔵された吸入用逆止弁360とにより構成されている。
【0057】
吸入用逆止弁360は、軸中心に大径と小径の段差を有する中心孔362aが形成された中空円筒状の本体362と、中心孔362aの段差をスプリング受けとして大径側から挿入されたスプリング366と、スプリング366を挿入した後に中心孔362aに大径側から挿入されたボール364と、中心孔362aに挿入されてボール364を受ける中空円筒状のボール受け368と、ボール受け368を本体362に固定するためのスナップリング369とにより構成されている。一方、吐出用逆止弁370は、スプール354と一体成型され軸中心に凹状に中心孔372aが形成されると共に径方向に中心孔372aを貫通する貫通孔372bが形成された本体372と、中心孔372aの底をスプリング受けとして中心孔372aに挿入されたスプリング376と、スプリング376を挿入した後に中心孔372aに挿入されたボール374と、中心孔372aに挿入されてボール374を受ける中空円筒状のボール受け378と、ボール受け378を本体372に固定するためのスナップリング379とにより構成されている。また、吐出用逆止弁370の本体372には、外径の一部が縮径した縮径部372cが形成されている。
【0058】
こうして構成された切替バルブ350は、図17(a)に示すように、ライン圧PLが信号圧用入力ポート352aに入力されているときにはライン圧PLによりスプリング356の収縮を伴ってスプール354が図中下方に移動し、入力ポート352bと出力ポート352dとを連通し縮径部372cを介して入力ポート352fとドレンポート352jとを連通するため、電磁弁20Eを調圧弁として機能させることにより、出力ポート44Eからの油圧をクラッチC1に作用させることができる。このとき、ポンプ室70Eやこれに接続された油路内に残存している作動油は、入力ポート352f,縮径部372c,ドレンポート352jを順に介してドレンされるから、電磁弁20Eの調圧精度に悪影響を与えることはない。また、吸入用逆止弁360の本体362には、吐出用逆止弁370の本体372と当接する部分に連通孔362bが形成されており、吸入用逆止弁360と吐出用逆止弁370との間の空間に残存している作動油も、出力ポート352g,入力ポート352f,縮径部372c,ドレンポート352jを順に介してドレンされるようになっている。また、図17(b)に示すように、ライン圧PLが信号圧用入力ポート352aに入力されていないときには付勢力によりスプリング356の伸張を伴ってスプール354が図中上方に移動し、入力ポート352bと出力ポート352dとの連通を遮断し入力ポート352hと出力ポート352gとを吸入用逆止弁360(中心孔362a)を介して連通し入力ポート352fと出力ポート352eとを吐出用逆止弁180(中心孔372a,貫通孔372b)を介して連通し入力ポート352fとドレンポート352i,352jとの連通を遮断するため、電磁弁20Eを電磁ポンプとして機能させることにより、作動油を切替バルブ350の入力ポート352h,吸入用逆止弁360,出力ポート352gを順に介してポンプ室70Eに吸入すると共に吸入した作動油を入力ポート352f,吐出用逆止弁370,出力ポート352eを順に介してクラッチC1に供給する。
【0059】
このように、調圧弁として機能させているときには、ポンプ室70E或いはこれに接続される油路内の作動油を大気中にドレンするが、次にポンプとして機能させるときにエアが侵入すると、作動油を十分に加圧できなくなり、ポンプ性能が低下する場合がある。変形例の電磁弁20Eでは、フィードバック室48Eに隣接してポンプ室70Eを形成しているから、調圧弁として機能させているときには、フィードバック室48E内が高圧となり、フィードバック室48Eからポンプ室70Eへ作動油の漏れが生じる。この作動油の漏れを利用することにより、ポンプ室70Eからドレンに向かう作動油の流れを生じさせ、作動油を侵入したエアと共にドレンできるようにしている。したがって、電磁弁20Eを調圧弁として機能させている状態から電磁ポンプとして機能させる状態に切り替える際に迅速にポンプの性能を発揮させることができる。
【0060】
実施例では、電磁弁20を自動変速機の駆動装置に組み込むものに適用して説明したが、これに限定されるものではなく、ソレノイドバルブと電磁ポンプとが組み込まれる如何なる装置に適用するものとしても構わない。
【0061】
ここで、実施例の主要な要素と発明が解決しようとする課題の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、ソレノイド部30が「電磁部」に相当し、調圧バルブ部40とポンプ部60とが「調圧部」に相当し、ポンプ部60と吸入用逆止弁80と吐出用逆止弁90などが「ポンプ部」に相当する。また、吸入用逆止弁80と吐出用逆止弁90とが「吸入・吐出機構」に相当する。また、スプール24,24Eが「弁体」に相当する。また、オートマチックトランスミッション130が「自動変速機」に相当し、油圧回路140とATECU139とが「駆動装置」に相当する。なお、実施例の主要な要素と発明が解決しようとする課題の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が発明が解決しようとする課題の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、発明が解決しようとする課題の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、発明が解決しようとする課題の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は発明が解決しようとする課題の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0062】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、自動車産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 バルブボディ、20,20B,20C,20D 電磁弁、22,22D スリーブ、24,24D スプール、26 エンドプレート、28 スプリング、30 ソレノイド部、31 ケース、32 コイル、34 第1のコア、34a フランジ部、34b 円筒部、35 第2のコア、36 プランジャ、38 シャフト、39 コネクタ部、40,40D 調圧バルブ部、42,42D 入力ポート、44,44D 出力ポート、46,46D ドレンポート、48,48D フィードバックポート、48a 油路、49 排出孔、50 調圧室、52,52D,54,54D,56,56D ランド、58,58D 連通部、59,59D 連結部、60,60B,60C,60D ポンプ部、62,62B,62C,62D 吸入ポート、64,64B,64C,64D 吐出ポート、66,66B,66C,66D ドレンポート、70,70B,70C,70D ポンプ室、80,80B,80C,80D 吸入用逆止弁、82,92C 本体、82a,92a 開口部、84,94C ボール、86,96C スプリング、90,90B,90C,90D 吐出用逆止弁、100 排出用バルブ、102 スプール、102a 上部ランド、102b 下部ランド、104 スプリング、106a 信号圧用ポート、106b 入力ポート、106c 出力ポート、120 自動車、122 エンジン、123 スタータモータ、124 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、125 回転数センサ、126 クランクシャフト、128 トルクコンバータ、130 オートマチックトランスミッション、130a ダブルピニオン式の遊星歯車機構、130b,130c シングルピニオン式の遊星歯車機構、131a,131b,131c サンギヤ、132a,132b,132c リングギヤ、133a 第1ピニオンギヤ、133b,133c ピニオンギヤ、134a 第2ピニオンギヤ、135a,135b,135c キャリア,136 入力軸、138 出力軸、139 オートマチックトランスミッション用電子制御ユニット(ATECU)、140,240 油圧回路、141 機械式オイルポンプ、142 レギュレータバルブ、143 リニアソレノイド、144 マニュアルバルブ、145 アキュムレータ、148,250 切替バルブ、148a,252 スプール、148b,254 スプリング、148c,256 入力ポート、149 オンオフソレノイド、150 メイン電子制御ユニット(メインECU)、160 イグニッションスイッチ、161 シフトレバー、162 シフトポジションセンサ、163 アクセルペダル、164 アクセルペダルポジションセンサ、165 ブレーキペダル、166 ブレーキスイッチ、168 車速センサ、172 デファレンシャルギヤ、174a,174b 駆動輪、258 排出ポート、C1〜C3 クラッチ、B1〜B4 ブレーキ、F1〜F3 ワンウェイクラッチ、SLC1 リニアソレノイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁装置であって、
流体圧源から供給される流体圧を調圧する調圧部と、
貯留部の作動流体の吸入と吐出とを行なうポンプ部と、
前記調圧部と前記ポンプ部とを駆動する1つの電磁部と
を備える電磁弁装置。
【請求項2】
前記調圧部は、前記電磁部の電磁力により作動し、前記ポンプ部のポンプ室を圧縮・膨張する動作と、流体圧源から供給される流体圧を調圧する動作とを選択的に行なう弁体を備えることを特徴とする請求項1記載の電磁弁装置。
【請求項3】
請求項2記載の電磁弁装置であって、
前記調圧部は、前記電磁部からの推力により駆動されたときの前記弁体の摺動方向に対向する向きに推力を発生させる弾性部材と、該弾性部材を収納する弾性部材室とを備え、
前記弾性部材室を前記ポンプ室の少なくとも一部として共用することを特徴とする
電磁弁装置。
【請求項4】
前記電磁部からの推力を解除したときに前記弾性部材の弾性力により前記弁体が摺動することにより作動流体を吸入し、前記電磁部から発生させた推力により前記弁体が摺動することにより前記吸入した作動流体を吐出することを特徴とする請求項3記載の電磁弁装置。
【請求項5】
前記調圧部は、フィードバックポートを有し、前記電磁部への通電を遮断しているときに閉弁するノーマルクローズ型の電磁弁として構成されてなることを特徴とする請求項3または4記載の電磁弁装置。
【請求項6】
前記ポンプ部は、前記貯留部から作動流体を吸入すると共に該吸入した作動流体を作動対象に吐出する吸入・吐出機構を備えることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項に記載の電磁弁装置。
【請求項7】
前記吸入・吐出機構は、前記貯留部から前記ポンプ部が有するポンプ室への作動流体の流れを許容する吸入用逆止弁と、前記ポンプ室から前記作動対象への作動流体の流れを許容する吐出用逆止弁とから構成されてなることを特徴とする請求項6記載の電磁弁装置。
【請求項8】
請求項7記載の電磁弁装置であって、
前記吸入用逆止弁は、前記ポンプ室内が正圧のときに閉弁し負圧のときの開弁し、
前記吐出用逆止弁は、前記ポンプ室内が負圧のときに閉弁し正圧のときに開弁する
電磁弁装置。
【請求項9】
請求項3記載の電磁弁装置であって、
前記貯留部から前記ポンプ部が有するポンプ室への作動流体の流れを許容する吸入用逆止弁と、前記ポンプ室から前記作動対象への作動流体の流れを許容する吐出用逆止弁と、を備え、
前記吸入用逆止弁と前記吐出用逆止弁は、前記調圧部の外に配置されてなる
電磁弁装置。
【請求項10】
請求項3記載の電磁弁装置であって、
前記貯留部から前記ポンプ部が有するポンプ室への作動流体の流れを許容する吸入用逆止弁と、前記ポンプ室から前記作動対象への作動流体の流れを許容する吐出用逆止弁と、を備え、
前記吸入用逆止弁は、前記調圧部に内蔵されてなる
電磁弁装置。
【請求項11】
前記吐出用逆止弁は、前記調圧部に内蔵されてなる請求項10記載の電磁弁装置。
【請求項12】
前記ポンプ部が有するポンプ室内の作動流体をドレンする第1の状態と、前記ポンプ室内の作動流体のドレンを禁止する第2の状態とを切り替える切替装置を備えることを特徴とする請求項1ないし11いずれか1項に記載の電磁弁装置。
【請求項13】
前記切替装置は、前記ポンプ室に流路を介して接続された中空部内を摺動可能なスプールを有し、該スプールが第1のポジションにあるときには前記第1の状態を形成し、前記スプールが第2のポジションにあるときには前記第2の状態を形成する切替バルブであることを特徴とする請求項12記載の電磁弁装置。
【請求項14】
前記調圧部は、前記ポンプ部を内蔵し、吸入ポートと吐出ポートと前記切替バルブの中空部に流路を介して接続されたドレンポートとを有し、前記吸入ポートを介して作動流体を吸入すると共に該吸入した作動流体を前記吐出ポートを介して吐出することを特徴とする請求項13記載の電磁弁装置。
【請求項15】
請求項1ないし14いずれか1項に記載の電磁弁装置であって、
前記調圧部は、入力ポートと出力ポートとが形成された中空のスリーブと、該スリーブ内を摺動することにより前記入力ポートから入力された流体圧を調圧を伴って前記出力ポートに出力されるよう前記スリーブとの間で調圧室を形成するスプールとを備え、
前記ポンプ部が有するポンプ室は、前記調圧室とは遮断された空間として形成されてなる
ことを特徴とする電磁弁装置。
【請求項16】
複数の摩擦係合要素の流体圧サーボを備える自動変速機を駆動する駆動装置に組み込まれた請求項1ないし15いずれか1項に記載の電磁弁装置であって、
前記複数の摩擦係合要素の流体圧サーボのうち一の摩擦係合要素の流体圧サーボに作用させる流体圧を調圧するための調圧弁として機能すると共に他の摩擦係合要素の流体圧サーボに作用させる流体圧を発生するための電磁ポンプとして機能するよう形成されてなる
ことを特徴とする電磁弁装置。
【請求項17】
複数の摩擦係合要素の流体圧サーボを備える自動変速機を駆動する駆動装置に組み込まれた請求項1ないし15いずれか1項に記載の電磁弁装置であって、
前記複数の摩擦係合要素の流体圧サーボのうち一の摩擦係合要素の流体圧サーボに作用させる流体圧を調圧するための調圧弁として機能すると共に該一の摩擦係合要素の流体圧サーボに作用させる流体圧を発生するための電磁ポンプとして機能するよう形成されてなる
ことを特徴とする電磁弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−251558(P2012−251558A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161853(P2012−161853)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2010−514485(P2010−514485)の分割
【原出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】