説明

油圧式作業機械における暖気運転制御装置

【課題】油圧式作業機械において、作動油を昇温させる暖気運転を行なうにあたり、制御バルブを中立位置に保持した状態で、効率良く短時間で行なえるようにする。
【解決手段】作動油の温度が設定温度未満で、且つ、油圧ロックレバーがロック操作されている場合に、コントローラ9から第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11及びエンジンコントローラ16に制御指令を出力して、第一、第二油圧ポンプの容量を最大にし、且つ、エンジン回転数を最大にすることで、制御バルブを中立位置に保持した状態で、第一、第二油圧ポンプの吐出流量を最大にして暖気運転を行なう構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル、油圧クレーン等の油圧式作業機械における暖気運転制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルや油圧クレーン等の油圧式作業機械は、作動油の温度が適温よりも低いと、油圧ポンプや油圧アクチュエータ等の油圧機器の性能を充分に発揮できないだけでなく、応答性が悪くなって操作性が損なわれる。このため、冬季や寒冷地では、通常、作業の開始前に暖気運転を行なうが、なるべく短時間で作動油を昇温させるための暖気運転として、オペレータが操作レバーを操作して油圧アクチュエータをストロークエンドまで動かした後、さらに操作レバーを操作し続けることで作動油をリリーフさせ、該リリーフにより発生する熱量で作動油を昇温させる方法が広く採用されている。しかるに、この様な暖気運転は、操作レバーを操作し続けなければならないためオペレータの負担が大きい許りか、操作された油圧アクチュエータ用の制御バルブが作動位置に切換えられたままの状態でリリーフにより高温になった油に晒されることで、該高温に晒されたスプール部分が熱膨張してサーマルショックを起こす惧れがある。
そこで従来、暖気運転時に、操作レバーの中立状態で、コントローラから出力される信号により制御バルブを作動位置に切換えることで、オペレータが操作レバーを操作しなくても作動油をリリーフさせるようにした技術(例えば、特許文献1参照。)や、作動油の温度が所定温度以下であれば、油圧ポンプの吐出量を一時的に増大させることで作動油を昇温させるようにした技術(例えば、特許文献2参照。)が提唱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−125217号公報
【特許文献2】特開2003−239907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のものは、暖気運転中にオペレータが操作レバーを操作し続ける負担はなくなるものの、制御バルブを作動位置に切換えた状態で作動油をリリーフさせることになるから、サーマルショックの発生の惧れを回避できないという問題がある。一方、特許文献2のものは、オペレータの負担もなく、また、サーマルショックの惧れも回避できるが、このものは、暖気運転中にオペレータが操作レバーを操作すると、油圧ポンプの吐出量が増大しているために、油圧アクチュエータの作動速度が操作レバーの操作量に応じた速度よりも速くなってしまうという不具合が発生する。さらに、油圧ポンプの吐出流量はポンプ回転数に比例して増減すると共に、エンジンで駆動される油圧ポンプの回転数はエンジン回転数により決まるが、特許文献2のものは、制御バルブが全て中立にある状態ではオートアイドリング制御システムによりエンジン回転数をアイドリング回転まで落とす構成になっているから、操作レバーが操作されなければ暖気運転中のエンジン回転数はアイドリング回転になっており、このため、実質的には油圧ポンプの吐出流量をあまり増大させることはできずに暖気運転に時間がかかるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、エンジンと、該エンジンを制御するエンジンコントローラと、エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、該油圧ポンプを油圧源とする油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータ用操作具の操作に基づいて油圧ポンプから油圧アクチュエータへの油供給制御を行なうべく作動する制御バルブと、該制御バルブのセンタバイパス通過量に応じて発生するネガティブコントロール圧を油圧ポンプの容量可変手段に導いて油圧ポンプの容量を制御するポンプ容量制御手段と、油圧ロック用操作具がロック操作されているときに前記制御バルブを油圧アクチュエータに圧油供給しない中立位置に保持する油圧ロック手段とを備えてなる油圧式作業機械において、作動油の温度を検出する作動油温検出手段と、前記油圧ロック用操作具のロック操作の有無を検出するロック操作検出手段と、前記ネガティブコントロール圧に替えて油圧ポンプの容量を最大にする信号圧を油圧ポンプの容量可変手段に出力する電磁弁とを設けると共に、作動油の温度が設定温度未満で、且つ、油圧ロック用操作具がロック操作されている場合に、油圧ポンプの容量を最大にするべく前記電磁弁に信号圧出力の制御指令を出力し、且つ、エンジン回転数を最大にするべくエンジンコントローラに制御指令を出力する暖気運転制御手段を設けたことを特徴とする油圧式作業機械における暖気運転制御装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、暖気運転時における油圧ポンプの吐出流量は最大になり、而して、作動油を効率良く短時間で昇温させることができることになって、作業効率の向上に貢献できる。しかも、暖気運転が行なわれるのは、油圧ロックレバーがロック操作されているとき、つまり、油圧ロック手段により制御バルブが中立位置に保持されているときであるから、制御バルブがサーマルショックを起こす惧れを回避をできるうえ、オペレータが油圧アクチュエータ用操作具を操作しても油圧アクチュエータに圧油供給されることなく、而して、油圧ポンプの吐出流量が最大であっても、油圧アクチュエータ用操作具を操作したときに該操作具の操作量に対応しない高速度で油圧アクチュエータが作動してしまうような不具合を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】油圧ショベルの油圧回路図である。
【図2】コントローラの入出力を示すブロック図である。
【図3】暖気運転制御の制御手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1に、本発明の暖気運転制御装置が設けられた油圧式作業機械の一例である油圧ショベルの油圧回路を示すが、図1において、Eはエンジン、1、2はエンジンEにより駆動される第一、第二油圧ポンプ、3はパイロットポンプ、4は油タンク、A1〜A6は油圧ショベルに設けられる油圧アクチュエータ(左右の走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ、スティックシリンダ、バケットシリンダ等)、B1〜B6は油圧アクチュエータA1〜A6に対する油給排制御をそれぞれ行なう制御バルブである。
【0009】
前記第一、第二油圧ポンプ1、2は、容量可変手段1a、2aを備えた可変容量型の油圧ポンプであって、本実施の形態では、第一油圧ポンプ1は油圧アクチュエータA1〜A3の油圧源であり、第二油圧ポンプ2は油圧アクチュエータA4〜A6の油圧源である。尚、第一、第二油圧ポンプ1、2は本発明の油圧ポンプに相当する。
【0010】
また、前記制御バルブB1〜B6は、パイロットポートBx、Byを備えた三位置切換スプール弁であって、両方のパイロットポートBx、Byにパイロット圧が入力されていない状態では、油圧アクチュエータA1〜A6に圧油を供給しない中立位置Nに位置しているが、パイロットポートBx或いはByにパイロット圧が供給されることによりスプールが移動して、第一、第二油圧ポンプ1、2の吐出油を油圧アクチュエータA1〜A6に供給する作動位置X或いはYに切換わるように構成されている。
【0011】
さらに、C1〜C6は油圧アクチュエータ用操作具(図示しないが、操作レバーや操作ペダル等)の操作に基づいて前記制御バルブB1〜B6のパイロットポートBx、Byにパイロット圧を出力するパイロットバルブであって、該パイロットバルブC1〜C6から出力されるパイロット圧は、油圧アクチュエータ用操作具の操作量に応じて増減するようになっている。そして、該パイロットバルブC1〜C6から出力されるパイロット圧に応じて、前記制御バルブB1〜B6のスプールの移動ストロークが増減し、さらに、該スプールの移動ストロークに応じて、制御バルブB1〜B6から油圧アクチュエータA1〜A6への圧油供給流量が増減制御されるようになっている。
【0012】
一方、前記制御バルブB1〜B6には、第一、第二油圧ポンプ1、2の吐出油を第一、第二ネガティブコントロールバルブ(以下、ネガコンバルブと略称)5、6を経由して油タンク4に流すセンタバイパスBsが形成されている。該センタバイパスBsの流路は、制御バルブB1〜B6が中立位置Nのときに開口面積が最大で、スプールの移動ストロークが大きくなるほど開口面積が小さくなるように設定されていると共に、該センタバイパスBsの通過量に応じて発生する第一、第二ネガコンバルブ5、6の入口側の圧力は、ネガティブコントロール圧(以下、ネガコン圧と略称)として第一、第二ネガティブコントロールライン(以下、ネガコンラインと略称)7、8を経由して第一、第二油圧ポンプ1、2の容量可変手段1a、2aに入力されるようになっている。そして、第一、第二油圧ポンプ1、2の容量可変手段1a、2aは、入力されるネガコン圧が高いときには第一、第二油圧ポンプ1、2の容量(一回転当たりの押しのけ容積)を小さくし、ネガコン圧が低くなるほど容量を大きくするポンプ容積制御を行なうように構成されている。尚、前記制御バルブB1〜B6に形成されるセンタバイパスBs、第一、第二ネガコンバルブ5、6、第一、第二ネガコンライン7、8は本発明のポンプ容量制御手段を構成する。
【0013】
さらに、前記第一、第二ネガコンライン7、8には、後述するようにコントローラ9からの制御指令に基づいて作動する第一、第二電磁逆比例減圧弁(本発明の電磁弁に相当する)10、11が配設されている。該第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11は、コントローラ9からソレノイド非励磁の制御指令が出力されている場合には、前記制御バルブB1〜B6のセンタバイパスBsの通過量に応じて発生するネガコン圧を減圧することなくそのまま第一、第二油圧ポンプ1、2の容量可変手段1a、2aに出力する。一方、コントローラ9からソレノイド励磁の制御指令が出力されると、第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11はネガコン圧をタンク圧(略「0(ゼロ)」Mpa)まで減圧し、該タンク圧を第一、第二油圧ポンプ1、2の容量を最大にする信号圧として容量可変手段1a、2aに出力する。つまり、コントローラ9から第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11に出力されるソレノイド励磁の制御指令は、第一、第二油圧ポンプ1、2の容量を最大にする信号圧出力の指令となり、そして、該信号圧が第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11から容量可変手段1a、2aに出力されることによって、第一、第二油圧ポンプ1、2の容量は最大になるように制御される。
【0014】
また、前記パイロットバルブC1〜C6から出力されるパイロット圧の油圧源はパイロットポンプ3であるが、該パイロットポンプ3からパイロットバルブC1〜C6に至るパイロットポンプ油路12には、油圧ロックレバー(図示しないが、本発明の油圧ロック用操作具に相当する)の操作に連繋して切換わる油圧ロック電磁切換弁13が配設されている。該油圧ロック電換切換弁13は二位置切換弁であって、油圧ロックレバーがロック位置に操作(ロック操作)されている状態では、パイロットポンプ3の吐出油をパイロットバルブC1〜C6に供給しないロック位置Nに位置しているが、油圧ロックレバーを解除位置に操作(解除操作)することにより、パイロットポンプ3の吐出油をパイロットバルブC1〜C6に供給する解除位置Xに切換わるように構成されている。而して、油圧ロックレバーがロック操作されている状態では、油圧ロック電磁切換弁13が中立位置Nに位置していてパイロットバルブC1〜C6にパイロットポンプ3の吐出油が供給されないため、油圧アクチュエータ用操作具が操作されてもパイロットバルブC1〜C6からパイロット圧が出力されず、これにより制御バルブB1〜B6は油圧アクチュエータA1〜A6に圧油供給しない中立位置Nに保持されるようになっている。一方、油圧ロックレバーが解除操作されている状態では、油圧ロック電磁切換弁13が解除位置Xに切換わるためパイロットポンプ3の吐出油がパイロットバルブC1〜C6に供給されることになって、油圧アクチュエータ用操作具の操作に基づいてパイロットバルブC1〜C6からパイロット圧が出力され、これにより制御バルブB1〜B6が作動位置X或いはYに切換わって油圧アクチュエータA1〜A6に圧油が供給されるようになっている。尚、前記油圧ロック電磁切換弁13は、本発明の油圧ロック手段を構成する。
【0015】
一方、前記コントローラ9は、本発明の暖気運転制御手段に相当するものであって、図2のブロック図に示す如く、入力側に、油タンク4内の作動油の温度を検出する作動油温検出センサ(本発明の作動油温検出手段に相当する)14と、油圧ロックレバーのロック操作の有無を検出するロック操作検出手段(例えば、油圧ロックレバーのロック位置を検出するリミットスイッチ等)15とが接続され、出力側に、前記第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11と、エンジンコントローラ16とが接続されている。
【0016】
ここで、前記エンジンコントローラ16は、エンジンキースイッチ(図示せず)の操作に基づいてエンジンEの始動、停止を制御すると共に、エンジンEの回転数を、アクセル操作具17で設定された回転数にするべく燃料噴射量を制御するが、後述するように、前記コントローラ9からエンジン回転数最大指令が出力された場合には、アクセル操作具17の設定に優先してコントローラ9からの指令を実行する。尚、前記アクセル操作具17は、オペレータが作業に応じてエンジン回転数を任意に設定するための操作具であって、例えば、アクセルダイヤルやアクセルレバーにより構成される。
【0017】
そして、前記コントローラ9は、作動油を昇温するための暖気運転制御を行なうが、該暖気運転制御について、図3のフローチャート図に基づいて説明する。まず、エンジンEの始動に伴いシステムスタートすると、作動油温検出センサ14により検出された作動油温Tが設定温度Ts未満か否か(T<Ts?)が判断される(ステップS1)。上記設定温度Tsは、暖気運転を実行するときの作動油温の閾値として予め設定される温度であって、図示しないダイヤルやモニタ装置等を用いてオペレータが季節や作業現場の温度等に応じて任意に設定できるようになっている。
【0018】
前記ステップS1の判断で「YES」、つまり、作動油温Tが設定温度Ts未満の場合には、続けて、ロック操作検出手段15からの検出信号に基づいて油圧ロックレバーがロック操作されているか否かが判断される(ステップS2)。一方、前記ステップS1の判断で「NO」、つまり、作動油温Tが設定温度Ts以上の場合には、ステップS1の判断を繰り返す。
【0019】
前記ステップS2の判断で「YES」、つまり油圧ロックレバーがロック操作されている場合、コントローラ9は、エンジンコントローラ16に対してエンジン回転数を最大にするようエンジン回転数最大指令を出力する(ステップS3)。これによりエンジンコントローラ16は、アクセル操作具17で設定されたエンジン回転数に優先して、エンジン回転数を最大にするべくエンジンEを制御する。
【0020】
さらにコントローラ9は、前記第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11に対し、ソレノイド励磁の指令を出力する(ステップS4)。これにより第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11は、ネガコン圧をタンク圧まで減圧して第一、第二油圧ポンプ1、2の容量可変手段1a、2aに出力するが、該第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11から出力されるタンク圧は前述したように第一、第二油圧ポンプ1、2の容量を最大にする信号圧であり、而して、第一、第二油圧ポンプ1、2の容量は最大になるように制御される。
【0021】
前記ステップS3、S4の処理後は、作動油温Tが前記設定温度Ts以上か否か(T≧Ts?)が判断される(ステップS5)。該ステップS5の判断で「NO」、つまり作動油温Tが設定温度Ts未満の場合には、前記ステップS2の判断に戻る。
【0022】
一方、前記ステップS5の判断で「YES」、つまり作動油温Tが設定温度Ts以上の場合、或いは前記ステップS2の判断で「NO」、つまり油圧ロックレバーがロック操作されていない場合には、コントローラ9は、エンジンコントローラ16に対するエンジン回転数最大指令の出力を停止する(ステップS6)。これによりエンジンコントローラ16は、アクセル操作具17で設定されたエンジン回転数にするべくエンジンEを制御する。
【0023】
さらにコントローラ9は、前記第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11に対し、ソレノイド非励磁の指令を出力する(ステップS7)。これにより第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11は、ネガコン圧を減圧することなくそのまま第一、第二油圧ポンプ1、2の容量可変手段1a、2aに出力する。而して、第一、第二油圧ポンプ1、2の容量は、制御バルブB1〜B6のセンタバイパスBsの通過量に応じて発生するネガコン圧に応じて増減制御される。
【0024】
つまり、コントローラ9は、作動油温Tが設定温度Ts未満で、且つ、油圧ロックレバーがロック操作されている場合に、第一、第二油圧ポンプ1、2の容量を最大にし、且つ、エンジンEの回転数を最大にする暖気運転制御を行なう。これにより、第一、第二油圧ポンプ1、2は最大流量の作動油を吐出し、該最大流量の作動油が中立位置Nの制御バルブB1〜B6のセンタバイパスBs及び第一、第二ネガコンバルブ5、6を通過して油タンク4に回収される。そして、該回収されるまでのバルブ及び管路における圧力損失により発生した熱量によって作動油が加熱され、この様にして作動油を昇温させる暖気運転が行なわれる。この暖気運転は、作動油温Tが設定温度Ts以上になった場合、或いは油圧ロックレバーが解除操作された場合に停止される。そして、暖気運転が停止した場合には、第一、第二油圧ポンプ1、2の容量はネガコン圧に応じて制御され、また、エンジン回転数はアクセル操作具17で設定された回転数になるように制御される。
【0025】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベル1には、暖気運転を行なうための暖気運転制御装置として、作動油の温度を検出する作動油温検出センサ14と、油圧ロックレバーのロック操作の有無を検出するロック操作検出手段15と、ネガコン圧に替えて第一、第二油圧ポンプ1、2の容量を最大にする信号圧(タンク圧)を第一、第二油圧ポンプ1、2の容量可変手段1a、2aに出力する第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11と、暖気運転制御を行なうコントローラ9とが設けられていると共に、該コントローラ9は、作動油の温度Tが設定温度Ts未満で、且つ、油圧ロックレバーがロック操作されている場合に、第一、第二油圧ポンプ1、2の容量を最大にするべく前記第一、第二電磁逆比例減圧弁10、11に信号圧出力の制御指令(ソレノイド励磁の制御指令)を出力し、且つ、エンジン回転数を最大にするべくエンジンコントローラ16にエンジン回転数最大指令を出力する暖気運転制御を行なうことになる。
【0026】
而して、作動油の温度Tが設定温度Ts未満で、且つ、油圧ロックレバーがロック操作されている場合には、コントローラ9の行なう暖気運転制御によって、作動油を設定温度Tsまで昇温させる暖気運転が自動的に行なわれると共に、該暖気運転時には、第一、第二油圧ポンプ1、2の容量が最大になり、且つ、エンジン回転数が最大になるため、第一、第二油圧ポンプ1、2の吐出流量は最大となり、該最大流量の作動油が油タンク4に回収されるまでの圧力損失により発生する熱量によって加熱されることになる。この結果、暖気運転を効率良く行なえることになって、暖気運転にかかる時間を短くすることができ、作業効率の向上に貢献できる。
【0027】
さらに、前記暖気運転が行なわれるのは油圧ロックレバーがロック操作されているときであるから、暖気運転中は制御バルブB1〜B6は中立位置Nに保持されていることになり、而して、作動油は制御バルブB1〜B6のセンタバイパスBsを通過することになるが、制御バルブB1〜B6が中立位置Nに位置しているときのセンタバイパスBsの流路は充分に大きいから、暖気運転により制御バルブB1〜B6がサーマルショックを起こす惧れはない。しかも、油圧ロックレバーがロック操作されている状態では、オペレータが油圧アクチュエータ用操作具を操作しても油圧アクチュエータA1〜A6に圧油供給されることなく、而して、暖気運転中は第一、第二油圧ポンプ1、2の吐出流量が最大であっても、油圧アクチュエータ用操作具を操作したときに該操作具の操作量に対応しない高速度で油圧アクチュエータが作動してしまうような不具合を確実に回避できる。一方、オペレータが自らの意志で暖気運転を停止したい場合には、油圧ロックレバーを解除操作すれば暖気運転は停止することになる。
【0028】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、油圧ポンプの容量を最大にする信号圧を容量可変手段に出力する電磁弁として、ネガコン圧を油圧ポンプの容量可変手段に導く中立位置と、タンク圧を油圧ポンプの容量可変手段に導く作動位置とに切換わる二位置切換電磁弁を用いることもできる。因みに、上記実施の形態では、油圧ポンプの容量を最大にする信号圧を容量可変手段に出力する電磁弁として電磁逆比例減圧弁が用いられているため、該電磁逆比例減圧弁のソレノイドへの入力電流を可変制御することで、油圧ポンプの容量可変手段に出力する信号圧を増減させることができ、これによって、作動油の温度の高低に応じて油圧ポンプの吐出流量を増減させる暖気運転制御も可能となる。
【0029】
また、上記実施の形態では、油圧ポンプとして第一、第二の二つの油圧ポンプが設けられ、これに対応して第一、第二ネガコンバルブ、第一、第二ネガコンライン、第一、第二電磁逆比例減圧弁が設けられているが、油圧ポンプの数が一つでも三つ以上であっても、同様にして本発明を実施できる。さらに本発明は、油圧ショベルに限らず、暖気運転を必要とする各種油圧式作業機械に実施できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、油圧ショベル、油圧クレーン等の油圧式作業機械において、作動油を昇温させるための暖気運転制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1、2 第一、第二油圧ポンプ
1a、2a 容量可変手段
5、6 第一、第二ネガティブコントロールバルブ
7、8 第一、第二ネガティブコントロールライン
9 コントローラ
10、11 第一、第二電磁逆比例減圧弁
13 油圧ロック電磁切換弁
14 作動油温検出センサ
15 ロック操作検出手段
16 エンジンコントローラ
A1〜A6 油圧アクチュエータ
B1〜B6 制御バルブ
Bs センタバイパス
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンを制御するエンジンコントローラと、エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、該油圧ポンプを油圧源とする油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータ用操作具の操作に基づいて油圧ポンプから油圧アクチュエータへの油供給制御を行なうべく作動する制御バルブと、該制御バルブのセンタバイパス通過量に応じて発生するネガティブコントロール圧を油圧ポンプの容量可変手段に導いて油圧ポンプの容量を制御するポンプ容量制御手段と、油圧ロック用操作具がロック操作されているときに前記制御バルブを油圧アクチュエータに圧油供給しない中立位置に保持する油圧ロック手段とを備えてなる油圧式作業機械において、作動油の温度を検出する作動油温検出手段と、前記油圧ロック用操作具のロック操作の有無を検出するロック操作検出手段と、前記ネガティブコントロール圧に替えて油圧ポンプの容量を最大にする信号圧を油圧ポンプの容量可変手段に出力する電磁弁とを設けると共に、作動油の温度が設定温度未満で、且つ、油圧ロック用操作具がロック操作されている場合に、油圧ポンプの容量を最大にするべく前記電磁弁に信号圧出力の制御指令を出力し、且つ、エンジン回転数を最大にするべくエンジンコントローラに制御指令を出力する暖気運転制御手段を設けたことを特徴とする油圧式作業機械における暖気運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−47252(P2012−47252A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189384(P2010−189384)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】