説明

流水検知装置及び複合弁

【課題】本体弁に設ける弁及び配管を低減して設置作業を容易にする。
【解決手段】流水検知装置は配管の途中に設けられ、2次側圧力の低下により本弁を開放して加圧水を給水し、流水検知部により流水検知信号を出力する。流水検知装置の2次側に複合弁60を設ける。複合弁60は、手動操作により開閉する排水弁機構と排水弁機構の閉鎖状態で所定のリリーフ設定圧を越える2次側圧力を受けた場合に開放して排水するリリーフ弁機構を備える。複合弁60は例えば排水弁機構の排水弁体68にリリーフ弁機構を組み込み、排水弁機構の閉鎖状態で2次側圧力がリリーフ設定圧を超えた時に開放動作してピーク圧の発生を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー設備等の消火設備における流水検知装置及び複合弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプリンクラー設備、泡消火設備、水噴霧設備においては、加圧送水装置からの加圧水をヘッドに供給する配管の途中に流水検知装置を設けている。
【0003】
高層ビルに設置されるスプリンクラー設備等においては、加圧送水装置に近い低層階などでは、スプリンクラーヘッドの放水圧力が規定の上限を超える場合がある。このような部分には、流水検知装置の前段に減圧弁設備を設置して減圧を行っている。
【0004】
しかしながら、減圧弁の設置にあたっては、多数の仕切弁や配管を必要とし、その結果設備スペースの増大だけではなく、弁類や配管材といった工業資材と施工工数も増加するという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するため、流水検知装置に減圧弁設備の機能を付加した図6に示す2次側調圧機能付きの流水検知装置が提案されている(特許文献1)。
【0006】
図6において、2次側調圧機能付きの流水検知装置は、ピストン111とシリンダ室115を有したリフト型の弁体110について、弁体110の1次側と2次側を接続するバイパス配管122に設けた調圧パイロット弁125により流水検知装置の2次側圧力の監視を行い、2次側圧力が設定圧力値になるようにシリンダ室115の加圧水を流出制御を行い、弁体110のリフト量(開度)を制御している。
【0007】
このような従来の2次側調圧機能付きの流水検知装置にあっては、シリンダ室115を弁体110の1次側に接続して1次側加圧水を導入しており、シリンダ室115の加圧水を調圧パイロット弁125を介して2次側に排出させることで圧力を下げてピストン111により弁体110をリフトして開くようにしている。
【0008】
また、通常監視状態で2次側の漏水等により圧力が低下した場合には、圧力低下により調圧パイロット弁125が開き、バイパス経路122を通して加圧水を2次側に供給して設定圧力値に回復させる弁体110を開放しない不作動流水量の供給動作を行う。
【0009】
また、火災時にスプリンクラーが作動して一定量を超える流水があると、2次側圧力が急激に低下し、調圧パイロット弁125の開放に伴い、シリンダ室115の加圧水が2次側に流出して圧力が急激に低下し、これによってピストン111をリフトして弁体110を大きく開き、1次側の加圧水を2次側に供給して設定圧力値に回復させて継続的に供給する。このときシリンダ室115には1次側から加圧水が流れ込むが、バイパス経路122の1次側にオリフィス121を設けて1次側加圧水を抑制し、シリンダ室115の圧力水を2次側に流出させている。
【0010】
このようにスプリンクラーの作動時には調圧パイロット弁125の開放によるシリンダ室115の急激な減圧で弁体110を急速に開放させるため、スプリンクラーからの放水で低下した2次側圧力は急速に回復し、設定圧力値をオーバーシュートした後に、設定圧力値に安定する。
【0011】
しかし、2次側圧力が設定圧力値を大きく越えると、2次側配管に例えば樹脂管などを使用していた場合に安全面で問題があることから、調圧パイロット弁125とは別に安全弁133を設け、2次側に高圧が加わらないようにしている。
【0012】
特に、高層ビルの低層階のように1次側圧力が高圧の場合には、流水検知装置による減圧は充分にできず、弁開放から設定圧力値に安定するまでのあいだ、1次側圧力に近い高圧が2次側にかかるおそれがあり、安全弁133を設けることで2次側にかかる高圧を回避することができる。
【0013】
また装置交換を行うためなどのメンテナンス時に流水検知装置の2次側に充水した加圧水を必要に応じて排水するため排水弁140を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11−128388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、このような従来の2次側調圧機能付きの流水検知装置にあっては、2次側調圧のために設けた調圧パイロット弁やオリフィス以外に、2次側に安全弁や排水弁を設けており、それぞれ排水管に接続する必要があり、装置構成がその分複雑になり、流水検知装置の設置作業が大変で時間がかかり、また運用内に行う点検時には、流水検知装置以外に調圧パイロット弁、オリフィス安全弁及び排水弁を点検し、必要があれば分解清掃する必要があり、点検にも手間と時間がかかるという問題がある。
【0016】
本発明は、流水検知装置に設ける弁及び配管を低減して設置作業及び点検を容易にする流水検知装置及び複合弁を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、配管の途中に設けられ、本弁を開放して加圧水を二次側に給水し、流水検知部により流水検知信号を出力する流水検知装置に於いて、
本弁に、手動操作により開閉する排水弁機構と排水弁機構の閉鎖状態で所定のリリーフ設定圧を越える配管内圧力を受けた場合に開放して排水するリリーフ弁機構を一体に備えた複合弁を設けたことを特徴とする。
【0018】
ここで、リリーフ弁機構は、排水弁機構の開閉時に移動する排水弁体の内部に備える。
【0019】
また、複合弁の排水弁機構は、
本弁の2次側に連通する流入ポートと排水管に連通する排水ポートを備えた排水弁ボディと、
流入ポートに連通する弁座に対し軸方向に移動して開閉する排水弁体と、
排水弁体を軸方向に進退して開閉操作する開閉操作部と、
を備え、
複合弁のリリーフ弁機構は、
排水弁体を弁ボディとして、2次圧受圧面に連通する入力ポート、入力ポートに連通する弁座、弁座に続く弁室、弁室を前記排水側に連通する排水ポートを形成したリリーフ弁ボディと、
弁座に対し軸方向に移動して開閉自在なリリーフ弁体と、
リリーフ弁体を閉鎖方向に付勢してリリーフ設定圧を決定するスプリングと、
を備えたことを特徴とする。
【0020】
リリーフ弁機構の弁座とリリーフ弁体を、円錐状に開口した弁座に対し軸方向に移動して開閉する円盤状の弾性シール部材を装着した弁体とする。
【0021】
リリーフ弁機構の弁座とリリーフ弁体を、円筒状に開口した弁座に対し軸方向に移動して開閉する円錐弁体とする。
【0022】
排水弁ボディに対し、リリーフ弁機構を備えた排水弁体及び開閉操作部材を着脱自在に装着する。
【0023】
本発明は複合弁において、本弁に、手動操作により開閉する排水弁機構と排水弁機構の閉鎖状態で所定のリリーフ設定圧を越える配管内圧力を受けた場合に開放して排水するリリーフ弁機構を一体に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、流水検知装置の2次側に、手動操作により開閉する排水弁機構と排水弁機構の閉鎖状態で所定のリリーフ設定圧を越える2次側圧力を受けた場合に開放して排水するリリーフ弁機構を備えた複合弁を設けたため、排水弁と安全弁として機能するリリーフ弁を別々に設ける必要がなくなり、本弁の回りに設置する機器を低減して本弁と機器の間の配管を低減し、流水検知装置の設置作業を簡単且つ容易にし、また点検時における点検箇所を低減して点検作業を効率化することができる。
【0025】
また、複合弁は、排水弁ボディに対しリリーフ弁機構を備えた排水弁体と排水開閉用の操作部を一体化して着脱自在に装着しているため、この一体化した部分を排水弁ボディから外すことで、排水弁機構とリリーフ弁機構の点検及び清掃を簡単且つ容易に行うことができる。
【0026】
また排水弁機構とリリーフ弁機構を備えた複合弁として同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】通常監視状態における本発明による流水検知装置の実施形態を示した説明図
【図2】図1に設けた複合弁の実施形態を示した断面図
【図3】図2の複合弁の排水開放状態を示した断面図
【図4】図1に設けた複合弁の他の実施形態を示した断面図
【図5】図4の複合弁の排水開放状態を示した断面図
【図6】2次側調圧機能を備えた従来の流水検知装置を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は通常監視状態における本発明による流水検知装置の実施形態を示した説明図である。図1において、流水検知装置10は、例えば高層ビル等の加圧給水装置が接続された給水本管から分岐された各階の分岐管の途中に設けられている。
【0029】
流水検知装置10は弁ボディ12の下側に1次側の流入口14を形成し、ここに仕切弁16を介して1次側配管18を接続している。弁ボディ12の上側には2次側となる流出口20が形成され、ここに2次側配管22を接続し、2次側配管22の先にはスプリンクラーヘッドが接続されている。
【0030】
弁ボディ12の内部には、本弁24が後方に一体に形成したピストン28により摺動自在に組み込まれており、弁ボディ12側に一体に形成した弁シート26に当接して、通常監視状態では閉鎖状態となっている。本弁24の背後に形成されたピストン28はシリンダ室30に摺動自在に組み込まれており、シリンダ室30にはピストンを閉鎖方向に付勢するリターンスプリング34が組み込まれている。
【0031】
弁ボディ12内に設けた弁シート26の本弁24が当接するシート面の開口からは外部に配管36が接続され、配管36の先端には信号停止弁38を介して圧力スイッチ40が接続されている。また配管36の下側は、オートドリップ42及びチャッキ弁44を介して排水管側に接続されている。
【0032】
圧力スイッチ40は流水検知部として機能し、本弁24が開放した際に、弁シート26の流入口から加圧水を配管36を介して導入し、配管36による流入量がオートドリップ42の排出量を超えると、圧力スイッチ40に圧力水が加わって作動することによりタイマを起動し、所定時間継続して圧力水が加わった時に流水検知信号を外部に出力する。
【0033】
本弁24と一体に形成したピストン28と、シリンダ室30及びリターンスプリング34は、流水検知装置10に設けた本弁24の本弁駆動機構を構成し、この本弁駆動機構は本弁24の1次側と2次側を接続するバイパス配管48に設けた調圧パイロット弁50により制御される。
【0034】
調圧パイロット弁50の1次側のバイパス配管48にはチャッキ弁52とオリフィス54が設けられる。オリフィス54は調圧パイロット弁50の開放によりシリンダ室30を2次側に排水して本弁24を開放する際の1次側からの流れ込みを抑える。チャッキ弁52は、1次側圧力が低下してもチャッキ弁52が閉鎖することで2次側圧力が低下しないようにしており、このバイパス配管48にチャッキ弁52を導入することによって流水検知装置10全体を逆止弁構造としている。
【0035】
調圧パイロット弁50に接続するバイパス配管48に対しては、シリンダ室30が配管49を介して接続され、この配管49には手動開放弁55が接続されている。
【0036】
手動開放弁55は、流水検知装置10の本弁24の開閉制御が何らかの原因でできなくなった異常時に、手動開放弁55を開くことで、シリンダ室30の加圧水を強制的に排水し、本弁24を1次側圧力による押上げで全開位置に作動できるようにしている。
【0037】
また、手動開放弁55は施工時における配管内のゴミを取り除くための配管フラッシング作業や、弁座にゴミなどが付着した際に手動で全開状態に開放させ、水流で取り除く作業にも利用できる。更に流水検知装置10の1次側には1次側圧力計56が接続され、2次側には2次側圧力計58が接続されている。
【0038】
本実施形態にあっては、更に、流水検知装置10の2次側に、排水弁機能とリリーフ弁機能を一体に備えた複合弁60を接続している。複合弁60は通常監視状態では排水弁機能を弁閉鎖としてリリーフ弁機能を有効としており、火災によるスプリンクラーヘッドの作動に伴い調圧パイロット弁50により本弁24が開放して2次側調圧開始までの間に一時的に高圧となるオーバーシュートを生じた場合、所定のリリーフ設定圧を超えた時に開動作して排水管に連通しピーク圧の発生を抑える安全弁として動作する。
【0039】
また複合弁60は2次側配管に充水している加圧水を必要に応じて排水する場合に手動操作により開放され排水管に連通させる。
【0040】
火災における流水検知装置10の動作は次のようになる。火災時にスプリンクラーヘッドが作動して所定量を超える流水があると、2次側圧力が急激に低下し、これを受けて調圧パイロット弁50を開放し、シリンダ室30の加圧水が2次側に流出して圧力が急激に低下し、ピストン28をリフトして本弁24を大きく開き、1次側の加圧水を2次側に供給して設定圧力値に回復させて継続的に供給する。このときシリンダ室30には1次側から加圧水が流れ込むが、バイパス配管48の1次側にオリフィス54を設けて1次側加圧水を抑制し、シリンダ室30の圧力水を2次側に流出させている。
【0041】
スプリンクラーヘッドの作動時には調圧パイロット弁50の開放によるシリンダ室30の急激な減圧で本弁24を急速に開放させるため、スプリンクラーヘッドからの放水で低下した2次側圧力は急速に回復し、設定圧力値をオーバーシュートした後に、設定圧力値に安定する。
【0042】
2次側圧力のオーバーシュートに対しては複合弁60に内蔵したリリーフ弁機構がリリーフ設定圧を超えた時に開動作して排水することで、ピーク圧の発生を抑える。
【0043】
図2は図1の流水検知装置に設けた複合弁の実施形態を示した説明図である。図2において、複合弁60は排水弁ボティ61を流水検知装置の弁ボディと一体に形成しており、右側に流水検知装置の2次側に連通した流入ポート62を形成している。なお、排水弁ボディ61を流水検知装置の弁ボディから切り離して形成し、流水検知装置の2次側と配管接続するようにしても良い。
【0044】
排水弁ボディ61内には排水弁室64が形成され、その下側に排水ポート66を開口して排水管に接続される。流入ポート62に続いては排水弁座65が形成され、排水弁座65に対しては排水弁体68が軸方向に移動して開閉自在に配置される。
【0045】
排水弁体68は流入ポート62の反対側に着脱自在に設けたカバー76のネジ穴80にネジ込んでいる開閉操作ロッド78のネジ部78bにより排水弁座65に対し軸方向に移動することで開閉自在に配置されている。開閉操作ロッド78は先端の頭部78aを排水弁体68に収納しているリテーナ90とプラグ74の間に位置させて抜け止めし、ネジ部78bをカバー76のネジ穴80にネジ込み、後部をカバー76の外に取り出して矩形操作部78cを形成し、矩形操作部78に矩形穴を持つ操作ハンドルなどをセットして回すようにしている。
【0046】
排水弁体68の先端には支持部材72によって弾性弁体シート70が装着され、開閉操作ロッド78を前進回転することで、排水弁体68の弾性弁体シート70を排水弁座65に押し当てて流入ポート62と排水ポート66の間を遮断する排水弁閉鎖状態とする。また開閉操作ロッド78を後退回転することで、排水弁体68の弾性弁体シート70を排水弁座65から離し、流入ポート62と排水ポート66の間を連通する排水弁開放状態とする。
【0047】
このような複合弁60における排水弁機構に対し、リリーフ弁機構は排水弁体68に一体に組み込まれている。排水弁体68の流入ポート62側の受圧面には、リリーフ弁用の流入ポート83が設けられ、流入ポート83に続いて円錐状に開いたリリーフ弁座85を形成している。
【0048】
リリーフ弁座85の左側には先端の軸部に弾性弁体シート84を止め輪86で固定した円筒状のリリーフ弁体82が軸方向に移動自在に組み込まれ、後方のリテーナ90との間に配置したスプリング88により閉鎖方向に付勢され、スプリング88の荷重によりリリーフ弁が開放動作する所定のリリーフ設定圧を決定している。また、リリーフ弁体82の周囲となる排水弁体68の部分には排水穴92が円周方向の複数個所に形成されている。
【0049】
図2の複合弁60におけるリリーフ弁としての動作は次のようになる。通常監視状態で複合弁60は排水弁座65に排水弁体68の弾性弁体シート70を押し当てた閉鎖状態にあり、流入ポート62からの2次側圧力は排水弁体68の流入ポート83を介して閉鎖状態にあるリリーフ弁体82の弾性弁体シート84に作用し、スプリング88によるリリーフ設定圧以下にあるため、排水穴92に対する流路を閉鎖している。
【0050】
火災によるスプリンクラーヘッドの作動により図1の調圧パイロット弁50の作動で本弁24が開放されると、スプリンクラーからの放水で低下した2次側圧力は急速に回復し、設定圧力値をオーバーシュートした後に、設定圧力値に安定する。
【0051】
この本弁24の開放に伴う2次圧力の増加でリリーフ弁体82を押す力がスプリング88によるリリーフ設定荷重を超えると、スプリング88に抗してリリーフ弁体82が移動して流入ポート83を排水穴92に連通し、2次側加圧用水を排水ポート66に流すことで2次側圧力をリリーフ設定圧に抑えてピーク圧の発生を防ぐ。
【0052】
次に複合弁60を排水弁として使用する場合の動作を説明する。図3は図2の複合弁60を排水弁として開放動作した場合を示している。排水弁として使用する場合には、カバー76より取り出している開閉操作ロッド78の矩形軸部78cに操作ハンドルをセットし、開閉操作ロッド78を後退方向に回す。
【0053】
このような開閉操作ロッド78の操作により図3に示すように排水弁体68が後退し、先端に装着している弾性弁体シート70が排水弁座65から離れ、流入ポート62と排水ポート66の間を連通する排水弁開状態となり、2次側の加圧水を排水管に排水することができる。
【0054】
また、複合弁60を点検する場合には、排水弁ボディ61の左側にネジ込み固定しているカバー76を外すと、開閉操作ロッド78及び排水弁体78を排水弁ボディ61から分解して取り出すことができ、排水弁座65の点検、及び分解した排水弁体68の点検、排水弁体68に内蔵しているリリーフ弁機構の点検、更にこれらの清掃を簡単且つ容易に行うことができる。
【0055】
なお、図2の排水機能が閉鎖状態の時に、開閉操作ロッド78をさらに右側の閉鎖方向に回動移動可能な構成とし、開閉操作ロッド78の頭部78aがリテーナ90とリリーフ弁82を右方向の閉鎖状態にさらに移動し、開放方向への移動をできないように制限することにより、リリーフ弁としての機能を解除する機能を設けてもよい。この場合は、開閉操作ロッド78の回動位置に応じて、リリーフ弁の設定・解除状態が目視できるように、開閉操作ロッド78周囲の排水弁ボディ61に状態指示を表示するようしたがほうが望ましい。
【0056】
図4は図1に示した複合弁の他の実施形態を示した断面図であり、排水弁体に組み込んだリリーフ弁機構として円錐弁体を使用したことを特徴とする。
【0057】
図4において、排水弁機構は図2の実施形態と基本的に同じである。即ち、排水弁ボティ61の右側に流水検知装置の2次側に連通した流入ポート62を形成し、排水弁ボディ61内には排水弁室64を形成し、その下側に排水ポート66を開口している。流入ポート62に続いては排水弁座65が排水弁室64側に配置され、排水弁座65に対しては排水弁体68が軸方向に移動して開閉自在に配置される。
【0058】
排水弁体68は流入ポート62の反対側に着脱自在に設けたカバー76のネジ穴80にネジ込んでいる開閉操作ロッド78により排水弁座65に対し軸方向に移動することで開閉自在に配置されている。
【0059】
開閉操作ロッド78は先端の頭部78aは排水弁体68に収納しているリテーナ90とプラグ74の間に位置させて抜け止めし、ネジ部78bをカバー76のネジ穴80にネジ込み、後部をカバー76の外に取り出して矩形操作部78cを形成し、矩形操作部78に矩形穴を持つ操作ハンドルなどをセットして回すようにしている。
【0060】
排水弁体68の先端には弾性弁体シート70が止め輪77により装着され、開閉操作ロッド78を前進回転することで、排水弁体68の弾性弁体シート70を排水弁座65に押し当てて流入ポート62と排水ポート66の間を遮断する排水弁閉鎖状態としている。
【0061】
また開閉操作ロッド78を後退回転することで、排水弁体68の弾性弁体シート70を排水弁座65から離し、流入ポート62と排水ポート66の間を連通する排水弁開放状態とすることができる。
【0062】
リリーフ弁機構は排水弁体68に組み込まれている。排水弁体68の流入ポート62側の受圧面には、リリーフ弁用の流入ポート96が設けられ、流入口にゴミ除去のためフィルタ95を配置している。流入ポート96の反対側は円筒穴として開いたリリーフ弁座98を形成している。
【0063】
リリーフ弁座98の左側には先端に円錐弁部94aを形成したプランジャ型のリリーフ弁体94が軸方向に移動自在に配置され、後方の止め輪100で係止した円筒状のリテーナ104との間に配置してスプリング106により閉鎖方向に付勢され、スプリング108の荷重によりリリーフ弁が開放動作する所定のリリーフ設定圧を決定している。また、リリーフ弁体94の周囲となる排水弁体68の部分には排水穴108が円周方向の複数個所に形成されている。
【0064】
図4の複合弁60におけるリリーフ弁としての動作は次のようになる。通常監視状態で複合弁60は排水弁座65に排水弁体68の弾性弁体シート70を押し当てた閉鎖状態となっている。
【0065】
火災によるスプリンクラーの作動で図1の調圧パイロット弁50の作動で本弁24が開放すると、スプリンクラーからの放水で低下した2次側圧力は急速に回復し、設定圧力値をオーバーシュートした後に、設定圧力値に安定する。
【0066】
この本弁24の開放に伴う2次圧力の増加でリリーフ弁体94を押す力がスプリング106によるリリーフ設定荷重を超えると、スプリング106に抗してリリーフ弁体94が移動し、流入ポート96を排水穴108に連通し、2次側加圧用水を排水ポート66に流すことで2次側圧力をリリーフ設定圧に抑えてピーク圧の発生を防ぐ。
【0067】
次に複合弁60を排水弁として使用する場合の動作は図5に示すようになる。排水弁として使用する場合には、開閉操作ロッド78の矩形軸部78cに操作ハンドルをセットし、開閉操作ロッド78を後退方向に回して排水弁体68を後退し、弾性弁体シート70が排水弁座65から離れ、流入ポート62と排水ポート66の間を連通する排水弁開となり、2次側の加圧水を排水管に排水することができる。
【0068】
また、複合弁60を点検する場合には、排水弁ボディ61の左側に捩じ込み固定しているカバー76を外すと、開閉操作ロッド78及び排水弁体78を排水弁ボディ61から分解して取り出すことができ、排水弁座65の点検、及び分解した排水弁体68の点検、更に、排水弁体68に内蔵しているリリーフ弁機構の点検、更にこれらの清掃を簡単且つ確実に行うことができる。
【0069】
また図4の実施形態においても、開閉操作ロッド78をさらに流入口62側に移動させ、リリーフ弁体94が左方向の開放方向に移動しないように、リテーナ104及びリリーフ弁体94を右側に固定して、流入口96と排水ポート66の連通を閉鎖維持するリリーフ弁機能を無効可能にする構成を追加してもよい。流水検知装置においてリリーフ弁機能が必要ない場合、あるいはメンテナンス時に排水弁体68の弁閉鎖状態を点検する際などでリリーフ弁機能を無効に設定することができる。
【0070】
なお、上記の実施形態は流水検知装置に複合弁を設ける場合を例にとっているが、本発明の他の形態にあっては複合弁60そのもの提供するものであり、その実施形態は図2乃至図5に示したと基本的に同じであるが、図1の流水検知装置に限定されず、排水弁とリリーフ弁を同時に設けている配管設備の弁として適宜の設備や機器に使用することができる。
【0071】
また、本実施形態の流水検知装置及び複合弁は、ビル向けのスプリンクラー設備に適用した場合を示したが、これに限らず、住宅向けの消火設備などにも適用でき、また泡消火設備の流水検知装置や、トンネル水噴霧設備の自動弁装置などにも適用することができる。必ずしも、二次側配管には常時加圧水が充水されている設備に限らず、火災時の弁開放により二次側配管に加圧水が供給される設備においても適用できる。
【0072】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0073】
10:流水検知装置
60:複合弁
61:排水弁ボディ
62,96:流入ポート
64:排水弁室
65:排水弁座
66:排水ポート
68:排水弁体
70,84:弾性弁体シート
76:カバー
78:開閉操作ロッド
82,83,94:リリーフ弁体
85:円錐弁座
88,106:スプリング
92,108:排水穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の途中に設けられ、本弁を開放して加圧水を二次側に給水し、流水検知部により流水検知信号を出力する流水検知装置に於いて、
前記本弁に、手動操作により開閉する排水弁機構と前記排水弁機構の閉鎖状態で所定のリリーフ設定圧を越える配管内圧力を受けた場合に開放して排水するリリーフ弁機構を一体に備えた複合弁を設けたことを特徴とする流水検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の流水検知装置に於いて、
前記リリーフ弁機構は、前記排水弁機構の開閉時に移動する排水弁体の内部に備えることを特徴とする流水検知装置。
【請求項3】
請求項1記載の流水検知装置に於いて、
前記複合弁の排水弁機構は、
前記本弁の2次側に連通する流入ポートと排水管に連通する排水ポートを備えた排水弁ボディと、
前記流入ポートに連通する弁座に対し軸方向に移動して開閉する排水弁体と、
前記排水弁体を軸方向に進退して開閉操作する開閉操作部材と、
を備え、
前記複合弁のリリーフ弁機構は、
前記排水弁体を弁ボディとして、配管内圧受圧面に連通する入力ポート、前記入力ポートに連通する弁座、前記弁座に続く弁室、前記弁室を前記排水側に連通する排水ポートを形成したリリーフ弁ボディと、
前記弁座に対し軸方向に移動して開閉自在なリリーフ弁体と、
前記リリーフ弁体を閉鎖方向に付勢して前記リリーフ設定圧を決定するスプリングと、
を備えたことを特徴とする流水検知装置。
【請求項4】
請求項1記載の流水検知装置に於いて、
前記リリーフ弁機構の弁座とリリーフ弁体を、円錐状に開口した弁座に対し軸方向に移動して開閉する円盤状の弾性シール部材を装着した弁体としたことを特徴とする流水検知装置。
【請求項5】
請求項1記載の流水検知装置に於いて、
前記リリーフ弁機構の弁座とリリーフ弁体を、円筒状に開口した弁座に対し軸方向に移動して開閉する円錐弁体としたことを特徴とする流水検知装置。
【請求項6】
請求項1記載の流水検知装置に於いて、前記排水弁ボディに対し、前記リリーフ弁機構を備えた排水弁体及び開閉操作部材を着脱自在に装着したことを特徴とする流水検知装置。
【請求項7】
手動操作により開閉する排水弁機構と前記排水弁機構の閉鎖状態で所定のリリーフ設定圧を越える配管内圧力を受けた場合に開放して排水するリリーフ弁機構を一体に備えたことを特徴とする複合弁。
【請求項8】
請求項7記載の複合弁に於いて、
前記リリーフ弁機構は、前記排水弁機構の開閉時に移動する排水弁体の内部に備えることを特徴とする複合弁。
【請求項9】
請求項7記載の複合弁に於いて、
前記複合弁の排水弁機構は、
前記本弁の2次側に連通する流入ポートと排水管に連通する排水ポートを備えた排水弁ボディと、
前記流入ポートに連通する弁座に対し軸方向に移動して開閉する排水弁体と、
前記排水弁体を軸方向に進退して開閉操作する開閉操作部材と、
を備え、
前記複合弁のリリーフ弁機構は、
前記排水弁体を弁ボディとして、2次圧受圧面に連通する入力ポート、前記入力ポートに連通する弁座、前記弁座に続く弁室、前記弁室を前記排水側に連通する排水ポートを形成したリリーフ弁ボディと、
前記弁座に対し軸方向に移動して開閉自在なリリーフ弁体と、
前記リリーフ弁体を閉鎖方向に付勢して前記リリーフ設定圧を決定するスプリングと、
を備えたことを特徴とする複合弁。
【請求項10】
請求項7記載の複合弁に於いて、
前記リリーフ弁機構の弁座とリリーフ弁体を、円錐状に開口した弁座に対し軸方向に移動して開閉する円盤状の弾性シール部材を装着した弁体としたことを特徴とする複合弁。
【請求項11】
請求項7記載の複合弁に於いて、
前記リリーフ弁機構の弁座とリリーフ弁体を、円筒状に開口した弁座に対し軸方向に移動して開閉する円錐弁体としたことを特徴とする複合弁。
【請求項12】
請求項7記載の複合弁に於いて、前記排水弁ボディに対し、前記リリーフ弁機構を備えた排水弁体及び開閉操作部材を着脱自在に装着したことを特徴とする複合弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−226609(P2011−226609A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98626(P2010−98626)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】