焼入れ深さ測定方法および焼入れ深さ測定装置
【課題】 煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる焼入れ深さ測定方法、およびこの測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置を提供する。
【解決手段】 この焼入れ深さ測定方法では、転動装置または転動装置部品を測定対象物20として励磁する励磁コイル3と、インピーダンス検出回路5と、信号処理回路6とを備えた焼入れ深さ測定装置1を用いる。励磁コイル2のインピーダンスの変化から、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。励磁コイル2は、測定対象物20に接触させて測定を行う。励磁コイル3とは別に検出コイルを設け、検出コイルで検出した磁束から焼入れ深さを測定するようにしても良い。また、温度補正を行っても良い。
【解決手段】 この焼入れ深さ測定方法では、転動装置または転動装置部品を測定対象物20として励磁する励磁コイル3と、インピーダンス検出回路5と、信号処理回路6とを備えた焼入れ深さ測定装置1を用いる。励磁コイル2のインピーダンスの変化から、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。励磁コイル2は、測定対象物20に接触させて測定を行う。励磁コイル3とは別に検出コイルを設け、検出コイルで検出した磁束から焼入れ深さを測定するようにしても良い。また、温度補正を行っても良い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受などの転動装置またはその転動装置部品の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法、およびその測定に用いられる焼入れ深さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受などの転動装置の構成部品には、焼入れ処理や焼戻し処理が施される。これらの処理の中でも、高周波焼入れ処理や、浸炭処理、浸炭窒化処理などの表面硬化処理では、品質保証のために表面硬化層の検査が行なわれる。この表面硬化層検査の一般的なものは、実際の製品を切断し、その切断面上で、製品表面から深さ方向に硬度を測定して硬化層の深さを測定する。また、製品を切断できないものでは、テストピースに製品と同じ炉で熱処理を施し、そのテストピースを切断して硬化層深さを測定することにより、製品の硬化層深さの保証を行なっている。
【0003】
上記表面硬化層検査のうち、製品を切断して行う一般的な破壊検査では、製品が破壊されるため、マテリアルロスコストが大きくなるという問題点がある。また、製品の切断および硬度計による深さ方向の硬度測定に時間がかかり、工数が増えるという問題点もある。
また、製品を切断できない場合に行なわれるテストピースによる破壊検査では、実際の製品の検査ではないため、保証精度が悪いなどの問題点がある。
【0004】
そこで、焼入れ硬化層を非破壊で検査する各種方法が提案されている(例えば特許文献1〜3)。そのうち、電磁方式の非破壊検査方法は、焼入れ深さと表面硬度を測定することができるなどの利点があり、実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−271926号公報
【特許文献2】特開2004−108873号公報
【特許文献3】特開2008−32677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献3に開示の非破壊検査方法では、電磁方式により浸炭処理および浸炭窒化処理を施した転動装置部品の硬化層深さを検出している。しかし、この検査方法では、検出精度を上げるために、測定対象物である製品と検出ヘッドとのギャップを精度良く保つ必要があり、ギャップ管理が不十分であると精度の良い測定を行なえない。また、転動装置やその構成部品などの測定対象物の温度が変化すると、測定対象物の透磁率が変化するため、検出精度が低下するという問題点がある。
【0007】
この発明の目的は、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる焼入れ深さ測定方法、およびこの測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置を提供することである。
この発明の他の目的は、測定対象物の温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる焼入れ深さ測定装置および焼入れ深さ測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる第1の焼入れ深さ測定方法は、交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記励磁コイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする。ここで言う励磁コイルは、鉄心等の磁心を設ける場合は、コイル巻線と磁心とを含む意味である。磁心を有する場合は、その磁心を測定対象物に接触させる。以下、この明細書で「コイル」とある記載は、いずれも、磁心を設ける場合は磁心を含む意味である。
この焼入れ深さ測定方法によると、励磁コイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、励磁コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
また、この測定方法では、励磁コイルのインピーダンスの変化から焼入れ深さを測定するので、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、測定装置が簡単な構成のもので済む。
【0009】
この発明における第2の焼入れ深さ測定方法は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物を交流磁界内に配置し、この状態で測定対象物から発生する磁束を検出コイルで検出し、この検出された磁束から、測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記検出コイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする。検出コイルが磁心を有する場合は、その磁心を測定対象物に接触させる。
この焼入れ深さ測定方法の場合は、検出コイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、検出コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0010】
上記第2の焼入れ深さ測定方法において、前記磁束を検出コイルで検出し、この検出された磁束から焼入れ深さを測定する処理が、電磁誘導により検出コイルに誘導される電圧の振幅または位相を検出し、この検出した振幅または位相から焼入れ深さを測定する処理であっても良い。
【0011】
この発明における第3の焼入れ深さ測定方法は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物にコイルによって交流磁界を印加し、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記物理量を検出するコイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする。この第3の焼入れ深さ測定方法は、上記第1および第2の焼入れ深さ測定方法を含む上位概念で示した焼入れ深さ測定方法である。
この第3の焼入れ深さ測定方法の場合も、物理量を検出するコイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0012】
この発明の上記各焼入れ深さ測定方法において、前記測定対象物の温度を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行っても良い。
この方法の場合、測定対象物の温度を用いて、測定値を補正するので、測定対象物の温度変化による透磁率変化の影響が補正され、測定対象物の温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。なお、測定値の補正は、励磁コイルのインピーダンスや、検出コイルで検出される磁束、電圧の振幅、位相などのコイルで直接に検出される測定値につき行うようにしても、また得られたインピーダンス、磁束、電圧の振幅、位相などから計算した焼入れ深さの値を補正を行うようにしても良く、結果として焼入れ深さの値が温度で補正されていれば良い。
【0013】
また、前記測定対象物に接触させるコイルの温度を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行うようにしても良い。前記測定対象物の温度による補正と、コイルの温度による補正との両方を行っても良い。
測定対象物の温度変化による透磁率変化の影響だけでなく、励磁コイルや検出コイルの温度変化による透磁率変化の影響もあるため、この励磁コイルや検出コイルの温度変化に対する補正を行うことで、焼入れ深さの測定精度が向上する。測定対象物の温度に対する補正と併用した場合は、さらに精度良く測定することができる。
【0014】
上記測定対象物やコイルの温度の測定は、非接触温度センサにより行うようにしてもよい。非接触温度センサを用いると、温度センサを測定対象物等に接触させることによる測定値の誤差の発生が回避される。
【0015】
この発明における第1の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記励磁コイルは前記測定対象物に接触させた状態で前記交流磁界を印加するものである。
この構成の場合、励磁コイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、励磁コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。また、励磁コイルのインピーダンスの変化から焼入れ深さを測定するので、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、構成が簡単なものとできる。
【0016】
この発明における第2の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この印加された交流磁界により前記測定対象物から発生する磁束を検出する検出コイルと、この検出コイルで検出された磁束から測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記検出コイルは、前記測定対象物に接触させた状態で前記磁束の検出を行うものであることを特徴とする。
この構成の測定装置によると、検出コイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、検出コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0017】
上記第2の焼入れ深さ測定装置において、前記検出コイルに誘導される電圧の振幅または位相を検出する検出回路を設け、前記信号処理回路は、前記検出回路で検出した振幅または位相から焼入れ深さを計算するものとしても良い。すなわち、検出コイルで検出された磁束から測定対象物の焼入れ深さを計算する手段として、具体的には、上記の処理を行う検出回路および信号処理回路を設けても良い。
【0018】
この発明における第3の焼入れ深さ測定装置は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加するコイルと、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量を検出する検出手段と、この検出手段の検出値から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する信号処理回路とを備え、前記物理量を検出するコイルは、測定対象物に接触させた状態で測定するものであることを特徴とする。
この構成の場合も、検出用のコイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、検出コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0019】
上記第2の焼入れ深さ測定装置において、前記検出コイルに誘導される電圧を積分することでコイルに鎖交する磁束を算出する鎖交磁束算出手段を設け、前記信号処理回路は、前記鎖交磁束算出手段で算出された磁束の大きさから研削焼けを検出する機能を有するものとしても良い。
【0020】
上記第2の焼入れ深さ測定装置において、前記検出コイルを2個設け、前記信号処理回路は、前記各検出コイルに電磁誘導により誘導される電圧の差から研削焼けを検出する機能を有するものとしても良い。前記2個の検出コイルは直列に接続されてブリッジ回路を形成するものであっても良い。2つの検出コイルを設けることで、研削焼けの検出が可能になる。
【0021】
この発明の上記各構成の焼入れ深さ測定装置において、前記いずれかのコイルは、磁性材料の鉄心を有するものであっても良い。また、そのコイルの鉄心の少なくとも測定対象物との接触面を保護コーティングで覆っても良い。保護コーティングで覆われていると、測定対象物の被測定面に励磁コイルの磁心先端部を摺動させても測定対象物に傷が付くのを防止することができる。
【0022】
この発明の上記各構成の焼入れ深さ測定装置において、前記信号処理回路で計算された焼入れ深さを設定範囲を比較し、設定範囲から外れている場合に焼入れ異常と判定する焼入れ異常判定手段を設けても良い。
【0023】
この発明における第4の焼入れ深さ測定方法は、交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記測定対象物の温度および励磁コイルの温度のいずれか片方または両方を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行うことを特徴とする。前記温度の測定は、非接触温度センサにより行っても良い。
この方法の場合、例えば、測定対象物の温度を用いて、測定値を補正するので、測定対象物の温度変化による透磁率変化の影響が補正され、測定対象物の温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。なお、測定値の補正は、励磁コイルのインピーダンスや、検出コイルで検出される磁束、電圧の振幅、位相などのコイルで直接に検出される測定値につき行うようにしても、また得られたインピーダンス、磁束、電圧の振幅、位相などから計算した焼入れ深さの値を補正を行うようにしても良く、結果として焼入れ深さの値が温度で補正されていれば良い。また、測定対象物の温度変化による透磁率変化の影響だけでなく、励磁コイルや検出コイルの温度変化による透磁率変化の影響もあるため、この励磁コイルや検出コイルの温度変化に対する補正を行うことで、焼入れ深さの測定精度が向上する。測定対象物の温度に対する補正と併用した場合は、さらに精度良く測定することができる。
前記温度の測定を非接触温度センサにより行う場合は、温度センサを測定対象物等に接触させることによる測定値の誤差の発生が回避される。
【0024】
この発明における第4の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路と、前記測定対象物の温度および前記励磁コイルの温度のいずれか一方または両方を測定する温度センサと、この温度センサで測定された温度により前記信号処理回路で計算する焼入れ深さを補正する補正手段とを備えたことを特徴とする。
この構成の場合、第4の焼入れ深さ測定方法につき述べたと同様に、測定対象物の温度変化による透磁率変化の影響が補正され、測定対象物の温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明の第1の焼入れ深さ測定方法は、交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記励磁コイルを測定対象物に接触させた状態で測定するため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。また、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、測定装置が簡単な構成のもので済む。
【0026】
この発明の第2の焼入れ深さ測定方法は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物を交流磁界内に配置し、この状態で測定対象物から発生する磁束を検出コイルで検出し、この検出された磁束から、測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記検出コイルを測定対象物に接触させた状態で測定するため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0027】
この発明の第3の焼入れ深さ測定方法は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物にコイルによって交流磁界を印加し、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記物理量を検出するコイルを測定対象物に接触させた状態で測定するため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0028】
この発明の第4の焼入れ深さ測定方法は、交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記測定対象物の温度および励磁コイルの温度のいずれか片方または両方を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行うことを特徴とするため、測定対象物の温度、あるいはコイルの温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。また、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、測定装置が簡単な構成のもので済む。
【0029】
この発明の第1の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記励磁コイルは前記測定対象物に接触させた状態で前記交流磁界を印加するものであるため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。また、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、測定装置が簡単な構成のもので済む。
【0030】
この発明の第2の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この印加された交流磁界により前記測定対象物から発生する磁束を検出する検出コイルと、この検出コイルで検出された磁束から測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記検出コイルは、前記測定対象物に接触させた状態で前記磁束の検出を行うものであるため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0031】
この発明の第3の焼入れ深さ測定装置は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加するコイルと、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量を検出する検出手段と、この検出手段の検出値から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する信号処理回路とを備え、前記物理量を検出するコイルは、測定対象物に接触させた状態で測定するものであるため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0032】
この発明の第4の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路と、前記測定対象物の温度および前記励磁コイルの温度のいずれか一方または両方を測定する温度センサと、この温度センサで測定された温度により前記信号処理回路で計算する焼入れ深さを補正する補正手段とを備えたため、測定対象物の温度、あるいはコイルの温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。また、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、簡単な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の焼入れ深さ測定方法の一実施形態を示す概略図である。
【図2】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置の他の実施形態の概略図である。
【図3】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図4】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図5】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図6】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図7】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図8】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図9】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図10】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図11】この発明の焼入れ深さ測定方法の他の実施形態を示す概略図である。
【図12】(A)は同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置における検出ヘッドの平面図、(B)は同正面図である。
【図13】この発明のさらに他の実施形態にかかる焼入れ深さ測定装置を用いた焼入れ深さ測定の説明図である。
【図14】焼入れ深さ測定装置の具体的な使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の第1の実施形態を図1と共に説明する。図1は、この実施形態の焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置の概略図を示す。この焼入れ深さ測定装置1は、測定対象物20を励磁する励磁コイル3を有する検出ヘッド2と、励磁された前記測定対象物20からの磁化信号を検出する検出手段であるインピーダンス検出回路5を含む制御部10とを備える。この場合の測定対象物20は、軸受などの転動装置または転動装置の構成部品である。
【0035】
検出ヘッド2における励磁コイル3は、その磁心となる鉄心4にコイル巻線が巻かれている。励磁コイル3には、励磁のための交流磁界を発生させる交流電流が制御部10の電源11から供給される。この励磁コイル3を導電体である測定対象物20に接近させると、励磁コイル3がつくる磁界による電磁誘導で測定対象物20に渦電流が発生する。この渦電流は励磁コイル3がつくる磁界と反対方向の磁界を発生させ、また測定対象物20中でも渦電流により損失が発生するので、励磁コイル3のインピーダンスが変化する。そこで、検出手段である前記インピーダンス検出回路5は、測定対象物20からの磁化信号として前記インピーダンスを検出する。具体的には、インピーダンス検出回路5は、励磁コイル3に誘導される電圧の大きさや、励磁コイル3を流れる電流と電圧の位相差を測定し、これらの値から励磁コイル3のインピーダンスを算出する。
【0036】
測定対象物20に流れる渦電流は、測定対象物20の導電率,透磁率により変化する。そこで、測定対象物20の導電率,透磁率に応じて励磁コイル3のインピーダンスも変化するので、前記インピーダンス検出回路5で検出される励磁コイル3のインピーダンス変化から測定対象物20の材質変化を検出することができる。
【0037】
また、測定対象物20となる転動装置やその構成部品は、焼入れにより硬度が大きくなると、透磁率が母材よりも低下する。これにより、焼入れ深さに応じて励磁コイル3の磁路中の磁気抵抗が変化することから、測定対象物20の内部を透過する磁束が変化し、測定対象物20中に誘導される渦電流も変化するので、焼入れ深さに応じて励磁コイル3のインピーダンが変化することになる。
【0038】
そこで、測定対象物20となる転動装置やその構成部品について、焼入れ深さと励磁コイル3のインピーダンスとの関係を予め測定しておき、その関係式のグラフである検量線を作成しておけば、その検量線に測定された励磁コイル3のインピーダンスを当てはめることで、焼入れ深さを測定することが可能である。前記制御部10は、インピーダンス検出回路5のほかに、このインピーダンス検出回路5が検出したインピーダンスから焼入れ深さを求める信号処理回路6を有する。この信号処理回路6には、前記検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。
【0039】
この焼入れ深さ測定方法では、上記焼入れ深さ測定装置1を用いることにより、検出手段であるインピーダンス検出回路5の検出する励磁コイル3のインピーダンスから、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。
ところで、励磁コイル3のインピーダンスは、励磁コイル3と測定対象物20の間のギャップや、励磁コイル3の姿勢つまり測定対象物20に対する角度によって変化する。そこで、この焼入れ深さ測定方法では、検出ヘッド2の先端部、つまり励磁コイル3の磁心である鉄心4の測定対象物20に対向する先端部を、測定対象物20の被測定面に接触させた状態で前記測定を行う。
【0040】
このように、検出ヘッド2の先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた状態で
焼入れ深さの測定を行うことにより、励磁コイル3と測定対象物20との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、焼入れ深さを精度良く行うことができる。
また、この実施形態の場合、励磁コイル3のインピーダンスから焼入れ深さを測定するので、励磁コイル3とは別に検出用のコイルを設ける必要がなく、装置の測定装置の構成が簡素になる。
【0041】
図2は、焼入れ深さ測定装置の他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、測定対象物20からの磁化信号を検出する検出手段として、図1の実施形態におけるインピーダンス検出回路5に代えて、励磁コイル3の磁心である鉄心4に巻かれた検出コイル7と、電磁誘導により前記検出コイル7に誘導される電圧の振幅および位相を検出する振幅・位相検出回路8とを用いている。振幅・位相検出回路8は制御部10に設けられる。励磁コイル3に、励磁のための高周波の交流磁界を発生させる交流電流が制御部10の電源11から供給され、励磁コイル3が発生する交流磁界により測定対象物20に渦電流が誘導されることは、図1の実施形態の場合と同様である。
【0042】
検出コイル7には、励磁コイル3のつくる磁束と渦電流がつくる磁束を合成した磁束による電磁誘導で発生する電圧が誘導される。すなわち、検出コイル7は、測定対象物20からの磁化信号として、励磁コイル3のつくる磁束と渦電流がつくる磁束を合成した磁束による電磁誘導で発生する電圧を検出する。前記制御部10は、振幅・位相検出回路8のほかに、この振幅・位相検出回路8が検出した検出コイル7の電圧の振幅または位相から焼入れ深さを求める信号処理回路6Aを有する。この信号処理回路6Aには、予め測定した焼入れ深さと検出コイル7の電圧の振幅または位相との関係を示す検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。これにより、信号処理回路6Aでは、振幅・位相検出回路8が検出した検出コイル7の電圧の振幅または位相を前記検量線に当てはめることで、焼入れ深さが測定される。
【0043】
また、前記信号処理回路6Aは、測定された焼入れ深さが所定の範囲から外れたとき、焼入れ異常であると判定する焼入れ異常判定手段9を有する。これにより、測定対象物20の焼入れ異常を簡単に知ることができる。前記所定の範囲は、任意に設定される設定範囲である。制御部10の次段には、制御部10での測定結果などのデータを表示する表示部12が接続されている。この表示部12に、測定された焼入れ深さや焼入れ異常の判定結果などが表示される。
【0044】
この実施形態では、励磁コイル3の磁心である鉄心4の測定対象物20の被測定面に接触する先端部に保護コーティング13が施されている。保護コーティング13の材料として、例えばエポキシ系樹脂など、測定対象物20の材料とされる金属材料よりも柔らかく、金属材料に傷を付けることのないものが用いられる。このように、鉄心4における測定対象物20の被測定面に接触する先端部に保護コーティング13を施すことにより、測定対象物20の被測定面に検出ヘッド2を摺動させても測定対象物20に傷が付くのを防止することができる。
【0045】
図3は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1は、図2の実施形態において、検出コイル7に誘導される電圧の振幅および位相を検出する振幅・位相検出回路8に代えて、検出コイル7に誘導される電圧を積分して検出コイル7に鎖交する磁束を算出する鎖交磁束算出回路14を用いている。制御部10は、鎖交磁束算出回路14のほかに、この鎖交磁束算出回路14が算出した鎖交磁束から焼入れ深さを求める信号処理回路6Bを有する。この信号処理回路6Bには、予め測定した焼入れ深さと検出コイル7の鎖交磁束との関係を示す検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。これにより、信号処理回路6Bでは、鎖交磁束算出回路14が算出した検出コイル7の鎖交磁束を前記検量線に当てはめることで、焼入れ深さが測定される。その他の構成は、図2の実施形態の場合と同様である。
【0046】
図4は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1は、図2の実施形態において、励磁コイル3の磁心をコ字状の鉄心4Aとし、焼入れ深さの測定時には、その鉄心4Aの両端を測定対象物20の被測定面に接触させるものとしている。ここでは、鉄心4Aの両端に保護コーティング13(図2)を施していないが、保護コーティング13を施しても良い。その他の構成は図2の実施形態の場合と同様である。
【0047】
この実施形態の場合も、前記コ字状の鉄心4Aと測定対象物20とで形成される磁路の抵抗が、測定対象物20の焼入れ深さに応じて変化するので、検出コイル7に誘導される電圧の振幅、および励磁コイル3と検出コイル7の電圧の位相差が変化し、振幅・位相検出回路8がその振幅および位相差を検出する。信号処理回路6Aでは、振幅・位相検出回路8が検出した振幅または位相差を予め作成した検量線に当てはめることにより、焼入れ深さを測定する。
【0048】
図5は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1は、図2の実施形態において、測定対象物20からの磁化信号を検出する検出手段として、励磁コイル3の磁心である鉄心4に巻かれた2つの検出コイル7A,7Bと、電磁誘導により前記両検出コイル7A,7Bに誘導される電圧の差を検出する電圧差検出回路15とを用いている。電圧差検出回路15は制御部10に設けられる。2つの検出コイル7A,7Bは互いに逆方向に巻かれて直列接続され、これら両検出コイル7A,7Bと電圧差検出回路15とでブリッジ回路16が構成される。これにより、2つの検出コイル7A,7Bには逆位相の電圧が誘導され、ブリッジ回路16によりこれら両検出コイル7A,7Bに誘導された電圧の差分だけを増幅して電圧差検出回路15で検出することができる。
【0049】
制御部10は、電圧差検出回路15のほかに、この電圧差検出回路15が検出した電圧差から焼入れ深さを求める信号処理回路6Cを有する。この信号処理回路6Cには、予め測定した焼入れ深さと検出コイル7A,7Bの電圧差との関係を示す検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。これにより、信号処理回路6Cでは、電圧差検出回路15が検出した検出コイル7A,7Bの電圧差を前記検量線に当てはめることで、焼入れ深さが測定される。その他の構成は、図2の実施形態の場合と同様である。
【0050】
この実施形態の場合、励磁コイル3の鉄心4に2つの検出コイル7A,7Bを互いに逆方向に巻き、これら両検出コイル7A,7Bを直列接続して、両検出コイル7A,7Bに誘導される電圧の差を検出する電圧差検出回路15とでブリッジ回路を構成しているので、測定対象物20の透磁率変化、つまり焼入れ深さを感度良く測定することができる。
【0051】
図6は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、図1の実施形態において、検出ヘッド2の基板22に、前記励磁コイル3のほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23を実装している。測定対象物用温度センサ23は、前記基板22の励磁コイル3が突出する側に設けられ、励磁コイル3の磁心である鉄心4の先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされている。この測定対象物用温度センサ23として、例えばサーモバイルのような非接触温度センサが用いられる。
【0052】
また、励磁コイル3の磁心である鉄心4にも、鉄心4の温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。このコイル用温度センサ24としては、サーミスタ、熱電対、測温抵抗体などを用いることができる。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。
【0053】
測定対象物20の温度が変化するとその透磁率も変化するので、測定対象物20の温度変化はインピーダンス検出回路5が検出するインピーダンにも影響を及ぼす。また、励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度が変化するとその透磁率も変化するので、鉄心4の温度変化もインピーダンス検出回路5が検出するインピーダンスに影響を及ぼす。そこで、制御部10の信号処理回路6には、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、インピーダンス検出回路5が検出するインピーダンスを補正する補正手段26が設けられている。これにより、信号処理回路6では、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき補正したインピーダンスを、検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。
【0054】
このように、インピーダンス検出回路5が検出する励磁コイル3のインピーダンスを、温度センサ23,24で測定される測定対象物20および励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度に基づき補正することにより、測定対象物20や前記鉄心4の温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さを精度良く行うことができる。この実施形態では、測定対象物20の温度だけでなく、励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度もインピーダンスを補正するデータとして加えているので、それだけ測定精度を向上させることができるが、測定対象物20の温度だけでインピーダンを補正するようにしても十分な測定精度を得ることができる。
【0055】
図7は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、図2の実施形態において、検出ヘッド2の基板22に、前記励磁コイル3の磁心である鉄心4のほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23を実装している。測定対象物用温度センサ23が、前記基板22の鉄心4が突出する側に設けられ、鉄心4の先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされていることは、図6の実施形態の場合と同様である。
【0056】
また、鉄心4にも、鉄心4の温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。信号処理回路6Aには、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、振幅・位相検出回路8が検出する検出コイル7の電圧の振幅または位相差を補正する補正手段26が設けられている。
【0057】
この実施形態の場合も、信号処理回路6Aでは、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき補正した検出コイル7の電圧の振幅または位相差を、検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。これにより測定対象物20や前記鉄心4Aの温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。
【0058】
図8は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、図3の実施形態において、検出ヘッド2の基板22に、前記励磁コイル3の磁心である鉄心4のほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23を実装している。測定対象物用温度センサ23が、前記基板22の鉄心4が突出する側に設けられ、鉄心4の先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされていることは、図6の実施形態の場合と同様である。
【0059】
また、鉄心4にも、鉄心4の温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。信号処理回路6Bには、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、振幅・位相検出回路8が検出する検出コイル7の電圧の振幅または位相差を補正する補正手段26が設けられている。
【0060】
この実施形態の場合も、信号処理回路6Bでは、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき補正した鎖交磁束算出回路14が算出した鎖交磁束を補正し、その補正値を検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。これにより測定対象物20や前記鉄心4Aの温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。
【0061】
図9は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、図4の実施形態において、検出ヘッド2の基板22に、前記励磁コイル3の磁心である鉄心4Aのほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23を実装している。測定対象物用温度センサ23が、前記基板22の鉄心4Aが突出する側に設けられ、鉄心4Aの先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされていることは、図6の実施形態の場合と同様である。
【0062】
また、鉄心4Aにも、鉄心4Aの温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。信号処理回路6Aには、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、振幅・位相検出回路8が検出する検出コイル7の電圧の振幅または位相差を補正する補正手段26が設けられている。
【0063】
この実施形態の場合も、信号処理回路6Aでは、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき補正した検出コイル7の電圧の振幅または位相差を検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。これにより測定対象物20や前記鉄心4Aの温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。
【0064】
図10は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、図5の実施形態において、検出ヘッド2の基板22に、前記励磁コイル3の磁心である鉄心4のほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23を実装している。測定対象物用温度センサ23が、前記基板22の鉄心4が突出する側に設けられ、鉄心4の先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされていることは、図6の実施形態の場合と同様である。
【0065】
また、鉄心4にも、鉄心4の温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。信号処理回路6Cには、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、電圧差検出回路15が検出した検出コイル7A,7Bの電圧差を補正する補正手段26が設けられている。
【0066】
この実施形態の場合も、信号処理回路6Cでは、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき電圧差検出回路15が検出した検出コイル7A,7Bの電圧差を補正し、その補正値を検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。これにより測定対象物20や前記鉄心4の温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。
【0067】
この発明のさらに他の実施形態を図11および図12と共に説明する。図11は、この実施形態の焼入れ深さ測定装置を用いて測定対象物の焼入れ深さを測定する場合の説明図を示す。この焼入れ深さ測定装置1は、測定対象物20を励磁する励磁コイル3を有する検出ヘッド2と、励磁された前記測定対象物20からの磁化信号を検出する検出手段であるインピーダンス検出回路5を含む制御部10とを備える。この場合の測定対象物20も、軸受などの転動装置または転動装置の構成部品である。
【0068】
検出ヘッド2における励磁コイル3は、その磁心となる鉄心4に巻かれており、基板22上に実装されている。励磁コイル3には、励磁のための交流磁界を発生させる交流電流が制御部10の電源11から供給される。この励磁コイル3を導電体である測定対象物20に接近させると、励磁コイル3がつくる磁界による電磁誘導で測定対象物20に渦電流が発生する。この渦電流は励磁コイル3がつくる磁界と反対方向の磁界を発生させ、また測定対象物20中でも渦電流により損失が発生するので、励磁コイル3のインピーダンスが変化する。そこで、検出手段である前記インピーダンス検出回路5は、測定対象物20からの磁化信号として前記インピーダンスを検出する。具体的には、インピーダンス検出回路5は、励磁コイル3に誘導される電圧の大きさや、励磁コイル3を流れる電流と電圧の位相差を測定し、これらの値から励磁コイル3のインピーダンスを算出する。
【0069】
測定対象物20に流れる渦電流は、測定対象物20の導電率,透磁率により変化する。そこで、測定対象物20の導電率,透磁率に応じて励磁コイル3のインピーダンスも変化するので、前記インピーダンス検出回路5で検出される励磁コイル3のインピーダンス変化から測定対象物20の材質変化を検出することができる。
【0070】
また、測定対象物20となる転動装置やその構成部品は、焼入れにより硬度が大きくなると、透磁率が母材よりも低下する。これにより、焼入れ深さに応じて励磁コイル3の磁路中の磁気抵抗が変化することから、測定対象物20の内部を透過する磁束が変化し、測定対象物20中に誘導される渦電流も変化するので、焼入れ深さに応じて励磁コイル3のインピーダンが変化することになる。
【0071】
そこで、測定対象物20となる転動装置やその構成部品について、焼入れ深さと励磁コイル3のインピーダンスとの関係を予め測定しておき、その関係式のグラフである検量線を作成しておけば、その検量線に測定された励磁コイル3のインピーダンスを当てはめることで、焼入れ深さを測定することが可能である。前記制御部10は、インピーダンス検出回路5のほかに、このインピーダンス検出回路5が検出したインピーダンスから焼入れ深さを求める信号処理回路6を有する。この信号処理回路6には、前記検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。ここまでの構成は、図1の実施形態における焼入れ深さ測定装置1の場合と同様である。
【0072】
この焼入れ深さ測定では、前記励磁コイル3を、その磁心である鉄心4の先端部が測定対象物20の被測定面と所定のギャップを介して対向するように配置して測定を行う点がが、これまでの接触方式の測定と異なる。
【0073】
検出ヘッド2の基板22には、前記励磁コイル3のほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23が実装されている。測定対象物用温度センサ23は、前記基板22の励磁コイル3が突出する側に設けられ、励磁コイル3を所定のギャップを介して測定対象物20に対向配置させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされている。この測定対象物用温度センサ23として、例えばサーモバイルのような非接触温度センサが用いられる。
【0074】
また、励磁コイル3の磁心である鉄心4にも、鉄心4の温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。このコイル用温度センサ24としては、サーミスタ、熱電対、測温抵抗体などを用いることができる。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。図11のように、温度センサ回路25の一部25Aを、検出ヘッド2における基板22の裏面に実装しても良い。図12(A),(B)は、前記検出ヘッド2の平面図および正面図を示す。
【0075】
測定対象物20の温度が変化するとその透磁率も変化するので、測定対象物20の温度変化はインピーダンス検出回路5が検出するインピーダンにも影響を及ぼす。また、励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度が変化するとその透磁率も変化するので、鉄心4の温度変化もインピーダンス検出回路5が検出するインピーダンスに影響を及ぼす。そこで、制御部10の信号処理回路6には、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、インピーダンス検出回路5が検出するインピーダンスを補正する補正手段26が設けられている。これにより、信号処理回路6では、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき補正したインピーダンスを、上記した検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。
【0076】
このように、インピーダンス検出回路5が検出する励磁コイル3のインピーダンスを、温度センサ23,24で測定される測定対象物20および励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度に基づき補正することにより、測定対象物20や前記鉄心4の温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。この実施形態では、測定対象物20の温度だけでなく、励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度もインピーダンスを補正するデータとして加えているので、それだけ測定精度を向上させることができるが、測定対象物20の温度だけでインピーダンを補正するようにしても十分な測定精度を得ることができる。
【0077】
図13は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、測定対象物20からの磁化信号を検出する検出手段として、図11の実施形態におけるインピーダンス検出回路5に代えて、励磁コイル3の磁心であるコ字状の鉄心4Aに巻かれた検出コイル7と、電磁誘導により前記検出コイル7に誘導される電圧の振幅および励磁コイル3の電圧との位相差を検出する振幅・位相検出回路8とを用いている。検出ヘッド2は、励磁コイル3、その磁心であるコ字状の鉄心4A、測定対象物用温度センサ23A、および前記鉄心4Aに設けられたコイル用温度センサ24などを備える。焼入れ深さの測定時には、コ字状の鉄心4Aの両端を測定対象物20の被測定面に接触させるものとしている。この測定状態で、測定対象物用温度センサ23Aは、測定対象物20の被測定面に接触する位置に配置される。振幅・位相検出回路8は制御部10に設けられる。励磁コイル3に、励磁のための交流磁界を発生させる交流電流が制御部10の電源11から供給され、励磁コイル3が発生する交流磁界により測定対象物20に渦電流が誘導されること、各温度センサ23A,24の検出信号を数値化する温度センサ回路25が制御部10に設けられることは、図11の実施形態の場合と同様である。
【0078】
検出コイル7には、励磁コイル3のつくる磁束と渦電流がつくる磁束を合成した磁束による電磁誘導で発生する電圧が誘導される。すなわち、検出コイル7は、測定対象物20からの磁化信号として、励磁コイル3のつくる磁束と渦電流がつくる磁束を合成した磁束による電磁誘導で発生する電圧を検出する。前記制御部10は、振幅・位相検出回路8のほかに、この振幅・位相検出回路8が検出した検出コイル7の電圧の振幅または励磁コイル3の電圧との位相差から焼入れ深さを求める信号処理回路6Aを有する。この信号処理回路6Aには、予め測定した焼入れ深さと検出コイル7の電圧の振幅または位相差との関係を示す検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。これにより、信号処理回路6Aでは、振幅・位相検出回路8が検出した検出コイル7の電圧の振幅または位相差を前記検量線に当てはめることで、焼入れ深さが測定される。この信号処理回路6Aには、図11の実施形態の場合と同様に、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23A,24の測定値に基づき、振幅・位相検出回路8が検出する検出コイル7の電圧の振幅または位相差を補正する補正手段26が設けられている。
【0079】
この実施形態の場合も、前記コ字状の鉄心4Aと測定対象物20とで形成される磁路の抵抗が、測定対象物20の焼入れ深さに応じて変化するので、検出コイル7に誘導される電圧の振幅、および励磁コイル3と検出コイル7の電圧の位相差が変化し、振幅・位相検出回路8がその振幅および位相差を検出する。信号処理回路6Aでは、温度センサ23A,24の測定する測定値に基づき補正した検出コイル7の電圧の振幅または位相差を、上記した検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さが測定する。これにより測定対象物20や前記鉄心4Aの温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。
【0080】
図14は、上記した例えば接触式の焼入れ深さ測定装置1を使用して行う焼入れ深さ測定の具体例を示す。ここでは、転動装置の構成部品、具体的には軸受の内輪31が測定対象物とされ、その転走面31aに施された焼入れの深さが測定される。焼入れ深さ測定装置1の検出ヘッド2は、移動可能な支持部材32に支持され、支持部材32の移動により軸受内輪31の転走面31aの表面を摺動しながら深入れ深さを測定する。軸受内輪31は回転軸33の外径面に嵌着されており、回転軸33を回転させることで、軸受内輪31の転走面31aの全周面に前記検出ヘッド2を移動させて焼入れ深さを測定することができる。なお、非接触式の焼入れ深さ測定装置1を使用する場合には、支持部材33に支持された検出ヘッド2が、軸受内輪31の転走面31aの表面との間に所定のギャップを保って周方向に移動しながらや焼入れ深さを測定する。
オンライン上で、このように焼入れ深さ測定装置1を使用すると、軸受内輪31の転走面31aの焼入れを全数検査することができるので、品質保証能力を高めることができる。
【符号の説明】
【0081】
1…焼入れ深さ測定装置
3…励磁コイル
4,4A…鉄心
5…インピーダンス検出回路
7,7A,7B…検出コイル
8…振幅・位相検出回路
9…焼入れ異常判定手段
10…制御部
11…電源
13…保護コーティング
14…鎖交磁束算出回路
15…電圧差検出回路
16…ブリッジ回路
20…測定対象物
23,23A…測定対象物用温度センサ
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受などの転動装置またはその転動装置部品の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法、およびその測定に用いられる焼入れ深さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受などの転動装置の構成部品には、焼入れ処理や焼戻し処理が施される。これらの処理の中でも、高周波焼入れ処理や、浸炭処理、浸炭窒化処理などの表面硬化処理では、品質保証のために表面硬化層の検査が行なわれる。この表面硬化層検査の一般的なものは、実際の製品を切断し、その切断面上で、製品表面から深さ方向に硬度を測定して硬化層の深さを測定する。また、製品を切断できないものでは、テストピースに製品と同じ炉で熱処理を施し、そのテストピースを切断して硬化層深さを測定することにより、製品の硬化層深さの保証を行なっている。
【0003】
上記表面硬化層検査のうち、製品を切断して行う一般的な破壊検査では、製品が破壊されるため、マテリアルロスコストが大きくなるという問題点がある。また、製品の切断および硬度計による深さ方向の硬度測定に時間がかかり、工数が増えるという問題点もある。
また、製品を切断できない場合に行なわれるテストピースによる破壊検査では、実際の製品の検査ではないため、保証精度が悪いなどの問題点がある。
【0004】
そこで、焼入れ硬化層を非破壊で検査する各種方法が提案されている(例えば特許文献1〜3)。そのうち、電磁方式の非破壊検査方法は、焼入れ深さと表面硬度を測定することができるなどの利点があり、実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−271926号公報
【特許文献2】特開2004−108873号公報
【特許文献3】特開2008−32677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献3に開示の非破壊検査方法では、電磁方式により浸炭処理および浸炭窒化処理を施した転動装置部品の硬化層深さを検出している。しかし、この検査方法では、検出精度を上げるために、測定対象物である製品と検出ヘッドとのギャップを精度良く保つ必要があり、ギャップ管理が不十分であると精度の良い測定を行なえない。また、転動装置やその構成部品などの測定対象物の温度が変化すると、測定対象物の透磁率が変化するため、検出精度が低下するという問題点がある。
【0007】
この発明の目的は、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる焼入れ深さ測定方法、およびこの測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置を提供することである。
この発明の他の目的は、測定対象物の温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる焼入れ深さ測定装置および焼入れ深さ測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる第1の焼入れ深さ測定方法は、交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記励磁コイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする。ここで言う励磁コイルは、鉄心等の磁心を設ける場合は、コイル巻線と磁心とを含む意味である。磁心を有する場合は、その磁心を測定対象物に接触させる。以下、この明細書で「コイル」とある記載は、いずれも、磁心を設ける場合は磁心を含む意味である。
この焼入れ深さ測定方法によると、励磁コイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、励磁コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
また、この測定方法では、励磁コイルのインピーダンスの変化から焼入れ深さを測定するので、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、測定装置が簡単な構成のもので済む。
【0009】
この発明における第2の焼入れ深さ測定方法は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物を交流磁界内に配置し、この状態で測定対象物から発生する磁束を検出コイルで検出し、この検出された磁束から、測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記検出コイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする。検出コイルが磁心を有する場合は、その磁心を測定対象物に接触させる。
この焼入れ深さ測定方法の場合は、検出コイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、検出コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0010】
上記第2の焼入れ深さ測定方法において、前記磁束を検出コイルで検出し、この検出された磁束から焼入れ深さを測定する処理が、電磁誘導により検出コイルに誘導される電圧の振幅または位相を検出し、この検出した振幅または位相から焼入れ深さを測定する処理であっても良い。
【0011】
この発明における第3の焼入れ深さ測定方法は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物にコイルによって交流磁界を印加し、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記物理量を検出するコイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする。この第3の焼入れ深さ測定方法は、上記第1および第2の焼入れ深さ測定方法を含む上位概念で示した焼入れ深さ測定方法である。
この第3の焼入れ深さ測定方法の場合も、物理量を検出するコイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0012】
この発明の上記各焼入れ深さ測定方法において、前記測定対象物の温度を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行っても良い。
この方法の場合、測定対象物の温度を用いて、測定値を補正するので、測定対象物の温度変化による透磁率変化の影響が補正され、測定対象物の温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。なお、測定値の補正は、励磁コイルのインピーダンスや、検出コイルで検出される磁束、電圧の振幅、位相などのコイルで直接に検出される測定値につき行うようにしても、また得られたインピーダンス、磁束、電圧の振幅、位相などから計算した焼入れ深さの値を補正を行うようにしても良く、結果として焼入れ深さの値が温度で補正されていれば良い。
【0013】
また、前記測定対象物に接触させるコイルの温度を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行うようにしても良い。前記測定対象物の温度による補正と、コイルの温度による補正との両方を行っても良い。
測定対象物の温度変化による透磁率変化の影響だけでなく、励磁コイルや検出コイルの温度変化による透磁率変化の影響もあるため、この励磁コイルや検出コイルの温度変化に対する補正を行うことで、焼入れ深さの測定精度が向上する。測定対象物の温度に対する補正と併用した場合は、さらに精度良く測定することができる。
【0014】
上記測定対象物やコイルの温度の測定は、非接触温度センサにより行うようにしてもよい。非接触温度センサを用いると、温度センサを測定対象物等に接触させることによる測定値の誤差の発生が回避される。
【0015】
この発明における第1の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記励磁コイルは前記測定対象物に接触させた状態で前記交流磁界を印加するものである。
この構成の場合、励磁コイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、励磁コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。また、励磁コイルのインピーダンスの変化から焼入れ深さを測定するので、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、構成が簡単なものとできる。
【0016】
この発明における第2の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この印加された交流磁界により前記測定対象物から発生する磁束を検出する検出コイルと、この検出コイルで検出された磁束から測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記検出コイルは、前記測定対象物に接触させた状態で前記磁束の検出を行うものであることを特徴とする。
この構成の測定装置によると、検出コイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、検出コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0017】
上記第2の焼入れ深さ測定装置において、前記検出コイルに誘導される電圧の振幅または位相を検出する検出回路を設け、前記信号処理回路は、前記検出回路で検出した振幅または位相から焼入れ深さを計算するものとしても良い。すなわち、検出コイルで検出された磁束から測定対象物の焼入れ深さを計算する手段として、具体的には、上記の処理を行う検出回路および信号処理回路を設けても良い。
【0018】
この発明における第3の焼入れ深さ測定装置は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加するコイルと、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量を検出する検出手段と、この検出手段の検出値から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する信号処理回路とを備え、前記物理量を検出するコイルは、測定対象物に接触させた状態で測定するものであることを特徴とする。
この構成の場合も、検出用のコイルを測定対象物に接触させた状態で焼入れ深さの測定を行うので、検出コイルと測定対象物との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0019】
上記第2の焼入れ深さ測定装置において、前記検出コイルに誘導される電圧を積分することでコイルに鎖交する磁束を算出する鎖交磁束算出手段を設け、前記信号処理回路は、前記鎖交磁束算出手段で算出された磁束の大きさから研削焼けを検出する機能を有するものとしても良い。
【0020】
上記第2の焼入れ深さ測定装置において、前記検出コイルを2個設け、前記信号処理回路は、前記各検出コイルに電磁誘導により誘導される電圧の差から研削焼けを検出する機能を有するものとしても良い。前記2個の検出コイルは直列に接続されてブリッジ回路を形成するものであっても良い。2つの検出コイルを設けることで、研削焼けの検出が可能になる。
【0021】
この発明の上記各構成の焼入れ深さ測定装置において、前記いずれかのコイルは、磁性材料の鉄心を有するものであっても良い。また、そのコイルの鉄心の少なくとも測定対象物との接触面を保護コーティングで覆っても良い。保護コーティングで覆われていると、測定対象物の被測定面に励磁コイルの磁心先端部を摺動させても測定対象物に傷が付くのを防止することができる。
【0022】
この発明の上記各構成の焼入れ深さ測定装置において、前記信号処理回路で計算された焼入れ深さを設定範囲を比較し、設定範囲から外れている場合に焼入れ異常と判定する焼入れ異常判定手段を設けても良い。
【0023】
この発明における第4の焼入れ深さ測定方法は、交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記測定対象物の温度および励磁コイルの温度のいずれか片方または両方を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行うことを特徴とする。前記温度の測定は、非接触温度センサにより行っても良い。
この方法の場合、例えば、測定対象物の温度を用いて、測定値を補正するので、測定対象物の温度変化による透磁率変化の影響が補正され、測定対象物の温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。なお、測定値の補正は、励磁コイルのインピーダンスや、検出コイルで検出される磁束、電圧の振幅、位相などのコイルで直接に検出される測定値につき行うようにしても、また得られたインピーダンス、磁束、電圧の振幅、位相などから計算した焼入れ深さの値を補正を行うようにしても良く、結果として焼入れ深さの値が温度で補正されていれば良い。また、測定対象物の温度変化による透磁率変化の影響だけでなく、励磁コイルや検出コイルの温度変化による透磁率変化の影響もあるため、この励磁コイルや検出コイルの温度変化に対する補正を行うことで、焼入れ深さの測定精度が向上する。測定対象物の温度に対する補正と併用した場合は、さらに精度良く測定することができる。
前記温度の測定を非接触温度センサにより行う場合は、温度センサを測定対象物等に接触させることによる測定値の誤差の発生が回避される。
【0024】
この発明における第4の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路と、前記測定対象物の温度および前記励磁コイルの温度のいずれか一方または両方を測定する温度センサと、この温度センサで測定された温度により前記信号処理回路で計算する焼入れ深さを補正する補正手段とを備えたことを特徴とする。
この構成の場合、第4の焼入れ深さ測定方法につき述べたと同様に、測定対象物の温度変化による透磁率変化の影響が補正され、測定対象物の温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明の第1の焼入れ深さ測定方法は、交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記励磁コイルを測定対象物に接触させた状態で測定するため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。また、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、測定装置が簡単な構成のもので済む。
【0026】
この発明の第2の焼入れ深さ測定方法は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物を交流磁界内に配置し、この状態で測定対象物から発生する磁束を検出コイルで検出し、この検出された磁束から、測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記検出コイルを測定対象物に接触させた状態で測定するため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0027】
この発明の第3の焼入れ深さ測定方法は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物にコイルによって交流磁界を印加し、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記物理量を検出するコイルを測定対象物に接触させた状態で測定するため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0028】
この発明の第4の焼入れ深さ測定方法は、交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記測定対象物の温度および励磁コイルの温度のいずれか片方または両方を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行うことを特徴とするため、測定対象物の温度、あるいはコイルの温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。また、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、測定装置が簡単な構成のもので済む。
【0029】
この発明の第1の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記励磁コイルは前記測定対象物に接触させた状態で前記交流磁界を印加するものであるため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。また、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、測定装置が簡単な構成のもので済む。
【0030】
この発明の第2の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この印加された交流磁界により前記測定対象物から発生する磁束を検出する検出コイルと、この検出コイルで検出された磁束から測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記検出コイルは、前記測定対象物に接触させた状態で前記磁束の検出を行うものであるため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0031】
この発明の第3の焼入れ深さ測定装置は、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加するコイルと、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量を検出する検出手段と、この検出手段の検出値から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する信号処理回路とを備え、前記物理量を検出するコイルは、測定対象物に接触させた状態で測定するものであるため、煩雑なギャップ管理を要することなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。
【0032】
この発明の第4の焼入れ深さ測定装置は、交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路と、前記測定対象物の温度および前記励磁コイルの温度のいずれか一方または両方を測定する温度センサと、この温度センサで測定された温度により前記信号処理回路で計算する焼入れ深さを補正する補正手段とを備えたため、測定対象物の温度、あるいはコイルの温度に左右されることなく、転動装置や転動装置部品の焼入れ深さを精度良く測定することができる。また、励磁コイルとは別に検出コイル等の検出手段を設けることが不要で、簡単な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の焼入れ深さ測定方法の一実施形態を示す概略図である。
【図2】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置の他の実施形態の概略図である。
【図3】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図4】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図5】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図6】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図7】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図8】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図9】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図10】同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態の概略図である。
【図11】この発明の焼入れ深さ測定方法の他の実施形態を示す概略図である。
【図12】(A)は同焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置における検出ヘッドの平面図、(B)は同正面図である。
【図13】この発明のさらに他の実施形態にかかる焼入れ深さ測定装置を用いた焼入れ深さ測定の説明図である。
【図14】焼入れ深さ測定装置の具体的な使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の第1の実施形態を図1と共に説明する。図1は、この実施形態の焼入れ深さ測定方法に用いられる焼入れ深さ測定装置の概略図を示す。この焼入れ深さ測定装置1は、測定対象物20を励磁する励磁コイル3を有する検出ヘッド2と、励磁された前記測定対象物20からの磁化信号を検出する検出手段であるインピーダンス検出回路5を含む制御部10とを備える。この場合の測定対象物20は、軸受などの転動装置または転動装置の構成部品である。
【0035】
検出ヘッド2における励磁コイル3は、その磁心となる鉄心4にコイル巻線が巻かれている。励磁コイル3には、励磁のための交流磁界を発生させる交流電流が制御部10の電源11から供給される。この励磁コイル3を導電体である測定対象物20に接近させると、励磁コイル3がつくる磁界による電磁誘導で測定対象物20に渦電流が発生する。この渦電流は励磁コイル3がつくる磁界と反対方向の磁界を発生させ、また測定対象物20中でも渦電流により損失が発生するので、励磁コイル3のインピーダンスが変化する。そこで、検出手段である前記インピーダンス検出回路5は、測定対象物20からの磁化信号として前記インピーダンスを検出する。具体的には、インピーダンス検出回路5は、励磁コイル3に誘導される電圧の大きさや、励磁コイル3を流れる電流と電圧の位相差を測定し、これらの値から励磁コイル3のインピーダンスを算出する。
【0036】
測定対象物20に流れる渦電流は、測定対象物20の導電率,透磁率により変化する。そこで、測定対象物20の導電率,透磁率に応じて励磁コイル3のインピーダンスも変化するので、前記インピーダンス検出回路5で検出される励磁コイル3のインピーダンス変化から測定対象物20の材質変化を検出することができる。
【0037】
また、測定対象物20となる転動装置やその構成部品は、焼入れにより硬度が大きくなると、透磁率が母材よりも低下する。これにより、焼入れ深さに応じて励磁コイル3の磁路中の磁気抵抗が変化することから、測定対象物20の内部を透過する磁束が変化し、測定対象物20中に誘導される渦電流も変化するので、焼入れ深さに応じて励磁コイル3のインピーダンが変化することになる。
【0038】
そこで、測定対象物20となる転動装置やその構成部品について、焼入れ深さと励磁コイル3のインピーダンスとの関係を予め測定しておき、その関係式のグラフである検量線を作成しておけば、その検量線に測定された励磁コイル3のインピーダンスを当てはめることで、焼入れ深さを測定することが可能である。前記制御部10は、インピーダンス検出回路5のほかに、このインピーダンス検出回路5が検出したインピーダンスから焼入れ深さを求める信号処理回路6を有する。この信号処理回路6には、前記検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。
【0039】
この焼入れ深さ測定方法では、上記焼入れ深さ測定装置1を用いることにより、検出手段であるインピーダンス検出回路5の検出する励磁コイル3のインピーダンスから、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。
ところで、励磁コイル3のインピーダンスは、励磁コイル3と測定対象物20の間のギャップや、励磁コイル3の姿勢つまり測定対象物20に対する角度によって変化する。そこで、この焼入れ深さ測定方法では、検出ヘッド2の先端部、つまり励磁コイル3の磁心である鉄心4の測定対象物20に対向する先端部を、測定対象物20の被測定面に接触させた状態で前記測定を行う。
【0040】
このように、検出ヘッド2の先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた状態で
焼入れ深さの測定を行うことにより、励磁コイル3と測定対象物20との間の煩雑なギャップ管理が不要となり、焼入れ深さを精度良く行うことができる。
また、この実施形態の場合、励磁コイル3のインピーダンスから焼入れ深さを測定するので、励磁コイル3とは別に検出用のコイルを設ける必要がなく、装置の測定装置の構成が簡素になる。
【0041】
図2は、焼入れ深さ測定装置の他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、測定対象物20からの磁化信号を検出する検出手段として、図1の実施形態におけるインピーダンス検出回路5に代えて、励磁コイル3の磁心である鉄心4に巻かれた検出コイル7と、電磁誘導により前記検出コイル7に誘導される電圧の振幅および位相を検出する振幅・位相検出回路8とを用いている。振幅・位相検出回路8は制御部10に設けられる。励磁コイル3に、励磁のための高周波の交流磁界を発生させる交流電流が制御部10の電源11から供給され、励磁コイル3が発生する交流磁界により測定対象物20に渦電流が誘導されることは、図1の実施形態の場合と同様である。
【0042】
検出コイル7には、励磁コイル3のつくる磁束と渦電流がつくる磁束を合成した磁束による電磁誘導で発生する電圧が誘導される。すなわち、検出コイル7は、測定対象物20からの磁化信号として、励磁コイル3のつくる磁束と渦電流がつくる磁束を合成した磁束による電磁誘導で発生する電圧を検出する。前記制御部10は、振幅・位相検出回路8のほかに、この振幅・位相検出回路8が検出した検出コイル7の電圧の振幅または位相から焼入れ深さを求める信号処理回路6Aを有する。この信号処理回路6Aには、予め測定した焼入れ深さと検出コイル7の電圧の振幅または位相との関係を示す検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。これにより、信号処理回路6Aでは、振幅・位相検出回路8が検出した検出コイル7の電圧の振幅または位相を前記検量線に当てはめることで、焼入れ深さが測定される。
【0043】
また、前記信号処理回路6Aは、測定された焼入れ深さが所定の範囲から外れたとき、焼入れ異常であると判定する焼入れ異常判定手段9を有する。これにより、測定対象物20の焼入れ異常を簡単に知ることができる。前記所定の範囲は、任意に設定される設定範囲である。制御部10の次段には、制御部10での測定結果などのデータを表示する表示部12が接続されている。この表示部12に、測定された焼入れ深さや焼入れ異常の判定結果などが表示される。
【0044】
この実施形態では、励磁コイル3の磁心である鉄心4の測定対象物20の被測定面に接触する先端部に保護コーティング13が施されている。保護コーティング13の材料として、例えばエポキシ系樹脂など、測定対象物20の材料とされる金属材料よりも柔らかく、金属材料に傷を付けることのないものが用いられる。このように、鉄心4における測定対象物20の被測定面に接触する先端部に保護コーティング13を施すことにより、測定対象物20の被測定面に検出ヘッド2を摺動させても測定対象物20に傷が付くのを防止することができる。
【0045】
図3は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1は、図2の実施形態において、検出コイル7に誘導される電圧の振幅および位相を検出する振幅・位相検出回路8に代えて、検出コイル7に誘導される電圧を積分して検出コイル7に鎖交する磁束を算出する鎖交磁束算出回路14を用いている。制御部10は、鎖交磁束算出回路14のほかに、この鎖交磁束算出回路14が算出した鎖交磁束から焼入れ深さを求める信号処理回路6Bを有する。この信号処理回路6Bには、予め測定した焼入れ深さと検出コイル7の鎖交磁束との関係を示す検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。これにより、信号処理回路6Bでは、鎖交磁束算出回路14が算出した検出コイル7の鎖交磁束を前記検量線に当てはめることで、焼入れ深さが測定される。その他の構成は、図2の実施形態の場合と同様である。
【0046】
図4は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1は、図2の実施形態において、励磁コイル3の磁心をコ字状の鉄心4Aとし、焼入れ深さの測定時には、その鉄心4Aの両端を測定対象物20の被測定面に接触させるものとしている。ここでは、鉄心4Aの両端に保護コーティング13(図2)を施していないが、保護コーティング13を施しても良い。その他の構成は図2の実施形態の場合と同様である。
【0047】
この実施形態の場合も、前記コ字状の鉄心4Aと測定対象物20とで形成される磁路の抵抗が、測定対象物20の焼入れ深さに応じて変化するので、検出コイル7に誘導される電圧の振幅、および励磁コイル3と検出コイル7の電圧の位相差が変化し、振幅・位相検出回路8がその振幅および位相差を検出する。信号処理回路6Aでは、振幅・位相検出回路8が検出した振幅または位相差を予め作成した検量線に当てはめることにより、焼入れ深さを測定する。
【0048】
図5は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1は、図2の実施形態において、測定対象物20からの磁化信号を検出する検出手段として、励磁コイル3の磁心である鉄心4に巻かれた2つの検出コイル7A,7Bと、電磁誘導により前記両検出コイル7A,7Bに誘導される電圧の差を検出する電圧差検出回路15とを用いている。電圧差検出回路15は制御部10に設けられる。2つの検出コイル7A,7Bは互いに逆方向に巻かれて直列接続され、これら両検出コイル7A,7Bと電圧差検出回路15とでブリッジ回路16が構成される。これにより、2つの検出コイル7A,7Bには逆位相の電圧が誘導され、ブリッジ回路16によりこれら両検出コイル7A,7Bに誘導された電圧の差分だけを増幅して電圧差検出回路15で検出することができる。
【0049】
制御部10は、電圧差検出回路15のほかに、この電圧差検出回路15が検出した電圧差から焼入れ深さを求める信号処理回路6Cを有する。この信号処理回路6Cには、予め測定した焼入れ深さと検出コイル7A,7Bの電圧差との関係を示す検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。これにより、信号処理回路6Cでは、電圧差検出回路15が検出した検出コイル7A,7Bの電圧差を前記検量線に当てはめることで、焼入れ深さが測定される。その他の構成は、図2の実施形態の場合と同様である。
【0050】
この実施形態の場合、励磁コイル3の鉄心4に2つの検出コイル7A,7Bを互いに逆方向に巻き、これら両検出コイル7A,7Bを直列接続して、両検出コイル7A,7Bに誘導される電圧の差を検出する電圧差検出回路15とでブリッジ回路を構成しているので、測定対象物20の透磁率変化、つまり焼入れ深さを感度良く測定することができる。
【0051】
図6は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、図1の実施形態において、検出ヘッド2の基板22に、前記励磁コイル3のほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23を実装している。測定対象物用温度センサ23は、前記基板22の励磁コイル3が突出する側に設けられ、励磁コイル3の磁心である鉄心4の先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされている。この測定対象物用温度センサ23として、例えばサーモバイルのような非接触温度センサが用いられる。
【0052】
また、励磁コイル3の磁心である鉄心4にも、鉄心4の温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。このコイル用温度センサ24としては、サーミスタ、熱電対、測温抵抗体などを用いることができる。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。
【0053】
測定対象物20の温度が変化するとその透磁率も変化するので、測定対象物20の温度変化はインピーダンス検出回路5が検出するインピーダンにも影響を及ぼす。また、励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度が変化するとその透磁率も変化するので、鉄心4の温度変化もインピーダンス検出回路5が検出するインピーダンスに影響を及ぼす。そこで、制御部10の信号処理回路6には、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、インピーダンス検出回路5が検出するインピーダンスを補正する補正手段26が設けられている。これにより、信号処理回路6では、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき補正したインピーダンスを、検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。
【0054】
このように、インピーダンス検出回路5が検出する励磁コイル3のインピーダンスを、温度センサ23,24で測定される測定対象物20および励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度に基づき補正することにより、測定対象物20や前記鉄心4の温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さを精度良く行うことができる。この実施形態では、測定対象物20の温度だけでなく、励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度もインピーダンスを補正するデータとして加えているので、それだけ測定精度を向上させることができるが、測定対象物20の温度だけでインピーダンを補正するようにしても十分な測定精度を得ることができる。
【0055】
図7は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、図2の実施形態において、検出ヘッド2の基板22に、前記励磁コイル3の磁心である鉄心4のほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23を実装している。測定対象物用温度センサ23が、前記基板22の鉄心4が突出する側に設けられ、鉄心4の先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされていることは、図6の実施形態の場合と同様である。
【0056】
また、鉄心4にも、鉄心4の温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。信号処理回路6Aには、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、振幅・位相検出回路8が検出する検出コイル7の電圧の振幅または位相差を補正する補正手段26が設けられている。
【0057】
この実施形態の場合も、信号処理回路6Aでは、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき補正した検出コイル7の電圧の振幅または位相差を、検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。これにより測定対象物20や前記鉄心4Aの温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。
【0058】
図8は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、図3の実施形態において、検出ヘッド2の基板22に、前記励磁コイル3の磁心である鉄心4のほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23を実装している。測定対象物用温度センサ23が、前記基板22の鉄心4が突出する側に設けられ、鉄心4の先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされていることは、図6の実施形態の場合と同様である。
【0059】
また、鉄心4にも、鉄心4の温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。信号処理回路6Bには、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、振幅・位相検出回路8が検出する検出コイル7の電圧の振幅または位相差を補正する補正手段26が設けられている。
【0060】
この実施形態の場合も、信号処理回路6Bでは、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき補正した鎖交磁束算出回路14が算出した鎖交磁束を補正し、その補正値を検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。これにより測定対象物20や前記鉄心4Aの温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。
【0061】
図9は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、図4の実施形態において、検出ヘッド2の基板22に、前記励磁コイル3の磁心である鉄心4Aのほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23を実装している。測定対象物用温度センサ23が、前記基板22の鉄心4Aが突出する側に設けられ、鉄心4Aの先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされていることは、図6の実施形態の場合と同様である。
【0062】
また、鉄心4Aにも、鉄心4Aの温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。信号処理回路6Aには、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、振幅・位相検出回路8が検出する検出コイル7の電圧の振幅または位相差を補正する補正手段26が設けられている。
【0063】
この実施形態の場合も、信号処理回路6Aでは、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき補正した検出コイル7の電圧の振幅または位相差を検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。これにより測定対象物20や前記鉄心4Aの温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。
【0064】
図10は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、図5の実施形態において、検出ヘッド2の基板22に、前記励磁コイル3の磁心である鉄心4のほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23を実装している。測定対象物用温度センサ23が、前記基板22の鉄心4が突出する側に設けられ、鉄心4の先端部を測定対象物20の被測定面に接触させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされていることは、図6の実施形態の場合と同様である。
【0065】
また、鉄心4にも、鉄心4の温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。信号処理回路6Cには、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、電圧差検出回路15が検出した検出コイル7A,7Bの電圧差を補正する補正手段26が設けられている。
【0066】
この実施形態の場合も、信号処理回路6Cでは、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき電圧差検出回路15が検出した検出コイル7A,7Bの電圧差を補正し、その補正値を検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。これにより測定対象物20や前記鉄心4の温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。
【0067】
この発明のさらに他の実施形態を図11および図12と共に説明する。図11は、この実施形態の焼入れ深さ測定装置を用いて測定対象物の焼入れ深さを測定する場合の説明図を示す。この焼入れ深さ測定装置1は、測定対象物20を励磁する励磁コイル3を有する検出ヘッド2と、励磁された前記測定対象物20からの磁化信号を検出する検出手段であるインピーダンス検出回路5を含む制御部10とを備える。この場合の測定対象物20も、軸受などの転動装置または転動装置の構成部品である。
【0068】
検出ヘッド2における励磁コイル3は、その磁心となる鉄心4に巻かれており、基板22上に実装されている。励磁コイル3には、励磁のための交流磁界を発生させる交流電流が制御部10の電源11から供給される。この励磁コイル3を導電体である測定対象物20に接近させると、励磁コイル3がつくる磁界による電磁誘導で測定対象物20に渦電流が発生する。この渦電流は励磁コイル3がつくる磁界と反対方向の磁界を発生させ、また測定対象物20中でも渦電流により損失が発生するので、励磁コイル3のインピーダンスが変化する。そこで、検出手段である前記インピーダンス検出回路5は、測定対象物20からの磁化信号として前記インピーダンスを検出する。具体的には、インピーダンス検出回路5は、励磁コイル3に誘導される電圧の大きさや、励磁コイル3を流れる電流と電圧の位相差を測定し、これらの値から励磁コイル3のインピーダンスを算出する。
【0069】
測定対象物20に流れる渦電流は、測定対象物20の導電率,透磁率により変化する。そこで、測定対象物20の導電率,透磁率に応じて励磁コイル3のインピーダンスも変化するので、前記インピーダンス検出回路5で検出される励磁コイル3のインピーダンス変化から測定対象物20の材質変化を検出することができる。
【0070】
また、測定対象物20となる転動装置やその構成部品は、焼入れにより硬度が大きくなると、透磁率が母材よりも低下する。これにより、焼入れ深さに応じて励磁コイル3の磁路中の磁気抵抗が変化することから、測定対象物20の内部を透過する磁束が変化し、測定対象物20中に誘導される渦電流も変化するので、焼入れ深さに応じて励磁コイル3のインピーダンが変化することになる。
【0071】
そこで、測定対象物20となる転動装置やその構成部品について、焼入れ深さと励磁コイル3のインピーダンスとの関係を予め測定しておき、その関係式のグラフである検量線を作成しておけば、その検量線に測定された励磁コイル3のインピーダンスを当てはめることで、焼入れ深さを測定することが可能である。前記制御部10は、インピーダンス検出回路5のほかに、このインピーダンス検出回路5が検出したインピーダンスから焼入れ深さを求める信号処理回路6を有する。この信号処理回路6には、前記検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。ここまでの構成は、図1の実施形態における焼入れ深さ測定装置1の場合と同様である。
【0072】
この焼入れ深さ測定では、前記励磁コイル3を、その磁心である鉄心4の先端部が測定対象物20の被測定面と所定のギャップを介して対向するように配置して測定を行う点がが、これまでの接触方式の測定と異なる。
【0073】
検出ヘッド2の基板22には、前記励磁コイル3のほかに、測定対象物20の温度を測定する測定対象物用温度センサ23が実装されている。測定対象物用温度センサ23は、前記基板22の励磁コイル3が突出する側に設けられ、励磁コイル3を所定のギャップを介して測定対象物20に対向配置させた測定状態において、測定対象物用温度センサ23が測定対象物20に近接するようにされている。この測定対象物用温度センサ23として、例えばサーモバイルのような非接触温度センサが用いられる。
【0074】
また、励磁コイル3の磁心である鉄心4にも、鉄心4の温度を測定するコイル用温度センサ24が設けられている。このコイル用温度センサ24としては、サーミスタ、熱電対、測温抵抗体などを用いることができる。測定対象物用温度センサ23およびコイル用温度センサ24は、制御部10に設けられた温度センサ回路25に接続されており、この温度センサ回路25で各温度センサ23,24の検出信号が数値化される。図11のように、温度センサ回路25の一部25Aを、検出ヘッド2における基板22の裏面に実装しても良い。図12(A),(B)は、前記検出ヘッド2の平面図および正面図を示す。
【0075】
測定対象物20の温度が変化するとその透磁率も変化するので、測定対象物20の温度変化はインピーダンス検出回路5が検出するインピーダンにも影響を及ぼす。また、励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度が変化するとその透磁率も変化するので、鉄心4の温度変化もインピーダンス検出回路5が検出するインピーダンスに影響を及ぼす。そこで、制御部10の信号処理回路6には、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23,24の測定値に基づき、インピーダンス検出回路5が検出するインピーダンスを補正する補正手段26が設けられている。これにより、信号処理回路6では、温度センサ23,24の測定する測定値に基づき補正したインピーダンスを、上記した検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さを測定する。
【0076】
このように、インピーダンス検出回路5が検出する励磁コイル3のインピーダンスを、温度センサ23,24で測定される測定対象物20および励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度に基づき補正することにより、測定対象物20や前記鉄心4の温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。この実施形態では、測定対象物20の温度だけでなく、励磁コイル3の磁心である鉄心4の温度もインピーダンスを補正するデータとして加えているので、それだけ測定精度を向上させることができるが、測定対象物20の温度だけでインピーダンを補正するようにしても十分な測定精度を得ることができる。
【0077】
図13は、焼入れ深さ測定装置のさらに他の実施形態を示す。この焼入れ深さ測定装置1では、測定対象物20からの磁化信号を検出する検出手段として、図11の実施形態におけるインピーダンス検出回路5に代えて、励磁コイル3の磁心であるコ字状の鉄心4Aに巻かれた検出コイル7と、電磁誘導により前記検出コイル7に誘導される電圧の振幅および励磁コイル3の電圧との位相差を検出する振幅・位相検出回路8とを用いている。検出ヘッド2は、励磁コイル3、その磁心であるコ字状の鉄心4A、測定対象物用温度センサ23A、および前記鉄心4Aに設けられたコイル用温度センサ24などを備える。焼入れ深さの測定時には、コ字状の鉄心4Aの両端を測定対象物20の被測定面に接触させるものとしている。この測定状態で、測定対象物用温度センサ23Aは、測定対象物20の被測定面に接触する位置に配置される。振幅・位相検出回路8は制御部10に設けられる。励磁コイル3に、励磁のための交流磁界を発生させる交流電流が制御部10の電源11から供給され、励磁コイル3が発生する交流磁界により測定対象物20に渦電流が誘導されること、各温度センサ23A,24の検出信号を数値化する温度センサ回路25が制御部10に設けられることは、図11の実施形態の場合と同様である。
【0078】
検出コイル7には、励磁コイル3のつくる磁束と渦電流がつくる磁束を合成した磁束による電磁誘導で発生する電圧が誘導される。すなわち、検出コイル7は、測定対象物20からの磁化信号として、励磁コイル3のつくる磁束と渦電流がつくる磁束を合成した磁束による電磁誘導で発生する電圧を検出する。前記制御部10は、振幅・位相検出回路8のほかに、この振幅・位相検出回路8が検出した検出コイル7の電圧の振幅または励磁コイル3の電圧との位相差から焼入れ深さを求める信号処理回路6Aを有する。この信号処理回路6Aには、予め測定した焼入れ深さと検出コイル7の電圧の振幅または位相差との関係を示す検量線のデータを書き込んだメモリが含まれる。これにより、信号処理回路6Aでは、振幅・位相検出回路8が検出した検出コイル7の電圧の振幅または位相差を前記検量線に当てはめることで、焼入れ深さが測定される。この信号処理回路6Aには、図11の実施形態の場合と同様に、温度センサ回路25で数値化される前記各温度センサ23A,24の測定値に基づき、振幅・位相検出回路8が検出する検出コイル7の電圧の振幅または位相差を補正する補正手段26が設けられている。
【0079】
この実施形態の場合も、前記コ字状の鉄心4Aと測定対象物20とで形成される磁路の抵抗が、測定対象物20の焼入れ深さに応じて変化するので、検出コイル7に誘導される電圧の振幅、および励磁コイル3と検出コイル7の電圧の位相差が変化し、振幅・位相検出回路8がその振幅および位相差を検出する。信号処理回路6Aでは、温度センサ23A,24の測定する測定値に基づき補正した検出コイル7の電圧の振幅または位相差を、上記した検量線に当てはめることで、測定対象物20の焼入れ深さが測定する。これにより測定対象物20や前記鉄心4Aの温度変化による透磁率変化の影響を受けることなく、測定対象物20の焼入れ深さの測定を精度良く行うことができる。
【0080】
図14は、上記した例えば接触式の焼入れ深さ測定装置1を使用して行う焼入れ深さ測定の具体例を示す。ここでは、転動装置の構成部品、具体的には軸受の内輪31が測定対象物とされ、その転走面31aに施された焼入れの深さが測定される。焼入れ深さ測定装置1の検出ヘッド2は、移動可能な支持部材32に支持され、支持部材32の移動により軸受内輪31の転走面31aの表面を摺動しながら深入れ深さを測定する。軸受内輪31は回転軸33の外径面に嵌着されており、回転軸33を回転させることで、軸受内輪31の転走面31aの全周面に前記検出ヘッド2を移動させて焼入れ深さを測定することができる。なお、非接触式の焼入れ深さ測定装置1を使用する場合には、支持部材33に支持された検出ヘッド2が、軸受内輪31の転走面31aの表面との間に所定のギャップを保って周方向に移動しながらや焼入れ深さを測定する。
オンライン上で、このように焼入れ深さ測定装置1を使用すると、軸受内輪31の転走面31aの焼入れを全数検査することができるので、品質保証能力を高めることができる。
【符号の説明】
【0081】
1…焼入れ深さ測定装置
3…励磁コイル
4,4A…鉄心
5…インピーダンス検出回路
7,7A,7B…検出コイル
8…振幅・位相検出回路
9…焼入れ異常判定手段
10…制御部
11…電源
13…保護コーティング
14…鎖交磁束算出回路
15…電圧差検出回路
16…ブリッジ回路
20…測定対象物
23,23A…測定対象物用温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記励磁コイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする焼入れ深さ測定方法。
【請求項2】
転動装置または転動装置部品からなる測定対象物を交流磁界内に配置し、この状態で測定対象物から発生する磁束を検出コイルで検出し、この検出された磁束から、測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記検出コイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする焼入れ深さ測定方法。
【請求項3】
請求項2において、前記磁束を検出コイルで検出し、この検出された磁束から焼入れ深さを測定する処理が、電磁誘導により検出コイルに誘導される電圧の振幅または位相を検出し、この検出した振幅または位相から焼入れ深さを測定する処理である焼入れ深さ測定方法。
【請求項4】
転動装置または転動装置部品からなる測定対象物にコイルによって交流磁界を印加し、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記物理量を検出するコイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする焼入れ深さ測定方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記測定対象物の温度を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行う焼入れ深さ測定方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記測定対象物に接触させるコイルの温度を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行う焼入れ深さ測定方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記温度の測定を、非接触温度センサにより行う焼入れ深さ測定方法。
【請求項8】
交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記励磁コイルは前記測定対象物に接触させた状態で前記交流磁界を印加するものであることを特徴とする焼入れ深さ測定装置。
【請求項9】
交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この印加された交流磁界により前記測定対象物から発生する磁束を検出する検出コイルと、この検出コイルで検出された磁束から測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記検出コイルは、前記測定対象物に接触させた状態で前記磁束の検出を行うものであることを特徴とする焼入れ深さ測定装置。
【請求項10】
請求項9において、前記検出コイルに誘導される電圧の振幅または位相を検出する検出回路を設け、前記信号処理回路は、前記検出回路で検出した振幅または位相から焼入れ深さを計算するものとした焼入れ深さ測定装置。
【請求項11】
転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加するコイルと、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量を検出する検出手段と、この検出手段の検出値から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する信号処理回路とを備え、前記物理量を検出するコイルは、測定対象物に接触させた状態で測定するものであることを特徴とする焼入れ深さ測定装置。
【請求項12】
請求項9において、前記検出コイルに誘導される電圧を積分することでコイルに鎖交する磁束を算出する鎖交磁束算出手段を設け、前記信号処理回路は、前記鎖交磁束算出手段で算出された磁束の大きさから研削焼けを検出する機能を有するものとした焼入れ深さ測定装置。
【請求項13】
請求項9において、前記検出コイルを2個設け、前記信号処理回路は、前記各検出コイルに電磁誘導により誘導される電圧の差から研削焼けを検出する機能を有するものとした焼入れ深さ測定装置。
【請求項14】
請求項13において、前記2個の検出コイルは直列に接続されてブリッジ回路を形成する焼入れ深さ測定装置。
【請求項15】
請求項7ないし請求項13のいずれか1項において、前記いずれかのコイルは、磁性材料の鉄心を有する焼入れ深さ測定装置。
【請求項16】
請求項15において、前記コイルの鉄心の少なくとも測定対象物との接触面を保護コーティングで覆った焼入れ深さ測定装置。
【請求項17】
請求項8ないし請求項16のいずれか1項において、前記信号処理回路で計算された焼入れ深さを設定範囲を比較し、設定範囲から外れている場合に焼入れ異常と判定する焼入れ異常判定手段を設けた焼入れ深さ測定装置。
【請求項18】
交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記測定対象物の温度および励磁コイルの温度のいずれか片方または両方を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行うことを特徴とする焼入れ深さ測定方法。
【請求項19】
請求項18において、前記温度の測定を、非接触温度センサにより行う焼入れ深さ測定方法。
【請求項20】
交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路と、前記測定対象物の温度および前記励磁コイルの温度のいずれか一方または両方を測定する温度センサと、この温度センサで測定された温度により前記信号処理回路で計算する焼入れ深さを補正する補正手段とを備えた焼入れ深さ測定装置。
【請求項1】
交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記励磁コイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする焼入れ深さ測定方法。
【請求項2】
転動装置または転動装置部品からなる測定対象物を交流磁界内に配置し、この状態で測定対象物から発生する磁束を検出コイルで検出し、この検出された磁束から、測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記検出コイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする焼入れ深さ測定方法。
【請求項3】
請求項2において、前記磁束を検出コイルで検出し、この検出された磁束から焼入れ深さを測定する処理が、電磁誘導により検出コイルに誘導される電圧の振幅または位相を検出し、この検出した振幅または位相から焼入れ深さを測定する処理である焼入れ深さ測定方法。
【請求項4】
転動装置または転動装置部品からなる測定対象物にコイルによって交流磁界を印加し、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記物理量を検出するコイルを測定対象物に接触させた状態で測定することを特徴とする焼入れ深さ測定方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記測定対象物の温度を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行う焼入れ深さ測定方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記測定対象物に接触させるコイルの温度を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行う焼入れ深さ測定方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記温度の測定を、非接触温度センサにより行う焼入れ深さ測定方法。
【請求項8】
交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記励磁コイルは前記測定対象物に接触させた状態で前記交流磁界を印加するものであることを特徴とする焼入れ深さ測定装置。
【請求項9】
交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この印加された交流磁界により前記測定対象物から発生する磁束を検出する検出コイルと、この検出コイルで検出された磁束から測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路とを備え、前記検出コイルは、前記測定対象物に接触させた状態で前記磁束の検出を行うものであることを特徴とする焼入れ深さ測定装置。
【請求項10】
請求項9において、前記検出コイルに誘導される電圧の振幅または位相を検出する検出回路を設け、前記信号処理回路は、前記検出回路で検出した振幅または位相から焼入れ深さを計算するものとした焼入れ深さ測定装置。
【請求項11】
転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加するコイルと、この交流磁界を印加するコイル、またはこのコイルとは別に設けたコイルから検出される物理量を検出する検出手段と、この検出手段の検出値から前記測定対象物の焼入れ深さを測定する信号処理回路とを備え、前記物理量を検出するコイルは、測定対象物に接触させた状態で測定するものであることを特徴とする焼入れ深さ測定装置。
【請求項12】
請求項9において、前記検出コイルに誘導される電圧を積分することでコイルに鎖交する磁束を算出する鎖交磁束算出手段を設け、前記信号処理回路は、前記鎖交磁束算出手段で算出された磁束の大きさから研削焼けを検出する機能を有するものとした焼入れ深さ測定装置。
【請求項13】
請求項9において、前記検出コイルを2個設け、前記信号処理回路は、前記各検出コイルに電磁誘導により誘導される電圧の差から研削焼けを検出する機能を有するものとした焼入れ深さ測定装置。
【請求項14】
請求項13において、前記2個の検出コイルは直列に接続されてブリッジ回路を形成する焼入れ深さ測定装置。
【請求項15】
請求項7ないし請求項13のいずれか1項において、前記いずれかのコイルは、磁性材料の鉄心を有する焼入れ深さ測定装置。
【請求項16】
請求項15において、前記コイルの鉄心の少なくとも測定対象物との接触面を保護コーティングで覆った焼入れ深さ測定装置。
【請求項17】
請求項8ないし請求項16のいずれか1項において、前記信号処理回路で計算された焼入れ深さを設定範囲を比較し、設定範囲から外れている場合に焼入れ異常と判定する焼入れ異常判定手段を設けた焼入れ深さ測定装置。
【請求項18】
交流磁界を発生する励磁コイルを、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に対向させ、この励磁コイルのインピーダンスの変化から、前記測定対象物の焼入れ深さを測定する焼入れ深さ測定方法であって、前記測定対象物の温度および励磁コイルの温度のいずれか片方または両方を測定し、その測定した温度を用いて焼入れ深さの測定値の補正を行うことを特徴とする焼入れ深さ測定方法。
【請求項19】
請求項18において、前記温度の測定を、非接触温度センサにより行う焼入れ深さ測定方法。
【請求項20】
交流磁界を発生し、転動装置または転動装置部品からなる測定対象物に交流磁界を印加する励磁コイルと、この励磁コイルのインピーダンスの変化を検出するインピーダンス検出回路と、このインピーダンス検出回路で検出したインピーダンスの変化から前記測定対象物の焼入れ深さを計算する信号処理回路と、前記測定対象物の温度および前記励磁コイルの温度のいずれか一方または両方を測定する温度センサと、この温度センサで測定された温度により前記信号処理回路で計算する焼入れ深さを補正する補正手段とを備えた焼入れ深さ測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−164306(P2010−164306A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4181(P2009−4181)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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