説明

液晶シール剤およびそれを用いた液晶表示セル

【課題】耐熱特性、耐湿信頼性、接着性に優れた液晶表示装置を製造する熱硬化型液晶シール剤の開発。
【解決手段】
コアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、硬化促進剤(c)、無機充填剤(d)を含有することを特徴とする液晶シール剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話をはじめ各種機器の表示パネルとして、軽量・高精細を特徴とした液晶表示パネルが広く使用されるようになった。また、その使用環境も、液晶表示パネルの用途の多様化と共に、益々厳しくなってきている。さらに、液晶表示セルも高精細化、均質かつ高品位なものが要求されている。
【0003】
液晶シール剤組成物は、液晶表示パネルを構成する部材として重要な透明電極や配向膜を適宜配した透明なガラス基板又は同プラスチック基板の間に液晶を封入し、それが外部に漏れないように封じ込めるために用いられるものである。このシール剤には、一液型のエポキシ樹脂系熱硬化型樹脂組成物が広く使用されている。
【0004】
携帯電話、カーナビゲーション用表示パネルを始めとする小型液晶パネルの場合、屋外や乗用車内などで使用するため、液晶表示パネルに対して、耐衝撃性や耐高温高湿性が要求され液晶シール剤に対しても接着性の向上、耐熱性が強く求められている。
【0005】
熱硬化型エポキシ樹脂組成物の接着性を向上させる手法としては、CTBN、ATBN、エーテルエラストマー等のゴム状成分、またはそれらゴム状成分で変性されたエポキシ樹脂成分を多量に添加して、応力緩和性、接着性を向上させることが一般的である。このような場合、ゴム状成分の持つ低いガラス転移温度(以下「Tg」という)の影響により硬化物のTgが低下し耐熱性が不十分となってしまう。また、液晶シール剤に組成物に使用されるエポキシ樹脂組成物の耐熱性を向上させる為にガラス繊維、ガラス粒子、無定形シリカなどの充填剤を多量に混合する方法もある。しかし、耐熱性は向上するものの硬化物が脆くなり接着性が低下する傾向にある。
【0006】
特許文献1に示されるような液晶シール剤はエポキシ樹脂、硬化剤、エポキシ化ポリブタジエン、無機充填剤を含む液晶表示パネル用シール剤が提案されている。このシール剤ではエポキシ化ポリブタジエン成分を必須としている。しかしこの場合、ポリブタジエン成分のTgが低い為、液晶シール剤組成物の硬化物のTgも低くなり、耐熱性が劣る傾向にあった。
【0007】
特許文献2にはコアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂組成物を硬化剤により硬化させて得られる硬化物を含有するゴム強化エポキシ樹脂製品が提案されている。該ゴム強化エポキシ樹脂製品は優れた破壊靭性、耐クラック性、剛性、耐熱性、ヒートショック性、接着性、耐疲労性を示すとされ、コーティング材料、接着剤、絶縁物に適しているとされている。しかしながら、特許文献2にも記載の通り、エポキシ樹脂にゴム状のポリマーが入るとTgが低下してしまう。Tgの低下は液晶シール剤の信頼性の低下につながるため好ましくなく、接着性と耐熱性に対する要求を満足させる液晶シール剤はこれまでに得られていない。
【0008】
【特許文献1】特開2001−64483号公報
【特許文献2】特開2005−255822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は耐熱特性、耐湿信頼性、接着性に優れた新規な液晶シール剤組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させたものである。
即ち本発明は、
(1)コアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、硬化促進剤(c)、及び無機充填剤(d)を含有する液晶シール剤、
(2)(a)コアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂の含有量が全液晶シール剤中10〜60重量%である前記(1)に記載の液晶シール剤、
(3)(a)コアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂の中にコアシェルポリマーを10〜40重量%含有したものである前記(1)又は(2)に記載の液晶シール剤、
(4)さらに(a)以外のエポキシ樹脂(e)を含有することを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれか一項に記載の液晶シール剤、
(5)硬化促進剤が潜在性硬化促進剤である前記(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の液晶シール剤、
(6)潜在性硬化促進剤がアミンアダクトで、かつその平均粒径が6μm以下である前記(1)ないし(5)のいずれか一項に記載の液晶シール剤、
(7)無機充填剤がアルミナ及び/又はシリカであることを特徴とする前記(1)ないし(6)のいずれか一項に記載の液晶シール剤、
(8)無機充填剤の平均粒径が10〜2000nmである前記(1)ないし(7)のいずれか一項に記載の液晶シール剤、
(9)有機溶剤を含有していることを特徴とする前記(1)ないし(8)のいずれか一項に記載の液晶シール剤、
(10)カップリング剤を含有していることを特徴とする前記(1)ないし(9)のいずれか一項に記載の液晶シール剤、
(11)前記(1)ないし(10)のいずれか一項に記載の液晶シール剤でシールされた液晶表示装置、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶シール剤は耐熱特性、耐湿信頼性、接着性に優れ、ゴム成分は含まれているにもかかわらず比抵抗が低下しないため液晶汚染性が低いという効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の液晶シール剤で用いられるコアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂(a)は、特開2005−255822(特許文献2)に記載の通り製造することが出来る外、市場からも入手することができる。例えば、株式会社カネカのカネエースMX(MX−125:コアシェルポリマー25重量%、MX−960:コアシェルポリマー25重量%)等を挙げることができる。本発明において(a)としては、コアシェルポリマーが(a)中に10〜40重量%含まれているものが耐熱特性、耐湿信頼性、接着性に優れる液晶シール剤を与え、好ましい。
【0014】
コアシェルポリマーは、エラストマー又はゴム状のポリマーを主成分とするポリマーからなるコア部(a−1)と、これにグラフト重合されたポリマー成分からなるシェル層(a−2)より構成されるポリマーであることが好ましい。シェル層は、グラフト成分を構成するモノマーをコア成分にグラフト重合することでコア部の表面の一部もしくは全体を覆うことができる。
【0015】
前記コア部(a−1)を構成するポリマーは架橋されており、コア部分を構成するポリマーの良溶媒に対して膨潤しうるが実質的には溶解せず、エポキシ樹脂には不溶であることが好ましい。前記コア部分を構成するポリマーは、ゴムとしての性質を有することが好ましい。
【0016】
前記コア部(a−1)を構成するポリマーは共役ジエン系モノマー、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーより選ばれる一種以上のモノマーを50重量%以上含有する単量体より構成されるか、またはポリシロキサンゴム、或いはこれらを併用することが好ましい。
【0017】
前記コア部(a−1)を構成する共役ジエン系モノマーとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を挙げることができるが、安価に入手でき、得られる重合体のゴムとしての性質が良好であり、重合が容易である点から、ブタジエンが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられるが、得られる重合体のゴムとしての性質が良好であり、重合が容易である点から、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。これらは1種或いは2種以上を組み合わせて使用できる。共役ジエン系モノマー若しくは(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの使用量は、コア部全体の重量に対して好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。50重量%未満の場合にはエポキシ樹脂に対して靭性を付与する能力が低下する場合がある。
【0018】
さらに前記コア部(a−1)を構成するポリマーは前述のジエン系モノマー或いは(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主成分として使用する場合には、これらと共重合可能な1種以上のビニルモノマーとの共重合体であっても良い。そのようなモノマーとしては、上述のアルキル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族系モノマー、ビニルシアン系モノマー等が例示できる。例えば。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルメタアクリレート、ビニル芳香族系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルシアン系モノマーとしては、例えば(メタ)アクリロニトリル、置換アクリロニトリルを例示することができる。これらは1種或いは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの使用量はコア部(a−1)全体の重量に対して好ましくは50重量%未満、より好ましくは40重量%未満である。
【0019】
また、前記コア部(a−1)を構成する成分として架橋度を調節する為に、多官能性モノマーを使用しても良い多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(イソ)シアヌル酸トリアリル、(メタ)アクリル酸アリル、イタコン酸ジアリル、フタル酸ジアリル等を例示できる。これらの使用量はコア部の全重量に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。10重量%を超えて使用するとコア部のエラストマーとしての性質が損なわれる為好ましくない。
【0020】
前記シェル部(a−2)は、コアシェルポリマーがエポキシ樹脂中で安定に一次粒子の状態で分散する為の、エポキシ樹脂に対する親和性を与える機能を有する。前記シェル部(a−2)を構成するポリマーはコア部(a−1)を構成するポリマーにグラフト重合されており、実質的にはコア部(a−1)を構成するポリマーと結合していることが好ましい。具体的には、シェル部(a−2)を構成するポリマーは、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上がコア部(a−1)に結合していることが望ましい。シェル部(a−2)は後述する有機溶媒及びエポキシ樹脂に対して膨潤性、相与性もしくは親和性を有するものが好ましい。また、シェル部(a−2)は、使用時の必要性に応じて、エポキシ樹脂若しくは使用時に配合されている硬化剤との反応性を有し、エポキシ樹脂が硬化剤と反応して硬化する条件下においてこれらと化学反応し結合を生成できる機能を有するものであっても良い。
【0021】
シェル部(a−2)を構成するポリマーは、良好なグラフト重合性と、エポキシ樹脂に対する親和性の双方を可能にできるという点から、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物より選ばれる1種以上の成分を重合若しくは共重合して得られる重合体若しくは共重合体であることが好ましい。更に、特にシェル部のエポキシ樹脂硬化時における化学反応性を求める場合には、上記のモノマーに加えて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エポキシアルキル(メタ)ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド(N−置換物を含む)、α,β−不飽和酸、α,β−不飽和酸無水物、及びマレイミド誘導体等からなるモノマー群より選ばれる1種以上の成分を共重合して得られる共重合体がより好ましい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸イミド等をそれぞれ例示することができるが、これらに限定されるものではない。これらは1種或いは2種以上を適宜組み合わせて使用できる。
【0022】
本発明におけるコアシェルポリマーの好ましいコア部(a−1)/シェル部(a−2)比率(重量比)は50/50〜95/5の範囲である事が好ましく、より好ましくは60/40〜90/10である。コア部(a−1)/シェル部(a−2)比率(重量比)が50/50を越えてコア部(a−1)の比率が低下すると、エポキシ樹脂に対する靭性改良効果が低下する傾向がある。逆に95/5を越えてシェル部(a−2)の比率が低下すると本発明における取り扱い時に凝集をきたし易く操作性に問題が生じると供に期待する物性が得られない可能性がある。
【0023】
本発明に用いることのできるコアシェルポリマーの粒子径には特に制限は無く、コアシェルポリマーを水性ラテックスの状態で安定的に得ることができるものであれば問題なく使用できる。なお、工業生産性の面からは体積平均粒子径が0.03〜1μm程度のものが、製造が容易であるという点でより好ましい。
【0024】
本発明の液晶シール剤で用いられるコアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂(a)は1種類又は2種類以上用いてもよい。(a)の液晶シール剤中の含有量は、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは30〜45重量%である。
【0025】
本発明の液晶シール剤には、液晶シール剤の作業性、物性に影響を与えない範囲でのコアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂(a)以外のエポキシ樹脂(e)を添加してもよい。このエポキシ樹脂(e)は特に限定されるものではなく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類;1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類;フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂;キシリレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラック樹脂;フルオレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物;シクロヘキサン等の脂肪族骨格を有する脂環式エポキシ樹脂;イソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂;ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック等のブロム化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン、フェニルグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、(3,4−3’,4’エポキシシクロ)ヘキシルメチルヘキサンカルボキシレート、ヘキサヒドロ無水フタル酸ジグリシジルエステル等の一般に製造、販売されているエポキシ樹脂が挙げられ、その使用量は得られた液晶シール剤の作業性、物性に影響を与えない範囲で用いられる。
【0026】
これらのエポキシ樹脂(e)は、2種以上を混合して用いても良い。エポキシ樹脂(e)の液晶シール剤中の含有量は、3〜40重量%、好ましくは5〜20重量%、より好ましくは8〜15重量%である。
【0027】
本発明の液晶シール剤に用いられる硬化剤(b)としては、ノボラック樹脂、多官能ヒドラジド化合物を用いることができる。ノボラック樹脂としては、例えばビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、アリルフェノール類、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂;キシリレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂等のフェノール系ノボラック樹脂;フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂であり、更に好ましくはフェノール、クレゾール類、オクチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノール類を原料とするノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂であり、特に好ましくはフェノールを原料とするフェノールノボラック樹脂、クレゾール類を原料とするクレゾールノボラック樹脂である。これらのノボラック樹脂は単独で又は2種以上を混合して使用される。又、本発明で用いられるノボラック樹脂の使用量は、液晶シール剤中のエポキシ樹脂(a)のエポキシ当量、又は(a)と(e)のエポキシ当量の総和に対して、ノボラック樹脂中の水酸基の当量として0.2〜1.4化学当量、好ましくは0.3〜1.1化学当量、更に好ましくは0.4〜1.0化学当量である。
【0028】
本発明において多官能ヒドラジド化合物とは、分子中に2個以上のヒドラジド基を有するものを指し、その具体例としては、例えば、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン−2,3−ヒドラジド、ヘキサデカン−2,3−ヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド等の芳香族多官能ヒドラジド類が、融点が高い故に潜在性に優れ、硬化物のガラス転移点が高く、液晶に対する溶解性が少ない等の理由から好ましく、イソフタル酸ジヒドラジドが特に好ましい。又、本発明で用いられる多官能ヒドラジドの使用量は、液晶シール剤中のエポキシ樹脂(a)のエポキシ当量、又は(a)と(e)のエポキシ当量の総和に対して、多官能ヒドラジド中のアミンの当量として0.4〜1.4化学当量、好ましくは0.4〜1.1化学当量、更に好ましくは0.4〜1.0化学当量である。
【0029】
本発明で使用する無機充填剤(c)としては、例えばアルミナ、シリカ、タルク、クレー、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム等の珪酸塩等が挙げられ、好ましくはアルミナ、シリカである。これら無機充填剤は単独で用いても、もしくは2種以上を混合して用いても良い。
【0030】
本発明で用いられる無機充填剤の平均粒径は10〜2000nmが好ましい。2000nmより無機充填剤の平均粒径が大きいと、液晶表示装置製造時の上下基板貼り合わせ後の熱プレス時に、無機充填剤の比表面積が小さいことから無機充填剤と液晶シール剤の樹脂成分の分離が生じやすくなり、しみだしが発生してしまう。そして、硬化後の接着強度及び吸湿後の接着強度が低下してしまう。10nmより無機充填剤の平均粒径が小さいと無機充填剤の比表面積が大きくなりすぎることから液晶シール剤の粘度が高くなりすぎて、セルギャップの形成が困難になってしまう。
【0031】
本発明で使用される無機充填剤の液晶シール剤中の含有量は、全液晶シール剤中5〜45重量%、より好ましくは15〜35重量%である。無機充填剤の含有量が5重量%より少ない場合、充填剤含有量が少ないため低粘度になり、液晶表示装置作成時の加熱プレス時に液晶シール剤のしみだしが発生してしまう。又、無機充填剤の含有量が45重量%より多い場合、充填剤含有量が多すぎるため、液晶表示装置作成のプレスの際つぶれにくく、液晶表示装置のギャップ形成ができなくなってしまう。
【0032】
本発明の液晶シール剤には、液晶シール剤の特性に影響を与えない範囲で有機充填剤を添加しても良い。有機充填剤としては、例えばポリマービーズ、コアシェルタイプのゴムフィラー等があげられる。これら充填剤は単独で用いても、もしくは2種以上を混合して用いても良い。
【0033】
添加できる有機充填剤の平均粒径は、3μm以下であり、好ましくは2μm以下でなくてはいけない。平均粒径が3μmより大きい場合は、セルギャップの形成が難しくなってしまう。また、添加できる有機充填剤の添加量は、無機充填剤の重量の50重量%以下でなくてはならない。50重量%より多い場合では粘度が高くなりセルギャップの形成が難しくなってしまう。
【0034】
本発明に用いられる硬化促進剤(d)としては、例えばイミダゾール類、イミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類;ジシアンジアミド等のアミド類及び該アミド類とフェノール類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類;1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及び該ジアザ化合物とフェノール類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト等があげられる。
【0035】
イミダゾール類としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等があげられる。
【0036】
これら硬化促進剤のうち好ましいものとしては、例えば2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、イミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、アミンアダクト等があげられる。硬化促進剤の添加量は、液晶シール剤中のエポキシ樹脂(a)、又は(a)と(e)の総和100重量部に対して1〜25重量部好ましくは2〜20重量部であり、更に好ましくは、3〜15重量部である。
【0037】
これら硬化促進剤の中でも、潜在性硬化促進剤が、作業性の向上(ポットライフ時間の延長)等のメリットがあり、好ましい。潜在性硬化促進剤は、室温では固体で、加熱されることによって溶解し、初めて硬化促進剤として反応するという性質を有するもので、例えばこれら硬化促進剤をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化促進剤や溶剤やエポキシ樹脂に溶解しにくい固体分散型の硬化促進剤(例えばイミダゾール類)、アミンアダクト等が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂と混合した際の1液保存安定性と加熱時の反応性の高さからアミンアダクトを硬化促進剤として使用することが特に好ましい。
【0038】
これら硬化促進剤のうち、固体分散型の潜在性硬化促進剤の平均粒径はレーザー法の測定で6μm以下、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下程度である。平均粒径が6μmより大きい潜在性硬化促進剤を使用すると、ディスペンサー塗布が難しく、また、塗布後の形状も均一でなく、そのため、シール後のシール形状も均一でなくなってしまう。そして、平均粒径が6μmより大きい硬化促進剤を使用した液晶シール剤は、シールの硬化が不均一になり、シール部に充填剤の荒い粗密が確認され、しみだしも発生しやすくなる。平均粒径の下限は特に限定されないが、通常1.5〜2.5μm程度のものが用いられる。
【0039】
本発明の液晶シール剤には、必要に応じてカップリング剤を加えることが出来る。カップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル) エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピル( N−エチルアミノエチルアミノ) チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニュウムジ( ジオクチルピロフォスフェート) オキシアセテート、テトライソプロピルジ( ジオクチルフォスファイト) チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−( β−アミノエチル) アミノフェニル) チタネート等のチタン系カップリング剤、Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス( ドデカノイル) ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス( エチレンジアミノエチル) ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル) ジルコネート、アンモニウムジルコニウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤が挙げられるが、好ましくはシリコン系カップリング剤であり、更に好ましくはアミノシラン系カップリング剤である。カップリング剤を使用する事により耐湿信頼性が優れ、吸湿後の接着強度の低下が少ない液晶シール剤が得られる。カップリング剤の使用量は液晶シール剤中のエポキシ樹脂100重量部に対して0.3〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部、更に好ましくは0.8〜1.5重量部程度である。
【0040】
本発明の液晶シール剤は、基板への塗布作業性を向上させるため、液晶シール剤の塗布時の粘度を低粘度化するために溶剤を添加しても良い。使用しうる溶剤としては、例えばアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、アセテート系溶剤、二塩基酸ジメチルエステル溶剤があげられ、これらは1種又は、2種以上を、単独で又は混合して、任意の比率で用いることができる。
【0041】
アルコール系溶剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等のアルキルアルコール類、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−エトキシブタノール、3−メチル−3−n−プロポキシブタノール、3−メチル−3−イソプロポキシブタノール、3−メチル−3−n−ブトキシシブタノール、3−メチル−3−イソブトキシシブタノール、3−メチル−3−sec−ブトキシブタノール、3−メチル−3−tert−ブトキシシブタノール等のアルコキシアルコール類があげられる。
【0042】
エーテル系溶剤としては、例えば1価アルコールエーテル系溶剤、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、ジアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤、トリアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤等があげられる。
【0043】
1価アルコールエーテル系溶剤としては、例えば3−メチル−3−メトキシブタノールメチルエーテル、3−メチル−3−エトキシブタノールエチルエーテル、3−メチル−3−n−ブトキシシブタノールエチルエーテル、3−メチル−3−イソブトキシシブタノールプロピルエーテル、3−メチル−3−sec−ブトキシブタノール−イソプロピルエーテル、3−メチル−3−tert−ブトキシブタノール−n−ブチルエーテル等があげられる。
【0044】
アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等があげられる。
【0045】
アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤としては、例えばプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジイソブチルエーテル、プロピレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、プロピレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジイソブチルエーテル、エチレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、エチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル等があげられる。
【0046】
ジアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤としては、例えばジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル等があげられる。
【0047】
トリアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤としては、例えばトリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジイソブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類等があげられる。
【0048】
アセテート系溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−エトキシブチルアセテート、3−メチル−3−プロポキシブチルアセテート、3−メチル−3−イソプロポキシブチルアセテート、3−メチル−3−n−ブトキシエチルアセテート、3−メチル−3−イソブトキシシブチルアセテート、3−メチル−3−sec−ブトキシシブチルアセテート、3−メチル−3−tert−ブトキシシブチルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、酢酸ブチル等の溶媒が挙げられる。
【0049】
二塩基酸ジメチルエステルとしては、例えば、CH3OCO−(−CH2 −)n −COOCH3 (n=2〜4)で示されるエステルを挙げることができる。このようなエステルとして具体的には、グルタル酸ジメチルエステル、アジピン酸ジメチルエステル、コハク酸ジメチルエステルが挙げられる。また、これら2種以上を混合してもよい。
【0050】
溶剤の使用量は、液晶シール剤がディスペンサー或いはスクリーン印刷等の方法で塗布できる粘度に調整するのに必要な任意の量を用いることができ、その粘度は、例えば25℃において、20〜40Pa・s程度である、液晶シール剤中の不揮発成分が通常70重量%以上、好ましくは85〜95重量%、さらに好ましくは90〜95重量%になるように溶剤を使用する。溶剤を添加した液晶シール剤を使用した液晶表示装置の作製は、液晶シール剤塗布後の加熱プリキュア時に溶剤を揮発乾燥させてから、上下基板の貼り合わせを行う。
【0051】
液晶シール剤から溶剤を揮発乾燥させた後の粘度は、動的粘弾性率測定による粘度測定(30℃)において、500〜50000Pa・sが好ましく、800〜10000Pa・sがさらに好ましい。
【0052】
本発明の液晶シール剤は、前記したエポキシ樹脂、ノボラック樹脂、必要に応じて溶剤を添加し、加熱混合撹拌により溶解し、さらに、球状の無機充填剤と必要に応じその他の充填剤を添加し、公知の混合装置、例えばボールミル、サンドミル、3本ロール等により微分散した後、さらに、硬化促進剤と必要に応じカップリング剤、消泡剤、レベリング剤等の所定量を添加して混合することにより製造する事が出来る。
【0053】
本発明の液晶表示装置は、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方が光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、例えばまず、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加する。スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、製造する液晶表示装置のセルギャップに合わせて選択するが、通常0.5〜10μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100重量部に対し0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜2重量部、更に、好ましくは0.9〜1.5重量部程度である。スペーサーを添加した液晶シール剤を一対の基板の一方にディスペンサー等により塗布した後、例えば90℃10分間の加熱で溶剤を蒸発させ、ついで対抗基板を貼り合わせ、熱プレスにてギャップ出しを行い、120〜160℃で1〜2時間硬化することにより得ることができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例をあげ本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0055】
実施例1
エポキシ樹脂中にコアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂(MX−125、カネカ製)100g、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−310S、日本化薬社製)25g、硬化剤として2核体が30〜50%のフェノールノボラック樹脂(PN−152、日本化薬製)45gを溶剤のプロピレングリコールジアセテート(ダウケミカル社製)20gに加熱溶解させた。この樹脂溶液に無機充填剤として平均粒径が約30nmの球状アルミナ(ナノテックアルミナSP−C、シーアイ化成製)60g、カップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS−510、チッソ社製)1gをサンドミルにより混合分散した後、硬化促進剤として平均粒径が3μm以下のアミキュアMY−HK(アミンアダクト:味の素ファインテクノ製)10gを添加して本発明の液晶シール剤を得た。
【0056】
実施例2
エポキシ樹脂中にコアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂(MX−960、カネカ製)100g、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−310S、日本化薬社製)25g、硬化剤として2核体が30〜50%のフェノールノボラック樹脂(PN−152、日本化薬製)45gを溶剤のプロピレングリコールジアセテート(ダウケミカル社製)20gに加熱溶解させた。この樹脂溶液に無機充填剤として平均粒径が約30nmの球状アルミナ(ナノテックアルミナSP−C、シーアイ化成製)60g、カップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS−510、チッソ社製)1gをサンドミルにより混合分散した後、硬化促進剤として平均粒径が3μm以下のアミキュアMY−HK10gを添加して本発明の液晶シール剤を得た。
【0057】
実施例3
エポキシ樹脂中にコアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂(MX−125、カネカ製)100g、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−310S、日本化薬社製)25g、硬化剤としてアジピン酸ジヒドラジド20gを溶剤のプロピレングリコールジアセテート(ダウケミカル社製)13gに加熱溶解させた。この樹脂溶液に無機充填剤として平均粒径が約30nmの球状アルミナ(ナノテックアルミナSP−C、シーアイ化成製)60g、カップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS−510、チッソ社製)1gを混合分散し液晶シール剤を得た。尚混合分散には3本ロールを用いた。実施例3の液晶シール剤はサンドミルで発生する熱により硬化するおそれがある為、代わりに熱の発生が少ない3本ロールを用いた。硬化促進剤として平均粒径が3μm以下のアミキュアMY−HK5gを添加して本発明の液晶シール剤を得た。
【0058】
比較例1
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−310S、日本化薬製)100g、硬化剤として2核体が30〜50%のフェノールノボラック樹脂(PN−152、日本化薬製)54gを溶剤のプロピレングリコールジアセテート(ダウケミカル社製)20gに加熱溶解させた。この樹脂溶液に無機充填剤として平均粒径が約30nmの球状アルミナ(ナノテックアルミナSP−C、シーアイ化成製)60g、カップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS−510、チッソ社製)1gをサンドミルにより混合分散した後、硬化促進剤として平均粒径が3μm以下のアミキュアMY−HK10gを添加して液晶シール剤を作成した。
【0059】
比較例2
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(RE−310S、日本化薬製)100g、硬化剤としてアジピン酸ジヒドラジド24gを溶剤のプロピレングリコールジアセテート(ダウケミカル社製)13g、無機充填剤として平均粒径が約30nmの球状アルミナ(ナノテックアルミナSP−C、シーアイ化成製)60g、カップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS−510、チッソ社製)1gを混合分散し液晶シール剤を得た。尚混合分散には3本ロールを用いた。比較例2の液晶シール剤はサンドミルで発生する熱により硬化するおそれがある為、代わりに熱の発生が少ない3本ロールを用いた。硬化促進剤として平均粒径が3μm以下のアミキュアMY−HK5gを添加して本発明の液晶シール剤を得た。
【0060】
(A)ガラス転移点(Tg)
液晶シール剤をガラス基板に塗布し、クリアランスが25μmであるアプリケーターを使用してシール剤を25μmの厚さに引き伸ばした。その後シール剤を塗布したガラス基板を90℃に加熱しておいたホットプレートに10分間放置する。その後熱硬化させた。熱硬化条件は150℃×1時間とした。その後ガラス基板からシール剤を掻き取りガラス転移点を測定した。(DSC6220、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株))結果を表1に示す。
【0061】
(B)比抵抗率
サンプル管の底に液晶シール剤を0.1g一様に塗布した。その後熱硬化させた。熱硬化条件は150℃×1hrとした。シール剤硬化後室温まで戻し、そのサンプル管に液晶(メルク社製、MLC−6866−100)1gを添加した。電気乾燥機にて90℃20時間の条件で放置した。その後液晶を取り出して、超高抵抗計と液体電極を使用して比抵抗率を測定した。(超高抵抗計:アドバンテストR−8340、液体電極:安藤電気製LE−21)印加電圧:10V、電圧印加後240秒後の比抵抗率を測定データとした。結果を表1に示す。なお、ref液晶の比抵抗値は5.15×1012であった。
【0062】
(C)接着強度
配向膜塗布基板上にシール剤(5μmのグラスファイバーを1重量%添加)を適量滴下し90℃に加熱しておいたホットプレートに10分間放置した。その後、ガラスチップをシール剤の上に貼り付けた。ガラスチップを貼り付けた基板をオーブンにて硬化させた。硬化条件は150℃×1hrとした。硬化後のサンプルをPCT(121℃;100%RH雰囲気中;20hr)に投入し投入前とPCT投入後20hrの接着強度を測定した。(プレッシャークッカー:TABAI製PRESSURE COOKER TPC−411)ボンドテスターにて接着強度を測定した。(速度0.17mm/sec)結果を表1に示す。
【0063】
表1

【0064】
注)
*1 ADH:アジピン酸ジヒドラジド
*2 溶剤:プロピレングリコールジアセテート ダウケミカル社製
【0065】
表1の(A)からわかるように、実施例の液晶シール剤は、比較例1、2の液晶シール剤に比べて、ゴム状のポリマーが入っているにもかかわらずガラス転移点の低下が見られない。(B)からわかるように、実施例の液晶シール剤はゴム状のポリマーが入っているにもかかわらず、比較例1、2の液晶シール剤に比べて、比抵抗が同等であり、液晶汚染性は同等である。従って、信頼性に優れている。さらに表1の(C)からわかるように、実施例の液晶シール剤は、接着性も良くPCT後の接着性に優れていて耐湿信頼性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、硬化促進剤(c)、及び無機充填剤(d)を含有する液晶シール剤。
【請求項2】
(a)コアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂の含有量が全液晶シール剤中10〜60重量%である請求項1に記載の液晶シール剤。
【請求項3】
(a)コアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂の中にコアシェルポリマーを10〜40重量%含有したものである請求項1または2に記載の液晶シール剤。
【請求項4】
さらに(a)以外のエポキシ樹脂(e)を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項5】
硬化促進剤が潜在性硬化促進剤である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項6】
潜在性硬化促進剤がアミンアダクトで、かつその平均粒径が6μm以下である請求項1ないし5のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項7】
無機充填剤がアルミナ及び/又はシリカであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項8】
無機充填剤の平均粒径が10〜2000nmである請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項9】
有機溶剤を含有していることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項10】
カップリング剤を含有していることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の液晶シール剤でシールされた液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−13282(P2009−13282A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176342(P2007−176342)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】