説明

炭化珪素半導体装置の製造方法

【課題】製造工程の途中でエピ膜厚を測定できる手段を提供する。
【解決手段】半導体基板1の表面にn型エピ層2を成膜すると、第1、第2の溝4a、4bの外側ではn型エピ層2が成膜されるが、これらの間となる突出部5の上にはn型エピ層2が成膜されない。このため、これらの高さの差、つまり段差を測定することにより、n型エピ層2を測定することができる。すなわち、これら各部において、測定装置から測定対象の最表面までの距離を求め、その差を測定することにより、半導体基板1の表面に成長したn型エピ層2の膜厚を測定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCという)からなる基板などに対してトレンチを形成し、そのトレンチ内にエピタキシャル(以下、エピという)膜を製造する炭化珪素半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高い電界破壊強度が得られるパワーデバイスの素材としてSiCが注目されている。SiC半導体装置では電界破壊強度が強いため、大電流の制御を行うことができる。そのため、ハイブリットカー用のモーターの制御への活用が期待されている。
【0003】
半導体装置において、より大電流を流すには、チャネル密度を高くすることが有効である。このため、シリコントランジスタにおいて、トレンチゲート構造のMOSFETが採用され実用化されており、SiC半導体装置にも適用されている。例えば、SiC半導体装置の場合、{11−20}面や{1−100}面に平行な方向をチャネル形成面としたトレンチゲート構造のMOSFETを製造することができる。
【0004】
このようなトレンチゲート構造のMOSFETを有するSiC半導体装置において、トレンチゲート構造のMOSFETの閾値、オン抵抗を制御する方法が特許文献1に提案されている。具体的には、SiC基板に対してトレンチを形成したのち、トレンチの側面、つまりチャネル形成面にSiCからなるn型エピ膜を形成することで、蓄積型チャネルを構成し、n型エピ膜の膜厚や濃度を任意の値に設定することにより、閾値やオン抵抗を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−199724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トレンチ内へn型エピ膜を形成する場合、従来のエピ成長技術では、チャネル形成面であるトレンチ側壁にのみn型エピ層を形成することは難しく、トレンチ形状に沿って基板表面上、トレンチ側壁、トレンチ底部にエピ膜が成長してしまう。そして、トレンチゲート構造のMOSFETでは、基板表面上に成長したエピ膜については、その下に配置されたn+型ソース領域やp型ベース領域と接続されるp+型コンタクト部をソース電極との電気的接続のために、除去しなければならない。仮に、エピ膜が完全に除去できずに残ってしまうとコンタクト抵抗が増大してしまい好ましくない。
【0007】
一方、トレンチ側壁に形成されたエピ膜については、トレンチゲート構造のMOSFETの閾値制御、移動度制御が適切に行われるように、設計通りの膜厚で形成する必要がある。
【0008】
このように、基板表面上のエピ膜の除去を適切に行えるようにすること、および、トレンチ側壁に形成されるエピ膜の膜厚を設計通りにすることが重要である。
【0009】
しかしながら、エピ膜の成長レートはバッチごとに微妙な誤差を生じたり、基板面内でのバラツキが存在するため、工程の途中でエピ膜厚の出来栄えを観察できるようにしなければ、適切な膜厚管理ができない。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、トレンチ内にエピ膜を形成するSiC半導体装置の製造方法において、製造工程の途中でエピ膜厚を測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体基板(1)の表面に対して、複数の溝(4)を形成することにより、該複数の溝(4)の間に、一方向を長手方向とし、かつ、エピ成長時の原子の表面マイグレーション量よりも小さな幅(Wt)を有する突出部(5)を含む膜厚測定用構造(3)を形成する工程と、半導体基板(1)の表面上およびトレンチ(10)の底面や側面上に加えて、複数の溝(4)の底面や側面上にもエピ層(2)をエピ成長させる工程と、を含み、エピ成長させる工程では、半導体基板(1)の表面のうち膜厚測定用構造(3)とは異なる場所の上と膜厚測定用構造(3)に含まれる突出部(5)の上の段差を半導体基板(1)の表面上に形成されたエピ層(2)の膜厚として測定する工程を含んでいることを特徴としている。
【0012】
このように、突出部(5)の幅(wt)をエピ成長時の原子の表面マイグレーション量よりも小さくすれば、突出部(5)の上にはエピ層(2)が成長しないようにできる。このため、半導体基板(1)の表面のうち膜厚測定用構造(3)とは異なる場所の上と膜厚測定用構造(3)に含まれる突出部(5)の上の段差を半導体基板(1)の表面上に形成されたエピ層(2)の膜厚として測定することができる。これにより、製造工程の途中で半導体基板(1)の表面上のエピ層(2)の膜厚を測定することができる。例えば、請求項7に記載したように、突出部(5)の幅(Wt)については、1μm以下に設定すれば良い。
【0013】
請求項2に記載の発明では、エピ成長させる工程では、エピ層(2)を成長させているときの複数の溝(4)の間の幅から突出部(5)の幅(Wt)を差し引いた半分の値をトレンチ(10)の側面に形成されたエピ層(2)の膜厚として測定する工程を含んでいることを特徴としている。
【0014】
このように、エピ層(2)を成長させているときの複数の溝(4)の間の幅から突出部(5)の幅(Wt)を差し引いた半分の値をトレンチ(10)の側面に形成されたエピ層(2)の膜厚とすることができる。これにより、トレンチ(10)の側面に形成されたエピ層(2)の膜厚についても測定できる。
【0015】
なお、複数の溝(4)の幅については任意であるが、請求項3に記載したように、エピ層(2)の膜厚測定に触針式段差計またはレーザ顕微鏡を用いる場合、複数の溝(4)の溝幅を触針式段差計のプローブ径またはレーザ顕微鏡のスポット径よりも大きくすれば良い。
【0016】
請求項4に記載の発明では、膜厚測定用構造(3)を形成する工程では、複数の溝(4)として、互いに対向する辺を有する第1の溝(4a)と第2の溝(4b)とを形成し、これら第1の溝(4a)と第2の溝(4b)の間に突出部(5)を複数本並べて形成することを特徴としている。
【0017】
このように、突出部(5)を複数本とすれば、幅狭な突出部(5)の強度を確保することが可能になるという効果が得られる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、膜厚測定用構造(3)を形成する工程では、突出部(5)の長手方向が互いに垂直とされた第1、第2膜厚測定用構造(3a、3b)を形成することを特徴としている。
【0019】
このような構造とした場合、SiCのようにエピ成長の成長レートに面方位依存性があったとしても、トレンチ(10)の側面でのエピ成長の量を異なる2面それぞれにおいて測定することができる。このため、面方位依存性に対応して、側面上に形成されるエピ層(2)の膜厚をそれぞれ測定することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明では、膜厚測定用構造(3)を形成する工程では、突出部(5)を互いに垂直に交差する二辺にて構成された十字状に形成することを特徴としている。
【0021】
このような構造にすれば、トレンチ(10)の側面でのエピ成長の成長レートが面方位依存性によって異なっていたとしても、異なる2面それぞれにおいて、側面上に形成されるn型エピ層2の膜厚を測定することができる。また、1箇所に膜厚測定用構造(3)を形成すれば済むため、省スペース化が行えるし、1つの膜厚測定用構造(3)のみによって膜厚測定が行えるため、膜厚測定の簡略化を図ることが可能となる。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるSiC半導体装置の製造方法においてエピ層の膜厚測定に用いる膜厚測定用構造の斜視図である。
【図2】(a)は、膜厚測定用構造の上面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図3】(a)は、膜厚測定用構造にn型エピ層を成膜したときの上面図、(b)は、(a)のB−B断面図である。
【図4】(a)は、エピ成長における成長条件と表面マイグレーション量との関係を示したグラフであり、(b)、(c)は表面マイグレーション量を変えたときのエピ成長の変化を示した断面図である。
【図5】(a)、(b)は、n型エピ層を成膜する前の膜厚測定用構造の様子を示した上面図および断面図、(c)は、(b)の断面においてn型エピ層を成膜した後の図である。
【図6】(a)は、本発明の第2実施形態にかかる膜厚測定用構造の上面図、(b)は、(a)のC−C断面図、(c)は、(b)の断面においてn型エピ層を成膜した後の図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる膜厚測定用構造が形成されたウェハ状態の半導体基板のイメージ図である。
【図8】(a)は、本発明の第4実施形態にかかる膜厚測定用構造が形成されたウェハ状態の半導体基板のイメージ図、(b)は、(a)のD−D断面図(E−E断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態は、n型チャネルタイプのトレンチゲート構造の蓄積型MOSFETを有するSiC半導体装置として、SiC基板に対してトレンチを形成し、トレンチ内に蓄積型チャネルを形成する場合に、本発明の一実施形態である製造方法を適用する場合について説明する。ただし、蓄積型MOSFETの構造に関しては特許文献1などに示される従来構造と同じであるため、この蓄積型チャネルを構成するn型エピ層の形成工程について、そのn型エピ層の膜厚を測定する手法と共に説明する。
【0026】
図1および図2は、SiCからなる半導体基板1に対してn型エピ層2(図3参照)を成膜する前に、n型エピ層2の膜厚を測定するために形成しておく膜厚測定用構造3を示したものであり、図1は膜厚測定用構造3の斜視図、図2(a)は膜厚測定用構造3の上面図、図2(b)は図2(a)のA−A断面図である。
【0027】
図1および図2に示した膜厚測定用構造3は、蓄積型MOSFETを形成するウェハにおけるチップ形成領域以外の領域、例えばウェハの外縁部やスクライブ領域に形成されている。この膜厚測定用構造3を半導体基板1に形成した後でn型エピ層2を成膜するようにし、n型エピ層2のうち膜厚測定用構造3に成膜される部分の膜厚を測定することにより、チップ内に成膜されたn型エピ層2の膜厚を測定する。
【0028】
図1に示すように、膜厚測定用構造3は、互いに対向する一辺を有する複数の溝4によって構成されている。この複数の溝4は、半導体基板1に対して異方性エッチングを行うことにより形成されるが、蓄積型MOSFETにおけるトレンチゲート形成用のトレンチと同時に形成されることで、製造工程の増加無しで形成可能である。本実施形態では、複数の溝4は、図2(a)に示すように上面形状が四角形(本実施形態では正方形)となる第1、第2溝4a、4bにて構成され、第1溝4aの一辺と第2溝4bの一辺とが等間隔とされることで、平行に向かい合うような配置とされている。
【0029】
第1溝4aと第2溝4bの間隔(以下、溝間幅という)、つまり第1溝4aと第2溝4bの間に形成される突出部5の幅は、n型エピ層2のエピ成長条件によって決まる表面マイグレーション量よりも小さく設定されている。具体的には、エピ成長条件は、温度、圧力、C/Si比などによって設定され、これらによって表面マイグレーション量が決まり、例えば、突出部5の幅を1.0μm以下に設定すると、表面マイグレーション量よりも小さくすることができる。
【0030】
第1溝4aと第2溝4bの間に形成される突出部5の幅以外については、第1、第2溝4a、4bの幅に特に制約は無いが、膜厚測定を行うための測定装置の仕様に応じて設定されることになる。すなわち、測定装置として触針式段差計を用いる場合、そのプローブ径(例えばφ50μm)よりも第1溝4aと第2溝4bの各辺の寸法を大きくすることが必要である。また、測定装置としてレーザー顕微鏡を用いる場合、そのレーザースポット径(例えば、波長408nmの紫色光レーザースポット径はφ1.0μm〜3.0μm)よりも第1溝4aと第2溝4bの各辺の寸法を大きくすることが必要である。
【0031】
また、第1溝4aと第2溝4bの深さについては、これら第1溝4aと第2溝4bの側面えのエピ成長が行われるように突出部5の幅よりも大きくしてある。
【0032】
このように構成した膜厚測定用構造3を用いてn型エピ層2の膜厚測定を行う。図3は、チップ形成領域における蓄積型MOSFETのトレンチゲート形成用のトレンチ内と共に、チップ形成領域以外の領域に配置された膜厚測定用構造3を構成する複数の溝4内にもn型エピ層2を成膜したときの様子を示しており、図3(a)は膜厚測定用構造3にn型エピ層2を成膜したときの上面図、図3(b)は図3(a)のB−B断面図である。
【0033】
図3に示したように、n型エピ層2をエピ成長させた場合、第1、第2の溝4a、4bの底面上および側面上にエピ成長すると共に、第1、第2の溝4a、4bよりも外側において半導体基板1の表面上にもエピ成長する。しかしながら、第1の溝4aと第2の溝4bの間、つまり突出部5の上においては、ほとんどエピ成長しない。このメカニズムについて、図4を参照して説明する。
【0034】
図4(a)は、エピ成長における成長条件と表面マイグレーション量との関係を示したグラフであり、図4(b)、(c)は表面マイグレーション量を変えたときのエピ成長の変化を示した断面図である。
【0035】
図4(a)に示すように、エピ成長における成長条件として、温度、圧力、C/Si比を変えると、それに応じて表面マイグレーション量が変化する。すなわち、温度の上昇もしくは圧力の上昇に伴って表面マイグレーション量は増加し、C/Si比の増加に伴って表面マイグレーション量が減少する。そして、エピ成長での標準的な成長条件の範囲の中から温度、圧力およびC/Si比を選択し、それと対応する表面マイグレーション量をX(図中では参考的な値としてXを示してある)として、その表面マイグレーション量Xよりも突出部5の幅Wtを狭めた場合と広げた場合それぞれについて実験した。その成長結果を図示したのが、それぞれ、図4(b)、(c)である。
【0036】
これら図4(b)、(c)を確認すると分かるように、表面マイグレーション量Xよりも突出部5の幅Wtが広いと、各溝4の間においても半導体基板1の表面上(突出部5の上)にn型エピ層2が成長するが、表面マイグレーション量Xよりも突出部5の幅Wtが狭いと、各溝4の間において半導体基板1の表面上にn型エピ層2が成長していない。これは、原子の表面マイグレーション量Xよりも突出部5の幅Wtが狭いと、原子のマイグレーションにより、各溝4の間に原子が留まらずエピ成長が生じなくなるが、表面マイグレーション量Xよりも突出部5の幅Wtが広いと、原子のマイグレーションが止まり、各溝4の間に原子が留まってエピ成長が生じていると考えられる。
【0037】
したがって、この現象を利用して、半導体基板1の表面に形成されたn型エピ層2の膜厚測定を行う。さらに、溝間幅および突出部5の幅Wtに基づいて、これら各溝4内の側面に形成されたn型エピ層2の膜厚測定も行う。図5を参照して、それらの測定手法について説明する。
【0038】
図5(a)、(b)は、n型エピ層2を成膜する前の膜厚測定用構造3の様子を示した上面図および断面図であり、図2(a)、(b)に対応した図である。また、図5(c)は、n型エピ層2を成膜した後の断面図であり、図3(b)に対応した図である。
【0039】
図5(a)、(b)の状態では、半導体基板1の表面にも第1、第2の溝4a、4bの側面にもn型エピ層2が成膜されていないため、第1、第2の溝4a、4bの外側でもこれらの間(突出部5の上)においても、測定対象(この状態では半導体基板1)の最表面の高さ、すなわち測定装置からの距離は変わらず、段差が無い状態であり、また、溝間幅も突出部5の幅Wtとなっている。
【0040】
これに対して、n型エピ層2を成膜して図5(c)の状態になると、第1、第2の溝4a、4bの外側ではn型エピ層2が成膜されるが、これらの間となる突出部5の上にはn型エピ層2が成膜されない。このため、これらの高さの差、つまり段差を測定することにより、n型エピ層2を測定することができる。すなわち、これら各部において、測定装置から測定対象の最表面までの距離を求め、その差を測定することにより、半導体基板1の表面に成長したn型エピ層2の膜厚を測定することが可能となる。
【0041】
同様に、第1、第2の溝4a、4bの間において、突出部5の側面を含む各側面にn型エピ層2が形成される。このとき、突出部5の側面にn型エピ層2が成長することから、溝間幅が最初に設定した突出部5の幅Wtに対してn型エピ層2の膜厚2層分だけ広がる。このため、n型エピ層2の成長後の溝間幅からn型エピ層2の成長前に予め設定しておいた突出部5の幅Wtを差し引いた半分の値が溝側面に成長したn型エピ層2の膜厚となる。この膜厚は、トレンチゲート形成用のトレンチの側面に成長したn型エピ層2の膜厚と等しい。
【0042】
このようにすれば、半導体基板1の表面に成長したn型エピ層2の膜厚も、トレンチの側面に成長したn型エピ層2の膜厚も、両方共に、製造工程の途中で測定することが可能となる。
【0043】
そして、蓄積型MOSFETに関しては、トレンチゲート形成用のトレンチの側面に形成されたn型エピ層2の膜厚が所望値になった時点でn型エピ層2の成膜をやめると共に、そのときの半導体基板1の表面に形成されたn型エピ層2の膜厚を測定しておく。その後、基板表面上に形成されたn型エピ層2を除去して図示しないn+型ソース領域やp型ベース領域と接続されるp+型コンタクト部を露出させる際に、測定しておいた膜厚分、基板表面上のn型エピ層2を除去するようにすれば、n型エピ層2を残すことなく的確に除去できる。このため、この後形成される図示しないソース電極との電気的接続を行う場合に、コンタクト抵抗が増大するなどの問題が生じないようにできる。したがって、特性の良好な蓄積型MOSFETを製造することが可能となる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、半導体基板1の表面に成長したn型エピ層2の膜厚も、トレンチの側面に成長したn型エピ層2の膜厚も、両方共に、製造工程の途中で測定することが可能となる。このため、非破壊かつSiC半導体装置の製造工程の途中で基板表面上のn型エピ層2の膜厚測定およびトレンチの側面でのn型エピ層2の膜厚測定を行うことが可能となる。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して膜厚測定用構造3の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
図6(a)は本実施形態にかかる膜厚測定用構造3の上面図、図6(b)は図6(a)のC−C断面図、図6(c)は図6(b)の断面においてn型エピ層2を成膜した後の図である。
【0047】
図6(a)、(b)に示すように、本実施形態では、第1の溝4aと第2の溝4bとの間の突出部5を複数(本実施形態では2本)にし、各突出部5を平行に並べて配置している。各突出部5の幅Wtについては、第1実施形態と同様であり、例えば1.0μm以下に設定されている。また、各突出部5の間隔は、各突出部5の間が後で成長させるn型エピ層2によって埋め尽くされてしまわないように、n型エピ層2の予定膜厚の2倍以上に設定してある。なお、各突出部5の間は第1、第2の溝4a、4bと比較して狭いため、これらの間に成長するn型エピ層2の膜厚は第1、第2の溝4a、4bの側面に形成されるn型エピ層2の膜厚よりも小さく、それを見込んで各突出部5の間隔を設定すれば良い。
【0048】
このような構造の場合でも、n型エピ層2を成膜したときに、各突出部5の上にはn型エピ層2が成長しないため、半導体基板1の表面に形成されたn型エピ層2の表面と突出部5との段差を測定することで、基板表面上のn型エピ層2の膜厚を測定することができる。また、溝間幅については、突出部5を複数にしても予め決められるため、n型エピ層2を成長させた後の溝間幅から、n型エピ層2を成長させる前の溝間幅を差し引いた半分の値が溝側面に成長したn型エピ層2の膜厚となる。
【0049】
このように、突出部5を複数にしても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、突出部5を並列に複数並べることにより、幅狭な突出部5の強度を確保することが可能になるという効果も得られる。
【0050】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して膜厚測定用構造3の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
本実施形態では、エピ成長における成長レートの面方位依存性を考慮して、膜厚測定用構造3を2つ形成したものである。図7は、本実施形態にかかる膜厚測定用構造3が形成されたウェハ状態の半導体基板1のイメージ図である。なお、本図では、膜厚測定用構造3を拡大して記載してある。
【0052】
この図に示されるように、半導体基板1の表面において蓄積型MOSFETのトレンチゲート形成用のトレンチ10が一方向を長手方向として延設されている場合、その延設方向と突出部5の長手方向とが平行になるように配置した第1膜厚測定用構造3aと、その延設方向と突出部5の長手方向とが垂直になるように配置した第2膜厚測定用構造3bとを形成している。第1、第2膜厚測定用構造3a、3bそれぞれに含まれる第1、第2の溝4a、4bや突出部5の寸法関係については、第1実施形態と同様である。
【0053】
このような構造とした場合、SiCのようにエピ成長の成長レートに面方位依存性があったとしても、トレンチ10の側面でのエピ成長の量を異なる2面それぞれにおいて測定することができる。このため、面方位依存性に対応して、側面上に形成されるn型エピ層2の膜厚をそれぞれ測定することができる。
【0054】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第3実施形態と同様の効果を1つの膜厚測定用構造3にて得られるようにしたものである。
【0055】
図8(a)は、本実施形態にかかる膜厚測定用構造3が形成された半導体基板1のイメージ図である。なお、本図では、膜厚測定用構造3を拡大して記載してある。また、図8(b)は、図8(a)の断面図である。ただし、図8(a)のD−D断面もE−E断面も同じであるため、1つの図のみ示してある。
【0056】
図8(a)、(b)に示すように、複数の溝4を4つ備え、各溝4を四角形(本実施形態では正方形)にて構成すると共に、各溝4の1つの角部を突き合わせることにより、突出部5が十字状となるようにしている。つまり、突出部5は、トレンチ10の長手方向と同方向に延設された一辺と、それに対して垂直な方向に延設された他の一辺が交差することで十字状とされている。各辺の幅は、第1実施形態と同様の条件とされ、例えば1μm以下に設定されている。
【0057】
このような構造にすれば、トレンチ10の側面でのエピ成長の成長レートが面方位依存性によって異なっていたとしても、異なる2面それぞれにおいて、側面上に形成されるn型エピ層2の膜厚を測定することができる。また、1箇所に膜厚測定用構造3を形成すれば済むため、省スペース化が行えるし、1つの膜厚測定用構造3のみによって膜厚測定が行えるため、膜厚測定の簡略化を図ることが可能となる。
【0058】
(他の実施形態)
上記実施形態では、突出部5を形成するための複数の溝4を四角形としたが、突出部5が表面マイグレーション量よりも小さな幅で形成されてさえいれば、必ずしも四角形とする必要は無い。
【符号の説明】
【0059】
1 半導体基板
2 n型エピ層
3 膜厚測定用構造
4 複数の溝
4a 第1の溝
4b 第2の溝
5 突出部
10 トレンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる半導体基板(1)の表面上および前記半導体基板(1)に形成されたトレンチ(10)の底面や側面上に炭化珪素からなるエピタキシャル層(2)を形成したのち、前記エピタキシャル層(2)のうち前記半導体基板(1)の表面上に形成された部分を除去することで前記半導体基板(1)の表面を露出させ、前記トレンチ(10)内に前記エピタキシャル層(2)を残すようにした炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板(1)の表面に対して、複数の溝(4)を形成することにより、該複数の溝(4)の間に、一方向を長手方向とし、かつ、エピタキシャル成長時の原子の表面マイグレーション量よりも小さな幅(Wt)を有する突出部(5)を含む膜厚測定用構造(3)を形成する工程と、
前記半導体基板(1)の表面上および前記トレンチ(10)の底面や側面上に加えて、前記複数の溝(4)の底面や側面上にも前記エピタキシャル層(2)をエピタキシャル成長させる工程と、を含み、
前記エピタキシャル成長させる工程では、前記半導体基板(1)の表面のうち前記膜厚測定用構造(3)とは異なる場所の上と前記膜厚測定用構造(3)に含まれる前記突出部(5)の上の段差を前記半導体基板(1)の表面上に形成された前記エピタキシャル層(2)の膜厚として測定する工程を含んでいることを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記エピタキシャル成長させる工程では、前記エピタキシャル層(2)を成長させているときの前記複数の溝(4)の間の幅から前記突出部(5)の幅(Wt)を差し引いた半分の値を前記トレンチ(10)の側面に形成された前記エピタキシャル層(2)の膜厚として測定する工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記エピタキシャル層(2)の膜厚測定に触針式段差計またはレーザ顕微鏡を用い、前記複数の溝(4)の溝幅を前記触針式段差計のプローブ径または前記レーザ顕微鏡のスポット径よりも大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記膜厚測定用構造(3)を形成する工程では、前記複数の溝(4)として、互いに対向する辺を有する第1の溝(4a)と第2の溝(4b)とを形成し、これら第1の溝(4a)と第2の溝(4b)の間に前記突出部(5)を複数本並べて形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記膜厚測定用構造(3)を形成する工程では、前記突出部(5)の長手方向が互いに垂直とされた第1、第2膜厚測定用構造(3a、3b)を形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記膜厚測定用構造(3)を形成する工程では、前記突出部(5)を互いに垂直に交差する二辺にて構成された十字状に形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記膜厚測定用構造(3)を形成する工程では、前記突出部(5)の幅(Wt)を1μm以下とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−212581(P2010−212581A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59299(P2009−59299)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】