説明

測位システム、通信装置、及び測位方法

【課題】測位機能を有する情報処理装置の車載時の自律航法による位置情報の精度を向上させることができる測位システム、通信装置、及び測位方法を提供する。
【解決手段】測位システム10は、車両300に設けられたコネクタ308と嵌合するコネクタ110と、上記コネクタを介して、上記車両から上記車両の車速情報又は進行距離情報を受信する車両通信部102と、上記車両通信部により取得した上記車速情報又は進行距離情報に基づく伝送情報を、情報処理装置に送信する情報処理装置通信部104と、を有する通信装置100と、上記通信装置から上記伝送情報を受信する通信部214と、上記車速情報又は進行距離情報に基づいて現在位置を算出する位置算出部242と、を有する情報処理装置200と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システム、通信装置、及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System)などにより取得される位置情報に基づいて、現在位置から目的地までの経路を案内するナビゲーション装置が広く普及している。このうち車両に搭載されるカーナビゲーション装置は、車両内に固定して用いられるもの(以下、固定ナビとよぶ)が主流であった。これに対し、最近は容易に着脱して持ち運ぶことのできるナビゲーション装置(以下、PND:Personal Navigation Device)が登場している。
【0003】
さらに、電子技術の向上により、ナビゲーション装置の提供する機能の多くが小型の電子部品で実現することができるようになってきた。これに伴い、ナビゲーション装置の提供する機能は、例えば携帯電話及びスマートフォンなどの携帯可能な装置の一機能として実現されるようになってきている。
【0004】
ナビゲーション装置の中には、GPSによる絶対位置情報に加えて、センサなどから取得する速度情報及び角速度情報などに基づく相対位置の情報を用いる自律航法によって、GPSの電波の届かない場所であっても位置情報を提供することのできるものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010―078595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、PNDなどの携帯型ナビゲーション装置は、自律航法機能を持たないものが多く、また自律航法機能を有するものであっても固定ナビと比較して自律航法の精度が低いという問題があった。そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、携帯型ナビゲーション装置などの情報処理装置の車載時における自律航法による位置情報の精度を向上させることが可能な、新規かつ改良されたナビゲーションシステム、車両情報通信装置、及びナビゲーション方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両に設けられたコネクタと嵌合するコネクタと、上記コネクタを介して、上記車両から上記車両の車速情報又は進行距離情報を受信する車両通信部と、上記車両通信部により取得した上記車速情報又は進行距離情報に基づく伝送情報を、情報処理装置に送信する情報処理装置通信部と、を有する通信装置と、上記通信装置から上記伝送情報を受信する通信部と、上記車速情報又は進行距離情報に基づいて現在位置を算出する位置算出部とを有する情報処理装置と、を有する、測位システムが提供される。
【0008】
かかる構成によれば、車両のコネクタに嵌合して設置される上記通信装置は、車両から車速情報又は進行距離情報を取得することができる。そして、通信装置は、取得した車速情報又は進行距離情報に基づいた伝送情報を情報処理装置に送信する。通信装置から送信された伝送情報を受信した情報処理装置は、かかる伝送情報に含まれる車速情報又は進行距離情報に基づいて現在位置を算出することができる。ここで、車両から取得される社則情報又は進行距離情報は、加速度センサにより間接的に取得される車両の速度情報よりも精度が高い。このため、この測位システムは、センサの検出値に基づいた相対位置の情報よりも精度の高い位置情報を算出することができる。
【0009】
また、上記情報処理装置は、上記算出された位置情報を用いて、目的地までの経路を案内するナビゲーション部をさらに有してもよい。
【0010】
また、上記車両に設けられたコネクタは、故障診断用コネクタであってもよい。
【0011】
また、上記通信装置は、上記車両の角速度を取得する角速度検出センサをさらに有し、上記情報処理装置通信部は、上記角速度検出センサにより取得される角速度と、上記車速情報又は進行距離情報とを上記伝送情報として上記情報処理装置に送信してもよい。
【0012】
また、上記通信装置は、上記コネクタが上記車両に設けられたコネクタと嵌合するときに上記車両に設けられたコネクタ上に固定される形状を有してもよい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両に設けられたコネクタと嵌合するコネクタと、上記コネクタを介して、上記車両から上記車両の車速情報又は進行距離情報を受信する車両通信部と、上記車両通信部により取得した上記車速情報又は進行距離情報に基づく伝送情報を、情報処理装置に送信する情報処理装置通信部と、を有する通信装置が提供される。
【0014】
上記車両の角速度を取得する角速度検出センサをさらに有してもよい。
【0015】
また、上記情報処理装置通信部は、上記角速度検出センサにより取得された角速度と、上記車速情報又は進行距離情報とを上記伝送情報として上記情報処理装置に送信してもよい。
【0016】
また、上記角速度検出センサにより取得される角速度と、上記車速情報又は進行距離情報と、に基づいて現在位置を算出する位置算出部をさらに有し、上記情報処理装置通信部は、上記位置情報を上記伝送情報として上記情報処理装置に送信してもよい。
【0017】
また、上記情報処理装置通信部は、近距離無線通信規格に従って上記情報処理装置と無線通信してもよい。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両に設けられたコネクタと嵌合するコネクタにより上記車両内に設置され、車両通信部と情報処理装置通信部とを有する通信装置と、上記情報処理装置通信部と通信する通信部と現在位置を算出する位置算出部とを有する情報処理装置とを備える測位システムの、上記車両通信部が、上記コネクタを介して、上記車両から上記車両の車速情報又は進行距離情報を受信するステップと、上記情報処理装置通信部が、上記車両通信部により取得された上記車速情報又は進行距離情報に基づく伝送情報を、上記情報処理装置に送信するステップと、上記通信部が、上記伝送情報を受信するステップと、上記位置算出部が、上記車速情報又は進行距離情報に基づいて現在位置を算出するステップと、を含む、測位方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、携帯型測位装置の車載時の自律航法による位置情報の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るナビゲーションシステムの構成図である。
【図2】同実施形態に係るナビゲーション装置(PND)の外観例である。
【図3】同実施形態に係るナビゲーションシステムの自律航法による測位動作を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るナビゲーションシステムの構成図である。
【図5】同実施形態に係るナビゲーションシステムの自律航法による測位動作を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るナビゲーションシステムの構成図である。
【図7】同実施形態に係るナビゲーションシステムの自律航法による測位動作を示すシーケンス図である。
【図8】各ナビゲーションシステムの特徴の比較表である。
【図9】第1〜第3の実施形態に係るナビゲーション装置が携帯電話であった場合の外観例である。
【図10】第1〜第3の実施形態に係るナビゲーション装置が携帯電話であった場合の構成図である。
【図11】従来の固定ナビの構成図である。
【図12】従来のPND(自律航法なし)の構成図である。
【図13】従来のPND(自律航法あり)の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成を、必要に応じてナビゲーション装置200a、およびナビゲーション装置200bのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、ナビゲーション装置200a及びナビゲーション装置200bなどを特に区別する必要が無い場合には、単にナビゲーション装置200と称する。
【0023】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.概要
2.第1の実施形態(通信装置が車速情報等を取得及び送信する例)
3.第2の実施形態(通信装置が角速度検出センサを有する例)
4.第3の実施形態(通信装置が相対位置を算出する例)
5.性能比較
6.変形例
【0024】
<1.概要>
[従来のナビゲーション装置の構成]
まず、本発明に至った背景について説明するために、図11〜図13に示す従来のナビゲーション装置について説明する。図11は、車両に固定して用いられる従来の固定型ナビゲーション装置の構成図である。図12は、持ち運び可能な携帯型ナビゲーション装置(PND)であって、自律航法の機能を有さない従来のPNDの構成図である。図13は、自律航法の機能を有する従来のPNDの構成図である。
【0025】
なお、以下ナビゲーション装置の場合を例にとって説明を行うが、本発明はかかる例に限定されるものではない。位置情報を利用するあらゆる情報処理装置に適用可能である。
【0026】
(固定ナビ900)
まず、図11を参照すると、従来の固定型ナビゲーション装置900(以下、固定ナビ900という。)は、車両300に固定して載置されて用いられるナビゲーション装置であり、GPSアンテナ912と、車速パルス検出部913と、角速度検出センサ916と、入力部902と、表示部904と、記憶部906と、GPS処理部932と、速度算出部942と、位置算出部944と、角度算出部946と、ナビゲーション部905とを主に有する。
【0027】
ところで、この固定ナビ900は、GPSによる測位の他に、自律航法による位置情報の取得も行うことができる。自律航法による測位には、車両の進行方位と進行距離とを示す情報が必要である。このため、一般的に自律航法による測位には、車両300の速度の情報(以下、車速情報という。)と、角速度検出センサ916により取得される角速度から算出される角度の情報が用いられる。ここで、固定ナビ900は、車両300から取得する車速パルス信号から算出する車速情報を用いて、自律航法による測位を行っている。なお、ここで用いられる車速パルス信号は、車両300の車輪回転速度に応じた信号であり、比較的正確な車速情報を得ることができる。
【0028】
固定ナビ900は、車両300内部で用いられる車速パルス信号を、例えばカシメ金具309などを用いて分岐配線して取得する。この車速パルス信号を取得するための配線が必要であるために、固定ナビ900の取り付けには特殊な知識が必要である。このため、一般的に固定ナビ900は、取り扱い店舗において特殊な知識を有する者により取り付けがなされ、一度取り付けられた後は、固定されたまま用いられる。
【0029】
(PND800a:自律航法なし)
次に、図12を参照すると、従来の携帯型ナビゲーション装置800a(以下、PND800aという。)は、固定ナビ900を簡単に取り付けられると共に、携帯して使用することができるように改良したものである。
【0030】
持ち運び可能とするために、PND800aは、自律航法による測位の機能を有していない。ナビゲーション部850は、GPS受信信号から算出されたGPS測位情報に基づいた位置情報によりナビゲーションを行う。PND800aは、車速パルス信号を取得するための配線が不要であるため、簡単に取り付け及び取り外しすることができる。
【0031】
例えば図2に示すように、PND800aは、車両300のダッシュボード上に吸盤16を介して取付けられたクレードル14によって保持されるとともに、当該PND800aとクレードル14とは機械的かつ電気的に接続される。クレードル14とPND800aとは、容易に着脱することができるため、PND800aは、ユーザが取り外して徒歩にて使用することもできる。
【0032】
しかし、PND800aは、自律航法による測位の機能を有していないため、GPS信号を受信することができない場所では位置情報を取得することができない。このため、PND800aは、トンネル内では測位を継続することができない。また、一般的にナビゲーション装置を起動してからGPS信号を受信するまでには時間を要する。このため、PND800aは、起動直後に測位を行うことができない。例えば固定ナビ900は、この欠点を補うために、自律航法による測位を用いることによって、起動直後にも測位を行うことができるよう構成されている。
【0033】
近年、カーナビゲーション装置として用いることのできる携帯電話も登場しているが、自律航法による測位の機能を有さないものについては、PND800aと同様の課題を抱えている。
【0034】
(PND800b:自律航法あり)
上述のように、単純に取り付けが簡単となるよう自律航法による測位の機能が省略されたPND800aは、現在位置情報の精度が著しく劣る。自律航法の機能と取り付けの簡単さを両立したPND800bは、この欠点を補うために開発された。
【0035】
図13を参照すると、PND800bは、PND800aの構成に加えて、加速度検出センサ813、角速度検出センサ816、速度算出部842、位置算出部844、及び角度算出部を有する。固定ナビ900と比較すると、PND800bは、車速パルス検出部914に代えて、加速度検出センサ813を有する点において異なる。
【0036】
かかる構成により、車速パルス信号に代えてセンサによる検出値から車速情報を取得することができる。このため、PND800bは、この車速情報を用いて自律航法による測位の機能を実現することができる。さらに、センサを用いた加速度の検出によれば、車両300との配線が不要であるため、PND800bは、簡単に取り付け及び取り外しをすることができる。
【0037】
以上説明してきたように、現在までに提供されているPND800は、簡単に取り付け及び取り外しをすることができると共に、センサを用いた自律航法による測位を用いることにより、固定型のナビゲーション装置の機能と遜色ない機能を提供することができるよう改良されてきた。
【0038】
ところが、それでもなお、携帯型のナビゲーション装置は、固定型のナビゲーション装置にナビゲーションの精度が劣る点がある。PND800bは、加速度検出センサ813の検出情報から車速を算出して自律航法に用いる。ところが、このセンサにより検出される加速度情報から算出される車速情報は、車速パルスに基づいた車速情報と比較して精度が劣る。このため、特にGPS信号を受信できない状態が長く継続する場合には、その測位誤差が累積し、測位精度を保つことが困難である。
【0039】
このため、次に説明する本願の第1〜第3の実施形態に係るPNDは、OBD−IIコネクタを介して取得することのできる車速情報を自律航法による測位に利用することを考えた。OBD−IIコネクタは、OBD−II(On−Board Diagnosis)と言われる車載式故障診断システムと接続するためのコネクタであり、故障診断コネクタ、又は車両診断コネクタともよばれる。
【0040】
<2.第1の実施形態(通信装置が車速情報等を取得及び送信する例)>
[機能構成]
ここで図1〜図3を用いて、本発明の第1の実施形態に係るナビゲーションシステムについて説明する。図1は、第1の実施形態に係るナビゲーションシステム10の構成図である。
【0041】
第1の実施形態に係るナビゲーションシステム10は、車両300の故障診断コネクタと嵌合するコネクタ110を有する通信装置100aと、携帯型のナビゲーション装置200aとを有する。
【0042】
(車両300)
車両300は、動力装置302と、情報表示部306と、車両制御部304とを主に有し、故障診断コネクタ308を搭載している。故障診断コネクタ308は、上述のOBD−IIコネクタである。OBD−IIは、アメリカでは1985年、日本でも2000年より新車への搭載が法律により義務付けられているため、現在アメリカ及び日本国内において販売されている車両には全て搭載されている。
【0043】
通信装置100aは、車両300の故障診断コネクタ308と嵌合するコネクタ110と、コネクタ110を介して車両300と通信する車両通信部102と、ナビゲーション装置200aと通信するナビゲーション装置通信部104と、通信装置100a全体の動きを制御する制御部106とを主に有する。
【0044】
コネクタ110は、上述のOBD−IIコネクタといわれる故障診断コネクタである。車両300側のコネクタ308は、コネクタ110と嵌合するように、コネクタ110と対応するピン配列を有する。
【0045】
(通信装置100a)
通信装置100aは、コネクタ110が車両300のコネクタ308と嵌合するときに、車両300のコネクタ308上に固定される形状を有する。例えばケーブルを介して2つの物体を接続する場合には、ケーブルの形状が変化することにより2つの物体の位置関係は変動する。しかし、これに対して、通信装置100aのコネクタ110は通信装置100aの筐体と一体化して形成されるため、通信装置100aの筐体と車両300の筐体との位置関係が変動せず固定された状態となる。
【0046】
車両通信部102は、コネクタ110を介して車両300と通信し、車両300の車速情報又は進行距離情報を受信する。本実施形態においては、以下、車両300の車速情報を受信する実施例について説明する。車両通信部102は、制御部106の制御に従って、定期的に車両300に対して車速情報を取得するための取得要求を送信し、車両300から送信される車速情報を受信する。
【0047】
ナビゲーション装置通信部104は、ナビゲーション装置200aと通信し、車両通信部102が取得した車速情報に基づく伝送情報を、ナビゲーション装置200aに送信する情報処理装置通信部の機能を有する。本実施形態においては、伝送情報は、車速情報そのものである。ナビゲーション装置通信部104は、無線通信により伝送情報を送信してもよい。例えば、ナビゲーション装置通信部104は、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信の規格に従った通信を行うことができる。
【0048】
制御部106は、通信装置100a全体の動作を制御する。制御部106は、例えば車両通信部102を制御することによって、車両300から周期的に情報を取得する。また、制御部106は、ナビゲーション装置通信部104を制御することによって、コネクタ110を介して取得した車速情報をナビゲーション装置200aに対して送信する。
【0049】
(ナビゲーション装置200a)
本発明の第1の実施形態に係るナビゲーション装置200a(以下、PND200aという。)は、例えば図2に示すような外観を有するPNDである。図2は、本発明の第1〜第3の実施形態に係るナビゲーション装置(PND)200の外観図である。また、従来のPND800も同様の外観を有するため、図2は、従来のPND800の外観図でもある。
【0050】
PND200aは、目的地までの経路を案内するとともに、位置情報に対応づけられた各種の情報をユーザに提供する機能を有する携帯型ナビゲーション装置である。PND200aは、表示部204を有し、車両300のダッシュボード上に吸盤16を介して取り付けられたクレードル14によって保持される。PND200はクレードル14に容易に取り付けることができるとともに、取り外しすることも可能である。
【0051】
このPND200aは、現在の位置情報を取得する機能を有するとともに、地図データを記憶している。このため、地図上に現在位置の情報を重畳して表示部204に表示させることができる。
【0052】
再び図1を参照すると、PND200aは、入力部202と、表示部204と、記憶部206と、ナビゲーション機能ユニット210aとを主に有する。
【0053】
入力部202は、ユーザによる操作指示を受付け、その操作内容をナビゲーション機能ユニット110に出力する。ユーザによる操作指示としては、例えば、目的地の設定、地図の拡大および縮小、音声案内設定、画面表示設定などが挙げられる。
【0054】
また、この入力部202は、表示部204と一体的に設けられるタッチスクリーンであってもよい。或いは、入力部202は、ボタン、スイッチ、およびレバーなど、表示部204と分離して設けられる物理的構成であってもよい。また、入力部202は、リモートコントローラから送信されたユーザによる操作指示を示す信号を検出する信号受信部であってもよい。
【0055】
表示部204は、例えば、地図データに現在位置を示す情報を重畳した画面を出力する表示装置である。この表示部204は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどの表示装置であってもよい。
【0056】
記憶部206は、PND200aが動作するためのプログラムや、地図データなどを記憶する記憶媒体である。なお、この記憶部206は、例えば、Flash ROM(又はFlash Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)などの不揮発性メモリ、ハードディスクおよび円盤型磁性体ディスクなどの磁気ディスク、CD(Compact Disc)、DVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)およびBD(Blu−Ray Disc(登録商標))などの光ディスク、並びに、MO(Magneto Optical)ディスクなどの記憶媒体であってもよい。
【0057】
また、ナビゲーション機能ユニット210aは、ナビゲーション機能を実現するための構成であり、GPSアンテナ212と、通信部214と、角速度検出センサ216と、制御部230aとを主に有する。制御部230aは、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算処理手段により構成され、さらに、GPS処理部232と、位置算出部242と、角度算出部244と、ナビゲーション部250の機能とを主に有する。
【0058】
GPSアンテナ212は、複数のGPS衛星からのGPS信号を受信することができ、受信したGPS信号をGPS処理部232に入力する。なお、ここで受信されるGPS信号には、GPS衛星の軌道を示す軌道データと、信号の送信時刻などの情報が含まれている。
【0059】
GPS処理部232は、GPSアンテナ212から入力された複数のGPS信号に基づいて当該PND200aの現在位置を示す位置情報を算出し、算出した位置情報をナビゲーション部250に供給する。具体的には、GPS処理部232は、複数のGPS信号をそれぞれ復調することにより得られる軌道データから各GPS衛星の位置を算出し、GPS信号の送信時刻と受信時刻との差分から各GPS衛星から当該PND200aとの距離を算出する。そして、算出された各GPS衛星の位置と、各GPS衛星から当該PND200aまでの距離とに基づいて、絶対位置情報である現在の3次元位置を算出する。
【0060】
このように、ナビゲーション部250は、GPS処理部232より供給される位置情報に基づいて、ナビゲーション処理を実行することができる。ところが、GPS衛星からのGPS信号を受信できないときには、PND200aは、GPSを用いた測位を行うことができない。そこで、PND200aは、主にGPS信号を受信できないときに、自律航法により得られる相対位置情報を用いたナビゲーション処理を実行することもできる。
【0061】
PND200aの上記に示した構成のうち、通信部214と、角速度検出センサ216と、位置算出部242と、角度算出部244とは、自律航法による相対位置を取得するために用いられる。
【0062】
従来のPND800bは、この通信部214に代えて、加速度検出センサ813と、加速度検出センサ813の検出値から車速情報を算出するための速度算出部842とを有していた(図13参照)。本発明の第1の実施形態に係るPND200aは、従来加速度検出センサ813と、速度算出部842とを用いることにより取得していた車速情報に代えて、車両300から得られる、より精度の高い車速情報を取得しようとするものである。
【0063】
通信部214は、外部の装置と有線または無線により通信する機能を有する。通信部214は、外部と接続するための有線又は無線のインタフェースと、受信した情報又は送信する情報を処理する回路などから構成される通信処理部との機能を主に有する。
【0064】
通信部214は、制御部230aの制御により、通信装置100aから送信された伝送情報を受信する受信部としての機能を有する。本実施形態においては、この伝送情報は、通信装置100aが車両300から取得した車速情報である。通信部214は、受信した伝送情報を位置算出部242に受け渡す。
【0065】
また、角速度検出センサ216は、角速度を検出するための検出装置である。角速度検出センサ216は、PND200aが旋回しているときの回転角の変化する速度(角速度)であるヨーレートωを電圧値として検出する機能を有する。角速度検出センサ216は、このヨーレートを例えば50Hzのサンプリング周波数で検出して、検出されたヨーレートを示すデータを角度算出部244に入力する。
【0066】
角度算出部244は、角速度検出センサ216から入力されたヨーレートωzにサンプリング周期(例えば、ここでは0.02s)を積算することにより、PND200aが旋回したときの角度θを算出し、その角度θが示された角度データを位置算出部242に入力する。
【0067】
位置算出部242は、通信部214から入力された車速情報により示される速度V及び角度算出部244により算出された角度θに基づき、現在位置の相対位置情報を算出する機能を有する。具体的には、位置算出部242は、速度Vおよび角度θに基づいて前回算出時の位置から現在位置までの変化量を求める。そして、位置算出部242は、この変化量と前回の位置とから現在の位置情報を算出する。その後位置算出部242は、この現在位置の位置情報をナビゲーション部250に供給する。
【0068】
ナビゲーション部250は、車両300から取得される車速情報に基づいて算出される相対位置情報に基づいて目的地までの経路を案内する機能を有する。位置情報取得部252と、目的地設定部254と、経路探索部256と、経路案内部258との機能を主に有する。
【0069】
位置情報取得部252は、PND200aの位置情報を取得する。この位置情報取得部252は、GPS処理部232又は位置算出部242のいずれかから位置情報を取得しても良い。例えば、位置情報取得部252は、GPS処理部232が位置情報を算出できる場合にはGPS処理部232から絶対位置情報を取得し、GPS処理部232が位置情報を算出できないとき、即ち、GPSアンテナ212がGPS信号を受信できないときには位置算出部242から相対位置情報に基づいた現在の位置情報を取得する。
【0070】
或いは、位置情報取得部252は、GPS処理部232から取得する絶対位置情報と位置算出部242から取得する相対位置情報とを用いて、マップマッチング処理を行うことにより補正された位置情報を取得してもよい。
【0071】
目的地設定部254は、例えば、ユーザが入力部202を用いて入力した操作情報から、ユーザが辿り着きたい場所である目的地を設定する。この目的地設定部254は、例えば、目的地を住所、名称、電話番号、またはジャンルから検索する画面、或いは目的地を予めユーザが登録した登録地点から選択する画面を生成して表示部204に表示させる。そして、この画面表示に対してユーザが入力部202を用いて行う操作情報を取得して目的地を設定する。
【0072】
経路探索部256は、位置情報取得部252から入力されるPND200aの現在位置から、目的地設定部254により設定される目的地までの経路を探索する機能を有する。
【0073】
経路案内部258は、目的地への経路を案内する機能を有する。経路案内部258は、目的地設定部254により目的地が設定されている場合には、設定された目的地への経路を経路探索部256に探索させて取得した経路に従って、目的地への経路を表示及び音声等によりユーザに通知する。例えば経路案内部256は、地図上に目的地までの経路の情報を重畳して表示部202に表示させる。また、経路案内部256は、交差点などいくつかの道路が分岐している場所の付近においては、目的地に向かう経路を示す矢印などを地図に重畳して表示部202に表示させてもよい。
【0074】
[自律航法による測位動作]
以上、説明してきたナビゲーションシステム10の自律航法による測位動作について、次に図3を参照しながら説明する。図3は、第1の実施形態に係るナビゲーションシステムの動作を示すシーケンス図である。
【0075】
まず、通信装置100aは、車両300から車速情報を取得する(S102)。このとき、通信装置100aは、故障診断コネクタを介して車両通信部102により車速情報を取得する。そして、通信装置100aは、ナビゲーション装置通信部104により、取得された車速情報をPND200aに送信する(S104)。
【0076】
そして、PND200aは、角速度検出センサ216により角速度を検出する(S106)。角速度検出センサ216は、検出した角速度を角度算出部244に入力する。角度算出部244は、角速度検出センサ216から入力された角速度に基づいて、PND200aが旋回する角度θを算出する(S108)。なお、図3においてステップS106及びステップS108の角速度検出及び角度算出処理は、ステップS104において通信装置100aから車速情報を取得した後に行うこととして記載されているが、車速情報の取得処理と並行して行われても良い。
【0077】
そして、位置算出部242は、通信装置100aから受信した車速情報と角度算出部より入力される角度情報に基づいて、前回算出時の位置から現在位置までの変化量を求める。そして、位置算出部242は、この変化量と前回の位置とから現在の位置情報を算出する(S110)。即ち、ここで算出される位置情報は、前回の測位位置からの変化量に基づいて算出される相対位置情報である。なお、ここで説明した自律航法による測位動作は、通信装置100aが定期的に車速情報を取得するタイミング毎に継続的に行われる。
【0078】
[効果の例]
以上のように、ナビゲーションシステム10は、通信装置100aが車両300から定期的に車速情報を取得し、取得した車速情報をPND200aに供給する。この車速情報は、車両300において車輪の回転に応じて取得された値であるため、例えば加速度検出センサなどを利用して取得された車速情報と比較すると精度が高い。PND200aは、この精度の高い車速情報を利用して、位置算出部242において、自律航法により比較的精度の高い相対位置による位置情報を算出することができる。従って、PND200aは、従来の加速度検出センサを用いて車速情報を取得するPNDと比較して自律航法の精度を高めることができる。
【0079】
ところが、PND200aは、容易に取り外し可能であるために、センサと車両300との取り付け位置関係が使用開始のたびに変化する可能性が高い。このため、PND200aは、起動後必ず補正処理を行う必要がある(PND800bにおいても同様)。この補正処理は、一般的にGPS測位情報を参照値として行われる。上述の通り、GPS信号は、起動後受信することができる状態となるために時間を要する。固定ナビ900は、この起動後GPS信号を受信することができる状態となるまでの間に、前回の停止位置を基点として自律測位によるナビゲーションを開始する。ところが、PND200aは、GPS信号を受信することができる状態となった後にセンサの補正処理が必要であるため、PND200aの起動直後は、ナビゲーションを開始することができない。
【0080】
そこで、上記の課題を解決するために、本願発明者は、第2の実施形態に係るナビゲーションシステム20を提案する。
【0081】
<3.第2の実施形態(通信装置が角速度検出センサを有する例)>
図4を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係るナビゲーションシステム20について説明する。図4は、第2の実施形態に係るナビゲーションシステム20の構成図である。なお、以下の説明中において、第1の実施形態と同様の箇所については説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0082】
[機能構成]
ナビゲーションシステム20は、第1の実施形態に係るナビゲーションシステム10と比較して、角速度検出センサをPND200ではなく通信装置100が有する点において異なる。
【0083】
通信装置100bの制御部106は、車両通信部102により定期的に車両300から車速情報を取得するとともに、角速度検出センサ108から角速度の情報を取得する。そして、制御部106は、取得した車速情報及び角速度情報を、ナビゲーション装置通信部104によりPND200bに対して送信させる。
【0084】
一方、PND200bは、通信部214を介して通信装置100bから受信した車速情報及び角速度情報に基づいて自律航法による測位を行う。即ち、通信部214は、受信した車速情報を位置算出部242に供給し、角速度情報を角度算出部244に供給する。そして、角度算出部244は、通信装置100に設けられる角速度検出センサ108によって検出される角速度情報に基づいてPND200bの旋回する角度θを算出する。
【0085】
PND200bは、位置算出部242において、通信装置100bから取得した車速情報、及び、通信装置100bの角速度検出センサ108において取得された角速度に基づいた相対位置情報を算出する。そして、PND200bは、この相対位置情報に基づいて目的地までの経路を案内する。
【0086】
[自律航法による測位動作]
このナビゲーションシステム20の自律航法による測位動作について、図5を参照しながら説明する。図5は、ナビゲーションシステム20の自律航法による測位動作を示すシーケンス図である。
【0087】
まず、通信装置100bは、車両300から車速情報を取得する(S202)。これと共に、通信装置100bは、角速度検出センサ108により角速度を検出する(S204)。そして、通信装置100bは、車速情報及び角速度情報を伝送情報としてPND200bに送信する(S206)。
【0088】
PND200bは、ステップS206において受信する角速度情報に基づいてPND200bの旋回する角度θを算出し(S208)、算出された角度θと、通信装置100bから送信される車速情報とに基づいて、PND200bの相対位置情報を算出する(S210)。
【0089】
[効果の例]
以上のように、ナビゲーションシステム20は、通信装置100bが車両300から定期的に車速情報を取得し、取得した車速情報をPND200bに供給する。それとともに、通信装置100bは、角速度検出センサ108を有しているため、この角速度検出センサ108により角速度情報を取得し、取得した角速度情報をPND200bに供給する。PND200bは、通信装置100bから供給される車速情報及び角速度情報に基づいて現在の位置情報を算出することができる。ここで、角速度検出センサ108は通信装置100b内に設けられる。第1の実施形態に係るナビゲーションシステム10又は従来のナビゲーションシステムにおいては、角速度検出センサはPND本体内に設けられていた。このため、上述の通りPND本体を取り付ける度に補正処理が必要であり、起動直後の測位を行うことができなかった。
【0090】
これに対し、ナビゲーションシステム20は、通信装置100b内に角速度検出センサ108が設けられる。通信装置100bは、上述の通り、車両300のコネクタ308とコネクタ110とを嵌合させることにより、通信装置100bの本体がコネクタ308の上部に固定される形状を有している。そして、通信装置100bは、主にPND200bが取り外してポータブルに利用されるのに対して、コネクタ308上部に固定されたまま、通常取り外すことなく利用されることが想定される。
【0091】
このため、通信装置100bが取り外されることなく固定されたままである限りは、起動直後の補正動作が不要である。このため、PND200bを起動した直後に、前回停止時の位置情報に基づいて測位を開始することができるという効果がある。特に、車両300が地下駐車場などGPS信号を受信できない場所に駐車されて停止し、その後動き始める場合には、車両300の発進後しばらくGPSによる測位が利用できないことが考えられる。このような場合に、本実施形態における構成は有効である。
【0092】
<4.第3の実施形態(通信装置が相対位置を算出する例)>
ここで、図6及び図7を用いて、本発明の第3の実施形態に係るナビゲーションシステム30について説明する。図6は、第3の実施形態に係るナビゲーションシステム30の構成図である。また、図7は、ナビゲーションシステム30の自律航法による測位動作を示すシーケンス図である。
【0093】
[機能構成]
ナビゲーションシステム30は、第2の実施形態に係るナビゲーションシステム20と比較して、さらに自律航法による測位に係る構成を通信装置100が有する点において異なる。即ち、角速度検出センサ108に加えて、角度算出部1062及び位置算出部1064の機能を通信装置100cの制御部106が有する。
【0094】
第2の実施形態に係るナビゲーションシステム20の構成においては、PND200bの起動直後において、補正処理が不要であるため、補正処理にかかる時間を待機することなく、車速情報及び角度情報を取得することができる。ところが、もし通信装置100bとPND200bとの間の通信の確立に時間がかかってしまった場合には、正確な測位を行えない可能性がある。即ち、車両300が走り出したタイミングにおいて通信が確立されていない場合には、PND200bは、車速情報及び角速度情報を取得することができず、自律航法による測位を行うことができない。この場合には、GPSによる測位が開始されるまでの間、PND200bは、全く位置情報を取得することができない。
【0095】
かかる課題を解決するために、本実施形態に係るナビゲーションシステム30は、通信装置100cが角度算出部1062及び位置算出部1064の機能を有する。かかる構成により、通信装置100cとPND200cとの間の通信の確立に時間がかかった場合であっても、通信装置100cにおいては自律航法による位置情報を算出することができる。これにより、PND200cは、通信装置100cとPND200cとの間の通信が確立し次第、自律航法による位置情報を取得することができる。
【0096】
[自律航法による測位動作]
図7を参照すると、通信装置100cは、まず、車両300から車速情報を取得する(S302)。そして、角速度検出センサ108により角速度情報を検出し(S304)、角度算出部1062は、この角速度検出センサ108の検出値に基づいて、PND200cの旋回する角度θを算出する(S306)。位置情報算出部1064は、車両通信部102により取得される車速情報と角度算出部1062により算出される角度θとに基づいて、車両300の位置を算出する(S308)。通信装置100cは、ナビゲーション装置通信部104により、位置算出部1064の算出する相対位置情報をPND200cに送信する(S310)。
【0097】
即ち、ナビゲーションシステム30において、通信装置100cの送信する伝送情報は、位置算出部1064において算出される相対位置情報である。なお、通信装置100cは、位置算出部1064において、前回測位時の位置情報を、図示しない記憶部に一時的に記憶している。また、上記のように、起動直後の測位ができるようにするために、通信装置100cは、車両300が停止する直前にその時点の位置情報を図示しない記憶部に記憶することが望ましい。このとき、停止地点においてGPSによる測位ができる場合には、PND200cからGPSによる位置情報を取得してもよい。
【0098】
<5.性能比較>
以上説明してきた、従来の固定ナビ900と、従来のPND800a及びPND800bと、本発明の第1〜第3の実施形態に係るPND200a〜200cとの性能について、図8を参照しながら比較する。
【0099】
比較する項目は、「簡単取付け」、「自律精度」、「GPS乱れ抑制」、「トンネル等測位継続」、及び「PowerON直後測位」の5項目である。
【0100】
まず、「簡単取付け」は、車両への固定及び配線などが容易であるか否かについての項目である。上述の通り、固定ナビ900は、車速パルス信号を取得するための配線が必要である。このため、基本的に固定ナビ900は、信号線引き出しの知識と技術を有する者により取り付けられ、ユーザによる取り付けができず、一度固定された後は取り外して用いられることはない。これと比較し、従来のPND800は、例えばダッシュボード上に吸盤及びクレードルを介して簡単に取り付け及び取り外しが可能であり、持ち歩いて徒歩モードで利用することもできる。また、他の車両に付け替えて利用することも容易である。
【0101】
そして、PND200は、通信装置100を別途取り付けて用いる必要がある点において、従来のPND800よりも取り付けのための手間がかかる。しかし、配線は不要であり、一度通信装置100を取り付けた後は、通信装置100は車両300のコネクタに取り付けたままで、PND200本体のみを取り外して持ち出したり、他の車両において用いることも可能である。
【0102】
次に、「自律精度」は、自律航法による測位の精度を示す項目である。固定ナビ900は、車両300の車輪の回転に応じた車速パルス信号に基づいて車速情報を取得している。このため、固定ナビ900は、加速度検出センサによる加速度から車速情報を取得するPND800bと比較すると、高い自律精度を保つことができる。また、PND800aは、自律航法の機能を有していない。PND800bは、加速度検出センサを用いて自律航法による測位を行うが、加速度検出センサによる検出値は、対地移動量の精度を保ちづらい。そして、PND200a〜200cは、いずれも車両300から取得された車速情報又は進行距離情報に基づいた位置情報を用いる。この車両300から取得された車速情報及び進行距離情報に基づいた位置情報は、加速度検出センサの検出値に基づいた位置情報と比較すると精度がよい。また、車両300から取得された車速情報及び進行距離情報に基づいた位置情報は、固定ナビ900において用いられる車速パルス信号に基づいた位置情報と同等の精度であると考えられる。
【0103】
また、「GPS乱れ抑制」は、GPSは、GPS信号の受信状況がよくない場合に測位結果が大きく乱れることがあるが、これを抑制できるか否かを示す項目である。PND800aは自律航法による測位の機能を有していないため、GPSの測位結果の乱れを抑制することができない。一方、固定ナビ900、PND800b、PND200a〜200cは、自律航法による測位の機能を有する。このため、GPS信号の受信状況がよくない場合には、自律航法による測位結果を用いて、GPSによる測位結果を補正することができる。
【0104】
また、「トンネル等測位継続」は、自律航法が動作可能であれば、GPS信号を受信できない場所でもある程度の時間測位が継続可能か否かを示す項目である。PND800aは自律航法の機能を有さないため、GPS信号を受信できない場所においては測位が継続できない。PND800bは、自律航法の機能を用いて測位を継続することはできる。ところが、PND800bは、上述の通り自律精度が固定ナビ900及びPND200と比較すると劣る。このため、誤差が累積してくると必要な精度を保てない場合がある。固定ナビ900及びPND200a〜200cは、自律航法による測位を比較的精度高く行うことができるため、PND800bと比較すると長い時間ある程度の精度で測位を継続することができる。
【0105】
また、「PowerON直後測位」は、ナビゲーション装置を起動した直後に測位が可能であるか否かを示す項目である。PND800aは、自律航法による測位の機能を有さないため、起動直後はGPSによる測位が開始できるまで測位を行うことができない。また、PND800b及びPND200aは、PND本体の取り付けの度にセンサの補正が必要である。このため、起動直後に測位を行うことができない。
【0106】
これに対し、固定ナビ900は、初期の取り付け時にセンサの補正は必要であるが、一度取り付けた後は、起動ごとに補正をする必要はない。また、GPSによる測位が行えない間に移動しても、前回の停止位置を起点として自律航法による測位を開始することが可能である。
【0107】
また、PND200bは、通信装置100bが角速度検出センサを有する。このため、PND200bは、固定ナビ900と同様にセンサの補正処理を起動ごとに行う必要がない。このため、PND200bは、移動を開始する前に通信装置100bとの通信が確立できることを条件として、起動直後においても測位を開始することができる。
【0108】
また、PND200cは、さらに自律航法の機能を有する通信装置100cから位置情報を取得する。このため、車両300の移動が開始される前にPND200cと通信装置100cとの通信が確立できなかった場合であっても、通信装置100cにおいて自律航法による測位が開始される。
<6.変形例>
また、本発明の第1〜第3の実施形態に係るナビゲーション装置は、携帯電話としても実装することができる。即ち、通信装置100からの伝送情報を携帯電話において受信し、これに基づいたナビゲーションを行うようにもできる。
【0109】
この場合におけるナビゲーション装置である携帯電話400は、例えば、図9に示す外観を有する。すなわち、携帯電話400が車両300のダッシュボード上に吸盤405を介してクレードル403により保持されることにより、ナビゲーション装置として機能させることができる。
【0110】
この携帯電話400の機能構成について、図10を参照しながら説明する。携帯電話400は、ナビゲーション機能ユニット210と、表示部404と、入力部402と、記憶部406と、携帯電話機能ユニット410と、統括制御部434とを有する。
【0111】
携帯電話機能ユニット410は、表示部404、入力部402、および記憶部406と接続されている。因みに、図10では表示を簡略化しているが、表示部404、入力部402、および記憶部406は、ナビゲーション機能ユニット210にもそれぞれ接続されている。なお、ナビゲーション機能ユニット210の詳細な構成については、図1、図4、及び図6に示した構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0112】
携帯電話機能ユニット410は、通話機能や電子メール機能などを実現するための構成であり、通信アンテナ412と、マイクロホン414と、エンコーダ416と、送受信部420と、スピーカ424と、デコーダ426と、携帯電話制御部430と、を有する。
【0113】
マイクロホン414は、音声を集音し、音声信号として出力する。エンコーダ416は、携帯電話制御部430による制御に従い、マイクロホン414から入力される音声信号のデジタル変換およびエンコードなどを行い、音声データを送受信部420に出力する。
【0114】
送受信部420は、エンコーダ416から入力される音声データを所定の方式に従って変調し、通信アンテナ412から無線で携帯電話400の基地局へ送信する。また、送受信部420は、通信アンテナ412により無線信号を復調して音声データを取得し、デコーダ426に出力する。
【0115】
デコーダ426は、携帯電話制御部430による制御に従い、送受信部420から入力される音声データのデコードおよびアナログ変換などを行い、音声信号をスピーカ424に出力する。スピーカ424は、デコーダ426から供給される音声信号に基づいて音声を出力する。
【0116】
また、携帯電話制御部430は、電子メールを受信する場合、送受信部420からデコーダ426に受信データを供給し、デコーダ426に受信データをデコードさせる。そして、携帯電話制御部430は、デコードにより得られた電子メールデータを表示部404に出力して表示部404に表示させる共に、記憶部406に電子メールデータを記録する。
【0117】
また、携帯電話制御部430は、電子メールを送信する場合、入力部402を介して入力された電子メールデータをエンコーダ416にエンコードさせ、送受信部420および通信アンテナ412を介して無線送信する。
【0118】
総括制御部434は、上述した携帯電話機能ユニット410およびナビゲーション機能ユニット210を制御する。例えば、総括制御部434は、ナビゲーション機能ユニット210によりナビゲーション機能を実行している間に電話がかかってきた場合、ナビゲーション機能を携帯電話ユニット410による通話機能に一時的に切替え、通話終了後、ナビゲーション機能ユニット210にナビゲーション機能を再開させてもよい。
【0119】
近年、携帯電話をカーナビゲーション装置として用いるものが登場してきているが、本発明の通信装置100を用いれば、従来の固定型のナビゲーションシステムと同等の機能を、携帯電話を用いることによっても実現することができる。この場合、例えば上記の第3の実施形態において説明した通信装置100cと携帯電話とを組み合わせて用いれば、携帯電話側は通信装置100から自律航法による測位結果を受信する通信機能さえ有していればよいため、好適である。
【0120】
携帯電話によるナビゲーション装置は、ユーザ個人にカスタマイズされた情報を提供する場合に特に好適である。車両自体は複数人で共有されている場合であっても、個々人に合わせた情報を提供することができる。例えば、目的地の履歴等のプライベートな情報であっても携帯電話に記録されれば他の人に見られる心配がなく、さらに異なる車両においても当該情報を利用することができる。この場合に、通信装置100cは、携帯電話によるナビゲーション装置を車載にて用いる場合の測位精度を向上させるための構成を有している。このため、携帯電話によるナビゲーション装置は、通信機能のみで精度の高い測位情報を用いることができる。
【0121】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0122】
例えば、上記実施形態では、ナビゲーション装置はPND又は携帯電話であることとしたが、本発明はかかる例に限定されない。その他のナビゲーション機能を有する装置も本発明の技術的範囲に属する。
【0123】
また、上記実施形態では、自律航法に用いる進行方位を求める方法として、検知した角速度の情報から進行方位を算出する方法について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、地磁気センサなどを用いることにより、角速度に代えて進行方位を直接検知する方法も考えられる。
【0124】
尚、本明細書において、シーケンス図に記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0125】
100 通信装置
102 車両通信部
104 ナビゲーション装置通信部
106 制御部
110 コネクタ
200 ナビゲーション装置(PND)
214 通信部
250 ナビゲーション部
300 車両


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたコネクタと嵌合するコネクタと、
前記コネクタを介して、前記車両から前記車両の車速情報又は進行距離情報を受信する車両通信部と、
前記車両通信部により取得した前記車速情報又は進行距離情報に基づく伝送情報を、情報処理装置に送信する情報処理装置通信部と、
を有する通信装置と、
前記通信装置から前記伝送情報を受信する通信部と、
前記車速情報又は進行距離情報に基づいて現在位置を算出する位置算出部と、
を有する情報処理装置と、
を備える、測位システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記算出された位置情報を用いて、目的地までの経路を案内するナビゲーション部をさらに有する、請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記車両に設けられたコネクタは、故障診断用コネクタである、請求項1又は2のいずれかに記載の測位システム。
【請求項4】
前記通信装置は、
前記車両の角速度を取得する角速度検出センサをさらに有し、
前記情報処理装置通信部は、前記角速度検出センサにより取得される角速度と、前記車速情報又は進行距離情報とを前記伝送情報として前記情報処理装置に送信する、請求項3に記載の測位システム。
【請求項5】
前記通信装置は、前記コネクタが前記車両に設けられたコネクタと嵌合するときに前記車両に設けられたコネクタ上に固定される形状を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の測位システム。
【請求項6】
車両に設けられたコネクタと嵌合するコネクタと、
前記コネクタを介して、前記車両から前記車両の車速情報又は進行距離情報を受信する車両通信部と、
前記車両通信部により取得した前記車速情報又は進行距離情報に基づく伝送情報を、情報処理装置に送信する情報処理装置通信部と、
を備える通信装置。
【請求項7】
前記車両の角速度を取得する角速度検出センサをさらに有する、請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記情報処理装置通信部は、前記角速度検出センサにより取得された角速度と、前記車速情報又は進行距離情報とを前記伝送情報として前記情報処理装置に送信する、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記角速度検出センサにより取得される角速度と、前記車速情報又は進行距離情報と、に基づいて現在位置を算出する位置算出部をさらに有し、
前記情報処理装置通信部は、前記位置情報を前記伝送情報として前記情報処理装置に送信する、請求項7に記載の通信装置。
【請求項10】
前記情報処理装置通信部は、近距離無線通信規格に従って前記情報処理装置と無線通信する、請求項6〜9のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
車両に設けられたコネクタと嵌合するコネクタにより前記車両内に設置され、車両通信部と情報処理装置通信部とを有する通信装置と、前記情報処理装置通信部と通信する通信部と現在位置を算出する位置算出部とを有する情報処理装置とを備える測位システムの

前記車両通信部が、前記コネクタを介して、前記車両から前記車両の車速情報又は進行距離情報を受信するステップと、
前記情報処理装置通信部が、前記車両通信部により取得された前記車速情報又は進行距離情報に基づく伝送情報を、前記情報処理装置に送信するステップと、
前記通信部が、前記伝送情報を受信するステップと、
前記位置算出部が、前記車速情報又は進行距離情報に基づいて現在位置を算出するステップと、
を含む、測位方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−18001(P2012−18001A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153906(P2010−153906)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】