説明

液処理装置

【課題】処理カップ内の気流制御により、ミスト再付着防止および膜厚均一性向上を図る。
【解決手段】処理カップ(33A)は、第1のカップ部材(40A)と、第2のカップ部材(60)と、前記第1のカップ部材と前記第2のカップ部材との間に設けられた第3のカップ部材(70)とを有する。第1のカップ部材(40A)は、環状の内側傾斜面(43)と、概ね水平な環状の頂面(43b)と、環状の外側傾斜面(41)とを有している。第3のカップ部材(70)は、スピンチャック(31)により保持された基板の周縁(We)より高くかつ外側の位置に位置するように設けられた内側端縁(70e)を有している。頂面(43b)は、平面視において、基板の周縁(We)と第3のカップ部材の内側端縁(70e)とを包含するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板に対して当該基板を回転させながら処理液を供給して所定の液処理を施す液処理装置に関する。本発明の好適かつ非限定的な一実施形態においては、前記液処理装置は、基板にレジスト膜等の塗布膜を形成するためにレジスト液等の塗布液を基板に塗布するための塗布装置である。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において用いられるフォトリソグラフィープロセスにおいては、主として、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布工程、レジスト膜を所定のパターンに露光する露光工程、露光されたレジスト膜を現像する現像工程が行われ、ウエハ上に所定のレジストパターンが形成される。
【0003】
レジスト塗布工程では、回転しているウエハ表面の中心部にノズルからレジスト液を供給し、そのレジスト液を遠心力により半径方向外側に拡散させることによってウエハの表面全体をレジスト液で覆う、いわゆるスピン塗布法が多く用いられている。
【0004】
スピン塗布法は、ウエハを保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックにより保持されたウエハの表面にレジスト液を供給するレジストノズルと、スピンチャックにより保持されたウエハの周囲を囲む処理カップとを備えた塗布ユニット(塗布装置)、いわゆるスピンコーターにより実行される。また、塗布ユニットは、EBR(エッジビードリムーバル)処理およびBR(バックリンス)処理と呼ばれるウエハ表裏面の周縁部に付着した不要なレジストを除去するための処理を実行するために、洗浄液(溶剤)を吐出する洗浄ノズルをさらに有している。なお、EBR処理とBR処理はベベル洗浄ノズルなどと呼ばれる共通の洗浄ノズルを用いて同時に行うことができる。
塗布ユニットの運転中においては、処理カップの底部に接続された排気管を介して処理カップ内の雰囲気が吸引される。この吸引により処理カップ内に気流が形成され、遠心力によりウエハから飛散するレジスト液または溶剤等の液体(特にミスト状液体)が、前記気流により処理カップ底部に導かれてカップ内から排出される。すなわち、前記気流は、ウエハから一旦飛散したミストがウエハに再付着することを防止している。
【0005】
一般的に、塗布ユニットでは、プリウエット、レジスト液吐出、レジスト液拡散、レジスト液平坦化、レジスト液乾燥(このときレジストの吐出は停止されている)、EBR/BR(このとき溶剤が吐出されている)および最終乾燥という一連のステップが順次行われる。各ステップにおいて、カップ内の排気は常時行われている。プリウエットシンナーの吐出時およびレジスト液の吐出および拡散時においては、ウエハから比較的多量のミストが飛散するため、このようなミストのウエハへの再付着を確実に防止する観点から、大きな排気流量が要求される。その一方で、その後のレジスト液乾燥のステップでは、ミストの飛散量は少ないため、要求される排気流量は比較的小さい。また、EBR/BRおよび最終乾燥(特にEBR/BR)の各ステップにおいては、中間程度の排気流量が要求される。
【0006】
前述した塗布ユニットは、フォトリソグラフィープロセスに関する各種工程を一貫して行うことができるように構成されたシステムに組み込まれている。このシステムは、露光を行う露光装置と、フォトリソグラフィープロセスの露光工程以外の各種工程(レジスト塗布、現像、ベーク等)を行う塗布現像装置とから構成されている。主としてスループット向上の観点から、塗布現像装置には、同種の処理ユニット(レジスト塗布ユニット、現像ユニット、ベークユニット等)が複数台ずつ組み込まれている。前述した塗布ユニットにおける排気を行うため、前記複数の塗布ユニットには排気系が接続されている。この排気系は、複数の塗布ユニットで共用される共通排気系が含まれる。また、前記排気系には、各塗布ユニットに個別に設けられた排気モジュールが含まれる場合もある。
【0007】
排気系の負担を軽減するため、複数の塗布ユニットは、大排気流量が要求されるステップの実行期間が重複しないように、タイミングをずらして運転されている。プリウエット、レジスト液吐出およびレジスト液拡散の各ステップを実行するために必要とされる時間は比較的短いので、1つの塗布現像装置に組み込まれる塗布ユニットの台数が多くなったとしても、各塗布ユニットにおけるこれらのステップの実行期間に重複が生じないようにすることは比較的容易である。しかし、中程度の排気流量が要求されるEBR/BRおよび最終乾燥の各ステップの実行に必要とされる時間は比較的長い。このため、1つの塗布現像装置に組み込まれる塗布ユニットの台数が多くなると、各塗布ユニットにおけるこれらのステップの実行期間に重複が生じないようにすることは困難となる。従って、上記の観点から、排気流量を比較的小さくした場合でも、ミストのウエハへの再付着を効果的に防止することができるような気流が形成される処理カップが望まれている。
【0008】
また、前記排気により処理カップ内に生じる気流はミストのウエハへの再付着防止という有益な効果をもたらすが、その反面ウエハ面内の膜厚不均一という別の問題を生じさせ得る。すなわち、ウエハ周縁部を通過する気流は、レジスト液の乾燥を促進させ、また、レジストをウエハ周縁に押し込むため、ウエハ周縁部におけるレジスト膜の膜厚を厚くするように作用する。気流のウエハ周縁部表面への入射角が大きくなるほど、その傾向は大きくなることが最近の発明者の研究によりわかっている。このような膜厚不均一は、レジスト膜の極薄化がすすめられている近年においては、無視できないものがある。従って、上記の観点から、ウエハ周縁部における膜厚増大を生じさせないような気流を形成することができる処理カップが望まれている。
【0009】
カップ内の気流の改善のためさまざまな技術が提案されており、その一例が、本件と同一の出願人による特許出願に係る特許公開公報特開2004−207573号(特許文献1)に記載されている。ここはウエハ周縁部近傍の気流制御の技術が開示されており、これによれば、ウエハ周縁部表面の膜厚が他の部位より厚くなる傾向を低減することができる。しかしながら、近年ではレジスト膜の極薄化に伴いさらに高い膜厚均一性が求められてきており、この点において特許文献1の技術にはさらなる改善の余地がある。また、特許文献1の技術には、ミスト再付着防止機能に関しても改善の余地がある。
【0010】
また、本件出願人は、カップ内の気流を制御する技術に関する、本願の出願時点において未公開の特許出願(特願2009−051174号)も出願している。この未公開出願に記載されている技術は、ミスト再付着防止機能を大幅に改善する。しかし、膜厚均一性の観点からはさらなる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−207573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、液処理結果に悪影響を及ぼすような気流、例えば塗布膜の膜厚均一性を害するような気流、または処理液のミストの基板への再付着を促すような気流の発生を防止または抑制することができる処理カップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、液処理装置において、基板を水平に保持して鉛直軸線周りに回転させるように構成されたスピンチャックと、前記スピンチャックにより保持された基板の周囲を取り囲むように設けられた処理カップであって、当該処理カップ内の雰囲気を排気するための排気路が接続されている処理カップと、前記スピンチャックに保持された基板に第1の処理液を供給するように設けられた第1の処理液ノズルと、を備え、前記処理カップ(33)は、 前記スピンチャックに基板が保持されたとき、当該基板よりも低い位置に位置するように設けられた第1のカップ部材と、前記第1のカップ部材よりも外側かつ上方に設けられた第2のカップ部材と、前記第1のカップ部材と前記第2のカップ部材との間に設けられた第3のカップ部材であって、前記第1のカップ部材と前記第2のカップ部材との間の空間を分割して、前記第1および第3のカップ部材の間の第1の環状流路と前記第2および第3のカップ部材の間の第2の環状流路を画成する第3のカップ部材と、を有しており、前記第1および第2の環状流路は前記排気路に連通し、前記第3のカップ部材は、前記スピンチャックにより保持された基板の周縁より高くかつ外側の位置に位置するように設けられた内側端縁を有しており、前記第1のカップ部材は、外側にゆくに従い高さが高くなる環状の内側傾斜面と、前記内側傾斜面の外周縁に接続された概ね水平な環状の頂面と、前記頂面の外周縁に接続されるとともに外側にゆくに従い高さが低くなる環状の外側傾斜面と、を有しており、前記第1のカップ部材の前記環状の頂面は、平面視において、前記スピンチャックにより保持された基板の周縁と前記第3のカップ部材の内側端縁とを包含するように設けられている、液処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1のカップ部材に設けた概ね水平な環状の頂面によりバックフロー(基板の回転に伴い基板裏面側空間に発生する外向きの流れ)をガイドまたは整流することにより、例えば塗布膜の膜厚均一性を害するような気流、または処理液のミストの基板への再付着を促すような気流の発生を防止または抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】処理カップの第1構成例を備えたレジスト塗布装置の構成を示す概略断面図。
【図2】処理カップの第1構成例の要部を示す部分破断斜視図。
【図3】処理カップの第1構成例の平面図。
【図4】ベベル洗浄ノズル示す図であって、(a)はその側面図、(b)は内側カップ部材に嵌め込まれたベベル洗浄ノズル示す斜視図。
【図5】内側カップ部材へのベベル洗浄ノズルの配置を示す斜視図。
【図6】レジスト液吐出時に第1構成例のカップ内に生じる気流およびミストの動きを示す概略断面図。
【図7】ベベル洗浄時に第1構成例のカップ内に生じる気流およびミストの動きを示す概略断面図。
【図8】処理カップの第2構成例(発明の実施形態)の要部を示す縦断面図。
【図9】処理カップの第2構成例(発明の実施形態)の要部における各部寸法を説明するための縦断面図。
【図10】処理カップの従来構成例に生じる気流を説明するための縦断面図。
【図11】処理カップの第1構成例に生じる気流を説明するための縦断面図。
【図12】処理カップの第2構成例に生じる気流を説明するための縦断面図。
【図13】従来構成例および第2構成例における排気圧力とウエハ周縁部膜厚との関係を示すグラフ。
【図14】従来構成例および第2構成例における排気圧力とミスト量との関係を示すグラフ。
【図15】第1構成例および第2構成例に係るカップを備えたレジスト塗布装置におけるプロセス条件の一例を説明するグラフ。
【図16】レジスト塗布装置を備えた塗布現像装置の構成の一例を示す概略平面図。
【図17】図16に示す塗布現像装置の概略斜視図。
【図18】図16に示す塗布現像装置の概略縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して発明の好適な実施形態について説明する。なお、実施形態に係る液処理装置に含まれる処理カップは、本件出願人による本願出願時点において未公開の別の特許出願(特願2009−051174号)に記載された処理カップ(以下これを「第1構成例」と呼ぶこととする)をベースに改良を施したものである。以下においては、第1構成例について説明した後、それとの相違点を中心として実施形態に係る処理カップ(以下「第2構成例」と呼ぶこととする)について説明するものとする。
【0017】
[第1構成例]
まず、図1〜図7を参照して、第1構成例に係る処理カップおよびそれを備えた液処理装置について説明する。この液処理装置は、レジスト塗布装置として構成されている。図1に示すように、レジスト塗布装置は、真空吸着することによりウエハWを水平に保持するスピンチャック31を備えている。このスピンチャック31はその下方に設けられた回転駆動部32(回転モータ)により鉛直軸回りに回転することが可能である。また、スピンチャックは、回転駆動部32内に併設された昇降駆動部(図示せず)により昇降することも可能である。スピンチャック31を取り囲むようにして処理カップ33が設けられている。処理カップ33は、主として、内側カップ部材40と、中間カップ部材50と、外側カップ部材60とから構成されている。
【0018】
図1及び図2に示すように、内側カップ部材40は、環状の外側傾斜面41と環状の外側垂直面42とを有している。外側傾斜面41は、スピンチャック31に保持されたウエハWの裏面側周縁部と近接して対向する位置から外側に延びており、外側にゆくに従って高さが低くなるように傾斜している。外側垂直面42は、外側傾斜面41の最外周端に連続して鉛直方向下方に向かって延びている。外側傾斜面41および外側垂直面42はウエハWからこぼれ落ちたレジスト液が流れ落ちるのをガイドする下側ガイド部45の役割を有している。また内側カップ部材40は、外側にゆくに従って高さが高くなるように傾斜している環状の内側傾斜面43を有している。内側傾斜面43の内側端は、ウエハWの周縁から第1の所定距離、例えば十数ミリ中心側に離れた位置の真下に位置する。内側傾斜面43の外側端は、ウエハWの周縁から第2所定距離、例えば数ミリ中心側に離れた位置の真下に位置する。内側傾斜面43の外側端とその裏面により、外側傾斜面41の内側端部に上に張り出す傾斜凸部43aが形成されている。さらに内側カップ部材40は、内側傾斜面43の内側端を外周縁とする水平な円形面44を有する円板状部材を有しており、この円板状部材の中央をスピンチャック31の回転軸が貫通している。
【0019】
中間カップ部材50の上側部分(後述する上側ガイド部70)は、内側カップ部材40と外側カップ部材60との間に位置しており、内側カップ部材40と外側カップ部材60との間の環状空間を2分割する。この意味においてカップ部材50は、「中間」カップ部材と呼ばれる。中間カップ部材50の底部には環状の液受け部51が設けられている。液受け部51の底壁には廃液路52が接続されている。また、液受け部51内には、2本の排気管53が突入している。2つの排気管53は下流側にて合流し、ダンパ54を介して所定の排気系、例えば工場の排気ダクトに接続されている。排気管53を介して処理カップ33内の雰囲気を吸引することにより、処理カップ33内に気流が形成され、この気流に乗せて気液混合流体(例えばウエハWから飛散した処理液のミストを含むエア)を液受け部51まで導くことができる。液受け部51に入ってきた気液混合流体は、内側カップ部材40の外側垂直面42と排気管53の表面により偏向された後、排気管53に入る。偏向時に比重の大きい液体(ミスト)の一部が分離され、廃液路52から排出される。
【0020】
ダンパ54の開度調整によって、排気圧力(排気流量)を調整することができ、これにより処理カップ33内の気流の強さを調整することができる。なお、ここでは、排気圧力が高く排気流量が多い「高排気」の状態と、排気圧力が低く排気流量が低い「低排気」の状態とを用いるものとする。なお、個々のレジスト塗布装置に排気モジュール(図示せず)を設け、この排気モジュールが発生する吸引力を工場の排気ダクトの持つ吸引力と併用できるように構成することもできる。
【0021】
また、中間カップ部材50は、垂直な下側の筒状部50aと、筒状部50aの上端から内側上方へ向けて概ね斜めに伸びる上側ガイド部70とを有している。上側ガイド部70と筒状部50aとの境界は、内側カップ部材40の外側傾斜面41と外側垂直面42との境界よりも僅かに高い位置にある。上側ガイド部70は、外側カップ部材60に面する環状の外側面と、内側カップ部材40に面する環状の内側面とを有している。上側ガイド部70の外側面は、上から順に連続する水平面76、傾斜面75、垂直面74および傾斜面73により構成されている。傾斜面75および傾斜面73は、外側にゆくに従って高さが低くなるように傾斜している。水平面76の高さは、スピンチャック31に保持されるウエハWの表面とより僅かに高い。水平面76の内側端縁は、ウエハWの周縁から所定距離、例えば3mm離れている。傾斜面73には、図3にも示すように、複数の貫通孔77が形成されており、貫通孔77は円周方向に沿って所定の間隔を空けて並んでいる。
【0022】
上側ガイド部70の前記環状の内側面は、上から順に、湾曲した流体転向面72とこれに連続する傾斜面71とにより構成されている。傾斜面71は、外側にゆくに従って高さが低くなるように傾斜している。流体転向面72は、主として、ウエハWから飛散して当該流体転向面72に衝突したミストが跳ね返ってウエハWに戻ることがないように、前記ミストを下流側にスムースに導くガイド面としての役割を果たす。流体転向面72の上端と下端とを結ぶ線分は、外側にゆくにつれて高さが低くなるように傾斜している。縦断面で見ると、流体転向面72は、この流体転向面72の輪郭線が流体転向面72の上端と下端とを結ぶ前記線分よりも上方に位置するように(上方に凸)となるように湾曲している。中間カップ部材50の上側ガイド部70と内側カップ部材の傾斜面41との間に外側斜め下方に向けて延びる環状流路79a(79)が形成され、また、筒状部50aと垂直壁40との間に環状流路79aに続いて垂直に延びる環状流路79b(79)が形成される。環状流路79は、主としてウエハWから飛散した処理液を液受け部51に導く役割を果たす。
【0023】
外側カップ部材60は、中間カップ部材50の上側ガイド部70の環状の外側面に対向する環状の内側面を有している。この環状の内側面は、中間カップ部材50の筒状部50aの上端部から垂直に上方へ延びる垂直面60aと、垂直面60aの上縁から内向きかつ上向きに斜め方向に延びる傾斜面61とから構成される。外側カップ部材60と中間カップ部材50との間の環状空間(環状流路)78は、ウエハ表面周辺の雰囲気(例えば溶剤蒸気など)を捕集する役割を果たす。外側カップ部材60の傾斜面61から下方に向けて環状の垂直壁100が突出している。垂直壁100の下端と中間カップ部材50との間の距離Lは、例えば5mmである。垂直壁100は、環状流路79を流れる流体(ミスト入り流体)が貫通孔77および環状空間78を介してウエハWに向けて流出することを防止する。なお、図中符号62で示されるものは外側カップ部材60の開口部であり、この開口部62を介してウエハWをスピンチャック31に受け渡すことができる。
【0024】
次に、ベベル洗浄ノズル46について説明する。ベベル洗浄ノズル46は、背景技術の項で説明したEBR/BR処理と等価な処理を同時に行うことができるように設けられている。図4(b)及び図5に示すように、ベベル洗浄ノズル46は、内側カップ部材40の環状の傾斜面43の一部に形成された凹部47に嵌め込まれる。レジスト塗布装置は好ましくは複数例えば2つのベベル洗浄ノズル46を備えている。2つのベベル洗浄ノズル46は、処理カップ33の径方向に互いに対向する位置に設けられている。各ベベル洗浄ノズル46は円形面44の径方向に伸長したレール48に沿って、スピンチャック31側の位置と傾斜面43側の位置との間を進退することが可能である。図4(a)に示すように、ベベル洗浄ノズル46はウエハWのべベル部を洗浄するための洗浄液を吐出するための吐出口46aを有している。吐出口46aはベベル洗浄ノズル46が凹部47に嵌め込まれた状態でウエハWの裏面周縁部を向くように設けられている。ベベル洗浄ノズル46には、配管を介して図示しない洗浄液供給源が接続されており、ベベル洗浄ノズル46は吐出口46aから洗浄液(例えば、半固化したレジストを溶解することが可能な溶剤)を吐出することができる。
【0025】
処理カップ33は筐体80に収納されている。筐体80の側壁には図示しない搬送アームを介してウエハWを搬出入するための搬出入口81が設けられている。搬出入口81にはシャッタ82が設けられている。シャッタ82はウエハWが搬送アーム(図示せず)により筐体80の内部へ搬出入される場合を除いて閉じられている。筐体80内の上部にファンフィルタユニット(FFU)83が設けられている。FFU83はその上部に接続された配管84を介して、清浄気体例えばクリーンエアーを筐体80内に下向きに吹き出す。筐体80の底部には筐体80内の雰囲気を吸引排気するための排気路85が接続されている。FFU83からの下向きの清浄気体の噴射と、排気管85を介した吸引排気とにより、筐体80内には下降気流(ダウンフロー)が形成される。
【0026】
筐体80内には、処理カップ33の上方に溶剤例えばシンナー(プリウエットシンナーと呼ばれる)を吐出する溶剤ノズル91と、レジストを吐出するレジストノズル92とが設けられている。溶剤ノズル91およびレジストノズル92は、供給管93および94を介して溶剤供給源95およびレジスト供給源96へ接続されている。溶剤ノズル91およびレジストノズル92は、ウエハWの上方の所定位置と処理カップ33の側方の待機位置との間で各々のノズル移動アーム(図示せず)により移動できるように構成されている。なお、両ノズル91、92を共通のノズル移動アームにより移動させてもよい。
【0027】
このレジスト塗布装置の全ての動作(例えば回転駆動部32の駆動、ダンパ54の切り換え、溶剤ノズル91、レジストノズル92からの液の供給など)は制御部90により制御される。制御部90は、中央演算処理装置(CPU)と、レジスト塗布装置を動作させるプログラムと、を含むコンピュータから構成することができる。このプログラムには予め決められたスケジュールに基づいて、レジスト液の供給タイミングや供給量、スピンチャック31の回転速度や回転時間、洗浄液の供給タイミングや供給量等に係る制御についてのステップ(命令)群等が組まれている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリカード等の記憶媒体に格納され、コンピュータにインストールされる。
【0028】
次に、第1構成例に係るカップを備えたレジスト塗布装置の作用について説明する。なお、下記に示されたプロセス条件(回転数変化、排気流量変化)はあくまで一例であり、適宜改変することができることは言うまでもない。
【0029】
図示しない搬送アームが、ウエハWを搬出入口81より筐体80内に搬入する。前記アームは、回転駆動部32に付設された昇降機構により上昇させられたスピンチャック31の載置面上にウエハWを載置し、スピンチャック31がウエハWを真空吸着して水平に保持する。その後、スピンチャック31は下降して、ウエハWが処理カップ33内に収められる。なお、レジスト塗布装置の運転中は、FFU83による清浄気体の噴射および排気管85を介した排気により筐体80内にダウンフローが常時形成されており、排気管53を介した処理カップ33内の雰囲気の排気は常時行われている。
【0030】
次に、スピンチャック31によりウエハWを第1の回転数例えば2000rpmの回転数で回転させる。このとき、排気管53に接続された排気系を調整することにより、「高排気」状態とする。筐体内80内のダウンフロー、排気管53を介した吸引および回転するウエハWによるウエハW近傍の空気の引きずりにより、処理カップ33内に図6に概略的に示したような気流が発生する。なお、図6に示す環状流路79の形状は、図中に気流およびミストを表示するスペースを確保するため、図1と対応していないことに注意されたい(図7においても同じ)。気流は外側カップ部材60と中間カップ部材50との間の環状空間78と、中間カップ部材50と内側カップ部材40との間の環状流路79を流れる。環状空間78を流れる気流は貫通孔77を通過して環状流路79を流れる気流と合流する。気流は最終的に排気管53に至る。また、図示しない移動機構により、溶剤ノズル91を待機位置からウエハの中心の上方に移動させる。そして、溶剤ノズル91からウエハWヘシンナーを供給してウエハWの表面全体をシンナーで濡らし、後に塗布するレジスト液が伸展しやすい状態とする(プリウエット工程S1)。シンナーの供給終了後、溶剤ノズル91を待機位置へ退避させると共に、レジストノズル92をウエハWの中心の上方に移動させる。
【0031】
次に、高排気状態を維持したまま、ウエハWの回転数を第2の速度例えば2500rpmまで上昇させ、レジストノズル92からレジスト液をウエハWの中心部へ供給する。このとき、レジスト液はウエハWの回転による遠心力により中心部から周縁部へ向けて伸展されていくと共に余分なレジストはウエハWの表面から振り切られる(レジスト供給拡散工程S2)。なお、プリウエット工程の終了後レジスト供給拡散工程の開始前に、一旦ウエハWの回転数を落としても良い。レジスト供給拡散工程中にウエハWから振り切られた余分なレジスト液は、環状流路79内に飛散し、下側ガイド部45の表面を伝って、液受け部51に至り、廃液路52から処理カップ33の外部へ排出される。ミスト状になったレジスト液は前述した気流に乗って環状流路79を流れ、排気管53から処理カップ33の外部へ排出される。このとき、流体転向面72が上述したような湾曲形状を有しているため、ウエハWから振り切られて流体転向面72に衝突したレジストのミストがウエハWに向かって跳ね返ることが防止されるか、または少なくとも大幅に抑制される。
【0032】
次に、ウエハWの回転数を低い第3の速度例えば100rpmまで落とす(すなわちレジスト液に作用する遠心力を低下させる)ことにより、ウエハW上にあるレジスト液を平坦化する(平坦化工程S3)。
次に、高排気状態から低排気状態に切り換えて、かつ、ウエハWの回転数を第4の速度例えば1500rpmまで上昇させ、所定時間例えば約20秒の間、レジストの膜厚の最終調整をするとともにレジスト液を乾燥させ、レジスト液を流動性が無くなる程度に固化させる(第1乾燥工程S4)。
【0033】
次に、低排気状態から高排気状態に切り換えて、ウエハWの回転数を第5の速度例えば2000rpmまで上昇させ、ベベル洗浄ノズル46からウエハWの周縁部へ洗浄液である溶剤を吐出する。この洗浄液の吐出は例えば15秒間行われる。図7に概略的に示すように、洗浄液はウエハWの裏面側のベベル部から表面側のべベル部まで回り込み、レジスト膜の周縁部が所定の幅で除去される(ベベル洗浄工程S5)。ベベル洗浄工程時にも、ウエハWに供給された洗浄液がウエハWの周囲に飛散するが、この飛散した洗浄液も図7に概略的に示した気流に乗って液受け部51にまで運ばれ、廃液路52から処理カップ33の外部へ排出される。また、ミスト状の洗浄液の一部は、排気管53から処理カップ33の外部へ排出される。
【0034】
次いで、洗浄液の吐出を停止する一方で、引き続き高排気状態を維持しかつウエハWの回転数もそのまま維持したまま例えば5秒間そのままの状態として、洗浄液を乾燥させる(第2乾燥工程S6)。以上により一連のレジスト塗布処理が終了する。その後、ウエハWの回転を停止し、既述のウエハWの搬入時とは逆の手順によりウエハWがレジスト塗布装置から搬出される。
【0035】
なお、上記の工程S1〜工程S6の間のウエハ回転数変化、各種処理液の供給タイミング、排気状態の変化の具体例は図15にも記載されている。図15において、PWT、PR、CLが付された矢印は、シンナー、レジスト液、洗浄液の供給がされたことを意味している。また、図15の下段はウエハ回転数の変化、上段は処理カップの排気状態(排気流量)の変化をそれぞれ示している。
【0036】
[第2構成例]
次に、図8および図9を参照して、第1構成例に係る処理カップ33との相違点を中心に第2構成例(発明の実施形態)に係る処理カップ33Aについて説明する。図8および図9において、処理カップ33と同一ないし実質的同一部分については、同一の参照符号を付し、重複説明は省略する。図8および図9では、第1構成例を示す図1〜図5と同様に、各カップ部材の結合構造は簡略化して示されている。なお、言うまでもなく、第2構成例に係る処理カップを備えた液処理装置の構成は、第1構成例の説明において説明されたものと同じとすることができる。
【0037】
処理カップ33の中間カップ部材50では区切られていた傾斜面75および垂直面74が、処理カップ33Aの中間カップ部材50Aでは単一の曲面75’となっている。但し、この部分については、処理カップ33、33Aのいずれの構成を採用しても構わない。その他にも処理カップ33、33Aには若干の形状の相違があるが、以下に説明しない部分についてはいずれの構成を採用しても構わない。
【0038】
第2構成例に係る流体転向面72は、第1構成例と同様に、断面視において、その輪郭線の全体が、流体転向面72の上端縁(70e)と下端縁(72e)とを結ぶ線分(S)(この線分は外側にゆくに従い低くなるように傾斜している)より上方に位置する(上方に凸な)滑らかな曲線として構成することができる。但し、流体転向面72は、その輪郭線の全体が曲線である必要はない。気流を乱さないという観点からは水平面76と流体転向面72とが交わる部分はエッジ(刃)状になっていることが好ましい。この場合、流体転向面72がその上端(内側端)に至るまで湾曲していると、製造が困難となる。従って、実際の製造においては、流体転向面72の上端(内側端)部分(図8で符号72aで示した領域)の輪郭が直線となり、それに続く流体転向面72の下端(外側端)部分の輪郭が前記直線に滑らかに接続された円弧となるように構成することも好ましい。この場合、例えば水平線に対する前記直線の成す角度(図9のθを参照)は、好ましくは0(0は含まない)〜20度、より好ましくは0(0は含まない)〜15度である。流体転向面72は、ウエハWに近い側の所定範囲(近位範囲)内において流体転向面72と仮想水平平面との成す角度が小さく(好ましくは0(0は含まない)〜20度、より好ましくは0(0は含まない)〜15度)かつ前記角度が一定であるか或いは徐々に大きくなり、前記近位範囲よりウエハWから遠い範囲(遠位範囲)では前記角度が徐々に大きくなるように構成することが望ましい。これにより、流体転向面72に衝突したミストが跳ね返りウエハWに戻る可能性が最小化される。また、流体転向面72は、断面視において、その輪郭線が、流体転向面72の上端縁70eと下端縁72eとを結ぶ線分S(この線分は外側にゆくに従い低くなるように傾斜している)より上方に位置し(上方に凸)、かつ前記線分Sと前記輪郭線との間の距離が外側にゆくに従い単調増加し、最大値をとった後、外側にゆくに従い単調減少するように形成することができる。
【0039】
処理カップ33、33Aの性能に大きな差異をもたらす相違点は、処理カップ33Aの内側カップ部材40Aの形状が、処理カップ33の内側カップ部材40と異なっていることにある。すなわち、内側カップ部材40にあった傾斜凸部43aが廃止され、その代わりに、環状の内側傾斜面43と環状の外側傾斜面41との間に、環状の概ね水平な面からなる頂面43bが形成されている。内側傾斜面43、頂面43bおよび外側傾斜面41は、内側からこの順番で接続されている。
【0040】
頂面43bは、スピンチャック31に保持されたウエハの周縁Weの真下の位置を基準として、半径方向内側に所定長さ(図9のr1)および半径方向外側に所定長さ(図9のr2)だけ広がっている。すなわち、平面視において、ウエハの周縁Weは環状の頂面43b内に包含され、頂面43bと同心の円に沿って延びている(このことは図8および図9より明らかである)。また、中間カップ部材50Aの上側ガイド部70の内側端縁70eが頂面43bの真上の位置にある。すなわち、平面視において、内側端縁70eは環状の頂面43b内に包含され、頂面43bと同心の円に沿って延びている(このことも図8および図9より明らかである)。
【0041】
頂面43bは、厳密に水平な平面である必要はなく、水平平面に対して概ね平行であればよく、言い換えればスピンチャック31に保持されたウエハWの裏面と概ね平行であればよい。また、頂面43bは水平平面に対して0〜±10度程度の傾斜を有していてもよい。特に頂面43bの外側部分には、レジスト液等の液が付着することがあるので、頂面43bの外側部分(図9の長さr2に対応する部分)には水平平面に対して0〜+10度程度の傾斜(外側にゆくに従って低くなる傾斜)を設けることも好ましい。このようにすれば、仮に液が頂面43bに付着したとしても、その液は、スムースに外側傾斜面41に導かれる。
【0042】
前述したように、ウエハWを回転させると、ウエハW表裏面の周辺の空気が引きずられてウエハW外側に向かう気流が生じる。ウエハ裏面側でのこのような気流は「バックフロー」と呼ばれる。ウエハWの裏面、内側傾斜面43、円形面44により囲まれた空間(以下「ウエハ裏面側空間」と称する)内に生じたバックフローは、ウエハ裏面周縁部と頂面43bとの間から流出する。頂面43bは、ウエハ裏面側空間から流出するバックフローをガイドし、その結果として、上側ガイド部70の内側端縁70eとウエハWの周縁Weとの間の隙間から環状流路79に流入してくる気流を変化させる。この点については後に詳述する。
【0043】
ここで、このレジスト塗布装置が12インチウエハの処理を行うために構成されている前提の下で、図9を参照して各部の好適な寸法について説明する。まず、前述したr1は5〜10mmの範囲とするのが好ましい。前述したr2を小さくしすぎると、後述するバックフローガイド効果が十分に得られない。一方、r2を大きくしすぎると、ウエハWから飛散した液が頂面43bの外側部分に付着して堆積物が生じるおそれがある。このため、前述したr2は5〜10mmの範囲とするのが好ましい。頂面43bからウエハW裏面までの距離h2は、2〜3mmとすることが好ましい。上側ガイド部70の内側端縁70eとウエハW表面との高低差h1は2〜3mmとすることが好ましい。頂面43bから上側ガイド部70の内側端縁70eまでの距離g1は5〜6mmとすることが好ましい。ウエハWの周縁Weから上側ガイド部70の内側端縁70eまでの距離r3は3〜4mmとすることが好ましい。
【0044】
再び図8を参照すると、第1構成例と同様に、内側カップ部材40Aには複数の(例えば3つの)凹部47’が設けられ、各凹部47’にベベル洗浄ノズル46’を嵌め込むことができるようになっている。各ベベル洗浄ノズル46’は、第1構成例と同様のガイドレール等からなる径方向案内機構(図示せず)により内側カップ部材40Aの径方向に移動可能である。ベベル洗浄ノズル46’は、凹部47’に嵌め込まれたとき、その各表面が内側傾斜面43および頂面43bの仮想延長上に位置するように形成されている。第1構成例と同様に、各ベベル洗浄ノズル46’には吐出口46aが形成されており、吐出口46aは、ベベル洗浄ノズル46’が凹部47’に嵌め込まれたときにウエハWの裏面周縁部を向く。
【0045】
上記第2構成例に係る処理カップ33Aを備えたレジスト塗布装置は、上記第1構成例に係る処理カップ33を備えたレジスト塗布装置について説明した各工程を同じようにして実行することができる。
【0046】
次に、第1構成例、第2構成例(発明の実施形態)に係る処理カップ内の気流および上側ガイド部70へのミストの衝突について、本件出願人による従来構成例と比較しつつ説明する。図10は従来構成例を、図11は第1構成例を、そして図12は第2構成例をそれぞれ示している。
【0047】
まず、図10に示す従来構成例は、第1構成例に対して、上側ガイド部70’が、断面視で直線的な下面を有している点が異なる。この場合、ウエハWから飛散した液(例えばレジスト液)が、勢いのあるうちに例えば点Pの近傍で上側ガイド部下面に衝突する。また、ミストは比較的大きな入射角をもって上側ガイド部下面に衝突する。このとき跳ね返った処理液の一部がウエハWに到達して、ウエハWに再付着するおそれがある。
この問題は、図11に示す第1構成例において、上側ガイド部70の下面、すなわち流体転向面72上に凸な面にすることにより解消されている。すなわち、第1構成例では、ウエハW近傍(例えばウエハ周縁Weから半径方向外側に30mm離れた位置までの近位領域)において、流体転向面72は水平平面に対して約0〜20度の小さな傾斜角(図9のθを参照)をもって傾斜しているため、ウエハW近傍においては、ウエハWから飛散したミストは比較的小さな入射角をもって上側ガイド部70の下面である流体転向面72に入射する。このため、ミストは殆どウエハW側に向かって跳ね返ることはない。なお、上記のようなθ値を設定できるのは、断面視において、流体転向面72の輪郭線が、流体転向面72の上端縁と下端縁とを結ぶ線分より上方に位置する(上方に凸な)ように形成しているからである。
【0048】
また、従来構成例は、第1構成例に対して、外側カップ部材60’の内面に突起(100)が設けられていない。この場合、図10に符号RFで示すように、環状流路79’を流下するミスト入り流体の一部が、貫通孔77’を通って環状空間78’に入り込む。従来構成例では、環状空間78’へ流入してくる流体の流速は比較的低いため、環状流路79’から貫通孔77’を通って環状空間78’に入った流体は、ウエハWの上方空間まで戻り、ウエハに再付着するおそれがある。
この問題は、第1構成例において外側カップ部材60の内面に突起100を設けることによりかなり改善される。図11に示すように、環状流路79から貫通孔77を通って環状空間78に入ったミスト入り気流RFは突起100により転向され、貫通孔77に戻される。
【0049】
上記の2つの理由により、ウエハWへのミスト再付着防止という観点からは、第1構成例は従来構成例に対して大幅に優れている。
【0050】
但し、第1構成例には、膜厚均一性向上という観点からは、さらなる改善の余地がある。これを改善したのが第2構成例(発明の実施形態)である。まずは、第1構成例における問題点について説明する。第1構成例では、ウエハWの周縁Weと上側ガイド部70の内側端縁70eとの狭い隙間のため、当該隙間に入り込む気流(F1)の流速が高くなり、かつ、当該気流の進行方向とウエハ表面との成す角度も大きくなる。このような気流は、ウエハWの周縁部表面にあるレジスト液の乾燥を局所的に促進し、かつ、ウエハWの周縁部表面にあるレジスト液をウエハ周縁Weに向かって動かす。これにより、ウエハW周縁部におけるレジスト液の膜厚が、中央部と比較して大きくなる。すなわち膜厚面内均一性が損なわれる。
【0051】
上記の問題は、第2構成例において、頂面43bを有する内側カップ部材40を設けることにより解決されている。第2構成例の頂面43bは、以下のような役割を果たしているものと発明者は考えている。
【0052】
前述したように、ウエハWの回転によりウエハ裏面近傍にある空気が引きずられることにより、ウエハ裏面側空間にバックフローBFが生じる。このバックフローBFは内側傾斜面43によりウエハW裏面と頂面43bとの間の狭隘隙間に導かれ、当該狭隘隙間を通過して流出する。なお、この現象は第1構成例においても生じている。但し、第1構成例においては、傾斜凸部43aがウエハ周縁より内側にあるため、バックフローは傾斜凸部43aとウエハ裏面との間の狭隘隙間から流出した後、直ちに失速し、かつ指向性を失う。このため主流(F1)に大きな影響を及ぼすまでには至らない。これに対して、第2構成例では、頂面43bはウエハWの周縁Weよりも外側まで広がっているため、バックフローは、狭隘隙間から流出した後、頂面43bの上方の領域からその外側に出るまでの間、水平方向の指向性を維持し、かつ流速の衰えも小さい。これに加えて、第2構成例においては、上側ガイド部70の内側端縁70eも頂面43bの上方に位置している。すなわち上側ガイド部70の内側端縁70eとウエハ周縁Weとの間の隙間の真下に水平面43bが存在している。上記の理由により、上側ガイド部70の内側端縁70eとウエハ周縁Weとの間の隙間から環状流路79内に入り込もうとする気流F1は、第1構成例のような態様で当該隙間に入ることはできず、水平方向に転向された状態で前記隙間に入る。すなわち、気流F1のウエハW周縁部表面への入射角が大幅に小さくなる。
【0053】
また、第2構成例においては、上側ガイド部70の内側端縁70eとウエハ周縁Weとの間の隙間から環状流路79に入り込む気流F1の流速よりも、上側ガイド部70の内側端縁70eと外側カップ部材60との隙間から環状空間78に入り込む気流F2の流速が大きくなることが確認された(第1構成例ではその逆である)。発明者は、この現象の原因については明確に把握していないが、頂面43bを設けたことにより頂面43b近傍における圧損が大きくなったことが原因ではないかと考えている。いずれにせよ、気流F1の流速が遅くなることは、膜厚均一性に好影響を与えることは明らかである。気流F2の流速が速くなることは、気流RFに起因するミスト逆流防止に好影響を与えることは明らかである。なお、気流F1の流速が遅くなったとしても、上側ガイド部70の流体転向面72の特徴的形状により、流体転向面72からウエハWに向かって跳ね返るミストは大幅に低減されており、バックフローBFも流体転向面72方向の指向性を保つため問題は生じない。むしろ、気流F2の流速が速くなることにより環状空間78内をウエハWに向けて逆流するミスト量が減少することによる好影響の方が大であると考えられる。従って、第2構成例は、第1構成例よりもミスト再付着防止機能が優れていると言える。
【0054】
以上述べたように、第2構成例は、第1構成例のミスト再付着防止機能を損なわずむしろ向上させつつ、膜厚均一性の向上という更なる有利な効果を達成することができることは明らかである。
【0055】
次に、第2構成例と従来構成例との性能比較試験の結果について図13〜図15を参照して説明する。
【0056】
まず、図13を参照して、ウエハ周辺部の膜厚増大について比較した結果について説明する。先に第1構成例に関連して説明した工程に従い、ウエハにレジスト膜を形成した。プリウエット工程から平坦化工程に至るまでの排気圧力を変化させ、ウエハ周縁部の膜厚を調べた。その結果を図13のグラフに示す。グラフ横軸は排気圧力[Pa]、縦軸はウエハ周縁部膜厚[nm]である。白抜きの棒が従来構成例、黒塗りの棒が第2構成例のデータである。グラフより明らかなように、排気圧力に関わらず、第2構成例では、従来構成例に比較して周縁部膜厚の増大が少なかった。また、第2構成例は、排気圧力の増加に伴う周縁部膜厚の増加が、従来構成例と比較して小さかった。このことは、特にレジスト液が流動性を持っている期間内において、膜厚不均一のおそれを考慮することなく、ミストの再付着防止を重視して排気圧力(流量)を増大させることが可能であることを意味している。
【0057】
次に、図14を参照して、ウエハに再付着するミスト量について比較した結果について説明する。先に第1構成例に関連して説明した工程に従い、ウエハにレジスト膜を形成した。ベベル洗浄ステップから最終乾燥(第2乾燥)ステップに至るまでの排気圧力を変化させてウエハ表面上に認められたミスト付着量を調べた。その結果を図14のグラフに示す。グラフ横軸は排気圧力[Pa]、縦軸はウエハ表面上に認められたミスト付着の痕跡数である。白抜きの丸(○)が従来構成例、黒塗りの四角(◆)が第2構成例のデータである。グラフより明らかなように、第2構成例においては、排気圧力が20Pa未満に低下するまで、ウエハへのミストの再付着は確認されなかった。このことは、特に長い時間が必要とされるベベル洗浄工程から最終乾燥(第2乾燥)工程を、低排気の状態で実行することができることを意味する。従って、1つの塗布現像装置に、排気系の負担を増大させることなく、従来よりも多い台数の塗布ユニットを設けることができることを意味している。むろん、高排気状態で行われるプリウエット工程から平坦化工程までの各工程においても、ウエハへのミスト再付着に関する安全マージンを大幅に高めることができる。
【0058】
第2構成例に係る処理カップはミスト再付着防止性能に優れているため、第1構成例に係る処理カップよりも排気流量を下げた状態で使用することができる。第1構成例および第2構成例に係る処理カップをそれぞれ用いた場合の処理レシピの一例が図15にグラフに示されている。グラフ下段には、ウエハ回転速度の変化および液供給タイミング(第1構成例と第2構成例とで共通)が、グラフ上段には排気流量の変化と、工程S1からS6にそれぞれ対応する期間が示されている。レジスト乾燥工程S4までは、排気流量は第1構成例、第2構成例で同じである。ベベル洗浄工程S5以降の工程において、第2構成例(符号2が付された実線を参照)では優れたミスト再付着防止機能のおかげで、低排気状態(排気流量が約1.2m/min)で運転することが可能となっている。これに対して第1構成例(符号1が付された破線を参照)では、高排気状態(排気流量が約2.6m/min)で運転している。なお、第1構成例もミスト再付着防止機能は比較的優れているため、排気流量を若干低下させることは可能であるが、いずれにせよ第1構成例のレベルまで低下させることはできない。比較的長い時間が必要なベベル洗浄工程S5および第2乾燥工程S6の排気流量を下げることができると、塗布現像装置に含めるレジスト塗布装置の台数を、排気系の能力を増大させることなく、増やすことが可能になる。
【0059】
最後に、レジスト塗布装置を備えた塗布現像装置に露光装置を接続したレジストパターン形成システムの構成の一例を簡単に説明する。図16〜図18に示すように塗布、現像装置には、キャリアブロックG1が設けられている。このキャリアブロックG1の載置台201上に載置された密閉型のキャリア200から受け渡しアームCがウエハWを取り出して、キャリアブロックG1に隣接する処理ブロックG2にウエハWを渡すとともに、受け渡しアームCが、処理ブロックG2にて処理された処理済みのウエハWを受け取ってキャリア200に戻す。
【0060】
処理ブロックG2は、図17に示すように、現像処理を行うための第1のブロック(DEV層)B1、レジスト膜の下に形成される反射防止膜の形成処理を行うための第2のブロック(BCT層)B2、レジスト液の塗布処理を行うための第3のブロック(COT層)B3、レジスト膜の上に形成される反射防止膜の形成処理を行うための第4のブロック(TCT層)B4を下から順に積層することにより構成されている。
【0061】
第3のブロック(COT層)B3は、レジスト液を塗布するレジスト塗布ユニット2(図16参照)(前述したレジスト塗布装置)と、レジスト塗布ユニットにて行われる処理の前処理及び後処理を行うための基板加熱ユニットを有する加熱/冷却系の処理ユニット群と、第3のブロック(COT層)B3の各ユニットの間でウエハWの受け渡しを行う搬送アームA3とを備えている。
第2のブロック(BCT層)B2と第4のブロック(TCT層)B4とは、反射防止膜を形成するための薬液をスピンコーティングにより塗布する液処理ユニットと、加熱冷却系の処理ユニット群と、各層のユニット間でウエハWの受け渡しを行う搬送アームA2、A4とをそれぞれが備えている。
第1の処理ブロック(DEV層)B1内に、現像ユニットが2段に積層されている。DEV層B1には、これら2段の現像ユニットにウエハWを搬送するための共通の搬送アームA1が設けられている。
処理ブロックG2には、図16及び図18に示すように、複数のユニットを積層してなるユニット棚U1が設けられている。このユニット棚U1の近傍に設けられた昇降自在の受け渡しアームD1により、ユニット棚U1内の各ユニット間でウエハWの搬送を行うことができる。
【0062】
上記レジストパターン形成システムにおいては、キャリアブロックG1内の受け渡しアームCが、キャリア200から取り出したウエハWを、ユニット棚U1の一つの受け渡しユニット、例えば第2のブロック(BCT層)B2に対応する受け渡しユニットCPL2に渡す。そこからウエハWは受け渡しアームD1により受け渡しユニットCPL3に運ばれ、さらにそこからウエハWは搬送アームA3により第3のブロック(COT層)B3内に運ばれ、疎水化処理ユニットによりウエハW表面に疎水化処理が施され、さらにその後、レジスト塗布ユニットによりウエハW表面にレジスト膜が形成される。レジスト膜が形成されたウエハWは、搬送アームA3により、棚ユニットU1の受け渡しユニットBF3に運ばれる。
【0063】
その後、ウエハWは、受け渡しユニットBF3、受け渡しアームD1、受け渡しユニットCPL4および搬送アームA4を介して第4のブロック(TCT層)B4内に運ばれ、反射防止膜形成ユニットによりウエハW表面に反射防止膜が形成される。その後ウエハは、搬送アームA4により受け渡しユニットTRS4に渡される。
なお、レジスト膜の上に反射防止膜を形成しない場合や、ウエハWに対して疎水化処理を行う代わりに、第2のブロック(BCT層)B2にて反射防止膜が形成される場合もある。ウエハ搬送ルートはウエハに対して実行される処理に応じて適宜変更される。
【0064】
DEV層B1内の上部には、ユニット棚U1に設けられた受け渡しユニットCPL11からユニット棚U2に設けられた受け渡しユニットCPL12にウエハWを直接搬送するためのシャトルアームEが設けられている。レジスト膜および反射防止膜が形成されたウエハWは、受け渡しアームD1により受け渡しユニットTRS4から受け渡しユニットCPL11に運ばれ、そこからシャトルアームEによりユニット棚U2の受け渡しユニットCPL12に直接搬送され、そこからインターフェイスブロックG3に取り込まれる。なお、符号「CPL」が付されている受け渡しユニットは温調用の冷却ユニットとしての機能を兼ね備えており、符号BFが付されている受け渡しユニットは複数枚のウエハWを載置可能なバッファユニットとしての機能を兼ね備えている。
【0065】
次いで、ウエハWはインターフェイスアームBにより露光装置G4に搬送され、ここで所定の露光処理が行われた後、ユニット棚U2の受け渡しユニットTRS6に載置されてそこから処理ブロックG2に戻される。その後ウエハWは、第1のブロック(DEV層)B1にて現像処理が行われ、搬送アームA1により、受け渡しアームCによりアクセス可能なユニット棚U1内の受け渡しユニットTRS1に運ばれ、受け渡しアームCによりキャリア200に戻される。
【0066】
上述した第2構成例(発明の実施形態)に係る処理カップは、レジスト塗布装置のみにおいて有益なのではないことに注意すべきである。膜厚均一性およびミスト再付着防止が要求されるレジスト塗布処理以外の塗布膜形成処理、例えばウエハ上に反射防止膜または保護膜を形成するための塗布膜形成処理を行う塗布装置においても有益であることは明らかである。また、塗布膜形成処理に限らず、ミスト再付着防止が要求される処理、例えば薬液処理や現像処理後の洗浄処理等の各種の液処理においても有益であることは明らかである。すなわち、上述した第2構成例に係る処理カップは、円形基板を回転させながら当該基板に処理液を供給して所定の処理を行うさまざまな液処理において有用であることは明らかである。
【符号の説明】
【0067】
W 基板(ウエハ)
We 基板周縁
31 スピンチャック
33 処理カップ
40 第1のカップ部材(内側カップ部材)
41 外側傾斜面
43 内側傾斜面
43b 頂面
46’ 第2の処理液ノズル(ベベルリンスノズル)
50(70) 第3のカップ部材(中間カップ部材)
60 第2のカップ部材(外側カップ部材)
53 排気路
70e 第3のカップ部材の内側端縁
72 第3のカップ部材の流体転向面
72e 流体転向面の外側端縁
S 仮想線分
77 通路(貫通孔)
78 第2の環状流路(環状空間)
79 第1の環状流路(環状空間)
92 第1の処理液ノズル(レジストノズル)
100 第2のカップ部材の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液処理装置において、
基板を水平に保持して鉛直軸線周りに回転させるように構成されたスピンチャックと、
前記スピンチャックにより保持された基板の周囲を取り囲むように設けられた処理カップであって、当該処理カップ内の雰囲気を排気するための排気路が接続されている処理カップと、
前記スピンチャックに保持された基板に第1の処理液を供給するように設けられた第1の処理液ノズルと、
を備え、
前記処理カップは、
前記スピンチャックに基板が保持されたとき、当該基板よりも低い位置に位置するように設けられた第1のカップ部材と、
前記第1のカップ部材よりも外側かつ上方に設けられた第2のカップ部材と、
前記第1のカップ部材と前記第2のカップ部材との間に設けられた第3のカップ部材であって、前記第1のカップ部材と前記第2のカップ部材との間の空間を分割して、前記第1および第3のカップ部材の間の第1の環状流路と前記第2および第3のカップ部材の間の第2の環状流路を画成する第3のカップ部材と、
を有しており、
前記第1および第2の環状流路は前記排気路に連通し、
前記第3のカップ部材は、前記スピンチャックにより保持された基板の周縁より高くかつ外側の位置に位置するように設けられた内側端縁を有しており、
前記第1のカップ部材は、外側にゆくに従い高さが高くなる環状の内側傾斜面と、前記内側傾斜面の外周縁に接続された概ね水平な環状の頂面と、前記頂面の外周縁に接続されるとともに外側にゆくに従い高さが低くなる環状の外側傾斜面と、を有しており、
前記第1のカップ部材の前記環状の頂面は、平面視において、前記スピンチャックにより保持された基板の周縁と前記第3のカップ部材の内側端縁とを包含するように設けられている、
ことを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記第3のカップ部材は、前記第1のカップ部材に対向する環状の流体転向面を有しており、前記流体転向面は、前記第3のカップ部材の前記内側端縁から外側に延びており、
前記流体転向面は外側端縁を有しており、縦断面視において、前記流体転向面の輪郭線は、前記内側端縁と前記外側端縁とを結ぶ仮想線分に対して上に凸となる滑らかな曲線、または互いに滑らかに接続された直線と曲線の組合せからなり、前記仮想線分は外側にゆくに従って低くなる、
請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記第1および第2の環状流路を相互に接続する通路が設けられており、これにより、前記第1および第2の環状流路を流れる流体が、合流した後、前記排気路に導かれるように構成されており、
前記第2のカップ部材の前記第3のカップ部材に対向する面に前記第3のカップ部材に向けて突出する凸部が設けられている、
請求項1または2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記通路は、前記第3のカップ部材に設けられた複数の貫通孔からなる、請求項3に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記スピンチャックに保持された基板に第2の処理液を供給するように設けられた第2の処理液ノズルを更に備え、
前記第1の処理液ノズルは、前記スピンチャックに保持された基板の表面に前記第1の処理液を供給するように設けられ、前記第2の処理液ノズルは、前記スピンチャックに保持された基板の裏面に前記第2の処理液を供給するように設けられている、
請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−19025(P2012−19025A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154883(P2010−154883)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】