説明

液圧式又は空圧式のブレーキ装置を備えたハイブリッド車両におけるエネルギ回収

本発明は、内燃機関、電気的な駆動装置(14)及び液圧式又は空圧式のブレーキ装置(1)を有するハイブリッド車両のブレーキ過程においてエネルギを回収するための方法に関する。電気機械(14)の利用は、ブレーキ装置(1)が少なくとも1つの減圧弁(10)を有しており、この減圧弁により、運転者が加えた制動圧が、電気機械(14)の制動量に関連して減少される場合に最適化され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式のハイブリッド車両の制動過程におけるエネルギを回収するための方法、並びに請求項6の上位概念に記載の形式の装置に関する。
【0002】
ハイブリッド車両では、制動過程に際して自由になる運動エネルギが、一般に電気的なエネルギに変換されて、搭載電源に蓄えられる。このために公知の回収システムは、ジェネレータとしての電気的な駆動装置を有している。このジェネレータは、車両の制動に寄与するエンジンブレーキトルクを形成する。このようにして得られた電気的なエネルギは、複数の異なる走行状況において、車両駆動用又は電力消費装置の供給用に利用可能である。これにより、車両の効率は著しく改善され得る。
【0003】
公知の回収システムは、車両制動の大部分が常用ブレーキにより生ぜしめられ、(搭載電源の状態に関連した)僅かな部分だけがジェネレータによって生ぜしめられるように設計されている。このことは、ジェネレータによって最大限に形成可能な電気的出力が、大抵フルには利用され得ないという著しい欠点を有している。
【0004】
従って本発明の課題は、ジェネレータにより形成される電気的出力を最適化し延いては車両の全体効率を更に高めることである。
【0005】
この課題は本発明に基づき、請求項1の特徴部に記載の、運転者の制動希望を検出し、電気機械により生ぜしめることのできる制動を求め、運転者により加えられた制動圧を、少なくとも1つのホイールブレーキにおいて電気機械の制動量に関連して減少させることを特徴とする、液圧式又は空圧式のブレーキ装置を有するハイブリッド車両の制動過程においてエネルギを回収するための方法、並びに請求項6の特徴部に記載の、運転者の制動希望を規定するためのセンサ、電気機械により生ぜしめることのできる制動を規定するための電子機器及びホイールブレーキに作用する制動圧を減少させるために、所望の全制動及び電気機械の制動量に関連して制御される減圧ユニットが設けられていることを特徴とする、液圧式又は空圧式のブレーキ装置を有するハイブリッド車両の制動過程においてエネルギを回収するための装置により解決される。本発明の別の有利な構成手段は従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明の根本的な思想は、運転者の制動希望(所望の全制動)を検出し、電気機械により生ぜしめることのできる車両制動を、有利には搭載電源のエネルギ状態を考慮しつつ求め、運転者により加えられる制動圧を電気機械の制動量に関連して適宜低下させ、これにより、全体的には運転者により所望された制動が実行されるという点にある。このためには、運転者により加えられた制動圧が、適当な調節部材(減圧ユニット)により適宜低下されるか、又は場合によっては完全に除去される。このことは、電気機械が制動過程に際して最大の電気エネルギ形成範囲内で作動し延いては最大の車両運動エネルギ量が回収され得るという著しい利点を有している。
【0007】
この場合の「車両制動」とは、制動(m/s2)とも、例えばジェネレータにより形成される電気的出力、ジェネレータのエンジンブレーキトルク等の比例値とも理解される。
【0008】
電気機械により生ぜしめることのできる車両制動は、とりわけ搭載電源がどのくらいの電気的出力を未だ受容できるかに関連している。この情報は、例えばエネルギマネジメント制御装置から得られ、電気機械の制動量の決定に際して考慮され得る。
【0009】
有利には、少なくとも1つのブレーキ管路に、運転者により加えられる制動圧を低下させるための弁が配置されている。この弁は、有利には制御装置により制御される。有利な構成では、本発明による弁はクロック制御される。これにより、特に制動圧の簡単且つ廉価な適合が生ぜしめられる。選択的に、前記弁は当然リニア制御されてもよい。
【0010】
前記のような弁が複数取り付けられている場合、これらの弁は有利には全てのブレーキ管路には設けられていない。単数若しくは複数の弁は、有利には被駆動輪のブレーキ管路にのみ配置されている。
【0011】
車輪に作用する制動圧は、有利には制御装置により目標値に制御され、前記弁は制御装置の調節部材を形成している。この場合、ブレーキ制御装置は適当な制御アルゴリズムを有している。
【0012】
ブレーキ液がホイールブレーキに、いわゆる流入弁を介して供給される、例えばABS又はESP等のスリップ制御装置を備えた車両では、前記流入弁は回収運転において減圧弁として利用され得る。この場合、付加的な弁は不要である。
【0013】
エネルギを回収するための本発明によるブレーキ装置は、本発明に基づき少なくとも1つの、例えば運転者の制動希望の高さを検出し且つ電気機械により形成可能な車両制動を求める制御装置等の電子機器、並びに全制動希望及び電気機械の制動量に関連して前記電子機器により制御される減圧ユニットを有している。
【0014】
運転者の制動希望の高さは、例えば制動値センサ又は制動圧センサ(例えば初期圧力センサ)によって得られる。
【0015】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0016】
図1には、II型ブレーキ回路配管方式の液圧式の自動車ブレーキ装置が示されており、その構造は従来技術からほぼ公知である。当該ブレーキ装置1は公知の形式でフットブレーキペダル3と、マスタブレーキシリンダ8を備えたブレーキブースタ7とを有しており、マスタブレーキシリンダ8にはブレーキ液容器9が配置されている。ブレーキブースタ7は、運転者によりフットブレーキペダル3に加えられた制動力を強めて、ブレーキ管路12を介してホイールブレーキ11へ案内される制動圧を形成する。
【0017】
公知のブレーキ装置とは異なり、当該ブレーキ装置は付加的な弁10を有しており、この弁10は、被駆動車軸の主ブレーキ管路12に配置されており且つ運転者により加えられた制動圧を減少させるために働く(本実施例では2つの弁10が示されているが、後輪駆動の場合は左側の弁10だけ、前輪駆動の場合は右側の弁10だけ、4輪駆動の場合は両方の弁10が取り付けられる)。単数若しくは複数の弁10は、制御装置2に接続されており且つこの制御装置により、運転者の制動希望及び電気機械14の制動量に関連して制御される。
【0018】
回収運転において、前記電気機械14はジェネレータとして運転される。この場合、この電気機械14は、車両の制動に寄与するエンジンブレーキトルクを発生させる。基本的に、エネルギを最大限に回収するためには、全制動量のできるだけ多くの部分をジェネレータ14により発生させることが試みられる。前記回収量を超える分(が存在する場合)は、常用ブレーキ11により生ぜしめられる。
【0019】
ジェネレータ運転は搭載電源の受容能力により制限される。搭載電源が電気エネルギを僅かにしか、又は最早全く受容することができない場合は、必然的に電気機械14の制動量が相応に低下されて、常用ブレーキ量が高められる。
【0020】
運転者により希望された制動は、例えば距離センサ5等の制動値センサを介して、又はブレーキ回路に配置された圧力センサ6(いわゆる初期圧力センサ)を介して測定され得る。制御装置2は、例えば搭載電源の電気的な状況若しくは受容能力を決定するハイブリッド制御装置13から、ジェネレータ14により形成可能な電気的出力に関する情報を受け取る。前記制御装置2,13は、単独の制御装置にまとめられていてもよい。
【0021】
常用ブレーキ11の制動量は、全制動希望Verz及びジェネレータ14の量Verzから得られる。この場合、
VerzB=VerzF=Verz
であると言える。
【0022】
この値を得るためには、単数若しくは複数の減圧弁10が制御装置2により制御されて、運転者から予め与えられる制動圧(Pvor)を適宜減少させる。
【0023】
弁10の制御は、有利にはクロック制御式で行われる。これにより、極めて簡単且つ廉価な減圧が実現可能である。
【0024】
図2には、複数の付加的な減圧弁10を備えた、X型ブレーキ回路配管方式の液圧ブレーキシステムが示されている。この場合、図1の場合と同一の要素には同一符号が付されている。外部の電気的な配線は図1の場合とほぼ同じであるが、図面を見やすくするために省略した。
【0025】
図1の場合とは異なり、本実施例では被駆動輪の各ブレーキ管路12に別個の弁10が設けられている。前輪駆動の車両の場合、これらの弁は有利には専ら前輪のブレーキ管路12に位置し(図面では右側の2つの弁)、後輪駆動の車両の場合は後輪のブレーキ管路12に位置し(左側の2つの弁)、4輪駆動の車両の場合は全ての車輪のブレーキ管路12に位置している(図示のとおり)。
【0026】
常用ブレーキ11による付加的な制動が要求される制動過程では、弁10が上で図1に関して説明したように制御される。ブレーキ11に作用する制動圧は、有利には所定の目標値に制御される。
【0027】
図3に示したII型ブレーキ回路配管方式の自動車のブレーキ装置は、ABSシステム又はESPシステムの枠内で制動力を調整するために設計されている。外部の電気的な配線はここでは省略されている。従来技術から公知の図示のブレーキ装置は、各ホイールブレーキ11のために専用の流入弁10を有しており、この流入弁10により、ブレーキ液のホイールブレーキへの流入が制御される。
【0028】
ドライブダイナミックコントロールの制御過程において、制動圧は流出弁15の開放により低下され且つ液圧ポンプ16の制御に基づき交互に新しく形成される。ドライブダイナミックコントロールシステムの制御しきい値の下位に位置する制動過程では、前記流入弁10は本発明の意味での減圧弁として利用され得る。この場合、ブレーキ11に作用する制動圧を適宜低下させるために、弁10が要求に応じて多少なりとも閉鎖される。付加的な減圧弁はこの場合不要である。
【0029】
後輪駆動の車両の場合、回収運転において有利には左側の2つの流入弁10だけが利用され、前輪駆動の車両の場合は右側の2つの流入弁10が利用され、4輪駆動の車両の場合は4つの流入弁10全てが利用される。
【0030】
図4に示したX型ブレーキ回路配管方式の自動車のブレーキ装置もやはり、ドライブダイナミックコントロール用に設計されている。この場合、ブレーキ回路配管方式の相違に基づき、後輪駆動の車両では(左から)1つめ及び3つめの弁10が減圧用に利用され、前輪駆動の車両においては(左から)2つめ及び4つめの弁10が減圧用に利用される。
【0031】
図5に示したフローチャートには、回収運転における重要な方法ステップが描かれている。この場合、ステップ20においてまず最初に、運転者がフットブレーキペダル3を操作したか否かを調べる。このことは、例えばブレーキランプスイッチ4を監視することにより行われる。ブレーキが操作された場合は、ステップ21において電気機械14によりもたらし得る制動若しくは該制動に比例した、例えばエンジンブレーキトルク等の値を求める。この情報は、例えばジェネレータ及び搭載電源の状況を監視するハイブリッド制御装置13から得られる。
【0032】
ステップ22において、運転者から所望された制動Verz又はこれに比例した、例えばブレーキトルク等の値を算出する。運転者の要望は、例えばペダル値センサ5又は圧力センサ6を介してブレーキ特性線によって規定することができる。ステップ23において、運転者から要望された制動Verzが、電気機械14により発生可能な制動VerzHよりも小であるか否かを調べる。電気機械の制動VerzHが制動過程に関して十分である場合(VerzH>Verz)は、ステップ24において単数若しくは複数の減圧弁10が完全に閉じられて、被駆動輪のホイールブレーキ11は制動圧から遮断される。この場合、所要のブレーキ作用は電気機械14によっても、制動圧から遮断されていない別の車輪のホイールブレーキ11によっても生ぜしめられる。
【0033】
これに対して、運転者により所望された制動Verzが、電気機械の制動VerzHよりも大であると、ステップ25において、被駆動車軸のホイールブレーキ11によっても生ぜしめねばならない残分制動VerzBが求められる。この場合、VerzB=Verz−VerzHということが言える。公知のブレーキ作用係数cp及び減圧弁10の公知の絞り係数において、適当な圧力制御が実施可能である。この場合、ホイールブレーキにおいて支配的な実際の制動圧は、有利には圧力センサによって測定され且つ制御装置にフィードバックされる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による減圧弁を備えた、II型ブレーキ回路配管方式の自動車のブレーキ装置の概略図である。
【図2】本発明による複数の減圧弁を備えた、X型ブレーキ回路配管方式の自動車のブレーキ装置の概略図である。
【図3】ドライブダイナミックコントロール用に設計されており且つ本発明による複数の減圧弁を有する、II型ブレーキ回路配管方式の自動車のブレーキ装置の概略図である。
【図4】ドライブダイナミックコントロール用に設計されており且つ複数の減圧弁を有する、X型ブレーキ回路配管方式の自動車のブレーキ装置の概略図である。
【図5】本発明の1実施例に基づくエネルギ回収法のフローチャートを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関、電気的な駆動装置(14)及び液圧式又は空圧式のブレーキ装置(1)を有するハイブリッド車両の制動過程においてエネルギを回収するための方法において、
‐運転者の制動希望(20)を検出し、
‐電気機械(14)により生ぜしめることのできる制動(Verz)(21)を求め、
‐運転者により加えられた制動圧(Pvor)を、少なくとも1つのホイールブレーキ(11)において電気機械(14)の制動量(Verz)に関連して減少させることを特徴とする、液圧式又は空圧式のブレーキ装置(1)を有するハイブリッド車両の制動過程においてエネルギを回収するための方法。
【請求項2】
運転者により加えられた制動圧(Pvor)を、ブレーキ管路に配置された弁(10a,10b)を介して減少させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
弁(10a,10b)をクロック制御する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
弁(10a,10b)が、ブレーキシステム(例えばABS,ESP)の流入弁である、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
ホイールブレーキ(11)に作用する制動圧を制御する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
内燃機関、電気的な駆動装置(14)及び液圧式又は空圧式のブレーキ装置(1)を有するハイブリッド車両の制動過程においてエネルギを回収するための装置において、
運転者の制動希望(Pvor)を規定するためのセンサ(5,6)、電気機械(14)により生ぜしめることのできる制動(Verz)を規定するための電子機器(2)及びホイールブレーキ(11)に作用する制動圧を減少させるために、所望の全制動及び電気機械(14)の制動量(Verz)に関連して制御される減圧ユニット(10a,10b)が設けられていることを特徴とする、液圧式又は空圧式のブレーキ装置(1)を有するハイブリッド車両の制動過程においてエネルギを回収するための装置。
【請求項7】
減圧ユニットが、ブレーキ管路(12)に配置された弁(10a,10b)である、請求項6記載の装置。
【請求項8】
弁が被駆動輪のブレーキ管路(12)にのみ配置されている、請求項7記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−504496(P2009−504496A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526463(P2008−526463)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063932
【国際公開番号】WO2007/020130
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】