説明

混合装置ならびにこれを用いるフッ素濃度測定システムおよび方法

【課題】 金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物、酸、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤を混合して、フッ素を有機フッ化物の形態で有機相中に移すために好適に用いられる新規な混合装置を提供する。
【解決手段】 混合装置20において、上端開口部1a、側壁部1bおよび底部1cを有する容器1と、容器1の上端開口部1aを封止する封止体3と、側壁部1bの上方部分にて容器1を保持し、容器1の上下動を可能にするように弾性体9が組み込まれた保持手段13と、容器1の底部1cと接触し、接触部から容器1に振動を与えることにより、容器1を偏心運動させる振動手段16とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物、例えばフッ化カルシウム(CaF)などを含む工場排水(または工業排水)のフッ素濃度を測定するために使用される混合装置、ならびにこれを用いるフッ素濃度測定システムおよび方法に関する。尚、本発明において水性媒体とは主に水からなる媒体を意味し、金属フッ化物およびその他成分を比較的少量含み得るものとする。
【背景技術】
【0002】
フッ素をイオンや化合物等の形態で水性媒体中に含む排水が種々の工場、例えば化学工場や半導体工場から排出されている。従来、フッ素が環境や人体に与える影響を考慮して水質汚濁防止法による排水規制がなされ、排水中のフッ素濃度に関する排水基準が設けられている。近年、排水規制は一層強化され、フッ素(およびその化合物)についての排水基準は更に引き下げられる傾向にある。
【0003】
この排水基準は、水性媒体中にフッ素イオン(F)の形態で遊離しているフッ素のみならず、水性媒体中に溶解せずに化合物(例えばCaF)の形態で存在しているフッ素を含む全フッ素濃度について規定されているものである。
【0004】
各工場では、上記排水基準を満足していることを確認するため、工場排水を排出するに際してそのフッ素濃度を測定している。排水基準を常時満たし、必要に応じて適切な処置を施すためには、このような測定を日常的に頻繁に実施することが望ましい。
【0005】
従来、工場排水のフッ素濃度を測定する方法としては、JIS K 0102に規定されているランタン−アリザリンコンプレキソン吸光光度法またはイオン電極法が用いられている(非特許文献1を参照のこと)。また、工場排水に限らず、一般的なフッ素濃度測定法としては、イオンクロマトグラフ法および硝酸トリウム滴定法がある。
【0006】
【特許文献1】特開平8−101205号公報
【特許文献2】特開2003−215135号公報
【非特許文献1】”JIS K 0102 工場排水試験方法 34.ふっ素化合物”、JISハンドブック 環境測定、1997年、p.1123−1127
【非特許文献2】”パンフレット 商品コード:01519421”、[online]、アズワン株式会社、[平成16年9月30日検索]、インターネット<URL: http://www.justis.as-1.co.jp/jus-tis/web/JProductDetailPamphlet.aspx?StfFlg=0&pPage=1>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工場排水には水への溶解度の低い金属フッ化物、例えばフッ化カルシウム(CaF)が含まれ得る。このため、上述のような従来のフッ素濃度測定法を用いて全フッ素濃度を測定するには、例えばケイフッ酸により金属フッ化物を溶解させ、そして蒸留操作に付してフッ素留分を分離するという前処理が必要である。また、上述のような従来の測定法はいずれも操作が複雑で、労力がかかり、高コストである。このような理由から、日常的に頻繁に工場排水のフッ素濃度を測定するには適さない。
【0008】
現在のところ、水に難溶な金属フッ化物を含む工場排水の全フッ素濃度を自動的に常時測定し、監視することができるような装置またはシステムは市販されていない。
【0009】
そこで、本発明者らは、上述のような従来の測定法に代えて用いることのできる新たな測定法について検討した結果、溶剤抽出およびガスクロマトグラフ分析を組み合わせた測定法を想到したものである。この測定法の原理は概略的には次の通りである。
【0010】
まず、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物と酸水溶液とを混合し、金属フッ化物を酸により溶解させてフッ素イオン(F)にする。そして、フッ素イオンを水の存在下でトリメチルクロロシラン(TMCS)と反応させてトリメチルフルオロシラン(TMFS)を生じさせる。このトリメチルフルオロシランはトルエンなどの適当な溶媒で抽出する。抽出後に得られる有機相をガスクロマトグラフ分析に付す。トリメチルフルオロシランについての分析結果からフッ素の量を求めることができ、液状物と酸水溶液との混合比および抽剤比(S/F)などを考慮して液状物のフッ素濃度を求めることができる。
【0011】
この原理に利用される反応それ自体は既知であるが、水性媒体中の全フッ素濃度を測定するために溶剤抽出およびガスクロマトグラフ分析を組み合わせて利用することは知られていない。
【0012】
上記のような測定法において溶剤抽出はガスクロマトグラフ分析のための前処理として理解され得る。この溶媒抽出を行うには、少なくとも(1)液状物、(2)酸、(3)反応物であるTMCS、および(4)有機溶剤を混合して十分に接触させる必要がある。混合すべき材料に酸が含まれるため、混合容器には耐酸性の材料、一般的にはガラスから成るものを使用する必要がある。
【0013】
汎用的な撹拌装置として、アズワン株式会社製 IKA 小型ミキサー MS−1(商品名)がある(非特許文献2を参照のこと)。この装置は試験管の上端を手で持ち、底部を回転プレートの凹部に押し付けて、プレートから伝わる振動によって、試験管内部の液体を混合するものである。しかし、このような撹拌装置を自動化のために試験管を機械的に保持するように構成して上記のような溶剤抽出に利用し、ガラス製の試験管を用いて材料を混合すると、試験管上端を固定して押し付けた状態で振動させているので、固定部に応力が集中して、容器(ガラス)が破損する恐れがある。また、試験管上端を固定していると、溶剤抽出を比較的短時間で十分に進行させ得る程度の混合レベルが得られない。
【0014】
また、生物化学の分野において血液などを分析するための自動撹拌装置として、上下から容器を挟み込んで固定した状態で腰振り運動させる撹拌装置(例えば特許文献1を参照のこと)や、容器を移動させ、その底部を突起で弾いて振動させる撹拌装置(例えば特許文献2を参照のこと)がある。しかし、これらの撹拌装置を上記のような溶剤抽出に利用し、ガラス製の容器で材料を混合する場合にも、容器(ガラス)が破損する恐れがあり、また、溶剤抽出を十分に実施し得る程度の混合レベルが得られない。
【0015】
本発明は、水への溶解度の低い金属フッ化物を含む液状物のフッ素濃度を簡単に、好ましくは自動的に測定できて、日常的に頻繁に測定するのに適するシステムを確立することを指向してなされたものである。本発明の第1の目的は、少なくとも、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物、酸、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤を混合して、フッ素を有機フッ化物の形態で有機相中に移すために用いられる新規な混合装置を提供することにある。本発明の第2の目的は、そのような混合装置を備え、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を測定するために用いられるシステムおよびこれを用いる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の要旨によれば、少なくとも(1)金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物、(2)酸、(3)フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物、および(4)有機溶剤を混合して、フッ素を有機フッ化物の形態で有機相中に移す(または抽出する)ために用いられる混合装置であって、
側壁部、底部および上端開口部を有する容器と、
容器の上端開口部を封止する封止体と、
容器を側壁部の上方部分にて保持する保持手段であって、容器の上下動を可能にするように弾性体が組み込まれた保持手段と、
容器の底部と接触し、接触部から容器に振動を与えることにより、容器を偏心運動させる振動手段と
を備える混合装置が提供される。
【0017】
このような本発明の混合装置によれば、弾性体により容器は上下動が可能であるので、振動手段により容器の底部から伝わる振動による偏心運動に応じて自在に上下動することができる。このような構成により、容器に対して局所的に応力が加わることを回避できるので、容器が破損する恐れを相当低減することができる。よって、容器の材料として、高い耐酸性を有するものの耐衝撃性の劣るガラスを用いることができる。加えて、このような構成により、振動手段による偏心運動と、これに応じた容器の上下方向の運動とが合わさって、容器内の材料を複雑に流動させ、溶剤抽出に適した十分な混合レベルを達成することができる。更に、振動手段で容器の外部から振動を加えることにより容器内の材料を混合できるので、材料が回転子や撹拌機等と接触せず、よって、コンタミネーションを回避できる。また更に、封止体により容器が封止されているので、人体に悪影響を及ぼし得る酸および有機物(揮発性であり得る)が容器外部に漏れ出るのを効果的に防止することができる。
【0018】
本発明の混合装置の1つの態様において、弾性体にはバネ(またはスプリング)、例えばコイルバネ、皿バネ、板バネ、角バネ、竹の子バネなどを用い得る。弾性体、好ましくはバネを用いると、容器内の材料の流動状態を複雑にすることができる。しかし、本発明はこれに限定されず、容器に対して局所的に応力が加わることを回避できる限り、他の適当な部材を用いてもよい。
【0019】
本発明の1つの態様において、保持手段は容器と側壁部の上方部分にてシール係合して容器を保持する下部フランジを含み、封止体は下部フランジとシール係合する上部フランジを含む。シール係合とは封止的(または気密的)に係合することを意味し、適当なシール部材、いわゆるガスケットまたはパッキン、例えばOリングなどを用いて実施される。このような下部フランジおよび上部フランジを用いることにより、容器の上方開口端が封止される。このような構成によれば、振動手段から受ける振動の影響を受けることなく、高い気密性を確保することができる。
【0020】
この態様において、本発明の混合装置は容器の内部圧力を変化させる圧力調整手段と組み合わせて用いてよい。例えば圧力調整手段として加圧手段を用いる場合、内部圧力を上昇させることにより、下部フランジとシール係合している容器が下部フランジに対して相対的に下方に移動する。この結果、上部フランジから容器の底部までの距離がより長くなるので、容器の偏心運動の支点が変わり、より長いストロークで偏心運動するので、より大きな混合レベル(または混合撹拌力)が得られることになる。加圧手段を用いる場合について説明したが本発明はこれに限定されず、任意の圧力調整手段を用いて容器の内部圧力を変化させることが可能であれば、これに応じて下部フランジに対する容器の相対位置を変化させることができ、よって、混合レベルを調節できるであろう。内部圧力ひいては混合レベルは、例えば2段階またはそれ以上で切り替えるようにすることが可能である。
【0021】
本発明の1つの態様において、封止体(例えば上部フランジ)には複数の孔が設けられ、複数の管がそれぞれ孔を通じて容器内に挿入されている。1つの管の一端は混合後に得られる有機相を取り出すように容器内に配置されている。他の管は、混合すべき材料を容器に供給するため、混合後の有機相を取り出した残余を排出するため、および場合により容器の内部圧力を変化させるために容器内にガスを供給および排出するためなどに用いてよい。このような管を用いることにより、1つの容器を封止体で封止し、および保持手段で保持したままで、種々のサンプルについて混合操作を順次実施することができる。
【0022】
本発明の混合装置は少なくとも、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物、酸、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤を混合して、フッ素を有機フッ化物の形態で有機相中に移すために好適に用いられるが、これに限定されず、他の液状材料の混合に利用することも可能である。
【0023】
本発明のもう1つの要旨によれば、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を測定するために用いられるシステムであって、
上記態様のような混合装置と、
金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物を計量採取し、混合装置の容器に管を通じて送給するサンプリング手段と、
酸を含む第1試薬と、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤を含む第2試薬とを混合装置の容器にそれぞれ所定量で管を通じて送給する分注手段と、
混合装置の容器から上記の1つの管を通じて有機相を取り出して移送する移送手段と、
移送手段により移送された有機相を分析し、この分析結果に基づいて、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を求めるためのガスクロマトグラフィーと、
混合装置の容器から有機相が取り出された残余を管を通じて排出する排出手段と
を備える、システムが提供される。
【0024】
このような本発明のシステムは、本発明の上記混合装置を用いる溶剤抽出と、これにより得られる有機相のガスクロマトグラフ分析とを組み合わせて実施でき、これにより、液状物が水に対する溶解度の低い金属フッ化物を含む場合であっても、固体の金属フッ化物に含まれるフッ素を酸により溶解させてフッ素イオンとし、そして、有機フッ化物の形態で有機相に抽出できるので、水性媒体中でもともとフッ素イオンの形態で存在していたフッ素および固体の金属フッ化物の形態で存在していたフッ素の双方を含む全フッ素濃度を簡単に測定できる。このようなシステムは、液状物のフッ素濃度を日常的に頻繁に測定するのに適する。
【0025】
本発明のシステムは液状物のフッ素濃度測定を自動的に行うのに好都合である。より詳細には、自動測定は制御部を用いて実現される。本発明の1つの態様において制御部は、
サンプリング手段により、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物を計量採取し、混合装置の容器に管を通じて送給し、
分注手段により、酸を含む第1試薬と、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤を含む第2試薬とを混合装置の容器にそれぞれ所定量で管を通じて送給し、
混合装置の振動手段を作動させることにより、液状物、第1試薬および第2試薬を容器内で混合し、
その後、振動手段を停止して、容器内の混合物を静置し、
これにより得られる有機相を、移送手段により、容器から1つの管を通じて取り出して移送し、
移送された有機相をガスクロマトグラフィーで分析し、この分析結果に基づいて、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を求め、
混合装置の容器から有機相が取り出された残余を、排出手段により、管を通じて外部へ排出し、および
金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物、有機相およびその残余をそれぞれ通した管内に洗浄液を通す
ようにシステムを制御する。
【0026】
本発明の1つの態様において、上記1つの管の他端はフローセルに接続され、この1つの管を通じて移送される有機相がフローセルに供給されたことを感知するセンサがシステムに備えられ、制御部はセンサの感知結果に基づいて、フローセル内の有機相をガスクロマトグラフィーで分析するようにシステムを制御する。尚、本発明において、フローセルとは、連続的に分析試料(有機相)を流通させることのできるセルまたは容器を意味するものである。
【0027】
尚、本発明のシステムにおいて、分注手段は、酸を含む第1試薬と、反応物および有機溶剤を含む第2試薬とを混合装置の容器にそれぞれ所定量で管を通じて送給するものとしたが、第1試薬および第2試薬という組み合わせに限らず、容器に供給して液状物と混合すべき材料を任意の他の組合せで分注するように改変可能である。例えば、酸、反応物、有機溶剤および場合により追加の成分が予め混合された試薬Xを分注してよく、あるいは、酸を含む試薬I、反応物を含む試薬II、有機溶剤を含む試薬IIIなどをそれぞれ分注するようにしてもよい。
【0028】
本発明において、液状物の水性媒体中に含まれる金属フッ化物は、代表的にはアルカリ金属フッ化物(例えばKFおよびNaFなど)、アルカリ土類金属フッ化物(例えば上述のCaFならびにBaFおよびMgFなど)などであってよい。しかし、本発明は、水に対する溶解度が比較的低い金属フッ化物を含む液状物の場合に特に適する。
【0029】
本発明のもう1つの要旨によれば、本発明の上記システムを用いて、フッ化カルシウム(CaF)を水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を測定する方法が提供される。フッ化カルシウムは水に難溶な金属フッ化物であり、酸により溶解してフッ素イオンを生じるので、本発明の方法によって液状物のフッ素濃度を好都合に測定することができる。
【0030】
金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物と混合される酸、反応物、および有機溶剤は、特に限定されるものではないが、例えば次の通りである。酸には、塩酸および硝酸などを用い得る。フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物には、トリメチルクロロシランなどを用い得る。有機溶剤には、トルエンおよびベンゼンなどを用い得る。
【0031】
また、溶剤抽出条件およびガスクロマト分析条件は、本発明の目的を達成し得るように当業者により適宜決定され得るであろう。
【0032】
本発明の1つの態様において、追加の有機成分を更に含む第2試薬を用い、ガスクロマトグラフィーによる有機相の分析において、この追加の有機成分を内部標準液として用いる。従来のフッ素濃度測定法は分析精度が十分に高くなく、例えば、JIS K 0102に規定されているランタン−アリザリンコンプレキソン吸光光度法では3〜10%、イオン電極法では5〜20%である。これに対し、本発明のこの態様によれば、内部標準液を用いてガスクロマト分析しているので、より高い分析精度が得られ、好ましくは約1〜10%の分析精度を達成することができる。尚、これら分析精度の値はいずれも繰り返し分析精度の変動係数である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、新規な混合装置が提供される。この混合装置は、少なくとも、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物、酸、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤を効果的に混合でき、フッ素を有機フッ化物の形態で有機相中に移すために好適に用いられる。
【0034】
また、本発明によれば、そのような混合装置を備えるシステムが提供される。このシステムを用いれば、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を簡単に、好ましくは自動的に測定することができる。
【0035】
更に、本発明によれば、そのようなシステムを用いるフッ素濃度測定方法が提供される。この方法によれば、フッ化カルシウムを水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を好適に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述する。
【0037】
図4に示すように、本実施形態のフッ素濃度測定システム100には、図1〜3に示す混合装置20が組み込まれている。尚、図1において、容器1、上部フランジ3、下部フランジ4、上プレート5、下プレート6および取付プレート10につき、図中に一点鎖線にて示す容器1の中心線に対して右側部分は断面図を示すものとする。
【0038】
図1および2に示すように、混合装置20には、上端開口部1a、側壁部1bおよび底部1cを有する容器1が備えられる。容器1には、例えば試験管状の縦型ガラス製容器などを用いてよい。容器1の上端開口部1aは上部フランジ3の下側面と当接し、これによって閉止されている。また、容器1の側壁部1bの上方部分は下部フランジ4を貫通する孔の内壁とOリング7aおよび7bでシール係合して保持される。
【0039】
上部フランジ3と下部フランジ4とは、その間に挟まれるOリング7cを介してシール係合し、上プレート5および下プレート6で挟まれてネジ止め(図示せず)され得る。このような構成により、上部フランジ3は封止体として容器1を気密的に封止する。上部フランジ3および下部フランジ4は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの材料から成るものを用い得る。PTFEは耐酸性を有し、また、有機物を吸着しないので好ましい。
【0040】
上部フランジ3はその上側に円錐台状の凸部を有しており、上プレート5は上部フランジ3の凸部周囲の上側面上に配置される。下プレート6は、下部フランジ4の下側面よりも大きい面積を有し、下プレート6の周縁部は下部フランジ4から突出している。
【0041】
下部フランジ4から突出した下プレート6の周縁部には、コイルバネ9が下プレート6を挟んで設けられる。より詳細には(但し図示せず)、下プレート6の上下に一対のコイルバネが、下プレート6を貫通する孔を通って取付プレート10に固定されたネジを囲むようにして設けられる。上下一対のコイルバネは、容器1の静止状態においていずれもが縮んだ状態で挿入されることが好ましい。上側のコイルバネはネジの頭部に設けられたナットと下プレート6との間で伸縮し、下側のコイルバネは取付プレート10と下プレート6との間で伸縮する。図3から理解されるように、本実施形態においては4対のコイルバネ9を用いているが本発明はこれに限定されない。このような構成により、上部フランジ3、下部フランジ4、上プレート5、下プレート6および容器1は一体として、取付プレート10に対してコイルバネ9で宙吊りされ、コイルバネ9が伸縮することによって上下動可能である。例えば、容器1が上方に移動すると、下プレート6の上側に位置するコイルバネ9が縮み、下側に位置するコイルバネ9は伸びる。また例えば、容器1が下方に移動すると、下プレート6の下側に位置するコイルバネ9が縮み、上側に位置するコイルバネ9は伸びる。尚、本実施形態においては容器1を上下動可能にするように組み込まれる弾性体としてコイルバネを用いるものとしたが、他の適当な弾性体を代わりに用いてもよい。また、Oリング7a〜7cによりシール係合を確保するものとしたが、他の適当なシール部材を用いてもよい。
【0042】
取付プレート10はゴム材11を介して支柱12に固定される。ゴム材11は本発明に必須ではないが、防震材として機能し得るので好ましい。本実施形態において、容器1の側壁部1bの上方部分を保持する下部フランジ4(およびOリング7aおよび7b)、下プレート6、コイルバネ9、取付プレート10、ゴム材11および支柱12が容器1を上下動可能に保持する保持手段13として機能する。支柱12は土台15に固定され、土台15は板状部15aとその下の脚部15bを有し得る。
【0043】
土台15の板上部15aの上にはミキサー16が設置され、ミキサー16の回転部16aが容器1の底部1cに接触する。回転部16aは、例えばミキサー本体16bに格納されたモーター(図示せず)などにより偏心回転、例えば前後左右に揺れて回転する。回転部16aの偏心回転により、これと接触している容器1に接触部から振動が加わり、容器1は偏心運動する。回転部16aはミキサー本体16bに傾斜した状態で設けられていることが好ましく(図2を参照のこと)、このような構成によれば、回転部16aの偏心回転により、容器1を積極的に上下動させることができる。回転部16aおよびミキサー本体16bを備えるミキサー16は振動手段として機能する。容器1と直接接触する回転部16aには弾性材料、例えばゴムなどを用いることが好ましい。
【0044】
上部フランジ3には複数の孔19が設けられる(図3には、中央部に2個、同心円状に6個で計8個の孔19を示し、図1には代表的に正面側の3つの孔19を示す)。複数の管の一端がそれぞれ孔19を通って容器1の内部に挿入されている。本実施形態においては、7つの孔19(残りの1つは予備用であり、プラグで塞がれている)の各々に7つの管28a〜28g(図4)が挿入されている。管28a〜28cは、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物21の供給、酸を含む第1試薬23Aの供給、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤を含む第2試薬23Bの供給にそれぞれ用いられる。管28dは、混合後に得られる有機相24の取り出しに用いられ、水相25の上の有機相24の位置を考慮して容器1内の所定の位置まで挿入される。管28eは、有機相を取り出した後の残余(または廃液)の排出に用いられ、残余のほぼ全てを排出し得るように容器1の底部まで挿入される。管28fおよび28gはガス、一般的には空気(エア)の供給および排気のために用いられる。これらの管28a〜28gには、例えばPTFEなどの材料から成るものを用いてよい。管28a〜28gにはバルブ(図示せず)が適宜備えられる。尚、孔19および管28a〜28gの配置は特に限定されず、適宜設定してよい。
【0045】
図4に示すように、本実施形態のフッ素濃度測定システム100には混合装置20に加えて、サンプリング機器(サンプリング手段)31、分注器(分注手段)33Aおよび33B、ポンプ(加圧手段、移送手段および排出手段)47、分析部50、ならびに制御部(図示せず)が更に備えられる。
【0046】
システム100において、サンプリング機器31は、例えばポンプおよび計量部(共に図示せず)を備え得、フッ素濃度を測定すべき液状物21を管29aを通じて計量採取し、管28aに通して容器1へ送給するように配置される。また、分注器(分注手段)33Aおよび33Bは、例えばエア式分注器であってよく、それぞれ所定量の第1試薬23Aおよび第2試薬23Bを管28bおよび28cに通して容器1へ送給するように配置される。分析部50内では、管28dの他端がフローセル41の下方部分に接続されている。フローセル41はその上方部分に接続された管29dを介して廃液タンク45に通じている。また、管28eも廃液タンク45に通じている。ポンプ47は管28fの他端と接続され、管28gは容器1内のガスを外部へ排出できるようになっている。
【0047】
分析部50にはガスクロマトグラフィー40、マイクロシリンジ42およびセンサ41が備えられる。マイクロシリンジ42は、フローセル41内の有機相24を計量採取し、ガスクロマトグラフィー40に注入するように動作する。マイクロシリンジ42による計量採取および注入は、フローセル41の管29dに設けられたセンサ43による感知結果に基づいて制御される。
【0048】
フッ素濃度測定システム100は、液状物21に代えて、洗浄液26を管29cを通じて、および好ましくはフッ素標準液27を管29bを通じてサンプリング機器31に流れるように構成される。また、管29aの液状物21の吸込み口には、ごみなどを除去するためにノズルフィルターを設けることが好ましい。管29a〜29dには、例えばPTFEまたはPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)どなどの材料から成るものを用いてよい。
【0049】
本実施形態におけるフッ素濃度測定システム100の構成要素である混合装置20(より詳細にはミキサー16)、サンプリング機器31、分注器33Aおよび33B、ガスクロマトグラフィー40、マイクロシリンジ42、センサ43、ポンプ47ならびにバルブなど(図示せず)は制御部(図示せず)に接続され、液状物21のフッ素濃度を自動的に測定し、および液状物21および有機相24の流路を洗浄するように電気的に制御される。
【0050】
次に、このような混合装置20を備えるフッ素濃度測定システム100を用いて液状物21のフッ素濃度を測定する方法について説明する。
【0051】
本実施形態においては、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物21として、水に対する溶解度の低い金属フッ化物(例えばCaFなど)および水に容易に溶解し得る金属フッ化物(例えばKF、NaFなど)を水性媒体中に含む液状物を用いる。通常、前者の金属フッ化物は水性媒体中で固体の化合物の形態で存在し、後者はイオンの形態で存在する。このような液状物21は、例えば工場排水である。尚、フッ化カルシウムは、工業的には、例えばフッ化水素を製造するための原料(蛍石)として用いられたものが排水中に残留したり、また、フッ素イオンを含む排水のフッ素濃度を低下させる処理(カルシウム法)において析出し、完全に分離除去しきれずに排水中に残留し得る。
【0052】
また、酸を含む第1試薬には塩酸水溶液を用いる。第2試薬は、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤に加え、追加の有機成分として内部標準液を含むものとし、反応物としてトリメチルクロロシラン(TMCS)、有機溶剤としてトルエン、内部標準液としてn−ペンタンを用いる。洗浄液26にはエタノールを用い得る。フッ素標準液27には、例えば10ppmのフッ素濃度を有するフッ化ナトリウム水溶液を用いてよい。第2試薬における各成分の体積比は、トルエン:n−ペンタン:TMCS=2:0.015:0.5とできる。
【0053】
まず、フッ素濃度を測定すべき液状物21をその貯槽から管29aを通じてサンプリング機器31により計量採取し、管28aを通じて容器1に送給する。このとき、管29aの先端に設けたノズルフィルターによりゴミなどを除去できるので、システム100において、ゴミが管(ライン)に詰まったり、サンプリング機器31内のポンプに噛み込んだりすることを防止できる。但し、ノズルフィルターには、液状物21に含まれる固体の金属フッ化物を通過させ得るものを用いる必要があることに留意されたい。
【0054】
他方、第1試薬23Aを分注器33Aにより管28bを通じて、第2試薬23Bを分注器33Bにより管28cを通じて、それぞれ所定量で容器1に送給する。
【0055】
そしてミキサー16を作動させて、回転部16aを偏心回転させ、その振動によって容器1を偏心運動させる(図1〜3)。このときコイルバネ9が伸縮し、容器1は横方向の運動に加えて上下運動をする。この結果、容器1内にて液状物21、第1試薬23Aおよび第2試薬23Bが十分に混合される。また、容器1は上下動可能であるので、ガラス製容器を用いても破損する恐れが少ない。更に、このような混合は回転子・撹拌機等を用いることなく実施できるので、コンタミネーションの恐れがない。
【0056】
この混合の間、水性媒体中で固体の化合物として存在していたフッ素は酸により溶解してフッ素イオン(F)となり、TMCSが水相にてフッ素イオン(F)と反応してトリメチルフルオロシラン(TMFS)および塩素イオン(Cl)を生じ、生じたTMFSは有機相に移る。この結果、フッ素イオンとして存在していたフッ素および金属フッ化物として存在していたフッ素の双方が有機フッ化物(TMFS)の形態で有機相中に抽出される。
【0057】
そしてミキサー16を停止させて容器1内の混合液を静置する。すると、有機相24と水相25とが相分離し、上層に有機相24、下層に水相25が形成される(図4)。
【0058】
混合および静置は、管28gのバルブを開けて大気解放した状態で実施してよい(管28a〜28fはバルブを閉じてよい)。あるいは、管28f以外の全ての管のバルブを閉じた状態で管28fから圧縮空気を供給し、その後、管28fを閉じた加圧状態(例えば0.1MPa程度)で混合および静置を実施してもよい。容器1の内部圧力を上昇させることによって、Oリング7aおよび7bを介して下部フランジ4とシール係合している容器1が下部フランジ4に対して相対的に下方に移動する。このため、容器1はゴムなどから成る回転部16aにより深くめり込む(尚、コイルバネ9による影響も受け得る)。この結果、上部フランジ3(より詳細には下部フランジ4とシール係合している面)から容器の底部1cまでの距離がより長くなるので、容器1の偏心運動の支点が変わり、より大きな混合レベルが得られることになる。例えば、容器1を大気解放した状態に比べ、容器1を加圧した状態では混合レベルはより大きくなる。よって、回転部16aの回転数を変化させなくても、容器の内部圧力を調節することにより、混合レベルを調節することが可能である。容器1の内部圧力は適宜設定してよく、2段階またはそれ以上で切り替えてよく、これに応じて混合レベルを切り替え得る。
【0059】
例えば、1mlの液状物21と、9mlの第1試薬23A(10%塩酸水溶液)と、2.515mlの第2試薬23B(トルエン:n−ペンタン:TMCS=2:0.015:0.5(体積比)の混合物)を容器1に供給する場合、約1分間混合し、その後、約3分間静置させる。
【0060】
その後、これにより得られた有機相24を管28dに通して分析部50、より詳細にはフローセル41へ移送される。この移送は、ポンプ47により容器1の内部圧力を一旦上昇させた状態で、他の管を閉じつつ、管28dを開けることによって形成される圧力勾配を利用して実施できる。
【0061】
管28dを通して移送された有機相24はフローセル41にその下方部分から流入し、次第にフローセル41を満たし、やがて管29dからオーバーフローする。管29d内に有機相が流れると、センサ29dはこれを感知する。この感知結果に基づいて、ポンプ47はフローセル41への有機相の移送を停止し、マイクロシリンジ42はフローセル41内の有機相を計量採取し、ガスクロマトグラフィー40に注入する。
【0062】
ガスクロマトグラフィー40に注入された有機相24は分析に付される。本実施形態においては、ガスクロマト分析によりTMFSの濃度を分析し、用いた液状物21と第1試薬23Aおよび第2試薬23Bの量および組成を考慮して、液状物21のフッ素濃度が求められる。このとき、有機相24には内部標準液(本実施形態ではn−ペンタン)が含まれているので、これを利用することにより高精度な分析が可能となる。
【0063】
他方、マイクロシリンジ41で採取されなかったフローセル41内の残りの有機相24は、フローセル41から管29dを通じて廃液タンク45に排出される。また、容器1内の有機相24を取り出した後の残部(主に水相25を含み、少量の有機相24を含み得る)は、管28eを通じて廃液タンク45に排出される。これら排出は、上記の有機相24の移送と同様に、ポンプ47を用いて形成される圧力勾配を利用して実現できる。
【0064】
液状物21の分析終了後、液状物21に代えて、洗浄液26を管29cを通じてサンプル手段31に流したこと以外は、液状物21のフッ素濃度測定の場合と同様にシステム100を作動させて、サンプル手段31、容器1、フローセル41、マイクロシリンジ42、ガスクロマトグラフィー40ならびに管28、28d、28eおよび29dを洗浄液26により洗浄する。洗浄液26としてエタノールを用いた場合、洗浄後にエアブローを行ってエタノールを揮発させて容易に除去できる。
【0065】
また、管29aの先端に設けられるノズルフィルターを管29a側からエアパージして再生することが好ましい。ノズルフィルターの再生は測定後にその都度実施することが好ましいが、必要に応じて、例えば定期的に実施するようにしてもよい。
【0066】
また、液状物21に代えて、フッ素標準液27を管29bを通じてサンプル手段31に流したこと以外は、液状物21のフッ素濃度測定の場合と同様にシステム100を作動させて、フッ素標準液27のフッ素濃度を測定し、この測定結果に基づいてガスクロマト分析を補正することが好ましい。一般的には、液状物21の分析に際して予めフッ素標準液27の分析を行い、その後、未知濃度の液状物21の分析を行い、これら分析結果の比に基づいて液状物21のフッ素濃度を求める。フッ素標準液27の測定は、必要に応じて、例えば1日に1回実施すればよい。
【0067】
更に、必要に応じて、例えば定期的に、サンプリング機器31および管29a(およびノズルフィルター)に第1試薬23Aまたは酸水溶液を逆向きに通して洗浄(逆洗)することが好ましい。
【0068】
以上のようにして、液状物21の全フッ素濃度を自動的に測定することができる。このようなフッ素濃度測定システム100を用いる測定は密閉系で実施できるので、人体に悪影響を及ぼし得る酸および有機物が周囲空間に放出されることがない。
【0069】
また、このような方法は測定後、自動的に洗浄することができるので、前回測定した液状物21のキャリーオーバーがなく、新たな液状物のフッ素濃度を高精度で測定することができる。例えば、1回の測定に要する時間を約15〜30分間程度にすることが可能である。よって、液状物21のフッ素濃度を頻繁に測定し、監視することが可能である。また、1つのシステム100を用いて、例えば工場の複数の箇所からサンプリングした液状物のフッ素濃度を順次測定することも可能である。
【0070】
液状物21のフッ素濃度測定結果のデータは、例えばディスプレイなどに表示し、定期的に印字し、または電子データとして保存することができる。測定結果が所定の閾値を超える場合には、適当な処置を採るべく、警告(またはアラーム)を視覚的および/または聴覚的に発するようにしてよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、フッ化カルシウムなどの金属フッ化物を含む工場排水のフッ素濃度を自動的に測定するために利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の1つの実施形態における混合装置を概略的に示す正面図であり、一部を断面にて示す図である。
【図2】本発明の1つの実施形態における混合装置を概略的に示す右側面図である。
【図3】本発明の1つの実施形態における混合装置を概略的に示す上面図(図中、下側が正面)である。
【図4】本発明の1つの実施形態におけるフッ素濃度測定システムを示す模式図である。
【符号の説明】
【0073】
1 容器
1a 上端開口部
1b 側壁部
1c 底部
3 上部フランジ(封止体)
4 下部フランジ
5 上プレート
6 下プレート
7a〜7c Oリング(シール部材)
9 コイルバネ(弾性体)
10 取付プレート
11 ゴム材(防震材)
12 支柱
13 保持手段
15 土台
15a 板状部
15b 脚部
16 ミキサー(振動手段)
16a 回転部
16b ミキサー本体
19 孔
20 混合装置
21 液状物(金属フッ化物を水性媒体中に含む)
23A 第1試薬(酸を含む)
23B 第2試薬(反応物、有機溶剤および内部標準液を含む)
24 有機相
25 水相
26 洗浄液
27 標準液
28a〜28g、29a〜29c 管
31 サンプリング機器(サンプリング手段)
33A、33B 分注器(分注手段)
40 ガスクロマトグラフィー
41 フローセル
42 マイクロシリンジ
43 センサ
45 廃液タンク
47 ポンプ(加圧手段、移送手段および排出手段)
50 分析部
100 フッ素濃度測定システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物、酸、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤を混合して、フッ素を有機フッ化物の形態で有機相中に移すために用いられる混合装置であって、
側壁部、底部および上端開口部を有する容器と、
容器の上端開口部を封止する封止体と、
容器を側壁部の上方部分にて保持する保持手段であって、容器の上下動を可能にするように弾性体が組み込まれた保持手段と、
容器の底部と接触し、接触部から容器に振動を与えることにより、容器を偏心運動させる振動手段と
を備える混合装置。
【請求項2】
弾性体はバネである、請求項1に記載の混合装置。
【請求項3】
保持手段は容器と側壁部の上方部分にてシール係合する下部フランジを含み、封止体は下部フランジとシール係合する上部フランジを含む、請求項1または2に記載の混合装置。
【請求項4】
容器の内部圧力を変化させる圧力調整手段と組み合わされて用いられる、請求項3に記載の混合装置。
【請求項5】
封止体には複数の孔が設けられ、複数の管がそれぞれ孔を通じて容器内に挿入されており、1つの管の一端は混合後に得られる有機相を取り出すように容器内に配置されている、請求項1〜4のいずれかに記載の混合装置。
【請求項6】
金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を測定するために用いられるシステムであって、
請求項5に記載の混合装置と、
金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物を計量採取し、混合装置の容器に管を通じて送給するサンプリング手段と、
酸を含む第1試薬と、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤を含む第2試薬とを混合装置の容器にそれぞれ所定量で管を通じて送給する分注手段と、
混合装置の容器から前記1つの管を通じて有機相を取り出して移送する移送手段と、
移送手段により移送された有機相を分析し、この分析結果に基づいて、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を求めるためのガスクロマトグラフィーと、
混合装置の容器から有機相が取り出された残余を管を通じて排出する排出手段と
を備える、システム。
【請求項7】
制御部を更に備え、制御部は
サンプリング手段により、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物を計量採取し、混合装置の容器に管を通じて送給し、
分注手段により、酸を含む第1試薬と、フッ素イオンと反応して有機フッ化物を生じさせ得る反応物および有機溶剤を含む第2試薬とを混合装置の容器にそれぞれ所定量で管を通じて送給し、
混合装置の振動手段を作動させることにより、液状物、第1試薬および第2試薬を容器内で混合し、
その後、振動手段を停止して、容器内の混合物を静置し、
これにより得られる有機相を、移送手段により、容器から1つの管を通じて取り出して移送し、
移送された有機相をガスクロマトグラフィーで分析し、この分析結果に基づいて、金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を求め、
混合装置の容器から有機相が取り出された残余を、排出手段により、管を通じて外部へ排出し、および
金属フッ化物を水性媒体中に含む液状物、有機相およびその残余をそれぞれ通した管内に洗浄液を通す
ようにシステムを制御する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つの管の他端はフローセルに接続され、該1つの管を通じて移送される有機相がフローセルに供給されたことを感知するセンサを更に備え、制御部はセンサの感知結果に基づいて、フローセル内の有機相をガスクロマトグラフィーで分析するようにシステムを制御する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
フッ化カルシウムを水性媒体中に含む液状物のフッ素濃度を測定するために請求項7または8に記載のシステムを用いる方法。
【請求項10】
第2試薬は追加の有機成分を更に含み、ガスクロマトグラフィーによる有機相の分析において、該追加の有機成分を内部標準液として用いる、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−105718(P2006−105718A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291183(P2004−291183)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】