説明

液浸露光フォトレジスト膜の保護層用塗布組成物、及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】液浸露光による微細パターン形成プロセスにおける現像工程で、良好なレジストパターン形状を与える液浸露光フォトレジスト膜の保護層用塗布組成物、並びにパターン形成方法を提供すること。
【解決手段】式(1)で示される化合物を50質量%以上含む溶剤系に、フルオロアルコール基を側鎖に有する水不溶性、かつアルカリ可溶性ビニルポリマーを溶かしてなることを特徴とする液浸露光フォトレジスト膜の保護層用塗布組成物、並びにパターン形成方法。式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数3〜5のアルキル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程その他のフォトリソグラフィー工程に使用される液浸露光フォトレジスト膜の保護層(トップコート)用塗布組成物、及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。特に波長が300nm以下の遠紫外線光を光源とする液浸式投影露光装置で露光するために好適なトップコート組成物、及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の微細化に伴い露光光源の短波長化と投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。
【0003】
従来から光学顕微鏡において更に解像力を高める技術として、投影レンズと試料の間を高屈折率の液体で満たす、所謂、液浸法が知られている。
この「液浸の効果」は同じNAの投影光学系の場合、焦点深度をドライ光学系よりもn倍(nは媒質屈折率)にすることができる。
【0004】
液浸露光においては、レジスト膜と光学レンズの間を浸漬液(液浸液ともいう)で満たした状態で、フォトマスクを通して露光し、フォトマスクのパターンをレジスト膜に転写する。このとき、液浸液がレジスト膜内部に浸透することにより、結像しなくなる場合がある(非特許文献1)。また、レジスト膜中から液浸液へ有機物等が溶出することにより、液浸液中に不純物が混入し、レンズや露光装置を汚染するため、露光の妨げになることが予想される。
【0005】
このような問題を回避する解決策として、レジスト膜とレンズの間に保護膜(トップコート膜)を設けて、レジストと水が直接触れ合わないようにするという方法が知られているが、トップコートに用いられる素材としてどのようなものが良いか未だ明確になっていない。
また、従来、トップコート用組成物には主にアルコールが使用されてきた。特許文献1には、トップコート膜を塗布する溶剤として、炭素数7〜10の1価アルコールを用いることが記載されているが、アルコール溶剤を使用した場合はレジスト層へ悪影響を及ぼし、得られたレジスト膜のパターン形状が不十分である。
【0006】
【非特許文献1】日経マイクロデバイス、2004年、4月号
【特許文献1】特開2006−267521
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液浸露光による微細パターン形成プロセスにおける現像工程で、良好なレジストパターン形状を与える液浸露光フォトレジスト膜の保護層用塗布組成物、並びにパターン形成方法を提供することである。
【0008】
上記目的は、下記に記載した手段<1>〜<6>によって達成された。
<1>下記式(1)で表される化合物を50質量%以上含む溶剤系に、フルオロアルコール基を側鎖に有する水不溶性、かつアルカリ可溶性ビニルポリマーを溶かしてなることを特徴とする液浸露光フォトレジスト膜の保護層用塗布組成物、
【0009】
【化1】

前記式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数3〜5のアルキル基である。
<2>前記フルオロアルコール基が、パーフルオロアルキル基のフッ素原子の少なくとも1つが水酸基に置換されたものである上記<1>に記載の保護層用塗布組成物、
<3>前記パーフルオロアルキル基が、炭素数1〜10である上記<1>又は<2>に記載の保護層用塗布組成物、
<4>前記フルオロアルコール基が、下記式(2)で表される基である上記<1>〜<3>いずれか1つに記載の保護層用塗布組成物、
【0010】
【化2】

前記式(2)において、R3及びR4は、同じでも異なっていてもよく、パーフルオロアルキル基を表す。
<5>前記式(2)のR3及びR4が、トリフルオロメチル基である上記<4>に記載の保護層用塗布組成物、
<6>上記<1>〜<5>に記載の組成物を、液浸露光フォトレジスト膜上に塗布して保護層を形成し、液浸露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好なレジストパターン形状を与える液浸露光フォトレジスト膜の保護層用塗布組成物、並びにパターン形成方法が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
<溶剤(B)>
本発明では溶剤の主成分として、下記式(1)で表される溶剤を用いることで、トップコートに用いるポリマーの溶解性と、レジストへの悪影響の抑制を両立することが可能である。
【0013】
【化3】

【0014】
本発明で使用できるエステル系溶剤は、レジストへの混和を避けるため、R1及びR2は共に環状でなく、それらの炭素数は3以上が好ましく、ベーク時の乾燥完結性及びトップコート用ポリマーの溶解性の観点から5以下が好ましい。
本発明で使用できる前記式(1)の溶剤の具体例としては、プロピルブチレート、イソプロピルブチレート、イソ酪酸n−プロピル、アミルブチレート、ブチルブチレート、イソブチルブチレート、ブチルイソブチレート、イソブチルイソブチレート等が挙げられる。
【0015】
<アルカリ可溶性ビニルポリマー(A)>
本発明のトップコート組成物は、アルカリ可溶性かつ水不溶性ビニルポリマーを含有する。
ビニルポリマーがアルカリ可溶性であることで、トップコート膜の剥離工程を別段設けることなく、アルカリ現像にて容易にトップコート膜を溶解除去することが可能となる。
また、水不溶性のビニルポリマーを含有するトップコート膜がレジスト膜と液浸液の間に介在することにより、液浸液がレジスト膜内部に浸透することを防ぎ、かつ、レジスト成分が液浸液中に溶出することを防ぐため、液浸露光によるパターン形成において、適切なパターンが得られる。
【0016】
ここで、「水不溶性」とは、樹脂を溶剤に溶解した溶液をシリコンウェハー上に塗布、乾燥後、純水に23℃で10分間浸漬、乾燥させた後に膜厚測定を行った場合、膜厚が減少しない性質をいう。また、「アルカリ可溶性」とは、レジストによるパターン形成において現像に用いられるアルカリ現像液に対して可溶であることを意味し、樹脂を溶剤に溶解した溶液をシリコンウェハー上に塗布、乾燥した膜を、23℃で2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて現像液で処理したときに、1nm/秒以上の溶解速度で溶解して膜厚がゼロになる性質をいう。
【0017】
ビニルポリマーを構成するモノマー単位はアルカリ可溶性向上の点から酸基(アルカリ可溶性基)を有するモノマーが含まれ、酸基はフルオロアルコール基が好ましい。
フルオロアルコール基を含むモノマーは、液浸液として純水を用いた場合に純水に対して撥水性を発現し、液浸露光時にウェハーを高速スキャンした場合に液浸液の追従性が良化しやすいため好ましい。フルオロアルコール基は少なくとも1つの水酸基が置換したパーフルオロアルキル基であり、炭素数1〜10個のものが好ましく、炭素数1〜5個のものが更に好ましい。
【0018】
フルオロアルコール基の具体例としては、例えば、−CF2OH、−CH2CF2OH、−CH2CF2CF2OH、−C(CF32OH、−CF2CF(CF3)OH、−CH2C(CF32OH、等を挙げることができる。フルオロアルコール基として特に好ましいのはヘキサフルオロイソプロパノール基である。
【0019】
酸性モノマーは、酸基を1つだけ含んでいても2つ以上含んでいてもよい。該モノマーに由来する繰り返し単位は、繰り返し単位1つあたり2つ以上の酸基を有していることが好ましく、酸基を2〜5個有することがより好ましく、酸基を2〜3個有することが特に好ましい。
【0020】
ビニルポリマーが含有する酸性モノマーに由来するモノマー単位の、好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0021】
【化4】

【0022】
ビニルポリマーは、下記式(2)で表される酸基を有するモノマー単位を有することが好ましい。
【0023】
【化5】

前記式(2)において、R3及びR4は、同じでも異なっていてもよく、パーフルオロアルキル基を表す。
【0024】
ビニルポリマーの好ましい具体例を以下に示す。尚、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
【化9】

【0029】
【化10】

【0030】
【化11】

【0031】
【化12】

【0032】
【化13】

【0033】
【化14】

【0034】
ビニルポリマー中に含有される酸性モノマーの割合は水に対する不溶性とアルカリ現像液に対する溶解性を両立できるように適宜設定される。
ビニルポリマーに含有される酸性モノマーがpKa8未満の、比較的酸性度が強いものの場合には、ビニルポリマーの酸価が1.0〜5.0となるよう含有させることが好ましく、2.0〜4.5となるよう含有させるのがより好ましい。
また、ビニルポリマーに含有される酸性モノマーがpKa8以上の、比較的酸性度が弱いものの場合には、ビニルポリマーの酸価が3.0〜7.0となるよう含有させることが好ましく、3.5〜5.5となるよう含有させるのがより好ましい。
また、ビニルポリマーを構成する酸性モノマーユニットとして、pKa8未満の比較的酸性度が強いモノマーと、pKa8以上の、比較的酸性度が弱いモノマーとを両方含んでいてもよい。この場合、ビニルポリマーの酸価が2.0〜5.0となるよう適宜調整することが好ましく、2.5〜4.5とすることがより好ましい。
【0035】
ビニルポリマーは、上記酸性モノマーに由来する繰り返し構造単位以外に、他の繰り返し構造単位を含有することができる。他の繰り返し構造単位を形成する単量体として、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0036】
ビニルポリマーは、露光時に光がトップコート膜を通してレジスト膜に到達するため、使用する露光光源において透明であることが好ましい。ArF液浸露光に使用する場合は、ArF光への透明性の点からビニルポリマーは芳香族基を有しないことが好ましい。
【0037】
ビニルポリマーは、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。
例えば、一般的合成方法としては、モノマー種を、一括であるいは反応途中で反応容器に仕込み、これを必要に応じ反応溶媒、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、更には後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのような本発明の組成物を溶解する溶媒に溶解させ均一とした後、窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で必要に応じ加熱、市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、不溶性溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は通常20質量%以上であり、好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。反応温度は通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは50〜100℃である。
【0038】
また、ビニルポリマーは、前記ラジカル重合に限らず、様々な方法で合成することができる。ラジカル重合のほか、たとえば、カチオン重合、アニオン重合、付加重合、環化重合、重付加、重縮合、付加縮合などによっても合成できる。
その他、市販の各種樹脂も利用可能である。
【0039】
上記繰り返し構造単位は、各々1種で使用してもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、本発明において、樹脂は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0040】
ビニルポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマログラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000以上であり、より好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは3,000〜20,000である。
ビニルポリマー中、残留単量体は5質量%以下であることが溶出物阻止の点などから好ましい。より好ましくは、残留単量体は3質量%以下である。ビニルポリマー中に含有される残留単量体は、GPC、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ガスクロマトグラフィ(GC)などの分析手段で定量することが可能である。
ビニルポリマー中の残留単量体の量を上記範囲とすることは、たとえば、合成後のビニルポリマーを残留単量体を良く溶解する溶媒を用いて再結晶、又は再沈澱したり、シリカゲルカラム・アルミナカラムを通すことによって行うことができる。
分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は通常1〜5であり、好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜3の範囲のものが使用される。
<トップコート組成物>
【0041】
本発明のトップコート組成物は、上記式(1)で表される化合物以外に、他の溶剤を含んでいてもよいが、溶剤系としては、式(1)の化合物が50質量%以上含むことが好ましい。本発明のトップコート組成物において用いられる溶剤は複数を混合して混合溶剤として用いることで、本発明の効果をより優れたものとする上で好ましい。これらは式(1)で表される化合物と混和すると共に、レジストとの混和を避けるためレジストで使用する有機溶剤とは異なることが好ましい。また、液浸液への溶出防止の観点からは、非水溶性であることが好ましい。また、沸点100℃〜200℃の溶剤が好ましい。
【0042】
使用しうる他の溶剤としては、例えば下記のものが挙げられる。
ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、デカリン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキセン、シクロペンタン、ジペンテン、ナフタレン、ジメチルナフタレン、シメン、テトラリン、ビフェニル、メシチレン等の炭化水素系溶剤;塩化メチレン、塩化ヘキシル、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤;アセトニトリル、イソプロパノールアミン、エチルへキシルアミン、N−エチルモルホリン、ジイソプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジ−n−ブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリプロピルアミン等の含窒素溶剤;蟻酸、酢酸、酪酸、イソ酪酸、イタコン酸、プロピオン酸等のカルボン酸系溶剤;無水酢酸、無水プロピオン酸、無水イタコン酸等の酸無水物系溶剤、1,4−ジフルオロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロジフルオロエタン、テトラフルオロプロパノール、パーフルオロヘプタン、ヘキサフルオロイソプロパノール、パーフルオロブチルエタノール、ペンタフルオロプロパノール、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロポリエーテル類、フルオロフェノール類等のフッ素系溶剤;その他、アニソール、ジオキサン、ジオキソラン、ジブチルエーテル、エチル−n−ブチルケトン、ジイソブチルケトン、エチレングリコール、ジグリシジルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、メチルエチルケトン、プロピレングリコール、N−メチルピロリドン、メトキシブタノール、テトラヒドロフラン、エチルエトキシプロピオネート等。
【0043】
本発明のトップコート組成物は、更に界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。上記界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、感度、解像度、密着性、現像欠陥の抑制などの性能向上、特に塗布均一性の向上に寄与する。
【0044】
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新
秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0045】
また、本発明では、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0046】
界面活性剤の使用量は、トップコート組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0047】
本発明のトップコート組成物は、レジスト膜上に塗布されるなどしてトップコート膜を形成し、レジスト膜内部への液浸液の浸透、および、レジスト膜成分の液浸液への溶出を防ぐものである。
【0048】
本発明のトップコート組成物は、当該組成物中に含まれる金属不純物の含有量が100ppb以下であることが好ましい。トップコート組成物中に含まれうる金属不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Mg、Mn、Pd、Ni、Zn、Pt、Ag、Cu等が挙げられるが、これらの中でも特に、鉄(Fe)の含有量を20ppb以下に抑えることがより好ましい。
【0049】
本発明のトップコート組成物をレジスト上に塗布する手段は適用するプロセスにあわせて適宜設定され、特に限定されるものではなく、スピンコート等の手段を用いることができる。
トップコート膜は、露光光源に対して透明であることが好ましいという観点から、薄膜の方が好ましく、通常1nm〜300nm、好ましくは10nm〜150nmの厚さで形成される。具体的には、膜の露光光透過率が好ましくは50%〜80%、より好ましくは60%〜70%となる膜厚であることが好ましい。露光光透過率は、樹脂の重合成分を調節するなどで調整できる。たとえば、樹脂が含有する芳香環の量を減らすことで、ArF光の透過率を高めることができる。
また、トップコート膜からの溶出物により液浸液やレンズが汚染されることを防ぐため、トップコート膜からの溶出物が無いことが好ましい。トップコート膜は、溶出物を防ぐ点で、低分子量の化合物(たとえば分子量1,000以下の化合物)の含量は少ない方が好ましい。
【0050】
トップコート膜は、液浸液との親和性の観点から、液浸液のトップコート膜に対する接触角(23℃)が50度〜80度であることが好ましく、60度〜80度であることがより好ましい。接触角は酸基の量を調整したり、共重合成分の親疎水性を制御することで前記範囲に調整できる。
トップコート膜の屈折率は、解像性の観点からレジスト膜の屈折率に近いことが好ましい。屈折率の調整は、トップコート組成物の成分、特に樹脂の組成、繰り返し単位の比率を制御することで行うことができる。
トップコート組成物は、トップコート膜を形成する際に均一に塗布できるものが好ましい。塗布性(塗布均一性)は、溶剤の種類や、界面活性剤等や他の添加剤を適宜選択し、その添加量を調整することで改善できる。
【0051】
トップコート組成物は、レジスト膜上へ塗布して膜を形成するため、レジスト膜と混合しないものであることが好ましい。
【0052】
<パターン形成方法>
本発明のトップコート組成物は、通常、上記の成分を溶剤に溶解し、基板上のレジスト膜上に塗布して用いる。
すなわち、液浸露光用レジスト組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により、任意の厚み(通常50〜500nm)で塗布する。この際、基板上に適宜反射防止膜を設けた上でレジスト膜を形成することも好ましい。塗布後、スピンまたはベークにより乾燥し、レジスト膜を形成する。
更に、レジスト組成物と同様に、レジスト膜上にスピナー、コーター等を用いてトップコート組成物を塗布、スピンまたはベークにより乾燥し、トップコート膜を形成する。
【0053】
ついでパターン形成のためマスクなどを通し、液浸液を介して露光(液浸露光)する。露光量は適宜設定できるが、通常1〜100mJ/cm2である。露光後、好ましくはス
ピンまたは/かつベークを行い、現像、リンスを行い、パターンを得る。尚、本発明において、トップコート膜は、現像工程で現像液に溶解・剥離するため、別段剥離工程を設ける必要は無い。
露光後はベークを行うことが好ましく、ベーク温度は、通常30〜300℃である。露光から現像処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化の観点から、露光からベーク工程までの時間は短いほうがよい。
ここで露光光としては、好ましくは220nm以下の波長の遠紫外線である。具体的には、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)等が挙げられる。
【0054】
使用することができる基板としては、通常のBareSi基板、SOG基板、あるいは、反射防止膜を有する基板等を挙げることができる。
【0055】
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、α−シリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型が用いることができる。前者は膜形成に真空蒸着装置、CVD装置、スパッタリング装置等の設備を必要とする。有機反射防止膜としては、例えば特公平7−69611号公報記載のジフェニルアミン誘導体とホルムアルデヒド変性メラミン樹脂との縮合体、アルカリ可溶性樹脂、吸光剤からなるものや、米国特許第5294680号明細書記載の無水マレイン酸共重合体とジアミン型吸光剤の反応物、特開平6−118631号公報記載の樹脂バインダーとメチロールメラミン系熱架橋剤を含有するもの、特開平6−118656号公報記載のカルボン酸基とエポキシ基と吸光基を同一分子内に有するアクリル樹脂型反射防止膜、特開平8−7115号公報記載のメチロールメラミンとベンゾフェノン系吸光剤からなるもの、特開平8−179509号公報記載のポリビニルアルコール樹脂に低分子吸光剤を添加したもの等が挙げられる。
また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、ARC25、シプレー社製のAC−2、AC−3、AR19、AR20等を使用することもできる。
【0056】
液浸露光する際に使用する液浸液について、以下に説明する。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつレジスト上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
【0057】
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させるために、ウェハー上のレジスト層を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。その添加剤としては水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
水の電気抵抗は、18.3Mオーム・cm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は、20ppb以下であることが望ましい。また、脱気処理をしてあることが望ましい。
【0058】
現像工程で用いるアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0059】
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
リンス液としては、純水、または純水に界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理または、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0060】
本発明のトップコート膜を用いる液浸露光において、レジストは、特に限定されず、通常使用されているものの中から任意に選ぶことができ、ポジ型、ネガ型のいずれのものでもよい。
【0061】
レジストとしては、特に化学増幅型レジスト、更にはポジ型レジストが好ましく用いることができる。
【0062】
化学増幅型レジストとしては、光等の活性エネルギー線により酸を発生するいわゆる酸発生剤を用いるものが代表的なものとして挙げられる。例えば、ネガ型の化学増幅型レジストは、通常、ベースポリマー、光酸発生剤、架橋剤の3成分系のものが用いられる。そして、レジスト露光時、その露光部において、光照射により発生した酸が架橋反応を起させ、現像液に対する溶解性を低下させるよう作用する。一方、ポジ型の化学増幅型レジストは、通常、溶解抑止機能をもつ保護基でブロックされた部位をもつベースポリマーと光酸発生剤を含む2成分系のものと、ベースポリマー、酸発生剤、溶解抑止剤の3成分系のものとがある。そして、レジスト露光時、その露光部において、光照射により発生した酸がポリマーの保護基を外して現像液に対する溶解性を高めるように作用する。
【0063】
露光光源がArFエキシマレーザー(波長:193nm)である場合には、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶化する樹脂と光酸発生剤とを含む2成分系のものが好ましい。特に、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶化する樹脂は、単環または多環の脂環炭化水素構造を有するアクリルまたはメタクリル系樹脂であることが好ましく、ラクトン残基、アダマンタン残基を有することが更に好ましい。
【0064】
尚、形成されたレジストパターンは導電性を有さないことが好ましいため、レジストは金属を含有しないことが好ましい。含有する金属量としては好ましくは100ppb以下、より好ましくは50ppb以下である。金属量は、使用する材料の純度向上や濾過等の通常の精製により抑制できる。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
下記表に示す成分について、溶剤に樹脂を溶解させ、それぞれについて固形分濃度4質量%の溶液を調製し、これを0.1μmのポリエチレンフィルターでろ過してトップコート組成物を調整した。次いで、シリコンウェハー上に厚さ78nmの反射防止膜(日産化学社製ARC29A)を形成し、その上に厚さ250nmのフォトレジスト膜(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製GAR−8107J1)を105℃で60秒ベークし、形成した。次いでトップコート膜を厚さ90nmにし、110℃で60秒ベークし形成した。得られたウェハーについて、ArFレーザーで露光し、2.38%濃度のTMAH液で現像し、純水でリンスし、スピン乾燥させ、パターン付きウェハーを得た。得られたパターンの断面をSEM(日立製S−4800)で観察した。結果は下記の表1のとおりであった。
【0066】
【表1】

【0067】
本発明の保護層用塗布組成物を用いることによって、良好なパターン形状が得られた。
【0068】
【化15】

【0069】
SL−1:イソブチルイソブチレート
SL−2:アミルブチレート
SL−3:イソブタノール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を50質量%以上含む溶剤系に、フルオロアルコール基を側鎖に有する水不溶性、かつアルカリ可溶性ビニルポリマーを溶かしてなることを特徴とする液浸露光フォトレジスト膜の保護層用塗布組成物。
【化1】

前記式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数3〜5のアルキル基である。
【請求項2】
前記フルオロアルコール基が、パーフルオロアルキル基のフッ素原子の少なくとも1つが水酸基に置換されたものである請求項1に記載の保護層用塗布組成物。
【請求項3】
前記パーフルオロアルキル基が、炭素数1〜10である請求項1又は2に記載の保護層用塗布組成物。
【請求項4】
前記フルオロアルコール基が、下記式(2)で表される基である請求項1〜3いずれか1つに記載の保護層用塗布組成物。
【化2】

前記式(2)において、R3及びR4は、同じでも異なっていてもよく、パーフルオロアルキル基を表す。
【請求項5】
前記式(2)のR3及びR4が、トリフルオロメチル基である請求項4に記載の保護層用塗布組成物。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の組成物を、液浸露光フォトレジスト膜上に塗布して保護層を形成し、液浸露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2010−66497(P2010−66497A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232500(P2008−232500)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】