説明

湿式ブレーキ装置

【課題】回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との摩擦係合面の冷却を効率よく行うことができる湿式ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】非回転側ブレーキ板48に摩擦材48Bを設けると共に、この摩擦材48Bの摩擦係合面48Eに油溝48Fを設ける。そして、ブレーキピストン49によりモータ軸25に制動力を付与したときに、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入する潤滑油59は、油溝48Fのみを通じて各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との間を外径側から内径側に向けて流通するように構成する。これにより、制動力を付与したときに、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入した潤滑油59は、摩擦係合面48E以外の部位に流れることが抑制され、当該摩擦係合面48Eの冷却を効率よく行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の旋回式の建設機械に装備される旋回装置等に用いられ、回転軸に制動力を付与する湿式ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、旋回式の建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回輪を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部側に設けられた作業装置とにより大略構成されている。そして、下部走行体と上部旋回体との間には旋回装置が設けられ、この旋回装置を作動させることにより下部走行体上で上部旋回体が旋回する構成となっている。
【0003】
ここで、旋回装置は、例えば、上部旋回体に取付けられ入力回転を減速して出力する減速装置と、該減速装置の上側に設けられ減速装置にモータ軸の回転を入力する電動モータ等の旋回モータと、減速装置によって減速されたモータ軸の回転を旋回輪に出力する出力軸と、旋回モータの回転に対して制動力を付与する湿式ブレーキ装置とを備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、旋回装置の湿式ブレーキ装置は、回転軸を回転可能に嵌入するブレーキケースと、該ブレーキケース内で回転軸よりも半径方向の外側に配置された回転側ブレーキ板と、該回転側ブレーキ板と重なり合う状態でブレーキケース内に配置された非回転側ブレーキ板と、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板とを押圧して摩擦係合させることにより回転軸に制動力を付与するブレーキピストンと、ブレーキケースに設けられその内部に潤滑油が流入する潤滑油流入口およびブレーキケースから潤滑油が流出する潤滑油流出口とにより大略構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−25580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来技術では、ブレーキケースに設けられた潤滑油流入口から回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との外径側部位に向けて潤滑油を供給することにより、これら回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との冷却を行う構成となっている。
【0007】
ところが、上述した従来技術では、例えば高負荷で高速回転する回転軸を制動する急制動時や非常停止時等に、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との摩擦係合面の冷却を十分に行うことができないという問題がある。
【0008】
すなわち、上述した従来技術では、環状に形成された非回転側ブレーキ板(固定板)に内周面と外周面とを半径方向に貫通する水平油路が設けられると共に、ブレーキ板を押圧するピストンにも半径方向に貫通する貫通孔が設けられている。
【0009】
このため、潤滑油流入口から回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との外径側部位に向けて供給された潤滑油は、その大部分が非回転側ブレーキ板の水平油路とピストンの貫通孔とを通じて流れ、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との摩擦係合面を流通する潤滑油の量が低下する虞がある。
【0010】
しかも、急制動時には、回転側ブレーキ板の回転に基づく遠心力が潤滑油に作用し、当該潤滑油が摩擦係合面から外径側に向けて押し出されることにより、摩擦係合面を流通する潤滑油の量が一層低下し、摩擦係合面の冷却を十分に行うことができなくなる虞がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との摩擦係合面の冷却を効率よく行うことができる湿式ブレーキ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため本発明は、回転軸を回転可能に嵌入するブレーキケースと、該ブレーキケース内で前記回転軸よりも半径方向の外側に配置された複数の回転側ブレーキ板と、該各回転側ブレーキ板と交互に重なり合う状態で前記ブレーキケース内に配置された複数の非回転側ブレーキ板と、前記回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板とを押圧して摩擦係合させることにより前記回転軸に制動力を付与するブレーキピストンと、前記ブレーキケースに設けられその内部に潤滑油が流入する潤滑油流入口および前記ブレーキケースから前記潤滑油が流出する潤滑油流出口とを備えてなる湿式ブレーキ装置に適用される。
【0013】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記潤滑油流入口は、前記回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との外径側部位に向けて前記潤滑油を流入させるものであり、前記潤滑油流出口は、前記回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との内径側部位から排出された前記潤滑油を前記ブレーキケースの外部へ流出させるものであり、前記回転側ブレーキ板と前記非回転側ブレーキ板とのうちの少なくとも一方のブレーキ板の摩擦係合面には、前記回転側ブレーキ板と前記非回転側ブレーキ板との外径側から内径側に向けて前記潤滑油を流通させる油溝を設け、前記ブレーキピストンにより前記回転軸に制動力を付与したときに、前記潤滑油流入口から前記ブレーキケース内に流入する前記潤滑油は、前記油溝のみを通じて前記回転側ブレーキ板と前記非回転側ブレーキ板との外径側から内径側に向けて流通する構成としたことにある。
【0014】
また、請求項2の発明は、前記潤滑油流入口から前記ブレーキケース内に流入する前記潤滑油は、油圧アクチュエータを駆動して加圧状態にある作動油の戻り油であり、前記潤滑油は、前記回転側ブレーキ板と前記非回転側ブレーキ板との外径側から内径側に向けて加圧状態で流通する構成としたことにある。
【0015】
また、請求項3の発明は、前記非回転側ブレーキ板には前記回転側ブレーキ板と摩擦係合する摩擦材を設け、該摩擦材には前記油溝を設ける構成としたことにある。
【0016】
また、請求項4の発明は、前記非回転側ブレーキ板は、内径側部位に前記回転軸の軸径よりも大径な大径孔を設けると共に、該大径孔の位置よりも径方向外側部位に前記摩擦材を設ける構成とし、前記回転側ブレーキ板は、内径側部位に前記回転軸と係合する係合孔を設けると共に、前記摩擦材が当接する径方向外側部位と前記係合孔との間の摩擦材非接触面に前記潤滑油が流通する貫通孔を設ける構成としたことにある。
【0017】
さらに、請求項5の発明は、前記回転軸は、前記ブレーキケース内を上,下方向に延びる構成とし、前記非回転側ブレーキ板は、前記回転側ブレーキ板と上,下方向に対面して配置する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、ブレーキピストンにより回転軸に制動力を付与したときに、潤滑油流入口からブレーキケース内に流入する潤滑油は、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との摩擦係合面に設けた油溝のみを通じて、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との間を外径側から内径側へと流通する構成としたので、制動時における摩擦係合面の冷却を効率よく行うことができる。
【0019】
すなわち、制動力を付与したときに、潤滑油流入口からブレーキケース内に流入した潤滑油は、摩擦係合面に設けた油溝のみを流通するため、当該摩擦係合面以外の部位に潤滑油が流れることを抑制することができる。このため、潤滑油流入口からブレーキケース内に流入した潤滑油は、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との摩擦係合面を積極的に冷却するので、当該摩擦係合面の冷却を効率よく行うことができる。この結果、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板の耐久性、信頼性を確保できると共に、制動性能(ブレーキ性能)の向上、信頼性の向上を図ることができる。
【0020】
また、請求項2の発明によれば、潤滑油流入口からブレーキケース内に流入する潤滑油は、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との外径側から内径側に向けて加圧状態で流通する構成としたので、回転側ブレーキ板の回転に伴い摩擦係合面を通過する潤滑油に遠心力が加わっても、この遠心力に抗して潤滑油を回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との外径側から内径側へと強制的に流通させることができる。このため、摩擦係合面の冷却をより一層効率よく行うことができ、更なる耐久性、信頼性の確保と、制動性能(ブレーキ性能)、信頼性の向上を図ることができる。
【0021】
また、請求項3の発明によれば、回転しない非回転側ブレーキ板に摩擦材を設けると共に該摩擦材に油溝を設ける構成としたので、当該油溝を流通する潤滑油に対して遠心力が直接的に加わらず、回転側ブレーキ板および非回転側ブレーキ板の外径側から内径側に向けて潤滑油を効率よく流通させることができる。このため、回転軸の回転速度にかかわらず、潤滑油による摩擦係合面の冷却効果を高めることができ、この面からも、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板の耐久性、信頼性を向上することができる。
【0022】
また、請求項4の発明によれば、非回転側ブレーキ板の内径側部位に大径孔を設けると共に回転側ブレーキ板の摩擦材非接触面に貫通孔を設ける構成としたので、大径孔と貫通孔とを通じて潤滑油を、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との内径側から潤滑油流出口に向けて効率よく流通させることができる。
【0023】
さらに、請求項5の発明によれば、ブレーキケース内を回転軸が上,下方向に延びる構成としたので、潤滑油流入口からブレーキケース内に流入した潤滑油は、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との摩擦係合面を水平方向に流通し、当該摩擦係合面を全周にわたって効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態による湿式ブレーキ装置が適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態による湿式ブレーキ装置を備えた旋回装置を示す要部縦断面図である。
【図3】図2中の湿式ブレーキ装置を制動解除時の状態で示す拡大断面図である。
【図4】湿式ブレーキ装置を示す図3中の矢示IV−IV方向からみた横断面図である。
【図5】湿式ブレーキ装置の組付け状態を示す分解断面図である。
【図6】湿式ブレーキ装置に供給される潤滑油、ブレーキ解除圧の供給経路を制動時の状態で示す油圧回路図である。
【図7】ブレーキケース、回転側ブレーキ板、非回転側ブレーキ板、ブレーキピストン等を制動時の状態で示す図6中の(VII)部拡大断面図である。
【図8】非回転側ブレーキ板を単体で示す平面図である。
【図9】非回転側ブレーキ板を示す図8中の矢示IX−IX方向からみた拡大断面図である。
【図10】回転側ブレーキ板を単体で示す平面図である。
【図11】本発明の第1の変形例による湿式ブレーキ装置を示す図4と同様な断面図である。
【図12】本発明の第2の変形例による湿式ブレーキ装置を示す図7と同様な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る湿式ブレーキ装置の実施の形態を、油圧ショベルに装備される旋回装置に適用した場合を例に挙げ、図1ないし図10を参照しつつ詳細に説明する。
【0026】
図中、1は旋回式の建設機械の代表例である油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成され、上部旋回体3の前部側には作業装置4が俯仰動可能に設けられている。また、下部走行体2と上部旋回体3との間には後述の旋回輪5が設けられ、上部旋回体3は旋回輪5を介して下部走行体2上に旋回可能に支持されている。
【0027】
5は下部走行体2と上部旋回体3との間に設けられた旋回輪を示し、該旋回輪5は、図1に示す下部走行体2の丸胴2A上に固定された内輪5Aと、上部旋回体3のベースとなる旋回フレーム3Aの下面側に固定された外輪5Bと、内輪5Aと外輪5Bとの間に設けられた多数の鋼球5C(1個のみ図示)とにより構成され、内輪5Aの内周側には、全周にわたって内歯5Dが形成されている。そして、後述の旋回装置11が作動して旋回フレーム3Aに固定された外輪5Bが内輪5Aの周囲を回転することにより、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回動作を行う構成となっている。
【0028】
11は下部走行体2上に旋回輪5を介して搭載された上部旋回体3を旋回させる旋回装置を示し、該旋回装置11は、後述の減速装置12、電動モータ21、出力軸27、湿式ブレーキ装置31等により構成されている。
【0029】
12は上部旋回体3の旋回フレーム3A上に取付けられた減速装置で、該減速装置12は、後述する電動モータ21から入力される入力回転を減速して後述の出力軸27に出力するものである。ここで、減速装置12は、後述のハウジング13と、1段目の遊星歯車減速機構18と、2段目の遊星歯車減速機構19と、3段目の遊星歯車減速機構20とにより大略構成されている。
【0030】
13は減速装置12の外殻をなすハウジングで、該ハウジング13は、旋回フレーム3Aの上面側に取付けられた円筒状の下側ハウジング14と、該下側ハウジング14の上端側に取付けられた円筒状の上側ハウジング15とからなり、旋回フレーム3Aの上面から上方(上,下方向)に延びている。ここで、下側ハウジング14の上,下方向の両端側には、大径な円板状の下フランジ部14A,上フランジ部14Bがそれぞれ設けられている。そして、下フランジ部14Aは、ボルト16を用いて旋回フレーム3Aに固定され、上フランジ部14Bには、上側ハウジング15が取付けられている。
【0031】
一方、上側ハウジング15の下端側には、大径な円板状の下フランジ部15Aが設けられ、該下フランジ部15Aは、ボルト17を用いて下側ハウジング14の上フランジ部14Bに固定されている。また、上側ハウジング15の上端側には、後述の電動モータ21が取付けられている。さらに、上側ハウジング15の内周側には、上,下方向に離間して3つの内歯車15B,15C,15Dが、それぞれ全周にわたって形成されている。
【0032】
18は上側ハウジング15内に配設された1段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構18は、後述する電動モータ21のモータ軸25にスプライン結合された太陽歯車18Aと、該太陽歯車18Aと上側ハウジング15の内歯車15Bとに噛合し、太陽歯車18Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車18B(1個のみ図示)と、該各遊星歯車18Bを回転可能に支持するキャリア18Cとにより構成されている。
【0033】
19は遊星歯車減速機構18の下側に配設された2段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構19は、1段目の遊星歯車減速機構18のキャリア18Cにスプライン結合された太陽歯車19Aと、該太陽歯車19Aと上側ハウジング15の内歯車15Cとに噛合し、太陽歯車19Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車19Bと、該各遊星歯車19Bを回転可能に支持するキャリア19Cとにより構成されている。
【0034】
20は遊星歯車減速機構19の下側に配設された3段目(最終段)の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構20は、2段目の遊星歯車減速機構19のキャリア19Cにスプライン結合された太陽歯車20Aと、該太陽歯車20Aと上側ハウジング15の内歯車15Dとに噛合し、太陽歯車20Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車20Bと、該各遊星歯車20Bを回転可能に支持するキャリア20Cとにより構成されている。そして、遊星歯車減速機構20のキャリア20Cは、後述する出力軸27の上端側にスプライン結合される構成となっている。
【0035】
21は減速装置12の上側に設けられた電動モータで、該電動モータ21は、後述の出力軸27を駆動するための回転源となるものである。ここで、電動モータ21は、下端側に大径な下フランジ部22Aが設けられた円筒状のモータケース22と、該モータケース22内に固定して設けられた固定子23、および回転可能に設けられた回転子24と、該回転子24と一体に回転する回転軸としてのモータ軸25とにより大略構成されている。
【0036】
この場合、モータケース22の中心部には、軸方向(上,下方向)に貫通する軸挿通孔22Bが形成され、モータケース22の上端側には、軸挿通孔22Bを取囲んで後述のオイルシール56が嵌合する有底のシール嵌合部22Cが設けられている。そして、モータケース22の下フランジ部22Aを、ボルト26を用いて上側ハウジング15の上端部に固定することにより、減速装置12の上端側に電動モータ21が取付けられている。
【0037】
一方、モータ軸25の両端側は、モータケース22の軸挿通孔22Bを通じて外部に突出し、モータ軸25の下端側には全周にわたって下側雄スプライン部25Aが形成され、モータ軸25の上端側には全周にわたって上側雄スプライン部25Bが形成されている。そして、減速装置12の上端側に電動モータ21を取付けた状態で、モータ軸25の下側雄スプライン部25Aは、上側ハウジング15内に突出し、1段目の遊星歯車減速機構18の太陽歯車18Aにスプライン結合される構成となっている。また、モータ軸25の上側雄スプライン部25Bは、図3に示すように、後述のブレーキケース32内に突出し、該ブレーキケース32内を上,下方向に延びる構成となっている。
【0038】
27はハウジング13内に回転可能に設けられた出力軸で、該出力軸27は、下側ハウジング14内に上側軸受28,下側軸受29を介して回転可能に支持され、ハウジング13内を上,下方向(軸方向)に延びている。ここで、出力軸27の上端側には雄スプライン部27Aが形成され、該雄スプライン部27Aは、3段目の遊星歯車減速機構20のキャリア20Cにスプライン結合されている。一方、出力軸27の下端側にはピニオン27Bが一体に設けられ、該ピニオン27Bは、下側ハウジング14の下端部から下方に突出し、旋回輪5の内輪5Aに設けられた内歯5Dに噛合している。
【0039】
従って、電動モータ21のモータ軸25の回転は、遊星歯車減速機構18,19,20によって3段減速された状態で出力軸27に伝達され、出力軸27は大きな回転力(トルク)をもって低速で回転する。これにより、出力軸27のピニオン27Bは、旋回輪5の内歯5Dに噛合しつつ内輪5Aに沿って公転し、このピニオン27Bの公転力がハウジング13を介して旋回フレーム3Aに伝わることにより、図1に示す上部旋回体3が、下部走行体2上で旋回動作を行う構成となっている。
【0040】
次に、31は本実施の形態による湿式ブレーキ装置を示し、該湿式ブレーキ装置31は、電動モータ21の上端側に配設されている。ここで、湿式ブレーキ装置31は、電動モータ21のモータ軸25の回転に対して制動力を付与するネガティブ型のブレーキ装置からなり、図3ないし図6等に示すように、後述のブレーキケース32、潤滑油流入口40、潤滑油流出口42、回転側ブレーキ板47、非回転側ブレーキ板48、ブレーキピストン49、ばね部材53、ブレーキ解除用油室57等により構成されている。
【0041】
32は湿式ブレーキ装置31の外殻をなすブレーキケースで、該ブレーキケース32は、回転軸としてのモータ軸25の上端部を回転可能に嵌入(挿入)するものである。ここで、ブレーキケース32は、後述のケース本体33と、蓋体38とにより大略構成されている。
【0042】
33は内部に回転側ブレーキ板47、非回転側ブレーキ板48、ブレーキピストン49等を収容するケース本体で、該ケース本体33は、上端側の開口端が後述の蓋体38により塞がれる段付き円筒状の円筒部33Aと、該円筒部33Aの下端側に設けられた円板状のフランジ部33Bとにより大略構成されている。そして、電動モータ21を構成するモータケース22の上端部に、ケース本体33のフランジ部33Bをボルト34を用いて固定することにより、電動モータ21の上端側に湿式ブレーキ装置31が着脱可能に取付けられている。
【0043】
35は後述のブレーキピストン49が摺動可能に挿嵌されるピストン挿嵌穴部で、該ピストン挿嵌穴部35は、ケース本体33の開口端側に位置して後述のブレーキ板収容穴部36と共にケース本体33の円筒部33Aを形成するものである。ここで、ピストン挿嵌穴部35は、開口端側に位置する大径穴部35Aと、該大径穴部35Aの下側に位置して該大径穴部35Aよりも内径が小さい小径穴部35Bと、該小径穴部35Bとブレーキ板収容穴部36の開口端とを連続する段部35Cとにより構成されている。
【0044】
36は後述の回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48とを収容するブレーキ板収容穴部で、該ブレーキ板収容穴部36は、ピストン挿嵌穴部35の底部に形成された段部35Cから該ピストン挿嵌穴部35より小径な穴径をもって軸方向に延びるものである。そして、ブレーキ板収容穴部36は、有底な環状の穴部としてケース本体33に形成されている。また、ブレーキ板収容穴部36の内周面には、軸方向に延びる複数の係合凹溝36Aが周方向に一定の間隔をもって(等間隔に)形成され、該係合凹溝36Aには非回転側ブレーキ板48の係合凸部48Dが係合する構成となっている。
【0045】
37はケース本体33のうちブレーキ板収容穴部36の下側に設けられた軸挿通孔で、該軸挿通孔37は、モータ軸25の上側雄スプライン部25Bと後述のアダプタ44とが挿通されるものである。ここで、軸挿通孔37には、後述の軸受45を取付ける環状の軸受取付部37Aが径方向内側に向けて突設されている。
【0046】
38はケース本体33の円筒部33Aの開口端を塞ぐ円板状の蓋体で、該蓋体38は、ケース本体33の上端側にボルト等(図示せず)を用いて着脱可能に取付けられるものである。そして、蓋体38とケース本体33の開口端との間には、両者間を液密に封止する環状のシール39が設けられている。
【0047】
40はケース本体33のうちブレーキ板収容穴部36に設けられた潤滑油流入口で、該潤滑油流入口40は、ブレーキケース32の内部に後述の潤滑油59を流入させるものである。ここで、潤滑油流入口40は、ブレーキ板収容穴部36のうち、後述の回転側ブレーキ板47および非回転側ブレーキ板48の外径側部位に対向する位置に開口している。これにより、ブレーキケース32の外部から潤滑油59が、潤滑油流入口40を通じて回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48との外径側部位に向けて流入するように構成している。
【0048】
41はブレーキ板収容穴部36のうち潤滑油流入口40に対応する部位に設けられた油溝で、該油溝41は、図7等に示すように、ブレーキ板収容穴部36の内周面に上,下方向に延びる油溝として形成されている。そして、この油溝41により、上,下方向に重なり合う各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との外径側部位に潤滑油59が均一に流通するように構成している。
【0049】
42は蓋体38の中心部に設けられた潤滑油流出口で、潤滑油流出口42は、潤滑油流入口40を通じてブレーキケース32内に供給され回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48との内径側部位から排出された潤滑油59を、ブレーキケース32の外部へ流出させるものである。
【0050】
43はケース本体33のうちピストン挿嵌穴部35に対応する部位に設けられたブレーキ解除圧流入口で、該ブレーキ解除圧流入口43は、後述のブレーキ解除用油室57に開口するものである。そして、ブレーキ解除圧流入口43を通じてブレーキ解除用油室57に圧油が供給されることにより、後述のブレーキピストン49がばね部材53に抗して回転側ブレーキ板47等から離間し、電動モータ21のモータ軸25に対する制動を解除する構成となっている。
【0051】
44はブレーキケース32内に挿入されたモータ軸25の上端側に着脱可能に取付けられるアダプタを示し、該アダプタ44は円筒状に形成され、その内周側には、モータ軸25の上側雄スプライン部25Bにスプライン結合される雌スプライン部44Aが形成されている。一方、アダプタ44の外周側には、軸方向に延びる雄スプライン部44Bが全周にわたって形成され、この雄スプライン部44Bには、後述の回転側ブレーキ板47の雌スプライン部47Aが係合する構成となっている。
【0052】
45はアダプタ44とブレーキケース32との間に設けられた軸受で、該軸受45は、ブレーキケース32のケース本体33に対してアダプタ44を回転可能に支持するものである。ここで、軸受45は、アダプタ44の下端側外周に嵌合する内輪45Aと、ケース本体33の軸挿通孔37に軸受取付部37Aを介して取付けられる外輪45Bと、内輪45Aと外輪45Bとの間に設けられた複数の鋼球45Cとにより構成され、内輪45Aの下端側は、アダプタ44の外周側に取付けられた止め輪46によって支持されている。
【0053】
47はブレーキケース32内でモータ軸25よりも半径方向の外側に配置された複数枚の回転側ブレーキ板を示し、該各回転側ブレーキ板47は、図10等に示すように、例えば鉄鋼材等の金属材料により円環状の板体として形成され、後述の非回転側ブレーキ板48と軸方向(上,下方向)に交互に重なり合う状態で、ケース本体33のブレーキ板収容穴部36内に収容されている。
【0054】
ここで、回転側ブレーキ板47の内径側部位(中心部)には係合孔としての雌スプライン部47Aが設けられており、該雌スプライン部47Aを、モータ軸25に取付けられたアダプタ44の雄スプライン部44Bに、軸方向に移動可能に係合している。これにより、各回転側ブレーキ板47は、アダプタ44に対して軸方向に移動可能な状態で、該アダプタ44を介してモータ軸25と一体に回転する構成となっている。
【0055】
また、図10に示すように、回転側ブレーキ板47の径方向外側部位は、後述の非回転側ブレーキ板48の摩擦材48Bが当接する当接部47Bとなり、該当接部47Bと雌スプライン部47Aとの間は、摩擦材48Bが接触しない摩擦材非接触面47Cとなっている。そして、摩擦材非接触面47Cには、上,下方向に貫通する複数の貫通孔47Dが設けられている。
【0056】
ここで、これら各貫通孔47Dは、潤滑油流入口40を通じてケース本体33内に供給され、後述する摩擦材48Bの油溝48Fを通じて回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48との間を外径側から内径側に向けて流通した潤滑油59を、潤滑油流出口42へ向けて上,下方向に流通させる役目を有している。これにより、回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48との内径側に流通した潤滑油59を、回転側ブレーキ板47の各貫通孔47Dと非回転側ブレーキ板48の大径孔48Cとを通じて潤滑油流出口42に効率よく流通させることができる。
【0057】
48は各回転側ブレーキ板47と交互に重なり合う状態でブレーキケース32内に配置された複数枚の非回転側ブレーキ板を示し、該各非回転側ブレーキ板48は、各回転側ブレーキ板47と上,下方向に対面して配置された状態で、ケース本体33のブレーキ板収容穴部36内に収容されている。そして、非回転側ブレーキ板48は、図8および図9等に示すように、例えば鉄鋼材等の金属材料により円環状の板体として形成された基板48Aと、該基板48Aの軸方向(上,下方向)両側面に設けられ、回転側ブレーキ板47との間で制動力を発生する一対の摩擦材48Bとにより大略構成されている。
【0058】
ここで、基板48Aの内径側部位(中心部)には、モータ軸25に係合するアダプタ44の軸径D0(図4参照)よりも大きな内径D1を有する大径孔48Cが設けられている。一方、基板48Aの外径側部位(外周縁部)には、ブレーキ板収容穴部36の内周面に形成された係合凹溝36Aに係合する係合凸部48Dが周方向に一定の間隔をもって(等間隔に)形成されている。そして、各係合凸部48Dと各係合凹溝36Aとの係合により、各非回転側ブレーキ板48は、ブレーキケース32に対して軸方向に移動可能となり、かつブレーキケース32に対して非回転となっている。
【0059】
また、摩擦材48Bは、例えばセラミックや焼結合金、ペーパ系、ゴム系、樹脂系等の素材により環状に形成されたもので、基板48Aの軸方向両側面で大径孔48Cよりも外径側部位に固定されている。ここで、本実施の形態の場合には、図8および図9等に示すように、大径孔48Cの内径D1と摩擦材48Bの内径D1とを同じ大きさにしている。
【0060】
また、摩擦材48Bのうち回転側ブレーキ板47の当接部47Bと当接する摩擦係合面48Eには、周方向に円弧状に傾斜した「サンバースト溝」と呼ばれる複数の油溝48Fが設けられている。そして、各油溝48Fにより、ブレーキケース32内に潤滑油流入口40から流入した潤滑油59が、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との間を外径側から内径側に向けて流通するように構成している。
【0061】
ここで、本実施の形態の場合には、後述のブレーキピストン49によりモータ軸25に制動力を付与したときに、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入する潤滑油59が、摩擦材48Bの各油溝48Fのみを通じて、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との間を外径側から内径側に向けて流通するように構成している。このために、本実施の形態の場合には、ブレーキピストン49により各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48とを摩擦係合させたときに、ブレーキケース32内で各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との外径側部位から内径側部位へと潤滑油59を流通させる油路が、各非回転側ブレーキ板48の摩擦材48Bの摩擦係合面48Eに設けた各油溝48Fのみによって形成されている。
【0062】
49はブレーキケース32(ケース本体33)のピストン挿嵌穴部35に軸方向に摺動可能に挿嵌されたブレーキピストンで、該ブレーキピストン49は、回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48とを押圧して摩擦係合させることにより、モータ軸25に制動力を付与するものである。ここで、ブレーキピストン49は、段付き円筒状に形成され、後述のピストン本体部50と、押圧部51と、ばね収容穴52とにより大略構成されている。
【0063】
50はピストン挿嵌穴部35に摺動可能に挿嵌されるピストン本体部で、該ピストン本体部50は、ピストン挿嵌穴部35の大径穴部35Aに挿嵌される大径筒部50Aと、ピストン挿嵌穴部35の小径穴部35Bに挿嵌される小径筒部50Bと、後述の押圧部51が突設される底面50Cとにより大略構成されている。
【0064】
51は回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48とを押圧する押圧部で、該押圧部51は、ピストン本体部50の小径筒部50Bよりも小径に形成され、該小径筒部50Bの底面50Cからからブレーキ板収容穴部36内に突出している。
【0065】
52はブレーキピストン49の上端側に周方向に離間して設けられた複数個(1個のみ図示)のばね収容穴で、該ばね収容穴52は、軸方向に延びる有底穴として形成され、内部に後述のばね部材53が収容されている。
【0066】
53はブレーキピストン49を下方(回転側ブレーキ板47等に接近する方向)に向けて常時付勢するばね部材で、該ばね部材53は、例えば圧縮コイルばね等の弾性部材により構成され、ブレーキピストン49のばね収容穴52内に圧縮された状態で設置されている。そして、後述のブレーキ解除用油室57内に圧油(ブレーキ解除圧)が供給されていないときに、ばね部材53の付勢力によってブレーキピストン49が各ブレーキ板47,48を押圧して摩擦係合させる。これにより、各回転側ブレーキ板47の回転が規制され、アダプタ44を介してモータ軸25に制動力が付与される。
【0067】
54はブレーキピストン49の大径筒部50Aの外周側に設けられた環状の上側シール、55はブレーキピストン49の小径筒部50Bの外周側に設けられた環状の下側シールを示している。これら上側シール54と下側シール55とは、ブレーキピストン49(ピストン本体部50)の外周面とブレーキケース32(ピストン挿嵌穴部35)の内周面との間を液密に封止するものである。
【0068】
56は軸受45よりも下側に位置して電動モータ21のモータ軸25の外周側に設けられたオイルシールを示し、該オイルシール56は、ブレーキケース32内に供給される後述の潤滑油59を電動モータ21に対して封止するものである。
【0069】
57はブレーキケース32の内周面とブレーキピストン49の外周面との間に設けられたブレーキ解除用油室を示している。ここで、ブレーキ解除用油室57は、ピストン本体部50の大径筒部50Aと小径筒部50Bとの間の角隅部とピストン挿嵌穴部35の大径穴部35Aと小径穴部35Bとの間の角隅部との間に全周にわたって環状に形成され、上側シール54と下側シール55とによって上,下方向から挟まれている。そして、ブレーキ解除用油室57には、ケース本体33に設けられたブレーキ解除圧流入口43が連通している。
【0070】
従って、ブレーキ解除圧流入口43を通じてブレーキ解除用油室57内に圧油(ブレーキ解除圧)が供給されていないときには、ブレーキピストン49が、ばね部材53の付勢力によって各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48とを摩擦係合させることにより、アダプタ44を介してモータ軸25に制動力が付与される。
【0071】
一方、ブレーキ解除圧流入口43を通じてブレーキ解除用油室57内に圧油が供給されたときには、ブレーキピストン49がばね部材53に抗して回転側ブレーキ板47等から離間することにより、モータ軸25に対する制動が解除される。
【0072】
58はブレーキケース32の内周面とブレーキピストン49の外周面との間に設けられたブレーキ圧調整油室を示し、該ブレーキ圧調整油室58は、ブレーキケース32のピストン挿嵌穴部35の段部35Cとブレーキピストン49のピストン本体部50の底面50Cとの間に全周にわたって画成されている。
【0073】
ここで、ブレーキ圧調整油室58には、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入する潤滑油59の一部が油溝41を通じて加圧状態で流入する。そして、ブレーキ圧調整油室58に流入する潤滑油59により、ブレーキピストン49に対しばね部材53の付勢力が加わる方向とは逆方向の力が付与されるようにしている。これにより、制動開始時等に、ばね部材53の付勢力によりブレーキピストン49から各回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48とに急激に過大な力が加わることを抑制できる。
【0074】
次に、59はブレーキケース32内に供給される潤滑油を示し、該潤滑油59は、ブレーキケース32内に収容された各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48とを潤滑することにより、モータ軸25に対する制動時に回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48との摩擦係合によって発生する熱を冷却するものである。
【0075】
ここで、本実施の形態では、図6に示すように、潤滑油59として、下部走行体2に搭載された走行用の油圧モータ(図示せず)や、作業装置4に設けられた油圧シリンダ等の油圧アクチュエータ67に供給される作動油を利用している。そして、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入する潤滑油59を、油圧アクチュエータ67を駆動して加圧状態にある作動油の戻り油とすることにより、この潤滑油59を、ブレーキ圧調整油室58に加圧状態で流入させられるようにしている。また、これと共に、潤滑油59を、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との間を外径側から内径側に向けて加圧状態で流通させられるようにしている。
【0076】
次に、ブレーキ解除用油室57に対する圧油(ブレーキ解除圧)の供給と、ブレーキケース32内への潤滑油59の供給を行う油圧回路について、図6を参照しつつ説明する。
【0077】
図中、60は上部旋回体3に搭載されたパイロットポンプ、61はメインポンプを示し、これらパイロットポンプ60およびメインポンプ61は、エンジン、電動モータ等の原動機62によって回転駆動されることにより、作動油タンク63に貯溜された作動油を吐出するものである。
【0078】
そして、パイロットポンプ60から吐出したパイロット圧油は、パイロット管路64を通じて制御弁装置65の油圧パイロット部に導入され、操作機器(図示せず)に対する操作に応じて制御弁装置65を制御する。
【0079】
一方、メインポンプ61から吐出した圧油は、吐出管路66を通じて制御弁装置65に導入され、操作機器(図示せず)によって制御された制御弁装置65を介して所望の油圧アクチュエータ67に供給される。また、他の油圧アクチュエータ67からの戻り油は、制御弁装置65から戻り管路68を通じて冷却器69(オイルクーラ)に導入され、該冷却器69で冷却された後、作動油タンク63に環流する構成となっている。
【0080】
70はパイロット管路64の途中部位とブレーキケース32のブレーキ解除圧流入口43との間を連通させるブレーキ解除圧管路を示し、71はブレーキ解除圧管路70の途中に設けられたブレーキ制御弁を示している。ここで、ブレーキ制御弁71は、例えば3ポート2位置の電磁弁からなり、電磁パイロット部71Aにコントローラ72から信号が供給されていないときには弁位置(A)を保持し、電磁パイロット部71Aにコントローラ72から信号が供給されたときには弁位置(B)に切換えられるものである。
【0081】
従って、例えば油圧ショベル1の停止時においてコントローラ72から電磁パイロット部71Aに信号が供給されていない状態、または、例えば油圧ショベル1の稼働時に運転者が非常ブレーキスイッチ73を操作(ON)することによりコントローラ72から電磁パイロット部71Aに信号が供給されなくなった状態では、ブレーキ制御弁71が弁位置(A)を保持することにより、湿式ブレーキ装置31のブレーキ解除用油室57内への圧油の供給が停止される。これにより、図6に示すように、ブレーキピストン49がばね部材53の付勢力によって各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48とを摩擦係合させることにより、モータ軸25に対して制動力が付与される。
【0082】
一方、油圧ショベル1の稼働時においてコントローラ72から電磁パイロット部71Aに信号が供給されると、ブレーキ制御弁71が弁位置(B)に切換わることにより、パイロットポンプ60から吐出したパイロット圧油の一部が、ブレーキケース32のブレーキ解除圧流入口43を通じてブレーキ解除用油室57内に供給される。これにより、図3に示すように、ブレーキピストン49がばね部材53に抗して回転側ブレーキ板47等から離間し、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との摩擦係合を解除することにより、モータ軸25に対する制動が解除される。
【0083】
一方、74は戻り管路68とブレーキケース32の潤滑油流入口40との間を連通する潤滑油管路で、該潤滑油管路74の一端側は冷却器69よりも上流側で戻り管路68の途中部位に接続され、他端側はケース本体33の潤滑油流入口40に接続されている。
【0084】
従って、油圧ショベル1の稼働時において、制御弁装置65を通じて油圧アクチュエータ67から作動油タンク63に環流する戻り油の一部は、潤滑油管路74から潤滑油流入口40を通じてブレーキケース32内に潤滑油59として供給される。ここで、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入する潤滑油59は、油圧アクチュエータ67を駆動して加圧状態にある作動油の戻り油であるため、潤滑油59は、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との外径側から内径側に向けて各油溝48F内を加圧状態で流通する。そして、潤滑油59は、各回転側ブレーキ板47、各非回転側ブレーキ板48等を潤滑した後、各回転側ブレーキ板47の貫通孔47D、各非回転側ブレーキ板48の大径孔48Cを通じて蓋体38側に導出され、該蓋体38の潤滑油流出口42を通じて作動油タンク63に環流する。
【0085】
このように、本実施の形態では、ケース本体33の潤滑油流入口40と蓋体38の潤滑油流出口42とを通じて、ブレーキケース32内で潤滑油59が常に循環する構成となっている。これにより、例えば上部旋回体3の旋回動作を湿式ブレーキ装置31によって急停止させるような場合に、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との摩擦係合によって大量の熱が発生したとしても、この熱をブレーキケース32内を循環する潤滑油59によって効率よく冷却することができる。
【0086】
また、潤滑油管路74の途中には、潤滑油管路74に流れる戻り油を制限する可変絞り75が設けられている。この可変絞り75は、コントローラ72からの信号に応じて潤滑油管路74を流通する戻り油(潤滑油59)の流量を調節するもので、例えばモータ軸25の回転速度に応じてその流量を調節できるように構成している。このために、コントローラ72には、モータ軸25の回転速度を検出する回転センサ76の検出信号を入力している。
【0087】
そして、例えば制動解除時に、モータ軸25の回転速度が速い程、戻り油(潤滑油59)の流量を大きくする信号をコントローラ72から可変絞り75に出力すれば、モータ軸25と共に回転(空転)する回転側ブレーキ板47と、当該回転側ブレーキ板47に微小な隙間を介して対面する非回転側ブレーキ板48とを効率よく冷却することができる。
【0088】
本実施の形態による湿式ブレーキ装置31は上述の如き構成を有するもので、油圧ショベル1の停止時においては、図6に示すように、ブレーキ制御弁71が弁位置(A)を保持することにより、湿式ブレーキ装置31のブレーキ解除用油室57内への圧油の供給が停止される。これにより、ブレーキピストン49がばね部材53の付勢力によって各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48とを摩擦係合させる。この結果、モータ軸25に対して制動力が付与され、上部旋回体3は下部走行体2上で静止した状態を保つ。
【0089】
次に、油圧ショベル1の原動機62を作動させると、ブレーキ制御弁71の電磁パイロット部71Aにコントローラ72から信号が供給され、ブレーキ制御弁71が弁位置(B)に切換わる。これにより、パイロットポンプ60から吐出したパイロット圧油の一部が、ブレーキケース32のブレーキ解除圧流入口43を通じてブレーキ解除用油室57内に供給される。これにより、図3に示すように、ブレーキピストン49がばね部材53に抗して回転側ブレーキ板47等から離間し、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との摩擦係合が解除されることにより、モータ軸25に対する制動が解除される。
【0090】
この状態で、電動モータ21のモータ軸25が回転すると、このモータ軸25の回転が、減速装置12の各遊星歯車減速機構18,19,20によって3段減速されて出力軸27に伝わり、ピニオン27Bは大きな回転力(トルク)をもって回転する。そして、ピニオン27Bが、旋回輪5の内輪5Aに設けた内歯5Dに噛合しつつ内輪5Aに沿って公転し、このピニオン27Bの公転力がハウジング13を介して旋回フレーム3Aに伝わることにより、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回動作を行う。
【0091】
このとき、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータ67から作動油タンク63に環流する戻り油の一部は、潤滑油管路74から潤滑油流入口40を通じてブレーキケース32内に潤滑油59として供給される。そして、この潤滑油59は、各回転側ブレーキ板47、各非回転側ブレーキ板48等を潤滑、冷却、洗浄した後、各回転側ブレーキ板47の貫通孔47D、各非回転側ブレーキ板48の大径孔48Cを通じて蓋体38側に導出され、蓋体38の潤滑油流出口42を通じて作動油タンク63に環流する。
【0092】
また、このような制動解除時には、電動モータ21のモータ軸25と共に湿式ブレーキ装置31の各回転側ブレーキ板47が回転(空転)するが、これら各回転側ブレーキ板47には摩擦材を設けていないため、各回転側ブレーキ板47を軽量にでき、引き摺り抵抗を低減することができる。また、制動解除時にも回転しない非回転側ブレーキ板48の摩擦材48Bに油溝48Fを設けているため、当該油溝48Fを流通する潤滑油59に遠心力が直接的に加わらず、回転側ブレーキ板47および非回転側ブレーキ板48の外径側から内径側に向けて潤滑油59を効率よく流通させることができる。
【0093】
さらに、回転側ブレーキ板47および非回転側ブレーキ板48の内径側に流通した潤滑油59は、回転側ブレーキ板47の貫通孔47Dと非回転側ブレーキ板48の大径孔48Cとを通じて上,下方向に流通する。これにより、回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48との内径側からブレーキケース32の潤滑油流出口42に向けて潤滑油59を効率よく流通させることができる。
【0094】
次に、例えば運転者により非常ブレーキスイッチ73が操作(ON)された場合等、上部旋回体3の旋回動作を緊急停止する場合には、ブレーキ制御弁71の電磁パイロット部71Aにコントローラ72からの信号の供給が遮断され、ブレーキ制御弁71は弁位置(B)から弁位置(A)に切換る。これにより、湿式ブレーキ装置31のブレーキ解除用油室57に対する圧油の供給が停止され、ブレーキピストン49が、ばね部材53の付勢力によって各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48とを摩擦係合させることにより、モータ軸25に対して制動力が付与されるので、上部旋回体3の旋回動作を停止させることができる。
【0095】
このとき、各種の油圧アクチュエータ67からの戻り油が、ブレーキケース32内に潤滑油59として供給され、この潤滑油59は、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との間を外径側から内径側に向けて加圧状態で流通する。
【0096】
この場合に、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入した潤滑油59は、摩擦係合面48Eに設けた各油溝48Fのみを通じて各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との間を外径側から内径側へと流通するので、当該摩擦係合面48E以外の部位に潤滑油59が流れることを抑制することができる。このため、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入した潤滑油59により、各非回転側ブレーキ板48の摩擦係合面48Eと各回転側ブレーキ板47の当接部47Bとを積極的に冷却することができ、これら摩擦係合面48Eと当接部47Bとの冷却を効率よく行うことができる。
【0097】
そして、各油溝48Fを通じて各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との内径側に流通した潤滑油59は、各回転側ブレーキ板47の貫通孔47D、各非回転側ブレーキ板48の大径孔48Cを通じて蓋体38側に導出され、蓋体38の潤滑油流出口42を通じて作動油タンク66に環流する。これにより、上部旋回体3の旋回動作を湿式ブレーキ装置31によって急停止させるような場合に、回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48との摩擦係合によって熱が発生したとしても、この熱をブレーキケース32内を循環する潤滑油59によって効率よく冷却することができる。
【0098】
以上のように、本実施の形態によれば、ブレーキピストン49によりモータ軸25に制動力を付与したときに、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入する潤滑油59は、非回転側ブレーキ板48の摩擦材48Bの摩擦係合面48Eに設けられた油溝48Fのみを通じて、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との間を外径側から内径側へと流通する構成としたので、当該摩擦係合面48Eの冷却を効率よく行うことができる。
【0099】
すなわち、制動力を付与したときに、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入した潤滑油59は、摩擦係合面48Eに設けられた油溝48Fのみを流通するため、当該摩擦係合面48E以外の部位に潤滑油59が流れることを抑制することができる。このため、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入した大量の潤滑油59は、各非回転側ブレーキ板48の摩擦係合面48Eと各回転側ブレーキ板47の当接部47Bとを積極的に冷却するので、これら摩擦係合面48Eと当接部47Bとの冷却を効率よく行うことができる。この結果、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48の耐久性、信頼性を確保できると共に、制動性能(ブレーキ性能)の向上、信頼性の向上を図ることができる。
【0100】
また、本実施の形態によれば、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入する潤滑油59は、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との外径側から内径側に向けて加圧状態で流通する構成としたので、各回転側ブレーキ板47の回転に伴い潤滑油59に遠心力が加わっても、この遠心力に抗して潤滑油59を各回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48との間を外径側から内径側へと強制的に流通させることができる。このため、この面からも、摩擦係合面48Eと当接部47Bとの冷却を効率よく行うことができ、耐久性、信頼性の確保と、制動性能(ブレーキ性能)、信頼性の向上を図ることができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、非回転側ブレーキ板48に摩擦材48Bを設けると共に該摩擦材48Bに油溝48Fを設ける構成としたので、当該油溝48Fを流通する潤滑油59に対して遠心力が直接的に加わらず、各回転側ブレーキ板47および各非回転側ブレーキ板48の外径側から内径側に向けて潤滑油59を効率よく流通させることができる。このため、モータ軸25の回転速度にかかわらず、潤滑油59による摩擦係合面48Eと当接部47Bとの冷却効果を高めることができ、この面からも、回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48の耐久性、信頼性を向上することができる。
【0102】
また、本実施の形態によれば、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48とのうち各非回転側ブレーキ板48にのみ摩擦材48Bを設けている(各回転側ブレーキ板47に摩擦材は設けていない)ので、各回転側ブレーキ板47を軽量にできる。このため、ブレーキケース32内にモータ軸25を上,下方向に延びる状態で配置した場合でも、ブレーキ解除時にモータ軸25と共に回転する各回転側ブレーキ板47の自重による引き摺り抵抗を低減することができる。
【0103】
また、本実施の形態によれば、非回転側ブレーキ板48の内径側部位に大径孔48Cを設けると共に回転側ブレーキ板47の摩擦材非接触面47Cに貫通孔47Dを設ける構成としているので、大径孔48Cと貫通孔47Dとを通じて潤滑油59を、回転側ブレーキ板47と非回転側ブレーキ板48との内径側から潤滑油流出口42に向けて効率よく流通させることができる。
【0104】
さらに、本実施の形態によれば、ブレーキケース32内をモータ軸25が上,下方向に延びる構成としたので、潤滑油流入口40からブレーキケース32内に流入した潤滑油59は、各非回転側ブレーキ板48の摩擦係合面48Eと各回転側ブレーキ板47の当接部47Bとの間を水平方向に流通し、これら摩擦係合面48Eと当接部47Bとを全周にわたって効率よく冷却することができる。
【0105】
なお、上述した実施の形態では、ブレーキケース32のケース本体33に1個の潤滑油流入口40を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図11に示す第1の変形例のように、ケース本体33に2個の潤滑油流入口40′を周方向に180°離間して設ける構成としてもよい。この場合には、それぞれの潤滑油流入口40′に対応して油溝41′を設けることが好ましい。
【0106】
また、上述した実施の形態では、非回転側ブレーキ板48に摩擦材48Bを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図12に示す第2の変形例のように、非回転側ブレーキ板81には摩擦材を設けずに、回転側ブレーキ板82に摩擦材82Aを設け、この摩擦材82Aの摩擦係合面82Bに油溝82Cを形成してもよい。また、図示は省略するが、非回転側ブレーキ板と回転側ブレーキ板との両方に摩擦材を設けることもできる。すなわち、摩擦材は、非回転側ブレーキ板と回転側ブレーキ板とのうちの少なくとも一方のブレーキ板に設ける構成とすることができる。
【0107】
また、上述した実施の形態では、摩擦材48Bに油溝48Fを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば回転側ブレーキ板の摩擦材に油溝を設けずに、摩擦材を設けていない回転側ブレーキ板の当接部に油溝を設けてもよい。また、非回転側ブレーキ板の摩擦材と回転側ブレーキ板の当接部との両方に油溝を設けることもできる。すなわち、油溝は、摩擦材の有無に関係なく、非回転側ブレーキ板と回転側ブレーキ板とのうちの少なくとも一方のブレーキ板に設ける構成とすることができる。
【0108】
また、上述した実施の形態では、非回転側ブレーキ板48の摩擦材48Bに周方向に円弧状に傾斜した「サンバースト溝」と呼ばれる油溝48Fを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば半径方向に直線状に設けた油溝を用いる構成としてもよい。すなわち、回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との外径側と内径側とを連通する油溝であれば、何れの形状の油溝を用いてもよい。
【0109】
また、上述した実施の形態では、ブレーキケース32内に流入する潤滑油59を、油圧アクチュエータ67を駆動して加圧状態にある作動油の戻り油の一部を利用することにより、潤滑油59が、各回転側ブレーキ板47と各非回転側ブレーキ板48との外径側から内径側に向けて加圧状態で流通するように構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば潤滑油を、制御弁装置の油圧パイロット部に導入されるパイロット圧油の一部を利用することにより、潤滑油が、各回転側ブレーキ板と各非回転側ブレーキ板との外径側から内径側に向けて加圧状態で流通するように構成してもよい。すなわち、潤滑油流入口からブレーキケース内に流入する潤滑油は、作動油の戻り油、パイロット圧油等、ブレーキケース内に加圧状態で供給できるものであればよい。
【0110】
また、上述した実施の形態では、各回転側ブレーキ板47をアダプタ44を介してモータ軸25に取付ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばアダプタを省略し、各回転側ブレーキ板を直接モータ軸に取付ける(スプライン係合させる)構成としてもよい。
【0111】
また、上述した実施の形態では、湿式ブレーキ装置31を、ブレーキ解除用油室57内に圧油が供給されていないときに制動力が付与されるネガティブ型のブレーキ装置として構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油室(ブレーキ付与用油室)内に圧油が供給されているときに制動力が付与されるポジティブ型のブレーキ装置として構成してもよい。
【0112】
さらに、上述した実施の形態では、油圧ショベル1の旋回装置11に適用される湿式ブレーキ装置31を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン等の他の旋回式の建設機械の旋回装置に用いられる湿式ブレーキ装置等、各種機械装置に搭載される湿式ブレーキ装置として広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0113】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
5 旋回輪
11 旋回装置
12 減速装置
21 電動モータ
25 モータ軸
27 出力軸
31 湿式ブレーキ装置
32 ブレーキケース
40,40′ 潤滑油流入口
42 潤滑油流出口
47,82 回転側ブレーキ板
47A 雌スプライン部
47B 当接部(径方向外側部位)
47C 摩擦材非接触面
47D 貫通孔
48,81 非回転側ブレーキ板
48A 基板
48B,82A 摩擦材
48C 大径孔
48E,82B 摩擦係合面
48F,82C 油溝
49 ブレーキピストン
53 ばね部材
57 ブレーキ解除用油室
59 潤滑油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転可能に嵌入するブレーキケースと、該ブレーキケース内で前記回転軸よりも半径方向の外側に配置された複数の回転側ブレーキ板と、該各回転側ブレーキ板と交互に重なり合う状態で前記ブレーキケース内に配置された複数の非回転側ブレーキ板と、前記回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板とを押圧して摩擦係合させることにより前記回転軸に制動力を付与するブレーキピストンと、前記ブレーキケースに設けられその内部に潤滑油が流入する潤滑油流入口および前記ブレーキケースから前記潤滑油が流出する潤滑油流出口とを備えてなる湿式ブレーキ装置において、
前記潤滑油流入口は、前記回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との外径側部位に向けて前記潤滑油を流入させるものであり、
前記潤滑油流出口は、前記回転側ブレーキ板と非回転側ブレーキ板との内径側部位から排出された前記潤滑油を前記ブレーキケースの外部へ流出させるものであり、
前記回転側ブレーキ板と前記非回転側ブレーキ板とのうちの少なくとも一方のブレーキ板の摩擦係合面には、前記回転側ブレーキ板と前記非回転側ブレーキ板との外径側から内径側に向けて前記潤滑油を流通させる油溝を設け、
前記ブレーキピストンにより前記回転軸に制動力を付与したときに、前記潤滑油流入口から前記ブレーキケース内に流入する前記潤滑油は、前記油溝のみを通じて前記回転側ブレーキ板と前記非回転側ブレーキ板との外径側から内径側に向けて流通する構成としたことを特徴とする湿式ブレーキ装置。
【請求項2】
前記潤滑油流入口から前記ブレーキケース内に流入する前記潤滑油は、油圧アクチュエータを駆動して加圧状態にある作動油の戻り油であり、
前記潤滑油は、前記回転側ブレーキ板と前記非回転側ブレーキ板との外径側から内径側に向けて加圧状態で流通する構成としてなる請求項1に記載の湿式ブレーキ装置。
【請求項3】
前記非回転側ブレーキ板には前記回転側ブレーキ板と摩擦係合する摩擦材を設け、該摩擦材には前記油溝を設ける構成としてなる請求項1または2に記載の湿式ブレーキ装置。
【請求項4】
前記非回転側ブレーキ板は、内径側部位に前記回転軸の軸径よりも大径な大径孔を設けると共に、該大径孔の位置よりも径方向外側部位に前記摩擦材を設ける構成とし、
前記回転側ブレーキ板は、内径側部位に前記回転軸と係合する係合孔を設けると共に、前記摩擦材が当接する径方向外側部位と前記係合孔との間の摩擦材非接触面に前記潤滑油が流通する貫通孔を設ける構成としてなる請求項3に記載の湿式ブレーキ装置。
【請求項5】
前記回転軸は、前記ブレーキケース内を上,下方向に延びる構成とし、
前記非回転側ブレーキ板は、前記回転側ブレーキ板と上,下方向に対面して配置する構成としてなる請求項1,2,3または4に記載の湿式ブレーキ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−77861(P2012−77861A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224791(P2010−224791)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】