説明

照明装置、画像表示装置及び偏光変換拡散部材

【課題】より確実にスペックルノイズを低減することが可能な照明装置、画像表示装置及び偏光変換拡散部材を提供すること。
【解決手段】レーザ光を射出するレーザ光源と、該レーザ光源から射出されたレーザ光を複数種の偏光方向に変換して射出させる複数の領域を有する偏光変換部43とを備え、レーザ光源から射出されたレーザ光、あるいは、偏光変換部43から射出されたレーザ光を拡散させ被投射面50を照明することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、画像表示装置及び偏光変換拡散部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置により光変調装置を照明し、その光変調装置から射出された画像光を投射レンズ等の投射光学系によりスクリーンに拡大投射するプロジェクタが広く知られている。
そのプロジェクタの照明装置として、従来はメタルハライドランプやハロゲンランプ等が利用されていたが、近年では照明装置およびプロジェクタの小型化を図るため、半導体レーザ(LD)の利用が提案されている。レーザ光源の利点として、小型化以外にも、色再現性がよいことや、輝度およびコントラストの高い映像表示が可能であること、瞬時点灯が可能であることなどが挙げられる。
【0003】
しかしながら、レーザ光はコヒーレント光であるため、拡大投射された映像光には、明点および暗点がランダムに分布したスペックルパターンが生じる。スペックルパターンは、投射光学系の各点からの出射光が不規則な位相関係で干渉することによって生じるものである。このスペックルパターンを有する映像は、観察者にぎらぎらとしたちらつき感を与えるため問題である。
【0004】
この問題を解決するため、光源から射出された光を拡散板により拡散させ、スペックルノイズを低減させる画像表示装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
特許文献1に記載のディスプレイ装置では、レーザ光源から射出された光は拡散素子により拡散され、拡散された光はレンズにより空間的光変調器に集束される。そして、空間的光変調器によって画像に変換された光は観察面に表示される。
【0005】
また、特許文献2に記載の投射型画像表示装置では、第1次元表示素子から射出された光はガルバノミラーにより走査され、走査された光は振動しているディフューザを通過する。これにより、ディフューザから射出された光は拡散されて、投射レンズによりスクリーン上に拡大投射される。
【0006】
また、特許文献3に記載の画像表示システムでは、第1の光学系により、光源から射出された光による中間像が光拡散角変換素子上に形成され、光拡散角変換素子に入射する入射角より光拡散角変換素子から射出される射出角を大きくする。そして、光拡散角変換素子を振動させることにより、スペックルパターンの時間的変化が人間の眼において積分され、スペックルノイズを低減することが可能となる。
【特許文献1】特開平6−208089号公報
【特許文献2】特開2005−84117号公報
【特許文献3】特開2006−53495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の技術では、拡散板により光源から射出された光を拡散させてスペックルノイズを低減させているが、拡散板だけでは、人間の眼で知覚できないレベルまでスペックルノイズを低減することは難しい。
また、特許文献3の技術では、光拡散角変換素子の散乱角と投射レンズの飲み込み角との関係を最適化することにより、多くの散乱パターンをスクリーン上に投影できるため、明るく、かつ、スペックルを低減した画像を投影可能である。しかしながら、この構成の場合も人間の眼で知覚できないレベルまでスペックルノイズを低減することは難しい。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、より確実にスペックルノイズを低減することが可能な照明装置、画像表示装置及び偏光変換拡散部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の照明装置は、レーザ光を射出するレーザ光源と、該レーザ光源から射出されたレーザ光を複数種の偏光方向に変換して射出させる複数の領域を有する偏光変換部とを備え、前記レーザ光源から射出されたレーザ光、あるいは、前記偏光変換部から射出されたレーザ光を拡散させ被投射面を照明することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る照明装置では、レーザ光源から射出されたレーザ光は、例えば、偏光変換素子に入射した後、拡散される。すなわち、領域ごとに偏光方向が変換されたレーザ光が拡散される。したがって、偏光方向の異なるレーザ光同士は干渉しないため、スペックルノイズが低減したレーザ光により被投射面を照明することが可能となる。
【0011】
また、本発明の照明装置は、拡散されたレーザ光、あるいは、前記偏光変換部から射出されたレーザ光を前記被投射面に投射する投射手段を備えることが好ましい。
【0012】
本発明に係る照明装置では、拡散されたレーザ光、あるいは、偏光変換部から射出されたレーザ光は、投射手段により被投射面に投射される。このような照明装置をレーザ加工機、レーザ露光機に用いた場合、スペックルノイズが抑えられたレーザ光により被投射面を照射することができるため、レーザ加工、レーザ露光を精度良く行うことが可能となる。
【0013】
本発明の画像表示装置は、レーザ光を射出するレーザ光源と、該レーザ光源から射出されたレーザ光を複数種の偏光方向に変換して射出させる複数の領域を有する偏光変換部と、前記レーザ光源から射出されたレーザ光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、該光変調装置により変調されたレーザ光を被投射面に投射する投射手段とを備え、前記レーザ光源から射出されたレーザ光を拡散させ前記被投射面を照射することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る画像表示装置では、レーザ光源から射出されたレーザ光は、光変調装置により画像信号に応じて変調され、変調されたレーザ光は投射手段により被投射面に投射される。このとき、被投射面に投射されるレーザ光は、例えば、光変調装置により変調され、偏光変換素子に入射した後、拡散される。すなわち、光変調装置から射出された画像は領域ごとに偏光方向が変換されて拡散される。そして、拡散された偏光方向の異なるレーザ光が被投射面に投射される。したがって、偏光方向の異なるレーザ光同士は干渉しないので、被投射面に投射される画像のスペックルノイズを低減することが可能となる。
【0015】
また、本発明の画像表示装置は、前記偏光変換部には凹部が形成され、該凹部により前記レーザ光源から射出されたレーザ光を拡散させることが好ましい。
本発明に係る画像表示装置では、偏光変換部には凹部が形成され、凹部によりレーザ光源から射出されたレーザ光を拡散させるため、装置全体の小型化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0016】
また、本発明の画像表示装置は、前記偏光変換部には凹部が形成され、前記レーザ光源から射出されたレーザ光を拡散させる光拡散部を備えることが好ましい。
【0017】
本発明に係る画像表示装置では、光拡散部により、レーザ光源から射出されたレーザ光、あるいは、偏光変換部から射出されたレーザ光を拡散させる。すなわち、光拡散部を備えることにより、より確実にレーザ光を拡散させることができるため、被投射面に投射される画像のスペックルノイズをより効果的に低減させることが可能となる。
【0018】
また、本発明の画像表示装置は、前記偏光変換部及び前記光拡散部が、前記光変調装置と前記被投射面との間の光路上に配置され、少なくとも前記光拡散部が、前記光変調装置から射出されたレーザ光により中間像が形成される位置に配置されていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る画像表示装置では、光変調装置により変調されたレーザ光は、例えば、偏光変換部により領域ごとに偏光方向が変換されて、光拡散部により拡散される。このとき、中間像が形成される位置に、光拡散部が配置されているため、光拡散部により中間像を拡散して被投射面に画像を投射する。したがって、被投射面に投射される画像のスペックルノイズをより確実に低減することが可能となる。
【0020】
また、本発明の画像表示装置は、前記光変調装置と前記光拡散部との間の光路上に中間像形成光学系が配置され、前記中間像形成光学系により前記中間像が形成されることが好ましい。
【0021】
本発明に係る画像表示装置では、光変調装置により変調されたレーザ光は、中間像形成光学系により中間像が形成され、光拡散部により拡散される。また、偏光変換部により、被投射面に投射されるレーザ光の偏光方向は、領域ごとに異なるため、被投射面に投射される画像のスペックルノイズを低減することが可能となる。
したがって、中間像形成光学系により中間像を形成することで、より確実に光拡散部の位置に中間像を形成することができるため、被投射面に投射される画像のスペックルノイズをより確実に低減することが可能となる。
【0022】
また、本発明の画像表示装置は、前記偏光変換部及び前記光拡散部が、前記光源と前記光変調装置との間の光路上に配置され、前記光変調装置が、反射型光変調装置であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る画像表示装置では、偏光変換部及び光拡散部が、光源と光変調装置との間の光路上に配置されているため、例えば、偏光変換部により領域ごとに偏光方向の異なったレーザ光が拡散部材により拡散されて光変調装置に入射する。そして、拡散された偏光方向の異なるレーザ光が被投射面に投射される。このとき、偏光方向の異なるレーザ光同士は干渉しないので、被投射面に投射される画像のスペックルノイズを低減することが可能となる。すなわち、本発明では、光変調装置と被投射面との間の光路上に偏光変換部及び光拡散部を配置する構成に比べて、中間像を形成する必要がないため、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【0024】
また、本発明の画像表示装置は、前記偏光変換部が前記投射手段の開口絞りまたは瞳位置に配置されていることが好ましい。
本発明に係る画像表示装置では、偏光変換部が投射手段の開口絞りまたは瞳位置に配置されているため、様々な空間周波数に異なる偏光情報を与えることが可能となる。したがって、被投射面に投射される画像のスペックルノイズをより低減することが可能となる。
【0025】
また、本発明の画像表示装置は、基材の一方の面に前記偏光変換部が形成され、前記一方の面と反対の他方の面に前記光拡散部が形成されていることが好ましい。
【0026】
本発明に係る画像表示装置では、基材の一方の面に偏光変換部が形成され、一方の面と反対の他方の面に光拡散部が形成されているため、一括成形することができる。さらに、1つの基材に光拡散部と偏光変換部とが形成されているため、光拡散部と偏光変換部との間に界面が発生しない。したがって、界面を有する場合に生じる迷光の発生を抑えることが可能となるため、所定の範囲内に、光源から射出されたレーザ光を拡散させることが可能となる。
【0027】
また、本発明の画像表示装置は、前記光拡散部が前記他方の面に2つの光を干渉させることにより形成されることが好ましい。
【0028】
本発明に係る画像表示装置では、2つの光を干渉させることにより光拡散部が形成されるため、光拡散部により高次回折光の発生を制御することができる。すなわち、2つの光を照射し、不要な高次回折光が発生しないような光拡散部を形成することにより、光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0029】
また、本発明の画像表示装置は、前記光拡散部が回折素子であることが好ましい。
本発明に係る画像表示装置では、光拡散部が回折素子であるため、光拡散部において拡散されるレーザ光の拡散角を所定の範囲内にすることができる。したがって、レーザ光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0030】
また、本発明の画像表示装置は、前記偏光変換部及び前記光拡散部のうち、一方が前記光源と前記光変調装置との間に配置され、他方が前記光変調装置と前記被投射面との間に配置されていることが好ましい。
【0031】
本発明に係る画像表示装置では、偏光変換部と、光拡散部とが、光変調装置の前段側あるいは後段側に別々に設けられているため、偏光変換部及び光拡散部の配置の自由度が向上する。
【0032】
また、本発明の画像表示装置は、前記光変調装置が、透過型の液晶素子であり、前記偏光変換部が、前記液晶素子と前記被投射面との間の光路上に配置され、前記光拡散部が、前記光源と前記液晶素子との間の光路上に配置されていることが好ましい。
【0033】
本発明に係る画像表示装置では、光変調装置が、透過型の液晶素子であり、偏光変換部と、光拡散部とが、液晶素子の前段側あるいは後段側に別々に配置させる場合は、液晶素子と被投射面との間の光路上に偏光変換部を配置し、光源と液晶素子との間の光路上に光拡散部を配置する。すなわち、光変調装置が液晶素子である場合、偏光部材を用いて特定の偏光方向のレーザ光を光変調装置に入射させている。そこで、偏光変換部を液晶素子の後段側に配置することにより、効率良く領域ごとに偏光方向の異なるレーザ光を被投射面に投射することが可能となる。
【0034】
また、本発明の画像表示装置は、前記偏光変換部により前記光源から射出されたレーザ光の偏光方向を前記領域ごとに変換した後、変換されたレーザ光を前記光拡散部により拡散させることが好ましい。
【0035】
本発明に係る画像表示装置では、偏光変換部によりレーザ光の偏光方向を領域ごとに変換した後、変換されたレーザ光を光拡散部により拡散させる。すなわち、領域ごとに偏光方向の異なるレーザ光を拡散させているため、被投射面において偏光方向の異なるレーザ光が重畳されるので、被投射面に投射される画像のスペックルノイズをより効果的に低減することが可能となる。
【0036】
また、本発明の画像表示装置は、前記偏光変換部は、常光線と異常光線との位相差が異なる複屈折性材料からなることが好ましい。
本発明に係る画像表示装置では、偏光変換部は、常光線と異常光線との位相差が異なる複屈折性材料からなるため、領域ごとに偏光方向を効率良く変換することが可能となる。
【0037】
また、本発明の画像表示装置は、前記レーザ光源から射出されたレーザ光の波長をλとし、前記常光線と前記異常光線との位相差をReとすると、0≦Re≦λ/2であることが好ましい。
【0038】
本発明に係る画像表示装置では、偏光変換部は、常光線と異常光線との位相差Reが、0≦Re≦λ/2の範囲である複屈折性材料からなるため、領域ごとに複数種の偏光方向のレーザ光を射出することができるため、スペックルノイズを低減することが可能となる。
【0039】
また、本発明の画像表示装置は、サンドブラスト処理により前記凹部を形成することが好ましい。
本発明に係る画像表示装置では、サンドブラスト処理により、簡易な方法で、凹部を形成することが可能となる。
【0040】
また、本発明の画像表示装置は、フォトリソグラフィ法及びエッチングにより前記凹部を形成することが好ましい。
【0041】
本発明に係る画像表示装置では、フォトリソグラフィ法及びエッチングにより、簡易な方法で、凹部を形成する。また、マスクの開口部の大きさや透過率を変えることにより、凹部の大きさをことができるため、サンドブラスト処理に比べて、設計通りに凹部を形成することが可能となる。
【0042】
また、本発明の画像表示装置は、前記複数の領域の1つの大きさが、前記光変調装置の画像形成領域の大きさより小さいことが好ましい。
【0043】
本発明に係る画像表示装置では、複数の領域の1つの大きさが、光変調装置の画像形成領域の大きさより小さいため、画像形成領域から射出された画像は、偏光変換部を通過した際、偏光方向の異なる複数の領域に分割される。したがって、領域ごとに偏光方向の異なる画像が被投射面に投射されるため、スペックルノイズを確実に低減することが可能となる。
【0044】
また、本発明の画像表示装置は、前記複数の領域の1つの大きさが、前記投射手段の開口絞りの大きさより小さいことが好ましい。
本発明に係る画像表示装置では、複数の領域の1つの大きさが、投射手段の開口絞りの大きさより小さいため、スペックルノイズを確実に低減することが可能となる。
【0045】
また、本発明の偏光変換拡散部材は、入射したレーザ光を複数種の偏光方向に変換して射出させる複数の領域を有する偏光変換部と、入射したレーザ光を拡散させる光拡散部とを備え、基材の一方の面に前記偏光変換部が形成され、前記一方の面と反対の他方の面に前記光拡散部が形成され、前記光拡散部が前記他方の面に2つの光を干渉させることにより形成されることを特徴とする。
【0046】
本発明に係る偏光変換拡散部材では、2つの光を干渉させることにより光拡散部が形成されるため、光拡散部により高次回折光の発生を制御することができる。すなわち、2つの光を照射し、不要な高次回折光が発生しないような拡散層を形成することにより、光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0047】
また、本発明の偏光変換拡散部材は、入射したレーザ光を複数種の偏光方向に変換して射出させる複数の領域を有する偏光変換部と、入射したレーザ光を拡散させる光拡散部とを備え、基材の一方の面に前記偏光変換部が形成され、前記一方の面と反対の他方の面に前記光拡散部が形成され、前記光拡散部が回折素子であることを特徴とする。
【0048】
本発明に係る偏光変換拡散部材では、基材の一方の面に偏光変換部が形成され、一方の面と反対の他方の面に光拡散部が形成され、光拡散部が回折素子である。これにより、光拡散部において拡散されるレーザ光の拡散角を所定の範囲内にすることができるため、レーザ光の利用効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面を参照して、本発明に係る照明装置、画像表示装置及び拡散部材の実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0050】
[第1実施形態]
本発明のプロジェクタの第1実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
本実施形態においては、プロジェクタとして空間光変調装置で生成された画像情報を含む色光を投射系を介してスクリーン上に投射する投射型のプロジェクタを例に挙げて説明する。
【0051】
本実施形態に係るプロジェクタ(画像表示装置)1では、図1に示すように、反射型のスクリーン(被投射面)50を用い、スクリーン50の正面側からスクリーン50上に画像情報を含む光を投射する。
プロジェクタ1は、光源装置(レーザ光源)10と、光変調装置20と、ダイクロイックプリズム(色光合成手段)30と、投射装置(投射手段)40とを備えている。また、以下の説明においては、光変調装置を液晶ライトバルブと称する。
【0052】
光源装置10は、赤色のレーザ光を射出する赤色光源装置(レーザ光源)10Rと、緑色のレーザ光を射出する緑色光源装置(レーザ光源)10Gと、青色のレーザ光を射出する青色光源装置(レーザ光源)10Bとからなる。
また、液晶ライトバルブ(光変調装置)20は、赤色光源装置10Rから射出されたレーザ光を画像情報に応じて光変調する2次元の透過型の赤色用光変調装置20Rと、緑色光源装置10Gから射出されたレーザ光を画像情報に応じて光変調する2次元の透過型の緑色用光変調装置20Gと、青色光源装置10Bから射出されたレーザ光を画像情報に応じて光変調する2次元の透過型の青色用光変調装置20Bとからなる。さらに、ダイクロイックプリズム30は、各光変調装置20R,20G,20Bにより変調された各色光を合成するものである。
また、投射装置40は、ダイクロイックプリズム30で合成されたレーザ光をスクリーン(被投射面)50上に投射するものである。
【0053】
各光源装置10R,10G,10Bは、レーザ光を射出する光源11と、光源11から射出されたレーザ光を回折する回折光学素子12と、回折光学素子12において回折したレーザ光の射出角度を調整する角度調整用光学素子14とを備えている。なお、各光源装置10R,10G,10Bの構成はこれに限るものではない。
【0054】
投射装置40について図2を用いて説明する。なお、図2は、液晶ライトバルブ20R,20G,20Bに入射したレーザ光がスクリーン50に投射される光路図を見易くするために、液晶ライトバルブ20R,20G,20B、投射装置40、スクリーン50を直線配置として示し、また、ダイクロイックプリズム30を省略している。
投射装置40は、図2に示すように、光路上に第1レンズ群41と、偏光変換板(偏光変換部)43と、第2レンズ群45とをこの順に備えている。偏光変換板43は、中心部である回転軸Pを中心にアクチュエータ(図示略)により回転される。なお、偏光変換板43の中心部を回転軸Pとしたが、これに限らず、偏光変換板43の端部を回転軸Pとしても良い。
【0055】
第1レンズ群(中間像形成光学系)41は、ダイクロイックプリズム30において合成されたレーザ光を偏光変換板43上またはその近傍に中間像として形成する。また、第1レンズ群41は、開口絞り42に対して略対称に配置された前段レンズ群41a、後段レンズ群41bからなる等倍結像レンズである。また、前段レンズ群41a、後段レンズ群41bは、液晶ライトバルブ20R,20G,20Bの視野角特性を考慮して両側テレセントリック特性を有することが望ましい。前段レンズ群41a、後段レンズ群41bは、複数の凸レンズおよび凹レンズを含んで構成されているが、レンズの形状、大きさ、配置間隔および枚数、テレセントリック性、倍率その他のレンズ特性は、要求される特性によって適宜変更されるものである。
【0056】
偏光変換板43は、図3に示すように、複数の領域Aを有しており、複数種の偏光方向を有するレーザ光が複数の領域Aから射出されるようになっている。すなわち、例えば、領域A1及び領域A4から射出されたレーザ光の偏光方向は、振動方向の異なる直線偏光であり、領域A2及び領域A3から射出されるレーザ光の偏光方向は、楕円偏光となっている。なお、複数の領域Aから射出されるレーザ光の偏光方向は、すべて異なっていても、同じ偏光方向がいくつか存在していても良い。
さらに、偏光変換板43は、図3に示すように、第1レンズ群41により形成された中間像Tが形成される位置に配置されている。偏光変換板43の各領域Aの大きさは、中間像Tの大きさより小さくなっている。また、第1レンズ群41は等倍結像レンズであるため、液晶ライトバルブ20R,20G,20Bの画像形成領域の大きさが中間像Tと略同じ大きさである。したがって、偏光変換板43の各領域Aの大きさは、液晶ライトバルブ20R,20G,20Bの画像形成領域の大きさより、小さくなっている。
なお、偏光変換板43の各領域Aの大きさが開口絞り42の大きさより小さくしても良い。
本実施形態では、偏光変換板43の領域Aの大きさは、すべて同じであるが、すべて異なっていても良く、また、何種類かの大きさが混ざっていても良い。
【0057】
具体的には、偏光変換板43は、図4に示すように、ダイクロイックプリズム30から合成されたレーザ光が入射する入射端面43aと反対の射出端面43bに互いに異なる深さの複数の矩形状の凹部(凹凸構造)43Mを有している。これにより、偏光変換板43から射出されるレーザ光は拡散される。また、1つの凹部43Mが図3に示す1つの領域Aとなっている。
また、偏光変換板43は、光弾性係数の高い材料、例えば、ポリカーボネートから形成されている。そして、ポリカーボネートは、延伸時に材料に加わる応力により、延伸方向とそれと略垂直な方向とに異なる屈折率を有することが可能であり、1軸性の光学異方性を有する複屈折材料として機能する。
【0058】
次に、偏光変換板43の各領域Aを通過するレーザ光の偏光方向について、図5を参照して説明する。なお、図5では、領域Aa及び領域Abから射出されるレーザ光の偏光方向を分かりやすく説明するために、他の領域Ac,Ad,Ae…の大きさより大きく図示する。また、実際には、偏光変換板43の領域Aごとにダイクロイックプリズム30によって合成されたレーザ光が入射するのではなく、入射端面43aの全体にレーザ光が入射する。
ここで、偏光変換板43を形成する材料の光弾性係数をC[Pa−1]とし、延伸時に材料に加わる応力をσ[Pa]とすると、常光線と異常光線との屈折率差は、
【0059】
【数1】

【0060】
で表される。
また、屈折率差Δnを有する材料は、隣接する領域Aの厚みの差をdとすると、
【0061】
【数2】

【0062】
の関係が成り立つ。したがって、隣接する領域Aの厚みの差dにより、常光線と異常光線とに位相差Reを与えることが可能となり、レーザ光は偏光変換板43を通過することにより、領域Aごとに偏光方向が異なる。
【0063】
これにより、1軸性光学異方性を有する材料からなる偏光変換板43に、偏光変換板43の材料の光軸に対して45°傾いた直線偏光の光線が入射した際に、隣接する領域Aの厚みの差dの違いにより位相差Reが異なる。すなわち、図5に示すように、偏光変換板43の射出端面43bから射出される光線の偏光方向が、領域Aごとに異なる。例えば、領域Aaから射出される射出光の偏光方向は、常光線と異常光線との光学的距離が異なり位相が同じであるため、入射光と同じ矢印B1で示す向きとなる。一方、領域Abから射出される射出光の偏光方向は、常光線と異常光線との光学的距離が異なり位相も異なるため、矢印B2で示すように、入射光と位相が90°回転した向きとなる。領域Aごとの位相差Reは、0〜λ/2の範囲であれば良い。このようにして、偏光変換板43の隣接する領域Aの厚みの差dに応じて複数種の偏光方向のレーザ光が複数の領域Aa,Ab,Ac…から射出される。
【0064】
次に、以上の構成からなる本実施形態のプロジェクタ1により、スクリーン50に画像を表示する方法について説明する。
まず、各光源装置10R,10G,10Bから射出された赤色光,緑色光,青色光は、均一なレーザ光となり、角度調整用光学素子14に入射する。角度調整用光学素子14から射出された均一な赤色光,緑色光,青色光は、液晶ライトバルブ20R,20G,20Bに入射し、ダイクロイックプリズム30で合成される。
合成されたレーザ光は、第1レンズ群41を介して偏光変換板43に入射する。偏光変換板43に入射するレーザ光の偏光方向は、直線偏光となっている。そして、偏光変換板43において、領域Aごとに偏光方向が変換された後、射出端面43bで拡散される。したがって、偏光変換板43からは、偏光方向の異なる複数種の直線偏光や楕円率の異なる楕円偏光が射出される。そして、領域Aごとに偏光方向の異なる画像が、第2レンズ群45によりスクリーン50に投射される。このとき、スクリーン50に投射されるレーザ光も、領域Aごとに偏光方向の異なるレーザ光となる。
【0065】
本実施形態に係るプロジェクタ1では、偏光変換板43から射出された複数種の偏光方向のレーザ光が拡散し、スクリーン50に投射される。したがって、偏光方向の異なるレーザ光同士は干渉しないため、スクリーン50に投射される画像のスペックルノイズを低減することが可能となる。
また、中間像が形成される位置に偏光変換板43が配置されているため、中間像Tを領域Aごとに偏光方向を変換し拡散するため、より確実にスペックルノイズを低減することが可能となる。また、第1レンズ群41により中間像を形成するため、より確実に偏光変換板43の位置に中間像Tを形成することが可能となる。
また、偏光変換板43が、凹部43Mを有し各光源装置10R,10G,10Bから射出されたレーザ光を拡散させるため、装置全体の小型化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0066】
また、偏光変換板43の材料として複屈折性の大きいポリカーボネートを用いているため、常光線と異常光線との位相差Reを大きくすることができる。これにより、スクリーン50に投射されるレーザ光は干渉しにくくなるため、スペックルノイズを低減することが可能となる。
つまり、本実施形態のプロジェクタ1は、より確実にスペックルノイズを低減することが可能である。
【0067】
また、レーザ光を射出するレーザ光源と、上述した偏光変換板43と、偏光変換板43から射出された領域Aごとに偏光方向の異なる拡散されたレーザ光を被投射面に投射する投射手段とを備えた照明装置であっても良い。このような照明装置をレーザ加工機、レーザ露光機に用いた場合、スペックルノイズが抑えられたレーザ光により被投射面を照射することができるため、レーザ加工、レーザ露光を精度良く行うことが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態では、偏光変換板43を形成する材料としてポリカーボネートを用いたがこれに限るものではない。また、偏光変換板43を形成する材料は複屈折性の大きい材料により形成することが好ましい。
また、偏光変換板43を回転させる構成にしたがスクリーンの形状等によっては、回転させなくても良い。さらに、偏光変換板43を揺動させる構成であっても良い。
また、拡散機能を有する偏光変換板43を例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、偏光変換板43とは別にレーザ光を拡散する光拡散部を備えていても良い。この構成では、偏光変換板43と光拡散部とを近接、または、接触させて配置しても良い。また、偏光変換板43と光拡散部とを別々に設けた場合は、少なくとも光拡散部を中間像が形成される位置に配置すれば良い。このように、光拡散部を備えることにより、レーザ光をより確実に拡散することができるため、よりスペックルノイズを低減することができる。
また、射出端面43bに凹部43Mが形成された偏光変換板43を用いたが、入射端面43aにも凹部が形成されていても良い。
また、光変調装置として、透過型の液晶ライトバルブを用いたが、反射型の液晶ライトバルブ、DMD(Digital Mirror Device),LCOS(Liquid Crystal On Silicon)のいずれであっても良い。
【0069】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態について、図6を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態の図面において、上述した第1実施形態に係るプロジェクタ1と構成を共通とする箇所には同一符号を付けて、説明を省略することにする。
本実施形態に係るプロジェクタ60では、第1実施形態と同様の偏光変換板43が光源(レーザ光源)61と反射型ライトバルブ64との光路の間に配置されている点において第1実施形態と異なる。その他の構成においては第1実施形態と同様である。
【0070】
プロジェクタ(画像表示装置)60は、図6に示すように、光源61と、ホログラム素子62と、偏光変換板43と、平行化レンズ63と、反射型ライトバルブ(反射型光変調装置)64と、投射装置(投射手段)65とを備えている。
光源61は、レーザ光を射出するLD(Laser Diode)である。ホログラム素子62は、光源61から射出されたレーザ光を矩形上の照明光に変換する素子である。
偏光変換板43は、第1実施形態と同様に、入射したレーザ光を領域Aごとに偏光方向を異ならせ拡散させるものであり、回転軸Pを中心に回転可能となっている。したがって、ホログラム素子62から射出されたレーザ光が偏光変換板43を通過することにより、複数種の偏光方向を有するレーザ光が複数の領域から拡散されて射出される。
【0071】
平行化レンズ63は、偏光変換板43から射出された拡散されたレーザ光を略平行光にして、反射型ライトバルブ64に入射させる。
反射型ライトバルブ(光変調装置)64は、平行化レンズ63から射出された平行なレーザ光を画像信号に応じて変調する。反射型ライトバルブ64としては、例えば、DMD(Digital Mirror Device)を用いることが可能である。
投射装置65は、複数のレンズにより構成されており、反射型ライトバルブ64において変調された画像をスクリーン50に向かって投射するものである。
【0072】
次に、以上の構成からなる本実施形態のプロジェクタ60により、スクリーン50に画像を表示する方法について説明する。
まず、光源61から射出されたレーザ光は、ホログラム素子62により矩形状のレーザ光に変換され、偏光変換板43に入射する。偏光変換板43に入射するレーザ光の偏光方向は、直線偏光となっている。そして、偏光変換板43において、領域ごとに偏光方向が変換され拡散されたレーザ光は、複数種の直線偏光や楕円率の異なる楕円偏光となり、反射型ライトバルブ64に入射する。そして、反射型ライトバルブ64で反射された領域ごとに偏光方向の異なる画像が、投射装置65によりスクリーン50に投射される。このとき、スクリーン50に投射されるレーザ光も、領域ごとに偏光方向の異なるレーザ光となる。
【0073】
本実施形態に係るプロジェクタ60では、第1実施形態のプロジェクタ1と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態のプロジェクタ60では、反射型ライトバルブ64の前段に偏光変換板43が配置されているため、領域ごとに偏光方向の異なるレーザ光が拡散されて反射型ライトバルブ64に入射する。すなわち、本実施形態では、第1実施形態のように中間像を形成する必要がないため、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【0074】
なお、反射型ライトバルブ64を照明する手段として、ホログラム素子62を用いたがこれに限るものではなく、反射型ライトバルブ64を照明できるものであれば良い。
また、光変調装置として、DMDを用いたが、これに限るものではなく、偏光板を通す必要のない光変調装置であれば良い。
また、カラーの画像をスクリーン50に投射するには、光源61として、赤色光、緑色光、青色光のレーザ光源をダイクロイックプリズムなどで合成し、ホログラム素子62に入射させる。このときRGBの光源それぞれを時分割で駆動させる。この構成により、カラーの画像をスクリーン50に投射することができる。
【0075】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る第3実施形態について、図7を参照して説明する。
本実施形態に係るプロジェクタ(画像表示装置)70では、偏光変換板51と、光拡散板52とが別々に設けられている点において、第2実施形態と異なる。
【0076】
偏光変換板(偏光変換部)51は、図7に示すように、ホログラム素子62と平行化レンズ63との間の光路上に配置されている。偏光変換板51は、ポリカーボネートからなり、ホログラム素子62から射出されたレーザ光の偏光方向を領域ごとに異ならせる。なお、偏光変換板51は、光源61と反射型ライトバルブ64との間の光路上に配置されていれば良い。
また、光拡散板(光拡散部)52が、反射型ライトバルブ64と投射装置65との間の光路上に配置されている。光拡散板52は、例えば、凹凸部を有するガラス板であり、反射型ライトバルブ64から射出されたレーザ光を拡散させ、投射装置65に入射させる。なお、光拡散板52は、投射装置40の中間像位置に配置されている。また、反射型ライトバルブ64と光拡散板52との間には、中間像を形成するために、中間像レンズ66が設けられている。
【0077】
本実施形態に係るプロジェクタ70では、光拡散板52が反射型ライトバルブ64より投射装置40側に設けられているため、ライトバルブに入射する光線の割合を減少させることなく、ライトバルブを照明することが可能である。所謂、照明効率を向上させることが可能である。なお、光源装置10と反射型ライトバルブ64との間の光路上に光拡散板52が配置され、反射型ライトバルブ64とスクリーン50との間の光路上に偏光変換板51が配置されていても良い。
【0078】
また、より好ましい形態としては、偏光変換板が投射装置40の開口絞りまたは瞳位置に配置されていることが好ましい。具体的には、図8に示すように、光源61から射出された光の光路上に、ホログラム素子62、光拡散板51、平行化レンズ63、第1実施形態で示した透過型の液晶ライトバルブ20、投射装置65が順に配置されている。また、投射装置65は第1レンズ群65aと第2レンズ群65bとを備え、第1レンズ群65aと第2レンズ群65bとの間には開口絞り67が設けられている。この開口絞り67の開口67aに偏光変換部68が設けられており、この偏光変換部68によって、入射したレーザ光を領域ごとに偏光方向を異ならせて射出する。
また、図9に示すように、第1実施形態と同様に、第1レンズ群41の前段レンズ群41aと後段レンズ群41bとの間に開口絞り42を備えた構成において、開口絞り42の開口42aに偏光変換部69が設けられた構成であっても良い。
以上のように、開口絞り42の位置に偏光変換部68,69が設けられた構成の場合、各領域Aの大きさと開口絞り42の開口42aの大きさT1との関係は、図10に示すように、複数の領域Aの1つの大きさは、開口絞り42の開口42aの大きさより小さくなっている。
なお、偏光変換板68,69の配置は開口絞り67,42の開口67a,42aに限らず、瞳位置に配置されていても良い。
【0079】
さらに、光源装置10から射出されたレーザ光が、偏光変換板51,光拡散板52の順に入射する。これにより、領域ごとに偏光方向の異なるレーザ光を拡散させているため、スクリーン50において偏光方向の異なるレーザ光が重畳されるので、よりスペックルノイズを低減することが可能となる。
【0080】
なお、本実施形態では、偏光変換板51と光拡散板52とを異なる材質で形成したが、偏光変換板51と光拡散板52とを同じ材質で形成しても良い。
さらに、第1レンズ群41から射出されたレーザ光が、偏光変換板51,光拡散板52の順に入射する構成としたが、光拡散板52,偏光変換板51の順に入射する構成であっても良い。
また、光変調装置として、第1実施形態のように透過型の液晶ライトバルブを用い、偏光変換板51と、光拡散板52とを別々に設ける場合、偏光変換板51を液晶ライトバルブ20R,20G,20Bとスクリーン50との間の光路上に配置し、光拡散板52を光源装置10と液晶ライトバルブ20R,20G,20Bとの間の光路上に配置する。すなわち、光変調装置が液晶ライトバルブ20R,20G,20Bである場合、偏光部材を用いて特定の偏光方向のレーザ光が液晶ライトバルブ20R,20G,20Bに入射する。そこで、偏光変換板51を液晶ライトバルブ20R,20G,20Bの後段側に配置することにより、効率良く領域ごとに偏光方向の異なるレーザ光をスクリーン50に投射することが可能となる。
【0081】
[第4実施形態]
次に、本発明に係る第4実施形態について、図11を参照して説明する。
本実施形態に係るプロジェクタでは、偏光変換板73及び光拡散板74が一体的に形成されたディフューザ71である点において第3実施形態と異なる。その他の構成においては第3実施形態と同様である。
ディフューザ(偏光変換拡散部材)71は、図11に示すように、ポリカーボネートからなる基材72の一方の面72aに偏光変換部73が形成され、一方の面72aと反対の他方の面72bに光拡散部74が形成されている。すなわち、本実施形態の偏光変換部73及び光拡散部74は、同一材料で一体的に形成された構成である。また、レーザ光はディフューザ71の一方の面72aから入射する。
偏光変換部73は、図5に示す第1実施形態の偏光変換部43のように凹部72Mを備えている。これにより、複数種の偏光方向を有するレーザ光が複数の領域Aから射出されるようになっている。
【0082】
光拡散部74は、ポリカーボネートからなる基材72の他方の面72bに感光性材料を塗布し、2つの露光ビームを照射し干渉させることにより、任意の拡散パターンを有する光拡散部74を形成する。
【0083】
本実施形態のディフューザ71は、2光束干渉を用いることにより、光拡散部74により回折光の発生を制御することができる。すなわち、2つの露光ビームを照射し、不要な高次回折光が発生しないような光拡散部74を形成することにより、光の利用効率を向上させることが可能となる。
さらに、偏光変換部73と光拡散部74との間に界面が生じないため、偏光変換部73から射出され、光拡散部74に入射する光は、偏光変換部73と、光拡散部74との間で屈折が生じない。したがって、後段に配置された第2レンズ群45の有口径以上に、レーザ光が拡散するのを抑えることができる。
なお、レーザ光を基材72の一方の面72aから入射させたが、他方の面72bから入射させても良い。
【0084】
[第5実施形態]
次に、本発明に係る第5実施形態について、図12を参照して説明する。
本実施形態に係るプロジェクタでは、偏光変換部77及び光拡散部78が一体的に構成されたディフューザ75である点において第3実施形態と異なる。その他の構成においては第3実施形態と同様である。
【0085】
ディフューザ(偏光変換拡散部材)75は、図12に示すように、ポリカーボネートからなる基材76の一方の面76aに偏光変換部77が形成され、一方の面76aと反対の他方の面76bに光拡散部78が形成されている。すなわち、本実施形態の偏光変換部77及び光拡散部78は、同一材料で一体的に形成された構成である。また、レーザ光はディフューザ75の一方の面76aから入射する。
偏光変換部77は、図5に示す第1実施形態の偏光変換部43のように凹部76Mを備えている。これにより、複数種の偏光方向を有するレーザ光が複数の領域Aから射出されるようになっている。
光拡散部78は、2次元アレイ状に複数の溝78aを有する表面レリーフ型の回折素子である。
【0086】
本実施形態のディフューザ75は、第4実施形態のディフューザ71と同様に、偏光変換部77と光拡散部78との間に界面が生じないため、偏光変換部77と、光拡散部78との間で屈折が生じない。したがって、後段に配置された第2レンズ群45の有口径以上に、レーザ光が拡散するのを抑えることができる。
さらに、基材76の他方の面76bには、光拡散部78である表面レリーフ型の回折素子が形成されているため、光拡散部78において拡散されるレーザ光の拡散角を所定の範囲内にすることができる。したがって、レーザ光の利用効率を向上させることが可能となる。
【0087】
[第6実施形態]
次に、本発明に係る第6実施形態について、図13を参照して説明する。
本実施形態に係るプロジェクタでは、偏光変換板をサンドブラストにより形成する方法について説明する。なお、本実施形態では、領域Aの大きさが異なる偏光変換板80となっている。
偏光変換板(偏光変換部)80は、図13に示すように、ポリカーボネートからなる基材81に複数の凹部81aが形成されている。基材81の厚みをtとすると、t>λ/(2・△n)であり、λ/2以上の位相差を得ることができるようにする。
凹部81aの形成方法としては、隣接する領域Aの厚みの最大の差dがλ/2の位相差、すなわち、d(max)=Re(max)/△n=λ/(2・△n)となるように、基材81の表面81bにサンドブラストメディア82を吹き付けるサンドブラスト処理により表面を加工する。
このように、サンドブラスト処理によって偏光変換板80を形成することにより、簡易な方法で、基材81に凹部81aを形成することができる。
【0088】
[第7実施形態]
次に、本発明に係る第7実施形態について、図14を参照して説明する。
本実施形態に係るプロジェクタでは、偏光変換板をフォトリソグラフィ法及びエッチングにより形成する方法について説明する。なお、本実施形態では、領域Aの大きさが異なる偏光変換板90となっている。
偏光変換板(偏光変換部)90は、図14に示すように、ポリカーボネートからなる基材91に複数の凹部91aが形成されている。基材91の厚みをtとすると、t>λ/(2・△n)であり、λ/2以上の位相差を得ることができるようにする。
凹部91aの形成方法としては、隣接する領域Aの厚みの最大の差dがλ/2の位相差、すなわち、d(max)=Re(max)/△n=λ/(2・△n)となるように、基材91の表面91bに領域Aごとに開口率(開口部93の大きさ)及び透過率(開口部93を透過する光線の割合)が異なるマスク92を用いる。そして、基材91の表面91bにレジストを塗布し、基材91と対向するマスク92の面92aと反対の面92bから光線を照射し、レジストをパターニングする。その後、エッチング処理を施すことにより、凹部91aが形成される。
【0089】
本実施形態では、マスク92の開口部93の大きさ及び透過率を変えることにより、所望の深さを有する凹部91aを形成することができる。すなわち、第6実施形態のサンドブラスト処理に比べて、設計通りに基材91を加工することが可能となる。さらに、マスク92の開口部93の大きさ及び透過率を変えることにより、凹部91aのパターンをより複雑に形成することも可能となる。
また、エッチング処理の方法は、ドライエッチングでもウェットエッチングでも良い。また、透過率変調マスク(面積階調を含む)を用いることにより、レジスト残膜量を自由に変更することができるため、エッチングの深さを自由に変更することが可能である。すなわち、偏光変換板90を所望の位相差に調整することも容易に可能となる。
また、凹部91aのパターニングに用いるマスク92は、メタルマスクを用いて直接加工しても良い。
【0090】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、色光合成手段として、ダイクロイックプリズムを用いたが、これに限るものではない。色光合成手段としては、例えば、ダイクロイックミラーをクロス配置とし色光を合成するもの、ダイクロイックミラーを平行に配置し色光を合成するものを用いることができる。
また、照明装置、たとえば、レーザ加工機、レーザ露光機に用いる偏光変換部として、第1実施形態の偏光変換部に限らず、第2〜第7実施形態のいずれの偏光変換部及び光拡散部を用いても良い。
また、液晶ライトバルブを備えずに、例えば、画像情報を含むスライド(ポジフィルム)の面を照明装置で照明し、スクリーン上に画像情報を含む光を投射する、所謂スライドプロジェクタに、上述の実施形態の照明装置を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプロジェクタを示す平面図である。
【図2】図1のプロジェクタの投射装置を示す平面図である。
【図3】図1のプロジェクタの偏光変換部を示す正面図である
【図4】図1のプロジェクタの偏光変換部を示す平面図である
【図5】図1のプロジェクタの偏光変換部を通過するレーザ光の偏光方向の違いを示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るプロジェクタを示す平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るプロジェクタを示す平面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るプロジェクタの変形例を示す平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るプロジェクタの変形例を示す平面図である。
【図10】図8,図9のプロジェクタの偏光変換部を示す正面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る偏光変換拡散部材を示す平面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る偏光変換拡散部材を示す平面図である。
【図13】本発明の第6実施形態に係る偏光変換拡散部材の形成方法を示す平面図である。
【図14】本発明の第7実施形態に係る偏光変換拡散部材の形成方法を示す平面図である。
【符号の説明】
【0092】
T…中間像、1,60,70…プロジェクタ(画像表示装置)、10…光源装置(レーザ光源)、20…液晶ライトバルブ(光変調装置)、40,65…投射装置(投射手段)、43,51,80,90…偏光変換板(偏光変換部)、43M,72M,76M,81a,91a…凹部、50…スクリーン(被投射面)、52…光拡散板(光拡散部)、64…反射型ライトバルブ(反射型光変調装置)、72,76,81,91…基材、73,77…偏光変換部、74,78…光拡散部、75…ディフューザ(偏光変換拡散部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を射出するレーザ光源と、
該レーザ光源から射出されたレーザ光を複数種の偏光方向に変換して射出させる複数の領域を有する偏光変換部とを備え、
前記レーザ光源から射出されたレーザ光、あるいは、前記偏光変換部から射出されたレーザ光を拡散させ被投射面を照明することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
拡散されたレーザ光、あるいは、前記偏光変換部から射出されたレーザ光を前記被投射面に投射する投射手段を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
レーザ光を射出するレーザ光源と、
該レーザ光源から射出されたレーザ光を複数種の偏光方向に変換して射出させる複数の領域を有する偏光変換部と、
前記レーザ光源から射出されたレーザ光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、
該光変調装置により変調されたレーザ光を被投射面に投射する投射手段とを備え、
前記レーザ光源から射出されたレーザ光を拡散させ前記被投射面を照射することを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
前記偏光変換部には凹部が形成され、該凹部により前記レーザ光源から射出されたレーザ光を拡散させることを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記偏光変換部には凹部が形成され、
前記レーザ光源から射出されたレーザ光を拡散させる光拡散部を備えることを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記偏光変換部及び前記光拡散部が、前記光変調装置と前記被投射面との間の光路上に配置され、
少なくとも前記光拡散部が、前記光変調装置から射出されたレーザ光により中間像が形成される位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記光変調装置と前記光拡散部との間の光路上に中間像形成光学系が配置され、
前記中間像形成光学系により前記中間像が形成されることを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記偏光変換部及び前記光拡散部が、前記光源と前記光変調装置との間の光路上に配置され、
前記光変調装置が、反射型光変調装置であることを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記偏光変換部が前記投射手段の開口絞りまたは瞳位置に配置されていることを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
基材の一方の面に前記偏光変換部が形成され、前記一方の面と反対の他方の面に前記光拡散部が形成されていることを特徴とする請求項5から請求項9のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記光拡散部が前記他方の面に2つの光を干渉させることにより形成されることを特徴とする請求項10に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記光拡散部が回折素子であることを特徴とする請求項10に記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記偏光変換部及び前記光拡散部のうち、一方が前記光源と前記光変調装置との間に配置され、他方が前記光変調装置と前記被投射面との間に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項14】
前記光変調装置が、透過型の液晶素子であり、
前記偏光変換部が、前記液晶素子と前記被投射面との間の光路上に配置され、
前記光拡散部が、前記光源と前記液晶素子との間の光路上に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の画像表示装置。
【請求項15】
前記偏光変換部により前記光源から射出されたレーザ光の偏光方向を前記領域ごとに変換した後、変換されたレーザ光を前記光拡散部により拡散させることを特徴とする請求項5から請求項13のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項16】
前記偏光変換部は、常光線と異常光線との位相差が異なる複屈折性材料からなることを特徴とする請求項3から請求項15のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項17】
前記レーザ光源から射出されたレーザ光の波長をλとし、前記常光線と前記異常光線との位相差をReとすると、0≦Re≦λ/2であることを特徴とする請求項16に記載の画像表示装置。
【請求項18】
サンドブラスト処理により前記凹部を形成することを特徴とする請求項3から請求項17のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項19】
フォトリソグラフィ法及びエッチングにより前記凹部を形成することを特徴とする請求項3から請求項17のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項20】
前記複数の領域の1つの大きさは、前記光変調装置の画像形成領域の大きさより小さいことを特徴とする請求項3から請求項19のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項21】
前記複数の領域の1つの大きさは、前記投射手段の開口絞りの大きさより小さいことを特徴とする請求項3から請求項19のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項22】
入射したレーザ光を複数種の偏光方向に変換して射出させる複数の領域を有する偏光変換部と、
入射したレーザ光を拡散させる光拡散部とを備え、
基材の一方の面に前記偏光変換部が形成され、前記一方の面と反対の他方の面に前記光拡散部が形成され、
前記光拡散部が前記他方の面に2つの光を干渉させることにより形成されることを特徴とする偏光変換拡散部材。
【請求項23】
入射したレーザ光を複数種の偏光方向に変換して射出させる複数の領域を有する偏光変換部と、
入射したレーザ光を拡散させる光拡散部とを備え、
基材の一方の面に前記偏光変換部が形成され、前記一方の面と反対の他方の面に前記光拡散部が形成され、
前記光拡散部が回折素子であることを特徴とする偏光変換拡散部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−151221(P2009−151221A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330805(P2007−330805)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】